(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】積層電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20231106BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20231106BHJP
H01M 50/54 20210101ALI20231106BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/052
H01M50/54
(21)【出願番号】P 2021505501
(86)(22)【出願日】2019-11-13
(86)【国際出願番号】 JP2019044537
(87)【国際公開番号】W WO2020183795
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2019045155
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】本田 和義
(72)【発明者】
【氏名】河瀬 覚
(72)【発明者】
【氏名】古賀 英一
(72)【発明者】
【氏名】西田 耕次
(72)【発明者】
【氏名】桝田 昇
(72)【発明者】
【氏名】山崎 剛志
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-197652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0585
H01M 10/052
H01M 50/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の電池セルと、
集電リードと、を備え、
前記複数の電池セルそれぞれは、正極集電体
、正極活物質層、固体電解質層、負極活物質層、および負極集電体がこの順で積層された構造を有し、
前記複数の電池セルは、互いに隣り合う第1電池セルおよび第2電池セルを含み、
前記複数の電池セルのうち少なくとも前記第2電池セルは、前記複数の電池セルの積層方向に対して傾斜する側面を有し、
前記第1電池セルは、前記第2電池セルと対向する面を有し、
前記第2電池セルと対向する前記面は、前記第2電池セルとは接しない露出面を含み、
前記積層方向から見て、前記露出面の少なくとも一部は、前記第2電池セルの前記側面の少なくとも一部と重なり、
前記集電リードは、前記露出面上に接続されている、
積層電池。
【請求項2】
前記積層方向から見て前記露出面と前記側面が重なる位置における、前記集電リードの前記積層方向の厚みと、前記第2電池セルの前記積層方向の厚みの和は、前記積層方向から見て前記側面と重ならない位置における前記第2電池セルの前記積層方向の厚みよりも薄い、
請求項1に記載の積層電池。
【請求項3】
前記積層方向から見て前記露出面と重なる位置において、前記集電リードの前記積層方向の厚みは、前記第2電池セルが備える前記正極集電体の前記積層方向の厚みまたは前記負極集電体の前記積層方向の厚みよりも厚い、
請求項1または2に記載の積層電池。
【請求項4】
前記複数の電池セルは、電気的に並列または直列に接続されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の積層電池。
【請求項5】
前記複数の電池セルは、積層方向から見て、外周位置が一致するように積層されている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の積層電池。
【請求項6】
前記複数の電池セルそれぞれの側面は、前記積層方向に対して同一方向に傾斜している、
請求項1から5のいずれか1項に記載の積層電池。
【請求項7】
前記複数の電池セルは、同じ形状である、
請求項1から6のいずれか1項に記載の積層電池。
【請求項8】
前記第1電池セルの前記露出面と、前記第2電池セルとが、導電性材料からなる接合部により接続されている、
請求項1から7のいずれか1項に記載の積層電池。
【請求項9】
前記露出面は、前記第1電池セルが備える前記正極集電体の面または前記負極集電体の面である、
請求項1から8のいずれか1項に記載の積層電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、積層電池のリード長さが異なる電池が開示されている。
【0003】
特許文献2には、単位セルと、単位セルと交互に積層される内部電極層とを含むバイポーラ型の積層電池が開示されている。
【0004】
特許文献3には、大きさの異なる正極体と負極体を、固体電解質層が間に配置されるように交互に積層するバイポーラ型二次電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-97907号公報
【文献】特開2014-116156号公報
【文献】特開2015-153663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術においては、積層電池の信頼性および電池容量密度の向上が望まれる。
【0007】
そこで、本開示では、信頼性および電池容量密度が向上した積層電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様における積層電池は、積層された複数の電池セルと、集電リードと、を備える。前記複数の電池セルそれぞれは、正極集電体、正極活物質層、固体電解質層、負極活物質層、および負極集電体がこの順で積層された構造を有する。前記複数の電池セルは、互いに隣り合う第1電池セルおよび第2電池セルを含む。前記複数の電池セルのうち少なくとも前記第2電池セルは、前記複数の電池セルの積層方向に対して傾斜する側面を有する。前記第1電池セルは、前記第2電池セルと対向する面を有する。前記第2電池セルと対向する前記面は、前記第2電池セルとは接しない露出面を含む。前記積層方向から見て、前記露出面の少なくとも一部は、前記第2電池セルの前記側面の少なくとも一部と重なる。前記集電リードは、前記露出面上に接続されている。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、積層電池の信頼性および電池容量密度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】
図1Aは、実施の形態1における積層電池の概略構成を示す上面視図である。
【
図1B】
図1Bは、実施の形態1における積層電池の概略構成を示す断面図である。
【
図2A】
図2Aは、実施の形態1の変形例1における積層電池の概略構成を示す上面視図である。
【
図2B】
図2Bは、実施の形態1の変形例1における積層電池の概略構成を示す断面図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1の変形例2における積層電池の概略構成を示す断面図である。
【
図4A】
図4Aは、実施の形態1の変形例3における積層電池の概略構成を示す上面視図である。
【
図4B】
図4Bは、実施の形態1の変形例3における積層電池の概略構成を示す断面図である。
【
図5】
図5は、実施の形態2における積層電池の概略構成の一例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、実施の形態2における積層電池の概略構成の別の例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、実施の形態2における積層電池の概略構成の別の例を示す断面図である。
【
図8】
図8は、実施の形態2における積層電池の概略構成の別の例を示す断面図である。
【
図9】
図9は、実施の形態3における積層電池の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本開示の概要)
本開示の一態様における積層電池は、積層された複数の電池セルと、集電リードと、を備える。前記複数の電池セルそれぞれは、正極集電体、正極活物質層、固体電解質層、負極活物質層、および負極集電体がこの順で積層された構造を有する。前記複数の電池セルは、互いに隣り合う第1電池セルおよび第2電池セルを含む。前記複数の電池セルのうち少なくとも前記第2電池セルは、前記複数の電池セルの積層方向に対して傾斜する側面を有する。前記第1電池セルは、前記第2電池セルと対向する面を有する。前記第2電池セルと対向する前記面は、前記第2電池セルとは接しない露出面を含む。前記積層方向から見て、前記露出面の少なくとも一部は、前記第2電池セルの前記側面の少なくとも一部と重なる。前記集電リードは、前記露出面上に接続されている。
【0012】
これにより、隣り合う第2電池セルとは接しない露出面を利用して集電リードが第1電池セルに接続される。第1電池セルが露出面を有することにより、露出面上に電池セルが存在しない空間が形成されるため、積層電池の見かけ体積の中で電池として機能する有効体積が減少する。しかし、集電リードを接続するためのリード層の挿入などによる積層方向への寸法を増加させることなく集電リードが接続される。平板状の電池セルを積層する積層電池の場合、積層方向寸法増加は、積層電池の体積増加への影響が大きい。よって、露出面上に集電リードを接続することで、電池容量に寄与しない層による積層方向への寸法増加を抑制することができるため、積層電池の電池容量密度が向上する。また、第2電池セルの側面が積層方向に対して傾斜することで、正極集電体と負極集電体との積層方向の距離、すなわち、側面が傾斜していない場合の側面における正極集電体と負極集電体との距離よりも、傾斜した側面における正極集電体と負極集電体との距離を大きくできる。よって側面で正極集電体と負極集電体とが接触することによる短絡の可能性を低減でき、積層電池の信頼性が向上する。
【0013】
なお、複数の電池セルの積層方向から見て、露出面の全部が、第2電池セルの傾斜した側面の一部または全部と重なっていても良い。また、第1電池セルと第2電池セルが積層方向に垂直な方向にずれて配置されていてもよい。この場合、複数の電池セルの積層方向から見て、露出面は、第2電池セルと重ならない部分と、第2電池セルの傾斜した側面の一部または全部と重なる部分とを含みうる。
【0014】
また、例えば、前記積層方向から見て前記露出面と前記側面が重なる位置における、前記集電リードの前記積層方向の厚みと、前記第2電池セルの前記積層方向の厚みの和は、前記積層方向から見て前記側面と重ならない位置における前記第2電池セルの前記積層方向の厚みよりも薄くてもよい。
【0015】
これにより、露出面上に接続された集電リードの上側に、当該集電リードと接することなく、第2電池セルを積層することができる。すなわち、積層方向からみて集電リードと第2電池セルの傾斜側面とが重なる場合も、集電リードと第2電池セルの傾斜側面は接触しない。よって、積層電池の積層形状が制限されにくくなり、より体積効率の良い積層形状の積層電池とすることが可能となる。
【0016】
また、例えば、前記積層方向から見て前記露出面と重なる位置において、前記集電リードの前記積層方向の厚みは、前記第2電池セルが備える前記正極集電体の前記積層方向の厚みまたは前記負極集電体の前記積層方向の厚みよりも厚くてもよい。
【0017】
これにより、大電流で充放電を行う際にも、集電リードの厚みが、集電体の厚みより厚いため、許容電流が大きくなり、電池特性の低下を小さくすることが出来る。
【0018】
また、例えば、前記複数の電池セルは、電気的に並列または直列に接続されていてもよい。
【0019】
これにより、並列接続型の積層電池とした場合には、集電リードを利用して安定な充放電を行うことが出来る。また、直列積層型の積層電池とした場合には、集電リードを利用して、積層した個々の電池セルの電圧を監視しながら安全に充放電を行うことが出来る。
【0020】
また、例えば、前記複数の電池セルは、積層方向から見て、外周位置が一致するように積層されていてもよい。
【0021】
これにより、各電池セルの外周位置が一致するため、露出面が形成による積層電池の見かけ体積の増加を抑制できる。よって、さらに積層電池の電池容量密度が向上する。
【0022】
また、例えば、前記複数の電池セルそれぞれの側面は、前記積層方向に対して同一方向に傾斜していてもよい。
【0023】
これにより、各電池セルの側面の向きが一致するため、側面に封止部材を塗布する場合などに、同一方向から塗布でき、後加工性が向上する。
【0024】
また、例えば、前記複数の電池セルは、同じ形状であってもよい。
【0025】
個々の電池セルにおいて、形状を作り分ける必要がなくなる。また、電池セルの側面が積層方向に対して傾斜しているため、電池セルの向きおよび外周位置を揃えて積層するだけで、露出面が形成される。よって、簡易に積層電池が製造される。
【0026】
また、例えば、前記第1電池セルの前記露出面と、前記第2電池セルとが、導電性材料からなる接合部により接続されていてもよい。
【0027】
これにより、積層された電池セル間の機械的接合および電気的接合がより強固になり、電池セル間の接続インピーダンスが小さくなることによって、発熱が抑制され、大電流特性が向上した積層電池となる。
【0028】
以下、本開示の実施の形態が、図面を参照しながら説明される。
【0029】
なお、以下で説明される実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0030】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化する。
【0031】
また、本明細書において、平行などの要素間の関係性を示す用語、および、矩形などの要素の形状を示す用語、並びに、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0032】
また、本明細書および図面において、x軸、y軸およびz軸は、三次元直交座標系の三軸を示している。各実施の形態では、z軸方向を積層電池の積層方向としている。また、本明細書における「厚み」とは、電池セル、集電リード、集電体および各層の積層方向の長さである。また、本明細書において「上面視」とは、積層電池における電池セルの積層方向に沿って積層電池を見た場合を意味する。また、本明細書における「側面」とは、積層電池における積層方向と垂直な方向に交差する面である。また、「積層方向に対して傾斜する側面」とは、例えば、積層電池の積層方向に実質的に平行な面から積層方向に対して傾斜する側面であってもよい。また、本明細書における「積層面」とは、積層方向に交差する面である。「積層面」は、例えば、積層電池の積層方向に実質的に垂直な面であってもよい。
【0033】
また、本明細書において、積層電池の構成における「上」および「下」という用語は、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)および下方向(鉛直下方)を指すものではなく、積層構成における積層順を基に相対的な位置関係により規定される用語として用いる。また、「上方」および「下方」という用語は、2つの構成要素が互いに間隔を空けて配置されて2つの構成要素の間に別の構成要素が存在する場合のみならず、2つの構成要素が互いに密着して配置されて2つの構成要素が接する場合にも適用される。
【0034】
(実施の形態1)
図1Aおよび
図1Bは、実施の形態1における積層電池1000の概略構成を示す図である。具体的には、
図1Aは、積層電池1000の概略構成を示す上面視図であり、積層電池1000を積層方向の上方から見た場合における積層電池1000の各構成要素の平面視形状を実線または破線で表している。
図1Bは、積層電池1000の概略構成を示す断面図であり、
図1AのI-I線で示される位置での断面を表している。
【0035】
図1Aおよび
図1Bに示されるように、実施の形態1における積層電池1000は、複数の電池セル2000および2100を有しており、複数の電池セル2000および2100が電気的に並列接続されて、積層電池1000を構成している。また、積層電池1000は、集電リード500を備える。
【0036】
それぞれの電池セル2000および2100は、負極集電体210、負極活物質層110、固体電解質層130、正極集電体220および正極活物質層120を備える。
【0037】
負極活物質層110と正極集電体220とは、固体電解質層130を介して対向している。
【0038】
それぞれの電池セル2000および2100は、正極集電体220、正極活物質層120、固体電解質層130、負極活物質層110および負極集電体210が、電池セル2000の積層方向(z軸方向)の上下いずれかの方向から見て、この順に積層されている。電池セル2000と電池セル2100とは、同じ形状であり、断面視した場合に電極の向きが逆転した積層構造である。負極集電体210、負極活物質層110、固体電解質層130、正極集電体220および正極活物質層120は、それぞれ上面視で矩形である。積層電池1000は、隣り合う2つの電池セル2000および2100が、正極集電体220同士または負極集電体210同士が接するように、電池セル2000と電池セル2100とが交互になるように積層された構造を有する。これにより、積層電池1000は、複数の電池セル2000および2100が電気的に並列接続された並列積層電池となる。
【0039】
負極活物質層110は、例えば、電極材料として負極活物質を含む。負極活物質層110は、正極活物質層120に対向して配置されている。
【0040】
負極活物質層110に含有される負極活物質としては、例えば、グラファイト、金属リチウムなどの負極活物質が用いられうる。負極活物質の材料としては、リチウム(Li)またはマグネシウム(Mg)などのイオンを離脱および挿入することができる各種材料が用いられうる。
【0041】
また、負極活物質層110の含有材料としては、例えば、無機系固体電解質などの固体電解質が用いられてもよい。無機系固体電解質としては、例えば、硫化物固体電解質または酸化物固体電解質などが用いられうる。硫化物固体電解質としては、例えば、硫化リチウム(Li2S)および五硫化二リン(P2S5)の混合物が用いられうる。また、負極活物質層110の含有材料としては、例えばアセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、カーボンファイバーなどの導電材、または、例えばポリフッ化ビニリデンなどの結着用バインダーなどが用いられてもよい。
【0042】
負極活物質層110は、例えば、負極活物質層110の含有材料を溶媒と共に練り込んだペースト状の塗料を、負極集電体210の面上に塗工乾燥することにより、作製されうる。負極活物質層110の密度を高めるために、乾燥後に、負極活物質層110および負極集電体210を含む負極板をプレスしておいてもよい。負極活物質層110の厚みは、例えば、5μm以上300μm以下であるが、これに限らない。
【0043】
正極活物質層120は、例えば活物質などの正極材料を含む層である。正極材料は、負極材料の対極を構成する材料である。正極活物質層120は、例えば、正極活物質を含む。
【0044】
正極活物質層120に含有される正極活物質としては、例えば、コバルト酸リチウム複合酸化物(LCO)、ニッケル酸リチウム複合酸化物(LNO)、マンガン酸リチウム複合酸化物(LMO)、リチウム‐マンガン‐ニッケル複合酸化物(LMNO)、リチウム‐マンガン‐コバルト複合酸化物(LMCO)、リチウム‐ニッケル‐コバルト複合酸化物(LNCO)、リチウム‐ニッケル‐マンガン‐コバルト複合酸化物(LNMCO)などの正極活物質が用いられうる。
【0045】
正極活物質の材料としては、LiまたはMgなどのイオンを離脱および挿入することができる各種材料が用いられうる。
【0046】
また、正極活物質層120の含有材料としては、例えば、無機系固体電解質などの固体電解質が用いられてもよい。無機系固体電解質としては、硫化物固体電解質または酸化物固体電解質などが用いられうる。硫化物固体電解質としては、例えば、硫化リチウム(Li2S)および五硫化二リン(P2S5)の混合物が用いられうる。正極活物質の表面は、固体電解質でコートされていてもよい。また、正極活物質層120の含有材料としては、例えばアセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、カーボンファイバーなどの導電材、または、例えばポリフッ化ビニリデンなどの結着用バインダーなどが用いられてもよい。
【0047】
正極活物質層120は、例えば、正極活物質層120の含有材料を溶媒と共に練り込んだペースト状の塗料を、正極集電体220の面上に塗工乾燥することにより、作製されうる。正極活物質層120の密度を高めるために、乾燥後に、正極活物質層120および正極集電体220を含む正極板をプレスしておいてもよい。正極活物質層120の厚みは、例えば、5μm以上300μm以下であるが、これに限らない。
【0048】
固体電解質層130は、負極活物質層110と正極活物質層120との間に配置される。固体電解質層130は、負極活物質層110と正極活物質層120との各々に接する。固体電解質層130は、電解質材料を含む層である。電解質材料としては、一般に公知の電池用の電解質が用いられうる。固体電解質層130の厚みは、5μm以上300μm以下であってもよく、5μm以上100μm以下であってもよい。
【0049】
固体電解質層130は固体電解質を含んでいてもよい。電池セル2000および2100は、例えば、全固体電池であってもよい。
【0050】
固体電解質としては、例えば、無機系固体電解質などの固体電解質が用いられうる。無機系固体電解質としては、硫化物固体電解質または酸化物固体電解質またはハロゲン化物固体電解質などが用いられうる。硫化物固体電解質としては、例えば、硫化リチウム(Li2S)および五硫化二リン(P2S5)の混合物が用いられうる。なお、固体電解質層130は、電解質材料に加えて、例えばポリフッ化ビニリデンなどの結着用バインダーなどを含有してもよい。
【0051】
固体電解質層130は、例えば、固体電解質層130の含有材料を溶媒と共に練り込んだペースト状の塗料を、負極集電体210上に形成された負極活物質層110上、および/または、正極集電体220上に形成された正極活物質層120上に、塗工乾燥することにより、作製されうる。また、固体電解質層130は、PETフィルムのようなキャリアフィルム上に塗工乾燥して形成したのち、負極集電体210上に形成された負極活物質層110上、および/または、正極集電体220上に形成された正極活物質層120上に、移して積層してもよい。
【0052】
実施の形態1における電池セル2000および2100では、負極活物質層110、正極活物質層120および固体電解質層130は平行平板状に維持されている。これにより、湾曲による割れまたは崩落の発生を抑制することができる。なお、負極活物質層110、正極活物質層120および固体電解質層130を合わせて滑らかに湾曲させてもよい。
【0053】
負極集電体210と正極集電体220とはそれぞれ、導電性を有する部材である。負極集電体210と正極集電体220とはそれぞれ、例えば、導電性を有する薄膜であってもよい。負極集電体210と正極集電体220とを構成する材料としては、例えば、ステンレス(SUS)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)などの金属が用いられうる。
【0054】
負極集電体210は、負極活物質層110に接して配置される。負極集電体210としては、例えば、SUS箔、Cu箔などの金属箔が用いられうる。負極集電体210の厚みは、例えば、5μm以上100μm以下であるが、これに限らない。なお、負極集電体210は、負極活物質層110に接する部分に、例えば、導電性材料を含む層である集電体層を備えてもよい。
【0055】
正極集電体220は、正極活物質層120に接して配置される。正極集電体220としては、例えば、SUS箔、Al箔などの金属箔が用いられうる。正極集電体220の厚みは、例えば、5μm以上100μm以下であるが、これに限らない。なお、正極集電体220は、正極活物質層120に接する部分に、例えば、導電性材料を含む層である集電体層を備えてもよい。
【0056】
図1Aおよび
図1Bに示されるように、実施の形態1における積層電池1000は、複数の電池セル2000および2100が積層された構造を有する。電池セル2000および2100の側面350は、積層主面の法線(積層方向、z軸方向)に対して、積層方向の上側(z軸の正方向)が狭くなるように傾斜している。電池セル2000および2100は、積層方向から見て、正極集電体220の面積と負極集電体210の面積とが異なる。電池セル2000の側面350は、積層方向から見て正極集電体220の端部が負極集電体210の端部より内側となるように、直線状に傾斜している。また、電池セル2100の側面350は、積層方向から見て負極集電体210の端部が正極集電体220の端部より内側となるように傾斜している。複数の電池セル2000および2100のそれぞれの側面350は、積層方向に対して同一方向に傾斜している。
図1Bに示される複数の電池セル2000および2100の形状が同じであり、断面形状が台形である。なお、積層電池1000は、すべての側面350が、積層方向に対して傾斜しているが、すべての側面350が傾斜していなくてもよい。
【0057】
図1Aおよび
図1Bに示されるように、複数の電池セル2000および2100に含まれる隣り合う2つの電池セル2000および2100のうち、一方の電池セル(以下、第1電池セルと呼ぶ)2000または2100は、他方の電池セル(以下、第2電池セルと呼ぶ)2000または2100と対向する面において、第2電池セル2000または2100とは接しない露出面300を有する。具体的には、最下層および最上層の電池セル2000および2100以外の各電池セル2000および2100の負極集電体210は、当該負極集電体210と隣り合う電池セル2000または2100とは接しない露出面300を有している。また、各電池セル2000および2100の正極集電体220は、当該正極集電体220と隣り合う電池セル2000または2100とは接しない露出面300を有している。
【0058】
図1Bは、積層主面の法線(積層方向、z軸方向)に対して傾斜した側面350を有し、同じ形状の複数の電池セル2000および2100が、積層方向から見て外周位置が一致するように積層されることによって、積層電池1000が構成されている部分の一例を示す断面模式図である。
【0059】
側面350を有し、同じ形状の複数の電池セル2000および2100を、外周位置が一致するように積層することで、露出面300が形成されている。露出面300上には、電池セル2000および2100が存在しない積層空間400が形成されている。
【0060】
積層空間400を利用して、各電池セル2000および2100の負極集電体210または正極集電体220の露出面300上に集電リード500が接続されている。集電リード500は、充放電、端子間電圧の監視などに利用される導線であり、複数の電池セル2000および2100が電気的に並列に接続された積層電池1000においては、主に充放電に利用される。
図1Aおよび
図1Bにおいて、集電リード500の形状は、平板状であるが、集電リード500の形状に特に制限は無く、円柱状など他の形状であってもよい。集電リード500の厚みは、集電リード500が接続された電池セル2000または2100の露出面300側に隣接する電池セル2000または2100の厚みよりも薄い。これにより、
図1Bに示されるように、電池セル2000および2100の外周位置が一致するように積層した場合でも、電池セル2000および2100に邪魔されることなく露出面300上に集電リード500が接続される。また、集電リード500の厚みは、正極集電体220および負極集電体210よりも厚い。これにより、集電リード500の許容電流が大きくなり、電池特性の低下を小さくすることが出来る。なお、集電リード500の厚みは、集電リード500の積層方向の長さである。
【0061】
集電リード500を構成する材料としては、例えば、ニッケル、ステンレス、アルミニウム、銅などの金属が用いられうる。集電リード500の接続方法は特に限定されるものではなく、例えば接着や溶接などの工法を用いることが出来る。集電リード500は、導電性を有する接着剤または接着テープを介して集電体に接続されてもよい。短絡防止のため、集電リード500のうち集電体に接続されない部分には、表面が絶縁処理されていてもよい。
【0062】
露出面300上の積層空間400を用いた集電リード500の接続方法によれば、電池容量には寄与しない、集電リードを接続するためのリード層の挿入などによる積層方向の寸法増加無しに集電リード500を接続できるメリットがある。積層面内方向には、露出面300上の積層空間400相当のスペースが必要になる。つまり、電池セル2000が、露出面300を有することにより、電池として機能しない積層空間400が形成されるため、積層電池1000の有効体積が減少する。しかし、特に積層電池が大判になれば、電池容量に寄与しない層による積層方向の寸法増加が少ないことが、積層電池の電池容量密度確保に対して重要となり、積層面内方向の小さなスペース確保が電池容量密度に及ぼす影響は、積層方向の寸法増加が電池容量密度に及ぼす影響より小さい。積層方向の厚みが積層面内方向の辺長さと比較して小さいほど、本実施の形態における積層電池1000は、有効である。積層方向の寸法増加無しに、集電体より厚みの厚い集電リード500を直接集電体に接続できるので、充放電時の抵抗ロスおよび発熱が小さく、大電流特性にも優れた高容量並列積層電池を得ることが出来る。
【0063】
また、電池セル2000および2100の側面350が積層主面の法線(積層方向、z軸方向)に対して傾斜しているため、積層方向から見た、積層された複数の電池セル2000および2100の外周位置を揃えることで、容易に露出面300が形成される。さらに、電池セル2000および2100の側面350が積層主面の法線(積層方向、z軸方向)に対して傾斜することで、正極集電体220と負極集電体210との積層方向(z軸方向)の距離よりも、側面350における正極集電体220と負極集電体210との距離を大きくできるので、側面350での短絡リスクを大幅に低減できる。
【0064】
図1Aおよび
図1Bで示される積層電池1000の場合、集電リード500が接続される露出面300の幅(x軸方向の幅)は、例えば、集電リード500を接続するための領域を確保する観点からは、0.2mm以上であるとよい。また、電池容量の確保の観点からは、x軸方向の電池セル2000の幅に対して、露出面300の幅が、例えば、5%以下であるとよく、1%以下であってもよい。
【0065】
側面350の積層方向に対する角度は、積層電池1000の大きさ、目的とする露出面300の幅などに応じて設定すればよく、特に制限されないが、側面350における正極集電体220と負極集電体210との距離を大きくする観点からは、30度以上であるとよい。また、側面350の積層方向に対する角度は、電池容量に寄与する正極活物質層120または負極活物質層110の体積を確保する観点からは、60度以下であるとよい。
【0066】
積層方向に対して傾斜した側面350を有する電池セル2000および2100は、例えば、次の方法により製造される。まず、上述の正極集電体220、正極活物質層120、固体電解質層130、負極活物質層110および負極集電体210をこの順で、積層方向から見て同じ位置および形状となるように積層する。これにより、側面が積層方向に対して傾斜していない加工前の電池セルが得られる。さらに、加工前の電池セルは、正極集電体220および負極集電体210の外側から加圧されてもよい。得られた加工前の電池セルを、刃、ドリル、レーザ光などにより、電池セルの側面が積層方向に対して傾斜するように切断することで、積層方向に対して傾斜した側面350を有する電池セル2000および2100が得られる。
【0067】
積層電池1000は、例えば、(1)事前に各電池セル2000および2100の露出面300となる場所に集電リード500を接続しておき、
図1Aおよび
図1Bで示される積層構造となるように、集電リード500が接続された各電池セル2000および2100を、積層方向から見た各電池セル2000および2100の外周位置が同じになるように積層することによって製造される。また、積層電池1000は、(2)
図1Aおよび
図1Bで示される積層構造となるように複数の電池セル2000および2100を積層方向から見た各電池セル2000および2100の外周位置が同じになるように積層し、すべての電池セル2000および2100を積層した後に、形成された露出面300上に集電リード500を接続することにより製造されてもよい。また、積層電池1000は、(3)電池セル2000および2100の外周位置が同じになるように積層することと、積層された電池セル2000および2100の露出面300上に集電リード500を接続することとを繰り返して、
図1Aおよび
図1Bで示される積層構造を形成することにより製造されてもよい。
【0068】
上記の(1)~(3)の方法は、目的とする積層構造に応じて適した方法を選択すればよく、上記の(1)~(3)の方法を組み合わせて積層電池1000を製造してもよい。例えば、電池セル2000および2100を積層後に、露出面300上に集電リード500を接続しにくい位置となる積層構造の場合には、上記の(1)の方法を用いて製造し、電池セル2000および2100を積層後に、露出面300上に集電リード500を接続しやすい位置となる積層構造の場合には、上記の(2)または(3)の方法を用いて製造する。
【0069】
積層電池1000は、封止ケースに内包させてもよい。封止ケースにはラミネート袋、金属缶、樹脂ケースなどを用いることが出来るがその限りではない。封止によって積層電池1000が水分によって劣化することを抑制できる。
【0070】
(変形例)
以下では、実施の形態1の複数の変形例について説明する。なお、以下の複数の変形例の説明において、実施の形態1との相違点または変形例間での相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略または簡略化する。
【0071】
[変形例1]
図2Aおよび
図2Bは、実施の形態1の変形例1における積層電池1100の概略構成を示す断面図である。
【0072】
図2Aおよび
図2Bに示されるように、実施の形態2における積層電池1100は、複数の電池セル2000を有しており、複数の電池セル2000が電気的に直列接続されて、積層電池1100を構成している。積層電池1100は、実施の形態1における積層電池1000と比較して、複数の電池セル2000が電気的に直列接続されている点が異なり、直列接続であるため、電極の向きが電池セル2000と逆転した電池セル2100を含まない。
【0073】
それぞれの電池セル2000は、負極集電体210、負極活物質層110、固体電解質層130、正極集電体220および正極活物質層120を備える。
【0074】
電池セル2000は、正極集電体220、正極活物質層120、固体電解質層130、負極活物質層110および負極集電体210が、電池セル2000の積層方向(z軸方向)に沿ってこの順で積層された構造を有する。積層電池1100は、隣り合う2つの電池セル2000が、第1電池セル2000の正極集電体220と第2電池セル2000の負極集電体210とが接するように積層されている。これにより、積層電池1100は、複数の電池セル2000が電気的に直列接続された直列積層電池となる。
【0075】
図2Aおよび
図2Bに示されるように、複数の電池セル2000に含まれる隣り合う2つの電池セル2000のうち、第1電池セル2000は、第2電池セル2000と対向する面において、第2電池セル2000とは接しない露出面300を有する。具体的には、最下層の電池セル2000以外の各電池セル2000の負極集電体210は、当該電池セル2000と隣り合う電池セル2000とは接しない露出面300を有している。また、最上層の電池セル2000以外の各電池セル2000の正極集電体220は、当該電池セル2000と隣り合う電池セル2000とは接しない露出面300を有している。
【0076】
実施の形態1の場合と同様に、
図2Bは、積層主面の法線(積層方向、z軸方向)に対して傾斜した側面350を有し、同じ形状の複数の電池セル2000が、外周位置が一致するように積層されることによって、積層電池1100が構成されている部分の一例を示す断面模式図である。
【0077】
側面350を有し、同じ形状の複数の電池セル2000を、外周位置が一致するように積層することで、露出面300が形成されている。露出面300上には、電池セル2000が存在しない積層空間400が形成されている。
【0078】
積層空間400を利用して、各電池セル2000の負極集電体210または正極集電体の露出面300上に集電リード500が接続されている。複数の電池セル2000が電気的に直列に接続された積層電池1100においては、集電リード500は、主に端子間電圧の監視に利用される。
【0079】
露出面上の積層空間400を用いた集電リード500の接続方法によれば、実施の形態1と同様に、電池容量には寄与しない、集電リードを接続するためのリード層の挿入などによる積層方向の寸法増加無しに集電リード500を接続できるメリットがある。積層面内方向には露出面300上の積層空間400相当のスペースが必要になる。つまり、電池セル2000が、露出面300を有することにより、電池として機能しない積層空間400が形成されるため、積層電池1000の有効体積が減少する。しかし、特に積層電池が大判になれば、電池容量に寄与しない層による積層方向の寸法増加が少ないことが、積層電池の電池容量密度確保に対して重要となり、積層面内方向の小さなスペース確保が電池容量密度に及ぼす影響は、積層方向の寸法増加が電池容量密度に及ぼす影響より小さい。積層方向の厚みが積層面内方向の辺長さと比較して小さいほど、本変形例における積層電池1100は、有効である。積層方向の寸法増加無しに電池セル2000の端子間電圧が監視可能となるため、安全性に優れた高容量直列積層電池を得ることが出来る。
【0080】
[変形例2]
図3は、実施の形態1の変形例2における積層電池1200の概略構成を示す断面図である。
【0081】
図3に示されるように、実施の形態1の変形例2における積層電池1200は、複数の電池セル2000および2100を有しており、複数の電池セル2000および2100が電気的に接続されて、積層電池1200を構成している。積層電池1200は、実施の形態1における積層電池1000と比較して、複数の電池セル2000および2100が並列接続と直列接続とを組み合わせて電気的に接続されている点が異なる。そのため、積層電池1000と積層電池1200とでは、複数の電池セル2000および2100の積層順が異なっている。
【0082】
それぞれの電池セル2000および2100は、負極集電体210、負極活物質層110、固体電解質層130、正極集電体220および正極活物質層120を備える。
【0083】
図3においては、複数の電池セル2000および2100が並列接続と直列接続とを組み合わせて電気的に接続されている。2つの電池セル2000が隣り合う部分、および、2つの電池セル2100が隣り合う部分は、正極集電体220と負極集電体210とが接するように積層されていることにより直列接続となる。電池セル2000と電池セル2100とが隣り合う部分は、負極集電体210同士または正極集電体220同士が接するように積層されていることにより並列接続となる。
【0084】
図3に示されるように、複数の電池セル2000および2100に含まれる隣り合う2つの電池セル2000および/または2100のうち、第1電池セル2000または2100は、第2電池セル2000または2100と対向する面において、第2電池セル2000または2100とは接しない露出面300を有する。具体的には、最下層の電池セル2000および最上層の電池セル2100以外の各電池セル2000および2100の負極集電体210は、当該負極集電体210と隣り合う電池セル2000または2100とは接しない露出面300を有している。また、各電池セル2000および2100の正極集電体220は、当該正極集電体220と隣り合う電池セル2000または2100とは接しない露出面300を有している。
【0085】
実施の形態1の場合と同様に、
図3は、積層主面の法線(積層方向、z軸方向)に対して傾斜した側面350を有し、同じ形状の複数の電池セル2000および2100が、外周位置が一致するように積層されることによって、積層電池1000が構成されている部分の一例を示す断面模式図である。
【0086】
側面350を有し、同じ形状の複数の電池セル2000および2100を、外周位置が一致するように積層することで、露出面300が形成されている。露出面300上には、電池セル2000および2100が存在しない積層空間400が形成されている。
【0087】
積層空間400を利用して、各電池セル2000および2100の負極集電体210または正極集電体220の露出面300上に集電リード500が接続されている。
【0088】
露出面300上の積層空間400を用いた集電リード500の接続方法によれば、電池容量には寄与しない、集電リードを接続するためのリード層の挿入などによる積層方向の寸法増加無しに集電リード500を接続できるメリットがある。積層面内方向には、露出面300上の積層空間400相当のスペースが必要になる。つまり、電池セル2000および2100が、露出面300を有することにより、電池として機能しない積層空間400が形成されるため、積層電池1000の有効体積が減少する。しかし、特に積層電池が大判になれば、電池容量に寄与しない層による積層方向の寸法増加が少ないことが、積層電池の電池容量密度確保に対して重要となり、積層面内方向の小さなスペース確保が電池容量密度に及ぼす影響は、積層方向の寸法増加が電池容量密度に及ぼす影響より小さい。積層方向の厚みが積層面内方向の辺長さと比較して小さいほど、本変形例における積層電池1200は、有効である。集電体より厚みの大きな集電リード500を直接集電体に接続できるので、大電流特性に優れ、電池セルの端子間電圧も監視可能な、並列接続と直列接続とを組み合わせた優れた高容量積層電池を得ることが出来る。
【0089】
[変形例3]
図4Aおよび
図4Bは、実施の形態1の変形例3における積層電池1300の概略構成を示す図である。具体的には、
図4Aは、積層電池1300の概略構成を示す上面視図であり、積層電池1300を積層方向の上方から見た場合における積層電池1300の各構成要素の平面視形状を実線または破線で表している。
図4Bは、積層電池1300の概略構成を示す断面図であり、
図4AのIV-IV線で示される位置での断面を表している。
【0090】
図4Aおよび
図4Bに示されるように、実施の形態1の変形例3における積層電池1300は、複数の電池セル2200を有しており、複数の電池セル2200が電気的に並列接続されて、積層電池1300を構成している。積層電池1300は、実施の形態1の変形例1における積層電池1100と比較して、積層される電池セルの形状が異なる。
【0091】
電池セル2200は、実施の形態1における電池セル2000と同様に、正極集電体220、正極活物質層120、固体電解質層130、負極活物質層110および負極集電体210が、電池セルの積層方向(z軸方向)に沿ってこの順に積層された構造を有する。
【0092】
図4Aおよび
図4Bに示されるように、積層電池1300は、複数の電池セル2200が積層されており、電池セル2200のx軸方向から見て正面となる2つの側面360が、積層主面の法線(積層方向、z軸方向)に対して傾斜している。複数の電池セル2200は同じ形状である。電池セル2200は、2つの側面360の傾斜する角度が同じであり、x軸方向の幅が一定となる形状である。複数の電池セル2200は、積層方向から見て、複数の電池セル2200の外周位置が同じとなるように積層されている。
図4Bに示される電池セル2200の断面形状は、平行四辺形である。
【0093】
図4Aおよび
図4Bに示されるように、複数の電池セル2200に含まれる隣り合う2つの電池セル2200のうち、第1電池セル2200は、第2電池セル2200と対向する面において、第2電池セル2200とは接しない露出面300を有する。具体的には、最下層の電池セル2200以外の各電池セル2200の負極集電体210は、当該負極集電体210と隣り合う電池セル2200とは接しない露出面300を有している。また、最上層の電池セル2200以外の各電池セル2200の正極集電体220は、当該正極集電体220と隣り合う電池セル2200とは接しない露出面300を有している。
【0094】
側面360を有し、同じ形状の、複数の電池セル2200を、外周位置が一致するように積層することで、露出面300が形成されている。露出面300上には、電池セル2200が存在しない積層空間400が形成されている。
【0095】
積層空間400を利用して、各電池セル2200の負極集電体210または正極集電体の露出面300上に集電リード500が接続されている。
【0096】
(実施の形態2)
以下では、実施の形態2について説明する。なお、以下の説明において、上述の実施の形態1および各変形例との相違点を中心に説明し、共通点の説明を適宜、省略または簡略化する。
【0097】
上述の実施の形態1および各変形例において示した各々の積層電池は、更に封止部材700を配置することが出来る。
図5、
図6、
図7および
図8には、封止部材700を配置した積層電池の例が示されている。
図5、
図6、
図7および
図8は、それぞれ、実施の形態2における積層電池1400~1700の概略構成を示す断面図である。具体的には、
図5には、実施の形態1における積層電池1000の外周に封止部材700が配置された積層電池1400が示されている。
図6には、実施の形態1の変形例1における積層電池1100の外周に封止部材700が配置された積層電池1500が示されている。
図7には、実施の形態1の変形例2における積層電池1200の外周に封止部材700が配置された積層電池1600が示されている。
図8には、実施の形態1の変形例1における積層電池1100を構成するそれぞれの電池セル2000の外周に封止部材700が配置された積層電池1700が示されている。
【0098】
封止部材700は、例えば、電気絶縁材料を用いて形成されている。封止部材700は、積層空間400を維持するスペーサとしても機能する。
【0099】
例えば、封止部材700は、第1材料を含む部材である。封止部材700は、例えば、第1材料を主成分として含む部材であってもよい。封止部材700は、例えば、第1材料のみからなる部材であってもよい。
【0100】
第1材料としては、例えば封止剤などの一般に公知の電池の封止部材の材料が用いられうる。第1材料としては、例えば、樹脂材料が用いられうる。なお、第1材料は、絶縁性であり、かつ、イオン伝導性を有さない材料であってもよい。例えば、第1材料は、エポキシ樹脂とアクリル樹脂とポリイミド樹脂とシルセスキオキサンとのうちの少なくとも1種であってもよい。
【0101】
封止部材700は、粒子状の金属酸化物材料を含んでもよい。金属酸化物材料としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、ゼオライト、ガラスなどが用いられうる。例えば、封止部材700は、金属酸化物材料からなる複数の粒子が分散された樹脂材料を用いて形成されていてもよい。
【0102】
金属酸化物材料の粒子サイズは、負極集電体210と正極集電体220との間隔以下であればよい。金属酸化物材料の粒子形状は、正円状(球状)、楕円球状、棒状などであってもよい。
【0103】
封止部材700を配置することで、機械的強度向上、短絡防止、防湿などの点で、積層電池の信頼性を向上させることが出来る。また、封止部材700が積層空間400に入り込む構造となるため、積層空間400が無い場合に比べて、封止部材700が剥離しにくく、強固に封止された積層電池となる。
【0104】
図5、
図6および
図7に示される積層電池1400~1600は、例えば、積層電池1000~1200に封止部材700を塗布することにより製造されうる。積層電池1000~1200を構成する電池セル2000および2100は、積層方向に対して傾斜した側面350を有するため、塗布時に封止部材700が側面350上から流れ落ちにくく、固定されやすい。そのため、電池セル2000および2100の上方または斜め上方からディスペンサーまたはインクジェットを用いて封止部材700を塗布することができ、封止部材700を容易に精度よく配置することができる。
【0105】
また、
図8に示される積層電池1700は、例えば、電池セル2000に封止部材700を塗布して、封止部材700が塗布された電池セル2300とし、電池セル2300を積層することにより製造されうる。電池セル2000が積層方向に対して傾斜した側面350を有するため、個別の電池セル2000の上方または斜め上方からディスペンサーまたはインクジェットを用いて個別に封止部材700を塗布することができる。
【0106】
(実施の形態3)
以下では、実施の形態3について説明する。なお、以下の説明において、上述の実施の形態1、実施の形態2および各変形例との相違点を中心に説明し、共通点の説明を適宜、省略または簡略化する。
【0107】
図9は、実施の形態3における積層電池1800の概略構成を示す断面図である。具体的には、
図9には、実施の形態1における積層電池1000と同じ構造を有する積層電池に接合部800が形成された積層電池1800が示されている。
【0108】
図9に示されるように、隣り合う2つの電池セル2000および2100は、第1電池セル2000または2100の露出面300と、第2電池セル2000または2100とが、導電性材料からなる接合部800により接続されている。具体的には、隣り合う2つの電池セル2000および2100のうち、第1電池セル2000または2100の露出面300と、第2電池セル2000または2100の負極集電体210または正極集電体220とが、接合部800により接続されている。
【0109】
接合部800は、導電性材料により露出面300と集電体とを接合していればよい。接合部800を構成する導電性材料としては、導電性が高い材料であれば特に制限は無いが、銀、ニッケル、ステンレス、アルミニウム、銅などの金属が用いられうる。また、導電性材料としては、導電性の接着剤が用いられてもよい。接合部800は、例えば、接合部800が接続する露出面300および集電体を、導電性材料を介して溶接されることにより形成されてもよく、接合部800が接続する露出面300および集電体の一部を融かすことにより形成されてもよい。
【0110】
積層電池1800は、接合部800が形成されていることにより、電池セル2000および2100間の機械的接合および電気的接合がより強固になり、電池セル2000および2100間の接続インピーダンスが小さくなることによって、発熱の抑制や、大電流特性の向上などの効果を得ることが出来る。
【0111】
(他の実施の形態)
以上、本開示に係る積層電池について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を実施の形態に施したものや、実施の形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される別の形態も、本開示の範囲に含まれる。
【0112】
また、上記の各実施の形態は、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【0113】
例えば、上記実施の形態では、複数の電池セルは、積層方向から見て、外周位置が一致するように積層されていたが、これに限らない。複数の電池セルは、露出面の位置および形状を調整するために、積層方向に対して垂直な方向にずれて積層されてもよい。
【0114】
また、上記実施の形態では、すべての複数の電池セルは、電池セルの側面が積層方向に傾斜し、露出面を有していたが、これに限らない。目的とする集電リードの接続箇所に応じて、側面が傾斜していない電池セルが積層されていてもよく、露出面を有しない電池セルが積層されていてもよい。
【0115】
また、上記実施の形態では、電池セルの上面視の形状は矩形であったが、これに限らない。電池セルの上面視の形状は、円形、楕円形または多角形であってもよい。
【0116】
また、上記実施の形態では、電池セルの側面は直線状に傾斜していたが、これに限らない。電池セルの側面は、曲線状の傾斜を有していてもよく、側面の一部の傾斜角度が変化していてもよい。また、電池セルの側面は、正極集電体または負極集電体の側面を含んでいれば、側面の一部のみが傾斜している形状であってもよい。
【0117】
また、上記実施の形態では、すべての電池セルが、正極集電体、正極活物質層、固体電解質層、負極活物質層および負極集電体が積層された構造を有していたが、これに限らない。隣り合う2つの電池セルは、1つの集電体の両面に他の層を積層した構造とすることで、同一の集電体が用いられてもよい。隣り合う2つの電池セルにおいて同一の集電体を用いる場合には、隣り合う2つの電池セルが対向する面において、面積が大きくなる電池セルの集電体が、同一の集電体として用いられる。
【0118】
また、上記実施の形態では、集電リードの厚みは一定であったが、これに限らない。集電リードは、露出面上以外の部分においては、目的によって集電リードの厚みを厚くするなど、集電リードの厚みを変化させてもよい。
【0119】
また、上記実施の形態では、積層電池を構成する各電池セルの露出面に集電リードが接続されていたが、これに限らない。積層電池には、露出面に集電リードが接続されない電池セルが含まれていてもよい。例えば、集電リードが接続されない露出面は、外部から端子等を接触させるための面、識別等のマークの表示面等として活用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本開示に係る積層電池は、電子機器、電気器具装置、電気車両などの電池として、利用されうる。
【符号の説明】
【0121】
110 負極活物質層
120 正極活物質層
130 固体電解質層
210 負極集電体
220 正極集電体
300 露出面
350、360 側面
400 積層空間
500 集電リード
700 封止部材
800 接合部
1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800 積層電池
2000、2100、2200、2300 電池セル