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特許7377886アシルカルバゾール誘導体とカルバゾリルオキシムエステルを含有する光開始剤組成物、及び光硬化性組成物におけるその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】アシルカルバゾール誘導体とカルバゾリルオキシムエステルを含有する光開始剤組成物、及び光硬化性組成物におけるその使用
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/031 20060101AFI20231102BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20231102BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20231102BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20231102BHJP
   C09D 11/03 20140101ALI20231102BHJP
   G03F 7/028 20060101ALI20231102BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20231102BHJP
   G03F 7/033 20060101ALI20231102BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20231102BHJP
   C08F 20/10 20060101ALI20231102BHJP
   C07D 209/86 20060101ALN20231102BHJP
   C07D 403/04 20060101ALN20231102BHJP
   C07D 209/90 20060101ALN20231102BHJP
   C07D 209/94 20060101ALN20231102BHJP
   C07D 405/12 20060101ALN20231102BHJP
【FI】
G03F7/031
C09K3/00 T
C09D201/00
C09D7/63
C09D11/03
G03F7/028
G03F7/004 505
G03F7/033
G03F7/027 502
C08F20/10
C07D209/86
C07D403/04
C07D209/90
C07D209/94
C07D405/12
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021560177
(86)(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-10
(86)【国際出願番号】 CN2020079715
(87)【国際公開番号】W WO2020253284
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2021-09-24
(31)【優先権主張番号】201910540498.3
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521438825
【氏名又は名称】艾▲堅▼蒙(安▲慶▼)科技▲発▼展有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼ 文超
(72)【発明者】
【氏名】王 辰▲竜▼
(72)【発明者】
【氏名】李 家▲斉▼
(72)【発明者】
【氏名】王 永林
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-194516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/031
C09K 3/00
C09D 201/00
C09D 7/63
C09D 11/03
G03F 7/028
G03F 7/004
G03F 7/033
G03F 7/027
C08F 20/10
C07D 209/86
C07D 403/04
C07D 209/90
C07D 209/94
C07D 495/04
C07D 405/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
増感剤とカルバゾリルオキシムエステルを含有する光開始剤組成物であって、
前記増感剤は、式Iで示されるアシルカルバゾール誘導体、式II-A、II-B、II-Cで示されるアシルベンゾカルバゾール誘導体、式II-D、式II-Eで示されるアシルジベンゾカルバゾール誘導体、及び式II-F、II-G、II-Hで示される縮合環カルバゾール誘導体から選ばれ、
前記カルバゾリルオキシムエステルは、式III、式IV-A~IV-Eで示される化合物であり、
前記増感剤と前記カルバゾリルオキシムエステルとのモル比が、0.1:1~1.4:1である、光開始剤組成物。
【化1】
(式中、
1、R2、R4、R5、R7、R8、R24、R25、R27、R28、R34、R35、R37、R38、R41、R42、R44、R45、R47、R48、R54、R55、R61、R62、R67、R68、R102~R108、R112、R114、R115、R117、R118、R121、R122、R124~R127は、それぞれ独立して、H、ハロゲン原子、C1~C8アルキル基、C1~C8アルコキシ基、CNであり、
11、R12、R14、R15、R17、R18、R71、R72、R74、R75、R84、R85、R87、R88、R91、R92、R94、R97、R98は、それぞれ独立して、H、C1~C8アルキル基、C1~C8アルコキシ基、ハロゲン原子、CN、NO2であり、
6、R26、R36、R46、R56、R66、R106、R116は、それぞれ独立して、H、ハロゲン原子、CN、C1~C8アルキル基、C1~C12アルキルアシル基、C5~C6置換C1~C3アルキルアシル基、C6~C20アロイル基、C4~C20ヘテロアリールアシル基、
であり、又は、上記基は、隣接するほかの置換基とともに母体構造に連結されて5員~7員環状を構成してもよく、これらのうち、C6~C20アロイル基及びC4~C20ヘテロアロイル基上の置換基は、H、ハロゲン原子、R40、OR50、SR50、NR5152、COOR50、CONR5152を含み、
9、R29、R39、R49、R59、R69、R19、R79、R89、R99は、それぞれ独立して、C1~C12直鎖又は分岐アルキル基、C2~C12アルケニル基、C3~C12アルケニルアルキル基であり、ここでの炭素原子上の水素は、非置換、又は、フェニル基、C5~C6シクロアルキル基、C3~C6複素環式基、ハロゲン、COOR20、OR20、SR20、PO(OCn2n+12、Si(Cn2n+13のうちの1つ又は複数の基で置換され、nは1~4の整数であり、又は、
9、R29、R39、R49、R59、R69、R19、R79、R89、R99は、それぞれ独立して、C3~C12アルキル基、C3~C12アルケニルアルキル基であり、そのアルキル鎖はO、S、SO、SO2、CO、COOのうちの1つ又は複数により隔てられ、又は、
9、R29、R39、R49、R59、R69、R19、R79、R89、R99は、それぞれ独立して、C2~C12アルキレン基、C4~C12二重結合含有アルキレン基であり、前記C2~C12アルキレン基、C4~C12二重結合含有アルキレン基の末端に連結される基は、R9、R29、R39、R49、R59、R69、R19、R79、R89、R99のそれぞれが元々連結する基と同じであり、又は、
9、R29、R39、R49、R59、R69、R19、R79、R89、R99は、それぞれ独立して、フェニル基であり、フェニル基は、非置換、又は、C1~C8アルキル基、ハロゲン原子、OR20、SR20、COR30、CN、COOH、
のうちの1つ又は複数の基で置換され、
16、R76、R86、R96、R116は、それぞれ独立して、C6~C20アロイル基、C4~C20ヘテロアリールアシル基、NO2、4,5-ジフェニルイミダゾール-2イルであり、R16、R76、R86、R96、R116が、それぞれ独立して、C6~C20アロイル基又はC4~C20ヘテロアリールアシル基である場合、その芳香環又はヘテロ芳香環上のアシルオルト位置換基はカルバゾール環に連結されてもよく、
13、R73、R83、R93、R113は、それぞれ独立して、C1~C8アルキル基、末端がC5~C6シクロアルキル基又はフェニル基で置換されたC1~C3アルキル基であり、又は、上記アルキル基は隣り合う母体環上の炭素又は炭素上の置換基に連結されて環状となってもよく、その条件として、対応する同一分子上のR16、R76、R86、R96はそれぞれ独立してC6~C20アロイル基又はC4~C10ヘテロアロイル基であり、又は、
13、R73、R83、R93は、それぞれ独立して、C6~C20アリール基、C6~C20アロイル基、C4~C20ヘテロアロイル基であり、その条件として、対応する同一分子上のR16、R76、R86、R96は、それぞれ独立して、C6~C20アロイル基、C4~C20ヘテロアリールアシル基、NO2、4,5-ジフェニルイミダゾール-2イル
であり、
10、R70、R80、R90、R110、R120、R130は、それぞれ独立して、C1~C12アルキル基又はC6~C20アリール基であり、
Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6、Ar7、Ar8は、それぞれ独立して、C6~C20アロイル基、C4~C20ヘテロアロイル基であり、ここで、Ar1、Ar2、Ar5上のアシルオルト位はO、S原子を介してカルバゾール環に連結されてもよく、
Yは直鎖又は分岐C1~C3アルキレン基であり、
m=0又は1であり、
上記の全てのC6~C20アリール基及びC4~C20ヘテロアリール基上の置換基は、H、ハロゲン原子、CN、R40、OR50、SR50、NR5152、COOR50、CONR5152を含み、
20、R30は、それぞれ独立して、H;C1~C8アルキル基;1つ又は複数のハロゲン原子、C5~C6シクロアルキル基で置換されたC1~C8アルキル基;フェニル基;1つ又は複数のハロゲン原子で置換されたフェニル基;C1~C4アルキルアシル基であり、
40、R50は、それぞれ独立して、C1~C8アルキル基;1つ又は複数のF、Cl、ヒドロキシ基で置換されたC1~C8アルキル基;1つ又は複数の酸素原子スペーサを含有し、ヒドロキシ基、アセトキシ基で置換されたC3~C8アルキル基;O、S、Nヘテロ原子を1つ又は2つ含有する5員又は6員環;フェニル基;C1~C4アルキルフェニル基であり、
51、R52は、それぞれ独立して、C1~C4アルキル基;ヒドロキシ基で置換されたC1~C4アルキル基であり、又は、
NR5152は環状構造
である。)
【請求項2】
増感剤としての式Iで示される化合物は、式I-1~式I-36で示される以下の化合物から選ばれる1種もしくはこれらの任意の混合物である、請求項1に記載の光開始剤組成物。
【化2】


【請求項3】
増感剤としての式II-A~式II-Hで示される化合物は、式II-1~式II-16で示される以下の化合物から選ばれる1種もしくはこれらの任意の混合物である、請求項1に記載の光開始剤組成物。
【化3】
【請求項4】
前記カルバゾリルオキシムエステルとしての式IIIで示される化合物は、式III-1~式III-17で示される以下の化合物もしくはこれらの任意の混合物から選ばれる、請求項1に記載の光開始剤組成物。
【化4】
【請求項5】
前記カルバゾリルオキシムエステルとしての式IV-A~IV-Eで示される化合物は、式IV-1~式IV-21で示される以下の化合物もしくはこれらの任意の混合物から選ばれる、請求項1に記載の光開始剤組成物。
【化5】
【請求項6】
前記増感剤と前記カルバゾリルオキシムエステルとのモル比が、0.22:1~1.3:1である、請求項1に記載の光開始剤組成物。
【請求項7】
a.少なくとも1種の請求項1に記載の光開始剤組成物と、
b.少なくとも1種のフリーラジカル重合性化合物とを含有し、
固形分の全質量に対するa成分の質量の割合が0.2~10%である、光硬化性組成物。
【請求項8】
フリーラジカル重合性化合物は、アクリレート系化合物、メタクリレート系化合物、アクリレート又はメタクリレート基を含有する樹脂又はこれらの任意の混合物から選ばれる、請求項7に記載の光硬化性組成物。
【請求項9】
固形分の全質量に対するa成分の質量の割合が1~8%である、請求項に記載の光硬化性組成物。
【請求項10】
請求項7~のいずれか1項に記載の光硬化性組成物を含有するインク。
【請求項11】
請求項7~のいずれか1項に記載の光硬化性組成物を含有する塗料。
【請求項12】
請求項7~のいずれか1項に記載の光硬化性組成物を含有するバインダ。
【請求項13】
a.少なくとも1種の請求項1に記載の光開始剤組成物、
b.多官能アクリレートモノマー、
c.アルカリ可溶性樹脂、
d.顔料、
e.溶媒を含有し、
固形分の全質量に対するa成分の質量の割合が0.2~10%である、フォトレジスト。
【請求項14】
良好に分散したカーボンブラック又はチタンブラックを顔料とする、請求項13に記載のフォトレジストである、ブラックフォトレジスト。
【請求項15】
請求項14に記載のブラックフォトレジストを用いて製造される、ことを特徴とするブラックマトリックス。
【請求項16】
請求項14に記載のブラックフォトレジストを用いて製造される、ことを特徴とするフォトスペーサー。
【請求項17】
請求項13に記載のフォトレジストと請求項14に記載のブラックフォトレジストをフォトレジストの原料として用いてカラーフィルターの加工過程を経て得られたカラーフィルターデバイスである、カラーフィルターデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光硬化の技術分野に属し、具体的には、高活性増感剤とカルバゾリルオキシムエステルの光開始剤組成物、及び光硬化性組成物、特にフォトレジストの製造におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
光硬化技術は、70年代に開発されて以来広く使用されてきて、例えば、塗料、印刷インク、電子デバイスの製造分野ではUV光硬化技術が一般的に使用されており、光開始剤及び光開始剤とともに使用される開始助剤の成分、例えば増感剤が硬化効率に影響を与える要因である。カルバゾリルオキシムエステルはオキシムエステル系光開始剤のうちの重要な1種であり、高い感度を有するので、当業者によって知られて、研究、使用され、例えば特許公開番号又は公告番号CN1922142A(三菱化学)、CN100528838C(02)、CN101528694A(831)、CN101528693A、CN101508744A(304)、CN103153952A(03)、CN103492948A、CN107793502Aの特許出願文献では、各種の異なる置換基を有するカルバゾリルオキシムエステル化合物が開示されており、カラーフィルター、ブラックマトリックス、フォトスペーサー、液晶分割配向などの材料やデバイスに使用されている。彩度又は隠蔽力を高めるために、光硬化処方中の顔料の含有量が高くなりつつあり、特に顔料含有量の高いブラックフォトレジストでは、硬化過程において顔料の吸収により光エネルギーの利用率が小さくなり、このため、より高感度の光開始剤又は光開始剤組成物の開発が期待され、従来の光開始剤に対する増感も感度の向上方法の1つである。従来技術に記載の増感剤として、例えば特許CN100528838Cにおいて、ベンゾフェノン及びその誘導体、チオキサントン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、クマリン誘導体、カンファーキノン、フェノチアジン及びその誘導体、3-(アロイルメチレン)チアゾリン、ロダニン及びその誘導体、エオシン、ローダミン、アクリジン、アントシアニン、メロシアニン染料、第三級アミン化合物が開示されており、これらのうち、ベンゾフェノン及びその誘導体、チオキサントン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、クマリン誘導体が好ましい。実験によれば、これらの増感剤はカルバゾリルオキシムエステルと混合して使用される場合、満足のいく増感効果を示さず、例えばエオシン、アントシアニン、フェノチアジンなどの化合物は、フェノール性ヒドロキシ基又はアニリノ基を含有することから、光硬化性組成物の処方の光硬化効率の低下を招き、好ましい4種類の化合物では、これら自体が光開始剤であるが、カルバゾリルオキシムエステル化合物と比較すると、光開始効率がはるかに低く、カルバゾリルオキシムエステルと混合して使用される場合にも、相乗増感作用を示していない。このため、実際には従来技術では好適な増感剤がなかった。
【0003】
ただし、技術者は露光感度、解像度、熱安定性などの性能を向上させることに取り込んでおり、従来の製品や処方の技術では常に新しい課題に直面している。
【発明の概要】
【0004】
発明者らは研究したところ、式Iのようなアシルカルバゾール誘導体はカルバゾリルオキシムエステルとともに特定の割合で使用されると、顕著な増感作用を果たし、増感効率が従来技術で開示された化合物よりもはるかに高いことを見出し、このため、第1の態様では、増感剤とカルバゾリルオキシムエステルを含有する光開始剤組成物を提案しており、増感剤は、例えば式Iで示されるアシルカルバゾール誘導体、式II-A、II-B、II-Cで示されるアシルベンゾカルバゾール誘導体、式II-D、式II-Eで示されるアシルジベンゾカルバゾール誘導体、及び式II-F、II-G、II-Hで示される縮合環カルバゾール誘導体から選ばれ、カルバゾリルオキシムエステルは、式III、式IV-A~IV-Eで示される化合物である。
【化1】
(式中、
1、R2、R4、R5、R7、R8、R24、R25、R27、R28、R34、R35、R37、R38、R41、R42、R44、R45、R47、R48、R54、R55、R61、R62、R67、R68、R102~R108、R112、R114、R115、R117、R118、R121、R122、R124~R127は、それぞれ独立して、H、ハロゲン原子、C1~C8アルキル基、C1~C8アルコキシ基、CNであり、
11、R12、R14、R15、R17、R18、R71、R72、R74、R75、R84、R85、R87、R88、R91、R92、R94、R97、R98は、それぞれ独立して、H、C1~C8アルキル基、C1~C8アルコキシ基、ハロゲン原子、CN、NO2であり、
6、R26、R36、R46、R56、R66、R106、R116は、それぞれ独立して、H、ハロゲン原子、CN、C1~C8アルキル基、C1~C12アルキルアシル基、C5~C6置換C1~C3アルキルアシル基、C6~C20アロイル基、C4~C20ヘテロアリールアシル基、
であり、又は、上記基は、隣接するほかの置換基とともに母体構造に連結されて5員~7員環状を構成してもよく、これらのうち、C6~C20アロイル基及びC4~C20ヘテロアロイル基上の置換基は、H、ハロゲン原子、R40、OR50、SR50、NR5152、COOR50、CONR5152を含み、
9、R29、R39、R49、R59、R69、R19、R79、R89、R99は、それぞれ独立して、C1~C12直鎖又は分岐アルキル基、C2~C12アルケニル基、C3~C12アルケニルアルキル基であり、ここでの炭素原子上の水素は、非置換、又は、フェニル基、C5~C6シクロアルキル基、C3~C6複素環式基、ハロゲン、COOR20、OR20、SR20、PO(OCn2n+12、Si(Cn2n+13のうちの1つ又は複数の基で置換され、nは1~4の整数であり、又は、
9、R29、R39、R49、R59、R69、R19、R79、R89、R99は、それぞれ独立して、C3~C12アルキル基、C3~C12アルケニルアルキル基であり、そのアルキル鎖はO、S、SO、SO2、CO、COOのうちの1つ又は複数により隔てられ、又は、
9、R29、R39、R49、R59、R69、R19、R79、R89、R99は、それぞれ独立して、C2~C12アルキレン基、C4~C12二重結合含有アルキレン基であり、前記C2~C12アルキレン基、C4~C12二重結合含有アルキレン基の末端に連結される基は、R9、R29、R39、R49、R59、R69、R19、R79、R89、R99のそれぞれが元々連結する基と同じであり、すなわち、対称又は非対称的なN,N’-ジカルバゾール構造を構成し、又は、
9、R29、R39、R49、R59、R69、R19、R79、R89、R99は、それぞれ独立して、フェニル基であり、フェニル基は、非置換、又は、C1~C8アルキル基、ハロゲン原子、OR20、SR20、COR30、CN、COOH、
のうちの1つ又は複数の基で置換され、
16、R76、R86、R96、R116は、それぞれ独立して、C6~C20アロイル基、C4~C20ヘテロアリールアシル基、NO2、4,5-ジフェニルイミダゾール-2イルであり、R16、R76、R86、R96、R116が、それぞれ独立して、C6~C20アロイル基又はC4~C20ヘテロアリールアシル基である場合、その芳香環又はヘテロ芳香環上のアシルオルト位置置換基はカルバゾール環に連結されてもよく、
13、R73、R83、R93、R113は、それぞれ独立して、C1~C8アルキル基、末端がC5~C6シクロアルキル基又はフェニル基で置換されたC1~C3アルキル基であり、又は、上記アルキル基は隣り合う母体環上の炭素又は炭素上の置換基に連結されて環状となってもよく、その条件として、対応する同一分子上のR16、R76、R86、R96はそれぞれ独立してC6~C20アロイル基又はC4~C10ヘテロアロイル基であり、又は、
13、R73、R83、R93は、それぞれ独立して、C6~C20アリール基、C6~C20アロイル基、C4~C20ヘテロアロイル基であり、その条件として、対応する同一分子上のR16、R76、R86、R96は、それぞれ独立して、C6~C20アロイル基、C4~C20ヘテロアリールアシル基、NO2、4,5-ジフェニルイミダゾール-2イル
であり、
10、R70、R80、R90、R110、R120、R130は、それぞれ独立して、C1~C12アルキル基又はC6~C20アリール基であり、好ましくは、メチル基又はフェニル基であり、
Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6、Ar7、Ar8は、それぞれ独立して、C6~C20アロイル基、C4~C20ヘテロアロイル基であり、ここで、Ar1、Ar2、Ar5上のアシルオルト位置はO、S原子を介してカルバゾール環に連結されてもよく、
Yは直鎖又は分岐C1~C3アルキレン基であり、
m=0又は1であり、
上記の全てのC6~C20アリール基及びC4~C20ヘテロアリール基上の置換基は、H、ハロゲン原子、CN、R40、OR50、SR50、NR5152、COOR50、CONR5152を含み、ここで、ハロゲン原子は好ましくはフッ素であり、
20、R30は、それぞれ独立して、H;C1~C8アルキル基;1つ又は複数のハロゲン原子、C5~C6シクロアルキル基で置換されたC1~C8アルキル基;フェニル基;1つ又は複数のハロゲン原子で置換されたフェニル基;C1~C4アルキルアシル基であり、
40、R50は、それぞれ独立して、C1~C8アルキル基;1つ又は複数のF、Cl、ヒドロキシ基で置換されたC1~C8アルキル基;1つ又は複数の酸素原子スペーサを含有し、ヒドロキシ基、アセトキシ基で置換されたC3~C8アルキル基;O、S、Nヘテロ原子を1つ又は2つ含有する5員又は6員環;フェニル基;C1~C4アルキルフェニル基であり、
51、R52は、それぞれ独立して、C1~C4アルキル基、ヒドロキシ基で置換されたC1~C4アルキル基であり、又は、
NR5152は環状構造
である。
【0005】
好ましくは、上述したC6~C20アロイル基のうちアリール基は、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基など、好ましくはフェニル基であり、これらの置換基は、H、ハロゲン原子、R40、OR50、SR50、NR5152などを含み、ベンゼン環上の置換基は、好ましくは4位、2位又は3,4-位、2,4-位、2,6-位、3,5-位、3,4,5-位、2,4,6-位にある。
【0006】
好ましくは、上述したC4~C20ヘテロアロイル基のうちヘテロアリール基は、例えばチエニル基、ベンゾ[b]チエニル基、チアントレニル基、フラニル基、ジベンゾフラニル基、ベンゾピラニル基、チアキサンテニル基、フェノチアジン基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、カルバゾリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インジル基、インドリル基、イソインドリル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ナフチリジニル基、好ましくはチエニル基である。
【0007】
好ましくは、増感剤とカルバゾリルオキシムエステルとのモル比の範囲は0.01:1~2:1、好ましくは0.1:1~1.4:1、より好ましくは0.22:1~1.3:1である。
【0008】
好ましくは、増感剤式Iで示される化合物は、式I-1~式I-36で示される以下の化合物から選ばれる1種もしくはこれらの任意の混合物である。
【化2】


【0009】
好ましくは、増感剤としての式II-A~式II-Hで示される化合物は、式II-1~式II-16で示される以下の化合物から選ばれる1種もしくはこれらの任意の混合物である。
【化3】
【0010】
好ましくは、カルバゾリルオキシムエステルとしての式IIIで示される化合物は、式III-1~式III-17で示される以下の化合物もしくはこれらの任意の混合物から選ばれる。
【化4】
【0011】
好ましくは、カルバゾリルオキシムエステルとしての式IV-A~IV-Eは、式IV-1~式IV-21で示される以下の化合物もしくはこれらの任意の混合物から選ばれる。
【化5】
【0012】
好ましくは、アシルカルバゾール誘導体である式I、式II-A~II-E及び式II-Gで示される化合物の製造方法は以下のとおりである。対応する置換カルバゾール又はベンゾカルバゾールと、対応するアシル化試薬、例えば塩化アシル又は酸無水物とはフリーデル・クラフツアシル化反応を1回又は2回行って、アシル化産物を得て、アロイル基又はヘテロアロイル基上に活性置換基があり反応を持続する必要がある場合、対応する試薬と反応を持続し、例えば、フッ素原子を1つのアルコキシ基、アルキルチオ基、二級アミノ基、フェノキシ基、フェニルチオ基又は類似の試薬で置換し、カルボン酸とアルコール系化合物とを、エステル化反応などを引き起こし、最終的な式I、式II-A~II-E及び式II-Gで示される化合物を得る。
【0013】
II-Fの製造方法
対応する1位及び9位の未置換カルバゾール化合物をo-ブロモ安息香酸とN置換反応させて、N-(カルボキシルフェニル)カルバゾール誘導体中間体を得て、この中間体を濃硫酸又はポリリン酸などの酸で触媒して縮合環化させ、IIFを得る。
【0014】
II-Hの製造方法
対応する1位、6位及び9位の未置換カルバゾール化合物を原料として、ステップ1としてブロモカルボン酸と反応し、N-アルキル化を起こし、ステップ2として酸触媒を用いて縮合反応を行い、又はカルボン酸を塩化アシル化してからフリーデルクラフツアシル化し、縮合環カルバゾール誘導体を得て、ステップ3として対応するフリーデルクラフツアシル化反応をしてII-Hを得る。
【0015】
カルバゾリルオキシムエステルの製造方法の1つとして、対応するアシルカルバゾール母体化合物を原料として、オキシム化、エステル化を経て、カルバゾリルオキシムエステルを得る。
【0016】
第2の態様では、増感剤化合物例えば式I-34化合物0.1モル量を、別のカルバゾリルオキシムエステル例えば式IV-6化合物0.1モル量と均一に混合し、光開始剤組成物を得る光開始剤組成物の製造方法を提供する。もしくは、光硬化性組成物の製造において、1種又は複数種類の増感剤化合物と1種又は複数種類のカルバゾリルオキシムエステルを他の成分と直接混合し、ただし、増感剤の全モル量とカルバゾリルオキシムエステルの全モル量との比が、2:1以下、好ましくは0.1:1~1.4:1、より好ましくは0.22:1~1.3:1である。
【0017】
第3の態様では、本発明は、
a.少なくとも1種の式I、式IIA~IIHで示される増感剤と少なくとも1種の式III、式IVA-IVFで示されるカルバゾリルオキシムエステル化合物を含有し、選択的に、処方の固形分の全質量に対して成分aの質量の割合が0.2~10%、好ましくは1~8%である光開始剤組成物と、
b.少なくとも1種のフリーラジカル重合性化合物であって、選択的に、前記フリーラジカル重合性化合物はアクリレート系化合物、メタクリレート系化合物、アクリレート基又はメタクリレート基を含有する樹脂又はこれらの任意の混合物から選ばれてもよいフリーラジカル重合性化合物と、
を含有する光硬化性組成物をさらに提供する。
【0018】
好ましくは、フリーラジカル重合性化合物中、低分子量の化合物の例として、アクリル酸アルキル、アクリル酸シクロアルキル、アクリル酸ヒドロキシアルキル、アクリル酸ジアルキルアミノアルキル、メタクリル酸アルキル、メタクリル酸シクロアルキル、メタクリル酸ヒドロキシアルキル、メタクリル酸ジアルキルアミノアルキル、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸エチル、ポリシロキサンアクリレートが挙げられ、他の例として、アクリロニトリル、酢酸ビニル、ビニルエーテル、スチレン、N-ビニルピロリドンが挙げられる。2つ以上の二重結合を含有する化合物の例として、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオールのジアクリレート、トリヒドロキシメタントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アクリル酸ビニル、トリアリルイソシアヌレートなどが挙げられる。高分子量の二重結合化合物の例として、オリゴマーと通称するクラスの物質、例えばアクリル化エポキシ樹脂、アクリル化ポリエステル樹脂の不飽和ポリエステル樹脂、アクリル化ポリエーテル樹脂、アクリル化ポリウレタン樹脂が挙げられ、これらは一般に分子量が500~3000である。
【0019】
第4の態様では、本発明は、上記光硬化性組成物に加えて、インクの色、印刷用途などの性能の要件に応じて他の必要な成分を添加してもよいインク又は塗料をさらに提供する。該インク又は塗料は、パターン印刷、3Dプリント、PCBソルダーマスク、液体又はドライフィルムレジスト材料、基材保護コーティングなどに適用できる。
【0020】
第5の態様では、本発明は、上記光硬化性組成物に加えて、バインダの性能の要件に応じて他の必要な成分を添加してもよいバインダをさらに提供する。該バインダはガラス、プラスチック、金属製の部品などの粘着に適用できる。
【0021】
ここでの例示に加えて、当業者は従来技術及び光硬化性組成物の用途の必要に応じて他の必要な成分、例えば安定剤、界面活性剤、レベリング剤、分散剤を容易に添加してもよい。
【0022】
第6の態様では、本発明は、
a.少なくとも1種の上記光開始剤組成物であって、処方の固形分の全質量に対してその質量の割合が0.2~10%、好ましくは1~8%である上記光開始剤組成物と、
b.多官能アクリレートモノマーと、
c.アルカリ可溶性樹脂と、
d.顔料と、
e.溶媒と、
を含有するフォトレジストをさらに提供する。
【0023】
成分b中の多官能アクリレートの例として、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールアクリレートが挙げられ、成分cのアルカリ可溶性樹脂の例は、カルボン酸基を有するポリアクリレート、例えばメタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸など、一般的なモノマーと必要な割合で共重合した共重合体であり、一般的なモノマーは例えばアクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸ヒドロキシエチル、スチレン、ブタジエン、マレイン酸無水物などであり、共重合体の例として、好ましくはメタクリル酸メチルとメタクリル酸共重合体、メタクリル酸ベンジルとメタクリル酸共重合体、メタクリル酸メチルとメタクリル酸ブチル及びメタクリル酸とスチレン共重合体である。
【0024】
成分dの顔料の例は、例えばC.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントブルー15:6、ソルベントブルー25、カーボンブラック、チタンブラック、C.I.ピグメントブラック1である。
【0025】
成分b、成分c、成分d及び成分eに関する従来文献は多くあり、例えばCN103153952Aであり、当業者は必要に応じて選択してもよい。
【0026】
成分aを光開始剤とすることに加えて、光硬化性組成物、特にフォトレジストの性能に有利である限り、他の従来の商品化又は従来技術に既存の光開始剤又は開始助剤、例えばOmnirad BDK、Omnirad 369、Omnirad 379、Omnirad 389、Omnirad TPO、Omnirad 819、Omnirad ITX、Omnirad DETX、Omnirad 784を添加してもよい。OmniradはIGM樹脂社の商品である。
【0027】
上記成分に加えて、添加し得る他の樹脂の例として、ポリメタクリル酸アルキル、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ノボラック樹脂、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリイミドが挙げられる。
【0028】
第7の態様では、ブラックフォトレジストを提供し、上記フォトレジスト中の顔料が良好に分散したブラック顔料、例えばカーボンブラック又はチタンブラックである場合、ブラックフォトレジストが得られる。ブラックフォトレジストはブラックマトリックス、セルギャップ(Cell gap)のスペーサー、マイクロレンズの製造に用いられ得る。
【0029】
第8の態様では、本発明のフォトレジスト及び/又はブラックフォトレジストを原料として用いてカラーフィルターの加工過程を経ると、カラーディスプレイの重要な部材であるカラーフィルターデバイスが得られる。
【0030】
本発明の光開始剤組成物を含有するいずれかの材料、例えばインク、塗料、バインダ、フォトレジスト、ブラックフォトレジストを原料として用いて、必要な工程で加工すると、任意の物品が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下の非限定的な実施例及び比較例は本発明をより詳細に述べることができる。
【0032】
光源設備
365nm LED面光源、藍天特灯発展有限公司製;
テスト設備
実体顕微鏡、COVS-50G、広州市明美光電技術有限公司製;
実験材料
式I-1化合物:化合物製造例3由来;
式I-27化合物:化合物製造例4由来;
式I-34化合物:化合物製造例1由来;
式II-1化合物:化合物製造例5由来;
式II-3化合物:化合物製造例6由来;
式II-5化合物:化合物製造例2由来;
Omnirad DETX:IGM樹脂公司製の光開始剤製品;
Esacure 3644:IGM樹脂公司製の光開始剤製品;
Omnirad EMK:IGM樹脂公司製の光開始剤製品;
OXE 02:式III-1化合物、BASF公司製の光開始剤製品;
OXE 03:式IV-6化合物、BASF公司製の光開始剤製品;
NCI 831:式III-9化合物、ADEKA株式会社製品;
PBG 304:式III-2化合物、常州強力電子新材料股フン有限公司製品;
Photomer 6010:脂肪族ポリウレタントリアクリレート、オランダのIGM樹脂公司製品;
DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、天津天驕化工有限公司製品;
HPMA:ポリマレイン酸、米国アラジン工業社製品。
【0033】
製造例
アシルカルバゾール誘導体の製造
化合物製造例1 9-エチル-3,6-ジ[4-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)ベンゾイル]カルバゾール(式I-34化合物)の製造
1a.9-エチル-3,6-ジ(4-フルオロベンゾイル)カルバゾール
N-エチルカルバゾール19.5gをジクロロエタン250mlに加えて溶解し、次に三塩化アルミニウム34gを加え、0~-5℃で保温しながら溶液にp-フルオロベンゾイルクロリド40gを滴下し、その後、反応液を0~5℃で保温して15時間反応させた。反応液をバッチ式で0℃の10%HCl溶液100mlに加え、添加終了後、30min撹拌した。30分間静置した後分液し、ジクロロエタン相を2%水酸化ナトリウム溶液50mlで30min洗浄し、ジクロロエタン相を分離した。ジクロロエタン溶液を減圧蒸留してジクロロエタンを回収し、残留物に酢酸エチル結晶80mlを加え、産物30.5gを得て、白色粉末の含有量は98.5%、収率は69.5%であった。
1b.9-エチル-3,6-ジ[4-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)ベンゾイル]カルバゾール
ステップ1aで製造した9-エチル-3,6-ジ(4-フルオロベンゾイル)カルバゾール30g、2,2,3,3-テトラフルオロプロパノール25g、水酸化ナトリウム8gをピリジン200mlに溶解し、70℃で18h反応させた。減圧蒸留して、ピリジン及び余分な2,2,3,3-テトラフルオロプロパノールを除去した。残留物に水100ml、ジクロロエタン250mlを加えて、1h撹拌した。水相を分離して、ジクロロエタン溶液を水100mlで2回洗浄した。減圧蒸留してジクロロエタンを回収し、残留物に酢酸エチル150mlと活性炭2gを加え、1時間加熱還流し、活性炭をろ過し、ろ液を減圧蒸留して酢酸エチル約100mlを除去した後、降温して結晶化し、ろ過した後、ろ過ケーキを乾燥させて浅黄色粉末27.8gを得て、含有量は98.5%、収率は61.4%であった。1H-NMR(CDCl3)を通じてこの構造を確認したところ、δ[ppm]: 1.512 (t, 3H), 4.425-4.483 (m, 6H), 5.949-6.277 (m, 2H), 7.016-7.045 (m, 4H), 7.496-7.517 (d, 2H), 7.844-7.868 (d, 4H), 7.990-8.011 (d, 2H), 8.534 (s, 2H)であった。
【0034】
化合物製造例2 11-(2-エチルヘキシル)-5,8ジ[4-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)ベンゾイル]-11H-ベンゾ[a]カルバゾール(式II-5化合物)の製造
2a.11-(2-エチルヘキシル)-5,8ジ(4-フルオロベンゾイル)-11H-ベンゾ[a]カルバゾール
50mlの1つ口フラスコにB03D 2.0g、ジクロロエタン20mlを加えて溶解し、塩化亜鉛0.2g、2-フルオロベンゾイルクロリド2.3gを加えて、80℃で撹拌しながら10時間反応させた。降温後、反応液を水20mlで2回洗浄し、ジクロロエタン溶液を乾固まで減圧濃縮させ、茶色粘稠状物4.0gを得て、精製せずに2bの反応に用いた。
2b.11-(2-エチルヘキシル)-5,8ジ[4-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)ベンゾイル]-11H-ベンゾ[a]カルバゾール
ステップ2aの産物である11-(2-エチルヘキシル)-5,8ジ(4-フルオロベンゾイル)-11H-ベンゾ[a]カルバゾール4.0gをピリジン20mlで50mlの1つ口フラスコに溶解し、次に、テトラフルオロプロパノール2.2g、水酸化ナトリウム1.2gを加え、80℃に昇温して5時間撹拌した。反応液を水100mlに滴下し、その後、ジクロロエタン100mlで1h撹拌した後、静置して分層した。分離したジクロロエタン溶液を乾固まで減圧濃縮させ、褐色固体4.7gを得た。この固体を酢酸エチル20mlとエタノール20mlの混合溶媒で加熱して溶解し、活性炭0.25gを加えて1時間還流し、熱ろ過し、ろ液を降温した後、黄色結晶を析出させ、乾燥後、2.5gを秤量し、2段反応の全収率は51.3%、含有量は98.51%であった。1H-NMR(CDCl3)を通じてこの該構造を確認したところ、δ[ppm]: 0.754-0.789 (m, 6H), 1.126-1.328 (m, 8H), 2.113 (s, 1H), 4.369-4.452 (t, 2H), 4.513-4.599 (t, 2H), 4.928 (m, 2H), 4.994-5.342 (m, 1H), 5.537-5.885 (m, 1H), 7.251-7.272 (m, 4H), 7.430-7.455 (d, 1H), 7.566-7.811 (m, 6H), 7.950-7.979 (d, 1H), 8.430 (s, 1H), 8.571 (s, 1H), 8.668-8.695 (d, 1H), 8.736-8.764 (d, 1H)であった。
【0035】
化合物製造例3 3-(2-メチルベンゾイル)-9-エチルカルバゾールの製造(式I-1化合物)
特許CN100528838Cの明細書の第81頁の実施例1における1.aの操作を参照して、塩化ベンゾイルをo-メチルベンゾイルクロリドに変更して、40mlのCH2Cl2中のN-エチルカルバゾール7.83g(40.1mmol)にAlCl3 5.88g(44.1mmol)を加え、10℃以下に保持して、o-メチルベンゾイルクロリド6.5g(42mmol)を滴下し、その後、室温で4時間撹拌し、反応混合物を塩酸含有氷水に滴下し、有機相を分離して中性となるまで水洗し、無水MgSO4で有機相を乾燥させ、その後、シリカゲルカラムにてジクロロメタン-n-ヘキサン(1:1)を用いて純化し、白色固体9.45gを得て、収率は75.1%、含有量は98.51%であった。1H-NMR(CDCl3)を通じてこの構造を確認したところ、δ[ppm]: 1.431/1.455/1.479 (t, 3H); 2.349 (s, 3H); 4.352/4.376/4.400/4.424 (quartet, 2H); 7.246-7.530 (m, 8H); 7.989/7.994/8.018/8.023 (dd, 1H); 8.065/8.090 (d, 1H); 8.561/8.564 (d, 1H)であった。
【0036】
化合物製造例4 3,6-ジ(2-メチルベンゾイル)-9-(3-メチルブチル)カルバゾール(式I-27化合物)の製造
N-(3-メチルブチル)カルバゾール4.5g(19mmol)を1,2-ジクロロエタン20mlに溶解し、低温浴にて-5℃に降温し、無水三塩化アルミニウム5.3g(40mmol)を加え、o-メチルベンゾイルクロリド6.0g(38.8mmol)とジクロロエタン10gの溶液を滴下し、5℃で保温して3h反応させた。10℃以下の濃塩酸20mlと水40mlに反応液を滴下し、30mim撹拌して静置し分層し、分離した有機相を水80mlで中性となるまで洗浄した。ジクロロエタンを減圧濃縮により除去し、浅黄色ガラス状物10.0gを得て、無水エタノール150mlを加え、加熱還流後完全に溶解し、降温して結晶を析出させ、ろ過して、ろ過ケーキを乾燥させて白色粉末8.0gを得て、HPLC分析をしたところ、含有量は98.53%、収率は96.4%であった。1H-NMR(CDCl3)を通じてこの構造を確認したところ、δ[ppm]: 1.031/1.052 (d, 6H); 1.681-1.815 (m, 3H); 2.344 (s, 6H); 4.347/4.374/4.397 (t, 2H); 7.289-7.467 (m, 10H); 8.018/8.023/8.047/8.052 (dd, 2H); 8.535/8.540 (s, 2H)であった。
【0037】
化合物製造例5 5-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-11-(2-エチルヘキシル)-11H-ベンゾ[a]カルバゾール(式II-1化合物)の製造
特許CN103153952Aの明細書の第63頁の実施例18に記載の18.aの一部の操作を参照して、1L反応フラスコにて、CH2Cl2 400mlに11-(2-エチルヘキシル)-11H-ベンゾ[a]カルバゾール47.16g(143.0mmol)を溶解し、AlCl3 20.0g(150mmol)を加え、0℃で保温して、溶液に2,4,6-トリメチルベンゾイルクロリド27.45g(150mmol)を滴下し、その後、室温で2時間撹拌し、反応混合物を氷水に注入し、CH2Cl2溶液相を分離し、さらにCH2Cl2で水相を2回抽出し、有機相を合わせて、中性となるまで水洗し、MgSO4で乾燥させ、濃縮させて大部分のCH2Cl2を除去した後、n-ヘキサン230mlを添加し、米黄色固体を析出させ、減圧乾燥後、65.0gを秤量し、含有量は99.1%、収率は95.6%であった。1H-NMRスペクトルを通じてこの構造を確認したところ、5-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-11-(2-エチルヘキシル)-11H-ベンゾ[a]カルバゾールであり、δ[ppm,CDCl3]: 0.805/0.823/0.841 (t, 3H); 0.872/0.891/0.909 (t, 3H); 1.184-1.408 (m, 9H); 2.198 (s, 6H); 2.390 (s, 3H); 4.670-4.785 (m, 2H); 6.946 (s, 2H); 7.271/7.288 (d, 1H); 7.450/7.453//7.471/7.474//7.489/7.491 (dt, 1H); 7.550/7.571 (d, 1H); 7.667/7.670//7.684/7.687/7.691//7.705/7.709 (dt, 1H); 7.720/7.724//7.738/7.742/7.746//7.759/7.762 (dt, 1H); 7.939/7.958 (d, 1H); 8.361 (s, 1H); 8.643/8.662 (d. 2H); 9.629/9.632//9.650/9.653 (dd, 1H)であった。
【0038】
化合物製造例6 5-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-8-[2-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)ベンゾイル]-11-(2-エチルヘキシル)-11H-ベンゾ[a]カルバゾール(式II-3化合物)の製造
特許CN103153952Aの明細書の第63~64頁の実施例18に記載の18.a及び18.bの一部の操作を参照して、2-メトキシエタノールを2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロパノールに変更してエーテル化反応を行い、エーテル化産物を抽出し、米黄色固体を得て、1H-NMRスペクトルを通じてこの構造を確認したところ、5-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-8-[2-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)ベンゾイル]-11-(2-エチルヘキシル)-11H-ベンゾ[a]カルバゾールであった。δ[ppm, CDCl3]: 0.795/0.819/0.843/0.870/0.894 (dt, 6H); 1.170-1.465 (m, 9H); 2.189 (s, 6H); 2.398 (s, 3H); 4.243/4.281/4.318 (t, 2H); 4.660-4.817 (m, 2H); 5.072/5.091/5.110//5.249/5.267/5.286//5.425/5.444/5.463 (tt, 1H); 6.958 (s, 2H); 6.958/6.989 (d, 1H); 7.158/7.183/7.207 (t, 1H); 7.456-7.549 (m, 3H); 6.682-7.795 (m, 3H); 8.362 (s, 1H); 8.607/8.611 (d, 1H); 8.621/8.649 (d. 1H); 9.540/9.544//9.568/9.572 (dd, 1H)であった。
【0039】
組成物製造例1:
式II-5で示される化合物12g、OXE-02 28gを乳鉢に入れて粉砕して混合し、アシルカルバゾール誘導体とカルバゾリルオキシムエステル光開始剤とのモル比が0.22:1である組成物40gを得た。
【0040】
組成物製造例2:
式I-34で示される化合物12g、OXE-02 28gを乳鉢に入れて粉砕して混合し、アシルカルバゾール誘導体とカルバゾリルオキシムエステル光開始剤とのモル比が0.27:1である組成物40gを得た。
【0041】
組成物製造例3:
式II-1で示される化合物12g、OXE-02 28gを乳鉢に入れて粉砕して混合し、アシルカルバゾール誘導体とカルバゾリルオキシムエステル光開始剤とのモル比が0.37:1である組成物40gを得た。
【0042】
組成物製造例4:
式I-27で示される化合物12g、OXE-03 28gを乳鉢に入れて粉砕して混合し、アシルカルバゾール誘導体とカルバゾリルオキシムエステル光開始剤とのモル比が0.75:1である組成物40gを得た。
【0043】
組成物製造例5:
式I-34で示される化合物12g、OXE-03 12gを乳鉢に入れて粉砕して混合し、アシルカルバゾール誘導体とカルバゾリルオキシムエステル光開始剤とのモル比が1.16:1である組成物24gを得た。
【0044】
組成物製造例6:
式II-5で示される化合物12g、OXE-03 28gを乳鉢に入れて粉砕して混合し、アシルカルバゾール誘導体とカルバゾリルオキシムエステル光開始剤とのモル比が0.41:1である組成物40gを得た。
【0045】
アルカリ可溶性樹脂の製造
メタクリル酸ベンジル18g、メタクリル酸6g、メタクリル酸ヒドロキシエチル6g、アゾビスイソブチロニトリル1.5g、ドデシルメルカプタン0.6g、トルエン200mlを1L定圧滴下漏斗に投入し、500mlの4つ口フラスコにトルエン100mlを投入して窒素ガス置換を行い、80℃に昇温し、漏斗中の溶液を滴下し、6h反応後、降温して濾出し、白色のアルカリ可溶性樹脂24gを得た。
【0046】
ブラックスラリーの製造
アルカリ可溶性樹脂50g、P25カーボンブラック50g、DPHA 100g、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート250gを500mlビーカーに投入し、高速せん断混合機を用いて3000r/minの回転数で15min混合し、ブラックスラリーを得た。
【0047】
フォトレジスト実施例1~14及び比較例1~14
表1~4中の前記各成分を用いて各実施例及び比較例を調製した。開始剤及び増感剤は、組成物製造例における組成物、又は表中の割合で混合してからPMAに溶解し、次に組成物溶液をブラックスラリーと所定の割合で混合したものを用いてもよい。各成分を均一に混合した後、10μmワイヤーロッドでスライドガラスに塗布し、90℃のオーブンで5minベークし、365nm光源とマスクを組み合わせて硬化させ、1%NaOH溶液を用いて25℃で現像し、純水で10s浸漬して洗浄し、90℃のオーブンで30minベークした後、現像画像の線幅を測定した。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
【表5】
【0053】
表1中の実施例及び比較例では、塗布、硬化、現像、測定を行い、データを表6に示し、結果から明らかなように、OXE 02を開始剤、式II-1で示される化合物を増感剤として用いた場合、これらの使用の割合が本発明で求められる範囲内である実施例は、現像線幅の値が対応する比較例よりも顕著に大きく、感度が、増感剤を使用しなかったり、増感剤を単独で使用したり、増感剤の使用量が本発明で求められる値の範囲外である比較例よりも明らかに高く、特に比較例3の結果から明らかなように、式II-1で示される化合物を単独で使用すると、重合開始作用は一切なかった。
【0054】
【表6】
【0055】
表2中の実施例及び比較例では、塗布、硬化、現像、測定を行い、データを表7に示し、結果から明らかなように、OXE 02を開始剤、式I-34で示される化合物を増感剤として用いた場合、これらの使用の割合が本発明で求められる範囲内である実施例は、現像線幅の値が対応する比較例よりも顕著に大きく、感度が、増感剤を使用しなかったり、増感剤を単独で使用したり、増感剤の使用量が本発明で求められる値の範囲外である比較例よりも明らかに高かった。
【0056】
【表7】
【0057】
表3中の実施例及び比較例では、塗布、硬化、現像、測定を行い、データを表8に示し、結果から明らかなように、OXE 03を開始剤、式II-5で示される化合物又は式I-34で示される化合物を増感剤として用いた場合、これらの使用の割合が本発明で求められる範囲内である実施例は、現像線幅の値が対応する比較例よりも顕著に大きく、感度が、増感剤を使用しなかったり、増感剤の使用量が本発明で求められる値の範囲外である比較例よりも明らかに高かった。
【0058】
【表8】
【0059】
表4中の実施例及び比較例では、塗布、硬化、現像、測定を行い、データを表9に示し、結果から明らかなように、OXE 02を開始剤、式I-27で示される化合物、式II-5で示される化合物又は式II-3で示される化合物を増感剤として用いた場合、その硬化、現像線幅の値が対応する比較例よりも顕著に大きく、感度が、増感剤を使用しなかった比較例、及びEsacure 3644、Omnirad DETX、EMKを使用して増感した比較例よりも明らかに高かった。
【0060】
【表9】
【0061】
表5の実施例及び比較例では、塗布、硬化、現像、測定を行い、データを表10に示し、結果から明らかなように、NCI 831、PBG 304を開始剤、式I-35で示される化合物を増感剤として用いた場合、その硬化、現像線幅の値が対応する比較例よりも顕著に大きく、感度が、増感剤を使用しなかった比較例よりも明らかに高かった。
【0062】
【表10】
【0063】
バインダの実施例16、17及び比較例15
表11の各成分を用いて各実施例及び比較例を調製し、各成分を均一に混合した後、50μmワイヤーロッドでスライドガラスに塗布し、365nm光源とマスクを組み合わせて硬化させ、硬化後、フィルム重量を測定し、その後、室温でのアセトンにて36h浸漬した後、再度フィルム重量を測定し、ゲル転化率を算出した。
【0064】
【表11】
【0065】
表11の比較例及び実施例のテストデータを表12に示す。データから分かるように、実施例16及び実施例17では、本発明による光硬化性組成物のバインダが使用されており、光を照射すると、ゲル転化率は、オキシムエステル光開始剤を単独で使用した比較例15よりも明らかに高かった。
【0066】
【表12】
【0067】
前記のように、本発明によるアシルカルバゾール誘導体とカルバゾリルオキシムエステルを含有する光開始剤組成物は、光硬化性組成物において、硬化活性が、同種のカルバゾリルオキシムエステル光開始剤を単独で使用する場合よりも顕著に高く、アシルカルバゾール誘導体とカルバゾリルオキシムエステルとのモル比が0.1~1.4である場合、最適な増感効果を示す。