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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】殺微生物組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 31/14 20060101AFI20231102BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20231102BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
A01N31/14
A01P1/00
A01P3/00
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022117035
(22)【出願日】2022-07-22
(62)【分割の表示】P 2019513853の分割
【原出願日】2017-09-25
(65)【公開番号】P2022141874
(43)【公開日】2022-09-29
【審査請求日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】62/402,769
(32)【優先日】2016-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒテーシュクマール・デーブ
(72)【発明者】
【氏名】キラン・パリーク
(72)【発明者】
【氏名】アイリーン・エフ・ワーウィック
【審査官】安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0318494(US,A1)
【文献】特開2013-095754(JP,A)
【文献】特表2016-507612(JP,A)
【文献】特開平03-141202(JP,A)
【文献】国際公開第2015/051115(WO,A1)
【文献】特開2009-073915(JP,A)
【文献】特開2014-195934(JP,A)
【文献】特開平08-127798(JP,A)
【文献】特表2014-503625(JP,A)
【文献】特開2004-099588(JP,A)
【文献】特表2016-531867(JP,A)
【文献】特表2012-521367(JP,A)
【文献】特開平03-014502(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0152748(US,A1)
【文献】Research in Microbiology,1990年,141(4),499-510,DOI: 10.1016/0923-2508(90)90075-2
【文献】International Biodeterioration & Biodegradation,1998年,41(3/4),209-215,DOI: 10.1016/S0964-8305(98)00029-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノキシエタノールおよびジプロピレングリコールフェニルエーテルを含む、アスペルギルス・ブラジリエンシスに対する相乗的殺微生物組成物であって、フェノキシエタノール:ジプロピレングリコールフェニルエーテルの重量比が、1:0.01~1:0.50、1:1.00~1:1.50、1:2.67~1:6.67、1:10.00、又は1:12.00~1:26.67である、相乗的殺微生物組成物。
【請求項2】
フェノキシエタノールおよびジプロピレングリコールフェニルエーテルを含む、カンジダ・アルビカンスに対する相乗的殺微生物組成物であって、フェノキシエタノール:ジプロピレングリコールフェニルエーテルの重量比が、1:0.08~1:0.80、1:1.20~1:2.40、1:3.00~1:3.20、又は1:5.00~1:20.00である、相乗的殺微生物組成物。
【請求項3】
フェノキシエタノールおよびジプロピレングリコールフェニルエーテルを含む、黄色ブドウ球菌に対する相乗的殺微生物組成物であって、フェノキシエタノール:ジプロピレングリコールフェニルエーテルの重量比が、1:1.33~1:2.40、又は1:3.20である、相乗的殺微生物組成物。
【請求項4】
水性媒体中でのアスペルギルス・ブラジリエンシスの増殖を阻害するための方法であって、前記方法は、フェノキシエタノールおよびジプロピレングリコールフェニルエーテルを前記水性媒体に添加することを含み、フェノキシエタノール:ジプロピレングリコールフェニルエーテルの重量比は、1:0.01~1:0.50、1:1.00~1:1.50、1:2.67~1:6.67、1:10.00、又は1:12.00~1:26.67である方法。
【請求項5】
水性媒体中でのカンジダ・アルビカンスの増殖を阻害するための方法であって、前記方法は、フェノキシエタノールおよびジプロピレングリコールフェニルエーテルを前記水性媒体に添加することを含み、フェノキシエタノール:ジプロピレングリコールフェニルエーテルの重量比は、1:0.08~1:0.80、1:1.20~1:2.40、1:3.00~1:3.20、又は1:5.00~1:20.00である方法。
【請求項6】
水性媒体中での黄色ブドウ球菌の増殖を阻害するための方法であって、前記方法は、フェノキシエタノールおよびジプロピレングリコールフェニルエーテルを前記水性媒体に添加することを含み、フェノキシエタノール:ジプロピレングリコールフェニルエーテルの重量比は、1:1.33~1:2.40、又は1:3.20である方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2-フェノキシエタノールおよびジプロピレングリコールフェニルエーテルを含有する殺微生物組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
5-クロロ-2-メチルイソチアゾリン-3-オン、2-メチルイソチアゾリン-3-オンおよび非イオン性分散剤を含有する組成物が、米国特許第4,295,932号に開示されている。この組成物は、5-クロロ-2-メチルイソチアゾリン-3-オンおよび2-メチルイソチアゾリン-3-オンの3:1混合物、ならびにPLURONIC L61またはTERGITOL L61分散剤と同じ組成を有すると思われるエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのコポリマーを含有する。しかしながら、微生物の効果的な制御を提供するために、微生物の様々な株に対して相乗的活性を有する殺微生物剤の組み合わせに対する必要性がある。さらに、環境的および経済的利益のために、より低いレベルの個々の殺微生物剤を含有するそのような組み合わせに対する必要性がある。本発明によって対応される問題は、殺微生物剤のそのような相乗的な組み合わせを提供することである。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、フェノキシエタノールおよびジプロピレングリコールフェニルエーテルを含む相乗的殺微生物組成物に関する。
【0004】
本発明はさらに、水性媒体中の微生物の増殖を阻害するための方法に関し、該方法は、フェノキシエタノールおよびジプロピレングリコールフェニルエーテルを水性媒体に添加することを含み、フェノキシエタノールとジプロピレングリコールフェニルエーテルとの重量比は、1:0.01~1:27である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
「フェノキシエタノール」は、2-フェノキシ-1-エタノール(CAS番号122-99-6)である。ジプロピレングリコールフェニルエーテルは、CAS番号51730-94-0の化合物である。本明細書で使用される場合、以下の用語は、文脈上他に明確に示されていない限り、指定された定義を有する。用語「殺微生物剤」は、微生物の増殖を阻害するかまたは微生物の増殖を制御することができる化合物を指し、殺微生物剤は、殺菌剤、殺真菌剤および殺藻剤を含む。「微生物」という用語は、例えば、(酵母およびカビ等の)真菌、細菌、および藻類を含む。以下の略語が本明細書を通して使用される:ppm=重量百万分率(重量/重量)、mL=ミリリットル。別様に明記しない限り、温度は、摂氏度(℃)であり、パーセンテージへの言及は、重量パーセンテージ(重量%)であり、量および比は、活性成分を基準とする。
【0006】
本発明において、フェノキシエタノールおよびジプロピレングリコールフェニルエーテルを組み合わせることによって、相乗的な抗微生物組成物が形成される。フェノキシエタノールとジプロピレングリコールフェニルエーテルとの間の相乗作用は、1:0.01~1:27の範囲にわたって実証されている。
【0007】
好ましくは、相乗的殺微生物組成物はそれぞれ、ジプロピレングリコールフェニルエーテルおよびフェノキシエタノール以外の殺微生物剤を実質的に含まず、すなわち活性成分の総重量に基づいてジプロピレングリコールフェニルエーテルおよびフェノキシエタノール以外の殺微生物剤を1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、好ましくは0.2重量%未満、好ましくは0.1重量%未満有する。好ましくは、ジプロピレングリコールフェニルエーテルおよびフェノキシエタノールが水性媒体に添加される場合、媒体は他の殺微生物剤を実質的に含まず、すなわち活性成分の総重量に基づいてジプロピレングリコールフェニルエーテルおよびフェノキシエタノール以外の殺微生物剤を0.5重量%未満、好ましくは0.2重量%未満、好ましくは0.1重量%未満有する。
【0008】
本発明の組成物は、他の成分、例えば消泡剤および乳化剤を含有してもよい。本発明の殺微生物組成物は、微生物の攻撃を受ける水性媒体中に殺微生物剤として有効量の組成物を導入することによって、微生物またはより高等な形態の水生生物(原生動物、無脊椎動物、コケムシ、渦鞭毛藻類、甲殻類、軟体動物等)の増殖を阻害するために使用され得る。適切な水性媒体は、例えば、工業用水;電着塗装システム;冷却塔;エアワッシャー;ガススクラバー;鉱石スラリー;廃水処理;装飾用の噴水;逆浸透ろ過;限外ろ過;バラスト水;蒸発凝縮器;熱交換器;紙パルプ加工液および添加剤;澱粉;プラスチック;エマルジョン;分散液;塗料;ラテックス;ワニス等のコーティング;マスチック、コーキング材、シーラント等の建築製品;セラミック接着剤、カーペット裏地接着剤、およびラミネート接着剤等の建築用接着剤;工業用または消費者用接着剤;写真用化学薬品;印刷液;浴室用洗剤および台所用洗剤等の家庭用品;化粧品;トイレ用品;シャンプー;石鹸;拭き取り用品、ローション、日焼け止め剤、コンディショナー、クリーム、およびその他のリーブオン塗布剤等のパーソナルケア製品;洗剤;工業用クリーナー;床磨き剤;洗濯すすぎ水;金属加工液;コンベア潤滑剤;油圧油;皮革および皮革製品;布地;布地製品;ベニヤ板、合板、フレークボード、積層梁、配向性ストランドボード、ハードボード、およびパーティクルボード等の木材および木製品;石油処理液;燃料;注入水、破砕液、および掘削泥水等の油田の流体;農業アジュバント保存;界面活性剤の保存;医療機器;診断試薬の保存;プラスチックまたは紙の食品包装等の食品保存;食品、飲料、および工業プロセス滅菌剤;便器;レクリエーション水域;プール;ならびに温泉において見出される。
【0009】
用途における微生物の増殖を阻害または制御するために必要な本発明の殺微生物組成物の具体的な量は変動する。典型的には、本発明の組成物の量は、それが組成物の1,000~30,000ppm(百万分の一)の活性成分を提供する場合、微生物の増殖を制御するのに十分である。組成物の活性成分(すなわち、ジプロピレングリコールフェニルエーテルおよびフェノキシエタノール)は、処理される媒体中に少なくとも2,000ppm、好ましくは少なくとも3,000ppm、好ましくは少なくとも4,000ppmの量で存在することが好ましい。組成物の活性成分は、遺伝子座中に16,000ppm以下、好ましくは14,000ppm以下、好ましくは12,000ppm以下、好ましくは10,000ppm以下、好ましくは8,000ppm以下、好ましくは7,000ppm以下の量で存在することが好ましい。本発明の方法では、非イオン性界面活性剤およびフェノキシエタノールを上記の濃度になるような量で一緒にまたは別々に添加することによって組成物が処理され、微生物の増殖が阻害される。
【実施例
【0010】
フェノキシエタノールおよびジプロピレングリコールフェニルエーテルを、組み合わせの相乗作用指数(SI)を決定することによって相乗作用について評価した。相乗作用指数は、2つの抗微生物化合物(AおよびB)の単独および組み合わせの最小阻止濃度(MIC)に基づいて計算された。MIC試験は、米国特許第9,034,905号に記載されている方法に従って実施された。試験生物は、グラム陰性菌(緑膿菌ATCC#15442)、グラム陽性菌(黄色ブドウ球菌ATCC#6538)、および酵母(カンジダ・アルビカンスATCC#10231)ならびにカビ(アスペルギルス・ブラジリエンシスATCC#16404)であった。細菌の接触時間は24時間および48時間であり、酵母の接触時間は48時間および72時間であり、カビの接触時間は3日間および7日間であった。試験は、96ウェルマイクロタイタープレートで実施された。試験に関するさらなる詳細を表1~4に示す。
【0011】
【表1】
【0012】
【表2】
【0013】
【表3】
【0014】
MICの組み合わせの相乗効果を実証するための試験結果を表4に示す。各表は、インキュベーション時間;化合物A単独(CA)、成分B単独(CB)、ならびに混合物(Ca)および(Cb)についてMICによって測定されたppmでの終点活性;計算されたSI値;ならびにテストした各組み合わせの相乗比の範囲に関する、試験した微生物に対する2つの成分の組み合わせの結果を示す。SIは次のように計算される。
Ca/CA+Cb/CB=相乗作用指数(「SI」)
式中、
CA=終点(化合物AのMIC)をもたらした、単独で作用する化合物Aのppmでの濃度。
Ca=終点をもたらした、混合物中の化合物Aのppmでの濃度。
CB=終点(化合物BのMIC)をもたらした、単独で作用する化合物Bのppmでの濃度。
Cb=終点をもたらした、混合物中の化合物Bのppmでの濃度である。
Ca/CAおよびCb/CBの合計が1より大きい場合、拮抗作用が示される。
合計が1に等しい場合、相加性が示され、1未満の場合、相乗作用が示される。
相乗的比率またはいずれかの成分の使用レベルを低下させる比率のみが表4に示されている。
【0015】
【表4-1】
【0016】
【表4-2】
【0017】
【表4-3】
【0018】
【表4-4】