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特許7378162コンクリート試験機の検定システムおよび検定方法並びに試験機用検定器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】コンクリート試験機の検定システムおよび検定方法並びに試験機用検定器
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/08 20060101AFI20231106BHJP
   G01N 7/00 20060101ALI20231106BHJP
   G01N 33/38 20060101ALN20231106BHJP
【FI】
G01N15/08 C
G01N15/08 D
G01N7/00 Z
G01N33/38
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021123236
(22)【出願日】2021-07-28
(65)【公開番号】P2023018880
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】508182589
【氏名又は名称】エフティーエス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117558
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 和之
(72)【発明者】
【氏名】田中 章夫
(72)【発明者】
【氏名】竹厚 四郎
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-262578(JP,A)
【文献】特開2014-228520(JP,A)
【文献】特開2000-039377(JP,A)
【文献】特開平08-304261(JP,A)
【文献】米国特許第04182158(US,A)
【文献】米国特許第05837881(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00~15/14
G01N 5/00~ 9/36
G01N 33/00~33/46
G01M 3/02
G01M 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層コンクリートの透気性または透水性を計測するコンクリート試験機と、該コンクリート試験機の計測性能の検定に用いられる試験機用検定器とを有し、
前記コンクリート試験機は、内側チャンバーと、該内側チャンバーを取り囲む外側チャンバーと、該内側チャンバーの開口部を取り囲む内側シール部材と、該外側チャンバーの開口部を取り囲む外側シール部材とを有するダブルチャンバー構造を有し、
前記試験機用検定器は、前記コンクリート試験機が載置される大きさを有する平坦な試験機載置板と、流体の流量の微調整を行って前記コンクリート試験機に供給される検定用流体を出力する部材であって、その出力される該検定用流体の流量が表示される流量表示部を備えた流量調整器と、前記試験機載置板に形成されている載置板継手とを有し、
前記載置板継手が前記内側シール部材によって取り囲まれるようにして前記コンクリート試験機が前記試験機載置板に載置されたあとに前記コンクリート試験機の前記内側シール部材によって前記内側チャンバーが密閉される密閉載置状態において、前記検定用流体が前記載置板継手を通って前記内側チャンバーに供給され、
前記コンクリート試験機は、前記内側チャンバーまたは外側チャンバー内の流体を吸引する吸引手段と、前記内側チャンバーまたは外側チャンバー内の圧力を計測する試験機圧力計と、前記内側チャンバーに供給される前記流体の流量を計測する試験機流量計と、該試験機流量計によって計測される前記流体の流量が表示される表示手段とを更に有し、
前記密閉載置状態において、前記流量調整器から出力される前記検定用流体の流量が前記流量表示部に表示されて、前記内側チャンバー内に供給される前記検定用流体につき、該検定用流体の圧力が前記コンクリート試験機の前記試験機圧力計によって計測され、かつ該検定用流体の流量が前記試験機流量計によって計測され、さらに、前記試験機流量計によって計測される前記検定用流体の流量が前記表示手段に表示されるコンクリート試験機の検定システム。
【請求項2】
前記吸引手段が前記密閉載置状態で作動することによって、前記検定用流体が前記流量調整器から出力され、
前記試験機用検定器は、前記流量調整器が収容されている検定器ボックスを有し、該検定器ボックスの外側に前記流量表示部が配置されている請求項1記載のコンクリート試験機の検定システム。
【請求項3】
流体の圧力を計測する圧力計測器を更に有し、
前記試験機用検定器は、前記圧力計測器が着脱可能な圧力計継手を更に有し、
該圧力計継手に接続されている前記圧力計測器によって、前記検定用流体の圧力が計測され、
圧力調整された気体を供給する圧力調整気体供給手段と、前記流体の流量を計測する流量計とを更に有し、
前記試験機用検定器は、該圧力調整気体供給手段が着脱可能な流体給排継手を更に有し、
前記流体給排継手に前記圧力調整気体供給手段が接続され、かつ前記圧力計継手に前記圧力計測器が接続され、さらに前記載置板継手に前記流量計が接続されているときに、前記圧力調整気体供給手段から供給される前記圧力調整された気体の流量が前記流量計で計測され、該気体の圧力が前記圧力計測器で計測されることによって、前記検定用流体の流量および圧力が確認される請求項1または2記載のコンクリート試験機の検定システム。
【請求項4】
前記圧力調整気体供給手段から供給される前記圧力調整された気体であって、前記流量調整器によって微調整された前記検定用流体の流量が前記流量表示部に表示される請求項3記載のコンクリート試験機の検定システム。
【請求項5】
前記試験機用検定器は、前記検定用流体が流れる第1の接続チューブと、
該第1の接続チューブに接続されている中間継手と、
該中間継手と、前記載置板継手とを接続する第2の接続チューブと、
前記中間継手と、前記圧力計継手とを接続する第3の接続チューブとを更に有する請求項3または4記載のコンクリート試験機の検定システム。
【請求項6】
前記コンクリート試験機は、前記内側チャンバーに供給される加圧水の流量を調整する流量調整手段を更に有する請求項1~5のいずれか一項記載のコンクリート試験機の検定システム。
【請求項7】
前記内側チャンバーに供給される前記加圧水の水量変化から前記表層コンクリートの内部に浸透した水量が算出される請求項6記載のコンクリート試験機の検定システム。
【請求項8】
表層コンクリートの透気性または透水性を計測するコンクリート試験機と、該コンクリート試験機の計測性能の検定に用いられる試験機用検定器とを用いて実現されるコンクリート試験機の検定方法であって、
前記コンクリート試験機は、内側チャンバーと、該内側チャンバーを取り囲む外側チャンバーと、該内側チャンバーの開口部を取り囲む内側シール部材と、該外側チャンバーの開口部を取り囲む外側シール部材とを有するダブルチャンバー構造を有し、かつ前記内側チャンバーまたは外側チャンバー内の流体を吸引する吸引手段と、前記内側チャンバーまたは外側チャンバー内の圧力を計測する試験機圧力計と、前記内側チャンバーに供給される前記流体の流量を計測する試験機流量計と、該試験機流量計によって計測される前記流体の流量が表示される表示手段とを有する透気性試験機が用いられ、
前記試験機用検定器は、前記コンクリート試験機が載置される大きさを有する平坦な試験機載置板と、流体の流量の微調整を行って前記コンクリート試験機に供給される検定用流体を出力する部材であって、その出力される該検定用流体の流量が表示される流量表示部を備えた流量調整器と、前記試験機載置板に形成されている載置板継手とを有し、
前記載置板継手が前記内側シール部材によって取り囲まれるようにして前記コンクリート試験機が前記試験機載置板に載置された後に前記コンクリート試験機の前記内側シール部材によって前記内側チャンバーが密閉される密閉載置状態が形成される第1の工程と、
前記密閉載置状態において、前記吸引手段を作動させることによって前記検定用流体が前記載置板継手を通って前記内側チャンバーに供給される第2の工程と、
該第2の工程が実行されているときに、前記流量調整器から出力される前記検定用流体の流量が前記流量表示部に表示されて、前記内側チャンバー内に供給される前記検定用流体につき、該検定用流体の圧力が前記試験機圧力計によって計測され、かつ該検定用流体の流量が前記試験機流量計によって計測され、さらに、前記試験機流量計によって計測される前記検定用流体の流量が前記表示手段に表示される第3の工程とを有するコンクリート試験機の検定方法。
【請求項9】
表層コンクリートの透気性または透水性を計測するコンクリート試験機と、該コンクリート試験機の計測性能の検定に用いられる試験機用検定器とを用いて実現されるコンクリート試験機の検定方法であって、
前記コンクリート試験機は、内側チャンバーと、該内側チャンバーを取り囲む外側チャンバーと、該内側チャンバーの開口部を取り囲む内側シール部材と、該外側チャンバーの開口部を取り囲む外側シール部材とを有するダブルチャンバー構造を有し、かつ前記内側チャンバーまたは外側チャンバー内の流体を吸引する吸引手段と、前記内側チャンバーまたは外側チャンバー内の圧力を計測する試験機圧力計と、前記内側チャンバーに供給される前記流体の流量を計測する試験機流量計とを有する透気性試験機が用いられ、
前記試験機用検定器は、前記コンクリート試験機が載置される大きさを有する平坦な試験機載置板と、流体の流量の微調整を行って前記コンクリート試験機に供給される検定用流体を出力する流量調整器と、前記試験機載置板に形成されている載置板継手とを有し、
前記載置板継手が前記内側シール部材によって取り囲まれるようにして前記コンクリート試験機が前記試験機載置板に載置された後に前記コンクリート試験機の前記内側シール部材によって前記内側チャンバーが密閉される密閉載置状態が形成される第1の工程と、
前記密閉載置状態において、前記吸引手段を作動させることによって前記検定用流体が前記載置板継手を通って前記内側チャンバーに供給される第2の工程と、
該第2の工程が実行されているときに、前記内側チャンバー内の圧力が前記試験機圧力計によって計測され、前記内側チャンバー内に供給される前記検定用流体の流量が前記試験機流量計によって計測される第3の工程とを有し、
前記第3の工程において、前記試験機流量計によって計測される前記検定用流体の流量を前記流量調整器によって調整された前記検定用流体の流量と比較して前記コンクリート試験機の計測性能が適正であることを確認する点検モードを有するコンクリート試験機の検定方法。
【請求項10】
前記コンクリート試験機の代わりに、前記流体の流量を計測する流量計と、前記流体の圧力を計測する圧力計測器と、圧力調整された気体を供給する圧力調整気体供給手段とが用いられ、
前記試験機用検定器は、前記圧力調整気体供給手段が着脱可能な流体給排継手と、前記圧力計測器が着脱可能な圧力計継手とを更に有し、
前記圧力調整気体供給手段が前記流体給排継手に接続され、かつ前記載置板継手に前記流量計が接続され、さらに前記圧力計継手に前記圧力計測器が接続され、
前記圧力調整気体供給手段によって、前記圧力調整された気体が前記流体給排継手を通って前記流量調整器に供給されたときに該流量調整器から前記検定用流体として出力される前記気体の流量および圧力がそれぞれ前記流量計および圧力計測器によって計測されることによって、前記試験機用検定器の校正が行われる試験機用検定器校正モードを更に有する請求項9記載のコンクリート試験機の検定方法。
【請求項11】
内側チャンバーと、該内側チャンバーを取り囲む外側チャンバーと、該内側チャンバーの開口部を取り囲む内側シール部材と、該外側チャンバーの開口部を取り囲む外側シール部材とを有するダブルチャンバー構造を有し、表層コンクリートの透気性または透水性を計測するコンクリート試験機の計測性能の検定に用いられる試験機用検定器であって、
前記コンクリート試験機が載置される大きさを有する平坦な試験機載置板と、流体の流量の微調整を行って前記コンクリート試験機に供給される検定用流体を出力する流量調整器と、前記試験機載置板に形成されている載置板継手とを有し、
前記載置板継手が前記内側シール部材によって取り囲まれるようにして前記コンクリート試験機が前記試験機載置板に載置されたあとに前記コンクリート試験機の前記内側シール部材によって前記内側チャンバーが密閉される密閉載置状態において、前記検定用流体が前記載置板継手を通って前記内側チャンバーに供給されるように構成されている試験機用検定器。
【請求項12】
内側チャンバーと、該内側チャンバーを取り囲む外側チャンバーと、該内側チャンバーの開口部を取り囲む内側シール部材と、該外側チャンバーの開口部を取り囲む外側シール部材とを有するダブルチャンバー構造を有し、かつ該ダブルチャンバー構造が設けられている本体ボックスを有している表層コンクリートの透気性または透水性を計測するコンクリート試験機に関し、その計測性能の検定に用いられる試験機用検定器であって、
前記本体ボックスの全体が外側に張り出すことなく内側に納まるようにして前記コンクリート試験機が載置される大きさを有する平坦な試験機載置板と、
該試験機載置板によって上側が閉塞される平面視矩形状の箱体と、
流体の流量の微調整を行って前記コンクリート試験機に供給される検定用流体を出力する流量調整器と、
前記試験機載置板に形成されている載置板継手と、
圧力調整された気体を供給する圧力調整気体供給手段が着脱可能な流体給排継手と、
前記流体の圧力を計測する圧力計測器が着脱可能な圧力計継手とを有し、
前記流体給排継手と、前記圧力計継手とが前記箱体を構成する側板部のいずれか一つに形成され、かつ前記流量調整器は、前記箱体に収容され、
前記載置板継手が前記内側シール部材によって取り囲まれるようにして前記コンクリート試験機が前記試験機載置板に載置されたあとに前記コンクリート試験機の前記内側シール部材によって前記内側チャンバーが密閉される密閉載置状態において、前記検定用流体が前記載置板継手を通って前記内側チャンバーに供給される第1のモードと、前記載置板継手に流量計が接続され、かつ前記圧力計継手に前記圧力計測器が接続されている場合において、前記圧力調整気体供給手段によって、前記圧力調整された気体が前記流体給排継手を通って前記流量調整器に供給されたときに該流量調整器から前記検定用流体として出力される前記圧力調整された気体の流量および圧力がそれぞれ前記載置板継手に接続されている前記流量計および前記圧力計継手に接続されている前記圧力計測器によって計測される第2のモードとの併用によって前記計測性能の検定が実現されるように構成されている試験機用検定器。
【請求項13】
前記検定用流体が流れる第1の接続チューブと、
該第1の接続チューブに接続されている中間継手と、
該中間継手と、前記載置板継手とを接続する第2の接続チューブと、
前記中間継手と、前記圧力計継手とを接続する第3の接続チューブとを更に有する請求項12記載の試験機用検定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表層コンクリートの透気性を計測する透気性試験機または透水性を計測する透水性試験機と、それら試験機の点検および計測性能の検定に用いられる試験機用検定器とによって構成されるコンクリート試験機の検定システムおよびコンクリート試験機の検定方法並びに試験機用検定器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートが用いられた様々なコンクリート構造物が知られている。コンクリートの性能はコンクリートの配合、打設方法、型枠の種類、養生方法によって大きく変化する。そのため、コンクリート構造物の強度や耐久性といった品質が評価されることが必要である。
【0003】
また、近年、建設されてからの時間の経過に伴い、老朽化したコンクリート構造物が増加してきているため、コンクリート構造物の補修工事の必要性が年々高まってきている。コンクリート構造物を補修する前提という意味においても、コンクリートの品質が評価されることが必要である。
【0004】
このような理由から、従来、コンクリートの強度や耐久性といった品質が評価されるための各種の試験方法が提案されている。この点、コンクリート構造物の劣化は、コンクリートの表層部(表層コンクリートともいう)から有害な物質が侵入することで著しく進行することが知られている。例えば、コンクリートに塩分が侵入することで、その内部の鉄筋や鋼材などが腐食してコンクリート構造物が劣化する場合や、大気中の二酸化炭素がコンクリートに侵入することで、コンクリートが中性化して劣化が進行する場合などである。
【0005】
そこで、コンクリートの品質評価という課題に関して、現在では、とりわけ表層コンクリートの緻密性を評価する必要性が認識されており、中でも、コンクリート構造物に傷をつけずに評価できる非破壊試験の必要性が高まっている。その非破壊試験に関して、例えば、表層コンクリートにおける気体の透過性(透気性)を計測してコンクリートの品質が評価される方法(透気性試験)や、表層コンクリートにおける水の浸透具合(透水性)を計測してコンクリートの品質が評価される方法(透水性試験)が知られている。
【0006】
透気性試験に関して、従来、いわゆるダブルチャンバー法と呼ばれる方法が知られている。ダブルチャンバー法とは、内側チャンバーと、それを環状に取り囲む外側チャンバーとの二重構造(ダブルチャンバー構造ともいう)を有する試験機を用いた方法である。ダブルチャンバー法では、内側チャンバー内と、外側チャンバー内とを減圧したうえで、双方のチャンバー内の気圧を等しくなるように制御して、表層コンクリートの透気係数(または透水係数)が計測される。その求められた透気係数(または透水係数)にしたがい、コンクリートの品質が評価される。ダブルチャンバー法に関しては、従来、例えば、特許文献1,特許文献2に開示されている技術が知られている。
【0007】
また、透水性試験に関しても、従来、内側チャンバーと外側チャンバーとの二重構造を有する試験機を用いた方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2003-262578号公報
【文献】特開2014-32125号公報
【文献】特許第5611417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来技術によれば、透気性試験、透水性試験のいずれに関しても、それぞれに適した試験機による計測結果に基づき、コンクリートの品質が評価される。
【0010】
しかし、経年劣化、不適切な使用、整備不良等の様々な理由によって、試験機の計測性能が変わることが考えられる。そのような試験機が用いられると、本来なら品質が適正ではないとされるコンクリートが適正とされたり、逆に、品質が適正なコンクリートが適正ではないとされるなど、品質評価の信憑性が保てなくなるおそれがある。そのため、適正な品質評価の前提として、まず、試験機の計測性能が適正な精度で担保されていること(例えば、透気性試験機であれば、その試験機で計測されている透気量や気圧が適正なのか)を確認する必要がある。
【0011】
しかし、従来、このような確認に適した装置は存在していなかった。また、透気性試験では、所定の圧力で気体が減圧されつつ流量が計測されるため、気体の流量とともに圧力が確認されることが望ましいし、試験機には、透気性試験機と透水性試験機とがあるため、そのどちらの試験機の確認にも利用できることが望ましい。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、透気性試験機の計測性能を流量および圧力の双方で確認でき、透水性試験機の確認にも利用可能な汎用性を備えたコンクリート試験機の検定システムおよび検定方法並びに試験機用検定器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明は、表層コンクリートの透気性または透水性を計測するコンクリート試験機と、そのコンクリート試験機の計測性能の検定に用いられる試験機用検定器とを有し、コンクリート試験機は、内側チャンバーと、その内側チャンバーを取り囲む外側チャンバーと、その内側チャンバーの開口部を取り囲む内側シール部材と、その外側チャンバーの開口部を取り囲む外側シール部材とを有するダブルチャンバー構造を有し、試験機用検定器は、コンクリート試験機が載置される大きさを有する平坦な試験機載置板と、流体の流量の微調整を行ってコンクリート試験機に供給される検定用流体を出力する部材であって、その出力される該検定用流体の流量が表示される流量表示部を備えた流量調整器と、試験機載置板に形成されている載置板継手とを有し、載置板継手が内側シール部材によって取り囲まれるようにしてコンクリート試験機が試験機載置板に載置されたあとにコンクリート試験機の内側シール部材によって内側チャンバーが密閉される密閉載置状態において、検定用流体が前記載置板継手を通って内側チャンバーに供給され、コンクリート試験機は、内側チャンバーまたは外側チャンバー内の流体を吸引する吸引手段と、内側チャンバーまたは外側チャンバー内の圧力を計測する試験機圧力計と、内側チャンバーに供給される流体の流量を計測する試験機流量計と、その試験機流量計によって計測される流体の流量が表示される表示手段とを更に有し、密閉載置状態において、流量調整器から出力される検定用流体の流量が流量表示部に表示されて、内側チャンバー内に供給される検定用流体につき、その検定用流体の圧力がコンクリート試験機の試験機圧力計によって計測され、かつその検定用流体の流量が試験機流量計によって計測され、さらに、試験機流量計によって計測される検定用流体の流量が表示手段に表示されるコンクリート試験機の検定システムを提供する。
【0014】
上記コンクリート試験機の検定システムの場合、吸引手段が密閉載置状態で作動することによって、検定用流体が流量調整器から出力され、試験機用検定器は、流量調整器が収容されている検定器ボックスを有し、その検定器ボックスの外側に流量表示部が配置されていることが好ましい。
【0015】
また、流体の圧力を計測する圧力計測器を更に有し、試験機用検定器は、圧力計測器が着脱可能な圧力計継手を更に有し、その圧力計継手に接続されている圧力計測器によって、検定用流体の圧力が計測され、圧力調整された気体を供給する圧力調整気体供給手段と、流体の流量を計測する流量計とを更に有し、試験機用検定器は、その圧力調整気体供給手段が着脱可能な流体給排継手を更に有し、流体給排継手に圧力調整気体供給手段が接続され、かつ圧力計継手に圧力計測器が接続され、さらに載置板継手に流量計が接続されているときに、圧力調整気体供給手段から供給される圧力調整された気体の流量が流量計で計測され、その気体の圧力が圧力計測器で計測されることによって、検定用流体の流量および圧力が確認されることが好ましい。
【0016】
さらに、圧力調整気体供給手段から供給される圧力調整された気体であって、流量調整器によって微調整された検定用流体の流量が流量表示部に表示されることが好ましい。
【0017】
また、試験機用検定器は、検定用流体が流れる第1の接続チューブと、その第1の接続チューブに接続されている中間継手と、その中間継手と、載置板継手とを接続する第2の接続チューブと、中間継手と、圧力計継手とを接続する第3の接続チューブとを更に有するようにすることができる。
【0018】
さらに、コンクリート試験機は、内側チャンバーに供給される加圧水の流量を調整する流量調整手段を更に有するようにすることができる。
【0019】
内側チャンバーに供給される加圧水の水量変化から表層コンクリートの内部に浸透した水量が算出されるようにすることができる。
【0020】
そして、本発明は、表層コンクリートの透気性または透水性を計測するコンクリート試験機と、そのコンクリート試験機の計測性能の検定に用いられる試験機用検定器とを用いて実現されるコンクリート試験機の検定方法であって、コンクリート試験機は、内側チャンバーと、その内側チャンバーを取り囲む外側チャンバーと、その内側チャンバーの開口部を取り囲む内側シール部材と、その外側チャンバーの開口部を取り囲む外側シール部材とを有するダブルチャンバー構造を有し、かつ内側チャンバーまたは外側チャンバー内の流体を吸引する吸引手段と、内側チャンバーまたは外側チャンバー内の圧力を計測する試験機圧力計と、内側チャンバーに供給される流体の流量を計測する試験機流量計と、その試験機流量計によって計測される流体の流量が表示される表示手段とを有する透気性試験機が用いられ、試験機用検定器は、コンクリート試験機が載置される大きさを有する平坦な試験機載置板と、流体の流量の微調整を行ってコンクリート試験機に供給される検定用流体を出力する部材であって、その出力されるその検定用流体の流量が表示される流量表示部を備えた流量調整器と、試験機載置板に形成されている載置板継手とを有し、載置板継手が内側シール部材によって取り囲まれるようにしてコンクリート試験機が試験機載置板に載置された後にコンクリート試験機の前記内側シール部材によって内側チャンバーが密閉される密閉載置状態が形成される第1の工程と、密閉載置状態において、吸引手段を作動させることによって検定用流体が載置板継手を通って内側チャンバーに供給される第2の工程と、その第2の工程が実行されているときに、流量調整器から出力される検定用流体の流量が流量表示部に表示されて、内側チャンバー内に供給される検定用流体につき、その検定用流体の圧力が試験機圧力計によって計測され、かつその検定用流体の流量が試験機流量計によって計測され、さらに、試験機流量計によって計測される検定用流体の流量が表示手段に表示される第3の工程とを有するコンクリート試験機の検定方法を提供する。
【0021】
また、本発明は、表層コンクリートの透気性または透水性を計測するコンクリート試験機と、そのコンクリート試験機の計測性能の検定に用いられる試験機用検定器とを用いて実現されるコンクリート試験機の検定方法であって、コンクリート試験機は、内側チャンバーと、その内側チャンバーを取り囲む外側チャンバーと、その内側チャンバーの開口部を取り囲む内側シール部材と、その外側チャンバーの開口部を取り囲む外側シール部材とを有するダブルチャンバー構造を有し、かつ内側チャンバーまたは外側チャンバー内の流体を吸引する吸引手段と、内側チャンバーまたは外側チャンバー内の圧力を計測する試験機圧力計と、内側チャンバーに供給される流体の流量を計測する試験機流量計とを有する透気性試験機が用いられ、試験機用検定器は、コンクリート試験機が載置される大きさを有する平坦な試験機載置板と、流体の流量の微調整を行ってコンクリート試験機に供給される検定用流体を出力する流量調整器と、試験機載置板に形成されている載置板継手とを有し、載置板継手が内側シール部材によって取り囲まれるようにしてコンクリート試験機が試験機載置板に載置された後にコンクリート試験機の内側シール部材によって内側チャンバーが密閉される密閉載置状態が形成される第1の工程と、密閉載置状態において、吸引手段を作動させることによって検定用流体が載置板継手を通って内側チャンバーに供給される第2の工程と、その第2の工程が実行されているときに、内側チャンバー内の圧力が試験機圧力計によって計測され、内側チャンバー内に供給される検定用流体の流量が試験機流量計によって計測される第3の工程とを有し、第3の工程において、試験機流量計によって計測される検定用流体の流量を流量調整器によって調整された検定用流体の流量と比較してコンクリート試験機の計測性能が適正であることを確認する点検モードを有するコンクリート試験機の検定方法を提供する。
【0022】
さらに、コンクリート試験機の代わりに、流体の流量を計測する流量計と、流体の圧力を計測する圧力計測器と、圧力調整された気体を供給する圧力調整気体供給手段とが用いられ、試験機用検定器は、圧力調整気体供給手段が着脱可能な流体給排継手と、圧力計測器が着脱可能な圧力計継手とを更に有し、圧力調整気体供給手段が流体給排継手に接続され、かつ載置板継手に流量計が接続され、さらに圧力計継手に圧力計測器が接続され、圧力調整気体供給手段によって、圧力調整された気体が流体給排継手を通って流量調整器に供給されたときにその流量調整器から検定用流体として出力される気体の流量および圧力がそれぞれ流量計および圧力計測器によって計測されることによって、試験機用検定器の校正が行われる試験機用検定器校正モードを更に有することが好ましい。
【0023】
さらに、本発明は、内側チャンバーと、その内側チャンバーを取り囲む外側チャンバーと、その内側チャンバーの開口部を取り囲む内側シール部材と、その外側チャンバーの開口部を取り囲む外側シール部材とを有するダブルチャンバー構造を有し、表層コンクリートの透気性または透水性を計測するコンクリート試験機の計測性能の検定に用いられる試験機用検定器であって、コンクリート試験機が載置される大きさを有する平坦な試験機載置板と、流体の流量の微調整を行ってコンクリート試験機に供給される検定用流体を出力する流量調整器と、試験機載置板に形成されている載置板継手とを有し、載置板継手が内側シール部材によって取り囲まれるようにしてコンクリート試験機が試験機載置板に載置されたあとにコンクリート試験機の内側シール部材によって内側チャンバーが密閉される密閉載置状態において、検定用流体が載置板継手を通って内側チャンバーに供給されるように構成されている試験機用検定器を提供する。
【0024】
さらに、本発明は、内側チャンバーと、その内側チャンバーを取り囲む外側チャンバーと、その内側チャンバーの開口部を取り囲む内側シール部材と、その外側チャンバーの開口部を取り囲む外側シール部材とを有するダブルチャンバー構造を有し、かつそのダブルチャンバー構造が設けられている本体ボックスを有している表層コンクリートの透気性または透水性を計測するコンクリート試験機に関し、その計測性能の検定に用いられる試験機用検定器であって、本体ボックスの全体が外側に張り出すことなく内側に納まるようにしてコンクリート試験機が載置される大きさを有する平坦な試験機載置板と、その試験機載置板によって上側が閉塞される平面視矩形状の箱体と、流体の流量の微調整を行ってコンクリート試験機に供給される検定用流体を出力する流量調整器と、試験機載置板に形成されている載置板継手と、圧力調整された気体を供給する圧力調整気体供給手段が着脱可能な流体給排継手と、流体の圧力を計測する圧力計測器が着脱可能な圧力計継手とを有し、流体給排継手と、圧力計継手とが箱体を構成する側板部のいずれか一つに形成され、かつ流量調整器は、箱体に収容され、載置板継手が内側シール部材によって取り囲まれるようにしてコンクリート試験機が試験機載置板に載置されたあとにコンクリート試験機の内側シール部材によって内側チャンバーが密閉される密閉載置状態において、検定用流体が載置板継手を通って内側チャンバーに供給される第1のモードと、載置板継手に流量計が接続され、かつ圧力計継手に圧力計測器が接続されている場合において、圧力調整気体供給手段によって、圧力調整された気体が流体給排継手を通って流量調整器に供給されたときにその流量調整器から検定用流体として出力される圧力調整された気体の流量および圧力がそれぞれ載置板継手に接続されている流量計および圧力計継手に接続されている圧力計測器によって計測される第2のモードとの併用によって計測性能の検定が実現されるように構成されている試験機用検定器を提供する。
【0025】
上記試験機用検定器において、検定用流体が流れる第1の接続チューブと、その第1の接続チューブに接続されている中間継手と、その中間継手と、載置板継手とを接続する第2の接続チューブと、その中間継手と、圧力計継手とを接続する第3の接続チューブとを更に有することが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
以上詳述したように、本発明によれば、透気性試験機の計測性能を流量および圧力の双方で確認でき、透水性試験機の確認にも利用可能な汎用性を備えたコンクリート試験機の検定システムおよび検定方法並びに試験機用検定器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施の形態に係るコンクリート試験機の検定システムの要部を示した斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係るコンクリート試験機の検定システム全体のシステム構成図である。
図3図1の検定システムを構成する試験機用検定器の一部省略した平面図である。
図4】試験機用検定器の精密ニードルバルブ側からみた一部省略した側面図である。
図5】試験機用検定器の蓋体を外して示した平面図である。
図6】精密ニードルバルブを外して精密ニードルバルブ側からみた試験機用検定器の側面図である。
図7】精密ニードルバルブの平面図である。
図8】精密ニードルバルブと、精密ニードルバルブにつながる接続部分の要部を示した平面図である。
図9】変形例に係る試験機用検定器の平面図である。
図10】変形例に係る試験機用検定器の精密ニードルバルブ側からみた一部省略した側面図である。
図11】別の変形例に係る試験機用検定器の平面図である。
図12】別の変形例に係る試験機用検定器の精密ニードルバルブ側からみた一部省略した側面図である。
図13】透気性試験機の要部およびその透気性試験機がコンクリートの表面に設置されて透気性試験が行われている状態を模式的に示した断面図である。
図14】透気性試験機の要部を底面側から示した斜視図である。
図15】コンクリート試験機の検定方法のうちの試験機用検定器校正モードにおける検定システムの構成および動作を模式的に示した図である。
図16】コンクリート試験機の検定方法のうちの試験機点検モードにおける検定システムの構成および動作を模式的に示した図である。
図17】透水性試験機の要部およびその透水性試験機がコンクリートの表面に設置されて透水性試験が行われている状態を模式的に示した断面図である。
図18】透水性試験機を有する試験機点検モードにおける検定システムの構成および動作を模式的に示した図である。
図19】変形例に係る試験機用検定器を用いた試験機点検モードにおける検定システムの構成および動作を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、同一要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0029】
本発明の実施の形態に係るコンクリート試験機の検定システム(以下「検定システム」ともいう)100について、まず、図1図2を参照して、その構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る検定システム100の要部を示した斜視図、図2は、検定システム100全体のシステム構成図である。
【0030】
(検定システム100の構成)
本発明の実施の形態に係る検定システム100は、図1図2に示すように、コンクリート試験機1と、試験機用検定器30とを有している。また、検定システム100は、圧力・流量計測器70と、圧力調整気体供給ユニット90とを有している。
【0031】
(コンクリート試験機1の構成)
コンクリート試験機1は、表層コンクリートの透気性を計測する透気性試験機である。そのコンクリート試験機1について、図13図14を参照して詳しく述べれば次のとおりである。図13は、コンクリート試験機1の要部およびそのコンクリート試験機1がコンクリート99の表面99aに設置されて透気性試験が行われている状態を模式的に示した断面図、図14はコンクリート試験機1の要部を底面側から示した斜視図である。
【0032】
コンクリート試験機1は、試験機本体10と、吸引制御ユニット16とを有している。試験機本体10は、図1図13に示すように、上側が天井面15aによって閉塞されている上部閉塞円筒状の本体ボックス15と、その本体ボックス15の天井面15aに固定された持ち手11とを有している。本体ボックス15は、図13図14に示すように、環状の内側チャンバー2と、その内側チャンバー2を取り囲む同じく環状の外側チャンバー3と、内側チャンバー2の開口部を取り囲む内側シール部材4と、外側チャンバー3の開口部を取り囲む外側シール部材5とが底部10aに設けられている。コンクリート試験機1は、内側チャンバー2、外側チャンバー3、内側シール部材4および外側シール部材5からなるダブルチャンバー構造を有し、そのダブルチャンバー構造が本体ボックス15に設けられている。内側シール部材4および外側シール部材5は、パッキン、O-リングとも呼ばれる部材であって、例えば、シリコーンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等によって形成されている。
【0033】
また、本体ボックス15は、内側チャンバー2内の圧力および外側チャンバー3内の圧力を計測する試験機圧力計12と、内側チャンバー2に接続されている開閉バルブ6と、圧力レギュレータ7とを有し、それらがその内側に収容されている。開閉バルブ6は内側チャンバー2と圧力レギュレータ7に接続され、圧力レギュレータ7が外側チャンバー3と、接続チューブ8によって吸引制御ユニット16の後述する吸引バルブ19に接続されている。図1に示すように、接続チューブ8は、継手8aに接続され、そこから圧力レギュレータ7に接続されている。
【0034】
吸引制御ユニット16は、内側チャンバー2および外側チャンバー3内の空気を吸引する吸引手段としての吸引ポンプ17と、コントローラ18と、計測結果等を表示する表示手段としてのモニタ22とを有している。コントローラ18は、開閉バルブ6、圧力レギュレータ7、吸引ポンプ17、吸引バルブ19を制御する。そして、コントローラ18は、吸引ポンプ17、吸引バルブ19、圧力レギュレータ7を制御して、内側チャンバー2および外側チャンバー3内の気圧の調整、内側チャンバー2を通じて吸引される空気の圧力の計測、およびその計測結果のモニタ22への表示を制御する。また、コントローラ18は、内側チャンバー2内に供給される気体の流量を計測する試験機流量計としての機能を有している。
【0035】
そして、コンクリート試験機1によって透気性試験が行われるときは、図13に示すように、コンクリート試験機1がコンクリート99の表面99aに設置されたあと、吸引ポンプ17が作動して、圧力レギュレータ7が調整しながら内側チャンバー2、外側チャンバー3内が減圧される。すると、内側シール部材4、外側シール部材5が表面99aに密着し、それによって、内側チャンバー2、外側チャンバー3それぞれの内側シール部材4、外側シール部材5による密閉状態が得られる。それから、内側チャンバー2内の空気が吸引され、試験機圧力計12による圧力の計測と、コントローラ18による内側チャンバー2内に供給される気体の流量の計測(例えば、吸引ポンプ17の回転数、回転速度等による)とが行われる。
【0036】
(試験機用検定器30の構成)
次に、試験機用検定器30について、図1図2に加えて、図3図8を参照して説明する。ここで、図3は試験機用検定器30の一部省略した平面図、図4は試験機用検定器30の精密ニードルバルブ32側からみた一部省略した側面図である。図5は試験機用検定器30の蓋体48を外して示した平面図、図6は精密ニードルバルブ32を外して示した精密ニードルバルブ32側からみた試験機用検定器30の側面図である。図7は精密ニードルバルブ32の平面図、図8は精密ニードルバルブ32と、精密ニードルバルブ32につながる接続継手39a等の接続部分の要部を示した平面図である。
【0037】
試験機用検定器30は、図1図4に示すように、検定器ボックス31と、蓋体48とを有している。検定器ボックス31と、蓋体48は、ともにアクリル樹脂等の合成樹脂製である。検定器ボックス31は、平面視矩形状の箱体であって、図5に示すように、4つの側板部31a,31b,31c,31dと、底板部31eとを有し、上側が開口されている。図4に示すように、設置時の安定性確保のため、底板部31eの裏側にゴム製の脚部49が四隅に形成されている。検定器ボックス31の中に後述する精密ニードルバルブ32などを複数の部材が収容されている。
【0038】
蓋体48は検定器ボックス31の上側を閉塞する矩形板状の部材であって、検定器ボックス31の上端部(側板部31a,31b,31c,31dの上側の端部)に螺子止めされている(螺子を外せば取り外し可能)。その表面48aが平坦で、ガラス面のように滑らかであり、かつ図1に示すように、コンクリート試験機1が載置される大きさ(本体ボックス15の全体が外側に張り出すことなく内側に納まっている)を有している。蓋体48は本発明における試験機載置板に相当している。蓋体48の表面48aが平坦で、蓋体48が、コンクリート試験機1が載置される大きさを有しているので、コンクリート試験機1が蓋体48に載置されたあとに後述する密閉載置状態が形成される。また、図3に示すように、表面48aには、載置パターン48bが描かれている。載置パターン48bは、コンクリート試験機1の(本体ボックス15の)底部10a(図2参照)の外周に沿ったほぼ円形状に描かれている。載置パターン48bは、コンクリート試験機1が表面48aに載置されたときに、後述する蓋体継手33が内側シール部材4の内側に納まるようにするための、コンクリート試験機1の載置場所を示している。
【0039】
そして、図2図4図5に示すように、試験機用検定器30は、精密ニードルバルブ32と、蓋体継手33と、流体給排継手34と、圧力計継手35と、フィルター36とを有している。
【0040】
精密ニードルバルブ32は、流体(本実施の形態においては、窒素ガス、アルゴン等の不活性ガス、空気等の気体または水を想定している)の流量の微調整を行って、後述する検定用流体を出力する部材であって、本発明における流量調整器に相当する。本実施の形態では、精密ニードルバルブ32として、スーパーニードルとよばれる超精密ニードルバルブが用いられている。スーパーニードルは、極めて小さな流量の微調整が可能であり、例えば純水であれば、供給圧力10kPaで約1μL/min(0.001mL/min)程度の微調整が行える。検定用流体は、コンクリート試験機1に供給される流体であって、精密ニードルバルブ32から出力される流体(後述するf3)であるから、その流量が極めて正確な値で求められる。
【0041】
精密ニードルバルブ32は、図7図8に示すように、調整つまみ32aと、ダイヤル表示部32bと、固定パネル32cと、本体部32dと、流体入力部32eと、流体出力部32fとを有している。流体入力部32eには継手38aが接続され、その継手38aに接続チューブ38が接続されている。図5に示すように、接続チューブ38はフィルター36に接続されているので、フィルター36から出力された濾過後の流体が接続チューブ38を通って精密ニードルバルブ32に入力される。その流体は、本体部32d内の図示しない調整機構によって流量が微調整されたあと、流体出力部32fから検定用流体となって出力される。その後、検定用流体は、流体出力部32fに接続されている継手39aと、第1の接続チューブとしての接続チューブ39を通って、中間継手40に流れる(図5図8参照)。図5に示すように、本体部32dと、流体入力部32eと、流体出力部32fとが側板部31aよりも内側に配置され、かつ、固定パネル32cが側板部31aの外表面に螺子止めによって着脱自在に取付られ、さらに、調整つまみ32aと、ダイヤル表示部32bとが側板部31aよりも外側に配置される格好で、精密ニードルバルブ32が検定器ボックス31に収容されている。調整つまみ32aが操作されることで流量の微調整が行われるが、その微調整された流量の数値がダイヤル表示部32bの表示で確認される。
【0042】
蓋体継手33は、試験機載置板としての蓋体48に形成されており、本発明における載置板継手に相当している。
【0043】
蓋体継手33は、コンクリート試験機1が蓋体48の表面48aに載置パターン48bに適合するようにして載置されたときに(本体ボックス15の全体が載置パターン48bに沿ってまたはその内側に収まっている)、内側シール部材4によって取り囲まれる位置に形成されている。後述する試験機用検定器校正モード(校正モード、第2のモードともいう)において、蓋体継手33に流量計(圧力・流量計測器70)が接続されるため、その場合は、図6図15に示すように、着脱自在の流量計コネクタ33aが蓋体継手33に接続される。
【0044】
図5に示すように、流体給排継手34は、側板部31cに形成されている。流体給排継手34は、検定器ボックス31の内側において、接続チューブ37が接続され、検定器ボックス31の外側において、着脱自在のコネクタ34aが接続される。流体給排継手34には、後述する試験機用検定器校正モードにおいて、図15に示すように、コネクタ34aが接続され、そのコネクタ34aに圧力調整気体供給ユニット90が接続される。
【0045】
そして、接続チューブ37は、フィルター36(入力側)に接続されている。フィルター36(出力側)は接続チューブ38に接続され、接続チューブ38は、継手38aに接続されている。また、継手38aが精密ニードルバルブ32の流体入力部32eに接続され(図8参照)、精密ニードルバルブ32の流体出力部32fが継手39aに接続されている。さらに、継手39aが接続チューブ39に接続され、その接続チューブ39が中間継手40に接続されている(図5参照)。中間継手40は第2の接続チューブとしての接続チューブ41と、第3の接続チューブとしての接続チューブ42に接続されていて(図6参照)、接続チューブ41が蓋体継手33に接続され、接続チューブ42が圧力計継手35に接続されている。
【0046】
圧力計継手35は、側板部31cに形成されている。圧力計継手35は、検定器ボックス31の内側において、接続チューブ42が接続され、検定器ボックス31の外側において、着脱自在の圧力計コネクタ35aが接続される。圧力計コネクタ35aには、圧力計としての圧力・流量計測器70が接続される。
【0047】
圧力・流量計測器70は、流体の圧力と流量の双方が高精度で計測できる。圧力・流量計測器70は、試験機用検定器30の精度(主に、精密ニードルバルブ32による流量の微調整の精度)を正しくする校正に用いられる校正器(校正のための標準器)である。圧力・流量計測器70は、層流管と差圧センサとを有しており、層流管を流れる流体の流量が計測され、差圧センサによって、流体の圧力が計測される。図15に示すように、試験機用検定器校正モードにおいて、その圧力計測用端子(図示せず)が接続チューブ71を介して圧力計コネクタ35aに接続され、その流量計測用端子(図示せず)が接続チューブ72を介して流量計コネクタ33aに接続される(接続チューブ71、72は図1参照)。
【0048】
圧力調整気体供給ユニット90は、図2に示すように、精密レギュレータ91と、窒素ガスボンベ92とを有している。圧力調整気体供給ユニット90が使用される場合、窒素ガスボンベ92に封入されている窒素ガスが精密レギュレータ91によって、流量および圧力が微調整されてから供給される。図15に示すように、精密レギュレータ91がコネクタ34aを介して流体給排継手34に接続されることによって、圧力が調整された調整気体としての窒素ガス(調整窒素ガス)が試験機用検定器30に供給される。
【0049】
(検定システム100によるコンクリート試験機の検定方法)
続いて、上述した検定システム100によって実現されるコンクリート試験機の検定方法について、図1図8図13図14とともに図15図16を参照して説明する。ここで、図15は、コンクリート試験機の検定方法のうちの試験機用検定器校正モードにおける検定システム100の構成および動作を模式的に示した図である。図16は、試験機点検モードにおける検定システム100の構成および動作を模式的に示した図である。
【0050】
コンクリート試験機の検定方法は、試験機用検定器校正モードと、試験機点検モード(点検モード、第1のモードともいう)とを有している。試験機用検定器校正モードでは、試験機用検定器30の校正のための圧力・流量の計測が行われる。試験機用検定器30の校正は、試験機用検定器30の精度を正しくすることである。主に、精密ニードルバルブ32による流量の微調整の精度を正しくすることであるが、試験機用検定器30内の配管(接続チューブ38,39など)の経年劣化や、継手等との接続部分の緩み等により、試験機用検定器30において、所望の精度が確保されなくなっているおそれがある。そのため、圧力・流量計測器70の計測結果を活用して、ズレが有ればそれが無くなるように、精密ニードルバルブ32や他の部品の調整や交換といった対応をすること、これが試験機用検定器30の校正である。
【0051】
(試験機用検定器校正モード)
校正モードでは、まず、図15に示すように、流体給排継手34にコネクタ34aを介して圧力調整気体供給ユニット90が接続される。また、蓋体継手33に流量計コネクタ33aを介して流量計としての圧力・流量計測器70(流量計測用端子)が接続され、圧力計継手35に圧力計コネクタ35aを介して圧力計としての圧力・流量計測器70(圧力計測用端子)が接続される。
【0052】
そして、これらの圧力調整気体供給ユニット90、圧力・流量計測器70の接続操作に続いて、流量調整器確認工程が実行される。流量調整器確認工程では、調整窒素ガスが用いられることで、精密ニードルバルブ32から検定用流体として出力される調整窒素ガスの流量および圧力が確認される。
【0053】
まず、圧力調整気体供給ユニット90を作動させて、調整窒素ガスが試験機用検定器30に供給される。このとき、図15に示すように、調整窒素ガスは、接続チューブ37を通って流体f1としてフィルター36に入力される。調整窒素ガスはフィルター36から濾過後の流体f2として出力されて精密ニードルバルブ32に入力される。精密ニードルバルブ32によって精密な流量の微調整が行われると、調整窒素ガスは精密ニードルバルブ32から、検定用流体としての調整窒素ガスf3となって出力される。調整窒素ガスf3は接続チューブ39、中間継手40を通って、蓋体継手33に供給される。蓋体継手33には、流量計としての圧力・流量計測器70が接続されているので、調整窒素ガスf3の流量がその圧力・流量計測器70によって計測される。また、圧力計としての圧力・流量計測器70が圧力計継手35に接続されているので、調整窒素ガスf3の圧力が圧力・流量計測器70によって計測される。
【0054】
こうして、調整窒素ガスf3、すなわち、精密ニードルバルブ32によって精密な流量の微調整が行われた検定用流体としての調整窒素ガスについて、その圧力および流量が校正器としての圧力・流量計測器70によって計測される。その計測結果と、精密ニードルバルブ32によって微調整された流量とを照合し、ズレがあればそれが無くなるように対応することで、試験機用検定器30の校正が行われる。校正モードを実行することによって、校正済みの試験機用検定器30を用いて、以下のコンクリート試験機1の点検が行える。
【0055】
(試験機点検モード)
次に、点検モードでは、圧力調整気体供給ユニット90と、圧力・流量計測器70の取り外し操作が行われ、そのあとに以下の第1の工程、第2の工程、第3の工程が順に実行される。その取り外し操作では、圧力調整気体供給ユニット90がコネクタ34aとともに流体給排継手34から取り外される。また、流量計としての圧力・流量計測器70(流量計測用端子)が流量計コネクタ33aとともに蓋体継手33から外され、圧力計コネクタ35aとともに圧力計継手35から外される。また、流体給排継手34と、圧力計継手35が図示しない蓋部材を用いて閉鎖される。
【0056】
第1の工程では、コンクリート試験機1と、試験機用検定器30とによって密閉載置状態が形成される。このとき、コンクリート試験機1が蓋体48(表面48a)に載置パターン48bに沿って載置される。すると、図16に示すように、蓋体継手33が内側シール部材4によって取り囲まれるようにして、コンクリート試験機1が表面48aに載置される。そのあとに、コンクリート試験機1において、吸引ポンプ17が作動して内側チャンバー2、外側チャンバー3内が減圧され、内側シール部材4、外側シール部材5が表面48aに密着する。それにより、内側チャンバー2、外側チャンバー3がそれぞれ内側シール部材4、外側シール部材5によって密閉される状態が得られる。この状態が本発明における密閉載置状態に相当する。
【0057】
続く第2の工程では、上記密閉載置状態において、コンクリート試験機1において、吸引制御ユニット16の吸引ポンプ17(図16には図示せず、図13参照)を作動させて図16に示す吸引Fが実行される。すると、吸引ポンプ17が作動したことで、吸引バルブ19、圧力レギュレータ7、開閉バルブ6を介して空気が吸引され、内側チャンバー2および外側チャンバー3内の空気が減少し、それに伴い、試験機用検定器30の内部において、蓋体継手33に向かう流体f30が形成される。流体f30は、蓋体継手33を通って内側チャンバー2に供給される。
【0058】
このとき、蓋体継手33は、接続チューブ41を介して中間継手40に接続され(図6参照)、その中間継手40には、接続チューブ39を介して精密ニードルバルブ32が接続されている。そのため、流体f30は精密ニードルバルブ32で流量の微調整が行われたあとの流体(すなわち、本発明における検定用流体)に相当する。また、流体f30に伴い、精密ニードルバルブ32への入力となる流体(フィルター36で濾過された後の流体f20)が形成される。加えて、フィルター36に入力する流体f10も形成される。
【0059】
そして、第3の工程は、第2の工程が実行されているときに実行される。第3の工程では、コンクリート試験機1の内側チャンバー2内の圧力が試験機圧力計12によって計測され、内側チャンバー2に供給される流体f30の流量が試験機流量計としてのコントローラ18によって計測される。また、コントローラ18の制御動作によって、計測された流体f30の流量が精密ニードルバルブ32によって調整された流体f30の流量と対比可能にモニタ22に表示される。
【0060】
この場合、精密ニードルバルブ32では、調整つまみ32aの調節量(バルブストローク)と、調整される流量との関係が直線性を有していることから、調整つまみ32aの調節量を適宜変化させていったときのコントローラ18によって計測される各流量をモニタ22に表示させる等して、モニタ22に表示される各流量と、精密ニードルバルブ32の各流量とが対比できるようにする。
【0061】
第3の工程が実行されることで、コンクリート試験機1による圧力、流量の計測結果を示すモニタ22の表示を参照し、それらを精密ニードルバルブ32によって調整された検定用流体(f30)の流量と比較することによって、コンクリート試験機1の計測性能が適正な精度で担保されていることを確認することができる(コンクリート試験機1の計測性能の点検が行える)。
【0062】
検定システム100が点検モードで利用される場合として、主にコンクリート試験機1を用いて透気性試験が行われるときの日常的な点検作業や、コンクリート試験機1に対する定期的な点検作業が想定される。例えば、コンクリート試験機1が複数あり、そのそれぞれが適正に作動するのかどうかを一台ずつ確認する作業の一環としての点検が想定される。
【0063】
さらに、検定システム100は、校正モードでも利用される。前述したように、校正モードが実行されることによって、点検モードに不可欠な試験機用検定器30の校正が行われる。そのため、校正モードが実行され、校正済となった試験機用検定器30が点検モードで使用されると、各コンクリート試験機1について、計測性能が適正な精度で担保されているのか否かを調べる検定が行える。したがって、試験機用検定器30は、第1のモードと第2のモードとを併用することによって、コンクリート試験機1の計測性能の検定が実現されるように構成されている。
【0064】
そして、試験機用検定器30は、試験機載置板としての表面48aが平坦な蓋体48を有し、その蓋体48がコンクリート試験機1が内側に納まる大きさを有しているから、そこにコンクリート試験機1が安定的に載置でき、コンクリート試験機1が載置されることによって、コンクリート試験機1がコンクリート99の表面99aに載置されているのと同様の状態が簡易かつ確実に形成できる。そして、コンクリート試験機1の吸引手段(吸引ポンプ17)を作動させれば、コンクリート試験機1が表面48aに確実に密着する(表面48aがガラス面のように滑らかなので)。また、その蓋体48に蓋体継手33が形成され、そこに精密ニードルバルブ32により調整された検定用流体が供給されるので、その検定用流体の圧力、流量をコンクリート試験機1で計測することによって、コンクリート試験機1の計測性能に関する点検が行える。その際、コンクリート試験機1のモニタ22に、コンクリート試験機1で計測される流量が精密ニードルバルブ32で調整された流量と対比できるように表示されるので、点検作業が簡易かつ確実に行える。
【0065】
また、試験機用検定器30は、流体給排継手34,圧力計継手35を有しているから、流体給排継手34,圧力計継手35にそれぞれ圧力調整気体供給ユニット90、圧力計としての圧力・流量計測器70が接続される一方で、蓋体継手33に流量計としての圧力・流量計測器70を接続することもでき(図15参照)、こうすることで、試験機用検定器30の校正が行える。
【0066】
(透水性試験機を有する検定システム)
本発明に係るコンクリート試験機の検定システムは、透水性試験機にも適用がある。この場合の検定システム100は、図2において、コンクリート試験機1の代わりに例えば図17に示すコンクリート試験機120を有している。
【0067】
コンクリート試験機120は、透水性を計測する透水性試験機であって、図17に示すように、内側チャンバー112と、内側チャンバー112を取り囲む外側チャンバー113と、内側チャンバー112の開口部を取り囲む内側シール部材114と、外側チャンバー113の開口部を取り囲む外側シール部材115が底部120aに設けられている。コンクリート試験機120は、内側チャンバー112、外側チャンバー113、内側シール部材114および外側シール部材115からなるダブルチャンバー構造を有し、そのダブルチャンバー構造が本体ボックス109に設けられている。
【0068】
また、コンクリート試験機120は、試験機圧力計としての圧力計116,操作レバー117,水抜きバルブ118、吸引手段としての吸引ポンプ119を有している。
【0069】
コンクリート試験機120では、コンクリート99の表面99aに図示しないシール材を張り付けて、吸引ポンプ119を作動させて吸引チューブ119aを介して外側チャンバー113内の空気を吸引して減圧し、コンクリート試験機120を表面99aに吸着して密着させる。
【0070】
その後、図示しない加圧水供給手段によって、流量調整手段としての操作レバー117を介して加圧水を内側チャンバー112に供給するとともに、操作レバー117を閉じる方向に操作して、内側チャンバー112の中に加圧水を閉じ込める。この時点での内側チャンバー112内の圧力(水圧)が圧力計116によって計測される。水量は、例えば、内側チャンバー112の容積から求められる。
【0071】
そして、一定時間が経過したあと、内側チャンバー112内の水量の変化から、表面99aからコンクリート99の内部に浸透した水の量(透水量)を求める。コンクリート試験機120による透水性試験では、透水量によって、表層透水係数が算出され、その結果から、コンクリート99の緻密性が評価される。
【0072】
コンクリート試験機120を有する検定システムでは、図18に示すように、流量計としてのメスシリンダー130が図示しない接続チューブと、コネクタ34aを介して流体給排継手34に接続され、圧力計131が圧力計コネクタ35aを介して圧力計継手35に接続される。さらに、給水装置122が水量調節バルブ121を介して操作レバー117につながる配管123に接続される。また、蓋体継手33が内側シール部材114によって取り囲まれるようにして、コンクリート試験機120が試験機載置板としての蓋体48(表面48a)に載置される。そのあと、吸引ポンプ119を作動させて外側チャンバー113内の空気を吸引して減圧し、表面48aにコンクリート試験機120を密着させる。これにより、密閉載置状態が得られる(第1の工程)。
【0073】
続いて、給水装置122から加圧された水が調節バルブ121、配管123、操作レバー117を介して内側チャンバー112の中に加圧水として流し込まれ、そのあと、操作レバー117を閉じる方向に操作して、内側チャンバー112の中に加圧水を閉じ込める。この時点での内側チャンバー112内の圧力(水圧)が圧力計116によって計測される。加圧水は、蓋体継手33を通ったあとに流体f41となって、中間継手40を経て精密ニードルバルブ32に供給され、そこから精密な流量の微調整が行われて流体f43となり、フィルター36に入力される。そこから、流体f42が出力され、その流体f42が流体給排継手34、コネクタ34aを経て流量計としてのメスシリンダー130に回収される。そのメスシリンダー130に回収される水の流量を調べることで、コンクリート試験機120の計測性能に関する点検が行える。また、圧力計131によって、流量とともに圧力も確認できる。
【0074】
このように、検定システム100は、コンクリート試験機1のほかにコンクリート試験機120にも適用することができ、試験機用検定器30は、コンクリート試験機120の点検にも用いることができる。
【0075】
(変形例)
コンクリート試験機の検定システム100は、上述した試験機用検定器30に代わりに、図9図10図19に示すように、試験機用検定器130を用いてもよい。試験機用検定器130は、試験機用検定器30と比較して、流体給排継手34、圧力計継手35、接続チューブ37、42を有していない点、中間継手40の代わりに形状の異なる中間継手40aが接続されている点で相違している。試験機用検定器130は、流体給排継手34、圧力計継手35、接続チューブ37、42を有していないので、圧力・流量計測器70、圧力調整気体供給ユニット90が接続されることなく、図19に示すようにして用いられる。
【0076】
そして、試験機用検定器130が用いられるときの検定方法では、圧力・流量計測器70、圧力調整気体供給ユニット90が接続されないので、試験機点検モードが実行される。
【0077】
この場合において、試験機用検定器30の場合と同様にして、第1の工程が実行されて密閉載置状態が形成される。次に、第2の工程が実行される。すると、コンクリート試験機1において、吸引制御ユニット16の吸引ポンプ17を作動させて吸引Fが実行される。吸引ポンプ17が作動したことで、吸引バルブ19、圧力レギュレータ7、開閉バルブ6を介して空気が吸引され、内側チャンバー2および外側チャンバー3内の空気が減少する。それに伴い、試験機用検定器30の場合と同様にして、試験機用検定器130の内部において、蓋体継手33に向かう流体f30が形成される。それから、第3の工程が実行されて、コンクリート試験機1の内側チャンバー2内の圧力が試験機圧力計12によって計測され、コントローラ18により、内側チャンバー2内に供給される気体の流量が計測される。その計測される流量が精密ニードルバルブ32によって調整された流体f30の流量と対比可能にモニタ22に表示される。また、流体f30の流量は精密ニードルバルブ32によって調整されているので、精密ニードルバルブ32の開放値と流量との関係が取得される。精密ニードルバルブ32の調整結果から、精密ニードルバルブ32によって供給される圧力が確認される。そのため、試験機用検定器130によっても、流量、圧力が確認できる。
【0078】
また、試験機用検定器130に代わりに、図11図12に示すように、試験機用検定器140を用いてもよい。試験機用検定器140は、試験機用検定器130と比較して、精密ニードルバルブ32の配置が異なる点と、接続チューブ38,39の寸法が異なる点で相違しているが、そのほかの点は一致している。試験機用検定器140は、試験機用検定器130とほぼ同様の構成を備えているので、試験機用検定器130と同様の作用効果を奏し、試験機用検定器130が用いられる検定システム、検定方法と同様の作用効果が得られる。
【0079】
以上の説明は、本発明の実施の形態についての説明であって、この発明の装置及び方法を限定するものではなく、様々な変形例を容易に実施することができる。又、各実施形態における構成要素、機能、特徴あるいは方法ステップを適宜組み合わせて構成される装置又は方法も本発明に含まれるものである。例えば、圧力調整気体供給ユニット90は、窒素ガスボンベ92の代わりに不活性ガス(例えば、アルゴン)を封入したボンベを有していてもよいし、加圧した空気を供給する装置(エアーコンプレッサ)でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明を適用することにより、透気性試験機の計測性能を流量および圧力の双方で確認でき、透水性試験機の確認にも利用可能な汎用性を備えたコンクリート試験機の検定システムおよび検定方法並びに試験機用検定器が得られる。本発明は、コンクリート試験機の検定システムおよび検定方法並びに試験機用検定器の分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1,101,120…コンクリート試験機、2,112…内側チャンバー、3,113…外側チャンバー、4,114…内側シール部材、5,115…外側シール部材、12…試験機圧力計、15,119…本体ボックス、17…吸引ポンプ、18…コントローラ、30,130,140…試験機用検定器、31…検定器ボックス、31a,31b,31c,31d…側板部、32…精密ニードルバルブ、33…蓋体継手、34…流体給排継手、35…圧力計継手、39,41,42…接続チューブ、48…蓋体、48a…表面、70…圧力・流量計測器、90…圧力調整気体供給ユニット、100…コンクリート試験機の検定システム、117…操作レバー、120…透水試験機、f30…流体。
図1
図2
図3
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図5
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