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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】古紙パルプ原料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21C 5/02 20060101AFI20231106BHJP
   D21B 1/32 20060101ALI20231106BHJP
   B09B 1/00 20060101ALI20231106BHJP
   B09B 3/70 20220101ALI20231106BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20231106BHJP
   A61L 11/00 20060101ALI20231106BHJP
   A61L 101/10 20060101ALN20231106BHJP
【FI】
D21C5/02 ZAB
D21B1/32
B09B1/00 Z
B09B3/70
B09B5/00 Z
A61L11/00
A61L101:10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019074417
(22)【出願日】2019-04-09
(65)【公開番号】P2020172717
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森下 徹
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-199477(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103556515(CN,A)
【文献】特表2003-509213(JP,A)
【文献】特表2003-500560(JP,A)
【文献】特開平04-204354(JP,A)
【文献】特開2019-007123(JP,A)
【文献】特開平06-313194(JP,A)
【文献】特開平10-298885(JP,A)
【文献】特開2001-049588(JP,A)
【文献】特開平07-145583(JP,A)
【文献】特開2000-119699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B1/00-1/38
D21C1/00-11/14
D21D1/00-99/00
D21F1/00-13/12
D21G1/00-9/00
D21H11/00-27/42
D21J1/00-7/00
A61L2/00-2/28
A61L11/00-12/14
B09B1/00-5/00
B09C1/00-1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
臭気含有古紙から古紙パルプを製造する方法であって、
前記臭気含有古紙をパルパーに供給して、前記臭気含有古紙を離解する前又は離解中に、前記パルパーにオゾン含有ガスを注入し、この臭気含有古紙を離解して離解物を得る第1離解工程と、
前記離解物を古紙パルプの原料とする原料化工程とを有し、
オゾン水の濃度を1~30質量ppmとする、
ことを特徴とする古紙パルプの製造方法。
【請求項2】
臭気含有古紙から古紙パルプを製造する方法であって、
前記臭気含有古紙をパルパーに供給して、前記臭気含有古紙を離解した後に、
前記パルパーにオゾン含有ガスを注入し、又は
水と前記臭気含有古紙を別の処理槽に供給し、オゾン含有ガスを注入して、
離解物を得る第2離解工程と、
前記離解物を古紙パルプの原料とする原料化工程とを有し、
オゾン水の濃度を1~30質量ppmとし、
前記オゾン水が50~80℃である、
ことを特徴とする古紙パルプの製造方法。
【請求項3】
さらに、
前記離解物を水中で攪拌する攪拌工程を有する、
請求項1又は請求項2に記載の古紙パルプの製造方法。
【請求項4】
さらに、
前記離解物を漂白する漂白工程を有し、
前記原料化工程は、前記漂白工程により漂白された漂白物を古紙パルプの原料とする工程である、
請求項1又は請求項2に記載の古紙パルプの製造方法。
【請求項5】
さらに、
臭気含有古紙を含む古紙を破砕する破砕工程と、
破砕した破砕物を大きさ基準で分離する分離工程と、
前記分離工程で分離された大サイズ分について、順に有する測色手段と材料測定手段と仕分け手段とで、白色古紙と有色古紙とそれ以外のものに弁別する弁別工程とを有し、
前記弁別工程で弁別した前記白色古紙又は前記有色古紙には前記臭気含有古紙が含まれ、この臭気含有古紙を前記パルパーに供給するものである、
請求項1又は請求項2に記載の古紙パルプの製造方法。
【請求項6】
前記オゾン水が50~80℃である、
請求項1に記載の古紙パルプの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重包装袋から古紙パルプ原料を製造する製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
環境保護、資源の有効利用の観点より、市場中から回収された古紙は、段ボール用紙に代表されるリサイクル再生紙として使用されている。この回収された古紙を、製紙工場は再生処理設備で古紙パルプ化した後、抄紙してリサイクル再生紙を製造している。
【0003】
市場中で使用された紙には、魚粉、肥料等が収容されていたことで魚粉、肥料等の臭気が移った紙(紙袋)があり、この紙は禁忌品と評価される難処理性古紙に分類される。臭気が移った紙(臭気含有古紙)は、臭気を有するのでリサイクル再生紙として不向きであり、産業廃棄物の対象とされ、焼却処分される。
【0004】
臭気含有古紙は他の難処理性古紙に混入されて、例えば、圧縮梱包され古紙ベールの状態で、又はフレコンバッグに詰めた状態で搬送される。製紙工場で臭気含有古紙のリサイクル化をするには、難処理性古紙から臭気含有古紙を含む再生可能な古紙を分離して、同再生可能な古紙の臭気を低減する作業を行うことになる。
【0005】
古紙の臭気を低減するには、一例に、所定濃度の次亜塩素酸ナトリウムと、古紙又は古紙が含有された溶液と、を混ぜる手法を挙げることができる。しかしながら、次亜塩素酸ナトリウムは強アルカリ性で、パルプ繊維の強度を低下させる原因となることがある。また、次亜塩素酸ナトリウムを低濃度にすると、古紙の臭気が低減されない。
【0006】
他の薬剤を使用しても、製造された古紙パルプに薬剤が付着するなどの問題があり、臭気を軽減する手法が確立されておらず、現状において臭気含有古紙のリサイクル化は困難である。
【0007】
使用済み衛生用品中のパルプ繊維を回収する技術に、特許文献1がある。特許文献1は、前記使用済み衛生用品中の高分子吸収材をオゾン水で分解、除去して、パルプ繊維を効率的に回収する技術である。しかしながら、オゾン水は、高分子吸収材を分解するために使用されているのであって、パルプ繊維の臭気を低減させるために使用されているものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2014-217835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする主たる課題は、臭気含有古紙の臭気を低減させて、臭気含有古紙から古紙パルプを製造することにより、資源の有効利用を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
【0011】
<第1の態様>
臭気含有古紙から古紙パルプを製造する方法であって、
前記臭気含有古紙をパルパーに投入して、前記臭気含有古紙を離解する前又は離解中に、オゾン含有ガスを供給し、この臭気含有古紙を離解して離解物を得る第1離解工程と、
前記離解物を古紙パルプの原料とする原料化工程と、
を有することを特徴とする古紙パルプの製造方法。
【0012】
処理槽に離解物が供給され、オゾン含有ガスが注入されることで、離解物とオゾンが接触する。オゾンは臭気を低減する作用があるので、離解物の臭気が低減させる。その後、得られた離解物を古紙パルブの原料としているので、最終的に臭気をほとんど有しない古紙パルプが製造される。
【0013】
<第2の態様>
臭気含有古紙から古紙パルプを製造する方法であって、
前記臭気含有古紙をパルパーに供給して、前記臭気含有古紙を離解した後にオゾン含有ガスを注入し、離解物を得る第2離解工程と、
前記離解物を古紙パルプの原料とする原料化工程と、
を有することを特徴とする古紙パルプの製造方法。
【0014】
臭気含有古紙が離解されて離解液がほぼ均一濃度になっているので、オゾン含有ガスが偏りなく臭気含有古紙と接触され、オゾン含有ガスによる臭気の低減効果が高まる。
【0015】
<第3の態様>
第1の態様又は第2の態様に加え、
さらに、
前記離解物を水中で攪拌する攪拌工程を有する、
態様を挙げることができる。
【0016】
離解物にはオゾンが含まれている。離解物が水中で撹拌されることで、このオゾンを離解物から取り除く効果を有する。
【0017】
<第4の態様>
第1の態様又は第2の態様に加え、
さらに、
前記離解物を漂白する漂白工程を有し、
前記原料化工程は、前記漂白工程により漂白された漂白物を古紙パルプの原料とする工程である、
態様を挙げることができる。
【0018】
離解物を漂白することで、離解物に付着される汚れを落とすという効果を有する。
【0019】
<第5の態様>
第1の態様又は第2の態様に加え、
さらに、
臭気含有古紙を含む古紙を破砕する破砕工程と、
破砕した破砕物を大きさ基準で分離する分離工程と、
前記分離工程で分離された大サイズ分について、順に有する測色手段と材料測定手段と仕分け手段とで、白色古紙と有色古紙とそれ以外のものに弁別する弁別工程とを有し、
前記弁別工程で弁別した前記白色古紙又は前記有色古紙には前記臭気含有古紙が含まれ、この臭気含有古紙を前記パルパーに供給するものである、
態様を挙げることができる。
【0020】
臭気含有古紙を含む古紙は、禁忌品が含まれた状態で搬入される。臭気含有古紙を含む古紙には、製品化される古紙パルプの原料に向かないものが含まれるため、このものは古紙パルプの原料から排除されることになる。古紙パルプの原料を得るために、上記工程を経るとよい。破砕工程は、例えば、搬入された臭気含有古紙を含む古紙が塊状である場合、同古紙を破砕して細片とする工程である。分離工程は、破砕物を大きさ基準で分離して古紙パルプの原料とされるものとされないものとに分離する工程である。弁別工程を経て得られた白色古紙には有色古紙が混じることはなく、得られた有色古紙には、白色古紙が混じることはなく確実に白色古紙と有色古紙とに弁別される効果を有する。
【0021】
<第6の態様>
第1の態様に加え、
前記第1離解工程は、蒸気を得ながら前記臭気含有古紙を離解する工程である、
態様を挙げることができる。
【0022】
パルパーで蒸気を得ながら離解するので、臭気含有古紙とオゾンとの接触効率が増し、より効率よく臭気低減化がなされる。
【0023】
<第7の態様>
第2の態様に加え、
前記第2離解工程は、蒸気を得ながら前記臭気含有古紙を離解する工程である、
態様を挙げることができる。
【0024】
蒸気を得ながら離解することで離解液の濃度がより均一になり、オゾン含有ガスが偏りなく臭気含有古紙と接触される、という効果を有する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、臭気含有古紙の臭気を低減させて、臭気含有古紙から古紙パルプを製造することにより、資源の有効利用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】臭気含有古紙を含む古紙の梱包品における処理形態の概要フロー図である。
図2】臭気含有古紙を含む古紙の梱包品における他の処理形態の概要フロー図である。
図3】1軸解砕装置概要説明図である。
図4】2軸解砕装置の正面図である
図5】2軸解砕装置の平面図である。
図6】2軸解砕装置の解砕刃の斜視図である。
図7】分離装置の平面図である。
図8】分離装置の要部斜視図である。
図9】分離装置の要部平面図である。
図10】分離装置から仕分け装置までの全体を示す正面図である。
図11】弁別装置例の概要斜視図である。
図12】弁別装置例の概要説明図である。
図13】古紙パルプ製造設備例の概要フロー図である。
図14】他の古紙パルプ製造設備例の概要フロー図である。
図15】2軸解砕装置のA-A断面図である。
図16】(a)(b)解砕刃の別の実施形態の側面図である。
図17】圧縮梱包品のままの解砕工程の説明図である。
図18】搬送ディスクの他の実施形態を示す図である。
図19】搬送ディスクの他の実施形態を示す図である。
図20】(a)(b)搬送ディスクの位相のずれの説明図である。
図21】紙の近赤外線反射波の波長強度分布図である。
図22】PEの近赤外線反射波の波長強度分布図である。
図23】PPの近赤外線反射波の波長強度分布図である。
図24】PSの近赤外線反射波の波長強度分布図である。
図25】PETの近赤外線反射波の波長強度分布図である。
図26】PVCの近赤外線反射波の波長強度分布図である。
図27】分離装置の設置角度の説明図である。
図28】分離装置の別の形態を示す図である。
図29】揺動機構の説明図である。
図30】他の搬送ディスクの他の実施形態を示す図である。
図31】他の搬送ディスクの他の実施形態を示す図である。
図32】弁別装置例の変形例の概要説明図である。
図33】オゾン処理槽の概要図である。
図34】パルパーの概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、本実施の形態は、本発明の一例に過ぎない。
【0028】
(臭気含有古紙)
臭気を有する古紙(臭気含有古紙ともいう。)は、公益財団法人古紙再生促進センターが制定する古紙標準品質規格の禁忌品に属し、その中でもA類芳香紙、臭いのついた紙に区分されるものであり、従来、古紙パルプの原料化とすることが困難なものとされていた。本実施形態は、この臭気含有古紙が有する臭気を低減させ、古紙パルプの原料とするものである。臭気含有古紙は臭気を発する古紙である限り限定はなく、魚粉、肥料、食品類、砂糖、セメント、ペットフード等が、収容又は付着された紙袋や紙を一例に挙げることができる。また、臭気含有古紙には、白色の白色古紙や、白色古紙以外の古紙、いわゆる有色古紙が含まれる。
【0029】
臭気を低減させる手段としては、気相中に含まれる臭気成分を蒸気ストリッピング処理する手段や、二酸化塩素等の酸化物で臭気成分を変質させる手段等、公知の手段を適宜採用することができるが、特にオゾン含有ガスを用いて臭気を低減する手段を好適に採用することができる。
【0030】
(オゾン)
オゾンは、酸素原子1つを放出し、酸素分子(O2)となる性質があり、強い酸化作用を有する。オゾンの酸化力は強く、他の化学物質と比較すると、フッ素>オゾン>過酸化水素>塩素>次亜塩素酸の順であることが知られている。また、オゾンは高濃度になるほど、人体に悪影響を及ぼすことが知られている。
【0031】
オゾンはオゾン含有ガス112やオゾン水として利用され、その強い酸化作用により、殺菌、消臭、脱色、有機物除去、有害物質除去、化学物質合成等に利用される。オゾン水中のオゾンは時間が経過すると酸素に分解され、無毒化されるので特に環境保全の分野では殺菌、消臭目的としての利用が注目されている。オゾン水は、気体として生成したオゾンをミキシングやバブリングさせたり、水中の酸素を利用して電気分解したりして水溶させて、生成することができる。オゾンは安定性に乏しく酸素と水に分解され残留性を有しない利点を有し、殺菌水として使用でき、また塩素系殺菌剤やエタノール系殺菌剤の代替物としても使用できる。なお、オゾン水とは、水にオゾンが混入した又は溶け込んだ溶液をいう。
【0032】
(発生装置)
オゾン含有ガス112はオゾン発生装置110により発生させることができる。オゾン発生装置110には公知の装置を使用することができる。本実施形態に利用できるオゾン発生装置110として、エコデザイン株式会社製オゾン水曝露試験機ED-OWX-2や三菱電機株式会社製オゾン発生装置OS-25V等を例示できる。
【0033】
(濃度)
オゾン発生装置110により発生させたオゾン含有ガス112の濃度(空気中に占めるオゾン濃度)は、40~60g/m3とするとよい。より好ましくは、40~50g/m3であり、さらに好ましくは、42.5~45g/m3とするとよい。この濃度が低すぎると、臭気を低減するのにかかる時間が長くなる。この濃度が高すぎると、オゾン含有ガス112を溶液に注入する際のオゾンの取り扱いに相当の注意を要する。
【0034】
(気中反応)
理論的には、気中において臭気物質のオゾンによる臭気の低減化は可能である。しかしながら、作業空間内で臭気含有古紙にオゾン含有ガス112を噴霧したり、散布したりすると、その作業空間内にいる作業員がオゾン含有ガス112を吸気するおそれがあり、安全管理上の問題がある。また、作業員の人体に影響を及ぼさない程度にオゾン含有ガス112の濃度を低くすると、オゾンと臭気含有古紙との接触が緩慢となり、オゾンによる臭気低減にかかる時間が長時間に及び低効率である。
【0035】
気中において「臭気含有古紙」から発生される臭気をオゾン含有ガス112で低減することが可能か否かについて、発明者は検討を行った。その結果、気中においては、オゾンによる臭気低減化は非効率であることが分かった。そこで、効率を良くするためオゾン分解触媒を使用した。オゾン分解に使用できる触媒として、公知の触媒を適宜使用できる。例えば、ハニカム触媒、セラミック基材―金属酸化物等触媒や金属基材―金属酸化物等触媒等を好適に使用できる。これらの触媒を使用した結果、臭気が低減化された。オゾンが触媒により分解され活性酸素が生成され、この活性酸素が古紙と接触することで、臭気が低減されると推測される。
【0036】
実際、高濃度のオゾン含有ガス112は人体に悪影響を及ぼすため気中に拡散しないよう、オゾンによる臭気の低減処理はケース内で行うとよい。安全面上、ケース内からのオゾン含有ガス112の漏洩を防止する等の対策を講じることになる。
【0037】
以上のことを考慮して、オゾンを用いて臭気を低減化するには、溶液中で行った方が効率的であることを発明者は知見している。例えば、オゾン含有ガスを注入する装置を備えた処理槽に、水と離解された離解物とを供給して所定の水嵩とする供給工程が好ましい。
前記処理槽は、離解工程のパルパー設備であってもよく、パルパー設備とは別に設けてもよい。また、離解物の供給を、低濃度又は高濃度パルパーによる離解工程の後に行うことができる。さらに、臭気含有古紙をパルパーに供給して、臭気含有古紙を離解する前又は離解中に、オゾン含有ガスを注入し、この臭気含有古紙を離解して離解物を得る離解工程(請求項の第1離解工程)としてもよいし、臭気含有古紙をパルパーに供給して、臭気含有古紙を離解した後にオゾン含有ガスを注入し、離解物を得る離解工程(請求項の第2離解工程)としてもよい。水嵩は特に限定されず、オゾン含有ガスが水と好適に混ざり合う程度でよく、例えば、処理槽65の容積の30~100%、より好ましくは40~90%とするとよい。
【0038】
オゾン水117の濃度は、臭気含有古紙が発する臭気を低減できる濃度であれば特に限定されない。好ましくは、1~30質量ppmとするとよい。より好ましくは、2~20質量ppmとするとよい。さらに好ましくは、3~10質量ppmとするとよい。前記範囲を満たすことで、臭気の低減と古紙パルプ強度を維持するという相反する効果を奏する。オゾン濃度が低すぎると、臭気の低減効果がほとんどない。また、オゾンは酸化力が強いため、オゾン濃度が高すぎると、パルプ繊維を損傷させることになる。さらには、安全管理上の面からも高濃度オゾンの使用は避けるべきである。
【0039】
処理槽65の一例を挙げる。処理槽65は水を貯めることが可能な形態であれば特に限定されない。処理槽65内に貯めた水に、オゾン発生装置110で発生させたオゾン含有ガス112を注入配管111により注入したものを、オゾン水117とする。オゾン含有ガス112を液中に溶けやすくするため、オゾン発生装置110に接続されたオゾン注入配管111の先端を処理槽65内の底部に位置させるとよい。注入配管111の先端から液中に注入されたオゾン含有ガス112が水と混ざりながら、液面に向かって上昇する。処理槽65への注水は例えば、注水配管115により行うことができる。注水配管に設けられるポンプ113で単位時間当たりの注水量が制御できる形態が好ましい。また、処理槽65の底部に、バルブ手段114を有する排水配管116を設け、排水ができるようにするとよい。そして、処理槽65の底部に、オゾンと接触した離解物を回収する回収部113を設ける。オゾン水117がオゾン含有ガス112の注入により曝気され、処理槽65内に緩やかな水流が発生するので攪拌装置を設けない形態としてもよい。しかしながら、攪拌装置101を処理槽内に設置してもよい。攪拌装置101でオゾン水117を攪拌することで、供給された離解物がオゾンと接触する頻度が高まり、離解物の効果的な臭気低減を図ることができる。オゾン水中のオゾンが液面から気中に発散されるのを防止するため、処理槽65の上部を非開放とよい。例えば、オゾンがなるべく処理槽65の外へ漏れないように処理槽65は上部の全体が壁で覆われたものとすることができるし、また、上部の全体を蓋118で覆われたものとしてもよい。
【0040】
攪拌装置101を設けた場合、攪拌羽は、一般的な製紙工場の設備規模のものが用いることができ、50~300rpmでオゾン水を回転攪拌させるとよい。その結果、臭気含有古紙にオゾン水の接触効率が向上し、臭気の低減効果が高くなる。
【0041】
離解物とオゾンとは接触されればよく、接触手法は限定されない。例えば、オゾン水117を貯めた処理槽65内に離解物を供給して、離解物とオゾンとを接触させる手法を挙げることができる。また、水を処理槽65に貯めて、離解物を供給した後で、オゾン含有ガス112を注入し、離解物とオゾンとを接触させる手法であってもよい。
【0042】
処理槽65内のオゾン水117の量は、オゾン水に分散される臭気含有古紙が過度に離解されることなく攪拌できる程度の量であればよい。また、オゾン水の温度は常温でもよいが、50~80℃としてもよい。この範囲とすると、オゾン水の液面から蒸気が得られ、オゾンと離解物との接触が促進される。この場合、蒸気を処理槽65内から逃がすための蒸気開放部を処理槽65に設けるとよい。
【0043】
オゾン水117の体積をV(単位:×10-33)、臭気含有古紙の質量をW(単位:kg)で表すとすると、このオゾン水に対する臭気含有古紙の濃度は、次式を満たすものとするとよい。
3≦V/W≦50 ・・・式(1)
【0044】
また、より好ましくは、5≦V/W≦40を満たし、さらに好ましくは、8≦V/W≦30を満たすとよい。V/W値が小さ過ぎると、処理槽65に注入されたオゾンが臭気含有古紙に十分に浸透せず、臭気の十分な低減化を行えない。回収されたパルプ繊維に臭気が残存することになる。V/W値が大き過ぎると、溶液やオゾンを多量に使用することになり、製造原価の増加を招く。また、廃オゾンの安全管理上の問題もある。
【0045】
(反応時間)
処理槽65内におけるオゾン水117と臭気含有古紙(又は離解物)との接触時間(反応時間)は、臭気の十分な低減がなされるのであれば、特に制限されない。オゾン水117のオゾン濃度が高ければ反応時間を短くでき、オゾン濃度が低ければ反応時間を長くでき、適宜設計可能である。臭気の低減の程度は、種々の手法で調節してよいが、一例として、オゾン水117の濃度C(質量ppm)と反応時間T(分)の積の値CT(ppm・分)で調節できる。この積値CTを100~6000ppm・分とするとよい。より好ましくは200~4800C・分、さらに好ましくは300~3600ppm・分であればよい。積値CT(ppm・分)が小さ過ぎると臭気の低減が不十分であり、回収されたパルプ繊維に臭気が残存する。大き過ぎるとパルプ繊維の損傷を引き起こす。
【0046】
オゾン水117の温度は、離解物における臭気の低減に差しさわりがなければ特に限定されない。オゾン水117の温度は、室温でよく、室温よりも加熱された温度でもよい。処理槽65が所望の積値に達したら、処理槽65から水分を排出して残物を得る。
【0047】
処理槽65の溶液内にオゾン含有ガス112を注入すると、このガスの一部が無数の泡となり液面に向けて上昇する。この泡によりオゾン水117が攪拌されることになる。そのため、処理槽65内のオゾン水117を攪拌するための攪拌手段を別途設けなくてもよい。しかしながら、より万遍に処理槽65内のオゾン水117を攪拌するため攪拌手段101を別途設けてもよい。攪拌手段101は処理槽65内のオゾン水117を攪拌するローターを用いることができる。ローターは、Maxiローター(相沢鉄工(株)製)、ボルテックローター、PS型ボルテックローター、省エネ型ボルテックローターを使用できるが、その他のローターも使用でき限定されない。また、ローターにはスラッシュ翼、タービン翼を備えてもよい。
【0048】
離解物とオゾンとの接触方式は回分式、連続式問わず行うことができる。連続式でオゾンの接触を行う場合は一例として以下のとおりにするとよいが、これに限定されるものではない。オゾン水117で満たした処理槽65にオゾン含有ガス112と水を連続的に流入させ、かつ、処理槽65からオゾン水117を連続的に排出させる。水の流入量とオゾン水117の排出量は、適宜調整することができる。
【0049】
このとき、オゾン含有ガス112の流入量F(単位:×10-33/min)と処理槽65内のオゾン水117の体積V(単位:L)との関係は次式を満たすようにするとよい。
0.5≦F/V≦1.25 ・・・式(2)
また、より好ましくは、0.45≦F/V≦1.0であり、さらに好ましくは、0.4≦F/V≦0.75である。F/V値が小さ過ぎると処理槽65内のオゾン水117の濃度が低く、臭気の低減化に長時間を要する、又は、臭気の低減化が不十分であり、臭気が残存してしまう。F/V値が大き過ぎると処理槽65内のオゾン水117の濃度が高く、パルプ繊維の損傷を引き起こし、安全作業性を低下させ、製造原価の増加をもたらす。
【0050】
(洗浄)
処理槽65から回収された残物を洗浄せずに次の工程に導入してもよいが、洗浄してもよい。洗浄は、水で行ってもよいが、漂白剤を添加した液体で行ってもよい。洗浄する際、残物を撹拌すると、洗浄効果が高まり好ましい。撹拌は、公知の手段で適宜行うことができるが、例えば処理槽65に備わる撹拌装置101で行うことができる。漂白剤については特に限定されないが、一例として次亜塩素酸ナトリウム、二酸化塩素、酸性電解水、漂白用オゾン水、酸性漂白用オゾン水、有機酸を含有する漂白用オゾン水等を用いることができる。なお、漂白用オゾン水、酸性漂白用オゾン水、有機酸を含有する漂白用オゾン水はオゾン濃度を1~50質量ppmとするとよい。また、酸性漂白用オゾン水、有機酸を含有する漂白用オゾン水のpHは、どちらも特に限定されないが、好ましくは3以下とするとよい。
【0051】
漂白剤を添加する場合の漂白剤の濃度は、漂白、消毒、殺菌の効果が発揮される限り、特に限定されない。一例として10~300質量ppmとすることができる。また、より好ましくは30~280質量ppm、さらに好ましくは50~250質量ppmとするとよい。濃度が低すぎると漂白、消毒、殺菌の効果が十分に発揮されず回収されたパルプ繊維に細菌類が残存するおそれがある。濃度が高すぎるとパルプ繊維の損傷、漂白剤の浪費、安全管理上の問題等をもたらす。
【0052】
洗浄は処理槽65で行ってもよいし、処理槽65の下流にスクリュープレス、ディスクフィルタ、ベルトフィルタ、デッカー、ワイヤープレス、高速洗浄機、トロンメル洗浄機等の公知の洗浄設備を備えて、行ってもよい。
【0053】
前述の形態では、パルパー62による離解工程の後に、離解物をオゾン水117に供給して、オゾンと接触させる工程を設けた。別の形態として、パルパー62にオゾン含有ガス112を注入して臭気含有古紙由来の臭気を低減する形態とすることもできる。
【0054】
(パルパー)
臭気含有古紙は、図34に例示されるパルパー62により蒸気を得ながら、又は蒸気を得ずに離解される。蒸気を得ながら離解する場合は、パルパー62内の水(オゾン水)の温度を50~80℃とするとよい。この温度範囲にすると、常温で離解処理するときよりオゾンから活性酸素が生成される反応の速度が大きくなり、活性酸素が多くなるので、単位時間当たりの臭気含有古紙とオゾン(活性酸素)とが密に接触され、臭気の低減効果が高まる。オゾンの離解は、臭気含有古紙を水につけ強く混ぜて繊維間の結合を解消させ、繊維を水中でバラバラにすることである。本実施形態で用いるパルパー62は、一例として高濃度型とするとよい。臭気含有古紙の質量をW(単位:kg)で表すと、V/W値は、3≦V/W≦50とするとよい。また、より好ましくは、5≦V/W≦40を満たし、さらに好ましくは、8≦V/W≦30を満たすとよい。V/W値が3より小さいとパルパー内での臭気含有古紙の回流性が高いため、臭気含有古紙に混入する異物が細片化されてしまい、次工程に供給される結果、異物の除去が困難となる。V/W値が50より大きい、すなわち、臭気含有古紙の濃度が高いと、排出ポンプのつまりの原因となる。
【0055】
パルパー62はバッチ式タイプと連続式タイプがある。バッチ式タイプではパルパー62内に堆積した異物を1回のバッチ工程で全量排出するものである。しかしながら、難処理古紙中の禁忌品率が20%程度の場合、1回のバッチ工程当たりの異物が多量に発生し、その排出に時間を要す。また、排出時に装置内において閉塞等のトラブルを起こす原因となる。実施の形態に使用されるパルパーとしては、公知のパルパーを適宜使用できる。例えば、相川鉄工株式会社製「Maxiパルパー」、「DR型ハイドラパルパー、(株)協和鉄工所製「協和式スーパーパルパー」等を挙げることができる。
【0056】
一方連続式パルパーは通常のパルパーに付帯設備である分離パルパーを設けたものである。臭気含有古紙の離解を進めると同時に異物を連続的に抜き出す装置である。異物を一度に排出するものではないので、異物の排出時に時間を要せず、閉塞などのトラブルが発生し難い。
【0057】
(構造)
パルパー62は公知の形態を適宜使用できるが、一例に次の構造を挙げることができる。パルパー62は、容器130と容器内にローター121とを備える。ローター121は前述の処理槽65に設けるローターと同様のものとすることができる。容器130に、離解物が回収される回収部123を有し、オゾン水を排出する排出配管126が接続されている。排出配管126には排出量を制御するバルブ手段124を設けることができる。また、容器130に水を供給する給水配管125が設けられ、この吸収配管125にはポンプ123により給水量を制御することができる。パルパー62にオゾン含有ガス112を容器内に注入するオゾン供給装置を設けることができる。オゾン供給装置は、オゾン含有ガスを発生させるオゾン発生装置120と、オゾン発生装置120に一端が接続され、他端が容器内に位置するオゾン注入配管111とで構成される。オゾン注入配管111の他端の位置は、容器内であれば特に限定されない。容器121に貯められた水の液面128よりも上方に同他端がある場合、ローター121で水の流れが生じれば他端から出るオゾン含有ガス112が液面128から液中に混入される。容器121に貯められた水の液中に同他端がある場合、他端から出るオゾン含有ガス112が水と混ざることになる。
【0058】
オゾン水117を使用してパルパー62による臭気含有古紙の離解を行うと、次の利点があり有用である。第一に、オゾン含有ガス112を注入するために別途処理槽65を設ける必要がなく古紙パルプの全製造工程がコンパクトになる。第二に、オゾンによる臭気の低減化と離解とをパルパー62で同時に行え、製造工程に要する時間の短縮化を図ることができる。
【0059】
本実施形態では連続式タイプのパルパー62を使用することが好ましい。パルパー62を使用することで、臭気含有古紙が必要以上に離解され過ぎず、繊維を選択的に水中に分散させることができ、金属等の重量異物は繊維と共に連続的に排出される。このとき、古紙原料の濃度は4質量%程度となる。
【0060】
オゾンをパルパー62に注入する場合の諸条件は、以下のとおりとするとよい。F/V値については、0.5≦F/V≦1.25とするとよく、より好ましくは0.45≦F/V≦1.0であり、さらに好ましくは0.4≦F/V≦0.75である。
【0061】
積値CT(ppm・分)については、100~6000ppm・分とするとよい。より好ましくは200~4800C・分、さらに好ましくは300~3600ppm・分であればよい。
【0062】
(臭気含有古紙)
臭気含有古紙は禁忌品と評価されるいわゆる難処理性古紙に混在して梱包され、古紙ベールの状態で製紙工場に納入される。古紙ベールには、プラスチック、有色古紙、クラフト紙が含まれ、新聞用紙製造用や印刷、出版、情報等用紙製造用、洗剤容器や線香容器製造用の古紙パルプ向けの白色古紙や、日本ほど分別回収が進んでおらず、異臭トラブルが発生し易い海外の段ボール古紙も含まれる。また、臭気含有古紙は梱包されずに、フレコンバッグに収容され、又はバラ積みされて製紙工場に納入される場合もある。例えば、各種製造工場や製造現場から発生する臭い付きのクラフト袋は、サイズが均一であることから、前記のようなサイズが均一な臭気含有古紙については、1軸破砕装置以下の工程をパスすることで、製造工程に要する時間の短縮化や生産コストの低減を図ることができる。
【0063】
プラスチックの材質に限定はなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の樹脂又はこれら樹脂の複合体からなる、プラスチックフィルムの厚さは特に制限されないが、例えば厚さ10~30μmからなるものが一般的である。また、このプラスチックフィルムには所謂ラミネート加工された樹脂も含まれる。プラスチックフィルムは、1層又は複数層で構成されてよく、防湿性、透気性、強度性等を備えたものであってもよい。
【0064】
臭気含有古紙を含む古紙の圧縮梱包品(ベール)の処理の形態例を図1に示してある。しかし、必要ならば、圧縮梱包品でなく、重包装袋をバラの状態で解砕処理することもできる。
ここでは、圧縮梱包品について解砕処理する図1に従って処理の概要を予め概説する。
圧縮梱包品1は、例えばフォークリスト2によって、投入コンベア3に搬送され、投入コンベア3から1軸解砕装置10に投入される。
圧縮梱包品1は、例えば番線で結束されているので、1軸解砕装置10に至る前の適宜の時点で、あるいは1軸解砕装置10内で番線などの結束具を除去できる。
しかしながら、前述のように、本実施形態に搬入される臭気含有古紙を含む古紙は、圧縮梱包品1の状態で投入コンベア3に搬送されなくてもよい。例えば、フレコンバッグに詰められた状態やバラ積みされた状態で搬送されてもよい。この状態であっても、臭気含有古紙を含む古紙は、投入コンベア3に搬送され、投入コンベア3から1軸解砕装置10に投入される。
【0065】
(圧縮梱包品)
圧縮梱包品1 は、所定量の臭気含有古紙を含む古紙をベーラー(圧縮梱包機)により120~150kg/cm3程度の圧力で加圧、固形化されて番線等の結束具により梱包して形成される。重量は約1000~1500Kgであり、体積は高さ1~2m×幅1~2 m×縦1~2 m程度である。
【0066】
(1軸破砕装置)
1軸破砕装置10としては、1軸で破砕するものであればその破砕装置の構成は特に制限されるものではなく、公知の破砕装置を利用できる。
例えば、図3に基本構造を示すように、ケーシング内に、破砕を目的とした回転するドラム状のローター10A表面に取り付けられた回転刃10aと本体の固定刃10Bとの噛み合いでせん断破砕される1軸せん断破砕装置が好適に用いられる。
さらに、単純に破砕室内に被破砕物を投入しただけでは原料を噛み込みにくいため、プッシャーと呼ばれる押込み装置10Cで効率よく破砕を継続させる構造のものがさらに好適に用いられる。
前記破砕サイズは、例えばローター10Aの下側又は背側に設置されたスクリーン10Dの目開きにより規定することができる。ローター回転数などの制限はないが、それぞれ、20~1000rpm程度が好ましい。
【0067】
1軸破砕装置10と後述する多軸破砕装置との設置位置が離れている場合には、ベール工程を付加して、1軸破砕工程で破砕され、破砕された少なくとも紙分を集合してベールとし、このベールを(ベール用結束具を分離し)多軸破砕装置により破砕処理するようにすることもできる。
この場合、次の工程を有する構成とすることができる。
臭気含有古紙を含む古紙を1軸破砕装置10により破砕処理して、紙袋及びプラスチック袋を破砕する1軸破砕工程。
前記1軸破砕工程で破砕され、破砕された少なくとも紙分を集合してベールとするベール工程。
前記ベール工程でのベールを多軸破砕装置により破砕処理する多軸破砕工程。
破砕した破砕物を古紙パルプ製造工程に供給する原料とする原料化工程。
【0068】
他方、1軸破砕装置10と多軸破砕装置とを近接し、1軸破砕工程10と多軸破砕工程とを連続化できる。
この場合、次の工程を有する構成とすることができる。
前記臭気含有古紙を含む古紙を1軸破砕装置10により破砕処理して、紙袋及びプラスチック袋を破砕する1軸破砕工程。
前記1軸破砕工程からの破砕された少なくとも紙分を多軸破砕装置により破砕処理する多軸破砕工程。
破砕した破砕物を古紙パルプ製造工程に供給する原料とする原料化工程。
【0069】
本発明に係る1軸破砕工程の後に多軸破砕工程で破砕する構成は、次の構成と組み合せることにより、技術的特徴がより明確となる。
すなわち、次の実施の形態である。
さらに、
前記破砕した破砕物を大きさ基準で分離する分離工程と、
破砕した破砕物を大きさ基準で分離する分離工程と、
前記分離工程で分離された大サイズ分について、下記の弁別手段を有する弁別工程と、
この弁別手段は、
(1)前記大サイズ分を搬送方向に分散させる分散化手段と、
(2)分散化手段により分散された大サイズ分群について、測色カメラを使用して測色する測色手段と、ハイパースペクトルカメラにより材料を測定する材料測定手段とを有し、
(3)個々の大サイズ分について、前記測色手段による測色値の白色度が高いか否かを判断する第1の弁別手段と、
(4)個々の大サイズ分について、前記材料測定手段により測光した吸光度スペクトルに基づき、セルロース成分が支配的であるか否かを判断する第2の弁別手段と、
を有し、
前記弁別手段における、少なくとも第1の弁別手段及び第2の弁別手段による弁別基準に基づき仕分けを行う仕分け手段と、
を順に有し、
前記仕分け手段においては、(5)測色値の白色度が高く、かつ、セルロース成分が支配的である場合には、白色古紙である、(6)測色値の白色度が低く、かつ、セルロース成分が支配的である場合には、有色古紙である、として仕分けを行うものであり、
前記離解工程は、前記弁別工程で弁別した白色古紙又は有色古紙を前記パルパーで離解する工程であり、
を有し、
前記弁別工程で弁別したセルロース成分(例えば、白色古紙や有色古紙)を古紙パルプ製造工程に供給する原料とする。
【0070】
ここで、分離工程を省略することもでき、破砕した破砕物を直接的に弁別工程に供給することもできる。
【0071】
紙分とプラスチック(樹脂)分との分離については、アルカリ液などを用いることなく、乾式で分離するのは難しい。しかるに、ハイパースペクトルカメラにより測光した吸光度スペクトルに基づき、セルロース成分又は樹脂成分が支配的であるか否かを弁別する弁別工程を経ることにより容易に乾式での分離が可能となる。
【0072】
他方で、前記の弁別工程において、セルロース成分(クラフト紙袋由来分)又は樹脂成分(プラスチック袋由来分)大きい場合、弁別機上で重なる機会が多くなり、弁別精度が低下する。
そこで、1軸破砕工程の後に多軸破砕工程で破砕することにより、細かくし、もって弁別機上で重なる機会を少なくなり、弁別精度の低下を防止できる。
【0073】
本発明では1軸破砕工程の後に多軸破砕工程で破砕する。
1軸破砕装置10での破砕の挙動は言葉で表現しづらいが、概要、1軸破砕装置では、袋状の古紙における、紙分を引きちぎるように破砕するものである。袋状の古紙では上端部又は下端部が紙バンドや接着剤で固定されている、あるいは糸縫いがなされており、かかる固定部から紙袋分を掻き剥がすように分離しながら破砕するものである。
1軸破砕装置で破砕に伴う細分又は金属片などは分離できる。
【0074】
1軸破砕装置10としては、1軸で破砕するものであればその破砕装置の構成は特に制限されるものではなく、公知の破砕装置を利用できる。破砕を目的とした回転するドラム状のローター表面に取り付けられた回転刃と本体の固定刃との噛み合いでせん断破砕される1軸せん断破砕装置が好適に用いられる。
さらに、単純に破砕室内に被破砕物を投入しただけでは原料を噛み込みにくいため、プッシャーと呼ばれる押込み装置で効率よく破砕を継続させる構造のものがさらに好適に用いられる。
前記破砕サイズは、ローター下側に設置されたスクリーン(分散した円形孔スリット状の孔が並列している態様などのスクリーン)の目開きにより規定することができる。ローター回転数などの制限はないが、それぞれ、20~1000rpm程度が好ましい。
【0075】
その後、多軸破砕装置で破砕する。この多軸破砕装置では、臭気含有古紙を含む古紙分の全体を細かく破砕するものである。
【0076】
1軸破砕装置10又は多軸破砕装置において、あるいはそれらの間において、重力選別、風力選別や磁力選別などの選別機(手段)によって、混入の可能性のある金属類等の異物、あるいは過度の細分を分離・除去することも可能である。
【0077】
1軸破砕装置10において解砕された解砕物は、コンベア4によりベーラー5に送られ、圧縮梱包される。この過程で、例えばコンベア4に磁選機(図示せず)を設けて金蔵物を除去するなどの工程を設けてもよい。
【0078】
ベーラー5で圧縮梱包された圧縮梱包品は、例えばフォークリスト2により前コンベア6に送られ、圧縮梱包品の番線などの異物7の除去がなされた後、投入コンベア8により2軸解砕装置20に投入される。
【0079】
(多軸破砕装置)
多軸破砕装置としては、破砕軸が二軸以上であればよく、2軸破砕装置、3軸破砕装置、4軸破砕装置などが挙げられるが、装置コストやメンテナンスコスト等を考慮すると2軸破砕装置が最も好ましい。2軸解砕装置20の構造に限定はないが、実施の形態の2軸解砕装置20は、軸芯回りに回転する実質的に平行な少なくとも2本の第1支持軸20A及び第2支持軸20Aを有し、各支持軸に、径方向外側に突出する解砕刃が前記軸芯方向に間隔を空けて複数設けられ、解砕刃は、少なくとも外周部に鉤状部を有し、かつ、軸芯方向に沿う解砕刃群の鉤状部の位置が軸芯回り方向に相違しており、解砕刃を有する前記支持軸がケーシング内に配置されている構造である。
【0080】
支持軸20Aの回転により解砕刃20Bも回転する。解砕刃20Bの少なくとも外周部に鉤状部20Cを有しているので、他方の支持軸20A又は解砕刃20Bとの間で留まっている被解砕物に対し、鉤状部20Cが引っかかり、続く回転により、当該解砕刃20Bと対向する支持軸20Aの隣接する解砕刃20Bとの間で剪断力が作用し、臭気含有古紙を含む古紙の破断がなされる。かかる破断又は切り裂きがなされあるいは繰り返される結果、細分化がなされる。
【0081】
一方で、両支持軸20A間又は解砕刃20B間に被解砕物が長く留まるのは解砕効率の点 で避けるべきである。しかし、本発明の形態においては、軸芯方向に沿う解砕刃群の鉤状部20Cの位置が軸芯回り方向に相違している結果、支持軸20Aの回転に伴う解砕部位が軸芯方向に経時的に異なる(変化する)ので、被解砕物の破断又は切り裂きが軸芯方向に経時的に異なる(変化する)ようになり、かつ、被解砕物の滞留がなくなる。
【0082】
他方で、解砕刃20Bを有する前記支持軸20Aがケーシング本体201内に配置されている、したがって、被解砕物及び解砕物の飛び散りが防止される。
【0083】
被解砕物(臭気含有古紙を含む古紙からなる梱包品)は、ケーシング本体201の上方から投入され、解砕刃により解砕されて、解砕物となり、ケーシング本体201の下方に設置された搬送コンベア11に落下する。
【0084】
上記の作用機序を伴う2軸解砕装置20によれば、梱包品の解砕に最適であることが判明している。
【0085】
臭気含有古紙の解砕が適確になされれば、分離装置30における残分をそのまま、あるいは同残分を選別手段により選別し、その選別物を、古紙パルプ製造工程に供給する。
しかしながら、分離装置30による解砕物の分離を行わず、解砕物をそのまま、あるいは、選別手段により選別し、その選別物を、古紙パルプ製造工程に供給することもできる。古紙パルプ製造工程としては、一例にクラフト紙製造工程や段ボール用紙製造工程、新聞古紙パルプ用製造工程等がある。解砕物又は選別物のうちクラフト紙はクラフト紙製造工程に供給され、製品としてのクラフト紙が製造される。また、解砕物又は選別物のうちクラフト紙が段ボール用紙製造工程に供給されることで段ボールが製造される。さらに、解砕物又は選別物のうち白色古紙が新聞古紙パルプ製造工程に供給されることで新聞古紙パルプが製造される。また、解砕物又は選別物のうちプラスチックフィルムは樹脂フィルムに製造・加工され、再利用化される。
【0086】
第1支持軸20Aの鉤状部20Cの内側が向いている方向と、第2支持軸20Aの鉤状部20Cの内側が向いている方向とが、反対方向で相違していることが望ましい。
ここで、第1支持軸20A及び第2支持軸20Aの回転方向が同じ場合と、反対方向の場合とがあるが、いずれの場合においても、第1支持軸20Aの鉤状部20Cの内側が向いている方向と、第2支持軸20Aの鉤状部20Cの内側が向いている方向とが、反対方向で相違していると滞留が少なく破砕効率が高いことを知見している。
【0087】
本実施形態に係る2軸解砕装置20を図4図6に示す。2軸解砕装置20は、圧縮梱包品1(又はフレコンバッグから取り出された古紙)を解砕(破砕)し、臭気含有古紙を分離、破断するものである。2軸解砕装置20のケーシング本体201内は解砕部203となっており、ケーシング本体201の上部にはホッパー202が備わる。ケーシング本体201下部は開放されている。
【0088】
解砕部203には、複数の解砕刃20Bを有する支持軸20A,20Aが、解砕部203の一方の内壁(ケーシング本体201の内壁)から対向するもう一方の内壁まで配されている。支持軸20Aの向きは、後の工程に備わる搬送コンベア11の搬送方向としてもよいし、幅方向としてもよい。
実施の形態では、支持軸は2本備わり、第1支持軸20A及び第2支持軸20A相互は、例えば、水平方向に離間している。しかしながら、支持軸の本数は3本以上の複数であってもよい。
【0089】
第1支持軸20A及び第2支持軸20Aのそれぞれは、それらの支持軸の軸芯を中心に独立して回転可能である。同支持軸20Aの回転速度は適宜調節することができる。そのため、最終的に製造される古紙パルプの単位時間当たりの製造量に合わせて支持軸20Aの回転速度を調節し、圧縮梱包品1(又はフレコンバッグから取り出された古紙)の2軸解砕装置20への時間当たりの投入量を調節することができる。
なお、支持軸の本数を2本とすると、2軸解砕装置20は必要以上に大型化せず、設置に場所を採らない。また、2軸解砕装置20の大きさがコンパクトとなる。
また、支持軸20Aそれぞれの回転方向については、独立して、選択できる。そして、支持軸20Aの下部には、支持軸20Aに直交して水平方向に支持部材204が、支持軸20Aに離間して複数配されている。
支持軸20Aの回転方向を独立して選択できるようにすると、すなわち第1支持軸20A及び第2支持軸20Aを同方向に回転させる、逆方向に回転する操作を加えることによって、圧縮梱包品1又は解砕物を詰まらせないようにできる。また支持部材204が備わるので、解砕途中の臭気含有古紙が適度なサイズに解砕されるまで同支持部材204に留まる傾向を示す。そのため適度な大きさに解砕されない臭気含有古紙が塊のまま搬送コンベア11に落下するのを防止できる。
【0090】
支持部材204は、支持軸20Aの長手方向に離間する解砕刃20B,20Bとの中間に設けてもよいが、図示するように、一方の解砕刃20B寄りに接近させると、解砕刃20Bと支持部材との離間距離が短い、長いが支持軸20Aの長手方向に交互にあらわれ、多様な解砕を行わせることができ望ましい。
【0091】
(解砕刃)
図6に示すように支持軸20Aに対して直角に解砕刃20Bが複数備わり、解砕刃20Bは支持軸20A方向に離間して配設されている。解砕刃20Bには鉤状部(フック部)20Cが解砕刃20Bの外方に突出して形成されている。
解砕刃20Bの鉤状部(フック部)20Cの数は適宜でよく、図15の例では6つ、図16の例では2つである。図16の例で示すように、鉤状部(フック部)20Cは解砕刃20Bの円周上の離れた位置に1つずつ合計2つ設けてもよく(図16(a))、また、いわゆる、錨型のように、2つの鉤状部(フック部)20C相互の向きを円周方向の反対側に向かうように設けてもよい(図16(b))。さらに解砕刃20Bの鉤状部(フック部)20Cの向きは全てが同方向のほか、あえて図15に変形例として示すように、鉤状部(フック部)20Cの向きが対向する形態を有していてもよい。
【0092】
解砕刃20Bの鉤状部(フック部)20Cにおける、中心20Qからの半径方向に沿う突出長hは解砕特性との関係で適宜選定できるが、圧縮梱包品1(又はフレコンバッグから取り出された古紙)を対象とする実施の形態においては、15cm~80cm、特に25cm~60cmが好ましい。
【0093】
また、鉤状部(フック部)20Cの向き(鉤状部(フック部)20C先端と支持軸20Aの軸芯を結ぶ線に対し、凹陥している内側面(内側線)が回転に伴って移動する方向が、図6に示す、FR方向であってもよいし、BA方向であってもよい。
図示例では、解砕刃(20B1、20B2、20B3、20B4)はFR方向であり、解砕刃(20B5、20B6、20B7)はBA方向である。また、解砕刃(20B2´、20B3´、20B4´)はBA方向であり、解砕刃(20B5´、20B6´)はFR方向である。このように配置しておくと、支持軸20Aをどちら側に回転させても、圧縮梱包品1(又はフレコンバッグから取り出された古紙)に鉤状部20Cが接触するので、解砕がスムーズに行われる。ここで、FR方向とは同図で支持軸20Aを左側から右側に見た場合に時計回りとなる方向であり、BA方向とは反時計回りとなる方向である。
【0094】
軸芯方向に沿う解砕刃20B,20B…群の鉤状部20Cの位置が軸芯回り方向に相違している。換言すると支持軸20Aを回転させたとき、隣り合う解砕刃20B,20B…それぞれの位相が異なるように配置されている。具体的には、支持軸20Aの軸芯方向の視線で(図6のA-A矢視)について、図15に示すように、隣接する解砕刃20B1及び解砕刃20B2の関係において、解砕刃20B1と中心20Qと解砕刃20B2のなす角度を所定の角度αとなるよう形成することができる。この角度αとしては、特に限定されないが、例えば10度~80度以内で適宜選択できる。
【0095】
別の実施形態として、支持軸20Aを3本以上並列させることもできる。その場合でも、隣り合う支持軸20Aそれぞれの解砕刃20B相互を最接近させたときに、その最接近する解砕刃20B相互の距離が離間するように、隣り合う支持軸20Aを並列させるようにする。
【0096】
圧縮梱包品1(又はフレコンバッグから取り出された古紙)は搬送コンベア5により搬送され、2軸解砕装置20に投入される。解砕部203に導かれた圧縮梱包品1(又はフレコンバッグから取り出された古紙)は、位相の異なる解砕刃20Bそれぞれの回転により力を受け、x方向及びy方向(図5参照)に転がりながら徐々に解砕される。そして、臭気含有古紙の分離と解砕・破断がなされる。
【0097】
解砕後の解砕物、具体的には、解砕後の白色古紙やクラフト紙、プラスチックフィルム、これら以外の臭気含有古紙構成材料のサイズは一様ではなく、大きいサイズのものや小さいサイズのものが混在した状態となる。具体的には、例えば解砕物の少なくとも50%以上のものが、最大幅500mm、最大面積25~10000cm2程度に解砕されているのが望ましい。解砕後の臭気含有古紙のサイズが小さすぎると、最終的に製造される古紙パルプの強度が小さいものとなり、品質の低下を招く原因となる。
適度なサイズに解砕された解砕物は、2軸解砕装置20の開放された下部から搬送コンベア11に落下する。
【0098】
(分離装置)
2軸解砕装置20により解砕され細分化された解砕物は搬送コンベア11により、直接に弁別手段に供給する、あるいは古紙パルプ製造工程に供給するのではなく、好ましくは前記解砕物を大きさ基準で分離し、分離した残分を得て、この残分を弁別手段に供給する、あるいは古紙パルプ製造工程に供給する。
【0099】
この分離装置30としては、回転軸30Aにその長手方向に沿って搬送ディスクが多数設けられた搬送軸が、平行に搬送方向に離間して多数設けられ、搬送ディスクは、その外周面がなす軌跡の各点と前記回転30Aの軸芯との離間距離が段階的に、大から小に変化し、その後小から大に変化する外周面を有するものである、形態が好適である。
また、搬送軸は、回転軸にその長手方向に沿って搬送ディスクが多数、等間隔で設けられている形態とすることもできる。
【0100】
搬送ディスクは、具体的に、その外周がなす形状が三角形、四角形、五角形及び六角形から選ばれる多角形その他の多角形の形態とすることができる。また、同多角形の各辺に膨らみを持たせた略多角形の形態とすることもできる。
図7及び図8の膨らみをもつ略三角形の形態を例にとると、その一つの外周面においては、その外周面がなす軌跡の各点と回転軸30Aの軸芯との離間距離が段階的に、角部から中央にかけて大から小に変化し、その後小から大に変化して他方の角部に至る。
【0101】
実施の形態における分離装置30は、搬送コンベア11により搬送された解砕物の分別を行うものである。搬送された解砕物を、重量物PW、アンダーサイズPU、及びオーバーサイズPOに分別する。例えば、重量物PWには未解砕の臭気含有古紙が主に含まれる。アンダーサイズPUには細切れの臭気含有古紙や白色古紙、クラフト紙、プラスチックフィルムが主に含まれる。オーバーサイズPOには比較的面積の大きい臭気含有古紙が主に含まれ、一部プラスチックフィルムも含まれることになる。分離装置30は全体が下流側を上に向けた傾斜状態に設置されたものである。
【0102】
図7に示すように分離装置30は、搬送方向(x方向)に多数の回転軸30Aを有する。そして、多数の回転軸30Aそれぞれは直交するy方向に離間しつつ延在している。
図8及び図9に示すように各回転軸30Aには多数の搬送ディスクが所定の間隔を空けて設けられ、搬送軸を構成している。搬送ディスクは一方のディスク面から突出部が形成されている。
図示の形態では、突出部は、搬送大ディスク30Cのディスク面に搬送小ディスク30Bが突出した形状をなし、一体化した形態、搬送ディスク(30B、30C)となっている。搬送大ディスク30Cと搬送小ディスク30B相互は、それぞれの中心(中点)を回転軸30Aの軸芯と一致させた形態となっている。しかしながら、これに限定されるものではない。例えば、搬送大ディスク30Cの中心(中点)と回転軸30Aの軸芯がずれており、かつ、搬送小ディスク30Bの中心(中点)と回転軸30Aの軸芯がずれている形態とすることもできる。
第1の回転軸30A1と第2の回転軸30A2は、x方向に並列させることができる。第1の回転軸30A1に設けられる搬送ディスク(30B、30C)は、左側に搬送小ディスク30Bが、右側に搬送大ディスク30Cが向くように形成され、これに対し、次の第2の回転軸30A2に設けられる搬送ディスク(30B、30C)は、右側に搬送小ディスク30Bが、左側に搬送大ディスク30Cが向くように形成され、x方向に隣接する搬送ディスク間で、図9に示すように、搬送小ディスク30Bと搬送大ディスク30Cとが対向するように配置されている。
搬送軸は、回転軸30Aにその長手方向に沿って搬送ディスク(30B、30C)が多数、等間隔で設けられている形態とすることもできる。しかしながら、これに限るものではない。
この態様では、第1の回転軸30Aと第2の回転軸30A、及び相互に近接する4体の搬送ディスク(30B、30C)間で挟まれた領域が間隙30D(図9参照)となる。
また、別の実施の形態として、搬送ディスク各々は、最大径が異なるディスクを複数重ねて一体化して形成されたものであり、最大径が異なるディスク各々の外周がなす形状が三角形、四角形、五角形及び六角形から選ばれる多角形である形態とすることもできる。
【0103】
図19図20に一例を示すように搬送小ディスク30B及び搬送大ディスク30Cは、外周の各辺に膨らみを持たせたほぼ多角形状とすることができる。例えば、三角形~六角形等、多角形とすることができ、これら多角形の各辺に膨らみを持たせるとより好ましい。膨らみを持たせると、隣り合う回転軸を回転させたとき、搬送ディスクの外周の角部から中央にかけて大から小への変化が膨らみを持たせない搬送ディスクよりも緩やかなものとなる。
【0104】
また、搬送大ディスク30Cを四角形、搬送小ディスク30Bを三角形とすることもできる。しかしながら、回転させたときにx方向に隣接する搬送ディスク(30B、30C)相互を接触しないように離間させて配置することは言うまでもない。
【0105】
搬送大ディスク30Cの方が搬送小ディスク30Bより大形であり、回転軸芯から搬送大ディスク30Cの外周面までの距離は、回転軸芯から搬送小ディスク30Bの外周面までの距離よりも長い。搬送ディスクの外周面に働く回転力は、この距離が長いほど大きい。紙類(搬送材料300)が搬送小ディスク30Bの外周面にある場合と、搬送大ディスク30Cの外周面にある場合では、搬送材料300が跳ね上がる力が異なることになる。よって、分離装置30に投入された搬送材料300の各々は、分散装置30において適宜分散化される。
【0106】
図18(a)に示すように搬送ディスクの別の実施形態として、搬送ディスク全体形態が凸型ではない多角形状、例えば、三角形や四角形などであってもよい。第1の回転軸30A1に設けられた多数の搬送ディスク30Eと第2の回転軸30A2に設けられた多数の搬送ディスク30E相互が搬送方向に対向して配されてもよい。なお、これら多数の搬送ディスク30Eの配列は第3の回転軸30A、第4の回転軸30A、・・・、第nの回転軸30Aについても同様に配されてもよい。
また、同図(b)に示すように第1の回転軸30A1に多数設けられた搬送ディスク30E1各々と、第2の回転軸30A2に多数設けられた搬送ディスク30E2各々とは相互に対向して配されていない形態であってもよい。例えば、第1の回転軸30A1に間隔を空けて設けられた搬送ディスク30E1各々に対して、その間隔に搬送ディスク30E2各々が配置されるようにしてもよい。
なお、これら多数の搬送ディスク30Eの配列は第3の回転軸30A、第4の回転軸30A、・・・、第nの回転軸30Aについても同様に配されてもよい。
【0107】
図30に示すように搬送ディスクの外周面に突起部26を複数突設させた態様とすることができる。突起部26を有することで、搬送材料300は搬送ディスクの角部のみならず突起部26においても、搬送ディスクの回転力により上方への跳ね上がり及びバウンドが効率よく起こり、搬送材料300の塊が解れ、密着された紙の分散化が促進される。また、図31(a)に示すように搬送ディスクの態様を一例として、膨らみのある三角形の各角部を切り欠いた形態とすることができる。搬送ディスクの他の形態として膨らみのある四角形、五角形、六角形の各々について各角部を切り欠いた形態とすることができる。さらに、図31(b)に示すように回転軸30Aが搬送ディスクの中心(中点)からずれており、搬送ディスクが偏心回転する形態とすることができる。この場合の、搬送ディスクの外周がなす形状は、三角形、四角形、五角形、六角形等の角形でもよいし、円形、楕円形でもよい。これらの形状の搬送ディスクを回転軸30Aを中心に回転させると、これら搬送ディスクと回転軸30Aとの離間距離が最も長い外周部において、大きい回転力により搬送材料300を勢いよく跳ね上げることができる。
【0108】
(投入及び選別)
分離装置30を稼働させると、多数の回転軸30Aは、図8に示す曲線矢印の向きに回転を継続する。回転速度については可変に調節することができる。搬送コンベア11により搬送された解砕物が、分離装置30の上流側に導かれると、解砕物(搬送材料300)は搬送ディスク(30B、30C)の形状及び回転力により下流側上方へ跳ね上がり、バウンドしながら下流側に順次移動する。また、バウンドを繰り返すことで、搬送材料300は分散化され、分離装置30の一部にのみ搬送材料300による負荷がかかるのを防止できる。すなわち、例えば図7図9に示す例では、ほぼ三角形の搬送ディスクが回転すると、外周面と回転軸芯との離間距離が変化するので、クラフト紙や白色古紙、有色古紙、プラスチックフィルムなどを跳ね上げながら分離装置30の下流側に送り込む。
【0109】
(重量物PW)
本実施形態では搬送面27を下流側を上に向けた傾斜状態に設置している。重量物PWは跳ね上がらない又は跳ね上がりが弱いので、搬送面27の上流端から下方に転がり落ち、下流端から下方に集められる。この重量物PWは、例えばフォークリフト2を用いて、再び1軸解砕装置10に投入される。
【0110】
(アンダーサイズPU)
重量物PWが除かれた搬送材料300のうち比較的、細切れの白色古紙やクラフト紙、臭気含有古紙、プラスチックフィルム等(アンダーサイズPU)は、搬送過程で間隙30Dから重力により透過する。当該アンダーサイズPUのうちプラスチックフィルムは、例えば、集められ樹脂再生物の原料として再利用されたり、燃料として利用されたりする。また、細切れの白色古紙やクラフト紙、臭気含有古紙は、集められ燃料として利用される。
【0111】
(オーバーサイズ)
さらにアンダーサイズPUが除かれた搬送材料300は、搬送面27の下流端に順次移動される。下流端から落下したこの搬送材料(オーバーサイズPO)は主に比較的面積の大きい紙類(白色古紙やクラフト紙、臭気含有古紙等)からなり、その他多くはないがプラスチックフィルムも含まれる。これらオーバーサイズPOは次に続く弁別工程に導かれる。
オーバーサイズPOの分画は、適宜選択することができるが、例えば、25cm2分画基準とすることができる。
【0112】
有色の臭気含有古紙から有色古紙を製造する工程では、有色古紙の原料とそれ以外のものの選別が必要である。当該有色の臭気含有古紙からプラスチックフィルムを取り除いたものであっても、選別価値のないスクラップや縫い糸、細切れの臭気含有古紙やプラスチックフィルム等(例えば、数センチ四方のクラフト紙)が依然として解砕された解砕物に混在する。これらアンダーサイズPUは、優良な有色古紙を製造する工程の妨げとなる。
【0113】
従来は、人の手によりアンダーサイズPUを取り除いていたが、費用対効果の面で低いものであった。本実施形態に係る分離装置30を用いることで、重量物PWはもちろん、アンダーサイズPUも排除される。そうすると、オーバーサイズPOに含まれるアンダーサイズPUを極力少なくすることができる。よって、次工程である弁別工程において質の高い有色古紙の原料を用いることができ、製造製品の品質向上につながる。
【0114】
また、1軸解砕装置10により適度なサイズに解砕された解砕物の中には、一部塊のままの状態や臭気含有古紙の小片が複数、一体化したままの状態のものも混在する場合がある。このような状態の解砕物でも分離装置30により跳ね上がったりバウンドしたりすることで、塊が解れ、臭気含有古紙の一体化した小片が分散化される。そうして、重量物PW、アンダーサイズPU、オーバーサイズPOに分離される。
【0115】
ここで、搬送面27は水平に設置することもできるが、下流側をリフトアップさせ、傾斜させて配置することもできる。このとき、図27に示すように、傾斜角度θ2は10度~30度、好ましくは15度~25度とするとよい。搬送材料300は搬送ディスクの回転により下流側上方へ跳ね上がる(この場合の跳ね上がり角度を、図27(a)のθ1とする)。しかしながら、搬送面27を傾斜させると、搬送材料300の前方への跳ね上がりは鈍化し、搬送材料300は上方へより跳ね上がる。例えば、搬送面27を角度θ2だけ傾斜させた場合、跳ね上がり角度は、図27(b)のθ1+θ2となる。そうすると、搬送材料300の下流側(前方)への移動速度は小さくなるので、搬送材料300が搬送面27を通過する時間は長くなる。個々の搬送材料300は分離装置30内に、より長い時間滞留して分離されることになる。
重量物PWは跳ね上がらない又は跳ね上がりが弱いので、搬送面27を傾斜させることで上流側から下方に転がり落ち、他の搬送材料300と分離される。結果として、搬送材料300は重量物PW、アンダーサイズPU、及びオーバーサイズPOに確実に分離される。なお、重量物PW、特に未解砕の臭気含有古紙は再度1軸解砕装置10に投入される。
【0116】
搬送ディスクの回転速度及び、上記傾斜角度はそれぞれ独立に可変に調節可能である。同回転速度を調節することで搬送材料300の跳ね上がり具合が変わり、また同傾斜角度を調節することで搬送材料300が分離装置30に滞留する時間が変わる。これら回転速度と傾斜角度を調節することで、分離装置30の分離性能を適宜調節できる。よって、本パルプ原料となるクラフト紙の最適な分離が可能となる。なお、搬送ディスクは図8に示す曲線矢印方向に回転(順回転)でき、また逆方向にも回転(逆回転)できる。
【0117】
搬送ディスクの最大径は、9~70cmとするとよい。より好ましくは20~50cmがよく、9cmを下回ると、搬送方向に対向する搬送ディスク相互の間隔が密になり間隙30Dの大きさが小さくなるので、アンダーサイズPUの一部が間隙30Dから重力により透過しにくくなり、アンダーサイズPUとオーバーサイズPOが確実に分離されない。また、70cmを超えると、搬送方向に対向する搬送ディスク相互の間隔が疎になり間隙30Dの大きさが大きくなり過ぎ、オーバーサイズPOの一部も間隙30Dから落下してしまう。よって、所望の分離を行えない。
また、図18(a)において、回転軸30A相互の離間間隔28x、回転軸30Aに設けられた搬送ディスク相互の離間間隔28yは、分離対象物と所望の大きさ基準で分離できるよう適宜調節することができる。一例として、回転軸30A相互の離間間隔28xを45cm~65cm、回転軸30Aに設けられた搬送ディスク相互の離間間隔28yを40cm~60cmとすることができる。しかしながら、この範囲に限るものではない。
搬送ディスク(30B、30C)の回転速度は、100min-1~200min-1であることが好ましい。また、120min-1~180min-1であることがより好ましい。100min-1を下回ると搬送材料300が搬送ディスク(30B、30C)間に多量に挟まれる原因となり、搬送材料300の確実な分離が行われなくなる。200min-1を上回ると搬送ディスク(30B、30C)の回転力が大き過ぎ、搬送材料300の跳ね上がり及びバウンドが乱雑になったり、直ちに搬送面27の下流端に達してしまったりして確実な分離が行われなくなる。
搬送ディスクの回転速度については、分離装置30の上流部、下流部で異なる回転速度にすることができる。例えば、分離装置30の搬送方向の、中点より上流部に位置する搬送ディスクの回転速度を、中点より下流部に位置する搬送ディスクの回転速度よりも小さいものとするとよい。このようにすると、上流部においては回転速度が比較的小さいので、重量物PWとそれ以外(アンダーサイズPUとオーバーサイズPO(請求項における「残分」をいう。))を確実に分離できる。下流部においては回転速度が比較的大きいので分離装置30に搬送材料300が留まる時間を短縮でき、効率的な処理速度を達成できる。
【0118】
なお、分離装置30を稼働して、搬送材料300を分離する際に発生する粉塵等の飛散防止のために、分離装置30に粉塵飛散防止手段を設けてもよい。粉塵飛散防止手段の例として、分離装置30の上方に換気用フードを設け、搬送材料300が分離される過程で発生する粉塵等を換気手段により吸引することで粉塵の飛散を防止できる。換気手段としては、具体的に、分離装置30の上方全体を覆うフードとフードに連結されたダクト、そしてダクトの先にフィルターを介して換気装置を設置するとよい。換気装置を起動させることで、搬送材料300から発生する粉塵等はフードに吸い込まれ、フィルターに集塵される。なおフィルターを備える位置はフートとダクトの連結部に設けることもできる。
【0119】
分離装置30の幅方向の両端縁をケーシングで覆うことができる。ケーシングにより搬送材料300が幅方向の端縁から脱落するのを防止する効果がある。
また、別の実施形態として分離装置30の幅方向の両端縁と上方を覆うケーシングを設けてもよい。搬送材料300が幅方向の端縁から脱落することを防止でき、搬送材料300から発生する粉塵等の分離装置30外部への飛散を防止できる。
【0120】
さらに、別の実施の形態として、複数台の分離装置30を直列に配置させた形態を提供できる。例えば、第1の分離装置30は、搬送ディスクの回転速度を相対的に大きく設定し、第1の分離装置30の搬送面27の傾斜角度を相対的に小さく設定する。第2の分離装置は、第1の分離装置の搬送面27の下流端に達した搬送材料300の投入を受けるものである。第2の分離装置30は、同回転速度を相対的に小さく設定し、第2の分離装置30の搬送面27の傾斜角度を相対的に大きく設定する。
第1の分離装置30では搬送材料300の下流端までの到達時間が相対的に短い。第1の分離装置30の搬送面27は傾斜しているので、重量物PWは跳ね上がらない又は跳ね上がりが弱く下流側に進まず、第1の分離装置の上流から下方に転がり落ち、下流端から下方に集められる。一方、第1の分離装置の回転速度は相対的に大きく搬送材料300は前方上方へ跳ね上げられ、下流端までの到達時間が短いため、アンダーサイズPUの一部は、間隙30Dから重力により透過される。しかしながら、残りのアンダーサイズPUは透過されずに第1の分離装置30の下流端に達してしまう。結果としてアンダーサイズPUの一部とオーバーサイズPOが下流端に達する。この下流端に達したものを、「第1の残分」という。その後、これらオーバーサイズPOと一部のアンダーサイズPU(第1の残分)は第2の分離装置30に投入される。
第2の分離装置30では搬送材料300の滞留時間が相対的に長い。搬送材料300(主にオーバーサイズPOと一部のアンダーサイズPU)は第1の分離装置30よりも時間をかけて分離されるので、この一部のアンダーサイズPUを確実に間隙30Dから重力により透過させることになる。第2の分離装置の搬送面27の下流端に達したオーバーサイズPOは、次の工程に投入される。
【0121】
他の実施の形態として、分離装置30を揺動させる形態を提供できる。揺動させることで、搬送材料300は搬送ディスクの回転力と揺動による力を受け、より一層分離されやすくなる。分離装置30の揺動については搬送方向(すなわち、前後方向)、上下方向、幅方向に揺動させてもよいし、回転の動作により揺動させてもよい。またこれらの動作を組み合わせた動作等種々の動作で揺動させることもできるが、これらの動作に限るものではない。
図29に示すように揺動機構として次の形態を一例として示すことができる。分離装置30を揺動させるための揺動軸25が分離装置30の下流部の幅方向の両側端から、それぞれ幅方向の外方に突出して備わる。同じく、揺動軸25が分離装置30の上流部の幅方向の両側端から、それぞれ幅方向の外方に突出して備わる。これら4本の揺動軸を前後方向26(すなわち、図29に示す矢印26(x方向及び-x方向)に所定の振幅で動作させることにより分離装置30を揺動させることができる。同様に、幅方向(y方向及び-y方向)に所定の振幅で動作させてもよい。さらに、分離装置30を上下方向(z方向及び-z方向)に所定の振幅で揺動や上下動をさせてもよい。また、これら4本の揺動軸をxz平面上で円弧を描くように回転動作させることにより分離装置30を揺動させることができる。別の揺動機構の形態として、分離装置30全体を支持する支持部材を設け、この支持部材が揺動機構を有する形態とすることもできる。
【0122】
オーバーサイズPOは、例えば搬送コンベア12を介して投入フィーダー30に投入される。投入フィーダー30は分散化手段を、又は分散化手段の一部を構成することができる。
投入フィーダー30の一例は、下流側が下り傾斜の振動フィーダーである。この投入フィーダー30では下流側に落下する過程で、幅方向に分散されるとともに、オーバーサイズPOの重なりを解除して分散化(個別化)が図られる。
なお、搬送コンベア12及び投入フィーダー30を設けない態様とすることもできる。この場合、分離装置30により分離されたオーバーサイズPOは、直接、弁別(分別)装置40に投入される。
【0123】
(弁別手段)
投入フィーダー30により分散されたオーバーサイズPOは、弁別(分別)装置40に投入される。
弁別(分別)装置40は、例えば、搬送コンベア41と、ハイパースペクトルカメラ43により材料を測定する材料測定手段とを有するのが望ましい。
また、個々の搬送物について、材料測定手段により測光した吸光度スペクトルに基づきセルロース成分が支配的であるか否かを判断する弁別手段45を有するのが望ましい。
ハイパースペクトルカメラ43は、搬送コンベア41の幅方向に設けても、搬送コンベア41の流れ方向に並べて設けても良いが、好ましくは、後工程におけるエアーによる吹き飛ばし仕分けとの連携動作精度を高め得る効果から、搬送コンベア41の幅方向に並列して設けることが好ましい。
【0124】
搬送コンベア11では投入されたオーバーサイズPOを、搬送方向に分散させる。搬送物を分散化するには、例えば、搬送コンベア11の搬送面を前後や上下、左右に振動するとよい。また、搬送面に対して、搬送面の上方(斜め上方を含む)や幅方向の端縁からもう一方の端縁へエアーを送風できるようにエアノズル59を備えてもよい。このように搬送面を振動させたり、搬送面にエアーを送風することで搬送物が好適に分散化され、ハイパースペクトルカメラ43による弁別が確実なものとなる。
【0125】
かかる弁別手段45による弁別により、セルロース成分が支配的である場合には、臭気含有古紙やその他の古紙である、他方で、セルロース成分が支配的ではない場合(例えば、樹脂成分が支配的である場合)には、プラスチックフィルムである、として弁別し、その弁別信号に基づいて仕分けを行うことができる。
【0126】
「臭気含有古紙を含む古紙以外」のものとして、袋状の臭気含有古紙の内容物や臭気含有古紙に付随する粘着テープ類、ワッペン類、ファイルの金具、金属クリップ類、セロハン、発泡スチロール、縫い糸等のいわゆる禁忌品がある。
この禁忌品の例示のように、「臭気含有古紙を含む古紙以外」のものは禁忌品であり、古紙パルプ原料とすることができないので古紙処理系から除外する必要がある。
【0127】
また、例えば樹脂フィルムが貼合されたラミネート紙などを分別するためには、材料(材質)測定が必要となる。そこで、ハイパースペクトルカメラ43により材料(材質)を測定する。
ハイパースペクトルカメラ43は、可視光から短波赤外領域(SWIR)までの広い波長領域を細かい波長域で区分けし、それぞれの波長域での光強度(波長スペクトル)を取得することができる。例えば、近赤外線(750~1700nm近傍)領域も撮影可能である。符号46は可視光から近赤外領域までの波長をもつ光源である。
物質を構成している分子は、様々な運動をしており、運動している分子に光をあてると、運動状態に合わせて特定の波長の光のみが吸収される。吸収される赤外線領域の波長は、分子を構成する原子間距離と振動方向によって決まった値になり、分子の種類を的確に表す特徴的な波長分布になる。反射・吸収された波長分布(吸収スペクトル)を調べることによって、測定対象物がどのような分子を含んでいるかを知ることが可能である。かかる原理によって、材料(材質)を測定することができる。
【0128】
図21図26に吸収スペクトル分布例を示す。セルロースと樹脂類とは吸収スペクトル波長分布が明確に異なるので、臭気含有古紙を含む古紙とプラスチックフィルムとに弁別が容易となる。
ちなみに、セルロース成分が支配的である、すなわち臭気含有古紙を含む古紙である蓋然性が高い場合、近遠赤外線の反射波の強度波形が1440~1490nmの範囲に深い谷を有する波形として明確に現れる。
これに対し、樹脂成分が支配的である場合には、波形谷が1670nm近辺、1730nm近辺に現れ、しかも、谷部の波形も材質特有なものを示す。したがって、樹脂間でも材料(材質)の弁別が可能である。
【0129】
他方で、測色カメラ42を使用した測色手段により測色する。測色カメラとしては、一般のCCDカメラを使用できる。可視光領域をカラーフィルター等で、赤・緑・青に分光し、それぞれを取得することで、画像を得る。
この場合、測色手段による測色値について白色度が高いか否かを基準として判断する。
そして、白色度が高い場合には白色古紙であると判断し、新聞古紙パルプ用として弁別し、白色度が高くない場合には、有色古紙であり、新聞古紙パルプ用としては使用できないもとして分別できる。
【0130】
CCDカメラでは、撮像範囲の所定面積範囲を搬送方向の幅方向に走査し、測色情報を得る。測色値の白色度が高いか否かを判断するに際し、HSV色空間で判断するのが望ましい。HSV色空間で判断することは人間の視感との対応関係が高いからである。
なお、本発明は、他のRGB色空間などの使用を排除するものではない。
【0131】
HSV色空間としては、次記表1のような設定範囲とすることができる。この設定範囲は、変えることができる。設定範囲の理由としては白色は、色相の偏りが無いので、Hは全領域を指定、色味(再度)が無いので、S小さい値(0~20)を指定、明るいので、Vは大きい値を指定したものである。
【表1】
【表2】
表1の設定範囲の下で、各色要素が表2の範囲(最小値と最大値との間の範囲)内である条件がアンドで成立する場合に、「白色」であると判断し、それ以外のものは、「有色」と判断することができる。
さらに具体的には、搬送物全体のピクセルのうち、白のピクセル数の方が多い、例えば50%超である場合には、対象物が白いと判定し、それ以外の場合を有色と判定することができる。この例では50%を分岐基準としたが、他の割合での基準設定も可能である。
【0132】
弁別(分別)装置40により弁別(分別)を行った搬送物について、搬送コンベア41の搬送速度との関係で、当該搬送物が、例えば搬送コンベア41から落下する過程で仕分け装置50を作動させる。
仕分けには人手により行うこともできるが、自動化手段を使用するのが望ましい。
実施の形態では、エアコンプレッサー(図示せず)からのエアーによる吹き飛ばし仕分けを行うようにしてある。
【0133】
すなわち、白色の臭気含有古紙を含む白色古紙が搬送コンベア41の下流端に到達した場合には、第1エアノズル51を作動させ、第1回収容器53に回収する。有色の臭気含有古紙を含む有色古紙が搬送コンベア41の下流端に到達した場合には、第2エアノズル52を作動させ、第2回収容器54に回収する。白色古紙でなく、有色古紙でもないものは、例えばエアノズルを作動させることなくそのまま搬送コンベア41の下流端から落下させ第3回収容器55に回収できる。
【0134】
ここで、搬送コンベア41の幅が広い場合には、幅方向に複数の搬送物が搬送されることになるので、上記エアノズルは幅方向に複数配置することができる。
また、回収の方向を図示例のように搬送方向に区分するほか、搬送コンベア41の下流部で幅方向外側に向けてエアーによる吹き飛ばしを行い仕分け及び回収を行うこともできる。また、エアーによる吹き飛ばしを搬送コンベア41上で行うようにしてもよい。
さらに、プラスチックフィルムを仕分け及び回収するために、搬送コンベア41の横方向外方に向けてエアーによる吹き飛ばしを行うこともできる。
プラスチックフィルムの比重は、臭気含有古紙を含む古紙の比重よりも小さいことを利用し、搬送コンベア41でプラスチックフィルムのみをエアーにより吹き飛ばすと好ましい。エアーの風圧を適宜調節することで、臭気含有古紙を含む古紙を吹き飛ばさず、プラスチックフィルムを吹き飛ばすことが可能である。
さらに、搬送コンベア41で搬送される臭気含有古紙を含む古紙とプラスチックフィルムの重なりを判別するため、図31に示すように搬送コンベア41の幅方向端縁にハイパースペクトルカメラ43を別途設けても良い。
【0135】
臭気含有古紙のうちの、白色古紙311(白色臭気含有古紙)は新聞古紙パルプ用材料とし、有色古紙312(有色臭気含有古紙)は段ボール古紙パルプ用材料とすることができる。図1に白色古紙311及び有色古紙312をベーラー13により梱包し、後に利用に供する形態を図示してある。
【0136】
上記のように回収された白色臭気含有古紙は、新聞古紙パルプ(NDIP)用材料とするか雑誌古紙パルプ(MDIP)用材料とし、新聞用紙や再生PPC用紙等として再生できる。有色臭気含有古紙については、段ボール古紙パルプ(WP)用材料とすることができる。
雑誌古紙パルプ(MDIP)は、新聞古紙パルプ(NDIP)と同じパルプ製造設備(フロー)で製造できる。各種古紙パルプを製造する場合、既存の又は公知のパルプ製造設備で製造できるが、以下の実施の形態で製造するのが最適である。
【0137】
回収された有色の臭気含有古紙を有する古紙13Aにより段ボール古紙パルプ(WP)を製造する一例を図13に示した。
この実施の形態を要すれば次のとおりである。
(1)回収された臭気含有古紙の乾式の解砕工程
(2)高濃度パルパーによる離解工程
(3)オゾン水による臭気低減化工程
(4)リフラー型スクリーンによるスラッシング工程を含む粗選工程
(5)前段クリーナー、ホールスクリーン、スリットスクリーン、後段クリーナーの順の第2粗選工程
(6)脱水工程
(7)精選工程でのホールスクリーンリジェクトは、ローターと丸穴円筒バスケットからなる離解分散と、スリットスクリーン及び又はドラムスクリーンの精選リジェクト回収工程
を有するものである。
なお、上記(2)の工程を、オゾン水を注入させて離解させる工程にすることもできる。この場合、上記(3)の工程を省略することができる。
【0138】
具体例を説明すると、回収された有色の臭気含有古紙(ベール)13Aは必要に応じ乾式で解砕装置61により解砕される。
例えば35mm幅に裁断された解砕物は、高濃度パルパー62により好ましくは連続高濃度パルパー、より好ましくは蒸気を得ながら離解される。
有色の臭気含有古紙に含まれる重量異物は、分離機78により分離される一方で、タンク63に一旦貯蔵される。続いて、第1粗選工程を実施ためのフラッシュソーター(リフラー型スクリーン)からなる分別機64により異物分離を行い分離される。異物分離された臭気含有古紙は、処理槽65に供給され、オゾンとの接触処理された後、水中又は臭気低減剤(漂白剤等)を含む溶液中で攪拌され、その後、タンク67に送られる。
続いて、前段クリーナー68により重量異物を除去し、ホールスクリーン69に送り、残存するプラスチックフィルムやラミネートなどを分離し、タンク72に貯蔵する。
その後、スリットスクリーン73により細かな異物除去を行い、タンク74に貯蔵する。
続いて、後段クリーナー75により、細かな異物除去を行い、フィルター76、例えばドラム式パルプレスフィルターにより脱水を図り、古紙パルプとしてタンク77に仮貯蔵する。
他方で、第1粗選工程でのホールスクリーン69のリジェクト分は、ローターと丸穴円筒バスケットからなる、離解と分別の両方の機能を有する離解分散機(コンビソーター)71に供給される。同離解分散機(コンビソーター)71ではリジェクト中の繊維分が回収される。
【0139】
弁別回収された白色の臭気含有古紙その他の白色古紙は、例えば、図14のフローにより新聞古紙パルプ(NDIP)を製造することができる。
白色古紙80aは、パルパー80によりオゾン水により離解され、ターボセパレーター81、高濃度クリーナー82及び粗選スクリーン83により粗選される、続いて、プレフローテーター84により脱墨された後、クリーナー85、スクリーン86により精選され、脱水機87により脱水される。その後、ホットディスパーザー88により異物除去を行い、過酸化水素タワー89にて漂白処理され、ポストフローテーター90により脱墨された後、脱水機91により脱水され、高濃度ポンプ92により高濃度タワー93から抄紙機(図示せず)へ送給される。なお、プレフローテーター84及び/又はポストフローテーター90では、水又は臭気低減剤(漂白剤等)を含む溶液を攪拌してもよい。
【0140】
別の形態として、白色古紙80aを、パルパー80によりオゾン水により離解するのではなく、パルパー80の下流に処理槽65を別途設け、この処理槽65でオゾン処理した後、ターボセパレーター81に供給する形態としてもよい。
【0141】
本発明の臭気含有古紙を含む古紙の処理方法の実施にあたり、上記の装置を使用することに限定されず、また、一部の工程を人力又は機器の併用による半自動で行うことができる。梱包品は圧縮梱包品に限定されない。さらに回収古紙の利用先、及び廃棄先は適宜選定でき、上記例に限定されない。
【0142】
臭気含有古紙のうち、特にクラフト紙は強度のある紙として包装用紙に広く使用されている。特に重量がかかる米、砂糖、セメント、肥料などの包装に使用されている重包装袋用クラフト紙は,繊維の長い針葉樹を用いて製造されているものがある。
【0143】
以下に、本発明に組み込みを行うことができる態様を列挙する。
[態様1]
分散化手段により分散された搬送物群を搬送コンベア上に乗せて搬送し、搬送コンベア上に対向して、ハイパースペクトルカメラを設置する古紙パルプ原料の製造方法。
【0144】
[態様2]
分散化手段により分散された搬送物群を搬送コンベア上に乗せて搬送し、搬送コンベア上に対向して、ハイパースペクトルカメラを設置するとともに、
搬送物群が搬送コンベア上から排出される時点で、排出搬送物をエアーで吹き付けて飛ばす分別ノズルを設け、前記判断基準に基づいて飛ばす位置を区別することにより仕分けを行う、
古紙パルプ原料の製造方法を提供できる。
【0145】
[態様3]
近遠赤外線の反射波の強度波形が1440~1490nmの範囲に深い谷を有する波形の場合を、セルロース成分が支配的であると弁別する、
古紙パルプ原料の製造方法を提供できる。
【0146】
[態様4]
2軸解砕装置は、
軸芯回りに回転する実質的に平行な少なくとも2本の第1支持軸及び第2支持軸を有し、
前記各支持軸に、径方向外側に突出する解砕刃が前記軸芯方向に間隔を空けて複数設けられ、
前記解砕刃は、少なくとも外周部に鉤状部を有し、かつ、前記軸芯方向に沿う解砕刃群の鉤状部の位置が軸芯回り方向に相違しており、
前記解砕刃を有する前記支持軸がケーシング内に配置されており、
前記梱包品を解砕する過程で、前記解砕刃が前記重包装袋を切り裂く、
構成である。
【0147】
[態様5]
前記解砕物を分離する分離装置は、
前記解砕物を大きさ基準で分離するものであり、
回転軸にその長手方向に沿って搬送ディスクが離間して多数設けられて搬送軸を形成し、
前記搬送軸が平行に搬送方向に離間して多数設けられて搬送面が形成され、かつ、この搬送面に間隙が形成され、
前記搬送ディスクは、その外周面がなす軌跡の各点と前記回転軸芯との離間距離が段階的に、大から小に変化し、その後小から大に変化する外周面を有し、
前記搬送面が水平面に対して上方に傾斜しており、
分離対象物を前記搬送面に沿って搬送する過程で、分離対象物の一部を、前記搬送面の間隙を重力で透過させ、透過しないものを前記残分とする、
構成である。
【0148】
他方で、図1の例は、例えば1軸破砕装置と多軸(2軸)破砕装置との設置位置が離れている場合には有効の例である。
【0149】
これに対し、1軸破砕装置と多軸(2軸)破砕装置とを近接し、1軸破砕工程と多軸(2軸)破砕工程とを連続化できる。
この場合、次の工程を有する構成とすることができる。
前記重包装袋を1軸破砕装置により破砕処理して、紙袋及びプラスチック袋を破砕する1軸破砕工程。前記1軸破砕工程からの破砕された少なくとも紙分を多軸破砕装置により破砕処理する多軸破砕工程。
【0150】
実施の形態では、図2に示すように、臭気含有古紙を含む古紙の圧縮梱包品1は、例えばフォークリスト2によって、前コンベア6に送られ、圧縮梱包品の番線などの異物7の除去がなされた後、投入コンベア8により1軸解砕装置10に投入される。
1軸解砕装置10の破砕物は、搬送コンベア15、16によって投入コンベア8に送られ、2軸解砕装置20によって解砕されるものである。
2軸解砕装置20以降のフローは、図1の場合と同様とすることができる。
【実施例
【0151】
臭気含有古紙について官能評価試験を行った。官能評価試験の操作手順は以下のとおりである。なお、官能評価の評点は5段階とし、臭気が全く感じられないものを1、臭気が強く感じられるものを5とした。
【0152】
<実施例1>
(1)パルパーにオゾン濃度が5ppmであるオゾン水2Lを入れ、養魚飼育袋30gを供給した。
(2)その後、オゾン濃度40g/m3のオゾン含有ガス112(臭気低減剤)を流量1L/分で連続して注入配管111によりオゾン水中に60分間供給し続けた。この60分間、オゾン水のオゾン濃度は10ppmに維持された。また、この60分間、1,200rpmで30,000回転、パルパーに備わる攪拌機でオゾン水を攪拌させ養魚飼育袋を離解した。
(3)その後、パルパーから回収された離解物(残物)を、定性ろ紙(ADVANTEC社製No.2)でブフナーロートによりろ過し、洗浄後乾燥させた。
(4)乾燥した残物について、臭気の有無を評価した。臭気の有無は人間の嗅覚による官能評価により行われた。
(5)乾燥した残物について、パルプの強度を評価した。パルプの強度は人間の触手による官能評価により行われた。
<実施例2~3>
実施例2及び3は実施例1と、同様の条件で試験を行った。ただし、オゾン水のオゾン濃度は、次記のように変更した。オゾン濃度は、実施例2では20ppm、実施例3では2ppmに維持された。
【0153】
<比較例1~8>
(1)パルパーに水2Lを入れ、養魚飼育袋30gを供給し、薬液(臭気低減剤)15mLを入れた。
(2)その後、60分間、1,200rpmで30,000回転、パルパーに備わる攪拌機で水を攪拌させ養魚飼育袋を離解した。
(3)その後、パルパーから回収された離解物(残物)を、定性ろ紙(ADVANTEC社製No.2)でブフナーロートによりろ過し、洗浄後乾燥させた。
(4)乾燥した残物について、臭気の有無を評価した。臭気の有無は人間の嗅覚による官能評価により行われた。
(5)乾燥した残物について、パルプの強度を評価した。パルプの強度は人間の触手による官能評価により行われた。
【0154】
<比較例9>
(1)パルパーに養魚飼育袋を供給した。パルパーに水を入れ、脱墨剤を濃度2kg/養魚飼育袋1000kg、10%溶液になるように入れた。また、パルパーに苛性ソーダを3.6kg/養魚飼育袋1000kgになるように入れ溶液を調整した。離解温度を45℃、離解時間を15分としてパルパーに備わる攪拌機でこの溶液を離解した。
(2)フロテーターに水を入れ、上記(1)の離解物を供給し、脱墨剤を0.44%溶液になるように入れた。そして、温度45℃で3分間、フロテーター内で脱墨処理を行った。
(3)その後、フロテーターから回収された残物を、定性ろ紙(ADVANTEC社製No.2)でブフナーロートによりろ過し、洗浄後乾燥させた。
(4)乾燥した残物について、臭気の有無を評価した。臭気の有無は人間の嗅覚による官能評価により行われた。
(5)乾燥した残物について、パルプの強度を評価した。パルプの強度は人間の触手による官能評価により行われた。
【0155】
<比較例10>
(1)パルパーに水2Lを入れ、養魚飼育袋30gを供給し、薬液(臭気低減剤)40mLを入れた。
(2)その後、60分間、1,200rpmで30,000回転、パルパーに備わる攪拌機で水を攪拌させ養魚飼育袋を離解した。
(3)その後、パルパーから回収された離解物(残物)を、定性ろ紙(ADVANTEC社製No.2)でブフナーロートによりろ過し、洗浄後乾燥させた。
(4)乾燥した残物について、臭気の有無を評価した。臭気の有無は人間の嗅覚による官能評価により行われた。
(5)乾燥した残物について、パルプの強度を評価した。パルプの強度は人間の触手による官能評価により行われた。
【0156】
官能評価試験(臭気の有無)の結果を表3に示す。なお、評価基準は以下の通りである。
5:非常に臭気が強い(元原料と変わらない)。
4:臭気が強い。
3:臭気がある。
2:ほとんど臭気を感じない。
1:全く臭気を感じない。
【0157】
官能評価試験(パルプの強度)の結果を表3に示す。なお、評価基準は以下の通りである。
◎:得られた残物をA4サイズのシートにして、触手にて手肉感を評価した結果、紙腰が強く原料として適している。
○:得られた残物をA4サイズのシートにして、触手にて手肉感を評価した結果、紙腰が若干弱く原料としては使用できるレベルである。
△:得られた残物をA4サイズのシートにして、触手にて手肉感を評価した結果、紙腰が弱く原料としては使用するには難を要する。
×:得られた残物をA4サイズのシートにして、触手にて手肉感を評価した結果、紙腰が非常に弱く原料としては使用することができない。
【0158】
(考察)
本実施例で用いた養魚飼育袋の臭気は、トリメチルアミン又はアンモニア成分が要因と考えられるが、前記臭気成分の分解による脱臭効果はオゾンによる脱臭作用が最も優れていることが判明した。また、上記養魚飼育袋は、基材にラミネート層を備えたものであった。このような形態の古紙は離解・脱臭が困難な古紙とされているが、オゾンの酸化力が強いため、離解し難いラミネート層の近辺のパルプ繊維まで浸透し(殺菌)、かつ耐性菌ができ難いので、パルプ原料が最適なものになると推測される。
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0159】
各種臭気含有古紙を含む古紙を回収して資源の有効利用及び環境保全に役立たせることができる。
【符号の説明】
【0160】
1 圧縮梱包品
10 1軸解砕装置
20 2軸解砕装置
30 分離装置
40 弁別(分別)装置
50 仕分け装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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