(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】樹脂組成物、プリプレグ、樹脂付きフィルム、樹脂付き金属箔、金属張積層板、及び配線板
(51)【国際特許分類】
C08F 290/06 20060101AFI20231106BHJP
C08F 290/12 20060101ALI20231106BHJP
C08F 257/02 20060101ALI20231106BHJP
C08G 65/48 20060101ALI20231106BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20231106BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20231106BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20231106BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
C08F290/06
C08F290/12
C08F257/02
C08G65/48
C08J5/24 CEZ
C08J5/24 CET
B32B27/00 103
B32B27/30 B
B32B15/08 Q
(21)【出願番号】P 2020531258
(86)(22)【出願日】2019-07-09
(86)【国際出願番号】 JP2019027186
(87)【国際公開番号】W WO2020017399
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-03-04
(31)【優先権主張番号】P 2018136062
(32)【優先日】2018-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019045682
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100174827
【氏名又は名称】治下 正志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 幹男
(72)【発明者】
【氏名】北井 佑季
(72)【発明者】
【氏名】星野 泰範
(72)【発明者】
【氏名】幸田 征士
(72)【発明者】
【氏名】和田 淳志
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-131639(JP,A)
【文献】特表2006-516297(JP,A)
【文献】特開2016-113543(JP,A)
【文献】特開2017-025228(JP,A)
【文献】特開2018-039995(JP,A)
【文献】国際公開第2019/208471(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/104748(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/00-290/14
C08F 299/00-299/08
C08F 257/00-257/02
C08G 65/00-65/48
C08J 5/24
B32B 27/00-27/42
B32B 15/00-15/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中に下記式(1)で表される基を少なくとも1つ有する化合物(A)と、
アセナフチレン化合物(B)とを含み、
前記化合物(A)が、下記式(1)で表される基を分子末端に有する変性ポリフェニレンエーテル化合物、及び分子中に下記式(2)で表される構造単位を有する重合体の少なくともいずれか一方を含み、
前記化合物(A)の含有量は、前記化合物(A)と前記アセナフチレン化合物(B)との合計質量100質量部に対して、50~95質量部であり、
前記アセナフチレン化合物(B)の含有量は、前記化合物(A)と前記アセナフチレン化合物(B)との合計質量100質量部に対して、5~50質量部であることを特徴とする樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、nは、0~10を示し、Zは、アリーレン基を示し、R
1~R
3は、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を示す。)
【化2】
(式(2)中、Zは、アリーレン基を示し、R
1~R
3は、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を示し、R
4~R
6は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を示す。)
【請求項2】
前記化合物(A)の重量平均分子量が、1200~40000である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記化合物(A)の、前記式(1)で表され、R
1~R
3が水素原子である基に含まれるビニル基の当量が、250~1200である請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記化合物(A)が、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物と、前記重合体とを含む請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記変性ポリフェニレンエーテル化合物の含有量が、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物と前記重合体と前記アセナフチレン化合物(B)との合計100質量部に対して、5~50質量部である請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記重合体の含有量が、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物と前記重合体と前記アセナフチレン化合物(B)との合計100質量部に対して、20~
70質量部である請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記重合体が、前記式(2)で表される構造単位として、炭素-炭素不飽和二重結合を芳香族環に2つ結合した2官能芳香族化合物に由来の構造単位を有する芳香族重合体を含む請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記芳香族重合体が、炭素-炭素不飽和二重結合を芳香族環に1つ結合した単官能芳香族化合物に由来の構造単位をさらに有する請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記式(2)で表される構造単位が、下記式(3)で表される構造単位を含む請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【化3】
(式(3)中、R
4~R
6は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を示し、R
7は、炭素数6~12のアリーレン基を示す。)
【請求項10】
前記式(3)で表される構造単位が、下記式(4)で表される構造単位を含む請求項
9に記載の樹脂組成物。
【化4】
(式(4)中、R
4~R
6は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を示す。)
【請求項11】
前記重合体が、下記式(5)で表される構造単位を分子中にさらに有する重合体を含む請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【化5】
(式(5)中、R
8~R
10は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を示し、R
11は、アリール基を示す。)
【請求項12】
前記式(5)で表される構造単位におけるアリール基が、炭素数1~6のアルキル基を有するアリール基を含む請求項11に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
前記重合体と前記アセナフチレン化合物(B)との含有比が、質量比で、50:50~95:5である請求項1~12のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物と、繊維質基材とを備えるプリプレグ。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか1項に記載の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含む樹脂層と、支持フィルムとを備える樹脂付きフィルム。
【請求項16】
請求項1~13のいずれか1項に記載の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含む樹脂層と、金属箔とを備える樹脂付き金属箔。
【請求項17】
請求項1~13のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物又は請求項14に記載のプリプレグの硬化物を含む絶縁層と、金属箔とを備える金属張積層板。
【請求項18】
請求項1~13のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物又は請求項14に記載のプリプレグの硬化物を含む絶縁層と、配線とを備える配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、プリプレグ、樹脂付きフィルム、樹脂付き金属箔、金属張積層板、及び配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器は、情報処理量の増大に伴い、搭載される半導体デバイスの高集積化、配線の高密度化、及び多層化等の実装技術が進展している。また、各種電子機器に用いられる配線板としては、例えば、車載用途におけるミリ波レーダ基板等の、高周波対応の配線板であることが求められる。各種電子機器において用いられる配線板には、信号の伝送速度を高めるために、信号伝送時の損失を低減させることが求められ、高周波対応の配線板には、特にそれが求められる。この要求を満たすためには、各種電子機器において用いられる配線板の基材を構成するための基材材料には、誘電率及び誘電正接が低い等の、低誘電特性に優れることが求められる。
【0003】
一方、基材材料等の成形材料には、低誘電特性に優れるだけではなく、耐熱性等に優れていることも求められている。このことから、基板材料に含有される樹脂を、硬化剤等とともに重合できるように変性させて、例えば、ビニル基等を導入させて、耐熱性を高めることが考えられる。
【0004】
このような基材材料としては、例えば、特許文献1に記載の樹脂組成物等が挙げられる。特許文献1には、ポリフェニレンエーテル部分を分子構造内に有し、この分子末端にエテニルベンジル基等を有し、且つ数平均分子量が1000~7000であるポリフェニレンエーテルと、架橋型硬化剤とを含むポリフェニレンエーテル化合物が記載されている。
【0005】
特許文献1によれば、誘電率や誘電正接が低く、耐熱性や成形性等の高い積層板を得ることができる旨が開示されている。特許文献1に記載されているような、誘電率及び誘電正接等の誘電特性が低い樹脂組成物を用いて得られた配線板は、信号伝送時の損失を低減させることができると考えられる。
【0006】
その一方で、配線板における信号の伝送速度をより高め、さらに、配線板には、外部環境の変化等の影響を受けにくいことが求められる。例えば、温度が高い環境下でも配線板を用いることができるように、配線板の基材を構成するための基材材料には、耐熱性に優れた硬化物が得られることが求められる。また、湿度の高い環境下でも配線板を用いることができるように、配線板の基材には、吸水されたとしても、その低誘電特性が維持されることも求められる。このことから、配線板の基材を構成するための基材材料には、吸水による、誘電率や誘電正接等の上昇を充分に抑制した硬化物、すなわち、吸水処理後であっても、低誘電特性を好適に維持することができる硬化物が得られることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、誘電特性が低く、耐熱性の高い硬化物であって、吸水処理後であっても、低誘電特性を好適に維持することができる硬化物が得られる樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、前記樹脂組成物を用いて得られる、プリプレグ、樹脂付きフィルム、樹脂付き金属箔、金属張積層板、及び配線板を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の一局面は、分子中に下記式(1)で表される基を少なくとも1つ有する化合物(A)と、アセナフチレン化合物(B)とを含むことを特徴とする樹脂組成物である。
【0010】
【化1】
式(1)中、nは、0~10を示し、Zは、アリーレン基を示し、R
1~R
3は、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を示す。
【0011】
上記並びにその他の本発明の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るプリプレグの一例を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る金属張積層板の一例を示す概略断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る配線板の一例を示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る樹脂付き金属箔の一例を示す概略断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る樹脂付きフィルムの一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0014】
[樹脂組成物]
本発明の一態様に係る樹脂組成物は、分子中に下記式(1)で表される基を少なくとも1つ有する化合物(A)と、アセナフチレン化合物(B)とを含むことを特徴とする樹脂組成物である。
【0015】
【化2】
式(1)中、nは、0~10を示す。Zは、アリーレン基を示す。R
1~R
3は、それぞれ独立している。すなわち、R
1~R
3は、それぞれ同一の基であっても、異なる基であってもよい。また、R
1~R
3は、水素原子又はアルキル基を示す。
【0016】
前記式(1)における前記アリーレン基は、特に限定されない。このアリーレン基としては、例えば、フェニレン基等の単環芳香族基や、芳香族が単環ではなく、ナフタレン環等の多環芳香族である多環芳香族基等が挙げられる。また、このアリーレン基には、芳香族環に結合する水素原子が、アルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、又はアルキニルカルボニル基等の官能基で置換された誘導体も含む。
【0017】
前記式(1)においてR1~R3で示される前記アルキル基は、特に限定されず、例えば、炭素数1~18のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、及びデシル基等が挙げられる。
【0018】
本発明者等は、従来の樹脂組成物、例えば、特許文献1に記載の樹脂組成物と比較して、耐熱性及び低誘電特性により優れ、吸水処理後であっても、低誘電特性を好適に維持することができる樹脂組成物を提供するために種々検討した。具体的には、前記化合物(A)と硬化剤とを反応させることによって、前記化合物(A)と前記硬化剤とが架橋し、耐熱性の高い硬化物が得られると、本発明者等は推察した。その一方で、本発明者等の検討によれば、用いる硬化剤によっては、誘電正接が高まって、優れた低誘電特性を維持できない場合、ガラス転移温度が充分に高まらない等の耐熱性が不充分な場合、及び、吸水すると、誘電特性が低下し、低誘電特性を好適に維持できない場合等があった。そこで、さらに詳細に検討した結果、硬化剤として、前記アセナフチレン化合物(B)を用いると、優れた低誘電特性を維持しつつ、得られた硬化物のガラス転移温度を高める等の耐熱性を充分に高めることができ、吸水処理後であっても、硬化物の低誘電特性を好適に維持することができることを見出した。
【0019】
以上のことから、前記樹脂組成物は、誘電特性が低く、耐熱性の高い硬化物であって、吸水処理後であっても、低誘電特性を好適に維持することができる硬化物が得られる樹脂組成物である。
【0020】
(化合物(A))
前記化合物(A)は、分子中に前記式(1)で表される基を少なくとも1つ有する化合物であれば、特に限定されない。なお、前記式(1)において、nが0である場合は、アリーレン基であるZが前記化合物(A)の末端や分子鎖に直接結合していることを示す。
【0021】
前記化合物(A)としては、例えば、前記式(1)で表される基を分子末端に有する変性ポリフェニレンエーテル化合物、及び、分子中に下記式(2)で表される構造単位を有する重合体等が挙げられる。
【0022】
【化3】
式(2)中、Zは、アリーレン基を示す。R
1~R
3は、それぞれ独立している。すなわち、R
1~R
3は、それぞれ同一の基であっても、異なる基であってもよい。また、R
1~R
3は、水素原子又はアルキル基を示す。R
4~R
6は、それぞれ独立している。すなわち、R
4~R
6は、それぞれ同一の基であっても、異なる基であってもよい。また、R
4~R
6は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を示す。
【0023】
前記化合物(A)は、上述したように、前記式(1)で表される基を有していればよく、この基が結合されている原子は、特に限定されず、例えば、酸素原子であってもよいし、炭素原子であってもよい。具体的には、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物の場合、前記式(1)で表される基が結合される原子としては、例えば、主鎖末端の酸素原子等が挙げられる。また、前記分子中に上記式(2)で表される構造単位を有する重合体の場合、前記式(1)で表される基が結合される原子としては、例えば、上記式(2)で表されるように、主鎖を構成する炭素原子等が挙げられる。また、前記化合物(A)としては、これらを単独で用いてもよいし、両者を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
(変性ポリフェニレンエーテル化合物)
前記変性ポリフェニレンエーテル化合物は、前記式(1)で表される基を分子末端に有する変性ポリフェニレンエーテル化合物であれば、特に限定されない。前記式(1)で表される基の好ましい具体例としては、例えば、下記式(6)で表される基等が挙げられる。
【0025】
【化4】
前記ビニルベンジル基を含む置換基としては、より具体的には、p-エテニルベンジル基及びm-エテニルベンジル基等のビニルベンジル基(エテニルベンジル基)、及びビニルフェニル基等が挙げられる。
【0026】
前記変性ポリフェニレンエーテル化合物は、ポリフェニレンエーテル鎖を分子中に有しており、例えば、下記式(7)で表される構造単位を分子中に有していることが好ましい。
【0027】
【化5】
式(7)中、mは、1~50を示す。また、R
12~R
15は、それぞれ独立している。すなわち、R
12~R
15は、それぞれ同一の基であっても、異なる基であってもよい。また、R
12~R
15は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、又はアルキニルカルボニル基を示す。この中でも、水素原子及びアルキル基が好ましい。
【0028】
R12~R15において、挙げられた各官能基としては、具体的には、以下のようなものが挙げられる。
【0029】
アルキル基は、特に限定されないが、例えば、炭素数1~18のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、及びデシル基等が挙げられる。
【0030】
アルケニル基は、特に限定されないが、例えば、炭素数2~18のアルケニル基が好ましく、炭素数2~10のアルケニル基がより好ましい。具体的には、例えば、ビニル基、アリル基、及び3-ブテニル基等が挙げられる。
【0031】
アルキニル基は、特に限定されないが、例えば、炭素数2~18のアルキニル基が好ましく、炭素数2~10のアルキニル基がより好ましい。具体的には、例えば、エチニル基、及びプロパ-2-イン-1-イル基(プロパルギル基)等が挙げられる。
【0032】
アルキルカルボニル基は、アルキル基で置換されたカルボニル基であれば、特に限定されないが、例えば、炭素数2~18のアルキルカルボニル基が好ましく、炭素数2~10のアルキルカルボニル基がより好ましい。具体的には、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、及びシクロヘキシルカルボニル基等が挙げられる。
【0033】
アルケニルカルボニル基は、アルケニル基で置換されたカルボニル基であれば、特に限定されないが、例えば、炭素数3~18のアルケニルカルボニル基が好ましく、炭素数3~10のアルケニルカルボニル基がより好ましい。具体的には、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びクロトノイル基等が挙げられる。
【0034】
アルキニルカルボニル基は、アルキニル基で置換されたカルボニル基であれば、特に限定されないが、例えば、炭素数3~18のアルキニルカルボニル基が好ましく、炭素数3~10のアルキニルカルボニル基がより好ましい。具体的には、例えば、プロピオロイル基等が挙げられる。
【0035】
前記変性ポリフェニレンエーテル化合物としては、例えば、下記式(8)で表される変性ポリフェニレンエーテル化合物、及び下記式(9)で表される変性ポリフェニレンエーテル化合物等が挙げられる。また、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物としては、これらの変性ポリフェニレンエーテル化合物を単独で用いてもよいし、この2種の変性ポリフェニレンエーテル化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
【0037】
【化7】
式(8)及び式(9)中、R
16~R
23並びにR
24~R
31は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、又はアルキニルカルボニル基を示す。X
1及びX
2は、それぞれ独立して、上記式(1)で表される基を示す。A及びBは、それぞれ、下記式(10)及び下記式(11)で表される構造単位を示す。また、式(9)中、Yは、炭素数20以下の直鎖状、分岐状、又は環状の炭化水素を示す。
【0038】
【0039】
【化9】
式(10)及び式(11)中、s及びtは、それぞれ、0~20を示す。R
32~R
35並びにR
36~R
39は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、又はアルキニルカルボニル基を示す。
【0040】
前記式(8)で表される変性ポリフェニレンエーテル化合物、及び前記式(9)で表される変性ポリフェニレンエーテル化合物は、上記構成を満たす化合物であれば特に限定されない。具体的には、前記式(8)及び前記式(9)において、R16~R23並びにR24~R31は、上述したように、それぞれ独立している。すなわち、R16~R23並びにR24~R31は、それぞれ同一の基であっても、異なる基であってもよい。また、R16~R23並びにR24~R31は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、又はアルキニルカルボニル基を示す。この中でも、水素原子及びアルキル基が好ましい。
【0041】
また、式(10)及び式(11)中、s及びtは、それぞれ、上述したように、0~20を示すことが好ましい。また、s及びtは、sとtとの合計値が、1~30となる数値を示すことが好ましい。よって、sは、0~20を示し、tは、0~20を示し、sとtとの合計は、1~30を示すことがより好ましい。また、R32~R35並びにR36~R39は、それぞれ独立している。すなわち、R32~R35並びにR36~R39は、それぞれ同一の基であっても、異なる基であってもよい。また、R32~R35並びにR36~R39は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、又はアルキニルカルボニル基を示す。この中でも、水素原子及びアルキル基が好ましい。
【0042】
R16~R39は、上記式(7)におけるR12~R15と同じである。
【0043】
前記式(9)中において、Yは、上述したように、炭素数20以下の直鎖状、分岐状、又は環状の炭化水素である。Yとしては、例えば、下記式(12)で表される基等が挙げられる。
【0044】
【化10】
前記式(12)中、R
40及びR
41は、それぞれ独立して、水素原子またはアルキル基を示す。前記アルキル基としては、例えば、メチル基等が挙げられる。また、式(12)で表される基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、及びジメチルメチレン基等が挙げられ、この中でも、ジメチルメチレン基が好ましい。
【0045】
前記式(8)で表される変性ポリフェニレンエーテル化合物のより具体的な例示としては、例えば、下記式(13)で表される変性ポリフェニレンエーテル化合物等が挙げられる。
【0046】
【化11】
前記式(9)で表される変性ポリフェニレンエーテル化合物のより具体的な例示としては、例えば、下記式(14)で表される変性ポリフェニレンエーテル化合物等が挙げられる。
【0047】
【化12】
上記式(13)及び上記式(14)において、s及びtは、上記式(10)及び上記式(11)におけるs及びtと同じである。また、上記式(13)及び上記式(14)において、R
1~R
3及びnは、上記式(1)におけるR
1~R
3及びnと同じである。また、上記式(14)において、Yは、上記式(9)におけるYと同じである。
【0048】
(分子中に前記式(2)で表される構造単位を有する重合体)
前記重合体は、分子中に前記式(2)で表される構造単位を有する重合体であれば、特に限定されない。また、前記重合体は、分子中に前記式(2)で表される構造単位を有する重合体であれば、前記式(2)で表される構造単位以外の構造単位を有していてもよい。また、前記重合体は、前記式(2)で表される構造単位が繰り返し結合した繰り返し単位を含んでもよいし、前記式(2)で表される構造単位が繰り返し結合した繰り返し単位と前記式(2)で表される構造単位以外の構造単位が繰り返し結合した繰り返し単位とが、ランダムに結合した重合体であってもよい。すなわち、前記式(2)で表される構造単位以外の構造単位を有する場合、ブロック共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよい。
【0049】
前記式(2)における前記アリーレン基は、特に限定されない。このアリーレン基としては、例えば、フェニレン基等の単環芳香族基や、芳香族が単環ではなく、ナフタレン環等の多環芳香族である多環芳香族基等が挙げられる。また、このアリーレン基には、芳香族環に結合する水素原子が、アルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、又はアルキニルカルボニル基等の官能基で置換された誘導体も含む。
【0050】
前記式(2)においてR1~R3で示される前記アルキル基は、前記式(1)においてR1~R3で示される前記アルキル基と同様である。すなわち、前記式(2)においてR1~R3で示される前記アルキル基は、特に限定されず、例えば、炭素数1~18のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、及びデシル基等が挙げられる。
【0051】
前記式(2)においてR4~R6で示される前記炭素数1~6のアルキル基は、特に限定されず、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、及びヘキシル基等が挙げられる。
【0052】
前記重合体は、前記式(2)で表される構造単位として、炭素-炭素不飽和二重結合を芳香族環に2つ結合した2官能芳香族化合物に由来の構造単位を有する芳香族重合体を含むことが好ましい。なお、前記2官能芳香族化合物に由来の構造単位は、前記2官能芳香族化合物を重合して得られる構造単位である。また、本明細書において、前記芳香族重合体は、ジビニル芳香族重合体とも称する。
【0053】
前記2官能芳香族化合物は、炭素-炭素不飽和二重結合を芳香族環に2つ結合した2官能芳香族化合物であれば、特に限定されない。前記2官能芳香族化合物としては、例えば、m-ジビニルベンゼン、p-ジビニルベンゼン、1,2-ジイソプロペニルベンゼン、1,3-ジイソプロペニルベンゼン、1,4-ジイソプロペニルベンゼン、1,3-ジビニルナフタレン、1,8-ジビニルナフタレン、1,4-ジビニルナフタレン、1,5-ジビニルナフタレン、2,3-ジビニルナフタレン、2,7-ジビニルナフタレン、2,6-ジビニルナフタレン、4,4’-ジビニルビフェニル、4,3’-ジビニルビフェニル、4,2’-ジビニルビフェニル、3,2’-ジビニルビフェニル、3,3’-ジビニルビフェニル、2,2’-ジビニルビフェニル、2,4-ジビニルビフェニル、1,2-ジビニル-3,4-ジメチルベンゼン、1,3-ジビニル-4,5,8-トリブチルナフタレン、及び2,2’-ジビニル-4-エチル-4’-プロピルビフェニル等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記2官能芳香族化合物は、これらの中でも、m-ジビニルベンゼン及びp-ジビニルベンゼン等のジビニルベンゼンが好ましく、p-ジビニルベンゼンがより好ましい。
【0054】
前記芳香族重合体は、前記2官能芳香族化合物に由来の構造単位を有するだけでなく、他の構造単位を有していてもよい。この他の構造単位としては、例えば、炭素-炭素不飽和二重結合を芳香族環に1つ結合した単官能芳香族化合物に由来の構造単位、炭素-炭素不飽和二重結合を芳香族環に3つ結合した3官能芳香族化合物に由来の構造単位、インデン類に由来の構造単位、及びアセナフチレン類に由来の構造単位等が挙げられる。なお、前記単官能芳香族化合物に由来の構造単位は、前記単官能芳香族化合物を重合して得られる構造単位である。前記3官能芳香族化合物に由来の構造単位は、前記3官能芳香族化合物を重合して得られる構造単位である。インデン類に由来の構造単位は、インデン類を重合して得られる構造単位である。また、アセナフチレン類に由来の構造単位は、アセナフチレン類を重合して得られる構造単位である。
【0055】
前記単官能芳香族化合物は、炭素-炭素不飽和二重結合を芳香族環に1つ結合していればよく、芳香族環には、炭素-炭素不飽和二重結合以外の基が結合されていてもよい。前記単官能芳香族化合物としては、例えば、炭素-炭素不飽和二重結合を芳香族環に1つ結合し、この炭素-炭素不飽和二重結合以外の基が結合されていない単官能芳香族化合物、及び、炭素-炭素不飽和二重結合を芳香族環に1つ結合し、さらにエチル基等のアルキル基を芳香族環に結合した単官能芳香族化合物等が挙げられる。
【0056】
炭素-炭素不飽和二重結合を芳香族環に1つ結合し、この炭素-炭素不飽和二重結合以外の基が結合されていない単官能芳香族化合物としては、例えば、スチレン、2-ビニルビフェニル、3-ビニルビフェニル、4-ビニルビフェニル、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、及びα-アルキル置換スチレン等が挙げられる。また、α-アルキル置換スチレンとしては、例えば、α-メチルスチレン、α-エチルスチレン、α-プロピルスチレン、α-n-ブチルスチレン、α-イソブチルスチレン、α-t-ブチルスチレン、α-n-ペンチルスチレン、α-2-メチルブチルスチレン、α-3-メチルブチル-2-スチレン、α-t-ブチルスチレン、α-t-ブチルスチレン、α-n-ペンチルスチレン、α-2-メチルブチルスチレン、α-3-メチルブチルスチレン、α-t-ペンチルスチレン、α-n-ヘキシルスチレン、α-2-メチルペンチルスチレン、α-3-メチルペンチルスチレン、α-1-メチルペンチルスチレン、α-2,2-ジメチルブチルスチレン、α-2,3-ジメチルブチルスチレン、α-2,4-ジメチルブチルスチレン、α-3,3-ジメチルブチルスチレン、α-3,4-ジメチルブチルスチレン、α-4,4-ジメチルブチルスチレン、α-2-エチルブチルスチレン、α-1-エチルブチルスチレン、α-シクロヘキシルスチレン、及びα-シクロヘキシルスチレン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
炭素-炭素不飽和二重結合を芳香族環に1つ結合し、さらにアルキル基を芳香族環に結合した単官能芳香族化合物としては、例えば、核アルキル置換芳香族化合物及びアルコキシ置換スチレン等が挙げられる。
【0058】
前記核アルキル置換芳香族化合物としては、例えば、芳香族環に結合されるアルキル基がエチル基であるエチルビニル芳香族化合物、芳香族環としてのスチレンにアルキル基が結合した核アルキル置換スチレン、及び、前記エチルビニル芳香族化合物及び前記核アルキル置換スチレン以外の核アルキル置換芳香族化合物(他の核アルキル置換芳香族化合物)等が挙げられる。
【0059】
前記エチルビニル芳香族化合物としては、例えば、o-エチルビニルベンゼン、m-エチルビニルベンゼン、p-エチルビニルベンゼン、2-ビニル-2’-エチルビフェニル、2-ビニル-3’-エチルビフェニル、2-ビニル-4’-エチルビフェニル、3-ビニル-2’-エチルビフェニル、3-ビニル-3’-エチルビフェニル、3-ビニル-4’-エチルビフェニル、4-ビニル-2’-エチルビフェニル、4-ビニル-3’-エチルビフェニル、4-ビニル-4’-エチルビフェニル、1-ビニル-2-エチルナフタレン、1-ビニル-3-エチルナフタレン、1-ビニル-4-エチルナフタレン、1-ビニル-5-エチルナフタレン、1-ビニル-6-エチルナフタレン、1-ビニル-7-エチルナフタレン、1-ビニル-8-エチルナフタレン、2-ビニル-1-エチルナフタレン、2-ビニル-3-エチルナフタレン、2-ビニル-4-エチルナフタレン、2-ビニル-5-エチルナフタレン、2-ビニル-6-エチルナフタレン、2-ビニル-7-エチルナフタレン、及び2-ビニル-8-エチルナフタレン等が挙げられる。
【0060】
前記核アルキル置換スチレンとしては、例えば、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、m-プロピルスチレン、p-プロピルスチレン、m-n-ブチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、m-t-ブチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、m-n-ヘキシルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、m-シクロヘキシルスチレン、及びp-シクロヘキシルスチレン等が挙げられる。
【0061】
前記他の核アルキル置換芳香族化合物としては、例えば、2-ビニル-2’-プロピルビフェニル、2-ビニル-3’-プロピルビフェニル、2-ビニル-4’-プロピルビフェニル、3-ビニル-2’-プロピルビフェニル、3-ビニル-3’-プロピルビフェニル、3-ビニル-4’-プロピルビフェニル、4-ビニル-2’-プロピルビフェニル、4-ビニル-3’-プロピルビフェニル、4-ビニル-4’-プロピルビフェニル、1-ビニル-2-プロピルナフタレン、1-ビニル-3-プロピルナフタレン、1-ビニル-4-プロピルナフタレン、1-ビニル-5-プロピルナフタレン、1-ビニル-6-プロピルナフタレン、1-ビニル-7-プロピルナフタレン、1-ビニル-8-プロピルナフタレン、2-ビニル-1-プロピルナフタレン、2-ビニル-3-プロピルナフタレン、2-ビニル-4-プロピルナフタレン、2-ビニル-5-プロピルナフタレン、2-ビニル-6-プロピルナフタレン、2-ビニル-7-プロピルナフタレン、及び2-ビニル-8-プロピルナフタレン等が挙げられる。
【0062】
前記アルコキシ置換スチレンとしては、例えば、o-エトキシスチレン、m-エトキシスチレン、p-エトキシスチレン、o-プロポキシスチレン、m-プロポキシスチレン、p-プロポ キシスチレン、o-n-ブトキシスチレン、m-n-ブトキシスチレン、p-n-ブトキシスチレン、o-イソブトキシスチレン、m-イソブトキシスチレン、p-イソブトキシスチレン、o-t-ブトキシスチレン、m-t-ブトキシスチレン、p-t-ブトキシスチレン、o-n-ペントキシスチレン、m-n-ペントキシスチレン、p-n-ペントキシスチレン、α-メチル-o-ブトキシスチレン、α-メチル-m-ブトキシスチレン、α-メチル-p-ブトキシスチレン、o-t-ペントキシスチレン、m-t-ペントキシスチレン、p-t-ペントキシスチレン、o-n-ヘキソキシスチレン、m-n-ヘキソキシスチレン、p-n-ヘキソキシスチレン、α-メチル-o-ペントキシスチレン、α-メチル-m-ペントキシスチレン、α-メチル-p-ペントキシスチレン、o-シクロヘキソキシスチレン、m-シクロヘキソキシスチレン、p-シクロヘキソキシスチレン、o-フェノキシスチレン、m-フェノキシスチレン、及びp-フェノキシスチレン等が挙げられる。
【0063】
前記単官能芳香族化合物は、前記例示の化合物を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記単官能芳香族化合物としては、前記例示の化合物の中でも、スチレン及びp-エチルビニルベンゼンが好ましい。
【0064】
炭素-炭素不飽和二重結合を芳香族環に3つ結合した3官能芳香族化合物としては、例えば、1,2,4-トリビニルベンゼン、1,3,5-トリビニルベンゼン、1,2,4-トリイソプロペニルベンゼン、1,3,5-トリイソプロペニルベンゼン、1,3,5-トリビニルナフタレン、及び3,5,4’-トリビニルビフェニル等が挙げられる。前記3官能芳香族化合物は、前記例示の化合物を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
前記インデン類としては、例えば、インデン、アルキル置換インデン、及びアルキコシインデン等が挙げられる。前記アルキル置換インデンとしては、例えば、メチルインデン、エチルインデン、プロピルインデン、ブチルインデン、t-ブチルインデン、sec-ブチルインデン、n-ペンチルインデン、2-メチル-ブチルインデン、3-メチル-ブチルインデン、n-ヘキシルインデン、2-メチル-ペンチルインデン、3-メチル-ペンチルインデン、4-メチル-ペンチルインデン等が挙げられる。前記アルキコシインデンとしては、例えば、メトキシインデン、エトキシインデン、プトキシインデン、ブトキシインデン、t-ブトキシインデン、sec-ブトキシインデン、n-ペントキシインデン、2-メチル-ブトキシインデン、3-メチル-ブトキシインデン、n-ヘキトシインデン、2-メチル-ペントキシインデン、3-メチル-ペントキシインデン、4-メチル-ペントキシインデン等のアルキコシインデン等が挙げられる。前記インデン類は、前記例示の化合物を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
前記アセナフチレン類としては、例えば、アセナフチレン、アルキルアセナフチレン類、ハロゲン化アセナフチレン類、及びフェニルアセナフチレン類等が挙げられる。前記アルキルアセナフチレン類としては、例えば、1-メチルアセナフチレン、3-メチルアセナフチレン、4-メチルアセナフチレン、5-メチルアセナフチレン、1-エチルアセナフチレン、3-エチルアセナフチレン、4-エチルアセナフチレン、5-エチルアセナフチレン等が挙げられる。前記ハロゲン化アセナフチレン類としては、例えば、1-クロロアセナフチレン、3-クロロアセナフチレン、4-クロロアセナフチレン、5-クロロアセナフチレン、1-ブロモアセナフチレン、3-ブロモアセナフチレン、4-ブロモアセナフチレン、5-ブロモアセナフチレン等が挙げられる。前記フェニルアセナフチレン類としては、例えば、1-フェニルアセナフチレン、3-フェニルアセナフチレン、4-フェニルアセナフチレン、5-フェニルアセナフチレン等が挙げられる。前記アセナフチレン類は、前記例示の化合物を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
前記芳香族重合体は、前記2官能芳香族化合物に由来の構造単位を有するだけでなく、他の構造単位を有する場合、前記2官能芳香族化合物に由来の構造単位と、前記単官能芳香族化合物に由来の構造単位等の、他の構造単位との共重合体である。この共重合体は、ブロック共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよい。
【0068】
前記重合体は、上述したように、分子中に前記式(2)で表される構造単位を有する重合体であれば、特に限定されない。そして、前記式(2)で表される構造単位は、下記式(3)で表される構造単位を含むことが好ましい。すなわち、前記重合体は、分子中に下記式(3)で表される構造単位を有する重合体であることが好ましい。
【0069】
【化13】
式(3)中、R
4~R
6は、式(2)中のR
4~R
6と同様である。具体的には、R
4~R
6は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を示す。R
7は、炭素数6~12のアリーレン基を示す。
【0070】
前記式(3)における前記炭素数6~12のアリーレン基は、特に限定されない。このアリーレン基としては、例えば、フェニレン基等の単環芳香族基や、芳香族が単環ではなく、ナフタレン環等の二環芳香族である二環芳香族基等が挙げられる。また、このアリーレン基には、芳香族環に結合する水素原子が、アルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、又はアルキニルカルボニル基等の官能基で置換された誘導体も含む。
【0071】
前記式(3)で表される構造単位は、下記式(4)で表される構造単位を含むことが好ましい。すなわち、前記式(3)で表される構造単位において、R7が、フェニレン基であることが好ましい。また、前記フェニレン基の中でも、p-フェニレン基がより好ましい。
【0072】
【化14】
式(4)中、R
4~R
6は、式(2)中のR
4~R
6と同様である。具体的には、R
4~R
6は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を示す。
【0073】
前記重合体は、下記式(5)で表される構造単位を分子中にさらに有する重合体を含むことが好ましい。すなわち、前記重合体は、下記式(5)で表される構造単位として、前記炭素-炭素不飽和二重結合を芳香族環に1つ結合した単官能芳香族化合物に由来の構造単位を含むことが好ましい。よって、前記重合体は、前記式(2)で表される構造単位と下記式(5)で表される構造単位とを分子中に有する重合体であることが好ましい。すなわち、前記重合体は、分子中に前記式(2)で表される構造単位と下記式(5)で表される構造単位とを有する重合体であれば、前記式(2)で表される構造単位及び下記式(5)で表される構造単位以外の構造単位((2)及び(5)以外の構造単位)を有していてもよい。また、前記重合体は、前記(2)及び(5)以外の構造単位を含んでもよいし、前記式(2)で表される構造単位が繰り返し結合した繰り返し単位と下記式(5)で表される繰り返し結合した繰り返し単位と前記(2)及び(5)以外の構造単位が繰り返し結合した繰り返し単位とが、ランダムに結合した重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよい。
【0074】
【化15】
式(5)中、R
8~R
10は、それぞれ独立している。すなわち、R
8~R
10は、それぞれ同一の基であっても、異なる基であってもよい。また、R
8~R
10は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を示す。R
11は、アリール基を示す。
【0075】
前記式(5)においてR8~R10で示される前記炭素数1~6のアルキル基は、特に限定されず、前記式(2)においてR4~R6で示される前記炭素数1~6のアルキル基と同様であってもよい。前記式(5)においてR8~R10で示される前記炭素数1~6のアルキル基は、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、及びヘキシル基等が挙げられる。
【0076】
前記式(5)における前記アリール基は、特に限定されず、無置換のアリール基であってもよいし、芳香族環に結合する水素原子がアルキル基等で置換されたアリール基であってもよい。また、前記無置換のアリール基としては、芳香族環1個を有する芳香族炭化水素から水素原子1個を除いた基であってもよいし、独立した芳香族環2個以上を有する芳香族炭化水素(例えば、ビフェニル等)から水素原子1個を除いた基であってもよい。前記式(5)における前記アリール基は、例えば、炭素数6~12の無置換のアリール基、及び炭素数6~12のアリール基の水素原子が炭素数1~6のアルキル基で置換された炭素数6~18のアリーレン基等が挙げられる。また、前記炭素数6~12の無置換のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びビフェニリル基等が挙げられる。前記式(5)における前記アリール基、すなわち、R11は、より具体的には、下記表1及び表2に記載のアリール基等が挙げられる。
【0077】
【0078】
【表2】
前記化合物(A)は、分子中に上記式(1)で表される基を少なくとも1つ有する化合物であればよく、例えば、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物であってもよいし、前記重合体であってもよいし、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物と前記重合体とを併用してもよい。
【0079】
前記化合物(A)の重量平均分子量は、1200~40000であることが好ましく、1200~35000であることがより好ましい。前記重量平均分子量が低すぎると、耐熱性等が低下する傾向がある。また、前記重量平均分子量が高すぎると、成形性等が低下する傾向がある。よって、前記樹脂組成物の重量平均分子量が上記範囲内であると、耐熱性及び成形性に優れたものとなる。なお、ここで、重量平均分子量は、一般的な分子量測定で測定したものであればよく、具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定した値等が挙げられる。
【0080】
前記重合体において、前記重合体における構造単位の合計を100モル%とするとき、前記式(2)で表される構造単位のモル含有率は、上記重合平均分子量の範囲内になるモル含有率であることが好ましく、具体的には、2~95モル%であることが好ましく、8~81モル%であることがより好ましい。また、前記式(3)で表される構造単位のモル含有率や前記式(4)で表される構造単位のモル含有率は、前記式(2)で表される構造単位のモル含有率と同様であり、具体的には、2~95モル%であることが好ましく、8~81モル%であることがより好ましい。また、前記重合体が、前記式(2)で表される構造単位と下記式(5)で表される構造単位とを分子中に有する重合体の場合、前記式(2)で表される構造単位のモル含有率は、2~95モル%であることが好ましく、8~81モル%であることがより好ましく、前記式(5)で表される構造単位のモル含有率は、5~98モル%であることが好ましく、19~92モル%であることがより好ましい。
【0081】
前記重合体において、前記式(2)で表される構造単位の平均数は、上記重合平均分子量の範囲内になる数であることが好ましく、具体的には、1~160であることが好ましく、3~140であることがより好ましい。また、前記式(3)で表される構造単位の平均数や前記式(4)で表される構造単位の平均数は、前記式(2)で表される構造単位の平均数と同様であり、具体的には、1~160であることが好ましく、3~140であることがより好ましい。また、前記重合体が、前記式(2)で表される構造単位と下記式(5)で表される構造単位とを分子中に有する重合体の場合、前記式(2)で表される構造単位の平均数は、1~160であることが好ましく、3~140であることがより好ましく、前記式(5)で表される構造単位の平均数は、2~350であることが好ましく、4~300であることがより好ましい。
【0082】
前記重合体の具体例としては、分子中に下記式(16)で表される構造単位を含み、下記式(15)で表される構造単位及び下記式(17)で表される構造単位のうちの少なくとも一方をさらに含む重合体が挙げられる。この重合体は、ブロック共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよい。
【0083】
【0084】
【0085】
【化18】
分子中に前記式(16)で表される構造単位を含み、前記式(15)で表される構造単位及び前記式(17)で表される構造単位のうちの少なくとも一方をさらに含む重合体では、前記式(15)で表される構造単位、前記式(16)で表される構造単位、及び前記式(17)で表される構造単位のモル含有率が、それぞれ、0~92モル%、8~54モル%、及び0~89モル%であることが好ましい。また、前記式(15)で表される構造単位の平均数は、0~350であることが好ましく、前記式(16)で表される構造単位の平均数は、1~160であることが好ましく、前記式(17)で表される構造単位の平均数は、0~270であることが好ましい。前記重合体としては、例えば、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製の、ODV-XET(X03)、ODV-XET(X04)、及びODV-XET(X05)の、市販品等が用いられる。
【0086】
前記化合物(A)の、前記式(1)で表され、R1~R3が水素原子である基に含まれるビニル基の当量が、250~1200であることが好ましく、300~1100であることがより好ましい。前記当量が小さすぎると、前記式(1)で表される基が多くなりすぎ、反応性が高くなりすぎて、例えば、樹脂組成物の保存性が低下したり、樹脂組成物の流動性が低下してしまう等の不具合が発生するおそれがある。前記当量が小さすぎる樹脂組成物を用いると、流動性不足等により、例えば、多層成形時にボイドが発生する等の成形不良が発生し、信頼度の高い配線板が得られにくいという成形性の問題が発生するおそれがある。また、前記当量が大きすぎると、前記式(1)で表される基が少なくなりすぎ、硬化物の耐熱性が不充分になる傾向がある。よって、前記樹脂組成物の、前記式(1)で表される基の当量が上記範囲内であると、耐熱性及び成形性に優れたものとなる。なお、前記式(1)で表され、R1~R3が水素原子である基に含まれるビニル基の当量は、いわゆるビニル当量である。
【0087】
(アセナフチレン化合物)
前記アセナフチレン化合物(B)は、アセナフチレン骨格を有する化合物であれば、特に限定されず、アセナフチレン及びアセナフチレン誘導体等が挙げられる。前記アセナフチレン化合物(B)は、具体的には、アセナフチレン、ヒドロキシアセナフチレン化合物、アルキルアセナフチレン化合物、アルコキシアセナフチレン化合物、及びハロゲン化アセナフチレン化合物等が挙げられる。前記ヒドロキシアセナフチレン化合物としては、例えば、3-ヒドロキシアセナフチレン、4-ヒドロキシアセナフチレン、5-ヒドロキシアセナフチレン、及び5,6-ジヒドロキシアセナフチレン等が挙げられる。また、前記アルキルアセナフチレン化合物としては、例えば、3-メチルアセナフチレン、3-エチルアセナフチレン、3-プロピルアセナフチレン、4-メチルアセナフチレン、4-エチルアセナフチレン、4-プロピルアセナフチレン、5-メチルアセナフチレン、5-エチルアセナフチレン、5-プロピルアセナフチレン、3,8-ジメチルアセナフチレン、及び5,6-ジメチルアセナフチレン化合物等が挙げられる。また、前記アルコキシアセナフチレン化合物としては、例えば、3-メトキシアセナフチレン、3-エトキシアセナフチレン、3-ブトキシアセナフチレン、4-メトキシアセナフチレン、4-エトキシアセナフチレン、4-ブトキシアセナフチレン、5-メトキシアセナフチレン、5-エトキシアセナフチレン、5-ブトキシアセナフチレン等が挙げられる。前記ハロゲン化アセナフチレン化合物としては、例えば、3-クロロアセナフチレン、3-ブロモアセナフチレン、4-クロロアセナフチレン、4-ブロモアセナフチレン、5-クロロアセナフチレン、5-ブロモアセナフチレン等が挙げられる。また、前記アセナフチレン化合物(B)は、上記例示化合物を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
(含有量)
前記化合物(A)の含有量は、前記化合物(A)と前記アセナフチレン化合物(B)との合計質量100質量部に対して、50~95質量部であることが好ましく、65~95質量部であることがより好ましい。また、前記アセナフチレン化合物(B)の含有量は、前記化合物(A)と前記アセナフチレン化合物(B)との合計質量100質量部に対して、5~50質量部であることが好ましく、5~35質量部であることがより好ましい。前記化合物(A)の含有量が少なすぎると、すなわち、前記アセナフチレン化合物(B)の含有量が多すぎると、低誘電正接を充分に発揮できない傾向がある。また、前記化合物(A)の含有量が多すぎると、すなわち、前記アセナフチレン化合物(B)の含有量が少なすぎると、耐熱性を充分に発揮できない傾向がある。よって、前記化合物(A)、及び前記アセナフチレン化合物(B)の各含有量が、上記範囲内であれば、得られた樹脂組成物が、誘電特性が低く、かつ、耐熱性の高い硬化物を好適に得ることができる。
【0089】
前記化合物(A)が前記重合体を含む場合、前記重合体と前記アセナフチレン化合物(B)との含有比は、質量比で、50:50~95:5であることが好ましく、60:40~95:5であることがより好ましい。
【0090】
前記化合物(A)が、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物と前記重合体とを併用する場合、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物の含有量が、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物と前記重合体と前記アセナフチレン化合物(B)との合計100質量部に対して、5~50質量部であることが好ましく、10~40質量部であることがより好ましい。また、前記重合体の含有量が、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物と前記重合体と前記アセナフチレン化合物(B)との合計100質量部に対して、20~95質量部であることが好ましく、30~70質量部であることがより好ましい。
【0091】
(その他の成分)
本実施形態に係る樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、前記化合物(A)、及び前記アセナフチレン化合物(B)以外の成分(その他の成分)を含有してもよい。本実施の形態に係る樹脂組成物に含有されるその他の成分としては、例えば、前記アセナフチレン化合物(B)以外の硬化剤、シランカップリング剤、難燃剤、開始剤、消泡剤、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、染料や顔料、滑剤、及び無機充填材等の添加剤をさらに含んでもよい。また、前記樹脂組成物には、前記化合物(A)以外にも、ポリフェニレンエーテル、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、及び熱硬化性ポリイミド樹脂等の樹脂を含有してもよい。
【0092】
前記硬化剤としては、前記化合物(A)と反応して、前記化合物(A)を含む前記樹脂組成物を硬化させることができる硬化剤であれば、特に限定されない。前記硬化剤は、前記化合物(A)との反応に寄与する官能基を分子中に少なくとも1個以上有する硬化剤等が挙げられる。前記硬化剤としては、例えば、スチレン、スチレン誘導体、分子中にアクリロイル基を有する化合物、分子中にメタクリロイル基を有する化合物、分子中にビニル基を有する化合物、分子中にアリル基を有する化合物、分子中にマレイミド基を有する化合物、変性マレイミド化合物、及び分子中にイソシアヌレート基を有するイソシアヌレート化合物等が挙げられる。
【0093】
前記スチレン誘導体としては、例えば、ブロモスチレン及びジブロモスチレン等が挙げられる。
【0094】
前記分子中にアクリロイル基を有する化合物が、アクリレート化合物である。前記アクリレート化合物としては、分子中にアクリロイル基を1個有する単官能アクリレート化合物、及び分子中にアクリロイル基を2個以上有する多官能アクリレート化合物が挙げられる。前記単官能アクリレート化合物としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、及びブチルアクリレート等が挙げられる。前記多官能アクリレート化合物としては、例えば、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート等が挙げられる。
【0095】
前記分子中にメタクリロイル基を有する化合物が、メタクリレート化合物である。前記メタクリレート化合物としては、分子中にメタクリロイル基を1個有する単官能メタクリレート化合物、及び分子中にメタクリロイル基を2個以上有する多官能メタクリレート化合物が挙げられる。前記単官能メタクリレート化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、及びブチルメタクリレート等が挙げられる。前記多官能メタクリレート化合物としては、例えば、分子中にポリフェニレンエーテル構造及び2つ以上のメタクリロイル基を有する化合物、及びトリシクロデカンジメタノールジメタクリレート等が挙げられる。前記分子中にポリフェニレンエーテル構造及び2つ以上のメタクリロイル基を有する化合物としては、ポリフェニレンエーテルの末端水酸基をメタクリル基で変性したメタクリル変性ポリフェニレンエーテル化合物等が挙げられ、具体的には、前記式(8)で表される変性ポリフェニレンエーテル化合物、又は前記式(9)で表される変性ポリフェニレンエーテル化合物におけるX1及びX2の部分の置換基を、メタクリロイル基に置き換えた化合物等が挙げられる。このメタクリル変性ポリフェニレンエーテル化合物としては、より具体的には、下記式(18)で表される化合物等が挙げられる。
【0096】
【化19】
上記式(18)において、s及びtは、上記式(10)及び上記式(11)におけるs及びtと同じである。また、上記式(18)において、Yは、上記式(9)におけるYと同じである。
【0097】
前記分子中にビニル基を有する化合物が、ビニル化合物である。前記ビニル化合物としては、分子中にビニル基を1個有する単官能ビニル化合物(モノビニル化合物)、及び分子中にビニル基を2個以上有する多官能ビニル化合物が挙げられる。前記多官能ビニル化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン、及びポリブタジエン等が挙げられる。
【0098】
前記分子中にアリル基を有する化合物が、アリル化合物である。前記アリル化合物としては、分子中にアリル基を1個有する単官能アリル化合物、及び分子中にアリル基を2個以上有する多官能アリル化合物が挙げられる。前記多官能アリル化合物としては、例えば、ジアリルフタレート(DAP)等が挙げられる。
【0099】
前記分子中にマレイミド基を有する化合物が、マレイミド化合物である。前記マレイミド化合物としては、分子中にマレイミド基を1個有する単官能マレイミド化合物、及び分子中にマレイミド基を2個以上有する多官能マレイミド化合物が挙げられる。前記変性マレイミド化合物としては、例えば、分子中の一部がアミン化合物で変性された変性マレイミド化合物、分子中の一部がシリコーン化合物で変性された変性マレイミド化合物、及び分子中の一部がアミン化合物及びシリコーン化合物で変性された変性マレイミド化合物等が挙げられる。
【0100】
前記分子中にイソシアヌレート基を有する化合物が、イソシアヌレート化合物である。前記イソシアヌレート化合物としては、分子中にアルケニル基をさらに有する化合物(アルケニルイソシアヌレート化合物)等が挙げられ、例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)等のトリアルケニルイソシアヌレート化合物等が挙げられる。
【0101】
前記硬化剤は、上記の中でも、例えば、分子中にアクリロイル基を2個以上有する多官能アクリレート化合物、分子中にメタクリロイル基を2個以上有する多官能メタアクリレート化合物、分子中にビニル基を2個以上有する多官能ビニル化合物、スチレン誘導体、分子中にアリル基を有するアリル化合物、分子中にマレイミド基を有するマレイミド化合物、及び分子中にイソシアヌレート基を有するイソシアヌレート化合物が、前記樹脂組成物の硬化物の耐熱性をより高めることができる点で好ましい。このことは、これらの硬化剤を用いることによって、硬化反応により、前記樹脂組成物がより好適に硬化されることによると考えられる。
【0102】
前記硬化剤は、上記硬化剤を単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0103】
前記硬化剤は、重量平均分子量が100~5000であることが好ましく、100~4000であることがより好ましく、100~3000であることがさらに好ましい。前記硬化剤の重量平均分子量が低すぎると、前記硬化剤が樹脂組成物の配合成分系から揮発しやすくなるおそれがある。また、前記硬化剤の重量平均分子量が高すぎると、樹脂組成物のワニスの粘度や、加熱成形時の溶融粘度が高くなりすぎるおそれがある。よって、前記硬化剤の重量平均分子量がこのような範囲内であると、硬化物の耐熱性により優れた樹脂組成物が得られる。このことは、前記化合物(A)との反応により、前記化合物(A)を含有する樹脂組成物を好適に硬化させることができるためと考えられる。なお、ここで、重量平均分子量は、一般的な分子量測定方法で測定したものであればよく、具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定した値等が挙げられる。
【0104】
前記硬化剤は、前記化合物(A)との反応に寄与する官能基の、前記硬化剤1分子当たりの平均個数(官能基数)は、前記硬化剤の重量平均分子量によって異なるが、例えば、1~20個であることが好ましく、2~18個であることがより好ましい。この官能基数が少なすぎると、硬化物の耐熱性としては充分なものが得られにくい傾向がある。また、官能基数が多すぎると、反応性が高くなりすぎ、例えば、樹脂組成物の保存性が低下したり、樹脂組成物の流動性が低下してしまう等の不具合が発生するおそれがある。
【0105】
本実施形態に係る樹脂組成物は、上述したように、シランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤は、樹脂組成物に含有してもよいし、樹脂組成物に含有されている無機充填材に予め表面処理されたシランカップリング剤として含有していてもよい。この中でも、前記シランカップリング剤としては、無機充填材に予め表面処理されたシランカップリング剤として含有することが好ましく、このように無機充填材に予め表面処理されたシランカップリング剤として含有し、さらに、樹脂組成物にもシランカップリング剤を含有させることがより好ましい。また、プリプレグの場合、そのプリプレグには、繊維質基材に予め表面処理されたシランカップリング剤として含有していてもよい。
【0106】
前記シランカップリング剤としては、例えば、ビニル基、スチリル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、フェニルアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。すなわち、このシランカップリング剤は、反応性官能基として、ビニル基、スチリル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、及びフェニルアミノ基のうち、少なくとも1つを有し、さらに、メトキシ基やエトキシ基等の加水分解性基を有する化合物等が挙げられる。
【0107】
前記シランカップリング剤としては、ビニル基を有するものとして、例えば、ビニルトリエトキシシラン、及びビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。前記シランカップリング剤としては、スチリル基を有するものとして、例えば、p-スチリルトリメトキシシラン、及びp-スチリルトリエトキシシラン等が挙げられる。前記シランカップリング剤としては、メタクリロイル基を有するものとして、例えば、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、及び3-メタクリロキシプロピルエチルジエトキシシラン等が挙げられる。前記シランカップリング剤としては、アクリロイル基を有するものとして、例えば、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、及び3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。前記シランカップリング剤としては、フェニルアミノ基を有するものとして、例えば、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン及びN-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0108】
本実施形態に係る樹脂組成物は、上述したように、難燃剤を含有してもよい。難燃剤を含有することによって、樹脂組成物の硬化物の難燃性を高めることができる。前記難燃剤は、特に限定されない。具体的には、臭素系難燃剤等のハロゲン系難燃剤を使用する分野では、例えば、融点が300℃以上のエチレンジペンタブロモベンゼン、エチレンビステトラブロモイミド、デカブロモジフェニルオキサイド、及びテトラデカブロモジフェノキシベンゼンが好ましい。ハロゲン系難燃剤を使用することにより、高温時におけるハロゲンの脱離が抑制でき、耐熱性の低下を抑制できると考えられる。また、ハロゲンフリーが要求される分野では、リン酸エステル系難燃剤、ホスファゼン系難燃剤、ビスジフェニルホスフィンオキサイド系難燃剤、及びホスフィン酸塩系難燃剤が挙げられる。リン酸エステル系難燃剤の具体例としては、ジキシレニルホスフェートの縮合リン酸エステルが挙げられる。ホスファゼン系難燃剤の具体例としては、フェノキシホスファゼンが挙げられる。ビスジフェニルホスフィンオキサイド系難燃剤の具体例としては、キシリレンビスジフェニルホスフィンオキサイドが挙げられる。ホスフィン酸塩系難燃剤の具体例としては、例えば、ジアルキルホスフィン酸アルミニウム塩のホスフィン酸金属塩が挙げられる。前記難燃剤としては、例示した各難燃剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0109】
本実施形態に係る樹脂組成物には、上述したように、開始剤(反応開始剤)を含有してもよい。前記樹脂組成物は、前記化合物(A)と前記アセナフチレン化合物(B)とからなるものであっても、硬化反応は進行し得る。しかしながら、プロセス条件によっては硬化が進行するまで高温にすることが困難な場合があるので、反応開始剤を添加してもよい。反応開始剤は、前記化合物(A)と前記アセナフチレン化合物(B)との硬化反応を促進することができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、α,α’-ジ(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3-ヘキシン、過酸化ベンゾイル、3,3’,5,5’-テトラメチル-1,4-ジフェノキノン、クロラニル、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノキシル、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、アゾビスイソブチロニトリル等の酸化剤が挙げられる。また、必要に応じて、カルボン酸金属塩等を併用することができる。そうすることによって、硬化反応を一層促進させるができる。また、反応開始剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記樹脂組成物に前記開始剤を含有させる場合、その含有量は、前記化合物(A)と前記アセナフチレン化合物(B)との合計質量100質量部に対して、0.01~2質量部であることが好ましく、0.1~1質量部であることがより好ましい。
【0110】
本実施形態に係る樹脂組成物には、上述したように、無機充填材等の充填材を含有してもよい。充填材としては、樹脂組成物の硬化物の、耐熱性及び難燃性を高めるために添加するもの等が挙げられ、特に限定されない。また、充填材を含有させることによって、耐熱性及び難燃性等をさらに高めることができる。充填材としては、具体的には、球状シリカ等のシリカ、アルミナ、酸化チタン、及びマイカ等の金属酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、タルク、ホウ酸アルミニウム、硫酸バリウム、及び炭酸カルシウム等が挙げられる。また、充填材としては、この中でも、シリカ、マイカ、及びタルクが好ましく、球状シリカがより好ましい。また、充填材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、充填材としては、そのまま用いてもよいし、前記シランカップリング剤で表面処理したものを用いてもよい。また、充填材を含有する場合、その含有率(フィラーコンテンツ)は、前記樹脂組成物に対して、30~270質量%であることが好ましく、50~250質量%であることがより好ましい。
【0111】
(製造方法)
前記樹脂組成物を製造する方法としては、特に限定されず、例えば、前記化合物(A)、及び前記アセナフチレン化合物(B)を、所定の含有量となるように混合する方法等が挙げられる。具体的には、有機溶媒を含むワニス状の組成物を得る場合は、後述する方法等が挙げられる。
【0112】
また、本実施形態に係る樹脂組成物を用いることによって、以下のように、プリプレグ、金属張積層板、配線板、樹脂付き金属箔、及び樹脂付きフィルムを得ることができる。
【0113】
[プリプレグ]
図1は、本発明の実施形態に係るプリプレグ1の一例を示す概略断面図である。
【0114】
本実施形態に係るプリプレグ1は、
図1に示すように、前記樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物2と、繊維質基材3とを備える。このプリプレグ1は、前記樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物2と、前記樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物2の中に存在する繊維質基材3とを備える。
【0115】
なお、本実施形態において、半硬化物とは、樹脂組成物をさらに硬化しうる程度に途中まで硬化された状態のものである。すなわち、半硬化物は、樹脂組成物を半硬化した状態の(Bステージ化された)ものである。例えば、樹脂組成物は、加熱すると、最初、粘度が徐々に低下し、その後、硬化が開始し、その後、硬化が開始し、粘度が徐々に上昇する。このような場合、半硬化としては、粘度が上昇し始めてから、完全に硬化する前の間の状態等が挙げられる。
【0116】
また、本実施形態に係る樹脂組成物を用いて得られるプリプレグとしては、上記のような、前記樹脂組成物の半硬化物を備えるものであってもよいし、また、硬化させていない前記樹脂組成物そのものを備えるものであってもよい。すなわち、前記樹脂組成物の半硬化物(Bステージの前記樹脂組成物)と、繊維質基材とを備えるプリプレグであってもよいし、硬化前の前記樹脂組成物(Aステージの前記樹脂組成物)と、繊維質基材とを備えるプリプレグであってもよい。また、前記樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物としては、前記樹脂組成物を乾燥又は加熱乾燥させたものであってもよい。
【0117】
プリプレグを製造する際には、プリプレグを形成するための基材である繊維質基材3に含浸するために、樹脂組成物2は、ワニス状に調製されて用いられることが多い。すなわち、樹脂組成物2は、通常、ワニス状に調製された樹脂ワニスであることが多い。このようなワニス状の樹脂組成物(樹脂ワニス)は、例えば、以下のようにして調製される。
【0118】
まず、有機溶媒に溶解できる各成分を、有機溶媒に投入して溶解させる。この際、必要に応じて、加熱してもよい。その後、必要に応じて用いられる、有機溶媒に溶解しない成分を添加して、ボールミル、ビーズミル、プラネタリーミキサー、ロールミル等を用いて、所定の分散状態になるまで分散させることにより、ワニス状の樹脂組成物が調製される。ここで用いられる有機溶媒としては、前記化合物(A)、及びアセナフチレン化合物(B)等を溶解させ、硬化反応を阻害しないものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、トルエンやメチルエチルケトン(MEK)等が挙げられる。
【0119】
前記プリプレグの製造方法は、前記プリプレグを製造することができれば、特に限定されない。具体的には、プリプレグを製造する際には、上述した本実施形態で用いる樹脂組成物は、上述したように、ワニス状に調製し、樹脂ワニスとして用いられることが多い。
【0120】
前記繊維質基材としては、具体的には、例えば、ガラスクロス、アラミドクロス、ポリエステルクロス、ガラス不織布、アラミド不織布、ポリエステル不織布、パルプ紙、及びリンター紙が挙げられる。なお、ガラスクロスを用いると、機械強度が優れた積層板が得られ、特に偏平処理加工したガラスクロスが好ましい。偏平処理加工として、具体的には、例えば、ガラスクロスを適宜の圧力でプレスロールにて連続的に加圧してヤーンを偏平に圧縮する方法が挙げられる。なお、一般的に使用される繊維質基材の厚さは、例えば、0.01mm以上、0.3mm以下である。
【0121】
前記プリプレグの製造方法は、前記プリプレグを製造することができれば、特に限定されない。具体的には、プリプレグを製造する際には、上述した本実施形態に係る樹脂組成物は、上述したように、ワニス状に調製し、樹脂ワニスとして用いられることが多い。
【0122】
プリプレグ1を製造する方法としては、例えば、樹脂組成物2、例えば、ワニス状に調製された樹脂組成物2を繊維質基材3に含浸させた後、乾燥する方法が挙げられる。
【0123】
樹脂組成物2は、繊維質基材3へ、浸漬及び塗布等によって含浸される。必要に応じて複数回繰り返して含浸することも可能である。また、この際、組成や濃度の異なる複数の樹脂組成物を用いて含浸を繰り返すことにより、最終的に希望とする組成及び含浸量に調整することも可能である。
【0124】
樹脂組成物(樹脂ワニス)2が含浸された繊維質基材3は、所望の加熱条件、例えば、80℃以上180℃以下で1分間以上10分間以下加熱される。加熱によって、硬化前(Aステージ)又は半硬化状態(Bステージ)のプリプレグ1が得られる。なお、前記加熱によって、前記樹脂ワニスから有機溶媒を揮発させ、有機溶媒を減少又は除去させることができる。
【0125】
本実施形態に係る樹脂組成物は、誘電特性が低く、耐熱性の高い硬化物であって、吸水処理後であっても、低誘電特性を好適に維持することができる硬化物が好適に得られる樹脂組成物である。このため、この樹脂組成物又はこの樹脂組成物の半硬化物を備えるプリプレグは、誘電特性が低く、耐熱性の高い硬化物であって、吸水処理後であっても、低誘電特性を好適に維持することができる硬化物が好適に得られるプリプレグである。そして、このプリプレグは、誘電特性が低く、耐熱性の高く、吸水処理後であっても、低誘電特性を好適に維持することができる絶縁層を備える配線板を製造することができるプリプレグである。
【0126】
[金属張積層板]
図2は、本発明の実施形態に係る金属張積層板11の一例を示す概略断面図である。
【0127】
金属張積層板11は、
図2に示すように、
図1に示したプリプレグ1の硬化物を含む絶縁層12と、絶縁層12とともに積層される金属箔13とから構成されている。すなわち、金属張積層板11は、樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層12と、絶縁層12の上に設けられた金属箔13とを有する。また、絶縁層12は、前記樹脂組成物の硬化物からなるものであってもよいし、前記プリプレグの硬化物からなるものであってもよい。また、前記金属箔13の厚みは、最終的に得られる配線板に求められる性能等に応じて異なり、特に限定されない。金属箔13の厚みは、所望の目的に応じて、適宜設定することができ、例えば、0.2~70μmであることが好ましい。また、前記金属箔13としては、例えば、銅箔及びアルミニウム箔等が挙げられ、前記金属箔が薄い場合は、ハンドリング性を向上のために剥離層及びキャリアを備えたキャリア付銅箔であってもよい。
【0128】
前記金属張積層板11を製造する方法としては、前記金属張積層板11を製造することができれば、特に限定されない。具体的には、プリプレグ1を用いて金属張積層板11を作製する方法が挙げられる。この方法としては、プリプレグ1を1枚又は複数枚重ね、さらに、その上下の両面又は片面に銅箔等の金属箔13を重ね、金属箔13およびプリプレグ1を加熱加圧成形して積層一体化することによって、両面金属箔張り又は片面金属箔張りの積層板11を作製する方法等が挙げられる。すなわち、金属張積層板11は、プリプレグ1に金属箔13を積層して、加熱加圧成形して得られる。また、加熱加圧条件は、製造する金属張積層板11の厚みやプリプレグ1の組成物の種類等により適宜設定することができる。例えば、温度を170~210℃、圧力を3.5~4MPa、時間を60~150分間とすることができる。また、前記金属張積層板は、プリプレグを用いずに製造してもよい。例えば、ワニス状の樹脂組成物を金属箔上に塗布し、金属箔上に樹脂組成物を含む層を形成した後に、加熱加圧する方法等が挙げられる。
【0129】
本実施形態に係る樹脂組成物は、誘電特性が低く、耐熱性の高い硬化物であって、吸水処理後であっても、低誘電特性を好適に維持することができる硬化物が好適に得られる樹脂組成物である。このため、この樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層を備える金属張積層板は、誘電特性が低く、耐熱性の高く、吸水処理後であっても、低誘電特性を好適に維持することができる絶縁層を備える金属張積層板である。そして、この金属張積層板は、誘電特性が低く、耐熱性の高く、吸水処理後であっても、低誘電特性を好適に維持することができる絶縁層を備える配線板を製造することができる金属張積層板である。
【0130】
[配線板]
図3は、本発明の実施形態に係る配線板21の一例を示す概略断面図である。
【0131】
本実施形態に係る配線板21は、
図3に示すように、
図1に示したプリプレグ1を硬化して用いられる絶縁層12と、絶縁層12ともに積層され、金属箔13を部分的に除去して形成された配線14とから構成されている。すなわち、前記配線板21は、樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層12と、絶縁層12の上に設けられた配線14とを有する。また、絶縁層12は、前記樹脂組成物の硬化物からなるものであってもよいし、前記プリプレグの硬化物からなるものであってもよい。
【0132】
前記配線板21を製造する方法は、前記配線板21を製造することができれば、特に限定されない。具体的には、前記プリプレグ1を用いて配線板21を作製する方法等が挙げられる。この方法としては、例えば、上記のように作製された金属張積層板11の表面の金属箔13をエッチング加工等して配線形成をすることによって、絶縁層12の表面に回路として配線が設けられた配線板21を作製する方法等が挙げられる。すなわち、配線板21は、金属張積層板11の表面の金属箔13を部分的に除去することにより回路形成して得られる。また、回路形成する方法としては、上記の方法以外に、例えば、セミアディティブ法(SAP:Semi Additive Process)やモディファイドセミアディティブ法(MSAP:Modified Semi Additive Process)による回路形成等が挙げられる。配線板21は、誘電特性が低く、耐熱性の高く、吸水処理後であっても、低誘電特性を好適に維持することができる絶縁層12を有する。
【0133】
このような配線板は、誘電特性が低く、耐熱性の高く、吸水処理後であっても、低誘電特性を好適に維持することができる絶縁層を備える配線板である。
【0134】
[樹脂付き金属箔]
図4は、本実施の形態に係る樹脂付き金属箔31の一例を示す概略断面図である。
【0135】
本実施形態に係る樹脂付き金属箔31は、
図4に示すように、前記樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含む樹脂層32と、金属箔13とを備える。この樹脂付き金属箔31は、前記樹脂層32の表面上に金属箔13を有する。すなわち、この樹脂付き金属箔31は、前記樹脂層32と、前記樹脂層32とともに積層される金属箔13とを備える。また、前記樹脂付き金属箔31は、前記樹脂層32と前記金属箔13との間に、他の層を備えていてもよい。
【0136】
また、前記樹脂層32としては、上記のような、前記樹脂組成物の半硬化物を含むものであってもよいし、また、硬化させていない前記樹脂組成物を含むものであってもよい。すなわち、前記樹脂付き金属箔31は、前記樹脂組成物の半硬化物(Bステージの前記樹脂組成物)を含む樹脂層と、金属箔とを備える樹脂付き金属箔であってもよいし、硬化前の前記樹脂組成物(Aステージの前記樹脂組成物)を含む樹脂層と、金属箔とを備える樹脂付き金属箔であってもよい。また、前記樹脂層としては、前記樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含んでいればよく、繊維質基材を含んでいても、含んでいなくてもよい。また、前記樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物としては、前記樹脂組成物を乾燥又は加熱乾燥させたものであってもよい。また、繊維質基材としては、プリプレグの繊維質基材と同様のものを用いることができる。
【0137】
また、金属箔としては、金属張積層板に用いられる金属箔を限定なく用いることができる。金属箔としては、例えば、銅箔及びアルミニウム箔等が挙げられる。
【0138】
前記樹脂付き金属箔31及び前記樹脂付きフィルム41は、必要に応じて、カバーフィル等を備えてもよい。カバーフィルムを備えることにより、異物の混入等を防ぐことができる。前記カバーフィルムとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、及びこれらのフィルムに離型剤層を設けて形成されたフィルム等が挙げられる。
【0139】
前記樹脂付き金属箔31を製造する方法は、前記樹脂付き金属箔31を製造することができれば、特に限定されない。前記樹脂付き金属箔31の製造方法としては、上記ワニス状の樹脂組成物(樹脂ワニス)を金属箔13上に塗布し、加熱することにより製造する方法等が挙げられる。ワニス状の樹脂組成物は、例えば、バーコーターを用いることにより、金属箔13上に塗布される。塗布された樹脂組成物は、例えば、80℃以上180℃以下、1分以上10分以下の条件で加熱される。加熱された樹脂組成物は、未硬化の樹脂層32として、金属箔13上に形成される。なお、前記加熱によって、前記樹脂ワニスから有機溶媒を揮発させ、有機溶媒を減少又は除去させることができる。
【0140】
本実施形態に係る樹脂組成物は、誘電特性が低く、耐熱性の高い硬化物であって、吸水処理後であっても、低誘電特性を好適に維持することができる硬化物が好適に得られる樹脂組成物である。このため、この樹脂組成物又はこの樹脂組成物の半硬化物を含む樹脂層を備える樹脂付き金属箔は、誘電特性が低く、耐熱性の高い硬化物であって、吸水処理後であっても、低誘電特性を好適に維持することができる硬化物が好適に得られる樹脂付き金属箔である。そして、この樹脂付き金属箔は、誘電特性が低く、耐熱性の高く、吸水処理後であっても、低誘電特性を好適に維持することができる絶縁層を備える配線板を製造する際に用いることができる。例えば、配線板の上に積層することによって、多層の配線板を製造することができる。このような樹脂付き金属箔を用いて得られた配線板としては、誘電特性が低く、耐熱性の高く、吸水処理後であっても、低誘電特性を好適に維持することができる絶縁層を備える配線板が得られる。
【0141】
[樹脂付きフィルム]
図5は、本実施の形態に係る樹脂付きフィルム41の一例を示す概略断面図である。
【0142】
本実施形態に係る樹脂付きフィルム41は、
図5に示すように、前記樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含む樹脂層42と、支持フィルム43とを備える。この樹脂付きフィルム41は、前記樹脂層42と、前記樹脂層42とともに積層される支持フィルム43とを備える。また、前記樹脂付きフィルム41は、前記樹脂層42と前記支持フィルム43との間に、他の層を備えていてもよい。
【0143】
また、前記樹脂層42としては、上記のような、前記樹脂組成物の半硬化物を含むものであってもよいし、また、硬化させていない前記樹脂組成物を含むものであってもよい。すなわち、前記樹脂付きフィルム41は、前記樹脂組成物の半硬化物(Bステージの前記樹脂組成物)を含む樹脂層と、支持フィルムとを備える樹脂付きフィルムであってもよいし、硬化前の前記樹脂組成物(Aステージの前記樹脂組成物)を含む樹脂層と、支持フィルムとを備える樹脂付きフィルムであってもよい。また、前記樹脂層としては、前記樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含んでいればよく、繊維質基材を含んでいても、含んでいなくてもよい。また、前記樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物としては、前記樹脂組成物を乾燥又は加熱乾燥させたものであってもよい。また、繊維質基材としては、プリプレグの繊維質基材と同様のものを用いることができる。
【0144】
また、支持フィルム43としては、樹脂付きフィルムに用いられる支持フィルムを限定なく用いることができる。前記支持フィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリイミドフィルム、ポリパラバン酸フィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、及びポリアリレートフィルム等の電気絶縁性フィルム等が挙げられる。
【0145】
前記樹脂付きフィルム41は、必要に応じて、カバーフィルム等を備えてもよい。カバーフィルムを備えることにより、異物の混入等を防ぐことができる。前記カバーフィルムとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、及びポリメチルペンテンフィルム等が挙げられる。
【0146】
前記支持フィルム及びカバーフィルムとしては、必要に応じて、マット処理、コロナ処理、離型処理、及び粗化処理等の表面処理が施されたものであってもよい。
【0147】
前記樹脂付きフィルム41を製造する方法は、前記樹脂付きフィルム41を製造することができれば、特に限定されない。前記樹脂付きフィルム41の製造方法は、例えば、上記ワニス状の樹脂組成物(樹脂ワニス)を支持フィルム43上に塗布し、加熱することにより製造する方法等が挙げられる。ワニス状の樹脂組成物は、例えば、バーコーターを用いることにより、支持フィルム43上に塗布される。塗布された樹脂組成物は、例えば、80℃以上180℃以下、1分以上10分以下の条件で加熱される。加熱された樹脂組成物は、未硬化の樹脂層42として、支持フィルム43上に形成される。なお、前記加熱によって、前記樹脂ワニスから有機溶媒を揮発させ、有機溶媒を減少又は除去させることができる。
【0148】
本実施形態に係る樹脂組成物は、誘電特性が低く、耐熱性の高い硬化物であって、吸水処理後であっても、低誘電特性を好適に維持することができる硬化物が好適に得られる樹脂組成物である。このため、この樹脂組成物又はこの樹脂組成物の半硬化物を含む樹脂層を備える樹脂付きフィルムは、誘電特性が低く、耐熱性の高い硬化物であって、吸水処理後であっても、低誘電特性を好適に維持することができる硬化物が好適に得られる樹脂付きフィルムである。そして、この樹脂付きフィルムは、誘電特性が低く、耐熱性の高く、吸水処理後であっても、低誘電特性を好適に維持することができる絶縁層を備える配線板を製造する際に用いることができる。例えば、配線板の上に積層した後に、支持フィルムを剥離すること、又は、支持フィルムを剥離した後に、配線板の上に積層することによって、多層の配線板を製造することができる。このような樹脂付きフィルムを用いて得られた配線板としては、誘電特性が低く、耐熱性の高く、吸水処理後であっても、低誘電特性を好適に維持することができる絶縁層を備える配線板が得られる。
【0149】
本明細書は、上記のように様々な態様の技術を開示しているが、そのうち主な技術を以下に纏める。
【0150】
本発明の一局面は、分子中に下記式(1)で表される基を少なくとも1つ有する化合物(A)と、アセナフチレン化合物(B)とを含むことを特徴とする樹脂組成物である。
【0151】
【化20】
式(1)中、nは、0~10を示し、Zは、アリーレン基を示し、R
1~R
3は、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を示す。
【0152】
このような構成によれば、誘電特性が低く、耐熱性の高い硬化物であって、吸水処理後であっても、低誘電特性を好適に維持することができる硬化物が得られる樹脂組成物を提供することができる。このことは、以下のことによると考えられる。まず、前記化合物(A)を硬化して得られた硬化物は、耐熱性及び低誘電特性に優れると考えられる。さらに、前記アセナフチレン化合物(B)を用いて、前記化合物(A)を硬化させると、優れた低誘電特性を維持しつつ、得られた硬化物のガラス転移温度をより高めることができ、耐熱性をより高めることができると考えられる。前記アセナフチレン化合物(B)を用いて硬化させた、前記化合物(A)の硬化物は、吸水処理後であっても、低誘電特性を好適に維持することができると考えられる。これらのことから、この樹脂組成物は誘電特性が低く、耐熱性の高い硬化物であって、吸水処理後であっても、低誘電特性を好適に維持することができる硬化物が得られる樹脂組成物であると考えられる。
【0153】
また、前記樹脂組成物において、前記化合物(A)の重量平均分子量が、1200~40000であることが好ましい。
【0154】
このような構成によれば、誘電特性が低く、耐熱性の高い硬化物であって、吸水処理後であっても、低誘電特性を好適に維持することができる硬化物が得られ、成形性にも優れた樹脂組成物が得られる。
【0155】
また、前記樹脂組成物において、前記化合物(A)の、前記式(1)で表され、R1~R3が水素原子である基に含まれるビニル基の当量が、250~1200であることが好ましい。
【0156】
このような構成によれば、誘電特性が低く、耐熱性の高い硬化物であって、吸水処理後であっても、低誘電特性を好適に維持することができる硬化物が得られ、成形性にも優れた樹脂組成物が得られる。
【0157】
また、前記樹脂組成物において、前記化合物(A)が、前記式(1)で表される基を分子末端に有する変性ポリフェニレンエーテル化合物を含むことが好ましい。
【0158】
このような構成によれば、誘電特性がより低く、かつ、耐熱性のより高い硬化物が得られる樹脂組成物が得られる。
【0159】
また、前記樹脂組成物において、前記化合物(A)が、分子中に下記式(2)で表される構造単位を有する重合体を含むことが好ましい。
【0160】
【化21】
式(2)中、Zは、アリーレン基を示し、R
1~R
3は、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を示し、R
4~R
6は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を示す。
【0161】
このような構成によれば、誘電特性がより低く、かつ、耐熱性のより高い硬化物が得られる樹脂組成物が得られる。
【0162】
また、前記樹脂組成物において、前記化合物(A)が、前記式(1)で表される基を分子末端に有する変性ポリフェニレンエーテル化合物と、分子中に前記式(2)で表される構造単位を有する重合体とを含むことが好ましい。
【0163】
このような構成によれば、誘電特性がより低く、かつ、耐熱性のより高い硬化物が得られる樹脂組成物が得られる。
【0164】
また、前記樹脂組成物において、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物の含有量が、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物と前記重合体と前記アセナフチレン化合物(B)との合計100質量部に対して、5~50質量部であることが好ましい。
【0165】
このような構成によれば、誘電特性がより低く、かつ、耐熱性のより高い硬化物であって、吸水処理後であっても、低誘電特性をより好適に維持することができる硬化物が得られる樹脂組成物が得られる。
【0166】
また、前記樹脂組成物において、前記重合体の含有量が、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物と前記重合体と前記アセナフチレン化合物(B)との合計100質量部に対して、20~95質量部であることが好ましい。
【0167】
このような構成によれば、誘電特性がより低く、かつ、耐熱性のより高い硬化物であって、吸水処理後であっても、低誘電特性をより好適に維持することができる硬化物が得られる樹脂組成物が得られる。
【0168】
また、前記樹脂組成物において、前記重合体が、前記式(2)で表される構造単位として、炭素-炭素不飽和二重結合を芳香族環に2つ結合した2官能芳香族化合物に由来の構造単位を有する芳香族重合体を含むことが好ましい。また、前記樹脂組成物において、前記芳香族重合体が、炭素-炭素不飽和二重結合を芳香族環に1つ結合した単官能芳香族化合物に由来の構造単位をさらに有していてもよい。
【0169】
このような構成によれば、誘電特性がより低く、かつ、耐熱性のより高い硬化物が得られる樹脂組成物が得られる。
【0170】
また、前記樹脂組成物において、前記式(2)で表される構造単位が、下記式(3)で表される構造単位を含むことが好ましい。
【0171】
【化22】
式(3)中、R
4~R
6は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を示し、R
7は、炭素数6~12のアリーレン基を示す。
【0172】
このような構成によれば、誘電特性がより低く、かつ、耐熱性のより高い硬化物が得られる樹脂組成物が得られる。
【0173】
また、前記樹脂組成物において、前記式(3)で表される構造単位が、下記式(4)で表される構造単位を含むことが好ましい。
【0174】
【化23】
式(4)中、R
4~R
6は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を示す。
【0175】
このような構成によれば、誘電特性がより低く、かつ、耐熱性のより高い硬化物が得られる樹脂組成物が得られる。
【0176】
また、前記樹脂組成物において、前記重合体が、下記式(5)で表される構造単位を分子中にさらに有する重合体を含むことが好ましい。
【0177】
【化24】
式(5)中、R
8~R
10は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を示し、R
11は、アリール基を示す。
【0178】
このような構成によれば、誘電特性がより低く、かつ、耐熱性のより高い硬化物が得られる樹脂組成物が得られる。
【0179】
また、前記樹脂組成物において、前記式(5)で表される構造単位におけるアリール基が、炭素数1~6のアルキル基を有するアリール基を含むことが好ましい。
【0180】
このような構成によれば、誘電特性がより低く、かつ、耐熱性のより高い硬化物が得られる樹脂組成物が得られる。
【0181】
また、前記樹脂組成物において、前記重合体と前記アセナフチレン化合物(B)との含有比が、質量比で、50:50~95:5であることが好ましい。
【0182】
このような構成によれば、誘電特性が低く、耐熱性の高い硬化物であって、吸水処理後であっても、低誘電特性を好適に維持することができる硬化物が得られ、成形性にも優れた樹脂組成物が得られる。
【0183】
また、本発明の他の一局面は、前記樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物と、繊維質基材とを備えるプリプレグである。
【0184】
このような構成によれば、誘電特性が低く、耐熱性の高い硬化物であって、吸水処理後であっても、低誘電特性を好適に維持することができる硬化物が好適に得られるプリプレグを提供することができる。
【0185】
また、本発明の他の一局面は、前記樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含む樹脂層と、支持フィルムとを備える樹脂付きフィルムである。
【0186】
このような構成によれば、誘電特性が低く、耐熱性の高い硬化物であって、吸水処理後であっても、低誘電特性を好適に維持することができる硬化物が好適に得られる樹脂付きフィルムを提供することができる。
【0187】
また、本発明の他の一局面は、前記樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含む樹脂層と、金属箔とを備える樹脂付き金属箔である。
【0188】
このような構成によれば、誘電特性が低く、耐熱性の高い硬化物であって、吸水処理後であっても、低誘電特性を好適に維持することができる硬化物が好適に得られる樹脂付き金属箔を提供することができる。
【0189】
また、本発明の他の一局面は、前記樹脂組成物の硬化物又は前記プリプレグの硬化物を含む絶縁層と、金属箔とを備える金属張積層板である。
【0190】
このような構成によれば、誘電特性が低く、耐熱性の高く、吸水処理後であっても、低誘電特性を好適に維持することができる絶縁層を備える金属張積層板を提供することができる。
【0191】
また、本発明の他の一局面は、前記樹脂組成物の硬化物又は前記プリプレグの硬化物を含む絶縁層と、配線とを備える配線板である。
【0192】
このような構成によれば、誘電特性が低く、耐熱性の高く、吸水処理後であっても、低誘電特性を好適に維持することができる絶縁層を備える配線板を提供することができる。
【0193】
本発明によれば、誘電特性が低く、耐熱性の高い硬化物であって、吸水処理後であっても、低誘電特性を好適に維持することができる硬化物が得られる樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、前記樹脂組成物を用いて得られる、プリプレグ、樹脂付きフィルム、樹脂付き金属箔、金属張積層板、及び配線板を提供することができる。
【0194】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定さえるものではない。
【実施例】
【0195】
[実施例1~20、及び比較例1~14]
本実施例において、樹脂組成物を調製する際に用いる各成分について説明する。
【0196】
(樹脂化合物)
変性PPE1:前記式(1)で表される基を分子末端に有する変性ポリフェニレンエーテル化合物であり、具体的には、ポリフェニレンエーテルとクロロメチルスチレンとを反応させて得られた変性ポリフェニレンエーテル化合物である。すなわち、分子中に前記式(1)で表される基を少なくとも1つ有する化合物(A)である。
【0197】
より具体的には、以下のように反応させて得られた変性ポリフェニレンエーテル化合物である。
【0198】
まず、温度調節器、攪拌装置、冷却設備、及び滴下ロートを備えた1リットルの3つ口フラスコに、ポリフェニレンエーテル(SABICイノベーティブプラスチックス社製のSA90、末端水酸基数2個、重量平均分子量Mw1700)200g、p-クロロメチルスチレンとm-クロロメチルスチレンとの質量比が50:50の混合物(東京化成工業株式会社製のクロロメチルスチレン:CMS)30g、相間移動触媒として、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロマイド1.227g、及びトルエン400gを仕込み、攪拌した。そして、ポリフェニレンエーテル、クロロメチルスチレン、及びテトラ-n-ブチルアンモニウムブロマイドが、トルエンに溶解するまで攪拌した。その際、徐々に加熱し、最終的に液温が75℃になるまで加熱した。そして、その溶液に、アルカリ金属水酸化物として、水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム20g/水20g)を20分間かけて、滴下した。その後、さらに、75℃で4時間攪拌した。次に、10質量%の塩酸でフラスコの内容物を中和した後、多量のメタノールを投入した。そうすることによって、フラスコ内の液体に沈殿物を生じさせた。すなわち、フラスコ内の反応液に含まれる生成物を再沈させた。そして、この沈殿物をろ過によって取り出し、メタノールと水との質量比が80:20の混合液で3回洗浄した後、減圧下、80℃で3時間乾燥させた。
【0199】
得られた固体を、1H-NMR(400MHz、CDCl3、TMS)で分析した。NMRを測定した結果、5~7ppmにビニルベンジル基(エテニルベンジル基)に由来するピークが確認された。これにより、得られた固体が、分子末端に、前記置換基としてビニルベンジル基(エテニルベンジル基)を分子中に有する変性ポリフェニレンエーテル化合物であることが確認できた。具体的には、エテニルベンジル化されたポリフェニレンエーテルであることが確認できた。この得られた変性ポリフェニレンエーテル化合物は、上記式(14)で表され、Yがジメチルメチレン基(式(12)で表され、式(12)中のR40及びR41がメチル基である基)であり、Zが、フェニレン基であり、R1~R3が水素原子であり、nが1である変性ポリフェニレンエーテル化合物であった。
【0200】
また、変性ポリフェニレンエーテル化合物の末端官能基数を、以下のようにして測定した。
【0201】
まず、変性ポリフェニレンエーテル化合物を正確に秤量した。その際の重量を、X(mg)とする。そして、この秤量した変性ポリフェニレンエーテル化合物を、25mLの塩化メチレンに溶解させ、その溶液に、10質量%のテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)のエタノール溶液(TEAH:エタノール(体積比)=15:85)を100μL添加した後、UV分光光度計(株式会社島津製作所製のUV-1600)を用いて、318nmの吸光度(Abs)を測定した。そして、その測定結果から、下記式を用いて、変性ポリフェニレンエーテル化合物の末端水酸基数を算出した。
【0202】
残存OH量(μmol/g)=[(25×Abs)/(ε×OPL×X)]×106
ここで、εは、吸光係数を示し、4700L/mol・cmである。また、OPLは、セル光路長であり、1cmである。
【0203】
そして、その算出された変性ポリフェニレンエーテル化合物の残存OH量(末端水酸基数)は、ほぼゼロであることから、変性前のポリフェニレンエーテルの水酸基が、ほぼ変性されていることがわかった。このことから、変性前のポリフェニレンエーテルの末端水酸基数からの減少分は、変性前のポリフェニレンエーテルの末端水酸基数であることがわかった。すなわち、変性前のポリフェニレンエーテルの末端水酸基数が、変性ポリフェニレンエーテル化合物の末端官能基数であることがわかった。つまり、末端官能基数が、2個であった。
【0204】
また、変性ポリフェニレンエーテル化合物の、25℃の塩化メチレン中で固有粘度(IV)を測定した。具体的には、変性ポリフェニレンエーテル化合物の固有粘度(IV)を、変性ポリフェニレンエーテル化合物の、0.18g/45mlの塩化メチレン溶液(液温25℃)を、粘度計(Schott社製のAVS500 Visco System)で測定した。その結果、変性ポリフェニレンエーテル化合物の固有粘度(IV)は、0.086dl/gであった。
【0205】
また、変性ポリフェニレンエーテル化合物の分子量分布を、GPCを用いて、測定した。そして、その得られた分子量分布から、重量平均分子量(Mw)を算出した。その結果、Mwは、2300であった。
【0206】
また、変性ポリフェニレンエーテル化合物の、前記式(1)で表され、R1~R3が水素原子である基に含まれるビニル基の当量(ビニル当量)を、ウィイス法によるヨウ素価測定により算出した。具体的には、まず、測定対象物である化合物を、濃度が0.3g/35mL~0.3g/25mLとなるようにクロロホルムに溶解させた。この溶液中に存在する二重結合に対して、過剰量の塩化ヨウ素を添加した。そうすることによって、二重結合と塩化ヨウ素とが反応し、この反応が充分に進行した後、その反応後の溶液に20質量%のヨウ化カリウム水溶液を添加することによって、反応後の溶液に残存するヨウ素分がI3
-の形で水相に抽出された。このI3
-が抽出された水相を、チオ硫酸ナトリウム水溶液(0.1mol/Lのチオ硫酸ナトリウム標準溶液)により滴定し、ヨウ素価を算出した。ヨウ素価の算出には、下記式を用いた。
【0207】
ヨウ素価=[(B-A)×F×1.269]/化合物の質量(g)
前記式中、Bは、空試験に要した0.1mol/Lのチオ硫酸ナトリウム標準溶液の滴定量(cc)を示し、Aは、中和に要した0.1mol/Lのチオ硫酸ナトリウム標準溶液の滴定量(cc)を示し、Fは、チオ硫酸ナトリウムの力価を示す。
【0208】
上記の測定の結果、変性ポリフェニレンエーテル化合物の、前記式(1)で表され、R1~R3が水素原子である基に含まれるビニル基の当量(ビニル当量)は、1000であった。
【0209】
変性PPE2:末端にビニルベンジル基(エテニルベンジル基)を有する変性ポリフェニレンエーテル化合物(三菱ガス化学株式会社製のOPE-2st 1200、分子中に前記式(1)で表される基を少なくとも1つ有する化合物(A)、Mw1400、上記式(13)で表され、Zが、フェニレン基であり、R1~R3が水素原子であり、nが1である変性ポリフェニレンエーテル化合物)
重合体1:日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製のODV-XET(X03)(分子中に前記式(2)で表される構造単位を有する重合体:炭素-炭素不飽和二重結合を芳香族環に2つ結合した2官能芳香族化合物に由来の構造単位を有し、前記式(1)で表される基を少なくとも1つ有する芳香族重合体であり、上記式(15)~(17)で表される構造単位を有する化合物(分子中に前記式(1)で表される基を少なくとも1つ有する化合物(A))、重量平均分子量Mw:26300、前記式(1)で表され、R1~R3が水素原子である基に含まれるビニル基の当量(ビニル当量):510)
重合体2:日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製のODV-XET(X04)(分子中に前記式(2)で表される構造単位を有する重合体:炭素-炭素不飽和二重結合を芳香族環に2つ結合した2官能芳香族化合物に由来の構造単位を有し、前記式(1)で表される基を少なくとも1つ有する芳香族重合体であり、上記式(15)~(17)で表される構造単位を有する化合物(分子中に前記式(1)で表される基を少なくとも1つ有する化合物(A))、重量平均分子量Mw:31100、前記式(1)で表され、R1~R3が水素原子である基に含まれるビニル基の当量(ビニル当量):380)
重合体3:日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製のODV-XET(X05)(分子中に前記式(2)で表される構造単位を有する重合体:炭素-炭素不飽和二重結合を芳香族環に2つ結合した2官能芳香族化合物に由来の構造単位を有し、前記式(1)で表される基を少なくとも1つ有する芳香族重合体であり、上記式(15)~(17)で表される構造単位を有する化合物(分子中に前記式(1)で表される基を少なくとも1つ有する化合物(A))、重量平均分子量Mw:39500、前記式(1)で表され、R1~R3が水素原子である基に含まれるビニル基の当量(ビニル当量):320)
なお、重合体1~3の、前記式(1)で表され、R1~R3が水素原子である基に含まれるビニル基の当量(ビニル当量)は、ウィイス法によるヨウ素価測定により算出した。具体的には、まず、測定対象物である化合物を、濃度が0.3g/35mL~0.3g/25mLとなるようにクロロホルムに溶解させた。この溶液中に存在する二重結合に対して、過剰量の塩化ヨウ素を添加した。そうすることによって、二重結合と塩化ヨウ素とが反応し、この反応が充分に進行した後、その反応後の溶液に20質量%のヨウ化カリウム水溶液を添加することによって、反応後の溶液に残存するヨウ素分がI3
-の形で水相に抽出された。このI3
-が抽出された水相を、チオ硫酸ナトリウム水溶液(0.1mol/Lのチオ硫酸ナトリウム標準溶液)により滴定し、ヨウ素価を算出した。ヨウ素価の算出には、下記式を用いた。
【0210】
ヨウ素価=[(B-A)×F×1.269]/化合物の質量(g)
前記式中、Bは、空試験に要した0.1mol/Lのチオ硫酸ナトリウム標準溶液の滴定量(cc)を示し、Aは、中和に要した0.1mol/Lのチオ硫酸ナトリウム標準溶液の滴定量(cc)を示し、Fは、チオ硫酸ナトリウムの力価を示す。
【0211】
ブタジエン-スチレンオリゴマー:クレイバレー社製のRicon100
アセナフチレン:JFEケミカル株式会社製のアセナフチレン
DVB:ジビニルベンゼン(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製のDVB810)
TAIC:トリアリルイソシアヌレート(日本化成株式会社製のTAIC)
TMPT:トリメチロールプロパントリメタクリレート(新中村化学工業株式会社製のTMPT)
ポリブタジエン:日本曹達株式会社製のB-1000
メタクリル変性PPE:ポリフェニレンエーテルの末端水酸基をメタクリル基で変性した変性ポリフェニレンエーテル(上記式(18)で表され、式(18)中、Yがジメチルメチレン基(式(12)で表され、式(12)中のR40及びR41がメチル基である基)であるメタクリル変性ポリフェニレンエーテル化合物、SABICイノベーティブプラスチックス社製のSA9000、重量平均分子量Mw2000、末端官能基数2個)
充填材(シリカ):ビニルシラン処理された球状シリカ(株式会社アドマテックス製のSC2300-SVJ)
開始剤(過酸化物):α,α’-ジ(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(日油株式会社製のパーブチルP(PBP))
開始剤(アゾ開始剤):富士フイルム和光純薬株式会社製のVAm-110(2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド))
(調製方法)
まず、充填材以外の上記各成分を表3~6に記載の組成(質量部)で、固形分濃度が55質量%となるように、トルエンに添加し、混合させた。その混合物を60分間攪拌した。その後、得られた液体に充填材を添加し、ビーズミルで充填材を分散させた。そうすることによって、ワニス状の樹脂組成物(ワニス)が得られた。
【0212】
次に、得られたワニスを繊維質基材(ガラスクロス:旭化成株式会社製のL2116、#2116タイプ、Lガラス)に含浸させた後、110℃で約3~8分間加熱乾燥することによりプリプレグを作製した。その際、樹脂化合物(化合物(A)等)、及び硬化剤(アセナフチレン化合物(B)等)等の、硬化反応により樹脂を構成する成分の、プリプレグに対する含有量(レジンコンテント)が約55質量%となるように調整した。
【0213】
そして、得られた各プリプレグを6枚重ねて、昇温速度3.5℃/分で温度200℃まで加熱し、200℃、120分間、圧力3MPaの条件で加熱加圧することにより評価基板(プリプレグの硬化物)を得た。
【0214】
上記のように調製された、ワニス、プリプレグ、及び評価基板を、以下に示す方法により評価を行った。
【0215】
[ガラス転移温度(DMA)(Tg)]
セイコーインスツルメンツ株式会社製の粘弾性スペクトロメータ「DMS6100」を用いて、プリプレグのTgを測定した。このとき、曲げモジュールで周波数を10Hzとして動的粘弾性測定(DMA)を行い、昇温速度5℃/分の条件で室温から320℃まで昇温した際のtanδが極大を示す温度をTgとした。
【0216】
[ガラス転移温度(TMA)(Tg)]
前記評価基板を作製する際に、プリプレグを重ねる枚数を6枚にすることによって、両面に厚み35μmの銅箔が接着された、厚み約0.8mmの銅箔張積層板(金属箔張積層板)を得た。この形成された銅箔張積層板の両面銅箔をエッチングして除去した。このようにして得られた評価用積層体を、IPC TM650に準拠して、TMA法によるガラス転移温度(Tg)を評価した。測定には、熱機会分析(TMA)装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製のTMA7100)を用い、30~300℃の範囲で測定した。
【0217】
[耐熱性(TMA法:T-260及びT-288)]
前記評価基板を作製する際に、プリプレグを重ねる枚数を6枚にすることによって、両面に厚み35μmの銅箔が接着された、厚み約0.8mmの銅箔張積層板(金属箔張積層板)を得た。IPC TM650に準拠して、前記評価基板の耐熱性(TMA法:T-260及びT-288)を評価した。
【0218】
具体的には、熱機械分析装置(TMA:株式会社日立ハイテクサイエンス製のTMA7100)を用いて、評価基板を昇温速度10℃/分で260℃まで加熱し、260℃に到達度、温度を一定に保持し、260℃に到達してから60分後の評価基板のデラミネーションの有無を観察した。このとき、評価基板に膨れ等の異常の発生が確認されれば、「×」と評価した。
【0219】
また、前記熱機械分析装置を用いて、評価基板を昇温速度10℃/分で288℃まで加熱し、288℃に到達度、温度を一定に保持し、288℃に到達してから60分後の評価基板のデラミネーションの有無を観察した。このとき、評価基板に膨れ等の異常の発生が確認されなければ、「◎」と評価した。
【0220】
また、260℃で試験したときには膨れ等の異常の発生が確認されず、288℃で試験したときには膨れ等の異常の発生が確認されれば、「○」と評価した。
【0221】
[吸湿半田耐熱性]
前記評価基板を作製する際に、プリプレグを重ねる枚数を6枚にすることによって、両面に厚み35μmの銅箔が接着された、厚み約0.8mmの銅箔張積層板(金属箔張積層板)を得た。この形成された銅箔張積層板を50mm×50mmに切断し、両面銅箔をエッチングして除去した。このようにして得られた評価用積層体を、温度121℃相対湿度100%の条件下で6時間保持した。その後、この評価用積層体を、288℃の半田槽中に10秒間浸漬した。そして、浸漬した積層体に、ミーズリングや膨れ等の発生の有無を目視で観察した。ミーズリングや膨れ等の発生が確認されなければ、「◎」と評価した。また、別途、288℃の半田槽の代わりに、260℃の半田槽を用いて、同様の評価を行った。288℃の場合、ミーズリングや膨れ等の発生が確認されたが、260℃の場合、ミーズリングや膨れ等の発生が確認されなければ、「○」と評価した。260℃の場合でも、ミーズリングや膨れ等の発生が確認されれば、「×」と評価した。
【0222】
[吸水処理前の誘電正接]
10GHzにおける評価基板の誘電正接を、空洞共振器摂動法で測定した。具体的には、ネットワーク・アナライザ(キーサイト・テクノロジー株式会社製のN5230A)を用い、10GHzにおける評価基板の誘電正接を測定した。
【0223】
[吸水処理後の誘電正接]
前記吸水処理前の誘電正接の測定で用いた評価基板を、JIS C 6481を参考にして吸湿処理させ、この吸湿処理させた評価基板の誘電正接(吸湿後の誘電正接)を、前記吸水処理前の誘電正接の測定と同様の方法で測定した。なお、前記吸湿処理としては、前記評価基板を恒温空気(50℃)中で24時間処理し、恒温水(23℃)中で24時間処理した後、評価基板上の水分を、乾燥した清浄な布で充分にふき取った。
【0224】
[誘電正接の変化量(吸水処理後-吸水処理前)]
吸水処理前の誘電正接と吸水処理後の誘電正接の差(吸水処理後の誘電正接-吸水処理前の誘電正接)を算出した。
【0225】
上記各評価における結果は、表3~6に示す。
【0226】
【0227】
【0228】
【0229】
【0230】
表3~6からわかるように、分子中に前記式(1)で表される基を少なくとも1つ有する化合物(A)と、アセナフチレン化合物(B)とを含む場合(実施例1~20)は、ガラス転移温度が高く、耐熱性(TMA法)及び吸湿半田耐熱性も高く、かつ、誘電正接が低かった。さらに、実施例1~20に係る樹脂組成物の硬化物は、吸水処理後であっても、吸水による誘電正接の上昇を充分に抑制されていた。これらのことから、これらの樹脂組成物は、誘電特性が低く、耐熱性の高い硬化物であって、吸水処理後であっても、低誘電特性を好適に維持することができる硬化物が得られる樹脂組成物であることがわかる。
【0231】
これに対して、アセナフチレンを含有しない場合(比較例1~10、及び比較例12~14)は、実施例1~20と比較すると、少なくとも、ガラス転移温度が低いか、耐熱性(TMA法)が低いか、吸湿半田耐熱性が低いか、誘電正接が高いか、吸水による誘電正接の変化量が大きかった。
【0232】
また、前記化合物(A)を含有せずに、ブタジエン-スチレンオリゴマーを含有する場合(比較例11)は、実施例1~20と比較すると、ガラス転移温度が低く、耐熱性(TMA法)も吸湿半田耐熱性も低かった。
【0233】
この出願は、2018年7月19日に出願された日本国特許出願特願2018-136062号、及び2019年3月13日に出願された日本国特許出願特願2019-045682号を基礎とするものであり、その内容は、本願に含まれるものである。
【0234】
本発明を表現するために、上述において実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更及び/又は改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態又は改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態又は当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【産業上の利用可能性】
【0235】
本発明によれば、誘電特性が低く、耐熱性の高い硬化物であって、吸水処理後であっても、低誘電特性を好適に維持することができる硬化物が得られる樹脂組成物が提供される。また、本発明によれば、前記樹脂組成物を用いて得られる、プリプレグ、樹脂付きフィルム、樹脂付き金属箔、金属張積層板、及び配線板が提供される。