(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/533 20060101AFI20231106BHJP
A61F 13/511 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
A61F13/533 100
A61F13/511 100
(21)【出願番号】P 2019201325
(22)【出願日】2019-11-06
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【氏名又は名称】千葉 絢子
(72)【発明者】
【氏名】阿部 雅義
(72)【発明者】
【氏名】坂橋 春夫
(72)【発明者】
【氏名】湯山 暁
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-195640(JP,A)
【文献】特開2019-103714(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0296815(US,A1)
【文献】特開2017-131298(JP,A)
【文献】登録実用新案第3222875(JP,U)
【文献】国際公開第2018/061218(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/533
A61F 13/511
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面シートと裏面シートとの間に吸収体を有する本体を備え、互いに直交する前後方向及び左右方向を有する吸収性物品であって、
前記本体は、排泄部に対向する中間領域と、前記中間領域よりも前方に位置する前方領域と、前記中間領域よりも後方に位置する後方領域と、を備え、
前記本体は、前記後方領域に、前記本体の左右方向を二等分する縦中心線を跨いで左右方向に延在する、前記表面シートから前記吸収体にかけて圧搾加工されてなる後方圧搾溝を有し、
前記後方圧搾溝は一端部と他端部とを有し、前記一端部と前記他端部は前記縦中心線を間に介して前記縦中心線の両側にそれぞれ位置し、
前記後方圧搾溝は、複数の変曲点を有さない、前記縦中心線に対して非線対称の形状を有
し、
前記後方圧搾溝は、前記一端部側の第1の部分と前記他端部側の第2の部分とを有し、前記第1の部分及び前記第2の部分の少なくとも一方は、端部に近いほど曲率半径が小さくなる形状を有し、前記一端部又は前記他端部を通る前記前後方向に平行な仮想線を引いたときに、前記後方圧搾溝は前記一端部又は他端部以外の点で前記仮想線と交わる
吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収体は、前記縦中心線に沿った低剛性部を有し、
前記後方圧搾溝の前記一端部及び前記他端部は、前記低剛性部を間に介して前記低剛性部の左右方向両側にそれぞれ位置する
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記後方圧搾溝は、前方または後方に向かって凸の曲線状を有する
請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記後方圧搾溝は後方に向かって凸の曲線状を有し、前記後方圧搾溝の後端部は前記縦中心線上に位置しない
請求項1~
3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記本体は、前記前方領域から前記中間領域を通って前記後方領域まで延在する本体圧搾溝を更に有し、
前記後方圧搾溝は、前記本体圧搾溝よりも後方に位置する
請求項1~
4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン等の吸収性物品は、着用時、着衣によって着用者の身体に押しあてられ、着用者の身体に沿って変形する。吸収性物品において、経血などの排泄物の漏れを抑制する観点から、排泄部対向領域より後方の後方領域では、吸収性物品が臀裂に沿ってフィットするように変形することが好ましい。
特許文献1に記載される吸収性物品は、臀裂にフィットする形状に折れ曲がるように、吸収性物品の幅方向の中心を通る縦中心線上に折り誘導線が設けられている。折り誘導線は例えば吸収体に設けられた低剛性部から構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される吸収性物品では、着用時、吸収性物品の後方領域のうち後端部付近の領域に前後方向に延びる皺が形成され、この皺を伝って経血等の液が吸収性物品の後方から漏れやすくなる。
【0005】
本発明の課題は、吸収性物品の後方からの漏れが抑制された吸収性物品の提供に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る吸収性物品は、本体を備え、互いに直交する前後方向及び左右方向を有する。
上記本体は、表面シートと裏面シートの間に吸収体を有する。
上記本体は、排泄部に対向する中間領域と、上記中間領域よりも前方に位置する前方領域と、上記中間領域よりも後方に位置する後方領域と、を備える。
上記本体は、上記後方領域に、上記本体の左右方向を二等分する縦中心線を跨いで左右方向に延在する、上記表面シートから上記吸収体にかけて圧搾加工されてなる後方圧搾溝を有する。
上記後方圧搾溝は一端部と他端部とを有し、上記一端部と上記他端部は上記縦中心線を間に介して上記縦中心線の両側にそれぞれ位置する。
上記後方圧搾溝は、複数の変曲点を有さない、上記縦中心線に対して非線対称の形状を有する。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、本発明の吸収性物品によれば、非線対称形状を有する後方圧搾溝を設けることにより、吸収性物品の後方領域の後端部付近の領域に前後方向に延びる皺が発生することが抑制され、吸収性物品の後方からの液漏れが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る吸収性物品を示す平面図である。
【
図2】
図1のII-II線で切断した断面図である。
【
図3】
図1の要部拡大図であり、後方圧搾溝の図である。
【
図4】上記吸収性物品の吸収性コアと圧搾溝との位置関係を示す平面図である。
【
図5】実施例1及び2の吸収性物品を示す平面図である。
【
図6】比較例1及び2の吸収性物品を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
[ナプキンの全体構成]
図1に示す吸収性物品1は、本体Mと、一対のウイング部Wと、一対の後方フラップ部Fと、圧搾溝13と、を備える。吸収性物品1は、生理用ナプキンとして構成され、以下、ナプキン1と称する。
ナプキン1は、着用者の前後方向に対応する縦方向Xと、着用者の左右方向に対応し縦方向Xに直交する横方向Yとを有する。さらに、ナプキン1は、縦方向X及び横方向Yの双方に直交する厚み方向Zを有する。なお、本明細書では、厚み方向Zに関しては、着用時に着用者の肌に近い側を上、着衣に近い側を下という事がある。ナプキン1は、就寝時に使用されてもよく、例えば縦方向Xに沿って30cm以上の長さを有していてもよい。
【0010】
本体Mは、縦方向Xに沿って延び、着用時に着用者の着衣の内面に固定される。本体Mは、後述する吸収体4を有しており、着用者の経血等の液状物(以下、「液」とも称する)を吸収する機能を有する。
【0011】
本体Mは、縦方向Xに沿って、前方領域M1と、中間領域M2と、後方領域M3と、に区分される。
中間領域M2は、着用時に着用者の排泄部に対向する領域である。
図1において、中間領域M2は、本体Mにおけるウイング部Wの前後基端部間の領域である。
前方領域M1は、中間領域M2の前方(着用者の腹側)に配置される領域であり、着用時に着用者の排泄部の前方に対向するように構成される。
後方領域M3は、中間領域M2の後方(着用者の背側)に配置される領域であり、着用時に着用者の排泄部の後方に対向するように構成される。
なお、ここでいう着用時は、通常の適正な着用位置(ナプキン1の想定される着用位置)が維持された状態を意味し、ナプキン1が当該着用位置からずれた状態にある場合は含まない。
また、ナプキン1がウイング部Wを有さない場合には、排泄部に対向する領域を中間領域M2とし、その前方に配置される領域を前方領域M1、後方に配置される領域を後方領域M3とする。
【0012】
ウイング部Wは、本体Mの中間領域M2から横方向Yの外方に大きく突出するように構成される。
後方フラップ部Fは、本体Mの後方領域M3において横方向Yの外方に膨出するように構成される。
なお、ナプキン1は、ウイング部W及び後方フラップ部Fのうちの少なくとも一つを有さなくてもよい。
【0013】
図2に示すように、ナプキン1は、吸収体4と、表面シート2と、裏面シート3と、一対のサイドシート5と、を備える。本体Mにおいて、ナプキン1は、裏面シート3、吸収体4及び表面シート2が厚み方向Zに積層された構成を有する。これらの構成は、例えば、接着剤やヒートシール等による接合、及び圧搾溝13によるエンボス加工等によって、適宜接合されて一体化している。
圧搾溝については後述する。
【0014】
図1及び2に示すように、吸収体4は、縦方向Xに沿って延び、表面シート2と裏面シート3との間に配置される。吸収体4は、液を表面シート2側の面から吸収し、内部で拡散させて当該液を保持する。
吸収体4は、吸収性コア7と、コアラップシート8と、を有する。
吸収性コア7は、例えば、パルプ繊維等の親水性繊維で構成された繊維集合体で形成されてもよいし、当該繊維集合体に吸水性ポリマーを保持させた構成を有していてもよい。
コアラップシート8は、吸収性コア7を被覆し、例えば吸収性コア7の形状を保持する機能等を有する。コアラップシート8は、例えばティッシュペーパー状の薄く柔らかい紙や液透過性の不織布等で形成される。
吸収性コア7については後述する。
【0015】
裏面シート3は、吸収体4の厚み方向Z下方に配置される。裏面シート3は、例えばその周縁において、表面シート2及びサイドシート5と接着剤、熱シール等によって接合される。裏面シート3は、接着剤等によって吸収体4に接合されていてもよい。
裏面シート3は、例えば、液難透過性、水蒸気透過性及び撥水性等の機能を有するシート材で形成される。当該シート材としては、例えば熱可塑性樹脂のフィルムや、当該フィルムと不織布とのラミネート等を用いることができる。
なお、裏面シート3には、図示はしないが、着衣に対して本体M及びウイング部Wを固定する粘着部が設けられている。
【0016】
一対のサイドシート5は、表面シート2の横方向Y外側に配置される。サイドシート5の材料としては、表面シート2よりも親水性が小さいシート材料が好ましく、具体的には、表面シート2よりも親水性の低い不織布、フィルム材料、及び不織布とフィルム材料のラミネート構造のシートが挙げられる。サイドシート5は、例えば接着剤Eによって表面シート2に接合されている。
【0017】
[吸収性コアの構成]
図4に示すように、吸収性コア7は、前方コア部20と、中間コア部21と、後方コア部22と、を有する。前方コア部20、中間コア部21及び後方コア部22は、縦方向Xに沿って並んでいる。すなわち、前方コア部20及び後方コア部22は縦方向Xの両端部側に位置し、前方コア部20及び後方コア部22の間に中間コア部21が位置する。中間コア部21は、着用者の排泄部に対向する領域であり、前方コア部20及び後方コア部22は、着用者の排泄部の前方及び後方にそれぞれ対向する部分である。
【0018】
中間コア部21は、前方コア部20及び後方コア部22よりも幅狭に構成され、中間コア部21において横方向Yに括れた平面形状を有する。前方コア部20及び後方コア部22の幅は同一でも異なっていてもよい。このような構成により、着用者の両脚などから横方向Yの外力が付加された場合に、幅狭の中間コア部21によって当該外力の影響を緩和することができる。
【0019】
中間コア部21は、周囲よりも坪量の高い高坪量部26を有する。
図4では、高坪量部26を斜線で示している。
図2に示すように、高坪量部26は、例えば厚み方向Z上方に突出している。高坪量部15により、中間コア部21の吸収性を高めるとともに、着用者との排泄部のフィット性を高めることができる。なお、吸収体が括れた形状ではなく長方形の平面形状であってもよい。
【0020】
図4に示すように、吸収性コア7は、縦方向Xに延びる複数の縦溝部29と、横方向Yに延びる複数の横溝部28と、環状溝部27と、によってブロック状に分割されている。これらの溝部において「縦方向Xに延びる」又は「横方向Yに延びる」とは、全体として縦方向X又は横方向Yに延びていればよく、少なくとも一部が湾曲又は蛇行している態様も含むものとする。
これらの溝部は、
図2に示すように、例えば吸収性コア7の厚み方向Zの上面から下方に向かって形成された溝を含む。これらの溝部は、好ましくは周囲の領域よりも低い坪量で構成される。
なお、溝部の「低坪量」とは、吸収性コア7の材料が存在する形態の他、吸収性コア7の材料が存在しない形態も含む概念である。各縦溝部29及び横溝部28で吸収性コア7の材料が存在する形態では、各溝部を介してその両側に位置する吸収性コア7のブロック状部位が接続されているため、吸収性コア7の変形及び破壊等を抑制しつつ柔軟性を付与できるため、より好ましい。
【0021】
環状溝部27により囲まれた領域に位置するブロック状部位が高坪量部26である。環状溝部27により囲まれた領域以外に位置するブロック状部位は低坪量部25である。低坪量部25は高坪量部よりも坪量が低い。
【0022】
以下、複数の縦溝部29のうち、本体Mの横方向Yを二等分する縦中心線CL上に位置する縦溝部を中央縦溝部29aと称するが、他の縦溝部と特に区別する必要がない場合は単に縦溝部29と称する。
図1においては、後方領域M3に位置する中央縦溝部29aのみを図示している。
尚、ナプキン1の横方向Yを二等分する縦中心線と、本体Mにおける縦中心線CLとは一致する。
吸収体4は、後方領域M3における横方向Y中央部に設けられた、縦方向Xに延びる低剛性部としての中央縦溝部29aを有する。
【0023】
中央縦溝部29aは、周囲のブロック状部位と比較して薄く構成されるため、横方向Yからの曲げ剛性が低くなる。このため、着用者の左右の臀部等から横方向Y外方からの外力を受けた際に、変形の起点となり、着用者の臀部の臀裂に入り込むように肌側に起立しやすくなる。これにより、中央縦溝部29aが形成された後方領域M3と、着用者の臀裂との間に隙間が生じることを防止でき、就寝姿勢においても、後方への液漏れを効果的に防止できる。このように、中央縦溝部29aは変形時の可撓軸部として機能する。
【0024】
尚、縦溝部29及び横溝部28の配置間隔は、特に限定されず、適宜設定される。
中央縦溝部29aの横方向Yにおける溝幅は、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上であり、また、好ましくは10mm以下であり、より好ましくは5mm以下である。
中央縦溝部29a以外の溝の幅は、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上であり、また、好ましくは10mm以下であり、より好ましくは5mm以下である。
これらの溝の深さは、好ましくは0.5mm以上であり、好ましくは10mm以下である。
【0025】
また、縦溝部29、横溝部28及び環状溝部27の坪量は、例えば、25g/m2以上300g/m2以下であり、好ましくは、30g/m2以上250g/m2以下である。
高坪量部26の坪量は、例えば、400g/m2以上1000g/m2以下であり、好ましくは、500g/m2以上900g/m2以下である。
低坪量部25の坪量は、例えば、100g/m2以上700g/m2以下であり、好ましくは、200g/m2以上600g/m2以下である。
【0026】
吸収性コアの坪量の測定方法としては、吸収性コア7の測定対象領域を、フェザー社製片刃剃刀を用いて切断し、あらかじめ定めた面積となるように小片を得る。それらの小片の重量を電子天秤(A&D社製電子天秤GR-300、精度:小数点以下4桁)を用いて測定する。求めた重量を各部の小片の面積で除して小片の坪量を算出する。各部のそれぞれについて、小片5個の坪量の平均を坪量とする。
尚、上記で挙げた各種寸法は一例であって、これらに限定されない。
【0027】
[圧搾溝の構成]
図1及び
図2に示すように、本体Mの吸収体4及び表面シート2には、表面シート2側から厚み方向Zに圧搾加工することによって形成された圧搾溝13が形成されている。圧搾溝13は、本体圧搾溝9と、後方圧搾溝6と、中間圧搾溝10と、内側圧搾溝11と、起立抑制圧搾部12と、を含む。
圧搾溝13は、表面シート2及び吸収体4が裏面シート3に向かって一体的に凹陥した構成を有する。圧搾溝13は、熱エンボス加工又は超音波シール加工等の圧搾加工により常法に従って形成することができる。圧搾溝13では、表面シート2及び吸収体4が熱融着等により一体化している。
圧搾溝13は、他の圧搾されていない領域と比較して剛性が高く、変形しにくい部分となる。このため、圧搾溝13は、ナプキン1が力を受けた場合に、周囲の低剛性領域の変形を促す変形起点や、当該力に対する抗力を発揮する部分として機能し得る。
【0028】
(本体圧搾溝の構成)
図1に示すように、本体圧搾溝9は、少なくとも中間領域M2から後方領域M3まで延びる。
図1に示す例では、本体圧搾溝9は、前方領域M1から中間領域M2を通って後方領域M3まで延びる線状の圧搾溝である。
より詳細には、本体圧搾溝9は、中間領域M2において左右に対をなす圧搾溝が縦方向Xに延び、前方領域M1及び後方領域M3において、これらの対をなす圧搾溝が横方向Y内方に向かって相互に近接して連結されるように延びる。
本体圧搾溝9における「縦方向Xに延びる」とは、本体圧搾溝9が縦方向Xに平行に延びる態様に限定されず、本体圧搾溝9が全体として縦方向Xと平行なベクトル成分を含む方向に延びていればよく、例えば括れ部を含んでいてもよい。
本体圧搾溝9の「横方向Y内方に延びる」とは、本体圧搾溝9が横方向Yに平行に延びる態様に限定されず、横方向Y内方のベクトル成分を含む方向に延びていればよい。
図1に示す例では、本体圧搾溝9は、前方領域M1及び後方領域M3において、横方向Y内方に延びつつ、縦方向X外方にも延びる曲線状に構成される。
【0029】
言い換えれば、本体圧搾溝9は、本体Mの中間領域M2における横方向Y中央部を囲む環状に構成される。但し、本体圧搾溝9は、全体が連続的に形成される態様に限定されず、途切れ部を有して断続的に形成されていてもよい。
この構成により、本体圧搾溝9の最後方に位置する後端部は、後方に突出した凸状部の先端となる。この後端部は、
図4に示すように、例えば中央縦溝部29a上に配置される。
【0030】
図1に示す例では、本体圧搾溝9は、所定の平面形状を有する複数の圧搾部91が近接して列をなして配置された構成を有している。圧搾部91は、例えば点エンボスからなる凹部である。
図1に示す例では、本体圧搾溝9が、複数の圧搾部91が近接して配置されて全体として線状の圧搾溝を構成する態様を示すが、連続した線状の圧搾部から構成されてもよい。また、点状の圧搾部がマトリクス状に配置されて、全体的に線状の圧搾溝を構成してもよい。
図1に示す例では、ドット状の複数の圧搾部91が並んだ形状を有する。各圧搾部91の平面形状は、例えば、滴状、円形状、楕円形状、多角形状、曲線状、直線状等から選択することができる。
また、「各圧搾部が近接して配置される」とは、具体的には、隣接する圧搾溝の最も近接した部分間の距離が3mm以下となるように配置されることをいう。
【0031】
本体圧搾溝9は、周囲の領域と比較して圧密化されている。これにより、本体圧搾溝9は、毛細管現象によって圧密化された繊維間に体液を引込み、延在方向である縦方向Xに当該液を拡散させることで、横方向Yの液の漏れを防止する作用を有する。このように本体圧搾溝9を設けることにより防漏性を確保しつつ着用者の排泄部付近のドライ感を確保することができる。
【0032】
(後方圧搾溝の構成)
図1に示すように、後方圧搾溝6は、本体Mの後方領域M3の後端部に近い領域に位置する。後方圧搾溝6は、本体圧搾溝9よりも後方に位置する。後方圧搾溝6は、本体圧搾溝9と後述する起立抑制圧搾部12の間に配置される。
後方圧搾溝6は、縦方向X及び横方向Yに延びる線状を有する。後方圧搾溝6における「線状」は、圧搾溝の全体形状が平面視において曲線状の態様に限られず、直線状の態様や、直線状と曲線状とからなる態様を含む。
図1及び3に示す例では、後方圧搾溝6は、後方に凸の曲線状を有する。
後方圧搾溝6における「縦方向Xに延びる」とは、後方圧搾溝6が全体として縦方向Xと平行なベクトル成分を含む方向に延びていることを示す。
後方圧搾溝6における「横方向Yに延びる」とは、後方圧搾溝6が全体として横方向Yと平行なベクトル成分を含む方向に延びていることを示す。
【0033】
図3に示すように、後方圧搾溝6は、所定の平面形状を有する複数の圧搾部63が近接して配置され、全体として曲線状を有する。
図3に示す例では、ドット状の複数の圧搾部63が並んだ形状を有する。各圧搾部63の平面形状は、例えば、滴状、円形状、楕円形状、多角形状、曲線状、直線状等から選択することができる。
図3に示す例では、後方圧搾溝6が、複数の圧搾部63が近接して配置されて全体として線状の圧搾溝を構成する態様を示すが、連続した線状の圧搾部から構成されてもよい。
【0034】
後方圧搾溝6は、本体圧搾溝9と全体的な形状が独立した圧搾溝である。
図1に示す例では、本体圧搾溝9と後方圧搾溝6とは離間しているが、後方圧搾溝6の一方の端部が本体圧搾溝9と接続された形状であってもよい。
【0035】
図3に示すように、後方圧搾溝6は、一端部65と、他端部66と、を有する。後方圧搾溝6は、一端部65と他端部66が異なる位置にある、閉じていない開いた形状を有している。閉じている形状とは、一端部と他端部とが同じ位置にあり、端部がない形状である。ナプキン1において、一端部65は前方寄りに位置し、他端部66は後方寄りに位置している。
後方圧搾溝6は、一端部65及び他端部66のいずれもが縦溝部29上に位置しない。一端部65と他端部66は縦中心線CLを介して横方向Yの両側それぞれに位置し、一端部65は縦中心線CLの右側に位置し、他端部66は縦中心線CLの左側に位置する。
【0036】
後方圧搾溝6は、縦中心線CLに対して非線対称形状を有する。後方圧搾溝6の後端部64は、後方圧搾溝6において、縦方向Xにおける最後方に位置する部分である。後方圧搾溝6は、後方に凸状に構成されるため、後端部64は、凸状部の先端として構成される。
図1及び3に示す例では、後方圧搾溝6の後端部64は、縦中心線CL上に位置せず、縦中心線CLと離間して縦中心線CLよりも左側にずれて位置する。
図4に示すように、後方圧搾溝6は、吸収性コア7の後方コア部22の後端部に近い領域に設けられる。後方圧縮溝6は、中央縦溝部29aを跨いで横方向Yに延びて位置する。後方圧搾溝6の横方向Yにおける寸法は、本体圧搾溝9の横方向Yの寸法が最も大きくなる箇所の寸法とほぼ同等である。
【0037】
図3に示すように、後方圧搾溝6は、一端部65側の部分である第1の部分61と、他端部66側の部分である第2の部分62と、を有する。
第1の部分61は直線状に近い緩い曲線状を有する。
第2の部分62は、他端部66に近づくにつれ、曲率が徐々に小さくなる渦巻状を有する。第2の部分62は、縦方向X内方に凸な曲線状、より具体的には円弧状に形成される。
図3に示す例では、他端部66を通る縦方向Xに平行な仮想線72を引いたときに、当該仮想線72と後方圧搾溝6とが一点以上で重なるように、第2の部分62は構成される。
【0038】
図1及び3に示す例では、後方圧搾部6の横方向Yにおける幅を二等分する縦方向Xに沿った中心線(以下、後方圧搾部における中心線と称する事がある。)は、縦中心線CLと一致する。すなわち、後方圧搾部6は、縦中心線CLより右側の部分と左側の部分とは、横方向Yにおける寸法が等しいものとなっている。
【0039】
着用時、吸収性コア7の後方コア部22は、縦中心線CL上に位置する中央縦溝部29aを可撓軸部として臀裂に入り込むように肌側に起立しやすくなっており、ナプキン1の本体Mの後方領域M3では、着用者の左右の臀部から横方向Y外方から内方に向かう外力が加わる。これにより、ナプキン1の後端部に近い領域には縦方向に延びる皺が形成されやすい。
これに対し、本実施形態では、左右非線対称の後方圧縮溝6を設けることにより、ナプキン1の後方での縦方向に延びる皺の発生が抑制される。以下、説明する。
【0040】
図3に示すように、より詳細には、後方圧搾溝6は、一端部65から縦方向X外方に向かうベクトル成分及び横方向Y内方に向かうベクトル成分を含む方向へ延びる。さらに、後方圧搾溝6は、中央縦溝部29aを跨いで後端部64に向かって延びる。そして、後方圧搾溝6は、後端部64を境に向きを変え、縦方向X内方及び横方向Y外方へ向かうベクトル成分を含む方向へ延びた後、縦方向X内方及び横方向Y内方へ延びる。さらに、縦方向X外方及び横方向Y内方へ延びた後、他端部66に向かって縦方向X外方及び横方向Y外方へ向かって延びる。このように、第2の部分62は、徐々に他端部66に向かって延びる方向を変えて、渦巻き状に構成されている。
【0041】
見方を変えると、後方圧搾溝6の縦中心線CLよりも右側部分は、縦中心線CLから一端部65に向かって縦方向X内方のベクトル成分を含む。後方圧搾溝6の縦中心線CLよりも左側部分は、後端部64から他端部66に向かって縦方向X内方に向かうベクトル成分を含む。
図3に示すように、後方圧搾溝6は、縦中心線CLに対して非線対称形状を有しているので、縦中心線CLを挟んだ右側部分及び左側部分の縦方向X内方のベクトル成分が異なる。
【0042】
したがって、横方向Y両側から内方に向かって外力が付加された場合、右側部分及び左側部分がそれぞれ当該力を受け止めて変形起点となるが、受け止める力の縦方向X内方のベクトル成分の大きさが右側部分と左側部分とで異なることになる。
このため、
図3に示すように、後方圧搾溝6上に、受け止める力の縦方向X内方のベクトル成分の大きさが左右で同等となるような第1の点68をとったとき、この第1の点68は、縦中心線CL上には位置せず、縦中心線CLからずれて位置する。
後方圧搾溝6において、曲率半径が小さいほど応力が集中しやすい。本実施形態では、右側部分に位置する第1の部分61をほぼ直線状とし、左側部分に位置する第2の部分62を渦巻き状として、後方圧搾溝6を非線対称形状することにより、第1の点68の位置を後方圧搾溝6における中心線から左側にずらしている。
【0043】
着用時、ナプキン1の後方領域で横方向Y両側から内方に向かって外力が付加された場合、後方圧搾溝6においては第1の点68に応力が集中しやすい。したがって、第1の点68を通る縦線73が後方圧搾溝6に基づく変形しやすい位置となり、折り位置になりやすい。この折り位置となりやすい縦線73と縦中心線CLとがずれて位置する結果、ナプキン1では、第1の点68から離間している中央縦溝部29aでの起立が阻害される。
なお、後方圧搾溝6では、形状が凸から凹に変化する変曲点が複数存在しない。このため、上述したベクトルの向きが不連続的に変化することがないので、横方向Y外方から内方への外力が付加されたときに外力の緩衝作用が良好となる。したがって、変曲点が複数ある場合には変曲点を結ぶ線に沿ってナプキン1にシワが発生し易いが、そのような問題も生じにくくなる。なお、外力の緩衝作用を一層高める目的からは、後方圧搾溝6には変曲点が存在しないことが好ましい。
ここで、「形状が凸から凹に変化する変曲点」を有する線状溝の一例をあげる。円弧のような凸状の線状部が2つ連結した形状であって連結部付近で凹部を形成する線状溝における連結部が、上記の「形状が凸から凹に変化する変曲点」に対応する。このような形状の線状溝では、凸、凹、凸が並んだ形状の線状溝に沿って上述したベクトルの向きが不連続的に変化する。
【0044】
また、後方圧搾部6と中央縦溝部29aとが交わる箇所において、中央縦溝部29aの側壁部分が後方圧搾部6によって圧搾加工される。これにより、中央縦溝部29aの底部から側壁部分にわたって変形が抑制される。つまり、中央縦溝部29aの底部を起点として左右の側壁部分が両側へ折れ曲がり、中央縦溝部29aの底部中央が上方へ突出するような変形が抑制される。
更に、後方圧搾溝6は圧搾されていない領域よりも剛性が高く、横方向Yに延びて形成されているので、後方圧搾溝6よりも前方で生じた皺は後方圧搾溝6よりも後方に伝播されにくい。
【0045】
このように、ナプキン1の後端部に近い領域に非線対称形状の後方圧搾溝6を設けることにより、中央縦溝部29aによる吸収性コア7の変形により発生するナプキン1の皺が後方圧搾溝6よりも後方へ伝播されにくく、皺の発生が抑制される。したがって、皺を伝って液がナプキン1の後方から漏れることが抑制される。
【0046】
また、本実施形態のように全長が長いタイプのナプキン1では、着用時、ナプキン1の後方領域は臀部及び臀部よりも後方に位置する仙骨等の比較的平坦な領域まで位置することになる。本実施形態では、後方圧搾溝6を設けることにより、臀裂後方における縦溝部9上での起立を抑制し、皺の発生を抑制することができるので、着用者の仙骨等の比較的平坦な領域において、ナプキン1と着用者との隙間の発生を抑制することができ、フィット性が向上する。
【0047】
一方で、
図5(A)に示すような、全長が短い、いわゆる昼用のナプキンの場合であっても、後方圧搾溝6を設けることにより、皺の発生を抑制することができるので、皺を伝うような体液の漏れが抑制されるとともに、着用感も向上する。
【0048】
本実施形態において、後方圧搾溝6は凸状の曲線状で構成されることが好ましい。後方圧搾溝6を凸状の曲線状で構成することにより、ナプキン1の後方領域が着用者の左右の臀部等から横方向Y外方から内方に向かう外力を受けた際に、後方圧搾溝6全体で外力が分散されやすく、横方向Yからの外力に対する曲げ剛性が向上する。また、後方圧搾溝6に局所的に外力が加わりにくくなるため、局所的に外力が加わった箇所から縦方向Xに沿った皺が発生することが抑制される。
【0049】
上述したように、後方圧搾溝6の第2の部分62は他端部66に近いほど曲率半径が小さくなるように構成される。これにより、第2の部分62における曲げ剛性がより向上する。
【0050】
後方圧搾溝6の他端部66側の第2の部分62を渦巻き状に形成することにより、第2の部分62は圧搾部が集中し圧密度が高くなり、毛管力が高く、液保持性が高い領域となる。
ここで、仮に本体溝部9において液が拡散し、後方圧搾部6まで液が到達した場合、当該液は毛管現象によって後方圧搾部6を伝って拡散し得る。更に、毛管力が高い第2の部分62により液は引き込まれ、保持される。したがって、液は後方圧搾溝6によってその後方に拡散されにくいため、ナプキン1の後方からの液漏れが更に抑制される。
【0051】
後端部64は、縦中心線CL上に位置せず、横方向Yにずれていることが好ましい。
すなわち、
図1に示す後方圧搾溝6は後方に凸の形状を有しているので、後端部64は、後方圧搾溝6の突出形状の先端となるため、曲率が比較的小さく、ナプキン1の後方領域M3に横方向Y外方から内方に向かって外力が加わった際、適度に応力が集中しやすい箇所となる。したがって、後端部64を縦中心線CL上に設けないことにより、中央縦溝部29aでの起立が阻害され、ナプキン1の後端部に近い領域での皺の発生が抑制される。
尚、後方圧搾溝が前方に凸の形状を有する場合、当該後方圧搾溝の前端部は、縦中心線CL上に位置せず、横方向Yにずれていることが好ましい。これにより、後方圧搾溝が後方に凸の形状を有する場合と同様に、中央縦溝部29aでの起立が阻害され、ナプキン1の後端部に近い領域での皺の発生が抑制される。
【0052】
尚、後端部64が縦中心線CL上に位置するように後方圧搾部6が設けられてもよい。このような形態においても、後方圧搾部6は縦中心線CLに対して非線対称形状を有することにより、後方圧搾溝6に基づく折り位置になりやすい箇所と縦中心線CLとがずれるので、ナプキン1では、中央縦溝部29aでの起立を後方圧搾部6によって阻害することができる。
すなわち、このような形態においても、後方圧搾溝6の後端部64を挟んだ右側部分及び左側部分は、異なる大きさの縦方向X内方のベクトル成分を有する。したがって、ナプキン1に横方向Y両側から外力が付加された場合、右側部分及び左側部分がそれぞれ当該力を受け止めて変形起点となるが、右側部分と左側部分とで縦方向X内方のベクトル成分が異なるため、受け止める力の大きさが左右で異なることになる。これにより、後方圧搾溝6に基づく折り位置になりやすい箇所と縦中心線CLとがずれ、後端部64が中央縦溝部29a上に位置して後方圧搾溝6が設けられたとしても、中央縦溝部29aでの起立を後方圧搾部6によって阻害することができる。
【0053】
以上のように、本体Mの後方領域M3の後端部付近の領域に、縦中心線CLに対して非線対称形状の後方圧搾溝6を設けることにより、着用時に、ナプキン1の後端部に近い域での皺の発生が抑制され、ナプキン1の後方からの液の伝い漏れが抑制される。
【0054】
(その他の圧搾溝の構成)
なお、
図1及び4に示すように、ナプキン1は、本体圧搾溝9及び後方圧搾溝6以外の圧搾溝として、中間圧搾溝10、内側圧搾溝11及び起立抑制圧搾部12等を更に有していてもよい。
起立抑制圧搾部12は、本体圧搾溝9、後方圧搾溝6、中間圧搾溝10、内側圧搾溝11といった線状の圧搾溝とは独立して形成されてもよい。
【0055】
中間圧搾溝10は、中間領域M2の横方向Y中央部に配置され、縦方向Xに延びる。中間領域M2の横方向Y中央部は、中間領域M2を横方向Yに3等分した場合の中央の領域を意味する。中間圧搾溝10は、本実施形態において、吸収性コア7の高坪量部26が位置する領域上に配置される。
中間圧搾溝10は、断片的に構成され、相互に離間して複数(図示の例では4本)配置される。
中間圧搾溝10により、中間領域M2の剛性が高まり、着用者の脚等から中間領域M2に横方向Yの外力が付加された場合も、中間領域M2が横方向Yに圧縮されるような好ましくない変形を抑制することができる。
【0056】
内側圧搾溝11は、本体圧搾溝9の環状構造の内側に配置される。内側圧搾溝11は、横方向Yに延び、
図1に示す例では縦方向X外方に凸に構成される。内側圧搾溝11は複数配置されていてもよく、
図1及び4に示す例では、前方領域M1に1本、及び後方領域M3に2本配置されている。内側圧搾溝11の凸状部は、例えば吸収性コア7の中央縦溝部29a上に配置される。このような内側圧搾溝11は、例えば、凸状部を挟んだ左右の部分がそれぞれ横方向Y両側からの力を受け止めて変形起点となり、中央縦溝部29aの上方への起立を促すことができる。
【0057】
起立抑制圧搾部12は、後方圧搾溝6の後方に離れて位置する。
起立抑制圧搾部12は、中央縦溝部29a上に配置される。
吸収性コア7の中央縦溝部29aでは、着用者の左右の臀部から横方向Yの外力を受け、着用者の臀裂に向かって肌側に起立しやすくなっている。後方圧搾溝6に加えて、臀部後方の領域に対応して起立抑制圧搾部12を設けることで、当該領域の中央縦溝部29aの曲げ剛性が局所的に高められ、当該領域における起立変形が更に抑制される。
つまり、上記構成のナプキン1は、着用者の臀裂に対しては、中央縦溝部29aによって肌側に起立してフィットすることに加えて、臀裂の後方の仙骨等の位置する比較的平坦な領域に対しては、起立抑制圧搾部12及び後方圧搾部6によって起立が抑制されてフィットする。したがって、ナプキン1では、臀裂のみならず、臀裂後方の領域でも着用者との間の隙間の発生が防止され、特に就寝姿勢における後方への液の伝い漏れを防止することができる。
このように、本実施形態においては、後方圧搾部6よりも後方に起立抑制圧搾部12が更に設けられることにより、後方圧搾部6が起立抑制圧搾部12と協働し、臀裂後方における縦溝部9の起立をより確実に抑制することができ、ナプキン1の後端部付近の領域に皺が形成されにくい。
【0058】
[追加説明]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0059】
例えば、上述の実施形態では、吸収性物品として生理用ナプキンの例を示したが、これに限定されない。本発明の吸収性物品は、例えば、尿取りパットやおりものシート、使い捨ておむつ等であってもよい。
【0060】
また、上述の実施形態では、吸収性コアが低剛性部としての中央縦溝部29aを有し、吸収体が低剛性部を有する例をあげたが、吸収体が低剛性部を有さないナプキンにおいても、本発明を適用することができる。
低剛性部を有さない吸収性コアを備えた吸収体を有するナプキンであっても、着用時、ナプキンは着衣によって着用者の身体に押し当てられ、着用者の左右の臀部から横方向Y外方から内方に向かう外力が加わって、後方領域には縦方向Xに延在する皺が発生しやすい。このため、非線対称の後方圧縮溝を設けることにより、後方圧搾溝に基づくナプキンの折れ位置が縦中心線よりもずれ、上述の実施形態と同様にナプキン後方の皺の発生が抑制される。
尚、上述の実施形態のように、低剛性部を有する吸収体を備えるナプキンにおいては、低剛性部を基点とする変形による皺の発生が、低剛性部を有さない場合のナプキンよりも顕著であるため、非線対称の後方圧搾溝を設けることは有効である。
【0061】
また、上述の実施形態では、後方圧搾部が、後方に凸の曲線状を有する例をあげたが、前方に凸の曲線状を有する形態であってもよい。この形態においても、ナプキンに縦中心線CLに対して非線対称形状の後方圧搾部を設けることにより、後方圧搾溝に基づくナプキンの折れ位置が縦中心線よりもずれることになり、ナプキン後方の皺の発生が抑制される。
【0062】
また、上述の実施形態では、吸収性コアが複数の低剛性部である縦溝部及び横溝部を有する例をあげたが、吸収体4の少なくとも後方領域M3に、縦中心線CLに沿って延在する低剛性部を有する形態であってもよい。これにより、ナプキンの後方領域M3における臀裂へのフィット性が向上する。尚、当該低剛性部は、中間領域M2まで延びていても良く、さらに前方領域M1まで延びていても良い。また、当該低剛性部は、吸収性コアの縦方向X全長に亘って設けられていてもよい。
【0063】
また、上述の実施形態では、低剛性部として周囲よりも坪量が低く厚みも薄い中央縦溝部29aを設ける例をあげたが、これに限定されない。例えば、低剛性部は、周囲よりも繊維密度が低い領域により構成されてもよく、坪量や密度を調整することによって周囲よりも剛性が低い低剛性部を形成してもよい。
【0064】
[実施例]
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0065】
(評価用の生理用ナプキンの作製)
(実施例1)
幅が全長に亘って均一な吸収性コアを備えた吸収体を表面シート及び裏面シートで挟持して本体を構成し、当該本体に圧搾溝を形成して、
図5(A)に示すウイング部Wを有する生理用ナプキン(ナプキン)30を作製した。生理用ナプキンの圧搾溝以外の構成は、
図2に示したように、表面シートと裏面シートの間にコアラップシートで上下面を覆われた吸収性コアを備えた構造である。また、当該吸収性コアは、後方部の横方向Y中央に、低剛性部としての中央縦溝部39を備える。
上記実施形態と同様に、圧搾溝は、表面シート側から厚み方向Zに圧搾加工することによって表面シート及び吸収体に形成し、以下の実施例2、比較例1及び2においても同様である。また、ウイング部Wは、本体の着用者の排泄部に対向する領域(中間領域)から横方向に突出するように構成し、以下の実施例2、比較例1及び2においても同様である。中間領域よりも前方を前方領域、中間領域よりも後方を後方領域と称する。
【0066】
ナプキン30は、縦方向Xにおける全長が22.5cmであった。
ナプキン30には、圧搾溝として、線状の本体圧搾溝31及び後方圧搾溝32と、デザイン圧搾溝33を形成した。
本体圧搾溝31は、前方領域から中間領域を通って後方領域まで延び、環状を有する。
ナプキン30において、後方圧搾溝32は、後方領域の後端部に近い領域に位置し、本体圧搾溝31よりも後方に位置する。デザイン圧搾溝33は、ナプキン30の前方領域及び後方領域にそれぞれ位置する。
後方圧搾溝32は、本体の後方領域の後端部付近の領域に位置する。後方圧搾溝32は、後方に向かって凸の曲線状を有し、ナプキン30を横方向Yで二等分する縦中心線CLに対して非線対称形状を有する。後方圧搾溝32は一端部35と他端部36とを有する。他端部36は、上述の実施形態のナプキン1における後方圧搾部6の第2の部分62と同様に、他端部36を含む部分が、他端部36に近づくにつれ、曲率が徐々に小さくなる渦巻状を有する。
後方領域に位置するデザイン圧搾溝33は、後方圧搾溝32の一端部35と接続して位置し、縦方向Xにおいて本体圧搾溝31と後方圧搾溝32との間に位置する。
【0067】
(実施例2)
図5(B)に示すように、上記実施形態と同様のナプキン1を作製した。生理用ナプキンの圧搾溝以外の構成は、
図2に示したように、表面シートと裏面シートの間にコアラップシートで上下面を覆われた吸収性コアを備えた構造である。
ナプキン1は、低剛性部としての中央縦溝部29aを有する吸収性コアを備えた吸収体4を用いて構成される。
ナプキン1は、縦方向Xにおける全長が40cmであった。
ナプキン1には、圧搾溝として、本体圧搾溝9と、後方圧搾溝6と、中間圧搾溝10、内側圧搾溝11及び起立抑制圧搾部12を形成した。
【0068】
(比較例1)
図6(A)に示すように、圧搾溝の形状が異なる点、及び、中央縦溝部が設けられていない点以外は実施例1と同様に、比較例1のナプキン40を作製した。
ナプキン40には、圧搾溝として、線状の、本体圧搾溝41と、前方圧搾溝42と、後方圧搾溝43と、内側圧搾溝44を形成した。
本体圧搾溝41は、本体の前方領域から中間領域を通って後方領域まで延び、環状を有する。
前方圧搾溝42は、本体の前方領域に位置し、縦中心線CLに対して非線対称の形状を有する。前方圧搾溝42は、大きさが異なる2つの楕円が近接した形状を有し、閉じている形状を有する。前方圧搾溝42は環状の本体圧搾溝41の内部に位置する。
後方圧搾溝43は、本体の後方領域に位置し、縦中心線CLに対して非線対称の形状を有する。後方圧搾溝43は、大きさが異なる2つの楕円が近接した形状を有し、閉じている形状を有する。後方圧搾溝43は環状の本体圧搾溝41の内部に位置する。
内側圧搾溝44は、排泄部対向領域を縦方向Xに沿って挟み込むように一対位置し、ナプキン40の外方に向かって凸の曲線状を有する。
【0069】
(比較例2)
図6(B)に示すように、圧搾溝の形状が異なる以外は実施例2と同様に比較例2のナプキン50を作製した。
ナプキン50においても、吸収体54の吸収性コアの後方領域に実施例2の中央縦溝部29aと同様の低剛性部59を形成した。
ナプキン50には、圧搾溝として、線状の、第1の圧搾溝51と、第2の圧搾溝53と、後方圧搾溝52を形成した。
第1の圧搾溝51は、本体の前方領域から中間領域に亘って延びる前方に凸の形状を有する。
第2の圧搾溝53は、本体の後方領域の中間領域寄りに位置し、縦中心線CLを介してその両側に設けられた一対の線状を有する。
後方圧搾溝52は、本体の後方領域の後端部付近の領域に位置し、縦中心線CLを介してその両側に設けられた一対の線状を有する。後方圧搾溝52は、縦中心線CLに対して線対称形状を有する。
【0070】
[評価試験]
実施例1及び2並びに比較例1及び2のナプキンについて、同様の隙間測定、液流れ性試験を行い、ナプキンの皺発生しにくさ及び液の伝い漏れの発生しにくさを評価した。
【0071】
(隙間深さ測定方法)
各実施例及び各比較例のナプキンを、女性がたっている状態の腰部部分を再現したアクリル樹脂製の透明なモデルに、生理用ショーツ(花王株式会社製、製品名ロリエアクティブガード(しっかりモード)、Lサイズ)を用いて疑似的に装着した。
モデルに装着されたナプキンの画像を、ナプキンの裏面側からCTスキャン(Artec 3D scanner ハンディタイプ、株式会社データデザイン製)を用いて取得した。ここで、ナプキン1の後方領域に皺が発生することにより、モデルの表面にナプキンがフィットしていない領域と、モデルの表面にフィットしている領域とが存在することになる。画像データでは、ナプキンがフィットしていない領域とフィットしている領域とを色の違いにより識別することができる。更に、フィットしていない領域では、ナプキンと肌との距離、すなわち隙間の深さの度合いによって色の濃淡が変化する。この色の違いを利用して、画像データを解析し、隙間の深さを測定した。各サンプルにつき測定を3回実施し、それら3回の測定結果により得られた隙間深さの平均値を算出した。
隙間深さに基づく皺の発生しにくさの評価基準は、隙間深さが5mm未満を〇、5mm以上10mm未満を△、10mm以上を×とした。数値が小さいほど、皺が発生しにくい、つまり、皺の発生が抑制されていることを示す。
測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0072】
(液流れ性試験方法)
各実施例及び各比較例のナプキンを、女性がたっている状態の腰部部分を再現したアクリル樹脂製の透明なモデルに、生理用ショーツ(花王株式会社製、製品名ロリエアクティブガード(しっかりモード)、Lサイズ)を用いて疑似的に装着した。
下半身モデルは、女性の膣口に対応する股間部から液体を排出可能な穴を有している。該穴には通液可能なチューブが接続されていて、下半身モデルの外部から所望の液体を導通させて、該穴から排出できるよう設計されている。また、下半身モデルは、就寝体勢をとったときの寝返り等の動作が再現可能に制御される。
ナプキンを装着したモデルを、評価台に仰向けに寝た姿勢をとるように置いた。
【0073】
このように評価台上に載置したモデルに馬脱繊維血液を4秒かけてナプキンに注入する操作を3分間隔で(測定開始0分後、3分後、6分後、9分後、、、)行い、疑似経血を各ナプキンに注入した。
疑似経血は、B型粘度計(東機産業株式会社製 型番TVB-10M、測定条件:ローターNo.19、30rpm、25℃、60秒間)を用いて測定した粘度が8mPa・sになるように、脱繊維馬血(日本バイオテスト株式会社製)の血球・血漿比率を調製したものである。なお、測定開始後、下半身モデルの両脚を、2分間に1回の割合で寝返りの動作をするように制御した。
液注入開始後、疑似経血がナプキンと肌の間を伝って流れたことを目視で確認したところで、装着したナプキンの変形状態を維持した状態でナプキンをモデルから取り外し、表面シート上で疑似経血が拡散している領域の長手方向前端から後端までの距離を測定した。尚、疑似経血の拡散が不連続な場合は、表面シート上の最前方に位置する疑似経血の前端から最後方に位置する疑似経血の後端までの距離を測定し、ナプキンの液流れ距離とした。
液流れ性の評価基準は、液流れ距離が65mm未満を○、65mm以上95mm未満を△、95mm以上を×とした。液漏れ距離が短いほど、伝い漏れの発生が抑制されていることを示す。
測定結果及び評価結果を、表1に示す。
【0074】
【0075】
(隙間深さ測定結果)
表1に示すように、全長が短いタイプのナプキン30及びナプキン40において、比較例1のナプキン40では、隙間深さが8mmであったが、実施例1のナプキン30では3mmであった。
これにより、非線対称形状であって、かつ、閉じていない(端部を有する)形状の後方圧搾溝6を有する実施例1のナプキン30は、非線対称形状であるが閉じている形状の後方圧搾溝43を有する比較例1のナプキン40と比較して、皺の発生が抑制されていることが確認された。
すなわち、比較例1のナプキン40では、ナプキン40に横方向Y外方から外力が付加された場合、非線対称形状であっても後方圧搾溝43が閉じた形状を有しているため、後方圧搾溝43で囲まれた領域に加わる力は当該領域外に伝播しにくく、領域内に応力が集中して皺が発生しやすくなっていた。
これに対し、実施例1のナプキン30では、後方圧搾溝32は一端部35及び他端部36を有する閉じていない線形状を有しているので、ナプキン30に横方向Y外方から外力が付加された場合、後方圧搾溝32で囲まれた領域に加わる力は当該領域外に伝播しやすく皺が発生しにくくなっていた。更に、実施例1のナプキン30では、後方圧搾溝32が非線対象形状を有しているため、後方圧搾溝32に基づくナプキンの折れ位置が縦中心線CLよりもずれることになり、着用により発生する皺がナプキン30の後端部に近い領域まで伝わりにくく、ナプキン30の後方の皺の発生が抑制されていた。
【0076】
表1に示すように、全長が長いタイプのナプキン1及びナプキン50において、比較例2のナプキン50では、隙間深さが6mmであったが、実施例2のナプキン1では3mmであった。
これにより、低剛性部である中央縦溝部29aを有し、非線対称形状の後方圧搾溝6を有する実施例2のナプキン1は、低剛性部59を有し、閉じられていない形状の線対称形状の後方圧搾溝52を有する比較例2のナプキン50と比較して、皺の発生が抑制されていることが確認された。
すなわち、比較例2のナプキン50では、後端部付近の領域における低剛性部59を変形基点とした吸収体の肌側に起立する変形は、低剛性部59を間に介して両側に位置する一対の後方圧搾溝52によって助長され、皺の発生が促される構成となっていた。
これに対し、実施例2のナプキン1では、後方圧搾溝6を非線対称形状とすることにより、上述したように、着用による吸収性コアの変形により発生する皺がナプキン1の後端部に近い領域まで伝わりにくく、皺の発生が抑制されていた。
【0077】
これらの結果から、端部を有する非線対称形状の後方圧搾部を有する実施例1及び2のナプキンでは、皺の発生が抑制されていることが確認された。
【0078】
(液流れ性試験結果)
表1に示すように、液流れ距離は、比較例1では80mm、比較例2では100mmであったのに対し、実施例1では30mm、実施例2では60mmであった。
これらの結果から、実施例1及び2のナプキンでは、皺の発生が抑制された結果、製品後方における皺を伝った液流れが抑制され、液漏れが効果的に防止されていることが確認された。
【符号の説明】
【0079】
1、30…生理用ナプキン(ナプキン、吸収性物品)
2…表面シート
3…裏面シート
4…吸収体
6、32…後方圧搾溝
65…一端部
66…他端部
CL…縦中心線
M…本体