(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】脂肪酸のコリン塩を含む組成物、および殺菌剤としてのその使用
(51)【国際特許分類】
A01N 37/02 20060101AFI20231102BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
A01N37/02
A01P3/00
(21)【出願番号】P 2021529125
(86)(22)【出願日】2019-11-22
(86)【国際出願番号】 EP2019082210
(87)【国際公開番号】W WO2020104645
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-09-16
(32)【優先日】2018-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(73)【特許権者】
【識別番号】521221423
【氏名又は名称】バイパ・ナムローゼ・フエンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】BIPA NV
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デ・サーガー,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】グエン・フー,ソン
(72)【発明者】
【氏名】ネスラー,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ベルメート,アン
(72)【発明者】
【氏名】フラーティ,サンドロ
【審査官】藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-017414(JP,A)
【文献】特表平06-507399(JP,A)
【文献】米国特許第05366995(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0303537(US,A1)
【文献】特開昭49-048828(JP,A)
【文献】米国特許第05093124(US,A)
【文献】国際公開第2014/128009(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0266852(US,A1)
【文献】米国特許第05342630(US,A)
【文献】ACS Sustainable Chem. Eng. ,2017年,Vol. 6, No. 2,p. 2741-2750
【文献】GREEN CHEMISTRY,2010年,Vol. 12, No. 4,p. 643-649
【文献】MYCOSES,2001年,Vol. 44, No. 3-4,p. 109-112
【文献】JOURNAL OF CHEMICAL AND ENGINEERING DATA,2012年,Vol. 57, NO. 8,p. 2191-2196
【文献】RSC ADVANCES,2013年,Vol. 3, No. 45,p. 23347-23354
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 37/02
A01P 3/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペラルゴン酸コリンを含む
、植物または植物部分
の菌感染を予防または防除するための殺菌剤
組成物。
【請求項2】
ペラルゴン酸コリンを含む水性組成物である、請求項1に記載の
殺菌剤組成物。
【請求項3】
スプレーもしくは噴霧可能液体、または濃縮物として製剤化され
た、請求項1または2に記載の
殺菌剤組成物。
【請求項4】
0.00001%(w/v)~70%(w/v)のペラルゴン酸コリンを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の
殺菌剤組成物。
【請求項5】
5%(w/v)~70%(w/v)のペラルゴン酸コリ
ンを含む濃縮物である、請求項4に記載の
殺菌剤組成物。
【請求項6】
0.00001%(w/v)~5%(w/v)のペラルゴン酸コリ
ンを含む噴霧可能液体である、請求項4に記載の
殺菌剤組成物。
【請求項7】
少なくとも1種のさらなる添加剤および/または補助剤を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の
殺菌剤組成物。
【請求項8】
少なくとも70%(w/w
)のペラルゴン酸コリンを含む固体または粉末組成物である、請求項1に記載の
殺菌剤組成物。
【請求項9】
植物または植物部分で菌感染を予防または防除するための方法であって、前記方法が、ペラルゴン酸コリンを含む組成物を、前記植物、
前記植物部分、または前記植物の成長部位に施用することを含む、方法。
【請求項10】
前記菌感染が、コレトトリクム属、ボトリチス属、アルタナリア属、フザリウム属、リゾクトニア属、スクレロティニア属、ベルチシリウム属、フィチウム属、フィトフトラ属、プクキニア属、ウドンコカビ目(うどんこ病菌を含む)、ツユカビ科(べと病菌を含む)、チエラビオプシス属種、Magnaporthe grisea、アルミラリア属種、ウスチラゴ属種、Phakospora pachyrhizi、Guignardia bidwellii、Blumeria graminis、ミコスフェレラ属種、ベンツリア属種、およびモニリニア属種からなる群から選択される1種または複数の病原性菌類によるものであり、好ましくは、前記菌類が、Colletotrichum coccodes、Botrytis cinerea、Alternaria solaniまたはFusarium graminearumである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記植物または植物部分が、農業または園芸作物である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、0.00001%(w/v)~5%(w/v)のペラルゴン酸コリンを含む組成物を、前記植物、植物部分または前記植物の成長部位に施用することを含む、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
ペラルゴン酸コリンを含む前記組成物を、前記植物、植物部分または前記植物の成長部位に噴霧する、請求項9~12のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、農業および園芸分野、特に作物保護の分野に位置する。特に、本発明は、植物または植物部分で菌類を防除するための環境に優しい方法および使用に関する。
【0002】
発明の背景
農業および園芸作物の損失を低減し、その品質を維持するために、多くの化学物質が作物病害の防除のために使用されている。しかしながら、作物生産の間に有害生物および病害防除化学物質を使用すると、多くの場合、収獲後の作物中に化学残留物が存在することになる。特に、従来の製剤の比較的高い施用量および反復施用の結果、植物生産物に残留物が蓄積すると共に環境汚染が生じる。作物、植物および環境の汚染に加えて、ヒトおよび/または動物への化合物の毒性もまた、有害生物および病害防除化学物質を使用する場合の懸念事項である。この文脈において、持続可能な方法で作物を生産することの重要性が、農業において増加している。これには、植物菌類ならびに他の植物病害および植物有害生物を防除するためのより安全で環境に優しい製剤および方法が必要である。
【0003】
したがって、当技術分野において、植物または植物部分で菌類および/または有害生物を防除するためのさらなる方法および/または改善された方法の必要性が残されている。
【0004】
カプリル酸(C8:0脂肪酸)、ペラルゴン酸(C9:0脂肪酸)およびカプリン酸(C10:0脂肪酸)などのいくつかの脂肪酸は、除草特性を有する。特に、ペラルゴン酸は、天然に存在する飽和9炭素脂肪酸(C9:0)であり、自然に広く存在する。哺乳動物および鳥類へのペラルゴン酸の毒性は低い。ペラルゴン酸は、植物における広域接触型除草剤として記載されている。ペラルゴン酸は、雑草の成長を防止するためおよび摘花剤として使用される。ペラルゴン酸は、Pelargonium graveolensにおいて最初に発見された。ペラルゴン酸の作用様式には、表皮細胞へのそのインターカレーション、葉群の乾燥および細胞損傷が関与する。同様の作用様式が、カプリル酸およびカプリン酸に関して提示されている。
【0005】
概要
本出願の発明者らは、脂肪酸、特にC8~C10脂肪酸、例えば、カプリル酸、ペラルゴン酸またはカプリン酸が、脂肪酸のコリン塩として製剤化された場合、例えば、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンまたはカプリン酸コリンとして製剤化された場合、そのような脂肪酸、特にカプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸の除草剤としての使用が一般に公知であるにも関わらず、大幅に低下した植物毒性作用を有する、またはさらには植物毒性作用を有さない植物の殺菌剤として使用できることを見出した。有利なことに、C8~C10脂肪酸のコリン塩を含む、特に、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンおよび/またはカプリン酸コリンを含む、より詳細にはペラルゴン酸コリンを含む本組成物は、組成物を植物またはその部分に対する植物毒性なしに植物またはその部分での1種または複数の植物病原性菌類の増殖を阻害するのに有効な量で施用(例えば、噴霧)することによって、殺菌剤として使用できる。さらに、本組成物は、環境に優しく、ヒト、非標的生物または環境に対して許容されない有害作用を有さないと予期される。本組成物は、陸上および水環境の両方で急速に分解するため、環境に蓄積しない。
【0006】
したがって、本発明の第1の態様は、1種または複数のC8~C10脂肪酸のコリン塩を含む組成物の、植物または植物部分への殺菌剤としての使用に関する。本組成物は、植物またはその部分での満足のいく、またはさらに高い殺菌活性を有し、同時に、植物またはその部分に対する低下した植物毒性を示すかまたは植物毒性を示さない。
【0007】
本発明のより特定の態様は、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンおよび/またはカプリン酸コリンを含む組成物の、植物または植物部分への殺菌剤としての使用に関する。本発明のさらにより特定の態様は、ペラルゴン酸コリンを含む組成物の、植物または植物部分への殺菌剤としての使用に関する。特定の実施形態では、1種または複数のC8~C10脂肪酸のコリン塩、例えば、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンおよび/またはカプリン酸コリン、好ましくはペラルゴン酸コリンを含む前記組成物は、それぞれの脂肪酸コリン塩を含む水性組成物である。特定の実施形態では、1種または複数の脂肪酸コリン塩を含む前記組成物は、スプレーもしくは噴霧可能液体、または濃縮物として製剤化される。
【0008】
特定の実施形態では、C8~C10脂肪酸コリン塩、例えば、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンおよび/またはカプリン酸コリン、好ましくはペラルゴン酸コリンを含む前記組成物は、0.00001%(w/v)~70%(w/v)のC8~C10脂肪酸コリン塩、例えば、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンおよび/またはカプリン酸コリン、好ましくはペラルゴン酸コリンを含む水性組成物である。例えば、C8~C10脂肪酸コリン塩を含む組成物は、0.0001%(w/v)~70%(w/v)、0.001%(w/v)~65%(w/v)、0.01%(w/v)~60%(w/v)、0.05%(w/v)~55%(w/v)、または0.1%(w/v)~50%(w/v)のC8~C10脂肪酸コリン塩を含む水性組成物であり得る。
【0009】
特定の実施形態では、C8~C10脂肪酸コリン塩、例えば、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンおよび/またはカプリン酸コリン、好ましくはペラルゴン酸コリンを含む前記組成物は、少なくとも70%(w/w)、少なくとも80%(w/w)、もしくは少なくとも90%(w/w/)、または最大100%(w/w)のC8~C10脂肪酸コリン塩、例えば、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンおよび/またはカプリン酸コリン、好ましくはペラルゴン酸コリンを含む固体または粉末組成物である。
【0010】
ある特定の実施形態では、前記組成物は、5%(w/v)~70%(w/v)のC8~C10脂肪酸コリン塩、例えば、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンおよび/またはカプリン酸コリン、好ましくはペラルゴン酸コリン、好ましくは、10%(w/v)~60%(w/v)のC8~C10脂肪酸コリン塩を含む濃縮物、特に水性濃縮物である。
【0011】
ある特定の実施形態では、組成物は、0.00001%(w/v)(または0.1ppm)~5%(w/v)のC8~C10脂肪酸コリン塩、好ましくは、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンおよび/またはカプリン酸コリン、より好ましくはペラルゴン酸コリン、好ましくは、0.05%(w/v)~2%(w/v)のC8~C10脂肪酸コリン塩、例えば、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンおよび/またはカプリン酸コリン、好ましくはペラルゴン酸コリンを含む噴霧可能液体である。例えば、組成物は、0.0001%(w/v)(または1ppm)~5%(w/v)、0.001%(w/v)(または10ppm)~5%(w/v)、0.01%(w/v)~5%(w/v)、0.05%(w/v)~2%(w/v)、または0.1%(w/v)~1%(w/v)のC8~C10脂肪酸コリン塩を含む噴霧可能液体であり得る。
【0012】
特定の実施形態では、C8~C10脂肪酸コリン塩、例えば、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンおよび/またはカプリン酸コリン、好ましくはペラルゴン酸コリンを含む組成物は、少なくとも1種の添加剤および/または補助剤、例えば、溶媒、担体、界面活性剤、不凍剤、増粘剤、緩衝剤、消泡剤、酸化防止剤、保存剤または着色剤をさらに含む。
【0013】
本発明の関連する態様は、植物または植物部分で菌類を防除するための方法であって、方法が、C8~C10脂肪酸コリン塩、例えば、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンおよび/またはカプリン酸コリン、好ましくはペラルゴン酸コリンを含む組成物、特に、C8~C10脂肪酸コリン塩を含む水性組成物を、植物、植物部分または植物の成長部位に施用することを含む、方法に関する。本組成物は、有利には、植物またはその部分に施用された場合、満足のいく、またはさらに高い殺菌活性を有し、同時に、植物またはその部分に対する低下した植物毒性を示すかまたは植物毒性を示さない。
【0014】
特定の実施形態では、前記菌類は、コレトトリクム属(Colletotrichum)、ボトリチス属(Botrytis)、アルタナリア属(Alternaria)、フザリウム属(Fusarium)、リゾクトニア属(Rhizoctonia)、スクレロティニア属(Sclerotinia)、ベルチシリウム属(Verticillium)、フィチウム属(Pythium)、フィトフトラ属(Phytophtora)、プクキニア属(Puccinia)、ウドンコカビ目(Erysiphales)(うどんこ病菌を含む)およびツユカビ科(Peronosporaceae)(べと病菌を含む)、チエラビオプシス(Thielaviopsis)属種、Magnaporthe grisea;アルミラリア(Armillaria)属種、ウスチラゴ(Ustilago)属種、Phakospora pachyrhizi、Guignardia bidwellii、Blumeria graminis、ミコスファエレラ(Mychosphaerella)属種、ベンツリア(Venturia)属種、モニリニア(Monilinia)属種からなる群から選択される病原性菌類であり、好ましくは、菌類は、Colletotrichum coccodes、Botrytis cinerea、Alternaria solaniまたはFusarium graminearumである。
【0015】
特定の実施形態では、植物または植物部分は、農業または園芸作物である。
特定の実施形態では、前記方法は、0.00001%(w/v)~5%(w/v)のC8~C10脂肪酸コリン塩、例えば、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンおよび/またはカプリン酸コリン、好ましくはペラルゴン酸コリンを含む組成物を、植物、植物部分または植物の成長部位に施用、好ましくは噴霧することを含む。例えば、方法は、0.0001%(w/v)~5%(w/v)、0.001%(w/v)~5%(w/v)、0.01%(w/v)~5%(w/v)、0.05%(w/v)~2%(w/v)、または0.1%(w/v)~1%(w/v)のC8~C10脂肪酸コリン塩を含む組成物を、植物、植物部分または植物の成長部位に施用、好ましくは噴霧することを含み得る。
【0016】
特定の実施形態では、C8~C10脂肪酸コリン塩、例えば、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンおよび/またはカプリン酸コリン、好ましくはペラルゴン酸コリンを含む組成物は、植物、植物部分または植物の成長部位に噴霧され得る。
【0017】
さらなる態様は、C8~C10脂肪酸コリン塩、例えば、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンおよび/またはカプリン酸コリン、好ましくはペラルゴン酸コリンを含む組成物を製造するための方法であって、C8~C10脂肪酸、好ましくはペラルゴン酸を水と混合し、それによってそれぞれの脂肪酸の溶液を得ること;ならびにC8~C10脂肪酸、好ましくはペラルゴン酸を含む溶液を水酸化コリンと混合して、C8~C10脂肪酸コリン塩(例えば、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンおよび/またはカプリン酸コリン)、好ましくはペラルゴン酸コリンを得ることを含む、方法に関する。本方法は、有利には、C8~C10脂肪酸とコリンの混合時に生じるゲル形成を回避する。
【0018】
特定の実施形態では、脂肪酸および水酸化コリンは、2:1~1:2の比、好ましくは1.5:1~1:1.5の比、より好ましくは等モル比で混合される。ある特定の実施形態では、方法は、C8~C10脂肪酸コリン塩、例えば、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンおよび/またはカプリン酸コリン、好ましくはペラルゴン酸コリンを含む組成物を、少なくとも1種の補助剤、溶媒、担体、界面活性剤または増量剤と混合することをさらに含む。特定の実施形態では、前記方法は、C8~C10脂肪酸コリン塩、例えば、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンおよび/またはカプリン酸コリン、好ましくはペラルゴン酸コリンを含む組成物を、施用前に希釈するステップ、特に、1:2~1:10000000(すなわち、107)の比、例えば、1:2~1:1000000(すなわち、106)、1:2~1:100000、1:4~1:10000、1:5~1:1000、または1:10~1:500の比、好ましくは1:5~1:250の比で希釈するステップをさらに含む。特定の実施形態では、前記方法は、C8~C10脂肪酸コリン塩、例えば、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンおよび/またはカプリン酸コリン、好ましくはペラルゴン酸コリンを含む固体組成物、好ましくは、少なくとも70%(w/w)、少なくとも80%(w/w)もしくは少なくとも90%(w/w/)、または最大100%(w/w)のC8~C10脂肪酸コリン塩、例えば、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンおよび/またはカプリン酸コリン、好ましくはペラルゴン酸コリンを含む固体または粉末組成物を、施用前に水溶液に溶解するステップをさらに含む。
【0019】
当業者は、以下に提示される詳細な説明および例から、本生成物、方法または使用の多くの他の効果および利点、ならびに本発明の最終使用(例えば、農家)の多数の可能性を認識するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】48mL蒸留水中2mLペラルゴン酸(>97%)の水酸化コリン(45%)による滴定曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
詳細な説明
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈が明らかにそうでないことを述べていない限り、単数および複数の対象物の両方を含む。
【0022】
本明細書で使用される場合、用語「含むこと(comprising)」、「含む(comprises)」および「構成される(comprised of)」は、「含むこと(including)」、「含む(includes)」または「含有すること(containing)」、「含有する(contains)」と同義であり、包括的またはオープンエンドであり、追加の述べられていないメンバー、要素または方法ステップを除外しない。この用語はまた、特許用語で十分確立された意味を有する「からなること」および「から本質的になること」を包含する。
【0023】
端点による数値範囲の列挙は、すべての数およびそれぞれの範囲内の部分和である部分、ならびに列挙された端点を含む。
【0024】
本明細書で使用される場合、用語「約」または「およそ」は、パラメーター、量、期間などの測定可能な値を指す場合、そのような変動が本開示において適切に実施される限り、示された値の変動および示された値からの変動、例えば、±10%以下、好ましくは±5%以下、より好ましくは±1%以下、なおより好ましくは±0.1%以下の示された値の変動および示された値からの変動を包含することを意味する。修飾語「約」が指す値それ自体もまた、具体的にかつ好ましくは、開示されることが理解されるべきである。
【0025】
用語「1つまたは複数」または「少なくとも1つ」、例えば、あるグループのメンバーの1つもしくは複数のメンバーまたは少なくとも1つのメンバーは、さらなる例示によって、それ自体明らかであり、この用語は、とりわけ、前記メンバーのうちのいずれか1つ、または前記メンバーのうちのいずれか2つ以上、例えば、前記メンバーのうちのいずれか3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上または7つ以上、および前記メンバーの最大すべてへの参照を包含する。別の例では、「1つまたは複数」または「少なくとも1つ」は、1、2、3、4、5、6、7またはそれよりも多くを指し得る。
【0026】
他に定義されない限り、技術用語および科学用語を含む、本発明の開示において使用されるすべての用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。さらなる手引きとして、用語定義が、本発明の教示をよりよく認識するために含まれる。特定の用語が、本発明の特定の態様または本発明の特定の実施形態に関連して定義される場合、そのような含意は、他に定義されない限り、本明細書全体を通して、すなわち、本発明の他の態様または実施形態の文脈でも当てはまることが意図される。
【0027】
以下の節では、本発明の様々な態様または実施形態がより詳細に定義される。そのように定義された各態様または実施形態は、逆のことが明らかに示されない限り、任意の他の態様または実施形態と組み合わせられ得る。特に、好ましいまたは有利であると示される任意の特徴は、好ましいまたは有利であると示される1つまたは複数の任意の他の特徴と組み合わせられ得る。
【0028】
本明細書全体を通して「一実施形態」、「実施形態」への参照は、その実施形態と関連して記載される特定の特徴、構造または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な箇所での句「一実施形態では」または「実施形態では」の出現は、すべて同じ実施形態を指し得るが、必ずしもそうであるとは限らない。さらに、特定の特徴、構造または特性は、本開示から当業者には明らかであるように、1つまたは複数の実施形態において任意の好適な方法と組み合わせられ得る。さらに、本明細書に記載の一部の実施形態は、他の実施形態に含まれないいくつかの特徴を含むが、当業者に理解される通り、異なる実施形態の特徴の組合せは、本発明の範囲内であることが意図され、異なる実施形態を形成する。例えば、添付の特許請求の範囲において、特許請求される実施形態の任意のものは、任意の組合せで使用できる。
【0029】
本発明者らは、公知の除草剤であるペラルゴン酸が、ペラルゴン酸コリンとして製剤化された場合、特に、1種または複数の植物病原性菌類の増殖を阻害するのに有効な量で施用される場合、植物毒性作用なしに植物の殺菌剤として使用できることを予想外に見出した。
【0030】
したがって、本発明の第1の態様は、1種または複数のC8~C10脂肪酸のコリン塩を含む組成物の、殺菌剤としての使用に関する。本発明のより特定の態様は、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンおよび/またはカプリン酸コリンを含む組成物の、殺菌剤としての使用に関する。本発明のさらにより特定の態様は、ペラルゴン酸コリンを含む組成物の、殺菌剤としての使用に関する。
【0031】
一般に、「殺菌性」は、物質が菌類の致死率を増加させるまたはその増殖速度を阻害する能力を意味する。さらなる態様は、植物または植物部分の菌感染を防除または予防するための方法であって、方法が、C8~C10脂肪酸コリン塩、例えば、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンおよび/またはカプリン酸コリン、好ましくはペラルゴン酸コリンを含む組成物を、前記植物または植物部分での1種または複数の植物病原性菌類の増殖を阻害するのに有効な量で、植物、植物部分もしくは植物の成長部位、および/または前記植物の感染部位に施用することを含む、方法に関する。さらなる態様は、C8~C10脂肪酸のコリン塩、好ましくはペラルゴン酸コリンを含む抗菌組成物、および前記抗菌組成物を製造するための方法に関する。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「C8~C10脂肪酸」は、構造CnH2n+1COOH(n=7、8または9)のカルボン酸を指す。本発明の好ましい実施形態では、C8~C10脂肪酸は、カプリル酸、ペラルゴン酸またはカプリン酸である。本発明のより好ましい実施形態では、C8~C10脂肪酸はペラルゴン酸である。
【0033】
本明細書で使用される場合、「ペラルゴン酸」はまた、「ノナン酸」または「1-オクタンカルボン酸」またはC9脂肪酸と呼ばれることもあり、末端がカルボン酸官能基の9炭素鎖で構成される有機化合物を指す。同様に、本明細書で使用される場合、用語「カプリル酸」および「カプリン酸」はまた、それぞれ「オクタン酸」および「デカン酸」、またはそれぞれC8脂肪酸およびC10脂肪酸と呼ばれることもある。
【0034】
用語「ペラルゴン酸コリン」、「ノナン酸コリン」または「ペラルゴン酸トリメチルエタノールアミン」は、交換可能に使用できる。同様に、用語「カプリル酸コリン」、「オクタン酸コリン」または「カプリル酸トリメチルエタノールアミン」は、交換可能に使用できる。また用語「カプリン酸コリン」、「デカン酸コリン」または「カプリン酸トリメチルエタノールアミン」は、交換可能に使用できる。C8~C10脂肪酸のコリン塩、例えば、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンまたはカプリン酸コリンは、本明細書に記載の通りに施用される場合、許容されない有害な生態への作用を引き起こさないことが公知である。したがって、それは、植物もしくは植物部分、または得られる産物もしくは作物の品質および収率を大幅に損なうことなく安全に使用され得る。本明細書に記載の濃度において、C8~C10脂肪酸のコリン塩は、例えば植物に噴霧された場合、ヒト、非標的生物または環境に対する許容されない毒性および有害作用を有さないようである。
【0035】
用語「組成物」または「製剤」は、本明細書において交換可能に使用され得、活性成分を含む混合物を指す。
【0036】
用語「活性成分」または「活性構成成分」は、交換可能に使用でき、有効量で提供された場合、所望の結果を達成する化合物または物質を幅広く指す。典型的には、活性成分は、生細胞または生物と相互作用するおよび/またはそれをモジュレートすることによりそのような結果を達成し得る。
【0037】
本出願は、活性化合物としてC8~C10脂肪酸のコリン塩を含む抗菌組成物、好ましくはC8~C10脂肪酸のコリン塩を含む水性組成物を提供する。典型的には、C8~C10脂肪酸のコリン塩を含む組成物は、0.00001%(w/v)~70%(w/v)のC8~C10脂肪酸のコリン塩を含む液体または水性組成物である。例えば、C8~C10脂肪酸のコリン塩を含む組成物は、0.0001%(w/v)~70%(w/v)、0.001%(w/v)~65%(w/v)、0.01%(w/v)~60%(w/v)、0.05%(w/v)~55%(w/v)、または0.1%(w/v)~50%(w/v)のC8~C10脂肪酸のコリン塩を含む液体または水性組成物である。
【0038】
C8~C10脂肪酸のコリン塩を含む組成物はまた、特に固体または粉末組成物として製剤化された場合、少なくとも70%(w/w)、少なくとも80%(w/w)もしくは少なくとも90%(w/w/)、または最大100%(w/w)のC8~C10脂肪酸のコリン塩を含み得る。特定の実施形態では、C8~C10脂肪酸の前記コリン塩は、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンまたはカプリン酸コリンである。より特定の実施形態では、C8~C10脂肪酸の前記コリン塩は、ペラルゴン酸コリンである。
【0039】
本発明による組成物は、好適な装置を用いて植物に施用することができる即時使用組成物だけでなく、使用前に水で希釈する必要のある濃縮物または濃縮製剤も含む。
【0040】
ある特定の実施形態では、前記組成物は、植物または植物部分への投与時、植物または植物部分で1種または複数の植物病原性菌類の増殖を阻害するのに効果的である、非植物毒性量のC8~C10脂肪酸のコリン塩を含む即時使用形式、例えば、スプレーもしくは噴霧可能液体、または浸液で製剤化され得る。ある特定の実施形態では、組成物は、0.00001%(w/v)~5%(w/v)のC8~C10脂肪酸のコリン塩、好ましくは0.02%(w/v)~2.5%(w/v)のC8~C10脂肪酸のコリン塩、より好ましくは0.05%(w/v)~2%(w/v)のC8~C10脂肪酸のコリン塩、例えば0.06%(w/v)~1.25%(w/v)のC8~C10脂肪酸のコリン塩を含む噴霧可能液体または浸液、特に水性組成物である。例えば、組成物は、0.0001%(w/v)~5%(w/v)、0.001%(w/v)~5%(w/v)、0.01%(w/v)~5%(w/v)、0.05%(w/v)~2%(w/v)、または0.1%(w/v)~1%(w/v)のC8~C10脂肪酸のコリン塩を含む噴霧可能液体または浸液、特に水性組成物である。
【0041】
特定の実施形態では、C8~C10脂肪酸の前記コリン塩は、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンまたはカプリン酸コリンである。より特定の実施形態では、C8~C10脂肪酸の前記コリン塩は、ペラルゴン酸コリンである。ある特定の実施形態では、C8~C10脂肪酸のコリン塩を含む前記組成物は、特に、5%(w/v)~70%(w/v)、または10%(w/v)~60%(w/v)のC8~C10脂肪酸のコリン塩、好ましくは10%(w/v)~50%(w/v)のC8~C10脂肪酸のコリン塩、より好ましくは25%(w/v)~50%(w/v)のC8~C10脂肪酸のコリン塩を含む濃縮物である。例えば、組成物は、15%(w/v)~55%(w/v)、20%(w/v)~50%(w/v)、25%(w/v)~45%(w/v)、30%(w/v)~35%(w/v)のC8~C10脂肪酸のコリン塩を含み得る。有利には、C8~C10脂肪酸のコリン塩、またはC8~C10脂肪酸および水酸化コリンの混合物は、容易に濃縮、使用前に希釈および保存することができる安定な化合物または混合物である。これにより、より濃縮されたC8~C10脂肪酸コリン塩組成物の製造が可能になり、次いでこれを、例えば水で容易に希釈して、植物毒性作用なしに植物または植物部分で1種または複数の植物病原性菌類の増殖を阻害するのに効果的である、C8~C10脂肪酸のコリン塩の濃縮物を含む組成物が得られる。濃縮変異体の利用可能性により、製造容易性、輸送および保存費用においてさらなる利益が可能である。本発明によるC8~C10脂肪酸のコリン塩を含む即時使用抗菌組成物は、活性であるが非植物毒性量のC8~C10脂肪酸のコリン塩を含むことが理解される。「活性であるが非植物毒性量」は、望ましくない菌類を防除するまたは死滅させるのに十分な量のC8~C10脂肪酸のコリン塩を意味すると考えられ、この量は、同時に、植物毒性の顕著な症状を示さない。これらの施用率は、一般に、より幅広い範囲で異なり得、この率は、いくつかの要因、例えば、望ましくない微生物、植物または作物、気候条件、および本発明による組成物の成分に依存する。特定の実施形態では、C8~C10脂肪酸の前記コリン塩は、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンまたはカプリン酸コリンである。より特定の実施形態では、C8~C10脂肪酸の前記コリン塩は、ペラルゴン酸コリンである。
【0042】
特定の実施形態では、本明細書に記載の通りの抗菌組成物は、追加の添加剤、例えば、少なくとも1種の補助剤および/または不活性剤をさらに含む。そのような補助剤または不活性物質は、これらに限定されないが、溶媒、担体、界面活性剤、安定剤、不凍剤、増粘剤、緩衝剤、発泡または消泡剤、酸化防止剤、保存剤および着色剤を含む。好適な補助剤および不活性物質は、当技術分野で公知であり、市販されている。一般に、活性化合物(すなわち、C8~C10脂肪酸のコリン塩、特に、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンまたはカプリン酸コリン、より詳細にはペラルゴン酸コリン)は、製剤化目的で慣用的に使用される任意の固体または液体添加剤と組み合わせることができる。担体は、より良好な施用性、特に植物または植物部分への施用のために活性化合物と混合されるまたは組み合わせられる天然または合成有機または無機物質を意味すると理解される。固体または液体である担体は、一般に不活性であり、農業または園芸における使用に好適であるべきである。例えば、液体担体は、水、有機溶媒、ならびに鉱物油および植物油を含み得る。好適な液化ガス増量剤または担体は、周囲温度、大気圧下で気体である液体、例えば、ブタン、プロパン、窒素および二酸化炭素などのエアロゾル噴霧剤である。好適な界面活性剤は、イオンもしくは非イオン特性を有する乳化剤、分散剤もしくは湿潤剤、またはこれらの界面活性剤の混合物である。無機顔料、例えば、酸化鉄、酸化チタン、プルシアンブルーならびに有機染料、例えば、アリザリン染料、アゾ染料および金属フタロシアニン染料などの着色剤、ならびに鉄、マンガン、ホウ素、銅、コバルト、モリブデンおよび亜鉛などの微量の栄養物を使用することが可能である。安定剤、例えば、低温安定剤、保存剤、酸化防止剤、光安定剤または化学安定性および/もしくは物理安定性を改善する他の薬剤も存在してもよい。組成物は、他の作物保護剤および/または殺有害生物剤をさらに含み得る。
【0043】
C8~C10脂肪酸のコリン塩を含む、特に、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンまたはカプリン酸コリン、より詳細にはペラルゴン酸コリンを含む典型的な製剤または組成物の例は、当業者に公知の通り、水溶性液体(SL)、乳剤(EC)、水中エマルジョン(EW)、懸濁濃縮液(SC、SE、FS、OD)、水分散性顆粒(WG)、顆粒(GR)およびカプセル濃縮物(CS)を含む。
【0044】
本発明は、本発明によるC8~C10脂肪酸のコリン塩を含む組成物または製剤の殺菌剤としての使用をさらに提供する。したがって、本発明は、植物および植物部分の全体的な損傷、ならびに植物病原性菌類によって引き起こされる収獲された果物または野菜の損失を低減するための、前記組成物の使用を提供する。特定の実施形態では、前記組成物または製剤は、0.00001%(w/v)~70%(w/v)のC8~C10脂肪酸のコリン塩、例えば、5%(w/v)~70%(w/v)のC8~C10脂肪酸のコリン塩、6%(w/v)~70%(w/v)のC8~C10脂肪酸のコリン塩、7%(w/v)~70%(w/v)C8~C10脂肪酸のコリン塩、8%(w/v)~70%(w/v)のC8~C10脂肪酸のコリン塩、9%(w/v)~70%(w/v)のC8~C10脂肪酸のコリン塩、または10%(w/v)~70%(w/v)のC8~C10脂肪酸のコリン塩を含む。特定の実施形態では、C8~C10脂肪酸の前記コリン塩は、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンまたはカプリン酸コリンである。より特定の実施形態では、C8~C10脂肪酸の前記コリン塩は、ペラルゴン酸コリンである。特定の実施形態では、前記組成物または製剤は、10%(w/v)~60%(w/v)のC8~C10脂肪酸のコリン塩、好ましくは10%(w/v)~50%(w/v)のC8~C10脂肪酸のコリン塩、より好ましくは25%(w/v)~50%(w/v)のC8~C10脂肪酸のコリン塩を含む。例えば、組成物は、15%(w/v)~55%(w/v)、20%(w/v)~50%(w/v)、25%(w/v)~45%(w/v)、30%(w/v)~35%(w/v)のC8~C10脂肪酸のコリン塩を含み得る。例えば、組成物は、30%(w/v)~50%(w/v)のC8~C10脂肪酸のコリン塩を含み得る。特定の実施形態では、C8~C10脂肪酸の前記コリン塩は、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンまたはカプリン酸コリンである。より特定の実施形態では、C8~C10脂肪酸の前記コリン塩は、ペラルゴン酸コリンである。
【0045】
他の実施形態では、前記組成物または製剤は、0.00001%(w/v)~5%(w/v)のC8~C10脂肪酸のコリン塩、好ましくは0.02%(w/v)~2.5%(w/v)のC8~C10脂肪酸のコリン塩、より好ましくは0.05%(w/v)~2%(w/v)のC8~C10脂肪酸のコリン塩を含む。特定の実施形態では、C8~C10脂肪酸の前記コリン塩は、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンまたはカプリン酸コリンである。より特定の実施形態では、C8~C10脂肪酸の前記コリン塩は、ペラルゴン酸コリンである。
【0046】
ある特定の実施形態では、組成物または製剤は、少なくとも1種の添加剤および/または補助剤、例えば、溶媒、担体、界面活性剤、不凍剤、または別の安定剤、増粘剤、緩衝剤、発泡もしくは消泡剤、酸化防止剤、保存剤、または着色剤をさらに含む。
【0047】
本発明は、植物または植物部分で菌感染を改善、防除、予防および/または除去するための方法であって、方法が、本発明によるC8~C10脂肪酸のコリン塩を含む組成物、特にカプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンまたはカプリン酸コリンを含む、より詳細にはペラルゴン酸コリンを含む組成物を、前記植物または植物部分での1種または複数の植物病原性菌類の増殖を阻害するおよび/または致死率を増加させるのに有効な量で、植物、植物部分もしくは植物の成長部位および/または前記植物の感染部位に施用することを含む、方法をさらに提供する。
【0048】
本発明によるC8~C10脂肪酸のコリン塩を含む組成物、特に、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンまたはカプリン酸コリンを含む、より詳細にはペラルゴン酸コリンを含む組成物を、植物または植物部分に施用することは、慣用の処理方法、例えば、浸漬、噴霧、アトマイジング、灌漑、蒸散、散粉、霧化、空中散布、発泡、塗布、散布、散水(水薬)または点滴灌漑を使用して、直接またはそれらの周囲環境、生息地または保存場所への処置によって、実施され得る。特定の実施形態では、方法は、1つまたは複数の植物、植物部分または植物の成長部位に、本発明によるC8~C10脂肪酸のコリン塩を含む組成物、特に、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンまたはカプリン酸コリンを含む、より詳細にはペラルゴン酸コリンを含む組成物を、噴霧、スプリンクラーによる散布、シャワーによる散布、噴出、液滴散布、スパッタリング、撒布、放散および/または注入することを含む。
【0049】
ある特定の実施形態では、本発明による方法は、0.00001%(w/v)~5%(w/v)のC8~C10脂肪酸のコリン塩、好ましくは0.02%(w/v)~2.5%(w/v)のC8~C10脂肪酸のコリン塩、より好ましくは0.05%(w/v)~2%(w/v)のC8~C10脂肪酸のコリン塩を含む水性組成物を施用することを含む。特定の実施形態では、C8~C10脂肪酸の前記コリン塩は、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンまたはカプリン酸コリンである。より特定の実施形態では、C8~C10脂肪酸の前記コリン塩は、ペラルゴン酸コリンである。
【0050】
ある特定の実施形態では、本発明による方法は、本明細書に記載の通りの抗菌組成物を、少なくとも100l/土地1ヘクタール~最大2000l/土地1ヘクタールの範囲、例えば、100l/土地1ヘクタール~1000l/土地1ヘクタール、好ましくは300l/土地1ヘクタール~800l/土地1ヘクタールまたは400l/土地1ヘクタール~700l/土地1ヘクタールの範囲;より好ましくは450l/土地1ヘクタール~600l/土地1ヘクタール;最も好ましくは500l/土地1ヘクタール~550l/土地1ヘクタールの量で施用することを含む。
【0051】
特定の実施形態では、植物は、農業または園芸作物である。そのような作物または植物の非限定例は、穀物、例えば、コムギ、オオムギ、ライムギまたはエンバク;野菜、例えば、ホウレンソウ、レタス、アスパラガス、キャベツ、トマト、ジャガイモ、ウリまたはパプリカ;果物、例えば、ナシ状果、柑橘類植物、バナナ、核果または柔らかい果物;マメ科植物、例えば、マメ、レンズマメ、エンドウまたはダイズ;油科植物、例えば、セイヨウアブラナ、カラシ、ヒマワリ、ヒマシ油科植物、カカオマメまたはナンキンマメ;ウリ科植物;ブドウ;ナッツ;観賞用植物;例えば、花き、低木、広葉樹または常緑樹を含む。
【0052】
ある特定の実施形態では、植物は、トウモロコシ、ダイズ、アルファルファ、綿、ヒマワリ、Brassica napus(例えば、キャノーラ、ナタネ)、Brassica rapa、Brassica juncea(例えば、カラシ(菜の花))、Brassica carinata、ヤシ科(Arecaceae)属種(例えば、アブラヤシ、ココヤシ)、コメ、コムギ、テンサイ、サトウキビ、エンバク、ライムギ、オオムギ、キビおよびモロコシ、ライコムギ、アマ、ナッツ、ブドウ、ならびに種々の植物分類学からの種々の果物および野菜、例えば、バラ科(Rosaceae)属種(例えば、リンゴおよびセイヨウナシなどのナシ状果物;アンズ、サクランボ、アーモンド、プラムおよび桃などの核果;イチゴ、ラズベリー、アカフサスグリおよびクロフサスグリ、ならびにスグリなどの液果類)、リベシオイダエ(Ribesioidae)属、クルミ科(Juglandaceae)属種、カバノキ科(Betulaceae)属種、ウルシ科(Anacardiaceae)属種、ブナ科(Fagaceae)属種、クワ科(Moraceae)属種、モクセイ科(Oleaceae)属種(例えば、オリーブの木)、マタタビ科(Actinidaceae)属種、クスノキ科(Lauraceae)属種(例えば、アボカド、桂皮、樟脳)、バショウ科(Musaceae)属種(例えば、バナナの木および農園)、アカネ科(Rubiaceae)属種(例えば、コーヒー)、ツバキ科(Theaceae)属種(例えば、茶)、アオギリ科(Sterculiceae)属種、ミカン科(Rutaceae)属種(例えば、レモン、オレンジ、マンダリンおよびグレープフルーツ);ナス科(Solanaceae)属種(例えば、トマト、ジャガイモ、コショウ、トウガラシ、ナス、タバコ)、ユリ科(Liliaceae)属種、キク科(Compositae)属種(例えば、レタス;アーティチョーク;および根チコリー、エンダイブまたはコモンチコリーを含むチコリー)、セリ科(Umbelliferae)属種(例えば、ニンジン、パセリ、セロリおよび根セロリ)、ウリ科(Cucurbitaceae)属種(例えば、ガーキンを含むキュウリ;カボチャ;スイカ;カラバッシュ;およびメロン)、ネギ科(Alliaceae)属種(例えば、セイヨウネギおよびタマネギ)、アブラナ科(Cruciferae)属種(例えば、白キャベツ、紫キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、芽キャベツ、青梗菜、コールラビ、ラディッシュ、ホースラディッシュ、クレソンおよび白菜)、マメ科(Leguminosae)属種(例えば、ピーナッツ、エンドウ、レンズマメおよびマメ、例えば、インゲンマメおよびソラマメ)、アカザ科(Chenopodiaceae)属種(例えば、スイスチャード、飼料ビート、ホウレンソウ、ビートの根)、アマ科(Linaceae)属種(例えば、アサ)、アサ科(Cannabeacea)属種(例えば、カンナビス)、アオイ科(Malvaceae)属種(例えば、オクラ、カカオ)、ケシ科(Papaveraceae)(例えば、ポピー)、キジカクシ科(Asparagaceae)(例えば、アスパラガス);芝(turf)、芝(lawn)、芝(grass)およびStevia rebaudianaを含む庭および森の有用植物および観賞用植物;ならびに各場合において、これらの植物の遺伝子組換え種からなる群から選択される作物であり得る。
【0053】
ある特定の実施形態では、植物は、トウモロコシ、ダイズまたは他のマメ、綿または他の繊維植物、コムギ、オオムギ、モロコシ、キビ、エンバク、ライムギ、ライコムギ、コメまたは他の穀物、サトウキビ、ナシ状果物の木、核果の木、ナッツの木または他の果樹木、アルファルファまたは他のマメ科作物、テンサイ、飼料ビート、パパイヤ、バナナおよびオオバコ、または他の果物、ブドウ、アブラナ、ヒマワリ、または他の油料作物、トウナス、メロンまたは他のウリ、ヤシ、ジャトロファまたは他の燃料作物、キャベツ、トマト、コショウまたは他の野菜、観賞用樹木、低木、高木、ユーカリまたは他の木、常緑樹、芝、コーヒー植物、茶植物、タバコ植物、ホップ植物、ゴム植物およびラテックス植物から選択される作物であり得る。
【0054】
ある特定の実施形態では、植物は、穀物、マメ類、野菜、果物、ナッツ、油料種子または観賞用植物のメンバーであり得る。
【0055】
ある特定の実施形態では、植物は、非遺伝子導入または遺伝子導入植物である。
ある特定の実施形態では、菌感染は、1種または複数の植物病原性菌類による農業または園芸穀物の菌感染である。植物病原性(Phytophathogenic)菌類は、子嚢菌類(例えば、ベンツリア属、ポドスフェラ属(Podosphaera)、エリシフェ属(Erysiphe)、モニリニア属、ミコスフェレラ属(Mycosphaerella)、ウンシヌラ属(Uncinula)、アスペルギルス属(Aspergillus)、マグナポルテ(Magnaporhte)属種(マグナポルテ科(Magnaporthaceae))、チエラビオプシス属種(セラトシシダ科(Ceratocysidaceae));担子菌類(例えば、ヘミリア(Hemileia)属、リゾクトニア属、ファコプソラ(Phakopsora)属、プクキニア属、ウスチラゴ属、チレチア(Tilletia)属、アルミラリア属);不完全菌類(例えば、ボトリチス属、ヘルミントスポリウム属(Helminthosporium)、リンコスポリウム属(Rhynchosporium)、フザリウム属、セプトリア属(Septoria)、セルコスポラ属(Cercospora)、アルタナリア属、ピリクラリア属(Pyricularia)およびシュードセルコスポレラ属(Pseudocercosporella));卵菌類(例えば、フィトフトラ属(Phytophthora)、ペロノスポラ属(Peronospora)、シュードペロノスポラ属(Pseudoperonospora)、アルブゴ属(Albugo)、ブレミア属(Bremia)、フィチウム属、シュードスクレロスポラ属(Pseudosclerospora)、ヒアロペロノスポラ属(Hyaloperonospora)、プラスモパラ属(Plasmopara))に属し得る。ある特定の実施形態では、植物病原性(phytopathenic)菌類は、コレトトリクム属、ボトリチス属、アルタナリア属、フザリウム属(Fusarium)、リゾクトニア属、スクレロティニア属、ベルチシリウム属、フィチウム属、フィトフトラ属、プクキニア属、ウドンコカビ目(うどんこ病菌を含む)およびツユカビ科(べと病菌を含む)からなる群から選択され;好ましくは、植物病原性菌類は、Colletotrichum coccodes、Botrytis cinerea、Alternaria solaniまたはFusarium graminearumである。
【0056】
ある特定の実施形態では、前記菌類は、コレトトリクム属、ボトリチス属、アルタナリア属、フザリウム属、リゾクトニア属、スクレロティニア属、ベルチシリウム属、フィチウム属、フィトフトラ属、プクキニア属、ウドンコカビ目(うどんこ病菌を含む)およびツユカビ科(べと病菌を含む)、チエラビオプシス属(潰瘍病(cancker rot)、微粒菌核病)、Magnaporthe grisea(イネイモチ病);アルミラリア属(木のビルレント病)、ウスチラゴ属(黒穂病)、Phakospora pachyrhizi(ダイズさび病)、Guignardia bidwellii(ブドウ黒斑病)、Blumeria graminis(芝および穀物のうどんこ病)、ミコスファエレラ属種、ベンツリア属種(例えば、V.inaequalis(リンゴさび病))、モニリニア属種(核果の褐色腐朽)からなる群から選択される病原性菌類である。
【0057】
本発明は、本発明によるC8~C10脂肪酸のコリン塩を含む、特に、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンまたはカプリン酸コリンを含む、より詳細には、ペラルゴン酸コリンを含む抗菌組成物を製造する方法であって、C8~C10脂肪酸、特に、カプリン酸、ペラルゴン酸またはカプリン酸、より詳細にはペラルゴン酸、またはそのような脂肪酸を含む溶液を、水酸化コリンまたは水酸化コリンを含む溶液と混合し、それによってC8~C10脂肪酸のコリン塩を含む、特に、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンまたはカプリン酸コリンを含む、より詳細にはペラルゴン酸コリンを含む組成物を得ることを含む、方法をさらに提供する。ある特定の実施形態では、脂肪酸は、最初に水と混合され、それによって、脂肪酸の水溶液が得られる。特定の実施形態では、C8~C10脂肪酸、特に、カプリン酸、ペラルゴン酸またはカプリン酸および水酸化コリンは、2:1~1:2の比、好ましくは1.5:1~1:1.5の比、または1.2:1~1:1.2の比、より好ましくは等モル比で混合される。
【0058】
ある特定の実施形態では、前記方法は、活性化合物を、少なくとも1種のさらなる添加剤および/または補助剤、例えば、溶媒、担体、界面活性剤、不凍剤または別の安定剤、増粘剤、緩衝剤、発泡もしくは消泡剤、酸化防止剤、保存剤または着色剤と混合するステップをさらに含む。
【0059】
ある特定の実施形態では、C8~C10脂肪酸のコリン塩を含む、特に、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンまたはカプリン酸コリンを含む、より詳細にはペラルゴン酸コリンを含む組成物を製造するための方法は、特に施用前に、組成物を好適な溶媒、好ましくは水で希釈するステップをさらに含む。より特には、C8~C10脂肪酸のコリン塩を含む、特に、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンまたはカプリン酸コリンを含む、より詳細にはペラルゴン酸コリンを含む組成物は、1:2~1:1000の比、例えば、1:2~1:100000、1:4~1:10000、1:5~1:1000、または1:10~1:500の比、好ましくは1:5~1:250の比で、水で希釈され得る。例えば、C8~C10脂肪酸のコリン塩を含む、特に、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンまたはカプリン酸コリンを含む、より詳細にはペラルゴン酸コリンを含む組成物は、1:10~1:500、1:20~1:200、1:25~1:100、1:40~1:500、または1:50~1:100の比で、水で希釈され得る。
【0060】
本出願はまた、以下の記述で示される通りの態様および実施形態を提供する。
1. C5~C13脂肪酸のコリン塩を含む組成物の、殺菌剤としての使用。
2. 前記組成物が、C5~C13脂肪酸のコリン塩を含む水性組成物である、記述1に記載の使用。
3. 前記組成物が、スプレーもしくは噴霧可能液体として、または濃縮物として製剤化される、記述1または2に記載の使用。
4. 組成物が、0.01%(w/v)~70%(w/v)のC5~C13脂肪酸のコリン塩を含む、記述1~3のいずれか1つに記載の使用。
5. 組成物が、5%(w/v)~70%(w/v)のC5~C13脂肪酸のコリン塩、好ましくは10%(w/v)~60%(w/v)のC5~C13脂肪酸のコリン塩を含む濃縮物である、記述4に記載の使用。
6. 組成物が、0.01%(w/v)~5%(w/v)のC5~C13脂肪酸のコリン塩、好ましくは0.05%(w/v)~2%(w/v)のC5~C13脂肪酸のコリン塩を含む噴霧可能液体である、記述4に記載の使用。
7. 組成物が、少なくとも1種のさらなる添加剤および/または補助剤、例えば、溶媒、担体、界面活性剤、不凍剤、増粘剤、緩衝剤、消泡剤、酸化防止剤、保存剤または着色剤をさらに含む、先行する記述のいずれか1つに記載の使用。
8. C5~C13脂肪酸のコリン塩を含む組成物が、少なくとも70%(w/w)、少なくとも80%(w/w)もしくは少なくとも90%(w/w/)、または最大100%(w/w)のC5~C13脂肪酸のコリン塩を含む固体または粉末組成物である、記述1に記載の使用。
9. C5~C13脂肪酸のコリン塩が、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンおよび/またはカプリン酸コリンであり、好ましくはC5~C13脂肪酸のコリン塩が、ペラルゴン酸コリンである、先行する記述のいずれか1つに記載の使用。
10. 植物または植物部分で菌感染を予防または防除するための方法であって、方法が、C5~C13脂肪酸のコリン塩を含む組成物を、植物、植物部分、または植物の成長部位に施用することを含む、方法。
11. 菌感染が、コレトトリクム属、ボトリチス属、アルタナリア属、フザリウム属、リゾクトニア属、スクレロティニア属、ベルチシリウム属、フィチウム属、フィトフトラ属、プクキニア属、ウドンコカビ目(うどんこ病菌を含む)およびツユカビ科(べと病菌を含む)、チエラビオプシス属、Magnaporthe grisea、アルミラリア属種、ウスチラゴ属種、Phakospora pachyrhizi、Guignardia bidwellii、Blumeria graminis、ミコスフェレラ属種、ベンツリア属種、およびモニリニア属種からなる群から選択される1種または複数の病原性菌類によるものであり、好ましくは、菌類が、Colletotrichum coccodes、Botrytis cinerea、Alternaria solaniまたはFusarium graminearumである、記述10に記載の方法。
12. 植物または植物部分が、農業または園芸作物である、記述10または11に記載の方法。
13. 方法が、0.01%(w/v)~5%(w/v)のC5~C13脂肪酸のコリン塩を含む組成物を、植物、植物部分または植物の成長部位に施用することを含む、記述10~12のいずれか1つに記載の方法。
14. C5~C13脂肪酸のコリン塩を含む組成物が、植物、植物部分または植物の成長部位に噴霧される、記述10~13のいずれか1つに記載の方法。
15. C5~C13脂肪酸のコリン塩を含む組成物が、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンおよび/またはカプリン酸コリンを含む組成物であり、好ましくは、C5~C13脂肪酸のコリン塩を含む組成物が、ペラルゴン酸コリンを含む組成物である、記述10~14のいずれか1つに記載の方法。
16. C5~C13脂肪酸のコリン塩を含む組成物、好ましくは、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンおよび/またはカプリン酸コリンを含む組成物、より好ましくは、ペラルゴン酸コリンを含む組成物を製造するための方法であって、前記方法が、
(i)任意選択で、C5~C13脂肪酸、好ましくは、カプリル酸、ペラルゴン酸および/またはカプリン酸、より好ましくはペラルゴン酸を水と混合し、それによって、C5~C13脂肪酸の溶液、好ましくは、カプリル酸、ペラルゴン酸および/またはカプリン酸の溶液、より好ましくはペラルゴン酸の溶液を得るステップ;ならびに
(ii)C5~C13脂肪酸、好ましくは、カプリル酸、ペラルゴン酸および/またはカプリン酸、より好ましくはペラルゴン酸、または、C5~C13脂肪酸、好ましくは、カプリル酸、ペラルゴン酸および/またはカプリン酸、より好ましくはペラルゴン酸の溶液を、水酸化コリンと混合するステップ
を含む、方法。
17. C5~C13脂肪酸、好ましくは、カプリル酸、ペラルゴン酸および/またはカプリン酸、より好ましくはペラルゴン酸、ならびに水酸化コリンを、2:1~1:2の比、好ましくは1.5:1~1:1.5の比、より好ましくは等モル比で混合する、記述16に記載の方法。
18. 方法が、組成物を少なくとも1種の補助剤、溶媒、担体、界面活性剤または増量剤と混合することをさらに含む、記述16または17に記載の方法。
19. 方法が、C5~C13脂肪酸のコリン塩を含む組成物、好ましくは、カプリル酸コリン、ペラルゴン酸コリンおよび/またはカプリン酸コリンを含む組成物、より好ましくはペラルゴン酸コリンを含む組成物を、施用前に希釈または溶解するステップを含む、記述16~18のいずれか1つに記載の方法。
20. 組成物を、1:2~1:1000の比、好ましくは、1:5~1:250の比で希釈する、記述17に記載の方法。
【0061】
本発明をその特定の実施形態と関連して記載しているが、多くの代替、変更および変形が、前述の記載に照らして当業者に明らかとなることが明白である。したがって、以下の通りのすべてのそのような代替、変更、および変形は添付の特許請求の範囲の趣旨および広い範囲に包含されることが意図される。
【0062】
本明細書に開示の本発明の態様および実施形態は、以下の非限定例によってさらに支持される。
【0063】
実施例
実施例1:レタス植物に対するペラルゴン酸コリンを含む組成物の植物毒性の研究
目的。この実験の目的は、レタス植物に対するペラルゴン酸(PLAとも呼ばれる)および水酸化コリンの混合物の植物毒性を評価して、ペラルゴン酸に水酸化コリンを混合することによってその植物毒性をどの程度中和できるかを評価することであった。さらに、特定の目的は、作物に対するいかなる植物毒性も誘発しない殺菌剤としてのこのペラルゴン酸コリン塩の潜在的効力を評価することであった。
【0064】
手順。中和反応を、滴定曲線(
図1)に基づいて、ペラルゴン酸(>97%)および水酸化コリン(45%)を用いて作製した。滴定曲線に基づき、ペラルゴン酸コリンのストック溶液(29.1%PLA(>97%)および40.4%水酸化コリン(45%))を、ペラルゴン酸14.55mLを蒸留水15.25mLと混合し、その後水酸化コリン20.2mLを添加することによって作製した。ペラルゴン酸コリンストック溶液を蒸留水中で希釈して、約2.5%ペラルゴン酸を含む希釈ペラルゴン酸コリン組成物を得た。水スプレー溶液中のペラルゴン酸コリンの総濃度は、a.i. 37.08g/L(a.i.=活性成分)であった。
【0065】
次のステップは、レタス植物に対するペラルゴン酸コリンを含む組成物の植物毒性を評価することであった。試験濃度を表1に示す。対照として、植物を水で処理した。植物をまた、市販製品のBeloukha(Belchim Crop Protection)ベースの希釈ペラルゴン酸溶液を含む希釈ペラルゴン酸組成物で処理した。
【0066】
【0067】
レタス植物を、小型の手動噴霧器を用いて、それぞれの組成物が流れ落ちるまで噴霧し、20℃でインキュベートした。各組成物を6種の植物からなる構成で試験した。噴霧後のレタス植物を視覚評価した。植物毒性の作用(ネクローシスまたは変色)を、0~100%の尺度(0%植物毒性なし、および100%完全に植物毒性)でスコア付けした。
【0068】
結果。ペラルゴン酸(>97%)およびBeloukha由来の溶液で処理したレタス植物では、1日後に既に植物毒性が観察された(表2)。本発明の実施形態による組成物で処理した植物について、7日後に植物毒性はほぼ観察されなかった。したがって、ペラルゴン酸コリンを含む組成物は、植物に対して安全である。これを殺菌剤としてさらに試験した。
【0069】
【0070】
実施例2:ペラルゴン酸コリンを含む組成物の殺菌剤としての本発明の実施形態による使用の評価
目的。この実験の目的は、in vitroにおけるいくつかの選択した病原体に対するペラルゴン酸コリンを含む組成物の効力を評価することであった。
【0071】
手順。この研究に使用した株(表3)を、ポテトデキストロース寒天(PDA)上、25℃で維持し、再生させた。
【0072】
【0073】
最初の構成では、試験組成物をPDA(約20mL/ペトリ皿)に直接添加した(表4)。2週齢の培養物からの寒天プラグ(直径8mm)を、PDAプレートの中心に置いた。各試験を、4連で実施した。次いで、ペトリ皿を25℃でインキュベートした。6日間インキュベートした後、コロニーの直径を2つの直交する方向で測定した。阻害パーセンテージを各試験組成物について計算し、未処理PDAと比較した。
【0074】
【0075】
結果。結果は、6日間インキュベートした後、Beloukhaおよびペラルゴン酸コリンを含むすべての組成物において対照プレートと比較して、菌糸体増殖に対するほぼ常に100%の阻害が観察でき(表5)、in vitroにおけるこれらの病原体に対する試験濃度でのペラルゴン酸およびペラルゴン酸コリンの良好な効力が示された。したがって、ペラルゴン酸コリンは、試験濃度における良好な殺菌特性を示す。
【0076】
【0077】
実施例3:ペラルゴン酸コリンを含む組成物の殺菌剤としての本発明の実施形態による使用の評価(in vivo)
目的。この実験の目的は、in vivoにおけるペラルゴン酸コリンを含む組成物の効力を評価することであった。
【0078】
手順。うどんこ病菌(Podosphaera xanthii)の単葉試験。ズッキーニ植物を、旧葉のうどんこ病菌感染に選択した。うどんこ病菌の感染の初期兆候を示す葉(葉N-1)に加えて、感染のない2枚の葉(葉NおよびN+1)を選択した。
【0079】
葉Nに水中0.8%ペラルゴン酸コリンの溶液を、流れ落ちる直前まで噴霧した。葉(N+1)および(N-1)は未処理のままとした。菌感染を処理の8日後に評価した。
【0080】
結果。8日後、両方の未処理葉は重度に感染し、葉(N-1)および葉(N+1)の表面のそれぞれ約100%および約80%がうどんこ病菌で覆われた。これとは対照的に、0.8%ペラルゴン酸コリンで処理した葉Nは表面の5%未満がうどんこ病菌で覆われた。
【0081】
水中0.8%ペラルゴン酸コリンによる処理は、ズッキーニにおけるうどんこ病菌を成功裡に防除した。
【0082】
実施例4:ペラルゴン酸コリンを含む組成物の殺菌剤としての本発明の実施形態による使用の評価(ジャガイモリーフディスク)
目的。この実験の目的は、リーフディスク実験における人工接種によって、ジャガイモのPhytophthora infestansに対するペラルゴン酸コリンを含む組成物の効力を評価することであった。
【0083】
手順。Phytophthora infestans接種源を、「ビンチェ(Bintje)」の小葉を素寒天ペトリ皿(寒天10g/L)の逆さにした蓋上に置いて湿チャンバーをシミュレートすることによって調製した。コロニープレート(ライムギ寒天上、18℃で維持)からチップで取った菌糸体を添加した2滴の20μLの滅菌デミ水を置くことによって、各小葉をPhytophthora infestansに感染させた。ペトリ皿を、暗所、18℃で終夜、次いで、同じ温度条件、16時間光周期(16時間明-8時間暗)で5~7日間インキュベートした。
【0084】
インキュベーション期間後、胞子嚢を10mLの滅菌デミ水中、50ml-falconに収集した。葉をfalcon側に置き、デミ水をピペットで葉に移した。排水をfalconチューブに収集し、falconを穏やかに振とうして、胞子嚢を放出させた。胞子嚢濃度を、血球計数器を使用して計数し、1×105個の胞子/mLに調節した。効力研究のための接種前に、懸濁液を4℃で2時間インキュベートして、形成および遊走子放出を可能にした。
【0085】
効力研究のため、ビンチェの小葉を、それぞれの処理(表6に示す)に1分間浸漬し、静置して乾燥した。乾燥後、小葉を逆さにした素寒天ペトリ皿(素寒天10g/L)の蓋に置いた。先に調製した遊走子懸濁液の20μL液滴を、各小葉の中心に接種した。次いで、これらのペトリ皿を、人工気候室中18℃で、最初の16時間を暗、次いで16時間の光期間でインキュベートした。各処理を、5つのペトリ皿で試験した。
【0086】
7日間インキュベートした後、病変サイズを2つの直交する方向で測定した。病変表面積(S)を、楕円の式:S=π×L×l×(1/4)(式中、Lおよびlは、それぞれ楕円の長軸および短軸の長さである)を使用して計算した。
【0087】
【0088】
結果。7日間インキュベートした後、すべての処理した小葉について良好な効力が観察できた(表7)。ペラルゴン酸コリンで処理した小葉は、Dithane処理した小葉とほぼ同じ効力を示した。さらに、用量応答が、ペラルゴン酸コリン処理した小葉について観察できた。最高濃度のペラルゴン酸コリンで処理した小葉は、葉端および茎でいくらかのわずかな植物毒性の症状を示したが、これは、サンプル採取および取り扱いの間の損傷によって促進されたと考えられる。1L/ヘクタールに対応する濃度でBeloukha処理した葉は、ペラルゴン酸の公知の植物毒性作用と一致して、葉端および茎で植物毒性作用を示した。
【0089】
【0090】
実施例5:ペラルゴン酸コリンを含む組成物の殺菌剤としての本発明の実施形態による使用の評価(ブドウリーフディスク)
目的。この実験の目的は、ブドウリーフディスク実験における人工接種によって、Plasmopara viticolaに対するペラルゴン酸コリンを含む組成物の効力を評価することであった。
【0091】
手順。
ペラルゴン酸コリンのストック溶液(29.1%PLAおよび40.4%水酸化コリン、pH8.82)を、PLA 14.55mLを蒸留水15.25mLと混合し、その後、水酸化コリン20.2mLを添加することによって作製した。ペラルゴン酸コリンストック溶液(42.04%)を希釈して、1mL/Lおよび10mL/Lに等しい最終濃度のペラルゴン酸コリンを含む溶液を作った。2つのペラルゴン酸コリン溶液、陰性対照として水および陽性対照として水酸化銅(2g/L)を、この試験のために使用した。各対象毎に4つのペトリプレートを調製し、各プレートは、5つのブドウリーフディスクを含有した(以下の表8を参照されたい)。
【0092】
【0093】
リーフディスク調製:リーフディスク(直径19mm)を、若芽を使用してブドウの切り枝(品種Pinot Nero Entav 115)から調製した。5つのリーフディスクを各ペトリプレート中のオートクレーブ紙(4層)上に置き、紙は、各プレートに8.5mLの滅菌水を添加することによって事前に湿らせた。背軸面を上向きにしてリーフディスクを紙上に置いた。
【0094】
試験生成物の施用および病原体接種:リーフディスクを試験生成物で午前11.30に処理(すなわち、予防施用)し、葉を乾燥させた。生成物を小型の手動噴霧器を用いて噴霧し、各プレートに5回の噴霧を施用した。同日の16.30に、P.viticola胞子の懸濁液を、2×105個の胞子/mLの最終濃度でリーフディスクに施用した(試験生成物施用の5時間後)。接種したプレートを暗所、25℃で終夜インキュベートした。翌日、リーフディスクを層流下で乾燥し、次いで、25℃に戻した。病害評価を人工接種の7日後に行った。
【0095】
結果:病害の発病率の評価を人工接種の7日後に実施し、対照リーフディスク面積(水処理)の約58%がP.viticolaに罹ったことが示された。銅による陽性対照処理は、リーフディスクで病害症状を示さなかった。対照処理により、実験が信頼できるものであり、人工接種が適切に行われたことが確認された。ペラルゴン酸コリン10mL/Lで処理したディスクは、症状を示さなかった(発病率0%)一方、ペラルゴン酸コリン1mL/Lは、5.3%に等しい非常に低いレベルの胞子形成を示した。したがって、10mL/Lおよび1mL/Lで施用したペラルゴン酸コリンは、効力に関して参照水酸化銅(Coprantol Hi Bio)に匹敵する結果を示した。
【0096】
2回目および3回目の試験を繰り返し(データ示さず)、結果を確認した。TMAPは、参照銅に匹敵するP.viticolaに対する効力を示した。
【0097】
実施例6:ジャガイモにおけるPhytophthora infestansに対する、ペラルゴン酸コリンを含む実施形態による組成物の殺菌剤としての効力の評価
研究の目標:この試験の目標は、Phytophthora infestansに対する本発明を例示する組成物(「BPA056」と呼ばれる)の効力を評価することであった。この目標を達成するために、いくつかの濃度の組成物を試験した。試験を、組成物および胞子の混合物をジャガイモのリーフディスクに接種し、病害発病率に対する効力を評価することによって行った。
【0098】
研究の発端:疫病に対する新しい解決法のスクリーニングおよび開発。
材料および方法
Phytophthora infestans株18BE11をこの試験で使用した。この株は、ベルギー由来であり、2018年に感染した葉から単離され、Wageningen Instituteによって遺伝子型がEU36_A2と同定された。接種源をライムギ寒天培地で維持し、ジャガイモ葉、品種ビンチェを感染させることによって再生して、新しい接種源を生成した。葉の新しい病変で収集した胞子をこの研究で使用した。
【0099】
栽培品種ビンチェのジャガイモ植物を天然条件下、温室で3~4週間成長させた。同じ生理学段階由来の葉をこの試験に使用した。
【0100】
組成物および濃度を以下の表9に示す。Fluazinamは、この研究における参照生成物である。
【0101】
【0102】
研究の実施:
この研究は、ジャガイモ葉のディスクで行った。すべての処理を各々5つのリーフディスクで試験した。
【0103】
胞子溶液を、脱塩水中、感染した葉(接種の約5~7日後)から新鮮な胞子嚢を収集することによって調製した。胞子濃度を、125000個の胞子/mLに調節し、4℃で2時間インキュベートして、遊走子の分化および放出を誘発した。
【0104】
生成物溶液を、脱塩水中2×濃度の溶液を作製することによって調製した。
胞子溶液を、生成物溶液と混合した(1:1 v:v)。
【0105】
各リーフディスクに3×10μLの胞子-生成物混合物を接種した。
リーフディスクを暗所、18℃、100% RHで24時間、次いで、16時間の光周期レジメンでインキュベートした。
【0106】
試験は1回行った。
評価
接種の6日後、病害発病率のパーセンテージ(胞子形成しているフィトフトラで覆われた面積)を各リーフディスクで視覚評価した。
【0107】
結果
病害発病率の結果(パーセンテージ)を以下の表10に示す。
【0108】
病害発病率は、未処理対照の5つのリーフディスクで100%に達した。
参照であるfluazinamは、100ppmで100%の効力を示した。
【0109】
BCP056は、最高用量である4000ppmで最大の効力レベルに達し、次いで、400ppm、40ppmおよび4ppmの使用率で80%の効力に低下した。後の3つの希釈(400ppm、40ppmおよび4ppm)間で用量効果は観察されなかった。
【0110】
この研究における4ppmでの効力のレベルは、非常に満足のいくものであった。
【0111】
【0112】
結論
本発明を例示する組成物(すなわち、BPA056)は、リーフディスクでのPhytophthora infestansの防除について、4ppmの濃度で興味深い効力レベルを示した。
【0113】
実施例7:in vitroにおける病原体に対する本発明の実施形態によるC8-、C9-およびC10-脂肪酸のコリン塩を含む組成物の効力の評価
目的:この実験の目的は、in vitroにおけるいくつかの選択した病原体に対するC8-、C9-およびC10-脂肪酸由来の様々なコリン塩の効力を評価することであった。試験したコリン塩は、オクタン酸コリン(TMAO)、ペラルゴン酸コリン(TMAP)およびデカン酸コリン(TMAD)であった。
【0114】
手順
この研究に使用した株を、ポテトデキストロース寒天(PDA)上、25℃で維持し、再生させた。
【0115】
最初に、ある量の試験生成物を、特定体積のPDA(約20mL/ペトリ皿)に直接添加した(表11)。1週齢の培養物からの寒天プラグ(直径10mm)を、PDAプレートの中心に置いた。各対象を、4連で実施した。次いで、ペトリ皿を暗所、25℃でインキュベートした。3および6日間インキュベートした後、コロニーの直径を2つの直交する方向で測定した。阻害パーセンテージを各生成物/濃度について計算し、未処理と比較した。
【0116】
【0117】
結果
3日間インキュベートした後、結果は、最高濃度である0.42%(v/v)のすべてのコリン塩において、対照プレートと比較して、すべての病原体について菌糸体増殖に対する100%の阻害が示され(表12)、in vitroにおけるこれらの病原体に対するコリン塩(C8-C9-C10)の良好な効力が示された。さらに、異なるコリン塩間で差異は観察されず、結果は、試験濃度間で常に同等であった。
【0118】
【0119】
結論として、すべての試験したコリン塩、すなわち、オクタン酸コリン(TMAO)、ペラルゴン酸コリン(TMAP)およびデカン酸コリン(TMAD)は、試験使用率で良好な殺菌特性を示した。C8-、C9-およびC10-脂肪酸コリン塩は、C8-、C9-およびC10-脂肪酸、例えば、カプリル酸、ペラルゴン酸およびカプリン酸の除草剤としての使用が一般に公知であるにも関わらず、非常に低下した植物毒性作用でまたはさらには植物毒性作用なしに、植物への殺菌剤として使用することができる(実施例8を参照されたい)。
【0120】
実施例8:リンゴのうどんこ病菌に対する、ペラルゴン酸コリンを含む本発明の実施形態による組成物の効力を試験するための、リンゴ木での研究
目的:リンゴのうどんこ病菌に対するTMAPの効力を研究する。
【0121】
植物材料:2017年3月の第3週の間に、2年齢の60本の枝分かれしたリンゴの木(台木M9 - クローンGolden B)を、現地の種苗場から鉢(鉢:12リットル)に植え替えた。60個の鉢植えのリンゴ植物をS.Michele all’Adige(Trento)の温室外で維持した。植物は、3つのブロックに分けて維持した。各ブロックは、2列に整列した20個の植物で構成された(スキーム1を参照されたい)。植物は、気象条件に応じて週に1または2回、点滴灌漑システムにより水やりした。殺虫処理を、すべての実験植物に対して均一に施用した。3つの対象のうち2つは、前もって予定した噴霧スキームである化学処理、TMAP単独、未処理に従ってうどんこ病菌に対して処理した。1つの対象は、参照として未処理のままとした。「化学」対象については、様々な活性成分を単独でまたは組み合わせて使用した(表13)。
【0122】
【0123】
処理は同時に実施し、噴霧のタイミングは、週毎に気象条件に従って行った。施用は、加圧式手動噴霧器を用いて行った(対象当たり水体積1.5~2L)。
【0124】
処理/評価は、以下の表14に報告する通りの季節の間に行った。
【0125】
【0126】
【0127】
評価
うどんこ病菌:各植物当たり5本の若枝を無作為に選択し、評価のためにラベルを付けた。うどんこ病菌の評価は85日目に行い、各若枝の10枚の葉を症状の存在について個別に評価し、1つの植物当たり5本のマークを付けた若枝を評価した。各対象について、本発明者らは20本のリンゴの木を有する。
【0128】
統計分析
うどんこ病菌発生率のデータを、Statistica 13.1ソフトウェアを使用して分析した。データがパラメトリック統計を適用するための特徴に関係しなかったため、本発明者らは、非パラメトリック分析を進めた。Kruskal-Wallis試験を使用して、処理間の有意差を実証した(p≦0.05)。
【0129】
結果
うどんこ病菌症状の存在は、5本のマークを付けた枝の各々に存在する10枚の葉で評価した。このように、植物当たり50枚の葉(対象当たり50×20=1000枚の葉)で病害発生率(すなわち、感染した葉のパーセンテージ)を評価した。最良の結果を示した評価は、化学戦略で得られた(発生率8.7%)。TMAP対象は、未処理(発生率55.3%)と比較して、症状の統計的に関連する減少(発生率25.5%)を示した。
【0130】
植物への植物毒性の兆候は観察されなかった。
化学対象の効力は84.2%に達した一方、TMAPは、53.8%の効力に達した(85日目)。
【0131】
結論
リンゴ葉での高レベルのうどんこ病菌病害圧力が得られた。化学戦略によって最良の結果が80%超の効力レベルで得られた。TMAP単独は、およそ54%の中程度レベルの効力を示した。重要なことに、季節の間のTMAPの反復施用は、植物への植物毒性の兆候が観察されなかったため、作物に対して安全であると思われる。リンゴのうどんこ病菌の保護のための季節(4月~6月)を通したTMAPの施用は、適切な保護を保証した。