(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
A01D 69/00 20060101AFI20231106BHJP
A01D 69/06 20060101ALI20231106BHJP
A01D 69/03 20060101ALI20231106BHJP
A01D 41/12 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
A01D69/00 302F
A01D69/06
A01D69/03
A01D69/00 302H
A01D41/12 D
(21)【出願番号】P 2019215932
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2021-12-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】佐野 友彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 脩
(72)【発明者】
【氏名】川畑 翔太郎
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-052228(JP,A)
【文献】特開2019-097397(JP,A)
【文献】特開2005-013171(JP,A)
【文献】特開2004-041115(JP,A)
【文献】特開2009-284823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 69/00
A01D 69/06
A01D 69/03
A01D 41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場の作物を刈り取りながら走行するコンバインであって、
圃場の作物を刈り取って機体後方へ搬送する刈取部と、
エンジンからの動力を変速して前記刈取部へ伝達する静油圧式無段変速機と、
前記静油圧式無段変速機の負荷に関する値である負荷関連値を検知する負荷検知装置と、
前記負荷検知装置により検知された前記負荷関連値に基づいて前記刈取部における詰まりが生じているか否かを判定する判定部と、を備え、
前記判定部は、前記負荷検知装置により検知された前記負荷関連値が所定の閾値を跨いで変化した場合、前記刈取部における詰まりが生じていると判定するように構成されており、
機体の状態に基づいて前記閾値を設定する閾値設定部を備え、
前記閾値設定部は、車速及び前記エンジンの出力軸の回転速度に基づいて前記閾値を設定するコンバイン。
【請求項2】
前記負荷検知装置は、前記静油圧式無段変速機の出力軸の回転速度を検知するように構成されている請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記判定部により前記刈取部における詰まりが生じていると判定された場合に機体を停車させる停車指示部を備える請求項1または2に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンからの動力を変速して刈取部へ伝達する静油圧式無段変速機を備えるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなコンバインとして、例えば、特許文献1に記載のものが既に知られている。このコンバインは、エンジンから出力される動力によって走行する。
【0003】
そして、このコンバインでは、エンジンからの動力が静油圧式無段変速機(特許文献1では「刈取用HST」)を介して刈取部へ伝達される。従って、静油圧式無段変速機を制御することにより、刈取部の駆動速度を変化させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のコンバインでは、刈取穀稈等により、刈取部が詰まってしまうことがある。刈取部が詰まった場合、オペレータは、コンバインによる作業を中断し、刈取部の詰まりを解消するための作業を行う必要がある。
【0006】
ここで、コンバインによる作業に熟練したオペレータがコンバインに搭乗していれば、刈取部が詰まった場合、コンバインから生じる音や振動等から、刈取部の詰まりを察知できる。
【0007】
しかしながら、未熟なオペレータは、刈取部が詰まった場合、コンバインから生じる音や振動等から刈取部の詰まりを察知することが困難である。
【0008】
また、コンバインによる作業に熟練したオペレータであっても、作業環境によっては、コンバインから生じる音や振動等を感じ取ることが困難な場合がある。例えば、強い風が吹いている場合や、圃場周辺で大きな騒音が生じている場合には、オペレータは、コンバインから生じる音や振動等を感じ取ることが困難である。
【0009】
また、コンバインが自動走行可能に構成されており、オペレータがコンバインの機外からコンバインの作業を監視している場合も、オペレータは、コンバインから生じる音や振動等を感じ取ることが困難である。
【0010】
本発明の目的は、オペレータの熟練度や作業環境に拘らず、刈取部の詰まりを認識しやすいコンバインを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の特徴は、圃場の作物を刈り取りながら走行するコンバインであって、圃場の作物を刈り取って機体後方へ搬送する刈取部と、エンジンからの動力を変速して前記刈取部へ伝達する静油圧式無段変速機と、前記静油圧式無段変速機の負荷に関する値である負荷関連値を検知する負荷検知装置と、前記負荷検知装置により検知された前記負荷関連値に基づいて前記刈取部における詰まりが生じているか否かを判定する判定部と、を備え、前記判定部は、前記負荷検知装置により検知された前記負荷関連値が所定の閾値を跨いで変化した場合、前記刈取部における詰まりが生じていると判定するように構成されており、機体の状態に基づいて前記閾値を設定する閾値設定部を備え、前記閾値設定部は、車速及び前記エンジンの出力軸の回転速度に基づいて前記閾値を設定することにある。
【0012】
刈取部が詰まった場合、静油圧式無段変速機における負荷が比較的大きくなりやすい。
ここで、本発明であれば、静油圧式無段変速機の負荷に関する値である負荷関連値に基づいて、刈取部における詰まりが生じているか否かが判定される。従って、本発明であれば、刈取部における詰まりが生じているか否かを精度良く判定することができる。
【0013】
そして、本発明であれば、刈取部における詰まりが生じている場合は、判定部によって、刈取部における詰まりが生じていると判定される。そのため、刈取部における詰まりが生じていると判定された場合、詰まりが生じていることをオペレータに報知したり、コンバインの走行を停止させたりする等、その判定結果に応じた処理を実行することにより、オペレータの熟練度や作業環境に拘らず、刈取部の詰まりを認識しやすい構成を実現できる。
【0014】
即ち、本発明であれば、オペレータの熟練度や作業環境に拘らず、刈取部の詰まりを認識しやすいコンバインを実現できる。
また、刈取部における詰まりが生じていない状態での負荷関連値は、機体の状態に応じて変化することがある。そのため、判定部が、負荷関連値が所定の閾値を跨いで変化した場合に刈取部における詰まりが生じていると判定するように構成されており、且つ、閾値が一定である構成においては、刈取部における詰まりが生じていないにもかかわらず、負荷関連値が閾値を跨いで変化する事態が想定される。その結果、判定部によって、刈取部における詰まりが生じていると誤って判定されてしまう。
ここで、上記の構成によれば、閾値は、機体の状態に基づいて設定される。そのため、上述のように判定部によって刈取部における詰まりが生じていると誤って判定されてしまう事態を回避しやすい。
また、刈取部における詰まりが生じていない状態での負荷関連値は、車速に応じて変化することがある。例えば、コンバインが、車速に応じて静油圧式無段変速機を制御するように構成されている場合、静油圧式無段変速機の出力軸の回転速度は、車速に応じて変化する。この構成において、負荷検知装置が、負荷関連値として、静油圧式無段変速機の出力軸の回転速度を検知するように構成されている場合、刈取部における詰まりが生じていない状態での負荷関連値は、車速に応じて変化することとなる。
ここで、上記の構成によれば、閾値は、車速に基づいて設定される。従って、閾値が適切な値に設定されやすい。
また、刈取部における詰まりが生じていない状態での負荷関連値は、エンジンの出力軸の回転速度に応じて変化することがある。例えば、静油圧式無段変速機の出力軸の回転速度は、エンジンの出力軸の回転速度に応じて変化する。そして、負荷検知装置が、負荷関連値として、静油圧式無段変速機の出力軸の回転速度を検知するように構成されている場合、刈取部における詰まりが生じていない状態での負荷関連値は、エンジンの出力軸の回転速度に応じて変化することとなる。
ここで、上記の構成によれば、閾値は、エンジンの出力軸の回転速度に基づいて設定される。従って、閾値が適切な値に設定されやすい。
【0015】
さらに、本発明において、前記負荷検知装置は、前記静油圧式無段変速機の出力軸の回転速度を検知するように構成されていると好適である。
【0016】
静油圧式無段変速機における負荷が大きいほど、静油圧式無段変速機の出力軸の回転速度は低くなりやすい。即ち、静油圧式無段変速機の出力軸の回転速度は、負荷関連値である。
【0017】
従って、上記の構成によれば、負荷検知装置が負荷関連値を検知する構成を確実に実現できる。
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
さらに、本発明において、前記判定部により前記刈取部における詰まりが生じていると判定された場合に機体を停車させる停車指示部を備えると好適である。
【0028】
この構成によれば、刈取部において詰まりが生じた場合、コンバインの走行が停止する。これにより、オペレータの熟練度や作業環境に拘らず、オペレータは、コンバインの走行が停止したことから、刈取部の詰まりを認識できる。
【0029】
従って、この構成によれば、オペレータの熟練度や作業環境に拘らず、オペレータは、刈取部の詰まりを確実に認識できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図3】刈取走行経路に沿った刈取走行を示す図である。
【
図4】制御部に関する構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。尚、以下の説明においては、特に断りがない限り、
図1に示す矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」とする。
【0032】
〔コンバインの全体構成〕
図1に示すように、自脱型のコンバイン1は、クローラ式の走行装置11、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14、刈取部H、穀粒排出装置18、衛星測位モジュール80を備えている。
【0033】
走行装置11は、コンバイン1における下部に備えられている。また、走行装置11は、エンジン2(
図4参照)からの動力によって駆動する。そして、コンバイン1は、走行装置11によって自走可能である。
【0034】
また、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14は、走行装置11の上側に備えられている。運転部12には、コンバイン1の作業を監視するオペレータが搭乗可能である。
尚、オペレータは、コンバイン1の機外からコンバイン1の作業を監視していても良い。
【0035】
穀粒排出装置18は、穀粒タンク14に接続している。また、衛星測位モジュール80は、運転部12の上面に取り付けられている。
【0036】
刈取部Hは、コンバイン1における前部に備えられている。そして、刈取部Hは、バリカン型の切断装置15、及び、搬送装置16を有している。
【0037】
切断装置15は、圃場の植立穀稈(本発明に係る「作物」に相当)の株元を切断する。
そして、搬送装置16は、切断装置15により切断された穀稈を後側へ搬送する。
【0038】
この構成により、刈取部Hは、圃場の植立穀稈を刈り取る。コンバイン1は、刈取部Hによって圃場の植立穀稈を刈り取りながら走行装置11によって走行する刈取走行が可能である。
【0039】
また、この構成により、刈取部Hは、圃場の植立穀稈を刈り取って機体後方へ搬送する。
【0040】
搬送装置16により搬送された穀稈は、脱穀装置13において脱穀処理される。脱穀処理により得られた穀粒は、穀粒タンク14に貯留される。穀粒タンク14に貯留された穀粒は、必要に応じて、穀粒排出装置18によって機外に排出される。
【0041】
また、運転部12には、通信端末(図示せず)が配置されている。通信端末は、種々の情報を表示可能に構成されている。本実施形態において、通信端末は、運転部12に固定されている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、通信端末は、運転部12に対して着脱可能に構成されていても良いし、通信端末は、コンバイン1の機外に位置していても良い。
【0042】
ここで、コンバイン1は、
図2に示すように圃場における外周側の領域で穀物を収穫しながら周回走行を行った後、
図3に示すように圃場における内側の領域で刈取走行を行うことにより、圃場の穀物を収穫するように構成されている。
【0043】
本実施形態においては、
図2に示す周回走行は手動走行により行われる。また、
図3に示す内側の領域での刈取走行は、自動走行により行われる。
【0044】
尚、本発明はこれに限定されず、
図2に示す周回走行は自動走行により行われても良い。また、
図3に示す内側の領域での刈取走行は手動走行により行われても良い。
【0045】
尚、オペレータは、上述の通信端末を操作することにより、エンジン2の回転速度を変更することができる。
【0046】
作物の状態によって、適切な作業速度は異なる。オペレータが通信端末を操作し、エンジン2の回転速度を適切な回転速度に設定すれば、作物の状態に適した作業速度で作業を行うことができる。
【0047】
〔制御部に関する構成〕
図4に示すように、コンバイン1は、制御部20を備えている。制御部20は、自車位置算出部21、領域算出部22、経路算出部23、走行制御部24を有している。
【0048】
衛星測位モジュール80は、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)で用いられる人工衛星からのGPS信号を受信する。そして、
図4に示すように、衛星測位モジュール80は、受信したGPS信号に基づいて、コンバイン1の自車位置を示す測位データを自車位置算出部21へ送る。
【0049】
自車位置算出部21は、衛星測位モジュール80により出力された測位データに基づいて、コンバイン1の位置座標を経時的に算出する。算出されたコンバイン1の経時的な位置座標は、領域算出部22及び走行制御部24へ送られる。
【0050】
領域算出部22は、自車位置算出部21から受け取ったコンバイン1の経時的な位置座標に基づいて、
図3に示すように、外周領域SA及び作業対象領域CAを算出する。
【0051】
より具体的には、領域算出部22は、自車位置算出部21から受け取ったコンバイン1の経時的な位置座標に基づいて、圃場の外周側における周回走行でのコンバイン1の走行軌跡を算出する。そして、領域算出部22は、算出されたコンバイン1の走行軌跡に基づいて、コンバイン1が穀物を収穫しながら周回走行した圃場の外周側の領域を外周領域SAとして算出する。また、領域算出部22は、算出された外周領域SAよりも圃場内側の領域を、作業対象領域CAとして算出する。
【0052】
例えば、
図2においては、圃場の外周側における周回走行のためのコンバイン1の走行経路が矢印で示されている。
図2に示す例では、コンバイン1は、3周の周回走行を行う。そして、この走行経路に沿った刈取走行が完了すると、圃場は、
図3に示す状態となる。
【0053】
図3に示すように、領域算出部22は、コンバイン1が穀物を収穫しながら周回走行した圃場の外周側の領域を外周領域SAとして算出する。また、領域算出部22は、算出された外周領域SAよりも圃場内側の領域を、作業対象領域CAとして算出する。
【0054】
そして、
図4に示すように、領域算出部22による算出結果は、経路算出部23へ送られる。
【0055】
経路算出部23は、領域算出部22から受け取った算出結果に基づいて、
図3に示すように、作業対象領域CAにおける刈取走行のための走行経路である刈取走行経路LIを算出する。尚、
図3に示すように、本実施形態においては、刈取走行経路LIは、縦横方向に延びる複数のメッシュ線である。また、複数のメッシュ線は直線でなくても良く、湾曲していても良い。
【0056】
図4に示すように、経路算出部23により算出された刈取走行経路LIは、走行制御部24へ送られる。
【0057】
走行制御部24は、走行装置11を制御可能に構成されている。そして、走行制御部24は、自車位置算出部21から受け取ったコンバイン1の位置座標と、経路算出部23から受け取った刈取走行経路LIと、に基づいて、コンバイン1の自動走行を制御する。より具体的には、走行制御部24は、
図3に示すように、刈取走行経路LIに沿った自動走行によって刈取走行が行われるように、コンバイン1の走行を制御する。
【0058】
即ち、コンバイン1は、自動走行可能である。
【0059】
〔コンバインによる収穫作業の流れ〕
以下では、コンバイン1による収穫作業の例として、コンバイン1が、
図2に示す圃場で収穫作業を行う場合の流れについて説明する。
【0060】
最初に、オペレータは、コンバイン1を手動で操作し、
図2に示すように、圃場内の外周部分において、圃場の境界線BDに沿って周回するように刈取走行を行う。
図2に示す例では、コンバイン1は、3周の周回走行を行う。この周回走行が完了すると、圃場は、
図3に示す状態となる。
【0061】
領域算出部22は、自車位置算出部21から受け取ったコンバイン1の経時的な位置座標に基づいて、
図2に示す周回走行でのコンバイン1の走行軌跡を算出する。そして、
図3に示すように、領域算出部22は、算出されたコンバイン1の走行軌跡に基づいて、コンバイン1が植立穀稈を刈り取りながら周回走行した圃場の外周側の領域を外周領域SAとして算出する。また、領域算出部22は、算出された外周領域SAよりも圃場内側の領域を、作業対象領域CAとして算出する。
【0062】
次に、経路算出部23は、領域算出部22から受け取った算出結果に基づいて、
図3に示すように、作業対象領域CAにおける刈取走行経路LIを設定する。
【0063】
そして、オペレータが自動走行開始ボタン(図示せず)を押すことにより、
図3に示すように、刈取走行経路LIに沿った自動走行が開始される。このとき、走行制御部24は、刈取走行経路LIに沿った自動走行によって刈取走行が行われるように、コンバイン1の走行を制御する。
【0064】
作業対象領域CAにおける自動走行が開始されると、コンバイン1は、作業対象領域CAの全体を網羅するように刈取走行を行う。
【0065】
コンバイン1により刈取走行が行われている間、上述の通り、切断装置15により刈り取られた刈取穀稈は、搬送装置16によって脱穀装置13へ搬送される。そして、脱穀装置13において、刈取穀稈は脱穀処理される。
【0066】
〔動力伝達に関する構成〕
図4に示すように、コンバイン1は、第1伝達機構31及び第2伝達機構32を備えている。エンジン2からの動力は、エンジン出力軸2aを介して、第1伝達機構31及び第2伝達機構32に分配される。尚、エンジン出力軸2aは、エンジン2の出力軸である。
【0067】
第1伝達機構31は、エンジン2からの動力を、走行装置11へ伝達する。これにより、走行装置11は、エンジン2からの動力により駆動する。
【0068】
また、
図4に示すように、コンバイン1は、刈取HST40(本発明に係る「静油圧式無段変速機」に相当)、及び、第3伝達機構33を備えている。また、刈取HST40は、油圧ポンプ41及び油圧モータ42を有している。
【0069】
第2伝達機構32は、エンジン2からの動力を、油圧ポンプ41へ伝達する。そして、刈取HST40において、動力は油圧ポンプ41から油圧モータ42へ伝達される。このとき、油圧ポンプ41と油圧モータ42との間で、動力は変速される。そして、変速された動力は、モータ出力軸42aを介して、第3伝達機構33へ伝達される。尚、モータ出力軸42aは、油圧モータ42の出力軸である。
【0070】
第3伝達機構33は、油圧モータ42からの動力を、刈取部Hへ伝達する。これにより、刈取部Hは、エンジン2からの動力により駆動する。
【0071】
このようにコンバイン1は、エンジン2からの動力を変速して刈取部Hへ伝達する刈取HST40を備えている。
【0072】
〔刈取速度制御に関する構成〕
図4に示すように、コンバイン1は、車速検知部S1を備えている。また、制御部20は、刈取速度制御部28を有している。
【0073】
車速検知部S1は、コンバイン1の車速を検知する。車速検知部S1による検知結果は、刈取速度制御部28へ送られる。
【0074】
刈取速度制御部28は、車速検知部S1による検知結果に基づいて、刈取HST40を制御する。これにより、刈取速度制御部28は、刈取部Hの駆動速度を制御する。即ち、刈取速度制御部28は、コンバイン1の車速に基づいて、刈取部Hの駆動速度を制御するように構成されている。
【0075】
より具体的には、刈取速度制御部28は、コンバイン1の車速が高いほど刈取部Hの駆動速度が高くなるように、刈取HST40を制御する。
【0076】
〔判定部に関する構成〕
図4に示すように、コンバイン1は、負荷検知装置3を備えている。また、制御部20は、判定部26を有している。
【0077】
負荷検知装置3は、モータ出力軸42aの回転速度を検知するように構成されている。
【0078】
ここで、刈取HST40の負荷が増大した場合、モータ出力軸42aの回転速度は低下する。即ち、モータ出力軸42aの回転速度は、刈取HST40の負荷に関する値である。
【0079】
本明細書においては、刈取HST40の負荷に関する値を、負荷関連値と呼称する。即ち、負荷検知装置3は、負荷関連値を検知するように構成されている。
【0080】
このように、コンバイン1は、刈取HST40の負荷に関する値である負荷関連値を検知する負荷検知装置3を備えている。
【0081】
負荷検知装置3による検知結果は、判定部26へ送られる。
【0082】
判定部26は、負荷検知装置3による検知結果に基づいて、刈取部Hにおける詰まりが生じているか否かを判定する。
【0083】
このように、コンバイン1は、負荷検知装置3により検知された負荷関連値に基づいて刈取部Hにおける詰まりが生じているか否かを判定する判定部26を備えている。
【0084】
判定部26によって、刈取部Hにおける詰まりが生じていると判定された場合、判定部26は、所定の信号を停車指示部27へ送る。この信号は、刈取部Hにおける詰まりが生じていることを示す信号である。
【0085】
停車指示部27は、この信号を受け取ると、機体を停車させるための指示信号を、走行制御部24へ送る。走行制御部24は、この指示信号に従って走行装置11を制御し、機体を停車させる。
【0086】
このように、コンバイン1は、判定部26により刈取部Hにおける詰まりが生じていると判定された場合に機体を停車させる停車指示部27を備えている。
【0087】
以下では、判定部26による判定について詳述する。
【0088】
図4に示すように、制御部20は、閾値設定部25を有している。また、コンバイン1は、回転検知部S2を備えている。
【0089】
上述の通り、車速検知部S1は、コンバイン1の車速を検知する。そして、車速検知部S1による検知結果は、閾値設定部25へ送られる。
【0090】
閾値設定部25は、車速検知部S1から受け取った検知結果に基づいて、閾値THを設定する。即ち、閾値設定部25は、車速に基づいて閾値THを設定する。
【0091】
本実施形態において、閾値設定部25は、
図5に示すように、車速が高いほど閾値THが高くなるように、閾値THを設定する。
【0092】
また、回転検知部S2は、エンジン出力軸2aの回転速度を検知する。そして、
図4に示すように、回転検知部S2による検知結果は、閾値設定部25へ送られる。
【0093】
閾値設定部25は、回転検知部S2から受け取った検知結果に基づいて、閾値THを設定する。即ち、閾値設定部25は、エンジン出力軸2aの回転速度に基づいて閾値THを設定する。
【0094】
本実施形態において、閾値設定部25は、エンジン出力軸2aの回転速度が高いほど閾値THが高くなるように、閾値THを設定する。尚、本実施形態におけるエンジン出力軸2aの回転速度と閾値THとの関係は、
図5に示した関係と同様であるため、図示を省略する。
【0095】
以上で説明したように、閾値設定部25は、コンバイン1の機体の状態に基づいて閾値THを設定する。尚、車速、及び、エンジン出力軸2aの回転速度は、何れも本発明に係る「機体の状態」に相当する。
【0096】
即ち、コンバイン1は、機体の状態に基づいて閾値THを設定する閾値設定部25を備える。閾値設定部25により設定された閾値THは、判定部26へ送られる。
【0097】
判定部26は、負荷検知装置3により検知された負荷関連値が所定の閾値THを跨いで変化した場合、刈取部Hにおける詰まりが生じていると判定するように構成されている。
【0098】
例えば、エンジン出力軸2aの回転速度が所定速度に維持されている場合、
図5に示すように、コンバイン1の車速が第1車速V1であるとき、閾値設定部25により設定される閾値THが第1閾値TH1であるとする。
【0099】
この場合、車速が第1車速V1であり、且つ、負荷検知装置3により検知されているモータ出力軸42aの回転速度が第1閾値TH1よりも大きいときには、判定部26は、刈取部Hにおける詰まりが生じていないと判定する。
【0100】
また、車速が第1車速V1であるときに、負荷検知装置3により検知されているモータ出力軸42aの回転速度が、第1閾値TH1よりも大きい値から第1閾値TH1よりも小さい値に変化した場合、判定部26は、刈取部Hにおける詰まりが生じていると判定する。
【0101】
尚、負荷検知装置3により検知されているモータ出力軸42aの回転速度が、第1閾値TH1よりも大きい値から第1閾値TH1よりも小さい値に変化した場合は、上述の「負荷検知装置3により検知された負荷関連値が所定の閾値THを跨いで変化した場合」に相当する。
【0102】
刈取部Hが詰まった場合、刈取HST40における負荷が比較的大きくなりやすい。ここで、以上で説明した構成であれば、負荷関連値に基づいて、刈取部Hにおける詰まりが生じているか否かが判定される。従って、以上で説明した構成であれば、刈取部Hにおける詰まりが生じているか否かを精度良く判定することができる。
【0103】
そして、以上で説明した構成であれば、刈取部Hにおける詰まりが生じている場合は、判定部26によって、刈取部Hにおける詰まりが生じていると判定される。そのため、刈取部Hにおける詰まりが生じていると判定された場合、詰まりが生じていることをオペレータに報知したり、コンバイン1の走行を停止させたりする等、その判定結果に応じた処理を実行することにより、オペレータの熟練度や作業環境に拘らず、刈取部Hの詰まりを認識しやすい構成を実現できる。
【0104】
尚、以上に記載した実施形態は一例に過ぎないのであり、本発明はこれに限定されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0105】
〔その他の実施形態〕
(1)走行装置11は、ホイール式であっても良いし、セミクローラ式であっても良い。
【0106】
(2)上記実施形態においては、経路算出部23により算出される刈取走行経路LIは、縦横方向に延びる複数のメッシュ線である。しかしながら、本発明はこれに限定されず、経路算出部23により算出される刈取走行経路LIは、縦横方向に延びる複数のメッシュ線でなくても良い。例えば、経路算出部23により算出される刈取走行経路LIは、渦巻き状の走行経路であっても良い。また、刈取走行経路LIは、別の刈取走行経路LIと直交していなくても良い。また、経路算出部23により算出される刈取走行経路LIは、互いに平行な複数の平行線であっても良い。
【0107】
(3)上記実施形態においては、オペレータは、コンバイン1を手動で操作し、
図2に示すように、圃場内の外周部分において、圃場の境界線BDに沿って周回するように刈取走行を行う。しかしながら、本発明はこれに限定されず、コンバイン1が自動で走行し、圃場内の外周部分において、圃場の境界線BDに沿って周回するように刈取走行を行うように構成されていても良い。また、このときの周回数は、3周以外の数であっても良い。
例えば、このときの周回数は2周であっても良い。
【0108】
(4)自車位置算出部21、領域算出部22、経路算出部23、走行制御部24、閾値設定部25、判定部26、停車指示部27、刈取速度制御部28のうち、一部または全てがコンバイン1の外部に備えられていても良いのであって、例えば、コンバイン1の外部に設けられた管理サーバに備えられていても良い。
【0109】
(5)上記実施形態においては、負荷検知装置3により検知されているモータ出力軸42aの回転速度が、第1閾値TH1よりも大きい値から第1閾値TH1よりも小さい値に変化した場合について説明した。しかしながら、判定部26は、負荷検知装置3により検知された負荷関連値が閾値THよりも小さい値から閾値THよりも大きい値に変化した場合に刈取部Hにおける詰まりが生じていると判定するように構成されていても良い。
【0110】
(6)負荷検知装置3は、モータ出力軸42aの回転速度以外の値を検知するように構成されていても良い。例えば、負荷検知装置3は、刈取HST40の内部の油圧を検知しても良い。刈取HST40の内部の油圧は、本発明に係る「負荷関連値」に相当する。
【0111】
また、例えば、負荷検知装置3は、モータ出力軸42aの回転速度と刈取HST40の内部の油圧との比率を検知しても良い。この比率は、本発明に係る「負荷関連値」に相当する。
【0112】
(7)閾値設定部25は設けられていなくても良い。即ち、閾値THは変更不能であっても良い。
【0113】
(8)コンバイン1は、自動走行ができないように構成されていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、自脱型のコンバインだけでなく、普通型のコンバインにも利用可能である。
【符号の説明】
【0115】
1 コンバイン
2 エンジン
2a エンジン出力軸(エンジンの出力軸)
3 負荷検知装置
25 閾値設定部
26 判定部
27 停車指示部
40 刈取HST(静油圧式無段変速機)
42a モータ出力軸(静油圧式無段変速機の出力軸)
H 刈取部
TH 閾値