IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イントラ−セルラー・セラピーズ・インコーポレイテッドの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】有機化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/16 20060101AFI20231102BHJP
   A61K 31/4985 20060101ALI20231102BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231102BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20231102BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20231102BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20231102BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20231102BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20231102BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20231102BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20231102BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20231102BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20231102BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20231102BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20231102BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20231102BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20231102BHJP
   A61P 25/32 20060101ALI20231102BHJP
   A61P 25/36 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
C07D471/16 CSP
A61K31/4985
A61P25/00
A61P1/00
A61P1/04
A61P3/04
A61P15/00
A61P21/00
A61P25/04
A61P25/06
A61P25/14
A61P25/18
A61P25/20
A61P25/22
A61P25/24
A61P25/28
A61P25/32
A61P25/36
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021535939
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 US2019067902
(87)【国際公開番号】W WO2020132474
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-06
(31)【優先権主張番号】62/783,685
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507401225
【氏名又は名称】イントラ-セルラー・セラピーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INTRA-CELLULAR THERAPIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】リ,ポン
(72)【発明者】
【氏名】バノーバー,キンバリー
(72)【発明者】
【氏名】デイビス,ロバート
【審査官】藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0319580(US,A1)
【文献】米国特許第6552017(US,B1)
【文献】米国特許第7183282(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 471/16
A61K 31/4985
A61P 25/00
A61P 1/00
A61P 1/04
A61P 3/04
A61P 15/00
A61P 21/00
A61P 25/04
A61P 25/06
A61P 25/14
A61P 25/18
A61P 25/20
A61P 25/22
A61P 25/24
A61P 25/28
A61P 25/32
A61P 25/36
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離形態または塩形態(例えば、薬学的に許容される塩形態)の、例えば単離または精製された遊離形態または塩形態(例えば、薬学的に許容される塩形態)の、式I:
【化1】
で示される化合物。
【請求項2】
塩の形態の、例えば薬学的に許容される塩の形態の、請求項記載の化合物。
【請求項3】
遊離形態または薬学的に許容される塩形態(例えば、薬学的に許容される塩形態)の請求項1記載の化合物を薬学的に許容される希釈剤または担体と混合して含む医薬組成物。
【請求項4】
中枢神経系障害の治療または予防のための、請求項3記載の医薬組成物。
【請求項5】
該障害が、肥満、不安(全般性不安、社会不安およびパニック症が挙げられる)、うつ病(例えば、難治性うつ病およびMDD)、精神病(認知症に関連する精神病、例えば進行性パーキンソン病における幻覚、または偏執性妄想が挙げられる)、統合失調症、睡眠障害(特に、統合失調症ならびに他の精神および神経疾患に関連する睡眠障害)、性障害、広場恐怖症、社会恐怖症、認知症における激越(例えば、アルツハイマー病における激越)、自閉症および関連自閉症性障害における激越、胃腸障害、例えば胃腸管運動の機能不全、および認知症、例えばアルツハイマー病またはパーキンソン病の認知症;気分障害;物質使用障害および/または物質乱用障害;薬物依存、例えばコカイン依存 および/またはアンフェタミン依存、および薬物依存(例えば、コカインまたはアンフェタミン依存)からの離脱;薬物依存に関連する併存疾患、例えばうつ病、不安および精神病;過食性障害;および強迫性障害(OCD)、強迫性パーソナリティ障害(OCPD)および関連障害、または刺激薬使用障害(SUD)からなる群から選択される、請求項4記載の医薬組成物
【請求項6】
該障害が、セロトニン5-HT2A、セロトニン再取り込みトランスポーター(SERT)、ドパミンD1および/またはD2経路に関連する障害である、請求項4記載の医薬組成物
【請求項7】
該中枢神経系障害が、(1)うつ病に罹患している患者における精神病、例えば統合失調症;(2)精神病、例えば統合失調症に罹患している患者におけるうつ病;(3)精神病、例えば統合失調症、またはパーキンソン病に関連している気分障害;(4)精神病、例えば統合失調症、またはパーキンソン病に関連している睡眠障害;および(5)物質嗜癖、物質使用障害および/または物質誘発障害から選択される障害である、請求項4記載の医薬組成物
【請求項8】
該中枢神経系障害が、強迫性障害(OCD)、強迫性パーソナリティ障害(OCPD)、全般性不安障害、社会不安障害、パニック障害、広場恐怖症、強迫性ギャンブル障害、強迫性摂食障害、身体醜形障害、心気症、病的身繕い障害、窃盗症、放火症、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、注意欠陥障害(ADD)、衝動制御障害、および関連障害、およびこれらの組み合わせから選択される障害である、請求項4記載の医薬組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年12月21日出願の米国仮出願第62/783,685号(その内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)に基づく優先権およびその利益を主張する国際出願である。
【0002】
発明の分野
本発明は、本明細書に記載の遊離形態、固体形態、医薬的に許容される塩形態および/または実質的に純粋な形態の特定の置換複素環縮合γ-カルボリン、その医薬組成物、および、5-HT2A受容体、ならびにドパミンD1および/またはD2受容体シグナル伝達系に関連する経路に関連する疾患、例えば、不安、精神病、統合失調症、睡眠障害、性障害、社会恐怖症;うつ病および気分障害、例えば精神病もしくはパーキンソン病に関連するもの;精神病、例えば、うつ病に関連する統合失調症;双極性障害;物質使用障害、物質乱用障害、薬物依存、例えばコカインおよびアンフェタミン依存、薬物離脱症状;強迫性障害(OCD)、強迫性パーソナリティ障害(OCPD)、および関連障害;および他の精神医学的および神経学的状態などの疾患または障害の治療における使用方法、ならびに、他の薬剤との組合せに関する。
【背景技術】
【0003】
置換複素環縮合γ-カルボリンは、中枢神経系障害の治療において5-HT2受容体、特に5-HT2A受容体のアゴニストまたはアンタゴニストであることが知られている。これらの化合物は、米国特許第6,548,493号;米国特許第7,238,690号;米国特許第6,552,017号;米国特許第6,713,471号;米国特許第7,183,282号;米国再発行特許発明第39680号、および米国再発行特許発明第39679号に、5-HT2A受容体調節に関連する障害、例えば肥満、不安、うつ病、精神病、統合失調症、睡眠障害、性障害、片頭痛、頭痛に関連する状態、社会恐怖症、胃腸管運動の機能不全のような胃腸障害、および肥満の治療に有用な新規化合物として開示されている。米国特許第8,309,722号および米国特許第7,081,455もまた、置換複素環縮合γ-カルボリンの製造方法、ならびに嗜癖行動および睡眠障害などの中枢神経系障害の制御および予防に有用なセロトニンアゴニストおよびアンタゴニストとしてのこれらγ-カルボリンの使用を開示している。
【0004】
また、米国特許第8,598,119号は、精神病とうつ病性障害の合併症、ならびに精神病またはパーキンソン病の患者における睡眠障害、うつ病性障害および/または気分障害の治療のための特定の置換複素環縮合γ-カルボリンの使用を開示している。精神病および/またはうつ病に関連する障害に加えて、この特許出願は、ドパミンD2受容体に影響を与えることなくまたは最小限の影響を与えることなく5-HT2A受容体に選択的に拮抗し、これにより高い占有率のドパミンD2経路に関連する副作用または慣用の催眠鎮静剤(例えば、ベンゾジアゼピン)に関連する他の経路(例えばGABAA受容体)の副作用(薬物依存、筋緊張低下、脱力、頭痛、かすみ目、回転性めまい、悪心、嘔吐、心窩部苦悶、下痢、関節痛および胸部痛の発症を含むがこれらに限定されない)を伴わずに睡眠障害の治療に有用な、これら化合物の低用量での使用を開示およびクレームしている。米国特許第8,648,077号もまた、これら置換複素環縮合γ-カルボリンのトルエンスルホン酸付加塩結晶の製造方法を開示している。
【0005】
一の特定の縮合複素環γカルボリンである4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8(7H)-イル)-1-(4-フルオロフェニル)-1-ブタノンは、例えば米国特許出願公開第2011/0071080号、米国特許出願公開第2015/0072964号、米国特許出願公開第2015/0080404号および米国特許出願公開第2016/0310503号に開示されている。この化合物は、強力なセロトニン5-HT2A受容体アンタゴニスト、ドパミン受容体D1およびD2モジュレーター、ならびにセロトニントランスポーター(SERT)アンタゴニストである。
【0006】
また、最近の証拠は、この化合物が、ケタミンと同様に、mTOR1シグナル伝達を介したNMDA受容体拮抗作用によって部分的に機能し得ることも示している。ケタミンは、選択的NMDA受容体アンタゴニストである。ケタミンは、一般的な心因性モノアミン(セロトニン、ノルエピネフリンおよびドパミン)と関連しないシステムによって作用し、これはその極めて迅速な効果の主な理由である。ケタミンは、シナプス外グルタミン酸作動性NMDA受容体に直接拮抗し、これはまた、AMPA型グルタミン酸受容体の活性化を間接的にもたらす。下流効果は、脳由来神経栄養因子(BDNF)およびmTORC1キナーゼ経路が関与している。本開示の化合物と関連する化合物はまた、(ケタミンのちょせつ作用とは対照的に)間接的ではあるが、NMDAおよびAMPA受容体シグナル伝達に影響を与える。ケタミンによって生成される効果と同様に、最近の証拠は、これらの化合物が、D1受容体の活性化によりラット内側前頭前皮質錐体ニューロンのNMDA誘発電流およびAMPA誘発電流の両方を増加させること、およびこれがmTORC1シグナル伝達の増加に関連することを示唆する。国際出願PCT/US2018/043100は、特定の置換縮合複素環γ-カルボリンに対するそのような効果、およびそれに関連する有用な治療適応症を開示している。
【0007】
4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8(7H)-イル)-1-(4-フルオロフェニル)-1-ブタノンはまた、統合失調症、認知症に関連する激越、および双極性うつ病の治療のための第III相臨床試験が最近完了したかまたは進行中である。近い将来、統合失調症について規制当局の承認を得ることが期待されている。
【0008】
米国特許出願公開第2017/319580号は、さらなる新規縮合複素環γカルボリンを開示している。これらの新しい化合物は、セロトニン受容体阻害、SERT阻害およびドパミン受容体調節を呈することが分かった。しかしながら、これらの化合物はまた、予想外に、μ-オピエート受容体でも有意な活性を示すことも分かった。
【0009】
以下に示される式Aで示される化合物は、米国特許出願公開第2017/319580号に開示されている。この化合物は、強力なセロトニン5-HT2A受容体アンタゴニストおよびμ-オピエート受容体部分アゴニストまたはバイアスアゴニストである。この化合物はまた、ドパミン受容体、特にドパミンD1受容体と相互作用するが、SERT拮抗作用は弱いものでしかない。
【化1】
【0010】
式Aの化合物は、そのD1受容体活性を介して、mTOR経路を介したNMDA媒介シグナル伝達およびAMPA媒介シグナル伝達も増強し得るとも考えられる。したがって、式Aの化合物は、中枢神経系障害の治療または予防に有用である。
【発明の概要】
【0011】
簡単な概要
第1の態様では、本開示は、遊離形態または塩形態(例えば、薬学的に許容される塩形態)、例えば単離または精製された遊離形態または塩形態(例えば、薬学的に許容される塩形態)の、式I:
【化2】
で示される化合物(化合物I)に関する。
【0012】
本開示は、下記のものを包含する、遊離形態または塩形態(例えば、薬学的に許容される塩形態)、例えば単離または精製された遊離形態または塩形態(例えば、薬学的に許容される塩形態)の、式Iの化合物のさらなる例示的実施態様を提供する:
【0013】
1.1 該化合物が遊離形態(遊離塩基形態)である、化合物I;
【0014】
1.2 該化合物が塩形態である、化合物I;
【0015】
1.3 該化合物が薬学的に許容される塩形態である、化合物I;
【0016】
1.4 化合物が、酸付加塩形態、例えば、塩酸塩形態またはトルエンスルホン酸塩形態である、化合物I;
【0017】
1.5 実質的に純粋なジアステレオマー形態の(すなわち、エナンチオマーを含む他のジアステレオマーを実質的に含まない)、化合物I、または化合物1.1~1.4のいずれか;
【0018】
1.6 ジアステレオマー過剰率が70%を超え、好ましくは80%を超え、より好ましくは90%を超え、および最も好ましくは95%を超える、化合物I、または化合物1.1~1.4のいずれか;
【0019】
1.7 固体形態、例えば結晶形態である、化合物I、または化合物1.1~1.6のいずれか;
【0020】
1.8 単離または精製された形態(例えば、少なくとも90%純粋な形態、または少なくとも95%純粋な形態または少なくとも98%純粋な形態または少なくとも99%純粋な形態)である、化合物I、または化合物1.1~1.6のいずれか;
【0021】
式Aの化合物は、非常に強力なセロトニン受容体アンタゴニスト(Ki≦10nM)であり、強力なD1受容体モジュレーター(Ki≦50nM)であるが、弱いD2受容体モジュレーター(Ki≦160nM)である。式Aの化合物はまた、強力なμオピエート受容体リガンド(Ki≦11nM)でもあるが、SERTでは不活性である(Ki≦600nM)。
【0022】
この度、驚くべきことに、式Aの化合物のエナンチオマーである式Iの化合物は、SERT活性を持たず、適度に強いD1受容体結合およびセロトニン受容体阻害を有し、μ受容体活性は弱いものでしかないことが分かった。大局的にこれを見ると、式Iの化合物と式Aの化合物の結合親和性は以下のように定性的に比較され得る:
式A: 5-HT2A ~μ>D1 > D2 >> SERT
式I: D1 > 5-HT2A > D2 > μ >>> SERT
したがって、式Aの化合物は、5-HT2Aとμに対して同様の効力を持つが、D1結合およびD2結合が著しく弱く、SERT結合はほとんどない。式Aの化合物とは対照的に、式Iの化合物は、D1受容体で最も活性が高く、次いで5-HT2A受容体で活性が高く、D2親和性が弱く、μ受容体活性が最小であり、SERT活性はない。薬理学的に活性な化合物のエナンチオマーが、一方のエナンチオマーが活性であり、他方のエナンチオマーが非活性というように、異なるまたは反対の活性を持つことはよく知られているが、式Iの化合物が、そのエナンチオマーである式Aの化合物と同様の活性をD1およびD2受容体のみで有するが、5-HT2A、SERTおよびμ-オピエート受容体では非常に異なる相対活性を有することは予想外であり、予測不可能である。さらに、式Iの化合物の薬理学的プロファイルもまた、4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8(7H)-イル)-1-(4-フルオロフェニル)-1-ブタノンとは全く予想外に異なっている。
【0023】
この予想外の活性プロファイルは、このD1および5-HT2A受容体での薬理活性が相対的に高く、D2受容体活性が弱いことに基づいて、疾患の治療のための新たな道を提供する。
【0024】
第2の態様では、本開示は、例えば薬学的に許容される希釈剤または担体と混合して、式Iの化合物または1.1~1.8のうち1つの化合物を含む、医薬組成物(医薬組成物I)を提供する。特定の実施態様では、式Iの化合物または1.1~1.8のいずれかは薬学的に許容される塩形態である。
【0025】
さらなる実施態様では、本開示の医薬組成物は、持続放出性または遅延放出性製剤(医薬組成物1-A)、例えば、デポ製剤のためである。いくつかの実施態様では、式Iの化合物または1.1~1.8のいずれかは、好ましくは遊離形態または薬学的に許容される塩形態で、薬学的に許容される希釈剤または担体と混合して、化合物の持続放出または遅延放出を提供する注射用デポの剤形で、提供される。
【0026】
特定の実施態様では、医薬組成物1-Aは、結晶形態であってもよい、遊離塩基または薬学的に許容される塩形態の、化合物Iまたは1.1~1.8のいずれか1つの化合物を含み、該化合物は、マイクロ粒子径またはナノ粒子径、例えば、0.5~100ミクロン、例えば、5~30ミクロン、10~20ミクロン、20~100ミクロン、20~50ミクロンまたは30~50ミクロンの従量式粒子径(例えば、直径またはDv50)を有する粒子または結晶に粉砕されているか結晶化されている。このような粒子または結晶は、適切な薬学的に許容される希釈剤または担体、例えば水と組み合わせて、注射用デポ製剤を形成することができる。例えば、デポ製剤は、4~6週間の治療に適した用量の薬物を用いて筋肉注射または皮下注射に製剤化され得る。いくつかの実施態様では、粒子または結晶は、表面積が0.1~5m2/g、例えば、0.5~3.3m2/g、または0.8~1.2m2/gである。
【0027】
別の実施態様では、本開示は、式I以降の化合物がポリマーマトリックス中にある医薬組成物Iである、医薬組成物I-Bを提供する。一の実施態様では、本開示の化合物は、ポリマーマトリックス内に分散または溶解されている。さらなる実施態様では、ポリマーマトリックスは、デポ製剤に用いられる標準的なポリマー、例えば、ヒドロキシ脂肪酸のポリエステルまたはその誘導体から選択されるポリマー、またはアルキルα-シアノアクリレートのポリマー、ポリアルキレンオキサレート、ポリオルトエステル、ポリカーボネート、ポリオルト-カーボネート、ポリアミノ酸、ヒアルロン酸エステル、およびこれらの混合物を含む。さらなる実施態様では、ポリマーは、ポリラクチド、ポリd,l-ラクチド、ポリグリコリド、PLGA50:50ポリマー、PLGA85:15ポリマーおよびPLGA90:10ポリマーからなる群より選択される。別の実施態様では、ポリマーは、ポリ(グリコール酸)、ポリ-D,L-乳酸、ポリ-L-乳酸、前記の共重合体、ポリ(脂肪族カルボン酸)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(アセタール)、ポリ(乳酸-カプロラクトン)、ポリオルトエステル、ポリ(グリコール酸-カプロラクトン)、ポリ無水物、および天然ポリマー、例えばアルブミン、カゼイン、およびワックス、例えばグリセロールモノおよびジステアレートなどから選択される。好ましい実施態様では、ポリマーマトリックスは、ポリ(d,l-ラクチド-コ-グリコリド)を含む。
【0028】
医薬組成物I-Bは、持続放出または遅延放出に特に有用であり、ここで、本開示の化合物は、ポリマーマトリックスの分解時に放出される。これらの組成物は、最大180日間、例えば約14日間~約30日間~約180日間にわたる本開示の化合物の制御放出および/または持続放出のために(例えばデポ組成物として)製剤化され得る。例えば、ポリマーマトリックスは、約30日間、約60日間または約90日間にわたって本開示の化合物を分解および放出し得る。別の例では、ポリマーマトリックスは、約120日間または約180日間にわたって本開示の化合物を分解および放出し得る。
【0029】
さらに別の実施態様では、医薬組成物IまたはI-AまたはI-Bは、例えば滅菌水溶液として、注射による投与のために製剤化され得る。
【0030】
別の実施態様では、本開示は、米国特許出願公開第2001/0036472号および米国特許出願公開第2009/0202631号(これら各出願の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)に記載されている浸透圧放出制御経口送達システム(OROS)において上記式Iの化合物以降を含む医薬組成物(医薬組成物I-C)を提供する。したがって、一の実施態様では、本開示は、(a)薬学的に許容される希釈剤または担体と混合していてもよい、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式I以降のいずれかの化合物を含有するゼラチンカプセル;(b)カプセルから外側へ向かう順序で、(i)バリア層、(ii)膨張層および(iii)半透過層を含む、ゼラチンカプセル上に重ねられた多層壁;および(c)および該壁を通って形成されているかまたは形成可能なオリフィスを含む、医薬組成物またはデバイス(医薬組成物P.1)を提供する。
【0031】
別の実施態様では、本発明は、薬学的に許容される希釈剤または担体と混合していてもよい、液体、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の式I以降の化合物を含有するゼラチンカプセルを含む医薬組成物であって、該ゼラチンカプセルが、ゼラチンカプセルの外表面に接触しているバリア層、バリア層に接触している膨張層、膨張層を包含する半透過層、および壁に形成されているかまたは形成可能な出口オリフィスを含む複合壁によって囲まれている、医薬組成物(医薬組成物P.2)を提供する。
【0032】
さらに別の実施態様では、本発明は、液体、薬学的に許容される希釈剤または担体と混合していてもよい、液体、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の式I以降の化合物を含有するゼラチンカプセルを含む医薬組成物であって、該ゼラチンカプセルが、ゼラチンカプセルの外表面に接触しているバリア層、バリア層に接触している膨張層、膨張層を包含する半透過層、および壁に形成されているかまたは形成可能な出口オリフィスを含む複合壁によって囲まれており、該バリア層が膨張層と出口オリフィスでの環境との間にシールを形成する、医薬組成物(医薬組成物P.3)を提供する。
【0033】
さらに別の実施態様では、本発明は、液体、薬学的に許容される希釈剤または担体と混合していてもよい、液体、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の式I以降の化合物を含有するゼラチンカプセルを含む医薬組成物であって、該ゼラチンカプセルが、ゼラチンカプセルの外表面に接触しているバリア層、バリア層の一部に接触している膨張層、少なくとも膨張層を包含する半透過層、およびゼラチンカプセルの外表面から使用環境まで延びている投与剤形に形成されているかまたは形成可能な出口オリフィスによって囲まれている、医薬組成物(医薬組成物P.4)を提供する。膨張層は、1つ以上の個別のセクション、例えばゼラチンカプセルの対向する側部または端部に位置する2つのセクションに形成され得る。
【0034】
特定の実施態様では、浸透圧放出制御経口送達システム(すなわち、組成物P.1~P.4)中の本開示の化合物は液体製剤中にあり、ここで、該製剤は、純粋な液体活性剤、または、溶液、懸濁液、エマルションもしくは自己乳化組成物中の液体活性剤、または同類のものであり得る。
【0035】
ゼラチンカプセル、バリア層、膨張層、半透過層;およびオリフィスの特徴を含む浸透圧放出制御経口送達システム組成物の更なる情報は、米国特許出願公開第2001/0036472号(その内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)に見ることができる。
【0036】
本開示の式I以降の化合物または医薬組成物のための他の浸透圧放出制御経口送達システムは、米国特許出願公開第2009/0202631号(その内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)に見ることができる。したがって、別の実施態様では、本発明は、(a)第1層および第2層を含む2つ以上の層であって、該第1層が、薬学的に許容される希釈剤または担体と混合していてもよい、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の式I以降の化合物を含み、該第2層がポリマーを含む、2つ以上の層;(b)この2つ以上の層を囲む外壁;および(c)該外壁におけるオリフィスを含む、組成物またはデバイス(医薬組成物P.5)を提供する。
【0037】
医薬組成物P.5は、好ましくは、三層コアを囲む半透膜を利用し;これらの実施態様では、第1層は、第1薬物層と称され、少量の薬物(例えば、式I以降の化合物)および塩などの浸透圧調整剤を含有し、第2薬物層と称される中間層は、多量の薬物および賦形剤を含有し、塩を含有せず、プッシュ層と称される第3層は、浸透圧調整剤を含有し、薬物を含有しない(医薬組成物P.6)。少なくとも1つのオリフィスは、カプセル型錠剤の第1薬物層端部の膜を通して穿孔される。
【0038】
医薬組成物P.5またはP.6は、区画を画定する膜であって、該膜が内部保護サブコート、そこに形成されているかまたは形成可能な少なくとも1つの出口オリフィスおよび半透過性の膜の少なくとも一部を囲む膜;出口オリフィス遠く離れた区画内に位置する膨張層であって、膜の半透過性部分と流体連結している膨張層;出口オリフィスと隣接して位置する第1薬物層;および第1薬物層と膨張層との間にある区画内に位置する第2薬物層を含み得、これらの薬物層が遊離またはその薬学的に許容される塩の本発明の化合物を含むものである(医薬組成物P.7)。第1薬物層および第2薬物層の相対粘度に応じて、異なる放出プロファイルが得られる。各層の最適な粘度を同定するのは必須である。本発明において、粘度は、塩、塩化ナトリウムの添加によって調節される。コアからの送達プロファイルは、各薬物層の重量、処方、厚さに依存する。
【0039】
特定の実施態様では、本発明は、第1薬物層が塩を含み、第2薬物層が塩を含まない、医薬組成物P.7を提供する。医薬組成物P.5~P.7は、所望により、膜と薬物層との間に流動促進層を含み得る。
【0040】
医薬組成物P.1~P.7は、一般的に、浸透圧放出制御経口送達システム組成物と称される。
【0041】
第3の態様では、本発明は、中枢神経系障害の治療または予防方法であって、それを必要とする患者に、式I以降の化合物、または医薬組成物I、I-A、I-B、I-C、もしくはP.1~P.7のいずれかを投与することを含む方法(方法1)を提供する。特定の実施態様では、方法1は、
1.1 遊離形態の、化合物I、または1.1~1.8のいずれか;
1.2 薬学的に許容される塩形態の、化合物I、または1.1~1.8のいずれか;
1.3 酸付加塩形態の、化合物I、または1.1~1.8のいずれか;
1.4 医薬組成物I;
1.5 医薬組成物I-A、I-BまたはI-Cのいずれか;
1.6 医薬組成物P.1~P.7のいずれか;または
1.7 上記の浸透圧放出制御経口送達システム組成物のいずれか
を投与することを含む。
【0042】
第3の態様のさらなる実施態様では、本開示は、方法1、または方法1.1~1.7のいずれかを提供し、ここで、該方法は以下のようにさらに記載される:
【0043】
1.8 中枢神経系障害が、肥満、不安(全般性不安、社会不安、およびパニック症が挙げられる)、うつ病(例えば、難治性うつ病およびMDD)、精神病(認知症に関連する精神病、例えば進行性パーキンソン病における幻覚、または偏執性妄想が挙げられる)、統合失調症、睡眠障害(特に、統合失調症ならびに他の精神および神経疾患に関連する睡眠障害)、性障害、広場恐怖症、社会恐怖症、認知症における激越(例えば、アルツハイマー病における激越)、自閉症および関連自閉症性障害における激越、胃腸障害、例えば胃腸管運動の機能不全、および認知症、例えばアルツハイマー病またはパーキンソン病の認知症;気分障害;物質使用障害および/または物質乱用障害;薬物依存、例えば、コカイン依存および/またはアンフェタミン依存、および薬物依存(例えば、コカインまたはアンフェタミン依存)からの離脱;薬物依存に関連する併存疾患、例えばうつ病、不安および精神病;過食性障害;および強迫性障害(OCD)、強迫性パーソナリティ障害(OCPD)および関連障害;または刺激薬使用障害(SUD)からなる群から選択される障害である、方法1、または方法1.1~1.7のいずれか;
【0044】
1.9 中枢神経系障害が、米国特許出願公開第2011/071080号(この内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)に同様に記載される、セロトニン5-HT2A、ドパミンD1および/またはD2受容体系経路に関連する障害である、方法1、または方法1.1~1.8のいずれか;
【0045】
1.10 中枢神経系障害が、(1)うつ病に罹患している患者における精神病、例えば統合失調症;(2)精神病、例えば統合失調症に罹患している患者におけるうつ病;(3)精神病および/または薬物依存、例えば統合失調症、またはパーキンソン病に関連している気分障害;(4)精神病、例えば統合失調症、またはパーキンソン病に関連している睡眠障害;および(5)物質嗜癖、物質使用障害および/または物質誘発障害から選択される障害であり、所望により、患者が不安または不安障害の残遺症状に罹患しており;所望により、うつ病が治療抵抗性うつ病である、方法1、または方法1.1~1.9のいずれか;
【0046】
1.11 中枢神経系障害が精神病、例えば統合失調症であり、患者がうつ病に罹患している患者である、方法1、または方法1.1~1.9のいずれか;
【0047】
1.12 患者が、慣用の抗精神病薬、例えばクロルプロマジン、ハロペリドール、ドロペリドール、フルフェナジン、ロキサピン、メソリダジン、モリンドン、ペルフェナジン、ピモジド、プロクロルペラジン、プロマジン、チオリダジン、チオチキセン、トリフロペラジン、ブレクスピペラゾール、カリプラジン、アセナピン、ルラシドン、クロザピン、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドンおよびジプラシドンの副作用に耐えることができない、方法1、または方法1.1~1.11のいずれか;
【0048】
1.13 患者が、慣用の抗精神病薬、例えば、ハロペリドール、ブレクスピペラゾール、カリプラジン、アセナピン、ルラシドン、アリピプラゾール、クロザピン、オランザピン、クエチアピン、リスペリドンおよびジプラシドンの副作用に耐えることができない、方法1、または方法1.1~1.12のいずれか;
【0049】
1.14 障害がうつ病であり、患者が、精神病、例えば統合失調症、またはパーキンソン病に罹患している患者である、方法1、または方法1.1~1.10のいずれか;
【0050】
1.15 障害が睡眠障害であり、患者がうつ病に罹患している、方法1、または方法1.1~1.10のいずれか;
【0051】
1.16 1つ以上の障害が睡眠障害であり、患者が、精神病、例えば統合失調症に罹患している、方法1、または方法1.1~1.10のいずれか;
【0052】
1.17 1つ以上の障害が睡眠障害であり、患者がパーキンソン病に罹患している、方法1、または方法1.1~1.10のいずれか;
【0053】
1.18 1つ以上の障害が睡眠障害であり、患者が、うつ病と、精神病、例えば統合失調症、またはパーキンソン病に罹患している、方法1、または方法1.1~1.10のいずれか;
【0054】
1.19 患者が、場合によっては上記の障害と併せて、薬物依存障害に罹患しており、例えば、患者が、薬物依存、例えば刺激薬依存、例えばコカイン依存またはアンフェタミン依存に罹患しており、場合によっては患者が、併存疾患、例えば不安、うつ病または精神病、または不安もしくは不安障害の残遺症状および/または気分変化(例えば、うつ病)に罹患しており;さらに、場合によっては患者がオピエート過剰摂取に罹患している、方法1、または1.1~1.18のいずれか;
【0055】
1.20 有効量が、1mg~1000mg、例えば2.5mg~50mgであるか、または、長時間作用性製剤については、25mg~1500mg、例えば50mg~500mg、または250mg~1000mg、または250mg~750mg、または75mg~300mgである、上記方法のいずれか;
【0056】
1.21 有効量が、1日につき1mg~100mg、例えば1日につき2.5mg~50mg、または1日につき10~100mgである、上記方法のいずれか;
【0057】
1.22 治療されるべき状態が、例えばドパミン作動薬(例えば、レボドパおよびレボドパ補助剤(カルビドパ、COMT阻害剤、MAO-B阻害剤)、ドパミンアゴニスト、および抗コリン薬、例えばレボドパから選択される薬剤)を投与されている患者における、ジスキネジアである、上記方法のいずれか;
【0058】
1.23 患者がパーキンソン病に罹患している、上記方法のいずれか。
【0059】
1.24 患者がルマテペロンおよび/または式Aの化合物による並行または連続治療を受ける、上記方法のいずれか。
【0060】
物質使用障害および物質誘発障害は、DSMの第5版(精神障害の診断と統計マニュアル、またはDSM-5)により定義される物質関連障害の2つのカテゴリーである。物質使用障害は、個人が結果として問題を経験するにもかかわらず摂取を継続する物質の使用により生じる症状のパターンである。物質誘発障害は、物質の使用により誘発される障害である。物質誘発障害としては、中毒、離脱、物質誘発精神障害、例えば物質誘発精神病、物質誘発双極性および関連障害、物質誘発うつ病性障害、物質誘発不安障害、物質誘発強迫性および関連障害、物質誘発睡眠障害、物質誘発性機能不全、物質誘発せん妄および物質誘発神経認知障害が挙げられる。
【0061】
DSM-5は、物質使用障害を軽度、中等度または重度に分類する基準を含む。本明細書に記載の方法のいくつかの実施態様では、物質使用障害は、軽度物質使用障害、中等度物質使用障害または重度物質使用障害から選択される。いくつかの実施態様では、物質使用障害は、軽度物質使用障害である。いくつかの実施態様では、物質使用障害は、中等度物質使用障害である。いくつかの実施態様では、物質使用障害は、重度物質使用障害である。
【0062】
不安およびうつ病は、物質使用または物質乱用の治療を受けている患者において極めて一般的な併存障害である。
【0063】
本開示の化合物は、併存不安に罹患している患者の抗不安薬での治療の必要性を軽減する抗不安特性を有し得る。したがって、いくつかの実施態様では、本開示は、中枢神経系障害が、例えば不安の症状に罹患している患者または併存障害または残遺障害として不安と診断された患者における、物質嗜癖、物質使用障害および/または物質誘発障害または物質乱用障害であり、該方法が、抗不安薬、例えばベンゾジアゼピンの更なる投与を含まない、方法1、または方法1.1~1.24のいずれかによる方法を提供する。ベンゾジアゼピンは、GABA調節化合物であり、これは、下記方法3.1および3.2を参照して説明されるものを含む。
【0064】
第3の態様の別の実施態様では、本開示は、方法1、または方法1.1~1.24のいずれかを提供し、ここで、該方法は以下のようにさらに記載される:
【0065】
1.25 中枢神経系障害が、強迫性障害(OCD)、強迫性パーソナリティ障害(OCPD)、全般性不安障害、社会不安障害、パニック障害、広場恐怖症、強迫性ギャンブル障害、強迫性摂食障害、身体醜形障害、心気症、病的身繕い障害、窃盗症、放火症、チック症(一過性チック症、慢性チック症、運動性チック症および言語チック、例えばトゥレット症候群を含む)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、注意欠陥障害(ADD)、衝動制御障害、および関連障害、およびこれらの組み合わせから選択される障害である、方法1、または方法1.1~1.24のいずれか;
【0066】
1.26 中枢神経系障害が、強迫性障害(OCD)、強迫性パーソナリティ障害(OCPD)、社会不安障害、パニック障害、広場恐怖症、強迫性ギャンブル障害、強迫性摂食障害、身体醜形障害および衝動制御障害から選択される、方法1、または方法1.1~1.24のいずれか1つ;
【0067】
1.27 中枢神経系障害が強迫性障害(OCD)または強迫性パーソナリティ障害(OCPD)である、方法1、または方法1.1~1.24のいずれか1つ;
【0068】
1.28 患者が、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、例えばシタロプラム、エシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチンおよびセルトラリンによる治療に反応しないか、またはその副作用に耐えられない、いずれかの上記の方法;
【0069】
1.29 患者が、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、例えばベンラフェキシン、シブトラミン、デュロキセチン、アトモキセチン、デスベンラファキシン、ミルナシプランおよびレボミルナシプランによる治療に反応しないか、またはその副作用に耐えられない、いずれかの上記の方法;
【0070】
1.30 患者が、抗精神病薬、例えばクロミプラミン、リスペリドン、クエチアピンおよびオランザピンによる治療に反応しないか、またはその副作用に耐えられない、いずれかの上記の方法;
【0071】
1.31 中枢神経系疾患または障害が薬物依存(例えば、刺激薬依存(すなわち、刺激薬使用障害)、コカイン依存、またはアンフェタミン依存)であり、患者が、併存疾患、例えば不安、うつ病または精神病にも罹患しており;場合によっては患者がオピエート過剰摂取にも罹患している、方法I、または方法1.1~1.30のいずれか;
【0072】
1.32 中枢神経系障害が、疼痛障害、例えば疼痛に関連する状態、例えば頭痛、特発性疼痛、神経障害性疼痛、慢性疼痛(例えば、例えば他の病気で24時間の延長治療が必要な患者における、中等度~中重度の慢性疼痛)、線維筋痛症、歯痛、外傷性疼痛または慢性疲労である、方法I、または方法1.1~1.31のいずれか;
【0073】
1.33 患者が、非麻薬性鎮痛剤および/またはオピエートおよびオピオイド薬による治療に反応しないか、またはその副作用に耐えられないか、または、オピエート薬の使用が、例えば以前の物質乱用または高い物質乱用可能性のため、該患者において禁忌となり、例えばオピエートおよびオピオイド薬が、例えばモルヒネ、コデイン、テバイン、オリパビン、ジプロピオン酸モルヒネ、ジニコチン酸モルヒネ、ジヒドロコデイン、ブプレノルフィン、エトルフィン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、オキシコドン、オキシモルフォン、フェンタニル、α-メチルフェンタンチル(alpha-methylfentantyl)、アルフェンタニル、トレファンチニル、ブリフェンタニル、レミフェンタニル、オクトフェンタニル、スフェンタニル、カルフェンタニル、メペリジン、プロジン、プロメドール、プロポキシフェン、デキストロプロポキシフェン、メサドン、ジフェノキシレート、デゾシン、ペンタゾシン、フェナゾシン、ブトルファノール、ナルブフィン、レボルファノール、レボメトルファン、トラマドール、タペンタドールおよびアニレリジン、またはそれらの組み合わせを含む、上記方法のいずれか;
【0074】
1.34 有効量が、1mg~1000mg、好ましくは2.5mg~50mgであるか、または長時間作用性製剤については、25mg~1500mg、例えば、50mg~500mg、または250mg~1000mg、または250mg~750mg、または75mg~300mgである、上記方法のいずれか;
【0075】
1.35 有効量が、1日につき1mg~100mg、好ましくは1日につき2.5mg~50mgである、上記方法のいずれか。
【0076】
さらに別の実施態様では、本開示は、障害が統合失調症または睡眠障害である、上記の方法1または1.1~1.35のいずれかを提供する。いくつかの実施態様では、統合失調症はうつ病に関連している。いくつかの実施態様では、睡眠障害が、睡眠維持障害(sleep maintenance disorder)、例えば睡眠持続障害不眠症(sleep maintenance insomnia)である。
【0077】
さらに別の実施態様では、本開示は、医薬組成物が、本発明の化合物の制御放出および/または持続放出のために、約14日間~、約30日間~約180日間にわたって、好ましくは約30日間、約60日間または約90日間にわたって投与される、方法1.1~1.35のいずれかを提供する。制御放出および/または持続放出は、治療の早期中止を回避するために特に有用であり、特に、投薬計画の非遵守またはノンアドヒアランスが一般的に発生する抗精神病薬療法に有用である。
【0078】
さらに別の実施態様では、本発明は、本開示のデポ組成物が一定期間にわたる本発明の化合物の制御放出および/または持続放出のために投与される、上記のいずれかの方法1または1.1~1.35を提供する。
【0079】
第4の態様では、本発明は、1つ以上の睡眠障害の予防または治療方法であって、それを必要とする患者に、式I以降の化合物、または医薬組成物I、I-A、I-B、I-C、もしくはP.1~P.7のいずれかのいずれかを投与することを含む、方法(方法2)を提供する。特定の実施態様では、方法1は、以下のものを投与することを含む:
2.1. 遊離形態である、化合物I、または1.1~1.8のいずれか;
2.2. 薬学的に許容される塩形態である、化合物I、または1.1~1.8のいずれか;
2.3. 酸付加塩形態である、化合物I、または1.1~1.8のいずれか;
2.4. 医薬組成物I;
2.5. 医薬組成物I-A、I-BまたはI-Cのいずれか;
2.6. 医薬組成物P.1~P.7のいずれか;または
2.7. 上記の浸透圧放出制御経口送達システム組成物のいずれか。
【0080】
第4の態様のさらなる実施態様では、本発明は、睡眠障害が、睡眠維持障害、頻繁な覚醒、および爽快感が無い目覚めを含む、方法2または2.1~2.7を提供する;例えば、以下のものを提供する:
2.8 睡眠障害が睡眠維持障害である、上記方法のいずれか;
2.9 有効量が、1日につき、1mg~5mg、好ましくは2.5~5mgである、上記方法のいずれか;
2.10 有効量が1日につき2.5mgまたは5mgである、上記方法のいずれか;
2.11 睡眠障害が、ジスキネジアに罹患しているかまたはそのリスクがある患者、例えばレボドパおよびレボドパ補助剤(カルビドパ、COMT阻害剤、MAO-B阻害剤)、ドパミンアゴニストおよび抗コリン薬から選択されるドパミン作動薬を投与されている患者、例えばレボドパを投与されている患者におけるものである、上記方法のいずれか;
2.12 患者がパーキンソン病に罹患している、上記方法のいずれか。
【0081】
第4の態様のさらなる実施態様では、本発明は、睡眠障害が、睡眠維持障害、頻繁な覚醒、および爽快感が無い目覚めを含む、方法2、または2.1~2.12のいずれかを提供する。
【0082】
本開示の化合物および本開示の医薬組成物は、慣用の単剤療法において通常生じる望ましくない副作用を引き起こすことなく併用薬物の治療活性を高めるように、特に個々の薬物が単剤療法として用いられる場合より低い投与量にて、第2治療薬と組み合わせて使用され得る。したがって、本開示の化合物は、他の抗うつ薬、抗精神病薬、他の睡眠薬、および/またはパーキンソン病もしくは気分障害を治療するのに用いられる薬物と同時に(simultaneously)、連続してまたは同期間に(contemporaneously)投与され得る。別の例では、副作用は、本開示の化合物を1つ以上の第2治療薬と組み合わせて遊離形態または塩形態(例えば、薬学的に許容される塩形態)で投与することにより軽減または最小化することができ、ここで、(i)第2治療薬の投与量または(ii)本開示の化合物および第2治療薬の両方の投与量は、該薬物/化合物が単剤療法として投与される場合より低い。特定の実施態様では、本開示の化合物は、例えばレボドパおよびレボドパ補助剤(カルビドパ、COMT阻害剤、MAO-B阻害剤)、ドパミンアゴニスト、および抗コリン作動薬から選択されるドパミン作動薬を投与されている患者においてジスキネジアを治療するのに有用であり、例えばパーキンソン病の治療において用いられる。
【0083】
本開示いくつかのさらなる実施態様では、本開示の医薬組成物は、望ましくない副作用を引き起こすことなく併用薬物の治療活性を高めるように、特に個々の薬物が単剤療法として用いられる場合より低い投与量にて、第2治療薬と組み合わせて使用することができ、ここで、第2治療薬は、オピエートアンタゴニストまたはインバースアゴニスト(例えばナロキソン)である。本開示の化合物は、このようなオピエートアンタゴニストまたはオピエートインバースアゴニストと同時に、連続してまたは同期間に投与され得る。
【0084】
したがって、第5の態様では、本開示は、さらに患者に1つ以上の治療薬を投与することを含む方法であって、1つ以上の治療薬が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、GABA活性する(例えば、活性を増強し、GABA伝達の促進する)化合物、GABA-Bアゴニスト、5-HT受容体モジュレーター(例えば、5-HT1Aアゴニスト、5-HT2Aアンタゴニスト、5-HT2Aインバースアゴニストなど)、メラトニン受容体アゴニスト、イオンチャネルモジュレーター(例えば、ブロッカー)、セロトニン-2受容体アンタゴニスト/再取り込み阻害剤(例えば、5-HT2拮抗作用およびセロトニン再取り込み阻害の両方を有する化合物、すなわち、SARI)、オレキシン受容体アンタゴニスト、H3アゴニストまたはアンタゴニスト、ノルアドレナリンアゴニストまたはアンタゴニスト、ガラニンアゴニスト、CRHアンタゴニスト、ヒト成長ホルモン、成長ホルモンアゴニスト、エストロゲン、エストロゲンアゴニスト、ニューロキニン-1薬、抗うつ薬、およびオピエートアゴニストおよび/または部分オピエートアゴニスト(例えば、μ-、κ-またはδ-オピエート受容体アゴニストまたは部分アゴニスト)、またはオピエートアンタゴニストまたはインバースアゴニスト(例えば、μ-、κ-またはδ-オピエート受容体アンタゴニストまたはインバースアゴニスト)、ノシセプチンアゴニスト、および抗精神病薬、例えば、非定型抗精神病薬から選択される、方法1、もしくは方法1.1~1.35のいずれか、または方法2、もしくは2.1~2.12のいずれかを提供する(それぞれ方法1-Aおよび2-A;包括的に「方法3」)。第8の態様のさらなる実施態様では、本開示は、さらに患者に、上記から選択され、さらにμ-オピエート、κ-オピエート、δ-オピエート、および/またはノシセプチン/オルファニン受容体のアゴニストまたは部分アゴニストまたはアンタゴニストまたはインバースアゴニストから選択される1つ以上の治療薬を投与することを含む、方法1、もしくは方法1.1~1.35のいずれか、または方法2、もしくは2.1~2.12のいずれかを提供する。第10の態様のさらなる実施態様では、本開示は、また、さらに患者に、セロトニン5-HT6受容体アンタゴニスト、およびmGluR-2、-3または-5受容体アゴニストもしくはアンタゴニスト(正と負の両モジュレーター、および部分アゴニストを含む)から選択される1つ以上の治療薬を投与することを含む、方法1、もしくは方法1.1~1.35のいずれか、または方法2、もしくは2.1~2.12のいずれかを提供する。
【0085】
第5の態様のさらなる実施態様では、本発明は、以下のように、さらに患者に1つ以上の治療薬を遊離形態または薬学的に許容される塩形態で投与することを含む、方法3(すなわち、方法1-Aまたは2-A)を提供する:
【0086】
3.1 治療薬が、GABA活性を調節する(例えば、活性を増強し、GABA伝達を促進する)化合物である、方法1-Aまたは2-A;
【0087】
3.2 GABA化合物が、ドキセピン、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼプ酸、ジアゼパム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、テマゼパム、トリアゾラム、インディプロン、ゾピクロン、エスゾピクロン、ゼレプロン、ゾルピデム、ガボキサドール、ビガバトリン、チアギャビン、EVT201(Evotec Pharmaceuticals)およびエスタゾラムの1つ以上からなる群から選択される、方法1-Aまたは2-Aまたは3.1;
【0088】
3.3 治療薬が、さらなる5HT2a受容体アンタゴニストである、方法1-Aまたは2-A;
【0089】
3.4 さらなる5HT2a受容体アンタゴニストが、ピマバンセリン、ケタンセリン、リスペリドン、エプリバンセリン、ボリナンセリン(Sanofi-Aventis, France)、プルバンセリン、MDL100907(Sanofi-Aventis, France)、HY10275(Eli Lilly)、APD125(Arena Pharmaceuticals, San Diego, CA)およびAVE8488(Sanofi-Aventis, France)の1つ以上から選択される、方法1-Aまたは2-Aまたは3.3;
【0090】
3.5 治療薬がメラトニン受容体アゴニストである、方法1-Aまたは2-A;
【0091】
3.6 メラトニン受容体アゴニストが、メラトニン、ラメルテオン(ROZEREM(登録商標)、Takeda Pharmaceuticals, Japan)、VEC-162(Vanda Pharmaceuticals, Rockville, MD)、PD-6735(Phase II Discovery)およびアゴメラチンの1つ以上から選択される、方法1-Aまたは2-Aまたは3.5;
【0092】
3.7 治療薬がイオンチャネルブロッカーである、方法1-Aまたは2-A;
【0093】
3.8 イオンチャネルブロッカーが、ラモトリジン、ギャバペンチンおよびプレガバリンの1つ以上である、方法I-Aまたは2-Aまたは3.7;
【0094】
3.9 治療薬がオレキシン受容体アンタゴニストである、方法1-Aまたは2-A;
【0095】
3.10 オレキシン受容体アンタゴニストが、オレキシン、1,3-ビアリールウレア、SB-334867-a(GlaxoSmithKline, UK)、GW649868(GlaxoSmithKline)およびベンズアミド誘導体からなる群から選択される、方法1-Aまたは2-Aまたは3.9;
【0096】
3.11 治療薬がセロトニン-2受容体アンタゴニスト/再取り込み阻害剤(SARI)である、方法1-Aまたは2-A;
【0097】
3.12 セロトニン-2受容体アンタゴニスト/再取り込み阻害剤(SARI)が、1つ以上のOrg50081(Organon-Netherlands)、リタンセリン、ネファゾドン、サーゾーンおよびトラゾドンからなる群から選択される、方法1-Aまたは2-Aまたは3.11;
【0098】
3.13 治療薬が5HT1Aアゴニストである、方法1-Aまたは2-A;
【0099】
3.14 5HT1Aアゴニストが、レピノタン、サリゾタン、エプタピロン、ブスピロンおよびMN-305(MediciNova, San Diego, CA)の1つ以上からなる群から選択される、方法1-Aまたは2-Aまたは3.13;
【0100】
3.15 治療薬がニューロキニン-1薬である、方法1-Aまたは2-A;
【0101】
3.16 ニューロキニン-1薬がカソピタント(GlaxoSmithKline)である、方法1-Aまたは2-Aまたは3.15;
【0102】
3.17 治療薬が抗精神病薬である、方法1-Aまたは2-A;
【0103】
3.18 抗精神病薬が、クロルプロマジン、ハロペリドール、ドロペリドール、フルフェナジン、ロキサピン、メソリダジン、モリンドン、ペルフェナジン、ピモジド、プロクロルペラジン、プロマジン、チオリダジン、チオチキセン、トリフロペラジン、ブレクスピペラゾール、カリプラジン、アセナピン、ルラシドン、クロザピン、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドンおよびパリペリドンからなる群から選択される、方法1-Aまたは2-Aまたは3.17;
【0104】
3.19 治療薬が抗うつ薬である、方法1-Aまたは2-A;
【0105】
3.20 抗うつ薬が、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シタロプラム、クロミプラミン、デシプラミン、ドキセピン、デュロキセチン、エシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、イミプラミン、イソカルボキサジド、マプロチリン、ミルタザピン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、パロキセチン、硫酸フェネルジン、プロトリプチリン、セルトラリン、トラニルシプロミン、トラゾドン、トリミプラミンおよびベンラフェキシンから選択される、方法1-Aまたは2-Aまたは3.19;
【0106】
3.21 抗精神病薬が非定型抗精神病薬である、方法1-Aまたは2-A、3.17または3.18;
【0107】
3.22 非定型抗精神病薬が、ブレクスピペラゾール、カリプラジン、アセナピン、ルラシドン、クロザピン、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドンおよびパリペリドンからなる群から選択される、方法1-Aまたは2-A、または3.17~3.21のいずれか;
【0108】
3.23 治療薬が、方法3.1~3.22のいずれかから選択され、例えばモダフィニル、アルモダフィニル、ドキセピン、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼプ酸、ジアゼパム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、テマゼパム、トリアゾラム、インディプロン、ゾピクロン、エスゾピクロン、ゼレプロン、ゾルピデム、ガボキサドール、ビガバトリン、チアギャビン、EVT201(Evotec Pharmaceuticals)、エスタゾラム、ピマバンセリン、ケタンセリン、リスペリドン、エプリバンセリン、ボリナンセリン(Sanofi-Aventis, France)、プルバンセリン、MDL100907(Sanofi-Aventis, France)、HY10275(Eli Lilly)、APD125(Arena Pharmaceuticals, San Diego, CA)、AVE8488(Sanofi-Aventis, France)、レピノタン、サリゾタン、エプタピロン、ブスピロン、MN-305(MediciNova, San Diego, CA)、メラトニン、ラメルテオン(ROZEREM(登録商標)、Takeda Pharmaceuticals, Japan)、VEC-162(Vanda Pharmaceuticals, Rockville, MD)、PD-6735(Phase II Discovery)、アゴメラチン、ラモトリジン、ギャバペンチン、プレガバリン、オレキシン、1,3-ビアリールウレア、SB-334867-a(GlaxoSmithKline, UK)、GW649868(GlaxoSmithKline)、ベンズアミド誘導体、Org50081(Organon-Netherlands)、リタンセリン、ネファゾドン、サーゾーン、トラゾドン、カソピタント(GlaxoSmithKline)、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シタロプラム、クロミプラミン、デシプラミン、ドキセピン、デュロキセチン、エシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、イミプラミン、イソカルボキサジド、マプロチリン、ミルタザピン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、パロキセチン、硫酸フェネルジン、プロトリプチリン、セルトラリン、トラニルシプロミン、トラゾドン、トリミプラミン、ベンラフェキシン、クロルプロマジン、ハロペリドール、ドロペリドール、フルフェナジン、ロキサピン、メソリダジン、モリンドン、ペルフェナジン、ピモジド、プロクロルペラジン、プロマジン、チオリダジン、チオチキセン、トリフロペラジン、ブレクスピペラゾール、カリプラジン、アセナピン、ルラシドン、クロザピン、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドンおよびパリペリドンからなる群から選択される、方法1-Aまたは2-A;
【0109】
3.24 治療薬がH3アゴニストである、方法1-Aまたは2-A;
【0110】
3.25 治療薬がH3アンタゴニストである、方法1-Aまたは2-A;
【0111】
3.26 治療薬がノルアドレナリンアゴニストまたはアンタゴニストである、方法1-Aまたは2-A;
【0112】
3.27 治療薬がガラニンアゴニストである、方法1-Aまたは2-A;
【0113】
3.28 治療薬がCRHアンタゴニストである、方法1-Aまたは2-A;
【0114】
3.29 治療薬がヒト成長ホルモンである、方法1-Aまたは2-A;
【0115】
3.30 治療薬が成長ホルモンアゴニストである、方法1-Aまたは2-A;
【0116】
3.31 治療薬がエストロゲンである、方法1-Aまたは2-A;
【0117】
3.32 治療薬がエストロゲンアゴニストである、方法1-Aまたは2-A;
【0118】
3.33 治療薬がニューロキニン-1薬である、方法1-Aまたは2-A;
【0119】
3.34 治療薬が式I以降の化合物と組み合わされ、治療薬が、抗パーキンソン病薬、例えばL-ドパ、コカレルドーパ、デュオドーパ、スタレボ、シンメトレル、ベンズトロピン、ビペリデン、ブロモクリプチン、エンタカポン、ペルゴリド、プラミペキソール、プロシクリジン、ロピニロール、セレギリンおよびトルカポンである、方法1-Aまたは2-A;
【0120】
3.35 治療薬が、オピエートアゴニストまたは部分オピエートアゴニスト、例えばμアゴニストもしくは部分アゴニスト、またはκアゴニストもしくは部分アゴニスト、例えば混合アゴニスト/アンタゴニスト(例えば、部分μアゴニスト活性とκアンタゴニスト活性を有する薬物)である、方法1-Aまたは2-A;
【0121】
3.36 治療薬がブプレノルフィンであり、場合によっては該方法が、抗不安薬、例えばGABA化合物またはベンゾジアゼピンとの併用治療を含まない、方法3.35;
【0122】
3.37 式(I)の化合物が、列挙した疾患および/またはパーキンソン病に罹患している患者において、睡眠障害、うつ病、精神病、またはそれらの組み合わせを治療するために使用することができる、方法1-Aまたは2-A;
【0123】
3.38 障害が、精神病、例えば統合失調症、うつ病、気分障害、睡眠障害(例えば、睡眠維持および/または睡眠開始)またはそれらの障害の組み合わせの少なくとも1つ以上から選択される、方法1-Aまたは2-A;
【0124】
3.39 治療薬が、オピエート受容体アンタゴニストまたはインバースアゴニスト、例えば完全オピエートアンタゴニストであり、例えばナロキソン、ナルトレキソン、ナルメフェン、メサドン、ナロルフィン、レバロルファン、サミドルファン、ナロデイン、シプロジムまたはノルビナルトルフィミンから選択される、方法1-Aまたは2-A;
【0125】
3.40 障害が睡眠障害である、上記方法のいずれか;
【0126】
3.41 障害が、精神病、例えば統合失調症、またはパーキンソン病に関連する睡眠障害である、上記方法のいずれか。
【0127】
本発明の第6の態様では、本開示の化合物と、方法1-A、2-A、または方法3もしくは3.1~3.41のいずれかに記載の1つ以上の第2治療薬との組合せは、患者に、上記のデポ組成物のような単一の医薬組成物として投与することができる。該組合せ組成物は、併用薬物の混合物、および、個々の組成物が例えば患者に一緒に共投与され得る、薬物の2つ以上の別個の組成物を含み得る。
【0128】
特定の実施態様では、方法1-A、2-A、3または3.1~3.41は、それを必要とする患者に、本発明の化合物を、非定型抗精神病薬、例えばブレクスピペラゾール、カリプラジン、アセナピン、ルラシドン、クロザピン、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドンまたはパリペリドンから選択される化合物と組み合わせて、遊離形態または薬学的に許容される塩形態で投与することを含み、例えば非定型抗精神病薬の投与量を減少させ、および/または副作用を減少させる。
【0129】
別の実施態様では、方法1-A、2-A、3または3.1~3.41は、それを必要とする患者に、本発明の化合物を、抗うつ薬、例えばアミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シタロプラム、クロミプラミン、デシプラミン、ドキセピン、デュロキセチン、エシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、イミプラミン、イソカルボキサジド、マプロチリン、ミルタザピン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、パロキセチン、硫酸フェネルジン、プロトリプチリン、セルトラリン、トラニルシプロミン、トラゾドン、トリミプラミンまたはベンラフェキシンと組み合わせて、遊離形態または薬学的に許容される塩形態で投与することを含む。別法として、抗うつ薬は、本発明の化合物に加えて補助剤として使用することができる。
【0130】
さらに別の実施態様では、方法1-A、2-A、3または3.1~3.41は、それを必要とする患者に、本発明の化合物を、GABA活性を調節する化合物、例えばドキセピン、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼプ酸、ジアゼパム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、テマゼパム、トリアゾラム、インディプロン、ゾピクロン、エスゾピクロン、ゼレプロン、ゾルピデム、ガボキサドール、ビガバトリン、チアギャビン、EVT201(Evotec Pharmaceuticals)、エスタゾラムまたはそれらの組み合わせから選択される化合物と組み合わせて、遊離形態または薬学的に許容される塩形態で投与することを含む。他の実施態様では、本明細書に記載の方法は、GABA化合物、ベンゾジアゼピンまたは他の抗不安薬の投与をさらには含まない。
【0131】
別の好ましい実施態様では、方法1-A、2-A、3または3.1~3.41は、それを必要とする患者に、本発明の化合物をドキセピンと組み合わせて遊離形態または薬学的に許容される塩形態で投与することを含む。ドキセピンの投与量は、当業者に既知の範囲で変化し得る。一例では、10mg用量のドキセピンを、いずれの用量の本発明の化合物とも組み合わることができる。
【0132】
別の実施態様では、方法1-A、2-A、3または3.1~3.41は、それを必要とする患者に本発明の化合物を(例えば1日投与計画の一部として)非定型刺激薬、例えばモダフィニル、アドラフィニルまたはアルモダフィニルと組み合わせて投与することを含む。本発明の化合物をこのような薬物と共に組み込む計画は、例えば双極性うつ病、統合失調症に関連する認知症、ならびに、パーキンソン病および癌などの状態における過剰な眠気および疲労の治療において、より規則的な睡眠を促進し、高レベルのこのような薬物に関連する精神病または躁病などの副作用を回避する、
【0133】
別の実施態様では、方法1-A、2-A、3または3.1~3.41は、それを必要とする患者に本発明の化合物を(例えば1日投与計画の一部として)オピエート受容体アンタゴニストまたはインバースアゴニスト、例えば完全オピエートアンタゴニスト、例えばナロキソン、ナルトレキソン、ナルメフェン、メサドン、ナロルフィン、レバロルファン、サミドルファン、ナロデイン、シプロジムまたはノルビナルトルフィミンから選択されるものと組み合わせて投与することを含む。
【0134】
第6の態様では、本発明は、例えば方法1または1.1~1.35のいずれか、方法2および2.1~2.12のいずれか、方法I-A、II-A、ならびに方法3または3.3~3.41、または本明細書に記載の他の方法における、上記の1つ以上の障害の治療または予防のための(医薬製造における)、以下に記載されるような化合物または組成物の使用を提供する:
6.1. 遊離形態である、化合物I、または1.1~1.8のいずれか;
6.2. 薬学的に許容される塩形態である、化合物I、または1.1~1.8のいずれか;
6.3. 酸付加塩形態である、化合物I、または1.1~1.8のいずれか;
6.4. 医薬組成物1;
6.5. 医薬組成物I-A、I-BまたはI-Cのいずれか;
6.6. 医薬組成物P.1~P.7のいずれか;または
6.7. 上記のいずれかの浸透圧放出制御経口送達システム組成物。
【発明を実施するための形態】
【0135】
詳細な説明
特に明記されていない場合、または文脈から明らかでない場合、本明細書でシよされている以下の用語は以下の意味を有する。
【0136】
用語「薬学的に許容される希釈剤または担体」は、医薬製剤において有用であり、アレルゲン性、発熱性または病原性である物質および病気を潜在的に引き起こすかもしくは促進することが知られている物質を含まない希釈剤および担体を意味することが意図される。したがって、薬学的に許容される希釈剤または担体は、体液、例えば血液、尿、髄液、唾液など、ならびにその構成成分、例えば血液細胞および循環タンパク質を含まない。適切な薬学的に許容される希釈剤および担体は、医薬製剤に関するいくつかの周知の論文のいずれか、例えば、Anderson, Philip O.; Knoben, James E.; Troutman, William G, eds., Handbook of Clinical Drug Data, Tenth Edition, McGraw-Hill, 2002;Pratt and Taylor, eds., Principles of Drug Action, Third Edition, Churchill Livingston, New York, 1990;Katzung, ed., Basic and Clinical Pharmacology, Ninth Edition, McGraw Hill, 20037ybg;Goodman and Gilman, eds., The Pharmacological Basis of Therapeutics, Tenth Edition, McGraw Hill, 2001;Remington's Pharmaceutical Sciences, 20th Ed., Lippincott Williams & Wilkins., 2000;およびMartindale, The Extra Pharmacopoeia, Thirty-Second Edition (The Pharmaceutical Press, London, 1999)に見ることができる(これらすべては、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)。
【0137】
化合物についての「精製された」、「精製された形態の」または「単離および精製された形態の」なる用語は、合成プロセスから(例えば反応混合物から)または天然源またはそれらの組合せから単離された後の該化合物の物理的状態をいう。したがって、化合物についての「精製された」、「精製された形態の」または「単離および精製された形態の」なる用語は、本明細書に記載のまたは当業者に周知の標準的な分析技術により特徴付けるのに十分な純度で、本明細書に記載もしくは当業者に周知の精製プロセス(例えばクロマトグラフィー、再結晶、LC-MSおよびLC-MS/MS技術など)から得られた後の該化合物の物理的状態をいう。
【0138】
他に明記されない限り、本開示の化合物、例えば化合物Iまたは1.1~1.8(総括的に、式I以降の化合物)は、遊離塩基形態で、または塩形態で、例えば薬学的に許容される塩形態で、例えば酸付加塩として存在し得る。十分に塩基性である本発明の化合物の酸付加塩、例えば無機酸または有機酸との、例えば塩酸またはトルエンスルホン酸との酸付加塩。さらに、十分に酸性である本発明の化合物の塩は、アルカリ金属塩、例えばナトリウム塩またはカリウム塩、または生理学的に許容される陽イオンを提供する有機塩基との塩である。特定の実施態様では、本発明の化合物の塩はトルエンスルホン酸付加塩である。
【0139】
本開示の化合物は、医薬品としての使用が意図され、したがって、薬学的に許容される塩が好ましい。医薬用途に適さない塩は、例えば本発明の遊離化合物の単離または精製に有用であり得、したがって、それもまた本開示の化合物の範囲に含まれる。
【0140】
式Iの化合物は、純粋なまたは実質的に純粋なエナンチオマー形態、例えば70%超のエナンチオマー過剰率(「ee」)、好ましくは80%超のee、より好ましくは90%超のee、最も好ましくは95%超のeeであってもよい。本開示の化合物は、式Iの化合物のエナンチオマーのいくらかの量を含んでいる混合物、およびそれらのジアステレオマー混合物を包含すると理解されるべきである。該異性体の精製および該異性体混合物の分離は、当該技術分野で知られている標準的な技術(例えば、カラムクロマトグラフィー、分取TLC、分取HPLC、擬似移動床および同類のもの)によって行うことができる。
【0141】
本開示の化合物は、安定または不安定な同位体を包含することも意図される。安定同位体は、同種の豊富な核種(すなわち元素)と比較して1つの追加の中性子を含有する非放射性同位体である。このような同位体を含む化合物の活性は保持され、このような化合物はまた非同位体類似体の薬物動態の測定に関して有用性を有すると考えられる。例えば、本開示の化合物の特定位置における水素原子は、重水素(非放射性の安定同位体)で置き換えられ得る。公知の安定同位体の例としては、重水素(2HまたはD)、13C、15N、18Oが挙げられるがこれらに限定されない。あるいは、同種の豊富な核種(すなわち元素)と比較して複数の追加の中性子を含有する放射性同位体である不安定同位体、例えば、123I、131I、125I、11C、18Fは、I、CおよびFの対応する豊富な種に置き換わり得る。本発明の化合物の有用な同位体の別の例は、11C同位体である。これらの放射性同位体は、本発明の化合物の放射性イメージングおよび/または薬物動態試験に有用である。また、天然の同位体分布を持つ原子の、より重い同位体による置換は、代謝に関与する部位でこれらの置換が行われた場合には、薬物動態速度の望ましい変化を引き起こし得る。例えば、水素の代わりに重水素(2H)の組込みは、水素の位置が酵素または代謝活性の部位である場合には、代謝分解を遅くし得る。
【0142】
本開示の化合物は、例えば上記のポリマーマトリックス中に本発明の化合物を分散、溶解または封入することにより、デポ製剤として含まれ得て、化合物は、ポリマーが経時的に分解されることで継続的に放出されます。ポリマーマトリックスからの本発明の化合物の放出は、例えば医薬デポ組成物から、その医薬デポが投与される対象体、例えば温血動物、例えばヒトへの、化合物の制御放出および/または遅延放出および/または持続放出を提供する。したがって、医薬デポは、本発明の化合物を対象体へ特定の疾患または病状の治療に効果的な濃度で、長期間、例えば14日間~180日間、好ましくは約30日間、約60日間または約90日間にわたって送達する。
【0143】
本発明の組成物(例えば本発明のデポ組成物)におけるポリマーマトリックスに有用なポリマーは、ヒドロキシ脂肪酸のポリエステルおよびその誘導体、または他の薬剤、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリクエン酸、ポリリンゴ酸、ポリ-β-ヒドロキシ酪酸、ε-カプロラクトン開環重合体、乳酸-グリコール酸共重合体、2-ヒドロキシ酪酸-グリコール酸共重合体、ポリ乳酸-ポリエチレングリコール共重合体またはポリグリコール酸-ポリエチレングリコー共重合体)、アルキルα-シアノアクリレート(例えばポリ(ブチル2-シアノアクリレート))、ポリアルキレンオキサレート(例えばポリトリメチレンオキサレートまたはポリテトラメチレンオキサレート)、ポリオルトエステル、ポリカーボネート(例えばポリエチレンカーボネートまたはポリエチレンプロピレンカーボネート)、ポリオルト-カーボネート、ポリアミノ酸(例えばポリ-γ-L-アラニン、ポリ-γ-ベンジル-L-グルタミン酸またはポリ-y-メチル-L-グルタミン酸)、ヒアルロン酸エステル、および同類のものなどのポリマーを含み得、これらポリマーの1つ以上を用いることができる。
【0144】
ポリマーが共重合体である場合、それは、ランダム、ブロックおよび/またはグラフト共重合体のいずれかであり得る。上記α-ヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシジカルボン酸およびヒドロキシトリカルボン酸が、その分子中に光学活性を有する場合、D-異性体、L-異性体および/またはDL-異性体のいずれか1つが用いられ得る。とりわけ、α-ヒドロキシカルボン酸ポリマー(好ましくは、乳酸-グリコール酸ポリマー)、そのエステル、ポリ-α-シアノアクリル酸エステルなどを用いることができ、乳酸-グリコール酸共重合体(ポリ(ラクチド-α-グリコリド)またはポリ(乳酸-コ-グリコール酸)とも称され、以下PLGAと称する)が好ましい。したがって、一の態様では、ポリマーマトリックスに有用なポリマーはPLGAである。本明細書で用いられる、用語PLGAは、乳酸のポリマー(ポリラクチド、ポリ(乳酸)またはPLAとも称される)を含む。最も好ましくは、該ポリマーは、生分解性ポリ(d,l-ラクチド-コ-グリコリド)ポリマーである。
【0145】
好ましい実施態様では、本発明のポリマーマトリックスは、生体適合性および生分解性高分子物質である。用語「生体適合性」は、毒性がなく、発癌性がなく、そして体組織において著しく炎症を誘導しない高分子物質と定義される。マトリックス物質は、生分解性であるべきであり、ここで、高分子物質は、体内プロセスによって身体で容易に排泄可能な生成物に分解されるべきであり、体内に蓄積されるべきでない。生体分解の生成物はまた、ポリマーマトリックスが身体と生体適合性であるという点で身体と生体適合性であるべきである。ポリマーマトリックス物質の特定の有用な例としては、ポリ(グリコール酸)、ポリ-D,L-乳酸、ポリ-L-乳酸、前記の共重合体、ポリ(脂肪族カルボン酸)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(アセタール)、ポリ(乳酸-カプロラクトン)、ポリオルトエステル、ポリ(グリコール酸-カプロラクトン)、ポリ無水物、および天然ポリマー、例えばアルブミン、カゼイン、およびワックス、例えばグリセロールモノおよびジステアレートなどが挙げられる。本発明の実施に使用するのに好ましいポリマーは、dl(ポリラクチド-コ-グリコリド)である。このような共重合体におけるラクチド対グリコリドのモル比は、約75:25~50:50の範囲であることが好ましい。
【0146】
有用なPLGAポリマーの重量平均分子量は、約5,000~500,000ダルトン、好ましくは約150,000ダルトンであり得る。達成すべき分解速度に依存して、種々の分子量のポリマーを用い得る。薬物放出の拡散メカニズムについて、ポリマーは、すべての薬物がポリマーマトリックスから放出されるまで無傷のままで、その後分解すべきである。薬物はまた、ポリマー賦形剤が生体侵食する(bioerode)場合、ポリマーマトリックスから放出され得る。
【0147】
PLGAは、いずれかの慣用方法により製造されてもよいか、または商業的に入手してもよい。例えば、PLGAは、環状ラクチド、グリコリドなどから適切な触媒での開環重合により製造され得る(欧州特許第0058481号B2;Effects of polymerization variables on PLGA properties: molecular weight, composition and chain structureを参照)。
【0148】
PLGAは、生物学的条件下で(例えば、ヒトなどの温血動物の組織に見ることができる水および生物学的酵素の存在下で)加水分解可能で酵素的に切断可能なエステル結合の分解により固体ポリマー組成物全体が分解して乳酸およびグリコール酸を形成することによって生分解性であると考えられる。乳酸およびグリコール酸はどちらも、水溶性で、通常の代謝の非毒性生成物であり、これは、さらに分解されて、二酸化炭素と水を形成することができる。言い換えれば、PLGAは、水の存在下で、例えばヒトなどの温血動物の体内で、そのエステル基の加水分解によって分解されて、乳酸およびグリコール酸を生じ、酸性の微小環境を作ると考えられる。乳酸およびグリコール酸は、通常の生理学的条件下のヒトなどの温血動物の体内における様々な代謝経路の副産物であり、したがって、良好な忍容性を示し、全身毒性は最小となる。
【0149】
別の実施態様では、本発明に有用なポリマーマトリックスは、ポリエステルの構造が星形であるスターポリマーを含み得る。これらのポリエステルは、酸残基鎖により囲まれる中心部分として単一のポリオール残基を有する。ポリオール部分は、例えばグルコース、または、例えばマンニトールであり得る。これらのエステルは、公知であり、英国特許出願公開第2,145,422号および米国特許第5,538,739号(これら各出願の内容は、出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。
【0150】
スターポリマーは、開始剤として、ポリヒドロキシ化合物、例えばポリオール、例えばグルコースまたはマンニトールを用いて製造され得る。ポリオールは、少なくとも3つのヒドロキシ基を含有し、最大約20,000ダルトンの分子量を有し、ポリオールのヒドロキシ基のうち少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、例えば平均3つがエステル基の形態であり、これらはポリラクチドまたはコ-ポリラクチド鎖を含有する。分岐ポリエステル、例えばポリ(d,l-ラクチド-コ-グリコリド)は、複数のポリラクチド直鎖を有する中心グルコース部分を有する。
【0151】
上記の本発明のデポ組成物(例えばポリマーマトリックスにおける組成物6および6.1~6.10)は、本発明の化合物が分散または封入されているマイクロ粒子もしくはナノ粒子の形態または液体形態のポリマーを含み得る。「マイクロ粒子」は、粒子のマトリックスとして作用するポリマー内に本発明の化合物が分散または溶解されている溶液または固体形態のいずれかで本発明の化合物を含有する固形粒子を意味する。ポリマー物質の適切な選択により、得られたマイクロ粒子が拡散放出性および生分解放出性の両方を示すマイクロ粒子製剤が作られ得る。
【0152】
ポリマーがマイクロ粒子形態であるとき、マイクロ粒子は、適切な方法を用いて、例えば溶媒蒸発法または溶媒抽出法により製造され得る。例えば、溶媒蒸発法では、本発明の化合物およびポリマーを、揮発性有機溶媒(例えば、アセトンなどのケトン、クロロホルムまたは塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素、ハロゲン化芳香族性炭化水素、ジオキサンなどの環状エーテル、酢酸エチルなどのエステル、アセトニトリルなどのニトリル、またはエタノールなどのアルコール)に溶解させ、適切なエマルション安定化剤(例えばポリビニルアルコール、PVA)を含有する水相に分散させ得る。その後、有機溶媒を蒸発させて、本発明の化合物が封入されているマイクロ粒子が得られる。溶媒抽出法において、本発明の化合物およびポリマーを、極性溶媒(例えばアセトニトリル、ジクロロメタン、メタノール、酢酸エチルまたはギ酸メチル)に溶解させ、その後、水相(例えば水/PVA溶液)に分散させ得る。エマルションを調製して、本発明の化合物が封入されているマイクロ粒子を提供する。スプレードライは、マイクロ粒子を製造するための別の製造技術である。
【0153】
本発明のマイクロ粒子を製造する別の方法はまた、米国特許第4,389,330号および米国特許第4,530,840号のどちらにも記載されている。
【0154】
本発明のマイクロ粒子は、注射用組成物における使用に許容されるサイズ範囲のマイクロ粒子を製造できる方法によって製造され得る。一の好ましい製造方法は、米国特許第4,389,330号に記載されているものである。この方法において、活性薬剤を適切な溶媒に溶解または分散させる。活性薬剤含有媒体に、所望の活性剤負荷を有する生成物を提供する活性成分と相対的な量のポリマーマトリックス物質を加える。所望により、マイクロ粒子生成物の成分すべてを溶媒媒体中で一緒にブレンドし得る。
【0155】
本発明の化合物および本発明の実施に使用することができるポリマーマトリックス物質の溶媒としては、有機溶媒、例えばアセトン;ハロゲン化炭化水素、例えばクロロホルム、塩化メチレンなど;芳香族炭化水素化合物;ハロゲン化芳香族炭化水素化合物;環状エーテル;アルコール、例えばベンジルアルコール;酢酸エチルなどが挙げられる。一の実施態様では、本発明の実施に使用するための溶媒は、ベンジルアルコールと酢酸エチルの混合物であり得る。本発明に有用なマイクロ粒子の製造に関するさらなる情報は、米国特許出願公開第2008/0069885号(該出願の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)に見ることができる。
【0156】
マイクロ粒子に組み込まれる本開示の化合物の量は、通常、約1重量%~約90重量%、好ましくは30~50重量%、より好ましくは35~40重量%の範囲である。重量%は、マイクロ粒子の総重量当たりの本開示の化合物の部分を意味する。
【0157】
医薬デポ組成物は、薬学的に許容される希釈剤または担体、例えば水混和性の希釈剤または担体を含み得る。
【0158】
浸透圧放出制御経口送達システム組成物の詳細は、欧州特許出願公開第1539115号(米国特許出願公開第2009/0202631号)および国際公開第2000/35419号(米国特許出願公開第2001/0036472号)(これら各出願の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)に見ることができる。
【0159】
「治療有効量」は、疾患または障害に罹患している対象体に投与されるとき、治療に予定している期間にわたって疾患または障害の軽減、寛解または退行を生じるのに有効な(例えば医薬デポに含有されるような)本発明の化合物の量である。
【0160】
本発明の実施に用いられる投与量は、例えば治療されるべき特定の疾患または状態、用いられる特定の本発明の化合物、投与様式、および所望の療法に応じて当然変化する。他に明記されない限り、(遊離塩基または塩形態として投与される)投与のための本発明の化合物の量は、遊離塩基形態の本発明の化合物の量をいうかまたはそれに基づいている(すなわち、該量の算出は遊離塩基量に基づいている)。
【0161】
本発明の化合物は、経口、非経腸(静脈内、筋肉内または皮下)または経皮を含む満足のいく経路によって投与され得る。特定の実施態様では、例えばデポ製剤中の、本発明の化合物は、好ましくは非経口で、例えば注射、例えば筋肉注射または静脈注射により、投与される。
【0162】
一般に、方法1および1.1~1.35、方法2および2.1~2.12、ならびに方法3および3.1~3.41、または、例えば、少なくともうつ病、精神病の組み合わせなどの疾患の組み合わせ、例えば、上記の(1)うつ病に罹患している患者における精神病、例えば統合失調症;(2)精神病、例えば統合失調症に罹患している患者におけるうつ病;(3)精神病、例えば統合失調症、またはパーキンソン病に関連する気分障害;(4)精神病、例えば統合失調症、またはパーキンソン病に関連する睡眠障害;および(5)物質嗜癖、物質使用障害および/または物質誘発障害の治療のための、上記の本開示の化合物の使用についての満足のいく結果は、好ましくは経口投与により、1日1回約1mg~100mg程度、好ましくは、1日1回、2.5mg~50mg、例えば2.5mg、5mg、10mg、20mg、30mg、40mgまたは50mgの投与量で経口投与することで得られることが示されている。
【0163】
方法2もしくは2.1~2.12、または、例えば睡眠障害単独の治療のための、上記の本開示の化合物の使用についての満足のいく結果は、好ましくは経口投与により、1日1回、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の本発明の化合物を約2.5mg~5mg程度、例えば2.5mg、3mg、4mgまたは5mgの投与量で経口投与することで得られることが示されている。
【0164】
方法I-Aまたは方法II-A、または3.1~3.41のいずれかについての満足のいく結果は、1日1回、100mg未満、好ましくは50mg未満、例えば40mg未満、30mg未満、20mg未満、l0mg未満、5mg未満、2.5mg未満で得られることが示されている。方法II-A、または3.1~3.41のいずれかついての満足のいく結果は、5mg未満、好ましくは2.5mg未満で得られることが示されている。
【0165】
デポ組成物がより長期間の作用を達成するために用いられる本明細書に記載の障害の治療のために、投与量は、短期間作用組成物と比較して高く、例えば1~100mgより高く、例えば25mg、50mg、100mg、500mg、1,000mg、または1000mg超である。本開示の化合物の作用持続時間は、ポリマー組成、すなわちポリマー:薬物の比率およびマイクロ粒子径の操作により制御され得る。本発明の組成物がデポ組成物である場合、注射による投与が好ましい。
【0166】
本開示の化合物の薬学的に許容される塩は、慣用の化学方法により塩基性または酸性部分を含有する親化合物から合成され得る。一般に、このような塩は、水もしくは有機溶媒またはその2つの混合物中で、これら化合物の遊離塩基形態を化学量論量の適切な酸と反応させることにより製造することができ;一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルなどの非水性媒体が好ましい。これら塩、例えばアモルファス形態または結晶形態のトルエンスルホン酸塩の製造についてのさらなる詳細については、国際特許出願第PCT/US08/03340号および/または米国仮出願第61/036,069号)(それぞれ米国特許出願公開第2011/112105号に対応する)に見ることができる。
【0167】
本開示の化合物を含む医薬組成物は、従来の希釈剤または賦形剤(例としてゴマ油が挙げられるがこれに限定されない)およびガレヌス技術分野で公知の技術を用いて製造され得る。したがって、経口剤形としては、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤などが挙げられ得る。
【0168】
治療上の使用に言及する場合の用語「並行して(concurrently)」は、2つ以上の活性薬剤が同一もしくは異なる時に与えられるかを問わず、または同一もしくは異なる投与経路により与えられるかを問わず、疾患または障害の治療計画の一部として2つ以上の活性成分を患者に投与することを意味する。2つ以上の活性成分の並行投与は、同じ日の異なる時に、または異なる日に、または異なる頻度であり得る。
【0169】
治療上の使用に言及する場合の用語「同時に(simultaneously)」は、同一投与経路による同時またはほぼ同時の2つ以上の活性成分の投与を意味する。
【0170】
治療上の使用に言及する場合の用語「別個に(separately)」は、異なる投与経路による同時またはほぼ同時の2つ以上の活性成分の投与を意味する。
【0171】
本発明の化合物の製造方法:
式Iの化合物のエナンチオマーである式Aの化合物およびその合成方法は、特許出願公開第2017/319580号に開示されている。類似の縮合γ-カルボリンの合成は、例えば、米国特許第8,309,722号、米国特許第8,993,572号、米国特許出願公開第2017/0183350号、国際公開第2018/126140号および国際公開第2018/126143号(各々の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)に開示されている。本開示の化合物は類似の方法を使用して製造することができ、式Iの化合物またはその合成中間体の反対のエナンチオマーが単離および精製される。
【0172】
本発明の化合物のジアステレオマーの単離または精製は、当該技術分野で知られている慣用方法、例えば、カラム精製法、分取薄層クロマトグラフィー、分取HPLC、結晶化、トリチュレーション、擬似移動床法などによって行うことができる。
【0173】
本開示の化合物の塩は、米国特許第6,548,493号;米国特許第7,238,690号;米国特許第6,552,017号;米国特許第6,713,471号;米国特許第7,183,282号;米国特許第8,648,077号;米国特許第9,199,995号;米国特許第9,586,860号;米国再発行特許発明第39680号;および米国再発行特許発明第39679号(各々の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)に開示されているものと同様に製造することができる。
【実施例
【0174】
実施例1: (6bS,10aR)-8-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オンの合成
【化3】
【0175】
工程1: (4aR,9bS)-6-ブロモ-3,4,4a,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール-2(9bH)-カルボン酸エチル(21.5g、66.2mmol),クロロアセタミド(18g、198mmol)およびKI(36g、198 mmol)のジオキサン(80mL)中脱気懸濁液を105℃で24時間撹拌する。溶媒を除去し、残留物をジクロロメタン(200mL)に懸濁し、水(100mL)で抽出する。分取したジクロロメタン相をMg2SO4で1時間乾燥させ、次いで、濾過する。濾液を蒸発させて、茶色の油として粗生成物を得る。この茶色の油に酢酸エチル(100mL)を添加し、該混合物を2分間超音波処理する。該混合物から黄色の固体が徐々に沈殿し、これは室温でさらに2時間放置した後ゲルに戻る。さらに酢酸エチル(10mL)を添加し、得られた固体を濾過する。濾過ケーキを酢酸エチル(2mL)ですすぎ、高真空下でさらに乾燥させる。生成物(4aR,9bS)-5-(2-アミノ-2-オキソエチル)-6-ブロモ-3,4,4a,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール-2(9bH)-カルボン酸エチルをオフホワイト色の固体として得る(25.8g、収率100%)。MS (ESI) m/z 382.0 [M+H] +。この生成物をさらなる精製を行わずに次工程で直接使用する。
【0176】
工程2: (4aR,9bS)-5-(2-アミノ-2-オキソエチル)-6-ブロモ-3,4,4a,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール-2(9bH)-カルボン酸エチル(15g、39.2mmol)、K2CO3(14.2g、86.2mmol)、CuI(1.5g、7.8mmol)のジオキサン(50mL)中混合物をアルゴンで5分間通気する。この混合物にN,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン(3.7mL)を添加し、得られた懸濁液を100℃で48時間撹拌する。該反応混合物を室温に冷却し、シリカゲルパッド上に注いで濾過する。濾過ケーキを酢酸エチル(1.5L)ですすぐ。合わせた濾液を濃縮乾固して、白色固体として生成物(6bS,10aR)-2-オキソ-2,3,6b,7,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド [3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8(9H)-カルボン酸エチルを得る(3.5g、収率30%)。MS (ESI) m/z 302.1 [M+H] +。この生成物をさらなる精製を行わずに次工程で直接使用する。
【0177】
工程3: (6bS,10aR)-2-オキソ-2,3,6b,7,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8(9H)-カルボン酸エチル(3.5g、11.6mmol)をHBr酢酸溶液(30mL、33%w/w)に室温で懸濁する。該混合物を70℃で2時間加熱する。冷却し、酢酸エチル(150mL)で処理した後、該混合物を濾過する。濾過ケーキを酢酸エチル(5mL)で洗浄し、次いで、高真空下で乾燥させる。次いで、得られたHBr塩をメタノール(40mL)に懸濁し、プロパノール中にてドライアイスで冷却する。激しく撹拌しながら、該懸濁液にアンモニア溶液(20mL、メタノール中7N)をゆっくりと添加して、混合物のpHを14に調整する。得られた混合物を高真空下で乾燥させて、粗生成物(6bS,10aR)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オン・HBr塩を得る(7.8g)。MS (ESI) m/z 230.2 [M+H]+。この生成物をさらなる精製を行わずに次工程で直接使用する。
【0178】
工程4: (6bS,10aR)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オン・HBr塩(1.0g、純粋な出発物質として4.4mmol)、1-(3-クロロプロキシ)-4-フルオロベンゼン(1.4mL、8.8mmol)およびKI(1.45g、8.7mmol)のDMF(15mL)中混合物をアルゴンで3分間通気し、DIPEA(1.5mL、8.7mmol)を添加する。得られた混合物を76℃に加熱し、この温度で2時間撹拌する。溶媒を除去し、残留物に水(80mL)を添加する。得られた混合物をDCM(100mL)で抽出する。DCM相をK2CO3で乾燥させ、濃縮乾固する。残留物を、酢酸エチル中0~100%混合溶媒[酢酸エチル/メタノール/7N NH3(10:1:0.1 v/v)]勾配液を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、オフホワイト色の固体として標記化合物(6bS,10aR)-8-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オンを得る(650mg、収率25%)。MS (ESI) m/z 382.2 [M+1]+1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 10.34 (s, 1H), 7.10 (t, J = 8.8 Hz, 2H), 6.97 - 6.88 (m, 2H), 6.77 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 6.64 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 6.58 (dd, J = 7.8, 1.0 Hz, 1H), 3.97 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 3.80 (d, J = 14.5 Hz, 1H), 3.31 (m,1H), 3.28 - 3.24 (m, 1H), 3.21 (dt, J = 10.8, 6.4 Hz, 1H), 2.92 - 2.82 (m, 1H), 2.68 - 2.60 (m, 1H), 2.46 - 2.29 (m, 2H), 2.09 (td, J = 11.6, 2.7 Hz, 1H), 1.94 (dd, J = 14.7, 2.8 Hz, 1H), 1.90 - 1.73 (m, 3H), 1.67 (t, J = 11.0 Hz, 1H)。
【0179】
実施例2: 受容体結合プロファイル
実施例1の化合物ならびに式AおよびBの化合物について受容体結合を決定する。下記の文献(各文献は出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)の手順を使用する:5-HT2A:Bryant, H.U. et al.(1996)、Life Sci., 15:1259-1268;D2:Hall, D.A. and Strange, P.G.(1997)、Brit. J. Pharmacol., 121:731-736;D1:Zhou, Q.Y. et al.(1990)、Nature, 347:76-80;SERT:ParkPark, Y.M. et al.(1999)、Anal. Biochem., 269:94-104;μオピエート受容体:Wang、J.B. et al.(1994)、FEBS Lett., 338:217-222。
【0180】
一般に、結果は、試験化合物の存在下で得られた、対照特異的結合のパーセント:
【数1】
として、また、対照特異的結合の阻害パーセント:
【数2】
として表される。
【0181】
IC50値(対照特異的結合の最大半量阻害を生じる濃度)およびヒル係数(nH)は、ヒル式カーブフィッティング:
【数3】
[式中、Y=特異的結合、A=曲線の左漸近線、D=曲線の右漸近線、C=化合物濃度、C50=IC50、およびnH=傾斜因子]
を用いて平均反復値を用いて作成した競合曲線の非線形回帰分析によって決定される。この分析は、自社ソフトウェアを用いて行われ、市販のソフトウェアSigmaPlot(登録商標)4.0 for Windows(登録商標)(SPSS Inc.による著作権1997)によって作成されたデータとの比較によって正当性が認められる。阻害定数(Ki)は、チェンプルソフ式:
【数4】
[式中、L=アッセイにおける放射性リガンドの濃度、およびKD=受容体に対する放射性リガンドの親和性]
を用いて算出された。KDを決定するためにスキャッチャードプロットが用いられる。
【0182】
以下の受容体親和性の結果が得られる:
【表1】
【0183】
これらの受容体結合試験は、実施例1の化合物(式Iの化合物)の、そのエナンチオマーである式Aの化合物と比較して予想外に異なる薬理学的プロファイルを示している。
本願は下記の態様も包含する。
[態様1]
遊離形態または塩形態(例えば、薬学的に許容される塩形態)の、例えば単離または精製された遊離形態または塩形態(例えば、薬学的に許容される塩形態)の、式I:
【化4】
で示される化合物。
[態様2]
塩の形態の、例えば薬学的に許容される塩の形態の、態様2記載の化合物。
[態様3]
遊離形態または薬学的に許容される塩形態(例えば、薬学的に許容される塩形態)の態様1記載の化合物を薬学的に許容される希釈剤または担体と混合して含む医薬組成物。
[態様4]
中枢神経系障害の治療または予防方法であって、それを必要とする患者に遊離形態または薬学的に許容される塩形態の態様1記載の化合物または態様3記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
[態様5]
該障害が、肥満、不安(全般性不安、社会不安およびパニック症が挙げられる)、うつ病(例えば、難治性うつ病およびMDD)、精神病(認知症に関連する精神病、例えば進行性パーキンソン病における幻覚、または偏執性妄想が挙げられる)、統合失調症、睡眠障害(特に、統合失調症ならびに他の精神および神経疾患に関連する睡眠障害)、性障害、広場恐怖症、社会恐怖症、認知症における激越(例えば、アルツハイマー病における激越)、自閉症および関連自閉症性障害における激越、胃腸障害、例えば胃腸管運動の機能不全、および認知症、例えばアルツハイマー病またはパーキンソン病の認知症;気分障害;物質使用障害および/または物質乱用障害;薬物依存、例えばコカイン依存 および/またはアンフェタミン依存、および薬物依存(例えば、コカインまたはアンフェタミン依存)からの離脱;薬物依存に関連する併存疾患、例えばうつ病、不安および精神病;過食性障害;および強迫性障害(OCD)、強迫性パーソナリティ障害(OCPD)および関連障害、または刺激薬使用障害(SUD)からなる群から選択される、態様4記載の方法。
[態様6]
該障害が、セロトニン5-HT 2A 、セロトニン再取り込みトランスポーター(SERT)、ドパミンD 1 および/またはD 2 経路に関連する障害である、態様4記載の方法。
[態様7]
該中枢神経系障害が、(1)うつ病に罹患している患者における精神病、例えば統合失調症;(2)精神病、例えば統合失調症に罹患している患者におけるうつ病;(3)精神病、例えば統合失調症、またはパーキンソン病に関連している気分障害;(4)精神病、例えば統合失調症、またはパーキンソン病に関連している睡眠障害;および(5)物質嗜癖、物質使用障害および/または物質誘発障害から選択される障害である、態様4記載の方法。
[態様8]
該中枢神経系障害が、強迫性障害(OCD)、強迫性パーソナリティ障害(OCPD)、全般性不安障害、社会不安障害、パニック障害、広場恐怖症、強迫性ギャンブル障害、強迫性摂食障害、身体醜形障害、心気症、病的身繕い障害、窃盗症、放火症、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、注意欠陥障害(ADD)、衝動制御障害、および関連障害、およびこれらの組み合わせから選択される障害である、態様4記載の方法。
[態様9]
中枢神経系障害の治療または予防のための医薬の製造における、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の態様1記載の化合物、または態様3記載の医薬組成物の使用。