(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】テープ材の貼付装置
(51)【国際特許分類】
B65H 35/07 20060101AFI20231106BHJP
【FI】
B65H35/07 M
(21)【出願番号】P 2023139628
(22)【出願日】2023-08-30
【審査請求日】2023-08-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518153346
【氏名又は名称】株式会社ウエーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】弁理士法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】白子 善久
(72)【発明者】
【氏名】白子 なおみ
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-35876(JP,A)
【文献】特開2022-65833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 35/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多関節ロボットと、
前記多関節ロボットのアームの先端に設けられたエンドエフェクタと、
前記多関節ロボットおよびエンドエフェクタを制御する制御装置とを備え、
前記エンドエフェクタは、
一方面に粘着層を有するテープ材が巻回されたリールと、
前記リールから繰り出されたテープ材を挟持部により挟持してテープ材の先端を退避位置から貼付位置に搬送する搬送装置と、
前記搬送装置に搬送されたテープ材をワークに押圧して貼り付ける押圧部材とを備えており、
前記搬送装置は、前記挟持部により挟持されたテープ材の先端側を前記貼付位置に向けて案内するガイド部を備え、
前記制御装置は、前記ガイド部から突出するテープ材の先端を、前記搬送装置により前記貼付位置に搬送して前記押圧部材によりワークに押圧した後、前記挟持部による前記テープ材の挟持を解除して、前記押圧部材をテープ材に沿って基端側に向けて移動させることにより、テープ材をワークに貼り付けるテープ材の貼付装置。
【請求項2】
前記エンドエフェクタは、前記ガイド部と前記押圧部材との間でテープ材を切断する切断装置を更に備え、
前記制御装置は、テープ材をワークに貼り付けた後、テープ材を前記挟持部により挟持して前記切断装置により切断する請求項1に記載のテープ材の貼付装置。
【請求項3】
前記押圧部材は、前記テープ材に沿って転動するローラである請求項1に記載のテープ材の貼付装置。
【請求項4】
前記搬送装置は、前記退避位置から前記貼付位置に向けて前記押圧部材の接線に沿ってテープ材を搬送する請求項3に記載のテープ材の貼付装置。
【請求項5】
前記搬送装置は、前記ガイド部の先端側に突出するテープ材の一方面にエアを噴射するエア噴射部と、テープ材の他方面側を保持する保持部とを備える請求項1に記載のテープ材の貼付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープ材の貼付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多関節ロボットを用いてテープ材をワークに貼り付けることができる装置として、例えば、特許文献1に開示されたテープ材貼付け機が知られている。このテープ材貼付け機は、テープ材の表面を押圧してワークに貼り付けるローラと、テープ材をローラに向けて案内するガイドとを備えており、リールから繰り出されたテープ材を、ローラが貼り付け経路に沿って押圧しながら連続して貼り付けるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のテープ材貼付け機は、リールの回転駆動によりテープ材をローラに向けて供給するように構成されているため、テープ材の先端が暴れやすく、テープ材の先端をローラの近傍に確実に供給できないおそれがあった。このように、従来のテープ材の貼付装置は、現在多用されている長尺のテープ材の貼り付け、ワーク深部へのテープ材の貼り付け、ワーク上にある突起物を避けてのテープ材の貼り付け等に十分対応できないおそれがあり、テープ材の材質、厚み、幅、剥離紙の有無等によっては、とりわけその傾向が顕著に表れるため、テープ材の貼り付けを確実に行う上で更に改良の余地があった。
【0005】
そこで、本発明は、テープ材の貼り付けを迅速且つ確実に行うことができるテープ材の貼付装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、多関節ロボットと、前記多関節ロボットのアームの先端に設けられたエンドエフェクタと、前記多関節ロボットおよびエンドエフェクタを制御する制御装置とを備え、前記エンドエフェクタは、一方面に粘着層を有するテープ材が巻回されたリールと、前記リールから繰り出されたテープ材を挟持部により挟持してテープ材の先端を退避位置から貼付位置に搬送する搬送装置と、前記搬送装置に搬送されたテープ材をワークに押圧して貼り付ける押圧部材とを備えており、前記搬送装置は、前記挟持部により挟持されたテープ材の先端側を前記貼付位置に向けて案内するガイド部を備え、前記制御装置は、前記ガイド部から突出するテープ材の先端を、前記搬送装置により前記貼付位置に搬送して前記押圧部材によりワークに押圧した後、前記挟持部による前記テープ材の挟持を解除して、前記押圧部材をテープ材に沿って基端側に向けて移動させることにより、テープ材をワークに貼り付けるテープ材の貼付装置により達成される。
【0007】
このテープ材の貼付装置において、前記エンドエフェクタは、前記ガイド部と前記押圧部材との間でテープ材を切断する切断装置を更に備えることが好ましく、前記制御装置は、テープ材をワークに貼り付けた後、テープ材を前記挟持部により挟持して前記切断装置により切断することが好ましい。
【0008】
前記押圧部材は、前記テープ材に沿って転動するローラであることが好ましい。この場合、前記搬送装置は、前記退避位置から前記貼付位置に向けて前記押圧部材の接線に沿ってテープ材を搬送することが好ましい。
【0009】
前記搬送装置は、前記ガイド部の先端側に突出するテープ材の一方面にエアを噴射するエア噴射部と、テープ材の他方面側を保持する保持部とを備えることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、テープ材の貼り付けを迅速且つ確実に行うことができるテープ材の貼付装置を提供することができ、例えば、テープ材の材質、ワークに貼り付けるテープ片の長さ、ワーク表面からの貼り付け位置の深さ、ワーク表面の凹凸等を問わずに、テープ材を確実に貼り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るテープ材の貼付装置の斜視図である。
【
図3】
図1の要部を他の方向から見た拡大斜視図である。
【
図4】
図2に示す要部の作動を説明するための拡大斜視図である。
【
図5】
図2に示す要部の他の作動を説明するための拡大斜視図である。
【
図6】
図2に示す要部の更に他の作動を説明するための拡大斜視図である。
【
図7】本発明の他の実施形態に係るテープ材の貼付装置の要部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、 本発明の一実施形態に係るテープ材の貼付装置(以下、単に「貼付装置」という)の概略構成を示す斜視図である。
図1に示すように、貼付装置1は、多関節ロボット10と、多関節ロボット10に取り付けられたエンドエフェクタ20と、多関節ロボット10およびエンドエフェクタ20を制御する制御装置30とを備えており、載置台100に搭載されたワークWにテープ材を貼り付けることができる。ワークWの形状や大きさ等は特に限定されないが、本実施形態のワークWは帯状に形成されており、ワークWの複数の所定位置に、ワークWの長手方向に沿ってテープ材を貼り付けることができる。
【0013】
多関節ロボット10は、複数のアーム11が関節を介して回動自在に連結された多軸(例えば4軸から7軸)構造を有しており、アーム11の先端の回転機構部12に、エンドエフェクタ20が着脱可能に装着される。
【0014】
図2は、
図1に示すエンドエフェクタ20の拡大斜視図である。また、
図3は、
図2に示すエンドエフェクタ20を他の方向から見た拡大斜視図である。
図2および
図3に示すように、エンドエフェクタ20は、アーム11の回転機構部12に装着されたブラケット21を備えている。ブラケット21は、回転機構部12の回動軸周りに回動可能となるように、ボルトで締結固定されている。
【0015】
エンドエフェクタ20は、テープ材Tが巻回されたリール40と、リール40から繰り出されたテープ材Tを搬送する搬送装置50と、搬送装置50により搬送されたテープ材TをワークWに押圧して貼り付ける押圧部材60と、テープ材Tを切断する切断装置70とを備えている。
【0016】
テープ材は、例えばフェルト材やスポンジ材などからなる薄帯状(例えば、厚みが約0.9mm)の基材の一方面に粘着層を有しており、この粘着層が内側の基材の他方面に接するように、リール40に巻回されている。リール40は、ブラケット21に回転自在に支持されており、リール40から繰り出されたテープ材Tは、粘着層と反対側の他方面がガイドロール41の外周面と接するようにガイドロール41で折り返されて、搬送装置50に案内される。
【0017】
搬送装置50は、本体51と、本体51の先端側に設けられた挟持部52と、挟持部52の先端側に設けられたガイド部53とを備えており、テープ材Tの先端T1を、
図3に示す退避位置から、後述する押圧部材60の近傍位置である貼付位置に搬送する。本体51は、ガイドレール51aに沿って可動ブロック51bが進退可能に設けられたリニアアクチュエータであり、ガイドロール41で折り返されたテープ材Tは、ガイドレール51aの下面側(可動ブロック51bと反対側)を通過して、可動ブロック51bの移動方向に沿って延びている。ガイドレール51aは、ブラケット21に固定されている。
【0018】
挟持部52は、エアシリンダ等の駆動装置52cのロッドの先端(下端)に設けられた可動片52aと、駆動装置52cに支持された固定片52bとを備えている。挟持部52は、本体51の可動ブロック51bと一体的に移動するように、可動ブロック51bの先端に固定されている。可動片52aは、本体51の可動ブロック51bの進退方向と直交する方向に往復動可能に設けられており、本体51の先端側に突出するテープ材Tを、固定片52bとの間で厚み方向に挟持する。
【0019】
ガイド部53は、平板状のガイド板53aと、ガイド板53aとの間にテープ材Tを挟持するガイドローラ53bとを備えている。ガイド部53は、挟持部52の先端側に位置するように固定片52bに固定されており、挟持部52により挟持されたテープ材Tの先端側を、貼付位置に向けて案内する。
【0020】
押圧部材60は、円筒状のローラからなり、ブラケット21に回動可能に取り付けられたアーム61に、回転自在に支持されている。押圧部材60は、ばね部材62により先方に付勢される。押圧部材60は、テープ材Tの全体を所望の押圧力で押圧して、ワークWに確実に貼り付けることができるように、テープ材Tに沿って転動するローラであることが好ましいが、テープ材Tに沿って摺動するブロック状の部材等であってもよい。
【0021】
切断装置70は、テープ材Tを切断する切断刃71と、切断刃71を往復動させるエアシリンダ等の駆動装置72とを備えており、切断刃71をテープ材Tの厚み方向に移動させることで、ガイド部53と押圧部材60との間でテープ材Tを切断することができる。
【0022】
次に、上記の構成を備える貼付装置1によりテープ材の貼付作業を行う方法を説明する。制御装置30(
図1参照)は、まず、
図4に示すように、挟持部52の可動片52aを矢示A方向に下降させて、可動片52aと固定片52b(
図3参照)との間でテープ材Tを挟持した後、多関節ロボット10のアーム11の作動により押圧部材60をワークの上方近傍に移動させる。ついで、制御装置30は、搬送装置50を作動させて、本体51の可動ブロック51bを矢示B方向に移動させる。これにより、テープ材Tの先端T1が、もとの退避位置P1から、
図5に示す貼付位置P2まで移動する。
【0023】
図5に示すように、ガイド部53によって案内されるテープ材Tの先端側は、押圧部材60とワークWとの間に介在されるように、退避位置P1と貼付位置P2との間で押圧部材60の外周面と接するように直線状に延びており、搬送装置50は、退避位置P1から貼付位置P2に向けて、押圧部材60の接線に沿ってテープ材Tを搬送する。
【0024】
制御装置50は、
図5に示す状態から、押圧部材60を矢示C方向に移動させることにより、テープ材Tの先端T1を押圧部材60によりワークWに押圧する。押圧部材60によるテープ材Tの押圧位置は、先端T1がワークWに確実に貼り付けられる位置であることが好ましく、例えば、テープ材Tの先端T1から1~2mm程度基端側の位置で、押圧部材60の外周面とテープ材Tとが当接することが好ましい。
【0025】
こうして、テープ材Tの先端T1の下面側(粘着層を有する一方面側)をワークWに貼り付けた後、挟持部52の可動片52aを矢示D方向に上降させてテープ材Tの挟持を解除し、テープ材Tをリールから押圧部材60に向けて供給可能な状態にする。そして、押圧部材60を、テープ材Tの上面に沿って基端側に向けて矢示E方向に移動させることにより、押圧部材60が、テープ材Tを押圧しながらワークWの表面に沿って移動する。こうして、テープ材Tが押圧された部分を、ワークWに貼り付けることができる。制御装置30は、押圧部材60の移動によるテープ材Tの貼り付けと並行して、本体51の可動ブロック51bを、
図4に示すもとの位置まで後退させる。
【0026】
次に、制御装置30は、
図6に示すように、挟持部52の可動片52aを矢示F方向に下降させてテープ材Tを再び挟持し、テープ材Tにテンションをかけた状態で切断装置70を作動させて、切断刃71を矢示G方向に移動させることによりテープ材Tを切断する。切断刃71によるテープ材Tの切断位置は、ガイド部53と押圧部材60との間であればよいが、ガイド部53からの距離が長くなると、切断後にガイド部53から突出するテープ材Tが自重で垂れ下がり易くなるため、例えば、ガイド部53からテープ材Tの先端側20~25mmの位置であることが好ましい。これによって、切断後にテープ材Tがガイド部53から突出する部分の方向および必要長さを担保して、次のテープ材Tの貼り付けを迅速容易に行うことができる。貼り付けられたテープ材Tの基端側は、切断後に押圧部材60により押圧することで、切断されたテープ材Tの全体をワークWに確実に貼り付けることができる。ワークWに貼り付けられたテープ材Tの全長は、例えば70mm程度である。
【0027】
本実施形態のテープ材の貼付装置1によれば、押圧部材60の近傍へのテープ材Tの供給を、リール40の回転駆動によって行うのではなく、リール40から繰り出されたテープ材Tを、搬送装置50が挟持部52により挟持して、テープ材Tの先端T1を退避位置P1から貼付位置P2に搬送して行うため、テープ材Tの厚みや材質等に拘らず、テープ材Tを押圧部材60の近傍に確実に供給してワークWへの貼り付けを迅速容易に行うことができる。退避位置P1から貼付位置P2に向けたテープ材Tの搬送は、本実施形態のように、ローラからなる押圧部材60の接線に沿って行われることが好ましく、これによって、ワークWへのテープ材Tの貼り付けを容易且つ確実に行うことができる。
【0028】
テープ材Tが、例えばセロハンテープのように薄くて変形しやすい場合には、
図7に示すように、ガイド部53の先端側に突出するテープ材Tの一方面(粘着層を有する面)にエアを噴射するエア噴射部80と、テープ材Tの他方面側を保持する保持部81とを備える構成にすることができる。保持部81は、ガイド部53から押圧部材60に向けて延びる可撓性の帯状の部材であり、保持部81の先端部は、押圧部材60の外周面に沿って円弧状に湾曲している。保持部81の円弧状部分の中心角は、45度程度であることが好ましい。押圧部材60は、保持部81を介してテープ材Tを押圧可能であり、テープ材Tの先端T1をワークに貼り付けた後、テープ材Tを先端T1から基端側に向けて順次押圧することで、所望長さのテープ材Tをワークに確実に貼付けることができる。
【0029】
エア噴射部80は、例えば噴射ノズルからなり、テープ材Tの先端T1が押圧部材60によりワークに押圧された状態で、テープ材Tの他方面側が保持部81により保持された部分の一方面に対して、噴射口80aからエアを噴射する。これにより、テープ材Tが丸まるおそれがなく、テープ材Tを強制的に帯状に広げた状態でワークに貼り付けることができるので、テープ材Tの貼り付けを迅速且つ確実に行うことができる。
図7において、
図5等と同様の構成部分には、同一の符号を付している。
【0030】
上記各実施形態のテープ材の貼付装置1は、テープ材Tの厚みや材質、貼り付けるテープ片の長さ、貼り付け場所のワーク表面からの深さ、ワーク表面の凹凸等に拘らず、テープ材の全体をワークに確実に貼り付けることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 テープ材の貼付装置
10 多関節ロボット
11 アーム
20 エンドエフェクタ
30 制御装置
40 リール
50 搬送装置
52 挟持部
53 ガイド部
60 押圧部材
70 切断装置
80 エア噴射部
81 保持部
W ワーク
T テープ材
P1 退避位置
P2 貼付位置
【要約】
【課題】 テープ材の貼り付けを迅速且つ確実に行うことができるテープ材の貼付装置を提供する。
【解決手段】 多関節ロボット10と、エンドエフェクタ20と、制御装置30とを備え、エンドエフェクタ20は、リール40と、テープ材を挟持部により挟持してテープ材の先端を退避位置から貼付位置に搬送する搬送装置50と、押圧部材60とを備えており、搬送装置50は、挟持部により挟持されたテープ材の先端側を貼付位置に向けて案内するガイド部を備え、制御装置30は、ガイド部から突出するテープ材の先端を、搬送装置50により貼付位置に搬送して押圧部材60によりワークWに押圧した後、把持部によるテープ材の把持を解除して、押圧部材60をテープ材に沿って基端側に向けて移動させることにより、テープ材をワークWに貼り付けるテープ材の貼付装置1である。
【選択図】
図1