(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】蒸気調整弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/68 20060101AFI20231106BHJP
F24H 1/12 20220101ALI20231106BHJP
F24D 17/00 20220101ALN20231106BHJP
【FI】
F16K31/68 B
F16K31/68 Z
F24H1/12 Z
F24D17/00 Z
(21)【出願番号】P 2022188223
(22)【出願日】2022-11-25
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000137889
【氏名又は名称】株式会社ミヤワキ
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小西 謙悟
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-183064(JP,A)
【文献】特開2011-052844(JP,A)
【文献】特開2008-111596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/68
F24H 1/12
F24D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温の水を、蒸気を熱源として加熱して給水温度を調整する給湯システムの蒸気調整弁であって、
前記水が流れる給水ラインと、
前記蒸気が流れる蒸気ラインと、
前記給水ラインの水温により伸縮する駆動源と、
前記駆動源により駆動されて前記蒸気ラインを開閉する弁体と、を備え、
前記駆動源が、前記給水ラインの水温により膨張・収縮するサーモワックスを有し、
前記蒸気ラインは、前記サーモワックスの感温部よりも反弁体側に前記蒸気を供給する補助加熱通路を有し、
前記補助加熱通路が、前記蒸気ラインにおける前記弁体よりも上流側に接続されている蒸気調整弁。
【請求項2】
請求項1に記載の蒸気調整弁において、さらに、前記給水ラインに連通して前記サーモワックスの感温部に水を供給する補助給水通路を備えた蒸気調整弁。
【請求項3】
第1の流体の温度により、第2の流体の流量を調整する温度調整弁であって、
前記第1の流体が流れる第1のラインと、
前記第2の流体が流れる第2のラインと、
前記第1の流体の温度により伸縮する駆動源と、
前記駆動源により駆動されて前記第2のラインを開閉する弁体と、を備え、
前記駆動源が、前記第1の流体の温度により膨張・収縮するサーモワックスを有し、
前記第2のラインは、前記サーモワックスの感温部よりも反弁体側に前記第2の流体を供給する補助加熱通路を有し、
前記補助加熱通路が、前記第2のラインにおける前記弁体よりも上流側に接続されている温度調整弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温の給水を、蒸気を熱源として加熱し、給水流量に関わらず給水温度を調整して、一定に保つ給湯システムの蒸気調整弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
常温の給水を、蒸気を熱源として加熱し、給水流量に関わらず給水温度を調整して、一定に保つ給湯システムが知られている(例えば、特許文献1)。このような給湯システムは電気が不要であるので、蒸気と給水があれば、設置できる利点がある。この給湯システムは、主な構成機器として、給水を蒸気で加熱する熱交換器と、熱交換器の出口の熱水温度に合わせて蒸気流量を調整する蒸気調整弁と、高温の熱水と常温の水を設定温度に合わせて混合比を変更する湯水混合栓とを備えている。特許文献1の蒸気調整弁は、サーモワックスを用いて蒸気の流量を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図3に示すように、従来のシステムでは、給湯を停止した後、蒸気調整弁100は閉じて蒸気Sの供給は停止するが、サーモワックス102の周辺の給水温度(水Wの温度)は、放熱により、時間と共に低下していく。この温度低下により蒸気調整弁100が開弁し、矢印AR100の方向に蒸気Sが流れる。これにより、矢印AR102の方向に蒸気Sの熱が伝達されてサーモワックス102の周辺の温度は上昇し、蒸気調整弁100は再び閉弁する。このように、給湯を停止している状態であるにも関わらず、蒸気調整弁100が周期的に開弁することで、蒸気Sの無駄が発生する。また、これに伴いシステムの内部機器の温度も周期的に変化するので、内部機器の耐久性に影響を及ぼす可能性がある。
【0005】
本発明は、給湯停止時に蒸気調整弁が周期的に開閉動作するのを防ぐことができる給湯システムの蒸気調整弁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の蒸気調整弁は、常温の水を、蒸気を熱源として加熱して給水温度を調整する給湯システムの蒸気調整弁であって、前記水が流れる給水ラインと、前記蒸気が流れる蒸気ラインと、前記給水ラインの水温により伸縮する駆動源と、前記駆動源により駆動されて前記蒸気ラインを開閉する弁体とを備えている。前記駆動源が、前記給水ラインの水温により膨張・収縮するサーモワックスを有している。前記蒸気ラインは、前記サーモワックスの感温部よりも反弁体側に前記蒸気を供給する補助加熱通路を有している。前記補助加熱通路が、前記蒸気ラインにおける前記弁体よりも上流側に接続されている。ここで、「蒸気ラインにおける弁体よりも上流側」は、蒸気調整弁の内部の蒸気ラインであってもよく、蒸気調整弁に蒸気を供給する外部の通路であってもよい。
【0007】
この構成によれば、蒸気ラインにおける弁体よりも上流側から補助加熱通路に蒸気が供給される。これにより、給湯停止時でも、サーモワックスの周辺温度が低下することなく、閉弁状態を保持することができる。したがって、無駄な蒸気の排出を軽減でき、給湯システム内部の周期的な温度変化を抑えることができる。その結果、内部構成機器の耐久性を上げることができる。給湯時には、給水の流れによりサーモワックスの感温部の温度が低下し、弁は開弁する。
【0008】
本発明において、さらに、前記給水ラインに連通して前記サーモワックスの感温部に水を供給する補助給水通路を備えていてもよい。上述のように蒸気ラインにおける弁体よりも上流側から補助加熱通路に蒸気が供給されることで、給湯時にサーモワックス感温部の温度が下がらず、開弁量(蒸気流量)が不足し、給湯温度が低下することが懸念される。この構成によれば、サーモワックス感温部の周囲に補助給水流路を設けることで、給湯時にサーモワックスの周囲の給水の温度が十分に低下する。これにより、給湯時に開弁操作が促進され、蒸気流量が不足するのを防ぐことができる。
【0009】
本発明の温度調整弁は、第1の流体の温度により、第2の流体の流量を調整する温度調整弁であって、前記第1の流体が流れる第1のラインと、前記第2の流体が流れる第2のラインと、前記第1の流体の温度により伸縮する駆動源と、前記駆動源により駆動されて前記第2のラインを開閉する弁体とを備えている。前記駆動源が、前記第1の流体の温度により膨張・収縮するサーモワックスを有している。前記第2のラインは、前記サーモワックスの感温部よりも反弁体側に前記第2の流体を供給する補助加熱通路を有している。前記補助加熱通路が、前記第2のラインにおける前記弁体よりも上流側に接続されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の給湯システムの蒸気調整弁によれば、給湯を停止した時であっても、蒸気調整弁が周期的に開閉動作するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】給湯システムの基本構造を示す概略構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る蒸気調整弁を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。最初に、
図1を用いて、給湯システムSYの基本構造について説明する。給湯システムSYは、常温の水W(給水)を、蒸気Sを熱源として加熱し、給水流量に関わらず給水温度を調整し、一定に保つ。本実施形態の給湯システムSYは、電気が不要であり、蒸気Sと水Wがあれば、設置できる利点がある。以下の説明において、「上流」および「下流」とは、蒸気Sまたは水Wの流れ方向の「上流」および「下流」をいう。また、以下の説明において、“水W”を“給水W”と呼ぶこともある。
【0013】
給湯システムSYは、主な構成機器として、給水Wを蒸気Sで加熱する熱交換器2と、熱交換器2から導出される熱水Wの温度に合わせて蒸気Sの流量を調整する蒸気調整弁4と、高温の熱水Wと常温の水Wとの混合比を設定温度に合わせて変更する湯水混合栓6とを備えている。
【0014】
熱交換器2は、例えば、複数のプレートを重ねて、その間に蒸気Sの通路と水Wの通路を、プレートを介して交互に配置した「プレートヒーター」である。ただし、熱交換器2は、プレートヒーターに限定されない。
【0015】
熱交換器2の水入口2aに水供給通路8が接続され、熱交換器2の水出口2bに熱水通路11が接続され、熱交換器2の蒸気入口2cに蒸気供給通路12が接続され、熱交換器2の蒸気出口2dに蒸気排出通路14が接続されている。水入口2aからの水Wと、蒸気入口2cからの蒸気Sが熱交換器2で熱交換され、熱交換後の熱水Wが水出口2bから導出され、熱交換後の蒸気Sが蒸気出口2dから導出される。
【0016】
水供給通路8には、常温の水W、例えば、水道水Wが流れる。水供給通路8に、第1逆止弁10が設けられている。第1逆止弁10は、熱交換器2から水供給通路8に水Wが逆流するのを防ぐ。
【0017】
熱水通路11には、熱交換器2で熱交換された熱水Wが流れる。熱水通路11に、前述の蒸気調整弁4と湯水混合栓6が設けられている。詳細には、熱交換器2の水出口2bから導出された熱水Wが、蒸気調整弁4の給水入口4aから蒸気調整弁4に流入し、蒸気調整弁4の給水出口4bから流出される。蒸気調整弁4に流入した熱水Wの温度により、蒸気調整弁4の開度が調整される。給水出口4bから流出された熱水Wが、湯水混合栓6に導入される。
【0018】
水供給通路8における第1逆止弁10よりも上流側から混合用冷水通路16が分岐されている。混合用冷水通路16は、湯水混合栓6に接続されている。湯水混合栓6において、熱水通路11からの熱水Wと、混合用冷水通路16からの常温の水Wが混合されて、所望の温度の温水(湯)Wが生成され、温水通路13を介して給湯される。混合用冷水通路16に、第2逆止弁18が設けられている。第2逆止弁18は、湯水混合栓6から混合用冷水通路16に水(湯)Wが逆流するのを防ぐ。
【0019】
蒸気供給通路12には、熱源である蒸気Sが流れる。蒸気供給通路12に蒸気調整弁4が設けられている。詳細には、蒸気Sが蒸気調整弁4の蒸気入口4cから蒸気調整弁4に流入し、蒸気調整弁4の蒸気出口4dから流出される。上述のように、蒸気調整弁4に流入した蒸気Sの流量は、給水入口4aから流入した熱水Wの温度により調整される。蒸気出口4dから流出された蒸気Sは、熱交換器2に導入される。蒸気調整弁4の詳細は後述する。
【0020】
蒸気排出通路14には、熱交換器2の蒸気出口2dから導出された蒸気Sが流れる。蒸気排出通路14にスチームトラップ20が設けられている。スチームトラップ20は、ドレンDを排出し、蒸気Sをトラップする。
【0021】
以下に、
図2を用いて、本発明の第1実施形態に係る蒸気調整弁4を説明する。以下の説明において、
図2の蒸気側を上側、給水側を下側という。
図2に示すように、蒸気調整弁4は、上端と下端が開口した筒状のケーシング22と、上側の開口を塞ぐ上蓋24、下側の開口を塞ぐ下蓋26とを有している。上蓋24および下蓋26は、複数のボルトによりケーシング22に着脱自在に取り付けられている。ケーシング22、上蓋24および下蓋26は、例えば、ステンレス製である。ただし、ケーシング22、上蓋24および下蓋26の材質は、これに限定されない。
【0022】
蒸気調整弁4は、水Wが流れる給水ライン28と、蒸気Sが流れる蒸気ライン30と、給水ライン28の水温により伸縮する駆動源32と、駆動源32により駆動されて蒸気ライン30を開閉する弁体34とを備えている。
【0023】
給水ライン28は、ケーシング22の内部に形成されている。給水ライン28は、駆動源32が配置された駆動源収容部36と、給水入口4aから駆動源収容部36に向かう一次側給水ライン28aと、駆動源収容部36を通過後に給水出口4bに向かう二次側給水ライン28bとを有している。
【0024】
駆動源32は、給水ライン28の水温により膨張・収縮するサーモワックス38を有している。この駆動源32のサーモワックス38が、給水ライン28の駆動源収容部36に配置されている。より詳細には、サーモワックス38の感温部38aが、給水ライン28の駆動源収容部36に配置されている。サーモワックス38の感温部38aは、一次側給水ライン28aの軸心AX1および二次側給水ライン28bの軸心AX2よりも弁体側(上側)に位置している。
【0025】
蒸気調整弁4は、さらに、サーモワックス38の膨張・収縮により上下方向に移動するピストン40を有している。ピストン40は上下方向に延びる軸部材で、基端部(下端部)40aがサーモワックス38に当接し、先端部(上端部)40bに弁体34が取り付けられている。本実施形態では、ケース39の内部にサーモワックス38とピストン40が収納されてユニット化されている。つまり、ピストン40は、ケース39にガイドされて上下方向に移動する。
【0026】
弁体34は、大径の筒部34aと、小径の弁体部34bと、筒部34aと弁体部34bとを結ぶ傾斜部34cとを有している。傾斜部は、上方に向かって徐々に縮径する錐形状である。
【0027】
筒部34aは、一端側(下端側)が開口し、他端(上端)が頂壁34aaで閉塞された筒状で、中空部にピストン40およびケース39の一部が挿通されている。ピストン40の先端部40bに円盤形状のばねホルダ42が取り付けられている。ばねホルダ42の外径は、筒部34aの中空部の内径とほぼ同じで、若干小さく設定されている。
【0028】
筒部34aの頂壁34aaと、ばねホルダ42の上面との間に、第1ばね部材44が介装されている。第1ばね部材44は、例えば、コイルばねで、開方向(下方)に付勢されている。筒部34aの周壁34abが、ばねガイドとして機能する。
【0029】
蒸気ライン30は、ケーシング22の内部およびケーシング22と上蓋24との間に形成されている。蒸気ライン30に弁体34が配置されている。蒸気ライン30の蒸気入口4cは上蓋24の周壁に設けられ、蒸気出口4dはケーシング22の周壁に設けられている。
【0030】
上蓋24に、筒状のインレットガイド46を介して筒状の弁座部材48が支持されている。弁座部材48は、外側筒部48aと、内側筒部48bと、両筒部48a,48bの上端部を連結する環状の連結部48cとを有している。弁座部材48は、外側筒部48aの外周面がインレットガイド46の内周面に接触した状態で上蓋24に支持されている。
【0031】
弁座部材48の内側筒部48bの中空孔は蒸気ライン30の一部を構成している。内側筒部48bの下端部48baが弁座を構成している。つまり、弁体34の弁体部34bが、上昇して内側筒部48bの弁座(下端部)48baに当接することで、蒸気ライン30が閉じる。
【0032】
弁座部材48と弁体34との間に、第2ばね部材50が介装されている。第2ばね部材50は、例えば、コイルばねで、開方向(下方)に付勢されている。詳細には、第2ばね部材50は、上端が弁座部材48の連結部48cに当接し、下端が弁体34の筒部34aに設けられた段差部34acに当接している。本実施形態では、筒状のばねガイド部材52を介して第2ばね部材50の下端が弁体34の段差部34acに当接している。第2ばね部材50の外側に、ばねガイド54を設けてもよい。
【0033】
給水ライン28の水の温度が低い時は、第2ばね部材50のばね力により、弁体34は下方に移動し、弁体34は弁座48baから離れている(
図2の状態)。つまり、蒸気ライン30は開放され、蒸気Sが熱交換器2(
図1)に供給される。
【0034】
熱交換器2に蒸気Sが供給されることで、熱交換器2から供給される給水ライン28の水の温度が上昇する。給水ライン28の水の温度が上昇すると、サーモワックス38が作動し、ピストン40により上向きの力が働く。この駆動源32による上向きの力が、第2ばね部材50のばね力よりも大きくなると、弁体34が上方に移動し、弁体34が弁座48baに着座する。つまり、蒸気ライン30は閉じられ、蒸気Sの熱交換器2(
図1)への供給が停止する。
【0035】
本実施形態では、サーモワックス38の温度が90℃になると、弁体34が弁座48baに着座する。ただし、弁体着座後もサーモワックス38の温度が上昇する可能性があり、着座後もピストン40が伸びようとすることがある。第1のばね部材44は、このピストン40の力を受けるように設定されている。
【0036】
熱交換器2への蒸気Sの供給が停止されることで、熱交換器2から供給される給水ライン28の水の温度が低下する。給水ライン28の水の温度が低下すると、ピストン40に作用する上向きの力が小さくなる。第2ばね部材50のばね力が、駆動源32による上向きの力がよりも大きくなると、弁体34が下方に移動し、弁体34が弁座48baから離れる。つまり、蒸気ライン30は開放され、
図2の状態に戻る。以降、同様の動作が繰り返される。
【0037】
蒸気ライン30は、サーモワックス38の感温部38aよりも反弁体側(下側)に蒸気Sを供給する補助加熱通路56を有している。補助加熱通路56は、ケーシング22の内部に形成され、下蓋26により閉塞されている。すなわち、蒸気ライン30は、サーモワックス38の感温部38aを挟んで、弁体側(上側)と反弁体側(下側)に形成されている。
【0038】
本実施形態では、下蓋26は、ケーシング22の下端開口を閉塞する板状の蓋部26aと、蓋部26aから上方に延びる筒部26bとを有しており、筒部26をケーシング22の中空孔に嵌合した状態で、ケーシング2に取り付けられている。この筒部26bの内部空間(中空孔)に補助加熱通路56が形成されている。下蓋26の蓋部26aに、補助蒸気導入口26aaが形成されている。補助蒸気導入口26aは、蓋部26aを貫通する貫通孔である。
【0039】
補助加熱通路56は、蒸気ライン30における弁体34よりも上流側(一次側)に接続されている。ここで、「蒸気ライン30における弁体34よりも上流側」は、蒸気調整弁4の内部の蒸気ライン30であってもよく、蒸気調整弁4に蒸気Sを供給する蒸気供給通路12であってもよい。
【0040】
本実施形態では、蒸気供給通路12の分岐点P1から蒸気分岐通路55が分岐され、下蓋26の補助蒸気導入口26aに接続されている。つまり、蒸気供給通路12から蒸気入口4cを介して蒸気調整弁4の蒸気ライン30に蒸気Sが供給されるとともに、蒸気供給通路12から蒸気分岐通路55および補助蒸気導入口26aを介して蒸気調整弁4の補助加熱通路56に蒸気Sが供給される。
【0041】
給水ライン28と蒸気ライン30は、区画部材58により区画されている。本実施形態では、区画部材58は、弁体側(上側)の蒸気ライン30と給水ライン28を区画する第1の区画部材60と、反弁体側(下側)の蒸気ライン30と給水ライン28を区画する第2の区画部材62とを有している。つまり、第1の区画部材60と第2の区画部材62の間に、給水ライン28の駆動源収容部36が位置している。
【0042】
第1の区画部材60は、柱状(ブロック状)の部材からなり、ケーシング22の内部に嵌合されている。本実施形態では、第1の区画部材60は円柱形状である。第1の区画部材60の上側(弁体側)に蒸気ライン30が配置され、第1の区画部材60の下側に、給水ライン28、詳細には駆動源収容部36が配置されている。
【0043】
第1の区画部材60に上下方向に延びる軸挿通孔60aが形成され、この軸挿通孔60aにケース39が嵌合されている。
【0044】
第2の区画部材62は、筒状の部材からなり、下蓋26の筒部26bの内周面に嵌合されている。第2の区画部材62は、ケーシング22や下蓋26よりも熱伝導率の高い金属で形成されている。本実施形態では、第2の区画部材62は銅製である。ただし、第2の区画部材62の材質は、これに限定されない。第2の区画部材62の下側(反弁体側)に補助加熱通路56が配置され、第2の区画部材62の上側に、給水ライン28、詳細には駆動源収容部36が配置されている。
【0045】
第2の区画部材62は、その外周面が下蓋26の筒部26bの内周面に当接する第1の筒部64と、第1の筒部64の上方に位置する第2の筒部66とを有している。第1の筒部64と第2の筒部66は、同芯状に形成され、第2の筒部66は第1の筒部64よりも小径である。
【0046】
第1の筒部64と第2の筒部66は、底壁68により連結されている。つまり、第1の筒部64は、下方に開口し、上端が底壁68で閉塞された有底の筒部である。一方、第2の筒部66は、上方に開口し、下端が底壁68で閉塞された有底の筒部である。
【0047】
第2の筒部66の内部空間は給水ライン28の駆動源収容部36に連通しており、第2の筒部66の内部空間に、サーモワックス38の感温部38aが配置されている。第2の区画部材62に補助給水通路69が形成されている。補助給水通路69は、一次側給水ライン28aおよび二次側給水ライン28bに連通し、サーモワックス38の感温部38aに水を直接供給する。
【0048】
補助給水通路69は、第2の区画部材62の第2の筒部66に形成されている。本実施形態では、補助給水通路69は、第2の筒部66を径方向に切り欠いて形成した環状の溝である。ただし、補助給水通路69の配置、構造は、これに限定されない。
【0049】
第1の筒部64の内部空間に、補助加熱通路56が設けられている。換言すれば、第1の筒部64の内部空間の補助加熱通路56が、底壁68を介してサーモワックス38の感温部38aに近接している。
【0050】
図3の従来例では、給湯停止時に弁体104の下流側(二次側)の蒸気Sでサーモワックス102の感温部を加熱している。したがって、閉弁状態では蒸気Sが供給されず、放熱によりサーモワックス102の感温部の温度は低下する。その結果、給湯停止時にもかかわらず、弁体104が開いてしまう。
【0051】
上記構成によれば、
図2に示すように、サーモワックス38を加熱する補助加熱通路56に、弁体34の一次側から蒸気Sが供給されている。これにより給湯停止時でも、サーモワックス38の周辺温度が低下することなく、閉弁状態を保持することができる。その結果、無駄な蒸気Sの排出を軽減できるうえに、給湯システム内部の周期的な温度変化が抑えられて、内部構成機器の耐久性を上げることができる。給湯が再開されると、給水Wの流れによりサーモワックス38の感温部38aの温度が低下し、弁体34は開く。
【0052】
このように、蒸気ライン30における弁体34よりも上流側から補助加熱通路56に蒸気が供給されることで、給湯時にサーモワックス38の感温部38aの温度が下がらず、開弁量(蒸気流量)が不足し、給湯温度が低下することが懸念される。
【0053】
上記構成によれば、給水ライン28に連通する補助給水通路69が設けられ、サーモワックス38の感温部38aに水Wを直接供給している。このような補助給水流路69を設けることで、給湯時にサーモワックス38の周囲の給水Wの温度が十分に低下する。これにより、給湯時に開弁操作が促進され、蒸気流量が不足するのを防ぐことができる。
【0054】
また、補助給水流路69を設けるのに代えて、あるいは補助給水流路69を設けるのに加えて、第2の区画部材62の底壁68の厚さD1を大きくしたり、補助給水通路69を大きくしたりして、給湯時にサーモワックス38の周囲の給水温度を低下させるようにすることもできる。また、電気が確保できる場合、蒸気供給通路12の分岐点P1に分岐バルブを設けて、給湯停止時にのみ補助加熱通路56に蒸気Sを供給するようにしてもよい。
【0055】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、上記実施形態では、給湯システムSYの蒸気調整弁4について説明したが、本発明は蒸気調整弁4以外の温度調整弁にも適用できる。その場合、駆動源を動作させる第1の流体は水でなくてもよく、流量が調整される第2の流体は蒸気でなくもよい。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
4 蒸気調整弁(温度調整弁)
28 給水ライン(第1のライン)
30 蒸気ライン(第2のライン)
32 駆動源
34 弁体
38 サーモワックス
38a サーモワックスの感温部
56 補助加熱通路
69 補助給水通路
SY 給湯システム
S 蒸気(第2の流体)
W 水(第1の流体)
【要約】
【課題】給湯停止時に蒸気調整弁が周期的に開閉動作するのを防ぐことができる給湯システムの蒸気調整弁を提供する。
【解決手段】蒸気調整弁4は、常温の水Wを、蒸気Sを熱源として加熱して給水温度を調整する給湯システムSYに用いられる。蒸気調整弁4は、給水ライン28の水温により伸縮する駆動源32と、この駆動源32により駆動されて蒸気ライン39を開閉する弁体34とを備えている。駆動源32が、給水ライン28の水温により膨張・収縮するサーモワックス38を有している。蒸気ライン30は、サーモワックス38の感温部38aよりも反弁体側に蒸気Sを供給する補助加熱通路56を有している。補助加熱通路56が、蒸気ライン30における弁体34よりも上流側に接続されている。
【選択図】
図2