(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/786 20060101AFI20231102BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20231102BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20231102BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20231102BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20231102BHJP
H01L 27/06 20060101ALI20231102BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20231102BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20231102BHJP
G02F 1/1368 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
H01L29/78 616T
H01L29/78 618B
H01L29/78 619A
H01L29/78 612C
H01L27/04 C
H01L27/06 102A
H01L27/088 331E
G09F9/30 338
G09F9/30 339
G09F9/30 348A
G02F1/1368
(21)【出願番号】P 2022075552
(22)【出願日】2022-04-29
(62)【分割の表示】P 2021050986の分割
【原出願日】2013-12-20
【審査請求日】2022-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2012281874
(32)【優先日】2012-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(72)【発明者】
【氏名】三宅 博之
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 英明
(72)【発明者】
【氏名】片山 雅博
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 健一
【審査官】脇水 佳弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0141203(US,A1)
【文献】特開2007-072483(JP,A)
【文献】特開2011-044702(JP,A)
【文献】特表2010-531059(JP,A)
【文献】特開2011-091385(JP,A)
【文献】特開2012-216791(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0138932(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
H01L 21/336
H01L 21/822
H01L 21/8234
H01L 27/088
G09F 9/30
G02F 1/1368
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタと、容量素子と、を有する画素領域を有し、
前記トランジスタは、
第1の電極と、
前記第1の電極上の第1の無機絶縁膜と、
前記第1の無機絶縁膜上のInとGaとZnとを含む半導体膜と、
前記半導体膜と電気的に接続された第
2の電極と、を有し、
前記容量素子は、
InとGaとZnとを含む第
3の電極と、
前記第
3の電極の上面に接する第
2の無機絶縁膜と、
前記第
2の無機絶縁膜
上の平坦化膜と、
前記平坦化膜上の第
4の電極と、を有し、
平面視において、前記第1の電極の端部は、前記半導体膜の端部の外側に位置する領域を有し、
前記半導体膜及び前記第
3の電極のそれぞれは、
前記第
1の無機絶縁膜の上面に接する領域を有し、
前記半導体膜は、第3の無機絶縁膜の下面に接する領域を有し、
前記第3の無機絶縁膜は、前記第3の電極の側面に接する領域と、前記第3の電極の上面に接する領域と、前記第2の無機絶縁膜の下面に接する領域と、を有し、
前記第
4の電極は、前記第
2の電極と重なる領域を有する表示装置。
【請求項2】
トランジスタと、容量素子と、を有する画素領域を有し、
前記トランジスタは、
第1の電極と、
前記第1の電極上の第1の無機絶縁膜と、
前記第1の無機絶縁膜上のInとGaとZnとを含む半導体膜と、
前記半導体膜と電気的に接続された第
2の電極と、を有し、
前記容量素子は、
InとGaとZnとを含む第
3の電極と、
前記第
3の電極の上面に接する第
2の無機絶縁膜と、
前記第
2の無機絶縁膜
上の平坦化膜と、
前記平坦化膜上の第
4の電極と、を有し、
平面視において、前記第1の電極の端部は、前記半導体膜の端部の外側に位置する領域を有し、
前記半導体膜及び前記第
3の電極のそれぞれは、
前記第
1の無機絶縁膜の上面に接する領域を有し、
前記半導体膜は、第3の無機絶縁膜の下面に接する領域を有し、
前記第3の無機絶縁膜は、前記第3の電極の側面に接する領域と、前記第3の電極の上面に接する領域と、前記第2の無機絶縁膜の下面に接する領域と、を有し、
前記第
4の電極は、前記第
2の電極と重なる領域を有し、
前記第
3の電極と電気的に接続された配線を有し、
前記配線は、前記容量素子と重なる領域を有さない表示装置。
【請求項3】
請求項1
または請求項2において、
前記半導体膜は、極微電子線回折パターンにより、円周状に複数のスポットが観察される領域を有し、
前記半導体膜は、複数の結晶を有し、
前記複数の結晶の面方位は、不規則である表示装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項
3のいずれか一において、
前記半導体膜は、極微電子線回折パターンにより、円周状に複数のスポットが観察され、制限視野電子回折パターンにより、ハローパターンが観察される領域を有する表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物、プロセス(方法及び製造方法を含む)、機械(マシーン)、製品(マニ
ュファクチャ)、または組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する。特に本発明
の一態様は、半導体装置、表示装置、発光装置、それらの駆動方法、またはそれらの製造
方法等に関する。特に本発明の一態様は、酸化物半導体を有する半導体装置、表示装置、
または発光装置等に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体の電子工学的な特性を利用すること
で機能しうる装置の全てをその範疇とし、例えば、電気光学装置や半導体回路、電気機器
等はいずれも半導体装置に含まれる。
【背景技術】
【0003】
近年、液晶ディスプレイ(LCD)などのフラットパネルディスプレイが広く普及して
きている。フラットパネルディスプレイなどの表示装置において、行方向及び列方向に配
設された画素内には、スイッチング素子であるトランジスタと、当該トランジスタと電気
的に接続された液晶素子と、当該液晶素子と並列に接続された容量素子とが設けられてい
る。
【0004】
当該トランジスタの半導体膜を構成する半導体材料としては、アモルファス(非晶質)
シリコンまたはポリ(多結晶)シリコンなどのシリコン半導体が汎用されている。
【0005】
また、半導体特性を示す金属酸化物(以下、酸化物半導体と記す。)は、トランジスタ
の半導体膜に適用できる半導体材料である。例えば、酸化亜鉛またはIn-Ga-Zn酸
化物半導体を用いて、トランジスタを作製する技術が開示されている(特許文献1及び特
許文献2を参照。)。
【0006】
また、開口率を高めるために、トランジスタの酸化物半導体膜と同じ表面上に設けられ
た酸化物半導体膜と、トランジスタに接続する画素電極とが所定の距離を離れて設けられ
た容量素子を有する表示装置が開示されている(特許文献3を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-123861号公報
【文献】特開2007-96055号公報
【文献】米国特許第8102476号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
容量素子は一対の電極の間に誘電体膜が設けられており、一対の電極のうち、少なくと
も一方の電極は、トランジスタを構成するゲート電極、ソースまたはドレインなど遮光性
を有する導電膜で形成されていることが多い。
【0009】
また、容量素子の電荷容量を大きくするほど、電界を加えた状況において、液晶素子の
液晶分子の配向を一定に保つことができる期間を長くすることができる。静止画を表示さ
せる表示装置において、当該期間を長くできることは、画像データを書き換える回数を低
減することができ、消費電力の低減が望める。
【0010】
しかしながら、容量素子の一方の電極が半導体膜で形成される場合、当該半導体膜に印
加される電位によっては、容量素子に充電される容量値が所定の値より低い値となってし
まい、液晶素子の液晶分子の配向を一定に保つ期間が短くなり、画像データの書き換え回
数が増加し、消費電力が増大してしまう。
【0011】
また、容量素子の電荷容量を大きくするためには、容量素子の占有面積を大きくする、
具体的には一対の電極が重畳している面積を大きくするという手段がある。しかしながら
、上記表示装置において、一対の電極が重畳している面積を大きくするために遮光性を有
する導電膜の面積を大きくすると、画素の開口率が低減し、画像の表示品位が低下する。
【0012】
そこで、本発明の一態様は、開口率が高く、且つ電荷容量を増大させることが可能な容
量素子を有する半導体装置などを提供することを課題の一とする。または、本発明の一態
様は、消費電力を低減することが可能な半導体装置などを提供することを課題の一とする
。本発明の一態様は、解像度の高い半導体装置などを提供することを課題の一とする。ま
たは、本発明の一態様は、酸化物半導体を用いた半導体装置などにおいて、電気特性を向
上させることを課題の一とする。または、本発明の一態様は、酸化物半導体を用いた半導
体装置などにおいて、信頼性を向上させることを課題の一とする。または、本発明の一態
様は、酸化物半導体中の酸素含有量を制御することを課題の一とする。または、本発明の
一態様は、トランジスタのノーマリーオン化を制御することを課題の一とする。または、
本発明の一態様は、トランジスタのしきい値電圧の変動、ばらつき、または、低下を制御
することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、オフ電流の小さいトランジスタ
を提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、オフ電流の低い半導体装
置などを提供することを課題とする。または、本発明の一態様は、消費電力の低い半導体
装置などを提供することを課題とする。または、本発明の一態様は、目に優しい表示装置
などを提供することを課題とする。または、本発明の一態様は、透光性を有する導電膜を
用いた半導体装置などを提供することを課題とする。または、本発明の一態様は、信頼性
の高い半導体膜を用いた半導体装置などを提供することを課題とする。または、本発明の
一態様は、透光性を有する電極を用いた半導体装置などを提供することを課題とする。ま
たは、本発明の一態様は、新規な半導体装置などを提供することを課題とする。または、
本発明の一態様は、特性の優れた半導体装置などを提供することを課題とする。
【0013】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の
一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課
題は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、
図面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様は、ゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上の酸化物半導体膜と、ゲート絶縁
膜を介して酸化物半導体膜と一部が重なるゲート電極と、酸化物半導体膜に接する一対の
電極と、を有するトランジスタと、ゲート絶縁膜上の第1の透光性を有する導電膜と、第
1の透光性を有する導電膜上の誘電体膜と、誘電体膜上の第2の透光性を有する導電膜と
、を有する容量素子と、トランジスタの一対の電極上の酸化絶縁膜と、酸化絶縁膜上の窒
化絶縁膜と、を有する。また、容量素子に含まれる誘電体膜は、窒化絶縁膜であり、酸化
絶縁膜は、一対の電極の一方上、及び第1の透光性を有する導電膜上それぞれに第1の開
口部を有し、窒化絶縁膜は、一対の電極の一方上に第2の開口部を有し、第2の開口部は
、第1の開口部の内側に設けられる。また、一対の電極の一方上の第2の開口部において
、容量素子に含まれる第2の透光性を有する導電膜は、トランジスタに含まれる一対の電
極の一方と接続する。
【0015】
本発明の一態様は、ゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上の酸化物半導体膜と、ゲート絶縁
膜を介して酸化物半導体膜と一部が重なるゲート電極と、酸化物半導体膜に接する一対の
電極と、を有するトランジスタと、ゲート絶縁膜上の第1の透光性を有する導電膜と、第
1の透光性を有する導電膜上の誘電体膜と、誘電体膜上の第2の透光性を有する導電膜と
、を有する容量素子と、トランジスタの一対の電極上の酸化絶縁膜と、酸化絶縁膜上の窒
化絶縁膜と、を有する。容量素子に含まれる誘電体膜は、窒化絶縁膜であり、容量素子に
含まれる第2の透光性を有する導電膜は、トランジスタに含まれる一対の電極の一方と接
続し、酸化物半導体膜と、第1の透光性を有する導電膜とは、水素濃度が異なる。
【0016】
なお、第1の透光性を有する導電膜は、酸化物半導体膜より水素濃度が高いことが好ま
しい。第1の透光性を有する導電膜において、二次イオン質量分析法(SIMS:Sec
ondary Ion Mass Spectrometry)により得られる水素濃度
は、8×1019atoms/cm3以上、好ましくは1×1020atoms/cm3
以上、より好ましくは5×1020atoms/cm3以上である。酸化物半導体膜にお
いて、二次イオン質量分析法により得られる水素濃度は、5×1019atoms/cm
3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3未満、好ましくは1×1018at
oms/cm3以下、より好ましくは5×1017atoms/cm3以下、さらに好ま
しくは1×1016atoms/cm3以下である。
【0017】
また、第1の透光性を有する導電膜は、酸化物半導体膜より抵抗率が低い。第1の透光
性を有する導電膜の抵抗率が、酸化物半導体膜の抵抗率の1×10-8倍以上1×10-
1倍以下で有ることが好ましく、代表的には1×10-3Ωcm以上1×104Ωcm未
満、さらに好ましくは、抵抗率が1×10-3Ωcm以上1×10-1Ωcm未満である
とよい。
【0018】
なお、酸化物半導体膜及び第1の透光性を有する導電膜は、微結晶領域を含み、微結晶
領域は、測定範囲を5nmφ以上10nmφ以下とする電子線回折を用いた電子線回折パ
ターンにおいて、円周状に配置された複数のスポットが観察され、且つ、制限視野電子線
回折パターンにおいては、複数のスポットが観察されない膜であってもよい。なお、測定
範囲を10nmφ以下、好ましくは5nmφ以上10nmφ以下とする電子線回折を極微
電子線回折という。制限視野電子線回折の測定範囲を300nmφ以上とすることができ
る。また、微結晶領域に含まれる結晶粒の粒径は10nm以下である。また、円周状に配
置された複数のスポットは、酸化物半導体膜の膜厚方向の全領域において観察されること
が好ましい。
【0019】
また、酸化物半導体膜、及び第1の透光性を有する導電膜は、インジウムまたは亜鉛を
含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様より、開口率を高めつつ、電荷容量を増大させた容量素子を有する半導
体装置を提供することができる。また、消費電力の低い半導体装置を提供することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】半導体装置の一形態を説明するブロック図及び回路図である。
【
図2】半導体装置の一形態を説明する上面図である。
【
図3】半導体装置の一形態を説明する断面図である。
【
図4】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図5】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図6】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図7】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図8】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図9】半導体装置の一形態を説明する上面図である。
【
図10】半導体装置の一形態を説明する断面図である。
【
図11】半導体装置の一形態を説明する断面図である。
【
図12】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図13】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図14】半導体装置の一形態を説明する断面図である。
【
図15】半導体装置の一形態を説明する断面図である。
【
図16】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図17】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図18】半導体装置の一形態を説明する断面図である。
【
図19】半導体装置の一形態を説明する上面図である。
【
図20】半導体装置の一形態を説明する断面図である。
【
図21】トランジスタの断面図、及び多層膜を説明する図である。
【
図25】実施の形態に係るタッチセンサを説明する図である。
【
図26】実施の形態に係るタッチパネル及び電子機器の構成例を説明する図である。
【
図27】実施の形態に係るタッチセンサを備える画素を説明する図である。
【
図28】実施の形態に係るタッチセンサ及び画素の動作を説明する図である。
【
図31】酸化物半導体膜のCPM測定結果を示す図である。
【
図32】酸化物半導体膜のCPM測定結果を示す図である。
【
図39】CAAC-OS膜の電子線回折パターンである。
【
図41】CAAC-OS膜の断面TEM像およびX線回折スペクトルである。
【
図42】CAAC-OS膜の電子線回折パターンである。
【
図43】CAAC-OS膜の断面TEM像およびX線回折スペクトルである。
【
図44】CAAC-OS膜の電子線回折パターンである。
【
図45】CAAC-OS膜の断面TEM像およびX線回折スペクトルである。
【
図46】CAAC-OS膜の電子線回折パターンである。
【
図47】微結晶酸化物半導体膜の断面TEM像及び極微電子線回折パターンである。
【
図48】微結晶酸化物半導体膜の平面TEM像及び制限視野電子線回折パターンである。
【
図50】石英ガラス基板の極微電子線回折パターンである。
【
図51】微結晶酸化物半導体膜の極微電子線回折パターンである。
【
図52】微結晶酸化物半導体膜の断面TEM像である。
【
図53】微結晶酸化物半導体膜のXRDスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明
は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であ
れば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈
されるものではない。
【0023】
以下に説明する本発明の構成において、同一部分または同様の機能を有する部分には同
一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様の
機能を有する部分を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合
がある。
【0024】
本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、膜の厚さ、または領域は、明瞭化
のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。
【0025】
本明細書などにおいて、第1、第2等として付される序数詞は便宜上用いるものであり
、工程順または積層順を示すものではない。また、本明細書等において発明を特定するた
めの事項として固有の名称を示すものではない。
【0026】
また、本発明の一態様における「ソース」及び「ドレイン」の機能は、回路動作におい
て電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書におい
ては、「ソース」及び「ドレイン」の用語は、入れ替えて用いることができるものとする
。
【0027】
また、電圧とは2点間における電位差のことをいい、電位とはある一点における静電場
の中にある単位電荷が持つ静電エネルギー(電気的な位置エネルギー)のことをいう。た
だし、一般的に、ある一点における電位と基準となる電位(例えば接地電位)との電位差
のことを、単に電位もしくは電圧と呼び、電位と電圧が同義語として用いられることが多
い。このため、本明細書では特に指定する場合を除き、電位を電圧と読み替えてもよいし
、電圧を電位と読み替えてもよいこととする。
【0028】
本明細書において、フォトリソグラフィ処理によりマスクを形成し、エッチング処理を
行った後は、該マスクを除去するものとする。
【0029】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である半導体装置について、図面を用いて説明する
。なお、本実施の形態では、液晶表示装置を例にして本発明の一態様である半導体装置を
説明する。
【0030】
<半導体装置の構成>
図1(A)に、半導体装置の一例を示す。
図1(A)に示す半導体装置は、画素部10
0と、走査線駆動回路104と、信号線駆動回路106と、各々が平行または略平行に配
設され、且つ走査線駆動回路104によって電位が制御されるm本の走査線107と、各
々が平行または略平行に配設され、且つ信号線駆動回路106によって電位が制御される
n本の信号線109と、を有する。さらに、画素部100はマトリクス状に配設された複
数の画素301を有する。また、走査線107に沿って、各々が平行または略平行に配設
された容量線115を有する。なお、容量線115は、信号線109に沿って、各々が平
行または略平行に配設されていてもよい。また、走査線駆動回路104及び信号線駆動回
路106をまとめて駆動回路部という場合がある。
【0031】
各走査線107は、画素部100においてm行n列に配設された画素301のうち、い
ずれかの行に配設されたn個の画素301と電気的に接続される。また、各信号線109
は、m行n列に配設された画素301のうち、いずれかの列に配設されたm個の画素30
1に電気的に接続される。m、nは、ともに1以上の整数である。また、各容量線115
は、m行n列に配設された画素301のうち、いずれかの行に配設されたn個の画素30
1と電気的に接続される。なお、容量線115が、信号線109に沿って、各々が平行ま
たは略平行に配設されている場合は、m行n列に配設された画素301のうち、いずれか
の列に配設されたm個の画素301に電気的に接続される。
【0032】
図1(B)は、
図1(A)に示す半導体装置が有する画素301の回路図の一例である
。
図1(B)に示す画素301は、走査線107及び信号線109と電気的に接続された
トランジスタ103と、一方の電極がトランジスタ103のドレインと電気的に接続され
、他方の電極が一定の電位を供給する容量線115と電気的に接続された容量素子105
と、画素電極がトランジスタ103のドレイン及び容量素子105の一方の電極に電気的
に接続され、画素電極と対向して設けられる電極(対向電極)が共通電位を供給する配線
に電気的に接続された液晶素子108と、を有する。
【0033】
液晶素子108は、トランジスタ103及び画素電極が形成される基板と、対向電極が
形成される基板とで挟持される液晶の光学的変調作用によって、光の透過または非透過を
制御する素子である。なお、液晶の光学的変調作用は、液晶にかかる電界(縦方向の電界
または斜め方向の電界を含む。)によって制御される。なお、画素電極が形成される基板
において対向電極(共通電極ともいう。)が形成される場合、液晶にかかる電界は横方向
の電界となる。
【0034】
なお、液晶素子108の代わりに、様々な表示素子や発光素子などを適用することも可
能である。例えば、表示素子、発光素子などの一例としては、EL(エレクトロルミネッ
センス)素子(有機物及び無機物を含むEL素子、有機EL素子、無機EL素子)、LE
D(白色LED、赤色LED、緑色LED、青色LEDなど)、トランジスタ(電流に応
じて発光するトランジスタ)、電子放出素子、液晶素子、電子インク、電気泳動素子、グ
レーティングライトバルブ(GLV)、プラズマディスプレイ(PDP)、デジタルマイ
クロミラーデバイス(DMD)、IMOD(インターフェアレンス・モジュレーション)
素子、圧電セラミックディスプレイ、カーボンナノチューブ、など、電気磁気的作用によ
り、コントラスト、輝度、反射率、透過率などが変化する表示媒体を有するものがある。
EL素子を用いた表示装置の一例としては、ELディスプレイなどがある。電子放出素子
を用いた表示装置の一例としては、フィールドエミッションディスプレイ(FED)また
はSED方式平面型ディスプレイ(SED:Surface-conduction E
lectron-emitter Display)などがある。液晶素子を用いた表示
装置の一例としては、液晶ディスプレイ(透過型液晶ディスプレイ、半透過型液晶ディス
プレイ、反射型液晶ディスプレイ、直視型液晶ディスプレイ、投射型液晶ディスプレイ)
などがある。電子インクまたは電気泳動素子を用いた表示装置の一例としては、電子ペー
パなどがある。
【0035】
次いで、液晶表示装置の画素301の具体的な例について説明する。ここでは、駆動回
路部、ここでは、走査線駆動回路104の一部の上面図を
図2(A)に示し、画素301
aの上面図を
図2(B)に示す。なお、
図2(B)においては、対向電極及び液晶素子を
省略する。
【0036】
図2(A)において、ゲートとして機能する導電膜304a、ゲート絶縁膜(
図2(A
)に図示せず。)、チャネル領域が形成される酸化物半導体膜308a、ソース及びドレ
インとして機能する導電膜310a、310bによりトランジスタ102を構成する。酸
化物半導体膜308aは、ゲート絶縁膜上に設けられる。また、導電膜304aと同時に
形成された導電膜304bと、導電膜310a、310bと同時に形成された導電膜31
0cと、導電膜304b及び導電膜310cを接続する透光性を有する導電膜316aが
設けられる。透光性を有する導電膜316aは、開口部372a、374aにおいて導電
膜304bと接続し、開口部372b、374bにおいて導電膜310cと接続する。
【0037】
図2(B)において、走査線として機能する導電膜304cは、信号線に略直交する方
向(図中左右方向)に延伸して設けられている。信号線として機能する導電膜310dは
、走査線に略直交する方向(図中上下方向)に延伸して設けられている。容量線として機
能する導電膜310fは、信号線と平行方向に延伸して設けられている。なお、走査線と
して機能する導電膜304cは、走査線駆動回路104(
図1(A)を参照。)と電気的
に接続されており、信号線として機能する導電膜310d及び容量線として機能する導電
膜310fは、信号線駆動回路106(
図1(A)を参照。)に電気的に接続されている
。
【0038】
トランジスタ103は、走査線及び信号線が交差する領域に設けられている。ゲートと
して機能する導電膜304c、ゲート絶縁膜(
図2(B)に図示せず。)、ゲート絶縁膜
上に形成されたチャネル領域が形成される酸化物半導体膜308b、ソース及びドレイン
として機能する導電膜310d、310eによりトランジスタ103を構成する。なお、
導電膜304cは、走査線としても機能し、酸化物半導体膜308bと重畳する領域がト
ランジスタ103のゲートとして機能する。また、導電膜310dは、信号線としても機
能し、酸化物半導体膜308bと重畳する領域がトランジスタ103のソースまたはドレ
インとして機能する。また、
図2(B)において、走査線は、上面形状において端部が酸
化物半導体膜308bの端部より外側に位置する。このため、走査線はバックライトなど
の光源からの光を遮る遮光膜として機能する。この結果、トランジスタに含まれる酸化物
半導体膜308bに光が照射されず、トランジスタの電気特性の変動を抑制することがで
きる。
【0039】
また、導電膜310eは、開口部372cの内側に設けられた開口部374cにおいて
、画素電極として機能する透光性を有する導電膜316bと電気的に接続されている。
【0040】
容量素子105は、開口部372において容量線として機能する導電膜310fと接続
されている。また、容量素子105は、ゲート絶縁膜上に形成される透光性を有する導電
膜308cと、トランジスタ103上に設けられる窒化絶縁膜で形成される誘電体膜と、
画素電極として機能する透光性を有する導電膜316bと、で構成されている。即ち、容
量素子105は透光性を有する。
【0041】
このように容量素子105は透光性を有するため、画素301a内に容量素子105を
大きく(大面積に)形成することができる。従って、開口率を高めつつ、代表的には50
%以上、好ましくは55%以上、さらに好ましくは60%以上とすることが可能であると
共に、電荷容量を増大させた半導体装置を得ることができる。例えば、解像度の高い半導
体装置、例えば液晶表示装置においては、画素の面積が小さくなり、容量素子の面積も小
さくなる。このため、解像度の高い半導体装置において、容量素子に蓄積される電荷容量
が小さくなる。しかしながら、本実施の形態に示す容量素子105は透光性を有するため
、当該容量素子を画素に設けることで、各画素において十分な電荷容量を得つつ、開口率
を高めることができる。代表的には、画素密度が200ppi以上、さらには300pp
i以上である高解像度の半導体装置に好適に用いることができる。
【0042】
また、
図2Bに示す画素301aは、走査線として機能する導電膜304cと平行な辺
と比較して信号線として機能する導電膜310dと平行な辺の方が短い形状であり、且つ
容量線として機能する導電膜310fが、信号線として機能する導電膜310dと平行な
方向に延伸して設けられている。この結果、画素301aに占める導電膜310fの面積
を低減することが可能であるため、開口率を高めることができる。また、容量線として機
能する導電膜310fが接続電極を用いず、直接透光性を有する導電膜308cと接する
ため、さらに開口率を高めることができる。
【0043】
また、本発明の一態様は、高解像度の表示装置においても、開口率を高めることができ
るため、バックライトなどの光源の光を効率よく利用することができ、表示装置の消費電
力を低減することができる。
【0044】
次いで、
図2の一点鎖線A-B間及び一点鎖線C-D間における断面図を
図3(A)に
示す。また、
図3(A)の破線Eに囲まれた部分の拡大図を
図3(B)に示し、
図3(A
)の破線Fに囲まれた部分の拡大図を
図3(C)に示す。
【0045】
本実施の形態に示す液晶表示装置は、一対の基板(基板302と基板342)間に液晶
素子322が挟持されている。
【0046】
液晶素子322は、基板302の上方の透光性を有する導電膜316bと、配向性を制
御する膜(以下、配向膜318、352という)と、液晶層320と、導電膜350と、
を有する。なお、透光性を有する導電膜316bは、液晶素子322の一方の電極として
機能し、導電膜350は、液晶素子322の他方の電極として機能する。
【0047】
液晶素子を備える液晶表示装置の駆動方法としては、TNモード、STNモード、VA
モード、ASM(Axially Symmetric Aligned Micro-
cell)モード、OCB(Optically Compensated Biref
ringence)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Cr
ystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liquid
Crystal)モード、MVA(Multi-domain Vertical Al
ignment)モード、PVA(Patterned Vertical Align
ment)モード、IPSモード、FFSモード、またはTBA(Transverse
Bend Alignment)モードなどを用いてもよい。また、液晶素子を備える
液晶表示装置の駆動方法としては、上述した駆動方法の他、ECB(Electrica
lly Controlled Birefringence)モード、PDLC(Po
lymer Dispersed Liquid Crystal)モード、PNLC(
Polymer Network Liquid Crystal)モード、ゲストホス
トモードなどがある。ただし、これに限定されず、液晶素子及びその駆動方式として様々
なものを用いることができる。
【0048】
また、ブルー相(Blue Phase)を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物
により液晶素子を構成してもよい。ブルー相を示す液晶は、応答速度が1msec以下と
短く、光学的等方性であるため、配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。
【0049】
本実施の形態においては、縦電界方式の液晶表示装置について説明する。
【0050】
このように、液晶表示装置とは、液晶素子を有する装置のことをいう。なお、液晶表示
装置は、複数の画素を駆動させる駆動回路等を含む。また、液晶表示装置は、別の基板上
に配置された制御回路、電源回路、信号生成回路及びバックライトモジュール等を含み、
液晶モジュールとよぶこともある。
【0051】
駆動回路部において、ゲートとして機能する導電膜304a、ゲート絶縁膜として機能
する絶縁膜305及び絶縁膜306、チャネル領域が形成される酸化物半導体膜308a
、ソース及びドレインとして機能する導電膜310a、310bによりトランジスタ10
2を構成する。酸化物半導体膜308aは、絶縁膜306上に設けられる。また、導電膜
310a、310b上には、絶縁膜312、絶縁膜314が保護膜として設けられている
。
【0052】
画素部において、ゲートとして機能する導電膜304c、ゲート絶縁膜として機能する
絶縁膜305及び絶縁膜306、チャネル領域が形成される酸化物半導体膜308b、ソ
ース及びドレインとして機能する導電膜310d、310eによりトランジスタ103を
構成する。酸化物半導体膜308bは、絶縁膜306上に設けられる。また、導電膜31
0d、310e上には、絶縁膜312、絶縁膜314が保護膜として設けられている。
【0053】
また、画素電極として機能する透光性を有する導電膜316bが、絶縁膜312及び絶
縁膜314に設けられた開口部において、導電膜310eと接続する。
【0054】
また、一方の電極として機能する透光性を有する導電膜308c、誘電体膜として機能
する絶縁膜314、他方の電極として機能する透光性を有する導電膜316bにより容量
素子105を構成する。透光性を有する導電膜308cは、絶縁膜306上に設けられる
。
【0055】
また、駆動回路部において、導電膜304a、304cと同時に形成された導電膜30
4bと、導電膜310a、310b、310d、310eと同時に形成された導電膜31
0cとは、透光性を有する導電膜316bと同時に形成された透光性を有する導電膜31
6aで接続される。
【0056】
図3(B)に示すように、導電膜304b上には、絶縁膜306及び絶縁膜312に設
けられた開口部372aと、絶縁膜305及び絶縁膜314に設けられた開口部374a
とを有する。開口部374aは、開口部372aの内側に位置する。開口部374aにお
いて、導電膜304bと透光性を有する導電膜316aが接続される。
【0057】
また、導電膜310c上には、絶縁膜312に設けられた開口部372bと、絶縁膜3
14に設けられた開口部374bとを有する。開口部374bは、開口部372bの内側
に位置する。開口部374bにおいて、導電膜310cと透光性を有する導電膜316a
が接続される。
【0058】
図3(C)に示すように、導電膜310e上には、絶縁膜312に設けられた開口部3
72cと、絶縁膜314に設けられた開口部374cとを有する。開口部374cは、開
口部372cの内側に位置する。開口部374cにおいて、導電膜310eと透光性を有
する導電膜316bが接続される。
【0059】
また、透光性を有する導電膜308c上には、絶縁膜312に設けられた開口部372
を有する。開口部372において、透光性を有する導電膜308cは絶縁膜314と接す
る。
【0060】
絶縁膜305及び絶縁膜314としては、外部からの不純物、例えば、水、アルカリ金
属、アルカリ土類金属等が、酸化物半導体膜へ拡散するのを防ぐ材料を用いることが好ま
しく、更には水素を含むことが好ましく、代表的には窒素を含む無機絶縁材料、例えば窒
化絶縁膜を用いることができる。絶縁膜305及び絶縁膜314としては、代表的には、
窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム等を用いて
形成する。
【0061】
絶縁膜306及び絶縁膜312としては、酸化物半導体膜との界面特性を向上させるこ
とが可能な材料を用いることが好ましく、代表的には、酸素を含む無機絶縁材料を用いる
ことが好ましく、例えば酸化絶縁膜を用いることができる。絶縁膜306及び絶縁膜31
2としては、代表的には、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒
化アルミニウム等を用いて形成する。
【0062】
導電膜304b及び透光性を有する導電膜316aの接続部、導電膜310c及び透光
性を有する導電膜316aの接続部、導電膜310e及び透光性を有する導電膜316b
の接続部はそれぞれ、絶縁膜305または/及び絶縁膜314で覆われている。絶縁膜3
05及び絶縁膜314は、外部からの不純物、例えば、水、アルカリ金属、アルカリ土類
金属等が、酸化物半導体膜へ拡散するのを防ぐ材料で形成される。また、開口部372a
、372b、372c、372の側面が絶縁膜305または/及び絶縁膜314で覆われ
ている。絶縁膜305及び絶縁膜314の内側に酸化物半導体膜が設けられているため、
外部からの不純物、例えば水、アルカリ金属、アルカリ土類金属等が、導電膜304b、
導電膜310c、310e、及び透光性を有する導電膜316a、316bの接続部から
、トランジスタに含まれる酸化物半導体膜へ拡散することを防ぐことができる。このため
、トランジスタの電気特性の変動を防ぐことが可能であり、半導体装置の信頼性を高める
ことができる。
【0063】
また、透光性を有する導電膜308cは、酸化物半導体膜308a、308bと同時に
形成された酸化物半導体膜である。酸化物半導体膜308a、308bは、絶縁膜306
及び絶縁膜312等の、酸化物半導体膜との界面特性を向上させることが可能な材料で形
成される膜と接しているため、酸化物半導体膜308a、308bは、半導体として機能
し、酸化物半導体膜308a、308bを有するトランジスタは、優れた電気特性を有す
る。
【0064】
ただし、本発明の実施形態の一態様は、これに限定されず、透光性を有する導電膜30
8cは、場合によっては、または、状況に応じて、酸化物半導体膜308a、または、3
08bと別々の工程で形成されてもよい。その場合には、透光性を有する導電膜308c
は、酸化物半導体膜308a、または、308bと、異なる材質を有していても良い。例
えば、透光性を有する導電膜308cは、インジウム錫酸化物(以下、ITOと示す。)
、または、インジウム亜鉛酸化物等を有していてもよい。
【0065】
一方、透光性を有する導電膜308cは、開口部372において絶縁膜314と接する
。絶縁膜314は、外部からの不純物、例えば、水、アルカリ金属、アルカリ土類金属等
が、酸化物半導体膜へ拡散するのを防ぐ材料で形成される膜であり、更には水素を含む。
このため、絶縁膜314の水素が酸化物半導体膜308a、308bと同時に形成された
酸化物半導体膜に拡散すると、該酸化物半導体膜において水素は酸素と結合し、キャリア
である電子が生成される。この結果、酸化物半導体膜は、導電性が高くなり導体として機
能する。即ち、導電性の高い酸化物半導体膜ともいえる。ここでは、酸化物半導体膜30
8a、308bと同様の材料を主成分とし、且つ水素濃度が酸化物半導体膜308a、3
08bより高いことにより、導電性が高められた金属酸化物を、透光性を有する導電膜3
08cとよぶ。
【0066】
ただし、本発明の実施形態の一態様は、これに限定されず、透光性を有する導電膜30
8cは、場合によっては、または、状況に応じて、絶縁膜314と接していないことも可
能である。
【0067】
本実施の形態に示す半導体装置は、トランジスタの酸化物半導体膜と同時に、容量素子
の一方となる電極を形成する。また、画素電極として機能する透光性を有する導電膜を容
量素子の他方の電極として用いる。これらのため、容量素子を形成するために、新たに導
電膜を形成する工程が不要であり、半導体装置の作製工程を削減できる。また、容量素子
は、一対の電極が透光性を有する導電膜で形成されているため、透光性を有する。この結
果、容量素子の占有面積を大きくしつつ、画素の開口率を高めることができる。
【0068】
ここで、酸化物半導体を用いたトランジスタの特徴について記載する。酸化物半導体を
用いたトランジスタはnチャネル型トランジスタである。また、酸化物半導体に含まれる
酸素欠損はキャリアを生成することがあり、トランジスタの電気特性及び信頼性を低下さ
せる恐れがある。例えば、トランジスタのしきい値電圧をマイナス方向に変動し、ゲート
電圧が0Vの場合にドレイン電流が流れてしまうことがある。このように、ゲート電圧が
0Vの場合にドレイン電流が流れてしまうことをノーマリーオン特性といい、このような
特性を有するトランジスタをデプレッション型トランジスタという。なお、ゲート電圧が
0Vの場合にドレイン電流が流れていないとみなすことができるトランジスタをノーマリ
ーオフ特性といい、このような特性を有するトランジスタをエンハンスメント型トランジ
スタという。
【0069】
トランジスタのチャネル領域が形成される酸化物半導体膜308bにおいて、欠陥、代
表的には酸素欠損はできる限り低減されていることが好ましい。例えば、磁場の向きを膜
面に対して平行に印加した電子スピン共鳴法によるg値=1.93のスピン密度(酸化物
半導体膜に含まれる欠陥密度に相当する。)は、測定器の検出下限以下まで低減されてい
ることが好ましい。酸化物半導体膜に含まれる欠陥、代表的には酸素欠損量をできる限り
低減することで、トランジスタ103がノーマリーオン特性となることを抑制することが
でき、半導体装置の電気特性及び信頼性を向上させることができる。また、半導体装置の
消費電力を低減することができる。
【0070】
トランジスタのしきい値電圧のマイナス方向への変動は酸素欠損だけではなく、酸化物
半導体に含まれる水素(水などの水素化合物を含む。)によっても引き起こされることが
ある。酸化物半導体に含まれる水素は金属原子と結合する酸素と反応して水になると共に
、酸素が脱離した格子(または酸素が脱離した部分)に欠損(酸素欠損ともいえる。)を
形成する。また、水素の一部が酸素と反応することで、キャリアである電子を生成してし
まう。従って、水素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン
特性となりやすい。
【0071】
そこで、トランジスタ103のチャネル領域が形成される酸化物半導体膜308bにお
いて、水素ができる限り低減されていることが好ましい。具体的には、酸化物半導体膜3
08bにおいて、二次イオン質量分析法により得られる水素濃度を、5×1019ato
ms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3未満、好ましくは1×1
018atoms/cm3以下、より好ましくは5×1017atoms/cm3以下、
さらに好ましくは1×1016atoms/cm3以下とする。
【0072】
また、トランジスタ103のチャネル領域が形成される酸化物半導体膜308bは、二
次イオン質量分析法により得られるアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を、1×
1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1016atoms/cm3以下にす
る。アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、酸化物半導体と結合するとキャリアを生成す
る場合があり、トランジスタ103のオフ電流を増大させることがある。
【0073】
このように、不純物(水素、窒素、アルカリ金属またはアルカリ土類金属など)をでき
る限り低減させ、トランジスタ103のチャネル領域が形成される酸化物半導体膜を高純
度化させた酸化物半導体膜とすることで、エンハンスメント型となり、トランジスタ10
3がノーマリーオン特性となることを抑制でき、トランジスタ103のオフ電流を極めて
低減することができる。従って、良好な電気特性を有する半導体装置を作製できる。また
、信頼性を向上させた半導体装置を作製することができる。
【0074】
なお、高純度化された酸化物半導体膜を用いたトランジスタのオフ電流が低いことは、
いろいろな実験により証明できる。例えば、チャネル幅が1×106μmでチャネル長L
が10μmの素子であっても、ソース電極とドレイン電極間の電圧(ドレイン電圧)が1
Vから10Vの範囲において、オフ電流が、半導体パラメータアナライザの測定限界以下
、すなわち1×10-13A以下という特性を得ることができる。この場合、オフ電流を
トランジスタのチャネル幅で除した値は、100zA/μm以下であることが分かる。ま
た、容量素子とトランジスタとを接続して、容量素子に流入または容量素子から流出する
電荷を当該トランジスタで制御する回路を用いて、オフ電流の測定を行う。当該測定では
、高純度化された酸化物半導体膜を上記トランジスタのチャネル形成領域に用い、容量素
子の単位時間あたりの電荷量の推移から当該トランジスタのオフ電流を測定する。その結
果、トランジスタのソース電極とドレイン電極間の電圧が3Vの場合に、数十yA/μm
という、さらに低いオフ電流が得られる。従って、高純度化された酸化物半導体膜を用い
たトランジスタは、オフ電流が著しく小さい。
【0075】
ここで、
図3に示す液晶表示装置のその他の構成要素について、以下に説明する。
【0076】
基板302上には、導電膜304a、304b、304cが形成されている。導電膜3
04aは、走査線駆動回路104に形成され、駆動回路部のトランジスタのゲートとして
の機能を有する。また、導電膜304cは、画素部100に形成され、画素部のトランジ
スタのゲートとして機能する。また、導電膜304bは、走査線駆動回路104に形成さ
れ、導電膜310cと接続する。
【0077】
基板302としては、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウ
ムホウケイ酸ガラスなどのガラス材料を用いる。量産する上では、基板302は、第8世
代(2160mm×2460mm)、第9世代(2400mm×2800mm、または2
450mm×3050mm)、第10世代(2950mm×3400mm)等のマザーガ
ラスを用いることが好ましい。マザーガラスは、処理温度が高く、処理時間が長いと大幅
に収縮するため、マザーガラスを使用して量産を行う場合、作製工程の加熱処理は、好ま
しくは600℃以下、さらに好ましくは450℃以下、さらに好ましくは350℃以下と
することが望ましい。
【0078】
導電膜304a、304b、304cとしては、アルミニウム、クロム、銅、タンタル
、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を
成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いて形成することができ
る。また、導電膜304a、304b、304cは、単層構造でも、二層以上の積層構造
としてもよい。例えば、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜
上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にタングステン膜を積層する二層構造
、窒化タンタル膜または窒化タングステン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、チ
タン膜と、そのチタン膜上にアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を形成す
る三層構造等がある。また、アルミニウムに、チタン、タンタル、タングステン、モリブ
デン、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素の一、または複数組み合わせた
合金膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。
【0079】
基板302、及び導電膜304a、304c、304b上には、絶縁膜305、絶縁膜
306が形成されている。絶縁膜305、絶縁膜306は、走査線駆動回路104のトラ
ンジスタのゲート絶縁膜、及び画素部100のトランジスタのゲート絶縁膜としての機能
を有する。
【0080】
絶縁膜305としては、窒化絶縁膜を用いて形成することが好ましく、例えば、窒化シ
リコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、窒化酸化アルミニウム膜などを用
いればよく、積層または単層で設ける。また、絶縁膜305を積層構造とした場合、第1
の窒化シリコン膜として、欠陥が少ない窒化シリコン膜とし、第1の窒化シリコン膜上に
、第2の窒化シリコン膜として、水素放出量の少ない窒化シリコン膜を設けると好適であ
る。この結果、絶縁膜305に含まれる水素及び窒素が、酸化物半導体膜308a、30
8bへ移動または拡散することを抑制できる。
【0081】
なお、酸化窒化シリコンとは、酸素の含有量が窒素の含有量より大きな絶縁材料のこと
をいう。また、窒化酸化シリコンとは、窒素の含有量が酸素の含有量より大きい絶縁材料
のことをいう。
【0082】
絶縁膜306としては、酸化絶縁膜を用いて形成することが好ましく、例えば、酸化シ
リコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜などを用
いればよく、積層または単層で設ける。
【0083】
また、絶縁膜306として、ハフニウムシリケート(HfSiOx)、窒素を有するハ
フニウムシリケート(HfSixOyNz)、窒素を有するハフニウムアルミネート(H
fAlxOyNz)、酸化ハフニウム、酸化イットリウムなどのhigh-k材料を用い
ることでトランジスタ103のゲートリークを低減できる。
【0084】
窒化シリコン膜は、酸化シリコン膜と比較して比誘電率が高く、同等の静電容量を得る
のに必要な膜厚が大きいため、ゲート絶縁膜を物理的に厚膜化することができる。よって
、トランジスタの絶縁耐圧の低下を抑制、さらには絶縁耐圧を向上させて、トランジスタ
の静電破壊を抑制することができる。
【0085】
また、絶縁膜306上には、酸化物半導体膜308a、308b、透光性を有する導電
膜308cが形成されている。酸化物半導体膜308aは、導電膜304aと重畳する位
置に形成され、駆動回路部のトランジスタのチャネル領域として機能する。また、酸化物
半導体膜308bは、導電膜304cと重畳する位置に形成され、画素部のトランジスタ
のチャネル領域として機能する。透光性を有する導電膜308cは、容量素子105の一
方の電極として機能する。
【0086】
酸化物半導体膜308a、308bは、In若しくはGaを含む酸化物半導体膜であり
、代表的には、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物、In-M-Zn酸化物(MはAl
、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、Nd、またはHf)がある。
【0087】
なお、酸化物半導体膜308a、308bがIn-M-Zn酸化物であるとき、Inお
よびMの和を100atomic%としたときInとMの原子の比率は、好ましくは、I
nが50atomic%未満、Mが50atomic%以上、さらに好ましくは、Inが
25atomic%未満、Mが75atomic%以上とする。
【0088】
酸化物半導体膜308a、308bのインジウムやガリウムなどの含有量は、飛行時間
型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)や、X線電子分光法(XPS)で比較でき
る。
【0089】
酸化物半導体膜308a、308bは、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは
2.5eV以上、より好ましくは3eV以上であるため、後に形成されるトランジスタの
オフ電流を低減することができる。
【0090】
透光性を有する導電膜308cは、酸化物半導体膜308a、308bと同様に、In
若しくはGaを含む酸化物半導体膜であり、且つ不純物が含まれていることを特徴とする
。不純物としては、水素がある。なお、水素の代わりに不純物として、ホウ素、リン、ス
ズ、アンチモン、希ガス元素、アルカリ金属、アルカリ土類金属等が含まれていてもよい
。
【0091】
酸化物半導体膜308a、308b、及び透光性を有する導電膜308cは共に、ゲー
ト絶縁膜上に形成され、In若しくはGaを含む酸化物半導体膜であるが、不純物濃度が
異なる。具体的には、酸化物半導体膜308a、308bと比較して、透光性を有する導
電膜308cの不純物濃度が高い。例えば、酸化物半導体膜308a、308bに含まれ
る水素濃度は、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atom
s/cm3未満、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、より好ましくは
5×1017atoms/cm3以下、さらに好ましくは1×1016atoms/cm
3以下であり、透光性を有する導電膜308cに含まれる水素濃度は、8×1019at
oms/cm3以上、好ましくは1×1020atoms/cm3以上、より好ましくは
5×1020atoms/cm3以上である。また、酸化物半導体膜308a、308b
と比較して、透光性を有する導電膜308cに含まれる水素濃度は2倍、好ましくは10
倍以上である。
【0092】
また、透光性を有する導電膜308cは、酸化物半導体膜308a、308bより抵抗
率が低い。透光性を有する導電膜308cの抵抗率が、酸化物半導体膜308a、308
bの抵抗率の1×10-8倍以上1×10-1倍以下であることが好ましく、代表的には
1×10-3Ωcm以上1×104Ωcm未満、さらに好ましくは、抵抗率が1×10-
3Ωcm以上1×10-1Ωcm未満であるとよい。
【0093】
酸化物半導体膜308a、308b、及び透光性を有する導電膜308cは、例えば非
単結晶構造でもよい。非単結晶構造は、例えば、後述するCAAC-OS(C Axis
Aligned Crystalline Oxide Semiconductor
)、多結晶構造、後述する微結晶構造、または非晶質構造を含む。非単結晶構造において
、非晶質構造は最も欠陥準位密度が高く、CAAC-OSは最も欠陥準位密度が低い。
【0094】
酸化物半導体膜308a、308b、及び透光性を有する導電膜308cは、例えば非
晶質構造でもよい。非晶質構造の酸化物半導体膜は、例えば、原子配列が無秩序であり、
結晶成分を有さない。または、非晶質構造の酸化物半導体膜は、例えば、完全な非晶質構
造であり、結晶部を有さない。
【0095】
なお、酸化物半導体膜308a、308b、及び透光性を有する導電膜308cが、C
AAC-OS、微結晶構造、及び非晶質構造の二以上の構造の領域を有する混合膜であっ
てもよい。混合膜は、例えば、非晶質構造の領域と、微結晶構造の領域と、CAAC-O
Sの領域と、を有する。また、混合膜は、例えば、非晶質構造の領域と、微結晶構造の領
域と、CAAC-OSの領域と、の積層構造を有してもよい。
【0096】
なお、酸化物半導体膜は、例えば、単結晶を有してもよい。
【0097】
絶縁膜306、酸化物半導体膜308a、308b、及び透光性を有する導電膜308
c上には、導電膜(以下、導電膜310a、310b、310c、310d、310eと
いう)が形成されている。また、導電膜310aは、酸化物半導体膜308aと電気的に
接続され、駆動回路部のトランジスタが有するソース及びドレインの一方としての機能を
有する。また、導電膜310bは、酸化物半導体膜308aと電気的に接続され、駆動回
路部のトランジスタが有するソース及びドレインの他方としての機能を有する。また、導
電膜310cは、絶縁膜312、絶縁膜314に設けられた開口部を介して、透光性を有
する導電膜316aと電気的に接続されている。また、導電膜310dは、酸化物半導体
膜308bと電気的に接続され、画素部のトランジスタが有するソース及びドレインの一
方としての機能を有する。また、導電膜310eは、酸化物半導体膜308b及び透光性
を有する導電膜316bと電気的に接続され、画素部のトランジスタが有するソース及び
ドレインの他方としての機能を有する。
【0098】
導電膜310a、310b、310c、310d、310eとしては、導電材料として
、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブ
デン、銀、タンタル、またはタングステンからなる単体金属、またはこれを主成分とする
合金を単層構造または積層構造として用いる。例えば、アルミニウム膜上にチタン膜を積
層する二層構造、タングステン膜上にチタン膜を積層する二層構造、銅-マグネシウム-
アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜または窒化チタン膜と、その
チタン膜または窒化チタン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその
上にチタン膜または窒化チタン膜を形成する三層構造、モリブデン膜または窒化モリブデ
ン膜と、そのモリブデン膜または窒化モリブデン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜
を積層し、さらにその上にモリブデン膜または窒化モリブデン膜を形成する三層構造等が
ある。なお、酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛を含む透明導電材料を用いてもよい
。
【0099】
絶縁膜306、酸化物半導体膜308a、308b、透光性を有する導電膜308c、
及び導電膜310a、310b、310c、310d、310e上には、絶縁膜312、
絶縁膜314が形成されている。絶縁膜312は、絶縁膜306と同様に、酸化物半導体
膜との界面特性を向上させることが可能な材料を用いることが好ましい。絶縁膜314は
、絶縁膜305と同様に、外部からの不純物、例えば、水、アルカリ金属、アルカリ土類
金属等が、酸化物半導体膜へ拡散するのを防ぐ材料を用いることが好ましい。
【0100】
また、絶縁膜312は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化絶縁
膜で形成してもよい。このようにすることで、当該酸化物半導体膜からの酸素の脱離を防
止するとともに、過剰な酸素を含む酸化絶縁膜に含まれる当該酸素を酸化物半導体膜に移
動させ、酸素欠損量を低減することが可能となる。例えば、昇温脱離ガス分析によって測
定される酸素分子の放出量が、1.0×1018分子/cm3以上ある酸化絶縁膜を用い
ることで、酸化物半導体膜308a、308bに含まれる酸素欠損量を低減することがで
きる。
【0101】
また、絶縁膜312を積層構造とし、酸化物半導体膜308a、308bに接する側に
第1の酸化絶縁膜として、酸化物半導体膜308a、308bとの界面準位が低くなる酸
化絶縁膜を設け、その上に第2の酸化絶縁膜として上記化学量論的組成を満たす酸素より
も多くの酸素を含む酸化絶縁膜を設けてもよい。
【0102】
例えば、第1の酸化絶縁膜として、電子スピン共鳴測定によるg値=2.001(E´
-center)のスピン密度が3.0×1017spins/cm3以下、好ましくは
5.0×1016spins/cm3以下の酸化絶縁膜を用いることで、酸化物半導体膜
308a、308bとの界面準位を低減することが可能である。なお、電子スピン共鳴測
定によるg値=2.001のスピン密度は、第1の酸化絶縁膜に含まれるダングリングボ
ンドの存在量に対応する。
【0103】
また、絶縁膜314上には透光性を有する導電膜316a、316bが形成されている
。透光性を有する導電膜316aは、開口部374aにおいて導電膜304bと電気的に
接続され、開口部374bにおいて導電膜310cと電気的に接続される。即ち、導電膜
304b及び導電膜310cを接続する接続電極として機能する。透光性を有する導電膜
316bは、開口部374cにおいて導電膜310eと電気的に接続され、画素の画素電
極としての機能を有する。また、透光性を有する導電膜316bは、容量素子の一対の電
極の一方として機能することができる。
【0104】
透光性を有する導電膜316a、316bとしては、酸化タングステンを含むインジウ
ム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム
酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、ITO、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケ
イ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料を用いることができ
る。
【0105】
また、基板342に接して、有色性を有する膜(以下、有色膜346という。)が形成
されている。有色膜346は、カラーフィルタとしての機能を有する。また、有色膜34
6に隣接する遮光膜344が基板342に接して形成される。遮光膜344は、ブラック
マトリクスとして機能する。また、有色膜346は、必ずしも設ける必要はなく、例えば
、液晶表示装置が白黒の場合等によって、有色膜346を設けない構成としてもよい。
【0106】
有色膜346としては、特定の波長帯域の光を透過する有色膜であればよく、例えば、
赤色の波長帯域の光を透過する赤色(R)のカラーフィルタ、緑色の波長帯域の光を透過
する緑色(G)のカラーフィルタ、青色の波長帯域の光を透過する青色(B)のカラーフ
ィルタなどを用いることができる。
【0107】
遮光膜344としては、特定の波長帯域の光を遮光する機能を有していればよく、金属
膜または黒色顔料等を含んだ有機絶縁膜などを用いることができる。
【0108】
また、有色膜346に接して、絶縁膜348が形成されている。絶縁膜348は、平坦
化層としての機能、または有色膜346が含有しうる不純物を液晶素子側へ拡散するのを
抑制する機能を有する。
【0109】
また、絶縁膜348に接して、導電膜350が形成されている。導電膜350は、画素
部の液晶素子が有する一対の電極の他方としての機能を有する。なお、透光性を有する導
電膜316a、316b、及び導電膜350上には、配向膜としての機能を有する絶縁膜
を別途形成してもよい。
【0110】
また、透光性を有する導電膜316a、316bと導電膜350との間には、液晶層3
20が形成されている。また液晶層320は、シール材(図示しない)を用いて、基板3
02と基板342の間に封止されている。なお、シール材は、外部からの水分等の入り込
みを抑制するために、無機材料と接触する構成が好ましい。
【0111】
また、透光性を有する導電膜316a、316bと導電膜350との間に液晶層320
の厚さ(セルギャップともいう)を維持するスペーサを設けてもよい。
【0112】
<半導体装置の作製方法>
図3に示す半導体装置に示す基板302上に設けられた素子部の作製方法について、図
4乃至
図7を用いて説明する。
【0113】
まず、基板302を準備する。ここでは、基板302としてガラス基板を用いる。
【0114】
次に、基板302上に導電膜を形成し、該導電膜を所望の領域に加工することで、導電
膜304a、304b、304cを形成する。なお、導電膜304a、304b、304
cの形成は、所望の領域に第1のパターニングによるマスクの形成を行い、該マスクに覆
われていない領域をエッチングすることで形成することができる。
【0115】
また、導電膜304a、304b、304cとしては、代表的には、蒸着法、CVD法
、スパッタリング法、スピンコート法等を用いて形成することができる。
【0116】
ここでは、導電膜として、厚さ100nmのタングステン膜をスパッタリング法により
形成する。次に、フォトリソグラフィ工程によりマスクを形成し、当該マスクを用いてタ
ングステン膜をドライエッチングして、導電膜304a、304b、304cを形成する
。
【0117】
次に、基板302、及び導電膜304a、304b、304c上に、絶縁膜305を形
成し、絶縁膜305上に絶縁膜306を形成する(
図4(A)参照)。
【0118】
絶縁膜305及び絶縁膜306は、スパッタリング法、CVD法等により形成すること
ができる。なお、絶縁膜305及び絶縁膜306は、真空中で連続して形成すると不純物
の混入が抑制され好ましい。
【0119】
ここでは、絶縁膜305として、厚さ400nmの窒化シリコン膜をプラズマCVD法
により形成する。また、絶縁膜306として、厚さ50nmの酸化窒化シリコン膜をプラ
ズマCVD法により形成する。
【0120】
次に、絶縁膜306上に酸化物半導体膜307を形成する(
図4(B)参照)。
【0121】
酸化物半導体膜307は、スパッタリング法、塗布法、パルスレーザー蒸着法、レーザ
ーアブレーション法などを用いて形成することができる。
【0122】
スパッタリング法で酸化物半導体膜307を形成する場合、プラズマを発生させるため
の電源装置は、RF電源装置、AC電源装置、DC電源装置等を適宜用いることができる
。
【0123】
スパッタリングガスは、希ガス(代表的にはアルゴン)、酸素、希ガス及び酸素の混合
ガスを適宜用いる。なお、希ガス及び酸素の混合ガスの場合、希ガスに対して酸素のガス
比を高めることが好ましい。
【0124】
また、ターゲットは、形成する酸化物半導体膜307の組成にあわせて、適宜選択すれ
ばよい。
【0125】
なお、酸化物半導体膜307を形成する際に、例えば、スパッタリング法を用いる場合
、基板温度を室温(例えば20℃)以上100℃未満、好ましくは基板温度を100℃以
上450℃以下、さらに好ましくは170℃以上350℃以下として、加熱しながら酸化
物半導体膜307を形成してもよい。
【0126】
なお、酸化物半導体膜307の水素濃度を低減するために、スパッタリング法により酸
化物半導体膜を形成する場合、スパッタリング装置における各チャンバーを、酸化物半導
体膜にとって不純物となる水、水素等を可能な限り除去することが可能なクライオポンプ
のような吸着式の真空排気ポンプを用いて高真空排気(1×10-4Pa乃至5×10-
7Pa程度まで)することが好ましい。または、ターボ分子ポンプとコールドトラップを
組み合わせて排気系からチャンバー内に気体、特に炭素または水素を含む気体が逆流しな
いようにしておくことが好ましい。
【0127】
また、酸化物半導体膜307の水素濃度を低減するために、チャンバー内を高真空排気
するのみならずスパッタガスの高純度化も必要である。スパッタガスとして用いる酸素ガ
スやアルゴンガスは、露点が-40℃以下、好ましくは-80℃以下、より好ましくは-
100℃以下、より好ましくは-120℃以下にまで高純度化したガスを用いることで酸
化物半導体膜に水分等が取り込まれることを可能な限り防ぐことができる。
【0128】
ここでは、酸化物半導体膜307として厚さ35nmのIn-Ga-Zn酸化物膜(I
n:Ga:Zn=1:1:1の金属酸化物ターゲットを使用。)をスパッタリング法によ
り形成する。
【0129】
次に、酸化物半導体膜307を所望の領域に加工することで、島状の酸化物半導体膜3
08a、308b、308dを形成する。このため、酸化物半導体膜308a、308b
、308dは同じ金属元素で構成される。なお、酸化物半導体膜308a、308b、3
08dの形成は、所望の領域に第2のパターニングによるマスクの形成を行い、該マスク
に覆われていない領域をエッチングすることで形成することができる。エッチングとして
は、ドライエッチング、ウエットエッチング、または双方を組み合わせたエッチングを用
いることができる(
図4(C)参照)。
【0130】
次に、第1の加熱処理を行うこがと好ましい。第1の加熱処理は、250℃以上650
℃以下、好ましくは300℃以上500℃以下の温度で、不活性ガス雰囲気、酸化性ガス
を10ppm以上含む雰囲気、または減圧状態で行えばよい。また、第1の加熱処理の雰
囲気は、不活性ガス雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を補うために酸化性ガスを
10ppm以上含む雰囲気で行ってもよい。第1の加熱処理によって、酸化物半導体膜3
08a、308b、308dに用いる酸化物半導体の結晶性を高め、さらに絶縁膜306
、及び酸化物半導体膜308a、308b、308dから水素や水などの不純物を除去す
ることができる。なお、酸化物半導体をエッチングする前に第1の加熱工程を行ってもよ
い。
【0131】
ここでは、350℃の窒素雰囲気で1時間加熱処理した後、350℃の酸素雰囲気で加
熱処理する。
【0132】
次に、絶縁膜306、及び酸化物半導体膜308a、308b、308d上に導電膜3
09を形成する(
図5(A)参照)。
【0133】
導電膜309としては、例えば、スパッタリング法を用いて形成することができる。
【0134】
ここでは、厚さ50nmのチタン膜、厚さ400nmのアルミニウム膜、及び厚さ10
0nmのチタン膜を順にスパッタリング法により積層する。
【0135】
次に、導電膜309を所望の領域に加工することで、導電膜310a、310b、31
0c、310d、310eを形成する。なお、導電膜310a、310b、310c、3
10d、310eの形成は、所望の領域に第3のパターニングによるマスクの形成を行い
、該マスクに覆われていない領域をエッチングすることで、形成することができる(
図5
(B)参照)。
【0136】
次に、絶縁膜306、酸化物半導体膜308a、308b、308d、及び導電膜31
0a、310b、310c、310d、310e上を覆うように、絶縁膜311を形成す
る(
図5(C)参照)。
【0137】
絶縁膜311としては、酸化物半導体膜308a、308b、308dとの界面特性を
向上させることが可能な材料を用いることが好ましく、代表的には、酸素を含む無機絶縁
材料を用いることが好ましく、例えば酸化絶縁膜を用いることができる。また、絶縁膜3
11としては、例えば、CVD法、スパッタリング法等を用いて形成することができる。
【0138】
なお、絶縁膜311として、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化
絶縁膜で形成する場合、絶縁膜311は以下の形成条件を用いて形成できる。なお、ここ
では絶縁膜311として、酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を形成する場合につ
いて記載する。当該形成条件は、プラズマCVD装置の真空排気された成膜室内に載置さ
れた基板を180℃以上260℃以下、さらに好ましくは180℃以上230℃以下に保
持し、成膜室に原料ガスを導入して成膜室内における圧力を100Pa以上250Pa以
下、さらに好ましくは100Pa以上200Pa以下とし、成膜室内に設けられた電極に
0.17W/cm2以上0.5W/cm2以下、さらに好ましくは0.25W/cm2以
上0.35W/cm2以下の高周波電力を供給する、ことである。
【0139】
絶縁膜311の原料ガスは、シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジ
シラン、トリシラン、フッ化シランなどがある。酸化性気体としては、酸素、オゾン、一
酸化二窒素、二酸化窒素などがある。
【0140】
絶縁膜311の形成条件として、上記圧力の成膜室において上記パワー密度の高周波電
力を供給することで、プラズマ中で原料ガスの分解効率が高まり、酸素ラジカルが増加し
、原料ガスの酸化が進むため、絶縁膜311中における酸素含有量が化学量論的組成より
も多くなる。しかしながら、基板温度が、上記温度であると、シリコンと酸素の結合力が
弱いため、加熱により酸素の一部が脱離する。この結果、化学量論的組成を満たす酸素よ
りも多くの酸素を含み、加熱により酸素の一部が脱離する酸化絶縁膜を形成することがで
きる。
【0141】
また、絶縁膜311を積層構造とし、第1の酸化絶縁膜として、少なくとも酸化物半導
体膜308a、308bとの界面準位が低くなる酸化絶縁膜を設け、その上に第2の酸化
絶縁膜として上記化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化絶縁膜を設け
てもよい。
【0142】
少なくとも酸化物半導体膜308a、308bとの界面準位が低くなる酸化絶縁膜は、
以下の形成条件を用いて形成できる。なお、ここでは当該酸化絶縁膜として、酸化シリコ
ン膜または酸化窒化シリコン膜を形成する場合について記載する。当該形成条件は、プラ
ズマCVD装置の真空排気された成膜室内に載置された基板を180℃以上400℃以下
、さらに好ましくは200℃以上370℃以下に保持し、成膜室に原料ガスのシリコンを
含む堆積性気体及び酸化性気体を導入して成膜室内における圧力を20Pa以上250P
a以下、さらに好ましくは40Pa以上200Pa以下とし、成膜室内に設けられた電極
に高周波電力を供給する条件である。
【0143】
第1の酸化絶縁膜の原料ガスは、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む
酸化絶縁膜に適用できる原料ガスとすることができる。なお、第1の酸化絶縁膜は、第2
の酸化絶縁膜の形成工程において、少なくとも酸化物半導体膜308a、308bの保護
膜となる。この結果、パワー密度の高い高周波電力を用いて第2の酸化絶縁膜を形成して
も、酸化物半導体膜308a、308bへのダメージを抑制できる。
【0144】
ここでは、絶縁膜311を第1の酸化絶縁膜及び第2の酸化絶縁膜の積層構造とし、第
1の酸化絶縁膜として、流量30sccmのシラン及び流量4000sccmの一酸化二
窒素を原料ガスとし、成膜室の圧力を200Pa、基板温度を220℃とし、27.12
MHzの高周波電源を用いて150Wの高周波電力を平行平板電極に供給したプラズマC
VD法により、厚さ50nmの酸化窒化シリコン膜を形成する。第2の酸化絶縁膜として
、流量200sccmのシラン及び流量4000sccmの一酸化二窒素を原料ガスとし
、成膜室の圧力を200Pa、基板温度を220℃とし、27.12MHzの高周波電源
を用いて1500Wの高周波電力を平行平板電極に供給したプラズマCVD法により、厚
さ400nmの酸化窒化シリコン膜を形成する。なお、プラズマCVD装置は電極面積が
6000cm2である平行平板型のプラズマCVD装置であり、供給した電力を単位面積
あたりの電力(電力密度)に換算すると0.25W/cm2である。
【0145】
次に、絶縁膜311を所望の領域に加工することで、絶縁膜312、及び開口部372
、372b、372cを形成する。さらに、ゲート絶縁膜の一部である絶縁膜306を所
望の領域に加工することで、開口部372aを形成する。なお、絶縁膜306、絶縁膜3
12、及び開口部372、372a、372b、372cの形成は、所望の領域に第4の
パターニングによるマスクの形成を行い、該マスクに覆われていない領域をエッチングす
ることで、形成することができる(
図6(A)参照)。
【0146】
なお、開口部372は、酸化物半導体膜308dの表面が露出するように形成する。開
口部372aは、絶縁膜305の表面が露出するように形成する。また、開口部372b
は、導電膜310cの表面が露出するように形成する。また、開口部372cは、導電膜
310eの表面が露出するように形成する。開口部372、372a、372b、372
cの形成方法としては、例えば、ドライエッチング法を用いることができる。ただし、開
口部372の形成方法としては、これに限定されず、ウエットエッチング法、またはドラ
イエッチング法とウエットエッチング法を組み合わせた形成方法としてもよい。なお、ド
ライエッチングを用いて開口部372、372a、372b、372cを形成する場合、
酸化物半導体膜308dがプラズマに曝され、酸化物半導体膜308dにダメージが入り
、酸化物半導体膜308dに、欠陥、代表的には酸素欠損が生成される。この結果、抵抗
の低い透光性を有する導電膜308cが形成される。
【0147】
また、当該エッチング工程において、少なくとも開口部372aを形成することで、第
5のパターニングで形成されたマスクを用いたエッチング工程の際に、エッチング量を削
減することが可能である。
【0148】
次に、絶縁膜305、導電膜310c、310e、絶縁膜312、及び酸化物半導体膜
308d上に絶縁膜313を形成する(
図6(B)参照)。
【0149】
絶縁膜313としては、外部からの不純物、例えば、水、アルカリ金属、アルカリ土類
金属等が、酸化物半導体膜へ拡散するのを防ぐ材料を用いることが好ましく、更には水素
を含むことが好ましく、代表的には窒素を含む無機絶縁材料、例えば窒化絶縁膜を用いる
ことができる。絶縁膜313としては、例えば、CVD法を用いて形成することができる
。
【0150】
絶縁膜313が水素を含み、絶縁膜313の水素が酸化物半導体膜308dに拡散する
と、該酸化物半導体膜308dにおいて水素は酸素と結合し、キャリアである電子が生成
される。この結果、酸化物半導体膜308dは、導電性が高くなり、透光性を有する導電
膜308cとなる。
【0151】
また、絶縁膜313として窒化シリコン膜を形成する場合、窒化シリコン膜は、ブロッ
ク性を高めるために、高温で成膜されることが好ましく、例えば基板温度100℃以上基
板の歪み点以下、より好ましくは300℃以上400℃以下の温度で加熱して成膜するこ
とが好ましい。また高温で成膜する場合は、酸化物半導体膜308a、308bとして用
いる酸化物半導体から酸素が脱離し、キャリア濃度が上昇する現象が発生することがある
ため、このような現象が発生しない温度とする。
【0152】
ここでは、絶縁膜313として、流量50sccmのシランと、流量5000sccm
の窒素と、流量100sccmのアンモニアとを原料ガスとし、成膜室の圧力を200P
a、基板温度を220℃とし、27.12MHzの高周波電源を用いて1000W(電力
密度としては1.6×10-1W/cm2)の高周波電力を平行平板電極に供給したプラ
ズマCVD法により、厚さ50nmの窒化シリコン膜を形成する。
【0153】
次に、絶縁膜313を所望の領域に加工することで、絶縁膜314、及び開口部374
a、374b、374cを形成する。なお、絶縁膜314、及び開口部374a、374
b、374cは、所望の領域に第5のパターニングによるマスクの形成を行い、該マスク
に覆われていない領域をエッチングすることで形成することができる(
図6(C)参照)
。
【0154】
また、開口部374aは、導電膜304bの表面が露出するように形成する。また、開
口部374bは、導電膜310cの表面が露出するように形成する。また、開口部374
cは、導電膜310eの表面が露出するように形成する。
【0155】
なお、開口部374a、374b、374cの形成方法としては、例えば、ドライエッ
チング法を用いることができる。ただし、開口部374a、374b、374cの形成方
法としては、これに限定されず、ウエットエッチング法、またはドライエッチング法とウ
エットエッチング法を組み合わせた形成方法としてもよい。
【0156】
図6(A)において、開口部372aを形成しない工程の場合、
図6(C)に示すエッ
チング工程において、絶縁膜305、絶縁膜306、絶縁膜312、及び絶縁膜314を
エッチングしなければならず、エッチング量が増えてしまう。このため、当該エッチング
工程においてばらつきが生じてしまい、一部の領域においては、開口部374aが形成さ
れず、後に形成される透光性を有する導電膜316aと導電膜304bのコンタクト不良
が生じてしまう。しかしながら、本実施の形態においては、2回のエッチング工程により
開口部372a及び開口部374aを形成するため、当該開口部の形成工程においてエッ
チング不良が生じにくい。この結果、半導体装置の歩留まりを向上させることが可能であ
る。なお、ここでは、開口部374aを用いて説明したが、開口部374b及び開口部3
74cにおいても同様の効果を有する。
【0157】
次に、開口部374a、374b、374cを覆うように絶縁膜314上に導電膜31
5を形成する(
図7(A)参照)。
【0158】
導電膜315としては、例えば、スパッタリング法を用いて形成することができる。
【0159】
ここでは、導電膜315として、スパッタリング法により、厚さ100nmの酸化シリ
コンを添加したインジウム錫酸化物膜を形成する。
【0160】
次に、導電膜315を所望の領域に加工することで、透光性を有する導電膜316a、
316bを形成する。なお、透光性を有する導電膜316a、316bの形成は、所望の
領域に第6のパターニングによるマスクの形成を行い、該マスクに覆われていない領域を
エッチングすることで形成することができる(
図7(B)参照)。
【0161】
以上の工程で基板302上に、トランジスタを有する画素部及び駆動回路部を形成する
ことができる。なお、本実施の形態に示す作製工程においては、第1乃至第6のパターニ
ング、すなわち6枚のマスクでトランジスタ、及び容量素子を同時に形成することができ
る。
【0162】
なお、本実施の形態では、絶縁膜314に含まれる水素を酸化物半導体膜308dに拡
散させて、酸化物半導体膜308dの導電性を高めたが、酸化物半導体膜308a、30
8bをマスクで覆い、酸化物半導体膜308dに不純物、代表的には、水素、ホウ素、リ
ン、スズ、アンチモン、希ガス元素、アルカリ金属、アルカリ土類金属等を添加して、酸
化物半導体膜308dの導電性を高めてもよい。酸化物半導体膜308dに水素、ホウ素
、リン、スズ、アンチモン、希ガス元素等を添加する方法としては、イオンドーピング法
、イオン注入法等がある。一方、酸化物半導体膜308dにアルカリ金属、アルカリ土類
金属等を添加する方法としては、該不純物を含む溶液を酸化物半導体膜308dに曝す方
法がある。
【0163】
次に、基板302に対向して設けられる基板342上に形成される構造について、以下
説明を行う。
【0164】
まず、基板342を準備する。基板342としては、基板302に示す材料を援用する
ことができる。次に、基板342上に遮光膜344、有色膜346を形成する(
図8(A
)参照)。
【0165】
遮光膜344及び有色膜346は、様々な材料を用いて、印刷法、インクジェット法、
フォトリソグラフィ技術を用いたエッチング方法などでそれぞれ所望の位置に形成する。
【0166】
次に、遮光膜344、及び有色膜346上に、絶縁膜348を形成する(
図8(B)参
照)。
【0167】
絶縁膜348としては、例えば、アクリル系樹脂等の有機絶縁膜を用いることができる
。絶縁膜348を形成することによって、例えば、有色膜346中に含まれる不純物等を
液晶層320側に拡散することを抑制することができる。ただし、絶縁膜348は、必ず
しも設ける必要はなく、絶縁膜348を形成しない構造としてもよい。
【0168】
次に、絶縁膜348上に導電膜350を形成する(
図8(C)参照)。導電膜350と
しては、導電膜315に示す材料を援用することができる。
【0169】
以上の工程で基板342上に形成される構造を形成することができる。
【0170】
次に、基板302と基板342上、より詳しくは基板302上に形成された絶縁膜31
4、透光性を有する導電膜316a、316bと、基板342上に形成された導電膜35
0上に、それぞれ配向膜318と配向膜352を形成する。配向膜318、配向膜352
は、ラビング法、光配向法等を用いて形成することができる。その後、基板302と、基
板342との間に液晶層320を形成する。液晶層320の形成方法としては、ディスペ
ンサ法(滴下法)や、基板302と基板342とを貼り合わせてから毛細管現象を用いて
液晶を注入する注入法を用いることができる。
【0171】
以上の工程で、
図3に示す液晶表示装置を作製することができる。
【0172】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができ
る。
【0173】
<変形例1>
ここでは、実施の形態1に示す半導体装置の画素301aの変形例について、
図3及び
図9を用いて説明する。
【0174】
図9において、走査線として機能する導電膜304cは、信号線に略直交する方向(図
中左右方向)に延伸して設けられている。信号線として機能する導電膜310dは、走査
線に略直交する方向(図中上下方向)に延伸して設けられている。容量線として機能する
導電膜304dは、走査線と平行方向に延伸して設けられている。
図2Bに示す画素30
1aと比較して、
図9に示す画素301bは、信号線として機能する導電膜310dと平
行な辺と比較して走査線として機能する導電膜304cと平行な辺の方が短い形状である
こと、容量線として機能する導電膜304dが、走査線と平行な方向に延伸して設けられ
ていること、容量線として機能する導電膜304dが、走査線として機能する導電膜30
4cと同時に形成されていることが異なる。
【0175】
また、透光性を有する導電膜308cは、導電膜310fと接続されている。なお、透
光性を有する導電膜316cは透光性を有する導電膜316bと同時に形成される。導電
膜310fは、導電膜310d、310eと同時に形成される。
【0176】
また、導電膜304d上には、開口部372cと同時に形成された開口部372dと、
開口部374cと同時に形成された開口部374dが形成される。また、導電膜310f
上には、開口部372cと同時に形成された開口部372eと、開口部374cと同時に
形成された開口部374eが形成される。開口部374d、374eはそれぞれ、開口部
372d、372eの内側に位置する。
【0177】
開口部374dにおいて、導電膜304d及び透光性を有する導電膜316cが接続さ
れる。また、開口部374eにおいて、導電膜310f及び透光性を有する導電膜316
cが接続される。即ち、
図3(A)のA-Bに示す断面図において導電膜304bと導電
膜310cが透光性を有する導電膜316aで接続されるように、導電膜304d及び導
電膜310fは、透光性を有する導電膜316cで接続される。即ち、導電膜310f及
び透光性を有する導電膜316cを介して、透光性を有する導電膜308cは容量線とし
て機能する導電膜304dと接続される。
【0178】
図9に示す画素301bは、信号線として機能する導電膜310dと平行な辺と比較し
て走査線として機能する導電膜304cと平行な辺の方が短い形状とし、且つ容量線とし
て機能する導電膜304dが、走査線として機能する導電膜304cと平行方向に延伸し
て設けられている。この結果、画素に占める導電膜304dの面積を低減することが可能
であり、開口率を高めることができる。
【0179】
<変形例2>
ここでは、実施の形態1に示す半導体装置の変形例について、
図6及び
図10を用いて
説明する。
【0180】
図10に示す半導体装置は、実施の形態1に示す半導体装置と比較して、導電膜304
bと導電膜310cの間の領域において、ゲート絶縁膜の一部である絶縁膜305と、保
護膜の一部である絶縁膜314が接することを特徴とする。即ち、絶縁膜305と、絶縁
膜314との間に、絶縁膜306及び絶縁膜312が設けられていないことを特徴とする
。
【0181】
また、導電膜310eと透光性を有する導電膜308cの間の領域において、ゲート絶
縁膜の一部である絶縁膜305と、保護膜の一部である絶縁膜314が接することを特徴
とする。即ち、絶縁膜305と、絶縁膜314との間に、絶縁膜306及び絶縁膜312
が設けられていないことを特徴とする。
【0182】
図10に示す半導体装置は、
図6(A)に示す開口部372、372a、372b、3
72cの形成工程において、開口部372a及び開口部372bの間に設けられる絶縁膜
306及び絶縁膜311を除去すればいい。即ち、第4のパターニングによるマスクの形
成の際、導電膜304bと導電膜310cの間の領域を露出するようなマスクを形成し、
該マスクに覆われていない領域をエッチングすることで、開口部372a及び開口部37
2bの間に設けられる絶縁膜306及び絶縁膜311を除去することができる。
【0183】
また、
図6(A)に示す開口部372、372a、372b、372cの形成工程にお
いて、開口部372c及び開口部372の間に設けられる絶縁膜306絶縁膜311を除
去すればいい。即ち、第4のパターニングによるマスクの形成の際、導電膜310eと透
光性を有する導電膜308cの間を露出するようなマスクを形成し、該マスクに覆われて
いない領域をエッチングすることで、開口部372c及び開口部372の間に設けられる
絶縁膜306、絶縁膜311を除去することができる。
【0184】
この結果、
図10に示す半導体装置は、透光性を有する導電膜316a、316b表面
の段差を低減することが可能である。このため、液晶層320に含まれる液晶材料の配向
乱れを低減することが可能である。また、コントラストの高い半導体装置を作製すること
ができる。
【0185】
<変形例3>
ここでは、実施の形態1に示す半導体装置の変形例について、
図4、
図5、
図11乃至
図13を用いて説明する。
【0186】
図11に示す半導体装置は、実施の形態1に示す半導体装置と比較して、導電膜304
b上に形成される開口部は2回のエッチング工程により形成され、導電膜310c及び導
電膜310e上に形成される開口部は1回のエッチング工程により形成されることを特徴
とする。
【0187】
図11に示す半導体装置の作製方法を、以下に説明する。
【0188】
実施の形態1と同様に、
図4及び
図5の工程を経て、基板302上に、ゲートとして機
能する導電膜304a、304b、304c、ゲート絶縁膜として機能する絶縁膜305
及び絶縁膜306、酸化物半導体膜308a、308b、308d、導電膜310a、3
10b、310c、310d、310e、絶縁膜311、絶縁膜313を形成する。
【0189】
次に、絶縁膜311を所望の領域に加工することで、絶縁膜312、及び開口部372
を形成する。さらに、ゲート絶縁膜の一部である絶縁膜306を所望の領域に加工するこ
とで、開口部372aを形成する。即ち、ここでは、開口部372b、372cを形成し
ない。なお、絶縁膜305、絶縁膜312、及び開口部372、372aの形成は、所望
の領域に第4のパターニングによるマスクの形成を行い、該マスクに覆われていない領域
をエッチングすることで、形成することができる。(
図12(A)参照)。
【0190】
次に、導電膜304b、酸化物半導体膜308d上に絶縁膜313を形成する(
図12
(B)参照)。
【0191】
次に、絶縁膜313を所望の領域に加工することで、絶縁膜314、及び開口部374
a、376b、376cを形成する。なお、絶縁膜314、及び開口部374a、376
b、376cは、所望の領域に第5のパターニングによるマスクの形成を行い、該マスク
に覆われていない領域をエッチングすることで形成することができる(
図12(C)参照
)。
【0192】
また、開口部374aは、導電膜304bの表面が露出するように形成する。また、開
口部376bは、導電膜310cの表面が露出するように形成する。また、開口部376
cは、導電膜310eの表面が露出するように形成する。
【0193】
当該エッチング工程において、開口部374aにおいては、絶縁膜305及び絶縁膜3
13をエッチングする。一方、開口部376b、376cにおいては、絶縁膜312及び
絶縁膜313をエッチングする。このため、絶縁膜305及び絶縁膜312の膜厚を等し
くすることで、開口部ごとのエッチング量が等しくなるため、当該工程におけるエッチン
グのばらつきを低減することが可能である。この結果、半導体装置の作製工程における歩
留まりを高めることができる。
【0194】
次に、開口部374a、376b、376cを覆うように絶縁膜314上に導電膜31
5を形成する(
図13(A)参照)。
【0195】
次に、導電膜315を所望の領域に加工することで、透光性を有する導電膜316a、
316bを形成する。なお、透光性を有する導電膜316a、316bの形成は、所望の
領域に第6のパターニングによるマスクの形成を行い、該マスクに覆われていない領域を
エッチングすることで形成することができる(
図13(B)参照)。
【0196】
以上の工程により、歩留まり高く半導体装置を作製することができる。
【0197】
<変形例4>
ここでは、実施の形態1に示す半導体装置の変形例について、
図6及び
図14を用いて
説明する。
【0198】
図14に示す半導体装置は、実施の形態1に示す半導体装置と比較して、導電膜304
b上に形成される開口部は、絶縁膜305、絶縁膜306、及び絶縁膜312に形成され
る第1の開口部と、絶縁膜314に形成される第2の開口部とを有し、第2の開口部は第
1の開口部の内側に位置することを特徴とする。
【0199】
図14に示す半導体装置は、
図6(A)に示す開口部372、372a、372b、3
72cの形成工程において、導電膜304b上の絶縁膜305を除去すればいい。この結
果、絶縁膜305、絶縁膜306、及び絶縁膜312に第1の開口部を形成することがで
きる。
【0200】
また、
図6(C)に示すような、所望の領域に第5のパターニングによるマスクの形成
を行い、該マスクに覆われていない領域をエッチングする際、各開口部において絶縁膜3
13をエッチングするため、当該工程におけるエッチングのばらつきを低減することが可
能である。この結果、半導体装置の作製工程における歩留まりを高めることができる。
【0201】
<変形例5>
本実施の形態及び変形例に示す半導体装置において、駆動回路部及び画素部に設けられ
るトランジスタは、酸化物半導体膜308a、308b上に導電膜310a、310b、
310d、310eが設けられるが、絶縁膜306と酸化物半導体膜308a、308b
の間に、導電膜310a、310b、310d、310eを設けてもよい。
【0202】
<変形例6>
本実施の形態及び変形例に示す半導体装置において、駆動回路部及び画素部に設けられ
るトランジスタの形状は、
図2に示したトランジスタの形状に限定されず、適宜変更する
ことができる。例えば、トランジスタにおいて、導電膜310dにおいて、酸化物半導体
膜308bと重なる領域であって、且つ導電膜310eと対向する面の上面形状がU字型
(C字型、コの字型、または馬蹄型)で、導電膜310eを囲む形状であってもよい。こ
のような形状とすることで、トランジスタの面積が小さくても、十分なチャネル幅を確保
することが可能となり、トランジスタの導通時に流れるドレイン電流(オン電流ともいう
。)の量を増やすことが可能となる。
【0203】
<変形例7>
本実施の形態及び変形例に示す半導体装置において、駆動回路部及び画素部に設けられ
るトランジスタとして、チャネルエッチ型のトランジスタを示したが、その代わりに、チ
ャネル保護型のトランジスタを用いることができる。チャネル保護膜を設けることで、酸
化物半導体膜308a、308bの表面は、導電膜の形成工程で用いるエッチャントやエ
ッチングガスに曝されず、酸化物半導体膜308a、308b及びチャネル保護膜の間の
不純物を低減できる。この結果、トランジスタのソース電極及びドレイン電極の間に流れ
るリーク電流を低減することが可能である。
【0204】
<変形例8>
本実施の形態及び変形例に示す半導体装置において、駆動回路部及び画素部に設けられ
るトランジスタとして、1つのゲート電極を有するトランジスタを示したが、酸化物半導
体膜308a、308bを介して対向する2つのゲート電極を有するトランジスタを用い
ることができる。
【0205】
例えば、絶縁膜314上に、ゲート電極として機能する導電膜を設けることで、酸化物
半導体膜308a、308bを介して対向する2つのゲート電極を有するトランジスタを
作製することができる。該導電膜は、透光性を有する導電膜316a、316bと同時に
形成すればよい。また、導電膜は、少なくとも酸化物半導体膜308a、308bのチャ
ネル領域と重なる。酸化物半導体膜308a、308bを介して対向する2つのゲート電
極は、異なる電位、または同電位を印加してもよい。または、一方のゲート電極を任意の
電位とし、他方のゲート電極の電位を定電位としてもよく、また接地電位としてもよい。
【0206】
また、絶縁膜314上にゲート電極として機能する導電膜を設けることで、周囲の電界
の変化が酸化物半導体膜308a、308bへ与える影響を軽減し、トランジスタの信頼
性を向上させることができる。また、トランジスタのしきい値電圧を制御することができ
る。
【0207】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様である半導体装置について、図面を用いて説明する
。なお、本実施の形態では、液晶表示装置を例にして本発明の一態様である半導体装置を
説明する。なお、実施の形態1と重複する構成に関しては、説明を省略する。
【0208】
図15は、本実施の形態に示す半導体装置の断面図であり、断面A-Bは駆動回路の断
面図であり、断面C-Dは画素部の断面図である。また、
図15(A)の破線Eの拡大図
を
図15(B)に示し、
図15(A)の破線Fの拡大図を
図15(C)に示す。
【0209】
本実施の形態に示す半導体装置は、駆動回路部及び画素部において、開口部の形状が実
施の形態1と異なる。具体的には、開口部の形成工程において、ゲート絶縁膜の一部をエ
ッチングして、開口部を形成した後に、該開口部上に透光性を有する導電膜を形成するこ
とを特徴とする。
【0210】
図15(B)に示すように、導電膜304b上には、絶縁膜306に設けられた開口部
382aと、絶縁膜305、絶縁膜312、及び絶縁膜314に設けられた開口部384
aとを有する。開口部384aは、開口部382aの内側に位置する。開口部384aに
おいて、導電膜304bと透光性を有する導電膜316aが接続される。
【0211】
また、導電膜310c上には、絶縁膜312及び絶縁膜314に設けられた開口部38
4bを有する。開口部384bにおいて、導電膜310cと透光性を有する導電膜316
aが接続される。
【0212】
図15(C)に示すように、導電膜310e上には、絶縁膜312及び絶縁膜314に
設けられた開口部384cを有する。開口部384cにおいて、導電膜310eと透光性
を有する導電膜316bが接続される。
【0213】
また、絶縁膜306において、開口部382を有する。開口部382上に透光性を有す
る導電膜308cが設けられている。即ち、開口部382において、透光性を有する導電
膜308c及び絶縁膜305が接する。
【0214】
本実施の形態においては、透光性を有する導電膜308cが接する絶縁膜305は、外
部からの不純物、例えば、水、アルカリ金属、アルカリ土類金属等が、酸化物半導体膜へ
拡散するのを防ぐ材料を用いることが好ましく、更には水素を含むことが好ましく、代表
的には窒素を含む無機絶縁材料、例えば窒化絶縁膜を用いることができる。
【0215】
透光性を有する導電膜308cは、酸化物半導体膜308a、308bと同時に形成さ
れた酸化物半導体膜である。透光性を有する導電膜308cは、開口部382において絶
縁膜305と接する。絶縁膜305は、外部からの不純物、例えば、水、アルカリ金属、
アルカリ土類金属等が、酸化物半導体膜へ拡散するのを防ぐ材料で形成される膜であり、
更には水素を含む。このため、絶縁膜305の水素が酸化物半導体膜308a、308b
と同時に形成された酸化物半導体膜に拡散すると、該酸化物半導体膜において水素は酸素
と結合し、キャリアである電子が生成される。この結果、酸化物半導体膜は、導電性が高
くなり導体として機能する。ここでは、酸化物半導体膜308a、308bと同様の材料
を主成分とし、且つ水素濃度が酸化物半導体膜308a、308bより高いことにより、
導電性が高められた金属酸化物を、透光性を有する導電膜308cとよぶ。
【0216】
本実施の形態に示す半導体装置は、トランジスタの酸化物半導体膜と同時に、容量素子
の一方となる電極を形成する。また、画素電極として機能する透光性を有する導電膜を容
量素子の他方の電極として用いる。これらのため、容量素子を形成するために、新たに導
電膜を形成する工程が不要であり、半導体装置の作製工程を削減できる。また、容量素子
は、一対の電極が透光性を有する導電膜で形成されているため、透光性を有する。この結
果、容量素子の占有面積を大きくしつつ、画素の開口率を高めることができる。また、絶
縁膜306の膜厚を小さくすることで、透光性を有する導電膜316a、316b表面の
段差を低減することが可能である。このため、液晶層320に含まれる液晶材料の配向乱
れを低減することが可能である。また、コントラストの高い半導体装置を作製することが
できる。
【0217】
<半導体装置の作製方法>
図15に示す半導体装置に示す基板302上に設けられた素子部の作製方法について、
図4、
図16、及び
図17を用いて説明する。
【0218】
実施の形態1と同様に、
図4の工程を経て、基板302上に、ゲートとして機能する導
電膜304a、304b、304c、ゲート絶縁膜として機能する絶縁膜305及び絶縁
膜306を形成する。なお、ゲートとして機能する導電膜304a、304b、304c
は、第1のパターニングによるマスクの形成を行い、該マスクに覆われていない領域をエ
ッチングすることで形成することができる。
【0219】
次に、絶縁膜306を所望の領域に加工することで、開口部382a、382bを形成
する。なお、開口部382a、382の形成は、所望の領域に第2のパターニングによる
マスクの形成を行い、該マスクに覆われていない領域をエッチングすることで形成するこ
とができる(
図16(A)参照)。
【0220】
次に、実施の形態1と同様に、酸化物半導体膜を形成した後、該酸化物半導体膜を所望
の領域に加工することで、島状の酸化物半導体膜308a、308b、308dを形成す
る。なお、酸化物半導体膜308a、308b、308dの形成は、所望の領域に第3の
パターニングによるマスクの形成を行い、該マスクに覆われていない領域をエッチングす
ることで形成することができる(
図16(B)参照)。
【0221】
次に、実施の形態1と同様に、第1の加熱処理を行うことが好ましい。
【0222】
次に、絶縁膜306、及び酸化物半導体膜308a、308b、308d上に導電膜を
形成した後、該導電膜を所望の領域に加工することで、導電膜310a、310b、31
0c、310d、310eを形成する。なお、導電膜310a、310b、310c、3
10d、310eの形成は、所望の領域に第4のパターニングによるマスクの形成を行い
、該マスクに覆われていない領域をエッチングすることで、形成することができる。
【0223】
次に、絶縁膜306、酸化物半導体膜308a、308b、308d、及び導電膜31
0a、310b、310c、310d、310e上を覆うように、絶縁膜311及び絶縁
膜313を形成する(
図16(C)参照)。
【0224】
次に、絶縁膜311及び絶縁膜313を所望の領域に加工することで、絶縁膜312及
び絶縁膜314、並びに開口部384a、384b、384cを形成する。なお、絶縁膜
312及び絶縁膜314、並びに開口部384a、384b、384cの形成は、所望の
領域に第5のパターニングによるマスクの形成を行い、該マスクに覆われていない領域を
エッチングすることで、形成することができる。(
図17(A)参照)。
【0225】
次に、導電膜304b、導電膜310c、310d、310e、絶縁膜314上に導電
膜を形成した後、該導電膜を所望の領域に加工することで、透光性を有する導電膜316
a、316bを形成する。なお、透光性を有する導電膜316a、316bの形成は、所
望の領域に第6のパターニングによるマスクの形成を行い、該マスクに覆われていない領
域をエッチングすることで形成することができる(
図17(B)参照)。
【0226】
以上の工程で基板302上に、トランジスタを有する画素部及び駆動回路部を形成する
ことができる。なお、本実施の形態に示す作製工程においては、第1乃至第6のパターニ
ング、すなわち6枚のマスクでトランジスタ、及び容量素子を同時に形成することができ
る。
【0227】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様である半導体装置について、図面を用いて説明する
。なお、本実施の形態では、液晶表示装置を例にして本発明の一態様である半導体装置を
説明する。本実施の形態では、実施の形態1を用いて説明するが適宜実施の形態2に適用
することが可能である。なお、実施の形態1と重複する構成に関しては、説明を省略する
。
【0228】
図18は、本実施の形態に示す半導体装置の断面図であり、断面A-Bは駆動回路部の
断面図であり、断面C-Dは画素部の断面図である。
【0229】
本実施の形態に示す半導体装置は、トランジスタの保護膜である絶縁膜314上に絶縁
膜332が形成されていることを特徴とする。絶縁膜332は、凹凸を緩和する膜、好ま
しくは平坦化膜としての機能を有する。また、絶縁膜332を形成することにより、絶縁
膜332よりも下方に形成された導電膜と、絶縁膜332よりも上方に形成された導電膜
との間で生じうる寄生容量の発生を抑制することができる。
【0230】
絶縁膜332としては、有機シランガスを用いたCVD法により形成した酸化シリコン
膜を設けることができる。当該酸化シリコン膜は段差被覆性に優れている。当該酸化シリ
コン膜は300nm以上600nm以下で設けることができる。
【0231】
有機シランガスとしては、珪酸エチル(TEOS:化学式Si(OC2H5)4)、テ
トラメチルシラン(TMS:化学式Si(CH3)4)、テトラメチルシクロテトラシロ
キサン(TMCTS)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、ヘキサメ
チルジシラザン(HMDS)、トリエトキシシラン(SiH(OC2H5)3)、トリス
ジメチルアミノシラン(SiH(N(CH3)2)3)などのシリコン含有化合物を用い
ることができる。
【0232】
絶縁膜332としては、有機シランガス及び酸素を用い、基板温度を200℃以上55
0℃以下、好ましくは220℃以上500℃以下、より好ましくは300℃以上450℃
以下としたCVD法により形成することができる。
【0233】
また、絶縁膜332として、感光性、非感光性の有機樹脂を適用でき、例えば、アクリ
ル樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、エポキシ樹脂、またはシロキサン系樹脂などを用い
ることができる。感光性の有機樹脂を用いることで、開口部における側面を湾曲させるこ
とが可能であり、開口部における段差を緩やかにすることができる。
【0234】
また、絶縁膜314上に絶縁膜332を設けると、絶縁膜314及び絶縁膜332は、
容量素子105の誘電体膜として機能する。絶縁膜314は、窒化絶縁膜で形成されるが
、窒化絶縁膜は、酸化シリコンなどの酸化絶縁膜に比べて、比誘電率が高く、内部応力が
大きい傾向を有する。そのため、容量素子105の誘電体膜として絶縁膜332を用いず
に絶縁膜314だけを用いる場合、絶縁膜314の膜厚が小さいと容量素子105の電荷
容量が大きくなりすぎてしまい、画像信号の画素への書き込みの速度を低消費電力にて高
めることが難しくなる。逆に、絶縁膜314の膜厚が大きいと、内部応力が大きくなりす
ぎてしまい、トランジスタの閾値電圧が変動するなど、電気特性の悪化を招く。また、絶
縁膜314の内部応力が大きくなりすぎると、絶縁膜314が基板302から剥離しやす
くなり、歩留りが低下する。しかし、絶縁膜314よりも比誘電率の低い絶縁膜332を
、絶縁膜314と共に、画素の容量素子の誘電体膜として用いることで、絶縁膜314の
膜厚を大きくすることなく、誘電体膜の誘電率を所望の値に調整することができる。
【0235】
ここでは、絶縁膜314及び透光性を有する導電膜316a、316bの間に平坦性を
有する絶縁膜332を設けたが、透光性を有する導電膜316a、316b及び配向膜3
18の間に、絶縁膜332を設けてもよい。
【0236】
絶縁膜314及び透光性を有する導電膜316a、316bの間、または透光性を有す
る導電膜316a、316b及び配向膜318の間に、上記酸化シリコン膜を設けること
で、透光性を有する導電膜316a、316bの表面の平坦性を高めることができる。
【0237】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様である半導体装置について、図面を用いて説明する
。なお、本実施の形態では、液晶表示装置を例にして本発明の一態様である半導体装置を
説明する。本実施の形態では、横電界を用いて液晶分子を配向させるFFS(Fring
e Field Switching)モードの液晶表示装置を用いて説明する。なお、
実施の形態1と重複する構成に関しては、説明を省略する。
【0238】
図19は、FFSモードの液晶表示装置の画素301cの上面図である。
【0239】
走査線として機能する導電膜304cは、信号線に略直交する方向(図中左右方向)に
延伸して設けられている。信号線として機能する導電膜310dは、走査線に略直交する
方向(図中上下方向)に延伸して設けられている。共通電極に接続し、共通配線として機
能する導電膜310gは、信号線と平行方向に延伸して設けられている。
【0240】
トランジスタ103は、走査線及び信号線が交差する領域に設けられている。トランジ
スタ103は、ゲートとして機能する導電膜304c、ゲート絶縁膜(
図19に図示せず
。)、ゲート絶縁膜上に形成されたチャネル領域が形成される酸化物半導体膜308b、
ソース及びドレインとして機能する導電膜310d、310eによりトランジスタを構成
する。なお、導電膜304cは、走査線としても機能し、酸化物半導体膜308bと重畳
する領域がトランジスタ103のゲートとして機能する。また、導電膜310dは、信号
線としても機能し、酸化物半導体膜308bと重畳する領域がトランジスタ103のソー
スまたはドレインとして機能する。
【0241】
また、導電膜310eは、開口部372c及び開口部374cにおいて、画素電極とし
て機能する透光性を有する導電膜316dと電気的に接続されている。
【0242】
画素電極として機能する透光性を有する導電膜316dは、開口部(スリット)を有す
る。
【0243】
また、酸化物半導体膜308bと同時に形成された透光性を有する導電膜308cがゲ
ート絶縁膜上に設けられている。透光性を有する導電膜308cは、本実施の形態では、
共通電極として機能する。透光性を有する導電膜308cは、開口部372において共通
配線として機能する導電膜310gと接続されている。
【0244】
本実施の形態において、液晶素子は、共通電極として機能する透光性を有する導電膜3
08cと、画素電極として機能する透光性を有する導電膜316dと、液晶層を含む。即
ち、液晶素子は透光性を有する。
【0245】
また、画素電極として機能する透光性を有する導電膜316dには開口部(スリット)
が設けられている。即ち、画素電極として機能する透光性を有する導電膜316dと、共
通電極として機能する透光性を有する導電膜308cとの間に電界を印加することで、画
素電極として機能する透光性を有する導電膜316d、絶縁膜、及び共通電極として機能
する導電膜308cの重畳領域が容量素子として機能すると共に、液晶素子として機能す
る。このため、液晶分子配向を基板と平行な方向で制御できる。
【0246】
次に、
図19の一点鎖線C-D間における断面図を
図20に示す。なお、駆動回路部の
断面図をA-Bに示す。
【0247】
本実施の形態に示す液晶表示装置は、一対の基板(基板302と基板342)間に液晶
素子323が挟持されている。
【0248】
液晶素子323は、基板302の上方の透光性を有する導電膜308cと、絶縁膜31
4と、透光性を有する導電膜316dと、配向膜318と、液晶層320とを有する。な
お、透光性を有する導電膜308cは、液晶素子323の一方の電極として機能し、透光
性を有する導電膜316dは、液晶素子323の他方の電極として機能する。また、実施
の形態1と異なり、基板342上に透光性を有する導電膜が設けられておらず、絶縁膜3
48上に配向膜352が設けられている。
【0249】
また、共通電極として機能する透光性を有する導電膜308c上に絶縁膜314が設け
られ、絶縁膜314上に、画素電極として機能する透光性を有する導電膜316dが形成
される。即ち、基板302上に液晶素子を構成する一対の電極が設けられている。
【0250】
画素電極として機能する透光性を有する導電膜316dと、共通電極として機能する透
光性を有する導電膜308cとの間に電圧を印加することで、画素電極として機能する透
光性を有する導電膜316d、絶縁膜、及び共通電極として機能する透光性を有する導電
膜308cの間に電界が発生し、液晶分子の配向を基板と平行な方向で制御することがで
きる。この結果、FFSモードの液晶表示装置は、視野角が優れ、より高画質である。
【0251】
(実施の形態5)
本実施の形態においては、実施の形態1乃至実施の形態3に示す駆動回路部及び画素部
に用いることのできるトランジスタの構成について、
図21を用いて説明する。
【0252】
図21(A)に示すトランジスタは、基板302上に形成された導電膜304aと、基
板302及び導電膜304a上に形成された絶縁膜305、306と、絶縁膜306上に
形成された多層膜380と、絶縁膜306及び多層膜380上に形成された導電膜310
a、310bと、を有する。また、
図21(A)に示すトランジスタは、該トランジスタ
上、より詳しくは、多層膜380、及び導電膜310a、310b上に形成された絶縁膜
312、314を含む構成としてもよい。
【0253】
なお、導電膜310a、310bに用いる導電膜の種類によっては、多層膜380の一
部から酸素を奪い、または混合層を形成し、多層膜380中に一対のn型領域383を形
成することがある。
図21(A)において、n型領域383は、多層膜380中の導電膜
310a、310bと接する界面近傍の領域に形成されうる。なお、n型領域383は、
ソース領域及びドレイン領域として機能することができる。
【0254】
また、
図21(A)に示すトランジスタは、導電膜304aがゲートとして機能し、導
電膜310aがソースまたはドレインの一方として機能し、導電膜310bがソースまた
はドレインの他方として機能する。
【0255】
また、
図21(A)に示すトランジスタは、導電膜304aと重畳する領域の多層膜3
80の導電膜310aと導電膜310bとの間隔をチャネル長という。また、チャネル領
域とは、多層膜380において、導電膜304aと重畳し、且つ導電膜310aと導電膜
310bに挟まれる領域をいう。また、チャネルとは、チャネル領域において、電流が主
として流れる領域をいう。また、チャネル形成領域とは、チャネル領域を含む領域であり
、ここでは多層膜380がチャネル形成領域に相当する。
【0256】
ここで、多層膜380の詳細について、
図21(B)を用いて詳細に説明を行う。
【0257】
図21(B)は、
図21(A)に示す多層膜380の破線で囲まれた領域の拡大図であ
る。多層膜380は、酸化物半導体膜380aと、酸化物膜380bと、を有する。
【0258】
酸化物半導体膜380aは、少なくともインジウム(In)、亜鉛(Zn)及びM(A
l、Ga、Y、Zr、Sn、La、CeまたはHf等の金属)を含むIn-M-Zn酸化
物で表記される膜を含むことが好ましい。なお、酸化物半導体膜380aは、先の実施の
形態に示す酸化物半導体膜308a、308bに用いることのできる酸化物半導体材料、
または形成方法等を適宜援用することができる。
【0259】
酸化物膜380bは、酸化物半導体膜380aを構成する元素の一種以上から構成され
、伝導帯下端のエネルギーが酸化物半導体膜380aよりも0.05eV以上、0.07
eV以上、0.1eV以上または0.15eV以上、かつ2eV以下、1eV以下、0.
5eV以下または0.4eV以下真空準位に近い酸化物膜である。このとき、ゲートとし
て機能する導電膜304aに電界を印加すると、多層膜380のうち、伝導帯下端のエネ
ルギーが小さい酸化物半導体膜380aにチャネルが形成される。すなわち、酸化物半導
体膜380aと絶縁膜306との間に酸化物膜380bを有することによって、トランジ
スタのチャネルを絶縁膜312と接しない酸化物半導体膜380aに形成することができ
る。
【0260】
また、酸化物半導体膜380aを構成する元素の一種以上から酸化物膜380bが構成
されるため、酸化物半導体膜380aと酸化物膜380bとの間において、界面散乱が起
こりにくい。したがって、酸化物半導体膜380aと酸化物膜380bとの間において、
キャリアの動きが阻害されないため、トランジスタの電界効果移動度が高くなる。また、
酸化物半導体膜380aと酸化物膜380bとの間に界面準位を形成しにくい。酸化物半
導体膜380aと酸化物膜380bとの間に界面準位があると、該界面をチャネルとした
しきい値電圧の異なる第2のトランジスタが形成され、トランジスタの見かけ上のしきい
値電圧が変動することがある。したがって、酸化物膜380bを設けることにより、トラ
ンジスタのしきい値電圧などの電気特性のばらつきを低減することができる。
【0261】
酸化物膜380bとしてはIn-M-Zn酸化物(Al、Ti、Ga、Y、Zr、Sn
、La、CeまたはHf等の金属)で表記され、酸化物半導体膜380aよりもMの原子
数比が高い酸化物膜を含む。具体的には、酸化物膜380bとして、酸化物半導体膜38
0aよりも前述の元素を1.5倍以上、好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上
高い原子数比で含む酸化物膜を用いる。前述の元素はインジウムよりも酸素と強く結合す
るため、酸素欠損が酸化物膜に生じることを抑制する機能を有する。即ち、酸化物膜38
0bは酸化物半導体膜380aよりも酸素欠損が生じにくい酸化物膜である。
【0262】
つまり、酸化物半導体膜380a、酸化物膜380bが、少なくともインジウム、亜鉛
及びM(Al、Ti、Ga、Y、Zr、Sn、La、CeまたはHf等の金属)を含むI
n-M-Zn酸化物であるとき酸化物膜380bをIn:M:Zn=x1:y1:z1[
原子数比]、酸化物半導体膜380aをIn:M:Zn=x2:y2:z2[原子数比]
、とすると、y1/x1がy2/x2よりも大きくなることが好ましい。y1/x1はy
2/x2よりも1.5倍以上、好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上とする。
このとき、酸化物膜380bにおいて、y1がx1以上であるとトランジスタの電気特性
を安定させることができる。ただし、y1がx1の3倍以上になると、トランジスタの電
界効果移動度が低下してしまうため、y1はx1の3倍未満であることが好ましい。
【0263】
なお、酸化物半導体膜380aがIn-M-Zn酸化物であるとき、InおよびMの和
を100atomic%としたときInとMの原子数比率は好ましくはInが25ato
mic%以上、Mが75atomic%未満、さらに好ましくはInが34atomic
%以上、Mが66atomic%未満とする。また、酸化物膜380bがIn-M-Zn
酸化物であるとき、InおよびMの和を100atomic%としたときInとMの原子
数比率は好ましくはInが50atomic%未満、Mが50atomic%以上、さら
に好ましくはInが25atomic%未満、Mが75atomic%以上とする。
【0264】
酸化物半導体膜380a、及び酸化物膜380bには、例えば、インジウム、亜鉛及び
ガリウムを含んだ酸化物半導体を用いることができる。具体的には、酸化物半導体膜38
0aとしては、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]のIn-Ga-Zn酸化物、
In:Ga:Zn=3:1:2[原子数比]のIn-Ga-Zn酸化物、またはその近傍
の原子数比を有する金属酸化物ターゲットを用いて形成することができ、酸化物膜380
bとしては、In:Ga:Zn=1:3:2[原子数比]のIn-Ga-Zn酸化物、I
n:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]のIn-Ga-Zn酸化物、In:Ga:Zn
=1:6:2[原子数比]のIn-Ga-Zn酸化物、In:Ga:Zn=1:6:4[
原子数比]のIn-Ga-Zn酸化物、In:Ga:Zn=1:6:10[原子数比]の
In-Ga-Zn酸化物、In:Ga:Zn=1:9:6[原子数比]のIn-Ga-Z
n酸化物、またはその近傍の原子数比を有する金属酸化物ターゲットを用いて形成するこ
とができる。
【0265】
また、酸化物半導体膜380aの厚さは、3nm以上200nm以下、好ましくは3n
m以上100nm以下、さらに好ましくは3nm以上50nm以下とする。また、酸化物
膜380bの厚さは、3nm以上100nm以下、好ましくは3nm以上50nm以下と
する。
【0266】
次に、多層膜380のバンド構造について、
図21(C)、(D)を用いて説明する。
【0267】
例として、酸化物半導体膜380aとしてエネルギーギャップが3.15eVであるI
n-Ga-Zn酸化物を用い、酸化物膜380bとしてエネルギーギャップが3.5eV
であるIn-Ga-Zn酸化物とする。エネルギーギャップは、分光エリプソメータ(H
ORIBA JOBIN YVON社 UT-300)を用いて測定できる。
【0268】
酸化物半導体膜380a及び酸化物膜380bの真空準位と価電子帯上端のエネルギー
差(イオン化ポテンシャルともいう。)は、それぞれ8eV及び8.2eVであった。な
お、真空準位と価電子帯上端のエネルギー差は、紫外線光電子分光分析(UPS:Ult
raviolet Photoelectron Spectroscopy)装置(P
HI社 VersaProbe)を用いて測定できる。
【0269】
したがって、酸化物半導体膜380a及び酸化物膜380bの真空準位と伝導帯下端の
エネルギー差(電子親和力ともいう。)は、それぞれ4.85eV及び4.7eVである
。
【0270】
図21(C)は、多層膜380のバンド構造の一部を模式的に示している。ここでは、
多層膜380に酸化シリコン膜を接して設けた場合について説明する。なお、
図21(C
)に表すEcI1は酸化シリコン膜の伝導帯下端のエネルギーを示し、EcS1は酸化物
半導体膜380aの伝導帯下端のエネルギーを示し、EcS2は酸化物膜380bの伝導
帯下端のエネルギーを示し、EcI2は酸化シリコン膜の伝導帯下端のエネルギーを示す
。また、EcI1は、
図21(A)において、絶縁膜306に相当し、EcI2は、
図2
1(A)において、絶縁膜312に相当する。
【0271】
図21(C)に示すように、酸化物半導体膜380a及び酸化物膜380bにおいて、
伝導帯下端のエネルギーは障壁が無くなだらかに変化する。換言すると、連続的に変化す
るともいうことができる。これは、多層膜380は、酸化物半導体膜380aと共通の元
素を含み、酸化物半導体膜380a及び酸化物膜380bの間で、酸素が相互に移動する
ことで混合層が形成されるためであるということができる。
【0272】
図21(C)より、多層膜380の酸化物半導体膜380aがウェル(井戸)となり、
多層膜380を用いたトランジスタにおいて、チャネル領域が酸化物半導体膜380aに
形成されることがわかる。なお、多層膜380は、伝導帯下端のエネルギーが連続的に変
化しているため、酸化物半導体膜380aと酸化物膜380bとが連続接合している、と
もいえる。
【0273】
なお、
図21(C)に示すように、酸化物膜380bと、絶縁膜312との界面近傍に
は、不純物や欠陥に起因したトラップ準位が形成され得るものの、酸化物膜380bが設
けられることにより、酸化物半導体膜380aと該トラップ準位とを遠ざけることができ
る。ただし、EcS1とEcS2とのエネルギー差が小さい場合、酸化物半導体膜380
aの電子が該エネルギー差を越えてトラップ準位に達することがある。トラップ準位に電
子が捕獲されることで、絶縁膜界面にマイナスの電荷が生じ、トランジスタのしきい値電
圧はプラス方向にシフトしてしまう。したがって、EcS1とEcS2とのエネルギー差
を、0.1eV以上、好ましくは0.15eV以上とすると、トランジスタのしきい値電
圧の変動が低減され、安定した電気特性となるため好適である。
【0274】
また、
図21(D)は、多層膜380のバンド構造の一部を模式的に示し、
図21(C
)に示すバンド構造の変形例である。ここでは、多層膜380に酸化シリコン膜を接して
設けた場合について説明する。なお、
図21(D)に表すEcI1は酸化シリコン膜の伝
導帯下端のエネルギーを示し、EcS1は酸化物半導体膜380aの伝導帯下端のエネル
ギーを示し、EcI2は酸化シリコン膜の伝導帯下端のエネルギーを示す。また、EcI
1は、
図21(A)において、絶縁膜306に相当し、EcI2は、
図21(A)におい
て、絶縁膜312に相当する。
【0275】
図21(A)に示すトランジスタにおいて、導電膜310a、310bの形成時に多層
膜380の上方、すなわち酸化物膜380bがエッチングされる場合がある。しかし、酸
化物半導体膜380aの上面は、酸化物膜380bの成膜時に酸化物半導体膜380aと
酸化物膜380bの混合層が形成される場合がある。
【0276】
例えば、酸化物半導体膜380aが、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]のI
n-Ga-Zn酸化物、またはIn:Ga:Zn=3:1:2[原子数比]の金属酸化物
ターゲットを用いて形成されたIn-Ga-Zn酸化物であり、酸化物膜380bが、I
n:Ga:Zn=1:3:2[原子数比]のIn-Ga-Zn酸化物、またはIn:Ga
:Zn=1:6:4[原子数比]の金属酸化物ターゲットを用いて形成されたIn-Ga
-Zn酸化物である場合、酸化物半導体膜380aよりも酸化物膜380bのGaの含有
量が多いため、酸化物半導体膜380aの上面には、GaOx層または酸化物半導体膜3
80aよりもGaを多く含む混合層が形成されうる。
【0277】
したがって、酸化物膜380bがエッチングされた場合においても、EcS1のEcI
2側の伝導帯下端のエネルギーが高くなり、
図21(D)に示すバンド構造のようになる
場合がある。
【0278】
図21(D)に示すバンド構造のようになる場合、チャネル領域の断面観察時において
、多層膜380は、酸化物半導体膜380aのみと見かけ上観察される場合がある。しか
しながら、実質的には、酸化物半導体膜380a上には、酸化物半導体膜380aよりも
Gaを多く含む混合層が形成されているため、該混合層を1.5層として、捉えることが
できる。なお、該混合層は、例えば、EDX分析等によって、多層膜380に含有する元
素を測定した場合、酸化物半導体膜380aの上方の組成を分析することで確認すること
ができる。例えば、酸化物半導体膜380aの上方の組成が、酸化物半導体膜380a中
の組成よりもGaの含有量が多い構成となることで確認することができる。
【0279】
なお、本実施の形態においては、多層膜380は、酸化物半導体膜380aと、酸化物
膜380bと、の2層の積層構造について、例示したが、これに限定されず、例えば、3
層以上の積層構造とすることができる。3層構造としては、例えば、本実施の形態に示す
多層膜380の下層、すなわち酸化物半導体膜380aの下層に、さらに1層設ける構成
としてもよい。酸化物半導体膜380aの下層に設ける膜の構成としては、例えば、酸化
物膜380bと同様の構成を適用することができる。
【0280】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができ
る。
【0281】
(実施の形態6)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した半導体装置に含まれている酸化物半導体
膜及び透光性を有する導電膜について説明する。なお、透光性を有する導電膜は、
図3に
示す透光性を有する導電膜308cのように、酸化物半導体膜と同時に形成され、且つ窒
化絶縁膜と接することにより導電性が高められた膜である。
【0282】
酸化物半導体膜及び透光性を有する導電膜は、非晶質酸化物半導体、単結晶酸化物半導
体、及び多結晶酸化物半導体とすることができる。また、酸化物半導体膜及び透光性を有
する導電膜は、結晶部分を有する酸化物半導体(CAAC-OS)で構成されていてもよ
い。
【0283】
CAAC-OS膜は、複数の結晶部を有する酸化物半導体膜の一つであり、ほとんどの
結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさである。従って、CAAC-
OS膜に含まれる結晶部は、一辺が10nm未満、5nm未満または3nm未満の立方体
内に収まる大きさの場合も含まれる。CAAC-OS膜は、微結晶酸化物半導体膜よりも
欠陥準位密度が低いという特徴がある。以下、CAAC-OS膜について詳細な説明を行
う。
【0284】
CAAC-OS膜を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Elec
tron Microscope)によって観察すると、結晶部同士の明確な境界、即ち
結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することができない。そのため、C
AAC-OS膜は、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
【0285】
CAAC-OS膜を、試料面と概略平行な方向からTEMによって観察(断面TEM観
察)すると、結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原
子の各層は、CAAC-OS膜の膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹
凸を反映した形状であり、CAAC-OS膜の被形成面または上面と平行に配列する。
【0286】
一方、CAAC-OS膜を、試料面と概略垂直な方向からTEMによって観察(平面T
EM観察)すると、結晶部において、金属原子が三角形状または六角形状に配列している
ことを確認できる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られ
ない。
【0287】
断面TEM観察および平面TEM観察より、CAAC-OS膜の結晶部は配向性を有し
ていることがわかる。
【0288】
CAAC-OS膜に対し、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)
装置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnO4の結晶を有するCAAC-OS
膜のout-of-plane法による解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピーク
が現れる場合がある。このピークは、InGaZnO4の結晶の(009)面に帰属され
ることから、CAAC-OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に
概略垂直な方向を向いていることが確認できる。
【0289】
一方、CAAC-OS膜に対し、c軸に概略垂直な方向からX線を入射させるin-p
lane法による解析では、2θが56°近傍にピークが現れる場合がある。このピーク
は、InGaZnO4の結晶の(110)面に帰属される。InGaZnO4の単結晶酸
化物半導体膜であれば、2θを56°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)
として試料を回転させながら分析(φスキャン)を行うと、(110)面と等価な結晶面
に帰属されるピークが6本観察される。これに対し、CAAC-OS膜の場合は、2θを
56°近傍に固定してφスキャンした場合でも、明瞭なピークが現れない。
【0290】
以上のことから、CAAC-OS膜では、異なる結晶部間ではa軸およびb軸の配向は
不規則であるが、c軸配向性を有し、かつc軸が被形成面または上面の法線ベクトルに平
行な方向を向いていることがわかる。従って、前述の断面TEM観察で確認された層状に
配列した金属原子の各層は、結晶のab面に平行な面である。
【0291】
なお、結晶部は、CAAC-OS膜を成膜した際、または加熱処理などの結晶化処理を
行った際に形成される。上述したように、結晶のc軸は、CAAC-OS膜の被形成面ま
たは上面の法線ベクトルに平行な方向に配向する。従って、例えば、CAAC-OS膜の
形状をエッチングなどによって変化させた場合、結晶のc軸がCAAC-OS膜の被形成
面または上面の法線ベクトルと平行にならないこともある。
【0292】
また、CAAC-OS膜中の結晶化度が均一でなくてもよい。例えば、CAAC-OS
膜の結晶部が、CAAC-OS膜の上面近傍からの結晶成長によって形成される場合、上
面近傍の領域は、被形成面近傍の領域よりも結晶化度が高くなることがある。また、CA
AC-OS膜に不純物を添加する場合、不純物が添加された領域の結晶化度が変化し、部
分的に結晶化度の異なる領域が形成されることもある。
【0293】
なお、InGaZnO4の結晶を有するCAAC-OS膜のout-of-plane
法による解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現
れる場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC-OS膜中の一部に、c軸配向
性を有さない結晶が含まれることを示している。CAAC-OS膜は、2θが31°近傍
にピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さないことが好ましい。
【0294】
なお、本明細書において、単に垂直と記載する場合、85°以上95°以下の範囲も含
まれることとする。また、単に平行と記載する場合、-5°以上5°以下の範囲も含まれ
ることとする。
【0295】
なお、CAAC-OSにおいて、結晶部の分布が一様でなくてもよい。例えば、CAA
C-OSの形成過程において、酸化物半導体の表面側から結晶成長させる場合、被形成面
の近傍に対し表面の近傍では結晶部の占める割合が高くなることがある。また、CAAC
-OSへ不純物を添加することにより、当該不純物添加領域において結晶部が非晶質化す
ることもある。このため、CAAC-OSにおいて、不純物、代表的にはシリコン、炭素
等の濃度を2.5×1021atoms/cm3以下とすることで、結晶性の高いCAA
C-OSを形成することができる。
【0296】
<CAAC-OS膜の局在準位>
ここで、酸化物半導体膜としてCAAC-OS膜の局在準位について説明する。ここで
は、CAAC-OS膜をCPM(Constant photocurrent met
hod)測定で評価した結果について説明する。
【0297】
まず、CPM測定した試料の構造について説明する。
【0298】
測定試料は、ガラス基板上に設けられたCAAC-OS膜と、該CAAC-OS膜に接
する一対の電極と、CAAC-OS膜及び一対の電極を覆う絶縁膜と、を有する。
【0299】
次に、測定試料に含まれるCAAC-OS膜の形成方法について説明する。
【0300】
In-Ga-Zn酸化物(In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比])である金属酸
化物ターゲットを用い、成膜ガスとしてアルゴンガスを30sccm、酸素ガスを15s
ccm用い、圧力を0.4Paとし、基板温度を400℃とし、DC電力を0.5kW印
加する条件を用いたスパッタリング法により、CAAC-OS膜を形成した。次に、45
0℃の窒素雰囲気で1時間加熱した後、450℃の酸素雰囲気で1時間加熱して、CAA
C-OS膜に含まれる水素を脱離させる処理及びCAAC-OS膜に酸素を供給する処理
を行った。
【0301】
次に、CAAC-OS膜を有する測定試料についてCPM測定を行った。具体的には、
CAAC-OS膜に接して設けた第1の電極および第2の電極間に電圧を印加した状態で
光電流値が一定となるように端子間の測定試料面に照射する光量を調整し、所望の波長の
範囲において照射光量から吸収係数を導出した。
【0302】
各測定試料をCPM測定して得られた吸収係数からバンドテイル起因の吸収係数を除い
た吸収係数、即ち欠陥に起因する吸収係数を
図31に示す。
図31において、横軸は吸収
係数を表し、縦軸は光エネルギーを表す。なお、
図31の縦軸において、CAAC-OS
膜の伝導帯の下端を0eVとし、価電子帯の上端を3.15eVとする。また、
図31に
おいて、各曲線は吸収係数と光エネルギーの関係を示す曲線であり、欠陥準位に相当する
。
【0303】
図31に示す曲線において、欠陥準位による吸収係数は、5.86×10
-4cm
-1
であった。即ち、CAAC-OS膜は、欠陥準位による吸収係数が1×10
-3/cm未
満、好ましくは1×10
-4/cm未満であり、欠陥準位密度の低い膜である。
【0304】
なお、CAAC-OS膜に関し、X線反射率法(XRR)を用いた膜密度の測定を行っ
た。CAAC-OS膜の膜密度は、6.3g/cm3であった。即ち、CAAC-OS膜
は、膜密度の高い膜である。
【0305】
<CAAC-OS膜の電子線回折パターンの観察結果>
次に、CAAC-OS膜の電子線回折パターンの観察結果を説明する。
【0306】
本実施の形態に用いるCAAC-OS膜は、In-Ga-Zn酸化物(In:Ga:Z
n=1:1:1[原子数比])である金属酸化物ターゲット、および酸素を含む成膜ガス
を用いたスパッタリング法で形成したIn-Ga-Zn酸化物膜である。
【0307】
図38にCAAC-OS膜の断面TEM(Transmission Electro
n Microscopy(透過型電子顕微鏡))像を示す。また、
図39に
図38のポ
イント1乃至ポイント4において電子線回折を用いて測定した電子線回折パターンを示す
。
【0308】
図38に示す断面TEM画像は、透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製「H-
9000NAR」)を用い、加速電圧を300kV、倍率200万倍で撮影した画像であ
る。また、
図39に示す電子線回折パターンは、透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジ
ーズ製「HF-2000」)を用い、加速電圧を200kV、ビーム径を約1nmφまた
は約50nmφとした電子線回折パターンである。なお、ビーム径が10nmφ以下とし
た電子線回折を、特に極微電子線回折と呼ぶことがある。また、ビーム径を約1nmφと
した場合の電子線回折での測定範囲は、5nmφ以上10nmφ以下である。
【0309】
図38に示すポイント1(膜表面側)、ポイント2(膜中央)、ポイント3(膜下地側
)における電子線回折パターンが
図39(A)、(B)、(C)にそれぞれ対応しており
、電子ビーム径を約1nmφとした電子線回折パターンである。また、
図38に示すポイ
ント4(膜全体)における電子線回折パターンが
図39(D)であり、電子ビーム径を約
50nmφとした電子線回折パターンである。
【0310】
ポイント1(膜表面側)およびポイント2(膜中央)の電子線回折パターンは、スポッ
ト(輝点)によるパターンの形成が確認できるが、ポイント3(膜下地側)では、ややパ
ターンが崩れている。これは、CAAC-OS膜の膜厚方向において、結晶状態が異なる
ことを示唆している。なお、ポイント4(膜全体)においては、スポット(輝点)による
パターンの形成が確認できることから、膜全体としてはCAAC-OS膜である、または
、CAAC-OS膜を含む膜であるということができる。
【0311】
図40は、
図38におけるポイント1(膜表面側)の近傍の拡大写真である。層間絶縁
膜であるSiON膜との界面までCAAO-OS膜の配向性を示す明瞭な格子像を確認す
ることができる。
【0312】
図41(A)、(B)は、
図38の断面TEM観察に用いたCAAC-OS膜とは異な
るCAAC-OS膜の断面TEM写真とX線回折スペクトルである。CAAC-OS膜は
様々な形態があり、
図41(B)に示すような2θ=31°近傍に結晶成分を示すピーク
Aが現れる。なお、当該ピークは明瞭に現れない場合もある。
【0313】
図41(A)のCAAC-OS膜に同心円で示す領域において、電子線のビーム径を1
nmφ、20nmφ、50nmφ、70nmφとして、電子線回折を行った結果を
図42
(A)、(B)、(C)、(D)に示す。電子線のビーム径が1nmφにおいては、
図3
9(A)、(B)と同様に明瞭なスポット(輝点)によるパターンの形成を確認すること
ができる。電子線のビーム径を大きくしていくとスポット(輝点)がやや不明瞭になるが
、回折パターンは確認することができ、膜全体としてはCAAC-OS膜である、または
CAAC-OS膜を含む膜であるということができる。
【0314】
図43(A)、(B)は、
図41(A)の断面TEM観察に用いたCAAC-OS膜を
450℃でアニールした後の断面TEM写真とX線回折スペクトルである。
【0315】
図43(A)のCAAC-OS膜に同心円で示す領域において、電子線のビーム径を1
nmφ、20nmφ、50nmφ、70nmφとして、電子線回折を行った結果を
図44
(A)、(B)、(C)、(D)に示す。
図42に示した結果と同様に、電子線のビーム
径が1nmφにおいては、明瞭なスポット(輝点)によるパターンの形成を確認すること
ができる。また、電子線のビーム径を大きくしていくとスポット(輝点)がやや不明瞭に
なるが、回折パターンは確認することができ、膜全体としてはCAAC-OS膜である、
またはCAAC-OS膜を含む膜であるということができる。
【0316】
図45(A)、(B)は、
図38の断面TEM写真に用いたCAAC-OS膜、および
図41(A)の断面TEM観察に用いたCAAC-OS膜とは異なるCAAC-OS膜の
断面TEM写真とX線回折スペクトルである。CAAC-OS膜は様々な形態があり、図
45(B)に示すように2θ=31°近傍に結晶成分を示すピークAが現れるとともに、
スピネル結晶構造に由来するピークBが現れる場合もある。
【0317】
図45(A)のCAAC-OS膜に同心円で示す領域において、電子線のビーム径を1
nmφ、20nmφ、50nmφ、90nmφとして、電子線回折を行った結果を
図46
(A)、(B)、(C)、(D)に示す。電子線のビーム径が1nmφにおいては、明瞭
なスポット(輝点)によるパターンの形成を確認することができる。また、電子線のビー
ム径を大きくしていくとスポット(輝点)がやや不明瞭になるが、回折パターンは確認す
ることができる。また、ビーム径90nmφでは、より明瞭なスポット(輝点)を確認す
ることができる。したがって、膜全体としてはCAAC-OS膜である、またはCAAC
-OS膜を含む膜であるということができる。
【0318】
<CAAC-OSの作製方法>
CAAC-OSに含まれる結晶部のc軸は、CAAC-OSの被形成面の法線ベクトル
または表面の法線ベクトルに平行な方向に揃うため、CAAC-OSの形状(被形成面の
断面形状または表面の断面形状)によっては互いに異なる方向を向くことがある。結晶部
は、成膜することにより、または成膜後に加熱処理などの結晶化処理を行うことにより形
成される。
【0319】
CAAC-OSの形成方法としては、三つ挙げられる。
【0320】
第1の方法は、成膜温度を100℃以上450℃以下として酸化物半導体膜を成膜する
ことで、酸化物半導体膜に含まれる結晶部のc軸が、被形成面の法線ベクトルまたは表面
の法線ベクトルに平行な方向に揃った結晶部を形成する方法である。
【0321】
第2の方法は、酸化物半導体膜を薄い厚さで成膜した後、200℃以上700℃以下の
加熱処理を行うことで、酸化物半導体膜に含まれる結晶部のc軸が、被形成面の法線ベク
トルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃った結晶部を形成する方法である。
【0322】
第3の方法は、一層目の酸化物半導体膜を薄い厚さで成膜した後、200℃以上700
℃以下の加熱処理を行い、さらに二層目の酸化物半導体膜の成膜を行うことで、酸化物半
導体膜に含まれる結晶部のc軸が、被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに
平行な方向に揃った結晶部を形成する方法である。
【0323】
なお、本実施の形態に示す構成などは、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて
用いることができる。
【0324】
(実施の形態7)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した半導体装置に含まれている酸化物半導体
膜及び透光性を有する導電膜について説明する。なお、透光性を有する導電膜は、
図3に
示す透光性を有する導電膜308cのように、酸化物半導体膜と同時に形成され、且つ窒
化絶縁膜と接することにより導電性が高められた膜である。
【0325】
酸化物半導体膜及び透光性を有する導電膜は、微結晶構造の酸化物半導体膜で構成され
ていてもよい。ここでは、微結晶構造の酸化物半導体膜を微結晶酸化物半導体膜という。
【0326】
微結晶酸化物半導体膜は、TEMによる観察像では、明確に結晶部を確認することがで
きない場合がある。微結晶酸化物半導体膜に含まれる結晶部は、1nm以上100nm以
下、または1nm以上10nm以下の大きさであることが多い。特に、1nm以上10n
m以下、または1nm以上3nm以下の微結晶であるナノ結晶(nc:nanocrys
tal)を有する酸化物半導体膜を、nc-OS(nanocrystalline O
xide Semiconductor)膜と呼ぶ。また、nc-OS膜は、例えば、T
EMによる観察像では、結晶粒界を明確に確認できない場合がある。
【0327】
nc-OS膜は、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以
上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OS膜は、異な
る結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。
従って、nc-OS膜は、分析方法によっては、非晶質酸化物半導体膜と区別が付かない
場合がある。例えば、nc-OS膜に対し、結晶部よりも大きい径のX線を用いるXRD
装置を用いて構造解析を行うと、out-of-plane法による解析では、結晶面を
示すピークが検出されない。また、nc-OS膜に対し、結晶部よりも大きいプローブ径
(例えば50nm以上)の電子線を用いる電子線回折(制限視野電子線回折ともいう。)
を行うと、ハローパターンのような回折パターンが観測される。一方、nc-OS膜に対
し、結晶部の大きさと近いか結晶部より小さいプローブ径の電子線を用いるナノビーム電
子線回折を行うと、スポットが観測される。また、nc-OS膜に対しナノビーム電子線
回折を行うと、円を描くように(リング状に)輝度の高い領域が観測される場合がある。
また、nc-OS膜に対しナノビーム電子線回折を行うと、リング状の領域内に複数のス
ポットが観測される場合がある。
【0328】
nc-OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも規則性の高い酸化物半導体膜である。そ
のため、nc-OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも欠陥準位密度が低くなる。ただし
、nc-OS膜は、異なる結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、nc-
OS膜は、CAAC-OS膜と比べて欠陥準位密度が高くなる。
【0329】
<微結晶酸化物半導体膜の局在準位>
ここで、微結晶酸化物半導体膜の局在準位について説明する。ここでは、微結晶酸化物
半導体膜をCPM測定で評価した結果について説明する。
【0330】
まず、測定試料の構造について説明する。
【0331】
測定試料は、ガラス基板上に設けられた微結晶酸化物半導体膜と、該微結晶酸化物半導
体膜に接する一対の電極と、微結晶酸化物半導体膜及び一対の電極を覆う絶縁膜と、を有
する。
【0332】
次に、測定試料に含まれる微結晶酸化物半導体膜の形成方法について説明する。
【0333】
In-Ga-Zn酸化物(In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比])である金属酸
化物ターゲットを用い、成膜ガスとしてアルゴンガスを30sccm、酸素ガスを15s
ccm用い、圧力を0.4Paとし、基板温度を室温とし、DC電力を0.5kW印加す
る条件を用いたスパッタリング法により、第1の微結晶酸化物半導体膜を形成した。
【0334】
また、第1の微結晶酸化物半導体膜を、450℃の窒素雰囲気で1時間加熱した後、4
50℃の酸素雰囲気で1時間加熱することで、第1の微結晶酸化物半導体膜に含まれる水
素を脱離させる処理及び第1の微結晶酸化物半導体膜に酸素を供給する処理を行い、第2
の微結晶酸化物半導体膜を形成した。
【0335】
次に、第1の微結晶酸化物半導体膜を有する測定試料、及び第2の微結晶酸化物半導体
膜を有する測定試料についてCPM測定を行った。具体的には、微結晶酸化物半導体膜に
接して設けた一対の電極間に電圧を印加した状態で光電流値が一定となるように端子間の
測定試料面に照射する光量を調整し、所望の波長の範囲において照射光量から吸収係数を
導出した。
【0336】
各測定試料をCPM測定して得られた吸収係数からバンドテイル起因の吸収係数を除い
た吸収係数、即ち欠陥に起因する吸収係数を
図32に示す。
図32において、横軸は吸収
係数を表し、縦軸は光エネルギーを表す。なお、
図32の縦軸において、微結晶酸化物半
導体膜の伝導帯の下端を0eVとし、価電子帯の上端を3.15eVとする。また、
図3
2において、各曲線は吸収係数と光エネルギーの関係を示す曲線であり、欠陥準位に相当
する。
【0337】
図32(A)は、第1の微結晶酸化物半導体膜を有する測定試料の測定結果であり、欠
陥準位による吸収係数は、5.28×10
-1cm
-1であった。
図32(B)は、第2
の微結晶酸化物半導体膜を有する測定試料の測定結果であり、欠陥準位による吸収係数は
、1.75×10
-2cm
-1であった。
【0338】
従って、加熱処理により、微結晶酸化物半導体膜に含まれる欠陥を低減することができ
る。
【0339】
なお、第1の微結晶酸化物半導体膜及び第2の微結晶酸化物半導体膜に関し、X線反射
率法(XRR(X-ray Reflectometry))を用いた膜密度の測定を行
った。第1の微結晶酸化物半導体膜の膜密度は、5.9g/cm3であり、第2の微結晶
酸化物半導体膜の膜密度は6.1g/cm3であった。
【0340】
従って、加熱処理により、微結晶酸化物半導体膜の膜密度を高めることができる。
【0341】
即ち、微結晶酸化物半導体膜において、膜密度が高い程、膜中に含まれる欠陥が少ない
ことがわかる。
【0342】
ここで、微結晶酸化物半導体膜の電子線回折パターンについて、
図47乃至
図53を用
いて、以下説明を行う。
【0343】
微結晶酸化物半導体膜は、ビーム径が10nmφ以下とした電子線回折(極微電子線回
折)を用いた電子線回折パターンにおいて、非晶質状態を示すハローパターンとも、特定
の面に配向した結晶状態を示す規則性を有するスポットとも異なり、方向性を持たないス
ポットが観察される酸化物半導体膜である。
【0344】
図47(A)に微結晶酸化物半導体膜の断面TEM(Transmission El
ectron Microscopy(透過型電子顕微鏡))像を示す。また、
図47(
B)に
図47(A)のポイント1において極微電子線回折を用いて測定した電子線回折パ
ターンを、
図47(C)に
図47(A)のポイント2において極微電子線回折を用いて測
定した電子線回折パターンを、
図47(D)に
図47(A)のポイント3において極微電
子線回折を用いて測定した電子線回折パターンをそれぞれ示す。
【0345】
図47では、微結晶酸化物半導体膜の一例として、In-Ga-Zn酸化物膜を石英ガ
ラス基板上に膜厚50nmで成膜した試料を用いる。
図47に示す微結晶酸化物半導体膜
の成膜条件は、In:Ga:Zn=1:1:1(原子数比)である金属酸化物ターゲット
を用いて、酸素雰囲気下(流量45sccm)、圧力0.4Pa、直流(DC)電源0.
5kW、基板温度を室温とした。そして、成膜した微結晶酸化物半導体膜を100nm以
下(例えば、40nm±10nm)の幅に薄片化し、断面TEM像及び極微電子線回折に
よる電子線回折パターンを得た。
【0346】
図47(A)は、透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製「H-9000NAR
」)を用い、加速電圧を300kV、倍率200万倍として撮影した微結晶酸化物半導体
膜の断面TEM像である。また、
図47(B)乃至
図47(D)は、透過型電子顕微鏡(
日立ハイテクノロジーズ製「HF-2000」)を用い、加速電圧を200kV、ビーム
径を約1nmφとして極微電子線回折によって得られた電子線回折パターンである。なお
、ビーム径を約1nmφとした場合の極微電子線回折での測定範囲は、5nmφ以上10
nmφ以下である。
【0347】
図47(B)に示すように、微結晶酸化物半導体膜は、極微電子線回折を用いた電子線
回折パターンにおいて、円周状に配置された複数のスポット(輝点)が観察される。換言
すると、微結晶酸化物半導体膜は、円周状(同心円状)に分布した複数のスポットが観察
されるともいえる。または、円周状に分布した複数のスポットが複数の同心円を形成する
ともいえる。
【0348】
また、石英ガラス基板との界面近傍である
図47(D)及び、微結晶酸化物半導体膜の
膜厚方向中央部の
図47(C)においても
図47(B)と同様に円周状に分布した複数の
スポットが観察される。
図47(C)において、メインスポットから円周状のスポットま
での距離は、3.88/nmから4.93/nmであった。面間隔に換算すると、0.2
03nmから0.257nmである。
【0349】
図47の極微電子線回折パターンより、微結晶酸化物半導体膜は、面方位が不規則であ
って且つ大きさの異なる結晶部が複数混在する膜であることがわかる。
【0350】
次いで、
図48(A)に微結晶酸化物半導体膜の平面TEM像を示す。また、
図48(
B)に
図48(A)において円で囲んだ領域を、制限視野電子線回折を用いて測定した電
子線回折パターンを示す。
【0351】
図48では、微結晶酸化物半導体膜の一例として、In-Ga-Zn酸化物膜を石英ガ
ラス基板上に膜厚30nmで成膜した試料を用いる。
図48に示す微結晶酸化物半導体膜
の成膜条件は、In:Ga:Zn=1:1:1(原子数比)である金属酸化物ターゲット
を用いて、酸素雰囲気下(流量45sccm)、圧力0.4Pa、直流(DC)電源0.
5kW、基板温度を室温とした。そして、試料を薄片化し、微結晶酸化物半導体膜の平面
TEM像及び電子線回折による電子線回折パターンを得た。
【0352】
図48(A)は、透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製「H-9000NAR
」)を用い、加速電圧を300kV、倍率50万倍として撮影した微結晶酸化物半導体膜
の平面TEM像である。また、
図48(B)は、制限視野を300nmφとして電子線回
折によって得られた電子線回折パターンである。なお、電子線の広がりを考慮すると、測
定範囲は、300nmφ以上である。
【0353】
図48(B)に示すように、微結晶酸化物半導体膜では、極微電子線回折よりも測定範
囲の広い制限視野電子線回折を用いた電子線回折パターンでは、極微電子線回折によって
観察された複数のスポットがみられず、ハローパターンが観察される。
【0354】
次に、
図49に、
図47及び
図48の電子線回折パターンにおける回折強度の分布を概
念的に示す。
図49(A)は、
図47(B)乃至
図47(D)に示す極微電子線回折パタ
ーンにおける回折強度の分布の概念図である。また、
図49(B)は、
図48(B)に示
す制限視野電子線回折パターンにおける回折強度の分布の概念図である。また、
図49(
C)は単結晶構造または多結晶構造の電子線回折パターンにおける回折強度の分布の概念
図である。
【0355】
図49において、縦軸は各スポットなどの分布を表す電子線回折強度(任意単位)、横
軸はメインスポットからの距離を示す。
【0356】
図49(C)に示す単結晶構造または多結晶構造においては、結晶部が配向する面の面
間隔(d値)に応じた、メインスポットからの特定の距離にスポットがみられる。
【0357】
一方、
図47に示すように微結晶酸化物半導体膜の極微電子線回折パターンで観察され
る複数のスポットによって形成された円周状の領域は、比較的大きい幅を有する。よって
、
図49(A)は、離散的な分布を示す。また、極微電子線回折パターンにおいて、同心
円状の領域間に明確なスポットとならないものの輝度の高い領域が存在することがわかる
。
【0358】
また、
図49(B)に示すように、微結晶酸化物半導体膜の制限視野電子線回折パター
ンにおける電子線回折強度分布は、連続的な強度分布を示す。
図49(B)は、
図49(
A)に示す電子線回折強度分布を広範囲で観察した結果と近似可能であるため、複数のス
ポットが重なってつながり、連続的な強度分布が得られたものと考察できる。
【0359】
図49(A)乃至
図49(C)に示すように、微結晶酸化物半導体膜は、面方位が不規
則であって且つ大きさの異なる結晶部が複数混在する膜であり、且つ、その結晶部は、制
限視野電子線回折パターンにおいてはスポットが観察されない程度に、極微細であること
が示唆される。
【0360】
複数のスポットが観察された
図47において、微結晶酸化物半導体膜は50nm以下に
薄片化されている。また電子線のビーム径は1nmφに収束されているため、その測定範
囲は5nm以上10nm以下である。よって、微結晶酸化物半導体膜に含まれる結晶部は
、50nm以下であり、例えば、10nm以下、または5nm以下であることが推測され
る。
【0361】
ここで、
図50に、石英ガラス基板における極微電子線回折パターンを示す。測定条件
は、
図47(B)乃至
図47(D)に示す電子線回折パターンと同様とした。
【0362】
図50より、非晶質構造を有する石英ガラス基板では、特定のスポットを有さずメイン
スポットから輝度が連続的に変化するハローパターンが観測される。このように、非晶質
構造を有する膜においては、極微小な領域の電子線回折を行ったとしても、微結晶酸化物
半導体膜で観察されるような円周状に分布した複数のスポットが観察されない。従って、
図47(B)乃至
図47(D)で観察される円周状に分布した複数のスポットは、微結晶
酸化物半導体膜に特有のものであることが確認される。
【0363】
また、
図51に、
図47(A)に示すポイント2にビーム径を約1nmφに収束した電
子線を1分間照射した後に、測定を行った電子線回折パターンを示す。
【0364】
図51に示す電子線回折パターンは、
図47(C)に示す電子線回折パターンと同様に
、円周状に分布した複数のスポットが観察され、両者の測定結果に特段の相違点は確認さ
れない。このことは、
図47(C)の電子線回折パターンで確認された結晶部は、微結晶
酸化物半導体膜の成膜時から存在していることを意味しており、収束電子線を照射したこ
とで結晶部が形成されたものではないことを意味する。
【0365】
次に、
図52に、
図47(A)に示す断面TEM像の部分拡大図を示す。
図52(A)
は、
図47(A)のポイント1近傍(微結晶酸化物半導体膜表面)を、倍率800万倍で
観察した断面TEM像である。また、
図52(B)は、
図47(A)のポイント2近傍(
微結晶酸化物半導体膜の膜厚方向中央部)を、倍率800万倍で観察した断面TEM像で
ある。
【0366】
図52に示す断面TEM像からは、微結晶酸化物半導体膜において結晶構造が明確には
確認できない。
【0367】
また、
図47及び
図48の観察に用いた、石英ガラス基板上に本実施の形態の微結晶酸
化物半導体膜が成膜された試料をX線回折(XRD:X-Ray Diffractio
n)を用いて分析した。
図53にout-of-plane法を用いてXRDスペクトル
を測定した結果を示す。
【0368】
図53において、縦軸はX線回折強度(任意単位)であり、横軸は回折角2θ(deg
.)である。なお、XRDスペクトルの測定は、Bruker AXS社製X線回折装置
D-8 ADVANCEを用いた。
【0369】
図53に示すように、2θ=20乃至23°近傍に石英に起因するピークが観察される
ものの、微結晶酸化物半導体膜に含まれる結晶部に起因するピークは確認できない。
【0370】
図52及び
図53の結果からも、微結晶酸化物半導体膜に含まれる結晶部は、極微細な
結晶部であることが示唆される。
【0371】
以上示したように、本実施の形態の微結晶酸化物半導体膜では、測定範囲の広いX線回
折(XRD:X-ray diffraction)による分析では配向を示すピークが
検出されず、また、測定範囲の広い制限視野電子線回折によって得られる電子線回折パタ
ーンでは、ハローパターンが観測される。よって、本実施の形態の微結晶酸化物半導体膜
は、巨視的には無秩序な原子配列を有する膜と同等であるといえる。しかしながら、電子
線のビーム径が十分に小さい径(例えば、10nmφ以下)の極微電子線回折によって微
結晶酸化物半導体膜を測定することで、得られる極微電子線回折パターンではスポット(
輝点)を観測することができる。よって、本実施の形態の微結晶酸化物半導体膜は、面方
位の不規則な極微な結晶部(例えば、粒径が10nm以下、または5nm以下、または3
nm以下の結晶部)が凝集して形成された膜と推測できる。また、極微細な結晶部を含有
する微結晶領域は、微結晶酸化物半導体膜の膜厚方向の全領域において含まれる。
【0372】
ここで、結晶状態における酸化物半導体(OSと示す。)およびシリコン半導体(Si
と示す。)の対比を表1に示す。
【0373】
【0374】
酸化物半導体の結晶状態には、例えば、表1に示すように、非晶質酸化物半導体(a-
OS、a-OS:H)、微結晶酸化物半導体(nc-OS、μc-OS)、多結晶酸化物
半導体(多結晶OS)、連続結晶酸化物半導体(CAAC-OS)、単結晶酸化物半導体
(単結晶OS)などがある。なお、シリコンの結晶状態には、例えば、表1に示すように
、非晶質シリコン(a-Siやa-Si:H)、微結晶シリコン(nc-Si、μc-S
i)、多結晶シリコン(多結晶Si)、連続結晶シリコン(CG(Continuous
Grain)シリコン)、単結晶シリコン(単結晶Si)などがある。
【0375】
各結晶状態における酸化物半導体に対し、ビーム径を10nmφ以下に収束させた電子
線を用いる電子線回折(極微電子線回折)を行うと、以下のような電子線回折パターン(
極微電子線回折パターン)が観測される。非晶質酸化物半導体では、ハローパターン(ハ
ローリングまたはハローとも言われる。)が観測される。微結晶酸化物半導体では、スポ
ットまたは/およびリングパターンが観測される。多結晶酸化物半導体では、スポットが
観測される。連続結晶酸化物半導体では、スポットが観測される。単結晶酸化物半導体で
は、スポットが観測される。
【0376】
なお、極微電子線回折パターンより、微結晶酸化物半導体は、結晶部がナノメートル(
nm)からマイクロメートル(μm)の径であることがわかる。多結晶酸化物半導体は、
結晶部と結晶部との間に粒界を有し、結晶部が不連続であることがわかる。連続結晶酸化
物半導体は、結晶部と結晶部との間に粒界が観測されず、連続的に繋がることがわかる。
【0377】
各結晶状態における酸化物半導体の密度について説明する。非晶質酸化物半導体の密度
は低い。微結晶酸化物半導体の密度は中程度である。連続結晶酸化物半導体の密度は高い
。即ち、連続結晶酸化物半導体の密度は微結晶酸化物半導体の密度より高く、微結晶酸化
物半導体の密度は非晶質酸化物半導体の密度より高い。
【0378】
各結晶状態における酸化物半導体に存在するDOSの特徴を説明する。非晶質酸化物半
導体はDOSが高い。微結晶酸化物半導体はDOSがやや低い。連続結晶酸化物半導体は
DOSが低い。単結晶酸化物半導体はDOSが極めて低い。即ち、単結晶酸化物半導体は
連続結晶酸化物半導体よりDOSが低く、連続結晶酸化物半導体は微結晶酸化物半導体よ
りDOSが低く、微結晶酸化物半導体は非晶質酸化物半導体よりDOSが低い。
【0379】
(実施の形態8)
本実施の形態では、上記実施の形態で開示された金属膜、酸化物半導体膜、無機絶縁膜
などの形成方法の一例について説明する。
【0380】
上記実施の形態で開示された、金属膜、酸化物半導体膜、無機絶縁膜など様々な膜はス
パッタ法やプラズマCVD法により形成することができるが、他の方法、例えば、熱CV
D(Chemical Vapor Deposition)法により形成してもよい。
熱CVD法の例としてMOCVD(Metal Organic Chemical V
apor Deposition)法やALD(Atomic Layer Depos
ition)法を使っても良い。
【0381】
熱CVD法は、プラズマを使わない成膜方法のため、プラズマダメージにより欠陥が生
成されることが無いという利点を有する。
【0382】
熱CVD法は、チャンバー内を大気圧または減圧下とし、原料ガスと酸化剤を同時にチ
ャンバー内に送り、基板近傍または基板上で反応させて基板上に堆積させることで成膜を
行ってもよい。
【0383】
また、ALD法は、チャンバー内を大気圧または減圧下とし、反応のための原料ガスが
順次にチャンバーに導入され、そのガス導入の順序を繰り返すことで成膜を行ってもよい
。例えば、それぞれのスイッチングバルブ(高速バルブとも呼ぶ)を切り替えて2種類以
上の原料ガスを順番にチャンバーに供給し、複数種の原料ガスが混ざらないように第1の
原料ガスと同時またはその後に不活性ガス(アルゴン、或いは窒素など)などを導入し、
第2の原料ガスを導入する。なお、同時に不活性ガスを導入する場合には、不活性ガスは
キャリアガスとなり、また、第2の原料ガスの導入時にも同時に不活性ガスを導入しても
よい。また、不活性ガスを導入する代わりに真空排気によって第1の原料ガスを排出した
後、第2の原料ガスを導入してもよい。第1の原料ガスが基板の表面に吸着して第1の単
原子層を成膜し、後から導入される第2の原料ガスと反応して、第2の単原子層が第1の
単原子層上に積層されて薄膜が形成される。このガス導入順序を制御しつつ所望の厚さに
なるまで複数回繰り返すことで、段差被覆性に優れた薄膜を形成することができる。薄膜
の厚さは、ガス導入順序を繰り返す回数によって調節することができるため、精密な膜厚
調節が可能であり、微細なFETを作製する場合に適している。
【0384】
MOCVD法やALD法などの熱CVD法は、これまでに記載した実施形態に開示され
た金属膜、酸化物半導体膜、無機絶縁膜など様々な膜を形成することができ、例えば、I
nGaZnOX(X>0)膜を成膜する場合には、トリメチルインジウム、トリメチルガ
リウム、及びジメチル亜鉛を用いる。なお、トリメチルインジウムの化学式は、In(C
H3)3である。また、トリメチルガリウムの化学式は、Ga(CH3)3である。また
、ジメチル亜鉛の化学式は、Zn(CH3)2である。また、これらの組み合わせに限定
されず、トリメチルガリウムに代えてトリエチルガリウム(化学式Ga(C2H5)3)
を用いることもでき、ジメチル亜鉛に代えてジエチル亜鉛(化学式Zn(C2H5)2)
を用いることもできる。
【0385】
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化ハフニウム膜を形成する場合には、溶媒
とハフニウム前駆体化合物を含む液体(ハフニウムアルコキシド溶液、代表的にはテトラ
キスジメチルアミドハフニウム(TDMAH))を気化させた原料ガスと、酸化剤として
オゾン(O3)の2種類のガスを用いる。なお、テトラキスジメチルアミドハフニウムの
化学式はHf[N(CH3)2]4である。また、他の材料液としては、テトラキス(エ
チルメチルアミド)ハフニウムなどがある。
【0386】
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化アルミニウム膜を形成する場合には、溶
媒とアルミニウム前駆体化合物を含む液体(トリメチルアルミニウム(TMA)など)を
気化させた原料ガスと、酸化剤としてH2Oの2種類のガスを用いる。なお、トリメチル
アルミニウムの化学式はAl(CH3)3である。また、他の材料液としては、トリス(
ジメチルアミド)アルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、アルミニウムトリス(2
,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナート)などがある。
【0387】
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化シリコン膜を形成する場合には、ヘキサ
クロロジシランを被成膜面に吸着させ、吸着物に含まれる塩素を除去し、酸化性ガス(O
2、一酸化二窒素)のラジカルを供給して吸着物と反応させる。
【0388】
例えば、ALDを利用する成膜装置によりタングステン膜を成膜する場合には、WF6
ガスとB2H6ガスを順次繰り返し導入して初期タングステン膜を形成し、その後、WF
6ガスとH2ガスを同時に導入してタングステン膜を形成する。なお、B2H6ガスに代
えてSiH4ガスを用いてもよい。
【0389】
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化物半導体膜、例えばIn-Ga-Zn-
OX(X>0)膜を成膜する場合には、In(CH3)3ガスとO3ガスを順次繰り返し
導入してInO2層を形成し、その後、Ga(CH3)3ガスとO3ガスを同時に導入し
てGaO層を形成し、更にその後Zn(CH3)2ガスとO3ガスを同時に導入してZn
O層を形成する。なお、これらの層の順番はこの例に限らない。また、これらのガスを混
ぜてIn-Ga-O2層やIn-Zn-O2層、Ga-In-O層、Zn-In-O層、
Ga-Zn-O層などの混合化合物層を形成しても良い。なお、O3ガスに変えてAr等
の不活性ガスでバブリングして得られたH2Oガスを用いても良いが、Hを含まないO3
ガスを用いる方が好ましい。また、In(CH3)3ガスにかえて、In(C2H5)3
ガスを用いても良い。また、Ga(CH3)3ガスにかえて、Ga(C2H5)3ガスを
用いても良い。また、In(CH3)3ガスにかえて、In(C2H5)3ガスを用いて
も良い。また、Zn(CH3)2ガスを用いても良い。
【0390】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができ
る。
【0391】
(実施の形態9)
本実施の形態では、酸化物半導体を成膜、及び加熱することができる装置の一例につい
て、
図22乃至
図24を用いて、説明する。
【0392】
図22は、本実施の形態で説明する成膜装置2000の構成を説明するブロック図であ
る。
【0393】
成膜装置2000は、ロード室2101、第1の成膜室2111、第2の成膜室211
2、第1の加熱室2121、第3の成膜室2113、第2の加熱室2122、第4の成膜
室2114、第3の加熱室2123、及びアンロード室2102が順に接続される。なお
、ロード室2101、アンロード室2102を除く各成膜室、及び各加熱室について、そ
れぞれを区別して説明する必要のないときは総称して成膜室と呼ぶこともある。
【0394】
ロード室2101に搬入された基板は、移動手段によって、第1の成膜室2111、第
2の成膜室2112、第1の加熱室2121、第3の成膜室2113、第2の加熱室21
22、第4の成膜室2114、第3の加熱室2123の順に送られたのち、アンロード室
2102に搬送される。各成膜室では、必ずしも処理を行う必要はなく、工程を省きたい
場合は適宜、処理をせずに次の成膜室に基板を搬送することも出来る。
【0395】
ロード室2101は、装置外から成膜装置2000に基板の搬入を行う機能を有する。
基板を、水平な状態でロード室2101に搬入した後、ロード室2101内で水平面に対
して基板を鉛直な状態にする機構を有する。なお、基板を搬入するロボット等の搬入手段
が基板を鉛直な状態にする機構を有している場合、ロード室2101は、基板を鉛直な状
態にする機構を有していなくてもよい。なお、本実施の形態において、水平な状態とは、
-10°以上10°以下、好ましくは-5°以上5°以下の範囲も含まれることとする。
また、鉛直な状態とは、80°以上100°以下、好ましくは85°以上95°以下の範
囲も含まれることとする。
【0396】
アンロード室2102は、鉛直な状態の基板を水平の状態にする機構を有する。処理を
終え、移動手段によってアンロード室2102に搬入された基板は、アンロード室210
2にて鉛直な状態から水平な状態とされ、その後装置外へ基板が搬出される。
【0397】
また、ロード室2101、及びアンロード室2102のそれぞれは、室内を真空にする
排気手段と、真空状態から大気圧する際に用いるガス導入手段とを有する。ガス導入手段
から導入されるガスは、空気、若しくは窒素や希ガスなどの不活性ガスなどを適宜用いれ
ばよい。
【0398】
また、ロード室2101は、基板を予備加熱するための加熱手段を有していてもよい。
排気動作と並行して基板に対して予備加熱を行うことで、基板に吸着するガス等の不純物
(水、水酸基などを含む)を脱離させることが出来るため好ましい。排気手段としては、
例えばクライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプなどの吸着型の真
空ポンプ、或いは、ターボ分子ポンプにコールドトラップを加えたものを用いるとよい。
【0399】
ロード室2101、アンロード室2102、及びそれぞれの成膜室は、ゲートバルブを
介して連結されている。したがって基板が処理を終えて次の成膜室へ移る際には、ゲート
バルブを開けて基板が搬入される。なお、このゲートバルブは、成膜室間において必要で
なければ設けなくてもよい。また、それぞれの成膜室には、排気手段、圧力調整手段、ガ
ス導入手段などを有し、処理していない状態であっても常に減圧な状態に保つことができ
る。ゲートバルブによって各成膜室が隔離されることにより、他の成膜室からの汚染を抑
制することができる。
【0400】
また、上記、ロード室2101、アンロード室2102、およびそれぞれの成膜室は、
必ずしも一直線上に配置する必要はなく、例えば隣接する成膜室の間に搬送室を設け、2
列に配置してもよい。該搬送室1は、ターンテーブル等を有し、搬送室に搬入された基板
の向きを回転させることができ、基板の経路を折り返すことが出来る。
【0401】
次に、第1の成膜室2111、第2の成膜室2112、第3の成膜室2113及び第4
の成膜室2114において、これらに共通する構成について説明する。
【0402】
第1の成膜室はスパッタリング装置またはCVD装置が配置される。また、第2の成膜
室、第3の成膜室、第4の成膜室は、それぞれスパッタリング装置が配置される。
【0403】
上記成膜室で用いるスパッタリング装置には、例えばマイクロ波スパッタリング法、R
Fプラズマスパッタリング法、ACスパッタリング法、もしくはDCスパッタリング法な
どのスパッタリング装置を用いることができる。
【0404】
ここで、DCスパッタリング法を適用した成膜室の一例について、
図23を用いて説明
する。なお、
図23(A)は、基板の進行方向に対して垂直方向の成膜室の断面模式図を
、
図23(B)は、基板の進行方向に対して水平方向の成膜室の断面模式図を、それぞれ
示す。
【0405】
基板2100は、成膜面と鉛直方向との成す角が少なくとも1°以上30°以内、好ま
しくは5°以上15°以内に収まるように、基板支持部2141によって固定されている
。基板支持部2141は移動手段2143に固定されている。移動手段2143は、処理
中に基板が動かないよう、基板支持部2141を固定しておくだけでなく、基板2100
を移動することが可能であり、ロード室2101、アンロード室2102、及び各成膜室
において、基板2100の搬入出を行う機能も有する。
【0406】
成膜室2150には、ターゲット2151及び、防着板2153が基板2100に平行
になるように配置される。ターゲット2151と基板2100とを平行に配置することに
より、ターゲットとの距離が異なることに起因するスパッタ膜の膜厚や、スパッタ膜の段
差に対するカバレッジなどのばらつきなどをなくすことができる。
【0407】
また成膜室2150は、基板支持部2141の背面に位置するように、基板加熱手段2
155を有していてもよい。基板加熱手段2155により、基板を加熱しながら成膜処理
を施すことが出来る。基板加熱手段2155としては例えば抵抗加熱ヒータや、ランプヒ
ータなどを用いることができる。なお、基板加熱手段2155は必要でなければ設けなく
てもよい。
【0408】
成膜室2150は、圧力調整手段2157を有し、成膜室2150内を所望の圧力に減
圧することが出来る。圧力調整手段2157に用いる排気装置としては、例えばクライオ
ポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプなどの吸着型の真空ポンプ、或い
は、ターボ分子ポンプにコールドトラップを加えたものを用いるとよい。
【0409】
また、成膜ガス等を導入するためのガス導入手段2159を有する。例えば希ガスを主
成分としたガスに酸素を添加したガスを導入して反応性スパッタリング法による成膜を行
うことにより、酸化膜を形成することができる。さらに、ガス導入手段2159から導入
されるガスは、水素や水、水酸化物などの不純物が低減された高純度ガスを導入すること
が出来る。例えば、酸素、窒素、希ガス(代表的にはアルゴン)、またはこれらの混合ガ
スを導入することが出来る。
【0410】
以上のような圧力調整手段2157とガス導入手段2159を有する成膜室2150で
は、水素分子や水(H2O)などの水素を含む化合物などが(より好ましくは炭素原子を
含む化合物と共に)除去されるため、成膜室2150で成膜した膜中に含まれる不純物の
濃度を低減できる。
【0411】
成膜室2150と隣接する部屋との境界は、ゲートバルブ2161で仕切られている。
ゲートバルブ2161で室内を隔離することにより、室内の不純物を排気しやすくし、成
膜雰囲気を清浄に保つことが出来る。さらに、室内を清浄な状態にした後にゲートバルブ
2161を開放し基板を搬出することにより、隣接する成膜室への汚染を抑制することが
できる。なお、必要でなければ、ゲートバルブ2161を設けない構成としてもよい。
【0412】
次に、第1の加熱室2121、第2の加熱室2122、及び第3の加熱室2123につ
いて、これらに共通する部分について説明する。最後に、それぞれの成膜室における特徴
についての説明を行う。
【0413】
第1の加熱室2121、第2の加熱室2122、及び第3の加熱室2123は、基板2
100に対して加熱処理を行うことが出来る。加熱装置には、抵抗加熱ヒータ、ランプ、
または加熱されたガスを用いるものなどを設けるとよい。
【0414】
図24(A)、(B)に棒状のヒータを用いた加熱装置を適用した、加熱室の一例を示
す。なお、
図24(A)は、基板の進行方向に対して垂直方向の加熱室の断面模式図を、
図24(B)は、基板の進行方向に対して水平方向の加熱室の断面模式図を、それぞれ示
す。
【0415】
加熱室2170には成膜室2150と同様、移動手段2143によって基板支持部21
41に支持された基板2100を搬入、搬出することが出来る。
【0416】
加熱室2170には棒状のヒータ2171が基板2100と平行になるように配置され
ている。
図24(A)には、その断面となる形状を模式的に現している。棒状のヒータ2
171には、抵抗加熱ヒータ、またはランプヒータを用いることができる、抵抗加熱ヒー
タには、誘導加熱を用いたものも含まれる。また、ランプヒータに用いることのできるラ
ンプは、中心波長が赤外線領域にあるものが好ましい。ヒータ2171を基板2100に
平行に配置することにより、これらの距離を一定にし、均一に加熱することが出来る。ま
た、棒状のヒータ2171は、それぞれ個別に温度を制御できることが好ましい。例えば
上部のヒータよりも下部のヒータを高い温度に設定することにより、基板を均一な温度で
加熱することができる。
【0417】
加熱室2170に設ける加熱機構の構成としては、上述した機構に限定されず、例えば
、抵抗発熱体などを用いて加熱する加熱機構、または、加熱されたガスなどの媒体からの
熱伝導または熱輻射によって、加熱する加熱機構、例えば、GRTA(Gas Rapi
d Thermal Anneal)、LRTA(Lamp Rapid Therma
l Anneal)などのRTA(Rapid Thermal Anneal)を用い
ることができる。LRTAは、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアーク
ランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプか
ら発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する。GRTAは、高温のガスを用
いて熱処理を行う。ガスとしては、不活性ガスが用いられる。RTA装置を用いることに
よって、処理時間が短縮することができるので、量産する上では好ましい。
【0418】
また、加熱室2170は、ヒータ2171と基板2100の間に、保護板2173を設
ける構成としている。保護板2173はヒータ2171、及び基板2100の保護のため
に設けられるもので、例えば石英などを用いることができる。保護板2173は必要なけ
れば設けない構成としてもよい。
【0419】
また、加熱室2170は、成膜室2150と同様の圧力調整手段2157及びガス導入
手段2159を有する。したがって、加熱処理中や処理を行っていない状態においてもつ
ねに減圧な状態を保持することが出来る。また加熱室2170内の水素分子や水(H2O
)などの水素を含む化合物などが(より好ましくは炭素原子を含む化合物と共に)除去さ
れるため、当該加熱室で処理した膜中、膜界面、膜表面に含有、もしくは吸着する不純物
の濃度を低減できる。
【0420】
また、圧力調整手段2157及びガス導入手段2159により、不活性ガス雰囲気や、
酸素を含む雰囲気での加熱処理が可能である。なお、不活性ガス雰囲気としては、窒素、
または希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン等)を主成分とする雰囲気であって、水、水
素などが含まれない雰囲気を適用するのが望ましい。例えば、加熱室2170に導入する
窒素や、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以
上、好ましくは7N(99.99999%)以上(すなわち、不純物濃度が1ppm以下
、好ましくは0.1ppm以下)とする。
【0421】
次に、それぞれの成膜室における構成の一例について、説明を行う。
【0422】
第1の成膜室2111では基板に対し酸化絶縁膜を成膜する。成膜装置は、スパッタリ
ング装置、またはPE-CVD装置のどちらかであれば、特に限定はされない。第1の成
膜室2111で成膜可能な膜には、トランジスタ等の下地層、またはゲート絶縁層として
機能する膜であれば何を用いてもよいが、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化
酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アル
ミニウム、酸化ハフニウムなどの単膜、またはこれらの混合膜などが挙げられる。
【0423】
例えば、スパッタリング装置の場合は、用いる膜種によって最適なターゲットを用いれ
ばよく、PE-CVD装置であれば、成膜ガスを適宜選択する。
【0424】
第2の成膜室2112ではスパッタリング法により、酸化膜を成膜することが出来る。
ここで成膜する酸化膜としては、例えば亜鉛とガリウムの酸化物などが挙げられる。成膜
方法としては、マイクロ波プラズマスパッタリング法、RFプラズマスパッタリング法、
ACスパッタリング法、もしくはDCスパッタリング法を適用することが出来る。
【0425】
また、第2の成膜室2112では基板加熱手段2155により、600℃以下、好まし
くは450℃以下、さらに好ましくは300℃以下の温度で加熱しながら成膜を行うこと
が出来る。
【0426】
第1の加熱室2121は、200℃以上700℃以下の温度で基板を加熱することが出
来る。さらに圧力調整手段2157及びガス導入手段2159によって、加熱処理中の雰
囲気を例えば10Pa乃至1気圧とし、酸素雰囲気下、窒素雰囲気下、酸素と窒素の混合
雰囲気下で加熱処理を行うことが出来る。
【0427】
第3の成膜室2113では、基板2100に酸化物半導体を成膜する。例えば酸化物半
導体としては、少なくともZnを含む酸化物半導体であり、In-Ga-Zn酸化物半導
体などの、先の実施の形態で挙げた酸化物半導体を成膜することが出来る。
【0428】
また、基板加熱手段2155によって、成膜時の温度を200℃以上600℃以下で加
熱しながら成膜を行うことが出来る。
【0429】
第2の加熱室2122では、200℃以上700℃以下の温度で基板2100を加熱す
ることが出来る。さらに、圧力調整手段2157とガス導入手段2159により、酸素も
しくは窒素を含み、水素や水、水酸基などの不純物が極めて低減された雰囲気の下、10
Pa以上1気圧以下の圧力で加熱処理を行うことが出来る。
【0430】
第4の成膜室2114では、第3の成膜室2113と同様、基板2100に酸化物半導
体を成膜する。例えば、In-Ga-Zn酸化物半導体用ターゲットを用いて、In-G
a-Zn酸化物半導体膜を成膜することが出来る。さらに、基板温度を200℃以上60
0℃以下で加熱しながら成膜を行うことが出来る。
【0431】
第3の加熱室では、200℃以上700℃以下の温度で基板2100に対して加熱処理
を行うことが出来る。
【0432】
さらに圧力調整手段2157、及びガス導入手段2159によって、当該加熱処理は窒
素雰囲気下、酸素雰囲気下、或いは窒素と酸素の混合雰囲気下で行うことが出来る。
【0433】
なお、第1の加熱室2121、第2の加熱室2122、及び第3の加熱室2123で加
熱する温度は、量産する上では、基板の歪み、またはエネルギー効率の観点から、好まし
くは450℃以下、さらに好ましくは350℃以下とする。
【0434】
本実施の形態で示した装置構成は、ロード室から各成膜室、及びアンロード室まで一貫
して大気に触れない構成となっており、また常に減圧な環境下で基板を搬送することが出
来る。したがって本装置構成を用いて成膜した膜の界面への不純物の混入を抑制すること
ができ、界面状態の極めて良好な膜を形成することができる。
【0435】
なお、本実施の形態においては、ロード室、成膜室、加熱室、アンロード室まで一貫し
た構成について例示したが、これに限定されず、例えば、ロード室、成膜室、アンロード
室で構成された装置(いわゆる成膜装置)、またはロード室、加熱室、アンロード室で構
成された装置(いわゆる加熱装置)を、それぞれ独立して設ける構成としてもよい。
【0436】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせて実施するこ
とができる。
【0437】
(実施の形態10)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を適用することのできる、ヒューマン
インターフェースについて説明する。特に、被検知体の近接または接触を検知可能なセン
サ(以降、タッチセンサと呼ぶ)の構成例について説明する。
【0438】
タッチセンサとしては、静電容量方式、抵抗膜方式、表面弾性方式、赤外線方式、光学
方式など、様々な方式を用いることができる。
【0439】
静電容量方式のタッチセンサとしては、代表的には表面型静電容量方式、投影型静電容
量方式などがある。また、投影型静電容量方式としては、主に駆動方法の違いから、自己
容量方式、相互容量方式などがある。ここで、相互容量方式を用いると、同時に多点を検
出すること(多点検出(マルチタッチ)ともいう)が可能となるため好ましい。
【0440】
ここではタッチセンサについて詳細に説明するが、このほかに、カメラ(赤外線カメラ
を含む)等により、被検知体(例えば指や手など)の動作(ジェスチャ)や、使用者の視
点動作などを検知することのできるセンサを、ヒューマンインターフェースとして用いる
こともできる。
【0441】
<センサの検知方法の例>
図25(A)、(B)は、相互容量方式のタッチセンサの構成を示す模式図と、入出力
波形の模式図である。タッチセンサは一対の電極を備え、これらの間に容量が形成されて
いる。一対の電極のうち一方の電極に入力電圧が入力される。また、他方の電極に流れる
電流(または、他方の電極の電位)を検出する検出回路を備える。
【0442】
例えば
図25(A)に示すように、入力電圧の波形として矩形波を用いた場合、出力電
流波形として鋭いピークを有する波形が検出される。
【0443】
また
図25(B)に示すように、伝導性を有する被検知体が容量に近接または接触した
場合、電極間の容量値が減少するため、これに応じて出力の電流値が減少する。
【0444】
このように、入力電圧に対する出力電流(または電位)の変化を用いて、容量の変化を
検出することにより、被検知体の近接、または接触を検知することができる。
【0445】
<タッチセンサの構成例>
図25(C)は、マトリクス状に配置された複数の容量を備えるタッチセンサの構成例
を示す。
【0446】
タッチセンサは、X方向(紙面横方向)に延在する複数の配線と、これら複数の配線と
交差し、Y方向(紙面縦方向)に延在する複数の配線とを有する。交差する2つの配線間
には容量が形成される。
【0447】
また、X方向に延在する配線には、入力電圧または共通電位(接地電位、基準電位を含
む)のいずれか一方が入力される。また、Y方向に延在する配線には、検出回路(例えば
、ソースメータ、センスアンプなど)が電気的に接続され、当該配線に流れる電流(また
は電位)を検出することができる。
【0448】
タッチセンサは、X方向に延在する複数の配線に対して順に入力電圧が入力されるよう
に走査し、Y方向に延在する配線に流れる電流(または電位)の変化を検出することで、
被検知体の2次元的なセンシングが可能となる。
【0449】
<タッチパネルの構成例>
以下では、複数の画素を有する表示部とタッチセンサを備えるタッチパネルの構成例と
、該タッチパネルを電子機器に組み込む場合の例について説明する。
【0450】
図26(A)は、タッチパネルを備える電子機器の断面概略図である。
【0451】
電子機器3530は、筐体3531と、該筐体3531内に少なくともタッチパネル3
532、バッテリ3533、制御部3534を有する。またタッチパネル3532は制御
部3534と配線3535を介して電気的に接続される。制御部3534により表示部へ
の画像の表示やタッチセンサのセンシングの動作が制御される。またバッテリ3533は
制御部3534と配線3536を介して電気的に接続され、制御部3534に電力を供給
することができる。
【0452】
タッチパネル3532はその表示面側が筐体3531の外側に露出するように設けられ
る。タッチパネル3532の露出した面に画像を表示すると共に、接触または近接する被
検知体を検知することができる。
【0453】
図26(B)乃至(E)に、タッチパネルの構成例を示す。
【0454】
図26(B)に示すタッチパネル3532は、第1の基板3541と第2の基板354
3の間に表示部3542を備える表示パネル3540と、タッチセンサ3544を備える
第3の基板3545と、保護基板3546と、を備える。
【0455】
表示パネル3540としては、液晶素子、有機EL(Electro Lumines
cence)素子が適用された表示装置や、電子ペーパ等、様々な表示装置を適用できる
。なおタッチパネル3532は、表示パネル3540の構成に応じて、バックライトや偏
光板等を別途備えていてもよい。
【0456】
保護基板3546の一方の面に被検知体が接触または近接するため、少なくともその表
面は、機械的強度が高められていることが好ましい。例えばイオン交換法や風冷強化法等
により物理的、または化学的な処理が施され、その表面に圧縮応力を加えた強化ガラスを
保護基板3546に用いることができる。または、表面がコーティングされたプラスチッ
ク等の可撓性基板を用いることもできる。なお、保護基板3546上に保護フィルムや光
学フィルムを設けてもよい。
【0457】
タッチセンサ3544は、第3の基板3545の少なくとも一方の面に設けられる。ま
たは、タッチセンサ3544を構成する一対の電極を第3の基板3545の両面に形成し
てもよい。また、タッチパネルの薄型化のため、第3の基板3545として可撓性のフィ
ルムを用いてもよい。また、タッチセンサ3544は、一対の基板(フィルムを含む)に
挟持された構成としてもよい。
【0458】
図26(B)では、保護基板3546とタッチセンサ3544を備える第3の基板とが
接着層3547で接着されている構成を示しているが、必ずしもこれらは接着されていな
くてもよい。また、第3の基板3545と表示パネル3540とを接着層により接着する
構成としてもよい。
【0459】
図26(B)に示すタッチパネル3532は、表示パネルと、タッチセンサを備える基
板とが独立して設けられている。このような構成を有するタッチパネルを外付け型のタッ
チパネルとも呼べる。このような構成とすることにより、表示パネルとタッチセンサを備
える基板とをそれぞれ別途作製し、これらを重ねることで表示パネルにタッチセンサの機
能を付加することができるため、特別な作製工程を経ることなく容易にタッチパネルを作
製することができる。
【0460】
図26(C)に示すタッチパネル3532は、タッチセンサ3544が第2の基板35
43の保護基板3546側の面に設けられている。このような構成を有するタッチパネル
をオンセル型のタッチパネルとも呼べる。このような構成とすることにより、必要な基板
の枚数を低減できるため、タッチパネルの薄型化及び軽量化を実現できる。
【0461】
図26(D)に示すタッチパネル3532は、タッチセンサ3544が保護基板354
6の一方の面に設けられている。このような構成とすることにより、表示パネルとタッチ
センサをそれぞれ別途作製することができるため、容易にタッチパネルを作製することが
できる。さらに、必要な基板の枚数を低減できるため、タッチパネルの薄型化及び軽量化
を実現できる。
【0462】
図26(E)に示すタッチパネル3532は、タッチセンサ3544が表示パネル35
40の一対の基板の内側に設けられている。このような構成を有するタッチパネルをイン
セル型のタッチパネルとも呼べる。このような構成とすることにより、必要な基板の枚数
を低減できるため、タッチパネルの薄型化及び軽量化を実現できる。このようなタッチパ
ネルは、例えば、表示部3542が備えるトランジスタや配線、電極などにより第1の基
板3541上または第2の基板3543上にタッチセンサとして機能する回路を作り込む
ことにより実現できる。また、光学式のタッチセンサを用いる場合には、光電変換素子を
備える構成としてもよい。
【0463】
<インセル型のタッチパネルの構成例>
以下では、複数の画素を有する表示部にタッチセンサを組み込んだタッチパネルの構成
例について説明する。ここでは、画素に設けられる表示素子として、液晶素子を適用した
例を示す。
【0464】
図27(A)は、本構成例で例示するタッチパネルの表示部に設けられる画素回路の一
部における等価回路図である。
【0465】
一つの画素は少なくともトランジスタ3503と液晶素子3504を有する。またトラ
ンジスタ3503のゲートに配線3501が、ソースまたはドレインの一方には配線35
02が、それぞれ電気的に接続されている。
【0466】
画素回路は、X方向に延在する複数の配線(例えば、配線3510_1、配線3510
_2)と、Y方向に延在する複数の配線(例えば、配線3511)を有し、これらは互い
に交差して設けられ、その間に容量が形成される。
【0467】
また、画素回路に設けられる画素のうち、一部の隣接する複数の画素は、それぞれに設
けられる液晶素子の一方の電極が電気的に接続され、一つのブロックを形成する。当該ブ
ロックは、島状のブロック(例えば、ブロック3515_1、ブロック3515_2)と
、Y方向に延在するライン状のブロック(例えば、ブロック3516)の、2種類に分類
される。なお、
図27では、画素回路の一部のみを示しているが、実際にはこれら2種類
のブロックがX方向及びY方向に繰り返し配置される。
【0468】
X方向に延在する配線3510_1(または3510_2)は、島状のブロック351
5_1(またはブロック3515_2)と電気的に接続される。なお、図示しないが、X
方向に延在する配線3510_1は、ライン状のブロックを介してX方向に沿って不連続
に配置される複数の島状のブロック3515_1を電気的に接続する。また、Y方向に延
在する配線3511は、ライン状のブロック3516と電気的に接続される。
【0469】
図27(B)は、X方向に延在する複数の配線3510と、Y方向に延在する複数の配
線3511の接続構成を示した等価回路図である。X方向に延在する配線3510の各々
には、入力電圧または共通電位を入力することができる。また、Y方向に延在する配線3
511の各々には接地電位を入力する、または配線3511と検出回路と電気的に接続す
ることができる。
【0470】
<タッチパネルの動作例>
以下、
図28を用いて、上述したタッチパネルの動作について説明する。
【0471】
図28(A)に示すように1フレーム期間を、書き込み期間と検知期間とに分ける。書
き込み期間は画素への画像データの書き込みを行う期間であり、配線3510(ゲート線
ともいう)が順次選択される。一方、検知期間は、タッチセンサによるセンシングを行う
期間であり、X方向に延在する配線3510が順次選択され、入力電圧が入力される。
【0472】
図28(B)は、書き込み期間における等価回路図である。書き込み期間では、X方向
に延在する配線3510と、Y方向に延在する配線3511の両方に、共通電位が入力さ
れる。
【0473】
図28(C)は、検知期間のある時点における等価回路図である。検知期間では、Y方
向に延在する配線3511の各々は、検出回路と電気的に接続する。また、X方向に延在
する配線3510のうち、選択されたものには入力電圧が入力され、それ以外のものには
共通電位が入力される。
【0474】
このように、画像の書き込み期間とタッチセンサによるセンシングを行う期間とを、独
立して設けることが好ましい。これにより、画素の書き込み時のノイズに起因するタッチ
センサの感度の低下を抑制することができる。
【0475】
(実施の形態11)
本発明の一態様である表示装置は、さまざまな電子機器に適用することができる。電子
機器としては、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう。)、コ
ンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフ
レーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、遊技機(パチンコ
機、スロットマシン等)、ゲーム筐体が挙げられる。これらの電子機器の一例を
図29に
示す。
【0476】
図29(A)は、携帯電話機9000を示している。携帯電話機9000は、筐体90
30及び筐体9031の二つの筐体を有する。筐体9031には、表示パネル9032、
スピーカー9033、マイクロフォン9034、ポインティングデバイス9036、カメ
ラ用レンズ9037、外部接続端子9038などを備えている。また、筐体9030には
、携帯型情報端末の充電を行う太陽電池セル9040、外部メモリスロット9041など
を備えている。また、アンテナは筐体9031内部に内蔵されている。上記実施の形態で
示す表示装置を表示パネル9032に適用することにより、携帯電話の表示品位を向上さ
せることができる。
【0477】
また、表示パネル9032はタッチパネルを備えており、
図29(A)には映像表示さ
れている複数の操作キー9035を点線で示している。なお、太陽電池セル9040で出
力される電圧を各回路に必要な電圧に昇圧するための昇圧回路も実装している。
【0478】
表示パネル9032は、使用形態に応じて表示の方向が適宜変化する。また、表示パネ
ル9032と同一面上にカメラ用レンズ9037を備えているため、テレビ電話が可能で
ある。スピーカー9033及びマイクロフォン9034は音声通話に限らず、テレビ電話
、録音、再生などが可能である。さらに、筐体9030と筐体9031は、スライドし、
図29(A)のように展開している状態から重なり合った状態とすることができ、携帯に
適した小型化が可能である。
【0479】
外部接続端子9038はACアダプタ及びUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可
能であり、充電及びパーソナルコンピュータなどとのデータ通信が可能である。また、外
部メモリスロット9041に記録媒体を挿入し、より大量のデータ保存及び移動に対応で
きる。
【0480】
図29(B)は、テレビジョン装置9100を示している。テレビジョン装置9100
は、筐体9101に表示部9103が組み込まれており、表示部9103により映像を表
示することが可能である。なお、ここではスタンド9105により筐体9101を支持し
た構成を示している。
【0481】
テレビジョン装置9100の操作は、筐体9101が備える操作スイッチや、別体のリ
モコン操作機9110により行うことができる。リモコン操作機9110が備える操作キ
ー9109により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部9103に表示さ
れる映像を操作することができる。また、リモコン操作機9110に、当該リモコン操作
機9110から出力する情報を表示する表示部9107を設ける構成としてもよい。
【0482】
図29(B)に示すテレビジョン装置9100は、受信機やモデムなどを備えている。
テレビジョン装置9100は、受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、
さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一
方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など
)の情報通信を行うことも可能である。
【0483】
上記実施の形態に示す表示装置は、表示部9103、9107に用いることが可能であ
る。それゆえ、テレビジョン装置の表示品位を向上させることができる。
【0484】
図29(C)は、コンピュータ9200を示している。コンピュータ9200は、本体
9201、筐体9202、表示部9203、キーボード9204、外部接続ポート920
5、ポインティングデバイス9206などを含む。
【0485】
上記実施の形態に示す表示装置は、表示部9203に用いることが可能である。それゆ
え、コンピュータの表示品位を向上させることができる。
【0486】
表示部9203は、タッチ入力機能を有しており、コンピュータ9200の表示部92
03に表示された表示ボタンを指などで触れることで、画面操作や、情報を入力すること
ができ、また他の家電製品との通信を可能とする、または制御を可能とすることで、画面
操作により他の家電製品をコントロールする制御装置としてもよい。例えば、上記実施の
形態で説明したタッチパネルを用いれば、表示部9203にタッチ入力機能を持たせるこ
とができる。
【0487】
図30は2つ折り可能なタブレット型端末9600である。
図30は、開いた状態であ
り、タブレット型端末9600は、筐体9630、表示部9631a、表示部9631b
、表示モード切り替えスイッチ9634、電源スイッチ9635、省電力モード切り替え
スイッチ9636、及び留め具9633を有する。
【0488】
上記実施の形態に示す表示装置は、表示部9631a、表示部9631bに用いること
が可能である。それゆえ、タブレット型端末9600の表示品位を向上させることができ
る。
【0489】
表示部9631aは、一部をタッチパネルの領域9632aとすることができ、表示さ
れた操作キーパネル9638にふれることでデータ入力をすることができる。なお、表示
部9631aにおいては、一例として半分の領域が表示のみの機能を有する構成、もう半
分の領域がタッチパネルの機能を有する構成を示しているが該構成に限定されない。表示
部9631aの全ての領域がタッチパネルの機能を有する構成としても良い。例えば、表
示部9631aの全面をキーボードボタン表示させてタッチパネルとし、表示部9631
bを表示画面として用いることができる。
【0490】
また、表示部9631bにおいても表示部9631aと同様に、表示部9631bの一
部をタッチパネルの領域9632bとすることができる。また、タッチパネルのキーボー
ド表示切り替えボタン9639が表示されている位置に指やスタイラスなどでふれること
で表示部9631bにキーボードボタン表示することができる。
【0491】
また、タッチパネルの領域9632aとタッチパネルの領域9632bに対して同時に
タッチ入力することもできる。
【0492】
また、表示モード切り替えスイッチ9634は、縦表示または横表示などの表示の向き
を切り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどを選択できる。省電力モード切り替え
スイッチ9636は、タブレット型端末9600に内蔵している光センサで検出される使
用時の外光の光量に応じて表示の輝度を最適なものとすることができる。タブレット型端
末9600は光センサだけでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサな
どの他の検出装置を内蔵させてもよい。
【0493】
また、
図30では表示部9631bと表示部9631aの表示面積が同じ例を示してい
るが特に限定されず、一方のサイズともう一方のサイズが異なっていてもよく、表示の品
質も異なっていてもよい。例えば一方が他方よりも高精細な表示を行える表示パネルとし
てもよい。
【0494】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態、実施例に記載した構成と適宜組み合わせて実
施することが可能である。
【実施例1】
【0495】
本実施例では、酸化物半導体膜、及び多層膜の抵抗について、
図33及び
図34を用い
て説明する。
【0496】
はじめに、試料の構造について
図33を用いて説明する。
【0497】
図33(A)は、試料1乃至試料4の上面図であり、一点鎖線A1-A2の断面図を図
33(B)、(C)、(D)に示す。なお、試料1至試料4は、上面図が同一であり、断
面の積層構造が異なるため、断面図が異なる。試料1の断面図を
図33(B)に、試料2
の断面図を
図33(C)に、試料3及び試料4の断面図を
図33(D)に、それぞれ示す
。
【0498】
試料1は、ガラス基板1901上に絶縁膜1903が形成され、絶縁膜1903上に絶
縁膜1904が形成され、絶縁膜1904上に酸化物半導体膜1905が形成される。ま
た、酸化物半導体膜1905の両端を電極として機能する導電膜1907、1909が覆
い、酸化物半導体膜1905及び導電膜1907、1909を絶縁膜1910、1911
が覆う。なお、絶縁膜1910、1911には、開口部1913、1915が設けられて
おり、それぞれ当該開口部において、導電膜1907、1909が露出している。
【0499】
試料2は、ガラス基板1901上に絶縁膜1903が形成され、絶縁膜1903上に絶
縁膜1904が形成され、絶縁膜1904上に酸化物半導体膜1905が形成される。ま
た、酸化物半導体膜1905の両端を電極として機能する導電膜1907、1909が覆
い、酸化物半導体膜1905及び導電膜1907、1909を絶縁膜1911が覆う。な
お、絶縁膜1911には、開口部1917、1919が設けられており、それぞれ当該開
口部において、導電膜1907、1909が露出している。
【0500】
試料3及び試料4は、ガラス基板1901上に絶縁膜1903が形成され、絶縁膜19
03上に絶縁膜1904が形成され、絶縁膜1904上に多層膜1906が形成される。
また、多層膜1906の両端を電極として機能する導電膜1907、1909が覆い、多
層膜1906及び導電膜1907、1909を絶縁膜1911が覆う。なお、絶縁膜19
11には、開口部1917、1919が設けられており、それぞれ当該開口部において、
導電膜1907、1909が露出している。
【0501】
このように、試料1乃至試料4は、酸化物半導体膜1905、または多層膜1906上
に接する絶縁膜の構造が異なる。試料1は、酸化物半導体膜1905と絶縁膜1910が
接しており、試料2は、酸化物半導体膜1905と絶縁膜1911が接しており、試料3
及び試料4は、多層膜1906と絶縁膜1911が接している。
【0502】
次に、各試料の作製方法について説明する。
【0503】
はじめに、試料1の作製方法について説明する。
【0504】
ガラス基板1901上に、絶縁膜1903として、プラズマCVD法により厚さ400
nmの窒化シリコン膜を成膜した。
【0505】
次に、絶縁膜1903上に、絶縁膜1904として、プラズマCVD法により厚さ50
nmの酸化窒化シリコン膜を成膜した。
【0506】
次に、絶縁膜1904上に、酸化物半導体膜1905として、金属酸化物ターゲット(
In:Ga:Zn=1:1:1)を用い、スパッタリング法により厚さ35nmのIn-
Ga-Zn酸化物膜(以下、IGZO膜ともいう。)を成膜した。その後、フォトリソグ
ラフィ工程により形成したマスクを用いてエッチング処理を行い、酸化物半導体膜190
5を形成した。
【0507】
次に、絶縁膜1904及び酸化物半導体膜1905上に、スパッタリング法により厚さ
50nmのタングステン膜、厚さ400nmのアルミニウム膜、及び厚さ100nmのチ
タン膜を順に積層した後、フォトリソグラフィ工程により形成したマスクを用いてエッチ
ング処理を行い、導電膜1907及び導電膜1909を形成した。
【0508】
次に、絶縁膜1904、酸化物半導体膜1905、導電膜1907、及び導電膜190
9上に、絶縁膜1910として、プラズマCVD法により厚さ450nmの酸化窒化シリ
コン膜を成膜した後、350℃の窒素及び酸素の混合雰囲気で1時間の加熱処理を行った
。
【0509】
次に、絶縁膜1910上に、絶縁膜1911として、プラズマCVD法により厚さ50
nmの窒化シリコン膜を成膜した。
【0510】
次に、絶縁膜1911上に、フォトリソグラフィ工程により形成したマスクを設けた後
、エッチング処理を行い、絶縁膜1910、及び絶縁膜1911に開口部1913、19
15を形成した。
【0511】
以上の工程により試料1を作製した。
【0512】
次に、試料2の作製方法について説明する。
【0513】
試料1の絶縁膜1903、酸化物半導体膜1905、導電膜1907、及び導電膜19
09上に、絶縁膜1910として、プラズマCVD法により厚さ450nmの酸化窒化シ
リコン膜を成膜した後、350℃の窒素及び酸素の混合雰囲気で1時間の加熱処理を行っ
た。その後、絶縁膜1910の除去を行った。
【0514】
次に、絶縁膜1904、酸化物半導体膜1905、導電膜1907、及び導電膜190
9上に、絶縁膜1911として、プラズマCVD法により厚さ50nmの窒化シリコン膜
を成膜した。
【0515】
次に、絶縁膜1911上に、フォトリソグラフィ工程により形成したマスクを設けた後
、エッチング処理を行い、絶縁膜1911に開口部1917、1919を形成した。
【0516】
以上の工程により試料2を作製した。
【0517】
次に、試料3の作製方法について、説明する。
【0518】
試料3は、試料2の酸化物半導体膜1905の代わりに、多層膜1906を用いた。多
層膜1906としては、絶縁膜1904上に、金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn
=1:3:2)を用い、スパッタリング法により厚さ10nmのIGZO膜を成膜し、続
けて金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=1:1:1)を用い、スパッタリング法
により厚さ10nmのIGZO膜を成膜し、続けて金属酸化物ターゲット(In:Ga:
Zn=1:3:2)を用い、スパッタリング法により厚さ10nmのIGZO膜を成膜し
た。その後、フォトリソグラフィ工程により形成したマスクを用いてエッチング処理を行
い、多層膜1906を形成した。
【0519】
以上の工程により試料3を作製した。
【0520】
次に、試料4の作製方法について、説明する。
【0521】
試料4は、試料2の酸化物半導体膜1905の代わりに、多層膜1906を用いた。多
層膜1906としては、絶縁膜1904上に、金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn
=1:3:2)を用い、スパッタリング法により厚さ20nmのIGZO膜を成膜し、続
けて金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=1:1:1)を用い、スパッタリング法
により厚さ15nmのIGZO膜を成膜し、続けて金属酸化物ターゲット(In:Ga:
Zn=1:3:2)を用い、スパッタリング法により厚さ10nmのIGZO膜を成膜し
た。その後、フォトリソグラフィ工程により形成したマスクを用いてエッチング処理を行
い、分離された多層膜1906を形成した。
【0522】
以上の工程により試料4を作製した。
【0523】
次に、試料1乃至試料4に設けられた酸化物半導体膜1905、及び多層膜1906の
シート抵抗を測定した。試料1においては、開口部1913及び開口部1915にプロー
ブを接触させ、酸化物半導体膜1905のシート抵抗を測定した。また、試料2乃至試料
4においては、開口部1917及び開口部1919にプローブを接触させ、酸化物半導体
膜1905、及び多層膜1906のシート抵抗を測定した。なお、試料1乃至試料4の酸
化物半導体膜1905、及び多層膜1906において、導電膜1907及び導電膜190
9が対向する幅を1mm、距離を10μmとした。また、試料1乃至試料4において、導
電膜1907を接地電位とし、導電膜1909に1Vを印加した。
【0524】
【0525】
試料1のシート抵抗は、約1×1011Ω/sqであった。また、試料2のシート抵抗
は、2620Ω/sqであった。また、試料の3のシート抵抗は、4410Ω/sqであ
った。また、試料4のシート抵抗は、2930Ω/sqであった。
【0526】
このように、酸化物半導体膜1905、及び多層膜1906に接する絶縁膜の違いによ
り、酸化物半導体膜1905、及び多層膜1906のシート抵抗は、異なる値を示す。
【0527】
なお、上述した試料1乃至試料4のシート抵抗を抵抗率に換算した場合、試料1は、3
.9×105Ωcm、試料2は、9.3×10-3Ωcm、試料3は、1.3×10-2
Ωcm、試料4は、1.3×10-2Ωcmであった。
【0528】
試料1は、酸化物半導体膜1905上に接して絶縁膜1910として用いる酸化窒化シ
リコン膜が形成されている。酸化物半導体膜1905は、絶縁膜1911として用いる窒
化シリコン膜と接していない。一方、試料2乃至試料4は、酸化物半導体膜1905、及
び多層膜1906上に接して絶縁膜1911として用いる窒化シリコン膜が形成されてい
る。このように、酸化物半導体膜1905、及び多層膜1906は、絶縁膜1911とし
て用いる窒化シリコン膜に接して設けると、酸化物半導体膜1905、及び多層膜190
6に欠陥、代表的には酸素欠損が形成されると共に、該窒化シリコン膜に含まれる水素が
、酸化物半導体膜1905、及び多層膜1906へ移動または拡散し、酸化物半導体膜1
905、及び多層膜1906の導電性が向上する。
【0529】
例えば、トランジスタのチャネル形成領域に酸化物半導体膜を用いる場合、試料1に示
すように酸化物半導体膜に接して酸化窒化シリコン膜を設ける構成が好ましい。また、容
量素子の電極に用いる透光性を有する導電膜としては、試料2乃至試料4に示すように酸
化物半導体膜または多層膜に接して窒化シリコン膜を設ける構成が好ましい。このような
構成を用いることによって、トランジスタのチャネル形成領域に用いる酸化物半導体膜ま
たは多層膜と、容量素子の電極に用いる酸化物半導体膜または多層膜と、を同一工程で作
製しても酸化物半導体膜、及び多層膜の抵抗率を変えることができる。
【0530】
本実施例に示す構成は、他の実施の形態、または実施例に示す構成と適宜組み合わせて
用いることができる。
【実施例2】
【0531】
本実施例は、酸化物半導体膜と、酸化物半導体膜上に形成された絶縁膜との不純物分析
について、
図35を用いて説明する。
【0532】
本実施例においては、不純物分析用のサンプルとして、2種類のサンプル(以下、試料
5、及び試料6)を作製した。
【0533】
まず、はじめに試料5の作製方法を以下に示す。
【0534】
試料5は、ガラス基板上にIGZO膜を成膜し、その後窒化シリコン膜を成膜した。そ
の後、窒素雰囲気下で450℃、1時間の熱処理を行い、続けて窒素と酸素の混合ガス雰
囲気(窒素=80%、酸素=20%)下で450℃×1時間の熱処理を行った。
【0535】
なお、IGZO膜の成膜条件としては、スパッタリング法にて、金属酸化物ターゲット
(In:Ga:Zn=1:1:1)を用い、Ar/O2=100/100sccm(O2
=50%)、圧力=0.6Pa、成膜電力=5000W、基板温度=170℃の条件で1
00nmの厚さIGZO膜を成膜した。
【0536】
また、窒化シリコン膜の成膜条件としては、PE-CVD法にて、SiH4/N2/N
H3=50/5000/100sccm、圧力=100Pa、成膜電力=1000W、基
板温度=220℃の条件で100nmの厚さの窒化シリコン膜を成膜した。
【0537】
次に、試料6の作製方法を以下に示す。
【0538】
ガラス基板上にIGZO膜を成膜し、その後酸化窒化シリコン膜及び窒化シリコン膜を
積層して成膜した。その後、窒素雰囲気下で450℃、1時間の熱処理を行い、続けて窒
素と酸素の混合ガス雰囲気(窒素=80%、酸素=20%)下で450℃×1時間の熱処
理を行った。
【0539】
なお、IGZO膜の成膜条件、及び窒化シリコン膜の成膜条件としては、試料5と同様
の条件を用いた。また、酸化窒化シリコン膜の成膜条件としては、PE-CVD法にて、
SiH4/N2O=30/4000sccm、圧力=40Pa、成膜電力=150W、基
板温度=220℃の条件で50nmの厚さの酸化窒化シリコン膜を成膜し、その後、PE
-CVD法にて、SiH4/N2O=160/4000sccm、圧力=200Pa、成
膜電力=1500W、基板温度=220℃の条件で400nmの厚さの酸化窒化シリコン
膜を成膜した。
【0540】
【0541】
なお、不純物分析としては、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary
Ion Mass Spectrometry)を用い、
図35に示す矢印の方向から分
析を行った。すなわち、ガラス基板側からの測定である。
【0542】
また、
図35(A)は、試料5の測定により得られた水素(H)の濃度プロファイルで
ある。
図35(B)は、試料6の測定により得られた水素(H)の濃度プロファイルであ
る。
【0543】
図35(A)よりIGZO膜中の水素(H)濃度は、1.0×10
20atoms/c
m
3であることがわかる。また、窒化シリコン膜中の水素(H)濃度は、1.0×10
2
3atoms/cm
3であることがわかる。また、
図35(B)よりIGZO膜中の水素
(H)濃度は、5.0×10
19atoms/cm
3であることがわかる。また、酸化窒
化シリコン膜中の水素(H)濃度は、3.0×10
21atoms/cm
3であることが
わかる。
【0544】
なお、SIMS分析は、その測定原理上、試料表面近傍や、材質が異なる膜との積層界
面近傍のデータを正確に得ることが困難であることが知られている。そこで、膜中におけ
る水素(H)の厚さ方向の分布を、SIMSで分析する場合、対象となる膜の存在する範
囲において、極端な変動が無く、ほぼ一定の強度が得られる領域における平均値を採用す
る。
【0545】
このように、IGZO膜に接する絶縁膜の構成を変えることにより、IGZO膜中の水
素(H)濃度に差が確認された。
【0546】
例えば、トランジスタのチャネル形成領域に上述したIGZO膜を用いる場合、試料6
に示すようにIGZO膜に接して酸化窒化シリコン膜を設ける構成が好ましい。また、容
量素子の電極に用いる透光性を有する導電膜としては、試料5に示すようにIGZO膜に
接して窒化シリコン膜を設ける構成が好ましい。このような構成を用いることによって、
トランジスタのチャネル形成領域に用いるIGZO膜と、容量素子の電極に用いるIGZ
O膜と、を同一工程で作製してもIGZO膜中の水素濃度を変えることができる。
【実施例3】
【0547】
本実施例では、酸化物半導体膜及び多層膜の欠陥量について、
図36及び
図37を用い
て説明する。
【0548】
はじめに、試料の構造について説明する。
【0549】
試料7は、石英基板上に形成された厚さ35nmの酸化物半導体膜と、酸化物半導体膜
上に形成された厚さ100nmの窒化絶縁膜とを有する。
【0550】
試料8及び試料9は、石英基板上に形成された厚さ30nmの多層膜と、多層膜上に形
成された厚さ100nmの窒化絶縁膜とを有する。なお、試料8の多層膜は、厚さ10n
mの第1の酸化物膜、厚さ10nmの酸化物半導体膜、及び厚さ10nmの第2の酸化物
膜が順に積層されている。また、試料9は、厚さ20nmの第1の酸化物膜、厚さ15n
mの酸化物半導体膜、及び厚さ10nmの第2の酸化物膜が順に積層されている。試料8
及び試料9は、試料7と比較して、酸化物半導体膜の代わりに多層膜を有する点が異なる
。
【0551】
試料10は、石英基板上に形成された厚さ100nmの酸化物半導体膜と、酸化物半導
体膜上に形成された厚さ250nmの酸化絶縁膜と、酸化絶縁膜上に形成された厚さ10
0nmの窒化絶縁膜とを有する。試料10は、試料7乃至試料9と比較して酸化物半導体
膜が窒化絶縁膜と接しておらず、酸化絶縁膜と接している点が異なる。
【0552】
次に、各試料の作製方法について説明する。
【0553】
はじめに、試料7の作製方法について説明する。
【0554】
石英基板上に、酸化物半導体膜として厚さ35nmのIGZO膜を成膜した。IGZO
膜の成膜条件としては、スパッタリング法にて、金属酸化物ターゲット(In:Ga:Z
n=1:1:1)を用い、Ar/O2=100sccm/100sccm(O2=50%
)、圧力=0.6Pa、成膜電力=5000W、基板温度=170℃の条件を用いた。
【0555】
次に、第1の加熱処理として、450℃の窒素雰囲気で1時間の加熱処理を行った後、
450℃の窒素と酸素の混合ガス雰囲気(窒素=80%、酸素=20%)で1時間の加熱
処理を行った。
【0556】
次に、酸化物半導体膜上に、窒化絶縁膜として厚さ100nmの窒化シリコン膜を成膜
した。窒化シリコン膜の成膜条件としては、PE-CVD法にて、SiH4/N2/NH
3=50/5000/100sccm、圧力=100Pa、成膜電力=1000W、基板
温度=350℃の条件を用いた。
【0557】
次に、第2の加熱処理として、250℃の窒素雰囲気で1時間の加熱処理を行った。
【0558】
以上の工程により試料7を作製した。
【0559】
次に、試料8の作製方法について説明する。
【0560】
試料8は、試料7の酸化物半導体膜の代わりに、多層膜を形成した。多層膜としては、
石英基板上に、スパッタリング法にて、金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=1:
3:2)を用い、Ar/O2=180/20sccm(O2=10%)、圧力=0.6P
a、成膜電力=5000W、基板温度=25℃の条件で厚さ10nmの第1の酸化物膜を
成膜した。次に、スパッタリング法にて、金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=1
:1:1)を用い、Ar/O2=100/100sccm(O2=50%)、圧力=0.
6Pa、成膜電力=5000W、基板温度=170℃の条件で厚さ10nmの酸化物半導
体膜を成膜した。次に、スパッタリング法にて、金属酸化物ターゲット(In:Ga:Z
n=1:3:2)を用い、Ar/O2=180/20sccm(O2=10%)、圧力=
0.6Pa、成膜電力=5000W、基板温度=25℃の条件で厚さ10nmの第2の酸
化物膜を成膜した。
【0561】
その他の工程は、試料7と同様である。以上の工程により試料8を形成した。
【0562】
次に、試料9の作製方法について説明する。
【0563】
試料9は、試料7の酸化物半導体膜の代わりに、多層膜を形成した。多層膜としては、
石英基板上に、試料8に示す第1の酸化物膜と同じ条件を用いて、厚さ20nmの第1の
酸化物膜を成膜した。次に、スパッタリング法にて、試料8に示す酸化物半導体膜と同じ
条件を用いて、厚さ15nmの酸化物半導体膜を成膜した。次に、試料8に示す第2の酸
化物膜と同じ条件を用いて、厚さ10nmの第2の酸化物膜を成膜した。
【0564】
その他の工程は、試料7と同様である。以上の工程により試料9を形成した。
【0565】
次に、試料10の作製方法について説明する。
【0566】
試料10は、試料7と同じ条件を用いて石英基板上に厚さ100nmの酸化物半導体膜
を形成した。
【0567】
次に、試料7と同様の条件を用いて、第1の加熱処理を行った。
【0568】
次に、酸化物半導体膜上に、酸化絶縁膜として、厚さ50nmの第1の酸化窒化シリコ
ン膜及び厚さ200nmの第2の酸化窒化シリコン膜を形成した。ここでは、PE-CV
D法にて、SiH4/N2O=30/4000sccm、圧力=40Pa、成膜電力=1
50W、基板温度=220℃の条件で50nmの厚さの第1の酸化窒化シリコン膜を成膜
し、その後、PE-CVD法にて、SiH4/N2O=160/4000sccm、圧力
=200Pa、成膜電力=1500W、基板温度=220℃の条件で200nmの厚さの
第2の酸化窒化シリコン膜を成膜した。なお、第2の酸化窒化シリコン膜は、化学量論的
組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む膜である。
【0569】
次に、試料7と同じ条件を用いて、酸化絶縁膜上に厚さ100nmの窒化シリコン膜を
形成した。
【0570】
次に、試料7と同様の条件を用いて、第2の加熱処理を行った。
【0571】
以上の工程により試料10を形成した。
【0572】
次に、試料7乃至試料10についてESR測定を行った。ESR測定は、所定の温度で
、マイクロ波の吸収の起こる磁場の値(H0)から、式g=hv/βH0、を用いてg値
というパラメータが得られる。なお、vはマイクロ波の周波数である。hはプランク定数
であり、βはボーア磁子であり、どちらも定数である。
【0573】
ここでは、下記の条件でESR測定を行った。測定温度を室温(25℃)とし、8.9
2GHzの高周波電力(マイクロ波パワー)を20mWとし、磁場の向きは作製した試料
の膜表面と平行とした。
【0574】
試料7乃至試料9に含まれる酸化物半導体膜及び多層膜をESR測定して得られた一次
微分曲線を
図36に示す。
図36(A)は、試料7の測定結果であり、
図36(B)は、
試料8の測定結果であり、
図36(C)は、試料9の測定結果である。
【0575】
試料10に含まれる酸化物半導体膜をESR測定して得られた一次微分曲線を
図37に
示す。
【0576】
図36(A)乃至
図36(C)において、試料7は、g値が1.93において、酸化物
半導体膜中の欠陥に起因する対称性を有する信号が検出されている。試料8及び試料9は
、g値が1.95において、酸化物膜中の欠陥に起因する対称性を有する信号が検出され
ている。試料7におけるg値が1.93のスピン密度は、2.5×10
19spins/
cm
3であり、試料8におけるg値が1.93及び1.95のスピン密度の総和は、1.
6×10
19spins/cm
3であり、試料9におけるg値が1.93及び1.95の
スピン密度の総和は、2.3×10
19spins/cm
3であった。即ち、酸化物半導
体膜及び多層膜には、欠陥が含まれることが分かる。なお、酸化物半導体膜及び多層膜の
欠陥の一例としては酸素欠損がある。
【0577】
図37において、試料10は、試料7乃至試料9と比較して、酸化物半導体膜の厚さが
厚いにも関わらず、欠陥に起因する対称性を有する信号が検出されず、即ち、検出下限以
下(ここでは、検出下限を3.7×10
16spins/cm
3とする。)であった。こ
のことから、酸化物半導体膜に含まれる欠陥量が検出できないことが分かる。
【0578】
酸化物半導体膜または多層膜に窒化絶縁膜、ここではPE-CVDで形成された窒化シ
リコン膜が接すると、酸化物半導体膜または多層膜に欠陥、代表的には酸素欠損が形成さ
れることが分かる。一方、酸化物半導体膜に酸化絶縁膜、ここでは、酸化窒化シリコン膜
を設けると、酸化窒化シリコン膜に含まれる過剰酸素、即ち化学量論的組成を満たす酸素
よりも多くの酸素が酸化物半導体膜に拡散し、酸化物半導体膜中の欠陥が増加しない。
【0579】
以上のことから、試料7乃至試料9に示すように、窒化絶縁膜に接する酸化物半導体膜
または多層膜は欠陥、代表的には酸素欠損量が多く、導電性が高いため、容量素子の電極
として用いることができる。一方、試料10に示すように、酸化絶縁膜に接する酸化物半
導体膜または多層膜は、酸素欠損量が少なく、導電性が低いため、トランジスタのチャネ
ル形成領域として用いることができる。