(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】マイクロ波処理装置
(51)【国際特許分類】
F24C 7/02 20060101AFI20231106BHJP
H05B 6/72 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
F24C7/02 531B
H05B6/72 C
(21)【出願番号】P 2019568273
(86)(22)【出願日】2019-05-15
(86)【国際出願番号】 JP2019019202
(87)【国際公開番号】W WO2019225413
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-04-01
(31)【優先権主張番号】P 2018096705
(32)【優先日】2018-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】大森 義治
(72)【発明者】
【氏名】福井 幹男
(72)【発明者】
【氏名】細川 大介
【審査官】宮部 菜苗
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-286457(JP,A)
【文献】特開2004-108697(JP,A)
【文献】特開昭52-020453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 7/02
H05B 6/64、6/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を収容するように構成された加熱室と、
マイクロ波を発生するように構成された発振部と、
前記加熱室の壁面に対向する平面を形成するように、前記壁面から所定の距離を隔てて前記加熱室内に配置されたヒータと、
前記加熱室内に配置され、前記ヒータと前記壁面との間の空間を前記マイクロ波が伝播するように、前記ヒータと前記壁面との間の前記空間に前記マイクロ波を放射するように構成された放射部と、を備
え、
前記放射部が、前記壁面に垂直なループ平面を有するループアンテナであり、前記ループアンテナが、前記ループ平面と対向する前記加熱室の二つの壁面の中間に位置し、前記ループ平面の中心が、前記ヒータと前記壁面との間の前記空間に位置し、前記放射部により放射された前記マイクロ波が、前記ループ平面を含み前記ループ平面に垂直に延在するアンテナ投影空間を伝播する、マイクロ波処理装置。
【請求項2】
前記壁面と前記壁面から最も離れた前記放射部の部分との距離が、前記壁面と前記壁面から最も離れた前記ヒータの部分との距離の2倍以下である、請求項
1に記載のマイクロ波処理装置。
【請求項3】
前記ヒータが、前記アンテナ投影空間を複数個所で横切る、請求項
1に記載のマイクロ波処理装置。
【請求項4】
前記アンテナ投影空間が、前記ループ平面から前記ループ平面に垂直な二つの方向に延在する、請求項
1に記載のマイクロ波処理装置。
【請求項5】
前記加熱室が、前記ヒータを保持する保持具を有し、前記保持具が前記アンテナ投影空間の外に配置された、請求項
1に記載のマイクロ波処理装置。
【請求項6】
前記加熱室が、前記ヒータと外部電源とを接続する引き出し部を有し、前記引き出し部が前記アンテナ投影空間の外に配置された、請求項
1に記載のマイクロ波処理装置。
【請求項7】
前記発振部に接続され、前記マイクロ波を前記放射部に伝送するように構成された伝送部をさらに有し、前記ループアンテナの一端が、前記壁面に設けられた接続部を介して前記伝送部に接続され、前記ループアンテナの他端が、前記接続部から前記マイクロ波の波長の4分の1以内の距離だけ離れた接地部で前記壁面に接続された、請求項
1に記載のマイクロ波処理装置。
【請求項8】
前記放射部が、前記壁面と平行に配置されたループ辺を有する、請求項
1に記載のマイクロ波処理装置。
【請求項9】
前記放射部が複数のループアンテナを含み、前記複数のループアンテナのそれぞれの前記アンテナ投影空間が前記加熱室内で重ならない、請求項
1に記載のマイクロ波処理装置。
【請求項10】
前記壁面が前記加熱室の天井である、請求項1に記載のマイクロ波処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヒータを備えたマイクロ波処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、従来のマイクロ波処理装置100の構成を示す概略図である。
図6は、従来のマイクロ波処理装置100における加熱室105の天井105aを示す平面図である。
図5、
図6に示すように、マイクロ波処理装置100には、マイクロ波を放射する放射領域101とヒータ102の設置領域とが区分けされて設けられる。
【0003】
放射領域101は、天井105aの大部分を占めるように配置される。ヒータ102は、放射領域101から離れて放射領域101を取り囲むように、天井105aにおける限られた範囲に配置される。放射領域101内には、回転アンテナなどの放射部104が配置される。発振部103は、マイクロ波を発生させ、放射部104に供給する。この構成により、マイクロ波を加熱室105全体に放射する。
【0004】
このようなマイクロ波処理装置の中には、発熱体を回転アンテナよりも低い位置に配置したり、回転アンテナの指向性の強い端部を発熱体よりも高い位置で停止させたりするものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に記載のマイクロ波処理装置は、周囲のシーズヒータが邪魔になりにくい向きに回転アンテナを停止させてマイクロ波を放射することにより、狙い通りの加熱分布を達成しようとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【0007】
しかしながら、上記従来の構成では、加熱室内に収容された様々な形状、種類、量の被加熱物を所望の状態に加熱することが難しい。
【0008】
すなわち、十分なマイクロ波の放射領域を確保すると、ヒータの設置領域が限定される。この場合、ヒータによる十分な加熱性能が得られない。一方、十分なヒータの設置領域を確保すると、マイクロ波の放射領域が制限される。この場合、被加熱物が広範囲に置かれると、加熱効率が低下したり加熱むらが生じたりして、マイクロ波による十分な加熱性能が得られない。
【0009】
ヒータによる加熱性能を確保するためには、小型のアンテナを用いて、ヒータの設置領域を広く取ることが望ましい。マイクロ波による加熱性能を確保するためには、広範囲にマイクロ波を放射できるように、アンテナなどが配置される放射領域を広く取ることが望ましい。すなわち、ヒータによる加熱性能とマイクロ波による加熱性能とを同時に確保するには、相反する問題を解決する必要がある。
【0010】
本開示は、ヒータによる加熱性能とマイクロ波による加熱性能とを両立させることで、様々な形状、種類、量の被加熱物を望み通りに加熱することができるマイクロ波処理装置を提供することを目的とする。
【0011】
本開示の一態様のマイクロ波処理装置は、被加熱物を収容する加熱室と、マイクロ波を発生する発振部と、放射部と、ヒータとを備える。ヒータは、加熱室の壁面に対向する平面を形成するように、上記壁面から所定の距離を隔てて加熱室内に配置される。放射部は、加熱室内に配置され、ヒータと上記壁面との間の空間をマイクロ波が伝播するように、ヒータと上記壁面との間の空間にマイクロ波を放射する。
【0012】
本態様によれば、ヒータにより形成された平面と加熱室の壁面との間の空間を導波路として使用することができる。これにより、小型のアンテナを用いてヒータの設置領域を広く取ることができるとともに、マイクロ波の放射領域を広げることができる。その結果、ヒータによる加熱性能とマイクロ波による加熱性能とを両立させて、被加熱物を望み通りに加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本開示の実施の形態1に係るマイクロ波処理装置の構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係るマイクロ波処理装置における加熱室の天井の平面図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1に係るマイクロ波処理装置の、
図1に示す4-4線に沿った断面図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施の形態2に係るマイクロ波処理装置の放射部の拡大図である。
【
図5】
図5は、従来のマイクロ波処理装置の構成を示す概略図である。
【
図6】
図6は、従来のマイクロ波処理装置における加熱室の天井の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の第1の態様のマイクロ波処理装置は、被加熱物を収容する加熱室と、マイクロ波を発生する発振部と、放射部と、ヒータとを備える。ヒータは、加熱室の壁面に対向する平面を形成するように、上記壁面から所定の距離を隔てて加熱室内に配置される。放射部は、加熱室内に配置され、ヒータと上記壁面との間の空間をマイクロ波が伝播するように、ヒータと上記壁面との間の空間にマイクロ波を放射する。
【0015】
本開示の第2の態様のマイクロ波処理装置では、第1の態様に加えて、放射部は、壁面に垂直なループ平面を有するループアンテナである。ループ平面の中心は、ヒータと上記壁面との間の空間に位置する。放射部により放射されたマイクロ波は、ループ平面を含みループ平面に垂直に延在するアンテナ投影空間を伝播する。
【0016】
本開示の第3の態様のマイクロ波処理装置では、第2の態様に加えて、上記壁面と上記壁面から最も離れた放射部の部分との距離が、上記壁面と上記壁面から最も離れたヒータの部分との距離の2倍以下である。
【0017】
本開示の第4の態様のマイクロ波処理装置では、第2の態様に加えて、ヒータは、アンテナ投影空間を複数個所で横切る。
【0018】
本開示の第5の態様のマイクロ波処理装置では、第2の態様に加えて、アンテナ投影空間は、ループ平面からループ平面に垂直な二つの方向に延在する。
【0019】
本開示の第6の態様のマイクロ波処理装置では、第2の態様に加えて、加熱室は、ヒータを保持する保持具を有する。保持具はアンテナ投影空間の外に配置される。
【0020】
本開示の第7の態様のマイクロ波処理装置では、第2の態様に加えて、加熱室は、ヒータと外部電源とを接続する引き出し部を有する。引き出し部はアンテナ投影空間の外に配置される。
【0021】
本開示の第8の態様のマイクロ波処理装置では、第2の態様に加えて、放射部は、加熱室の対向する二つの壁面の中間に配置される。
【0022】
本開示の第9の態様のマイクロ波処理装置では、第2の態様に加えて、ループアンテナの一端は、加熱室の壁面に設けられた接続部を介して伝送部に接続される。ループアンテナの他端は、接続部からマイクロ波の波長の4分の1以内の距離だけ離れた接地部で上記壁面に接続される。
【0023】
本開示の第10の態様のマイクロ波処理装置では、第2の態様に加えて、放射部は、壁面と平行に配置されたループ辺を有する。
【0024】
本開示の第11の態様のマイクロ波処理装置では、第2の態様に加えて、放射部は複数のループアンテナを含む。複数のループアンテナのそれぞれのアンテナ投影空間は加熱室内で重ならない。
【0025】
本開示の第12の態様のマイクロ波処理装置では、第1の態様に加えて、上記壁面は加熱室の天井である。
【0026】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0027】
(実施の形態1)
図1は、本開示の実施の形態1に係るマイクロ波処理装置50の構成を示す概略図である。
図2は、マイクロ波処理装置50における加熱室1の天井1aの平面図である。
【0028】
図1、
図2に示すように、マイクロ波処理装置50は、被加熱物2を収容する加熱室1と、発振部3と、アンテナ4と、ヒータ5と、伝送線路6とを有する。
【0029】
発振部3は、例えば半導体アンプを備えてマイクロ波を発生させる。伝送線路6は、発振部3により発生されたマイクロ波を、天井1aに設けられた接続部6aを介してアンテナ4に伝送する。アンテナ4は、伝送線路6により伝送されたマイクロ波を加熱室1内に放射する。ヒータ5はシーズヒータである。ヒータ5は、天井1aに設けられた保持具8により保持されて、天井1aの近傍に配置される。本実施の形態では、アンテナ4、伝送線路6がそれぞれ、放射部、伝送部に相当する。
【0030】
アンテナ4は天井1aに配置される。アンテナ4は、一端が、発振部3に接続された伝送線路に接続され、他端が天井1aに接続されて接地されたループアンテナ構造を有する。アンテナ4のループ平面4aは天井1aに垂直である。
【0031】
発振部3により発生されたマイクロ波は、アンテナ4を流れる高周波電流を発生させる。これにより、アンテナ4のループ平面4aに強い電磁界励振9が発生する。電磁界励振9は、直線Xに沿って延在するアンテナ投影空間7を伝播する。直線Xは、ループ平面4aの中心を通り、ループ平面4aに垂直な直線である。
【0032】
アンテナ投影空間7は、ループ平面4aを含み、直線Xに垂直な断面がループ平面4aと同じ形状および大きさを有する。言わば、アンテナ投影空間7は、アンテナ4のループ平面4aを直線Xに沿って仮想的に移動させたときのループ平面4aの軌跡である。
【0033】
ヒータ5は、天井1aに対向する平面を形成するように、天井1aから適度な距離を隔てて環状に配置される。天井1aとヒータ5との間の空間により、アンテナ4の放射する電磁界の伝播方向を揃えることができる。このため、本実施の形態では、この空間はマイクロ波の導波路として利用される。より具体的には、アンテナ投影空間7が導波路となる。これにより、小型のアンテナ4を用いても、
図2に示すアンテナ投影空間7の端部、すなわち、加熱室1の端までマイクロ波を伝播させることができる。
【0034】
保持具8は、アンテナ投影空間7外に配置される。これにより、導波路であるアンテナ投影空間7において、保持具8が、導波路を伝播するマイクロ波を反射したり、分割したりするようなことはない。その結果、小型のアンテナ4であっても、導波路の全域に確実かつ効率よくマイクロ波を伝播させることができる。
【0035】
図3は、マイクロ波処理装置50の、
図1に示す4-4線に沿った断面図である。
図3に示すように、ヒータ5は、上記のように加熱室1の壁面(本実施の形態では天井1a)から適度な距離を隔てて配置される。これにより、上記のように、アンテナ投影空間7が導波路となる。
【0036】
ヒータ5は、アンテナ投影空間7の下方に広範囲に配置される。ヒータ5は、複数のヒータ横断部分15でアンテナ投影空間7を横切る。この構成により、
図3の矢印10に示すように、導波路を伝播するマイクロ波の一部は、ヒータ横断部分15で被加熱物2に向けて分岐する。すなわち、ヒータ5の周辺で生じたマイクロ波の回折および散乱により、マイクロ波の一部を被加熱物2に向けて分離させることができる。これにより、加熱室1内には導波路の全域をマイクロ波がより均一に伝播し、被加熱物2を効率よく加熱することができる。
【0037】
図2に示すように、ヒータ5は、加熱室1の壁面(本実施の形態では後壁面1b(
図3参照))に設けられた引き出し部19を介して外部電源20に接続される。引き出し部19は、アンテナ投影空間7の外に配置される。本実施の形態では、ヒータ5により形成された平面と天井1aとの間の空間の終端付近に、マイクロ波の伝播を妨げる構造物が設けられない。これにより、導波路が確保されて、マイクロ波を広範囲に伝播させることができる。
【0038】
本実施の形態では、ループ平面4aが、加熱室1の奥行き方向の中心線である直線Yに沿うように、二つのアンテナ4が配置される。すなわち、二つのアンテナ4は、加熱室1の対向する二つの壁面の中間に配置される。本実施の形態では、この二つの壁面は、加熱室1の後壁面1bと、加熱室1の前面開口を覆うドア21の内壁面(
図3参照)である。
【0039】
ループアンテナ構造のアンテナ4の電磁界励振9は、ループ平面4aからループ平面4aに垂直な二つの方向(方向9a、方向9b)に沿って伝播する。本実施の形態によれば、マイクロ波を均等かつ広範囲に伝播させることができる。その結果、被加熱物2をより均一に加熱することができる。
【0040】
二つのアンテナ4の各々のアンテナ投影空間7は、加熱室1内で重ならない。本実施の形態によれば、二つのアンテナ4から放射されたマイクロ波が干渉し合わないようにすることで、加熱室1の隅々までマイクロ波を伝播させることができる。
【0041】
(実施の形態2)
図4は、本開示の実施の形態2に係るマイクロ波処理装置50における加熱室1の上部の拡大図である。
【0042】
図4に示すように、本実施の形態では、ループアンテナ構造のアンテナ4が、そのループの中心部であるアンテナ中心部14が、ヒータ5により形成された平面と加熱室1の天井1aとの間の空間に位置するように構成される。この構成により、ヒータ5により形成された平面と天井1aとの間の空間に、アンテナ4から放射されたマイクロ波のほとんどを効率よく伝播させることができる。
【0043】
本実施の形態では、アンテナ4と天井1aとの距離が、ヒータ5と天井1aとの距離の2倍以下に設定される。より正確には、天井1aと天井1aから最も離れたアンテナ4の部分との距離16が、天井1aと天井1aから最も離れたヒータ5の部分との距離17の2倍以下に設定される。
【0044】
これにより、アンテナ中心部14を、ヒータ5と天井1aとで形成される導波路内に配置させることができる。その結果、アンテナ4により励振されるマイクロ波の多くを導波路に導くことができ、効率の良い加熱が達成される。
【0045】
一般的に、天井1aが熱膨張などで変形するのを防止するため、天井1aには、部分的に凹凸または傾斜面11が設けられる。傾斜面11は変形を吸収する部分であり不安定であるため、本実施の形態では、アンテナ4は、天井1aの平坦部12に配置される。
【0046】
図4に示すように、天井1aに接続部18aが設けられる。本実施の形態では、同軸線路18が伝送線路6である。同軸線路18は発振部3に接続され、発振部3により発生されたマイクロ波をアンテナ4に接続部18aを介して伝送する。
【0047】
アンテナ4の一端は、接続部18aで同軸線路18に接続される。アンテナ4の他端は、接地部13で天井1aに接続されて接地される。本実施の形態では、接地部13は、接続部18aからマイクロ波の波長の4分の1以内の距離だけ離して設けられる。この理由を以下に示す。
【0048】
接地部13を接続部18aから離して配置すると、アンテナ4は、平坦部12の下方の空間に留まらず傾斜面11の下方の空間に達する。この場合、アンテナ4の放射性能の安定性が損なわれる。アンテナ4から接地部13に流れる高周波電流は、天井1aを経由して同軸線路18の外皮アースに戻る。天井1aを流れる高周波電流により生じる電磁界励振は、意図したアンテナ4の放射性能をずらす。
【0049】
しかしながら、本実施の形態では、接続部18aと接地部13との距離が、マイクロ波の波長の4分の1以内に設定される。これにより、アンテナ4の放射性能の安定性とずれの問題を解消することができ、効率の良い加熱が達成される。なぜならば、高周波電流が流れる接続部18aと接地部13との間の距離は短い方が望ましいからである。
【0050】
本実施の形態では、アンテナ4は、加熱室1の傾斜面11にほぼ平行に配置されたループ辺4bを有する。このように、天井1a壁の近くでアンテナ4に高周波電流が流れると、アンテナ4と天井1aとの間に生じた電磁界が、アンテナ4の放射性能に影響する。
【0051】
本実施の形態では、アンテナ4と天井1aとの間にほぼ均一な厚さの空間を設けることで、アンテナ4のループ辺4bと天井1aとの間の電磁界分布をより均一にすることができる。これにより、ループアンテナによる電磁界励振への影響を抑制することができる。その結果、良好なアンテナ4の放射性能を得ることができる。
【0052】
以上のように、本実施の形態に係るマイクロ波処理装置50は、ヒータ5と加熱室1の天井1aの間の空間を導波路として使用する。これにより、アンテナ4は、マイクロ波を加熱室1全体に放射することができる。その結果、小型のアンテナを用いて、ヒータによる加熱性能とマイクロ波による加熱性能の両立を達成することができる。
【0053】
本開示に係るマイクロ波処理装置について、上記実施の形態を用いて説明した。しかしながら、本開示はこれに限定されるものではない。例えば、本実施の形態では、マイクロ波の発振器が半導体で構成される。しかし、マグネトロンなど他の発振器を使用してもよい。本実施の形態では、アンテナはループアンテナである。しかし、他の構造のアンテナを使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本開示は、誘電加熱を利用した加熱装置、生ゴミ処理機などに適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1、105 加熱室
1a、105a 天井
1b 後壁面
2 被加熱物
3、103 発振部
4 アンテナ
5、102 ヒータ
6 伝送線路
6a、18a 接続部
7 アンテナ投影空間
8 保持具
9 電磁界励振
9a、9b 方向
10 矢印
11 傾斜面
12 平坦部
13 接地部
14 アンテナ中心部
15 ヒータ横断部分
16、17 距離
18 同軸線路
19 引き出し部
20 外部電源
21 ドア
50、100 マイクロ波処理装置
101 放射領域
104 放射部