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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】光硬化型ポリオルガノシロキサン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20231106BHJP
   C08K 5/56 20060101ALI20231106BHJP
   C08K 9/06 20060101ALI20231106BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20231106BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20231106BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
C08L83/07
C08K5/56
C08K9/06
C08L83/05
H01L23/30 R
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017132146
(22)【出願日】2017-07-05
(65)【公開番号】P2019014801
(43)【公開日】2019-01-31
【審査請求日】2020-04-03
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000221111
【氏名又は名称】モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】大皷 弘二
(72)【発明者】
【氏名】森田 康仁
【合議体】
【審判長】近野 光知
【審判官】海老原 えい子
【審判官】藤原 浩子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-521640(JP,A)
【文献】特表2010-537018(JP,A)
【文献】特開2012-180526(JP,A)
【文献】特表2015-523926(JP,A)
【文献】特表2014-527487(JP,A)
【文献】特表2013-519547(JP,A)
【文献】特開2008-074881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00-83/16
C09D 183/00-183/16
C09J 183/00-183/16
C09K 3/10
H01L 23/00-23/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一分子中に、ケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有する、ポリオルガノシロキサン;
(B)一分子中に、ケイ素原子に結合した水素原子を2個以上有する、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン;
(C)光活性型白金錯体硬化触媒;及び
(D)(d)原料シリカ粒子が、一分子中に、ケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有する、ポリオルガノシロキサンと、ヘキサメチルジシラザンとの混合物で表面処理されたシリカ粒子
を含み、(d)が、ヘキサメチルジシラザンで表面処理されたシリカ粒子のみからなる、光硬化型ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項2】
(C)が、β-ジケトン白金錯体及び環状ジエン化合物を配位子に持つ白金錯体からなる群より選択される1以上である、請求項1に記載の光硬化型ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項3】
更に、(E)アルキレン単位が炭素原子数2~4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基であるポリオキシアルキレングリコール及び/又はその誘導体を含有する、請求項1又は2に記載の光硬化型ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項4】
画像表示装置用のダム材である、請求項1~3のいずれか一項に記載の光硬化型ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項5】
画像表示部と保護部との封止に、請求項1~3のいずれか一項に記載の光硬化型ポリオルガノシロキサン組成物を用いてなる、画像表示装置。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の光硬化型ポリオルガノシロキサン組成物の製造方法であって、(A)、(B)、(C)及び(D)を配合する工程を含み、ここで、(d)原料シリカ粒子と(A)とを混合する時に、ヘキサメチルジシラザンを添加して、前記シリカ粒子を表面処理することによって、(D)を得ることを特徴とする、光硬化型ポリオルガノシロキサン組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化型ポリオルガノシロキサン組成物、それを用いた画像表示装置用のダム材組成物、及びそれを用いた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶、プラズマ、有機EL等のフラットパネル型の画像表示装置が着目されている。フラットパネル型の画像表示装置は、通常、少なくとも一方がガラス等の光透過性をもつ一対の基板の間に、アクティブ素子を構成する半導体層や蛍光体層、あるいは発光層からなる多数の画素をマトリクス状に配置した表示領域(画像表示部)を有する。一般に、この表示領域(画像表示部)と、ガラスやアクリル樹脂のような光学用プラスチックで形成される保護部との周囲は、接着剤で機密に封止されている。このような画像表示装置においては、屋外光や室内照明の反射等による可視性(視認性)の低下を防ぐため、保護部と画像表示部との間に、封止剤を介在させる。
【0003】
そして、紫外線硬化型樹脂組成物を封止剤として画像表示部(例えば、液晶表示パネル)に使用する場合、組成物が、その流動性により、表示部からはみ出たり、表示部の裏側にまわりこむといった問題が生じることがあり、表示部が大型化してきている近年においてさらに顕在化してきた。この問題を解決するために、表示部又は保護部にあらかじめ、ダム材組成物を用いて枠を形成しておき、その中に組成物を適用することで、はみ出し等を防止する方法が知られている。
【0004】
封止剤及びダム材組成物には、例えば、熱硬化性型シリコーン樹脂組成物を使用することが提案されている(特許文献1)。また、主に対物レンズ駆動装置用ダンピング材に用いられる紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物として、光活性型の白金錯体硬化触媒を含む紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-345970号公報
【文献】特開2003-213132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1においては、組成物を加熱により硬化させているが、十分な作業時間があると硬化が遅く、速く硬化させると十分な作業時間がなく、吐出が困難になる等の弊害を生じる問題があった。
【0007】
特許文献2に開示されている紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物において、通常のシリカ配合プロセスに光活性型の白金錯体を適用すると、白金錯体の配位子部分が脱離して不安定化してしまう。これにより、紫外線照射無しでも白金活性が生じやすく、室温で2ヶ月程度保管したものは、紫外線照射を行わない場合でも硬化反応が始まってしまい、十分な作業時間(ポットライフ)が維持できず、保存安定性に問題があった。
【0008】
本発明は、シリカ粒子を含む紫外線硬化型ポリオルガノシロキサン組成物であって、保存安定性に優れ、かつ、紫外線照射するまで十分な作業時間がある、シリカ粒子を含む紫外線硬化型ポリオルガノシロキサン組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン及び特定の有機ケイ素化合物の混合物で表面処理されたシリカ粒子を用いることにより、保存安定性に優れた紫外線硬化型ポリオルガノシロキサン組成物が得られることを見出した。
【0010】
本発明は、以下の構成を有する。
[1](A)一分子中に、ケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有する、ポリオルガノシロキサン;
(B)一分子中に、ケイ素原子に結合した水素原子を2個以上有する、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン;
(C)光活性型白金錯体硬化触媒;及び
(D)(d)原料シリカ粒子が、一分子中に、ケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有する、ポリオルガノシロキサンと有機ケイ素化合物(但し、(A)及び(B)を除く)との混合物で表面処理されたシリカ粒子
を含む、光硬化型ポリオルガノシロキサン組成物。
[2](D)が、(d)原料シリカ粒子と(A)とを混合する時に、有機ケイ素化合物(但し、(A)及び(B)を除く)を添加して、前記シリカ粒子を表面処理することによって得られるシリカ粒子である、[1]の光硬化型ポリオルガノシロキサン組成物。
[3](d)が、有機ケイ素化合物で表面処理したシリカ粒子である、[1]又は[2]の光硬化型ポリオルガノシロキサン組成物。
[4](C)が、β-ジケトン白金錯体及び環状ジエン化合物を配位子に持つ白金錯体からなる群より選択される1以上である、[1]~[3]のいずれかの光硬化型ポリオルガノシロキサン組成物。
[5]更に、(E)アルキレン単位が炭素原子数2~4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基であるポリオキシアルキレングリコール及び/又はその誘導体を含有する、[1]~[4]のいずれかの光硬化型ポリオルガノシロキサン組成物。
[6]画像表示装置用のダム材である、[1]~[5]のいずれかの光硬化型ポリオルガノシロキサン組成物。
[7]画像表示部と保護部との封止に、[1]~[6]のいずれかの画像表示装置用のダム材組成物を用いてなる、画像表示装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シリカ粒子を含む紫外線硬化型ポリオルガノシロキサン組成物であって、保存安定性に優れ、かつ、紫外線照射するまで十分な作業時間がある、シリカ粒子を含む紫外線硬化型ポリオルガノシロキサン組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[用語の定義]
シロキサン化合物の構造単位を、以下のような略号によって記載することがある。以下、これらの構造単位をそれぞれ「M単位」「D単位」等ということがある。
M:(CHSiO1/2
:H(CHSiO1/2
:CH=CH(CHSiO1/2
D:(CHSiO2/2
:H(CH)SiO2/2
T:CHSiO3/2
Q:SiO4/2(四官能性)
【0013】
本明細書において、基の具体例は以下のとおりである。
-Cアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、3-ブテニル基及び5-ヘキセニル基等が挙げられる。合成が容易である観点から、ビニル基が好ましい。
-Cアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。合成が容易である観点から、メチル基が好ましい。
-C20アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、トリル基及びキシリル基等が挙げられる。合成が容易である観点から、フェニル基が好ましい。
-Cアルケニル基、C-Cアルキル基及びC-C20アリール基は、塩素、フッ素、臭素等のハロゲンで置換されていてもよい。
【0014】
粘度は、レオメータを用いて測定した、23℃での、せん断速度10(1/s)における値である。具体的には、粘度の測定は、実施例に記載された方法による。
本明細書において、「(A)一分子中に、ケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有する、ポリオルガノシロキサン」を「(A)」ともいう。「(C)光活性型白金錯体硬化触媒」等についても同様である。
本明細書において、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において、組成物中の各成分に該当する物質は、単独又は複数存在する。例えば、組成物において、(A)は、単独でも、二種以上を併用してもよい。(B)、(C)、(D)及び(d)等についても同様である。
【0015】
[光硬化型ポリオルガノシロキサン組成物]
光硬化型ポリオルガノシロキサン組成物(以下、単に「組成物」ともいう。)は、(A)一分子中に、ケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有する、ポリオルガノシロキサン;(B)一分子中に、ケイ素原子に結合した水素原子を2個以上有する、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン;(C)光活性型白金錯体硬化触媒;及び(D)(d)原料シリカ粒子が、一分子中に、ケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有する、ポリオルガノシロキサンと有機ケイ素化合物(但し、(A)及び(B)を除く)との混合物で表面処理されたシリカ粒子を含む。
【0016】
[(A)一分子中に、ケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有する、ポリオルガノシロキサン]
(A)一分子中に、ケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有する、ポリオルガノシロキサンは、組成物において、ベースポリマーとなる成分である。(A)を配合することによって、硬化時に架橋反応による安定した3次元構造を確保し、硬化収縮を制御し、良好な視認性を確保することができる。(A)は、ケイ素原子に結合したアルケニル基を一分子中に平均で2個以上有し、後述する(B)のヒドロシリル基(Si-H)との付加反応により、網状構造を形成することができるものであれば、特に限定されない。代表的には、一般式(I):
(Rn1(Rn2SiO(4-n1-n2)/2 (I)
(式中、
は、C-Cアルケニル基であり;
は、C-Cアルキル基又はC-C20アリール基であり;
n1は、1又は2であり;
n2は、0~2の整数であり、ただし、n1+n2は1~3である)
で示されるアルケニル基含有シロキサン単位を、分子中に少なくとも平均で2個以上有するアルケニル基含有ポリオルガノシロキサンである。(A)におけるケイ素原子に結合したアルケニル基の数は、一分子中、平均で2~100個であるのが好ましく、2~50個であるのがより好ましい。
【0017】
(A)のシロキサン骨格は、直鎖状でも分岐状でもよい。合成及び平均重合度の制御が容易なことから、(A)は、直鎖状のものが好ましい。また、これらの混合物を用いてもよい。
【0018】
は、合成が容易で、また硬化前の流動性や、硬化物の耐熱性を損ねないという点から、ビニル基が好ましい。Rは、(A)のポリオルガノシロキサン分子鎖の末端又は途中のいずれに存在してもよく、その両方に存在してもよいが、硬化後の組成物に優れた機械的性質を与えるためには、少なくともその両末端に存在していることが好ましい。Rは、合成が容易で、流動性や硬化後の機械的強度等のバランスが優れているという点から、メチル基が特に好ましい。n1は、合成が容易なことから、1が好ましい。
【0019】
(A)は、作業性の観点から、23℃における粘度が、1~100,000mPa・sであるのが好ましく、1~50,000mPa・sであるのがより好ましく、1~15,000mPa・sであるのが特に好ましい。これらの粘度範囲になるように、(A)の重量平均分子量を調整することが好ましい。
【0020】
よって、(A)としては、式(Ia):
【化1】

(式中、R及びRは、先に定義したとおりであり、m1は、(A)の23℃における粘度を1~100,000mPa・sにする数である)で示されるアルケニル基含有直鎖状ポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0021】
さらに、(A)としては、両末端がジメチルビニルシロキサン単位で閉塞され、中間単位がジメチルシロキサン単位からなるポリメチルビニルシロキサンであって、23℃における粘度が1~100,000mPa・sである、アルケニル基含有直鎖状ポリオルガノシロキサンがより好ましい。
【0022】
[(B)一分子中に、ケイ素原子に結合した水素原子を2個以上有する、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン]
(B)一分子中に、ケイ素原子に結合した水素原子を2個以上有する、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、分子中に含まれるヒドロシリル基が、(A)のRとの間で付加反応することにより、(A)の架橋剤として機能するものである。硬化物を網状化するために、該付加反応に関与するケイ素原子に結合した水素原子を、一分子中に平均で2個以上有しているものであれば、特に限定されない。このようなポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、代表的には、一般式(II):
(Rn3(Rn4SiO(4-n3-n4)/2 (II)
(式中、
は、水素原子であり、
は、C-Cアルキル基又はC-C20アリール基であり;
n3は、1又は2であり;
n4は、0~2の整数であり、ただし、n3+n4は1~3である)
で示される水素基含有シロキサン単位を分子中に2個以上有する水素基含有ポリオルガノシロキサンである。
【0023】
は、好ましい理由を含め、Rと同義である。また、合成が容易なことから、n3は1が好ましい。
【0024】
(B)としては、下記(B1)及び(B2)を含むのが好ましく、(B1)及び(B2)のみからなるのが特に好ましい。(B)が、(B1)及び(B2)を含むと、架橋密度が適度なものとなる。これにより、組成物の硬化物が、例えばダム材に適切な硬度を有する。
【0025】
(B1)は、両末端が、それぞれ独立して、RSiO1/2単位で閉塞され、中間単位がRSiO2/2単位からなり(式中、Rは、R又はRであるが、ただし、一分子中、少なくとも2個はRである)、23℃における粘度が1~10,000mPa・sである、直鎖状ポリオルガノハイドロジェンシロキサンである。また、(B2)は、SiO4/2単位及びR'SiO3/2単位からなる群より選択される1以上の単位と、R'SiO1/2単位及びR'SiO2/2単位からなる群より選択される1以上の単位とからなり(式中、R'は、独立して、R又はRである)、一分子中、少なくとも3個のR'が水素原子である、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンである。
【0026】
(B1)において、ケイ素原子に結合する水素原子は、末端に存在していても、中間単位に存在していてもよいが、架橋密度を効率的に制御できる点から、両末端に存在することが好ましい。(B1)において、ケイ素原子に結合した水素原子は、一分子中に2個有していることが好ましい。(B1)は、作業性の観点から、23℃における粘度が、1~10,000mPa・sであるのが好ましく、1~5,000mPa・sであるのがより好ましく、1~1,000mPa・sであるのが特に好ましい。これらの粘度範囲になるように、(B1)の重量平均分子量を調整することが好ましい。
【0027】
よって、(B1)としては、式(III):
【化2】

(式中、R及びRは、は、先に定義したとおりであり、m2は、(B1)の23℃における粘度を1~10,000mPa・sとする数である)で示される、直鎖状ポリオルガノハイドロジェンシロキサンが好ましい。
【0028】
(B2)は、入手又は合成が容易である点から、SiO4/2単位と、R(RSiO1/2単位とからなる、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンであるのが好ましい。ここで、SiO4/2単位とR(RSiO1/2単位とのモル比率(SiO4/2単位:R(RSiO1/2単位)は、1:1.2~2.5であるのが好ましい。(B2)のケイ素に結合した水素原子の含有量は、特に限定されないが、0.1~1.5重量%であるのが好ましく、0.5~1.2重量%であるのが特に好ましい。
【0029】
[(C)光活性型白金錯体硬化触媒]
(C)光活性型白金錯体硬化触媒は、紫外線の照射により活性化し、(A)のアルケニル基と、(B)のヒドロシリル基との間の付加反応を促進するための触媒である。
【0030】
(C)としては、β-ジケトン白金錯体及び環状ジエン化合物を配位子に持つ白金錯体が挙げられる。
【0031】
β-ジケトン白金錯体としては、トリメチル(アセチルアセトナト)白金錯体、トリメチル(2,4-ペンタンジオネート)白金錯体、トリメチル(3,5-ヘプタンジオネート)白金錯体、トリメチル(メチルアセトアセテート)白金錯体、ビス(2,4-ペンタンジオナト)白金錯体、ビス(2,4-へキサンジオナト)白金錯体、ビス(2,4-へプタンジオナト)白金錯体、ビス(3,5-ヘプタンジオナト)白金錯体、ビス(1-フェニル-1,3-ブタンジオナト)白金錯体及びビス(1,3-ジフエニル-1,3-プロパンジオナト)白金錯体等が挙げられる。
【0032】
環状ジエン化合物を配位子に持つ白金錯体としては、(1,5-シクロオクタジエニル)ジメチル白金錯体、(1,5-シクロオクタジエニル)ジフエニル白金錯体、(1,5-シクロオクタジエニル)ジプロピル白金錯体、(2,5-ノルボラジエン)ジメチル白金錯体、(2,5-ノルボラジエン)ジフェニル白金錯体、(シクロペンタジエニル)ジメチル白金錯体、(メチルシクロペンタジエニル)ジエチル白金錯体、(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ジフェニル白金錯体、(メチルシクロオクタ-1,5-ジエニル)ジエチル白金錯体、(シクロペンタジエニル)トリメチル白金錯体、(シクロペンタジエニル)エチルジメチル白金錯体、(シクロペンタジエニル)アセチルジメチル白金錯体、(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金錯体、(メチルシクロペンタジエニル)トリヘキシル白金錯体、(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)トリメチル白金錯体、(ジメチルフエニルシリルシクロペンタジエニル)トリフェニル白金錯体及び(シクロペンタジエニル)ジメチルトリメチルシリルメチル白金錯体等が挙げられる。
【0033】
(C)は、環状ジエン化合物を配位子に持つ白金錯体が好ましく、(シクロペンタジエニル)ジメチル白金錯体、(メチルシクロペンタジエニル)ジエチル白金錯体、(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ジフェニル白金錯体、(メチルシクロオクタ-1,5-ジエニル)ジエチル白金錯体、(シクロペンタジエニル)トリメチル白金錯体、(シクロペンタジエニル)エチルジメチル白金錯体、(シクロペンタジエニル)アセチルジメチル白金錯体、(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金錯体、(メチルシクロペンタジエニル)トリヘキシル白金錯体、(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)トリメチル白金錯体、(ジメチルフエニルシリルシクロペンタジエニル)トリフェニル白金錯体、及び(シクロペンタジエニル)ジメチルトリメチルシリルメチル白金錯体からなる群より選択される1以上のシクロペンタジエニル基を有する白金錯体が特に好ましい。
【0034】
[(D)(d)原料シリカ粒子が、一分子中に、ケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有する、ポリオルガノシロキサンと有機ケイ素化合物(但し、(A)及び(B)を除く)との混合物で表面処理されたシリカ粒子]
(D)は、(d)原料シリカ粒子が、一分子中に、ケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有する、ポリオルガノシロキサンと有機ケイ素化合物(但し、(A)及び(B)を除く)(以下、単に「有機ケイ素化合物」ともいう。)との混合物で表面処理されたシリカ粒子である。即ち、(D)は、少なくとも一分子中に、ケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有する、ポリオルガノシロキサンと有機ケイ素化合物との混合物で表面処理されたシリカ粒子である。
【0035】
有機ケイ素化合物で予め表面処理したシリカを、一分子中に、ケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有する、ポリオルガノシロキサンで表面処理する場合や、表面処理を行っていないシリカ粒子を、一分子中に、ケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有する、ポリオルガノシロキサンで表面処理した場合では、(C)と混合する際に、(C)を構成する配位子(例えば、β-ジケトン部分及び環状ジエン化合物部分)が脱離して、白金触媒の紫外線活性能が失われやすい。これにより、紫外線照射を行わない場合でも、硬化反応が進行してしまい、組成物の長期保存安定性に劣る。また、表面処理を行っていないシリカ粒子を、一分子中に、ケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有する、ポリオルガノシロキサンで表面処理したシリカ粒子を用いて、有機ケイ素化合物で表面処理を行う場合では、有機ケイ素化合物での表面処理の際に、原料シリカ粒子のダマが大量に発生し、組成物の均質性が劣る。
【0036】
<(d)原料シリカ粒子>
一分子中に、ケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有する、ポリオルガノシロキサン及び有機シラザン化合物で表面処理される前のシリカ粒子(以下、「(d)原料シリカ粒子」ともいう。)としては、製造法によって沈降法シリカ、ゲル法シリカ、ゾル法シリカ等の湿式法シリカ、乾式法である煙霧質シリカ(気相法シリカ)等が挙げられ、チクソ性付与、吐出性能への影響及び組成物の安定性の観点から、煙霧質シリカが好ましい。煙霧質シリカは日本アエロジル株式会社からアエロジル、株式会社トクヤマからQSタイプとして市販されている。
【0037】
(d)原料シリカ粒子は、予め表面処理されていてもよい。これにより、シリカ粒子の表面処理の効率がより高まり、組成物のチクソ性が低下しやすい。(d)原料シリカ粒子を得るための表面処理剤としては、有機シラザン化合物、アルコキシシラン化合物、クロロシラン化合物、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ジメチルシロキサンオリゴマー等の有機ケイ素化合物が挙げられる。
【0038】
有機シラザン化合物としては、ヘキサメチルジシラザン、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン、1,3-ビス(クロロメチル)テトラメチルジシラザン、1,3-ビス(3,3,3-トリフルオロプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン、1,3-ジフェニルテトラメチルジシラザン、ヘプタメチルジシラザン、2,2,4,4,6,6-ヘキサメチルシクロトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、1,1,3,3-テトラメチルジシラザン、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリビニルシクロトリシラザン等が挙げられる。組成物のチクソ性が低下しやすい点から、有機シラザン化合物は、ヘキサメチルジシラザンが好ましい。
【0039】
アルコキシシラン化合物としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0040】
クロロシラン化合物としては、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン等が挙げられる。
【0041】
有機シラザン化合物、アルコキシシラン化合物、クロロシラン化合物、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ジメチルシロキサンオリゴマー以外の有機ケイ素化合物としては、(G)接着付与剤において後述する更なる有機ケイ素化合物が挙げられる。
【0042】
これらの中で、処理した後の表面状態の安定性(不活性化)に優れ、組成物の保存安定性がより向上する観点から、有機シラザン化合物、オクタメチルシクロテトラシロキサン又はジメチルシロキサンオリゴマーが好ましく、ヘキサメチルジシラザン又はオクタメチルシクロテトラシロキサンが特に好ましい。
【0043】
<一分子中に、ケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有する、ポリオルガノシロキサンと有機ケイ素化合物(但し、(A)及び(B)を除く)との混合物>
一分子中に、ケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有する、ポリオルガノシロキサン及び有機ケイ素化合物は、(d)原料シリカ粒子を処理するための表面処理剤である。一分子中に、ケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有する、ポリオルガノシロキサンは、好ましい理由を含め、(A)と同義である。また、有機ケイ素化合物は、(d)原料シリカ粒子を得るための表面処理剤として前記したとおりであり、有機シラザン化合物、アルコキシシラン化合物、クロロシラン化合物、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ジメチルシロキサンオリゴマーが好ましく、有機シラザン化合物が特に好ましい。
【0044】
<(D)の好ましい態様>
(D)は、(d)と組成物に含まれる(A)とを混合する時に、有機ケイ素化合物を添加して、(d)を表面処理することによって得られたシリカ粒子であるのが好ましい。
【0045】
(D)のBET比表面積は、特に限定されないが、50~400m/gであるのが好ましい。BET比表面積が50m/g以上であると、組成物のチクソ性が向上しやすい。BET比表面積が400m/g以下であると、吐出口からの吐出性が良好である。(D)のBET比表面積は80~380m/gであるのがより好ましく、110~350m/gであるのが特に好ましい。
【0046】
<(D)の調製方法>
(d)原料シリカ粒子を、一分子中に、ケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有する、ポリオルガノシロキサン及び有機ケイ素化合物の混合物で表面処理する方法としては、一般的周知の技術を採用することができる。例えば、常圧で密閉された機械混練装置に、(d)と、表面処理剤である一分子中に、ケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有する、ポリオルガノシロキサン及び有機ケイ素化合物の混合物とを入れ、必要に応じて不活性ガス存在下において室温又は熱処理にて混合処理することが挙げられる。混練後、乾燥することにより(D)を製造することができる。また、前記混合処理により得られた混合物に、更なる成分を加えて、組成物を調製してもよい。
【0047】
[添加剤]
組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、(E)アルキレン単位が炭素数2~4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基であるポリオキシアルキレングリコール及び/又はその誘導体、(F)希釈剤、(G)接着付与剤及び(H)白金系触媒の抑制剤等からなる群より選択される1以上の添加剤を含むことができる。これらは、それぞれ単独でも、2種以上の組合せであってもよい。
【0048】
組成物は、(E)アルキレン単位が炭素数2~4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基であるポリオキシアルキレングリコール及び/又はその誘導体を含むことができる。組成物が(E)を含むと、組成物のチクソ性をコントロールでき、特定の範囲内に吐出する際の組成物の吐出性と、塗布後の範囲外への流動抑制とのバランスとることができる。
【0049】
ポリオキシアルキレングリコール及び/又はその誘導体としては、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル等が挙げられる。末端の置換基の炭素原子数は特に限定されないが、シリカとの相互作用が大きく、組成物のチクソ性をコントロールしやすい点で、炭素原子数1~4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好ましい。
【0050】
(E)は、ポリオキシアルキレングリコールであるのが好ましく、ポリオキシエチレングリコール又はポリオキシプロピレングリコールであるのがより好ましく、塗膜の防湿性の点で、ポリオキシプロピレングリコールが特に好ましい。複数のアルキレン基は同一であっても、異なっていてもよいが、少なくともプロピレン基を含んでいることが好ましい。
【0051】
(E)ポリオキシアルキレングリコール及び/又はその誘導体の数平均分子量は、500~10,000であると好ましく、より好ましくは600~8,000であり、さらに好ましくは800~6,000であり、特に好ましくは800~4,000である。数平均分子量がこの範囲であると、吐出性及び塗布後の組成物の形状維持が良好となりやすい。
【0052】
組成物が(F)希釈剤を含むことで、組成物の粘度が調整される。(F)は、硬化反応に関与するアルケニル基及び水素原子を含有しないシリコーンオイルである。(F)は、直鎖状又は分岐状であり、直鎖状であるのが好ましい。直鎖状である(F)としては、両末端がM単位で閉塞され、中間単位がD単位からなるポリジメチルシロキサン型のシリコーンオイルが挙げられる。
【0053】
組成物が(G)接着付与剤を含むことで、組成物と基材との接着力がより向上する。(G)接着付与剤として、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシランのようなジ、トリ、テトラアルコキシシラン類;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピル(メチル)ジエトキシシランのような3-グリシドキシプロピル基含有アルコキシシラン類;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシランのような2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基含有アルコキシシラン類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、メチルビニルジメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、メチルアリルジメトキシシランのようなアルケニルアルコキシシラン類;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピル(メチル)ジメトキシシランのような(メタ)アクリロキシプロピルアルコキシシラン類;1,1,3,5,7-ペンタメチルシクロテトラシロキサンと3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランとの反応生成物などの更なる有機ケイ素化合物が挙げられる。
【0054】
更なる有機ケイ素化合物として、例えば、具体的には、下記式:
【化3】

(式中、Q及びQは、互いに独立して、アルキレン基、好ましくはC-Cアルキレン基を表し、Rは、C-Cアルキル基を表す)で示される側鎖を有する有機ケイ素化合物が挙げられる。
【0055】
このような更なる有機ケイ素化合物としては、下記の化合物が好ましい。
【化4】
【0056】
組成物が(H)白金系触媒の抑制剤を含むことで、組成物の硬化速度が調整される。(F)白金系触媒の抑制剤は、アセチレン性シラン、3-ヒドロキシ-1-プロペニル(OH-C(CH-CH=CH-)基を有するオレフィン性シロキサン及びビニルオルガノシロキサンからなる群より選択される1種以上が挙げられる。このような白金系触媒の抑制剤は、特開昭52-47053号公報に記載されている。
【0057】
(組成等)
組成物において、H/Viは、紫外線の照射により硬化物が得られる限り特に限定されないが、0.2~3.0であるのが好ましく、0.3~2.5であるのがより好ましく、0.4~2.0であるのが特に好ましい。ここで、Viは、(A)のアルケニル基のモル数であり、Hは、(B)のケイ素に結合した水素原子のモル数である。
【0058】
組成物における(C)の含有量は、適切な硬化速度の確保の観点から、(A)100質量部に対して、白金族金属原子換算で、好ましくは0.1~1000重量ppm、より好ましくは0.5~200重量ppmである。
【0059】
組成物における(D)の含有量は、(A)100質量部に対して、0.5~40質量部であるのが好ましく、より好ましくは2~30質量部であり、特に好ましくは4~20質量部である。(D)の含有量が0.5質量部以上であると、組成物のチクソ性がより向上する。(D)の含有量が40質量部以下であると、樹脂組成物の吐出性が向上し、作業性がより高まる。
【0060】
組成物における(E)の含有率は、0.001~1.0質量%であるのが好ましく、0.002~0.5質量%であるのがより好ましく、0.003~0.3質量%であるのが特に好ましい。
【0061】
組成物は、アルケニル基含有ポリオルガノシロキサンが(A)のみからなることが好ましく、この場合、組成物は、(A)以外のアルケニル基含有ポリオルガノシロキサンを含まない。また、組成物は、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンが(B)のみからなることが好ましく、この場合、組成物は、(B)以外のポリオルガノハイロドジェンシロキサンを含まない。
【0062】
組成物は、(A)、(B)、(C)及び(D)、並びに任意成分を配合することにより得ることができる。組成物は、(A)、(C)及び(D)を含み、(B)を含まない第1部分と、(A)、(B)及び(D)を含み、(C)を含まない第2部分とからなる、二剤型の組成物であるのが好ましい。そして、第1部分と第2部分とを混合し、均一な組成物とすることが好ましい。組成物は、紫外線の照射によって(C)による硬化反応が促進されるため、紫外線が照射されていない場合は、(C)及び(D)が共存している場合であっても、保存安定性に優れる。そのため、第1部分と第2部分において、(A)及び(D)の量をほぼ同じ量とすることができる。これにより、第1部分と第2部分の混合比を厳密に特定する必要がなく、作業性に優れる。なお、任意成分は適宜添加することができる。
【0063】
組成物は、23℃における粘度が、塗布時の展延性の点から、1,000,000mPa・s以下であるのが好ましく、50mPa・s~5,000,000mPa・sであるのが特に好ましい。組成物が、第1部分及び第2部分からなる二剤型の組成物である場合、第1部分及び第2部分の粘度は、10mPa・s~100,000mPa・sであるのが好ましく、50mPa・s~50,000mPa・sであるのがより好ましく、100mPa・s~20,000mPa・sであるのが特に好ましい。
【0064】
組成物は、23℃での、せん断速度10(1/s)における粘度:V10、及び、せん断速度10(1/s)の測定時と同一のプレートを使用し、せん断速度1(1/s)にて測定した粘度:V1から求めた、式:V1/V10の値であるチキソトロピー比が、1~6であるのが好ましい。チキソトロピー比が、この範囲にあると、吐出性の確保が容易で、かつ塗布後の流動抑制が可能である。チキソトロピー比は、より好ましくは、1.2~5であり、特に好ましくは、1.5~4である。
【0065】
組成物は、紫外線を照射することによって、硬化させることができる。(C)の反応可能な範囲の波長領域のランプとしては、例えば、ウシオ電機株式会社製の高圧水銀ランプ(UV-7000)、メタルハライドランプ(MHL-250、MHL-450、MHL-150、MHL-70)、韓国:JM tech社製のメタルハライドランプ(JM-MTL 2KW)、三菱電機株式会社製の紫外線照射灯(OSBL360)、日本電池株式会社製 紫外線照射機(UD-20-2)、株式会社東芝製蛍光ランプ(FL-20BLB))、Fusion社製のHバルブ、Hプラスバルブ、Dバルブ、Qバルブ、Mバルブ等が挙げられる。照射量は、100~10,000mJ/cmが好ましく、より好ましくは300~5,000mJ/cmであり、さらに好ましくは500~3,500mJ/cmである。
【0066】
組成物は、画像表示装置におけるダム材組成物として用いることができる。ダム材組成物は、画像表示装置の表示部又は保護部に枠を形成するために用いられ、この枠内に封止剤を適用することにより、封止剤が、表示部等からはみ出したりすることを防止することができる。例えば、液晶パネル上に、本組成物をディスペンシング機の吐出ノズル(例えば23Gなど吐出量に合わせて適宜選択可能)で、縁取りを行い、その後充填剤である材料を塗布しカバーパネルと貼り合わせることにより、充填剤の液晶パネル裏へ回り込みを防ぎ、周辺部への汚染を防ぐことができる。組成物は、表示部又は保護部のどちらにも好適に適用することができる。
【0067】
組成物は、画像表示パネルが5~100インチ、より好ましくは7~80インチ、さらに好ましくは10~60インチの大画面画像表示装置の製造に好適であり、あるいは、画像表示装置が、好ましくは10~500μm、より好ましくは20~450μm、さらに好ましくは50~400μmであるような、超薄型の画像表示装置の製造に好適である。
【0068】
組成物がダム材組成物である場合、画像表示装置において保護部と画像表示部との間に介在させる封止剤が、紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物であるのが好ましい。このような、封止剤として用いる紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物としては、例えば、WO2012/086402に記載の組成物を用いることができる。そして、画像表示装置用シール剤を画像表示部と保護部の間に介在させ、紫外線照射により硬化させて、画像表示部と保護部とを封止することができる。よって、画像表示部と保護部との封止に、組成物を用いてなる、画像表示装置組成物は、本発明の対象である。
【実施例
【0069】
次に、実施例、参考例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。表示は、特に断りがない限り、重量部、重量%である。表1~表4において、「MIX」は「(A)」及び「(B)」の合計に対する量を意味する。
【0070】
<使用した成分>
A:両末端がM単位で閉塞され、中間単位がD単位からなるポリメチルビニルシロキサン(23℃での粘度12,000mPa・s)
B-1:M20で示される直鎖状ポリメチルハイドロジェンシロキサン(23℃での粘度20mPa・s)
B-2:平均単位式がM で示されるポリメチルハイドロジェンシロキサン(有効水素量:1重量%)
C:(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金錯体(白金含有量:1重量%)
d-1:BET比表面積200m/gの煙霧質シリカ(AEROSIL 200、日本アエロジル製)を、ヘキサメチルジシラザンで処理した煙霧質シリカ:BET比表面積135m/g、pH6.8、炭素含有量3.9質量%
d-2:オクタメチルシクロテトラシロキサンで処理した煙霧質シリカ:BET比表面積145m/g(AEROSIL R104、日本アエロジル製)、pH4.7、炭素含有量1.4質量%
d-3:未処理の煙霧質シリカ:BET比表面積200m/g(AEROSIL 200(日本アエロジル製))、pH4.1、炭素含有量0質量%
E:ポリプロピレングリコール(数平均分子量:2,000):サンニックス PP-2000(三洋化成工業株式会社製)
【0071】
(1)(A)及び(B)の調製
表1に示す(A)中のA、d及びdに対して20重量%のヘキサメチルジシラザンを、所定の固練り(Aの重量/dの重量)となるようにして配合し、窒素下で1時間混合した。150℃で2時間加熱混合し、さらに150℃で2時間加熱減圧混合し、シリコーンゴムベース(即ち、A及びヘキサメチルジシラザンの混合物で表面処理されたシリカ粒子とAとを含む混合物)を得た。このシリコーンゴムベースに(A)中の残りの成分(即ち、C及びE)を加え、室温にて均一になるまで混合し、二剤型の一方の成分である(A)を得た。(B)についても同様にして得た。ここで、(B)における前記残りの成分は、B及びEである。比較例については、表面処理剤を用いなかったことを除き、上記と同じである。
【0072】
(2)粘度の測定
レオメータ(HAAKE6000)(サーモフィシャー製)を用いて、23℃における粘度をプレート(C20/1°)により測定した。せん断速度10(1/s)および1(1/s)で1分間測定を行った。
(A)及び(B)の各部分については、(A)及び(B)を製造した直後、室温で0時間、70℃で5日間、及び、70℃で7日間の条件で保存した後、(A)、(B)、及び、(A)と(B)とを合わせて得られた組成物(MIX)について、粘度を測定した。
組成物(MIX)については、(A)と(B)の2液を混合後に吐出し、紫外線を照射していない状態で、1分後、30分後及び60分後での粘度を測定した。
(3)形状安定性(チクソ比)
チクソ比は、「(2)粘度の測定」で測定した、1(1/s)と10(1/s)の粘度を用いて、以下の式を用いて求めた。
1(1/s)÷10(1/s)=チクソ比
【0073】
(4)針入度
(A)及び(B)を製造した直後、室温で0時間、70℃で5日間、及び、70℃で7日間の条件で保存した。その後、(A)と(B)とを合わせて得られた組成物(MIX)について、針入度を測定した。
組成物(MIX)を2枚のガラス板(13cmx26cmx5mm)の間に1mmのスペーサを入れて挟み込み、ウシオ電機株式会社製:UVL-4001Mを用い、120w/cmの紫外線エネルギー照射量、積算光量4,000mJ/cmにて硬化させることにより、組成物の硬化物を得た。硬化した組成物を切り取り14枚重ね合せて、室温(23℃)において、JIS K 6249により、1/4コーンを用いて、針入度を測定した。
【0074】
結果を表1~表3にまとめる。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
【表3】
【0078】
参考例1、実施例2、参考例3では、(A)及び(B)を製造した直後に、並びに、(A)及び(B)を製造し、これらを70℃で5日間及び7日間で保存した後であっても、(A)及び(B)を合わせて得られた組成物は、粘度の増加が抑えられており、保存安定性に優れていた。また、参考例1、実施例2、参考例3では、(A)及び(B)の単独についても、同様であった。
一方、比較例において、原料シリカを処理するための表面処理剤が、一分子中に、ケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有する、ポリオルガノシロキサンと有機ケイ素化合物との混合物ではないため、得られる(A)及び(B)、並びにこれらを合わせた組成物の保存安定性に問題があった。
比較例1では、室温で(A)及び(B)を製造した直後に、これらを合わせて得られた組成物は、30分経過後に粘度が増加していた。また、比較例1について、(A)及び(B)を製造し、これらを70℃で5日間保存した後は、(A)及び(B)の単独においても粘度が増加していた。そして、これらを合わせて得られた組成物は、時間の経過と共に粘度が非常に増加していた。さらに、比較例1について、(A)及び(B)を製造し、これらを70℃で7日間保存した後は、(A)及び(B)の単独においても粘度が増加していた。そして、これらを合わせて得られた組成物は、粘度の増加が著しく、吐出ができなかった。
比較例2は、比較例1に比べて、(A)、(B)及びこれらの合わせて得られた組成物の粘度の増加は抑えられていたが、比較例1と同様の傾向であった。