(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】データ処理装置および埋設物検出装置
(51)【国際特許分類】
G01V 3/12 20060101AFI20231106BHJP
G01S 13/88 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
G01V3/12 B
G01S13/88 200
(21)【出願番号】P 2018171756
(22)【出願日】2018-09-13
【審査請求日】2021-02-24
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129012
【氏名又は名称】元山 雅史
(72)【発明者】
【氏名】足立 達哉
【合議体】
【審判長】石井 哲
【審判官】上田 泰
【審判官】渡戸 正義
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-72332(JP,A)
【文献】特開平1-227980(JP,A)
【文献】特開2000-338255(JP,A)
【文献】特開2004-12349(JP,A)
【文献】特開2006-98112(JP,A)
【文献】特開2002-214356(JP,A)
【文献】特開2001-33548(JP,A)
【文献】特開平9-288188(JP,A)
【文献】特開平10-268060(JP,A)
【文献】特開2002-107449(JP,A)
【文献】特開2000-145368(JP,A)
【文献】特開平11-248832(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0156776(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0012411(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
G01V 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の表面を移動しながら前記対象物に向かって放射した電磁波の反射波に関するデータを用いて前記対象物内の埋設物を検出するためのデータ処理装置であって、
移動に伴ったタイミング毎に計測された反射波に関するデータを受信する受信部と、
前記受信部において受信した前記対象物の内部における前記反射波のデータの信号強度について、各々の前記タイミングにおける前記対象物の深さ方向の前記信号強度のピークを検出する信号強度ピーク検出部と、
各々の前記タイミングで検出された前記信号強度のピークにおける前記深さ
方向の深さ位置のうち、移動方向において所定間隔以内で連続している複数の前記信号強度のピークにおける深さ位置を、1つのグループとするグルーピング部と、
前記グループにおける複数の前記ピークの深さ位置の変化として、移動方向における前記ピークの上昇傾向あるいは下降傾向の連続性が損なわれるか否かに基づいて、前記グループの波形に含まれるノイズの除去を行うノイズ除去部と、
前記ノイズが除去された前記グループに基づいて、前記埋設物の有無の検出を行う埋設物検出部と、を備え、
前記埋設物検出部は、
前記移動方向と前記深さ方向における平面において、前記グループが所定の山形状となっているか否かを判定し、前記所定の山形状であると判定された場合、前記埋設物が存在すると判定し、前記所定の山形状ではないと判定された場合、前記埋設物が存在しないと判定する形状判定部を有する、
データ処理装置。
【請求項2】
前記グルーピング部は、前記移動方向において、所定の前記タイミングにおける前記ピークの深さ位置の
、所定の
前記タイミングの1つ前のタイミングで取得されたデータの前記ピークの深さ位置からの位置変化が、前記深さ方向への位置変化または表面方向への位置変化のいずれの方向への位置変化であるかを判定し、
前記ノイズ除去部は、所定数の隣り合う前記ピークの前記深さ位置における前記位置変化の方向に基づいてノイズを除去する、
請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記ノイズ除去部は、
所定の前記ピークの前記深さ位置を含む前記所定数の隣り合う前記ピークの前記深さ位置における前記位置変化の方向が一致する場合には、一致した位置変化の方向
を所定の
前記深さ位置におけるノイズ除去処理後の位置変化の方向の結果として採用し、
前記所定数の隣り合う前記ピークの前記深さ位置における位置変化の方向が一致しない場合には
、所定の
前記ピークの1つ前のタイミングで取得されたデータの前記ピークの前記深さ位置におけるノイズ除去処理後の位置変化の方向の結果を、前記所定のピークの前記深さ位置におけるノイズ除去処理後の位置変化の方向の結果として採用する、
請求項2に記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記形状判定部は、
前記移動方向に沿って、前記信号強度のピークの前記深さ位置が所定量以上、連続して浅くなる第1条件と、
前記移動方向に沿って、前記
信号強度のピークの前記深さ位置が所定量以上、連続して深くなる第2条件と、
前記グループの深さ位置の幅が所定量以上である第3条件の全ての条件を満たした場合に、前記グループが山形状の波形であると判定する、
請求項1から3のいずれか1項に記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記埋設物検出部は、
前記第1条件および前記第2条件を満たすが、前記第3条件を満たさない場合、前記グループにおける全ての前記ピークの各々の前記信号強度に基づいて、前記埋設物の有無を判定する信号強度判定部を更に有する、
請求項4に記載のデータ処理装置。
【請求項6】
前記形状判定部は、山形状であると判定された前記グループの前記深さ位置のピークを検出する、
請求項1から5のいずれか1項に記載のデータ処理装置。
【請求項7】
請求項6記載のデータ処理装置と、
前記山形状のグループを表示可能な表示部と、を備え、
前期表示部には、前記山形状のグループとともに前記検出された位置のピークを示す表示が行われる、
埋設物検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ処理装置および埋設物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート内の埋設物を探索する装置として、コンクリートの表面を移動させながら、コンクリートに向かって放射した電磁波の反射波から埋設物を検出するウォールスキャナが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
従来のウォールスキャナでは、フーリエ変換による周波数解析を用いたノイズ成分の除去方法や各軸方向の縞状ノイズ成分を抽出し、データから除去するフィルタリング処理が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記周波数解析を用いたフィルタリング処理では、埋設物の周囲の材質変化(例えばコンクリート壁等の材質の違い)によるノイズ成分の除去が困難になるとともに、処理速度が大きくなりリアルタイムに埋設物の検出をすることが出来なかった。
本発明の目的は、埋設物の周囲に材質変化がある場合でもノイズ成分を除去することが可能であり、リアルタイムに埋設物を検出することが可能なデータ処理装置および埋設物検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明にかかるデータ処理装置は、対象物の表面を移動しながら対象物に向かって放射した電磁波の反射波に関するデータを用いて対象物内の埋設物を検出するためのデータ処理装置であって、受信部と、信号強度ピーク検出部と、グルーピング部と、ノイズ除去部と、埋設物検出部と、を備える。受信部は、移動に伴ったタイミング毎に計測された反射波に関するデータを受信する。信号強度ピーク検出部は、各々のタイミングにおける対象物の深さ方向の信号強度のピークを検出する。グルーピング部は、各々のタイミングで検出された信号強度のピークにおける深さ位置のうち、移動方向において所定間隔以内で連続している複数の信号強度のピークにおける深さ位置を、1つのグループとする。ノイズ除去部は、グループにおける複数のピークの深さ位置の変化に基づいて、グループに対してノイズの除去を行う。埋設物検出部は、ノイズが除去されたグループに基づいて、埋設物の有無の検出を行う。
【0006】
このように周波数変換等を用いずに、ピークの深さ位置の変化に基づいてノイズを除去するため、埋設物の周囲に材質変化がある場合でも処理速度が速くリアルタイムに埋設物の検出を行うことができる。
また、ノイズを除去することにより、埋設物の有無の検出をより正確に検出することができる。
【0007】
第2の発明にかかるデータ処理装置は、第1の発明にかかるデータ処理装置であって、グルーピング部は、移動方向において、所定のタイミングにおけるピークの深さ位置の、所定のタイミングの前のタイミングにおけるピークの深さ位置からの位置変化が、深さ方向への位置変化または表面方向への位置変化のいずれの方向への位置変化であるかを判定する。ノイズ除去部は、所定数の隣り合うピークの深さ位置における位置変化の方向に基づいてノイズを除去する。
これにより、例えば深さ位置が深くなっている最中に突然浅くなるようなノイズが発生した場合に、そのノイズを除去することができる。
【0008】
第3の発明にかかるデータ処理装置は、第2の発明にかかるデータ処理装置であって、ノイズ除去部は、所定のピークの深さ位置を含む所定数の隣り合うピークの深さ位置における位置変化の方向が一致する場合には、一致した位置変化の方向を所定の深さ位置におけるノイズ除去処理後の位置変化の方向の結果として採用し、所定数の隣り合うピークの深さ位置における位置変化の方向が一致しない場合には、所定のピークの前のピークの深さ位置におけるノイズ除去処理後の位置変化の方向の結果を、所定のピークの深さ位置におけるノイズ除去処理後の位置変化の方向の結果として採用する。
これにより、例えば深さ位置が深くなっている最中に突然浅くなるようなノイズが発生した場合に、そのノイズを除去することができる。
【0009】
第4の発明にかかるデータ処理装置は、第1の発明にかかるデータ処理装置であって、埋設物検出部は、形状判定部を有する。形状判定部は、移動方向と深さ方向における平面において、グループが所定形状となっている場合、埋設物が存在すると判定し、所定形状ではない場合、埋設物が存在しないと判定する。
このように、移動方向に連続してピークが続き、その形状が所定形状である場合に、埋設物が存在していると判定することができる。なお、所定形状は、例えば山形状が挙げられる。
【0010】
第5の発明にかかるデータ処理装置は、第4の発明にかかるデータ処理装置であって、所定形状とは、山形状であり、形状判定部は、移動方向に沿って、信号強度のピークの深さ位置が所定量以上、連続して浅くなる第1条件と、移動方向に沿って、ピークの深さ位置が所定量以上、連続して深くなる第2条件と、グループの深さ位置の幅が所定量以上である第3条件の全ての条件を満たした場合に、グループが山形状の波形であると判定する。
このように3つの条件を満たす場合に、山形状の波形であると判定でき、埋設物の有無を判定することができる。
【0011】
第6の発明にかかるデータ処理装置は、第5の発明にかかるデータ処理装置であって、埋設物検出部は、信号強度判定部を更に有する。信号強度判定部は、第1条件および第2条件を満たすが、第3条件を満たさない場合、グループにおける全てのピークの各々の信号強度に基づいて、埋設物の有無を判定する。
埋設物の形状によっては波形が平らな山形状になる場合(第1条件および第2条件は満たすが、第3条件を満たさない場合)があるが、そのような場合であっても、信号強度に基づいて埋設物の有無を判定することができる。
【0012】
第7の発明にかかるデータ処理装置は、第5または第6の発明にかかるデータ処理装置であって、形状判定部は、山形状であると判定されたグループの深さ位置のピークを検出する。
このように山形状の波形のピーク位置を検出することにより、埋設物の位置を検出することができる。
【0013】
第8の発明にかかる埋設物検出装置は、第7の発明にかかるデータ処理装置と、表示部と、を備える。表示部は、山形状のグループを表示可能である。表示部には、山形状のグループとともに検出された位置のピークを示す表示が行われる。
【0014】
このように、検出したピーク位置を表示部に表示することにより、ユーザーは容易に埋設物の位置を認識することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、埋設物の周囲に材質変化がある場合でもノイズ成分を除去することが可能であり、リアルタイムに埋設物を検出することが可能なデータ処理装置および埋設物検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明にかかる実施の形態における埋設物検出装置の構成を示す斜視図。
【
図2】
図1の埋設物検出装置の構成を示すブロック図。
【
図3】
図2のパルス制御モジュールの構成を示すブロック図。
【
図4】
図3のMPUが取得する反射波のデータを示す図。
【
図5】
図2のメイン制御モジュールの構成を示すブロック図。
【
図6】(a)ゲイン調整を行う前の画像データを示す図、(b)ゲイン調整処理後の画像データを示す図。
【
図7】(a)差分処理を行う前の画像データを示す図、(b)差分処理後の画像データを示す図。
【
図8】(a)移動平均処理を行った後の画像データを示す図、(b)
図8(a)のラインL1のRFデータの信号強度を示す図。
【
図10】増減判定部41における処理を説明するための図。
【
図12】(a)~(d)グルーピング部による処理を説明するための図。
【
図13】グルーピングされた複数のピークの位置を示す図。
【
図14】
図13に示すNo.1~No.15までの隣り合うピークの位置の変化を示す図。
【
図16】石膏ボード越しに板状の木材をスキャンする状態を示す図。
【
図17】
図16のスキャンによって検出された画像データを示す図。
【
図18】
図17に示すような画像データを説明するために模式的に示した図。
【
図19】
図2の表示部に表示させる画像データを示す図。
【
図20】インパルス制御モジュールの処理を示すフロー図。
【
図21】メイン制御モジュールの処理を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態に係る埋設物検出装置について図面に基づいて説明する。
<1.構成>
(1-1.埋設物検出装置1の概要)
図1は、本発明に係る実施の形態における埋設物検出装置1をコンクリート100上に配置した状態を示す斜視図である。
図2は、本実施の形態における埋設物検出装置1の概略構成を示すブロック図である。
【0018】
本実施の形態の埋設物検出装置1は、コンクリート100等の対象物の表面100aを移動しながら電磁波をコンクリート100に放射し、その反射波を受信して解析することによって、コンクリート100内の埋設物101a、101b、101c、101dの位置を検出する。移動方向が、矢印Aで示されている。
図1では、埋設物101a、101b、101c、101dは、鉄筋であり、例えば、表面100aから順に20cm、15cm、10cm、5cmの深さ位置に埋設されている。深さ方向が矢印Bで示されており、表面方向が矢印Cで示されている。
【0019】
埋設物検出装置1は、本体部2と、把手3と、車輪4と、インパルス制御モジュール5と、メイン制御モジュール6と、エンコーダ7と、表示部8と、を有する。
本体部2の上面に把手3が設けられている。本体部2の下部に4つの車輪が回転自在に取り付けられている。作業者は、コンクリート100内部の埋設物を検出する際には、把手3を把持して車輪4を回転させながら埋設物検出装置1をコンクリート100の表面100a上で移動させる。
【0020】
インパルス制御モジュール5は、コンクリート100に向けて電磁波を放射するタイミング、および放射した電磁波の反射波を受信するタイミング等の制御を行う。
エンコーダ7は、車輪4に設けられており、車輪4の回転に基づいてインパルス制御モジュール5に反射波の受信タイミングを制御するための信号を送信する。
メイン制御モジュール6は、インパルス制御モジュール5で受信された反射波に関するデータを受け取り、埋設物の検出を行う。
表示部8は、本体部2の上面に設けられており、埋設物101a、101b、101c、101dの位置を示す画像を表示する。
【0021】
(1-2.インパルス制御モジュール5)
図3は、インパルス制御モジュール5の構成を示すブロック図である。
インパルス制御モジュール5は、制御部10と、送信アンテナ11と、受信アンテナ12と、パルス発生部13と、ディレイ部14と、ゲート部15と、を有する。
【0022】
制御部10は、MPU(Micro Processing Unit)等によって構成されており、エンコーダ入力をトリガとして、パルス発生部13にパルスの発生を指令する。パルス発生部13は、MPUからの指令に基づいてパルスを発生し、送信アンテナ11に送る。送信アンテナ11は、パルスの周期に基づいて電磁波を一定周期で放射する。エンコーダ7の入力のタイミングが、タイミングの一例に対応する。
【0023】
受信アンテナ12は、放射された電磁波の反射波を受信する。ゲート部15は、ディレイ部14からのパルスを受信すると、受信アンテナ12で受信した反射波を取り込み、制御部10へと送信する。ディレイ部14は、所定間隔でゲート部15にパルスを送信し、反射波を取り込ませる。この所定間隔は、2.5msecピッチとなっている。
これにより、インパルス制御モジュール5は、エンコーダか7からの入力をトリガとして、送信アンテナ11から電磁波を複数回出力する。そして、インパルス制御モジュール5は、ディレイ部14によるディレイICを用いて受信タイミングを遅らせることで受信アンテナ12との距離ごとの受信データを取得することができる。
【0024】
図4は、MPUが取得する反射波のデータを示す図である。縦軸は、軸Oを中心として、-4096~+4096階調で受信信号の強度を示し、矢印方向がマイナス側を示す。横軸は、受信アンテナ12との距離を示し、矢印方向(深さ方向Bに対応)が受信アンテナ12からの距離が長いことを示す。また、距離が長いとは、深さが深いことに相当する。
【0025】
なお、詳しくは後述するが、
図4に示す波形W1には、コンクリート100内に照射されずにアンテナで反射した反射波も含まれる(p1等)ため、基準波形との差分を算出することにより、コンクリート100内からの反射波のデータの変化が抽出される。
また、
図4に示すデータは、エンコーダ7の入力があった後からエンコーダ7の入力が次にあるときまでのデータである。受信タイミングを除々に遅らせることによって、受信アンテナ12からの距離が長い位置からの反射波を受信するが、エンコーダ7からの入力があると、受信タイミングの遅延が元に戻され、再び受信タイミングを除々に遅らせる。すなわち、移動方向Aにおける所定の計測位置(エンコーダ7からの入力があった位置)における深さ方向Bの反射波を受信することになる。このような
図4に示すエンコーダ7の入力があった後から次のエンコーダの入力があるまでの反射波のデータを1ライン分のデータという。制御部10は、1ライン分のデータが貯まるごとに、その1ライン分のRF(Radio Frequency)データをメイン制御モジュール6へ送信する。
なお、埋設物検出装置1は動かされているため、計測位置は厳密に同じ位置ではなく、深さ方向Bもコンクリート100の表面100aに対して厳密に垂直な方向ではない。
【0026】
(1-3.メイン制御モジュール6)
図5は、メイン制御モジュール6の構成を示すブロック図である。
メイン制御モジュール6は、受信部21と、RFデータ管理部22と、前処理部23と、埋設物判定部24と、判定結果登録部25と、表示制御部26と、を有する。
【0027】
受信部21は、インパルス制御モジュール5から送信されるごとに、1ライン分のRFデータを受信する。
RFデータ管理部22は、受信部21が受信した1ライン分のRFデータを記憶する。
前処理部23は、1ライン分のデータ毎に、信号強度のピークを検出する。
埋設物判定部24は、前処理部23において検出された1ライン分のRFデータごとの信号強度のピークを用いて、埋設物の有無の判定を行う。また、埋設物判定部24は、埋設物101の位置を検出する。
判定結果登録部25は、埋設物判定部24によって検出された埋設物の位置をRFデータ管理部22に登録する。
表示制御部26は、移動方向Aと深さ方向Bの平面において信号強度を色で階調処理した画像、および埋設物101の位置を表示部8に表示させる制御を行う。
【0028】
(1-3-1.前処理部23)
前処理部23は、ゲイン調整部31と、差分処理部32と、移動平均処理部33と、一次微分処理部34と、チャタリング除去部35と、ピーク検出部36と、を有する。
【0029】
(a.ゲイン調整部)
ゲイン調整部31は、1ラインごとにRFデータに対してゲイン調整を行う。送信アンテナ11および受信アンテナ12からの距離が大きくなる(ディレイ時間が大きくなると)受信感度が弱くなるため、後述する画像を表示する際に白と黒の濃淡が少なくなる。そのため、ゲイン調整部31は、深さ位置が深いほど、信号強度に掛ける(増幅する)ゲイン値(×1~×20)を大きくする。
【0030】
図6(a)は、ゲイン調整を行う前の画像データを示す図である。
図6(a)に示す検出画像では、横軸が移動距離を示しており、矢印方向が移動方向Bへの移動を示している。縦軸が深さ位置を示しており、矢印方向が深い側を示している。
図6(a)に示す図は、
図4に示す1ラインごとの信号強度を白黒階調して縦軸方向に示し、さらに全てのラインの白黒階調したデータを横軸方向に示した検出画像である。なお、本実施の形態では、例えば、受信信号の強度が大きいほうが白く、受信信号が小さいほうが黒くなるように階調処理を行った。
【0031】
このため、
図6(a)に示す濃淡が信号強度を示している。また、白黒階調された1ラインの強度信号が点線で囲まれて示されている。
図6(b)は、
図6(a)の画像データにゲイン調整処理を行った画像データを示す図である。
図6(b)に示すように、ゲイン調整によって濃淡が強くなる。また、深い箇所のほうのゲイン値が高くなるため、RFデータの値が大きくなる。そのため、下部の画像データは全体的に白っぽくなる。白っぽくなっている部分が点線で囲まれて示されている。
【0032】
(b.差分処理部)
差分処理部32は、ゲイン調整したRFデータから、基準点との差分を算出することによって、変化した箇所のRFデータを抽出する。
図7(a)は、差分処理を行う前の画像データを示す図であり、
図7(b)は、差分処理を行った後の画像データを示す図である。
図7(a)は、
図6(b)を同じ画像データである。
【0033】
ここで、基準点は今まで取得したデータの平均値である。例えば、RFデータにおいて、m番目のラインの深さn(mm)の信号強度の基準点との差分を算出する場合には、1~m-1番目までのラインの深さn(mm)の信号強度の平均値を算出し、その平均値を、m番目のラインの深さn(mm)の信号強度から引く。この演算を、全てのラインの全ての深さ位置に対して行うことにより、
図7(b)に示すようにRFデータ信号の変化を明確にすることができる。
【0034】
(c.移動平均処理部)
移動平均処理部33は、差分処理を行ったRFデータについて、1ラインごとに移動平均処理を行う。本実施の形態では、例えば8点平均で移動平均処理を行うことができる。
図8(a)は、移動平均処理を行った画像データを示す図であり、
図8(b)は、
図8(a)のラインL1のRFデータの信号強度を示す図である。
図8(b)の横軸は深さ位置を示し、矢印方向に沿って深くなっている。
図8(b)の縦軸は信号強度を示し、矢印方向に沿って信号強度が強くなっている。
【0035】
なお、本実施の形態では、信号強度が強い方が白く階調され、信号強度が弱いほうが黒く階調される。また、本実施の形態では、下向きのピーク、すなわち黒色が最も濃くなっている位置を検出するため、
図8(a)のL1上の黒色部分をP1~P5で示す。このP1~P5が、
図8(b)にも示されている。また、
図8(b)には、P2とP3の間の上向きのピークがP10として示されている。
【0036】
(d.一次微分処理部34)
一次微分処理部34は、下向きのピークを検出するために、差分処理が行われたデータに対して一次微分処理を行う。一次微分処理部34は、所定の深さ位置における信号強度から、次の深さ位置における信号強度への差分を算出する。
図9は、
図8(b)のP10~P3の間の拡大図である。
図10は、
図9のグラフの信号強度および一次微分処理の結果の表150を示す図である。後述するが、
図10には、チャタリング処理の結果と、グラフ151も示されている。
【0037】
図10に示す表150の最も左の欄には、シーケンスナンバーが示されている。シーケンスナンバーが大きくなるに従って位置が深くなっている。左から2つ目の欄には、各シーケンスナンバーでの信号強度が示されている。左から3つ目の欄には、一次微分処理部34によって算出された差分が示されている。
シーケンスナンバーnの差分は、シーケンスナンバーn+1の信号強度からシーケンスナンバーnの信号強度を引いた値となっている。例えば、シーケンスナンバーが7番の差分は、8番目の信号強度(416)から7番目の信号強度(432)を引いた値(-15)となっている。
このように、一次微分処理部34は、1ラインの全てのデータに対して一次微分処理を行う。
【0038】
(e.チャタリング除去部35)
チャタリング除去部35は、一次微分処理が行われた結果に対してチャタリング除去処理を行う。
【0039】
図9に示すデータでは、領域R1において、全体として信号強度データが減少しているにもかかわらず、データD2が一つ前(浅い)のデータD1よりも大きくなっており、ノイズによるチャタリングが発生していることがわかる。また、領域R2において、データD3よりもデータD4、D5が小さくなっており、ノイズによるチャタリングが発生していることがわかる。このようなチャタリングは、コンクリート内に含まれる骨材の材質・粒度により反射波が変化することによって発生する。チャタリング除去部35は、このようなチャタリングの除去を行う。
【0040】
チャタリング除去部35は、各シーケンスナンバーの差分が正の値であるか負の値であるかを判定する。左から4つ目の欄には、正の変化(増加)であるか負の変化(減少)であるかが示されており、正(+)の変化の場合には1が示され、負(-)の変化の場合には-1が示されている。
すなわち、チャタリング除去部35は、所定の深さ位置から、より深い側の次の深さ位置への信号強度の変化が増加であるか減少であるかを判定する。
【0041】
ここで、
図10には、表150のハッチングで囲まれている部分のグラフ151が示されている。変化(+/-)を示す◆のデータでは、周囲が負(-)の変化にもかかわらずシーケンスナンバー11だけが正(+)の変化を示しており、シーケンスナンバー11にノイズによるチャタリングが発生していることがわかる。このシーケンスナンバー11の差分及び変化(+/-)の値は、
図9のデータD1~D2の間に対応する。
【0042】
また、周囲が負(-)の変化にもかかわらずシーケンスナンバー34、35が正(+)の変化を示しており、シーケンスナンバー34、35にノイズによるチャタリングが発生していることがわかる。このシーケンスナンバー34の差分および変化(+/-)の値は、
図9のデータD3~D4の間の変化に対応し、シーケンスナンバー35の差分および変化(+/-)の値は、
図9のデータD4~D5の間の変化に対応する。
【0043】
チャタリング除去部35は、上記変化(+/-)の値に対してチャタリングの除去処理を行う。表1の最も右側の欄には、チャタリング除去処理によるノイズ除去後の変化(+/-)の値が示されている。チャタリング除去部35は、連続する3つの値が全て0より大きい場合には正(+)の変化と判断し、連続する3つの値が全て0より小さい場合には負(-)の変化と判断し、それ以外はすべて前回の値を保持する。
【0044】
詳しく説明するとチャタリング除去部35は、シーケンスナンバーn番目の変化(+/-)とn+1番目の変化(+/-)とn+2番目の変化(+/-)が全て正の値(1)の場合には、n番目の変化(+/-)を正の値(1)と判断する。また、チャタリング除去部35は、シーケンスナンバーn番目の変化(+/-)とn+1番目の変化(+/-)とn+2番目の変化(+/-)が全て負の値(-1)の場合には、n番目の変化(+/-)を負の値(-1)と判断する。チャタリング除去部35は、シーケンスナンバーn番目の変化(+/-)とn+1番目の変化(+/-)とn+2番目の変化(+/-)の正負が一致しない場合、n-1番目の変化(+/-)を保持する。
【0045】
例えば、6番目の変化(+/-)の値は-1であり、7番目の変化(+/-)の値は-1であり、8番目の変化(+/-)の値は-1である。そのため、チャタリング除去部35は、6番目のチャタリング処理後の変化(+/-)の値を-1とする。
一方、チャタリングの発生した11番目の変化(+/-)の値は1であり、その次の12番目の変化(+/-)の値は-1であり、13番目の変化(+/-)の値は-1である。そのため、チャタリング除去部35は、10番目のチャタリング処理後の変化(+/-)の値である-1を、11番目の変化(+/-)の値として保持する。
【0046】
また、チャタリングの発生した34番目の変化(+/-)の値は1であり、その次の35番目の変化(+/-)の値は1であり、36番目の変化(+/-)の値は-1である。そのため、チャタリング除去部35は、33番目のチャタリング処理後の変化(+/-)の値である-1を、34番目の変化(+/-)の値として保持する。
また、チャタリングの発生した35番目の変化(+/-)の値は1であり、その次の36番目の変化(+/-)の値は-1であり、37番目の変化(+/-)の値は1である。そのため、チャタリング除去部35は、34番目のチャタリング処理後の変化(+/-)の値である-1を、35番目の変化(+/-)の値として保持する。
【0047】
グラフ151には、チャタリング処理後の変化(+/-)を示す■のデータでは、シーケンスナンバー11の変化(+/-)の値が負(-)の変化に変更され、シーケンスナンバー34、35変化(+/-)の値が正(+)の変化に変更されており、チャタリングが除去されていることがわかる。
以上のようなチャタリング除去部35によるチャタリング除去処理が、ラインのRFデータ毎に行われる。
【0048】
(f.ピーク検出部)
ピーク検出部36は、チャタリング除去処理を行った後の1ラインのRFデータのピークを検出する。本実施の形態では、下向きのピーク(黒色のピーク)が埋設物の位置を示すため、下向きのピークを検出する。このため、ピーク検出部36は、チャタリング除去処理後の変化が、負の変化から正の変化に変わるポイントをピークとして検出する。具体的には、
図10の表T1に示すように、シーケンスナンバー36におけるチャタリング除去処理後の変化が負(-)の変化となっており、シーケンスナンバー37におけるチャタリング除去処理後の変化が正(+)の変化となっていることから、ピーク検出部36は、シーケンスナンバー37の深さ位置において信号強度が下向きのピークとなっていると検出する。
【0049】
(1-3-2.埋設物判定部24)
埋設物判定部24は、
図5に示すように、グルーピング部51と、チャタリング除去部52と、形状判定部53と、信号強度判定部54と、を有する。グルーピング部51は、ピーク検出部36によって検出された複数のピークのうち、移動距離に対して連続したピークをグループとして検出する。チャタリング除去部52は、グループのチャタリングを除去する。形状判定部53は、グループが山形状であるか否かに基づいて埋設物の有無を判定し、埋設物が存在すると判定した場合には、グループにおける深さ位置のピークを検出し、埋設物の位置とする。信号強度判定部54は、山形状と判定されなかった場合に、グループの信号強度に基づいて埋設物の有無を判定する。
【0050】
(a.グルーピング部51)
グルーピング部51は、ピーク検出部36によるピーク検出結果をグルーピングする。グルーピング部51は、過去のラインから順番にピーク検出結果の有無を確認する。その結果を始点として進行方向に対して連続するピーク検出の有無をチェックする。
図11は、前処理部23による前処理後の画像データを示す図である。
図11では、今回取得したラインL2が示されている。
図12(a)~(d)は、グルーピング部51による処理を説明するための図である。
【0051】
グルーピング部51は、最初に見つけたピークの位置QSを始点(
図11において●で示す)として、移動方向Bの5pixel以内且つ、上下の5pixel以内に次のラインのピークが存在するか否かを確認する。なお、ピークの位置Qを見つけたラインを現在のラインとする。
図12(a)は、ピークの位置QSを見つけた状態を示す。
図12(b)は、次のピークの位置Q2が、現在のラインのピークの位置QSの移動方向Bの5pixel以内且つ、上側5pixel以内に存在する場合を示す。
図12(b)では、ピークの位置が移動方向において上昇(浅い側に移動)していることになる。
図12(c)は、次のラインのピークの位置Q2が、現在のラインのピークの位置QSの移動方向Bの5pixel以内且つ、下側5pixel以内に存在する場合を示す。
図12(c)では、ピークの位置が移動方向において下降(深い側に移動)していることになる。
【0052】
続いて、ピークの位置Q2が存在するラインを現在のラインとして、ピークの位置Q2の移動方向Bの5pixel以内且つ、上下の5pixel以内に次のラインのピークが存在するか否かを確認する。このように、ラインのRFデータを受信するごとに、現在のラインを移動方向にずらしてピークの連続性を確認する。
そして、
図12(d)に示すように、次のラインのピークが、現在のラインのピークの位置Q3の移動方向Bの5pixel以内且つ、上下の5pixel以内に存在しない場合には、ピークの位置Qeをグループの終点(
図11で■で示す)とする。
以上のように、グルーピング部51は、ピークの位置のグルーピングを行う。
図11では、黒丸と黒四角の間が線で繋がれたグループ(例えばグループG1)が示されている。
【0053】
(b.チャタリング除去部52)
次に、チャタリング除去部52について説明する。後述する形状判定部53によってグループの形状の判定が行われるが、その前にチャタリングの除去が行われる。
図13は、グルーピングされた複数のピークの位置を示す図である。
図13では、移動後方Bにおいて、始点であるピークの位置Qsを1番目(No.1)とすると、周囲が上昇傾向であるのにもかかわらず、5番目(No.5)のピークの位置Q5が、4番目(No.4)のピークの位置Q4よりも下方(深い方向)に移動しており、チャタリングであることがわかる。このようなチャタリングがチャタリング除去部52によって除去される。
【0054】
図14は、
図13に示すNo.1~No.15までの隣り合うピークの位置の変化を示す図である。
図14では、n番目のピークの位置からn+1番目のピークの位置への変化について示す。n+1番目の位置がn番目の位置よりも上側(浅い側)に存在する場合、次点との差を正(+)の変化(表面方向Cへの位置変化)とする。また、n+1番目の位置がn番目の位置よりも下側(深い側)に存在する場合、次点との差を負(-)の変化(深さ方向Bへの位置変化)とする。
【0055】
例えば、2番目のピークの位置から3番目のピークの位置への変化では、
図13に示すように、3番目のピークの位置は、2番目のピークの位置よりも浅くなっているため、2番目から3番目への変化は正(+)の変化となる。
図14の表152に示すように、1番目と2番目の間、2番目と3番目の間、3番目と4番目の間、5番目と6番目の間、6番目と7番目の間、7番目と8番目の間が正の変化にもかかわらず、チャタリングのために4番目と5番目の間が負の変化となっている。
【0056】
チャタリング除去部52は、n~n+1番目の変化とn+1~n+2番目の変化とn+2~n+3番目の変化が全て正(+)の変化の場合には、n~n+1番目の変化を正(+)と判断する。また、チャタリング除去部52は、n~n+1番目の変化とn+1~n+2番目の変化とn+2~n+3番目の変化が全て負(+)の変化の場合には、n~n+1番目の変化を負(+)と判断する。チャタリング除去部52は、n~n+1番目の変化とn+1~n+2番目の変化とn+2~n+3番目の変化の正負が一致しない場合、n-1~n番目のチャタリング除去処理後の変化を、n~n+1番目のチャタリング除去処理後の変化として保持する。
【0057】
例えば、チャタリング除去部52は、1~2番目の変化と2~3番目の変化と3~4番目の変化が全て正(+)であるため、表153に示すように、1~2番目の変化を正(+)と判断する。
一方、チャタリング除去部52は、2~3番目の変化が正(+)であり、3~4番目の変化が正(+)であり、4~5番目の変化が負(-)であるため、2~3番目のチャタリング除去処理後の変化は、チャタリング除去処理後の1~2番目の変化の正(+)が保持される。
【0058】
また、チャタリング除去部52は、4~5番目の変化が負(-)であり、5~6番目の変化が正(+)であり、6~7番目の変化が正(+)であるため、4~5番目の変化は、3~4番目のチャタリング除去処理後の変化である正(+)が保持される。このように、5番目で発生していたチャタリングを除去することができる。
なお、チャタリング除去部52は、11~12番目の変化と12~13番目の変化と13~14番目の変化が全て正(-)であるため、11~12番目の変化を負(-)と判断する。
【0059】
(c.形状判定部53)
形状判定部53は、チャタリング除去処理後のグループの形状が所定の山形状であるか否かを判定する。
図15は、山形状と判定するための条件を示す図である。形状判定部53は、第1条件、第2条件、および第3条件の3つの条件を満たす場合に、グループが山形状であると判定する。
【0060】
図15に示すように、第1条件は、移動方向Aにおいて連続して5pixel以上、上方向(浅い方向)に上昇していることであり、第2条件は、移動方向Aにおいて連続して5pixel以上、下方向(深い方向)に下降していることであり、第3条件は、深さ方向の差が10pixel以上ある。
形状判定部53は、これら3つの条件を満たす場合に、グループの形状が山形状であると判定し、埋設物が存在すると判定する。
【0061】
一方、第1~第3条件のいずれか1つの条件でも満たさない場合には、形状判定部53は、埋設物が存在すると判定しない。
また、形状判定部53は、第1~第3条件までの判定を行う際に、グループの位置の上向きのピークも検出する。
形状判定部53は、最も浅くなっている位置をグループの頂点とし、その位置を記憶する。
形状判定部53は、位置の変化が増加から減少に変わるポイントをグループの頂点とする。例えば、
図14では、7番目から8番目の変化が正(+)であり、8番目から9番目の変化が負(-)であるため、
図13に示すように、8番目の位置がピークであると判定される。このピークの位置に埋設物が存在することが検出される。
【0062】
(d.信号強度判定部54)
埋設物の形状・材質の違いによって画像データ内の山の形状、特に頂点付近が平らになる場合があるため、山形状と判定するための条件(第1条件、第2条件、第3条件)に当て嵌まらない場合がある。例えば、
図16に示すように、石膏ボード201越しに板状の木材202をスキャンした場合、
図17の画像データのR3に示すように、頂点が平らになる。すなわち、
図18の画像データの模式図に示すように、第1条件および第2条件を満たすが、上下方向の幅が7pixelであるため第3条件を満たさない。
【0063】
このため、信号強度判定部54は、第1条件および第2条件を満たすが、第3条件を満たさない場合に、信号強度に基づいて、埋設物の有無を判定する。
信号強度判定部54は、グループにおける全ての受信強度の強さ(AD値)を確認する。なお、本実施の形態では、黒色が濃く出る場合には、AD値が小さい値(マイナス方向)になるように設定されている。
そして、グルーピングした全てのAD値が所定の閾値よりも小さい場合、すなわち、閾値よりも黒色が濃く出る場合に、埋設物が存在すると判断する。
【0064】
(1-3-3.判定結果登録部25)
判定結果登録部25は、埋設物判定部24で判定した結果(グループ、ピーク位置など)をRFデータ管理部22に登録する。
【0065】
(1-3-4.表示制御部26)
表示制御部26は、データ画像にグループ、ピーク位置などを示して、表示部8に表示させる。
図19は、表示部8に表示させる画像を示す図である。
図19では、縦軸が深さ方向を示し、横軸が移動距離を示す。また、グループが線として示され、グループにおける始点が黒色の三角で示され、終点が黒色の四角で示されている。また、形状判定部53で検出されたピークが×印で示されている。
【0066】
作業者はこの画像を確認して、ピークの位置に埋設物が埋まっていることを認識することができる。なお、
図19に示すピークpk1は、
図1に示す埋設物101aの位置を示し、ピークpk2は埋設物101bの位置を示し、ピークpk3は埋設物101cの位置を示し、ピークpk4は埋設物101dの位置を示す。
【0067】
<2.動作>
次に、本発明にかかる実施の形態の埋設物検出装置1の動作について説明する。
(2-1.インパルス制御モジュール処理)
図20は、インパルス制御モジュール5の処理を示すフロー図である。
インパルス制御モジュール処理が開始されると、ステップS1において、エンコーダ7から入力されると、ステップS2において、インパルス出力制御が開始され、パルス発生部13からのパルスに基づいて送信アンテナ11から一定周期(例えば、1MHz)で電磁波のパルスが出力される。
【0068】
次に、ステップS3において、ディレイ部14がDelayICにDelay時間を設定する。例えば、0~5120psecまで10psec単位でDelay時間を設定することができる。
次に、ステップS4において、制御部10は、受信アンテナ12からゲート部15を介して受信したRFデータをAD変換する。
【0069】
次に、ステップS5において、Delay時間が最大(例えば、5120psec)であるか否かが判断され、最大でない場合、制御がステップS3に戻る。このステップS3、S4、S5が繰り返されることにより、1ライン分のデータを取得することができる。
次に、ステップS6において、AD変換されたRFデータをメイン制御モジュール6に送信する。
【0070】
そして、ステップS7において、インパルス制御が停止される。
次に、作業者によって埋設物検出装置1が移動方向Aに移動されると、エンコーダ7からの入力があり、ステップS2~S7の制御が行われ、次の1ライン分のデータが取得され、メイン制御モジュール6に送信される。
【0071】
(2-2.メイン制御モジュール処理)
図21は、メイン制御モジュール6の処理を示すフロー図である。
はじめに、ステップS11において、受信部21がインパルス制御モジュール5から1ライン分のRFデータを受信すると、ステップS12において、埋設物の判定を行う前の前処理が、前処理部23によって行われる。
次に、ステップS13において、埋設物判定部24によって埋設物判定処理が行われる。
【0072】
次に、ステップS14において、埋設物判定部24によって判定された結果が、判定結果登録部25によって登録される。
次に、各ステップにおける処理について詳しく説明する。
【0073】
(2-2-1.前処理)
図22は、前処理を示すフロー図である。
はじめに、ステップS21において、ゲイン調整部31が1ライン分のRFデータについてゲイン調整を行う。
次に、ステップS22において、差分処理部32が、基準の値との差分を算出し、RFデータの変化が抽出される。
次に、ステップS23において、移動平均処理部33が差分処理された1ライン分のRFデータに対して移動平均処理を行う。例えば、8点平均を用いて移動平均処理を行うことができる。
【0074】
次に、ステップS24において、一次微分処理部34が、移動平均処理された差分結果に対して一次微分処理を行い、深さ方向において隣り合うデータ間の差分が正(増加)か負(減少)かの判定を行う。
次に、ステップS25において、チャタリング除去部35が、一次微分処理後のデータに対して、チャタリング除去処理を行う。
【0075】
最後に、ステップS26において、ピーク検出部36が、チャタリング除去処理が行われた判定結果を用いて信号強度のピークを検出する。
【0076】
(a.ゲイン調整処理)
次に、
図22のステップS21のゲイン調整処理について説明する。
図23は、ゲイン調整処理を示すフロー図である。
ゲイン調整処理が開始されると、ステップS31において、ゲイン調整部31が、受信部21で受信したRFデータのうち、シーケンスナンバー1の受信データを選択する。
そして、ゲイン調整部31がシーケンスナンバー1の信号強度のデータについてステップS32の処理を行った後、制御はステップS33に進む。
ステップS33では、シーケンスナンバーが最大値であるか否かが判定され、シーケンスナンバーが最大値でない場合には、制御はステップS31に戻り、シーケンスナンバーが1つ繰り上げられ、シーケンスナンバー2の受信データが選択される。そして、シーケンスナンバー2のデータについてステップS32の処理が行われる。
【0077】
このように、1ライン分のデータの全てに対してステップS32の処理が行われるまで繰り返される。
ステップS32では、各々シーケンスナンバーの信号強度のデータに対して所定倍率が掛けられる。
【0078】
例えば1ラインのRFデータのdelay時間の最も短いシーケンスNo.1のデータ(最も浅い位置のデータともいえる)に対して所定倍率を掛けると、シーケンスNo.1の次にdelay時間の短いシーケンスNo.2のデータに対して所定倍率が掛けられ、シーケンスNoが最大になるまでシーケンスナンバー順に所定倍率が掛けられる。具体的には、深さ方向に対して倍率を大きくしており、浅い側から1~25pixelのデータに対しては倍率を1倍とし、26~50pixelのデータに対しては倍率を2倍とし、51~75pixelのデータに対しては倍率を3倍とし、順に倍率を大きくし、500~511pixelのデータに対しては倍率を21倍と設定することができる。
このゲイン調整処理によって、
図6(b)に示す画像データのように、明暗を明確にすることができる。
【0079】
(b.差分処理)
次に、
図22のステップS22の差分処理について説明する。
図24は、差分処理を示すフロー図である。
差分処理が開示されると、ステップS41において、差分処理部32が、ゲイン調整されたRFデータのうち、シーケンスナンバー1の受信データを選択する。
そして、差分処理部32がシーケンスナンバー1のデータについてステップS42、S43の処理を行った後、制御はステップS44に進む。
ステップS44では、シーケンスナンバーが最大値であるか否かが判定され、シーケンスナンバーが最大値でない場合には、制御はステップS41に戻り、シーケンスナンバーが1つ繰り上げられ、シーケンスナンバー2の受信データが選択される。そして、シーケンスナンバー2のデータについてステップS42、43の処理が行われる。
【0080】
このように、1ライン分のデータの全てに対してステップS42、S43の処理が行われるまでフローが繰り返される。
ステップS42では、差分処理部32が、今回のラインまでの過去のゲイン調整した受信データ(過去受信した全ての受信データ)の平均値を算出する。
次に、ステップS43において、差分処理部32は、算出した平均値を基準点の値とし、その値と、今回のラインの受信データとの差分を算出する。
【0081】
次に、ステップS44において、差分処理部32は、シーケンスナンバーが最大値であるか否かを判定し、シーケンスナンバーが最大値でない場合には、制御はステップS41に戻り、1つ番号が繰り上げられてシーケンスナンバー2の受信データが選択される。
このように順次番号が繰り上げられ1ラインの全ての受信データに対して差分処理が行われるまで、ステップS42、S43が繰り返される。
【0082】
なお、m番目ラインのデータの差分処理を行う際には、m番目のラインの所定深さ位置における信号強度から、1~m―1番目の所定深さ位置における信号強度の平均値が引かれる。また、次のm+1番目のラインに対して差分処理を行う際には、1~m番目の信号強度の平均値が算出され、基準点の値が更新される。
この差分処理によって、
図7(b)に示す画像データのように、RFデータの変化を抽出することができる。
【0083】
(c.差分結果の一次微分処理)
次に、
図22のステップS23の差分結果の一次微分処理について説明する。
図25は、差分結果の一次微分処理を示すフロー図である。
差分結果の一次微分処理が開始されると、ステップS51において、一次微分処理部34が、差分結果のうち、シーケンスナンバー1の差分結果を選択する。
【0084】
次に、ステップS52において、一次微分処理部34は、差分結果の一次微分処理を行う。ここで、一次微分処理とは、深さ方向において、所定の位置の差分結果のデータと次の位置の差分結果のデータとの差を算出することである。すなわち、シーケンスナンバー1と、次のシーケンスナンバー2の差分が算出される。
次に、ステップS53において、シーケンスナンバーが最大値であるか否かが判定され、シーケンスナンバーが最大値でない場合には、制御はステップS51に戻り、1つ番号が繰り上げられ、シーケンスナンバー2の受信データが選択される。そして、シーケンスナンバー2とシーケンスナンバー3の差分が算出される。
【0085】
このように、1ライン分のデータの全てに対して一次微分処理が行われるまで、順次番号が繰り上げられ、ステップS52が繰り返される。
すなわち、シーケンスナンバーnの一次微分処理を行う場合には、シーケンスナンバーn+1の差分結果のデータから、シーケンスナンバーnの差分結果のデータを引くことによって、シーケンスナンバーnのデータに対して一次微分処理を行うことができる。
これによって、
図10の表150の左から4番目の欄の差分が算出される。
【0086】
(d.チャタリング除去処理)
次に、
図22のステップS24のチャタリング除去処理について説明する。
図26は、チャタリング除去処理を示すフロー図である。
チャタリング除去処理が開始されると、ステップS61において、チャタリング除去部35が、一次微分処理が行われたシーケンスナンバー1を選択する。
【0087】
そして、チャタリング除去部35が、シーケンスナンバー1のデータについて、ステップS62~S66のいずれかの制御を行った後、制御はステップS67に進む。
ステップS67では、シーケンスナンバーが最大値であるか否かが判定され、シーケンスナンバーが最大値でない場合には、制御はステップS61に戻り、1つ番号が繰り上げられ、シーケンスナンバー2の受信データが選択される。
【0088】
このように、1ライン分のデータの全てに対してチャタリング除去部35による処理が行われるまで、順次番号が繰り上げられ、ステップS62~S66のいずれかの処理が繰り返される。
ここで、n番目のデータについてチャタリング除去処理を行うとして、ステップS62~S66について説明する。
【0089】
ステップS62において、チャタリング除去部35は、連続する3つの1次微分結果が全て0よりも大きいか否かを判定する。シーケンスナンバーnが選択されているため、シーケンスナンバーn、n+1、n+2の一次微分結果が全て0以上の場合、チャタリング除去部35は、ステップS63において、シーケンスナンバーnについて、チャタリング除去処理後の一次微分結果を正(+)と記憶する。
【0090】
一方、ステップS62において、チャタリング除去部35は、連続する3つのシーケンスナンバーの1次微分結果の1つでも0以下の場合、ステップS64において、連続する3つの1次微分結果が全て0よりも小さいか否かを判定する。シーケンスナンバーnが選択されているため、シーケンスナンバーn、n+1、n+2の一次微分結果が全て0よりも小さい場合、チャタリング除去部35は、ステップS65において、シーケンスナンバーnについて、チャタリング除去処理後の一次微分結果を負(-)と記憶する。
【0091】
また、ステップS63において、チャタリング除去部35は、連続する3つの1次微分結果の1つでも0より大きい場合、制御はステップS66へと進む。
そして、ステップS66において、チャタリング除去部35は、前回のシーケンスナンバーの状態を、今回のシーケンスナンバーの状態として記憶する。シーケンスナンバーnが選択されているため、チャタリング除去部35は、シーケンスナンバーn-1について記憶したチャタリング除去処理後の正(+)または負(-)の結果を、シーケンスナンバーnのチャタリング除去処理後の結果として記憶する。
これによって、
図10の表150の最も右側のチャタリング処理後の変化を得ることができる。
【0092】
(e.ピーク検出処理)
次に、
図22のステップS25のピーク検出処理について説明する。
図27は、ピーク検出処理を示すフロー図である。
【0093】
ピーク検出処理が開始されると、ステップS71において、ピーク検出部36が、チャタリング除去処理が行われたシーケンスナンバー1を選択する。
そして、ピーク検出部36は、シーケンスナンバー1のデータについて、ステップS72、S73の制御を行った後、制御はステップS74に進む。
ステップS74では、シーケンスナンバーが最大値であるか否かが判定され、シーケンスナンバーが最大値でない場合には、制御はステップS71に戻り、シーケンスナンバーが1つ繰り上げられ、シーケンスナンバー2の受信データが選択される。そして、シーケンスナンバー2のデータについてステップS72、S73の処理が行われる。
【0094】
このように、1ライン分のデータの全てに対してチャタリング除去部35による処理が行われるまで、順次番号が繰り上げられ、ステップS72、S73の処理が繰り返される。
ここで、n番目のデータについてピーク検出処理を行うとして、ステップS72~S73について説明する。
【0095】
ステップS72において、ピーク検出部36は、チャタリング除去後の前回のシーケンスナンバーn-1の状態が負(-)で、今回のシーケンスナンバーnの状態が正(+)であるか否かを判定する。
そして、前回のシーケンスナンバーn-1の状態が負(-)で、今回のシーケンスナンバーnの状態が正(+)である場合、ピーク検出部36は、ステップS73において、n番目の座標を記憶する。座標は、例えば、ピクセルを単位とし、移動距離(ラインの番号ともいえる)と深さ位置で示すことができる。
これにより、上述したように、例えば、
図10の表150のシーケンスナンバー37をピークとして検出することができる。
【0096】
(2-2-2.埋設物判定処理)
次に、
図21のステップS13に示す埋設物判定処理について説明する。
図28は、埋設物判定処理を示すフロー図である。
埋設物判定処理が開始されると、はじめに、ステップS81において、グルーピング部51が、前処理部23で行われたピーク検出結果のグルーピング処理を行う。
【0097】
次に、ステップS82において、チャタリング除去部52が、グルーピングされたグループに対してチャタリング除去処理を行う。
次に、ステップS83において、形状判定部53または信号強度判定部54が埋設物判定処理を行う。
次に、ステップS84において、形状判定部53によって検出されたピークの位置に、表示制御部26が×印をつけて表示部8に表示させる。
【0098】
(a.ピーク検出結果のグルーピング処理)
図28のステップS81のピーク検出結果のグルーピング処理について説明する。
図29は、ピーク検出結果のグルーピング処理を示すフロー図である。
【0099】
はじめに、ステップS91において、グルーピング部51は、検出状態を“未検出”の状態とする。
過去に取得した全てのデータを対象とし、ステップS92では、グルーピング部51は、過去の古いデータを処理の対象として選択する。そして、ステップS103において、グルーピング部51は、今回取得したラインまでの過去に取得したデータの全てに対して処理を行ったか判定し、処理を行っていない場合、制御はステップS92へと戻り、次に古いデータが処理の対象とされる。このように、例えば、最も古いラインのシーケンスナンバー1から順にステップS93~ステップS102の処理が行われる。
【0100】
ステップS93において、グルーピング部51は状態が未検出であるか否かを判定する。はじめの状態は“未検出”であるため、制御はステップS94に進む。
ステップS94において、グルーピング部51は、所定範囲内にピークが検出された位置があるか否かを判定する。所定範囲にピークが検出されない場合には、制御はステップS103へと進む。所定範囲は適宜設定することができ、例えば、1つのラインに設定してもよいし、1つのラインのシーケンスナンバーで設定してもよい。
【0101】
このように、ステップS94において、古いデータから順番にピークが検出された位置があるか否かの判定が行われ、ピークが検出された位置がある場合に、ステップS95において、グルーピング部51は、検出状態を“検出中”とする。
次に、ステップS96において、グルーピング部51は、ピークを検出した点を記憶する。この点は、ピクセルを単位とする座標であり、例えば、移動距離(ラインの番号ともいえる)と深さ位置で示すことができる。なお、この点が、
図11及び
図19の始点(●)に対応する。
【0102】
次に、ステップ103およびステップS92を経て、次のデータが処理の対象とされる。
次に、ステップS93において、検出状態が“検出中”となっているため、制御はステップS97に進む。
ステップS97において、グルーピング部51は、ステップS96で記憶した位置から所定範囲内にピークを検出した位置があるか否かを判定する。この所定範囲内は、例えば、
図12(a)~
図12(d)で説明した移動方向5pixel以内であって、上下5pixel以内に設定することができる。ピークを検出した位置が所定範囲内に存在する場合には、ステップS98において、グルーピング部51は、連続した位置があるとして、その位置を記憶する。
【0103】
次に、ステップS99において、グルーピング部51は、前回のY座標(深さ位置)と今回のY座標(深さ位置)を比較する(
図14参照)。
次に、ステップS100において、グルーピング部51は、比較結果を正(+)または負(-)として記憶する。ここで、今回の深さ位置が前回の深さ位置よりも浅くなっている場合は、深さ位置が上昇しているとして正(+)が記憶される。また、今回の深さ位置が前回の深さ位置よりも深くなっている場合には、深さ位置が下降しているとして負(-)が記憶される。
【0104】
次に、ステップS97およびステップS92を経て、次のデータが処理の対象とされる。
次に、ステップS93において、検出状態が“検出中”となっているため、制御はステップS97に進む。
このステップS97では、前回にステップS98で記憶した点から所定範囲内に、ピークを検出した点が存在するか否かが検出され、存在する場合には、ステップS99において、その点が記憶される。そして、ステップS100において、前回の点と比較結果が記憶される。これにより、
図14に示すように連続している点が順次グループとされるとともに、次の点への変化が上昇または下降であるかも記憶される。
【0105】
そして、ステップS97において、所定範囲内にピークが検出されない場合には、制御はステップS101に進む。
ステップS101において、グルーピング部51は、連続する点がないと判断し、それまでの検出結果を保存する。なお、最後に検出された点が、
図11及び
図19の終点(■)に対応する。
次に、ステップS102において、グルーピング部51は、検出状態を“未検出”の状態とする。
そして、ステップS103において、過去に取得したラインの全てのデータについて処理が行われたと判断されると、処理が終了する。
【0106】
(b.チャタリング除去処理)
図28のステップS82のチャタリング除去処理について説明する。
図30は、チャタリング除去処理を示すフロー図である。
【0107】
チャタリング除去処理は、グルーピングした結果の全てのデータを対象として行われる。
チャタリング除去処理が開始されると、ステップS111において、チャタリング除去部52がグルーピングされたデータの始点側から順にデータを選択する。例えば、ステップS111において、チャタリング除去部52は、
図14に示す1番目から2番目への変化のデータを処理の対象とする。
【0108】
次に、ステップS112において、チャタリング除去部52は、連続する点の比較結果を読み出す。選択されたデータが1番目から2番目への変化の場合、1番目から2番目への変化と、2番目から3番目への変化と、3番目から4番目への変化のデータを読み出す。
次に、ステップS113において、チャタリング除去部52は、連続する3つの比較結果がすべて0よりも大きいか否かを判定する。
図14の表152に示すデータでは、1番目から2番目への変化と、2番目から3番目への変化と、3番目から4番目への変化が全て0よりも大きいため、チャタリング除去部52は、
図14の表153に示すように、チャタリング除去後の1番目から2番目への変化の状態を正(+)(浅い方向に上昇しているといえる)とする。
【0109】
次に、ステップS113において、チャタリング除去部52は、グルーピングした結果の全てのデータについて処理が行われたか否かについて判定し、処理が終了していない場合には、制御はステップS111に戻り、2番目から3番目への変化のデータを処理の対象として選択する。
このようにして、グルーピングした全てのデータの変化に対して処理が行われる。
【0110】
ステップS113において、連続する3つの比較結果のいずれか1つが0以下の場合には、制御はステップS115へと進み、チャタリング除去部52は、連続する3つの比較結果がすべて0よりも小さいか否かを判定する。11番目から12番目を処理の対象とした場合、
図14の表152では、11番目から12番目への変化と、12番目から13番目への変化と、13番目から14番目への変化が全て0よりも小さいため、チャタリング除去部52は、
図14の表153に示すように、チャタリング除去後の11番目から12番目への変化の状態を負(-)(深い方向に下降しているといえる)とする。
【0111】
一方、ステップS115において、連続する3つの比較結果のいずれか1つが0以上の場合、制御はステップS117へと進む。
ステップS117において、チャタリング除去部52は、チャタリング除去後の状態を前回の状態とする。例えば、4番目から5番目の変化を処理の対象とした場合、
図14では、4番目から5番目への変化が負(-)であり、5番目から6番目への変化が正(+)であり、6番目から7番目への変化が正(+)である。このため、4番目から5番目の変化の状態は、
図14の表153に示すように、前回である3番目から4番目のチャタリング処理後の状態である正(+)とされる。
【0112】
このように、チャタリング除去部52は、n~n+1番目の変化とn+1~n+2番目の変化とn+2~n+3番目の変化が全て正(+)の変化の場合には、n~n+1番目の変化を正(+)と判断する。また、チャタリング除去部52は、n~n+1番目の変化とn+1~n+2番目の変化とn+2~n+3番目の変化が全て負(+)の変化の場合には、n~n+1番目の変化を負(+)と判断する。チャタリング除去部52は、n~n+1番目の変化とn+1~n+2番目の変化とn+2~n+3番目の変化の正負が一致しない場合、n-1~n番目の変化を保持する。
【0113】
そして、ステップS118において、グルーピングした全てのデータについて処理が行われたと判断されると、処理が終了する。全てのデータについて処理が行われていない場合、制御はステップS111へと戻り、次のデータが選択される。
以上の処理により、
図14のチャタリング除去後の表153が得られる。
【0114】
(c.埋設物判定処理)
図28のステップS83の埋設物判定処理について説明する。
図31は、埋設物判定処理を示すフロー図である。
埋設物判定処理は、グルーピングした結果の全てのデータを対象として行われる。
埋設物判定処理が開始されると、ステップS121において、形状判定部53がグルーピングされたデータの始点側から順にデータを選択する。例えば、ステップS121において、形状判定部53は、
図14に示す1番目から2番目への変化のチャタリング除去後のデータを処理の対象とする。
【0115】
ステップS122において、形状判定部53は、1番目から2番目への変化のチャタリング除去処理後の結果を読み出す。
ステップS123において、形状判定部53は、チャタリング除去処理後の変化の結果が正(+)であるか否かを判定する。例えば、
図14に示す1番目から2番目への変化のチャタリング除去処理後の結果は正(+)であるため、制御はステップS124に進む。
【0116】
ステップS124では、形状判定部53は、-(マイナス)カウントを0に設定する。
次に、ステップS125において、形状判定部53は、+(プラス)カウントが0か否かを判定する。+(プラス)カウントが0であるため、制御はステップS126へと進む。
ステップS126では、形状判定部53は、1番目のY座標(深さ位置)を記憶し、始点を設定する。
【0117】
次に、ステップS127において、形状判定部53は、+(プラス)カウントを+1に設定する。
次に、ステップS138において、形状判定部53は、グルーピングした結果の全てのデータについて処理が終了したか否かを判定し、終了していない場合には、制御はステップS121へと戻り、次のデータ(2番目から3番目への変化)が処理対象として選択される。
【0118】
そして、ステップS122において、形状判定部53は、2番目から3番目への変化のチャタリング除去処理後の結果を読み出す。
次に、ステップS123において、形状判定部53は、チャタリング除去処理後の変化の結果が正(+)であるか否かを判定する。例えば、
図14に示す2番目から3番目への変化のチャタリング除去処理後の結果は正(+)であるため、制御はステップS124に進む。
【0119】
次に、ステップS125において、形状判定部53は、+(プラス)カウントが0か否かを判定する。+(プラス)カウントが+1であるため、制御はステップS127へと進む。
そして、ステップS127において、形状判定部53は、+(プラス)カウントに+1を加えて、+2に設定する。
【0120】
このように、ステップS121~S127およびステップS138が繰り返される。そして、ステップS123において、チャタリング除去処理後の変化の結果が負(-)になると、制御はステップS128へと進む。
ステップS128では、形状判定部53は、+カウントが5以上になっているか否かを判定する。ここでカウントが5以上ある場合には、連続して5pixel以上、Y軸方向に上昇していることという条件1を満たしていることになる。
【0121】
図13および
図14に示すデータでは、例えば、8番目から9番目への変化のチャタリング除去処理後の結果が負(-)であり、そのときまでに正(+)は7個存在するため、+カウントは7となっている。そのため、制御はステップS129に進む。
ステップS129では、形状判定部53は、-(マイナス)カウントが0か否かを判定する。-(マイナス)カウントが0であるため、制御はステップS130へと進む。
【0122】
ステップS130では、形状判定部53は、1つ前の深さ位置(Y座標ともいう)を記憶する。すなわち、形状判定部534は、山の頂点が(傾きが+から-に変わった点)のY座標を記憶する。
図13および
図14のデータでは、8番目から9番目への変化における前の点である8番目のY座標を記憶する。
次に、ステップS131において、形状判定部53は、-(マイナス)カウントに+1を加える。
【0123】
次に、ステップS132において、形状判定部53は、-(マイナス)カウントが5以上か否かを判定する。ここでカウントが5以上ある場合には、連続して5pixel以上、Y軸方向に下降しているという条件2を満たしていることになる。8番目から9番目への変化の場合、-カウントは+1であるため、制御はステップS138へと進み、ステップS121を介して、9番目から10番目への変化のチャタリング処理後の結果が処理の対象として選択される。
【0124】
このように、順次、結果が選択され、12番目から13番目への変化のチャタリング処理後の結果が処理の対象として選択されると、ステップS132における-(マイナス)カウントが+5以上となるため、制御はステップS133へと進む。
ステップS133では、形状判定部53は、始点のY座標と頂点のY座標との差を算出する。
図13および
図14のデータでは、1番目のY座標と8番目のY座標の差が算出される。
【0125】
次に、ステップS134において、形状判定部53は、算出した差が、10以上であるか否かを判定する。ここで、10以上である場合には、Y軸方向の差が10pixel以上あるという条件3を満たしていることなる。
算出した差が10以上である場合には、ステップS135において、形状判定部53はグ、ループが山形状であると判定し、埋設物が存在すると判定する。
【0126】
一方、
図18に示すような算出した差が10未満の場合、制御はステップS136へと進み、埋設物判定処理2が実行される。埋設物判定処理2は、埋設物の形状が丸ではなく、平な場合に埋設物を判定する処理である。
【0127】
(d.埋設物判定処理2)
次に、
図31のステップS136の埋設物判定処理2について説明する。
図32は、埋設物判定処理2を示すフロー図である。
埋設物判定処理2は、グルーピングした結果の全てのデータを対象として行われる。
埋設物判定処理2が開始されると、ステップS141において、信号強度判定部54がグルーピングされたデータの始点側から順にデータを選択する。例えば、ステップS141において、信号強度判定部54は、
図14に示す1番目のデータを処理の対象とする。
次に、ステップS142において、信号強度判定部54は、1番目の受信データの値(受信強度/AD値)を読み出す。
【0128】
次に、ステップS143において、信号強度判定部54は、1番目の受信データのAD値が所定値よりも小さいか否か判定する。ここで、黒色が濃く出る場合はAD値がより小さい値(マイナス)方向となるため、所定値よりも小さい場合には、黒色が所定の濃さよりも濃いと判断できる。
次に、ステップS144において、信号強度判定部54は、グルーピングした結果の全てのデータについて処理が終了したか否かを判定し、終了していない場合には、制御はステップS141へと戻り、次のデータ(2番目)が処理対象として選択される。
【0129】
そして、ステップS142、S143の処理が、選択された2番目のデータに対して行われる。このように、グルーピングされたすべてのデータについて行われ、全てのデータの信号強度が所定値よりも小さい場合には、信号強度判定部54は、ステップS145において、埋設物が存在すると判定する。一方、グルーピングされたデータのうち1つでもステップS143において、所定値以上と判断された場合には、埋設物があると判定されず、制御は終了する。
【0130】
なお、
図28のステップS84では、表示制御部26は、
図23および
図14に示す例の場合、頂点である8番目のデータの位置に×印を付けて画像を表示部8に表示させる(
図19参照)。
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0131】
(A)
上記実施の形態では、埋設物検出装置1およびメイン制御モジュール6(データ処理装置の一例)の制御方法として、
図20~
図32に示すフローチャートに従って、実施する例を挙げて説明したが、これに限定されるものではない。
例えば、
図20~
図32に示すフローチャートに従って実施される埋設物検出装置1およびメイン制御モジュール6(データ処理装置の一例)の制御方法をコンピュータに実行させるプログラムとして、本発明を実現しても良い。
【0132】
また、プログラムの一つの利用形態は、コンピュータにより読取可能な、ROM等の記録媒体に記録され、コンピュータと協働して動作する態様であってもよい。
またプログラムの一つの利用形態は、インターネット等の伝送媒体、光・電波・音波などの伝送媒体中を伝送し、コンピュータにより読みとられ、コンピュータと協働して動作する態様であってもよい。
また、上述したコンピュータは、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアに限らずファームウェアや、OS、更に周辺機器を含むものであってもよい。
なお、以上説明したように、電力消費体の制御方法はソフトウェア的に実現してもよいし、ハードウェア的に実現しても良い。
【0133】
(B)
上記実施の形態では、埋設物の一例として鉄筋を例に挙げて説明したが、鉄筋にかぎらなくてもよく、ガス管、水道管、木材等であってもよく、また、埋設物が設けられた対象物としてもコンクリートに限られるものではない。
【0134】
(C)
上記実施の形態では、階調処理によって黒が埋設物を示すように設定したが、これに限らず白が埋設物を示すように設定してもよい。
【0135】
(D)
上記実施の形態の前処理におけるチャタリング除去処理(ステップS25)では、所定数の一例として3つのデータを用いているが、3つに限られるものではない。また、埋設物判定処理におけるチャタリング除去処理(ステップS82)でも所定数の一例として3つのデータを用いているが、3つに限られるものではない。
【0136】
(E)
本実施の形態では、埋設物検出装置1内にメイン制御モジュール6が設けられているが、メイン制御モジュール6が埋設物検出装置1と別に設けられていてもよい。この場合、例えば、埋設物検出装置には、本体部2と、把手3と、車輪4と、インパルス制御モジュール5と、エンコーダ7等が設けられており、タブレットなどにメイン制御モジュール6と表示部8を設けてもよい。埋設物検出装置とタブレットの間は無線または有線によって通信が行われてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明のデータ処理装置および埋設物検出装置は、埋設物の周囲に材質変化がある場合でもノイズ成分を除去することが可能であり、リアルタイムに埋設物を検出することが可能な効果を有し、コンクリート内の埋設物の検出を行う上で有用である。
【符号の説明】
【0138】
1 :埋設物検出装置
2 :本体部
3 :把手
4 :車輪
5 :インパルス制御モジュール
6 :メイン制御モジュール(データ処理装置の一例)
7 :エンコーダ
8 :表示部
10 :制御部
11 :送信アンテナ
12 :受信アンテナ
13 :パルス発生部
14 :ディレイ部
15 :ゲート部
21 :受信部(受信部の一例)
22 :RFデータ管理部
23 :前処理部
24 :埋設物判定部(埋設物判定部の一例)
25 :判定結果登録部
26 :表示制御部
31 :ゲイン調整部
32 :差分処理部
33 :移動平均処理部
34 :一次微分処理部(差分算出部の一例)
35 :チャタリング除去部
36 :ピーク検出部(信号強度ピーク検出部の一例)
37 :シーケンスナンバー
41 :増減判定部
43 :ステップ
51 :グルーピング部(グルーピング部の一例)
52 :チャタリング除去部(ノイズ除去部の一例)
53 :形状判定部(埋設物検出部の一例、形状判定部の一例)
54 :信号強度判定部(埋設物検出部の一例、信号強度判定部の一例)
100 :コンクリート
100a :表面
101 :埋設物
101a :埋設物
101b :埋設物
101c :埋設物
101d :埋設物
151 :グラフ
202 :木材
534 :形状判定部