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  • 特許-固形製剤の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】固形製剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/704 20060101AFI20231102BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20231102BHJP
   A61K 31/375 20060101ALI20231102BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231102BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231102BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20231102BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231102BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20231102BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20231102BHJP
【FI】
A61K31/704
A61K31/192
A61K31/375
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K9/20
A61P29/00
A61K47/12
A61K47/14
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022186755
(22)【出願日】2022-11-22
(62)【分割の表示】P 2018205015の分割
【原出願日】2018-10-31
(65)【公開番号】P2023015371
(43)【公開日】2023-01-31
【審査請求日】2022-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2017211069
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】521357375
【氏名又は名称】アリナミン製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】西 晶子
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-179613(JP,A)
【文献】特開2007-119453(JP,A)
【文献】特開2017-105815(JP,A)
【文献】特開2013-163698(JP,A)
【文献】特開2015-229659(JP,A)
【文献】国際公開第2010/029930(WO,A1)
【文献】特開2000-229853(JP,A)
【文献】特開2009-235020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イブプロフェンとグリチルリチン酸又はその塩を含有する固形製剤の製造方法であって、
(i)イブプロフェンをグリチルリチン酸又はその塩とは別群で攪拌造粒する工程と、
(ii)フマル酸若しくはそのエステル又はそれらの塩を配合する工程を具備することを特徴とする、固形製剤の製造方法。
【請求項2】
フマル酸若しくはそのエステル又はそれらの塩が、フマル酸、又はフマル酸ステアリルナトリウムである、請求項1に記載の固形製剤の製造方法。
【請求項3】
固形製剤がアスコルビン酸又はその塩をさらに含有する、請求項1又は2に記載の固形製剤の製造方法。
【請求項4】
アスコルビン酸又はその塩が、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸亜鉛、及びアスコルビン酸マグネシウムからなる群より選択される1種以上である、請求項に記載の固形製剤の製造方法。
【請求項5】
アスコルビン酸又はその塩を単独の群で造粒する、請求項又はに記載の固形製剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イブプロフェンを含む2種以上の薬効成分を含有する固形製剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬製剤の薬効成分の中には、打錠時に杵表面に付着性を有する薬効成分も多く、それらの薬効成分を配合した製剤においては、打錠時に杵付着を起こすことが知られている。
杵付着とは、打錠中に杵の打錠面に薬効成分や打錠末が付着することであり、これにより素錠表面に凹凸が形成されるなど、外観不良が生じる。このような素錠はコーティングしても凹凸は残るため、医薬製剤としての商品価値の低下が問題となる。
また、薬効成分の杵付着は、該成分の含量低下にもつながるので、外観不良による商品価値の低下だけでなく、医薬製剤としての品質低下にも関わる問題となる。
【0003】
イブプロフェンは、解熱鎮痛剤として広く利用されており、抗炎症剤など種々の薬効成分と組み合わせて総合感冒薬の一成分としても広く利用されている。
その一方で、イブプロフェンは、低融点物質なので、種々の薬効成分との配合によって融点降下を引き起こし、杵付着や造粒物の流動性不良の原因となることも知られている。
杵付着や造粒物の流動性不良は、外観不良による商品価値の低下や、含量低下による品質低下のみならず、製剤の製造工程における生産性の低下につながる大きな問題となる。
【0004】
イブプロフェン含有製剤の杵付着を防止する技術として、例えば、特許文献1には、イブプロフェンを配合した医薬製剤において、イブプロフェン原末を、可塑剤を含むコーティング用組成物で直接コーティングして顆粒とし、打錠前の打錠末にこの顆粒を混合添加する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-169273
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明においては、特殊な製剤にすることなく、通常用いられる簡便な手法によって、イブプロフェンと種々の薬効成分との配合に起因する、杵付着などの外観不良や、含量低下などの品質低下、さらには造粒物の流動性不良、及びこれらに伴う製造工程における生産性の低下などが改善された、イブプロフェンを含む2種以上の薬効成分を含有する固形製剤の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討した結果、イブプロフェンを含む2種以上の薬効成分を含有する固形製剤の製造工程において、(i) イブプロフェンを他の薬効成分とは別群で攪拌造粒し、(ii) フマル酸若しくはそのエステル又はそれらの塩を配合することにより、杵付着などの外観不良や、造粒品の流動性不良などが改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
[1] イブプロフェンを含む2種以上の薬効成分を含有する固形製剤の製造方法であって、
(i)イブプロフェンを他の薬効成分とは別群で攪拌造粒する工程と、
(ii)フマル酸若しくはそのエステル又はそれらの塩を配合する工程を具備することを特徴とする、固形製剤の製造方法。
[2] フマル酸若しくはそのエステル又はそれらの塩が、フマル酸、又はフマル酸ステアリルナトリウムである、[1]に記載の固形製剤の製造方法。
[3] 他の薬効成分が抗炎症剤である、[1]又は[2]に記載の固形製剤の製造方法。
[4] 抗炎症剤が、塩化リゾチーム、セラプターゼ、トラネキサム酸、及びグリチルリチン酸又はその塩からなる群より選択される1種以上である、[3]に記載の固形製剤の製造方法。
[5] 他の薬効成分がアスコルビン酸又はその塩である、[1]~[4]いずれか記載の固形製剤の製造方法。
[6] アスコルビン酸又はその塩が、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸亜鉛、及びアスコルビン酸マグネシウムからなる群より選択される1種以上である、[5]に記載の固形製剤の製造方法。
[7] アスコルビン酸又はその塩を単独の群で造粒する、[5]又は[6]に記載の固形製剤の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、イブプロフェンを含む2種以上の薬効成分を含有する固形製剤において、特殊な製剤にすることなく、通常用いられる簡便な手法で、杵付着などの外観不良、イブプロフェン含量の低下などの品質低下を顕著に改善することができ、且つ製造工程における生産性も高く維持できる。
また、イブプロフェンは低融点物質であるため、種々の薬効成分との配合により融点降下を引き起こし、杵付着や造粒品の流動性不良の原因となることが知られているが、本発明によれば、イブプロフェンを他の薬効成分とは別群で造粒することにより、そのような融点降下を引き起こす製剤中における薬効成分間の接触を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】従来の固形製剤における杵付着発生機構及び実例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のイブプロフェンを含む2種以上の薬効成分を含有する固形製剤の製造方法は、(i)イブプロフェンを他の薬効成分と別群で攪拌造粒する工程と、(ii)フマル酸若しくはそのエステル又はそれらの塩を配合する工程を含む。
【0011】
〔本発明の固形製剤に含有される薬効成分〕
本発明における「イブプロフェン」は、日本薬局方に準拠したイブプロフェンであり、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。
本発明におけるイブプロフェンの投与量は、服用者の年齢、症状などに応じて、適宜検討して決定すればよいが、例えば、1日あたり、50~600mgを1回又は2ないし3回に分けて投与するのが好ましい。
本発明における固形製剤中に含まれるイブプロフェンの含量は、特に限定されないが、上記投与量に基づいて適宜検討して決定すればよいが、例えば、固形製剤全体の1~60質量%、好ましくは5~50質量%、より好ましくは10~30質量%である。
【0012】
本発明における「他の薬効成分」は、イブプロフェン以外の薬効成分すべてを意味し、例えば、イブプロフェン以外の解熱鎮痛剤、鼻炎用薬、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤、ノスカピン類、去痰剤、気管支拡張剤、胃粘膜保護剤、カフェイン類、ビタミン類、催眠鎮静薬、喀痰溶解剤、抗炎症剤、抗コリン剤、生薬類、漢方処方などが挙げられる。
【0013】
イブプロフェン以外の解熱鎮痛剤としては、例えば、アスピリン(アセチルサリチル酸)、アスピリンアルミニウム、アセトアミノフェン、サリチルアミド、サリチル酸ナトリウム、エテンザミド、サザピリン、ラクチルフェネチジン、ケトプロフェン、イソプロピルアンチピリン、ロキソプロフェンナトリウムなどが例示できる。
鼻炎用薬としては、例えば、塩酸プソイドエフェドリン、dl-マレイン酸クロルフェニラミン、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩、ベラドンナ総アルカロイド、ヨウ化イソプロパミド、グリチルリチン酸ジカリウムなどが例示できる。
抗ヒスタミン剤としては、例えば、ジフェンヒドラミン塩酸塩、ジフェンヒドラミンサリチル酸塩、タンニン酸ジフェンヒドラミン、酒石酸アリメマジン、塩酸イソチペンジル、プロメタジンメチレン二サリチル酸塩、ジフェニルピラリン塩酸塩、ジフェニルピラリンテオクル酸塩、塩酸イソチペンジル、塩酸ジフェテロール、リン酸ジフェテロール、トリプロリジン塩酸塩水和物、塩酸トリペレナミン、塩酸トンジルアミン、塩酸フェネタジン、塩酸メトジラジン、ジフェニルジスルホン酸カルビノキサミン、ナパジシル酸メブヒドロリン、マレイン酸カルビノキサミン、塩酸イプロヘプチン、塩酸プロメタジン、酒石酸アリメマジン、タンニン酸フェネタジン、クレマスチンフマル酸塩、メキタジンなどが例示できる。
鎮咳剤としては、例えば、コデインリン酸塩水和物、ジヒドロコデインリン酸塩、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物、デキストロメトルファン・フェノールフタリン塩、塩酸アロクラミド、クロペラスチン塩酸塩、クロペラスチンフェンジゾ酸塩、ペントキシベリンクエン酸塩(クエン酸カルベタペンタン)、チペピジンヒベンズ酸塩、ジブナートナトリウム、クエン酸チペピジン、ジメモルファンリン酸塩などが例示できる。
ノスカピン類としては、例えば、ノスカピン、ノスカピン塩酸塩水和物などが例示できる。
去痰剤としては、例えば、グアヤコールスルホン酸カリウム、ブロムヘキシン塩酸塩、グアイフェネシン、クエン酸チペピジン、L-カルボシステイン、塩化アンモニウム、l-メントール、アンモニア・ウイキョウ精、グアヤコールスルホン酸カリウム、グアイフェネシン、クレゾールスルホン酸カリウムなどが例示できる。
気管支拡張剤としては、例えば、dl-メチルエフェドリン塩酸塩、dl-メチルエフェドリンサッカリン塩、塩酸トリメトキノール、塩酸フェニルプロパノールアミン、塩酸メトキシフェナミン、l-塩酸メチルエフェドリン、塩酸プソイドエフェドリン、アミノフィリン、ジプロフィリン、テオフィリン、プロキシフィリンなどが例示できる。
胃粘膜保護剤としては、例えば、グリシン、アミノ酢酸、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウム、ジヒドロキシアルミニウム・アミノ酢酸塩、水酸化アルミニウムゲル、乾燥水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム混合乾燥ゲル、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウムの共沈生成物、水酸化アルミニウム・炭酸カルシウム・炭酸マグネシウムの共沈生成物、水酸化マグネシウム・硫酸アルミニウムカリウムの共沈生成物、炭酸マグネシウムなどが例示できる。
カフェイン類としては、安息香酸ナトリウムカフェイン、カフェイン水和物、無水カフェインなどが例示できる。
アスコルビン酸又はその塩以外のビタミン類としては、例えば、ビタミンB1類又はその誘導体若しくはそれらの塩類、ビタミンB2類又はその誘導体若しくはそれらの塩類、ビタミンP(ヘスペリジン)又はその誘導体若しくはそれらの塩類などが例示できる。
催眠鎮静薬としては、例えば、アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロムワレリル尿素などが例示できる。
喀痰溶解剤としては、例えば、塩化リゾチーム、L-エチルシステイン塩酸塩、塩酸メチルシステインなどが例示できる。
抗炎症剤としては、例えば、グリチルリチン酸及びその塩類、トラネキサム酸などが例示できる。
抗コリン剤としては、例えば、ベラドンナ総アルカロイド、ヨウ化イソプロパミドなどが例示できる。
生薬類としては、例えば、マオウ、ナンテンジツ、オウヒ、オンジ、カンゾウ、キキョウ、シャゼンシ、シャゼンソウ、セキサン、セネガ、バイモ、ウイキョウ、オウバク、オウレン、ガジュツ、カミツレ、ケイヒ、ゲンチアナ、ゴオウ、獣胆(ユウタン含む)、シャジン、ショウキョウ、ソウジュツ、チョウジ、チンピ、ビャクジュツ、ジリュウ、チクセツニンジン、ニンジンなどが例示できる。
漢方処方としては、例えば、根湯、根湯加桔梗、桂皮湯、香蘇散、柴胡桂皮湯、小柴胡湯、小青竜湯、麦門冬湯、半夏厚朴湯、麻黄湯などが例示できる。
【0014】
本発明の一実施態様において、他の薬効成分は「抗炎症剤」である。
本発明における「抗炎症剤」は、抗炎症作用を有する薬剤を意味し、抗炎症作用を有する薬剤であれば特に限定されないが、例えば、塩化リゾチーム、セラプターゼ、トラネキサム酸、及びグリチルリチン酸又はその塩が挙げられる。また本発明において、抗炎症剤は、1種であっても2種以上であってもよい。
本発明における「抗炎症剤」として、好ましくはグリチルリチン酸又はその塩、さらに好ましくはグリチルリチン酸である。
本発明における「グリチルリチン酸又はその塩」は、グリチルリチン酸及びその薬学上許容される塩を含む。これらは、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。
本発明における「グリチルリチン酸又はその塩」の投与量は、服用者の年齢、症状などに応じて、適宜検討して決定すればよいが、例えば、グリチルリチン酸として1日あたり20~200mgを1回又は2ないし3回に分けて投与するのが好ましい。
上記薬学上許容される塩としては、例えば、ナトリウム及びカリウムなどのアルカリ金属ならびにカルシウム及びマグネシウムなどのアルカリ土類金属などの塩が挙げられる。また本発明において、グリチルリチン酸又はその塩は、1種であっても2種以上であってもよい。
本発明における固形製剤中に含まれる「グリチルリチン酸又はその塩」の含量は、特に限定されないが、例えば、固形製剤全体の0.1~10.0質量%、好ましくは0.5~5.0質量%、より好ましくは1.0~3.0質量%である。
【0015】
本発明の一実施態様において、他の薬効成分は「アスコルビン酸又はその塩」である。
本発明における「アスコルビン酸又はその塩」は、アスコルビン酸及びその薬学上許容される塩を含む。これらは、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。
上記薬学上許容される塩としては、例えば、ナトリウム及びカリウムなどのアルカリ金属ならびにカルシウム及びマグネシウムなどのアルカリ土類金属などの塩が挙げられる。
上記「アスコルビン酸又はその塩」の具体例としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸亜鉛、アスコルビン酸マグネシウムなどが挙げられ、好ましくは、アスコルビン酸カルシウムである。また本発明において、アスコルビン酸又はその塩は、1種であっても2種以上であってもよい。
本発明における「アスコルビン酸又はその塩」の投与量は、服用者の年齢、症状などに応じて、適宜検討して決定すればよいが、例えば、アスコルビン酸として1日あたり、50~2000mgを1回又は2ないし3回に分けて投与するのが好ましい。
本発明における固形製剤中に含まれる「アスコルビン酸又はその塩」の含量は、特に限定されないが、例えば、アスコルビン酸として固形製剤全体の1~80質量%、好ましくは7~70質量%、より好ましくは15~45質量%である。
【0016】
〔本発明の固形製剤に含有される添加成分〕
本発明における「フマル酸若しくはそのエステル又はそれらの塩」は、上記本発明の効果が生じる限り特に限定されず、日本薬局方、医薬品添加物規格、医薬部外品原料規格などに掲載されたフマル酸若しくはそのエステル又はそれらの塩などが挙げられる。
例えば、フマル酸、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチル、フマル酸一ナトリウム、フマル酸ナトリウム、フマル酸第一鉄、フマル酸ステアリルナトリウムなどが挙げられ、好ましくは、フマル酸、又はフマル酸ステアリルナトリウム、さらに好ましくは、フマル酸ステアリルナトリウムである。
本発明の固形製剤中に含まれる「フマル酸若しくはそのエステル又はそれらの塩」の含量は、特に限定されず、イブプロフェン及び他の薬効成分の含量などに応じて適宜検討して決定すればよいが、本発明の固形製剤は、フマル酸若しくはそのエステル又はそれらの塩を、固形製剤全体の0.1~20.0質量%、好ましくは0.5~10.0質量%、より好ましくは1.5~8.5質量%、さらに好ましくは1.8~5.0質量%含む。
【0017】
本発明における固形製剤に含まれるイブプロフェンと、フマル酸若しくはそのエステル又はそれらの塩の質量比は、上記本発明の効果が生じる限り特に限定されないが、例えば、イブプロフェンの1質量部に対して、フマル酸若しくはそのエステル又はそれらの塩を0.05~0.50質量部含むのが好ましく、0.10~0.20質量部含むのがより好ましい。
【0018】
本発明における固形製剤には、上記成分の他、本発明の効果を阻害しない限り、製剤技術分野において慣用の薬学的に許容される担体又は添加剤をさらに含有していてもよい。
担体又は添加剤としては、例えば賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、pH調整剤、界面活性剤、安定化剤、酸味料、香料などが挙げられる。これら添加剤は、製剤技術分野において慣用の量が用いられる。
【0019】
賦形剤としては、例えば、トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、コムギコデンプン、コメデンプン、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン、有孔デンプンなどのデンプン類;乳糖水和物、ショ糖、果糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、トレハロース、マルチトール、粉末還元麦芽糖水アメ、ラクチトールなどの糖又は糖アルコール類;無水リン酸水素カルシウム、結晶セルロース、粉末セルロース、沈降炭酸カルシウム、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
崩壊剤としては、例えば、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、ヒドロキシプロピルスターチなどが用いられ、好ましくは、クロスカルメロースナトリウム、L-HPCである。
結合剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、ポリビニルピロリドン、コポリビドン、アラビアゴム末、メチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースナトリウム、デキストリン、部分アルファー化デンプン、プルラン、アラビアゴム、カンテン、ゼラチン、トラガント、アルギン酸ナトリウムなどが用いられ、好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
流動化剤としては、例えば、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、タルクなどが用いられ、好ましくは、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムである。
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。
着色剤としては、例えば、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、食用青色1号、食用青色2号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用緑色3号、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号、食用赤色104号、食用赤色105号、食用赤色106号、食用レーキ色素、リボフラビン、リボフラビンリン酸エステルナトリウムなどが挙げられる。
pH調整剤としては、例えば、クエン酸、リン酸、炭酸、酒石酸、フマル酸、酢酸、アミノ酸及びそれらの塩類などが挙げられる。
界面活性剤として、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコールなどが挙げられる。
安定化剤としては、例えばトコフェロール、エデト酸四ナトリウム、ニコチン酸アミド、シクロデキストリン類などが挙げられる。
酸味料としては、例えば、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸などが挙げられる。
香料としては、例えば、L-メントール、ハッカ油、レモン油、バニリンなどが挙げられる。
上記した担体又は添加剤は、2種以上を適宜、混合して用いてもよい。
【0020】
〔本発明における固形製剤の製造方法〕
本発明の固形製剤の製造方法は、(i)イブプロフェンを他の薬効成分と別群で攪拌造粒する工程を含む。
ここで「他の薬効成分と別群で攪拌造粒する」とは、他の薬効成分を含む群と別個に、イブプロフェンを含む群を(単独の群で)攪拌造粒することをいう。
これにより、イブプロフェンと他の薬効成分とが接触することを緩和することができるので、融点降下を抑制することできる。
上記工程における攪拌造粒方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、造粒ハンドブック(日本粉体工業技術協会編、オーム社)、経口投与製剤の処方設計(京都大学大学院薬学研究科教授橋田充編、薬業時報社)、粉体の圧縮成形技術(粉体工学・製剤と粒子設計部会編、日刊工業新聞社)、製剤機械技術ハンドブック(第2版、製剤機械技術研究会設立20周年記念出版編集委員会編、製剤機械技術研究会)のような刊行物に記載されている方法を用いることができる。
【0021】
上記攪拌造粒工程は、例えば、イブプロフェンと、必要に応じて賦形剤等の添加物(他の薬効成分を含まない)を攪拌造粒機に仕込み、そこに結合剤等を添加(例えば噴霧)して造粒することを含む。必要に応じて、得られた造粒物を、製剤一般に用いられる方法により、乾燥、整粒等を行ってもよい。
【0022】
本発明において、他の薬効成分は、上記イブプロフェン含有造粒物と別個に固形製剤に含ませるようにすればよいが、当該成分を含有する造粒物(イブプロフェンとは別群で造粒した造粒物)として含ませることが好ましい。
従い、本発明の固形製剤の製造方法は、他の薬効成分を造粒する工程を含み得る。
他の薬効成分の造粒方法としては、例えば、押し出し造粒、転動造粒、攪拌造粒、流動層造粒、噴霧乾燥造粒、破砕造粒、溶融造粒などの公知の方法を用いることができ、例えば、上記の造粒ハンドブックなどの刊行物に記載されている方法を用いることができる。必要に応じて、得られた造粒物を、製剤一般に用いられる方法により、乾燥、整粒等を行ってもよい。
【0023】
本発明の一実施態様において、他の薬効成分がアスコルビン酸又はその塩(例、アスコルビン酸カルシウム)であり、当該アスコルビン酸又はその塩は、上記した公知の方法を用いて、それ以外の他の薬効成分(例、グリチルリチン酸)、及びイブプロフェンとは別個の単独の群で造粒される。例えば、薬効成分として、イブプロフェン、アスコルビン酸カルシウム、及びグリチルリチン酸を含有する固形製剤の製造方法では、それぞれ別個の単独群として(3群に分けて)造粒するのが望ましい。
【0024】
さらに、本発明の固形製剤の製造方法は、(ii)フマル酸若しくはそのエステル又はそれらの塩(好ましくは、フマル酸、又はフマル酸ステアリルナトリウム)を配合する工程を含む。フマル酸、又はフマル酸ステアリルナトリウムは、必要に応じて、医薬品に通常使用される他の添加物とともに、上記イブプロフェン含有造粒物及び他の薬効成分(好ましくは当該成分含有造粒物)に配合(混合)される。
上記工程における配合方法は、特に限定されないが、上記の造粒ハンドブックなどの刊行物に記載されている方法を用いて、例えば、製剤一般に用いられる各種混合機(例えば、万能混合機、タンブラー混合機など)を用いて行うことができる。
なお、本発明の一実施態様において、上記(ii)フマル酸、又はフマル酸ステアリルナトリウムとともに、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどの流動化剤を配合することにより、杵付着の抑制効果をさらに強化することができる。
【0025】
上記の(i)イブプロフェンを他の薬効成分と別群で造粒(例えば、他の薬効成分がアスコルビン酸カルシウムを含む2種以上の場合、イブプロフェン、アスコルビン酸カルシウム、これら以外の薬効成分の3群に分けて造粒)する工程による固形製剤の大型化が懸念されたが、上記の(ii)フマル酸又はフマル酸ステアリルナトリウムの配合(添加剤の最適化)により改善することができる。
すなわち、(ii)フマル酸、又はフマル酸ステアリルナトリウムを配合することにより、杵付着などの外観不良の改善効果に加えて、イブプロフェンなど薬効成分の含量を高く保ちつつ、良好な服用性の観点から、固形製剤を望ましいサイズで製造することができる。
【0026】
本発明における固形製剤としては、例えば、錠剤(素錠、コーティング錠、フィルムコーティング錠、糖衣錠、薄層糖衣錠、口腔内崩壊錠、チュアブル錠などを含む)、カプセル剤(軟カプセル剤、硬カプセル剤などを含む)、顆粒剤、散剤、丸剤が挙げられ、好ましくは、錠剤が挙げられる。
本発明における固形製剤が錠剤である場合、上記造粒物を、必要により医薬品に通常使用される添加物とともに、上記の造粒ハンドブックなどの刊行物に記載されている方法を用いて、例えば、製剤一般に用いられる各種打錠機(例えば、ロータリー式打錠機など)を使用して打錠し、錠剤とすることができる。
また、本発明における固形製剤がカプセル剤である場合、上記造粒物と、必要により医薬品に通常使用される添加物とともに、カプセルに充填しカプセル剤としてもよい。
【0027】
本発明における固形製剤は、通常配合されるコーティング基剤を用いて常法によりコーティングされてもよい。例えば、錠剤を、コーティング基剤を用いてコーティングし、フィルムコーティング錠としてもよい。
コーティング基剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポビドン、コポリビドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール共重合体、マクロゴールなどの水溶性基剤、エチルセルロースなどの水不溶性基剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、メタクリル酸コポリマー、アクリル酸コポリマー、カルボキシビニルポリマーなどの腸溶性基剤、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタアクリレートコポリマー、ポリビニルアセタートジエチルアミノアセテートなどの胃溶性基剤、アラビアゴム、プルラン、カルナウバロウ、セラック、マクロゴール類、グリセリン脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウムなどが挙げられる。
また、本発明において、コーティング基剤は、1種であっても2種以上であってもよい。
さらに、コーティングにコーティング添加剤を用いてもよい。コーティング添加剤としては、例えば、遮光剤、流動化剤、着色剤、可塑剤などが挙げられる。
可塑剤としては、例えば、コポリビドン、ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、ヒマシ油、ポリソルベートなどが挙げられる。
【実施例
【0028】
以下に実施例及び試験例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
[実施例1]
イブプロフェン(BASF)、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ)、粉末還元麦芽糖水アメ(三菱商事フードテック)、トウモロコシデンプン(日本コーンスターチ)、クロスカルメロースナトリウム(明台化工)を攪拌造粒機に仕込み、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC、日本曹達)溶液を注液することにより造粒し、整粒機(パワーミル)にて湿式整粒し、流動層乾燥機にて乾燥した後に、整粒機(パワーミル)にて乾式整粒し、整粒末1を得た。
整粒末1の組成比は、イブプロフェン42.6%、結晶セルロース20.8%、粉末還元麦芽糖水アメ19.8%、トウモロコシデンプン9.5%、クロスカルメロースナトリウム3.5%、HPC3.9%であった。
また、アセトアミノフェン(Mallinckrodt)、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩(金剛化学)、グリチルリチン酸(アルプス薬品工業)、ジヒドロコデインリン酸塩(武田薬品工業)、dl-メチルエフェドリン塩酸塩(アルプス薬品工業)、無水カフェイン(BASF)、ヘスペリジン(アルプス薬品工業)、粉末還元麦芽糖水アメ、トウモロコシデンプン、結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウムを流動層造粒機に仕込み、HPC溶液を噴霧することにより、造粒及び乾燥した後、整粒機(パワーミル)にて整粒し、整粒末2を得た。
整粒末2の組成比は、アセトアミノフェン21.0%、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩0.4%、グリチルリチン酸4.5%、ジヒドロコデインリン酸塩2.8%、dl-メチルエフェドリン塩酸塩7.0%、無水カフェイン8.7%、ヘスペリジン10.5%、粉末還元麦芽糖水アメ16.8%、トウモロコシデンプン11.8%、結晶セルロース8.4%、クロスカルメロースナトリウム4.2%、HPC4.0%であった。
さらに、アスコルビン酸カルシウム(CSPC Weisheng)、トウモロコシデンプンを流動層造粒機に仕込み、酒石酸(昭和化工)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC、信越化学工業)溶液を噴霧することにより、造粒及び乾燥した後、整粒機(パワーミル)にて整粒し、整粒末3を得た。
整粒末3の組成比は、アスコルビン酸カルシウム95.0%、トウモロコシデンプン2.1%、酒石酸0.1%、HPMC2.8%であった。
得られた整粒末1:846g、整粒末2:858.6g、整粒末3:526.5g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業)126.9g、フマル酸ステアリルナトリウム(日生化学工業所)48g、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(富士化学工業)24gを混合し、打錠用混合末を得た。得られた打錠用混合末を素錠質量405mgになるようにロータリー式打錠機(AQU3、菊水製作所)にて打錠し、素錠を得た。
得られた素錠に、常法によりフィルムコーティングを施し、フィルムコーティング錠とした。
【0030】
[実施例2]
イブプロフェン(BASF)、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ)、粉末還元麦芽糖水アメ(三菱商事フードテック)、トウモロコシデンプン(日本コーンスターチ)、クロスカルメロースナトリウム(明台化工)を攪拌造粒機に仕込み、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC、日本曹達)溶液を注液することにより造粒し、整粒機(パワーミル)にて湿式整粒し、流動層乾燥機にて乾燥した後に、整粒機(パワーミル)にて乾式整粒し、整粒末1を得た。
整粒末1の組成比は、イブプロフェン42.6%、結晶セルロース20.8%、粉末還元麦芽糖水アメ19.8%、トウモロコシデンプン9.5%、クロスカルメロースナトリウム3.5%、HPC3.9%であった。
また、アセトアミノフェン(Mallinckrodt)、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩(金剛化学)、グリチルリチン酸(アルプス薬品工業)、ジヒドロコデインリン酸塩(武田薬品工業)、dl-メチルエフェドリン塩酸塩(アルプス薬品工業)、無水カフェイン(BASF)、ヘスペリジン(アルプス薬品工業)、粉末還元麦芽糖水アメ、トウモロコシデンプン、結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウムを流動層造粒機に仕込み、HPC溶液を噴霧することにより、造粒及び乾燥した後、整粒機(パワーミル)にて整粒し、整粒末2を得た。
整粒末2の組成比は、アセトアミノフェン21.0%、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩0.4%、グリチルリチン酸4.5%、ジヒドロコデインリン酸塩2.8%、dl-メチルエフェドリン塩酸塩7.0%、無水カフェイン8.7%、ヘスペリジン10.5%、粉末還元麦芽糖水アメ16.8%、トウモロコシデンプン11.8%、結晶セルロース8.4%、クロスカルメロースナトリウム4.2%、HPC4.0%であった。
さらに、アスコルビン酸カルシウム(CSPC Weisheng)、トウモロコシデンプンを流動層造粒機に仕込み、酒石酸(昭和化工)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC、信越化学工業)溶液を噴霧することにより、造粒及び乾燥した後、整粒機(パワーミル)にて整粒し、整粒末3を得た。
整粒末3の組成比は、アスコルビン酸カルシウム95.0%、トウモロコシデンプン2.1%、酒石酸0.1%、HPMC2.8%であった。
得られた整粒末1:846g、整粒末2:858.6g、整粒末3:526.5g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業)150.9g、フマル酸ステアリルナトリウム(日生化学工業所)48gを混合し、打錠用混合末を得た。得られた打錠用混合末を素錠質量405mgになるようにロータリー式打錠機(AQU3、菊水製作所)にて打錠し、素錠を得た。
得られた素錠に、常法によりフィルムコーティングを施し、フィルムコーティング錠とした。
【0031】
[実施例3]
イブプロフェン(BASF)、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ)、粉末還元麦芽糖水アメ(三菱商事フードテック)、トウモロコシデンプン(日本コーンスターチ)、クロスカルメロースナトリウム(明台化工)を攪拌造粒機に仕込み、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC、日本曹達)溶液を注液することにより造粒し、整粒機(パワーミル)にて湿式整粒し、流動層乾燥機にて乾燥した後に、整粒機(パワーミル)にて乾式整粒し、整粒末1を得た。
整粒末1の組成比は、イブプロフェン44.0%、結晶セルロース19.9%、粉末還元麦芽糖水アメ18.9%、トウモロコシデンプン9.4%、クロスカルメロースナトリウム4.0%、HPC3.7%であった。
また、アセトアミノフェン(Mallinckrodt)、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩(金剛化学)、グリチルリチン酸(アルプス薬品工業)、ジヒドロコデインリン酸塩(武田薬品工業)、dl-メチルエフェドリン塩酸塩(アルプス薬品工業)、無水カフェイン(BASF)、ヘスペリジン(アルプス薬品工業)、粉末還元麦芽糖水アメ、トウモロコシデンプン、結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウムを流動層造粒機に仕込み、HPC溶液を噴霧することにより、造粒及び乾燥した後、整粒機(パワーミル)にて整粒し、整粒末2を得た。
整粒末2の組成比は、アセトアミノフェン21.0%、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩0.4%、グリチルリチン酸4.5%、ジヒドロコデインリン酸塩2.8%、dl-メチルエフェドリン塩酸塩7.0%、無水カフェイン8.7%、ヘスペリジン10.5%、粉末還元麦芽糖水アメ16.8%、トウモロコシデンプン12.6%、結晶セルロース8.4%、クロスカルメロースナトリウム4.2%、HPC3.1%であった。
さらに、アスコルビン酸カルシウム(CSPC Weisheng)、トウモロコシデンプンを流動層造粒機に仕込み、酒石酸(昭和化工)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC、信越化学工業)溶液を噴霧することにより、造粒及び乾燥した後、整粒機(パワーミル)にて整粒し、整粒末3を得た。
整粒末3の組成比は、アスコルビン酸カルシウム95.0%、トウモロコシデンプン2.1%、酒石酸0.1%、HPMC2.8%であった。
得られた整粒末1:818g、整粒末2:858.5g、整粒末3:526.5g、クロスカルメロースナトリウム120g、フマル酸ステアリルナトリウム(日生化学工業所)48g、結晶セルロース47g、軽質無水ケイ酸(日本アエロジル)12gを混合し、打錠用混合末を得た。得られた打錠用混合末を素錠質量405mgになるようにロータリー式打錠機(AQU3、菊水製作所)にて打錠し、素錠を得た。
得られた素錠に、常法によりフィルムコーティングを施し、フィルムコーティング錠とした。
【0032】
[比較例1]
イブプロフェン(BASF)、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ)、粉末還元麦芽糖水アメ(三菱商事フードテック)、トウモロコシデンプン(日本コーンスターチ)、クロスカルメロースナトリウム(明台化工)を攪拌造粒機に仕込み、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC、日本曹達)溶液を注液することにより造粒し、整粒機(パワーミル)にて湿式整粒し、流動層乾燥機にて乾燥した後に、整粒機(パワーミル)にて乾式整粒し、整粒末1を得た。
整粒末1の組成比は、イブプロフェン42.6%、結晶セルロース20.8%、粉末還元麦芽糖水アメ19.8%、トウモロコシデンプン9.5%、クロスカルメロースナトリウム3.5%、HPC3.9%であった。
また、アセトアミノフェン(Mallinckrodt)、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩(金剛化学)、グリチルリチン酸(アルプス薬品工業)、ジヒドロコデインリン酸塩(武田薬品工業)、dl-メチルエフェドリン塩酸塩(アルプス薬品工業)、無水カフェイン(BASF)、ヘスペリジン(アルプス薬品工業)、粉末還元麦芽糖水アメ、トウモロコシデンプン、結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウムを流動層造粒機に仕込み、HPC溶液を噴霧することにより、造粒及び乾燥した後、整粒機(パワーミル)にて整粒し、整粒末2を得た。
整粒末2の組成比は、アセトアミノフェン21.0%、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩0.4%、グリチルリチン酸4.5%、ジヒドロコデインリン酸塩2.8%、dl-メチルエフェドリン塩酸塩7.0%、無水カフェイン8.7%、ヘスペリジン10.5%、粉末還元麦芽糖水アメ16.8%、トウモロコシデンプン11.8%、結晶セルロース8.4%、クロスカルメロースナトリウム4.2%、HPC4.0%であった。
さらに、アスコルビン酸カルシウム(CSPC Weisheng)、トウモロコシデンプンを流動層造粒機に仕込み、酒石酸(昭和化工)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC、信越化学工業)溶液を噴霧することにより、造粒及び乾燥した後、整粒機(パワーミル)にて整粒し、整粒末3を得た。
整粒末3の組成比は、アスコルビン酸カルシウム95.0%、トウモロコシデンプン2.1%、酒石酸0.1%、HPMC2.8%であった。
得られた整粒末1:846g、整粒末2:858.6g、整粒末3:526.5g、クロスカルメロースナトリウム120g、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(富士化学工業)54g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学工業)17g、結晶セルロース7.9gを混合し、打錠用混合末を得た。得られた打錠用混合末を素錠質量405mgになるようにロータリー式打錠機(AQU3、菊水製作所)にて打錠し、素錠を得た。
得られた素錠に、常法によりフィルムコーティングを施し、フィルムコーティング錠とした。
【0033】
[比較例2]
イブプロフェン(BASF)、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ)、粉末還元麦芽糖水アメ(三菱商事フードテック)、トウモロコシデンプン(日本コーンスターチ)、クロスカルメロースナトリウム(明台化工)を攪拌造粒機に仕込み、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC、日本曹達)溶液を注液することにより造粒し、整粒機(パワーミル)にて湿式整粒し、流動層乾燥機にて乾燥した後に、整粒機(パワーミル)にて乾式整粒し、整粒末1を得た。
整粒末1の組成比は、イブプロフェン42.6%、結晶セルロース20.8%、粉末還元麦芽糖水アメ19.8%、トウモロコシデンプン9.5%、クロスカルメロースナトリウム3.5%、HPC3.9%であった。
また、アセトアミノフェン(Mallinckrodt)、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩(金剛化学)、グリチルリチン酸(アルプス薬品工業)、ジヒドロコデインリン酸塩(武田薬品工業)、dl-メチルエフェドリン塩酸塩(アルプス薬品工業)、無水カフェイン(BASF)、ヘスペリジン(アルプス薬品工業)、粉末還元麦芽糖水アメ、トウモロコシデンプン、結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウムを流動層造粒機に仕込み、HPC溶液を噴霧することにより、造粒及び乾燥した後、整粒機(パワーミル)にて整粒し、整粒末2を得た。
整粒末2の組成比は、アセトアミノフェン21.0%、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩0.4%、グリチルリチン酸4.5%、ジヒドロコデインリン酸塩2.8%、dl-メチルエフェドリン塩酸塩7.0%、無水カフェイン8.7%、ヘスペリジン10.5%、粉末還元麦芽糖水アメ16.8%、トウモロコシデンプン11.8%、結晶セルロース8.4%、クロスカルメロースナトリウム4.2%、HPC4.0%であった。
さらに、アスコルビン酸カルシウム(CSPC Weisheng)、トウモロコシデンプンを流動層造粒機に仕込み、酒石酸(昭和化工)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC、信越化学工業)溶液を噴霧することにより、造粒及び乾燥した後、整粒機(パワーミル)にて整粒し、整粒末3を得た。
整粒末3の組成比は、アスコルビン酸カルシウム95.0%、トウモロコシデンプン2.1%、酒石酸0.1%、HPMC2.8%であった。
得られた整粒末1:846g、整粒末2:858.6g、整粒末3:526.5g、クロスカルメロースナトリウム120g、軽質無水ケイ酸(日本アエロジル)36g、結晶セルロース30.9g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学工業)12gを混合し、打錠用混合末を得た。得られた打錠用混合末を素錠質量405mgになるようにロータリー式打錠機(AQU3、菊水製作所)にて打錠し、素錠を得た。
得られた素錠に、常法によりフィルムコーティングを施し、フィルムコーティング錠とした。
【0034】
[比較例3]
アセトアミノフェン(Mallinckrodt)、イブプロフェン(BASF)、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩(金剛化学)、グリチルリチン酸(アルプス薬品工業)、ジヒドロコデインリン酸塩(武田薬品工業)、dl-メチルエフェドリン塩酸塩(アルプス薬品工業)、無水カフェイン(BASF)、ヘスペリジン(アルプス薬品工業)、粉末還元麦芽糖水アメ、トウモロコシデンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業)を流動層造粒機に仕込み、HPC溶液を噴霧することにより、造粒及び乾燥した後、整粒機(パワーミル)にて整粒し、整粒末1を得た。
整粒末1の組成比は、アセトアミノフェン11.5%、イブプロフェン23.1%、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩0.2%、グリチルリチン酸2.5%、ジヒドロコデインリン酸塩1.5%、dl-メチルエフェドリン塩酸塩3.8%、無水カフェイン4.8%、ヘスペリジン5.8%、粉末還元麦芽糖水アメ17.5%、トウモロコシデンプン17.5%、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース8.8%、HPC2.9%であった。
また、アスコルビン酸カルシウム(CSPC Weisheng)、トウモロコシデンプンを流動層造粒機に仕込み、酒石酸(昭和化工)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC、信越化学工業)溶液を噴霧することにより、造粒及び乾燥した後、整粒機(パワーミル)にて整粒し、整粒末2を得た。
整粒末2の組成比は、アスコルビン酸カルシウム95.0%、トウモロコシデンプン2.1%、酒石酸0.1%、HPMC2.8%であった。
得られた整粒末1:1559.3g、整粒末2:526.5g、結晶セルロース174.2g、クロスカルメロースナトリウム120g、フマル酸ステアリルナトリウム(日生化学工業所)48gを混合し、打錠用混合末を得た。得られた打錠用混合末を素錠質量405mgになるようにロータリー式打錠機(AQU3、菊水製作所)にて打錠し、素錠を得た。
得られた素錠に、常法によりフィルムコーティングを施し、フィルムコーティング錠とした。
【0035】
[比較例4]
イブプロフェン(BASF)、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ)、粉末還元麦芽糖水アメ(三菱商事フードテック)、トウモロコシデンプン(日本コーンスターチ)、クロスカルメロースナトリウム(明台化工)を攪拌造粒機に仕込み、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC、日本曹達)溶液を注液することにより造粒し、整粒機(パワーミル)にて湿式整粒し、流動層乾燥機にて乾燥した後に、整粒機(パワーミル)にて乾式整粒し、整粒末1を得た。
整粒末1の組成比は、イブプロフェン42.6%、結晶セルロース20.8%、粉末還元麦芽糖水アメ19.8%、トウモロコシデンプン9.5%、クロスカルメロースナトリウム3.5%、HPC3.9%であった。
また、アセトアミノフェン(Mallinckrodt)、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩(金剛化学)、グリチルリチン酸(アルプス薬品工業)、ジヒドロコデインリン酸塩(武田薬品工業)、dl-メチルエフェドリン塩酸塩(アルプス薬品工業)、無水カフェイン(BASF)、ヘスペリジン(アルプス薬品工業)、粉末還元麦芽糖水アメ、トウモロコシデンプン、結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウムを流動層造粒機に仕込み、HPC溶液を噴霧することにより、造粒及び乾燥した後、整粒機(パワーミル)にて整粒し、整粒末2を得た。
整粒末2の組成比は、アセトアミノフェン21.0%、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩0.4%、グリチルリチン酸4.5%、ジヒドロコデインリン酸塩2.8%、dl-メチルエフェドリン塩酸塩7.0%、無水カフェイン8.7%、ヘスペリジン10.5%、粉末還元麦芽糖水アメ16.8%、トウモロコシデンプン11.8%、結晶セルロース8.4%、クロスカルメロースナトリウム4.2%、HPC4.0%であった。
さらに、アスコルビン酸カルシウム(CSPC Weisheng)、トウモロコシデンプンを流動層造粒機に仕込み、酒石酸(昭和化工)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC、信越化学工業)溶液を噴霧することにより、造粒及び乾燥した後、整粒機(パワーミル)にて整粒し、整粒末3を得た。
整粒末3の組成比は、アスコルビン酸カルシウム95.0%、トウモロコシデンプン2.1%、酒石酸0.1%、HPMC2.8%であった。
得られた整粒末1:846g、整粒末2:858.6g、整粒末3:526.5g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業)150.9g、結晶セルロース31g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学工業)17gを混合し、打錠用混合末を得た。得られた打錠用混合末を素錠質量405mgになるようにロータリー式打錠機(AQU3、菊水製作所)にて打錠し、素錠を得た。
得られた素錠に、常法によりフィルムコーティングを施し、フィルムコーティング錠とした。
【0036】
[試験例]
実施例1~3、及び比較例1~4について、打錠操作における杵付着の有無を確認した結果を表1及び表2に示す。
実施例1~3では、何れも打錠開始120分後に杵付着は生じなかったのに対し(表1)、比較例1~4では、何れも杵付着が生じた(表2)。特に、比較例3では、打錠開始10分後に、比較例4では、打錠開始20分後に杵付着が生じた(表2)。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0039】
イブプロフェンを含む2種以上の薬効成分を含有する固形製剤において、(i)イブプロフェンを他の薬効成分とは別群で攪拌造粒し、(ii)フマル酸若しくはそのエステル又はそれらの塩を配合することにより、杵付着などの外観不良や、含量低下などの品質低下、さらには造粒物の流動性不良などが顕著に改善でき、且つ製造工程における生産性も高く維持できる。このような固形製剤は、外観不良を生じず、良好な品質や安定性を確保することができる。
図1