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特許7377897高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムの調製方法および使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムの調製方法および使用
(51)【国際特許分類】
   C08B 11/12 20060101AFI20231102BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20231102BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20231102BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
C08B11/12
H01M4/62 Z
H01M4/139
H01M4/66 A
【請求項の数】 4
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022028859
(22)【出願日】2022-02-28
(65)【公開番号】P2023008785
(43)【公開日】2023-01-19
【審査請求日】2022-04-15
(31)【優先権主張番号】202110753054.5
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522077454
【氏名又は名称】重慶力宏精細化工有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】聶 ▲ヂェン▼▲ヂェン▼
(72)【発明者】
【氏名】夏 銀鳳
(72)【発明者】
【氏名】李 友▲チー▼
(72)【発明者】
【氏名】張 海涛
(72)【発明者】
【氏名】杜 ▲クン▼
(72)【発明者】
【氏名】余 慶
(72)【発明者】
【氏名】周 子来
(72)【発明者】
【氏名】劉 維
(72)【発明者】
【氏名】何 玉明
(72)【発明者】
【氏名】張 菁
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112724266(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105330751(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B
H01M 4/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムの調製方法であって、
セルロース、極性溶媒の水溶液、水酸性化ナトリウム溶液をエタノール溶液に混合し、真空にして空気を除去し、窒素を充填して不活性雰囲気を形成し、前記不活性雰囲気下でアルカリ化反応を行い、反応生成物を常圧下でのエーテル化後に粗CMC-Naを得る工程と、粗CMC-Naを酸性化してCMC-Hを得る工程と、調製したCMC-Hをリチウム塩-エタノール溶液に添加して置換反応させ、高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムを得る工程と、を含み、
アルカリ化反応に使用するセルロース、極性溶媒の水溶液、水酸性化ナトリウム溶液、エタノール溶液重量部の添加量は、それぞれ3~10重量部、2~15重量部、1~8重量部、5~25重量部であり、
前記アルカリ化反応は、原料を指定重量部に応じて反応ケトルに入れ、-10~-25kPaまで1回真空引きした後、窒素3~10kPaを充填し、-25~-80kPaまで2回真空引きした後、窒素3~10kPaを再び充填し、前記アルカリ化反応を行う工程を含み、反応プロセスの窒素圧を3~10kPaに維持し、前記アルカリ化反応の時間は30分であり、
前記エーテル化反応は、アルカリ化反応生成物をモノクロロ酢酸-エタノール溶液に添加して常圧下でエーテル化反応を行う工程を含み、前記モノクロロ酢酸-エタノール溶液中のモノクロロ酢酸の質量濃度は45~65%、前記モノクロロ酢酸-エタノール溶液中のエタノール濃度は93%以上、前記モノクロロ酢酸-エタノール溶液の添加量は2~10重量部、エーテル化反応時間は30~80分であり、
前記酸性化反応は、硫酸溶液に粗CMC-Naを添加して常圧系で酸性化反応を行う工程を含み、前記硫酸溶液の濃度は10~40%、酸性化時間は60~180分であり、
前記置換反応のpHは6.5~10.0、置換反応時間は30~120分であり、
前記極性溶媒の水溶液は、メタノールまたはイソプロパノールであり、
前記極性溶媒の水溶液の濃度は20~85%であり、前記エタノール溶液の濃度は70~95%であり、前記水酸性化ナトリウム溶液の濃度は25~50%である、
ことを特徴とする高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムの調製方法。
【請求項2】
前記高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムの調製方法によって調製した高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムは、
置換度:0.6~1.0
1%粘度:>25000mPa・s
pH:6.5~9.5
純度≧99.7%
との物理的および化学的特性を持っている、
請求項1に記載の高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムの調製方法。
【請求項3】
負極片の調製における請求項に記載の前記高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムの調製方法によって調製した高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムの使用であって、
前記高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムを水に加え、2~4時間攪拌し、混合プロセス中に、添加成分であって、リグノスルホン酸ナトリウムを含み、単層カーボンナノチューブを含み又は含まず、およびグラフェンを含む又は含まない添加成分を加え、高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムおよびリグノスルホン酸ナトリウムを溶解した後、溶液を6~24時間放置し、グラファイトと導電性カーボンブラックとを混合し、前記溶液に加え、850~1500rpmの回転速度で1~3時間分散させ、分散後回転速度を200~500rpmに下げ、スチレン-ブタジエンラテックスを加え、0.5~1時間攪拌を続けてスラリーを得、前記スラリーの粘度を3000~7000mPa・sに調整し、負極の集電体の銅箔にコーティングし、乾燥および圧延後に前記負極片を取得する工程を含む、
ことを特徴とする負極片の調製における高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムの使用
【請求項4】
前記負極片を調製するための各原料の比率は、
グラファイト96~98部、導電性カーボンブラック1~2部、カルボキシメチルセルロースリチウム0.6~1部、スチレン-ブタジエンラテックス1~2部、リグノスルホン酸ナトリウム0.1~0.5部、単層カーボンナノチューブ0~0.5部、グラフェン0~0.5部および水20~70部である、
ことを特徴とする請求項3に記載の負極片の調製における高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムの使用
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、天然高分子材料の改質の技術分野、特に高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムならびにその調製方法および用途に関する。
【背景技術】
【0002】
3Cおよび新エネルギーパワー製品の急速な開発に伴い、3Cおよび新エネルギーパワー製品は、リチウムイオン電池のエネルギー密度および電気化学的性能に対するより高い要求を持っている。エネルギー密度を向上させるには2つの方向性があり、1つは高ニッケル材料、シリコンカーボン材料、シリコン酸素材料などの高エネルギー密度の活性材料を開発すること、もう1つはスラリーシステムで使用される添加剤の量を減らすことである。その結果、高導電性導電剤、高粘度バインダー、分散性の良い分散剤などを使用することにより、活性材料の添加量を増やす。
【0003】
カルボキシメチルセルロースリチウムは、リチウムイオン電池の負極片のスラリーの調製においてスラリーを安定化し、活物質を分散させ、結合を支援する役割を果たす。ただし、カルボキシメチルセルロースリチウムは導電性の低い高分子材料であり、活物質にコーティングすると電気化学的性能が低下してしまう。また、既存のカルボキシメチルセルロースリチウムは粘度が限られているため、添加量が多く、通常1.0~1.5%と調製コストがさらに高くなる。また、カルボキシメチルセルロースの性能にはまだまだ改善の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これを考慮して、本出願は、リチウムイオン電池の負極片の調製に使用されるカルボキシメチルセルロースリチウムの量を減らすことができ、リチウムイオン電池のエネルギー密度および電気化学的性能を改善することができる高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本出願は、最初に、高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムの調製方法を提供する。当該方法は、
セルロース、架橋剤、水酸性化ナトリウム溶液をエタノール溶液に混合し、真空にして空気を除去し、窒素を充填して不活性雰囲気を形成し、不活性雰囲気下でアルカリ化反応を行い、反応生成物を常圧下でのエーテル化後に粗CMC-Naを得る工程と、粗CMC-Naを酸性化してCMC-Hを得る工程と、調製したCMC-Hをリチウム塩-エタノール溶液に添加して置換反応させ、高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムを得る工程と、を含む。
【0006】
さらに、架橋剤は極性溶媒の水溶液であり、さらに、架橋剤の濃度は20~85%である。
【0007】
さらに、エタノール溶液の濃度は70~95%である。
【0008】
さらに、水酸性化ナトリウム溶液の濃度は25~50%である。
【0009】
さらに、原料を指定重量部に応じて反応ケトルに入れ、-10~-25Kpaまで1回真空引きした後、窒素3~10Kpaを充填し、-25~-80Kpaまで2回真空引きした後、窒素3~10Kpaを再び充填し、アルカリ化反応を行う。
【0010】
さらに、反応プロセスの窒素圧は3~10KPaに維持され、アルカリ化反応の時間は30~70分である。
【0011】
さらに、アルカリ化反応生成物をモノクロロ酢酸-エタノール溶液に添加して常圧下でエーテル化反応を行い、さらに、モノクロロ酢酸-エタノール溶液中のモノクロロ酢酸の質量濃度は45~65%であり、モノクロロ酢酸-エタノール溶液中のエタノール濃度は93%以上である。
【0012】
さらに、エーテル化反応時間は30~80分である。
【0013】
さらに、硫酸溶液に粗CMC-Naを添加して常圧系で酸性化反応を行い、さらに、硫酸溶液の濃度は10~40%である。
【0014】
さらに、酸性化反応時間は60~180分である。
【0015】
さらに、リチウム塩-エタノール溶液は、0.5~3重量部のリチウム塩を、65~95%の濃度の1~5重量部のエタノール溶液に溶解することによって調製される。
【0016】
さらに、置換反応時間は30~120分である。
【0017】
さらに、セルロース、架橋剤、水酸性化ナトリウム溶液、エタノール溶液、およびモノクロロ酢酸-エタノール溶液の添加は、それぞれ3~10重量部、2~15重量部、1~8重量部、5~25重量部および2~10重量部である。
【0018】
第二に、本出願は、上記の高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムの調製方法によって調製した高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムを提供する。
【0019】
第三に、本出願は、リチウムイオン電池負極片の調製における高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムの用途を提供する。
【0020】
具体的には、次の手順が含まれる。
高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムを水に加え、2~4時間攪拌し、混合プロセス中に、リグノスルホン酸ナトリウム、単層カーボンナノチューブおよびグラフェンを加え、高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムおよびリグノスルホン酸ナトリウムを溶解した後、溶液を6~24時間放置し、グラファイトと導電性カーボンブラックとを混合し、溶液に加え、850~1500rpm回転速度で1~3時間分散させ、分散後回転速度を200~500rpmに下げ、スチレン-ブタジエンラテックスを加え、0.5~1時間撹拌を続けてスラリーを得、スラリーの粘度を3000~7000mPa・sに調整し、負極の集電体の銅箔にコーティングし、乾燥および圧延後に負極片を取得する。
【0021】
さらに、以下重量部の原材料が含まれる。
96~98部のグラファイト、1~2部の導電性カーボンブラック、0.6~1部のカルボキシメチルセルロースリチウム、1~2部のスチレン-ブタジエンラテックス、0.1~0.5部のリグノスルホン酸ナトリウム、0~0.5部の単層カーボンナノチューブ、0~0.5部グラフェンおよび20~70部の水。
【発明の効果】
【0022】
本出願には、次の有益な効果がある。
(1)本出願により提供される高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムは、負極片添加剤としての投与量を0.6%に減らすことができ、これは、先行技術の1.0~1.5%の投与量と比較して0.4%以上減らすことができ、製造コストを節約する。
(2)本出願により提供される高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウはまた、リチウムイオンのエネルギー密度および電池中の移動速度を改善し、-30℃でのリチウム電池の放電DC抵抗を約18%低減することができる。高速での容量は約15%増加し、優れた電気化学的性能を発揮する。
(3)リグノスルホン酸ナトリウムと高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムとの組み合わせにより、単層カーボンナノチューブとグラフェンとをさらに分散させ、極片の導電性を向上させ、電池の運動性能を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムの調製方法は、
セルロース、架橋剤、水酸性化ナトリウム溶液をエタノール溶液に混合し、真空にして空気を除去し、窒素を充填して不活性雰囲気を形成し、不活性雰囲気下でアルカリ化反応を行い、反応生成物を常圧下でのエーテル化後に粗CMC-Naを得る工程と、粗CMC-Naを酸性化してCMC-Hを得る工程と、調製したCMC-Hをリチウム塩-エタノール溶液に添加して置換反応させ、高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムを得る工程と、を含む。
【0024】
さらに、架橋剤は極性溶媒の水溶液であり、さらに、架橋剤の濃度は20~85%である。
【0025】
本出願は、極性溶媒の条件が満たされ、架橋剤がメタノールまたはイソプロパノールであり得る限り、架橋剤の種類を制限するものではない。
【0026】
さらに、エタノール溶液の濃度は70~95%である。
【0027】
さらに、水酸性化ナトリウム溶液の濃度は25~50%である。
【0028】
さらに、原料を指定重量部に応じて反応ケトルに入れ、-10~-25Kpaまで1回真空引きした後、窒素3~10Kpaを充填し、-25~-80Kpaまで2回真空引きした後、窒素3~10Kpaを再び充填し、アルカリ化反応を行う。
【0029】
真空引きの目的は、空気を除去し、空気中の酸素がセルロースを酸化して分子鎖を短くし、粘度を下げるのを防ぐことである。真空引き後、不活性雰囲気を形成するための窒素充填は、空気が再び反応ケトルに入るのを防ぐためである。繰り返しの真空引きと窒素充填操作とはすべて、ケトルに空気と酸素とがない環境を保証するためである。最後に、アルカリ化反応のプロセス全体窒素圧を3~10KPaに維持する必要があり、不活性ガスで満たされたマイクロ陽圧状態である。その目的は、空気が反応ケトルに入るのを防ぎ、それによって酸素を取り込むことである。
【0030】
さらに、アルカリ化反応の時間は30~70分である。
【0031】
さらに、アルカリ化反応生成物をモノクロロ酢酸-エタノール溶液に添加して常圧下でエーテル化反応を行い、さらに、モノクロロ酢酸-エタノール溶液中のモノクロロ酢酸の質量濃度は45~65%であり、モノクロロ酢酸-エタノール溶液中のエタノール濃度は93%以上である。
【0032】
さらに、エーテル化反応時間は30~80分である。
【0033】
さらに、エーテル化反応が完了した後、反応生成物をエタノール溶液で洗浄し、遠心分離により精製する。さらに、精製プロセスで使用されるエタノール溶液の濃度は50~80%であり、洗浄回数は3回~4回である。
【0034】
さらに、硫酸溶液に粗CMC-Naを添加して常圧系で酸性化反応を行い、さらに、硫酸溶液の濃度は10~40%である。
【0035】
さらに、酸性化反応時間は60~180分である。
【0036】
さらに、リチウム塩-エタノール溶液は、0.5~3重量部のリチウム塩を、65~95%の濃度の1~5重量部のエタノール溶液に溶解することによって調製される。さらに、リチウム塩は、酢酸リチウムであり得る。
【0037】
また、リチウム塩は水酸化リチウムまたは炭酸リチウムでもよいが、水酸化リチウムまたは炭酸リチウムを選択する場合は、水酸化リチウムまたは炭酸リチウムの0.5~3重量部に水を加えて溶解し、溶解が完了すると、1~5部の65~95%エタノール溶液と混合して、リチウム塩-エタノール溶液を得る。
【0038】
さらに、置換反応時間は30~120分である。
【0039】
さらに、セルロース、架橋剤、水酸性化ナトリウム溶液、エタノール溶液、およびモノクロロ酢酸-エタノール溶液の添加は、それぞれ3~10重量部、2~15重量部、1~8重量部、5~25重量部および2~10重量部である。
【0040】
第二に、本出願は、上記の高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムの調製方法によって調製した高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムを提供する。
【0041】
試験後、本出願により提供される高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムは、次の物理的および化学的特性を持っている。
置換度:0.6~1.0
1%粘度:>25000mPa・s
pH:6.5~9.5
純度≧99.7%。
【0042】
本出願は、リチウムイオン電池負極片の調製における高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムの用途を提供する。
【0043】
具体的には、次の工程が含まれる。
高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムを水に加え、2~4時間攪拌し、混合プロセス中に、リグノスルホン酸ナトリウム、単層カーボンナノチューブおよびグラフェンを加え、高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムおよびリグノスルホン酸ナトリウムを溶解した後、溶液を6~24時間放置し、グラファイトと導電性カーボンブラックとを混合し、溶液に加え、850~1500rpm回転速度で1~3時間分散させ、分散後回転速度を200~500rpmに下げ、スチレン-ブタジエンラテックスを加え、0.5~1時間撹拌を続けてスラリーを得、スラリーの粘度を3000~7000mPa・sに調整し、負極の集電体の銅箔にコーティングし、乾燥および圧延後に負極片を取得する。
【0044】
さらに、以下重量部の原材料が含まれている。
96~98部のグラファイト、1~2部の導電性カーボンブラック、0.6~1部のカルボキシメチルセルロースリチウム、1~2部のスチレン-ブタジエンラテックス、0.1~0.5部のリグノスルホン酸ナトリウム、0~0.5部の単層カーボンナノチューブ、0~0.5部グラフェンおよび20~70部の水。
【0045】
本出願の実施形態における技術的解決策は、以下に明確かつ完全に説明される。明らかに、記載された実施形態は、すべての実施形態ではなく、本出願の実施形態の一部にすぎない。本出願の実施形態に基づいて、当業者が創造的な努力なしに得た他のすべての実施形態は、本出願の保護範囲に含まれるものとする。
【0046】
(実施例1)
高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムは、次の工程で調製される。
(1)セルロース3部、濃度20%のメタノール水溶液2部、濃度25%の水酸化ナトリウム溶液1部、濃度70%のエタノール溶液5部を反応ケトルに加え、-20KPaに1回真空引きして、窒素3KPaを充填し、再度-25KPaまで真空引き、窒素3KPaを充填し、アルカリ化反応を行い、アルカリ化反応プロセスの窒素圧を3KPaに保ち、アルカリ化反応時間は30分である。
(2)アルカリ化反応生成物を質量濃度45%のモノクロロ酢酸-エタノール溶液2部に加え、エタノール濃度は93%であり、常圧に加圧してエーテル化反応を行い、エーテル化反応時間は30分であり、エーテル化反応生成物を濃度50%のエタノールで3回洗浄して粗CMC-Naを得た。
(3)粗CMC-Naを10%硫酸溶液に加え、常圧下で酸性化反応を行ってCMC-Hを得、酸性化反応時間は60分であった。
(4)酢酸リチウム0.5部を濃度65%のエタノール溶液1部に溶解してリチウム塩-エタノール溶液を調製し、リチウム塩-エタノール溶液にCMC-Hを添加して置換反応を行い、置換反応のpHが6.5になるように制御し、置換反応時間は30分であり、すなわち、高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムが得られる。
【0047】
調製した高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムの物理的および化学的特性が試験され、結果は以下の通りであった:
置換度:0.65
1%粘度:27580mPa・s
pH:6.9。
純度:99.82%
【0048】
(実施例2)
高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムは、以下の工程で調製される。
(1)セルロース10部、濃度85%のイソプロパノール水溶液15部、濃度50%の水酸化ナトリウム溶液8部、濃度95%のエタノール溶液25部を反応ケトルに加え、-20KPaまで1回真空引きした後、窒素10KPaを充填し、-80KPaまで2回真空引きした後、窒素10KPaを再び充填し、アルカリ化反応を行う。アルカリ化反応プロセスの窒素圧は10KPaに保たれ、アルカリ化反応時間は70分である。
(2)アルカリ化反応生成物を質量濃度65%のモノクロロ酢酸-エタノール溶液10部に添加し、エタノール濃度は95%、常圧に加圧し、エーテル化反応を行い、エーテル化反応時間は80分、エーテル化反応生成物を濃度50%のエタノールで3回洗浄して、粗CMC-Naを得た。
(3)粗CMC-Naを40%硫酸溶液に加え、常圧下で酸性化反応を行ってCMC-Hを得て、酸性化反応時間は180分であった。
(4)酢酸リチウム3部を濃度95%のエタノール溶液5部に溶解してリチウム塩-エタノール溶液を調製し、リチウム塩-エタノール溶液にCMC-Hを添加して置換反応を行い、置換反応のpHを9.5になるように制御し、置換反応時間は120分であり、すなわち、高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムが得られる。
【0049】
調製した高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムの物理的および化学的特性が試験され、結果は以下の通りであった:
置換度:0.70
1%粘度:30180mPa・s
pH:8.0。
純度:99.97%
【0050】
(実施例3)
高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムは、以下の工程で調製される。
(1)セルロース5部、濃度45%のイソプロパノール水溶液7部、濃度40%の水酸化ナトリウム溶液5部、濃度80%のエタノール溶液15部を反応ケトルに加え、-20KPaまで1回真空引きした後、窒素8KPaを充填し、-50KPaまで2回真空引きした後、窒素8KPaを再び充填し、アルカリ化反応を行い、アルカリ化反応プロセスの窒素圧は8KPaに保たれ、アルカリ化反応時間は50分である。
(2)アルカリ化反応生成物を質量濃度50%のモノクロロ酢酸-エタノール溶液6部に添加し、エタノール濃度は93%、常圧に加圧し、エーテル化反応を行い、エーテル化反応時間は50分、エーテル化反応生成物を50%エタノールで3回洗浄して、粗CMC-Naを得た。
(3)粗CMC-Naを20%硫酸溶液に加え、常圧下で酸性化反応を行ってCMC-Hを得て、酸性化反応時間は120分であった。
(4)酢酸リチウム2部を濃度75%のエタノール溶液4部に溶解してリチウム塩-エタノール溶液を調製し、リチウム塩-エタノール溶液にCMC-Hを添加して置換反応を行い、置換反応のpHを8.0になるように制御し、置換反応時間は90分である。つまり、高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムが得られた。
【0051】
調製した高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムの物理的および化学的特性が試験され、結果は以下の通りであった:
置換度:0.69
1%粘度:32905mPa・s
pH:7.8。
純度:99.9%
【0052】
(実施例4)
リチウムイオン電池負極片の調製方法は、以下の工程を含む。
(1)重量部で、96部のグラファイト、1部の導電性カーボンブラック、0.9部の実施例3で調製した高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウム、2部のスチレンブタジエンラテックス、0.1部のリグノスルホン酸ナトリウム、20部の脱イオン水を秤量する。
(2)実施例3で調製した高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムを脱イオン水と混合し、混合プロセス中に、リグノスルホン酸ナトリウムを添加し、高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムおよびリグノスルホン酸ナトリウムを溶解した後、溶液を12時間放置した。
(3)グラファイトと導電性カーボンブラックとを均一に混合した後、工程(2)の溶液に添加し、850rpmで3時間高速分散させる。
(4)高速分散が完了したら、回転速度を200rpmに下げ、スチレンブタジエンラテックスを加え、1時間撹拌を続けてスラリーを得る。
(5)スラリーの粘度を4986mPa.sに調整すると、スラリーの固形分は48.3%になる。
(6)負極の集電体の銅箔にスラリーをコーティングし、乾燥・圧延して負極片を得る。
【0053】
(実施例5)
リチウムイオン電池負極片の調製方法は、以下の工程を含む。
(1)重量部で、98部のグラファイト、2部の導電性カーボンブラック、0.5部の単層カーボンナノチューブ、1部の実施例3で調製した高粘度カルボキシメチルセルロースリチウム、1部のスチレンブタジエンラテックス、0.5部のリグノスルホン酸ナトリウム、70部の脱イオン水を秤量する。
(2)実施例3調製した高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムを脱イオン水と混合し、混合プロセス中に、リグノスルホン酸ナトリウムと単層カーボンナノチューブとを添加し、高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムおよびリグノスルホン酸ナトリウムを溶解した後、溶液を8時間放置した。
(3)グラファイトと導電性カーボンブラックとを均一に混合した後、工程(2)の溶液を加え、1500rpmで1時間高速で分散させる。
(4)高速分散が完了したら、回転速度を500rpmに下げ、スチレンブタジエンラテックスを加え、0.5時間撹拌を続けてスラリーを得る。
(5)スラリーの粘度を4830mPa.sに調整すると、スラリーの固形分は48.0%になる。
(6)負極の集電体の銅箔にスラリーをコーティングし、乾燥・圧延して負極片を得る。
【0054】
(実施例6)
リチウムイオン電池負極片の調製方法は、以下の工程を含む。
(1)重量部で、96部のグラファイト、0.5部の導電性カーボンブラック、0.5部のグラフェン、0.6部の実施例3調製した高粘度カルボキシメチルセルロースリチウム、2部のスチレンブタジエンラテックス、0.4部のリグノスルホン酸ナトリウム、50部の脱イオン水を秤量して取る。
(2)実施例3調製した高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムを脱イオン水と混合し、混合プロセス中に、リグノスルホン酸ナトリウムとグラフェンとを添加し、高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムおよびリグノスルホン酸ナトリウムを溶解した後、溶液を12時間放置した。
(3)グラファイトと導電性カーボンブラックとを均一に混合した後、工程(2)の溶液に添加し、1000rpmで2時間高速分散させる。
(4)高速分散が完了したら、回転速度を300rpmに下げ、スチレンブタジエンラテックスを加え、0.5時間撹拌を続けてスラリーを得る。
(5)スラリーの粘度を4880mPa.sに調整すると、スラリーの固形分は48.73%になる。
(6)負極の集電体の銅箔にスラリーをコーティングし、乾燥・圧延して負極片を得る。
【0055】
(比較例)
リチウムイオン電池負極片の調製方法は、以下の工程を含む。
(1)重量部で、グラファイト95.5部、導電性カーボンブラック1部、市販のカルボキシメチルセルロースリチウム1.5部、スチレンブタジエンラテックス2部、および脱イオン水50部の重量を秤量する。このうち、市販のカルボキシメチルセルロースリチウムの置換度は0.68、1%で、粘度は4950mPa・sで、pHは7.6である。
(2)カルボキシメチルセルロースリチウムを脱イオン水と混合し、カルボキシメチルセルロースリチウムが溶解した後、溶液を12時間放置する。
(3)グラファイトと導電性カーボンブラックとを均一に混合した後、工程(2)の溶液に添加し、850rpmで3時間高速分散させる。
(4)高速分散が完了したら、回転速度を200rpmに下げ、スチレンブタジエンラテックスを加え、1時間撹拌を続けてスラリーを得る。
(5)スラリーの粘度を4770mPa.sに調整すると、スラリーの固形分は47.9%になる。
(6)負極の集電体の銅箔にスラリーをコーティングし、乾燥・圧延して負極片を得る。
【0056】
実施例4~6で調製したリチウムイオン電池の負極片と比較例で調製したリチウムイオン電池の負極片とをそれぞれリン酸鉄リチウム系の正極片と合わせて500mAh電池セルを形成し、電気化学的性能を試験した。性能試験の結果を表1~5に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
【表5】
【0062】
表1から、負極スラリー系の分散剤・増粘剤として超高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムとリグノスルホン酸ナトリウムとを併用することで、添加量を0.5%削減し、活物質の添加量を増やすことができ、それによって電池の容量と初期効率とを高めることがわかる。
【0063】
表2~5から、超高粘度のカルボキシメチルリチウムとリグノスルホン酸ナトリウムとの組み合わせにより、単層カーボンナノチューブとグラフェンとを分散させることができ、導電性カーボンブラックと単層カーボンナノチューブまたはグラフェンとの組み合わせにより、短くすることができることがわかる。短距離伝導と長距離伝導との組み合わせにより、極片の導電性が向上し、それによって電池の運動性能が向上する。常温DCRは9%から16%減少し、低温DCRは13から17%減少し、高温および低温での容量保持率は約3%増加し、(3C)容量保持率は高倍率では10~12%上げることができる。
【0064】
本明細書の様々な実施形態は漸進的に説明され、各実施形態は他の実施形態との違いに焦点を合わせており、様々な実施形態間の同じおよび類似の部分を互いに参照することができる。開示された実施形態の上記の説明は、当業者が本出願を作成または使用することを可能にする。これらの実施形態に対する様々な修正は、当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義される一般的な原理は、本出願の思想または範囲から逸脱することなく、他の実施形態で実施することができる。したがって、本出願は、本明細書に示される実施形態に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示される原理および新規の特徴と一致する最も広い範囲を与えられるべきである。
【0065】
(付記)
(付記1)
高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムの調製方法であって、
セルロース、極性溶媒の水溶液、水酸性化ナトリウム溶液をエタノール溶液に混合し、真空にして空気を除去し、窒素を充填して不活性雰囲気を形成し、不活性雰囲気下でアルカリ化反応を行い、反応生成物を常圧下でのエーテル化後に粗CMC-Naを得る工程と、粗CMC-Naを酸性化してCMC-Hを得る工程と、調製したCMC-Hをリチウム塩-エタノール溶液に添加して置換反応させ、高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムを得る工程と、を含み、
アルカリ化反応に使用するセルロース、極性溶媒の水溶液、水酸性化ナトリウム溶液、エタノール溶液重量部の添加量は、それぞれ3~10重量部、2~15重量部、1~8重量部、5~25重量部であり、
前記アルカリ化反応は、原料を指定重量部に応じて反応ケトルに入れ、-10~-25Kpaまで1回真空引きした後、窒素3~10Kpaを充填し、-25~-80Kpaまで2回真空引きした後、窒素3~10Kpaを再び充填し、アルカリ化反応を行う工程を含み、反応プロセスの窒素圧を3~10KPaに維持し、アルカリ化反応の時間は30分であり、
前記エーテル化反応は、アルカリ化反応生成物をモノクロロ酢酸-エタノール溶液に添加して常圧下でエーテル化反応を行いう工程を含み、前記モノクロロ酢酸-エタノール溶液中のモノクロロ酢酸の質量濃度は45~65%、前記モノクロロ酢酸-エタノール溶液中のエタノール濃度は93%以上、モノクロロ酢酸-エタノール溶液の添加量は2~10重量部、エーテル化反応時間は30~80分であり、
前記酸性化反応は、硫酸溶液に粗CMC-Naを添加して常圧系で酸性化反応を行う工程を含み、前記硫酸溶液の濃度は10~40%、酸性化時間は60~180分であり、
前記置換反応のpHは6.5~10.0、置換反応時間は30~120分であり、
前記極性溶媒の水溶液は、メタノールまたはイソプロパノールであり、
前記極性溶媒の水溶液の濃度は20~85%であり、前記エタノール溶液の濃度は70~95%であり、前記水酸性化ナトリウム溶液の濃度は25~50%である、
ことを特徴とする高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムの調製方法。
【0066】
(付記2)
付記1に記載の高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムの調製方法によって調製した高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウム。
【0067】
(付記3)
負極片の調製における付記2に記載の前記高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムの用途であって、
高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムを水に加え、2~4時間攪拌し、混合プロセス中に、リグノスルホン酸ナトリウム、単層カーボンナノチューブおよびグラフェンを加え、高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムおよびリグノスルホン酸ナトリウムを溶解した後、溶液を6~24時間放置し、グラファイトと導電性カーボンブラックとを混合し、溶液に加え、850~1500rpmの回転速度で1~3時間分散させ、分散後回転速度を200~500rpmに下げ、スチレン-ブタジエンラテックスを加え、0.5~1時間攪拌を続けてスラリーを得、スラリーの粘度を3000~7000mPa・sに調整し、負極の集電体の銅箔にコーティングし、乾燥および圧延後に負極片を取得する工程を含む、
ことを特徴とする負極片の調製における高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムの用途。
【0068】
(付記4)
負極片を調製するための各原料の比率は、
グラファイト96~98部、導電性カーボンブラック1~2部、カルボキシメチルセルロースリチウム0.6~1部、スチレン-ブタジエンラテックス1~2部、リグノスルホン酸ナトリウム0.1~0.5部、単層カーボンナノチューブ0~0.5部、グラフェン0~0.5部および水20~70部である、
ことを特徴とする付記3に記載の負極片の調製における高粘度のカルボキシメチルセルロースリチウムの用途。