(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】シリンダブロック、液圧装置、建設機械、シリンダブロックの製造方法
(51)【国際特許分類】
F04B 1/22 20060101AFI20231106BHJP
F04B 53/16 20060101ALI20231106BHJP
B23C 3/34 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
F04B1/22
F04B53/16 Z
B23C3/34
(21)【出願番号】P 2019160710
(22)【出願日】2019-09-03
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】赤見 俊也
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲生
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-075583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 1/22
F04B 53/16
B23C 3/34
B23B 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に沿って形成され前記一方向における一側に開口したシリンダ室を形成するシリンダ壁面部と、
前記シリンダ壁面部の前記一方向における他側に形成され、少なくとも一部に開口部を有するシリンダ端面部と、
前記開口部に接続し、前記一方向に直交する方向に前記シリンダ室からずれて位置する接続ポートを形成するポート壁面部と、
前記ポート壁面部の少なくとも一部分と、前記シリンダ壁面部の少なくとも一部分とを接続し、前記一方向に対して傾斜した傾斜面部と、を備えるシリンダ部が回転軸線を中心に周方向に複数配置され
、
互いから離間した複数の傾斜面部が一つのシリンダ壁面部に接続している、シリンダブロック。
【請求項2】
前記傾斜面部の少なくとも一部は、円錐の側面部の一部分をなす形状を有する請求項1に記載のシリンダブロック。
【請求項3】
前記シリンダブロックの周方向において、前記接続ポートは、前記シリンダ室よりもはみ出した形状を有する請求項1又は2に記載のシリンダブロック。
【請求項4】
前記傾斜面部は、前記一方向に対して30°以上70°以下の角度をなしている、請求項1~3のいずれか一項に記載のシリンダブロック。
【請求項5】
前記ポート壁面部の粗さは、前記傾斜面部の粗さよりも小さい、請求項1~4のいずれか一項に記載のシリンダブロック。
【請求項6】
一方向に沿った軸線を中心とする周方向に離間して設けられ各々が前記一方向における一側に開口した複数のシリンダ室をそれぞれ形成するシリンダ壁面部と、
前記シリンダ壁面部に前記一方向における他側から接続したシリンダ端面部と、
前記シリンダ室に通じる接続ポートを形成するポート壁面部と、
前記ポート壁面部の少なくとも一部分と前記シリンダ壁面部の少なくとも一部分とを接続し前記一方向に対して傾斜した傾斜面部と、を備え、
前記傾斜面部の少なくとも一部は、円錐の側面部の一部分をなす形状を有し、
前記周方向において、前記接続ポートは前記シリンダ室よりもはみ出した形状を有し、
前記傾斜面部は、前記一方向に対して30°以上70°以下の角度をなして
おり、
互いから離間した複数の傾斜面部が一つのシリンダ壁面部に接続している、シリンダブロック。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一項に記載のシリンダブロックを備える、液圧装置。
【請求項8】
請求項
7に記載の液圧装置を備える、建設機械。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載のシリンダブロックの製造方法であって、
先細りした先端部を有する加工具を一方向における一側に進めて、前記一方向に対して傾斜した傾斜面部を含み前記一方向における他側に開口した穴を元材に形成する工程と、
前記一方向における前記一側から前記元材を切削して、前記傾斜面部において前記穴と接続するようになるシリンダ室を形成する工程と、を備える、シリンダブロックの製造方法。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか一項に記載のシリンダブロックの製造方法であって、
一方向における一側に開口したシリンダ室を含む元材を作製する工程と、
先細りした先端部を有する加工具を前記一方向における他側から前記一側に進めて、前記一方向に対して傾斜し且つ前記シリンダ室に接続した傾斜面部を含む穴を元材に形成する工程と、を備える、シリンダブロックの製造方法。
【請求項11】
前記穴を形成する工程において、互いから離間した複数の穴が形成される、請求項
9又は
10に記載のシリンダブロックの製造方法。
【請求項12】
前記一方向と交差する方向に他の加工具を移動させて、前記傾斜面部を少なくとも部分的に残し、前記元材の前記複数の穴の間を切削する工程を備える、請求項
11に記載のシリンダブロックの製造方法。
【請求項13】
前記他の加工具を用いて形成された面の粗さは、前記加工具を用いて形成された前記傾斜面部の粗さよりも小さい、請求項
12に記載のシリンダブロックの製造方法。
【請求項14】
前記一方向と交差する方向に他の加工具を移動させて前記穴を広げる工程を備える、請求項
9又は
10に記載のシリンダブロックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダブロック、液圧装置、建設機械、液圧装置用のシリンダブロックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、回転可能なシリンダブロックと、シリンダブロックのシリンダ室に配置されたピストンと、を有した液油圧装置、典型的には油圧装置が知られている。この液圧装置では、シリンダブロックの回転にともなってピストンが前後に移動し、シリンダ室の容積が変化する。シリンダブロックには、各シリンダ室に通じる接続ポートが設けられている。シリンダブロックに隣接して、複数のポートを有する弁板が配置される。各シリンダ室は、シリンダブロックの回転にともない、接続ポートを介して弁板のポートに接続する。接続ポート及び弁板のポートを介して、作動液が各シリンダ室に流入し又は各シリンダ室から流出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、接続ポートとシリンダ室との間に段差が形成されると、接続ポートとシリンダ室との間での作動液(例えば作動油)の流れに乱れが生じる。このように接続ポートとシリンダ室との間で作動液が円滑に流れることができないと、種々の不具合が生じ得る。例えば、液圧装置がポンプとして使用される場合、低圧側のシリンダ室でキャビテーションが生じる。また、液圧装置がモータとして使用される場合、圧力損失が生じて出力が低下する。
【0005】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであって、シリンダブロックの接続ポートとシリンダ室との間における作動液の流れを円滑化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による第1のシリンダブロックは、
一方向に沿って形成され前記一方向における一側に開口したシリンダ室を形成するシリンダ壁面部と、
前記シリンダ壁面部の前記一方向における他側に形成され、少なくとも一部に開口部を有するシリンダ端面部と、
前記開口部に接続し、前記一方向に直交する方向に前記シリンダ室からずれて位置する接続ポートを形成するポート壁面部と、
前記ポート壁面部の少なくとも一部分と、前記シリンダ壁面部の少なくとも一部分とを接続し、前記一方向に対して傾斜した傾斜面部と、を備えるシリンダ部が回転軸線を中心に周方向に複数配置される。
【0007】
本発明による第2のシリンダブロックは、
一方向に沿った軸線を中心とする周方向に離間して設けられ各々が前記一方向における一側に開口した複数のシリンダ室をそれぞれ形成するシリンダ壁面部と、
前記シリンダ壁面部に前記一方向における他側から接続したシリンダ端面部と、
前記シリンダ室に通じる接続ポートを形成するポート壁面部と、
前記ポート壁面部の少なくとも一部分と前記シリンダ壁面部の少なくとも一部分とを接続し前記一方向に対して傾斜した傾斜面部と、を備える。
【0008】
本発明による第3のシリンダブロックは、
一方向と平行な軸線を中心とした周方向に離間して設けられ各々が前記一方向における一側に開口した複数のシリンダ室をそれぞれ形成する複数のシリンダ壁面部と、
前記一方向における他側から各シリンダ壁面部に接続し当該シリンダ壁面部とともに各シリンダ室を形成する複数のシリンダ端面部と、
各シリンダ室に対応して設けられ前記一方向における他側から当該シリンダ室に通じる接続ポートを形成する複数のポート壁面部と、
各シリンダ室の前記シリンダ壁面部と当該シリンダ室に対応する前記接続ポートの前記ポート壁面部とを接続し前記一方向に対して傾斜した複数の傾斜面部と、を備える。
【0009】
本発明による第4のシリンダブロックは、
一方向と平行な軸線を中心とした周方向に離間して設けられ各々が前記一方向における一側に開口した複数のシリンダ室をそれぞれ形成する複数のシリンダ壁面部と、
前記一方向における他側から各シリンダ壁面部に接続し当該シリンダ壁面部とともに各シリンダ室を形成する複数のシリンダ端面部と、
前記一方向における他側から前記シリンダ室に通じる接続ポートを形成する複数のポート壁面部と、
前記シリンダ壁面部と前記ポート壁面部とを接続し前記一方向に対して傾斜した複数の傾斜面部と、を備える。
【0010】
本発明による第1~第4のシリンダブロックにおいて、前記傾斜面部が前記一方向に直交する面に対してなす角度は、前記シリンダ底面部が前記一方向に直交する面に対してなす角度よりも大きくなるようにしてもよい。
【0011】
本発明による第1~第4のシリンダブロックにおいて、前記シリンダ壁面部および前記ポート壁面部は、前記一方向に延びていてもよい。
【0012】
本発明による第1~第4のシリンダブロックにおいて、
前記シリンダ底面部は、前記一方向における前記一側を向き、
前記傾斜面部は、前記一方向における前記他側を向くようにしてもよい。
【0013】
本発明による第1~第4のシリンダブロックにおいて、前記傾斜面部の少なくとも一部は、円錐の側面部の一部分をなす形状を有するようにしてもよい。
【0014】
本発明による第1~第4のシリンダブロックにおいて、前記シリンダブロックの前記周方向において、前記接続ポートは前記シリンダ室よりもはみ出した形状を有するようにしてもよい。
【0015】
本発明による第1~第4のシリンダブロックにおいて、
前記一方向における他側からの観察において、前記接続ポートは、線状に延び且つ端部において前記シリンダ室からずれて位置し、
前記傾斜面部は、前記接続ポートの前記端部となる位置に設けられていてもよい。
【0016】
本発明による第1~第4のシリンダブロックにおいて、前記傾斜面部は、前記一方向に対して30°以上70°以下の角度をなすようにしてもよい。
【0017】
本発明による第1~第4のシリンダブロックにおいて、前記ポート壁面部の粗さは、前記傾斜面部の粗さよりも小さくなるようにしてもよい。
【0018】
本発明による第1~第4のシリンダブロックにおいて、前記傾斜面部は互いから離間して複数設けられていてもよい。
【0019】
本発明による第1~第4のシリンダブロックにおいて、
前記一方向における他側からの観察において、前記複数の傾斜面部の間に設けられ、前記一方向に直交する方向に前記シリンダ室からずれて位置する前記ポート壁面部の一部分と前記シリンダ壁面部とを接続するポート底面部を、備え、
前記傾斜面部が前記一方向に直交する面に対してなす角度は、前記ポート底面部が前記一方向に直交する面に対してなす角度よりも大きくなっていてもよい。
【0020】
本発明による第1~第4のシリンダブロックにおいて、前記ポート壁面部は、前記一方向における前記他側を向くようにしてもよい。
【0021】
本発明による第1~第4のシリンダブロックにおいて、前記一方向における他側からの観察において、前記傾斜面部は線状に延びていてもよい。
【0022】
本発明による第1~第4のシリンダブロックにおいて、前記一方向における他側からの観察において線状に延びる前記傾斜面部は、その両端部において、円錐の側面部の一部分をなす形状を有するようにしてもよい。
【0023】
本発明による第5のシリンダブロックは、
一方向に沿った軸線を中心とする周方向に離間して設けられ各々が前記一方向における一側に開口した複数のシリンダ室をそれぞれ形成するシリンダ壁面部と、
前記シリンダ壁面部に前記一方向における他側から接続したシリンダ端面部と、
前記シリンダ室に通じる接続ポートを形成するポート壁面部と、
前記ポート壁面部の少なくとも一部分と前記シリンダ壁面部の少なくとも一部分とを接続し前記一方向に対して傾斜した傾斜面部と、を備え、
前記傾斜面部の少なくとも一部は、円錐の側面部の一部分をなす形状を有し、
前記周方向において、前記接続ポートは前記シリンダ室よりもはみ出した形状を有し、
前記傾斜面部は、前記一方向に対して30°以上70°以下の角度をなしている。
【0024】
本発明による液圧装置は、上述した本発明による第1~第5のシリンダブロックのいずれかを備える。
【0025】
本発明による建設機械は、上述した本発明による液圧装置のいずれかを備える。
【0026】
本発明による第1のシリンダブロックの製造方法は、
先細りした先端部を有する加工具を一方向における一側に進めて、前記一方向に対して傾斜した傾斜面部を含み前記一方向における他側に開口した穴を元材に形成する工程と、
前記一方向における前記一側から前記元材を切削して、前記傾斜面部において前記穴と接続するようになるシリンダ室を形成する工程と、を備える。
なお、本発明による第1の液圧装置用のシリンダブロックの製造方法において、シリンダ室の形成と穴の形成は、どちらを先に実施してもよい。
【0027】
本発明による第2のシリンダブロックの製造方法は、
一方向における一側に開口したシリンダ室を含む元材を作製する工程と、
先細りした先端部を有する加工具を前記一方向における他側から前記一側に進めて、前記一方向に対して傾斜し且つ前記シリンダ室に接続した傾斜面部を含む穴を元材に形成する工程と、を備える。
【0028】
本発明による第1及び第2のシリンダブロックの製造方法の前記穴を形成する工程において、互いから離間した複数の穴が形成されるようにしてもよい。
【0029】
本発明による第1及び第2のシリンダブロックの製造方法が、前記一方向と交差する方向に他の加工具を移動させて、前記傾斜面部を少なくとも部分的に残すようにして、前記元材の前記複数の穴の間を切削する工程を備えるようにしてもよい。
【0030】
本発明による第1及び第2のシリンダブロックの製造方法において、前記他の加工具を用いて形成された面部の表面粗さは、前記加工具を用いて形成された前記傾斜面部の粗さよりも小さくなるようにしてもよい。
【0031】
本発明による第1及び第2のシリンダブロックの製造方法は、前記一方向と交差する方向に前記加工具を移動させて前記穴を広げる工程を備えるようにしてもよい。
【0032】
本発明による第1及び第2のシリンダブロックの製造方法は、前記一方向と交差する前記方向に加工具を移動させて、前記傾斜面部を少なくとも部分的にそのまま残すようにして、前記穴の粗さを小さくする工程を、備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、シリンダブロックの接続ポートとシリンダ室との間における作動液の流れを円滑化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態を説明するための図であって、液圧装置が適用され得る建設機械の一例を示す側面図である。
【
図2】
図2は、
図1の建設機械に適用され得る液圧装置の一例を示す縦断面図である。
【
図3】
図3は、
図2の液圧装置に含まれるシリンダブロックを示す平面図である。
【
図7】
図7は、
図5のシリンダブロックの接続ポート及びシリンダ室の形成方法の一例を説明するための断面図である。
【
図8】
図8は、
図5のシリンダブロックの接続ポート及びシリンダ室の形成方法の一例を説明するための断面図である。
【
図9】
図9は、
図5のシリンダブロックの接続ポート及びシリンダ室の形成方法の一例を説明するための断面図である。
【
図10】
図10は、
図5のシリンダブロックの接続ポート及びシリンダ室の形成方法の他の例を説明するための断面図である。
【
図11】
図11は、
図5のシリンダブロックの接続ポート及びシリンダ室の形成方法のさらに他の例を説明するための断面図である。
【
図12】
図12は、
図5に対応する図であって、シリンダブロックの一変形例を示す図である。
【
図13】
図13は、
図5と同様の断面においてシリンダブロックの参考例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面に示される要素には、理解を容易にするために、サイズ及び縮尺等が実際のそれらと異なって示されている要素が含まれ得る。また、以下の一実施の形態では、本実施の形態による液圧装置を油圧装置10に適用した例について説明するが、この例に限られない。
【0036】
以下で説明する油圧装置10は、いわゆる可変容量型の斜板式ピストンポンプ・モータであり、ポンプ及びモータの両アクチュエータとして活用可能である。油圧装置10をポンプとして活用する場合、油圧装置10は、後述のシリンダ室21へ作動油を吸引し、シリンダ室21から作動油を吐出する。一方、油圧装置10をモータとして活用する場合、油圧装置10は、後述の軸部材18から回転を出力する。
【0037】
より具体的には、下述の実施形態に係る油圧装置10をポンプとして活用する場合、エンジン等の動力源からの動力によって軸部材18を回転させることにより、軸部材18とスプライン結合等によって結合されたシリンダブロック20を回転させる。シリンダブロック20の回転により、シリンダブロック20のシリンダ室21に収容されたピストン25が往復動作する。このピストン25の往復動作に応じて、一部のシリンダ室21には作動油が吸い込まれるとともに他のシリンダ室21からは作動油が吐き出される。
【0038】
一方、油圧装置10をモータとして活用する場合、外部のポンプ等を用いて作動油をシリンダ室21に流入させるとともに他のシリンダ室21から作動油を吐き出させる。これにより、ピストン25が、シリンダ室21で往復動作して、斜板上を滑りながら移動する。このピストン25の動作とともにシリンダブロック20が回転し、シリンダブロック20と固定された軸部材18から回転を出力することができる。
【0039】
本実施の形態の液圧装置は、典型的には建設機械が備える油圧回路や駆動装置としての油圧装置10に使用可能であるが、他の用途に適用されてもよく、その用途は特に限定されない。
【0040】
一具体例として、
図1は、本実施の形態による油圧装置10が適用され得る建設機械CMの一例として、油圧ショベル90を示している。油圧ショベル90は、一般に、クローラを具備する下部フレーム91と、下部フレーム91に対して旋回可能に設けられる上部フレーム92と、上部フレーム92に取り付けられるブーム93と、ブーム93に取り付けられるアーム94と、アーム94に取り付けられるバケット95とを備える。油圧シリンダ96A,96B,96Cは、ブーム用、アーム用及びバケット用のアクチュエータであり、それぞれブーム93、アーム94及びバケット95を駆動する。また、上部フレーム92を旋回させる場合、旋回装置97からの回転駆動力が上部フレーム92に伝達される。そして、油圧ショベル90を走行させる場合、走行装置98からの回転駆動力が下部フレーム91のクローラに伝達される。旋回装置97及び走行装置98は、油圧を入力されることで回転を出力する油圧モータにより構成される。
【0041】
油圧装置10は、油圧シリンダ96A,96B,96C、旋回装置97及び走行装置98等の油圧アクチュエータへの圧油の供給を担うポンプとして用いることができる。また、油圧装置10は、旋回装置97や走行装置98に適用され、油圧を供給されて回転駆動力を出力するようにしてもよい。
【0042】
次に、油圧装置10について説明する。
【0043】
斜板式として図示された油圧装置10は、主たる構成要素として、ケース15、軸部材18、シリンダブロック20、ピストン25、弁板30、傾転調節機構35及び斜板50を有している。以下、各構成要素について説明していく。
【0044】
図2に示すように、ケース15は、第1ケースブロック15aと、第1ケースブロック15aと固定された第2ケースブロック15bと、を有している。第1ケースブロック15a及び第2ケースブロック15bは、ボルト等の締結具を用いて互いに固定されている。ケース15は、その内部に収容空間Sを形成している。収容空間S内に、シリンダブロック20、ピストン25、弁板30、傾転調節機構35及び斜板50が配置されている。
【0045】
図示された例では、第1ケースブロック15aの内側に、弁板30が配置されている。第1ケースブロック15aには、第1油路11及び第2油路12が形成されている。第1油路11及び第2油路12は、弁板30を介してシリンダブロック20のシリンダ室21に連通するようになる。図面では、説明の便宜上、第1油路11及び第2油路12はラインによって表されているが、実際には、シリンダブロック20のシリンダ室21への作動油の供給及び排出に応じた適切な断面寸法を有している。第1油路11及び第2油路12は、ケース15内からケース15外へとケース15を貫通して設けられている。第1油路11及び第2油路12は、油圧装置10の外部に設けられたアクチュエータや油圧源等に通じている。
【0046】
軸部材18は、軸受19a、19bを介して、ケース15に回転可能に支持されている。軸部材18は、その中心軸線を回転軸線RAとして回転することができる。軸部材18の一端は、軸受19bを介して第1ケースブロック15aによって回転可能に支持されている。軸部材18の他端は、軸受19aを介して第2ケースブロック15bによって回転可能に支持され、第2ケースブロック15bに設けられた貫通孔を通過してケース15外へ延び出している。軸部材18がケース15を貫通する部分において、ケース15と軸部材18との間にはシール部材が設けられ、作動油のケース15外への流出を防止している。軸部材18のケース15から延び出した部分は、例えばモータやエンジン等の入力手段に接続される。
【0047】
シリンダブロック20は、回転軸線RAを中心として配置された円柱状または円筒状の形状を有している。シリンダブロック20は、軸部材18によって貫通されている。シリンダブロック20は、例えばスプライン結合により、軸部材18に対して連結されている。シリンダブロック20は、軸部材18と同期して、回転軸線RAを中心として回転することができる。
【0048】
シリンダブロック20には、複数のシリンダ室21が形成されている。複数のシリンダ室21は、回転軸線RAを中心とした周方向に沿って等間隔で配列されている。各シリンダ室21は、回転軸線RAと平行な軸方向DAにおける斜板50の側に開口している。図示された例において、各シリンダ室21は、軸方向DAと平行に延びている。また、各シリンダ室21に対応して接続ポートCPが形成されている。接続ポートCPは、軸方向DAにおける弁板30の側に開口している。そして、接続ポートCPは、対応するシリンダ室21に接続しており、したがって、シリンダ室21を軸方向DAにおける弁板30の側に開放している。シリンダ室21及び接続ポートCPによりシリンダ部21Xが形成される。シリンダ部は、回転軸線RAを中心とした周方向DCに間隔をあけて複数設けられている。なお、シリンダ室21及び接続ポートCPについては後に更に詳述する。
【0049】
各シリンダ室21に対応して、ピストン25が設けられている。各ピストン25の一部分が、シリンダ室21内に配置されている。各ピストン25は、対応するシリンダ室21から斜板50に向けて軸方向DAに延び出している。ピストン25は、シリンダブロック20に対して軸方向DAに移動することができる。すなわち、ピストン25は、軸方向DAにおける斜板50の側に前進して、シリンダ室21の容積を拡大することができる。また、ピストン25は、軸方向DAにおける弁板30の側に後退して、シリンダ室21の容積を縮小することができる。
【0050】
斜板50は、ケース15内に支持されている。斜板50は、軸方向DAに、シリンダブロック20及びピストン25と対向して配置されている。
図2に示すように、軸部材18は、斜板50の中央孔51を貫通している。斜板50は、軸部材18の回転にともなって回転するシュー26と接触する接触面CSを有している。接触面CSは、シリンダブロック20及びピストン25に対向して位置する。接触面CSが回転軸線RAに垂直な面に対して傾斜可能となるようにして、斜板50はケース15内に支持されている。
【0051】
図2に示すように、斜板50の接触面CS上に、シュー26が設けられている。シュー26は、ピストン25の端部(頭部)を保持している。具体的な構成として、ピストン25の一側端となる端部は球状に形成されている。シュー26は、球状の端部の略半分を収容可能な穴を有している。ピストン25の端部を保持したシュー26は、斜板50の接触面CSに接触しながら接触面CS上を移動可能となっている。
【0052】
油圧装置10は、ケース15内に配置されたリテーナプレート27をさらに有している。リテーナプレート27は、リング状かつプレート状の部材である。リテーナプレート27は、軸部材18によって貫通され、軸部材18上に支持されている。軸部材18のリテーナプレート27を支持する支持部分18aは、曲面状に形成されている。このため、リテーナプレート27は、軸部材18上に支持された状態で、向きを変えることができる。
図2に示すように、プレート状のリテーナプレート27は、斜板50の接触面CSに沿うように傾斜して、シュー26に接触している。
【0053】
また、軸部材18とリテーナプレート27との間には、スプリング等からなるピストン押付部材28が設けられている。ピストン押付部材28によって、リテーナプレート27は、軸方向DAにおける斜板50の側に押付けられる。この結果、リテーナプレート27は、シュー26及びピストン25を斜板50の接触面CSに向けて押し付けることができる。また、ピストン押付部材28によって、軸部材18は、シリンダブロック20とともに、軸方向DAにおける弁板30の側に押付けられる。この結果、シリンダブロック20は、弁板30に向けて押圧されるようになる。
【0054】
弁板30は、第1ケースブロック15aに固定されている。すなわち、弁板30は、シリンダブロック20が軸部材18とともに回転している間、静止している。弁板30には、二以上のポートが形成されている。各ポートは、第1油路11又は第2油路12と通じている。ポートは、例えば、回転軸線RAを中心とする円弧に沿って形成され、シリンダブロック20の回転にともなって、各シリンダ室21に対応した接続ポートCPと順に対面するようになる。この結果、シリンダブロック20の回転状態に応じて、各シリンダ室21が、第1油路11及び第2油路12との接続を切り換えられるようになる。
【0055】
ここで
図3は、軸方向DAにおける弁板30の側からシリンダブロック20を示す平面図である。すなわち、
図3は、シリンダブロック20の弁板30に対面する面を示しており、この面には複数の接続ポートCPが開口している。また、
図3には、シリンダ室21が点線で示されている。図示された例において、各接続ポートCPは、回転軸線RAを中心とした周方向DCに細長く延びている。
図3に示された軸方向DAにおける弁板30の側からの観察において、各接続ポートCPは、周方向DCに沿ったその長手方向の中央部分において、対応するシリンダ室21と重なっている。一方、各接続ポートCPは、周方向DCに沿った長手方向の両端部分において、対応するシリンダ室21から周方向DCにずれている。
【0056】
とりわけ
図3に示された例において、回転軸線RAに直交する径方向DRに沿った接続ポートCPの位置は一定ではない。周方向DCに沿って配置された接続ポートCPは、径方向DRにおける内側となる位置と径方向DRにおける外側となる位置とに交互に配置されている。すなわち、径方向における内側に位置する内側接続ポートCPAと、径方向における外側に位置する外側接続ポートCPBが、周方向DCに交互に配置されている。周方向DCに隣り合う接続ポートCPの径方向DRにおける配置を変化させることで、各接続ポートCPの周方向DCに沿った長さを長く確保することができる。接続ポートCPが周方向DCに延びることで、接続ポートCPと弁板30のポートとの接続を長期間に亘り確保することができる。
【0057】
なお、径方向DRにおける内側とは、径方向DRにおける中心軸線RAに近接する側のことであり、径方向DRにおける外側とは、径方向DRにおける中心軸線RAから離間する側のことである。
【0058】
次に、
図4A及び
図4Bは、
図3に示されたシリンダブロック20とともに用いられ得る弁板30を収容空間Sから示す平面図である。弁板30は、第1油路11に接続した第1ポート31と、第2油路12に接続した第2ポート32と、を有している。第1ポート31及び第2ポート32は、ともに、周方向DCに延びている。第1ポート31及び第2ポート32の径方向DRにおける範囲は、少なくとも部分的に、接続ポートCPが径方向DRにおいて配置される範囲と重なっている。したがって、接続ポートCPは、シリンダブロック20が回転することで、第1ポート31及び第2ポート32に交互に通じるようになる。
【0059】
とりわけ
図4Aに示された例において、第1油路11に通じる第1ポート31は、径方向DRにおける位置が異なる二つの第1内側ポート31A及び第1外側ポートを有している。径方向DRにおける内側に位置する第1内側ポート31Aは、内側接続ポートCPAとだけ通じることができ、第1外側ポート31Bから遮断される。一方、径方向DRにおける外側に位置する第1外側ポート31Bは、外側接続ポートCPBとだけ通じることができ、第1内側ポート31Aから遮断される。この例においては、第1油路11も二系統に分離されていており、第1油路11の一方が第1内側ポート31Aに通じ、第1油路11の他方が第1外側ポート31Bに通じている。その一方で、内側接続ポートCPA及び外側接続ポートCPBの両方とも、弁板30の共通の第2ポート32に通じることができる。
【0060】
図4Aに示された弁板30を用いることで、例えば油圧装置10をポンプとして用いた場合、二経路の第1油路11に作動油を吐出することができる。例えば、内側接続ポートCPAから流出した作動油を、第1内側ポート31Aを介して第1油路11の第1経路に供給することができ、外側接続ポートCPBから流出した作動油を、第1外側ポート31Bを介して第1油路11の第1経路とは分離された第2経路に供給することができる。また、例えば油圧装置10をモータとして用いた場合、二経路の第1油路11から流入する作動油を別のシリンダ室21に供給することができる。例えば、第1油路11の第1経路から供給される作動油、例えば第1のポンプから供給される作動油を、第1内側ポート31Aを介して内側接続ポートCPAに接続したシリンダ室21に供給することができる。また、第1油路11の第2経路から供給される作動油、例えば第2のポンプから供給される作動油を、第1外側ポート31Bを介して外側接続ポートCPBに接続したシリンダ室21に供給することができる。
【0061】
一方、
図4Bに示された弁板30の例では、第1ポート31は、第2ポート32と同様に、内側接続ポートCPA及び外側接続ポートCPBの両方に通じることができる。
【0062】
ここで、油圧装置10の動作について説明する。油圧装置10がポンプとして機能する場合、図示しないモータやエンジン等の入力手段からの回転駆動力により、軸部材18が回転軸線RAを中心として回転する。このとき、シリンダブロック20の回転にともなって、ピストン25が、シリンダブロック20から突出するように前進し、また、シリンダブロック20内に後退する。ピストン25の進退動作により、シリンダ室21の容積が変化する。
【0063】
ピストン25が、シリンダ室21から最も延び出した位置(上死点)から、シリンダ室21内に最も入り込んだ位置(下死点)まで、後退する間、このピストン25を収容したシリンダ室21の容量は減少する。この間の少なくとも一部の期間、後退中のピストン25を収容したシリンダ室21は、接続ポートCP及び弁板30の第1ポート31を介して例えば第1油路11に接続し、シリンダ室21から作動油を吐出する。第1油路11は、高圧側の流路として、外部のアクチュエータ等に接続している。
【0064】
一方、ピストン25が、下死点から上死点まで前進する間、このピストン25を収容したシリンダ室21の容量は増大する。この間の少なくとも一部の期間、前進中のピストン25を収容したシリンダ室21は、接続ポートCP及び弁板30の第2ポート32を介して例えば第2油路12に接続し、シリンダ室21内に作動油を吸引する。第2油路12は、低圧側の流路として、作動油を貯蔵するタンク等に接続している。
【0065】
油圧装置10が油圧モータとして機能する場合、図示しない外部のポンプから第1油路11に吐出された作動油が、弁板30の第1ポート31及び接続ポートCPを介して、油圧装置10のシリンダ室21内に供給される。作動油が供給されるシリンダ室21内のピストン25は、シリンダブロック20から延び出すように前進することができる。このため、弁板30の第1ポート31は、収容したピストン25が下死点から上死点へ進む経路中に位置するシリンダ室21を、高圧側となる第1油路11に接続する。このようにして、外部ポンプからの作動油供給により、シリンダブロック20を回転させることができ、軸部材18を介して回転力を出力することができる。
【0066】
弁板30の第2ポート32は、収容したピストン25が上死点から下死点へ進む経路中に位置するシリンダ室21を、低圧側となる第2油路12に接続する。したがって、ピストン25が上死点から下死点へ後退する間、当該ピストン25を収容するシリンダ室21内の作動油を、接続ポートCP及び弁板30の第2ポート32を介して、第2油路12へ排出することができる。油圧装置10から排出された作動油は、第2油路12と接続したタンク等に回収される。
【0067】
以上の油圧装置10において、斜板50の接触面CSは、ピストン25のシリンダブロック20からの突出量を制限する。したがって、斜板50の傾き、より厳密に表現すると、軸方向DAに垂直な面に対してなす斜板50の接触面CSの傾斜角度θi(
図2参照)の大きさに依存して、軸方向DAに沿ったピストン25の往復動のストロークが定まる。そして、斜板50の傾きを変更することで、すなわち、斜板50を傾転させることで、油圧装置10の出力を変化させることができる。具体的には、斜板50の傾きが大きくなると、言い換えると傾斜角度θiが大きくなると、油圧装置10の出力が増大する。斜板50の傾きが小さくなると、言い換えると傾斜角度θiが小さくなると、油圧装置10の出力が減少する。斜板50の接触面CSが軸方向DAに垂直になると、つまり傾斜角度θiが0°となると、理論的には、油圧装置10から出力が得られなくなる。
【0068】
このため、図示された油圧装置10において、斜板50は傾転可能に保持されている。そして、傾転調節機構35は、斜板押付部材36及び斜板駆動装置37を有している。斜板押付部材36及び斜板駆動装置37は、軸部材18を間に挟むようにして、径方向DRに離間してケース15内に配置されている。斜板押付部材36は、傾斜角度θiが大きくなるように、とりわけ
図2において斜板50が反時計回りに回転するように斜板50を押す。斜板駆動装置37は、傾斜角度θiが小さくなるように、とりわけ
図2において斜板50が時計回りに回転するように斜板50を押す。斜板駆動装置37からの出力が調節可能となっている。斜板駆動装置37からの出力を調節することで、斜板50の傾斜角度θiを制御することができる。
【0069】
ところで、図示された例において、軸方向DAにおける弁板30の側からの観察において、接続ポートCPは、周方向DCに沿って延びている(
図3参照)。したがって、高速回転するシリンダブロック20の各シリンダ室21と弁板30のポート31,32との接続を安定して確保することができる。その一方で、軸方向DAにおける弁板30の側からの観察において、周方向DCに細長く延びる接続ポートCPは、部分的にシリンダ室21と重なるものの、一部においてシリンダ室21からずれて位置する。すなわち、軸方向DAにおける弁板30の側からの観察において、周方向DCに細長く延びる接続ポートCPは、周方向DCにおいてシリンダ室よりもはみ出した形状を有している。更に言い換えると、
図3に示すように、軸方向DAへの投影において、接続ポートCPは、対応するシリンダ室21と一部において重なり、当該シリンダ室21と他の部分において重ならない。また、周方向DCに細長く延びる形状を有する接続ポートCPに限られず、例えば弁板30のポート31,32との位置関係等に起因して、軸方向DAにおける弁板30の側からの観察において、接続ポートCPが少なくとも部分的にシリンダ室21からずれて位置することもある。
【0070】
ここで、
図13に示されたシリンダブロック120において、接続ポートCPはシリンダ室121から段差を介して拡張されている。すなわち、接続ポートCPのポート壁面部PWとシリンダ室121のシリンダ壁面部CWとの間に、軸方向DAにおける弁板の側を向くポート底面部PBが設けられている。そして、このポート底面部PBは、概ね軸方向DAに直交する方向へ延びている。
【0071】
ただし、
図13に示された例において、作動油は、シリンダ室121と接続ポートCPの段差を介して拡張された部分との間を円滑にながれることは難しい。それどころか、ポート壁面部PW及びポート底面部PBの近傍において、作動油の流れが大きく乱れたり作動油の流れが停滞する淀みが生じたりすることもある。低圧側となるシリンダ室121では、例えばポンプとして用いられる油圧装置110の低圧側となるシリンダ室121では、作動油の円滑な流れが阻害され、圧力が低下し、キャビテーションが生じ得る。キャビテーションが生じて気泡が発生すると、ますます作動油の流れが全体的滞り、異音やエロージョンの原因ともなる、一方、高圧側となるシリンダ室121では、接続ポートCPとシリンダ室121との間における作動油の流れに圧力損失が生じる。このような流路での圧力損失は、ポンプやモータとして用いられる油圧装置110の性能を低下させ、油圧装置110から期待した出力を得ることが難しくなる。
【0072】
一方、本実施の形態によれば、シリンダ室21と接続ポートCPとの間での流れを円滑化させるための工夫がなされている。以下、この工夫について、
図5~
図12を主に参照しながら説明する。ここで、
図5は、
図3におけるV-V線に沿った断面を示す断面図である。すなわち、
図5は、内側接続ポートCPAの長手方向に沿った断面にてシリンダブロック20を示す断面図である。また、
図6は、
図3におけるVI-VI線に沿った断面を示す断面図である。すなわち、
図6は、外側接続ポートCPBの長手方向に沿った断面にてシリンダブロック20を示す断面図である。
【0073】
まず、
図2及び
図3に示すように、シリンダ室21は、概ね円柱状の内形状を有している。シリンダ室21は、円柱の側面に対応するシリンダ壁面部CWと、円柱の底面に対応するシリンダ底面部CBと、によって区画(形成)されている。シリンダ底面部CBは、軸方向DAにおける斜板50の側に向いている。図示された例において、シリンダ壁面部CWは回転軸線RAと平行に延びており、シリンダ底面部CBは、典型的には回転軸線RAに直交している。
【0074】
一方、接続ポートCPは、既に説明したように、周方向DCに線状に延び、軸方向DAにおける弁板30の側に開口している。接続ポートCPは、回転軸線RAと平行に延びるポート壁面部PWを有している。また、接続ポートCPは、
図3に示された軸方向DAにおける弁板30の側からの観察において、一部においてシリンダ室21からずれて位置している。そして、接続ポートCPは、このシリンダ室21からずれた位置にポート底面部PBを有している。ポート底面部PBは、典型的には回転軸線RAに直交している。
【0075】
また、
図5及び
図6に示すように、接続ポートCPは、軸方向DAにおける斜板50の側において開口部OPを介してシリンダ室21に通じている。そして、本実施の形態において、シリンダブロック20は、傾斜面部ISを有している。傾斜面部ISは、軸方向DAに直交する方向にシリンダ室21からずれて位置するポート壁面部PWの少なくとも一部分と、シリンダ壁面部CWと、に接続している。この傾斜面部ISは、軸方向DAにおいて弁板30の側を向いている。すなわち、本実施の形態では、接続ポートCPのポート壁面部PWとシリンダ室21のシリンダ壁面部CWとを、傾斜面部ISを介して、滑らかに接続することができる。シリンダ壁面部CWとポート壁面部PWとの間が少なくとも部分的にでも傾斜面部ISを介して連結されることにより、シリンダ室21と接続ポートCPとの間における作動油の流れを円滑化させることができる。これにより、油圧装置10をポンプに適用した場合、低圧側のシリンダ室21内へ作動油を安定して引き込むことができる。結果として、自吸性が改善され、キャビテーションの発生等の不具合を効果的に回避することができる。また、油圧装置10をモータ及びポンプに適用する場合、接続ポートCPとシリンダ室21との間を流れる作動油の圧力損失を効果的に回避することができる。結果として、モータ又はポンプとして活用される油圧装置10の性能を改善することができる。
【0076】
なお、ポート底面部PB及びシリンダ底面部CBは、典型的には、軸方向DAに垂直な面となるが、加工条件等に依存して、軸方向DAに対して直交せずに傾斜することもある。ただし、回転軸線RAに直交する面に対してポート底面部PB及びシリンダ底面部CBがそれぞれなす角度は非常に小さい。そして、傾斜面部ISが軸方向DAに直交する面に対してなす角度は、シリンダ底面部CBが軸方向DAに直交する面に対してなす角度よりも大きく、ポート底面部PBが軸方向DAに直交する面に対してなす角度よりも大きい。
【0077】
ポンプやモータとして適用される油圧装置10において、傾斜面部ISが軸方向DAに対してなす傾斜角度θx(
図5参照)は、30°以上70°以下であることが好ましい。傾斜角度θxが大きい場合、
図13の例と同様に、シリンダ室21と接続ポートCPとの間における作動油の流れを十分有効に円滑化することが難しくなる。一方、傾斜角度θxが小さい場合、シリンダブロック20の軸方向の長さが長くなり、また、加工条件が厳しくなる。
【0078】
図5及び
図6に示すように、図示されたシリンダブロック20は、互いから離間して配置された複数の傾斜面部ISを有している。複数の傾斜面部ISの間には、ポート底面部PBが設けられている。
図3に示すように、軸方向DAにおける弁板30の側からの観察において、ポート底面部PBは、軸方向DAに直交する方向にシリンダ室21からずれて位置している。
図5及び
図6に示すように、傾斜面部ISが軸方向DAに直交する面に対してなす角度は、ポート底面部PBが軸方向DAに直交する面に対してなす角度よりも大きくなっている。
【0079】
上述したように、図示された接続ポートCPは、軸方向DAにおける弁板30の側からの観察において、線状、とりわけ円弧状に延びている。
図5及び
図6に示すように、接続ポートCPは、その長手方向における端部において、とりわけ両端部分において、シリンダ室21と軸方向DAに重なっていない。そして、接続ポートCPは、この両端部分に傾斜面部ISを有している。また、
図5に示された内側接続ポートCPAは、軸方向DAにおける弁板30の側からの観察における両端部分に加え、両端部分の間となる中間部にも傾斜面部ISを有している。
【0080】
図示された例において、傾斜面部ISは、軸方向DAにおける弁板30の側から斜板50の側に向けて先細りする回転体の表面の少なくとも一部分に相当する形状を有している。典型的には、傾斜面部ISは、三角形の回転体としての円錐の側面の一部分に相当する形状を有している。後述するように、このような形状を有した傾斜面部ISは、容易かつ高精度に作製することが可能となる。
【0081】
なお、ポート壁面部PWの粗さを傾斜面部ISの粗さよりも小さくするようにしてもよい。また、シリンダ壁面部CWの粗さを傾斜面部ISの粗さよりも小さくするようにしてもよい。ポート壁面部PWやシリンダ壁面部CWが軸方向DAに平行な面となっている場合、ポート壁面部PW及びシリンダ壁面部CWに容易に仕上げ加工を施すことができる。仕上げ加工によって、ポート壁面部PWの粗さ及びシリンダ壁面部CWの粗さを傾斜面部ISの粗さよりも小さくしておくことで、接続ポートCPとシリンダ室21との間における作動油の流れをより効果的に円滑化することができる。なお、粗さは、JIS B 0601-2001に準拠して測定された算術平均粗さRaの値が小さいほど、小さいと評価される。
【0082】
次に、
図7~
図10を参照して、シリンダブロック20の製造方法の一例について説明する。以下の製造方法では、元材Wにシリンダ室21及び接続ポートCPを形成することでシリンダブロック20を作製している。そして、
図7~
図10は、
図5と同一の断面において、シリンダ室21及び内側接続ポートCPA、の形成方法を示している。
【0083】
なお、本件発明者らは、斜め切削や中子を用いた鋳造によって上述した傾斜面部ISを含むシリンダブロック20を製造することも検討した。しかしながら、シリンダブロック20の形状や寸法等によっては、斜め切削や中子の製造が困難となった。すなわち、斜め切削や中子を用いた鋳造では、本実施の形態により傾斜面部ISを含むシリンダブロック20を十分に安定して作製することができなかった。そして、本件発明者らは、更に鋭意検討を重ねた結果として、以下に説明する製造方法を見出すことにいたった。
【0084】
まず、シリンダブロック20をなすようになる元材Wを用意する。元材Wは、一例として鋳造により鋼鉄から作製される。鋳造により作製された元材Wは、最終的に作製されるべきシリンダブロック20と同様の外形状を有している。ただし、
図7~
図9に示された例において、元材Wには、シリンダ室21及び接続ポートCPは形成されていない。
【0085】
次に、
図7に示すように、先細りした先端部60aを有する加工具60を用いて元材Wを切削加工する。加工具60として、ドリルを用いることができる。
図7に示すように、加工具60を回転させながら一方向DXにおける他側から一側へ進めて、元材Wを切削加工する。このとき、加工具60は、一方向DXと平行な軸線を中心として回転させられ、且つ、この軸線に沿って進められ元材Wに切り込む。元材Wには、一方向DXにおける他側に開口した第1穴HAが形成される。この第1穴HAは、一方向DXにおける一側となる端部に、一方向DXにおける一側に向けて先細りする回転体(典型的的には円錐)の形状を有するようになる。すなわち、第1穴HAの一方向DXにおける一側となる端部は、先細りする回転体(典型的的には円錐)の表面と同形状となる傾斜面HASを有するようになる。この傾斜面HASの一部分が残留して、上述したシリンダブロック20の傾斜面部ISをなすようになる。
図7に示された例において、互いから離間した複数の穴、とりわけ三つの第1穴HAが元材Wに形成される。
【0086】
なお、この製造方法で言及する一方向DXは、油圧装置10に組み込まれた状態における上述のシリンダブロック20に対する軸方向DAと平行な方向である。また、一方向DXにおける一側とは、油圧装置10に組み込まれた状態における上述のシリンダブロック20に対する軸方向DAにおける斜板50の側に相当する。一方向DXにおける他側とは、油圧装置10に組み込まれた状態における上述のシリンダブロック20に対する軸方向DAにおける弁板30の側に相当する。
【0087】
その後、
図8に示すように、加工具(第1加工具)60とは他の加工具(第2加工具)61を用いて元材Wを加工する。より具体的には、複合加工機等で先端が平坦な加工具61、例えばエンドミルを用いて元材Wを加工する。この工程において、線状、典型的には曲線状に延びる接続ポートCPの外形状が概ね形成されるようになる。まず。
図8に点線で示すように、一方向DXと平行な軸線を中心として加工具61()を回転させながらこの軸線に沿って加工具61を進め、加工具61を元材Wに形成された一つの第1穴HA内に挿入する。このとき、加工具61によって形成される穴は、加工具60によって形成された第1穴HAと同一または若干大きめとなる。次に、加工具61を一方向DXと非平行な方向(交差する方向)、典型的には一方向DXと直交する方向に進める。ここで、加工具61()は、一方向DXに加えて一方向DXとは別の方向(典型的には直交する方向)に移動することによっても元材Wを加工することができる加工具である。具体的には、
図8に点線で示された位置から、
図8に実線で示された位置を経由して、
図8に二点鎖線で示された位置まで、加工具61を移動させる。軸方向DAからの観察において、加工具61の移動経路は、接続ポートCPの経路に対応して、回転軸線RAを中心とした円弧状となる。このような加工具61の移動によって、元材Wの複数の第1穴HAの間の部分が切削で除去される。
【0088】
図7に示された例では、加工具61は、複数の設けられた第1穴HAの間を移動する。とりわけ加工具61は、三つ設けられた第1穴HAの両端の間を、中間の第1穴HAを経由して、移動する。これにより、線状(図示された例では、曲線状)に延びる第2穴HBが形成され、この第2穴HBは、概ね作製されるべき接続ポートCPと同様の形状を有するようになる。また、第2穴HBの両端(図示された例では、第2穴HBの周方向DCの両端)および中央となる位置に、先細りする回転体(典型的には円錐)の表面と同形状となる第1穴HAの傾斜面HASを残したままとなっている。
【0089】
なお、
図8に示された工程において、加工具(第2加工具、他の加工具)61が仕上げ加工を兼ねていてもよい。加工具61を用いた加工が仕上げ加工を兼ねる場合、加工具61により接続ポートCPのポート壁面部PWが形成されるが、このポート壁面部PWの粗さを、この工程の前における第1穴HAの一方向DXに延びる面の粗さよりも小さくすることができる。結果として、接続ポートCPのポート壁面部PWの粗さを、第1穴HAの傾斜面HASの粗さよりも小さくすることができる。
【0090】
その後、
図9に示すように、一方向DXにおける一側から元材Wを切削し、一方向DXにおける一側に開口するシリンダ室21を形成する。この工程では、エンドミルまたはドリルからなる切削加工具62を用いることができる。一方向DXと平行な軸線を中心として切削加工具62を回転させながらこの軸線に沿って切削加工具62を進めることで、シリンダ室21を形成することができる。このとき、切削加工具62は、一方向DXにおいて、第2穴HBと重なる位置まで進められる。このようにして形成されたシリンダ室21及び接続ポートCPが形成され、シリンダ室21は接続ポートCPと通じるようになる。
【0091】
ただし、
図3を参照しながら説明したように、一方向DXにおける他側からの観察において、接続ポートCPは、少なくとも部分的に、シリンダ室21から一方向DXに直交する方向にずれて位置する。このシリンダ室21からずれた位置に、第1穴HAの傾斜面HASが含まれている。この結果、傾斜面HASにおいて第2穴HB(接続ポートCP)と接続するようになるシリンダ室21が形成されるようになる。以上のようにして、傾斜面HASの残留した部分によって、傾斜面部ISが形成されるようになる、最終的に、
図5に示された内側接続ポートCPA及びシリンダ室21を形成することができる。
【0092】
また、以上に説明した方法と同様の工程を経ることで、
図6に示された外側接続ポートCPB及びシリンダ室21を形成することができる。ただし、外側接続ポートCPBの系方法、第1穴HAの形成位置を径方向における外側にずらすとともに、第1穴HAを二つだけ形成する点において、内側接続ポートCPAの形成方法と異なる。なお、
図6には、第1穴HAを形成する際に用いた加工具60が二点鎖線で示されている。
図6に示された外側接続ポートCPBでは、
図5に示された内側接続ポートCPAと比較して、接続ポートCPのうちの軸方向DAにおける観察においてシリンダ室21からずれて位置する部分が小さくなる。結果として、外側接続ポートCPBでは、内側接続ポートCPAと比較して、傾斜面部ISが小さくなっている。
【0093】
以上に説明した製造方法は、上述したシリンダブロック20を製造する方法の一例であって変更することができる。例えば、加工具61(第2加工具、他の加工具)を用いた加工の後、さらに、仕上げ加工用の加工具を用いて、接続ポートCPのポート壁面部PWやシリンダ室21のシリンダ壁面部CWを仕上げ加工するようにしてもよい。一方向DXに延びるポート壁面部PWやシリンダ壁面部CWの仕上げ加工は比較的に容易に行うことができる。仕上げ加工によって、ポート壁面部PWやシリンダ壁面部CWの粗さを低減することができ、これにより、接続ポートCPとシリンダ室21との間における作動油の流れをより効果的に円滑化することができる。
【0094】
また、上述した実施の形態では、第1穴HAを形成する加工、第2穴HBを形成する加工、及び、シリンダ室21を形成する加工が、この順で行われる例を示した。しかしながら、この例に限られず、第1穴HAを形成する加工、第2穴HBを形成する加工、及び、シリンダ室21を形成する加工の順番を適宜変更することができる。
【0095】
例えば、まず元材Wにシリンダ室21を形成し、シリンダ室21が形成された元材Wに対して、
図10に示すように、加工具60を用いて第1穴HAを形成していくようにしてもよい。
図10に示された例では、シリンダ室21が形成された元材Wに対して、点線で示す加工具60により二つの第1穴HAが形成されている。さらにこの例では、実線で示された加工具60を一方向DXに二点鎖線で示す位置まで移動させることにより、二点鎖線で示された三つ目の第1穴HAが形成される。さらに、
図10に示された例では、シリンダ室21及び第1穴HAが形成された元材Wに対し、加工具61を用いて第1穴HAを広げて接続ポートCPを作製する工程が実施される。
【0096】
さらに、
図10を参照して説明した例において、シリンダ室21は元材Wに切削によって作製されなくてもよく、シリンダ室21が鋳抜きにより作製されてもよい。すなわち、
図10に示された元材Wが、シリンダ室21をなす凹部21Aを形成された形状にて、鋳造されるようにしてもよい。
【0097】
さらに、
図11に示すように、先細りする先端部60aを有した加工具60を用いて第1穴HAを形成した後、元材Wに削り込んだ当該加工具60を一方向DXと非平行な方向(典型的には一方向DXに直交する方向)に移動させて、第2穴HBを形成してもよい。その後、元材Wにシリンダ室21を形成する工程を経て、
図12に示された接続ポートCP及びシリンダ室21を形成することができる。
図12は、
図5に対応する図であって、
図5のV-V線に沿った断面にてシリンダブロック20を示している。
図12に示された例において、軸方向DAにおける他側からの観察において、傾斜面部ISは線状に延びている。そして、軸方向DAにおける他側からの観察において線状に延びる傾斜面部ISは、その両端部分において、先細りする回転体(典型的的には円錐)の表面と同形状となる第1穴HAの傾斜面HASを残したままとなっている。また、軸方向DAにおける他側からの観察において線状に延びる傾斜面部ISは、その両端部分の間となる中間部分の各位置において、加工具60の先端部60aに対応した一定の傾斜角度で傾斜した傾斜面HASを有するようになる。
【0098】
以上に説明してきた一実施の形態において、シリンダブロック20は、一方向DX(軸方向DA)に延びて一方向DX(軸方向DA)における一側に開口したシリンダ室21を形成するシリンダ壁面部CW及びシリンダ底面部CBと、一方向DXにおける他側に開口し且つシリンダ室21に通じる接続ポートCPを形成するポート壁面部PWと、一方向DX(軸方向DA)に対して傾斜した傾斜面部ISと、を有している。傾斜面部ISは、一方向DX(軸方向DA)に直交する方向にシリンダ室21からずれて位置するポート壁面部PWの少なくとも一部分と、シリンダ壁面部CWと、に接続している。この一実施の形態によれば、接続ポートCPのポート壁面部PWとシリンダ室21のポート壁面部PWとを、傾斜面部ISを介して、滑らかに接続することができる。したがって、接続ポートCPとシリンダ室21との間における作動油の流れを効果的に円滑化することができる。これにより、ポンプにおいては、低圧側のシリンダ室21内へ作動油を安定して引き込むことができる。結果として、自吸性が改善され、キャビテーションの発生等の不具合を効果的に回避することができる。また、モータにおいては、接続ポートCPとシリンダ室21との間を流れる作動油の圧力損失を効果的に回避することができる。結果として、油圧装置10の性能を改善することができる。
【0099】
上述した一実施の形態の一具体例において、傾斜面部ISの少なくとも一部は、円錐の側面の一部分をなす形状を有している。この具体例によれば、接続ポートCPとシリンダ室21との間で作動油の流れが乱れることを効果的に回避して、接続ポートCPとシリンダ室21との間における作動油の流れをより効果的に円滑化することができる。
【0100】
上述した一実施の形態の一具体例において、接続ポートCPは、周方向DCにおいてシリンダ室よりもはみ出した形状を有している。言い換えると、軸方向DA(一方向DX)における他側からの観察において、接続ポートCPは線状に延び且つ端部においてシリンダ室21からずれて位置し、傾斜面部ISは接続ポートCPの端部となる位置に設けられている。この具体例によれば、例えば接続ポートCPが弁板30に形成されたポート31,32に沿った細長い形状を有することができる。したがって、接続ポートCPと弁板30との間での作動油の流れを円滑化することができる。また、細長い接続ポートCPの端部に傾斜面部ISが設けられているので、細長い接続ポートCPの端部において作動油の流れが乱れることを効果的に回避して、接続ポートCPとシリンダ室21との間における作動油の流れをより効果的に円滑化することができる。
【0101】
上述した一実施の形態の一具体例において、傾斜面部ISは、軸方向DA(一方向DX)に対して30°以上70°以下の角度をなしている。この具体例によれば、接続ポートCPとシリンダ室21との間における作動油の流れをより効果的に円滑化することができる。
【0102】
上述した一実施の形態の一具体例において、ポート壁面部PWの粗さは、傾斜面部ISの粗さよりも小さい。この具体例によれば、接続ポートCPのポート壁面部PWの粗さを小さくすることができる。これにより、接続ポートCPとシリンダ室21との間における作動油の流れをより効果的に円滑化することができる。
【0103】
上述した一実施の形態の一具体例において、傾斜面部ISは互いから離間して複数設けられている。この具体例によれば、複数の傾斜面部ISが分散して設けられる。したがって、接続ポートCPとシリンダ室21との間における作動油の流れをより効果的に円滑化することができる。
【0104】
上述した一実施の形態の一具体例において、一方向DX(軸方向DA)における他側からの観察において、傾斜面部ISは線状に延びている。この具体例によれば、広範囲に亘る傾斜面部ISが設けられるので、接続ポートCPとシリンダ室21との間における作動油の流れをより効果的に円滑化することができる。
【0105】
上述した一実施の形態の一具体例において、一方向DX(軸方向DA)における他側からの観察において線状に延びる傾斜面部ISは、その両端部において、円錐の側面の一部分をなす形状を有している。この具体例によれば、接続ポートCPとシリンダ室21との間で作動油の流れが乱れることを効果的に回避して、接続ポートCPとシリンダ室21との間における作動油の流れをより効果的に円滑化することができる。
【0106】
以上に説明してきた一実施の形態において、シリンダブロックの製造方法は、先細りした先端部60aを有する加工具60を一方向DX(軸方向DA)における一側に進めて、一方向DX(軸方向DA)に対して傾斜した傾斜面HASを含み一方向DXにおける他側に開口した第1穴HAを元材Wに形成する工程と、一方向DX(軸方向DA)における一側から元材Wを切削して、傾斜面HASにおいて穴HA,HBと接続するようになるシリンダ室21を形成する工程と、を含む。或いは、一実施の形態において、一方向DX(軸方向DA)における一側に開口したシリンダ室21を含む元材Wを作製する、例えば鋳造する工程と、先細りした先端部60aを有する加工具60を一方向DX(軸方向DA)における他側から一側に進めて、一方向DXに対して傾斜し且つシリンダ室21に接続した傾斜面HASを含む穴HAを元材Wに形成する工程と、を含む。このような実施の形態によれば、穴HA,HBによって形成される接続ポートCPのポート壁面部PWとシリンダ室21のシリンダ壁面部CWとを、傾斜面部ISを介して、滑らかに接続することができる。したがって、接続ポートCPとシリンダ室21との間における作動油の流れを効果的に円滑化することができる。これにより、ポンプにおいては、低圧側のシリンダ室21内へ作動油を安定して引き込むことができる。結果として、自吸性が改善され、キャビテーションの発生等の不具合を効果的に回避することができる。また、モータにおいては、接続ポートCPとシリンダ室21との間を流れる作動油の圧力損失を効果的に回避することができる。結果として、ポンプ性能を改善することができる。
【0107】
上述した一実施の形態の一具体例において、第1穴HAを形成する工程において、互いから離間した複数の第1穴HAが形成される。この具体例によれば、複数の傾斜面部ISが分散して設けられるようになる。したがって、接続ポートCPとシリンダ室21との間における作動油の流れをより効果的に円滑化することができる。
【0108】
上述した一実施の形態の一具体例において、シリンダブロックの製造方法は、一方向DX(軸方向DA)と非平行な方向にエンドミル61を移動させて、傾斜面HASを少なくとも部分的に残すようにして、元材Wの複数の第1穴HAの間を切削する工程をさらに含んでいる。この具体例によれば、穴HA,HBによって形成される接続ポートCPの断面積を大きくすることができる。したがって、接続ポートCPとシリンダ室21との間における作動油の流れをより効果的に円滑化することができる。
【0109】
上述した一実施の形態の一具体例において、エンドミル61を用いて形成された面の粗さは、加工具60を用いて形成された傾斜面HASの粗さよりも小さい。この具体例によれば、穴HA,HBによって形成される接続ポートCPのポート壁面部PWの粗さを小さくすることができる。これにより、接続ポートCPとシリンダ室21との間における作動油の流れをより効果的に円滑化することができる。
【0110】
上述した一実施の形態の一具体例において、シリンダブロックの製造方法は、一方向DX(軸方向DA)と非平行な方向に加工具60を移動させて穴HA,HBを広げる工程を更に有する。この具体例によれば、広範囲に亘る傾斜面部ISが形成されるので、接続ポートCPとシリンダ室21との間における作動油の流れをより効果的に円滑化することができる。
【0111】
一実施の形態を複数の具体例により説明してきたが、これらの具体例が一実施の形態を限定することを意図していない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施されることが可能であり、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、追加等を行うことができる。
【符号の説明】
【0112】
10 油圧装置
20 シリンダブロック
21 シリンダ室
60 加工具、第1加工具
60a 先端部
61 加工具、第2加工具、他の加工具
62 切削加工具
CW シリンダ壁面部
CB シリンダ底面部
CP 接続ポート
CPA 内側接続ポート
CPB 外側接続ポート
PW ポート壁面部
PB ポート底面部
IS 傾斜面部
HA 第1穴
HB 第2穴
HAS 傾斜面HAS
CM 建設機械
DX 一方向
W 元材