(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】回転機械
(51)【国際特許分類】
H02K 5/20 20060101AFI20231102BHJP
H02K 5/24 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
H02K5/20
H02K5/24 Z
(21)【出願番号】P 2022510274
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2020013734
(87)【国際公開番号】W WO2021192162
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】柴田 直道
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-007487(JP,A)
【文献】特開平03-239142(JP,A)
【文献】特開2016-176349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/20
H02K 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ軸と、
前記ロータ軸に接続されるコンプレッサ部と、
前記コンプレッサ部よりも前記コンプレッサ部に流れる空気の流れの上流側において前記ロータ軸に接続される回転子部と、
前記回転子部の外周部に対して間隔を空けて設けられる固定子部と、
前記固定子部と前記回転子部との間の間隔の前記空気の流れの上流側を覆い、前記間隔と前記間隔よりも前記空気の流れの上流側とを連通する開口部が形成され
、前記固定子部と前記回転子部との間の間隔の、前記空気の流れの上流側を覆う頭部と、前記固定子部のコイルを覆うステータハウジングの前記空気の上流側の端部に接続される底面部と、を有するカバー部と、
前記回転子部の前記空気の流れの上流側の端部に設けられ、前記空気の流れの上流側に向かうに従って、前記空気の流れ方向から見た場合の断面積が小さくなる蓋部と、を備え
、
前記カバー部と前記蓋部によって形成される流路によって、前記開口部から流入した前記空気が、前記固定子部と前記回転子部との間の間隔に流入される、
回転機械。
【請求項2】
前記固定子部の前記空気の流れの下流側の端部よりも下流側において、前記回転子部の外周部を取り囲むように間隔を空けて設けられる筒状部をさらに備え、
前記筒状部は、内周面に複数の凹部が形成されている、
請求項1
に記載の回転機械。
【請求項3】
前記凹部は、ハニカム形状である、
請求項
2に記載の回転機械。
【請求項4】
前記凹部は、溝形状である、
請求項
2に記載の回転機械。
【請求項5】
前記凹部は、円孔形状である、
請求項
2に記載の回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンへの吸入空気を圧縮して、エンジンへ供給する過給機が知られている。過給機は、ロータ軸(回転軸)およびロータ軸の両端に配置されたタービンとコンプレッサから構成される。エンジンからの排気ガスをタービンに供給し、タービンを駆動することで、タービンに接続されたロータ軸を回転させて、コンプレッサを回転させることで、圧縮空気をエンジンに供給する仕組みである。しかし、過給機の駆動には、エンジンからの排気ガスが必要となることから、エンジンの起動時や低速時には、過給機からの圧縮空気の供給量が不足する場合がある。
【0003】
そこで、エンジンからの排気ガスの有無に関係なく、過給機のロータ軸を回転させることが可能な、モータ(電動機)を備えた電動アシスト過給機が開発されている(例えば、特許文献1)。電動アシスト過給機を備えたエンジンでは、過給機を駆動する排気ガスが不足するエンジンの低負荷運転時にはモータにより、過給機を駆動し、排気ガスの不足による過給機の回転不足を補う。
【0004】
このような電動アシスト過給機は、コンプレッサとタービンの間にモータが配置されることがあるが、一次曲げモードの応答倍率の増加、タービンから排熱がモータに伝わることによるモータの効率の低下などの問題がある。その対策として、ロータ軸のコンプレッサ側の端部を延長した軸延長部にモータが取り付けられたモータオーバーハング構造が採用されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ロータ軸の軸延長部にモータを配置する構造においては、オーバーハング部の重量増加、オーバーハング部の長さの増加により、振動特性が悪化するおそれがある。
【0007】
本開示は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、ロータ軸の振動を抑制することが可能な回転機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成する為に、本開示に係る回転機械は、ロータ軸と、前記ロータ軸に接続されるコンプレッサ部と、前記コンプレッサ部よりも前記コンプレッサ部に流れる空気の流れの上流側において前記ロータ軸に接続される回転子部と、前記回転子部の外周部に対して間隔を空けて設けられる固定子部と、前記固定子部と前記回転子部との間の間隔の前記空気の流れの上流側を覆い、前記間隔と前記間隔よりも前記空気の流れの上流側とを連通する開口部が形成されるカバー部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、ロータ軸の振動を抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示に係る電動アシスト過給機を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本開示に係る振動減衰構造の第一実施形態を示す概略図である。
【
図3】
図3は、本開示に係る振動減衰構造の第二実施形態を示す概略図である。
【
図4】
図4は、本開示に係る振動減衰構造に使用される凹部形成部の模式図である。
【
図5】
図5は、本開示に係る凹部形成部に形成される凹部の形状の第一実施例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、本開示に係る凹部形成部に形成される凹部の形状の第二実施例を示す模式図である。
【
図7】
図7は、本開示に係る凹部形成部に形成される凹部の形状の第三実施例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
(電動アシスト過給機)
図1は、本開示に係る電動アシスト過給機を示す概略図である。
図1に示すように、回転機械としての電動アシスト過給機1は、コンプレッサハウジング10、タービンハウジング12と、コンプレッサ部20と、タービン部30と、ロータ軸40と、モータ部50と、を備える。
【0012】
(ハウジング)
コンプレッサハウジング10は、コンプレッサ部20と、ロータ軸40と、モータ部50とを内部の空間SP1に収納する筐体である。コンプレッサハウジング10には、空間SP1に連通する吸入空気導入路60と圧縮空気排出路62とが設けられる。吸入空気導入路60は、空間SP1内における空気Aの流れ方向の上流側に設けられ、圧縮空気排出路62は、空間SP1内における空気Aの流れ方向の下流側に設けられる。なお、コンプレッサハウジング10は、1つの部材で構成されることに限られず、複数のハウジングから構成されていてもよい。
【0013】
タービンハウジング12は、内部の空間SP2にタービン部30を収納する筐体である。タービンハウジング12は、コンプレッサハウジング10と接続されている。タービンハウジング12には、空間SP2に連通する排気ガス導入路70と排気ガス排出路72とが設けられる。排気ガス導入路70は、空間SP2内における排気ガスA1の流れ方向の上流側に設けられ、排気ガス排出路72は、空間SP2内における排気ガスA1の流れ方向の下流側に設けられる。
【0014】
吸入空気導入路60から導入された空気Aは、コンプレッサハウジング10の空間SP1内に導入され、コンプレッサ部20で圧縮され、圧縮空気排出路62を介して、エンジンに供給される。エンジンからの排気ガスA1は、排気ガス導入路70を介して、タービンハウジング12の空間SP2内に導入され、タービン部30の回転によりタービンを駆動する。タービンを駆動した後の排気ガスA1は排気ガス排出路72を介して排出される。
【0015】
(ロータ軸、コンプレッサ部)
ロータ軸40は、円柱形状の部材であり、コンプレッサハウジング10とタービンハウジング12の内部に設けられ、軸方向AXに沿って延在する。ロータ軸40は、基本部42と軸延長部44とに区分される。基本部42は、両端にコンプレッサ部20とタービン部30とが嵌め合う部分が形成される。基本部42のコンプレッサ部20が接続する箇所とタービン部30が接続する箇所との中間部分にラジアル軸受46、48が設けられる。ロータ軸40の基本部42のコンプレッサ部20が嵌め合う箇所の側の端部を、ロータ軸40に沿って延長した部分が、軸延長部44に当たる。コンプレッサ部20は、コンプレッサハウジング10の内部に設けられる。コンプレッサ部20は、ロータ軸40の基本部42の軸延長部44側の端部に取り付けられる。コンプレッサ部20は、ロータ軸40の外周部との接合部分に当たるコンプレッサホイールを備える。コンプレッサホイールは、コンプレッサホイールの外周部に複数のコンプレッサーブレードを備える。
【0016】
(モータ部)
図2は、本開示に係る振動減衰構造の第一実施形態を示す概略図である。
図1に示すように、モータ部50は、コンプレッサハウジング10の空間SP1内において、ロータ軸40の、コンプレッサ部20が設けられる箇所よりも空気Aの流れの上流側に設けられる。具体的には、モータ部50は、ロータ軸40をコンプレッサ部20の接続箇所から空気Aの上流側にさらに延長した軸延長部44に、設けられる。
図2に示すように、モータ部50は、ステータである固定子部52と、ロータである回転子部54とを備える。回転子部54は、軸延長部44に接続される。回転子部54は、ロータ軸40の軸延長部44の外周面に永久磁石を備える円柱形状の部材であってよい。固定子部52は、回転子部54の外周部に対して間隔56を空けた上で、回転子部54の外周部を取り囲むように設けられる。固定子部52は、鉄心に導線を巻き付けたコイル522と、コイル522を覆うステータハウジング524とを備える。導線の材料には銅、アルミニウムなどを用いることが出来る。固定子部52と回転子部54とを備えるモータ部50は、制御装置によって駆動される。制御装置は、インバータであってよい。制御装置は、固定子部52に交流電圧を負荷することで、磁界を発生させ、磁界と回転子部54の磁力が作用することによって、回転子部54にロータ軸40の周方向の力が発生し、回転子部54が接続されたロータ軸40が回転する。
【0017】
モータ部50が回転することによって、ロータ軸40に接続されたコンプレッサ部20が駆動され、エンジンが低回転の場合であっても、電動アシスト過給機1から十分な圧縮空気をエンジンに供給することができる。
【0018】
(タービン部)
タービン部30は、ロータ軸40の基本部42のコンプレッサ部20の接続部分の反対側の端部に接続される。タービン部30は、ロータ軸40の外周部との接合部分に当たるタービンホイールを備える。タービンホイールは、タービンホイールの外周部に複数のタービンブレードを備える。
【0019】
(第一実施形態の振動減衰構造)
図2に示すように、本開示に係る電動アシスト過給機1は、固定子部52のコンプレッサ部20を流れる空気Aの上流側にカバー部80を備える。カバー部80は、カバー部80の空気の上流側の端部に開口部82が形成されている。開口部82は、空間SP1内において、固定子部52と回転子部54との間の間隔56と、空間SP1における開口部82の空気Aの上流側の箇所とを連通する。
【0020】
カバー部80の具体的な形状について説明する。
図2に示す通り、本実施形態に係るカバー部80は、頭部802と、底面部804と、を有する。ステータハウジング524は、固定子部52の外周面を形成する筒状の部材である。すなわち、ステータハウジング524は、固定子部52のコイル522の外周部を覆う。頭部802は、固定子部52と回転子部54との間の間隔56に対して空気Aの流れの上流側に設けられている。頭部802は、固定子部52と回転子部54との間の間隔56の、空気Aの流れの上流側を覆う。頭部802は、空気Aの上流側に頂点を向いた円錐状の形状に形成されてよい。頭部802の円錐高さは空気抵抗の削減を考慮すると、円錐高さを大きくすることが望ましいが、円錐高さの増大に起因する重量増加などの弊害との衡平を考慮して決定する。なお、カバー部80の形状は、円錐形状に限定されるものではなく、水滴形状、ロケットのノーズコーン形状などの回転体に含まれる任意の流線型の形状であってよい。頭部802の底面側の端部である底面部804は、固定子部52のコイル522を覆うステータハウジング524の空気の上流側の端部に接続される。接合方法は、溶接、ロウ付けなどの溶融接合を用いてもよいし、ボルト、リベットなどを用いる機械接合を用いてもよい。また、固定子部52の内のコイル522を覆うステータハウジング524と一体の構造としてもよい。
【0021】
開口部82は、円錐状の形状の頭部802の場合は、頂点の位置に形成されて、固定子部52と回転子部54との間の間隔56と、空間SP1における開口部82の空気Aの上流側の箇所とを連通する。開口部82の形状は円孔であってよいが、三角形、四角形、五角形などの多角形などの任意の形状でよい。開口部82の大きさは、固定子部52と回転子部54との間の間隔56に、十分な空気を導入できるだけの大きさであって、かつ、エンジンへ供給する圧縮空気との衡平を考慮して大きさを決定する。また、開口部82の形成される位置も、頭部802の頂点に限られない。
【0022】
以上のように構成されるカバー部80とステータハウジング524は、間隔56の空気Aの流れにおける下流側の箇所を覆わず、開放している。その為、間隔56を通過した空気をコンプレッサで圧縮し、エンジンに供給することが出来る。
【0023】
支持部100は、固定子部52の外周部に形成される。支持部100は、固定子部52の外周部と吸入空気導入路60の内周部である吸入空気導入路内周部602とに接続し、固定子部52を支持する。支持部100は、固定子部52の外周部に複数設けられる。支持部100は、固定子部52の外周部にロータ軸40の周方向に等間隔に設けられることが好ましい。支持部100の断面形状は圧力損失を抑えた流線型の形状に形成されることが好ましい。
【0024】
(蓋部)
蓋部90は、コンプレッサハウジング10の内部であって、回転子部54の吸入空気導入路60側の端部に設けられる。蓋部90は、回転子部54の吸入空気導入路60側の端部の全面を覆う。蓋部90は、カバー部80の頭部802に対して平行に形成されることが好ましい。すなわち、カバー部80の頭部802が円錐形状に形成される場合は、蓋部90も、円錐形状に形成される。頭部802に対して平行に形成される蓋部90を、ロータ軸40の軸延長部44に接続される回転子部54の吸入空気導入路60側の端部に設けることによって、開口部82から流入した空気の圧力損失を抑制した上で、固定子部52と回転子部54との間の間隔56に導入することが出来る。したがって、蓋部90が設けられない場合と比較して間隔56の空気の圧力を高めることが出来ることから、回転子部54の剛性を高めることが出来る。その為、ロータ軸40に接続された回転子部54の振動を抑制することが出来る。
【0025】
ただし、蓋部90は円錐形状に形成されることに限られない。蓋部90の形状の他の例としては、蓋部90の軸方向AXに対する角度θ2を、カバー部80の頭部802の軸方向AXに対する角度θ1と比較して小さくすることで、カバー部80に形成される開口部82から流入する空気が通過する流路を、固定子部52と回転子部54との間隔56に向かうにしたがって先広がりの形状とする案が挙げられる。したがって、開口部82から流入した空気を、容易に固定子部52と回転子部54との間の間隔56に導入することが出来る。
【0026】
(カバー部の作用、および、効果)
吸入空気導入路60を介して、電動アシスト過給機1の内部に導入された空気Aは、吸入空気導入路60のロータ軸40に水平な部分を、ロータ軸40に水平に流れる。その空気Aの一部は、カバー部80に形成される開口部82を通過する。上流側からロータ軸40に水平に流れる空気Aは、開口部82を通過すると、固定子部52と回転子部54との間の間隔56に流入される。間隔56に導入された空気Aは、回転子部54の外周部にロータ軸40に対して垂直方向の流体力を負荷する。その為、回転子部54の外周部を覆うように空気Aの流れが形成されることから、回転子部54の外周部に対して空気を潤滑流体とする気体軸受が形成されているといえる。
【0027】
したがって、ロータ軸40の軸延長部44に接続された回転子部54の外周部に対して垂直方向の力が負荷されることから、ロータ軸40に接続された回転子部54に対して剛性が付加された状態となり、ロータ軸40の変位、すなわち、ロータ軸40の振動を抑制することが出来る。さらに、間隔56に導入された空気は粘性を有することから、固定子部52がロータ軸40に対して垂直方向に振動すると、粘性を有する空気Aのロータ軸40に水平な方向への流動、および、ロータ軸40に垂直な方向への圧縮によって振動エネルギーを消費し、振動を減衰させる効果を発揮する。
【0028】
したがって、開口部82を備えるカバー部80を備えることによって、回転子部54と固定子部52との間の間隔56に空気Aを導入することが出来ることから、ロータ軸40の端部にモータ部50を備える場合であっても、間隔56に導入された空気によって振動を抑制することができる。さらに、間隔56に導入された空気は、固定子部52を冷却することが出来ることから、モータの効率を向上させることが出来る。
【0029】
(第二実施形態の振動減衰構造)
図3は、本開示に係る振動減衰構造の第二実施形態を示す概略図である。
【0030】
第二実施形態は、第一実施形態に対して、凹部形成部110が追加された以外は、第一実施形態と共通する。第二実施形態の第一実施形態と共通する部分は説明を省略する。
【0031】
図3に示す通り、第二実施形態に係る振動減衰構造は、ステータハウジング524の内周部のコンプレッサ部20側の端部に、凹部形成部110が設けられる。すなわち、凹部形成部110は、ステータハウジング524の内周部に設けられるコイル522よりも、空気Aの流れの下流側に設けられる。凹部形成部110は、回転子部54の外周部を取り囲むように間隔56と同じ大きさの間隔を空けて設けられる。凹部形成部110は、複数の凹部が形成される。以下、凹部形成部110についてより詳細に説明する。
【0032】
(凹部形成部)
図4は、本開示に係る振動減衰構造に使用される凹部形成部を示す模式図である。
図4に示すように、本実施形態に係る凹部形成部110は、ステータハウジング524の内周部の内、コンプレッサ部20側の端部に設けられる。凹部形成部110は、回転子部54の外周部を取り囲むように形成される。凹部形成部110の内周部には、複数の凹部112が形成される。凹部112は、凹部形成部110の外周面に設けられるステータハウジング524までは貫通していない。言い換えれば、凹部112は、凹部形成部110の内周面から、径方向において内周面と外周面との間に位置する中間部分までにわたって形成されている。凹部112は、凹部形成部110の内周部の全面を覆うために十分な数が形成されることが好ましい。
【0033】
固定子部52の内周部と回転子部54の外周部との間の間隔56の吸入空気導入路60側の端部から、間隔56に導入された空気が、間隔56をロータ軸40に水平な方向に流れる。間隔56に導入された空気は、固定子部52の内周部のコンプレッサ部20側の端部に設けられる凹部形成部110に到達すると、空気の一部が凹部形成部110に形成される凹部112に流入することによって圧力損失が発生する。
【0034】
その為、固定子部52と回転子部54との間の間隔56に導入された空気の、間隔56のコンプレッサ部20側の端部からの流出を抑制することが出来る。その結果、凹部形成部110を設けない場合と比較して、間隔56の内部の空気の圧力が上昇することから、気体軸受部の負荷容量が増加し、軸受剛性が増加する。したがって、ロータ軸40に接続された回転子部54の振動を抑制することが出来る。
【0035】
(ハニカム形状)
図5は、本開示に係る凹部形成部に形成される凹部の形状の第一実施例を示す模式図である。
【0036】
図5に示すように、凹部形成部110に形成される複数の凹部112の形状の第一実施例は、ハニカム形状に形成される。ハニカム形状は、正六角形または正六角柱を隙間なく並べた構造である。正六角形は平面充填可能な図形の中で、最も周が短いことから、使用する部材の量を節減することが可能である。なお、凹部112のハニカム形状は、正六角形または正六角柱に限られず、例えば、三角形、四角形、五角形などの多角形の中から一つを選択し並べた構造であってもよい。また、三角形、四角形、五角形、六角形などを含む多角形の中から複数を選択し、それらを組み合わせて並べた構造であってもよい。
【0037】
凹部の形状をハニカム形状とすることで、凹部を密接に集積することが出来る。したがって、密接に集積されたハニカム形状の凹部112に、固定子部52の内周部と回転子部54の外周部との間の間隔56に導入された空気を容易に流入させることができる。凹部形成部110に形成された複数の凹部112によって圧力損失が発生し、固定子部52のコンプレッサ部20側の端部からの空気の流出を抑制することが出来る。その為、間隔56の内部の空気の圧力が上昇することから、気体軸受部の負荷容量が増加し、軸受剛性が増加する。ロータ軸40に接続された回転子部54の振動を抑制することが出来る。
【0038】
(溝形状)
図6は、本開示に係る凹部形成部に形成される凹部の形状の第二実施例を示す模式図である。
【0039】
図6に示すように、凹部形成部110に形成される複数の凹部112の第二実施例は、溝形状に形成される。溝形状に形成される凹部は、ロータ軸40に垂直な方向に対して、平行に複数形成されることが好ましい。溝形状の凹部はハニカム形状の凹部と比較すると製造コストを低減することが出来る。
【0040】
凹部112の形状を溝形状とすることで、凹部112に流入した空気によって、間隔56を通過する空気に圧力損失が発生する。その為、間隔56に導入された空気が、固定子部52のコンプレッサ部20側の端部から流出することを抑制することが出来る。その為、間隔56の内部の空気の圧力が上昇することから、気体軸受部の負荷容量が増加し、軸受剛性が増加する。ロータ軸40に接続された回転子部54の振動を抑制することが出来る。
【0041】
(円孔形状)
図7は、本開示に係る凹部形成部に形成される凹部の形状の第三実施例を示す模式図である。
【0042】
図7に示すように、凹部形成部110に形成される複数の凹部112の第三実施例は、円孔形状に形成される。円孔形状に形成される凹部112は、凹部形成部110の内周部の全面に複数形成されることが好ましい。
【0043】
凹部112の形状を円孔形状とすることで、凹部112に流入した空気によって、間隔56を通過する空気に圧力損失が発生する。その為、間隔56に導入された空気が、固定子部52と回転子部54との間の間隔56のコンプレッサ部20側の端部から流出することを抑制することが出来る。その為、間隔56の内部の空気の圧力が上昇することから、気体軸受部の負荷容量が増加し、軸受剛性が増加する。ロータ軸40に接続された回転子部54の振動を抑制することが出来る。
【0044】
(回転機械の構成と効果)
本開示に係る回転機械は、ロータ軸40と、ロータ軸40に接続されるコンプレッサ部20と、コンプレッサ部20よりもコンプレッサ部20に流れる空気の流れの上流側においてロータ軸40に接続される回転子部54と、回転子部54の外周部に対して間隔56を空けて設けられる固定子部52と、固定子部52と回転子部54との間の間隔56の空気の流れの上流側を覆い、間隔56と間隔56よりも空気の流れの上流側とを連通する開口部82が形成されるカバー部80と、を備える。
【0045】
この構成によれば、カバー部に形成される開口部から流入した空気が、固定子部と回転子部の間の間隔に導入されることから、回転子部に対して気体軸受が設けられた状態となり、ロータ軸に接続された回転子部の振動を抑制することが出来る。
【0046】
本開示に係る回転機械は、回転子部54の空気の流れの上流側の端部に設けられ、空気の流れの上流側に向かうに従って、空気の流れ方向から見た場合の断面積が小さくなる蓋部90をさらに備える。
【0047】
この構成によれば、カバー部に形成される開口部から流入した空気に対して、圧力損失を抑えて、固定子部と回転子部の間の間隔に導入することが出来る。その為、固定子部と回転子部の間の間隔に導入する空気の圧力を上昇させることが出来ることから、回転子部の剛性をさらに増加させ、ロータ軸に接続された回転子部の振動を抑制することが出来る。
【0048】
本開示に係る回転機械は、固定子部52の空気の流れの下流側の端部よりも下流側において、回転子部54の外周部を取り囲むように間隔を空けて設けられる凹部形成部110をさらに備え、凹部形成部110は、内周面に複数の凹部112が形成されている。
【0049】
この構成によれば、固定子部と回転子部との間の間隔に導入された空気が、凹部形成部に形成された凹部に流入し圧力損失が発生する。その為、固定子部と回転子部との間の間隔に導入された空気が、固定子部と回転子部との間の間隔のコンプレッサ部側の端部から流出を抑制することができることから、固定子部と回転子部との間の間隔に導入された空気の圧力が上昇する。その結果、回転子部の剛性をさらに増加させ、ロータ軸に接続された回転子部の振動を抑制することが出来る。
【0050】
本開示に係る回転機械が備える凹部形成部110に設けられる凹部は、ハニカム形状である。
【0051】
この構成によれば、固定子部の剛性をさらに増加させ、ロータ軸に接続された回転子部の振動を抑制することが出来る。
【0052】
本開示に係る回転機械が備える凹部形成部110に設けられる凹部は、溝形状である。
【0053】
この構成によれば、固定子部の剛性をさらに増加させ、ロータ軸に接続された回転子部の振動を抑制することが出来る。
【0054】
本開示に係る回転機械が備える凹部形成部110に設けられる凹部は、円孔形状である。
【0055】
この構成によれば、固定子部の剛性をさらに増加させ、ロータ軸に接続された回転子部の振動を抑制することが出来る。
【符号の説明】
【0056】
1 電動アシスト過給機
20 コンプレッサ部
30 タービン部
40 ロータ軸
52 固定子部
54 回転子部
80 カバー部
82 開口部
100 支持部