(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 1/37 20060101AFI20231106BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20231106BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20231106BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20231106BHJP
A01N 31/02 20060101ALI20231106BHJP
A01N 31/04 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
C11D1/37
C11D3/20
A01P1/00
A01P3/00
A01N31/02
A01N31/04
(21)【出願番号】P 2023007513
(22)【出願日】2023-01-20
【審査請求日】2023-01-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000190736
【氏名又は名称】株式会社ニイタカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】朝日 薫
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/100812(WO,A1)
【文献】特表2001-518940(JP,A)
【文献】特開平09-291471(JP,A)
【文献】国際公開第2020/262154(WO,A1)
【文献】特開2002-154947(JP,A)
【文献】特表2005-530857(JP,A)
【文献】特表2021-531383(JP,A)
【文献】特開2017-190312(JP,A)
【文献】特表2016-535073(JP,A)
【文献】特開2004-204220(JP,A)
【文献】国際公開第2020/210789(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0192231(US,A1)
【文献】国際公開第2020/210784(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/256369(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/176623(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D
A01P
A01N
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アニオン界面活性剤、及び、
(b)ジオール類、フェノキシエタノール、及び、フェネチルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含
む洗浄剤組成物であって、
洗浄剤組成物中、前記アニオン界面活性剤(a)の濃度が0.5質量%以上、10質量%以下であり、
前記化合物(b)は、そのlogP値が0.43以上、1未満であるジオール類(b1)であり、洗浄剤組成物中、ジオール類(b1)の濃度が0.1質量%以上、10.0質量%以下であるか、又は、そのlogP値が1以上、3以下であるジオール類、フェノキシエタノール、及び、フェネチルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種の化合物(b2)であり、洗浄剤組成物中、化合物(b2)の濃度が0.1質量%以上、3.0質量%以下であり、
25℃でのpHが4.5以下であ
り、
ノンエンベロープウイルス不活化用身体洗浄剤組成物であることを特徴とする洗浄剤組成物。
【請求項2】
25℃でのpHが2.0~4.5である請求項
1に記載の洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
洗浄剤組成物は、食器、調理器具、壁、床等の硬質表面、身体、衣料等を洗浄するために広く用いられ、洗浄力とともに殺菌性、泡立ち性をより優れたものとすることが求められている。
【0003】
防腐力に優れる洗浄剤組成物として、例えば、(a)少なくとも1つの界面活性剤と(b)5~14個の炭素原子を有する少なくとも1つの1,2アルカンジオール、を含む、またはそれらからなる洗剤組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また近年、ノロウイルス(ヒトノロウイルス)による感染性胃腸炎あるいは食中毒の発生が一年を通じて多発しており、特に11~3月が発生のピークとなっている。ノロウイルスは、カリシウイルス科、ノロウイルス属に分類されるエンベロープを持たないRNAウイルス(以下、「ノロウイルス等」と記載する)であり、アルコール(エタノール、イソプロパノール等)、熱、酸性(胃酸等)、又は、乾燥等に対して強い抵抗力を有する。潜伏期間は1~2日であると考えられており、嘔気、嘔吐、下痢の主症状が出るが、腹痛、頭痛、発熱、悪寒、筋痛、咽頭痛、倦怠感等を伴うこともある。
【0005】
ノロウイルス等の感染経路の一つとして経口感染が知られており、ノロウイルス等に汚染された食物や水等を経口摂取することにより感染が成立する。
ノロウイルス等による汚染を防ぐ手段として、食物、食器、調理台、手指、トイレ、便器等に付着したノロウイルスを物理的な除去や不活化する方法がある。
ノロウイルス等を完全に不活化させる方法としては、加熱処理が知られている。
しかし、飲食店、給食施設、工場など食品を調理加工する場において、常に、食器、調理台、調理器具、トイレや便器等を加熱処理することは現実的でなく、当然、作業者の手指を加熱処理することは安全面で許容されるものではない。つまり、加熱処理は、ノロウイルス等を不活化する方法として適していなかった。
【0006】
また、ノロウイルス等を不活化させる方法として、塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム等)を用いる方法も知られている。しかし、塩素系漂白剤は、金属に対する腐食作用、皮膚等に対する刺激作用、衣類に対する漂白作用等がある。そのため、その使用が制限されるという欠点があり、特に、人体に対する安全性への配慮から作業者の手指、食器、調理台、調理器具等にこれらの薬剤類を用いることは適当とはいえず、まして食物に直接触れさせることも適当とはいえなかった。
そのため、人体に対し安全であり、ノロウイルス等を不活化できる方法が望まれていた。
【0007】
また、加熱処理及び塩素系漂白剤による方法、特に加熱処理については食器、調理台、調理器具、手指等の洗浄という点では不向きである。ノロウイルスの不活化は重要であるが、それら対象物に付着した汚れを洗浄することは衛生状態を向上させる観点からも極めて重要である。そのため、洗浄剤組成物は、洗浄力とともにウイルス不活化に優れたものが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような状況下において、ウイルス不活化効果にも優れる洗浄剤組成物が求められている。
【0010】
本発明は、上記現状に鑑みてなされた発明であり、本発明の目的は、殺菌効果、ウイルス不活化効果、洗浄力、泡立ち性をバランス良く発揮できる新規な組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明(1)は、(a)アニオン界面活性剤、及び、(b)ジオール類、フェノキシエタノール、及び、フェネチルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含み、洗浄剤組成物中、前記アニオン界面活性剤(a)の濃度が0.5質量%以上、10質量%以下であることを特徴とする洗浄剤組成物である。
【0012】
本発明の洗浄剤組成物は、(a)アニオン界面活性剤、及び、(b)ジオール類、フェノキシエタノール、及び、フェネチルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含み、洗浄剤組成物中、前記アニオン界面活性剤(a)の濃度が0.5質量%以上、10質量%以下であることにより、殺菌効果、ウイルス不活化効果、洗浄力、泡立ち性をバランス良く発揮できる。
【0013】
本発明の洗浄剤組成物が殺菌効果、ウイルス不活化効果、洗浄力、泡立ち性をバランス良く発揮できる理由は、以下のように考えられる。
先ず、本発明の洗浄剤組成物が含むアニオン界面活性剤(a)自体が、殺菌効果、ウイルス不活化効果、洗浄力、泡立ち性をそれぞれ向上できるものである。
特に、洗浄剤組成物中、アニオン界面活性剤(a)の濃度が0.5質量%以上であることで、洗浄力、泡立ち性に優れる。
一方、アニオン界面活性剤(a)は、量が多いと殺菌効果やウイルス不活化効果(例えば、マウスノロウイルス不活化効果)が低下してくるが、アニオン界面活性剤(a)の濃度を上記範囲内としながら、化合物(b)を併用することで、洗浄力、泡立ち性を維持したまま殺菌効果、ウイルス不活化効果を向上できる。
この理由は明らかではないが、アニオン界面活性剤(a)は量が多いとミセルを形成して安定化するところ、化合物(b)を併用することでミセルが不安定化し、アニオン界面活性剤(a)がミセルから水側に出ていきやすくなり、細菌やウイルスとの接触効率が向上するため、殺菌効果、ウイルス不活化効果が発揮されると推定される。また、細菌やウイルスの表面におけるアニオン界面活性剤(a)と化合物(b)の相乗的な作用効果もあるためと推定される。
【0014】
本発明(2)は、上記化合物(b)が、そのlogP値が-2以上、1未満であるジオール類(b1)であり、洗浄剤組成物中、ジオール類(b1)の濃度が0.1質量%以上、10.0質量%以下である本発明(1)の洗浄剤組成物である。
本発明(3)は、上記化合物(b)が、そのlogP値が1以上、3以下であるジオール類、フェノキシエタノール、及び、フェネチルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種の化合物(b2)であり、洗浄剤組成物中、化合物(b2)の濃度が0.1質量%以上、3.0質量%以下である本発明(1)の洗浄剤組成物である。
これにより、ウイルス不活化効果(特に、マウスノロウイルス不活化効果)をより優れたものとすることができる。
なお、logP値におけるPは、Powとも言い、25℃でn-オクタノールと水の混合物(体積比1:1)に物質を溶解させたときのオクタノール中の物質濃度と水中の物質濃度の比(オクタノール/水の分配係数)を表す。logP値はその常用対数であり、物質の疎水性(親油性)を示す指標であり、ChemDraw(ケモインフォマティクス社製)のソフトウェアを用いて求められる。
【0015】
ウイルス不活化効果をより優れたものとし、本発明に係る各性能を非常にバランス良く発揮するための化合物(b)の好ましい配合上限が化合物(b)のlogP値によって異なる傾向があり、それが上記の範囲となる。
言い換えれば、化合物(b)を多く配合することで、ウイルス不活化効果、例えば、マウスノロウイルス不活化効果が劣るおそれがある。その理由は不明だが、本発明の洗浄剤組成物が含むアニオン界面活性剤(a)と、表面が正に帯電したウイルスとは電気的な作用で引き付けあい、接近したアニオン界面活性剤の疎水基が、ウイルスがもつエンベロープ膜及び/又はカプシドを変性、破壊することでウイルスを不活化するところ、化合物(b)の量が多いと、化合物(b)がウイルス表面に吸着し((a)アニオン界面活性剤と同程度にウイルスがもつエンベロープ膜及び/又はカプシドを変性、破壊することはできない)、(a)アニオン界面活性剤がウイルス表面に吸着することを妨げてしまう可能性が考えられる。
ここで、親油的な化合物(b2)の方が、好ましい配合上限はより低くなる。
【0016】
なお、本発明(2)と本発明(3)は、技術上の意義が共通しているか又は密接に関連しており、また、化合物(b)のlogP値によって配合上限が異なるのみであり、まとめて審査することが効率的であり、発明の単一性を満たすと考えられる。
【0017】
本発明(4)は、25℃でのpHが2.0~6.0である本発明(1)~(3)のいずれかとの組合せの洗浄剤組成物である。
このようなpHであると、手荒れ等の肌荒れをより充分に防止したり、使用対象物への影響をより低減したりしながら、ウイルス不活化効果等の本発明の効果を発揮できる。
本明細書中、pHは、pHメータ F-53(株式会社堀場製作所製)を用い、25℃で、JIS Z-8802:2011「pH測定方法」に準じた方法で測定される値である。
【0018】
本発明(5)は、身体洗浄剤組成物である本発明(1)~(4)のいずれかとの組合せの洗浄剤組成物である。
本発明の身体洗浄剤組成物は、身体洗浄剤組成物に特に求められる泡立ち性に優れながら、殺菌効果、ウイルス不活化効果、洗浄力に優れるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の洗浄剤組成物は、殺菌効果、ウイルス不活化効果、洗浄力、泡立ち性をバランス良く発揮できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0021】
本発明の洗浄剤組成物は、(a)アニオン界面活性剤、及び、(b)ジオール類、フェノキシエタノール、及び、フェネチルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含み、洗浄剤組成物中、前記アニオン界面活性剤(a)の濃度が0.5質量%以上、10質量%以下である。
【0022】
アニオン界面活性剤(a)は、本発明の技術分野においてアニオン界面活性剤として使用されるものを使用できるが、炭素数6以上のアルキル基又はアルケニル基を有することが好ましい。アルキル基又はアルケニル基の炭素数は、8以上がより好ましく、10以上が更に好ましく、12以上が一層好ましい。また、該炭素数は、36以下が好ましく、24以下がより好ましく、18以下が更に好ましい。アルキル基は、第一級アルキル基であってもよく、第二級アルキル基であってもよく、第三級アルキル基であってもよいが、例えば第一級アルキル基又は第二級アルキル基であることが好ましい。
【0023】
アニオン界面活性剤(a)は、例えば、アルキル硫酸(塩)系界面活性剤、(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテル硫酸(塩)系界面活性剤、アルカンスルホン酸(塩)系界面活性剤、及び、オレフィンスルホン酸(塩)系界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0024】
アルキル硫酸(塩)系界面活性剤は、アルキル硫酸及び/又はアルキル硫酸塩である界面活性剤をいう。アルキル基の炭素数は、14以下が特に好ましい。
【0025】
(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテル硫酸(塩)系界面活性剤は、(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテル硫酸及び/又は(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩である界面活性剤をいう。アルキル基の炭素数は、14以下が特に好ましい。(ポリ)オキシアルキレン基は、オキシアルキレン基の付加数が1以上であればよい。オキシアルキレン基の付加数は、10以下であることが好ましい。オキシアルキレン基は、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられ、これらが組み合わされたものであってもよいが、オキシエチレン基が特に好ましい。
【0026】
アルカンスルホン酸(塩)系界面活性剤は、アルカンスルホン酸及び/又はアルカンスルホン酸塩である界面活性剤をいう。
【0027】
オレフィンスルホン酸(塩)系界面活性剤は、オレフィンスルホン酸及び/又はオレフィンスルホン酸塩である界面活性剤をいう。アルケニル基の炭素数は、8~18、特に14~16が特に好ましい。なお、オレフィンスルホン酸(塩)系界面活性剤は、洗浄剤組成物中又はその原料中で、アルケニル基の二重結合に水が付加反応したものであってもよい。
【0028】
アニオン界面活性剤(a)が塩である場合、塩としては、特に限定されず、金属塩、有機アミン塩、アンモニウム塩が挙げられる。金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等の一価の金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等の二価の金属塩が好適なものとして挙げられる。有機アミン塩は、モノ-、ジ-及びトリエタノールアミン塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩等の有機アンモニウム塩であってもよい。
【0029】
本発明の洗浄剤組成物中のアニオン界面活性剤(a)の濃度は、洗浄剤組成物100質量%中、0.5質量%以上であり、1質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることが更に好ましく、3質量%以上であることが特に好ましい。該濃度は、10質量%以下であり、8質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、4質量%以下であることが更に好ましい。本発明の洗浄剤組成物は、アニオン界面活性剤(a)の濃度が高くても、優れた殺菌効果、ウイルス不活化効果を発揮でき、洗浄剤に特に好適に適用できるものである。アニオン界面活性剤(a)は、複数種類含まれていてもよく、本発明の洗浄剤組成物がアニオン界面活性剤(a)を複数種類含む場合は、アニオン界面活性剤(a)の濃度はそれらの合計の濃度として定める。
【0030】
化合物(b)は、ジオール類、フェノキシエタノール、及び、フェネチルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種であればよいが、例えば、そのlogP値が-2以上、1未満であるジオール類(b1)であり、洗浄剤組成物中、ジオール類(b1)の濃度が0.1質量%以上、10.0質量%以下であることが好ましい。
なお、ジオール類とは、2個の水酸基を有する有機化合物であり、中でも、2個の水酸基を有し、炭素原子、酸素原子、及び、水素原子からなる有機化合物であることが好ましい。また、ジオール類は、飽和脂肪族ジオール、不飽和脂肪族ジオール等の脂肪族ジオールであってもよく、芳香族ジオールであってもよいが、脂肪族ジオールであることが好ましく、飽和脂肪族ジオールであることがより好ましい。
【0031】
ジオール類(b1)は、そのlogP値が-1以上であることがより好ましく、-0.5以上であることが更に好ましい。また、そのlogP値が0.9以下であることがより好ましい。
ジオール類(b1)は、炭素数2~7のものが好ましく、炭素数3~6のものがより好ましい。
ジオール類(b1)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、1,3-プロパンジオール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられる。
【0032】
ジオール類(b1)の濃度は、0.5質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることが更に好ましく、1.5質量%以上であることが特に好ましい。ジオール類(b1)の濃度は、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることが更に好ましい。
【0033】
化合物(b)は、そのlogP値が1以上、3以下であるジオール類、フェノキシエタノール、及び、フェネチルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種の化合物(b2)であり、洗浄剤組成物中、化合物(b2)の濃度が0.1質量%以上、3.0質量%以下であることもまた好ましい。
【0034】
化合物(b2)は、そのlogP値が1.2以上であることがより好ましい。また、そのlogP値が2以下であることがより好ましい。
化合物(b2)は、炭素数8~10のものが好ましく、炭素数8又は9のものがより好ましく、炭素数8のものが更に好ましい。
logP値が1以上、3以下であるジオール類としては、例えば、1,2-オクタンジオール、1,3-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、1,10-デカンジオール、エチルヘキシルグリセリン等が挙げられる。
【0035】
化合物(b2)の濃度は、2質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましい。
【0036】
本発明の洗浄剤組成物中、アニオン界面活性剤(a)と化合物(b)の質量比は、1/30以上であることが好ましく、1/10以上であることがより好ましく、1/3以上であることが更に好ましい。該質量比は、50/1以下であることが好ましく、40/1以下であることがより好ましく、30/1以下であることが更に好ましい。
【0037】
本発明の洗浄剤組成物は、更に、硫酸、塩酸、スルファミン酸、クエン酸、リンゴ酸、キシレンスルホン酸等の酸剤や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のアルカリ剤を含んでいてもよい。また、本発明の洗浄剤組成物は、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、ヒスチジン等のアミノ酸を含んでいてもよい。
酸剤やアルカリ剤、アミノ酸の量は、所望のpHに応じて適宜調整することができる。
【0038】
本発明の洗浄剤組成物は、更に、水を含有することが好ましい。水は、特に限定されないが、例えば水道水、蒸留水、精製水、純水、イオン交換水等が挙げられる。本発明の洗浄剤組成物中、水の質量濃度は、10~99.9質量%であることが好ましく、40~99.5質量%であることがより好ましく、70~99質量%であることが更に好ましく、90~98.5質量%であることが特に好ましい。
【0039】
(その他の成分)
本発明の洗浄剤組成物は、上記の成分以外に、アニオン界面活性剤以外の界面活性剤、アルコール、アルコール以外の有機溶剤、可溶化剤、増粘剤、酵素、香料、色素染料等が含まれていてもよい。
【0040】
上記アニオン界面活性剤以外の界面活性剤としては、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤等を用いることができる。
【0041】
本発明の洗浄剤組成物中、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、及び、両性イオン界面活性剤の合計濃度が10質量%以下であることが好ましい。
上記カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、及び、両性イオン界面活性剤の合計濃度は、1質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることが更に好ましいく、0質量%であることが特に好ましい。
【0042】
本発明の洗浄剤組成物は、低級アルコールを含んでいてもよく、含んでいなくてもよいが、殺菌効果、ウイルス不活化効果の観点からは、本発明の洗浄剤組成物中、低級アルコールの濃度が50質量%以上であることが好ましい。
低級アルコールの濃度が50質量%以上であることで、殺菌効果、ウイルス不活化効果が高まり、感染症や食中毒を充分に防止できる可能性が高まる。本明細書中、低級アルコールは、上述した化合物(b)以外の、炭素数5以下のアルコールをいう。
低級アルコールの濃度は、低級アルコールを複数種用いる場合は、複数種の低級アルコールの合計の濃度である。
【0043】
上記低級アルコールの濃度は、殺菌効果、ウイルス不活化効果を好適に発揮する観点からは、60質量%以上であることがより好ましく、65質量%以上、75質量%以下であることが更に好ましい。
【0044】
また殺菌効果、ウイルス不活化効果を好適に発揮する観点からは、本発明の洗浄剤組成物中、低級アルコール及び/又は高級アルコールからなるアルコールの濃度が50質量%以上であることが好ましい。
本明細書中、高級アルコールは、上述した化合物(b)以外の、炭素数6以上のアルコールをいう。
上記アルコールの濃度は、60質量%以上であることがより好ましく、65質量%以上、75質量%以下であることが更に好ましい。
一方、本発明の洗浄剤組成物は、使用対象物への影響を低減する観点、経済的なものとする観点からは、上記低級アルコールを低濃度(例えば、40質量%未満)とすることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、5質量%以下であることが一層好ましく、1質量%以下であることが特に好ましく、上記低級アルコールを実質的に含まないものとすることが最も好ましい。上記アルコールを低濃度(例えば、40質量%未満)とすることもまた好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、5質量%以下であることが一層好ましく、1質量%以下であることが特に好ましく、上記アルコールを実質的に含まないものとすることもまた好ましい。
【0045】
本明細書中、アルコールは、上述した化合物(b)以外の、炭素数が限定されないアルコールをいう。アルコールの濃度は、アルコールを複数種用いる場合は、複数種のアルコールの合計の濃度である。なお、アルコールの濃度が40質量%未満であるとは、本発明の洗浄剤組成物がアルコールを含まず、アルコールの濃度が0質量%であってもよいものである。
なお、本発明の洗浄剤組成物は、低級アルコールや高級アルコールを低濃度としたり配合しないものとした場合であっても、本発明の優れた効果を示すことができるものである。
【0046】
更に、本発明の洗浄剤組成物中、アルコール以外の溶剤(有機溶剤)の濃度が40質量%未満であることが好ましい。
上記溶剤の濃度は、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、5質量%以下であることが一層好ましく、1質量%以下であることがより特に好ましく、0質量%であることが最も好ましい。本明細書中、溶剤は、有機溶剤をいう。溶剤の濃度は、溶剤を複数種用いる場合は、複数種の溶剤の合計の濃度である。
なお、溶剤の濃度が40質量%未満であるとは、本発明の洗浄剤組成物が溶剤を含まず、溶剤の濃度が0質量%であってもよいものである。
【0047】
本発明の洗浄剤組成物は、pHが6.0以下であることが好ましく、5.0以下であることがより好ましく、4.5以下であることが更に好ましい。
このようなpHであると、本発明の洗浄剤組成物のウイルス不活化効果がより向上する。pHは、その下限値は特に限定されないが、通常は1.0以上であり、手荒れ等の肌荒れをより充分に防止したり、使用対象物への影響をより低減したりする観点からは、3.0以上であることが好ましい。
例えば、ウイルス不活化効果を特に優れたものとする観点からは、洗浄剤組成物のpHが2.0以上、3.0未満であることが本発明における好ましい実施形態の1つである。また、ウイルス不活化効果と、手荒れ等の肌荒れをより充分に防止したり、使用対象物への影響をより低減したりする効果をバランス良く発揮する観点からは、pHが3.0以上、4.0未満であることもまた本発明における好ましい実施形態の1つである。更に、手荒れ等の肌荒れをより充分に防止したり、使用対象物への影響をより低減したりする効果を特に優れたものとする観点からは、pHが4.0以上、5.0以下であることもまた本発明における好ましい実施形態の1つである。
なお、pHは、上述したように、例えば硫酸、塩酸、スルファミン酸、クエン酸、リンゴ酸等の酸剤や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のアルカリ剤の量を制御することにより調整することができる。
【0048】
次に、本発明の洗浄剤組成物の用途を説明する。
本発明の洗浄剤組成物は、ウイルスを不活化でき、好適にはノロウイルスを不活化できることから、食器、調理器具や、厨房、台所、食品工場の壁、床等の硬質表面に用いられることが好ましい。また、トイレの便器や便座、床、壁等の消毒に使用されることもまた好ましい。更に、身体洗浄剤組成物であることもまた好ましい。
「ノロウイルスを不活化できる」とは、ネコカリシウイルス、マウスノロウイルス及びヒトノロウイルスからなる群から選択される少なくとも1種のウイルスを不活化できることを意味する。
なお、本発明の洗浄剤組成物は、ノロウイルスよりも薬剤抵抗性が低いインフルエンザウイルスやコロナウイルスなどのエンベロープウイルスに対しても、高いウイルス不活化効果を示す。
【0049】
本発明の洗浄剤組成物は、消毒剤に加えてもよい。また本発明の洗浄剤組成物又は本発明の消毒剤を、衛生資材に用いてもよい。
本発明の洗浄剤組成物は、優れたウイルス不活化効果を発揮するので、このような洗浄剤組成物を含む消毒剤を用いることにより、ウイルス感染を充分に防ぐことができる。
【0050】
本発明の衛生資材は、特に限定されるものではないが、例えば、ウェットティッシュ、マスク、使い捨て手袋、使い捨て布巾、ティッシュペーパー等があげられる。
【0051】
本発明のウェットティッシュは基布と基布に含浸させた上述の洗浄剤組成物からなる。本発明のウェットティッシュにおける基布は、1枚のみであってもよく、2枚以上が積層したものであってもよい。
基布の構成繊維としては、例えば、合成繊維、再生繊維、天然繊維等が挙げられ、これらの1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
合成繊維としては、例えば、ポリエステル繊維(ポリエチレンテレフタレート繊維が特に好ましい)、ポリオレフィン繊維、アクリル繊維、ビニロン繊維等が挙げられ、これらの1種以上を使用できる。
再生繊維としては、例えば、レーヨン繊維、ポリノジック繊維、キュプラ繊維、及びリヨセル繊維等が挙げられ、これらの1種以上を使用できる。
天然繊維としては、例えば、セルロース繊維(綿繊維など)等が挙げられ、これらの1種以上を使用できる。
保存安定性や強度の面からレーヨン繊維とポリエチレンテレフタレート繊維の2種を併用した繊維が特に好ましい。
基布の種類は、特に限定されるものではないが、例えば、織布、不織布、及び編物等が挙げられ、不織布が特に好ましい。
基布の目付(単位面積当たりの質量)は、特に限定されるものではないが、例えば、20g/m2以上、60g/m2以下が特に好ましい。
基布に含浸させる洗浄剤組成物の量は、基布の質量に対して1倍以上、3倍以下の量が好ましい。
本発明のウェットティッシュとしては、例えば、バケツ容器等の容器にロール状になった不織布等の基布を入れ、洗浄剤組成物を投入、含浸させたものが挙げられる。なお、容器に、予め洗浄剤組成物を含浸させた基布を入れたものであってもよい。
【0052】
なお、上述したように、本発明の洗浄剤組成物は、身体洗浄剤であることもまた好ましい。本発明の洗浄剤組成物は、界面活性剤の濃度を高めにしてもウイルス不活化効果を充分に発揮できるため、身体洗浄剤のような良い泡立ちが求められる用途に好適に使用できる。
【実施例】
【0053】
以下に本発明をより具体的に説明する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例において、特に断らない限り「%」は「質量%」を意味する。
【0054】
(実施例1~32)及び(比較例1、2)
表1~表3に記載の配合により実施例1~32及び比較例1、2に係る洗浄剤組成物を作製した。
なお、表1~表3中、化合物の製造元等は以下の通りである。
【0055】
<(a)アニオン界面活性剤>
ラウリル硫酸TEA:ラウリル硫酸トリエタノールアミン、花王(株)製 エマールTD、濃度40%
POE(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム:ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、花王(株)製 エマール270J、濃度70%(オキシエチレン基の平均付加モル数2)
α-オレフィンスルホン酸ナトリウム:ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製 、リポランJ-441、濃度37%(オレフィンの平均炭素数14~16)
アルカンスルホン酸ナトリウム:クラリアントジャパン社製 HOSTAPUR SAS 30SB、濃度30%(炭素数12~16)
【0056】
<(a)’ アニオン界面活性剤以外の界面活性剤>
ラウリルヒドロキシスルホベタイン:花王(株)製 アンヒトール 20HD、濃度30%
ミリスチルジメチルアミンオキシド:ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製 カデナックス DM14D-N、濃度25%
ラウリルグルコシド:花王(株)製 マイドール 12、濃度40%
ポリオキシエチレンラウリルエーテル:三洋化成工業株式会社製 エマルミン NL-110、濃度100%
【0057】
<(b)ジオール類、フェノキシエタノール、及び、フェネチルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種の化合物>
プロピレングリコール:東京化成工業(株)製 プロピレングリコール、濃度99%以上、logP -0.47
1,3-ブチレングリコール:東京化成工業(株)製 1,3-ブチレングリコール、濃度99%以上、logP -0.37
1,2-ペンタンジオール:ソー・ジャパン(株)製 Microcare(登録商標) Emollient PTGJ、濃度100%、logP 0.43
1,2-ヘキサンジオール:ソー・ジャパン(株)製 Microcare(登録商標) Emollient HXD、濃度100%、logP 0.85
1,2-オクタンジオール:東京化成工業(株)製 1,2-オクタンジオール、濃度96%以上、logP 1.68
エチルヘキシルグリセリン:ソー・ジャパン(株)製 Microcare(登録商標) Emollient EHG、濃度100%、logP 1.93
フェノキシエタノール:ソー・ジャパン(株)製 Microcare(登録商標) PE、濃度100%、logP 1.39
フェネチルアルコール:ソー・ジャパン(株)製 Microcare(登録商標) Alcohol PEA、濃度100%、logP 1.74
【0058】
<pH調整剤>
水酸化ナトリウム:5%水酸化ナトリウム水溶液
クエン酸:扶桑化学工業(株)製、濃度99%以上
リンゴ酸:扶桑化学工業(株)製、濃度99%以上
グリシン:富士フイルム和光純薬(株)製、濃度99%以上
アラニン:富士フイルム和光純薬(株)製、L-アラニン、濃度99%以上
アスパラギン酸:富士フイルム和光純薬(株)製、L-アスパラギン酸、濃度99%以上
ヒスチジン:富士フイルム和光純薬(株)製、L-ヒスチジン、濃度98%以上
キシレンスルホン酸:テイカ株式会社製、テイカトックス 110、濃度94%
硫酸:10%硫酸水溶液
なお、表1~表3における組成の数値は、洗浄剤組成物中の各成分の純分の割合となる。
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
1.pHの測定
各組成物の原液のpHを、pHメータ F-53(株式会社堀場製作所製)を用い、25℃で、JIS Z-8802:2011「pH測定方法」に準じた方法で測定した。結果を、表1~表3に示した。
【0063】
2.大腸菌に対する殺菌効果評価試験
本発明の洗浄剤組成物の殺菌効果評価試験は、「ASTM E2315-16 Assessment of Antimicrobial Activity Using a Time-Kill Procedure」を参考に行われたもので、大腸菌(Escherichia coli NBRC3972)を用い、原液の供試組成物に細菌を接触させた後、培養し、生存する菌を測定することにより示すことができ、その生存する菌が少なければ少ない程、殺菌効果が高いことを示す。
殺菌効果は下記の式(1)で示され、5以上の値を示すものであることが好ましい。
〔式〕
殺菌効果判定値=Log(接触菌数-生存菌数) …(1)
【0064】
<殺菌効果>
〈試験方法〉
大腸菌(Escherichia coli NBRC3972)を用い、下記の方法によって、殺菌効果を評価した。
(1)大腸菌(Escherichia coli NBRC3972)を、普通ブイヨン培地に接種し、35℃で24時間培養し菌液とした。
(2)各実施例及び各比較例の洗浄剤組成物と菌液とを99:1の割合(容量)で混合し、室温で1分経過後、接触液100μLを取り出して9.9mLSCDLP培地に加え、反応を停止させた。
(3)その後、適宜、停止させた液1mLを取り出して9mL生理食塩水に加えることで段階的に希釈した。
(4)(2)の停止させた液と(3)の段階的に希釈した液をそれぞれ、標準寒天培地にて混釈培養し、生存菌数を測定した。そして下記の式で求められる接触菌数と生存菌数の常用対数値の差を殺菌効果判定値とし、下記の評価基準により評価した。
〔式〕
殺菌効果判定値=Log(接触菌数-生存菌数) …(1)
【0065】
評価基準は以下の通りである。結果を表1~表3に示す。
○:殺菌効果に優れる(殺菌効果判定値が5以上)。
×:殺菌効果に劣る(殺菌効果判定値が5未満)。
【0066】
3.ウイルス不活化試験(MNV,FCV)
(マウスノロウイルス不活化効果)
(1)マウスノロウイルスを、マウスのマクロファージ由来細胞株であるRAW 264.7細胞(ATCC TIB-71)に感染させて細胞を培養した。
(2)次に、マウスノロウイルスが感染したかどうかを細胞変性効果(Cytopathic effect:CPE)により確認した。
細胞変性効果を確認した後、培養細胞の凍結融解を繰り返すことにより、培養細胞を破砕した。
(3)培養細胞破砕液を遠心分離し、上清を回収しウイルス溶液とした。
(4)各実施例及び各比較例に係る洗浄剤組成物と、ウイルス溶液とを9:1の割合(容量)で混合し、室温で1分経過後、10%牛胎児血清含有DMEM培地で100倍希釈することにより、洗浄剤組成物のウイルスに対する作用を停止させた。
この工程により得られた溶液を洗浄剤組成物1分作用ウイルス溶液とした。
(5)10%牛胎児血清含有DMEM培地と、ウイルス溶液とを9:1の割合(容量)で混合した直後、10%牛胎児血清含有DMEM培地で100倍希釈することにより、得られた溶液を洗浄剤組成物0秒作用ウイルス溶液とした。
(6)洗浄剤組成物0秒作用ウイルス溶液及び洗浄剤組成物1分作用ウイルス溶液を、それぞれ、10%牛胎児血清含有DMEM培地により、10倍段階希釈した。RAW 264.7細胞を培養した96wellマイクロプレートの培地を捨て、段階希釈液を100μLずつ加えた。
(7)洗浄剤組成物0秒作用ウイルス溶液及び洗浄剤組成物1分作用ウイルス溶液の段階希釈液が加えられたRAW 264.7細胞を37℃、5%CO2の条件で、4日間培養した。
(8)培養したRAW 264.7細胞のCPEを指標にTCID50(Tissue Culture Infectious Dose 50%)により各ウイルス溶液のウイルス感染力価(対数)を定量した。
(9)上記(1)~(8)の工程を3回独立に行い、洗浄剤組成物0秒作用ウイルス溶液を用いて算出されたウイルス感染力価の平均値を、作用時間0秒におけるウイルス感染力価とし、洗浄剤組成物1分作用ウイルス溶液を用いて算出されたウイルス感染力価の平均値を、作用時間1分におけるウイルス感染力価の値とした。
【0067】
評価基準は以下の通りである。結果を表1~表3に示す。
◎:4.0以上の感染力価の減少
○:2.0以上、4.0未満の感染力価の減少
×:2.0未満の感染力価の減少
なお、感染力価の減少が2.0以上(評価が○以上)であれば、マウスノロウイルス不活化効果は良好である。
【0068】
(ネコカリシウイルス不活化効果)
(1)ネコカリシウイルスを、ネコ腎臓由来株化細胞であるCRFK細胞(ATCC CCL-94)に感染させて細胞を培養した。
(2)次に、ネコカリシウイルスが感染したかどうかを細胞変性効果(Cytopathic effect:CPE)により確認した。
細胞変性効果を確認した後、培養細胞の凍結融解を繰り返すことにより、培養細胞を破砕した。
(3)培養細胞破砕液を遠心分離し、上清を回収しウイルス溶液とした。
(4)各実施例及び各比較例に係る洗浄剤組成物と、ウイルス溶液とを9:1の割合(容量)で混合し、室温で1分経過後、OPTI-MEM培地で100倍希釈することにより、各洗浄剤組成物のウイルスに対する作用を停止させた。
この工程により得られた溶液を洗浄剤組成物1分作用ウイルス溶液とする。
(5)OPTI-MEM培地と、ウイルス溶液とを9:1の割合(容量)で混合した直後、OPTI-MEM培地で100倍希釈することにより、得られた溶液を洗浄剤組成物0秒作用ウイルス溶液とした。
(6)洗浄剤組成物0秒作用ウイルス溶液、洗浄剤組成物1分作用ウイルス溶液を、それぞれ、OPTI-MEM培地により10倍段階希釈した。CRFK細胞を培養した96wellマイクロプレートの培地を捨て、段階希釈液を100μLずつ加えた。
(7)洗浄剤組成物0秒作用ウイルス溶液及び洗浄剤組成物1分作用ウイルス溶液の段階希釈液が加えられたCRFK細胞を37℃、5%CO2の条件で、4日間培養した。
(8)培養したCRFK細胞のCPEを指標にTCID50(Tissue Culture Infectious Dose 50%)により各ウイルス溶液のウイルス感染力価(対数)を定量した。
(9)上記(1)~(8)の工程を3回独立に行い、洗浄剤組成物0秒作用ウイルス溶液を用いて算出されたウイルス感染力価の平均値を、作用時間0秒におけるウイルス感染力価とし、洗浄剤組成物1分作用ウイルス溶液を用いて算出されたウイルス感染力価の平均値を、作用時間1分におけるウイルス感染力価の値とした。
【0069】
評価基準は以下の通りである。結果を表1~表3に示す。
◎:4.0以上の感染力価の減少
○:2.0以上、4.0未満の感染力価の減少
×:2.0未満の感染力価の減少
なお、感染力価の減少が2.0以上(評価が○以上)であれば、ネコカリシウイルス不活化効果は良好である。
【0070】
4.泡立ち及び洗浄力
(泡立ち評価)
各実施例及び各比較例に係る洗浄剤組成物1mLを手のひらに落とし、15秒間擦り合わせた後、泡の状態を目視で観察することにより、各実施例及び各比較例に係る洗浄剤組成物の泡立ち評価を行った。
【0071】
泡立ち評価の結果を表1~表3に示す。なお、評価基準は以下の通りである。
◎:きめ細かい泡が形成される。
〇:大きな泡が形成される。
×:泡が形成されない。
なお、評価が◎又は○であれば、泡立ちは良好である。
(洗浄力評価)
各実施例及び各比較例に係る洗浄剤組成物の洗浄力を以下の方法により評価した。
(1)モデル汚れの作製
大豆レシチン、モノオレイン、白色ワセリン及びカーボンブラックを、重量比でそれぞれ、6:6:6:6:1となるように混合しモデル汚れとした。
(2)モデル汚れの付着
モデル汚れ0.1gをあらかじめ手洗いをして乾燥させた両手のひらに広げ、モデル汚れを付着させた。
(3)モデル汚れの洗浄
次に、モデル汚れを付着させた手のひらを水で少し濡らし、各洗浄剤組成物を1mL手のひらに落とし、15秒間手のひらを擦り合わせた後、15秒間流水で手のひらをすすいだ。
(4)モデル汚れの洗浄の観察
次に、手のひらを観察し、モデル汚れが完全に落ちているか否かを確認した。
モデル汚れが完全に落ちていない場合には、モデル汚れが完全に落ちるまで上記「(3)モデル汚れの洗浄」を繰り返した。
【0072】
洗浄力評価の結果を表1~表3に示す。なお、評価基準は以下の通りである。
◎:「(3)モデル汚れの洗浄」を1~2回行うことにより、モデル汚れが完全に落ちた。
〇:「(3)モデル汚れの洗浄」を3回行うことにより、モデル汚れが完全に落ちた。
×:「(3)モデル汚れの洗浄」を4回以上行うことにより、モデル汚れが完全に落ちた。
なお、評価が◎又は○であれば、洗浄力は良好である。
【0073】
表1~表3より、実施例に係る洗浄剤組成物は殺菌効果、ウイルス不活化効果(マウスノロウイルス不活化効果及びネコカリシウイルス不活化効果)、洗浄力、泡立ち性をバランス良く発揮できることが判明した。
上述したように、実施例に係る洗浄剤組成物は、マウスノロウイルスとネコカリシウイルスの両方に非常に優れた不活化効果を発揮できる。この洗浄剤組成物は、ヒトノロウイルスの不活化により好適に適用できると考えられ(「最新ノロウイルスのアウトブレイクの管理と疾病予防のガイドライン〔Updated Norovirus Outbreak Management and Disease Prevention Guidelines〕、MMWR、2011年3月4日、第60巻、No.3;pp.1-15、インターネット<URL:http://www.cdc.gov/mmwr/pdf/rr/rr6003.pdf>参照)、大きな技術的意義がある。
【要約】
【課題】殺菌効果、ウイルス不活化効果、洗浄力、泡立ち性をバランス良く発揮できる新規な組成物を提供する。
【解決手段】本開示に係る洗浄剤組成物は、(a)アニオン界面活性剤、及び、(b)ジオール類、フェノキシエタノール、及び、フェネチルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含み、洗浄剤組成物中、前記アニオン界面活性剤(a)の濃度が0.5質量%以上、10質量%以下であることを特徴とする。
【選択図】 なし