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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】粘着シートおよび積層体
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20231106BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231106BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20231106BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231106BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
C09J7/38
B32B27/00 M
C09J201/00
C09J11/06
G02F1/13 101
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019107811
(22)【出願日】2019-06-10
(65)【公開番号】P2020200388
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-03-11
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100176407
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 理啓
(72)【発明者】
【氏名】小▲鯖▼ 翔
(72)【発明者】
【氏名】小澤 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】荒井 隆行
【審査官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-070558(JP,A)
【文献】特開2017-082196(JP,A)
【文献】国際公開第2017/149981(WO,A1)
【文献】特開2018-152529(JP,A)
【文献】特開2017-149807(JP,A)
【文献】特開2015-120884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/38
B32B 27/00
C09J 201/00
C09J 11/06
G02F 1/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも粘着剤層を備える粘着シートであって、
前記粘着シートは、工程中は前記粘着剤層を介してワークを基板に固定し、工程終了後、前記ワークを前記粘着剤層から剥離する用途に使用されるものであり、
前記粘着剤層が、活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されており、
前記活性エネルギー線硬化性粘着剤が、活性エネルギー線硬化性を有するポリマーを含有し、
前記活性エネルギー線硬化性を有するポリマーが、当該ポリマーを構成するモノマー単位として、窒素原子含有モノマーを含有し、
前記活性エネルギー線硬化性を有するポリマーが、当該ポリマーを構成する全構造単位に対するアクリル酸メチルに由来する構造単位の含有割合が1質量%以上60質量%以下となるポリマーではなく、
前記粘着シートの初期粘着力をFとし、
150℃で30分間加熱した後、さらに活性エネルギー線を照射した後における、前記粘着シートの粘着力をFとしたときに、
前記初期粘着力Fに対する前記粘着力Fの比(F/F)が、0.3以下である
ことを特徴とする粘着シート。
【請求項2】
少なくとも粘着剤層を備える粘着シートであって、
前記粘着シートは、工程中は前記粘着剤層を介してワークを基板に固定し、工程終了後、前記ワークを前記粘着剤層から剥離する用途に使用されるものであり、
前記粘着剤層が、活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されており、
前記活性エネルギー線硬化性粘着剤が、活性エネルギー線硬化性を有するポリマーを含有し、
前記活性エネルギー線硬化性を有するポリマーの重量平均分子量が、40万以上、150万以下であり、
前記粘着シートの初期粘着力をFとし、
150℃で30分間加熱した後、さらに活性エネルギー線を照射した後における、前記粘着シートの粘着力をFとしたときに、
前記初期粘着力Fに対する前記粘着力Fの比(F/F)が、0.3以下である
ことを特徴とする粘着シート。
【請求項3】
前記粘着剤層に対して活性エネルギー線を照射した後における、前記粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率が、0.1MPa以上、2MPa以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記活性エネルギー線硬化性粘着剤が、シランカップリング剤を含有することを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記初期粘着力Fが、0.5N/25mm以上、80N/25mm以下であることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項6】
150℃で30分間加熱した後における、前記粘着シートの粘着力Fが、0.5N/25mm以上、80N/25mm以下であることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項7】
前記粘着力Fが、0.01N/25mm以上、8N/25mm以下であることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項8】
前記ワークが、フレキシブルデバイスであることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項9】
前記用途が、前記基板に固定された前記ワークの加熱を含むことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項10】
前記粘着シートが、2枚の剥離シートを備えており、
前記粘着剤層が、前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持されている
ことを特徴とする請求1~のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項11】
フレキシブルデバイスと、
請求項1~10のいずれか一項に記載の粘着シートの前記粘着剤層と、
基板と
をその順に積層してなる積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの固定および剥離に好適な粘着シートおよびそれを使用した積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被加工物(ワーク)としての光学部材や電子部材等のデバイスにおいては、加工、組立(積層)、検査などの工程中、粘着シートの粘着剤層を介して当該デバイスを基板(台座)に固定することが行われる。そして、工程終了後、上記ワークは基板から剥離される。
【0003】
上記のような粘着剤層として、特許文献1には、所定条件の紫外線照射によって粘着力が低下する粘着剤層が開示されている。当該粘着剤層を用いた場合、工程終了後において、粘着剤層に対して所定の条件で紫外線を照射することで、ワークに対する粘着力を低下させることができ、それによりワークを基板から容易に剥離することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-275625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した工程においては、粘着剤層を介してワークを基板に固定した状態で、ワークを加熱する処理、または副次的にワークが加熱されることを伴う処理(以下、これらの処理を総称して「加熱処理」という場合がある)を行うことがある。
【0006】
上記加熱処理においては、ワークとともに粘着剤層も加熱されることとなるが、このような加熱処理を受けた粘着剤層は、ワークに対する粘着性が過度に向上し易いものとなる。そのため、特許文献1に開示されるような従来の粘着剤層を備える粘着シートは、加熱処理を含む工程に使用することが可能でありながらも、工程終了後に活性エネルギー線を照射することでワークを容易に剥離することができるといった優れたハンドリング性を示すものではなかった。
【0007】
本発明は、上記の実状に鑑みてなされたものであり、加熱処理を行う場合にもハンドリング性に優れる粘着シート、および当該粘着シートを使用した積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、少なくとも粘着剤層を備える粘着シートであって、前記粘着シートは、工程中は前記粘着剤層を介してワークを基板に固定し、工程終了後、前記ワークを前記粘着剤層から剥離する用途に使用されるものであり、前記粘着剤層が、活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されており、前記粘着シートの初期粘着力をFとし、150℃で30分間加熱した後、さらに活性エネルギー線を照射した後における、前記粘着シートの粘着力をFとしたときに、前記初期粘着力Fに対する前記粘着力Fの比(F/F)が、0.3以下であることを特徴とする粘着シートを提供する(発明1)。
【0009】
上記発明(発明1)では、粘着剤層が活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されているとともに、初期粘着力Fに対する粘着力Fの比(F/F)が上記範囲であることにより、粘着剤層の粘着力によってワークを基板にしっかりと固定することが可能であるとともに、当該ワークに対して加熱処理を行った場合であっても、その後に、上記粘着剤層に対して所定条件の活性エネルギー線を照射することで、当該粘着剤層の粘着力を良好に低下させることができ、それによってワークを基板から容易に剥離することができる。
【0010】
上記発明(発明1)において、前記粘着剤層に対して活性エネルギー線を照射した後における、前記粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率が、0.1MPa以上、2MPa以下であることが好ましい(発明2)。
【0011】
上記発明(発明1,2)において、前記活性エネルギー線硬化性粘着剤が、シランカップリング剤を含有することが好ましい(発明3)。
【0012】
上記発明(発明1~3)において、前記初期粘着力Fが、0.5N/25mm以上、80N/25mm以下であることが好ましい(発明4)。
【0013】
上記発明(発明1~4)において、150℃で30分間加熱した後における、前記粘着シートの粘着力Fが、0.5N/25mm以上、80N/25mm以下であることが好ましい(発明5)。
【0014】
上記発明(発明1~5)において、前記粘着力Fが、0.01N/25mm以上、8N/25mm以下であることが好ましい(発明6)。
【0015】
上記発明(発明1~6)において、前記ワークが、フレキシブルデバイスであることが好ましい(発明7)。
【0016】
上記発明(発明1~7)において、前記用途が、前記基板に固定された前記ワークの加熱を含むことが好ましい(発明8)。
【0017】
上記発明(発明1~8)において、前記粘着シートが、2枚の剥離シートを備えており、前記粘着剤層が、前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持されていることが好ましい(発明9)。
【0018】
第2に本発明は、フレキシブルデバイスと、前記粘着シート(発明1~9)の前記粘着剤層と、基板とをその順に積層してなる積層体を提供する(発明10)。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る粘着シートは、加熱処理を行う場合にもハンドリング性に優れる。また、本発明に係る積層体は、ハンドリング性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る粘着シートの断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る積層体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の一実施形態に係る粘着シートは、少なくとも粘着剤層を備えており、好ましくは、粘着剤層の片面または両面に剥離シートを積層してなる。
【0022】
本実施形態に係る粘着シートは、工程中は粘着剤層を介して被加工物(ワーク)を基板に固定し、工程終了後、当該ワークを当該粘着剤層から剥離する用途に使用されるものである。特に、本実施形態に係る粘着シートは、ワークとしての光学部材や電子部材等のデバイスを、加工、組立(積層)、検査などの工程中、当該粘着シートの粘着剤層を介して基板に固定するのに好適に使用される。なお、上記の基板は、工程中、ワークを支持し固定するためのものであり、台座等の概念も含むものである。
【0023】
ワークとしては、特に限定されないが、柔軟性を有する光学部材や電子部材等のフレキシブルデバイスが好ましい。また、ワークとしては、上記工程中に加熱処理が含まれるワークであってもよい。そのような加熱処理としては、例えば、透明電極の配線を形成するための金属蒸着工程や、樹脂の硬化工程などが挙げられる。これらの観点から、ワークとしては、例えば、フレキシブル有機発光ダイオード(OLED)デバイス、フレキシブル液晶デバイス等が好ましく、特にフレキシブルOLEDデバイスが好ましい。
【0024】
ワークの厚さは、特に限定されないが、フレキシブル性を発現し易い厚さであることが好ましく、具体的には、5μm以上であること好ましく、15μm以上であることがより好ましく、特に30μm以上であることが好ましく、さらに40μm以上であることが好ましい。また、ワークの厚さは、5000μm以下であること好ましく、2000μm以下であることがより好ましく、特に1000μm以下であることが好ましく、さらに500μm以下であることが好ましい。
【0025】
また、ワークの平面視形状としては、円形であってもよいし、多角形状であってもよく、中でも多角形状であることが好ましい。ワークの平面視形状が多角形状である場合、多角形状を構成する辺の総数は、特に限定されないが、3辺以上であることが好ましく、特に4辺以上であることが好ましい。また、多角形状を構成する辺の総数は、10辺以下であることが好ましく、特に6辺以下であることが好ましい。中でも、ワークの平面視形状が多角形状である場合、当該多角形状は、4辺で構成された四角形であることが特に好ましい。
【0026】
また、ワークの平面視形状が多角形状である場合における、当該多角形状を構成する各辺の長さは、いずれも同じ長さであってもよいし、異なる長さであってもよい。ワークの平面視形状が四角形である場合、対向する辺が平行であることが好ましく、中でも長辺と短辺とを有する長方形であることが好ましい。この場合における長辺の長さは、10mm以上であることが好ましく、特に40mm以上であることが好ましく、さらに80mm以上であることが好ましい。また、上記長辺の長さは、1500mm以下であることが好ましく、特に800mm以下であることが好ましく、さらに500mm以下であることが好ましい。一方、上記短辺の長さは、5mm以上であることが好ましく、特に10mm以上であることが好ましく、さらに20mm以上であることが好ましい。また、上記短辺の長さは、1000mm以下であることが好ましく、特に600mm以下であることが好ましく、さらに350mm以下であることが好ましい。
【0027】
また、基板としては、当該粘着シートの粘着剤層を介してワークが固定できるものであれば、特に限定されないが、上記工程中に、加熱処理が行われた場合であっても、変形または外観変化が生じないものが好ましい。また、基板には当該粘着シートの粘着剤層を介してワークが貼合されるが、上記工程中およびワークを剥離する工程において、粘着剤層と基板とは十分に固定されていなくてはならない。例えば、基板の表面が粗いと、基板と粘着剤層との密着性が低下し、工程中に基板から粘着剤層が剥離してしまう不具合が発生することがある。そのため、基板のワーク固定側の面は、平滑であることが好ましい。これらの観点から、基板としては、特にガラス基板が好ましく挙げられる。
【0028】
本実施形態に係る粘着シートでは、粘着剤層が、活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されている。そして、本実施形態に係る粘着シートの初期粘着力をFとし、150℃で30分間加熱した後、さらに活性エネルギー線を照射した後における、上記粘着シートの粘着力をFとしたときに、初期粘着力Fに対する粘着力Fの比(F/F)が、0.3以下となっている。
【0029】
上述した粘着力比(F/F)が0.3以下であることで、ワークを基板に対して良好に固定することが可能でありながらも、工程終了後には、上記粘着剤層に対する活性エネルギー線の照射により粘着剤層を十分に硬化させ、それによりワークに対する粘着剤層の粘着力を良好に低下させることができる。その結果、ワークを基板から容易に剥離することができる。特に、上記工程がワークの加熱処理を含む場合であっても、ワークを基板から剥離する際には、粘着力が十分に低下したものとなっており、ワークを基板から容易に剥離することができる。このように、本実施形態に係る粘着シートは、優れたハンドリング性を有する。
【0030】
一方、上述した粘着力比(F/F)が0.3を超える場合、工程終了後、粘着剤層に対して活性エネルギー線を照射したとしても、ワークに対する粘着剤層の粘着力が十分に低下せず、ワークを基板から剥離することが困難となる。このような問題を効果的に回避する観点から、上述した粘着力比(F/F)は、0.15以下であることが好ましく、特に0.08以下であることが好ましく、さらには0.05以下であることが好ましく、0.04以下であることが最も好ましい。なお、上述した粘着力比(F/F)の下限値は特に限定されず、例えば0.001以上であってもよく、特に0.01以上であってもよく、さらには0.015以上であってもよい。
【0031】
本実施形態に係る粘着シートにおいて、前述した初期粘着力Fは、0.5N/25mm以上であることが好ましく、1.5N/25mm以上であることがより好ましく、3N/25mm以上であることがより好ましく、特に6N/25mm以上であることが好ましく、耐久性(特に耐ブリスター性)が向上する観点を考慮すると、8N/25mm以上であることが好ましく、さらには10N/25mm以上であることが好ましく、13N/25mm以上であることが最も好ましい。また、初期粘着力Fは、80N/25mm以下であることが好ましく、60N/25mm以下であることがより好ましく、特に50N/25mm以下であることが好ましく、さらには35N/25mm以下であることが好ましく、20N/25mm以下であることが最も好ましい。初期粘着力Fがこのような範囲であることで、粘着力比(F/F)を前述した範囲に調整し易いものとなる。また、特に初期粘着力Fが3N/25mm以上であることで、工程中において、ワークを粘着剤層に対して良好に保持し易いものとなる。
【0032】
本実施形態に係る粘着シートにおいて、150℃で30分間加熱した後における、粘着シートの粘着力Fは、0.5N/25mm以上であることが好ましく、1N/25mm以上であることがより好ましく、特に5N/25mm以上であることが好ましく、さらには10N/25mm以上であることが好ましく、耐久性(特に耐ブリスター性)が向上する観点を考慮すると、14N/25mm以上であることが好ましく、特に17N/25mm以上であることが好ましい。また、粘着力Fは、80N/25mm以下であることが好ましく、50N/25mm以下であることがより好ましく、特に35N/25mm以下であることが好ましく、耐久性(特に耐ブリスター性)が向上する観点を考慮すると、さらには22N/25mm以下であることが好ましい。粘着力Fが上述した範囲であることで、粘着力比(F/F)を前述した範囲に調整し易いものとなる。また、特に粘着力Fが5N/25mm以上であることで、加熱処理を行った後において、ワークや基板からアウトガスが発生したとしても、当該アウトガスによる粘着剤層とワークまたは基板との界面における浮きや剥がれを効果的に抑制することができる。
【0033】
本実施形態に係る粘着シートにおいて、前述した粘着力Fは、0.01N/25mm以上であることが好ましく、0.05N/25mm以上であることがより好ましく、特に0.1N/25mm以上であることが好ましく、さらには0.2N/25mm以上であることが好ましい。また、粘着力Fは、ワークを基板から良好に剥離し易くなる観点から、8N/25mm以下であることが好ましく、4N/25mm以下であることがより好ましく、特に2N/25mm以下であることが好ましく、さらには1N/25mm以下であることが好ましく、0.5N/25mm以下であることが最も好ましい。粘着力Fが上述した範囲であることで、粘着力比(F/F)を前述した範囲に調整し易いものとなる。
【0034】
本実施形態に係る粘着シートでは、前述した粘着力Fに対する前述した粘着力Fの比(F/F)が、0.3以下であることが好ましく、0.15以下であることがより好ましく、特に0.08以下であることが好ましく、耐久性(特に耐ブリスター性)が向上する観点を考慮すると、さらには0.04以下であることが好ましい。また、当該比(F/F)は、0.001以上であることが好ましく、特に0.01以上であることが好ましく、耐久性(特に耐ブリスター性)が向上する観点を考慮すると、さらには0.015以上であることが好ましい。比(F/F)がこれらの範囲であることにより、粘着力比(F/F)を前述した範囲に調整し易いものとなる。
【0035】
本実施形態に係る粘着シートでは、前述した初期粘着力Fに対する前述した粘着力Fの比(F/F)が、2.5以下であることが好ましく、特に1.8以下であることが好ましく、さらには1.4以下であることが好ましい。また、当該比(F/F)は、0.98以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、特に1.1以上であることが好ましく、さらには1.15以上であることが好ましい。比(F/F)がこれらの範囲であることにより、粘着力比(F/F)を前述した範囲に調整し易いものとなる。
【0036】
ここで、前述した初期粘着力F、粘着力F、および粘着力Fは、基本的にはJIS Z0237:2009に準じた180度引き剥がし法により測定した粘着力をいい、これらの測定方法の詳細は、それぞれ後述する試験例に記載の通りである。
【0037】
本実施形態に係る粘着シートでは、23℃における対ガラス粘着力は、ハンドリング性、特に工程中のワーク固定の観点から、24N/25mm以上であることが好ましく、特に28N/25mm以上であることが好ましく、さらには32N/25mm以上であることが好ましい。一方、23℃における対ガラス粘着力の上限値は、リワーク性の観点から、100N/25mm以下であることが好ましく、特に76N/25mm以下であることが好ましく、さらには52N/25mm以下であることが好ましい。
【0038】
ここで、上記対ガラス粘着力は、基本的にはJIS Z0237:2009に準じた180度引き剥がし法により測定した粘着力をいうが、測定サンプルは25mm幅、100mm長とし、当該測定サンプルを被着体に貼付し、0.5MPa、50℃で20分加圧した後、常圧、所望の温度、50%RHの条件下で24時間放置してから、剥離速度300mm/minにて測定するものとする。また、本明細書における「対ガラス粘着力」とは、ソーダライムガラスに対する粘着力をいう。
【0039】
本実施形態に係る粘着シートでは、粘着剤層に対して活性エネルギー線を照射した後における、当該粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率G’が、0.1MPa以上であることが好ましく、0.3MPa以上であることがより好ましく、特に0.4MPa以上であることが好ましく、さらには0.42MPa以上であることが好ましい。上記貯蔵弾性率G’が0.1MPa以上であることで、活性エネルギー線の照射後における粘着剤層が良好に硬化したものとなり、工程完了後のワークを基板からより容易に剥離することが可能となる。なお、上記貯蔵弾性率G’の上限値については特に限定されず、例えば2MPa以下であってよく、特に1MPa以下であってよく、さらには0.5MPa以下であってよい。
【0040】
また、本実施形態に係る粘着シートでは、粘着剤層に対して活性エネルギー線を照射する前における、当該粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率G’が、0.01MPa以上であることが好ましく、特に0.03MPa以上であることが好ましく、さらには0.05MPa以上であることが好ましい。また、上記貯蔵弾性率G’は、1MPa以下であることが好ましく、特に0.5MPa以下であることが好ましく、さらには0.1MPa以下であることが好ましい。活性エネルギー線を照射する前において、粘着剤層の貯蔵弾性率G’がこれらの範囲であることにより、ワークを基板に効果的に固定し易くなるとともに、活性エネルギー線照射後の貯蔵弾性率G’を上述した範囲に調整し易いものとなる。
【0041】
また、本実施形態に係る粘着シートでは、上記貯蔵弾性率G’に対する上記貯蔵弾性率G’の比(G’/G’)が、2以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましく、特に5以上であることが好ましく、さらには6以上であることが好ましい。上記比(G’/G’)が2以上であることで、本実施形態における粘着剤層は、活性エネルギー線を照射することによる硬化の程度がより明確となり、活性エネルギー線照射前におけるワークおよび基板に対する良好な密着性と、活性エネルギー線照射後における剥離性とを高いレベルで両立し易いものとなる。なお、上記比(G’/G’)の上限値については特に限定はなく、例えば、20以下であってもよく、特に12以下であってもよく、さらには8以下であってもよい。
【0042】
なお、上述した、活性エネルギー線照射後における粘着剤層の23℃の貯蔵弾性率G’、および活性エネルギー線照射前における粘着剤層の23℃の貯蔵弾性率G’の測定方法の詳細は、それぞれ後述する試験例に記載の通りである。
【0043】
本実施形態に係る粘着シートでは、粘着剤層に対して活性エネルギー線を照射する前における当該粘着剤層のゲル分率Gに対する、粘着剤層に対して活性エネルギー線を照射した後における当該粘着剤層のゲル分率Gの比(G/G)が、1.00以上であることが好ましく、特に1.05以上であることが好ましく、さらには1.10以上であることが好ましい。上記比(G/G)が1.00以上であることで、本実施形態における粘着剤層は、活性エネルギー線を照射することによる硬化の程度がより明確となり、活性エネルギー線照射前におけるワークおよび基板に対する良好な密着性と、活性エネルギー線照射後における剥離性とを高いレベルで両立し易いものとなる。なお、上記比(G/G)の上限値については特に限定はなく、例えば、1.5以下であってもよく、特に1.2以下であってもよく、さらには1.14以下であってもよい。
【0044】
本実施形態に係る粘着シートでは、上述したゲル分率Gが、40%以上であることが好ましく、60%以上であることが好ましく、特に70%以上であることが好ましく、さらには80%以上であることが好ましく、86%以上であることが最も好ましい。また、上記ゲル分率Gは、99%以下であることが好ましく、95%以下であることがより好ましく、特に92%以下であることが好ましく、さらには89%以下であることが好ましい。ゲル分率Gが上述した範囲であることで、上記比(G/G)を上述した範囲に調整し易いものとなる。
【0045】
また、本実施形態に係る粘着シートでは、上述したゲル分率Gが、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、特に95%以上であることが好ましく、さらには99%以上であることが好ましい。また、上記ゲル分率Gは、100%以下であることが好ましく、特に99.8%以下であることが好ましく、さらには99.7%以下であることが好ましい。ゲル分率Gが上述した範囲であることで、上記比(G/G)を上述した範囲に調整し易いものとなる。
【0046】
ここで、上述したゲル分率Gおよびゲル分率Gの測定方法の詳細は、それぞれ後述する試験例に記載の通りである。
【0047】
本実施形態に係る粘着シートを適用するワークは、当該粘着シートの粘着剤層と接触する面の面積が、10000cm以下であることが好適であり、5000cm以下であることがより好適であり、特に2500cm以下であることが好適であり、さらには1000cm以下であることが好適であり、200cm以下であることが最も好適である。また、当該面積は、9cm以上であることが好適であり、特に16cm以上であることが好適であり、さらには25cm以上であることが好適である。通常、粘着剤層との接触面積が小さくなるほど、ワークを粘着剤層に保持し難いものとなるものの、本実施形態に係る粘着シートによれば、上述した面積が10000cm以下であっても、ワークを粘着剤層に良好に保持することができる。さらに、通常、粘着剤層との接触面積が大きくなるほど、ワークを粘着剤層から剥離する際に、より大きな剥離力を要するものとなるものの、本実施形態に係る粘着シートによれば、上述した面積が9cm以上であっても、活性エネルギー線の照射により、ワークを粘着剤層から容易に分離することができる。
【0048】
本実施形態に係る粘着シートの一例としての具体的構成を図1に示す。
図1に示すように、一実施形態に係る粘着シート1は、2枚の剥離シート12a,12bと、それら2枚の剥離シート12a,12bの剥離面と接するように当該2枚の剥離シート12a,12bに挟持された粘着剤層11とから構成される。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいい、剥離処理を施した面および剥離処理を施さなくても剥離性を示す面のいずれをも含むものである。
【0049】
1.各部材
1-1.粘着剤層
本実施形態に係る粘着シート1の粘着剤層11を構成する粘着剤は、活性エネルギー線硬化性を有するとともに、前述した物性を満たすものであれば特に限定されない。このような活性エネルギー線硬化性粘着剤としては、活性エネルギー線硬化性を有するポリマー(活性エネルギー線硬化性ポリマー)を主成分とするものであってもよいし、活性エネルギー線硬化性を有しないポリマー(活性エネルギー線非硬化性ポリマー)と、少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとの混合物を主成分とするものであってもよい。
【0050】
中でも、本実施形態における粘着剤層11を構成する粘着剤は、前述した物性を満たし易いという観点から、活性エネルギー線硬化性ポリマーを主成分とするものであることが好ましい。特に、粘着剤層11を構成する粘着剤は、当該活性エネルギー線硬化性ポリマーとしての、側鎖に活性エネルギー線硬化性を有する官能基(活性エネルギー線硬化性基)が導入された(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)(以下「活性エネルギー線硬化性重合体(A)」という場合がある。)と、架橋剤(B)とを含有する粘着性組成物(以下「粘着性組成物P」という場合がある。)から形成された粘着剤(粘着性組成物Pを架橋してなる粘着剤)であることが好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語も同様である。また、「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。
【0051】
(1)粘着性組成物Pの成分
(1-1)活性エネルギー線硬化性重合体(A)
活性エネルギー線硬化性重合体(A)は、官能基含有モノマー単位を有するアクリル系共重合体(a1)と、その官能基に結合する官能基を有する不飽和基含有化合物(a2)とを反応させて得られるものであることが好ましい。
【0052】
上記アクリル系共重合体(a1)は、官能基含有モノマーから導かれる構成単位と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーまたはその誘導体から導かれる構成単位とを含むことが好ましい。なお、官能基含有モノマーが有する官能基は、上述の通り、不飽和基含有化合物(a2)との反応に用いられるだけでなく、後述する架橋剤(B)との反応にも用いられるものとなる。架橋剤(B)との反応が生じると、粘着剤中に架橋構造(三次元網目構造)が形成され、所望の凝集力が達成される。
【0053】
アクリル系共重合体(a1)の構成単位としての官能基含有モノマーは、重合性の二重結合と、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基とを分子内に有するモノマーであることが好ましい。
【0054】
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。上述した中でも、不飽和基含有化合物(a2)との反応が良好に進行し、所望の活性エネルギー線硬化性重合体(A)を形成し易いという観点から、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルおよび(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルを使用することが好ましく、前述した粘着物性を満たし易くなる観点から、特にアクリル酸4-ヒドロキシブチルおよびアクリル酸2-ヒドロキシエチルを使用することが好ましく、さらにアクリル酸4-ヒドロキシブチルを使用することが好ましい。
【0055】
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
アミノ基含有モノマーまたは置換アミノ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸n-ブチルアミノエチル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
アクリル系共重合体(a1)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、上記官能基含有モノマーから導かれる構成単位を、5質量%以上含有することが好ましく、10質量%以上含有することがより好ましく、特に20質量%以上含有することが好ましく、さらには26質量%以上含有することが好ましい。また、アクリル系共重合体(a1)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、上記官能基含有モノマーから導かれる構成単位を、50質量%以下含有することが好ましく、特に40質量%以下含有することが好ましく、さらには35質量%以下含有することが好ましい。アクリル系共重合体(a1)が、当該重合体を構成するモノマー単位を上記範囲で含有することにより、所望の活性エネルギー線硬化性重合体(A)を形成し易いものとなり、得られる粘着剤は、前述した粘着物性を満たし易くなる。また、耐久性(耐酸性、耐塩基性、耐ブリスター性等)に優れたものとなる。
【0058】
アクリル系共重合体(a1)の構成単位としての(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーが好ましい。アルキル基は、直鎖状または分岐鎖状であってもよいし、環状構造を有するものであってもよい。
【0059】
上記アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、特にアルキル基の炭素数が1~18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル等を使用することが好ましく、特にアクリル酸メチルを使用することが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
アクリル系共重合体(a1)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1~18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを、1質量%以上含有することが好ましく、特に4質量%以上含有することが好ましく、さらには8質量%以上含有することが好ましい。また、アクリル系共重合体(a1)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1~18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを、20質量%以下含有することが好ましく、特に16質量%以下含有することが好ましく、さらには12質量%以下含有することが好ましい。
【0061】
また、上記アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、ホモポリマーとしてのガラス転移温度(Tg)が-30℃以下であるもの(以下「低Tgアルキルアクリレート」という場合がある。)を含有することも好ましい。かかる低Tgアルキルアクリレートを構成モノマー単位として含有することにより、得られる粘着剤が好適な粘弾性を発現し易いものとなる。これにより、常温環境下だけでなく、粘着剤が高温に曝された場合であっても、所望の粘着力を達成し易いものとなり、前述した粘着物性を満たし易くなる。また、耐久性(耐酸性、耐塩基性、耐ブリスター性等)に優れたものとなる。
【0062】
低Tgアルキルアクリレートとしては、例えば、アクリル酸n-ブチル(Tg-55℃)、アクリル酸n-オクチル(Tg-65℃)、アクリル酸イソオクチル(Tg-58℃)、アクリル酸2-エチルヘキシル(Tg-70℃)、アクリル酸イソノニル(Tg-58℃)、アクリル酸イソデシル(Tg-60℃)、メタクリル酸イソデシル(Tg-41℃)、メタクリル酸n-ラウリル(Tg-65℃)、アクリル酸トリデシル(Tg-55℃)、メタクリル酸トリデシル(Tg-40℃)等が好ましく挙げられる。中でも、低Tgアルキルアクリレートとして、ホモポリマーのTgが、-45℃以下であるものであることがより好ましく、-50℃以下であるものであることが特に好ましい。具体的には、アクリル酸n-ブチルおよびアクリル酸2-エチルヘキシルが特に好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
なお、低Tgアルキルアクリレートを2種類以上組み合わせて用いる場合、工程終了後においてワークを基板から容易に剥離できる観点から、使用する低Tgアルキルアクリレートのうち最もTgの低いものの含有量が多いことが好ましい。
【0064】
アクリル系共重合体(a1)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、低Tgアルキルアクリレートを、35質量%以上含有することが好ましく、特に45質量%以上含有することが好ましく、さらには55質量%以上含有することが好ましい。また、アクリル系共重合体(a1)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、低Tgアルキルアクリレートを、90質量%以下含有することが好ましく、特に80質量%以下含有することが好ましく、さらには70質量%以下含有することが好ましい。上記低Tgアルキルアクリレートを上記の範囲で含有することで、得られる粘着剤は、前述した粘着物性を満たし易くなる。また、耐久性(耐酸性、耐塩基性、耐ブリスター性等)に優れたものとなる。
【0065】
また、アクリル系共重合体(a1)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、窒素原子含有モノマーを含有することも好ましい。窒素原子含有モノマーを含有することにより、ガラス等の被着体(基板)への密着性を向上させることができる。窒素原子含有モノマーとしては、アミノ基を有するモノマー、アミド基を有するモノマー、窒素含有複素環を有するモノマーなどが挙げられ、中でも、窒素含有複素環を有するモノマーが好ましい。また、構成される粘着剤の高次構造中で上記窒素原子含有モノマー由来部分の自由度を高める観点から、当該窒素原子含有モノマーは、アクリル系共重合体(a1)を形成するための重合に使用される1つの重合性基以外に反応性不飽和二重結合基を含有しないことが好ましい。
【0066】
窒素含有複素環を有するモノマーとしては、例えば、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-(メタ)アクリロイルアジリジン、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、2-ビニルピラジン、1-ビニルイミダゾール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルフタルイミド等が挙げられ、中でも、より優れた粘着力を発揮するN-(メタ)アクリロイルモルホリンが好ましく、特にN-アクリロイルモルホリンが好ましい。
【0067】
なお、窒素原子含有モノマーとして、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-tert-ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-エチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-フェニル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルカプロラクタム、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等を使用することもできる。
【0068】
以上の窒素原子含有モノマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
アクリル系共重合体(a1)は、ガラス等の被着体への密着性を向上させる観点から、当該重合体を構成するモノマー単位として、窒素原子含有モノマーを1質量%以上含有することが好ましく、5質量%含有することがより好ましく、さらには8質量%以上含有することが特に好ましい。また、窒素原子含有モノマーの含有量は、他の成分の配合量を確保する観点から、20質量%以下であることが好ましく、16質量%以下であることがより好ましく、12質量%以下であることが特に好ましい。上記窒素原子含有モノマーを上記の範囲で含有することで、得られる粘着剤は、前述した粘着物性を満たし易くなる。また、耐久性(耐酸性、耐塩基性、耐ブリスター性等)に優れたものとなる。
【0070】
アクリル系共重合体(a1)は、上記のような官能基含有モノマーと、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体とを常法で共重合することにより得られるが、これらモノマーの他にも蟻酸ビニル、酢酸ビニル、スチレン等が共重合されてもよい。
【0071】
アクリル系共重合体(a1)は、溶液重合法によって得られた溶液重合物であることが好ましい。溶液重合物であることにより高分子量のポリマーが得られやすく、高温での粘着力により優れた粘着剤が得られる。
【0072】
アクリル系共重合体(a1)の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0073】
不飽和基含有化合物(a2)としては、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基含有モノマー単位の官能基と反応することができる官能基を有するものであれば特に限定されない。不飽和基含有化合物(a2)が有する官能基は、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基がヒドロキシ基、アミノ基または置換アミノ基の場合、不飽和基含有化合物(a2)が有する官能基としてはイソシアネート基またはエポキシ基が好ましく、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基がエポキシ基の場合、不飽和基含有化合物(a2)が有する官能基としてはアミノ基、カルボキシ基またはアジリジニル基が好ましい。
【0074】
また上記不飽和基含有化合物(a2)には、活性エネルギー線重合性の炭素-炭素二重結合が、1分子中に少なくとも1個含まれることが好ましく、特に1~6個含まれることが好ましく、さらには1~4個含まれることが好ましい。このような不飽和基含有化合物(a2)の具体例としては、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、2-(1-アジリジニル)エチル(メタ)アクリレート、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン等が挙げられる。
【0075】
上記不飽和基含有化合物(a2)は、上記アクリル系共重合体(a1)の官能基含有モノマーモル数に対して、50モル%以上の割合で用いられることが好ましく、60モル%以上の割合で用いられることがより好ましく、特に70モル%以上の割合で用いられることが好ましく、さらには80モル%以上の割合で用いられることが好ましく、88モル%以上の割合で用いられることが最も好ましい。また、上記不飽和基含有化合物(a2)は、上記アクリル系共重合体(a1)の官能基含有モノマーモル数に対して、99モル%以下の割合で用いられることが好ましく、特に95モル%以下の割合で用いられることが好ましく、さらには92モル%以下の割合で用いられることが好ましい。上記不飽和基含有化合物(a2)を上記の範囲で含有することで、得られる粘着剤は、前述した粘着物性を満たし易くなる。また、耐久性(耐酸性、耐塩基性、耐ブリスター性等)に優れたものとなる。
【0076】
このような不飽和基含有化合物(a2)が有する官能基に対し、前述したアクリル系共重合体(a1)が有する官能基を反応させることにより、活性エネルギー線硬化性重合体(A)を得ることができる。
【0077】
アクリル系共重合体(a1)と不飽和基含有化合物(a2)との反応においては、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基と不飽和基含有化合物(a2)が有する官能基との組合せに応じて、反応の温度、圧力、溶媒、時間、触媒の有無、触媒の種類を適宜選択することができる。これにより、アクリル系共重合体(a1)中に存在する官能基と、不飽和基含有化合物(a2)中の官能基とが反応し、不飽和基がアクリル系共重合体(a1)中の側鎖に導入され、活性エネルギー線硬化性重合体(A)が得られる。
【0078】
このようにして得られる活性エネルギー線硬化性重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、10万以上であることが好ましく、20万以上であることがより好ましく、特に40万以上であることが好ましく、さらには60万以上であることが好ましい。また、当該重量平均分子量(Mw)は、150万以下であることが好ましく、特に120万以下であることが好ましく、さらには90万以下であることがより好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定した標準ポリスチレン換算の値である。上記重量平均分子量(Mw)が上記の範囲であることで、得られる粘着剤は、前述した粘着物性を発現し易くなる。また、耐久性(耐酸性、耐塩基性、耐ブリスター性等)に優れたものとなる。
【0079】
(1-2)架橋剤(B)
架橋剤(B)は、当該架橋剤(B)を含有する粘着性組成物Pの加熱等をトリガーとして、活性エネルギー線硬化性重合体(A)を架橋し、三次元網目構造を形成する。これにより、得られる粘着剤の凝集力が向上し、粘着力がより高いものとなる。
【0080】
上記架橋剤(B)としては、活性エネルギー線硬化性重合体(A)が有する官能基と反応するものであればよく、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等が挙げられる。ここで、活性エネルギー線硬化性重合体(A)が構成モノマー単位としてヒドロキシ基含有モノマーを含有する場合には、架橋剤(B)としては、ヒドロキシ基との反応性に優れたイソシアネート系架橋剤を使用することが好ましい。なお、架橋剤(B)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0081】
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。中でもヒドロキシ基との反応性の観点から、ヘキサメチレンジイソシアネートを有する脂肪族系イソシアネート、トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート等を使用することが好ましい。
【0082】
粘着性組成物P中における架橋剤(B)の含有量は、活性エネルギー線硬化性重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.1質量部以上であることが好ましく、さらには0.3質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、特に2質量部以下であることが好ましく、さらには0.7質量部以下であることが好ましい。架橋剤(B)の含有量が上記の範囲にあることで、得られる粘着剤の凝集力が適度に高いものとなり、粘着力、特に高温での粘着力がより高いものとなって、前述した粘着物性を満たし易いものとなる。また、耐久性(耐酸性、耐塩基性、耐ブリスター性等)に優れたものとなる。
【0083】
(1-3)光重合開始剤(C)
活性エネルギー線硬化性粘着剤を硬化させるための活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、粘着性組成物Pが光重合開始剤(C)を含有することが好ましい。これにより、重合硬化時間および光線照射量を少なくすることができる。
【0084】
光重合開始剤(C)としては、具体的には、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4-ジエチルチオキサンソン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、β-クロールアンスラキノン、(2,4,6-トリメチルベンジルジフェニル)フォスフィンオキサイド、2-ベンゾチアゾール-N,N-ジエチルジチオカルバメート、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-プロペニル)フェニル]プロパノン}、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0085】
粘着性組成物P中における光重合開始剤(C)の含有量は、活性エネルギー線硬化性重合体(A)100質量部に対して、0.4質量部以上であることが好ましく、特に0.8質量部以上であることが好ましく、さらには1.2質量部以上であることが好ましい。一方、当該含有量は、10質量部以下であることが好ましく、特に6質量部以下であることが好ましく、さらには4質量部以下であることが好ましい。光重合開始剤(C)の含有量が上記範囲であることで、重合硬化時間および光線照射量を効果的に少なくすることができるとともに、得られる粘着剤が前述した粘着物性を発揮し易いものとなる。また、耐久性(耐酸性、耐塩基性、耐ブリスター性等)に優れたものとなる。
【0086】
(1-4)各種添加剤
粘着性組成物Pには、所望により、活性エネルギー線硬化性粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えばシランカップリング剤、紫外線吸収剤、硬化遅延剤、粘着付与剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、充填剤などを添加することができる。
【0087】
硬化遅延剤としては、例えば、エチニルアルコール、2-プロピン-1-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-トリメチルシロキシプロピン等のアセチレン化合物、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、N,N-ジブチルエチレンジアミン、N,N-ジブチル-1,3-プロパンジアミン、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン、N,N-ジブチル-1,4-ブタンジアミン、2,2’-ビピリジン等のアミン化合物、ジメチルマレート等の1、2-ジエステル系化合物等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
粘着性組成物P中における硬化遅延剤の含有量は、活性エネルギー線硬化性重合体(A)100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、特に1質量部以上であることが好ましく、さらには3質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、18質量部以下であることが好ましく、特に12質量部以下であることが好ましく、さらには6質量部以下であることが好ましい。上記硬化遅延剤を上記の範囲で含有することで、得られる粘着剤は、前述した粘着物性を発揮し易いものとなる傾向がある。また、耐久性(耐酸性、耐塩基性、耐ブリスター性等)に優れたものとなる。
【0089】
シランカップリング剤としては、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であって、活性エネルギー線硬化性重合体(A)との相溶性がよいものが好ましい。ワークを固定するための基板としてガラス基板を使用する場合には、シランカップリング剤を使用することで、得られる粘着剤が当該基板に対して高い密着性を発揮し易いものとなる。この基板に対する密着性向上に伴い、基板に粘着剤層が密着した状態において、粘着剤層からワークを剥離し易いものとなる。
【0090】
また、シランカップリング剤としては、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アミノ基、ウレイド基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、メルカプト基、メチル基およびチオール基から選択される少なくとも1種の官能基を有するものを使用することが好ましい。これらの中でも、密着性向上の観点からは、エポキシ基およびメルカプト基の少なくとも1種の官能基を含有するシランカップリング剤を使用することが好ましく、特にメルカプト基を含有するシランカップリング剤を使用することが好ましい。
【0091】
上述したように、シランカップリング剤がメルカプト基を含有する場合、当該シランカップリング剤は、架橋剤(B)とより良好に反応するものとなる。特に、架橋剤(B)がイソシアネート系架橋剤である場合には、シランカップリング剤におけるメルカプト基が、イソシアネート系架橋剤におけるイソシアネート基と良好に反応し易いものとなる。一方、架橋剤(B)は、前述した通り、活性エネルギー線硬化性重合体(A)を架橋する作用も有する。そのため、形成される粘着剤中においては、活性エネルギー線硬化性重合体(A)が架橋剤(B)によって架橋されるとともに、当該架橋剤(B)に対して、上記メルカプト基を介してシランカップリング剤が結合してなる三次元網目構造が形成されるものとなる。このような粘着剤では、シランカップリング剤が有するアルコキシシリル基が、活性エネルギー線硬化性重合体(A)から適切な距離(特に、架橋剤(B)がイソシアネート系架橋剤である場合には、複数のイソシアネート基の相互間の距離)をもって、活性エネルギー線硬化性重合体(A)にぶら下がった形となると推定される。このように、アルコキシシリル基が、(架橋された)活性エネルギー線硬化性重合体(A)から適切な距離をもって存在することにより、優れたカップリング効果が発揮され、それにより、得られる粘着剤は、加熱処理を受けた場合であっても所望の粘着性を発揮し易いものとなり、結果として、本実施形態に係る粘着シートはより優れたハンドリング性を有するものとなる。
【0092】
また、シランカップリング剤が上述した官能基を含有する場合、シランカップリング剤一分子中における官能基の数は、1つ(単官能基型)であってもよく、または複数(多官能基型)であってもよいものの、基板に対する粘着剤層の密着性向上の観点からは、多官能基型であることが好ましい。
【0093】
シランカップリング剤の好ましい例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等のメルカプト基含有ケイ素化合物、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、あるいはこれらの少なくとも1つと、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有ケイ素化合物との縮合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
粘着性組成物P中におけるシランカップリング剤の含有量は、活性エネルギー線硬化性重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.05質量部以上であることが好ましく、さらには0.10質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、1.0質量部以下であることが好ましく、特に0.5質量部以下であることが好ましく、さらには0.3質量部以下であることが好ましい。上記シランカップリング剤を上記の範囲で含有することで、得られる粘着剤は、前述した粘着物性を発揮し易いものとなる傾向がある。また、耐久性(耐酸性、耐塩基性、耐ブリスター性等)に優れたものとなる。
【0095】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、ベンゾオキサジノン系、トリアジン系、フェニルサリシレート系、シアノアクリレート系、ニッケル錯塩系等の化合物が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0096】
粘着性組成物P中における紫外線吸収剤の含有量は、活性エネルギー線硬化性重合体(A)100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、特に2質量部以上であることが好ましく、さらには3質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、15質量部以下であることが好ましく、特に12質量部以下であることが好ましく、さらには8質量部以下であることが好ましい。
【0097】
(2)粘着性組成物Pの製造
粘着性組成物Pは、活性エネルギー線硬化性重合体(A)を製造し、得られた活性エネルギー線硬化性重合体(A)と、架橋剤(B)と、所望により光重合開始剤(C)およびそのほかの添加剤を混合することで製造することができる。また、粘着性組成物Pには所望により希釈溶剤を添加して十分に混合することにより、溶剤で希釈された粘着性組成物P(塗布溶液)としてもよい。
【0098】
なお、上記各成分のいずれかにおいて、固体状のものを用いる場合、あるいは、希釈されていない状態で他の成分と混合した際に析出を生じる場合には、その成分を単独で予め希釈溶媒に溶解もしくは希釈してから、その他の成分と混合してもよい。
【0099】
上記希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
【0100】
このようにして調製された塗布溶液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着性組成物Pの濃度が10~60質量%となるように希釈する。なお、塗布溶液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着性組成物Pがコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。
【0101】
(3)粘着剤層の形成
粘着剤層11は、塗布した粘着性組成物Pを架橋することにより形成することができる。粘着性組成物Pの架橋は、加熱処理により行うことが好ましい。なお、この加熱処理は、粘着性組成物Pの塗布後の乾燥処理で兼ねることもできる。
【0102】
加熱処理の加熱温度は、50~150℃であることが好ましく、特に70~120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、10秒~10分であることが好ましく、特に50秒~2分であることが好ましい。また、加熱処理後、常温(例えば、23℃、50%RH)で1~2週間程度の養生期間を設けることも好ましい。
【0103】
上記の加熱処理(及び養生)により、架橋剤(B)を介して活性エネルギー線硬化性重合体(A)が良好に架橋される。
【0104】
(4)粘着剤層の厚さ
本実施形態に係る粘着シート1における粘着剤層11の厚さ(JIS K7130に準じて測定した値)は、下限値として5μm以上であることが好ましく、特に10μm以上であることが好ましく、さらには15μm以上であることが好ましい。粘着剤層11の厚さの下限値が上記であると、粘着力がより優れたものとなる。また、粘着剤層11の厚さは、上限値として50μm以下であることが好ましく、特に40μm以下であることが好ましく、さらには30μm以下であることが好ましく、25μm以下であることが最も好ましい。粘着剤層11の厚さの上限値が上記であると、前述した粘着物性を発揮し易く、特に易剥離性がより優れたものとなる。また、耐久性(耐酸性、耐塩基性、耐ブリスター性等)に優れたものとなる。なお、粘着剤層11は単層で形成してもよいし、複数層を積層して形成することもできる。
【0105】
1-2.剥離シート
剥離シート12a,12bは、粘着シート1の使用時まで粘着剤層11を保護するものであり、粘着シート1(粘着剤層11)を使用するときに剥離される。本実施形態に係る粘着シート1において、剥離シート12a,12bの一方または両方は必ずしも必要なものではない。
【0106】
剥離シート12a,12bとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
【0107】
上記剥離シート12a,12bの剥離面(特に粘着剤層11と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。なお、剥離シート12a,12bのうち、一方の剥離シートを剥離力の大きい重剥離型剥離シートとし、他方の剥離シートを剥離力の小さい軽剥離型剥離シートとすることが好ましい。
【0108】
剥離シート12a,12bの厚さについては特に制限はないが、通常20~150μm程度である。
【0109】
2.粘着シートの製造
粘着シート1の一製造例として、前述した粘着性組成物Pを使用した場合について説明する。一方の剥離シート12a(または12b)の剥離面に、粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを熱架橋し、塗布層を形成した後、その塗布層に他方の剥離シート12b(または12a)の剥離面を重ね合わせる。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記塗布層が粘着剤層11となる。これにより、粘着シート1が得られる。加熱処理および養生の条件については、前述した通りである。
【0110】
上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。
【0111】
3.粘着シートの使用
前述した通り、本実施形態に係る粘着シート1は、ワークとしての光学部材や電子部材等のデバイス、好ましくはフレキシブルデバイスを、加工、積層、検査などの工程中に基板に固定するのに好適に使用される。なお、上記の工程終了後、ワークは基板から剥離される。
【0112】
図2に、粘着シート1の使用状態を表す積層体4の断面図を示す。本実施形態に係る積層体4は、ワークとしてのフレキシブルデバイス2と、粘着シート1の粘着剤層11と、基板3とをその順に積層してなる。かかる積層体4において、フレキシブルデバイス2は、粘着剤層11を介して基板3にしっかりと固定されるため、当該工程を問題なく行うことができる。
【0113】
上記工程は、ワークを加熱する処理、または副次的にワークが加熱されることを伴う処理を含むものであることが好適である。このような加熱処理の例としては、金属蒸着工程、封止樹脂等の樹脂硬化工程、アニール処理等が挙げられる。本実施形態に係る粘着シート1および積層体4は、前述した物性を満たす粘着剤層11を備えるため、加熱処理を行ったとしても、その後に活性エネルギー線照射を行うことにより、ワークに対する粘着力を良好に低下させることができ、それにより、粘着剤層11からワークを容易に剥離することができる。
【0114】
上述した加熱処理は、一般的な加熱処理と同様の条件としてよい。例えば、加熱温度としては、40℃以上とすることが好ましく、特に80℃以上とすることが好ましく、さらには120℃以上とすることが好ましい。また、加熱温度は、200℃以下とすることが好ましく、特に180℃以下とすることが好ましく、さらには160℃以下とすることが好ましい。また、加熱時間は、5分以上とすることが好ましく、特に10分以上とすることが好ましく、さらには20分以上とすることが好ましい。また、加熱時間は、60分以下とすることが好ましく、特に50分以下とすることが好ましく、さらには40分以下とすることが好ましい。
【0115】
上述した工程の完了後、粘着剤層11(またはフレキシブルデバイス2・基板3)に対して、活性エネルギー線を照射して、粘着剤層11を硬化させることで、ワークに対する粘着力を低下させることができる。これにより、粘着剤層11からワークを容易に剥離することができる。
【0116】
このようなワークを剥離するために使用する活性エネルギー線としては、通常、紫外線、電子線等が用いられ、特に取扱いが容易な紫外線が好ましい。紫外線を使用する場合、その照射は、高圧水銀ランプ、フュージョンランプ、キセノンランプ等によって行うことができる。また、その照射条件としては、照度が50mW/cm以上、1000mW/cm以下であることが好ましい。また、紫外線の積算光量は、1500mJ/cm以上であることが好ましく、特に2000mJ/cm以上であることが好ましい。また、紫外線の積算光量は、5000mJ/cm以下であることが好ましく、特に3000mJ/cm以下であることが好ましい。
【0117】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0118】
例えば、粘着シート1における剥離シート12a,12bのいずれか一方または両方は省略されてもよい。
【実施例
【0119】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0120】
〔実施例1〕
1.粘着性組成物の調製
アクリル酸2-エチルヘキシル50質量部と、アクリル酸n-ブチル10質量部と、アクリロイルモルホリン10質量部と、アクリル酸4-ヒドロキシブチル30質量部とを共重合させて得られたアクリル系共重合体と、当該アクリル系共重合体のアクリル酸4-ヒドロキシブチルのモル数に対して90モル%のメタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)とを反応させて、活性エネルギー線硬化性重合体を得た。この活性エネルギー線硬化性重合体の重量平均分子量(Mw)を後述する方法で測定したところ、70万であった。
【0121】
得られた活性エネルギー線硬化性重合体100質量部(固形分換算,以下同じ)と、架橋剤としてのヘキサメチレンジイソシアネートを有する脂肪族系イソシアネート(日本ポリウレタン工業社製,製品名「コロネートHX」)0.75質量部と、硬化遅延剤(トーヨーケム社製,製品名「BXX5638」)5質量部と、光重合開始剤としての2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(BASF社製,製品名「イルガキュア127」)3.0質量部とを溶媒中で混合し、粘着性組成物を得た。
【0122】
2.粘着シートの製造
得られた粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した重剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET751130」)の剥離処理面に、ナイフコーターで塗布した。そして、塗布層に対し、90℃で1分間加熱処理して塗布層を形成した。
【0123】
次いで、上記で得られた重剥離型剥離シート上の塗布層と、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した軽剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET382120」)とを、当該軽剥離型剥離シートの剥離処理面が塗布層に接触するように貼合し、23℃、50%RHの条件下で7日間養生することにより、重剥離型剥離シート/粘着剤層(厚さ:10μm)/軽剥離型剥離シートの構成からなる粘着シートを作製した。なお、粘着剤層の厚さは、JIS K7130に準拠し、定圧厚さ測定器(テクロック社製,製品名「PG-02」)を使用して測定した値である。
【0124】
ここで、前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・GPC測定装置:東ソー社製,HLC-8320
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK gel superH-H
TSK gel superHM-H
TSK gel superH2000
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0125】
〔実施例2~12,比較例2~3〕
アクリル系共重合体を構成するモノマーの種類および割合、MOIの使用量、活性エネルギー線硬化性重合体の重量平均分子量、架橋剤の種類および配合量、光重合開始剤の種類および配合量、シランカップリング剤の種類および配合量、ならびに粘着剤層の厚さを表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にして粘着シートを製造した。
【0126】
〔比較例1〕
アクリル酸2-エチルヘキシル50質量部と、アクリル酸n-ブチル10質量部と、アクリロイルモルホリン10質量部と、アクリル酸4-ヒドロキシブチル30質量部とを共重合させることで、アクリル系共重合体を得た。このアクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)を前述する方法で測定したところ、65万であった。なお、表1における「活性エネルギー線硬化性重合体の重量平均分子量」の欄には、比較例1については、アクリル系共重合体についての上記測定結果を記載した。
【0127】
得られたアクリル系共重合体100質量部と、架橋剤としてのヘキサメチレンジイソシアネートを有する脂肪族系イソシアネート(日本ポリウレタン工業社製,製品名「コロネートHX」)0.75質量部と、硬化遅延剤(トーヨーケム社製,製品名「BXX5638」)5質量部と、光重合開始剤としての2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(BASF社製,製品名「イルガキュア127」)3.0質量部とを溶媒中で混合し、粘着性組成物を得た。
【0128】
上記の通り得られた粘着性組成物を使用した以外、実施例1と同様にして粘着シートを製造した。
【0129】
〔試験例1〕(ゲル分率の測定)
実施例および比較例で得られた粘着シートを80mm×80mmのサイズに裁断して、その粘着剤層をポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM1とする。
【0130】
次に、上記ポリエステル製メッシュに包まれた粘着剤を、室温下(23℃)で酢酸エチルに24時間浸漬させた。その後粘着剤を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、24時間風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM2とする。
【0131】
以上のようにして得られた質量M1およびM2について、(M2/M1)×100という計算により、活性エネルギー線を照射する前の状態における粘着剤層のゲル分率G(%)を算出した。結果を表2に示す。
【0132】
また、実施例および比較例で得られた粘着シートにおける粘着剤層に対して、重剥離型剥離シートごしに、下記の紫外線照射条件にて紫外線を照射した。この紫外線を照射した粘着剤層について、上記と同様にゲル分率を測定し、活性エネルギー線を照射した後における粘着剤層のゲル分率G(%)とした。結果を表2に示す。
<紫外線照射条件>
・高圧水銀ランプ使用
・照度200mW/cm,積算光量2000mJ/cm
・UV照度・光量計はアイグラフィックス社製の製品名「UVPF-A1」を使用
【0133】
さらに、上述の通り測定されたゲル分率G(%)に対するゲル分率G(%)の比(G/G)を算出した。その結果も表2に示す。
【0134】
〔試験例2〕(貯蔵弾性率の測定)
実施例および比較例で得られた粘着シートから剥離シートを剥がし、粘着剤層を厚さ3mmになるように複数層積層した。得られた粘着剤層の積層体から、直径8mmの円柱体(高さ3mm)を打ち抜き、これをサンプルとした。
【0135】
上記サンプルについて、JIS K7244-6:1999に準拠し、粘弾性測定装置(Physica社製,製品名「MCR300」)を用いてねじりせん断法により、以下の条件で貯蔵弾性率(MPa)を測定した。この結果を、活性エネルギー線を照射する前の状態における貯蔵弾性率G’として表2に示す。
測定周波数:1Hz
測定温度:23℃
【0136】
また、上記と同様に得たサンプルを、前述した紫外線照射条件にて紫外線を照射した後、上記と同様に貯蔵弾性率(MPa)を測定した。この結果を、活性エネルギー線を照射した後における貯蔵弾性率G’として表2に示す。
【0137】
さらに、上述の通り測定された貯蔵弾性率G’(MPa)に対する貯蔵弾性率G’(MPa)の比(G’/G’)を算出した。その結果も表2に示す。
【0138】
〔試験例3〕(粘着力の測定)
実施例および比較例で作製した粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、裏打ち材としての、易接着層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製,製品名「PET A4300」,厚さ:25μm)の易接着層に貼合し、重剥離型剥離シート/粘着剤層/PETフィルムの積層体を得た。得られた積層体を25mm幅、100mm長に裁断し、これをサンプルとした。
【0139】
23℃、50%RHの環境下にて、上記サンプルから重剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、樹脂フィルムとしてのシクロオレフィンポリマー(COP)フィルム(厚さ:40μm)の片面に対し、23℃、50%RHの環境下で2kgゴムローラーを用いて貼付した。その後、剥離速度300mm/min、剥離角度180度の条件で、粘着剤層を樹脂フィルムから剥離し、その時の粘着力(N/25mm)を測定した。なお、ここに記載した以外の条件はJIS Z0237:2009に準拠して、測定を行った。このようにして得られた粘着力を、活性エネルギー線を照射する前の状態における初期粘着力F(N/25mm)とした。結果を表2に示す。
【0140】
また、上記と同様に作製したサンプルを、150℃、50%RHの高温条件下に30分投入することで加熱処理を行った。その後、室温環境下に戻し、サンプルの温度を室温まで下げた。当該サンプルについて、上記と同様に粘着力を測定し、加熱処理後における粘着力F(N/25mm)とした。結果を表2に示す。
【0141】
また、上記と同様に作製したサンプルに対して、150℃、50%RHの高温条件下に30分投入することで加熱処理を行った後、室温環境下に戻した。これにより室温まで温度が戻ったサンプルにおける粘着剤層に対して、重剥離型剥離シートごしに、前述した紫外線照射条件にて紫外線を照射した。この紫外線を照射した粘着剤層について、上記と同様に粘着力を測定し、加熱処理および活性エネルギー線照射後における粘着力F(N/25mm)とした。結果を表2に示す。
【0142】
さらに、上述の通り測定された初期粘着力F(N/25mm)に対する粘着力F(N/25mm)の比(F/F)、初期粘着力F(N/25mm)に対する粘着力F(N/25mm)の比(F/F)、および粘着力F(N/25mm)に対する粘着力F(N/25mm)の比(F/F)をそれぞれ算出した。これらの結果も表2に示す。
【0143】
〔試験例4〕(プロセス評価)
ワークとして、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム(厚さ:40μm)を用意した。実施例および比較例で作製した粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、上記ワークの片方の面に貼合し、重剥離型剥離シート/粘着剤層/COPフィルムの積層体を得た。得られた積層体を2.5cm幅、10cm長(粘着剤層とワークの接触する面の面積:25mm)に裁断した。
【0144】
23℃、50%RHの環境下にて、上記積層体から重剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、ソーダライムガラス(日本板硝子社製)に貼付したのち、栗原製作所社製オートクレーブにて0.5MPa、50℃で、20分加圧し、これをサンプルとした。得られたサンプルを、150℃、50%RHの高温条件下に30分投入することで加熱処理を行った。この加熱処理後のサンプルについて、COPフィルムと粘着剤層との界面における浮きおよび剥がれの状態、ならびに粘着剤層上におけるCOPフィルムの固定の状態について確認し、以下の基準によりプロセス評価を行った。その結果をプロセス評価Aとして、表2に示す。
◎…界面に浮き・剥がれが生じておらず、COPフィルムは粘着剤層上に良好に固定されていた。
〇…積層体の端部にのみ界面の浮き・剥がれがわずかに見られたものの、COPフィルムは粘着剤層上に良好に固定されていた。
△…COPフィルムは粘着剤層上に固定されていたものの、界面の浮き・剥がれが見られた。
×…界面の浮き・剥がれが見られ、COPフィルムは粘着剤層上に固定することができなかった。
【0145】
続いて、上記プロセス評価Aにおいて「◎」、「○」または「△」の評価を得た積層体について、そのCOPフィルム側の面から、前述した紫外線照射条件にて紫外線を照射した。その後、COPフィルムを粘着剤層から剥離し、その際の様子について、以下の基準によりプロセス評価を行った。その結果をプロセス評価Bとして、表2に示す。
◎…引き剥がす力を殆ど要することなく、容易にCOPフィルムを剥離することができた。
〇…引き剥がす力を要したものの、COPフィルムを剥離することができた。
×…COPフィルムを剥離することができなかった。
【0146】
〔試験例5〕(耐酸性および耐塩基性の評価)
実施例および比較例で得られた粘着シートの粘着剤層を、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム(厚さ:40μm)と、ソーダライムガラス(日本板硝子社製)とで挟むことで積層体を作製した。
【0147】
上記積層体を、50℃に加熱した硫酸水溶液(硫酸濃度:0.1規定)中に30分間浸漬した。その後、上記積層体を硫酸水溶液から取り出し、粘着剤層に気泡、浮きまたは剥がれがないか否か目視により確認し、以下の基準により耐酸性を評価した。結果を表2に示す。
○…気泡、浮きおよび剥がれが全くなかった。
×…気泡、浮きまたは剥がれが確認された。
【0148】
また、上記と同様に作製した積層体を、50℃に加熱した水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム濃度:0.1規定)中に30分間浸漬した。その後、上記積層体を水酸化ナトリウム水溶液から取り出し、粘着剤層に気泡、浮きまたは剥がれがないか否か目視により確認し、上記と同様の基準により耐塩基性を評価した。結果を表2に示す。
【0149】
〔試験例6〕(耐ブリスター性の評価)
実施例および比較例で得られた粘着シートの粘着剤層を、片面にスズドープ酸化インジウム(ITO)からなる透明導電膜が設けられたポリエチレンテレフタレートフィルム(尾池工業社製,ITO-PETフィルム,厚さ:125μm)の透明導電膜と、ソーダライムガラス(日本板硝子社製)とで挟み、積層体を得た。
【0150】
得られた積層体を、50℃、0.5MPaの条件下で30分間オートクレーブ処理した後、常圧、23℃、50%RHにて15時間放置した。次いで、85℃、85%RHの耐久条件下にて72時間保管した。その後、粘着剤層に気泡、浮きまたは剥がれがないか否か、目視により確認し、以下の基準により耐ブリスター性を評価した。結果を表2に示す。
◎…気泡、浮きおよび剥がれが全くなかった。
○…積層体の端部にのみ、気泡、浮きまたは剥がれがわずかに見られた。
△…積層体の全体にわたって、気泡、浮きまたは剥がれが5カ所以下生じた。
×…積層体の全体にわたって、気泡、浮きまたは剥がれが6カ所以上生じた。
【0151】
また、実施例および比較例で得られた粘着シートの粘着剤層を、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム(厚さ:40μm)と、ソーダライムガラス(日本板硝子社製)とで挟むことで積層体を作製し、当該積層体についても、上記と同様に耐ブリスター性を評価した。結果を表2に示す。
【0152】
ここで、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
[活性エネルギー線硬化性重合体]
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
BA:アクリル酸n-ブチル
ACMO:N-アクリロイルモルホリン
MA:アクリル酸メチル
4HBA:アクリル酸4-ヒドロキシブチル
MOI:メタクリロイルオキシエチルイソシアネート
[架橋剤]
コロネートHX:ヘキサメチレンジイソシアネートを有する脂肪族系イソシアネート(日本ポリウレタン工業社製,製品名「コロネートHX」)
BHS8515:トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(トーヨーケム社製,製品名「BHS8515」)
[光重合開始剤]
イルガキュア127:2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(BASF社製,製品名「イルガキュア127」)
オムニラッド500:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよびベンゾフェノンの質量比1:1の混合品(BASF社製,製品名「オムニラッド500」)
[シランカップリング剤]
X-12-1156:メルカプト基含有シランカップリング剤(信越化学工業社製,製品名「X-12-1156」、多官能基型シランカップリング剤)
KBM-403:エポキシ基含有シランカップリング剤(信越化学社製,製品名「KBM-403」、単官能基型シランカップリング剤)
【0153】
【表1】
【0154】
【表2】
【0155】
表2における初期粘着力Fおよび粘着力Fの結果から明らかなように、実施例で製造した粘着シートでは、紫外線照射前の状態において、ワークに対して優れた粘着力を発揮することができた。特に、実施例で製造した粘着シートでは、加熱処理を行った後であっても、良好な粘着力Fを示すものであった。このような性質を示した実施例に係る粘着シートは、プロセス評価Aの結果から明らかなように、所定の加熱処理後において、ワークを良好に保持することができた。
【0156】
その一方で、実施例で製造した粘着シートは、粘着力Fの結果から明らかなように、紫外線照射により、ワークに対する粘着力が大きく低下した。このような性質を示した実施例に係る粘着シートは、プロセス評価Bの結果から明らかなように、所定の紫外線照射を行うことで、ワークを容易に剥離することができた。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明に係る粘着シートは、フレキシブルデバイスの加工、積層、検査などの工程で使用される工程用粘着シートとして好適であり、特に加熱処理を含む工程で使用される工程用粘着シートとして好適である。
【符号の説明】
【0158】
1…粘着シート
11…粘着剤層
12a,12b…剥離シート
2…ワーク(フレキシブルデバイス)
3…基板
4…積層体
図1
図2