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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】インダクタ部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/29 20060101AFI20231106BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20231106BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
H01F27/29 123
H01F17/00 B
H01F17/04 A
H01F17/04 F
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019098770
(22)【出願日】2019-05-27
(65)【公開番号】P2020194853
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-01-26
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 由雅
(72)【発明者】
【氏名】山内 浩司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏規
(72)【発明者】
【氏名】野尾 直矢
【合議体】
【審判長】山田 正文
【審判官】篠原 功一
【審判官】岩田 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-75478(JP,A)
【文献】特開2008-106290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-19/08
H01F 27/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と前記樹脂に含有された金属磁性粉とを含む磁性層を有する積層体と、
前記積層体内に配置されたインダクタ配線と、
前記積層体から露出する外部端子と
を備え、
前記外部端子は、金属部と樹脂部とを有し、前記外部端子の断面において、前記樹脂部は、前記金属部に内包され、
前記樹脂部は、前記磁性層の表面を基準として、前記表面に垂直な方向に対して、-5μmから5μmの範囲のみにある、インダクタ部品。
【請求項2】
樹脂と前記樹脂に含有された金属磁性粉とを含む磁性層を有する積層体と、
前記積層体内に配置されたインダクタ配線と、
前記積層体から露出する外部端子と
を備え、
前記外部端子は、金属部と樹脂部とを有し、前記外部端子の断面において、前記樹脂部は、前記金属部に内包され、
前記インダクタ配線は、前記磁性層を貫通する柱状配線を有し、
前記外部端子は、前記柱状配線上に位置し、
前記樹脂部は、平面視、前記柱状配線の周縁から前記柱状配線の内側に向かって5μm以内の範囲のみにある、インダクタ部品。
【請求項3】
樹脂と前記樹脂に含有された金属磁性粉とを含む磁性層を有する積層体と、
前記積層体内に配置されたインダクタ配線と、
前記積層体から露出する外部端子と
を備え、
前記外部端子は、金属部と樹脂部とを有し、前記外部端子の断面において、前記樹脂部は、前記金属部に内包され、
前記インダクタ配線は、前記磁性層を貫通する柱状配線を有し、前記外部端子は、前記柱状配線上の重複部分を有し、前記重複部分の外表面は、凹部を有し、前記樹脂部は、前記重複部分のみに位置する、インダクタ部品。
【請求項4】
前記外部端子は、前記金属部に内包された空隙部を有する、請求項からの何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項5】
前記樹脂部と前記空隙部は、接触している、請求項に記載のインダクタ部品。
【請求項6】
前記インダクタ部品の厚みは、0.3mm以下である、請求項1からの何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項7】
前記樹脂部の厚みは、前記外部端子の厚みの1/200以上1/5以下である、請求項1からの何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項8】
前記外部端子の厚みは、前記インダクタ部品の厚みの1/20以下である、請求項1からの何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項9】
前記外部端子は、複数の導体層からなり、少なくとも1つの導体層は、めっきである、請求項1からの何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項10】
前記外部端子の各導体層の厚みは、10μm以下である、請求項に記載のインダクタ部品。
【請求項11】
前記樹脂部は、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂およびポリイミド系樹脂の少なくとも一つを含む、請求項1から10の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項12】
前記樹脂部は、ケイ素を含む、請求項1から11の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項13】
前記樹脂部は、前記磁性層の表面を基準として、前記表面に垂直な方向に対して、-5μmから5μmの範囲のみにある、請求項2または3に記載のインダクタ部品。
【請求項14】
前記インダクタ配線は、前記磁性層を貫通する柱状配線を有し、
前記外部端子は、前記柱状配線上に位置し、
前記樹脂部は、平面視、前記柱状配線の周縁から前記柱状配線の内側に向かって5μm以内の範囲のみにある、請求項1または3に記載のインダクタ部品。
【請求項15】
前記外部電極は、クラックを有する、請求項1から14の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項16】
前記外部端子は、前記インダクタ配線上の重複部分と、前記磁性層上の非重複部分とを有し、前記重複部分と前記非重複部分とは、外表面側から所定の波長の光を当てたときの反射スペクトルが異なる、請求項1から15の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項17】
前記非重複部分の外表面の凹凸の大きさは、前記重複部分の外表面の凹凸の大きさよりも大きい、請求項16に記載のインダクタ部品。
【請求項18】
前記積層体は、前記磁性層の表面に設けられた絶縁被覆膜をさらに備え、
前記絶縁被覆膜は、前記外部端子の周囲に配置される、請求項1から17の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項19】
前記外部端子の側面は、前記絶縁被覆膜のみに接触する、請求項18に記載のインダクタ部品。
【請求項20】
前記インダクタ配線が、前記絶縁被覆膜越しに確認できる、請求項18または19に記載のインダクタ部品。
【請求項21】
前記樹脂は、エポキシ系樹脂およびアクリル系樹脂の少なくともエポキシ系樹脂を含む、請求項1から20の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項22】
前記磁性層は、さらにフェライト粉を含む、請求項1から21の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタ部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インダクタ部品としては、特開2014-13815号公報(特許文献1)に記載されたものがある。このインダクタ部品は、磁性層を含む積層体と、積層体内に配置されたインダクタ配線と、積層体から露出する外部端子とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-13815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来のインダクタ部品では、熱などの負荷がインダクタ部品に加わると、積層体(磁性層)と外部端子の熱膨張係数の違いにより、外部端子に応力が蓄積される。また、外部端子はインダクタ部品の外方に露出しているため、インダクタ部品の製造時や実装時、使用時などにおいて、外力が外部端子に加わりやすい。このような応力や外力により、外部端子の信頼性が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、本開示の課題は、外部端子の信頼性を向上できるインダクタ部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本開示の一態様であるインダクタ部品は、
樹脂と前記樹脂に含有された金属磁性粉とを含む磁性層を有する積層体と、
前記積層体内に配置されたインダクタ配線と、
前記積層体から露出する外部端子と
を備え、
前記外部端子は、金属部と樹脂部とを有し、前記外部端子の断面において、前記樹脂部は、前記金属部に内包されている。
【0007】
ここで、インダクタ配線とは、電流が流れた場合に磁性層に磁束を発生させることによって、インダクタ部品にインダクタンスを付与させるものであって、その構造、形状、材料に特に限定はない。
【0008】
本開示のインダクタ部品によれば、外部端子が金属部に内包された樹脂部を有するので、外部端子にかかる応力や外力を、樹脂部で緩和することができる。
【0009】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記外部端子は、前記金属部に内包された空隙部を有することが好ましい。
【0010】
前記実施形態によれば、さらに空隙部によっても、外部端子にかかる応力や外力を緩和することができる。
【0011】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記樹脂部と前記空隙部は、接触していることが好ましい。
【0012】
前記実施形態によれば、熱負荷などによる膨張、収縮が発生しやすい樹脂部の体積変化を、空隙部で吸収し、外部端子全体としての体積変化を低減することで外部端子内に蓄積される応力を緩和できる。
【0013】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記インダクタ部品の厚みは、0.3mm以下であることが好ましい。
【0014】
前記実施形態によれば、外部端子の厚みが相対的に大きくなりやすい薄型のインダクタ部品となるため、樹脂部による応力や外力の緩和がより効果的となる。
【0015】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記樹脂部の厚みは、前記外部端子の厚みの1/200以上1/5以下であることが好ましい。
【0016】
前記実施形態によれば、樹脂部の厚みが、外部端子の厚みの1/5以下であることにより、外部端子における直流抵抗の増加および端子強度の低下を抑制できる。また、樹脂部の厚みが、外部端子の厚みの1/200以上であることにより、樹脂部による応力の緩和効果を確実に発揮させることができる。
【0017】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記外部端子の厚みは、前記インダクタ部品の厚みの1/20以下であることが好ましい。
【0018】
前記実施形態によれば、外部端子の信頼性が問題となりやすい薄い外部端子となるため、樹脂部による応力や外力の緩和がより効果的となる。また、限られたインダクタ部品の体積において、インダクタ配線の領域への影響を低減でき、インダクタ部品の電気的特性を適切に確保できる。
【0019】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記外部端子は、複数の導体層からなり、少なくとも1つの導体層は、めっきであることが好ましい。
【0020】
前記実施形態によれば、各導体層により外部端子に異なる複数の機能を持たせることができる。例えば、1層目の導体層をCuとして導電層および平坦化層とし、2層目の導体層をNiとして耐はんだ層とし、3層目の導体層をAuやSnとして防腐層および親はんだ層とすることができる。また、めっきであることにより金属元素の純度の高い導体層を形成することができる。
【0021】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記外部端子の各導体層の厚みは、10μm以下であることが好ましい。
【0022】
前記実施形態によれば、外部端子の各導体層が薄く、信頼性が問題となりやすい構造となるため、樹脂部による応力や外力の緩和がより効果的となる。また、限られたインダクタ部品の体積において、インダクタ配線の領域への影響を低減でき、インダクタ部品の電気的特性を適切に確保できる。
【0023】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記樹脂部は、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂およびポリイミド系樹脂の少なくとも一つを含むことが好ましい。
【0024】
前記実施形態によれば、樹脂部に一般的に用いられる樹脂を使うことができ、製造性が向上する。
【0025】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記樹脂部は、ケイ素を含むことが好ましい。
【0026】
前記実施形態によれば、外部端子における樹脂部の拡散性が向上する。
【0027】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記樹脂部は、前記磁性層の表面を基準として、前記表面に垂直な方向に対して、-5μmから5μmの範囲にあることが好ましい。
【0028】
前記実施形態によれば、樹脂部は磁性層の表面近くにあるため、熱負荷により磁性層が反った場合に、もっとも応力が大きくかかる磁性層の表面における外部端子の応力を緩和できる。
【0029】
また、インダクタ部品の一実施形態では、
前記インダクタ配線は、前記磁性層を貫通する柱状配線を有し、
前記外部端子は、前記柱状配線上に位置し、
前記樹脂部は、平面視、前記柱状配線の周縁から前記柱状配線の内側に向かって5μm以内の範囲にあることが好ましい。
【0030】
前記実施形態によれば、樹脂部は磁性層の近くにあるため、熱負荷により磁性層が反った場合に、もっとも応力が大きくかかる磁性層付近における外部端子の応力を緩和できる。
【0031】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記外部電極は、クラックを有することが好ましい。
【0032】
前記実施形態によれば、外部電極内に蓄積された応力がクラックによって開放される。
【0033】
また、インダクタ部品の一実施形態では、
前記外部端子は、前記インダクタ配線上の重複部分と、前記磁性層上の非重複部分とを有し、前記重複部分と前記非重複部分とは、外表面側から所定の波長の光を当てたときの反射スペクトルが異なることが好ましい。
また、当該実施形態では、前記非重複部分の外表面の凹凸の大きさは、前記重複部分の外表面の凹凸の大きさよりも大きいことがさらに好ましい。
【0034】
ここで、所定の波長の光を当てたときの反射スペクトルが異なるとは、外部端子の外表面側から入射した当該所定の波長の光の反射スペクトルについて、明度、彩度、色相の少なくとも一つが、目視や装置により識別できる程度の差異を有することをいう。具体的には、例えば、赤外光、可視光、紫外光などのうち、いずれか所定の波長の光をあてたときに、上記により識別できれば、反射スペクトルが異なると言える。
【0035】
前記実施形態によれば、外部端子において、重複部分と非重複部分とは、反射スペクトルが異なるので、重複部分と非重複部分を識別できる。これにより、外部端子を形成後でも外部端子とインダクタ配線の接続位置を把握できる。具体的には、反射スペクトルの明度が小さい方を重複部分、大きい方を非重複部分として識別できる。
【0036】
また、インダクタ部品の一実施形態では、
前記積層体は、前記磁性層の表面に設けられた絶縁被覆膜をさらに備え、
前記絶縁被覆膜は、前記外部端子の周囲に配置されることが好ましい。
【0037】
前記実施形態によれば、外部端子間の絶縁性を高めることができる。
【0038】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記外部端子の側面は、前記絶縁被覆膜のみに接触することが好ましい。
【0039】
前記実施形態によれば、絶縁被覆膜の開口部に外部端子が形成され、外部端子の接続面積を大きくとることができ、高い接続信頼性を得ることができる。
【0040】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記インダクタ配線が、前記絶縁被覆膜越しに確認できることが好ましい。
【0041】
前記実施形態によれば、外部端子とインダクタ配線との接続位置をより容易に把握できる。
【0042】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記樹脂は、エポキシ系樹脂およびアクリル系樹脂の少なくともエポキシ系樹脂を含むことが好ましい。
【0043】
前記実施形態によれば、樹脂により、金属磁性粉間の絶縁性を担保して、高周波での鉄損を小さくできる。
【0044】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記磁性層は、さらにフェライト粉を含む。
【0045】
前記実施形態によれば、比透磁率の高いフェライト粉を含むことにより、磁性層の体積当たりの透磁率である実効透磁率を向上できる。
【発明の効果】
【0046】
本開示の一態様であるインダクタ部品によれば、外部端子の信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1A】第1実施形態に係るインダクタ部品を示す透視平面図である。
図1B】第1実施形態に係るインダクタ部品を示す断面図である。
図2】第1外部端子と第1垂直配線の位置関係を示す簡略平面図である。
図3図2のA-A断面図である。
図4】第1実施形態の実施例を示す画像図である。
図5】第1実施形態の実施例を示す画像図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本開示の一態様であるインダクタ部品を図示の実施の形態により詳細に説明する。なお、図面は一部模式的なものを含み、実際の寸法や比率を反映していない場合がある。
【0049】
(第1実施形態)
(構成)
図1Aは、インダクタ部品の第1実施形態を示す透視平面図である。図1Bは、図1AのX-X断面図である。
【0050】
インダクタ部品1は、例えば、パソコン、DVDプレーヤー、デジタルカメラ、TV、携帯電話、スマートフォン、カーエレクトロニクスなどの電子機器に搭載され、例えば全体として直方体形状の部品である。ただし、インダクタ部品1の形状は、特に限定されず、円柱状や多角形柱状、円錐台形状、多角形錐台形状であってもよい。
【0051】
図1A図1Bに示すように、インダクタ部品1は、積層体10と、インダクタ配線20と、外部端子41,42とを備える。積層体10は、第1磁性層11と、第2磁性層12と、絶縁層15と、絶縁被覆膜50とを含む。インダクタ配線20は、積層体10内に配置され、スパイラル配線21と、垂直配線51,52(引出配線の一例)とを含む。外部端子41,42は、積層体10から露出している。
【0052】
第1磁性層11と第2磁性層12は、第1方向Zに積層されており、第1方向Zに直交する主面を有する。積層体10が含む磁性層は、第1磁性層11および第2磁性層12の2層だけではなく、3層以上の磁性層を含んでいてもよいし、1層のみの磁性層を含んでいてもよい。図中、第1方向Zの順方向を上側、逆方向を下側とする。
【0053】
第1磁性層11および第2磁性層12は、樹脂と樹脂に含有された金属磁性粉とを含む。したがって、金属磁性粉により高い磁気飽和特性を得ることができ、樹脂により金属磁性粉間が絶縁されるので、高周波での鉄損が低減される。
【0054】
樹脂は、例えば、エポキシ系、ポリイミド系、フェノール系、ビニルエーテル系の何れかの樹脂を含む。これにより、絶縁信頼性が向上する。より具体的には、樹脂は、エポキシもしくはエポキシとアクリルの混合体もしくはエポキシ、アクリルとその他の混合体である。これにより、金属磁性粉間の絶縁性を担保することで、高周波での鉄損を小さくできる。
【0055】
金属磁性粉の平均粒径は、例えば0.1μm以上5μm以下である。インダクタ部品1の製造段階においては、金属磁性粉の平均粒径を、レーザ回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%に相当する粒径として算出することができる。金属磁性粉は、例えば、FeSiCrなどのFeSi系合金、FeCo系合金、NiFeなどのFe系合金、または、それらのアモルファス合金である。金属磁性粉の含有率は、好ましくは、磁性層全体に対して、20Vol%以上70Vol%以下である。金属磁性粉の平均粒径が5μm以下である場合、より高い磁気飽和特性を得ることができ、微粉によって高周波での鉄損を低減できる。なお、金属磁性粉でなく、NiZn系やMnZn系などのフェライトの磁性粉を用いてもよい。このように比透磁率の高いフェライトを含むことにより、磁性層11,12の体積当たりの透磁率である実効透磁率を向上できる。
【0056】
スパイラル配線21は、第1磁性層11の上方側、具体的には第1磁性層11の上面の絶縁層15上にのみ形成され、第1磁性層11の主面に平行な方向に延びる形状の配線である。本実施形態では、スパイラル配線21は、ターン数が1周を超え、約2.5ターンである。スパイラル配線21は、例えば、上側からみて、外周端から内周端に向かって時計回り方向に渦巻状に巻回されている。
【0057】
なお、上記において、スパイラル形状とは、平面上を延びる曲線(2次元曲線)を意味し、当該曲線が描くターン数は1周を超えていても、1周未満であってもよい。また、スパイラル形状は異なる方向に巻回された曲線を有していてもよいし、一部に直線を有していてもよい。
【0058】
スパイラル配線21の厚みは、例えば、40μm以上120μm以下であることが好ましい。スパイラル配線21の実施例として、厚みが45μm、配線幅が50μm、配線間スペースが10μmである。配線間スペースは3μm以上20μm以下が好ましい。なお、スパイラル配線21の厚みとは、スパイラル配線21の延びる方向に直交する横断面において、第1方向Zに沿った最大寸法をいう。
【0059】
スパイラル配線21は、導電性材料からなり、例えばCu、Ag,Au、Feもしくはこれらの化合物などの低電気抵抗な金属材料からなる。これにより、導電率を下げることができて、直流抵抗を下げることができる。本実施形態では、インダクタ部品1は、スパイラル配線21を1層のみ備えており、インダクタ部品1の低背化を実現できる。なお、スパイラル配線21を複数層備えていてもよいし、複数層のスパイラル配線21はビア配線によって電気的に直列に接続されていてもよい。すなわち、複数層のスパイラル配線21とビア配線によって弦巻形状(ヘリカル形状)が構成されていてもよい。また、当該弦巻形状は、第1方向Zと並行に進行する螺旋形状であってもよいし、第1方向Zと垂直な方向に進行する螺旋形状で合ってもよい。
【0060】
スパイラル配線21は、第1方向Zに直交する平面上に(第1磁性層11の主面に平行な方向に)配置され互いに接続された、スパイラル部200、パッド部201,202および引出部203を有する。スパイラル部200の内周端には、第1パッド部201が設けられ、スパイラル部200の外周端には、第2パッド部202が設けられている。スパイラル部200は、第1パッド部201と第2パッド部202の間において、渦巻状に巻回されている。第1パッド部201は、第1垂直配線51に接続され、第2パッド部202は、第2垂直配線52に接続される。引出部203は、第2パッド部202から積層体10の第1方向Zに平行な第1側面10aに引き出され、積層体10の第1側面10aから外部に露出している。
【0061】
絶縁層15は、第1磁性層11の上面に形成された膜状の層であり、スパイラル配線21を被覆している。スパイラル配線21は、絶縁層15に覆われているため、絶縁信頼性を向上できる。具体的に述べると、絶縁層15は、スパイラル配線21の底面及び側面のすべてを覆い、スパイラル配線21の上面については、パッド部201,202のうち、ビア導体25との接続部分を除いた部分を覆っている。絶縁層15は、スパイラル配線21のパッド部201,202に対応した位置に孔部を有する。孔部は、例えば、フォトリソグラフィやレーザ開口により形成することができる。第1磁性層11とスパイラル配線21の底面との間の絶縁層15の厚みは、例えば、10μm以下である。
【0062】
絶縁層15は、磁性体を含有しない非磁性の絶縁性材料からなり、例えばエポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂などの樹脂材料からなる。なお、絶縁層15は、シリカなどの非磁性体のフィラーを含んでいてもよく、この場合は、絶縁層15の強度や加工性、電気的特性の向上が可能である。なお、絶縁層15は必須の構成ではなく、スパイラル配線21は第1磁性層11および第2磁性層12と直接接触していてもよい。また、絶縁層15が、スパイラル配線21の底面や側面、上面など一部のみ覆っていてもよい。
【0063】
垂直配線51,52は、導電性材料からなり、スパイラル配線21のパッド部201,202から第1方向Zに延び、スパイラル配線21と外部端子41,42に接続される。垂直配線51,52は、第2磁性層12を貫通するので、外部端子41,42とスパイラル配線21を接続させるために余計な引き回しを避けることができる。垂直配線51,52は、スパイラル配線21のパッド部201,202から第1方向Zに延び、絶縁層15の内部を貫通するビア導体25と、ビア導体25から第1方向Zに延び、第2磁性層12の内部を貫通する柱状配線31,32とを含む。柱状配線31,32は、第2磁性層12の上面から露出している。
【0064】
第1垂直配線51は、スパイラル配線21の第1パッド部201の上面から上側に延在するビア導体25と、該ビア導体25から上側に延在し、第1磁性層11の内部を貫通する第1柱状配線31とを含む。第2垂直配線52は、スパイラル配線21の第2パッド部202の上面から上側に延在するビア導体25と、該ビア導体25から上側に延在し、第1磁性層11の内部を貫通する第2柱状配線32とを含む。垂直配線51,52は、スパイラル配線21と同様の材料からなる。
【0065】
外部端子41,42は、導電性材料からなる。第1外部端子41は、第1柱状配線31上から第2磁性層12上にかけて設けられ、積層体10の上面から露出する。これにより、第1外部端子41は、スパイラル配線21の第1パッド部201に電気的に接続される。第2外部端子42は、第2柱状配線32上から第2磁性層12上にかけて設けられ、積層体10の上面から露出する。これにより、第2外部端子42は、スパイラル配線21の第2パッド部202に電気的に接続される。
【0066】
好ましくは、外部端子41,42は、複数の導体層からなる。これによれば、各導体層に機能を持たせることができる。例えば、1層目の導体層をCuとして導電層および平坦化層とし、2層目の導体層をNiとして耐はんだ層とし、3層目の導体層をAuやSnとして防腐層および親はんだ層とすることができる。また、少なくとも1つの導体層は、めっきであることが好ましく、めっきであることにより金属元素の純度の高い導体層を形成することができる。
【0067】
好ましくは、外部端子41,42の外表面を構成する導体層は、AuもしくはSnもしくはそれらを含む合金である。これによれば、外部端子41,42の防腐処理、良好なはんだ濡れ性を確保でき、安定した実装が可能となる。
【0068】
好ましくは、外部端子41,42のインダクタ配線20と直接接続された1層目の第1の導体層は、CuもしくはCuを主成分とする合金である。これによれば、第1の導体層に導電率の低い材料を使うことで、外部端子41,42における直流抵抗を下げることができる。
【0069】
好ましくは、第1の導体層は、95%wt以上のCuおよび1%wt以上5%wt以下のNiを含む。これによれば、Niを含むことで第1の導体層の応力が開放されて、無応力側に推移することで、インダクタ配線20へのストレスを緩和でき、外部端子41,42とインダクタ配線20の接続性が向上する。また、Niは少量であるので、第1の導体層における直流抵抗の増加を抑えることができる。
【0070】
好ましくは、外部端子41,42の第1の導体層は、NiもしくはNiを主成分とする合金である。これによれば、垂直配線51,52上にNiが形成されることでバリアとなり垂直配線51,52がはんだによって浸食されることを抑制できる。具体的に述べると、Niの合金層は、例えば、Pが2%wt~10%wt含まれるNiPの合金である。このとき、下地(磁性層と柱状配線)とNi層の間には、Pdなどの触媒層が存在する。この実施形態では、触媒層は、外部端子41,42を構成する層でないものとする。なお、触媒層は、外部端子41,42の構成の一部であってもよい。
【0071】
絶縁被覆膜50は、非磁性の絶縁性材料からなり、第2磁性層12の外表面である上面に設けられ、第2磁性層12の一部、柱状配線31,32および外部端子41,42の端面を露出させている。絶縁被覆膜50によって、インダクタ部品1の表面の絶縁性を確保することができる。また、絶縁被覆膜50は第1外部端子41および第2外部端子42の周囲に配置されることで、第1外部端子41と第2外部端子42の間の絶縁性を高め、信頼性を向上することができる。なお、絶縁被覆膜50が第1磁性層11の下面側に形成されていてもよい。
【0072】
また、第1外部端子41および第2外部端子42の側面は、絶縁被覆膜50のみに接触しており、絶縁被覆膜50の開口部に第1外部端子41および第2外部端子42が形成されていることを示す。これにより、第1外部端子41および第2外部端子42の接続面積を大きくとることができ、高い接続信頼性を得ることができる。例えば、外部端子41,42が、1層目のCu層、2層目のNi層および3層目のAu層から構成されるとすると、Cu層が5μmであり、Ni層が5μmであり、Au層が0.08μmであり、絶縁被覆膜50が5μmであるとき、Cu層の側面には絶縁被覆膜50が存在し、Ni層の側面には絶縁被覆膜50が存在せず、Ni層は絶縁被覆膜50の上にも一部形成される。
【0073】
図2は、第1方向Zからみた第1外部端子41と第1垂直配線51の位置関係を示す簡略平面図である。図2に示すように、第1方向Zからみて、第1外部端子41の一部は、第1垂直配線51(第1柱状配線31)の一部に重なっている。
【0074】
第1外部端子41は、第1垂直配線51(インダクタ配線20)上の重複領域と、第1垂直配線51(インダクタ配線20)に接触しない非重複領域とを有し、重複領域と非重複領域とは、外表面側から所定の波長の光を当てたときの反射スペクトルが異なる。
【0075】
具体的に述べると、第1外部端子41は、第1垂直配線51(第1柱状配線31)に接触する重複部分41aと、第2磁性層12に接触する非重複部分41bとを有する。重複部分41aは、重複領域に相当し、非重複部分41bは、非重複領域に相当する。重複部分41aおよび非重複部分41bは、それぞれハッチングで示す。
【0076】
重複部分41aと非重複部分41bは、反射スペクトルが異なるので、第1外部端子41の外表面からみて(例えば、第1方向Zからみて)、重複部分41aと非重複部分41bは、明度、彩度、色相の少なくとも一つが異なる。これにより、目視や装置により重複部分41aと非重複部分41bを識別できる。なお、例えば、赤外光、可視光、紫外光などのうち、いずれか所定の波長の光をあてたときに識別できればよい。所定の光が、可視光の波長域に存在していれば、重複部分41aと非重複部分41bの識別を、より容易に行うことができる。
【0077】
重複部分41aの外表面と非重複部分41bの外表面とは、凹凸の大きさが異なる。非重複部分41bの外表面の凹凸の大きさは、重複部分41aの外表面の凹凸の大きさよりも大きい。例えば、非重複部分41bの表面粗さRaは、重複部分41aの表面粗さRaよりも大きい。非重複部分41bの表面粗さRaは、例えば、重複部分41aの表面粗さRaの1.5倍以上2.5倍以下である。
【0078】
このように、重複部分41aの表面粗さRaと非重複部分41bの表面粗さRaが異なるのは、重複部分41aは第1柱状配線31の上面に形成され、非重複部分41bは磁性層11,12の上面に形成されているためである。つまり、第1柱状配線31は金属から構成されているため、第1柱状配線31の上面は滑らかとなる。一方、磁性層11,12は樹脂と金属磁性粉を含むコンポジット体から構成されているため、磁性層11,12の上面は粗くなる。そして、重複部分41aは第1柱状配線31の上面に形成されることで、重複部分41aには第1柱状配線31の上面の形状が転写される。一方、非重複部分41bは磁性層11,12の上面に形成されることで、非重複部分41bには磁性層11,12の上面の形状が転写される。このため、非重複部分41bの表面は重複部分41aの表面よりも粗くなる。
【0079】
また、重複部分41aの外表面と非重複部分41bの外表面とは、凹凸の大きさが異なるので、反射スペクトルの明度を用いて重複部分41aと非重複部分41bを識別できる。つまり、非重複部分41bの外表面の凹凸の大きさは、重複部分41aの外表面の凹凸の大きさよりも大きいので、反射スペクトルの明度が小さい方を重複部分41a、大きい方を非重複部分41bとして識別できる。
【0080】
したがって、第1外部端子41の重複領域(重複部分41a)と第1外部端子41の非重複領域(非重複部分41b)とは、外表面側から所定の波長の光を当てたときの反射スペクトルが異なるので、重複領域(重複部分41a)と非重複領域(非重複部分41b)を識別できる。これにより、第1外部端子41を形成後でも第1外部端子41とインダクタ配線20(第1垂直配線51)の接続位置を把握できる。したがって、第1外部端子41とインダクタ配線20の接続性が低下したものを選別できる。
【0081】
なお、第2外部端子42と第2垂直配線52の位置関係についても同様である。つまり、第2外部端子42は、インダクタ配線20(第2垂直配線52)上の重複領域と、インダクタ配線20(第2垂直配線52)に接触しない非重複領域とを有し、重複領域と非重複領域とは、外表面側から所定の波長の光を当てたときの反射スペクトルが異なる。第2外部端子42は、重複領域に相当するインダクタ配線20上の重複部分と、非重複領域に相当する第2磁性層12上の非重複部分とを有する。
【0082】
図2に示すように、積層体10は、重複領域に相当するインダクタ配線20(第1垂直配線51)上の絶縁被覆膜50である重複部分50aと、非重複領域に相当する(図1B参照の)第2磁性層12上の絶縁被覆膜50である非重複部分50bとを有する。重複部分50aおよび非重複部分50bは、それぞれハッチングで示す。重複部分50aと非重複部分50bとは、外表面側から所定の波長の光を当てたときの反射スペクトルが異なる。したがって、積層体10(絶縁被覆膜50)における重複部分50aと非重複部分50bを識別することができる。これにより、第1外部端子41を形成後でも第1外部端子41とインダクタ配線20(第1垂直配線51)の接続位置を把握できる。
【0083】
好ましくは、インダクタ配線20(第1垂直配線51)が、絶縁被覆膜50越しに確認できる。これによれば、第1外部端子41とインダクタ配線20との接続位置をより容易に把握できる。
【0084】
なお、第2外部端子42と第2垂直配線52の位置関係についても同様である。つまり、積層体10は、重複領域に相当するインダクタ配線20(第2垂直配線52)上の絶縁被覆膜50である重複部分50aと、非重複領域に相当する第2磁性層12上の絶縁被覆膜50である非重複部分50bとを有する。重複部分50aと非重複部分50bとは、外表面側から所定の波長の光を当てたときの反射スペクトルが異なる。
【0085】
図3は、図2のA-A断面図である。図3は、第1外部端子41を示すが、第2外部端子42についても第1外部端子41と同様の構成であり、以下、第1外部端子41の説明を行い、第2外部端子42の説明を省略する。
【0086】
図3に示すように、第1外部端子41は、金属部と(図3において黒丸で示す)樹脂部415とを有する。第1外部端子41の断面において、樹脂部415は、金属部に内包されている。具体的に述べると、金属部は、無電解めっきCuからなる第1の導体層411と、無電解めっきNiからなる第2の導体層412と、無電解めっきAuからなる第3の導体層413とから構成される。樹脂部415は、第1の導体層411に内包されている。なお、各導体層間にはPdなどの公知の触媒層が設けられていてもよく、触媒層を介さない導体層間と触媒層を介する導体層間が混在していてもよい。
【0087】
ここで、樹脂部415は、金属部に内包されているのであり、金属部が、樹脂部に内包されているのではない。つまり、第1外部端子41が導電性樹脂ペーストから構成されることを除くことを意味している。なお、「内包」とは樹脂部415が、金属部に埋まり込んでおり、露出していないことを意味する。
【0088】
これによれば、第1外部端子41が金属部に内包された樹脂部415を有するので、第1外部端子41にかかる応力や外力を、樹脂部415で緩和することができる。したがって、第1外部端子41の信頼性を向上できる。また、第1外部端子41の熱による膨張係数についても、樹脂を含む磁性層11,12に近づけることができ、熱などの負荷がインダクタ部品1に加わっても、積層体10と第1外部端子41との熱膨張係数の違いによる応力の蓄積を手減でき、第1外部端子41の信頼性を向上できる 。なお、特に、インダクタ部品1が薄型の場合、第1外部端子41の熱膨張係数が磁性層11,12と近いことにより、インダクタ部品1の反りを抑制することができる。
【0089】
樹脂部415は、意図的に制御して形成される。樹脂部415の形成方法の一例を説明する。第2磁性層12の上面に絶縁被覆膜50を設けた後に、絶縁被覆膜50をパターニングして開口部を形成する際に、パターニングされた絶縁被覆膜50の残渣を樹脂部415として開口部に侵入させる。その後、絶縁被覆膜50の開口部に第1外部端子41を無電解めっきにより形成することで、めっき液内に樹脂部415が流入し、第1外部端子41の金属部に内包された樹脂部415を形成することができる。
【0090】
なお、樹脂部415の形成方法は上記に限られない。例えば、絶縁被覆膜50のパターニングの残渣ではなく、第2磁性層12の研削時の第2磁性層12中の樹脂残渣を樹脂部415としてもよい。または、絶縁被覆膜50や第2磁性層12の樹脂残渣を樹脂部415とするのではなく、第1外部端子41の形成時に、新たに別の樹脂を流し込んでもよい。例えば、第2磁性層12を粗めに研削した後、第2磁性層12の上面全面に樹脂を薄く塗布し、当該樹脂を剥離(現像)すると、粗研削された際の第2磁性層12や第1垂直配線51(第1柱状配線31)などに残る痕部分に入り込んだ樹脂が剥離(現像)後も残ることを利用すればよい。
また、パターニングや研削の残渣ではなく、例えば、第1外部端子41を形成する際のめっき液中に別途樹脂部415となる材料を混合することで、樹脂部415を内包する金属部を形成してもよい。
【0091】
好ましくは、第1外部端子41は、金属部に内包された空隙部を有する。したがって、第1外部端子41にかかる応力や外力を緩和することができる。好ましくは、樹脂部415と空隙部は、接触している。したがって、熱負荷などによる膨張、収縮が発生しやすい樹脂部415の体積変化を、空隙部で吸収し、第1外部端子41全体としての体積変化を低減することで第1外部端子41内に蓄積される応力を緩和できる。
なお、第1外部端子41の空隙部の形成方法としては、例えば、上記の樹脂部415の形成時に、一部の樹脂部415を熱や薬品などで物理的・科学的に除去すればよい。具体的には、樹脂部415を内包する金属部を形成する際のめっき液にアルカリ性のものを使用する。こうすることで樹脂部415の周囲で金属部となるめっき成長が進み、樹脂部415を内包する金属部を形成しつつ、一部の樹脂部415が、アルカリ性のめっき液により溶解またはリフトオフされることで、金属部に内包された空隙部を同時に形成できる。
または、金属部を形成する際に疎水処理を施すことで、金属部の濡れ性を低下させ、形成中に金属部に付着した泡離れを低下させることで、金属部に内包された泡を空隙部としてもよい。または、第1の導体層411上に触媒層または第2の導体層412を形成する際に、下地となる第1の導体層411を強く腐食させることで、第1の導体層411の金属部に内包された空隙部を形成してもよい。
【0092】
好ましくは、インダクタ部品1の厚みは、0.3mm以下である。インダクタ部品1の厚みとは、第1方向Zに沿ったインダクタ部品1の寸法をいう。したがって、第1外部端子41の厚みが相対的に大きくなりやすい薄型のインダクタ部品1となるため、樹脂部415による応力や外力の緩和がより効果的となる。また、例えば、半導体部品、電子モジュールなどの内部基板など、インダクタ部品1を実装できる箇所が増えるため、基板における実装密度を上げることができる。
【0093】
好ましくは、樹脂部415の厚みは、第1外部端子41の厚みの1/200以上1/5以下である。第1外部端子41が、複数の金属層からなる場合、第1外部端子41の厚みは、全ての金属層を含めた厚みとする。したがって、樹脂部415の厚みが、第1外部端子41の厚みの1/5以下であることにより、第1外部端子41における直流抵抗の増加および端子強度の低下を抑制できる。また、樹脂部415の厚みが、第1外部端子41の厚みの1/200以上であることにより、樹脂部415による応力の緩和効果を確実に発揮させることができる。
【0094】
好ましくは、第1外部端子41の厚みは、インダクタ部品1の厚みの1/20以下である。したがって、第1外部端子41の信頼性が問題となりやすい薄い第1外部端子41となるため、樹脂部415による応力や外力の緩和がより効果的となる。また、限られたインダクタ部品1の体積において、インダクタ配線20の領域への影響を低減でき、インダクタ部品1の電気的特性を適切に確保できる。
【0095】
好ましくは、第1外部端子41の各導体層の厚みは、10μm以下である。したがって、第1外部端子41の各導体層が薄く、信頼性が問題となりやすい構造となるため、樹脂部415による応力や外力の緩和がより効果的となる。また、限られたインダクタ部品1の体積において、インダクタ配線20の領域への影響を低減でき、インダクタ部品1の電気的特性を適切に確保できる。
【0096】
好ましくは、樹脂部415は、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂およびポリイミド系樹脂の少なくとも一つを含む。したがって、樹脂部415に一般的に用いられる樹脂を使うことができ、製造性が向上する。好ましくは、樹脂部415の材料は、磁性層11,12の樹脂の材料、若しくは、絶縁被覆膜50の材料と同じである。これによれば、第1外部端子41の応力を積層体10に近づける効果がより高まる。
【0097】
好ましくは、樹脂部415は、ケイ素を含む。したがって、第1外部端子41における樹脂部415の拡散性が向上する。これにより、外部端子全体に渡って樹脂部415を配置でき、樹脂部415による第1外部端子41にかかる応力や外力の緩和効果をより得られやすくする。ここで、絶縁性を確保するために磁性層11,12にシリカフィラーを含む場合、樹脂部415と磁性層11,12の線膨張係数を合わせることができ、応力緩和の効果が大きくなる。
【0098】
好ましくは、樹脂部415は、第2磁性層12の表面120を基準として、表面120に垂直な方向(第1方向Z)に対して、-5μmから5μmの範囲にある。正の方向は、第1方向Zの順方向である。したがって、樹脂部415は第2磁性層12の表面120近くにあるため、第2磁性層12が応力などで反った場合に、もっとも変化量が大きくなる第2磁性層12の表面120における応力を緩和でき、第1外部端子41の信頼性を高めることができる。
【0099】
好ましくは、樹脂部415は、平面視、第1柱状配線31の周縁310から第1柱状配線31の内側に向かって5μm以内の範囲にある。したがって、樹脂部415は第2磁性層12の近くにあるため、熱負荷により磁性層11,12が反った場合に、もっとも応力が大きくかかる第2磁性層12の表面120における第1外部端子41の応力を緩和できる。
【0100】
好ましくは、第1外部端子41の重複部分41aの外表面は、第1外部端子41の非重複部分41bの外表面よりも低い位置にある凹部410を有する。凹部410の底面は、の非重複部分41bの外表面(上面)よりも低い位置にある。
【0101】
凹部410の形成方法の一例を説明する。磁性層11,12内に第1柱状配線31を形成した後、ソフトエッチングを行うと、第1柱状配線31がエッチングされて、第1柱状配線31の上面311が、磁性層11,12の上面(第2磁性層12の表面120)よりも低くなる。その後、第1柱状配線31および磁性層11,12の上に第1外部端子41を無電解めっきにより形成することで、第1外部端子41の第1柱状配線31上の部分は、第1外部端子41の磁性層11,12上の部分に比べて低い位置に形成される。このようにして、第1外部端子41の第1柱状配線31上の重複部分41aには、凹部410が形成される。
【0102】
したがって、第1外部端子41は凹部410を有することで、実装時に用いられるはんだボールやはんだペーストが、凹部410に流れ込むセルフアラインメント効果により、安定した実装が可能となる。
【0103】
好ましくは、第1外部端子41は、クラックを有する。これによれば、第1外部端子41内に蓄積された応力がクラックによって開放される。
【0104】
好ましくは、第1外部端子41の厚みTを1としたとき、凹部410の深さdは0.05以上1未満である。これによれば、凹部410によるセルフアラインメント効果を確実に確保しつつ、凹部410の段差に過度な応力がかかることを抑制できる。
【0105】
ここで、第1外部端子41の厚みTは、第1外部端子41の磁性層11,12と接触する部分(非重複部分41b)の厚みとし、例えば、第1外部端子41の非重複部分41bの断面幅方向の中央部の厚みとする。ここで、第1外部端子41が、第1の導体層411と第2の導体層412と第3の導体層413とから構成され、第1の導体層411が、無電解めっきCuから構成され、第1柱状配線31が、電解めっきCuから構成される場合、第1の導体層411と第1柱状配線31の界面は、判別し難くい。このため、第1外部端子41の第1柱状配線31と接触する部分(重複部分41a)で厚みを測定することは困難となる。そこで、第1外部端子41の磁性層11,12と接触する部分(非重複部分41b)で厚みを測定することで、第1外部端子41の厚みを容易に測定することができる。
【0106】
なお、本開示は上述の実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。
前記実施形態では、インダクタ配線20は、スパイラル形状であったが、前述のとおり、インダクタ配線20の形状に限定はなく、公知の様々な形状を用いることができる。
【0107】
前記実施形態では、第1外部端子および第2外部端子が前記実施形態の特徴を有しているが、第1外部端子および第2外部端子のうちの少なくとも第1外部端子がその特徴を有していればよい。
【0108】
前記実施形態では、垂直配線はビア導体および柱状配線から構成しているが、絶縁層を形成しないことにより、垂直配線が柱状配線のみとなってもよい。前記実施形態では、引出配線として第1方向に延在しているが、第1方向と直交する方向に延在し、磁性層の側面に引き出されてもよい。
【0109】
(第1実施例)
図4は、前記実施形態(図2)の実施例を示す走査型電子顕微鏡の画像図である。図4に示すように、第1外部端子41において、重複部分41aと非重複部分41bは、反射スペクトルが異なる。具体的に述べると、非重複部分41bの凹凸の大きさは、重複部分41aの凹凸の大きさよりも大きい。このため、重複部分41aと非重複部分41bは、明度および色相が異なり、重複部分41aは、非重複部分41bよりも暗くなり、目視により重複部分41aと非重複部分41bを識別できる。このように、目視で識別できると選別が容易となる。
【0110】
また、積層体10(絶縁被覆膜50)において、重複部分50aと非重複部分50bは、反射スペクトルが異なる。具体的に述べると、重複部分50aと非重複部分50bは、明度および色相が異なる。このため、目視により重複部分50aと非重複部分50bを識別できる。このように、目視で識別できると選別が容易となる。第1柱状配線31は、絶縁被覆膜50越しに確認できる。このように、第1柱状配線31を第1外部端子41の直下および絶縁被覆膜50の直下で認識できる。
【0111】
図5は、前記実施形態(図3)の実施例を示す走査型電子顕微鏡の画像図である。図5は、インダクタ部品を中央部分で切断した画像図である。図5では、下方向がZ方向となる。図5に示すように、第1外部端子41は、第1柱状配線31上の第1の導体層411と、第1の導体層411上の触媒層416と、触媒層416上の第2の導体層412とを有する。第1の導体層411は、無電解めっきのCu皮膜からなる。触媒層416は、Pd層からなる。第2の導体層412は、無電解めっきのNi皮膜からなる。樹脂部415は、第1の導体層411(金属部)に内包されている。
【符号の説明】
【0112】
1 インダクタ部品
10 積層体
10a 第1側面
11 第1磁性層
12 第2磁性層
120 表面
15 絶縁層
20 インダクタ配線
21 スパイラル配線
25 ビア導体
31 第1柱状配線
310 周縁
311 上面
32 第2柱状配線
41 第1外部端子
41a 重複部分
41b 非重複部分
410 凹部
411 第1の導体層
412 第2の導体層
413 第3の導体層
415 樹脂部
416 触媒層
42 第2外部端子
50 絶縁被覆膜
50a 重複部分
50b 非重複部分
51 第1垂直配線
52 第2垂直配線
200 スパイラル部
201 第1パッド部
202 第2パッド部
203 引出部
Z 第1方向
T 外部端子の厚み
d 凹部の深さ
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5