(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】ハロゲン化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01F 17/36 20200101AFI20231106BHJP
C04B 35/505 20060101ALI20231106BHJP
H01M 10/0562 20100101ALN20231106BHJP
H01M 10/052 20100101ALN20231106BHJP
【FI】
C01F17/36
C04B35/505
H01M10/0562
H01M10/052
(21)【出願番号】P 2020562322
(86)(22)【出願日】2019-06-26
(86)【国際出願番号】 JP2019025439
(87)【国際公開番号】W WO2020136955
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2018243605
(32)【優先日】2018-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西尾 勇祐
(72)【発明者】
【氏名】久保 敬
(72)【発明者】
【氏名】酒井 章裕
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 晃暢
【審査官】小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105254184(CN,A)
【文献】国際公開第2018/025582(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0272585(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108004591(CN,A)
【文献】特表2016-522135(JP,A)
【文献】STEINER, H.-J. et al.,Zeitschrift fuer anorganische und allgemeine Chemie,1992年07月,Vol.613,p.26-30,ISSN 0044-2313
【文献】BOHNSACK, A. et al.,Zeitschrift fuer anorganische und allgemeine Chemie,1997年07月,Vol.623,p.1067-1073,ISSN 0044-2313
【文献】ASANO, T. et al.,Advanced Materials,2018年11月02日,Vol.30, No.44,p.1803075,ISSN 0935-9648
【文献】BOHNSACK, A. et al.,Zeitschrift fuer anorganische und allgemeine Chemie,1997年09月,Vol.623,p.1352-1356,ISSN 0044-2313
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 17/00-17/38
C04B 35/505
H01M 10/0562
H01M 10/052
H01B 1/06
H01B 13/00
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LiBrとYBr
3とが混合された材料である混合材料を、不活性ガス雰囲気下で、焼成する焼成工程、を包含し、
前記焼成工程においては、前記混合材料は、200℃以上かつ650℃以下で、焼成される、ハロゲン化物の製造方法。
【請求項2】
前記焼成工程においては、前記混合材料は、300℃以上かつ600℃以下で、焼成される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記焼成工程においては、前記混合材料は、400℃以上で、焼成される、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記焼成工程においては、前記混合材料は、500℃以上で、焼成される、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記焼成工程においては、前記混合材料は、550℃以下で、焼成される、請求項2から4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記焼成工程においては、前記混合材料は、1時間以上かつ60時間以下、焼成される、請求項1から5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記焼成工程においては、前記混合材料は、300℃以上かつ550℃以下で、1時間以上かつ60時間以下、焼成される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記焼成工程においては、前記混合材料は、24時間以下、焼成される、請求項6
または7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記焼成工程においては、前記混合材料は、10時間以下、焼成される、請求項
8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記混合材料は、さらに、M
αA
βが混合された材料であり、
前記Mは、Na、K、Ca、Mg、Sr、Ba、Zn、In、Sn、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含み、
前記Aは、Cl、Br、およびIからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、
α>0、かつ、β>0、が満たされる、請求項1から
9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記混合材料は、さらに、LiFとYF
3とのうちの少なくとも1種が混合された材料である、請求項1から
10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記混合材料は、ボールミルを使用することなく混合されている、請求項1から
11のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ハロゲン化物固体電解質の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術においては、工業的に生産性の高い方法で、ハロゲン化物を製造することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一様態におけるハロゲン化物の製造方法は、LiBrとYBr3とが混合された材料である混合材料を、不活性ガス雰囲気下で、焼成する焼成工程、を包含し、前記焼成工程においては、前記混合材料は、200℃以上かつ650℃以下で、焼成される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、工業的に生産性の高い方法で、ハロゲン化物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態1における製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図2】実施の形態1における製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図3】実施の形態1における製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図4】イオン伝導度の評価方法を示す模式図である。
【
図5】ACインピーダンス測定によるイオン伝導度の評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態が、図面を参照しながら、説明される。
【0009】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における製造方法の一例を示すフローチャートである。
実施の形態1における製造方法は、焼成工程S1000を包含する。
焼成工程S1000は、混合材料を、不活性ガス雰囲気下で、焼成する工程である。ここで、焼成工程S1000で焼成される混合材料は、LiBr(すなわち、臭化リチウム)とYBr
3(すなわち、臭化イットリウム)とが混合された材料である。焼成工程S1000においては、混合材料は、200℃以上かつ650℃以下で、焼成される。
【0010】
以上の構成によれば、工業的に生産性の高い方法(例えば、低コストで大量に生産できる方法)で、ハロゲン化物を製造することができる。すなわち、真空封管および遊星型ボールミルを使用すること無く、簡便な製造方法(すなわち、不活性ガス雰囲気下での焼成)により、Li(すなわち、リチウム)とY(すなわち、イットリウム)とを含む臭化物を製造することができる。
【0011】
焼成工程S1000においては、例えば、混合材料の粉末が、容器(例えば、るつぼ)に入れられて、加熱炉内で焼成されてもよい。このとき、不活性ガス雰囲気中で混合材料が「200℃以上かつ650℃以下」まで昇温された状態が、所定時間以上、保持されてもよい。なお、焼成時間は、ハロゲン化物の揮発などに起因する焼成物の組成ずれを生じさせない(すなわち、焼成物のイオン伝導度を損なわない)程度の長さの時間であってもよい。
【0012】
なお、不活性ガスとしては、ヘリウム、窒素、アルゴン、など、が用いられうる。
【0013】
なお、焼成工程S1000の後に、焼成物が、容器(例えば、るつぼ)から取り出されて、粉砕されてもよい。このとき、焼成物は、粉砕器具(例えば、乳鉢、ミキサ、など)により、粉砕されてもよい。
【0014】
なお、本開示における混合材料とは、LiBrとYBr3との2種の材料のみが混合された材料であってもよい。もしくは、本開示における混合材料とは、LiBrとYBr3に加えて、LiBrとYBr3とは異なる他の材料が、さらに混合された材料であってもよい。
【0015】
なお、本開示においては、混合材料は、さらに、MαAβが混合された材料であってもよい。ここで、Mは、Na、K、Ca、Mg、Sr、Ba、Zn、In、Sn、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む。また、Aは、Cl、Br、およびIからなる群より選択される少なくとも1種の元素である。また、α>0、かつ、β>0、が満たされる。
以上の構成によれば、本開示の製造方法により製造されるハロゲン化物の特性(例えば、イオン伝導性、など)を改善することができる。
【0016】
なお、「α=1」であるときに、「2≦β≦5」が満たされてもよい。
【0017】
なお、本開示においては、混合材料は、さらに、LiFとYF3とのうちの少なくとも1種が混合された材料であってもよい。
以上の構成によれば、本開示の製造方法により製造されるハロゲン化物の特性(例えば、イオン伝導性、など)を改善することができる。
【0018】
なお、本開示においては、混合材料は、LiBrにおけるLiの一部(または、YBr3におけるYの一部)が、置換カチオン種(例えば、上述のM)で置換された材料が混合された材料であってもよい。また、混合材料は、LiBrにおけるBrの一部(または、YBr3におけるBrの一部)が、F(すなわち、フッ素)で置換された材料が混合された材料であってもよい。
【0019】
図2は、実施の形態1における製造方法の一例を示すフローチャートである。
図2に示されるように、実施の形態1における製造方法は、混合工程S1100を、さらに包含してもよい。
【0020】
混合工程S1100は、焼成工程S1000よりも前に、実行される工程である。
混合工程S1100は、原料となるLiBrとYBr3とが混合されることで、混合材料(すなわち、焼成工程S1000において焼成される材料)が得られる工程である。
【0021】
なお、混合工程S1100においては、LiBrとYBr3とが、所望のモル比となるように秤量されて、混合されてもよい。原料の混合方法としては、一般に公知の混合器具(例えば、乳鉢、ブレンダー、ボールミル、など)を用いる方法であってもよい。例えば、混合工程S1100においては、それぞれの原料の粉末が調整されて混合されてもよい。このとき、焼成工程S1000においては、粉末状の混合材料が焼成されてもよい。なお、混合工程S1100において得られた粉末状の混合材料が一軸加圧によりペレット状に成形されてもよい。このとき、焼成工程S1000においては、ペレット状の混合材料が焼成されることで、ハロゲン化物が製造されてもよい。
【0022】
なお、混合工程S1100においては、LiBrとYBr3とに加えて、LiBrとYBr3とは異なる他の原料(例えば、上述のMαAβ、LiF、YF3、など)がさらに混合されることで、混合材料が得られてもよい。
【0023】
なお、混合工程S1100においては、「LiBrを主成分とする原料」と「YBr3を主成分とする原料」が混合されることで、混合材料が得られてもよい。
【0024】
図3は、実施の形態1における製造方法の一例を示すフローチャートである。
図3に示されるように、実施の形態1における製造方法は、準備工程S1200を、さらに包含してもよい。
【0025】
準備工程S1200は、混合工程S1100よりも前に、実行される工程である。
準備工程S1200は、LiBrおよびYBr3などの原料(すなわち、混合工程S1100において混合される材料)が準備される工程である。
【0026】
なお、準備工程S1200においては、材料合成を実施することで、LiBrおよびYBr3などの原料が得られてもよい。もしくは、準備工程S1200においては、一般に公知の市販品(例えば、純度99%以上の材料)が用いられてもよい。なお、原料としては、乾燥した材料が用いられてもよい。また、原料としては、結晶状、塊状、フレーク状、粉末状、など、の原料が用いられてもよい。準備工程S1200において、結晶状または塊状またはフレーク状の原料が粉砕されることで、粉末状の原料が得られてもよい。
【0027】
なお、準備工程S1200においては、MαAβ(ここで、Mは、Na、K、Ca、Mg、Sr、Ba、Zn、In、Sn、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、Aは、Cl、Br、およびIからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、「α=1」であるときに「2≦β≦5」が満たされる)、LiF、YF3のうちのいずれか1種または複数が添加されてもよい。これにより、本開示の製造方法により得られるハロゲン化物の特性(例えば、イオン伝導性、など)を改善することができる。
【0028】
なお、準備工程S1200においては、LiBrにおけるLiの一部(または、YBr3におけるYの一部)が、置換カチオン種(例えば、上述のM)で置換された原料が準備されてもよい。また、準備工程S1200においては、LiBrにおけるBrの一部(または、YBr3におけるBrの一部)が、F(すなわち、フッ素)で置換された原料が準備されてもよい。
【0029】
なお、本開示の製造方法により製造されたハロゲン化物は、固体電解質材料として、用いられうる。このとき、当該固体電解質材料は、例えば、リチウムイオン伝導性の固体電解質であってもよい。このとき、当該固体電解質材料は、例えば、全固体リチウム二次電池に用いられる固体電解質材料などとして、用いられうる。
【0030】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2が説明される。上述の実施の形態1と重複する説明は、適宜、省略される。
【0031】
実施の形態2における製造方法は、上述の実施の形態1における製造方法の特徴に加えて、下記の特徴をさらに備える。
【0032】
実施の形態2における製造方法の焼成工程S1000においては、LiBrとYBr3とが混合された混合材料は、300℃以上かつ600℃以下で、焼成される。
以上の構成によれば、工業的に生産性の高い方法で、高いイオン伝導度を有する臭化物を製造することができる。すなわち、焼成温度を300℃以上とすることで、LiBrとYBr3とを十分に反応させることができる。さらに、焼成温度を600℃以下とすることで、固相反応により生成した臭化物の熱分解を抑制できる。これらにより、焼成物である臭化物のイオン伝導度を高めることができる。すなわち、例えば、良質な臭化物の固体電解質を得ることができる。
【0033】
なお、実施の形態2における製造方法の焼成工程S1000においては、混合材料は、400℃以上(例えば、400℃以上かつ600℃以下)で、焼成されてもよい。
以上の構成によれば、工業的に生産性の高い方法で、より高いイオン伝導度を有する臭化物を製造することができる。すなわち、焼成温度を400℃以上とすることで、焼成物である臭化物の結晶性を、より高くできる。これにより、焼成物である臭化物のイオン伝導度を、より高めることができる。すなわち、例えば、より良質な臭化物の固体電解質を得ることができる。
【0034】
なお、実施の形態2における製造方法の焼成工程S1000においては、混合材料は、500℃以上(例えば、500℃以上かつ600℃以下)で、焼成されてもよい。
以上の構成によれば、工業的に生産性の高い方法で、より高いイオン伝導度を有する臭化物を製造することができる。すなわち、焼成温度を500℃以上とすることで、焼成物である臭化物の結晶性を、より高くできる。これにより、焼成物である臭化物のイオン伝導度を、より高めることができる。すなわち、例えば、より良質な臭化物の固体電解質を得ることができる。
【0035】
なお、実施の形態2における製造方法の焼成工程S1000においては、混合材料は、550℃以下(例えば、300℃以上かつ550℃以下、または、400℃以上かつ550℃以下、または、500℃以上かつ550℃以下)で、焼成されてもよい。
以上の構成によれば、工業的に生産性の高い方法で、より高いイオン伝導度を有する臭化物を製造することができる。すなわち、焼成温度を550℃以下とすることで、LiBrの融点(すなわち、550℃)と同じか低い温度で焼成でき、LiBrの分解を抑制できる。これらにより、焼成物である臭化物のイオン伝導度を、より高めることができる。すなわち、例えば、より良質な臭化物の固体電解質を得ることができる。
【0036】
なお、実施の形態2における製造方法の焼成工程S1000においては、混合材料は、1時間以上かつ60時間以下、焼成されてもよい。
以上の構成によれば、工業的に生産性の高い方法で、より高いイオン伝導度を有する臭化物を製造することができる。すなわち、焼成時間を1時間以上とすることで、LiBrとYBr3とを十分に反応させることができる。さらに、焼成時間を60時間以下とすることで、焼成物である臭化物の揮発を抑制でき、所望の構成元素の組成比を有する臭化物を得ることができる(すなわち、組成ずれを抑制できる)。これらにより、焼成物である臭化物のイオン伝導度を、より高めることができる。すなわち、例えば、より良質な臭化物の固体電解質を得ることができる。
【0037】
なお、実施の形態2における製造方法の焼成工程S1000においては、混合材料は、24時間以下(例えば、1時間以上かつ24時間以下)、焼成されてもよい。
以上の構成によれば、焼成時間を24時間以下とすることで、焼成物である臭化物の揮発をさらに抑制でき、所望の構成元素の組成比を有する臭化物を得ることができる(すなわち、組成ずれを抑制できる)。これにより、組成ずれに起因する、焼成物である臭化物のイオン伝導度の低下を、さらに抑制できる。
【0038】
なお、実施の形態2における製造方法の焼成工程S1000においては、混合材料は、10時間以下(例えば、1時間以上かつ10時間以下)、焼成されてもよい。
以上の構成によれば、焼成時間を10時間以下とすることで、焼成物である臭化物の揮発をさらに抑制でき、所望の構成元素の組成比を有する臭化物を得ることができる(すなわち、組成ずれを抑制できる)。これにより、組成ずれに起因する、焼成物である臭化物のイオン伝導度の低下を、さらに抑制できる。
【0039】
なお、実施の形態2における製造方法の混合工程S1100において、LiBrとYBr3とが所望のモル比となるように秤量されて混合されることで、LiBrとYBr3との混合モル比が調整されてもよい。
【0040】
例えば、実施の形態2においては、LiBrとYBr3とは、LiBr:YBr3=「3.75:0.75」~「1.5:1.5」のモル比で、混合されてもよい。
【0041】
なお、実施の形態2における製造方法の混合工程S1100においては、LiBrとYBr3とに加えて、MαBrβ(すなわち、上述の実施の形態1におけるMαAβの「A」がBrである化合物)が、さらに混合されることで、混合材料が得られてもよい。このとき、実施の形態2における製造方法の準備工程S1200においては、当該MαBrβが、原料の1つとして、準備されてもよい。
【0042】
(実施例)
以下、実施例および参考例を用いて、本開示の詳細が説明される。これらは例示であって、本開示を制限するものではない。
なお、以下の例示においては、本開示の製造方法により製造されるハロゲン化物は、固体電解質材料として製造され、評価されている。
【0043】
<実施例1>
(固体電解質材料の作製)
露点-60℃以下のアルゴン雰囲気で、LiBrとYBr3とを、モル比でLiBr:YBr3=3:1となるように、秤量した。これらをメノウ製乳鉢で粉砕して混合した。その後、アルミナ製るつぼに入れて、アルゴン雰囲気中で600℃まで昇温し、1時間保持した。焼成後、メノウ製乳鉢により粉砕し、実施例1の固体電解質材料を作製した。
【0044】
(イオン伝導度の評価)
図4は、イオン伝導度の評価方法を示す模式図である。
加圧成形用ダイス200は、電子的に絶縁性のポリカーボネート製の枠型201と、電子伝導性のステンレス製のパンチ上部203およびパンチ下部202とから構成される。
【0045】
図4に示す構成を用いて、下記の方法にて、イオン伝導度の評価を行った。
【0046】
露点-60℃以下のドライ雰囲気で、実施例1の固体電解質材料の粉末である固体電解質粉末100を加圧成形用ダイス200に充填し、300MPaで一軸加圧し、実施例1の伝導度測定セルを作製した。
加圧状態のまま、パンチ上部203とパンチ下部202のそれぞれから導線を取り回し、周波数応答アナライザを搭載したポテンショスタット(Princeton Applied Research社 VersaSTAT4)に接続し、電気化学的インピーダンス測定法により、室温におけるイオン伝導度の測定を行った。
【0047】
図5は、ACインピーダンス測定によるイオン伝導度の評価結果を示すグラフである。インピーダンス測定結果のCole-Cole線図が、
図5に示される。
【0048】
図5において、複素インピーダンスの位相の絶対値が最も小さい測定点(
図5中の矢印)のインピーダンスの実部の値を実施例1の固体電解質のイオン伝導に対する抵抗値とみなした。電解質の抵抗値を用いて、下記式(1)より、イオン伝導度を算出した。
σ=(R
SE×S/t)
-1 ・・・・ (1)
【0049】
ここで、σはイオン伝導度、Sは電解質面積(
図4中、枠型201の内径)、R
SEは上記のインピーダンス測定における固体電解質の抵抗値、tは電解質の厚み(
図4中、固体電解質粉末100の厚み)である。
【0050】
25℃で測定された、実施例1の固体電解質材料のイオン伝導度は、1.5×10-3S/cmであった。
【0051】
<実施例2~21>
(固体電解質材料の作製)
実施例2~19においては、実施例1と同様に、露点-60℃以下のアルゴン雰囲気で、LiBrとYBr3とを、モル比でLiBr:YBr3=3:1となるように、秤量した。
実施例20においては、露点-60℃以下のアルゴン雰囲気で、LiBrとYBr3とを、LiBr:YBr3=3.75:0.75となるように、秤量した。
実施例21においては、露点-60℃以下のアルゴン雰囲気で、LiBrとYBr3とを、LiBr:YBr3=1.5:1.5となるように、秤量した。
【0052】
これらをメノウ乳鉢で粉砕して混合した。その後、アルミナ製るつぼに入れ、アルゴン雰囲気中で300~600℃まで昇温し、1~60時間保持した。ここで、各実施例における「目的の組成」と「焼成温度」と「焼成時間」については、後述の表1に示される。
【0053】
各焼成条件にて焼成後、メノウ製乳鉢で粉砕し、実施例2~21のそれぞれの固体電解質材料を作製した。
【0054】
(イオン伝導度の評価)
上記の実施例1と同様の方法で、実施例2~21のそれぞれの伝導度測定セルを作製し、イオン伝導度の測定を実施した。
【0055】
<参考例1>
(固体電解質材料の作製)
参考例1においては、露点-60℃以下のアルゴン雰囲気下で、LiBrとYBr3とを、モル比でLiBr:YBr3=3:1となるように、秤量した。これらをメノウ製乳鉢で粉砕して混合した。その後、アルミナ製るつぼに入れて、アルゴン雰囲気中で200℃まで昇温し、1時間保持した。焼成後、メノウ製乳鉢により粉砕し、参考例1の固体電解質材料を作製した。
【0056】
(イオン伝導度の評価)
上記の実施例1と同様の方法で、参考例1のそれぞれの伝導度測定セルを作製し、イオン伝導度の測定を実施した。
上述の実施例1~21および参考例1における各構成と各評価結果とが、表1に示される。
【0057】
【0058】
<考察>
参考例1のように、焼成温度が200℃の場合においては、室温付近において、4.7×10-6S/cmと低いイオン伝導性を示す。これは、焼成温度が200℃の場合では、固相反応が不十分であるためと考えられる。対して、実施例1~21は、室温近傍において、3.8×10-5S/cm以上の高いイオン伝導性を示すことがわかる。
【0059】
焼成温度が400~600℃の範囲の場合に、より高いイオン伝導性を示す。さらに、焼成温度が500~600℃の範囲の場合に、さらに高いイオン伝導性を示す。これらは、高い結晶性の固体電解質が実現できているためと考えられる。
【0060】
以上により、本開示の製造方法により合成した固体電解質材料は、高いリチウムイオン伝導性を示すことがわかる。また、本開示の製造方法は、簡便な方法であり、工業的に生産性の高い方法である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本開示の製造方法は、例えば、固体電解質材料の製造方法として、利用されうる。また、本開示の製造方法により製造された固体電解質材料は、例えば、全固体リチウム二次電池などとして、利用されうる。
【符号の説明】
【0062】
100 固体電解質粉末
200 加圧成形用ダイス
201 枠型
202 パンチ下部
203 パンチ上部