(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】搬送方法、プログラム、搬送システム、及び部品実装システム
(51)【国際特許分類】
B65G 1/00 20060101AFI20231106BHJP
H05K 13/02 20060101ALI20231106BHJP
G05D 1/00 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
B65G1/00 501C
H05K13/02 Z
G05D1/00 Z
(21)【出願番号】P 2019187175
(22)【出願日】2019-10-10
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白水 博
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-070952(JP,A)
【文献】特開2012-022467(JP,A)
【文献】特開2018-050002(JP,A)
【文献】特開2003-140747(JP,A)
【文献】特開2013-041527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00-1/20
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送物を搬送するための搬送装置の状態を表す状態情報を取得する取得処理と、
前記状態情報に基づいて、前記搬送装置が移動する所定エリアのマップにおいて前記搬送装置の存在位置を含む範囲を、前記搬送装置が使用する占有領域として設定する設定処理と、を含
み、
前記状態は、前記搬送装置が前記搬送物を搬送している第1状態を含み、
前記搬送装置は、前記搬送物を連結する連結部を有し、
前記設定処理では、前記第1状態において、前記搬送装置と、前記搬送装置に連結される前記搬送物とが少なくとも入る領域を前記占有領域に設定する、
搬送方法。
【請求項2】
前記設定処理では、前記第1状態において、前記搬送装置と前記搬送物とに応じて前記占有領域を設定する、
請求項1に記載の搬送方法。
【請求項3】
前記状態は、前記搬送装置が前記搬送物を搬送していない第2状態を更に含み、
前記第1状態では、前記搬送装置を平面視した場合に前記占有領域の形状が前記搬送装置及び前記搬送物の外形形状に沿った形状であり、
前記第2状態では、前記搬送装置を平面視した場合に前記占有領域の形状が前記搬送装置の外形形状に沿った形状である、
請求項1又は2に記載の搬送方法。
【請求項4】
前記搬送装置は複数の形態に変形可能であり、
前記設定処理では、前記搬送装置の形態に応じて前記占有領域を設定する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の搬送方法。
【請求項5】
前記マップは三次元の前記所定エリアを表し、
前記占有領域は、前記マップ上に設定される三次元の領域である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の搬送方法。
【請求項6】
前記マップを表すマップ情報と、前記占有領域とに基づいて、前記搬送装置が移動する経路を探索する探索処理を、更に含む、
請求項1~5のいずれか1項に記載の搬送方法。
【請求項7】
前記マップ情報は、前記搬送装置が移動するための通行路の情報を含み、
前記探索処理では、前記搬送装置の移動方向と交差する方向における前記占有領域の幅と、前記通行路の幅とに基づいて、前記経路を探索する、
請求項6に記載の搬送方法。
【請求項8】
前記マップ情報は、前記搬送装置が移動するための通行路の情報を含み、
前記通行路の幅と、前記占有領域の大きさとに基づいて、前記搬送装置が前記通行路に進入する前に、前記搬送装置の向きを、前記搬送装置が前記通行路を通行可能な向きに変更させる制御処理を、更に含む、
請求項6又は7に記載の搬送方法。
【請求項9】
前記占有領域ごとに、前記搬送装置が向きを変更するための姿勢変更領域が、前記通行路に進入する前の領域に設定されている、
請求項8に記載の搬送方法。
【請求項10】
前記マップ情報は、前記搬送装置を交互に通行させる交互通行路の情報を含み、
前記所定エリアにおいて前記交互通行路に進入する前の領域には、前記搬送装置が待機する待機領域が、前記占有領域ごとに設定されている、
請求項6~9のいずれか1項に記載の搬送方法。
【請求項11】
前記所定エリアにおいて前記交互通行路に進入する前の領域には、前記搬送装置の前記交互通行路への進入を許可するか不許可にするかを切り替えるための信号要素が前記マップ上に設定されており、
前記搬送装置は、前記信号要素によって前記交互通行路への進入が不許可にされている場合、前記待機領域で待機する、
請求項10に記載の搬送方法。
【請求項12】
搬送物を搬送するための搬送装置の状態を表す状態情報を取得する取得処理と、
前記状態情報に基づいて、前記搬送装置が移動する所定エリアのマップにおいて前記搬送装置の存在位置を含む範囲を、前記搬送装置が使用する占有領域として設定する設定処理と、
探索処理と、
制御処理と、を含み、
前記探索処理では、前記マップを表すマップ情報と、前記占有領域とに基づいて、前記搬送装置が移動する経路を探索し、
前記マップ情報は、前記搬送装置が移動するための通行路の情報を含み、
前記制御処理では、前記通行路の幅と、前記占有領域の大きさとに基づいて、前記搬送装置が前記通行路に進入する前に、前記搬送装置の向きを、前記搬送装置が前記通行路を通行可能な向きに変更させる、
搬送方法。
【請求項13】
搬送物を搬送するための搬送装置の状態を表す状態情報を取得する取得処理と、
前記状態情報に基づいて、前記搬送装置が移動する所定エリアのマップにおいて前記搬送装置の存在位置を含む範囲を、前記搬送装置が使用する占有領域として設定する設定処理と、
探索処理と、を含み、
前記探索処理では、前記マップを表すマップ情報と、前記占有領域とに基づいて、前記搬送装置が移動する経路を探索し、
前記マップ情報は、前記搬送装置を交互に通行させる交互通行路の情報を含み、
前記所定エリアにおいて前記交互通行路に進入する前の領域には、前記搬送装置が待機する待機領域が、前記占有領域ごとに設定されている、
搬送方法。
【請求項14】
1以上のコンピュータシステムに、
請求項1~13のいずれか1項に記載の搬送方法を実行させる、
プログラム。
【請求項15】
搬送物を搬送するための搬送装置の状態を表す状態情報を取得する取得部と、
前記状態情報に基づいて、前記搬送装置が移動する所定エリアのマップにおいて前記搬送装置の存在位置を含む範囲を、前記搬送装置が使用する占有領域として設定する設定部と、を含
み、
前記状態は、前記搬送装置が前記搬送物を搬送している第1状態を含み、
前記搬送装置は、前記搬送物を連結する連結部を有し、
前記設定部は、前記第1状態において、前記搬送装置と、前記搬送装置に連結される前記搬送物とが少なくとも入る領域を前記占有領域に設定する、
搬送システム。
【請求項16】
搬送物を搬送するための搬送装置の状態を表す状態情報を取得する取得部と、
前記状態情報に基づいて、前記搬送装置が移動する所定エリアのマップにおいて前記搬送装置の存在位置を含む範囲を、前記搬送装置が使用する占有領域として設定する設定部と、
探索処理部と、
制御処理部と、を含み、
前記探索処理部は、前記マップを表すマップ情報と、前記占有領域とに基づいて、前記搬送装置が移動する経路を探索し、
前記マップ情報は、前記搬送装置が移動するための通行路の情報を含み、
前記制御処理部は、前記通行路の幅と、前記占有領域の大きさとに基づいて、前記搬送装置が前記通行路に進入する前に、前記搬送装置の向きを、前記搬送装置が前記通行路を通行可能な向きに変更させる、
搬送システム。
【請求項17】
搬送物を搬送するための搬送装置の状態を表す状態情報を取得する取得部と、
前記状態情報に基づいて、前記搬送装置が移動する所定エリアのマップにおいて前記搬送装置の存在位置を含む範囲を、前記搬送装置が使用する占有領域として設定する設定部と、
探索処理部と、を含み、
前記探索処理部は、前記マップを表すマップ情報と、前記占有領域とに基づいて、前記搬送装置が移動する経路を探索し、
前記マップ情報は、前記搬送装置を交互に通行させる交互通行路の情報を含み、
前記所定エリアにおいて前記交互通行路に進入する前の領域には、前記搬送装置が待機する待機領域が、前記占有領域ごとに設定されている、
搬送システム。
【請求項18】
部品を基板に実装する少なくとも1つの部品実装機を含む部品実装システムであって、
前記部品実装機は、
前記部品を供給する部品供給装置と、
前記部品を前記基板に実装する実装ヘッドを含む実装本体と、を有し、
前記部品供給装置は、
請求項1~13のいずれか1項に記載の前記搬送方法によって前記占有領域が設定される前記搬送装置によって前記実装本体まで搬送される、
部品実装システム。
【請求項19】
前記搬送装置は、
前記部品供給装置のうち前記部品を前記実装本体に排出する部位と反対側の部位と連結可能である、
請求項18記載の部品実装システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、搬送方法、プログラム、搬送システム、及び部品実装システムに関する。より詳細には、本開示は、搬送物を搬送する搬送装置の搬送方法、プログラム、搬送システム、及び部品実装システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、自律移動装置(搬送装置)を開示する。この自律移動装置は、距離センサと、赤外センサと、判断手段と、を備える。距離センサは、走行方向前方の障害物を検出する。赤外センサは、人から放射される赤外線を検出可能である。判断手段は、距離センサで所定の距離(占有領域)内に障害物を検出した場合に、赤外センサにより、その障害物が人であるか否かを判断する。
【0003】
この自律移動装置は、障害物が人である場合は停止して一定時間待機する。そして、この自律移動装置は、一定時間待機後になお障害物が存在する場合には回避動作に移り、障害物が存在しなくなった場合には走行を再開する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、搬送装置の状態に応じて占有領域を設定可能な搬送方法、プログラム、搬送システム、及び部品実装システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の搬送方法は、取得処理と、設定処理と、を含む。前記取得処理では、搬送物を搬送するための搬送装置の状態を表す状態情報を取得する。前記設定処理では、前記状態情報に基づいて、前記搬送装置が移動する所定エリアのマップにおいて前記搬送装置の存在位置を含む範囲を、前記搬送装置が使用する占有領域として設定する。前記状態は、前記搬送装置が前記搬送物を搬送している第1状態を含む。前記搬送装置は、前記搬送物を連結する連結部を有する。前記設定処理では、前記第1状態において、前記搬送装置と、前記搬送装置に連結される前記搬送物とが少なくとも入る領域を前記占有領域に設定する。
本開示の一態様の搬送方法は、取得処理と、設定処理と、探索処理と、制御処理と、を含む。前記取得処理では、搬送物を搬送するための搬送装置の状態を表す状態情報を取得する。前記設定処理では、前記状態情報に基づいて、前記搬送装置が移動する所定エリアのマップにおいて前記搬送装置の存在位置を含む範囲を、前記搬送装置が使用する占有領域として設定する。前記探索処理では、前記マップを表すマップ情報と、前記占有領域とに基づいて、前記搬送装置が移動する経路を探索する。前記マップ情報は、前記搬送装置が移動するための通行路の情報を含む。前記制御処理では、前記通行路の幅と、前記占有領域の大きさとに基づいて、前記搬送装置が前記通行路に進入する前に、前記搬送装置の向きを、前記搬送装置が前記通行路を通行可能な向きに変更させる。
本開示の一態様の搬送方法は、取得処理と、設定処理と、探索処理と、を含む。前記取得処理では、搬送物を搬送するための搬送装置の状態を表す状態情報を取得する。前記設定処理では、前記状態情報に基づいて、前記搬送装置が移動する所定エリアのマップにおいて前記搬送装置の存在位置を含む範囲を、前記搬送装置が使用する占有領域として設定する。前記探索処理では、前記マップを表すマップ情報と、前記占有領域とに基づいて、前記搬送装置が移動する経路を探索する。前記マップ情報は、前記搬送装置を交互に通行させる交互通行路の情報を含む。前記所定エリアにおいて前記交互通行路に進入する前の領域には、前記搬送装置が待機する待機領域が、前記占有領域ごとに設定されている。
【0007】
本開示の一態様のプログラムは、1以上のコンピュータシステムに、前記搬送方法を実行させるプログラムである。
【0008】
本開示の一態様の搬送システムは、取得部と、設定部と、を含む。前記取得部は、搬送物を搬送するための搬送装置の状態を表す状態情報を取得する。前記設定処理は、前記状態情報に基づいて、前記搬送装置が移動する所定エリアのマップにおいて前記搬送装置の存在位置を含む範囲を、前記搬送装置が使用する占有領域として設定する。前記状態は、前記搬送装置が前記搬送物を搬送している第1状態を含む。前記搬送装置は、前記搬送物を連結する連結部を有する。前記設定部は、前記第1状態において、前記搬送装置と、前記搬送装置に連結される前記搬送物とが少なくとも入る領域を前記占有領域に設定する。
本開示の一態様の搬送システムは、取得部と、設定部と、探索処理部と、制御処理部と、を含む。前記取得部は、搬送物を搬送するための搬送装置の状態を表す状態情報を取得する。前記設定処理は、前記状態情報に基づいて、前記搬送装置が移動する所定エリアのマップにおいて前記搬送装置の存在位置を含む範囲を、前記搬送装置が使用する占有領域として設定する。前記探索処理部は、前記マップを表すマップ情報と、前記占有領域とに基づいて、前記搬送装置が移動する経路を探索する。前記マップ情報は、前記搬送装置が移動するための通行路の情報を含む。前記制御処理部は、前記通行路の幅と、前記占有領域の大きさとに基づいて、前記搬送装置が前記通行路に進入する前に、前記搬送装置の向きを、前記搬送装置が前記通行路を通行可能な向きに変更させる。
本開示の一態様の搬送システムは、取得部と、設定部と、探索処理部と、を含む。前記取得部は、搬送物を搬送するための搬送装置の状態を表す状態情報を取得する。前記設定処理は、前記状態情報に基づいて、前記搬送装置が移動する所定エリアのマップにおいて前記搬送装置の存在位置を含む範囲を、前記搬送装置が使用する占有領域として設定する。前記探索処理部は、前記マップを表すマップ情報と、前記占有領域とに基づいて、前記搬送装置が移動する経路を探索する。前記マップ情報は、前記搬送装置を交互に通行させる交互通行路の情報を含む。前記所定エリアにおいて前記交互通行路に進入する前の領域には、前記搬送装置が待機する待機領域が、前記占有領域ごとに設定されている。
【0009】
本開示の一態様の部品実装システムは、部品を基板に実装する少なくとも1つの部品実装機を含むシステムである。前記部品実装機は、前記部品を供給する部品供給装置と、前記部品を前記基板に実装する実装ヘッドを含む実装本体と、を有する。前記部品供給装置は、上記の搬送方法によって前記占有領域が設定される前記搬送装置によって前記実装本体まで搬送される。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、搬送装置の状態に応じて占有領域を設定可能な搬送方法、プログラム、搬送システム、及び部品実装システムを提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1Aは、本開示の一実施形態の搬送システムによって設定される第1状態での占有領域の説明図である。
図1Bは、同上の搬送システムによって設定される第2状態での占有領域の説明図である。
【
図2】
図2は、同上の搬送システムの概略的なブロック図である。
【
図3】
図3は、同上の搬送システムの動作を説明するフローチャートである。
【
図4】
図4は、同上の搬送システムによって制御される搬送装置が姿勢を変更する動作を説明する平面図である。
【
図5】
図5は、同上の搬送装置が移動する所定エリアの平面図である。
【
図6】
図6は、同上の搬送システムによって制御される搬送装置のすれ違い時の動作を説明する平面図である。
【
図7】
図7は、同上の搬送システムによって制御される搬送装置のすれ違い時の動作を説明する平面図である。
【
図8】
図8は、同上の搬送システムによって制御される搬送装置のすれ違い時の動作を説明する平面図である。
【
図9】
図9は、同上の搬送システムを用いることで構築される部品実装システムの概要の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態)
(1)概要
本実施形態に係る搬送方法は、
図1A及び
図1Bに示すように、搬送物50を搬送するための搬送装置1に搬送作業を行わせるための搬送方法である。この搬送方法は、搬送装置1と上位システム2とを含む搬送システム100(
図2参照)にて実現される。本実施形態では、搬送物50は車輪51を有しており、搬送装置1と共に移動可能に構成されている。
【0013】
本実施形態の搬送システム100は、取得部22と、設定部23とを備える。取得部22は、搬送物50を搬送するための搬送装置1の状態を表す状態情報を取得する。設定部23は、状態情報に基づいて、搬送装置1が移動する所定エリアR1のマップMP1において搬送装置1の存在位置を含む範囲を、搬送装置1が使用する占有領域A1として設定する。
【0014】
ここにおいて、搬送装置1は、例えば物流センター(配送センターを含む)、工場、オフィス、店舗、学校、及び病院等の施設に導入される。所定エリアR1は、搬送装置1が使用される施設内のエリアである。以下では、工場に搬送装置1を導入する場合について説明する。なお、
図1以外の図面においては、所定エリアR1の図示を省略している。
【0015】
搬送装置1の状態を表す状態情報とは、搬送装置1自体の状況に関連する第1情報と、搬送装置1が行う搬送作業に関連する第2情報とを含む。第1情報は、搬送装置1の大きさ及び形状等に関する情報と、搬送装置1の移動速度、移動方向、搬送装置1の移動姿勢(向き)、及び搬送装置1の現在位置に関連する情報とを少なくとも含む。搬送装置1が複数の形態に変形可能な場合、第1情報は、搬送装置1の現在の形態に関する情報を更に含む。また、第2情報は、搬送物50を搬送する搬送作業を行っているか否かを表す情報、搬送物50を搬送している場合は搬送装置1と搬送物50とを含めた全体の状態(大きさ及び形状等)に関する情報等を含み得る。
【0016】
占有領域A1は、搬送装置1が使用する領域である。搬送装置1が移動する所定エリアR1の電子的なマップMP1において、所定エリアR1での搬送装置1の存在位置を含む範囲が占有領域A1として設定される。搬送装置1は、当該搬送装置1の占有領域A1が設定されると、例えば、占有領域A1内に障害物が入らないように、障害物を避けて所定エリアR1内を自律走行する。ここでいう「障害物」は、所定エリアR1内に存在する建物の壁、棚、及び所定エリアR1内に置かれている搬送物50等の静止物体、所定エリアR1内に存在する他の搬送装置1(この搬送装置1が搬送中であれば搬送している搬送物50を含む)等がある。
【0017】
本実施形態の搬送システム100では、状態情報に基づいて、マップMP1上において搬送装置1の存在位置を含む範囲を占有領域A1に設定しているので、搬送装置1の状態に応じた占有領域A1を設定することができる。したがって、搬送装置1の状態に応じて占有領域A1を設定可能な搬送システム100を提供できる。
【0018】
(2)詳細
(2.1)全体構成
以下、本実施形態に係る搬送システム100について
図1A、
図1B、及び
図2を参照して説明する。本実施形態では、搬送システム100は、搬送装置1と、上位システム2とで構成されており、搬送装置1と上位システム2とは互いに通信可能に構成されている。本開示における「通信可能」とは、有線通信又は無線通信の適宜の通信方式により、直接的、又はネットワークNT1若しくは中継器3等を介して間接的に、情報を授受できることを意味する。本実施形態では、上位システム2と複数台の搬送装置1の各々とは、双方向に通信可能であって、上位システム2から搬送装置1への情報の送信、及び搬送装置1から上位システム2への情報の送信の両方が可能である。
【0019】
(2.2)搬送装置
本実施形態の搬送装置1の構成について、より詳細に説明する。搬送装置1は、
図1Aに示すように、搬送物50を運搬するための無人搬送車であり、搬送物50を連結して目的地まで自律走行する。本実施形態では、上位システム2が、ネットワークNT1及び中継器3を介して搬送装置1と通信し、搬送装置1の移動を間接的に制御する。
【0020】
搬送装置1は、例えば所定エリアR1の床面等からなる平坦な移動面の上を自律走行する。ここでは一例として、搬送装置1は、蓄電池を備え、蓄電池に蓄積された電気エネルギを用いて動作することとする。本実施形態では、搬送装置1は、搬送物50を連結した状態で移動面上を走行する。これにより、搬送装置1は、例えば、ある場所に置かれている搬送物50をけん引したり、押し動かしたりすることで、別の場所に搬送することが可能である。
【0021】
搬送装置1は、本体部10を備えている。本体部10は、直方体状に形成されている。搬送装置1は、本体部10の下部に複数(ここでは、6つ)の車輪を有している。6つの車輪のうち、本体部10の長手方向の両端にある2つの車輪は操向輪151である。操向輪151は、いずれも駆動輪を兼ねており、例えばオムニホイールのような全方向移動型車輪である。また、6つの車輪のうち、本体部10の中央部において幅方向の両端に位置する4つの車輪は、いずれも補助輪(従動輪)152である。搬送装置1は、2つの操向輪151を個別に駆動することによって、搬送装置1を移動面上で所望の方向に移動させている。なお、
図1A及び
図1Bにおいて、搬送装置1の複数の操向輪151及び補助輪152等の車輪は、実線で描かれているが、実際には、搬送装置1の本体部10に隠れている。なお、
図1A及び
図1B以外の図面においても同様である。
【0022】
搬送装置1は、2つの操向輪151が並ぶ長手方向と直交する短手方向(
図1A及び
図1Bの左右方向)を前後方向とする。移動中の搬送装置1の基準姿勢は、移動方向に対して搬送装置1の前後方向(短手方向)が平行になるような移動姿勢であり、基準姿勢の搬送装置1は前後方向において前進又は後進する。なお、搬送装置1は、任意の方向に移動可能であり、移動方向に対して搬送装置1の長手方向が平行になるような移動姿勢で移動してもよい。ここにおいて、「平行」とは完全な平行のみならず、ほぼ平行を含む概念である。同様に「直交」とは完全な直交のみならず、ほぼ直交を含む概念でもよい。
【0023】
搬送装置1では、本体部10の側面には、例えばフック等、搬送物50の一部を引っ掛けることが可能な連結部16が設けられている。ここでいう「本体部の側面」は、搬送装置1が基準姿勢をとっている場合に、移動方向における前側又は後側となる面をいう。このため、本実施形態では、連結部16に搬送物50の一部を引っ掛けることで、搬送装置1により搬送物50を連結することが可能である。つまり、搬送装置1は、搬送装置1の本体部10の側面(移動方向の前側又は後側の側面)に、搬送物50を連結するための連結部16を有している。
【0024】
また、搬送装置1は、
図2に示すように、制御部11と、検知部12と、通信部13と、記憶部14と、走行装置15と、を備えている。制御部11、検知部12、通信部13、記憶部14、及び走行装置15は本体部10に搭載されている。
【0025】
検知部12は、本体部10の挙動、及び本体部10の周辺状況等を検知する。本開示でいう「挙動」は、動作及び様子等を意味する。つまり、本体部10の挙動は、本体部10が搬送物50を搬送中か否かを表す本体部10の動作状態、本体部10の速度、本体部10に作用する加速度、及び本体部10の移動姿勢等を含む。具体的には、検知部12は、例えば、速度センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ等のセンサを含み、これらのセンサにて本体部10の挙動を検知する。また、検知部12は、例えば、イメージセンサ(カメラ)、ソナーセンサ、レーダ、及びLiDAR(Light Detection and Ranging)等のセンサを含み、これらのセンサにて本体部10の周辺状況を検知する。
【0026】
また、検知部12は、本体部10の位置、つまり搬送装置1の現在位置を特定する位置特定部を有している。位置特定部は、一例として、例えば、LiDARによる周囲の物体の検出情報と、所定エリアR1の電子的なマップ情報とに基づいて現在位置を推定する。なお、センサ部は、電波ビーコンを用いたLPS(Local Positioning System)を利用して、現在位置を推定してもよい。また、位置特定部は、GPS(Global Positioning System)等の衛星測位システムを用いて実現されてもよい。
【0027】
通信部13は、上位システム2と通信可能に構成されている。本実施形態では、通信部13は、搬送装置1を運用するエリア内に設置された複数の中継器3のいずれかと、電波を媒体とする無線通信によって通信を行う。そのため、通信部13と上位システム2とは、少なくともネットワークNT1及び中継器3を介して、間接的に通信を行うことになる。
【0028】
つまり、各中継器3は、通信部13と上位システム2との間の通信を中継する機器(アクセスポイント)である。中継器3は、ネットワークNT1を介して、上位システム2と通信する。本実施形態では一例として、中継器3と通信部13との間の通信には、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)又は免許を必要としない小電力無線(特定小電力無線)等の規格に準拠した、無線通信を採用する。また、ネットワークNT1は、インターネットに限らず、例えば、搬送装置1を運用するエリア内又はこのエリアの運営会社内のローカルな通信ネットワークが適用されてもよい。
【0029】
記憶部14は、例えば、書換可能な不揮発性の半導体メモリ等の非一時的記録媒体にて実現される。記憶部14は、例えば、搬送装置1の識別情報、搬送装置1に設定される占有領域A1についての占有領域情報、及び、搬送装置1が用いられる所定エリアR1のマップMP1に関するマップ情報、等を記憶する。マップ情報は、例えば、所定エリアR1に対応するマップMP1において、搬送装置1が移動するための通行路の情報を含む。なお、記憶部14は、上位システム2から与えられた指令情報等を記憶していてもよい。
【0030】
走行装置15は、制御部11からの制御命令を受けて、本体部10に備えられた複数の駆動輪(本実施形態では、2つの操向輪151)を個別に駆動することで、搬送装置1を所望の方向に走行させる。
【0031】
制御部11は、1以上のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを主構成とする。そのため、1以上のプロセッサがメモリに記録されているプログラムを実行することにより、制御部11の機能が実現される。プログラムはメモリに予め記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0032】
制御部11は、上位システム2から与えられる指令情報と、検知部12の検知結果とに基づいて、走行装置15を制御して所定エリアR1内で搬送装置1を所望の場所に移動させ、搬送物50を搬送する搬送作業を行わせることができる。また、制御部11は、検知部12の検知結果に基づいて搬送装置1の状態を表す状態情報を、通信部13から上位システム2に定期的に送信させる。なお、制御部11は、上位システム2からの送信要求を受けて、搬送装置1の状態を表す状態情報を通信部13から上位システム2へ送信させてもよい。
【0033】
ところで、本実施形態の搬送装置1が搬送する搬送物50は、一例として、工場内に設置される製造設備に部品を供給する部品供給装置である。部品供給装置は、部品を供給するための1以上のフィーダを有している。製造設備は、例えば、部品供給装置から供給される部品を、基板等の対象物に実装するための実装装置である。つまり、本実施形態では、搬送装置1は、上位システム2からの指令情報を受け、搬送物50としての部品供給装置を、実装装置の設置場所まで搬送する。これにより、部品供給装置から実装装置に対して部品を供給する部品供給システムを構築することができる。なお、搬送装置1が搬送する搬送物50は部品供給装置に限定されず、部品そのものでもよく、搬送装置1の使用場所又は使用目的等に応じて適宜変更が可能である。なお、
図1Aにおいて、搬送物50の複数の車輪51は、実線で描かれているが、実際には、搬送物50の本体部に隠れている。
図1A以外の図面においても同様である。
【0034】
(2.3)上位システム
上位システム2は、複数台の搬送装置1を統括的に制御するためのシステムであって、例えばサーバ装置で実現されている。上位システム2は、複数台の搬送装置1の各々に対して指示を出すことで、複数台の搬送装置1を間接的に制御する。
【0035】
上位システム2は、処理部21と、通信部24と、記憶部25とを備える。
【0036】
通信部24は、ネットワークNT1及び中継器3を介して、複数の搬送装置1の各々と通信する。通信部24と中継器3との間の通信方式としては、無線通信又は有線通信の適宜の通信方式が採用される。
【0037】
記憶部25は、例えば、書換可能な不揮発性の半導体メモリ等の非一時的記録媒体にて実現される。記憶部25は、例えば、定義情報データベース251、占有領域情報データベース252、マップ情報データベース253、及び信号情報データベース254等を含む。
図2では、定義情報データベースを「定義情報」、占有領域情報データベースを「占有領域情報」、マップ情報データベースを「マップ情報」、信号情報データベースを「信号情報」と省略して記載している。定義情報データベース251は、所定エリアR1内で使用される複数の搬送装置1をそれぞれ定義するための定義情報(例えば搬送装置1に割り当てられた識別情報等)を記憶する。占有領域情報データベース252は、搬送装置1の状態に応じて設定される占有領域A1を表す占有領域情報を記憶する。マップ情報データベース253は、所定エリアR1を表す電子地図のマップ情報を記憶する。信号情報データベース254は、搬送装置1の通行を許可するか不許可にするかを切り替えるためにマップMP1上に設定される信号要素の設置位置等に関する信号情報を記憶する。また、記憶部25は、搬送装置1によって搬送される搬送物50の形状及び大きさに関する情報を更に記憶してもよい。
【0038】
処理部21は、例えば、メモリ及びプロセッサを含むコンピュータシステムを主構成とする。すなわち、コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムを、プロセッサが実行することにより、処理部21の機能(例えば取得部22及び設定部23等の機能)が実現される。プログラムはメモリに予め記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0039】
取得部22は、所定エリアR1内で使用される複数の搬送装置1の各々から通信部24を介して状態情報を取得する。
【0040】
設定部23は、取得部22が取得した状態情報に基づいて占有領域情報データベース252を参照し、搬送装置1ごとに、マップMP1上で搬送装置1の存在位置を含む範囲を、占有領域A1として設定する。設定部23は、占有領域A1を設定した搬送装置1の定義情報(識別情報)と、この搬送装置1に設定した占有領域A1の占有領域情報とを対応付けて記憶部25に記憶させる。また、設定部23は、通信部24から設定対象の搬送装置1へ、設定した占有領域A1を表す占有領域情報を送信する。設定対象の搬送装置1では、上位システム2から送信された占有領域情報を通信部13が受信すると、制御部11がこの占有領域情報に基づいて当該搬送装置1の占有領域A1を設定する。
【0041】
(2.4)部品実装システム
本実施形態では、
図9に示すように、搬送物50は、一例として、1以上のフィーダを有する部品供給装置8である。部品供給装置8は、工場内に設置された部品実装機9の実装本体90に対して部品を供給するために用いられる。ここでいう「部品実装機」は、例えば基板等の対象物に部品を実装する機械である。実装本体90は、部品を基板に実装する実装ヘッドを含んでいる。つまり、本実施形態では、搬送装置1は、搬送システム100に制御されることにより、搬送物50としての部品供給装置8を、部品実装機9の実装本体90の設置場所まで搬送する。これにより、部品実装システム200を構築することが可能である。言い換えれば、部品実装システム200は、部品を基板に実装する少なくとも1つの部品実装機9を含むシステムである。そして、部品供給装置8は、搬送システム100が制御する搬送装置1によって実装本体90まで搬送される。
【0042】
ここで、搬送装置1は、部品供給装置8のうち部品を実装本体90に排出する部位と反対側の部位と連結可能であるのが好ましい。この場合、部品供給装置8を部品実装機9の実装本体90の設置場所まで搬送した際に、部品供給装置8における部品を排出する部位が実装本体90の方を向くことになる。したがって、部品供給装置8を部品実装機9の実装本体90の設置場所まで搬送した際に、上記の排出する部位が実装本体90に向くように部品供給装置8の向きを変える作業をしなくて済む。
【0043】
(2.5)動作
以下、本実施形態の搬送システム100の動作の一例を
図3に基づいて説明する。なお、搬送システム100の動作開始時には、搬送装置1の状態に応じた占有領域A1が上位システム2によって設定されているものとする。
【0044】
上位システム2の取得部22は、例えば、所定の受信間隔で、通信部24から複数の搬送装置1の各々に状態情報の送信を要求する要求信号を送信する。搬送装置1の制御部11は、上位システム2からの要求信号を通信部13経由で取得すると、検知部12に搬送装置1の状態を検知させ、搬送装置1の状態を表す状態情報を通信部13から上位システム2に送信させる。
【0045】
上位システム2の取得部22は、搬送装置1から送信された状態情報を通信部24経由で取得すると(ST1)、搬送装置1の状態が変化したか否かを判断する(ST2)。
【0046】
ステップST2において搬送装置1の状態に変化がない場合、設定部23は、占有領域A1の設定処理(変更処理)は行わず、ステップST1に戻り、所定の受信間隔が経過すると、状態情報を取得する処理を再び実行する。
【0047】
ステップST2において搬送装置1の状態に変化があった場合、設定部23は、ステップST1で取得した状態情報と、記憶部25に記憶されている定義情報及び占有領域情報に基づいて、搬送装置1の状態に応じた占有領域A1を設定する(ST3)。ここにおいて、搬送装置1の「状態」は、搬送装置1が搬送物50を搬送している第1状態と、搬送装置1が搬送物50を搬送していない第2状態と、を含む。したがって、設定部23は、第1状態と第2状態との各々で占有領域A1を設定する。なお、第1状態での占有領域A1と第2状態での占有領域A1とを区別する場合、第1状態での占有領域A1を占有領域A11と表記し、第2状態での占有領域A1を占有領域A12と表記する。
【0048】
図1Aは、搬送装置1の状態が第1状態である場合の占有領域A11の一例を示しており、設定部23は、第1状態において、搬送装置1と、(搬送装置1が搬送している)搬送物50とに応じて占有領域A11を設定する。これにより、設定部23は、搬送装置1が搬送している搬送物50も考慮して占有領域A11を設定することができ、搬送物50の形状及び大きさ等に応じて占有領域A11を変更することができる。なお、本実施形態では搬送装置1が、搬送物50を連結する連結部16を有しており、設定部23は、第1状態において、搬送装置1と、搬送装置1に連結されている搬送物50とが少なくとも入る領域を占有領域A11に設定する。設定部23は、搬送装置1と、搬送装置1に連結されている搬送物50とが少なくとも入る領域を占有領域A11に設定する。したがって、搬送装置1は、搬送装置1及び搬送中の搬送物50が存在する範囲(占有領域A11)内に障害物が入らないように移動することで、搬送物50が障害物に接触する可能性を低減できる。
【0049】
図1Bは、搬送装置1の状態が第2状態である場合の占有領域A12の一例を示しており、設定部23は、第2状態において、搬送装置1が入る大きさの領域を占有領域A12として設定する。
【0050】
なお、本実施形態では、占有領域A11,A12が矩形の領域に設定されており、搬送装置1の前側又は後側の側面に搬送物50が連結されている。したがって、搬送装置1の長手方向に沿う方向では、占有領域A11の長さ寸法X1と、占有領域A12の長さ寸法X2とは略同じ寸法に設定されている。一方、搬送装置1の長手方向と直交する前後方向では、占有領域A11の幅寸法Y1は、占有領域A12の幅寸法Y2よりも大きい寸法に設定されている。
【0051】
設定部23は、搬送装置1の状態に応じた占有領域A1を設定すると、占有領域A1を表す占有領域情報を通信部24から設定対象の搬送装置1に送信させる(ST4)。設定対象の搬送装置1の制御部11は、上位システム2から送信された占有領域情報を通信部13経由で取得すると、占有領域情報を記憶部14に記憶させるとともに、占有領域情報に基づいて占有領域A1を設定する。このとき、制御部11は、検知部12の検知結果と占有領域A1とマップMP1に対応するマップ情報とに基づき、検知部12によって検出された周囲の物体(障害物)が占有領域A1内に入らないように、搬送装置1を走行させる。つまり、搬送装置1の制御部11は、マップMP1を表すマップ情報と、占有領域A1とに基づいて、搬送装置1が移動する経路を探索する探索処理を行う。これにより、制御部11は、占有領域A1を考慮して搬送装置1が移動する経路を探索することができ、占有領域A1に障害物(建物の壁又は他の搬送装置1等)が入ってこないような経路を探索することができる。例えば、制御部11は、搬送装置1の移動方向と交差する方向における占有領域A1の幅と、通行路P1(
図4参照)の幅とに基づいて、経路を探索する。以下では、移動方向と交差する方向が、移動方向と直交する方向である場合について説明するが、移動方向と交差する方向は移動方向と直交する方向に限定されず、移動方向に対して90度以外の所定の角度で交差する方向でもよい。制御部11は、目的値までの経路を探索する場合に、移動方向と直交する方向における占有領域A1の幅よりも、幅が広い通行路P1を選択することで、通行路P1の端にある壁等に搬送装置1及び搬送中の搬送物50が接触しないような経路を選択できる。よって、本実施形態の搬送システム100では、搬送装置1と搬送中の搬送物50とに障害物が接触しないように、障害物を避けながら搬送物50を搬送する搬送作業を行うことができる。なお、本実施形態では、搬送装置1が経路の探索処理を行っているが、上位システム2が探索処理を行って決定した経路を搬送装置1に送信し、搬送装置1は上位システム2で決定された経路に従って移動してもよい。
【0052】
以下に、本実施形態の搬送システム100において、搬送装置1が、探索処理によって探索された経路にしたがって所定エリアR1内を移動する場合の動作を
図4~
図8に基づいて説明する。
【0053】
図4は、搬送装置1が移動する通行路P1の一例を示しており、
図4に示す通行路P1では搬送装置1は
図4中の左右方向に沿って移動する。
図4に示す通行路P1は、搬送装置1の移動方向と直交する方向の幅(以下、通路幅という。)が左右方向の中央部分では左右方向の両側部分に比べて狭くなっている。つまり、
図4に示す通行路P1は、通路幅がW1である第1通行路P11と、通路幅がW2である第2通行路P12と、通路幅がW3である第3通行路P13とに分かれている(W2<W1,W2<W3)。第2状態の搬送装置1が通行路P1を移動する場合、第1通行路P11及び第3通行路P13の通路幅W1,W3は、占有領域A12の長さ寸法X2よりも大きいので、第2状態の搬送装置1は第1通行路P11及び第3通行路P13を基準姿勢で移動できる。一方、第2通行路P12の通路幅W2は、占有領域A12の幅寸法Y2よりは大きいが、占有領域A12の長さ寸法X2よりは短くなっている。そのため、搬送装置1は、基準姿勢では第2通行路P12を通ることができず、第2通行路P12に入る前に、搬送装置1の長手方向が移動方向と平行になるように向きを変えてから第2通行路P12に進入する必要がある。
【0054】
図4に示すように、第1通行路P11内を矢印M1の方向に移動する搬送装置1の制御部11が、マップ情報と、検知部12が検出した現在位置の情報とに基づいて、第2通行路P12の手前の位置に到達したと判断すると、搬送装置1を第2通行路P12の手前で一旦停止させる。制御部11は、走行装置15を制御して、この位置で搬送装置1を回転させる。ここで、制御部11は、搬送装置1が回転する円C1内に障害物が存在しない位置で搬送装置1を回転させることによって、搬送装置1の前後方向と直交する方向(長手方向)が移動方向と平行になる向きに搬送装置1の向きを変化させることができる。
【0055】
制御部11は、搬送装置1の向きを変化させた後、搬送装置1を矢印M2に沿って第2通行路P12内に進入させ、さらに矢印M3に沿って第3通行路P13内を移動させており、幅が狭くなった第2通行路P12をスムーズに通過させることができる。なお、制御部11は、搬送装置1が第2通行路P12を通過して第3通行路P13内に入ると、搬送装置1の前後方向が移動方向と平行になるように搬送装置1の向きを変え、基準姿勢で移動させる。
【0056】
このように、制御部11は、通行路P1の幅(通路幅)と占有領域A1の大きさとに基づいて、搬送装置1が通行路P1(第2通行路P12)に進入する前に、搬送装置1の向きを、搬送装置1が通行路P1(第2通行路P12)を通行可能な向きに変更させている。例えば、通行路P1の途中に通路幅が狭い第2通行路P12が存在する場合、搬送装置1が第2通行路P12に進入する前に、搬送装置1の向きを、第2通行路P12を通行可能な向きに変更させることで、第2通行路P12をスムーズに通過させることができる。
【0057】
なお、
図5に示すように、通路幅が狭くなっている第2通行路P12の前後には、搬送装置1が向きを変更するための姿勢変更領域RZ1,RZ2がマップMP1上に設定されているのが好ましい。制御部11は、検知部12が検知した現在位置をもとに、搬送装置1が姿勢変更領域RZ1又はRZ2に入ったと判断すると、第2通行路P12を通るために搬送装置1の向きを変更する必要があるか否かを判断する。そして、制御部11は、搬送装置1の向きを変更する必要があると判断すると、姿勢変更領域RZ1又はRZ2で搬送装置1の向きを変更させてから、第2通行路P12に搬送装置1を進入させており、搬送装置1をスムーズに移動させることができる。なお、
図5の例では、第2状態の搬送装置1に対して設定される占有領域A12に対応した姿勢変更領域RZ1、RZ2が第2通行路P12の前後に設定されているが、複数種類の占有領域A1ごとに姿勢変更領域が設定されていてもよい。つまり、占有領域A1ごとに、搬送装置1が向きを変更するための姿勢変更領域が、通行路P1(例えば第2通行路P12)に進入する前の領域に設定されていてもよい。占有領域A1の形状及び大きさに応じて、搬送装置1が向きを変えるために必要な領域(姿勢変更領域)の形状及び大きさが異なるので、占有領域A1ごとに姿勢変更領域を設定するのが好ましい。搬送装置1は、現在の占有領域A1に対応して設定された姿勢変更領域で向きを変更することができるので、搬送装置1が向きを変更する場合に、搬送装置1が周囲にある障害物などに接触する可能性を低減できる。
【0058】
また、
図4に示すように、通路幅が途中で狭くなった通行路P1において、通路幅が狭い第2通行路P12では搬送装置1を交互に通行させる場合、
図6に示すように、交互通行路となる第2通行路P12の前後に待機領域WZ1,WZ2を設定するのが好ましい。すなわち、所定エリアに対応するマップMP1のマップ情報は、搬送装置1を交互に通行させる交互通行路(第2通行路P12)の情報を含む。そして、所定エリアR1において交互通行路(第2通行路P12)に進入する前の領域には、搬送装置1が待機する待機領域WZ1,WZ2が、占有領域A1ごとに設定されている。ここにおいて、交互通行路とは、例えば搬送装置1を含む範囲に設定される占有領域A1に比べて通路幅が狭いために、逆方向に移動する2台の搬送装置1がすれ違い通行できず、交互に通行するような通行路のことをいう。なお、交互通行路は、逆向きに移動する搬送装置が同数ずつ交互に移動するものに限定されない。
【0059】
図6に示すように、2台の搬送装置1A,1Bが第2通行路P12の両側から第2通行路P12に進入しようとしている場合、上位システム2は、2台の搬送装置1A,1Bにそれぞれ指令情報を与え、搬送装置1A,1Bを順番に第2通行路P12に進行させる。例えば、上位システム2は、第3通行路P13内を移動する搬送装置1Bには、待機領域WZ2内で待機する指令情報を与え、搬送装置1Bを待機領域WZ2内で待機させる。一方、上位システム2は、第1通行路P11内を移動する搬送装置1Aには、第2通行路P12を通って第3通行路P13へ移動させる指令情報を与え、矢印M4で示すように、搬送装置1Aを第2通行路P12から第3通行路P13へと移動させる。上位システム2は、搬送装置1Aが第3通行路P13に入り待機領域WZ2を通り過ぎると、搬送装置1Bに対して第2通行路P12を通って第1通行路P11へ移動させる指令情報を与え、搬送装置1Bを第2通行路P12から第1通行路P11へと移動させる。
【0060】
このように、上位システム2は、交互通行路である第2通行路P12に一方向から搬送装置1が進入する場合、反対方向からやってくる搬送装置1を待機領域WZ1又はWZ2で待機させているので、待機中の搬送装置1が通行の邪魔になる可能性を低減できる。上位システム2は、待機領域WZ1又はWZ2で搬送装置1を待機させることによって、交互通行路の反対側から来る搬送装置1をスムーズに通過させることができる。
【0061】
ここで、
図6に示す待機領域WZ1,WZ2は、搬送物50を搬送していない搬送装置1に対応した大きさ及び形状の領域であるため、搬送物50を搬送中の搬送装置1は待機領域WZ1,WZ2内に入ることができない。そこで、
図7に示すように、第1状態の搬送装置1の占有領域A11に対応した待機領域WZ21,WZ24と、第2状態の搬送装置1の占有領域A12に対応した待機領域WZ22とが、交互通行路となる第2通行路P12の両側に設定されていてもよい。
図7の例では、通行路P1が、通路幅がW11である第1通行路P21と、通路幅がW12である第2通行路P22と、通路幅がW13である第3通行路P23と、通路幅がW14である第4通行路P24とを含んでいる(W13<W12<W11,W14)。ここで、通路幅が最も狭い第3通行路P23は、逆方向に移動する2台の搬送装置1がすれ違い通行できないような交互通行路となっている。なお、第3通行路P23の通路幅は、第1状態及び第2状態の搬送装置1が1台であれば通行可能な通路幅に設定されている。
【0062】
第1通行路P21には第1状態及び第2状態の搬送装置1が待機可能な待機領域WZ21が設定され、第1通行路P21と第3通行路P23との間の第2通行路P22には第2状態の搬送装置1のみが待機可能な待機領域WZ22が設定されている。また、第3通行路P23の右側の第4通行路P24には第1状態及び第2状態の搬送装置1が待機可能な待機領域WZ24が設定されている。
【0063】
このように、
図7の例では、所定エリアR1に対応するマップMP1において、第1状態の占有領域A11に対応した待機領域WZ21,WZ24と、第2状態の占有領域A12に対応した待機領域WZ22とがそれぞれ設定されている。したがって、搬送装置1は、搬送物50を搬送中の第1状態であれば待機領域WZ21及びWZ24で待機することができ、搬送物50を搬送していない第2状態であれば待機領域WZ21,WZ22及びWZ24で待機することができる。よって、待機領域WZ21,WZ22及びWZ24で搬送装置1を待機させることによって、交互通行路の反対側から来る他の搬送装置1の通行の邪魔になる可能性を低減でき、交互通行路の反対側から来る他の搬送装置1をスムーズに通過させることができる。
【0064】
ところで、
図6に示した通行路において、所定エリアR1において交互通行路(第2通行路P12)に進入する前の領域に、信号要素SG1,SG2(
図8参照)がマップMP1上に設定されていてもよい。信号要素SG1,SG2は、搬送装置1の交互通行路(第2通行路P12)への進入を許可するか不許可にするかを切り替えるためにマップMP1上に設定されている。搬送装置1は、信号要素SG1,SG2によって交互通行路(第2通行路P12)への進入が不許可にされている場合、待機領域WZ1,WZ2で待機する、マップMP1上に設定された信号要素SG1,SG2に関する信号情報(例えば信号要素SG1,SG2の設置位置の情報)は上位システム2の記憶部25及び搬送装置1の記憶部14に登録されている。また、信号要素SG1,SG2が交互通行路への進入を許可する状態であるか許可しない状態であるかは上位システム2によって設定され、この情報は上位システム2の記憶部25に記憶されている。なお、
図8の例では、信号要素SG1は、交互通行路への進入を許可する状態であり、点線で図示されている。また、信号要素SG2は、交互通行路への進入を許可しない状態であり、実線で図示されている。
【0065】
第1通行路P11を通行中の搬送装置1Aが、現在位置の情報と、信号要素SG1の設置位置の情報とに基づいて、信号要素SG1に接近したことを検知すると、上位システム2に対して信号要素SG1の状態を問い合わせる。同様に、第3通行路P13を通行中の搬送装置1Bが、現在位置の情報と、信号要素SG2の設置位置の情報とに基づいて、信号要素SG2に接近したことを検知すると、上位システム2に対して信号要素SG2の状態を問い合わせる。
【0066】
ここで、信号要素SG2の状態が交互通行路への進入を許可しない状態の場合、搬送装置1Bは矢印M7に示す経路で、待機領域WZ2に移動し、待機領域WZ2で待機する。
【0067】
一方、信号要素SG1の状態は交互通行路への進入を許可する状態であるので、搬送装置1Aは第2通行路P12を通って第3通行路P13へと移動する。
【0068】
上位システム2は、搬送装置1Aが第3通行路P13に入って待機領域WZ3を通り過ぎたことを検知すると、信号要素SG1の状態を交互通行路への進入を許可しない状態に設定し、信号要素SG2の状態を交互通行路への進入を許可する状態に設定する。また、上位システム2は、信号要素SG1,SG2の状態を切り替えた後に、待機領域WZ2で待機中の搬送装置1Bに対して第2通行路P12への進入を許可する指令情報を出力する。搬送装置1Bは、上位システム2からの指令情報を受け取ると、この指令情報に従い、第2通行路P12を通って第1通行路P11へと移動する。
【0069】
このように、信号要素SG1,SG2によって交互通行路(第2通行路P12)への進入が不許可にされている場合、搬送装置1は待機領域WZ1,WZ2で待機するので、交互通行路の反対側から来る搬送装置1をスムーズに通過させることができる。
【0070】
なお、信号要素SG1,SG2はマップMP1上に設定される仮想的な構成(つまり実体を伴わない構成)に限定されず、実空間において、所定エリアR1に設けられる信号機のような実体を伴う構成でもよい。信号要素SG1,SG2が実体を伴う構成であれば、信号要素SG1,SG2が、当該信号要素SG1,SG2に接近してくる搬送装置1に対して進入の許可/不許可を示す情報を直接出力してもよく、搬送装置1は信号要素SG1,SG2から進入の許可/不許可を示す情報を直接取得する。
【0071】
(3)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、搬送システム100と同様の機能は、搬送方法、コンピュータプログラム、又はプログラムを記録した非一時的な記録媒体等で具現化されてもよい。一態様に係る搬送方法は、取得処理と、設定処理とを含む。取得処理では、搬送物50を搬送するための搬送装置1の状態を表す状態情報を取得する。設定処理では、状態情報に基づいて、搬送装置1が移動する所定エリアR1のマップMP1において搬送装置1の存在位置を含む範囲を、搬送装置1が使用する占有領域A1として設定する。一態様に係る(コンピュータ)プログラムは、コンピュータシステムに、取得処理と、設定処理と、を実行させるためのプログラムである。
【0072】
以下、上記の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0073】
本開示における搬送システム100は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における搬送システム100としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0074】
また、搬送システム100における複数の機能が、1つの筐体内に集約されていることは搬送システム100に必須の構成ではなく、搬送システム100の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、搬送システム100の少なくとも一部の機能、例えば、搬送システム100の一部の機能(例えば設定部23の機能)がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0075】
また、上記の実施形態において、複数の装置に分散されている搬送システム100の少なくとも一部の機能が、1つの筐体内に集約されていてもよい。例えば、搬送装置1と上位システム2とに分散されている搬送システム100の一部の機能が、1つの筐体内に集約されていてもよく、搬送装置1が取得部22及び設定部23の機能を備えていてもよい。
【0076】
上記の実施形態では、
図1A及び
図1Bに示すように、搬送装置1を平面視した場合(搬送装置1を上から見た場合)に占有領域A11,A12の形状が、矩形状の領域に設定されているが、占有領域A11,A12の形状は矩形状に限定されない。搬送装置1を平面視した場合に、搬送装置1の外形形状、又は、搬送装置1と搬送装置1に連結されている搬送物50との外形形状が矩形以外の形状であれば、その外形形状に沿った形状に占有領域A11,A12の形状が設定されていてもよい。すなわち、第1状態では、搬送装置1を平面視した場合に占有領域A11の形状が搬送装置1及び搬送物50の外形形状に沿った形状に設定されればよい。また、第2状態では、搬送装置1を平面視した場合に占有領域A12の形状が搬送装置1の外形形状に沿った形状に設定されればよい。例えば、
図1Aの例では、設定部23は、搬送装置1及び搬送物50の外形形状に沿ったT型の領域を占有領域A11として設定してもよい。このように、搬送装置1を平面視した場合の占有領域A11の形状を、搬送装置1及び搬送物50の外形形状に沿った形状にすることで、第1状態での占有領域A11は搬送装置1及び搬送物50が存在する領域に設定できる。また、搬送装置1を平面視した場合の占有領域A12の形状を、搬送装置1の外形形状に沿った形状にすることで、第2状態での占有領域A12は搬送装置1が存在する領域に設定できる。したがって、占有領域A11,A12を最小限の範囲に設定でき、搬送装置1が所定エリアR1内を移動する場合に、搬送装置1が避けて通る必要がある障害物を少なくできるから、搬送装置1が移動する経路を設定しやすくなる。
【0077】
上記の実施形態において、搬送装置1が複数の形態に変形可能なように構成されている場合、設定部23は、搬送装置1の形態に応じて占有領域A1を設定してもよい。例えば、搬送装置1が搬送物50を搬送する場合に、本体部10の一部が変形(例えば伸縮)することによって搬送物50と連結する場合、設定部23は、搬送装置1の形態を含む搬送装置1の状態に基づいて占有領域A1を設定すればよい。つまり、設定部23は、搬送装置1の現在の形態に基づき、搬送装置1が少なくとも入る範囲を占有領域A1として設定すればよい。
【0078】
また、上記の実施形態では、占有領域A1が二次元の領域であったが、占有領域A1は三次元の領域として設定されてもよい。上位システム2及び搬送装置1に三次元の所定エリアR1に対応するMP1のマップ情報が記憶されている場合、設定部23は、マップMP1上に設定される三次元の領域を占有領域A1として設定してもよい。占有領域A1を三次元の領域とすることで、搬送装置1及び搬送装置1によって搬送される搬送物50の高さを考慮して占有領域A1を設定することができ、搬送装置1及び搬送物50が上方にある障害物と接触する可能性を低減できる。
【0079】
上述の実施形態において、連結部16は、搬送物50の一部を引っ掛けるフック等の態様に限らず、電磁石により搬送物50を吸引する態様であってもよい。
【0080】
上述の実施形態において、搬送装置1は、連結部16を有していなくてもよい。例えば、搬送装置1は、搬送装置1の上に搬送物50を積載する構造を有していてもよい。つまり、搬送装置1は、搬送物50を搬送可能な態様であればよい。
【0081】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様の搬送方法は、取得処理と、設定処理と、を含む。取得処理では、搬送物(50)を搬送するための搬送装置(1)の状態を表す状態情報を取得する。設定処理では、状態情報に基づいて、搬送装置(1)が移動する所定エリア(R1)のマップ(MP1)において搬送装置(1)の存在位置を含む範囲を、搬送装置(1)が使用する占有領域(A1)として設定する。
【0082】
この態様によれば、状態情報に基づいて、マップ(MP1)上において搬送装置(1)の存在位置を含む範囲を占有領域(A1)に設定しているので、搬送装置(1)の状態に応じた占有領域(A1)を設定することができる。したがって、搬送装置(1)の状態に応じて占有領域(A1)を設定可能な搬送方法を提供できる。
【0083】
第2の態様の搬送方法では、第1の態様において、状態は、搬送装置(1)が搬送物(50)を搬送している第1状態と、搬送装置(1)が搬送物(50)を搬送していない第2状態と、を含む。
【0084】
この態様によれば、第1状態と第2状態との各々で占有領域(A11,A12)を設定できる。
【0085】
第3の態様の搬送方法では、第2の態様において、設定処理では、第1状態において、搬送装置(1)と搬送物(50)とに応じて占有領域(A11)を設定する。
【0086】
この態様によれば、搬送物(50)を搬送中の第1状態では、搬送装置(1)と搬送物(50)とに応じて占有領域(A11)を設定することができる。
【0087】
第4の態様の搬送方法では、第2又は第3の態様において、搬送装置(1)は、搬送物(50)を連結する連結部(16)を有する。設定処理では、第1状態において、搬送装置(1)と、搬送装置(1)に連結される搬送物(50)とが少なくとも入る領域を占有領域(A11)に設定する。
【0088】
この態様によれば、第1状態では、搬送装置(1)と、この搬送装置(1)に連結された搬送物(50)とが少なくとも入る領域を占有領域(A11)に設定することができる。
【0089】
第5の態様の搬送方法では、第2~第4のいずれかの態様において、第1状態では、搬送装置(1)を平面視した場合に占有領域(A11)の形状が搬送装置(1)及び搬送物(50)の外形形状に沿った形状である。第2状態では、搬送装置(1)を平面視した場合に占有領域(A12)の形状が搬送装置(1)の外形形状に沿った形状である。
【0090】
この態様によれば、第1状態での占有領域(A12)は搬送装置(1)及び搬送物(50)が存在する領域に設定でき、第2状態での占有領域(A12)は搬送装置(1)が存在する領域に設定できる。
【0091】
第6の態様の搬送方法では、第1~第5のいずれかの態様において、搬送装置(1)は複数の形態に変形可能である。設定処理では、搬送装置(1)の形態に応じて占有領域(A1)を設定する。
【0092】
この態様によれば、搬送装置(1)の形態に合わせた占有領域(A1)を設定できる。
【0093】
第7の態様の搬送方法では、第1~第6のいずれかの態様において、マップ(MP1)は三次元の所定エリア(R1)を表し、占有領域(A1)は、マップ(MP1)上に設定される三次元の領域である。
【0094】
この態様によれば、高さ方向においても占有領域(A1)を設定できる。
【0095】
第8の態様の搬送方法は、第1~第7のいずれかの態様において、探索処理を更に含む。探索処理では、マップ(MP1)を表すマップ情報と、占有領域(A1)とに基づいて、搬送装置(1)が移動する経路を探索する。
【0096】
この態様によれば、占有領域(A1)を考慮して搬送装置(1)が移動する経路を探索することができ、例えば、占有領域(A1)に障害物が入ってこないような経路を探索することができる。
【0097】
第9の態様の搬送方法では、第8の態様において、マップ情報は、搬送装置(1)が移動するための通行路の情報を含む。探索処理では、搬送装置(1)の移動方向と交差する方向における占有領域(A1)の幅と、通行路(P1)の幅とに基づいて、経路を探索する。
【0098】
この態様によれば、占有領域(A1)の幅と、通行路(P1)の幅とに基づいて、搬送装置(1)が移動する経路を探索することができる。
【0099】
第10の態様の搬送方法では、第8又は第9の態様において、マップ情報は、搬送装置(1)が移動するための通行路(P1)の情報を含む。搬送方法は、制御処理を更に含む。制御処理では、通行路(P1)の幅と、占有領域(A1)の大きさとに基づいて、搬送装置(1)が通行路(P1)に進入する前に、搬送装置(1)の向きを、搬送装置(1)が通行路(P1)を通行可能な向きに変更させる。
【0100】
この態様によれば、搬送装置(1)が通行路(P1)に進入する前に、搬送装置(1)の向きを、搬送装置(1)が通行路(P1)を通行可能な向きに変更させることで、搬送装置(1)に、この通行路(P1)を通過させることができる。
【0101】
第11の態様の搬送方法では、第10の態様において、占有領域(A1)ごとに、搬送装置(1)が向きを変更するための姿勢変更領域(RZ1,RZ2)が、通行路(P1)に進入する前の領域に設定されている。
【0102】
この態様によれば、姿勢変更領域(RZ1,RZ2)で搬送装置(1)の向きを変更させた後に、通行路(P1)に搬送装置(1)を進入させることができる。
【0103】
第12の態様の搬送方法では、第8~第11のいずれかの態様において、マップ情報は、搬送装置(1)を交互に通行させる交互通行路の情報を含む。所定エリア(R1)において交互通行路に進入する前の領域には、搬送装置(1)が待機する待機領域(WZ1,WZ2)が、占有領域(A1)ごとに設定されている。
【0104】
この態様によれば、待機領域(WZ1,WZ2)で搬送装置(1)を待機させることによって、交互通行路の反対側から来る搬送装置(1)を通過させることができる。
【0105】
第13の態様の搬送方法では、第12の態様において、所定エリア(R1)において交互通行路に進入する前の領域には、信号要素(SG1,SG2)がマップ(MP1)上に設定されている。信号要素(SG1,SG2)は、搬送装置(1)の交互通行路への進入を許可するか不許可にするかを切り替える。搬送装置(1)は、信号要素(SG1,SG2)によって交互通行路への進入が不許可にされている場合、待機領域(WZ1,WZ2)で待機する。
【0106】
この態様によれば、信号要素(SG1,SG2)によって交互通行路への進入が不許可にされている場合、搬送装置(1)は待機領域(WZ1,WZ2)で待機するので、交互通行路の反対側から来る搬送装置(1)を通過させることができる。
【0107】
第14の態様のプログラムは、1以上のコンピュータシステムに、第1~第13のいずれかの態様の搬送方法を実行させるプログラムである。
【0108】
この態様によれば、搬送装置(1)の状態に応じて占有領域(A1)を設定可能なプログラムを提供できる。
【0109】
第15の態様の搬送システム(100)は、取得部(22)と、設定部(23)と、を含む。取得部(22)は、搬送物(50)を搬送するための搬送装置(1)の状態を表す状態情報を取得する。設定部(23)は、状態情報に基づいて、搬送装置(1)が移動する所定エリア(R1)のマップ(MP1)において搬送装置(1)の存在位置を含む範囲を、搬送装置(1)が使用する占有領域(A1)として設定する。
【0110】
この態様によれば、状態情報に基づいて、マップ(MP1)上において搬送装置(1)の存在位置を含む範囲を占有領域(A1)に設定しているので、搬送装置(1)の状態に応じた占有領域(A1)を設定することができる。したがって、搬送装置(1)の状態に応じて占有領域(A1)を設定可能な搬送システム(100)を提供できる。
【0111】
第16の態様の部品実装システム(200)は、部品を基板に実装する少なくとも1つの部品実装機(9)を含むシステムである。部品実装機(9)は、部品を供給する部品供給装置(8)と、部品を基板に実装する実装ヘッドを含む実装本体(90)と、を有する。部品供給装置(8)は、第1~13のいずれかの態様の搬送方法によって占有領域(A1)が設定される搬送装置(1)によって実装本体(90)まで搬送される。
【0112】
この態様によれば、搬送装置(1)により部品供給装置(8)を部品実装機(9)の実装本体(90)の設置場所まで安定して搬送することができるので、実装本体(90)に対する部品の供給の安定化を図りやすい、という利点がある。
【0113】
第17の態様の部品実装システム(200)では、第16の態様において、搬送装置(1)は、部品供給装置(8)のうち部品を実装本体(90)に排出する部位と反対側の部位と連結可能である。
【0114】
この態様によれば、部品供給装置(8)を部品実装機(9)の実装本体(90)の設置場所まで搬送した際に、上記の排出する部位が実装本体(90)に向くように部品供給装置(8)の向きを変える作業をしなくて済む、という利点がある。
【0115】
上記態様に限らず、上記実施形態に係る搬送システム(100)の種々の構成(変形例を含む)は、搬送方法、(コンピュータ)プログラム、又はプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化可能である。
【0116】
第2~第13の態様に係る構成については、搬送方法に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0117】
1 搬送装置
8 部品供給装置
9 部品実装機
16 連結部
22 取得部
23 設定部
50 搬送物
90 実装本体
100 搬送システム
200 部品実装システム
A1,A11,A12 占有領域
MP1 マップ
P1 通行路
R1 所定エリア
RZ1,RZ2 姿勢変更領域
SG1,SG2 信号要素
WZ1,WZ2 待機領域