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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】粘着剤組成物及び粘着シート又はテープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/00 20060101AFI20231102BHJP
   C09J 123/28 20060101ALI20231102BHJP
   C09J 107/00 20060101ALI20231102BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20231102BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20231102BHJP
【FI】
C09J133/00
C09J123/28
C09J107/00
C09J11/08
C09J7/38
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023013065
(22)【出願日】2023-01-31
(62)【分割の表示】P 2022212379の分割
【原出願日】2022-12-28
【審査請求日】2023-01-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004020
【氏名又は名称】ニチバン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(74)【代理人】
【識別番号】100132137
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 智之
(72)【発明者】
【氏名】朝田 和孝
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-535463(JP,A)
【文献】特公昭48-023660(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系共重合体と粘着付与樹脂とを含む粘着剤組成物において、
塩素化ポリオレフィン及び天然ゴムを更に含み、
前記粘着剤組成物は、エネルギー線照射されたものである
ことを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
請求項1載の粘着剤組成物から形成された粘着層を有する粘着シート又はテープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物及び粘着シート又はテープに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック系材料(特に、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンを含有するポリオレフィン材料)は、金属系材料と比較して難接着性の被着体である。ここで、難被着体であるポリオレフィン材料に接着可能なアクリル系粘着剤として、粘着付与樹脂を添加する手法(例えば、特許文献1)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許6850182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高温特性と低温特性に優れた、難被着体であるポリオレフィン材料に接着可能な、(メタ)アクリル系共重合体を含むアクリル系粘着剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、(メタ)アクリル系共重合体とゴムと粘着付与樹脂とを含む粘着剤組成物において、塩素化ポリオレフィンを更に配合し、且つ、前記ゴムとして天然ゴムを選択することで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させたものである。具体的には下記の通りである。
本発明(1)は、(メタ)アクリル系共重合体と粘着付与樹脂とを含む粘着剤組成物において、塩素化ポリオレフィン及び天然ゴムを更に含むことを特徴とする粘着剤組成物である。
本発明(2)は、前記粘着剤組成物は、エネルギー線照射されたものである、前記発明(1)の粘着剤組成物である。
本発明(3)は、前記発明(1)又は(2)の粘着剤組成物から形成された粘着層を有する粘着シートである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、高温特性と低温特性に優れた、難被着体であるポリオレフィン材料に接着可能なアクリル系粘着剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本形態に係る粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系共重合体(A)、天然ゴム(B)、粘着付与樹脂(C)及び塩素化ポリオレフィン(D)を配合してなる、アクリル-ゴム混合粘着剤組成物である。以下、粘着剤組成物について詳述する。以下、粘着剤組成物(成分、組成、物性)、粘着剤組成物の製造方法、用途について詳述する。
【0008】
≪粘着剤組成物≫
<成分>
{(メタ)アクリル系共重合体(A)}
(モノマー成分)
(メタ)アクリル系重合体は、アルキル基の炭素数が2~18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体組成物を重合して得ることができる。ここで、(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数は、ポリオレフィン材料との接着性が向上するため、2~14であることが好適であり、4~12であることがより好適である。尚、該単量体組成物は、所望により官能基含有不飽和単量体や、(メタ)アクリル酸アルキルエステルや官能基含有不飽和単量体と共重合可能な不飽和単量体を含有していてもよい。また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、1種でも2種以上を併用してもよい。
【0009】
ここで、(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、典型的には下記式で示される化合物である。
【0010】
式:HC=CRCOOR
【0011】
ここで、式中、Rは、水素原子又はメチル基であり、R は、炭素数1~18の直鎖又は分岐状のアルキル基である。Rの具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、イソアミル基、n-ヘキシル基、n-へプチル基、オクチル基、2-エチルへキシル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
【0012】
該式で示される(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸へプチル、(メタ)アクリル酸 オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルへキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル 、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸3,3,5-トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸1-アダマンチル等が挙げられる。また、Tgが10~250℃である高Tgモノマー、例えば、メタクリル酸メチル(Tg:105℃)、アクリル酸シクロヘキシル(Tg:15℃)、メタクリル酸シクロヘキシル(Tg:66℃)、アクリル酸3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(Tg:52℃)、メタクリル酸ジシクロペンタニル(Tg:175℃)、アクリル酸ジシクロペンタニル(Tg:120℃)、アクリル酸ジシクロペンテニル(Tg:120℃)メタクリル酸イソボルニル(Tg:173℃)、アクリル酸イソボルニル(Tg:97℃)、メタクリル酸1-アダマンチル(Tg:250℃)、アクリル酸1-アダマンチル(Tg:153℃)等を用いてもよい。
【0013】
次に、前記官能基含有不飽和単量体としては、例えば、カルボキシル基含有不飽和単量体が挙げられる。ここで、カルボキシル基含有不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等の不飽和カルボン酸や、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノブチル、2-アクリロイルオキシエチルフタル酸等の不飽和ジカルボン酸モノエステルや、2-メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸、2-メタクリロイルオキシエチルピロメリット酸等の不飽和トリカルボン酸モノエステルや、カルボキシエチルアクリレート(β-カルボキシエチルアクリレート等)、カルボキシペンチルアクリレート等のカルボキシアルキルアクリレートや、アクリル酸ダイマー、アクリル酸トリマーや、無水イタコン酸、無水マレイン酸、無水フマル酸等の不飽和ジカルボン酸無水物等が挙げられる。更に、前記官能基含有不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の水酸基含有不飽和単量体や、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有不飽和単量体や、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル 酸t-ブチルアミノエチル等のアミノ基含有不飽和単量体や、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル等のグリシジル基含有不飽和単量体や、(メタ)アクリロニトリル等のシアノ基含有不飽和単量体や、N-シクロヘキシルマレイミド、N- イソプロピルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-フェニルマレイミド等のマレイミド基含有単量体や、N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド、N-ブチルイタコンイミド、N-オクチルイタコンイミド、N-2-エチルヘキシルイタコンイミド 、N-シクロヘキシルイタコンイミド、N-ラウリルイタコンイミド等のイタコンイミド基含有単量体や、N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシオクタメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド基含有単量体や、N-ビニルピロリドン、N-(1-メチルビニル)ピロリドン、N-ビニルピリジン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルオキサゾール、N-ビニルモルホリン、(メタ)アクリロイルモルホリン等のビニル基含有複素環化合物や、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、( メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有不飽和単量体や、2 -ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェイト等のリン酸基含有不飽和単量体や、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等の官能性単量体、その他N-ビニルカルボン酸アミド等が挙げられる。
【0014】
次に、前記不飽和単量体としては、例えば、酢酸ビニル等のビニルエステル基含有モノマーや、スチレン、ビニルトルエン等の芳香族不飽和モノマーや、シクロペンチルジ(メタ)アクリレート 、イソボルニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸脂環式炭化水素エステルモノマーや、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等のアルコキシ基含有不飽和モノマーや、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマーや、ビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマーや、塩化ビニル等のハロゲン原子含有不飽和モノマーや、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート等の複素環又はハロゲン原子を含有するアクリル酸エステル系モノマーや、多官能性モノマー{例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(モノ又はポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレートや、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(モノ又はポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートや、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステルジビニルベンゼン}等が挙げられる。
【0015】
(モノマー組成)
次に、単量体組成物における各モノマー成分の好適配合量を説明する。まず、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの配合割合は、単量体組成物の合計量100質量部に対して、60~99.5質量部が好適であり、70~99質量部であることがより好適である。また、前記官能基含有不飽和単量体の配合割合は、単量体組成物の合計量100重量部に対して、0.5~20重量部が好適であり、1~10重量部であることが好適である。官能基含有不飽和単量体の量が当該範囲内である場合、凝集力、高温特性、初期タック及び低温特性がより向上する。
【0016】
(重量平均分子量)
(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算値で、20万~150万であることが好ましく、30万~120万であることがより好ましく、65万~100万であることが更に好ましい。分子量が当該範囲内である場合、凝集力及び高温特性がより向上すると共に、工程上製造が容易になる。
【0017】
(プロセス)
(メタ)アクリル系共重合体は、上述した単量体組成物を共重合させることにより製造可能である。例えば、上述した単量体組成物を重合開始剤の存在下にてラジカル反応させる。ここで、上述した単量体組成物の重合方法は、従来公知の方法であり、例えば、溶液重合法(沸点重合法又は定温重合法)、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法等である。ここで、重合開始剤としては特に限定されず、有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。上記有機過酸化物としては、例えば、ジラウロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、及びt-ブチルパーオキシラウレート等が挙げられる。上記アゾ化合物として、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、及びアゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等が挙げられる。該重合開始剤は、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0018】
{天然ゴム(B)}
天然ゴムは、重量平均分子量{ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算での重量平均分子量}が10万~70万であるものが好適であり、25~70万であるものがより好適であり、30~65万であるものが更に好適である。重量平均分子量が当該範囲内であると、凝集力、高温特性及びアクリル系共重合体との相溶性がより優れるため好適である。該天然ゴムは、通常の天然ゴムを、例えば、公知手法にて、物理的分子切断や化学的分子切断することで製造可能である。
【0019】
{粘着付与樹脂(C)}
粘着付与樹脂としては、特に限定されず、例えば、脂肪族系共重合体、芳香族系共重合体、脂肪族・芳香族系共重合体及び脂環式系共重合体等の石油系樹脂や、クマロン-インデン系樹脂や、テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂や、不均化ロジン、ロジンエステル、マレイン酸変性ロジン、重合ロジン等のロジン系樹脂や、フェノール系樹脂や、キシレン系樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂は、水素添加された樹脂であってもよい。また、粘着付与樹脂は、単独でも複数を併用してもよい。ここで、少なくとも1種類の粘着付与樹脂の軟化点は、100℃以上であることが好適であり、130℃以上であることがより好適であり、150℃以上であることが更に好適であり、170℃以下であることが特に好適である。軟化点が当該範囲内にある場合、凝集力、高温特性、初期タック、低温特性により優れた結果となる。また、粘着付与樹脂は、単独で用いるよりも軟化点が異なる複数を併用して使用する方が好ましい。
【0020】
{塩素化ポリオレフィン(D)}
塩素化ポリオレフィンとしては、ポリオレフィン材料との接着力の観点から、塩素含有率が10~50質量%であるポリオレフィンが好適であり、塩素含有率が15~30質量%が更に好適である。例えば、それぞれの塩素含有率が上記範囲である、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・ブテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピレン・ブテンの共重合体、環状ポリオレフィン等が挙げられる。また、塩素化ポリオレフィンは、カルボン酸等の酸成分をブロック重合又はグラフト重合することにより、酸性官能基で変性されたものであってもよい。変性に使用される酸成分としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボン酸又はその無水物が挙げられる。アクリル系共重合体との相溶性の観点やポリオレフィン材料との接着性の観点から、変性されたものを用いると好適である。また、塩素化ポリオレフィンの重量平均分子量は、5千~30万であることが好適である。
【0021】
{他の成分}
本形態に係るアクリル―ゴム混合系粘着剤は、必要に応じて、充てん剤、酸化防止剤又は紫外線吸収剤、軟化剤、オイル、表面調整剤、架橋剤等の公知の添加剤を含有していてもよい。また、ゴム成分として、天然ゴム以外に合成ゴムを含有していてもよい。合成ゴムとしては、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレン、或いは、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ニトリルゴム、シリコーンゴム、もしくは、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体等の熱可塑エラストマーも使用することができる。
【0022】
<配合>
本形態に係るアクリル―ゴム混合系粘着剤における、各種必須成分{(メタ)アクリル系共重合体(A)、天然ゴム(B)、粘着付与剤(C)、塩素化ポリオレフィン(D)}の配合比を説明する。
【0023】
(B/A)
(メタ)アクリル系共重合体に対する、天然ゴム(B)の質量比(B/A)は、10/90~90/10であることが好適であり、20/80~60/40がより好適であり、25/75~50/50が更に好適である。
【0024】
(C/A+B)
(メタ)アクリル系共重合体(A)と天然ゴム(B)との合計質量に対する、粘着付与剤(C)の質量比(C/A+B)は、0.2~1.5であることが好適であり、0.3~1.2がより好適であり、0.5~1.0が更に好適である。
【0025】
(D/A+B)
(メタ)アクリル系共重合体(A)と天然ゴム(B)との合計質量に対する、塩素化ポリオレフィン(D)の質量比(D/A+B)は、0.002~0.15 であることが好適であり、0.005~0.1がより好適であり、0.01~0.05が更に好適である。
【0026】
<物性>
本形態に係るアクリル―ゴム混合粘着剤における物性を説明する。
【0027】
(15℃粘着力)
本形態に係るアクリル―ゴム混合粘着剤の15℃粘着力は、8N/10mm以上が好適であり、10N/10mm以上がより好適である。ここで、該粘着力は下記方法にて測定された値である。
[粘着力測定法]
自動車用PP材料(ホモポリプロピレンとエチレンプロピレン共重合体等からなる複合材料)の表面をイソプロパノール(以下IPA)で十分に洗浄する。15℃雰囲気下で、剥離ライナーを剥がした両面粘着テープ(10mm幅×70mm長)を自動車用PP材料表面へ貼りつけ、貼付した両面テープの反対面の剥離ライナーを剥がす。露出した粘着面にPETフィルム(厚さ25μm、12mm幅×90mm)を裏打ちし、2kgのゴムロールで1往復圧着する。15℃雰囲気下で12時間放置したのち、テープの端部を剥がし、引張試験機を使用してテープを180°方向に引張速度50mm/minで剥離をし、15℃雰囲気下で剥離時の粘着力(N/10mm)を測定する。なお、粘着力は積分平均値を測定値とする。
【0028】
(23℃粘着力)
本形態に係るアクリル―ゴム混合粘着剤の23℃粘着力は、8N/10mm以上が好適であり、10N/10mm以上がより好適である。尚、該粘着力の測定は、貼りつけ及び放置及び測定時の雰囲気温度を23℃、貼りつけ後の放置時間を24時間とした以外は、上記[粘着力測定]に記した試験方法と同様である。
【0029】
(80℃粘着力)
本形態に係るアクリル―ゴム混合粘着剤の80℃粘着力は、2N/10mm以上が好適であり、4N/10mm以上がより好適である。尚、該粘着力の測定は、貼りつけ及び放置時の雰囲気温度を23℃、貼りつけ後の放置時間を24時間とし、測定時の雰囲気温度を80℃とした以外は、上記[粘着力測定]に記した試験方法と同様である。
【0030】
(80℃せん断力)
本形態に係るアクリル―ゴム混合系粘着剤の80℃せん断力は、0.10MPa以上が好適であり、0.15MPa以上がより好適である。ここで、該せん断力は下記方法にて測定された値である。
[せん断力測定]
自動車用PP材料を27mm幅×100mm長に調整し2枚用意し、自動車用PP材料の表面をIPAで十分に洗浄する。23℃雰囲気下で、剥離ライナーを剥がした両面粘着テープ(25mm×25mm)を自動車用PP材料の長さ方向の端部へ用意した両面テープがはみ出さないように貼りつけ、貼付した両面テープの反対面の剥離ライナーを剥がす。露出した粘着面に、もう一方の自動車用PP材料を同様に貼りつけ、5kgのゴムロールで1往復圧着する。23℃雰囲気下で24時間放置したのち、引張試験機を使用して固定治具間の距離を130mmとし、引張速度50mm/minで引っ張り、試験体が破断するまでの最大荷重(N)を80℃雰囲気下で測定する。なお、得られた最大荷重(N)は、単位面積当たりのせん断力(MPa)に比例換算する。
【0031】
≪アクリル―ゴム混合粘着剤の製造方法≫
本形態に係るアクリル―ゴム混合系粘着剤は、周知手法にて、(メタ)アクリル系共重合体(A)、天然ゴム(B)、粘着付与樹脂(C)及び塩素化ポリオレフィン(D)を混合することにより製造し得る。例えば、アクリル―ゴム混合粘着剤が適用されたテープの製造方法の一例を説明する。まず、(メタ)アクリル系重合体(A)、天然ゴム(B)、粘着付与樹脂(C)、塩素化ポリオレフィン(D)及びその他添加剤等を溶剤に加え、均一になるまで混合撹拌し、粘着剤の溶液を作製する。この粘着剤の溶液をシリコーン処理した剥離ライナーの表面に塗布し、溶液中の溶剤を乾燥除去させ粘着層を形成する。次に、前記粘着層表面に、発泡ポリオレフィンを貼り合わせる。再度、前記粘着層表面に、粘着層と貼り合わせた発泡ポリオレフィンの反対面を貼り合わせることによって、両面粘着テープを製造する。なお、製造した両面粘着テープは、ラミネーターを通して圧力をかけ、粘着層と発泡ポリオレフィンの密着性を向上させてもよい。
【0032】
ここで、本形態に係るアクリル―ゴム混合粘着剤を調製する際、エネルギー線照射することが好適である。ここで、「エネルギー線」とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味する。例えば、紫外線、放射線、電子線等が挙げられる。ここで、紫外線は、例えば、無電極ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、UV-LED等の紫外線源を用いることで照射できる。電子線は、例えば、電子線加速器等により発生させたものである。ここで、エネルギー線の内、電子線が好ましい。電子線照射の場合、照射線量としては、1~500kGyが好適であり、5~350kGyがより好適であり、10~200kGyが更に好適である。
【0033】
≪用途≫
本形態に係るアクリル―ゴム混合粘着剤は、例えば、該粘着剤が適用された製品(例えば、テープ、シート)の形態で使用し得る。該アクリル―ゴム混合粘着剤は、難接着性であるポリオレフィン材料に対しても優れた密着性を有しており、且つ、過酷な環境においても優れた接着耐久性を有する。そのため、例えば、自動車、航空機、船舶、電子機器類、電子機器筐体、家電製品、インフラ系構造物、ライフライン建材、一般建材等の様々な分野にて利用することができる。特に好適な被着体は、自動車外装用粘着シート、自動車内装用粘着シート等の自動車車両用粘着シート、ポリオレフィン素材の部材やフィルム固定用の粘着シートである。また、粘着シートや粘着テープ等の支持体は、特に限定されず、例えば、発泡ポリオレフィンを挙げることができる。また、該支持体は、単一の基材でも複数の基材を組み合わせたものでもよい。加えて、粘着シートや粘着テープは、片面に粘着剤を有するものでも両面に粘着剤を有するものでもよい。
【実施例
【0034】
以下、実施例を参照しながら、本発明を具体的に説明する。尚、本発明は実施例に何ら限定されるものではない。
【0035】
≪(メタ)アクリル系共重合体の重合≫
2-エチルヘキシルアクリレート76重量部、n-ブチルアクリレート20重量部、アクリル酸4重量部、酢酸エチル100重量部からなる混合溶液を攪拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えたフラスコに仕込み、内部を窒素置換しながら、80℃ に昇温し、ラウロイルパーオキサイド0.5重量部を酢酸エチル10重量部に溶解したものを滴下し、8時間加熱して50%のアクリルポリマーA-2を得た。当該重合体は、ガラス転移温度T g が-63.0 ℃ であり、重量平均分子量は、74万であった。上記記載の方法に従って、下記に示すTgとなるように組成を調製し、アクリルポリマーA-1、A-3を重合し、当該粘着テープのアクリル系共重合体として用いた。なお、ポリマーのガラス転移温度Tgは、個々の成分(重量分率)のホモポリマーのガラス転移温度( ℃ )(文献値) により、下記式により計算した。
1 / Tg = W1/Tg1+W2/Tg2+・・・
Tg:共重合体のガラス転移温度
Tg1:共重合体を構成するモノマーTg1のホモポリマーのガラス転移温度(文献値)
W1:共重合体を構成するモノマーTg1の重量分率
Tg2:共重合体を構成するモノマーTg2のホモポリマーのガラス転移温度(文献値)
W2:共重合体を構成するモノマーTg2の重量分率
【0036】
≪天然ゴムの分子量調整≫
天然ゴム(ペールクレープNO.1)をラボプラストミル(型式4C150、東洋精機製作所)の小型ミキサー(容量60cc、羽根形状シグマ型)へ45g投入し、回転数40rpm、加熱温度135℃の条件で、30分間高温素練りを行い、重量平均分子量38万(重量平均分子量/数平均分子量=2.6)の天然ゴムB-1を得た。上記方法に従って加熱温度のみを変更し、高温素練りを行って、天然ゴムB-2及び天然ゴムB-3を得た。なお、天然ゴムB-2調整時の加熱温度は120℃であり、天然ゴムB―3調整時の加熱温度は180℃である。
【0037】
≪粘着剤組成物の調製≫
表1~表3の組成に従い、各種原料を所定量のトルエン溶媒中に添加して混合溶解し、固形分濃度40%に調整した後、剥離ライナーに塗布して100℃で5分乾燥し、厚さ60μmの粘着層を形成した。続いて、両面にコロナ処理をした発泡ポリオレフィン(商品名:ボラーラ XL―P#08007、積水化学株式会社)と粘着層を貼り合わせて両面粘着テープを作製した。その後、窒素雰囲気下でEB照射(加速電圧150kV、照射線量60kGy又は80kGy)をし、実施例及び比較例に係る試験テープを得た。ここで、原料は下記の通りである。
【0038】
アクリルポリマーA-1:重量平均分子量74万(重量平均分子量/数平均分子量=3.8)、Tg-55.2℃
アクリルポリマーA-2: 重量平均分子量74万(重量平均分子量/数平均分子量=15.3)、Tg-63.0℃
アクリルポリマーA-3: 重量平均分子量60万(重量平均分子量/数平均分子量=3.7)、Tg-55.2℃
天然ゴムB-1 :重量平均分子量38万(重量平均分子量/数平均分子量=2.6)
天然ゴムB -2:重量平均分子量61万(重量平均分子量/数平均分子量=3.6)
天然ゴムB-3 :重量平均分子量35万(重量平均分子量/数平均分子量=3.3)
合成ゴムb-1 : クロロプレンゴム (スカイプレン 580、東ソー株式会社)
合成ゴムb-2 : SEBS( クレイトンG1657MS、クレイトンコーポレーション)
合成ゴムb-3:SBS(クレイトンD1102、クレイトンコーポレーション)
粘着付与樹脂C-1:重合ロジンエステル(ペンセルD160、荒川化学工業株式会社)(軟化点150-165℃)
粘着付与樹脂C-2:重合ロジンエステル(ペンセルD135、荒川化学工業株式会社)(軟化点130-140℃)
粘着付与樹脂C-3:重合ロジンエステル(ペンセルD125、荒川化学工業株式会社)(軟化点120-130℃)
粘着付与樹脂C-4:テルペンフェノール樹脂(YSポリスターU130、ヤスハラケミカル株式会社)(軟化点130±5℃)
粘着付与樹脂C-5:テルペン樹脂(YSレジンPX1150N、ヤスハラケミカル株式会社)(軟化点115±5℃)
塩素化ポリオレフィンD-1:酸変性塩素化ポリオレフィン(スーパークロン3228S、日本製紙株式会社)(塩素含有率 28質量%)
塩素化ポリオレフィンD-2:酸変性塩素化ポリオレフィン(スーパークロン930S、日本製紙株式会社)(塩素含有率 21質量%)
【0039】
≪評価≫
実施例及び比較例に係るテープに関し、15℃粘着力、23℃粘着力、80℃粘着力及び80℃せん断力について評価した。表1~表3に結果を示す。なお、各欄に記載した破壊モードは、視覚的に観察される試験後の試料の状態を示す。「支持体」は発泡ポリオレフィンの破壊であって、すなわち、粘着層は依然として自動車用PP材料に接着している状態である。「凝集」は粘着剤の凝集破壊を意味し、粘着層が破壊されており、すなわち、破壊された粘着層で自動車用PP材料と発泡ポリオレフィンが分離された状態である。「界面」は粘着層が自動車用PP材料表面から剥離していることを意味し、すなわち、被着体表面に粘着剤は残留していない状態である。なお、破壊モードの併記がある場合は、両者が入り乱れた破壊モードであったことを示す。ここで、実施例及び比較例の総合判定基準は下記の通りである。
<総合判定基準>
A:23℃粘着力10N以上、80℃粘着力4N以上、80℃せん断力 0.15MPa以上、15℃粘着力10N以上
B:23℃粘着力8N以上、80℃粘着力2N以上、80℃せん断力 0.10MPa以上、 15℃粘着力8N以上
C:15℃粘着力8N未満
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】

【要約】
【課題】 高温特性と低温特性に優れた、難被着体であるポリオレフィン材料に接着可能なアクリル-ゴム混合粘着剤を提供することである。
【解決手段】 (メタ)アクリル系共重合体と天然ゴムと粘着付与樹脂と塩素化ポリオレフィンとを含有する粘着剤組成物である。
【選択図】 なし