(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】低たわみおよび高損傷抵抗性ガラス物品のための非対称応力プロファイル
(51)【国際特許分類】
C03C 21/00 20060101AFI20231106BHJP
C03B 23/023 20060101ALI20231106BHJP
C03C 3/091 20060101ALI20231106BHJP
C03C 3/093 20060101ALI20231106BHJP
C03C 3/097 20060101ALI20231106BHJP
G06F 1/16 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
C03C21/00 101
C03B23/023
C03C3/091
C03C3/093
C03C3/097
G06F1/16 312E
(21)【出願番号】P 2019547437
(86)(22)【出願日】2018-03-01
(86)【国際出願番号】 US2018020413
(87)【国際公開番号】W WO2018160812
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2021-03-01
(32)【優先日】2017-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ブックバインダー,ダナ クレイグ
(72)【発明者】
【氏名】グロス,ティモシー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ハント,ジェニファー リン
(72)【発明者】
【氏名】ルセフ,ロスチラフ ヴァチェフ
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-169143(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0274585(US,A1)
【文献】国際公開第2016/204087(WO,A1)
【文献】特表2016-538233(JP,A)
【文献】特表2013-536155(JP,A)
【文献】特表2015-511573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00,21/00,
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス物品において:
第1の表面と;
第2の表面と;
前記第1の表面から前記第2の表面まで延在する非対称応力プロファイルと;
少なくとも0.5mの前記非対称応力プロファイルの反り性能指数(Warpage Figure of Merit)と;
少なくとも0.05の前記非対称応力プロファイルの非対称性能指数(Asymmetry Figure of Merit)と、
を含み、
50~75モル%のSiO
2;
5~20モル%のAl
2O
3;
2~20モル%のB
2O
3;
0~10モル%のP
2O
5;
6~25モル%のLi
2O+Na
2O+K
2O;および
0~15モル%のMgO+CaO+SrO+BaO+ZnO
をさらに含み、
前記
第1の表面と前記第2の表面とは異なる強化特性を有することを特徴とするガラス物品。
【請求項2】
ガラス物品において:
第1の表面と;
第2の表面と;
前記第1の表面から前記第2の表面まで延在する非対称応力プロファイルと;
前記ガラス物品の厚さの12分の1未満の前記非対称応力プロファイルの反り傾向(Warpage Tendency)と;
少なくとも0.05の前記非対称応力プロファイルの非対称性能指数と、
を含含み、
50~75モル%のSiO
2;
5~20モル%のAl
2O
3;
2~20モル%のB
2O
3;
0~10モル%のP
2O
5;
6~25モル%のLi
2O+Na
2O+K
2O;および
0~15モル%のMgO+CaO+SrO+BaO+ZnO
をさらに含み、
前記
第1の表面と前記第2の表面とは異なる強化特性を有することを特徴とするガラス物品。
【請求項3】
前記ガラス物品が、前記第1の表面から前記第2の表面まで延在する第2の応力プロファイルを有する領域を含み、前記第2の応力プロファイルが前記非対称応力プロファイルとは異なることを特徴とする請求項1または2に記載のガラス物品。
【請求項4】
ガラス物品において:
第1の表面と;
第2の表面と;
前記第1の表面から前記第2の表面まで延在する非対称応力プロファイルと;
前記第1の表面から前記ガラス物品中の第1の圧縮深さまで延在する第1の圧縮応力層;
前記第2の表面から前記ガラス物品中の第2の圧縮深さまで延在する第2の圧縮応力層と;
反り高さと
を含み、
50~75モル%のSiO
2;
5~20モル%のAl
2O
3;
2~20モル%のB
2O
3;
0~10モル%のP
2O
5;
6~25モル%のLi
2O+Na
2O+K
2O;および
0~15モル%のMgO+CaO+SrO+BaO+ZnO
をさらに含み、
前記第1の圧縮深さおよび前記第2の圧縮深さの少なくとも1つは、前記ガラス物品の厚さがtのとき0.16t以上であり、前記第1の圧縮深さと前記第2の圧縮深さとの比が少なくとも1.5:1であり、前記反り高さが前記ガラス物品の最大寸法の1%未満であり、
前記
第1の表面と前記第2の表面とは異なる強化特性を有することを特徴とするガラス物品。
【請求項5】
前記第1の圧縮応力層中の第1の最大圧縮応力と;
前記第2の圧縮応力層中の第2の最大圧縮応力と
をさらに含み、
前記第1の最大圧縮応力と前記第2の最大圧縮応力との比が1:3以下であることを特徴とする請求項
4に記載のガラス物品。
【請求項6】
前記第1の圧縮深さと前記第2の圧縮深さとの比が少なくとも3:1であることを特徴とする請求項4または5に記載のガラス物品。
【請求項7】
前記非対称応力プロファイルの前記非対称性能指数が少なくとも0.2である;
0.3未満の反り抑制因子;および
前記非対称応力プロファイルの前記反り性能指数が少なくとも1mである、
の少なくとも1つを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のガラス物品。
【請求項8】
前記第2の表面の下10μmの深さにおいて少なくとも500MPaの圧縮応力;
前記第2の表面の下5μmの深さにおいて少なくとも650MPaの圧縮応力;
前記第1の表面と前記第2の表面との間の距離の10%の前記第1の表面の下の深さにおいて少なくとも40MPaの圧縮応力;
前記第1の表面と前記第2の表面との間の距離の15%の前記第1の表面の下の深さにおいて少なくとも30MPaの圧縮応力;および
少なくとも12.5mの曲率半径
の少なくとも1つをさらに含むことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のガラス物品。
【請求項9】
消費者向け電子製品において:
前面、裏面、および側面を有するハウジングと;
少なくとも部分的に前記ハウジング内に設けられる電気部品において、少なくともコントローラ、メモリ、およびディスプレイを含み、前記ディスプレイが前記ハウジングの前記前面に設けられる、または前記前面に隣接して設けられる電気部品と;
前記ディスプレイ上に配置されるカバーガラス物品と
を含み、前記ハウジングの一部または前記カバーガラス物品の少なくとも1つが、請求項1~8のいずれか一項に記載のガラス物品を含むことを特徴とする消費者向け電子部品。
【請求項10】
ガラス物品の第1の表面をイオン交換して、前記第1の表面から延在する第1の圧縮応力層を形成するステップと;
前記ガラス物品の第2の表面をイオン交換して、前記第2の表面から延在する第2の圧縮応力層を形成するステップと
を含み、
前記第1の圧縮応力層および前記第2の圧縮応力層を含む前記ガラス物品が、少なくとも0.5mの反り性能指数、および少なくとも0.05の非対称性能指数を含み、
前記ガラス物品は、
50~75モル%のSiO
2;
5~20モル%のAl
2O
3;
2~20モル%のB
2O
3;
0~10モル%のP
2O
5;
6~25モル%のLi
2O+Na
2O+K
2O;および
0~15モル%のMgO+CaO+SrO+BaO+ZnO
を含み、
前記
第1の表面と前記第2の表面とは、異なる強化特性を有することを特徴とする方法。
【請求項11】
前記ガラス物品をイオン交換するステップの前に、前記ガラス物品を熱処理して湾曲したガラス物品を形成するステップをさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ガラス物品の第1の表面の少なくとも一部の上に塩を配置するステップと;
前記ガラス物品および塩をイオン交換温度まで加熱することによって、前記ガラス物品をイオン交換して、請求項1~8のいずれか一項に記載のガラス物品を形成するステップと
を含み、
前記塩が、前記イオン交換温度において固体である固体成分を含み、
前記ガラス物品は、
50~75モル%のSiO
2;
5~20モル%のAl
2O
3;
2~20モル%のB
2O
3;
0~10モル%のP
2O
5;
6~25モル%のLi
2O+Na
2O+K
2O;および
0~15モル%のMgO+CaO+SrO+BaO+ZnO
を含み、
前記
第1の表面と前記第2の表面とは、異なる強化特性を有することを特徴とする方法。
【請求項13】
前記塩が、前記イオン交換温度において液体である液体成分をさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記固体成分が硫酸アルカリおよびリン酸アルカリの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記液体成分が少なくとも1つの硝酸アルカリを含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、その全体が参照により本明細書に援用される、2017年3月2日に出願された米国仮出願第62/466,240号の優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、非対称応力プロファイルを有するガラス物品に関する。特に、本開示は、低度のたわみを有する非対称応力プロファイルを含む化学強化ガラス物品に関する。
【背景技術】
【0003】
ガラス物品は、携帯型または移動式の電子通信および娯楽用デバイス、例えば携帯電話、スマートフォン、タブレット、ビデオプレーヤー、情報端末(IT)デバイス、ラップトップコンピュータなどのカバープレートまたはウインドウ用として電子デバイス中、ならびにその他の用途で広く使用されている。ガラス物品がより広く使用されるにつれて、特に硬いおよび/または鋭い表面と接触することによって引張応力および/または比較的深い傷が生じる場合に改善された残存力を有する強化ガラス物品の開発がより重要となってきている。さらに、ガラス物品の種々の表面の主要な破壊形態は異なり、したがって、ガラス物品の各表面の残存力を増加させるためには、異なる強度特性が適切となる。ガラス物品の表面でこのような異なる化学強化特性を実現するために、非対称応力プロファイルが使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
当技術分野において周知の種類の非対称応力プロファイルは、ガラス物品中にたわみを発生させる。低度を超えるガラス物品中のたわみによって、そのガラス物品は、携帯型または移動式の電子通信および娯楽用デバイスのカバープレートまたはウインドウとしての使用には適さなくなる。したがって、非対称応力プロファイルおよび低度のたわみを有するガラス物品が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、態様(1)では:第1の表面と;第2の表面と;第1の表面から第2の表面まで延在する非対称応力プロファイルと;少なくとも約0.5mの非対称応力プロファイルの反り性能指数(Warpage Figure of Merit)と;少なくとも約0.05の非対称応力プロファイルの非対称性能指数(Asymmetry Figure of Merit)とを含むガラス物品を提供する。
【0006】
本開示は、態様(2)では:第1の表面と;第2の表面と;第1の表面から第2の表面まで延在する非対称応力プロファイルと;ガラス物品の厚さの約12分の1未満の非対称応力プロファイルの反り傾向(Warpage Tendency)と;および少なくとも約0.05の非対称応力プロファイルの非対称性能指数とを含むガラス物品を提供する。
【0007】
本開示は、態様(3)では:第1の表面と;第2の表面と;第1の表面から第2の表面まで延在する非対称応力プロファイルと;少なくとも約0.05の非対称応力プロファイルの非対称性能指数とを含むガラス物品を提供する。
【0008】
本開示は、態様(4)では:第1の表面と;第2の表面と;第1の表面から第2の表面まで延在する非対称応力プロファイルと;ガラス物品の厚さの約12分の1未満の非対称応力プロファイルの反り傾向とを含むガラス物品を提供する。
【0009】
本開示は、態様(5)では:第1の表面と;第2の表面と;第1の表面から第2の表面まで延在する非対称応力プロファイルと;少なくとも約0.5mの非対称応力プロファイルの反り性能指数とを含むガラス物品を提供する。
【0010】
本開示は、態様(6)では、約2モル%~約20モル%のB2O3をさらに含む、上記態様のいずれかのガラス物品を提供する。
【0011】
本開示は、態様(7)では:50~75モル%のSiO2;5~20モル%のAl2O3;2~20モル%のB2O3;0~10モル%のP2O5;6~25モル%のLi2O+Na2O+K2O;および0~15モル%のMgO+CaO+SrO+BaO+ZnOをさらに含む、上記態様のいずれかのガラス物品を提供する。
【0012】
本開示は、態様(8)では、非対称応力プロファイルの反り性能指数が少なくとも約1mである、上記態様のいずれかのガラス物品を提供する。
【0013】
本開示は、態様(9)では、非対称応力プロファイルが反り性能指数が少なくとも約10mである、上記態様のいずれかのガラス物品を提供する。
【0014】
本開示は、態様(10)では、非対称応力プロファイルの非対称性能指数が少なくとも約0.2である、上記態様のいずれかのガラス物品を提供する。
【0015】
本開示は、態様(11)では、非対称応力プロファイルの非対称性能指数が少なくとも約0.5である、上記態様のいずれかのガラス物品を提供する。
【0016】
本開示は、態様(12)では、第2の表面の下10μmの深さにおいて少なくとも約500MPaの圧縮応力をさらに含む、上記態様のいずれかのガラス物品を提供する。
【0017】
本開示は、態様(13)では、第2の表面の下5μmの深さにおいて少なくとも約650MPaの圧縮応力をさらに含む、上記態様のいずれかのガラス物品を提供する。
【0018】
本開示は、態様(14)では、第1の表面と第2の表面との間の距離の10%の第1の表面の下の深さにおいて少なくとも約40MPaの圧縮応力をさらに含む、上記態様のいずれかのガラス物品を提供する。
【0019】
本開示は、態様(15)では、第1の表面と第2の表面との間の距離の15%の第1の表面の下の深さにおいて少なくとも約30MPaの圧縮応力をさらに含む、上記態様のいずれかのガラス物品を提供する。
【0020】
本開示は、態様(16)では、少なくとも約12.5mの曲率半径をさらに含む、上記態様のいずれかのガラス物品を提供する。
【0021】
本開示は、態様(17)では:第1の表面からガラス物品中の第1の圧縮深さまで延在する第1の圧縮応力層と;第2の表面からガラス物品中の第2の圧縮深さまで延在する第2の圧縮応力層と;第1の圧縮応力層中の第1の最大圧縮応力と;第2の圧縮応力層中の第2の最大圧縮応力とをさらに含み、第1の最大圧縮応力と第2の最大圧縮応力との比が約1:3以下である、上記態様のいずれかのガラス物品を提供する。
【0022】
本開示は、態様(18)では、ガラス物品が約0.3未満の反り抑制因子(Warpage Suppression Factor)を有する、上記態様のいずれかのガラス物品を提供する。
【0023】
本開示は、態様(19)では、第1の表面と第2の表面との間の距離が約1mm未満である、上記態様のいずれかのガラス物品を提供する。
【0024】
本開示は、態様(20)では、ガラス物品が、第1の表面から第2の表面まで延在する第2の応力プロファイルを有する領域を含み、第2の応力プロファイルが非対称応力プロファイルとは異なる、上記態様のいずれかのガラス物品を提供する。
【0025】
本開示は、態様(21)では、非対称応力プロファイルの非対称性能指数と、第2の応力プロファイルの非対称性能指数との間の差が少なくとも0.2である、態様(20)のガラス物品を提供する。
【0026】
本開示は、態様(22)では、ガラスセラミックをさらに含む、上記態様のいずれかのガラス物品を提供する。
【0027】
本開示は、態様(23)では、ガラス物品が少なくとも第1の層と第2の層とを含む積層構造であり、第1の層および第2の層のそれぞれがガラスまたはガラスセラミックを含む、上記態様のいずれかのガラス物品を提供する。
【0028】
本開示は、態様(24)では:前面、裏面、および側面を有するハウジングと;少なくとも部分的にハウジング内に設けられる電気部品において、少なくともコントローラ、メモリ、およびディスプレイを含み、ディスプレイがハウジングの前面に設けられる、または前面に隣接して設けられる電気部品と;ディスプレイ上に配置されるカバーガラス物品とを含み、ハウジングの一部またはカバーガラス物品の少なくとも1つが、上記態様のいずれかのガラス物品を含む、消費者向け電子製品を提供する。
【0029】
本開示は、態様(25)では:第1の表面と;第2の表面と;第1の表面から第2の表面まで延在する非対称応力プロファイルと;第1の表面からガラス物品中の第1の圧縮深さまで延在する第1の圧縮応力層と;第2の表面からガラス物品中の第2の圧縮深さまで延在する第2の圧縮応力層と;ある反り高さとを含み、第1の圧縮深さと第2の圧縮深さとの比が少なくとも約1.5:1であり、反り高さがガラス物品の最大寸法の約1%未満である、ガラス物品を提供する。
【0030】
本開示は、態様(26)では:第1の圧縮応力層中の第1の最大圧縮応力と;第2の圧縮応力層中の第2の最大圧縮応力とをさらに含み、第1の最大圧縮応力と第2の最大圧縮応力との比が約1:3以下である、態様(25)のガラス物品を提供する。
【0031】
本開示は、態様(27)では、第1の圧縮深さと第2の圧縮深さとの比が少なくとも約3:1である、態様(25)または(26)のガラス物品を提供する。
【0032】
本開示は、態様(28)では、反り高さがガラス物品の最大寸法の約0.1%未満である、態様(25)~(27)のいずれかのガラス物品を提供する。
【0033】
本開示は、態様(29)では、ガラス物品が少なくとも約0.2の非対称性能指数を有する、態様(25)~(28)のいずれかのガラス物品を提供する。
【0034】
本開示は、態様(30)では、ガラス物品が少なくとも約0.5mの反り性能指数を有する、態様(25)~(29)のいずれかのガラス物品を提供する。
【0035】
本開示は、態様(31)では、ガラス物品が約0.3未満の反り抑制因子を有する、態様(25)~(30)のいずれかのガラス物品を提供する。
【0036】
本開示は、態様(32)では、第2の表面の下10μmの深さにおいて少なくとも約500MPaの圧縮応力をさらに含む、態様(25)~(31)のいずれかのガラス物品を提供する。
【0037】
本開示は、態様(33)では、第2の表面の下5μmの深さにおいて少なくとも約650MPaの圧縮応力をさらに含む、態様(25)~(32)のいずれかのガラス物品を提供する。
【0038】
本開示は、態様(34)では、第1の表面と第2の表面との間の距離の10%の第1の表面の下の深さにおいて少なくとも約40MPaの圧縮応力をさらに含む、態様(25)~(33)のいずれかのガラス物品を提供する。
【0039】
本開示は、態様(35)では、第1の表面と第2の表面との間の距離の15%の第1の表面の下の深さにおいて少なくとも約30MPaの圧縮応力をさらに含む、態様(25)~(34)のいずれかのガラス物品を提供する。
【0040】
本開示は、態様(36)では、第1の表面と第2の表面との間の距離が約1mm未満である、態様(25)~(35)のいずれかのガラス物品を提供する。
【0041】
本開示は、態様(37)では、少なくとも約12.5mの曲率半径をさらに含む、態様(25)~(36)のいずれかのガラス物品を提供する。
【0042】
本開示は、ガラスセラミックをさらに含む、態様(38)では、態様(25)~(37)のいずれかのガラス物品を提供する。
【0043】
本開示は、態様(39)では、ガラス物品が、少なくとも第1の層と第2の層とを含む積層構造であり、第1の層および第2の層のそれぞれがガラスまたはガラスセラミックを含む、態様(25)~(38)のいずれかのガラス物品を提供する。
【0044】
本開示は、態様(40)では:消費者向け電子製品において、前面、裏面、および側面を有するハウジングと;少なくとも部分的にハウジング内に設けられる電気部品において、少なくともコントローラ、メモリ、およびディスプレイを含み、ディスプレイがハウジングの前面に設けられる、または前面に隣接して設けられる電気部品と;ディスプレイ上に配置されるカバーガラス物品とを含み、ハウジングの一部またはカバーガラス物品の少なくとも1つが、態様(25)~(39)のいずれかのガラス物品を含む、消費者向け電子製品を提供する。
【0045】
本開示は、態様(41)では:ガラス物品の第1の表面をイオン交換して、第1の表面から延在する第1の圧縮応力層を形成するステップと;ガラス物品の第2の表面をイオン交換して、第2の表面から延在する第2の圧縮応力層を形成するステップとを含み、第1の圧縮応力層および第2の圧縮応力層を含むガラス物品が、少なくとも約0.5mの反り性能指数、および少なくとも約0.05の非対称性能指数を含む、方法を提供する。
【0046】
本開示は、態様(42)では、ガラス物品を熱処理するステップをさらに含む、態様(41)の方法を提供する。
【0047】
本開示は、態様(43)では、第1の圧縮応力層および第2の圧縮応力層が同時に形成される、態様(41)または(42)の方法を提供する。
【0048】
本開示は、態様(44)では、第2の表面をイオン交換するステップの前に、ガラス物品の第1の表面に障壁層を形成するステップをさらに含む、態様(41)~(43)のいずれかの方法を提供する。
【0049】
本開示は、態様(45)では、障壁層を形成するステップが、Cu、Ca、Mg、Zn、およびTiのイオンの少なくとも1つを用いて第1の表面をイオン交換するステップを含む、態様(44)の方法を提供する。
【0050】
本開示は、態様(46)では、障壁層が1μm未満の深さを有する、態様(44)または(45)の方法を提供する。
【0051】
本開示は、態様(47)では、ガラス物品から障壁層を除去するステップをさらに含む、態様(44)~(46)のいずれかの方法を提供する。
【0052】
本開示は、態様(48)では、ガラス物品をイオン交換する前に、ガラス物品を熱処理して、湾曲したガラス物品を形成するステップをさらに含む、態様(41)~(47)のいずれかの方法を提供する。
【0053】
本開示は、態様(49)では:ガラス物品の第1の表面の少なくとも一部の上に塩を配置するステップと;ガラス物品および塩をイオン交換温度まで加熱することによってガラス物品をイオン交換して、非対称応力プロファイルを有するガラス物品を製造するステップとを含み、塩が、イオン交換温度において固体である固体成分を含む、方法を提供する。
【0054】
本開示は、態様(50)では、塩が、イオン交換温度において液体である液体成分をさらに含む、態様(49)の方法を提供する。
【0055】
本開示は、態様(51)では、固体成分が、硫酸アルカリおよびリン酸アルカリの少なくとも1つを含む、態様(49)または(50)の方法を提供する。
【0056】
本開示は、態様(52)では、固体成分が、リン酸三カリウム、リン酸三ナトリウム、硫酸カリウム、および硫酸ナトリウムの少なくとも1つを含む、態様(49)~(51)のいずれかの方法を提供する。
【0057】
本開示は、態様(53)では、液体成分が少なくとも1つの硝酸アルカリを含む、態様(49)~(52)のいずれかの方法を提供する。
【0058】
本開示は、態様(54)では、液体成分が、KNO3およびNaNO3の少なくとも1つを含む、態様(50)~(53)のいずれかの方法を提供する。
【0059】
本開示は、態様(55)では、固体成分が、5重量%~99.5重量%の量の塩に存在する、態様(49)~(54)のいずれかの方法を提供する。
【0060】
本開示は、態様(56)では、固体成分が、30重量%~98重量%の量の塩に存在する、態様(49)~(55)のいずれかの方法を提供する。
【0061】
本開示は、態様(57)では、塩が第1の表面全体の上に配置される、態様(49)~(56)のいずれかの方法を提供する。
【0062】
本開示は、態様(58)では、塩が第1の表面の中央の上には配置されない、態様(49)~(57)のいずれかの方法を提供する。
【0063】
本開示は、態様(59)では、塩が第1の表面の周辺部にのみ配置される、態様(49)~(58)のいずれかの方法を提供する。
【0064】
本開示は、態様(60)では、塩を配置するステップの前に、第1の表面の一部の上に障壁層を形成するステップをさらに含む、態様(49)~(59)のいずれかの方法を提供する。
【0065】
本開示は、態様(61)では、障壁層が、アルカリフリーガラス、SiO2、および金属の少なくとも1つを含む、態様(60)の方法を提供する。
【0066】
本開示は、態様(62)では、ガラス物品をイオン交換するステップの後に、障壁層を除去するステップをさらに含む、態様(60)または(61)の方法を提供する。
【0067】
本開示は、態様(63)では、ガラス物品を溶融塩浴に接触させるステップをさらに含む、態様(49)~(62)のいずれかの方法を提供する。
【0068】
本開示は、態様(64)では、ガラス物品を第2の溶融塩浴に接触させるステップをさらに含む、態様(63)の方法を提供する。
【0069】
本開示は、態様(65)では、非対称応力プロファイルが少なくとも約0.05の非対称性能指数を有する、態様(49)~(64)のいずれかの方法を提供する。
【0070】
本開示は、態様(66)では、非対称応力プロファイルが少なくとも約0.5mの反り性能指数を有する、態様(49)~(65)のいずれかの方法を提供する。
【0071】
本開示は、態様(67)では、非対称応力プロファイルが、ガラス物品の厚さの約12分の1未満の反り傾向を有する、態様(49)~(66)のいずれかの方法を提供する。
【0072】
これらおよびその他の態様、利点、ならびに顕著な特徴は、以下の詳細な説明、添付の図面、および添付の請求項から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【
図1】1つ以上の実施形態によるガラス物品の概略断面図である。
【
図2】理論上のイオン交換されたガラス物品の深さの関数としての応力の図である。
【
図3】非対称応力プロファイルを有する理論上のイオン交換されたガラス物品の深さの関数としての応力の図である。
【
図4】たわみのない非対称応力プロファイルを有する理論上のイオン交換されたガラス物品の深さの関数としての応力の図である。
【
図5】
図4のたわみのない非対称応力プロファイルの対称成分および反対称(anti-symmetric)成分の図である。
【
図6】イオン交換前に球面曲率が付与された、非対称応力プロファイルを有する理論上のイオン交換されたガラス物品の深さの関数としての応力の図である。
【
図7】イオン交換プロセスの種々のステップにおける
図6の理論上のイオン交換されたガラス物品の規格化された濃度プロファイルの変化の図である。
【
図8】
図6の非対称応力プロファイルの反対称成分と、イオン交換前にガラス物品に球面曲率を付与することによって得られて導入された補助的成分との図である。
【
図9】
図6のフリーの非対称応力プロファイルの対称成分および反対称成分の図である。
【
図10】本明細書に記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の1つ以上の実施形態を含む消費者向け電子製品の概略前平面図である。
【
図12】イオン交換プロセスの種々の段階における試料の横断たわみ(cross warp)のプロットである。
【
図13】イオン交換プロセスの種々の段階における
図12の試料の対角たわみ(diagonal warp)のプロットである。
【
図14】イオン交換プロセスの種々の段階における試料の横断たわみのプロットである。
【
図15】イオン交換プロセスの種々の段階における
図14の試料の対角たわみのプロットである。
【
図16】イオン交換プロセスの種々の段階における試料の横断たわみのプロットである。
【
図17】イオン交換プロセスの種々の段階における
図16の試料の対角たわみのプロットである。
【
図18】イオン交換プロセスの種々の段階における試料の横断たわみのプロットである。
【
図19】イオン交換プロセスの種々の段階における
図18の試料の対角たわみのプロットである。
【
図20】イオン交換プロセスの種々の段階における試料の横断たわみのプロットである。
【
図21】イオン交換プロセスの種々の段階における
図20の試料の対角たわみのプロットである。
【
図22】イオン交換プロセスの種々の段階における試料の横断たわみのプロットである。
【
図23】イオン交換プロセスの種々の段階における
図22の試料の対角たわみのプロットである。
【
図24】イオン交換プロセスの種々の段階における試料の横断たわみのプロットである。
【
図25】イオン交換プロセスの種々の段階における
図24の試料の対角たわみのプロットである。
【
図26】イオン交換プロセスの種々の段階における試料の横断たわみのプロットである。
【
図27】イオン交換プロセスの種々の段階における
図26の試料の対角たわみのプロットである。
【
図28】イオン交換プロセスの種々の段階における試料の横断たわみのプロットである。
【
図29】イオン交換プロセスの種々の段階における
図28の試料の対角たわみのプロットである。
【
図30】イオン交換プロセスの種々の段階における試料の横断たわみのプロットである。
【
図31】イオン交換プロセスの種々の段階における
図30の試料の対角たわみのプロットである。
【
図32】イオン交換されたガラス物品の表面からの距離の関数としての応力のプロットである。
【
図33】イオン交換プロセスの種々の段階における試料の横断たわみのプロットである。
【
図34】イオン交換プロセスの種々の段階における試料の横断たわみのプロットである。
【
図35】イオン交換プロセスの種々の段階における試料の横断たわみのプロットである。
【
図36】イオン交換プロセスの種々の段階における試料の横断たわみのプロットである。
【
図37】イオン交換プロセスの種々の段階における試料の横断たわみのプロットである。
【
図38】イオン交換プロセスの種々の段階における試料の横断たわみのプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0074】
以下の説明において、同様の参照文字は、図面中に示される幾つかの図にわたって同様または対応する部分を示している。他に明記されるのでなければ、「上部」、「底部」、「外向き」、「内向き」などの用語は、便宜上の単語であり、限定的な用語と解釈すべきではないことも理解されたい。さらに、ある群が、要素およびそれらの組合せの群の少なくとも1つを含むとして記載される場合は常に、その群は、個別に、または互いの組合せのいずれかで、列挙されるそれらの要素のいくつかを含む、から本質的になる、またはからなることができることを理解されたい。同様に、ある群が、要素およびそれらの組合せの群の少なくとも1つからなるとして記載される場合は常に、その群は、個別に、または互いの組合せのいずれかで、列挙されるそれらの要素のいくつかからなることができることを理解されたい。他に明記されなければ、列挙される場合の、ある値の範囲は、その範囲の上限および下限の両方と、それらの間のあらゆる範囲とを含む。本明細書において使用される場合、不定冠詞「a」、「an」、および対応する定冠詞「the」は、他に明記されるのでなければ、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味する。本明細書および図面に開示される種々の特徴は、ありとあらゆる組合せで使用できることも理解されたい。
【0075】
本明細書において使用される場合、「ガラス物品」という用語は、全体的または部分的にガラス、例えばガラスセラミックでできたあらゆる物体を含む最も広い意味で使用される。特に明記されなければ、本明細書に記載のガラスの全ての組成は、モルパーセント(モル%)で表され、それらの構成要素は酸化物基準で示される。特に明記されなければ、全ての温度は摂氏温度(℃)で表される。「液相線粘度」という用語は、液相線温度における溶融ガラスの粘度を意味し、液相線温度は、溶融ガラスを溶融温度から冷却したときに結晶が最初に現れる温度、または温度を室温から上昇させたときに最後の結晶が溶融してなくなる温度を意味する。
【0076】
「実質的に」および「約」という用語は、あらゆる定量的な比較、値、測定値、またはその他の表現に帰することができる不確実性の固有の程度を表すために本明細書において使用できることに留意されたい。これらの用語は、問題となる主題の基本的機能の変化を引き起こすことなく、定量的表現が記載の基準から変動しうる程度をあらわすためにも本明細書において使用される。例えば、「K2Oを実質的に含まない」ガラスは、K2Oがガラス中に積極的に加えられたりガラス中にバッチとして処理されたりすることはないが、汚染物質として非常に少量で存在しうるガラスである。
【0077】
本開示において列挙されるヤング率の値は、“Standard Guide for Resonant Ultrasound Spectroscopy for Defect Detection in Both Metallic and Non-metallic Parts”と題されるASTME2001-13に記載の一般的な種類の共鳴超音波分光技術によって測定される値を意味する。
【0078】
熱膨張係数(CTE)は、他に明記されなければ、パーツパーミリオン(ppm)/℃で表され、約20℃~約300℃の温度範囲にわたって測定される値を表す。高温(または液体)熱膨張係数(高温CTE)もパーツパーミリオン(ppm)/摂氏温度(ppm/℃)で表され、瞬時熱膨張係数(CTE)対温度曲線の高温プラトー領域中で測定される値を表す。高温CTEによって、転移領域を通過するガラスの加熱または冷却と関連する体積変化が測定される。本明細書において使用される場合、「軟化点」という用語は、ガラスの粘度が約107.6ポアズ(P)(約106.6Pa・s)となる温度を意味し、「徐冷点」という用語は、ガラスの粘度が約1013.2ポアズ(約1012.2Pa・s)となる温度を意味し、「200ポアズ温度(T200P)」という用語は、ガラスの粘度が約200ポアズ(約20Pa・s)となる温度を意味し、「1011ポアズ温度」という用語は、ガラスの粘度が約1011ポアズ(約1010Pa・s)となる温度を意味し、「35kP温度(T35kP)」という用語は、ガラスの粘度が約35キロポアズ(kP)(約3.5kPa・s)となる温度を意味し、「160kP温度(T160kP)」という用語は、ガラスの粘度が約160kP(約16kPa・s)となる温度を意味する。本明細書において使用される場合、「ジルコン破壊温度」または「Tbreakdown」という用語は、ガラスの処理および製造において耐火材料として一般に使用されるジルコンが破壊されてジルコニアおよびシリカを形成する温度を意味し、用語「ジルコン破壊粘度」は、Tbreakdownにおけるガラスの粘度を意味する。「35kP温度」または「T35kP」という用語は、ガラスまたはガラス溶融物が35,000ポアズ(P)(3,500Pa・s)、すなわち35キロポアズ(kP)(3.5kPa・s)の粘度を有する温度を意味する。
【0079】
圧縮応力(表面CSを含む)は、有限会社折原製作所(日本)製造のFSM-6000などの市販の機器を用いて表面応力計(FSM)によって測定される。表面応力測定は、ガラスの複屈折に関連する応力光係数(SOC)を正確に測定することに依拠している。このSOCは、それらの全体の内容が参照により本明細書に援用される“Standard Test Method for 測定 of Glass Stress-Optical Coefficient”と題されるASTM規格C770-16に記載のProcedure C(Glass Disc Method)により測定される。最大引張応力または中央張力(CT)の値は、当技術分野において周知の散乱光偏光器(SCALP)技術を用いて測定される。
【0080】
本明細書において使用される場合、圧縮深さ(DOC)は、本明細書に記載の化学強化アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品中の応力が圧縮から引張に変化する深さを意味する。イオン交換処理によって左右されるが、DOCはFSMまたは散乱光偏光器(SCALP)によって測定することができる。ガラス物品中の応力がカリウムイオンのガラス物品中への交換によって発生する場合は、DOCの測定にFSMが使用される。応力がナトリウムイオンのガラス物品中への交換によって発生する場合は、DOCの測定にSCALPが使用される。ガラス物品中の応力が、カリウムイオンおよびナトリウムイオンの両方のガラス中への交換によって発生する場合は、SCALPによってDOCが測定されるが、その理由は、ナトリウムの交換深さはDOCを示し、カリウムイオンの交換深さは圧縮応力の大きさの変化(圧縮から引張への応力の変化ではない)を示すと考えられるからであり、このようなガラス物品中のカリウムイオンの交換深さはFSMによって測定される。
【0081】
K+イオンの侵入深さ(「カリウムDOL」)は、イオン交換プロセスの結果としてのカリウム侵入深さを表しているので、DOCとは区別される。カリウムDOLは、典型的には本明細書に記載の物品のDOCよりも小さい。カリウムDOLは、CS測定に関して前述したように応力光係数(SOC)の正確な測定に依拠する、有限会社折原製作所(日本)製造の市販のFSM-6000表面応力計などの表面応力計を用いて測定される。
【0082】
一般に図面、特に
図1を参照するが、これらの図は、特定の実施形態を説明することが目的であり、本開示または添付のそれらの請求項の限定を意図するものではないことを理解されたい。これらの図面は、必ずしも縮尺通りではなく、図面の特定の特徴および特定の図は、明確さおよび簡潔さのために、縮尺を誇張して示されたり、概略的に示されたりすることがある。
【0083】
図1中に示される実施形態は、平坦平面状のシートまたは板としてガラス物品100を示しているが、ガラス物品は、3次元形状または非平面状の構成などの別の構成を有することができる。ガラス物品100は、厚さtを画定する第1の表面110と第2の表面112とを有する。1つ以上の実施形態(
図1中に示される実施形態など)では、ガラス物品は、厚さtを画定する第1の表面110と反対側の第2の表面112とを含むシートである。ガラス物品100は、第1の表面110から、ガラス物品100全体の中に層深さd
1まで延在する第1の圧縮層120を有する。
図1中に示される実施形態では、ガラス物品100は、第2の表面112から第2の層深さd
2まで延在する第2の圧縮層122も有する。ガラス物品100は、d
1からd
2まで延在する中央領域330も有する。中央領域130は、引張応力下または中央張力(CT)下にあり、それによって層120および122の圧縮応力と釣り合いが取られるか、またはその影響が打ち消される。第1および第2の圧縮層120、122の深さd
1、d
2によって、ガラス物品100の第1および第2の表面110、112への激しい衝撃によって生じる傷の伝播からガラス物品100が保護され、圧縮応力によって、第1および第2の圧縮層120、122の深さd
1、d
2を傷が通過する可能性が最小限になる。深さd1およびd2は、互いに等しい場合も互いに異なる場合もあり、圧縮層の圧縮深さ(DOC)と関連している。
【0084】
図2は、イオン交換されたガラス物品の一部の理論上の応力プロファイルを示している。
図2中に示される応力プロファイルは、表面における圧縮応力スパイクと、より深い拡散領域とを含む。
図2中に示されるように、応力プロファイルのニーにおける圧縮応力(CSk)は、応力プロファイルのスパイク部分と、応力プロファイルのより深い拡散領域との間の変わり目における圧縮応力である。DOCおよびカリウムDOLは
図9中にも示され、カリウムDOLは単にDOLとして示されている。
【0085】
強化した後に低度のたわみを示す非対称応力プロファイルを有するガラス物品が本明細書に記載される。非対称応力プロファイルによって、ガラス物品の表面は、各表面における主要な破壊形態に対処するための異なる強化特性を示すことができ、ガラス物品中の望ましくないたわみを最小限にすることもできる。
【0086】
一例として、消費者向け電子デバイス上のカバーガラスとして使用されるガラス物品は前面(露出面)、裏面、およびエッジ面を有する。使用中、カバーガラスは、前面、裏面、およびエッジ面の上に異なる使用応力が生じる。
【0087】
前面上の主要な破壊形態は、典型的には、深い傷が生じ、その深い傷が張力にさらされることによる破壊である。深い傷が引張応力層の深さまで延在する場合、またはガラス物品が曲げられることによって、この深い傷が張力にさらされる。前面上の主要な破壊形態は、発生した傷が張力にさらされるのを防止するために、深い圧縮深さによって対処することができる。
【0088】
裏面上の主要な破壊形態は、典型的には、あらかじめ存在する浅い傷への過大応力負荷である。この浅い傷は、通常10μmよりも浅く、ほとんどの場合5μmよりも浅い。この過大応力は、数百メガパスカル(MPa)の引張応力を超えることが多く、例えば約500MPaを超える。過大応力によって、使用中のガラス物品が曲がることがある。主要な裏面破壊形態は、約500MPaを超える圧縮応力および約8マイクロメートルを超えるスパイク深さを有するスパイクなどの裏面上の高圧縮応力スパイクによって対処することができる。
【0089】
カバーガラスのエッジ面は、ある用途では露出し、別の用途ではベゼルによって保護される。エッジ面は、比較的硬い表面上に落下する間に非常に大きな応力にさらされうる。したがって、高表面圧縮応力、および数マイクロメートルの深さにおける高圧縮応力は、カバーガラスのエッジ面から生じる破壊の可能性を軽減することもできる。
【0090】
前面および裏面の主要な破壊形態に対処する強化特性が異なるため。ガラス物品の厚さ全体にわたって非対称応力プロファイルを形成することによって異なる強化特性を付与することができ、これによって、前面および裏面の主要な破壊形態の少なくとも1つには十分に対処しない対称応力プロファイルと比較すると、改善された性能が得られる。非対称プロファイルは、より大きい圧縮深さ(DOC)および大きな深さにおいてより大きな応力を前面上に有することができ、より高い表面圧縮応力(CS)および表面の下最初の約5~10マイクロメートルにおいてより高い圧縮応力を裏面上に有することができる。カバーガラスのエッジは、より高い表面圧縮応力、および表面の下最初の約10マイクロメートルにおいてより大きな応力を有することもできる。
【0091】
非対称応力プロファイルによって、ガラス物品にたわみが生じることがあり、組立の場合に問題となり、組立中に応力が変化することもある、それによって使用中のガラス物品の強度に悪影響が生じることがある。ガラス物品の前面および裏面における所望の強化特性も得られる非対称応力プロファイルを適切に設計することによって、硬化または強化によって生じるたわみを無視できるレベルまで軽減可能な方法が本明細書に記載される。
【0092】
安定した機械的状態にあり、収縮もしくは膨張がなく、湾曲もしくはたわみがない強化または化学強化されたガラス物品は、力の釣り合いおよびトルク釣り合いを満たしている。力の釣り合いのためには、以下の式(1):
【0093】
【0094】
(式中、σは応力であり、xは厚さに沿ったガラス物品中の位置であり、ガラス物品の中央平面(中心)においてx=0である)で示されるように、絶対値で、厚さを横断して圧縮ゾーンにわたって積分された圧縮応力の合計が、厚さを横断して張力ゾーンにわたって積分された圧縮応力の合計に等しいことが必要である。これは、以下の式(2):
【0095】
【0096】
に示されるように、厚さにわたる応力の積分が0と等しくなると規定することと同等である。
【0097】
トルク釣り合いは、ガラス物品の応力プロファイルがたわみを誘発しないことを示している。トルク釣り合いのためには、以下の式(3):
【0098】
【0099】
に示されるように、厚さにわたる局所応力と局所的なアーム長さとの積の積分がゼロであることが必要である。式(3)中、xは、局所的な応力によって生じる単位深さ変化当たりの比トルクを計算するための局所的なアーム長さをさらに表している。
【0100】
xに関して対称である応力プロファイルでは、プロファイル誘発たわみが生じない。例えば、ガラス物品が溶融塩中に浸漬され、交換されて、同じ表面圧縮および同じ層深さが得られる平坦な試験片のイオン交換では、通常は物品全体でたわみが無視できる結果となる。
【0101】
応力プロファイルが非対称である場合、イオン交換の最中および後に力の釣り合いの式(2)を満たすことができるが、ゼロトルク条件が満たされない場合は、ガラス物品は、応力プロファイルによって誘発されるたわみが生じる。一般に、応力プロファイルの非対称性が高いほど、応力プロファイルによって誘発されるたわみが大きくなる。同時に、より大きな程度の非対称性を有する非対称プロファイルは、前面上のDOCおよび大きな圧縮深さにおける応力のより大幅な増加と、裏面上のより大きな圧縮応力との組合せが可能となることによって、破壊の可能性の減少に関してより大きな利点が得られる場合がある。
【0102】
この対立の解決策を見出すために、一般に非対称プロファイルは、以下の式(4):
【0103】
【0104】
により対称成分(σs(x))および反対称成分(σa(x))の2つの成分に分解することができ、式中、σs(x)は以下の式(5):
【0105】
【0106】
によって定義され、σa(x)は以下の式(6):
【0107】
【0108】
によって定義される。
【0109】
反対称成分は、出発点として対称プロファイルを用いて、前面および裏面の上の性質を、上記前面または裏面の特定の要求に向けて調節する役割を果たす。以下の式(7):
【0110】
【0111】
によって示されるように、反対称成分および対称成分の応力の絶対値の厚さにわたる積分を用いることによって、非対称の損傷の使用応力下の改善された機械的性能のための非対称プロファイルの非対称性能指数(AFOM)が定義される。
【0112】
AFOMが約0.05を超える、例えば約0.07を超える、約0.1を超える、またはそれを超える場合、応力プロファイルは実質的に非対称であると見なされる。さらに、(前面および裏面の上のそれぞれの主要な破壊形態に対して)ガラスの前面および裏面の両方の同時の強化を改善するために大きな利点が得られる実質的に非対称のプロファイルは、約0.2を超える、例えば約0.3を超える、約0.4を超える、約0.5を超える、約0.6を超える、またはそれを超えるAFOMを有することができる。
【0113】
応力プロファイルの対称成分は、式(3)中のトルクには寄与せず、プロファイル誘発たわみを引き起こさない。したがって、非対称応力プロファイルの導入に伴う全体的なたわみの問題は、反対称成分に関連し、これは、実質的に非対称のプロファイルの利点を得るために大きいことも望ましい。大きな反対称成分を有するにもかかわらず、プロファイルによって誘発される顕著なたわみを引き起こさない好ましい応力プロファイルは、後述のように定義することができる。反対称成分は全面的にたわみの発生の原因となるため、プロファイルによって誘発される顕著なたわみが生じない大きな反対称成分を有する非対称応力プロファイルは一般的に予期せぬものである。
【0114】
プロファイルの対称成分の曲げモーメントは、対称な区間内の反対称関数(xσ(x))の積分と同等であるため、ゼロである。したがって、以下の式(8):
【0115】
【0116】
で示されるように、ガラス物品の単位幅当たりの2次元曲げモーメントは全面的にプロファイルの反対称成分によるものである。
【0117】
完全に平坦なガラス物品の場合、反対称成分の曲げモーメントは0であり、このためには反対称プロファイル成分が、試料のそれぞれ半分において圧縮応力領域および引張応力領域の両方を有することが必要である。したがって、一実施形態では、応力プロファイルは、厚さのそれぞれ半分において圧縮応力および引張応力の両方の領域を有する反対称成分を有する。
【0118】
2次元モデルでの純曲げにおいては(曲げが1次元においてのみ可能となる)、以下の式(9):
【0119】
【0120】
に示されるように、曲げモーメント(M)によって曲率半径(ρ)が生じ、式中、Eは、パスカルの単位で表すことができるガラス物品のヤング率であり、Aは、m2の単位で表すことができる曲げ下の物品の断面積であり、Iは、m4の単位で表すことができる慣性モーメントであり、このため曲率半径はメートルの単位で表される。
【0121】
幅(w)および厚さ(t)を有するシート形態のガラス物品の2次元曲げの説明的な場合では、式(9)を評価すると、以下の式(10):
【0122】
【0123】
のような慣性モーメント(I)が求められる。
【0124】
したがって、曲率半径(ρ)と曲げモーメント(M)との間の関係は以下の式(11):
【0125】
【0126】
で表される。
【0127】
100mmの長さ(L)を有するシート形態のガラス物品は、望ましくは長さ(L)にわたって測定した反り高さ(H)が0.1mmを超えない場合があり、望ましくは12.5m以上の曲率半径を有し、以下の式(12):
【0128】
【0129】
によってさらに示される関係を有する。幾つかの実施形態では、Lは、ガラス物品の最大寸法として選択することができる。別の実施形態では、Lは、ガラス物品のエッジに沿った寸法として選択することができる。
【0130】
実際には、ガラス物品の反りは、単純な球面または円筒形ではなく複雑な形状を有する場合があり、実質的により小さな曲率半径が局所的に許容される場合がある。例えば、非対称応力プロファイルによって誘発される最大許容曲率半径は1m(1,000mm)と等しくてよい。幾つかの実施形態では、エッジの3mm以内のガラス物品の周辺領域は、エッジに向かって単調減少する厚さを有することができ、これを2.5D形状と呼ぶことができる。幾つかの実施形態では、例えばガラスシートの中央平面に対してエッジ形状が非対称である場合は、このような2.5Dエッジの存在が、非対称エッジ形状と応力プロファイルとの相互作用によって誘発される無視できない反りを生じさせることがある。このようなプロファイルによって誘発される反りの主要成分は、ガラスシートの内側の非対称応力プロファイルを用いることによって導入される反りを部分的または実質的に打ち消すように選択することができる。このような実施形態では、0.5mのさらに小さい曲率半径に相当する曲げモーメント(M)を有する非対称プロファイルが許容されうる。
【0131】
実際には、一部のガラス物品は、設計された曲率を有することができ、ガラス物品の曲率半径を単に測定しても、非対称応力プロファイルによって誘発される曲率を表さない場合がある。非対称応力プロファイルの導入に起因する曲率は、応力プロファイルの導入前のガラス物品中に存在する曲率に加えることができる。応力プロファイルの導入前にガラス物品中に存在する曲率は、応力プロファイルの導入後に実質的にたわみが存在しないガラス物品の曲率半径(κ)の逆数となり、以下の式(13)で、応力プロファイルによって誘発される曲率半径によって打ち消されうる曲率半径の逆数が得られる:
【0132】
【0133】
特に2.5Dまたは3Dの形状を有するガラス物品が使用される場合に、2m-1以下の対応する曲率を有する非対称応力プロファイルが有利となる。さらに、組立を容易にし、プロセス歩留まりを高めるため、応力プロファイルによって誘発される曲率は、1m-1以下、例えば0.5m-1以下、または0.1m-1以下であることが好ましい。
【0134】
2次元曲げモデルによって、応力プロファイルによって誘発される曲率のこれらの好ましい範囲を、応力プロファイルの曲げモーメントの概算範囲と関連させることができる。シートの実際のたわみは、ガラス物品中の応力がシートの面内の両方の寸法中に存在する場合など、1次元でのみ曲げを有する説明的2次元モデルによって計算されるたわみを超えることが起こり得る。しかし、この説明的モデルによって、好ましい応力プロファイルパラメータの範囲を比較的簡単に定義することができる。
【0135】
式(11)に基づくと、シート形態のガラス物品に曲率半径(ρ)を発生させる曲げモーメントは、以下の式(14):
【0136】
【0137】
で表すことができる。
【0138】
したがって、曲率半径(ρ)または逆曲率半径(κ)が得られる単位幅当たりの曲げモーメントは、以下の式(15):
【0139】
【0140】
で表される。
【0141】
さらに、反りが最小限となる場合に最大となる反り性能指数(WFOM)が定義される。簡単にするため、2次元曲げモデルに関するWFOMが定義される。非対称応力プロファイルの曲げモーメントのWFOMは、以下の式(16):
【0142】
【0143】
に示されるように、シート形態のガラス物品の1次元曲げにおける単位幅曲げモーメントを生じさせる非対称応力プロファイル(ρasym)によって得られる曲率半径と関連付けることができる。
【0144】
幾つかの実施形態では、WFOMは約0.5mを超え、例えば約1mを超え、約2mを超え、約10mを超え、またはそれを超える。幾つかの実施形態では、応力プロファイルによって生じる曲率半径の変化をWFOMの直接推定値として使用することができる。
【0145】
式(16)をさらに評価することによって、単位幅当たりの曲げモーメントは、以下の式(17):
【0146】
【0147】
に示されるように定義することができる。
【0148】
応力プロファイルによって誘発される反りの理想的な回避は、エッジ硬化が無視される場合には、WFOMが無限大となるときに得られる。したがって、反りが最小限となる理想的な条件は、以下の式(18):
【0149】
【0150】
を満たす場合である。
【0151】
別の言い方では、応力プロファイルの反対称成分は、中央平面のいずれかの側でモーメントの釣り合いが取られる。反りおよび作業の複雑さを最小限にするため、実質的に内部で釣り合いのとれた反対称成分を有する非対称プロファイルは、以下の式(19):
【0152】
【0153】
で示される利点を有する。式中、WSFは反り抑制因子である。幾つかの実施形態では、WSFは約0.3未満、例えば約0.2未満、約0.1未満、約0.05未満、またはそれ未満である。
【0154】
より厚いガラス物品は、たわみを発生させるためにより大きなモーメントが必要なことを認めると、式(17)を用いることで、異なる厚さで同様の低レベルのたわみを発生させる好ましい非対称応力プロファイルの範囲を画定することができる。厚さに依存しない無次元のたわみ傾向(Warping Tendency)(WT)は、以下の式(20):
【0155】
【0156】
によって定義される。
【0157】
幾つかの実施形態では、WTは約
t/12未満であり、ガラス物品の厚さ(t)はメートルの単位で示される。幾つかの実施形態では、WTは約t/24未満、例えば約t/48未満、約t/240未満、またはそれ未満となる。
【0158】
上記概念をさらに説明するため、代表的な非対称応力プロファイルを
図3中に示されている。
図3中に示される例では、ガラス物品の厚さは0.5mmであるが、プロファイルは、横方向であらゆる厚さに拡大縮小が可能である。プロファイル全体にゼロでない定数が乗じられる限りは、応力プロファイルは、縦方向であらゆる応力にも拡大縮小が可能である。
図3は、非対称応力プロファイル200の対称成分210および反対称成分220への分解も明確に説明している。非対称応力プロファイル200は、前側圧縮深さ(DOC
f=120マイクロメートル)が裏面圧縮深さ(DOC
b=37マイクロメートル)と実質的に異なり、裏側圧縮強度(CS
b=874MPa)が前側圧縮応力(CS
f=114MPa)よりも実質的に高い。非対称応力プロファイル200を有するガラス物品は、応力プロファイルによって誘発されるたわみを有さず、WFOMは無限大に近づく。前側カリウム層深さ(DOL
f=200m、tの40%)は、裏側カリウム層深さ(DOL
b=40μm、tの8%)の5倍である。
図3の非対称応力プロファイル200のAFOMは0.64であり、WFOMは実質的に無限大(例えば、約10
17mのオーダー)である。
【0159】
非対称応力プロファイル200は、ベースガラス組成中にNa2Oを含みK2Oを実質的に含まないアルカリアルミノケイ酸塩ガラス中のKをNaにイオン交換することによって得ることができる。前面は、NaNO3およびKNO3を有しNaNO3濃度がKNO3濃度よりも高い浴中で高温(450~460℃)において交換することができる。例えば、この浴は約80重量%のNaNO3および約20重量%KNO3を含むことができる。一実施形態では、前面は、ガラスの前面上にKNO3をスプレーコーティングして、次に、440℃を超える温度で長時間(10~48時間)イオン交換することによって、イオン交換することができ、裏側上にはKNO3は使用されない。別の一実施形態では、スピンオンガラスまたはスパッタリングされたSiO2などのアルカリの侵入に抵抗するアルカリフリーのコーティングを用いて、前面のイオン交換中に、裏面のイオン交換が阻止される。前面のイオン交換後、裏面は、純KNO3中420℃で約2時間のイオン交換が行われて、(FSM-6000によって測定して)約40μmのカリウムDOLが得られ、この間、前側では実質的なイオン交換は行われない。前面の実質的なイオン交換を防止するために、前側上での阻止は、コーティングを通過するアルカリの制限された流れを可能にする非常に薄いか、少量のアルカリを有するかのいずれかの障壁層の使用などによる部分的なものであってよいし、または実質的に完全なものであってよい。一実施形態では、障壁層は、約2モル%未満のアルカリ酸化物、例えば約1.5モル%未満のアルカリ酸化物を有するスピンオンガラスであってよい。比較的低温および短時間であるため、この第2のステップ中の前側上のプロファイルの変化はごくわずかである。
【0160】
図3中に示されるように、前面上の圧縮深さは非常に大きく、厚さの約24%である。非対称応力プロファイルの利点の前面上のこの深い圧縮深さ。非対称応力プロファイルは比較的狭い張力ゾーンおよび制限された中央張力を有し、これによってガラス物品が壊れにくくなる。非対称応力プロファイル200の別の利点は、裏面から10μmの深さにおける応力が非常に高く600MPaを超え、裏面から5μmの深さにおける応力が700MPaを超えることである。比較として、ガラス物品中にあらかじめ存在する対称二重イオン交換(DIOX)応力プロファイルの5μmにおける応力は450MPa未満、または350MPa未満である。非対称応力プロファイル200の別の利点は、前面からの大きな深さ(50μm、tの10%)における実質的なレベルの圧縮応力(66MPa)、およびさらに大きな深さ(75μm、tの5%)における実質的なレベルの圧縮応力(43MPa)である。
【0161】
第2の代表的な非対称応力プロファイル300を
図4中に示す。この非対称応力プロファイルは、表面圧縮スパイクの底部と前面の圧縮深さ(DOC)との間に延在する深い圧縮応力層と、1ステップイオン交換プロファイルの特徴である裏面応力プロファイルとを含む。非対称応力プロファイル300は、マルチステップイオン交換の数値シミュレーションによって選択され、力の釣り合いが得られるように選択された。
【0162】
前面の深いKイオン交換、引き続く熱処理、次に濃Kの裏面イオン交換、次に、圧縮応力スパイクを形成するための濃Kの両面の短いイオン交換によって、厚さ0.5mmのガラス物品中に非対称応力プロファイル300を得た。前面は、38±3重量%のNaNO3を有し、残りがKNO3である浴中450℃において約12時間イオン交換すると、約300MPaの表面圧縮応力が得られ、FSMで求められるDOLは約125μmであった。次に、試料に対して450℃で約4時間の熱処理を行うと、前面上に半釣鐘型のプロファイルが得られ、前面CSは約150~170MPaまで低下した。次のステップでは、裏面を、99~100重量%のKNO3および0~1重量%のNaNO3を含む浴中420℃において約2時間イオン交換した。同時に、前面では、関連する熱サイクルのためにさらなる拡散が起こり、前面CSは約140MPaまでさらに低下した。最後に、ガラス物品全体を0~1重量%のNaNO3および99~100重量%のKNO3を含む390℃の浴中に約3~6分間浸漬して、前面上に浅い圧縮応力スパイクを形成し、同時に裏面DOLは少し増加した。幾つかの実施形態では、より長いスパイク時間を使用し、より深い圧縮応力スパイクを用いる場合に平坦性の維持を促進するために、最初の前面イオン交換の後の熱処理ステップ時間も増加させることなどによって、より深い前面スパイクも実現可能である。
【0163】
図4中には対称応力プロファイル330も示している。対称応力プロファイル330は、非対称プロファイルの前面と同じイオン交換および熱処理ステップをガラス物品全体(前面および裏面の両方)に行うことによって得られた。
図4中に示されるように、非対称プロファイルを有する試料の裏面およびエッジは、約830MPaの高表面圧縮応力、FSMで求められる約47μmのDOL、および41.8μmの裏面DOCを有する層によって保護される。裏面上の深さの関数としての圧縮応力の減少率は、高CSにもかかわらず、比較的低く29MPa/μmであり、5μmの深さにおいて約650MPaを超え、10μmの深さにおいて約500MPaを超える高圧縮応力が可能となる。裏面の下のこの高レベルの圧縮応力によって、ガラス物品の裏面およびエッジは、深さ約10μm未満などの比較的浅い傷によって開始する破壊に対して非常に強くなる。この非対称応力プロファイル300の特徴によって、対称プロファイル330を有するガラス物品よりも、過大応力による破壊に対してガラス物品がより十分に保護される。非対称応力プロファイル300の前面は、対称応力プロファイル330よりも4%高い前面DOCと、圧縮ゾーン全体にわたって約8MPa高い圧縮応力とを有する。これは、前面スパイクの底部の深さ(約10μm)において圧縮応力が6%増加し、前面DOCまでの大きい深さにおいて圧縮応力の増加のパーセント値が徐々に大きくなることを示している。
【0164】
モーメントの釣り合いが取れた非対称応力プロファイル300の対称成分310および反対称成分320を
図5中に示している。式(7)から計算される非対称応力プロファイル300のAFOMは0.41である。この特定の数値例では、単位幅当たりの曲げモーメントM
uwは-3.35e
-4mm
2MPaと計算され、ヤング率は68GPa(68,000MPa)であり、式(16)よりWFOMは:
【0165】
となる。
【0166】
非対称応力プロファイル300は、無次元たわみ傾向:
【0167】
を有する。
【0168】
数値シミュレーションを用いて、
図6中に非対称応力プロファイル400を示している。この非対称応力プロファイルは、AFOMに対して別個の寄与がある追加の補助反対称成分を含む。この補助反対称成分は、イオン交換プロセス前のガラスシートの形状にたわみを付与することによって実現され、付与されるたわみは、ガラス物品の最終的な所望の形状に対して測定される。例えば、シートの最終的な所望の形状が実質的に平坦である(例えば、数メートルを超え、理想的には10または15メートルを超える)場合は、式(8)中に記載の一次モーメントが、ガラス物品が平坦になるように制約を受ける場合にイオン交換によって誘発される応力の反対称成分の一次モーメントと、同じ大きさおよび反対の符号を有する反対称成分が得られるように、イオン交換前の試料にたわみを生じさせることによって、補助反対称成分が得られる。同様に、付与されたイオン交換前のたわみは、得られるとすればイオン交換単独により非対称プロファイルが得られ形状を変化させることが可能なたわみと、符号が逆であり、大きさはほぼ同じである。
【0169】
応力プロファイルの補助反対称成分は、500℃を超える温度(例えば、560℃で5時間)で球面曲率を有する金型中で熱処理することによって、ガラス物品に球面曲率を付与することによって得られ、これによって物品の前面は凹面曲率を有する。応力プロファイルの前面は、深いイオン交換(FSM-6000によって測定して、カリウムDOL=125μm)、続いて、熱処理、裏面の高濃度イオン交換と同時に行われる第2の熱処理、次に両側の濃イオン交換を用いて得られ、前面上に6μmの深さのスパイクが形成される。裏面応力プロファイルは、(FSM-DOLによって測定して)30μmの全カリウムDOL、および847MPaの高表面CSを有する。対称応力プロファイル430は、非対称応力プロファイル試料の前面と同じ条件下の両側イオン交換、次に、非対称応力プロファイル試料の前面の2つの熱処理と同じ全拡散を有する熱処理、および最後に6μmのDOLを有する同じスパイクを用いて得られた。対称応力プロファイル430と比較すると、非対称応力プロファイル400は、裏面上に実質的により深い高圧縮領域(>400MPa)、実質的により大きい前面圧縮深さ(13μmまたは13%の増加)、および圧縮応力スパイクとDOCとの間の前面圧縮ゾーンにおけるより高い圧縮応力(19MPaまたは>14%の増加)を有する。この増加の結果として、前面上の圧縮応力スパイクの底部におけるニー圧縮応力(CSk)は、対称応力プロファイル430の約131MPaから、非対称応力プロファイル400の約150MPaまで増加する。
【0170】
図7は、イオン交換プロセス中の前面の規格化された濃度プロファイルの変化を示している。規格化された濃度が1であり、応力が規格化された濃度の局所的な値に比例すると仮定される場合、イオン交換に誘発される応力が、その部分がイオン交換後に平坦な形状に制約される場合に、1,000MPaとなるように、この例では濃度が規格化されることを留意されたい。濃度プロファイルは、内部拡散するイオンの特定の組に制限されることはない。一実施形態では、濃度プロファイルは、ガラスからのナトリウムイオンをカリウムイオンと交換することによって得ることができる。
図7中に示されるように、前面イオン交換ステップの後、前面応力プロファイル402は、C=0.403で前面から延在し、125μmのFSM DOLを有する。一連の熱処理ステップの後の前面の応力プロファイル404は、C=0.235において前面から延在し、両側の圧縮応力スパイクを加えた後の応力プロファイル406も
図7中に示される。裏側で得られる濃度プロファイルは示されていない。
【0171】
図4の非対称プロファイル400を、試料に予備たわみを付与する(pre-warping)ことによって得られる補助反対称成分440とともに
図8中に示している。
図9は、非対称プロファイル400の対称成分410および反対称成分420を示している。
図3~9中に示される代表的な応力プロファイルは、以下の実施例1に記載のガラス組成の場合に実現可能である。
【0172】
ガラス物品の反り高さは、プロフィロメーターまたはフラットマスターシステム(flatmaster system)によって測定することができる。反り高さは、ガラス物品の最大寸法に沿って測定して平坦面からガラス物品が延在する高さである。例えば、正方形の物品の最大寸法は、ガラス物品の主面に沿ってガラス物品の2つのコーナーの間に延在する対角線であってよい。幾つかの実施形態では、ガラス物品は、ガラス物品の最大寸法の1%未満、例えばガラス物品の最大寸法の0.1%未満の反り高さを有する。
【0173】
幾つかの実施形態では、ガラス物品は、少なくとも約1.5:1、例えば少なくとも約2:1、約2.5:1、約3:1、約3.2:1、またはそれを超える前面圧縮深さと裏面圧縮深さと比を有することができる。幾つかの実施形態では、ガラス物品は、少なくとも約3:1、例えば少なくとも約3.5:1、約4:1、約4.5:1、約5:1、またはそれを超える前面カリウム層深さ対裏面カリウム層深さを有することができる。幾つかの実施形態では、ガラス物品は、約1:3未満、例えば約1:4未満、約1:5未満、約1:6未満、約1:7未満、またはそれ未満の前面最大圧縮応力と裏面最大圧縮応力との比を有することができる。
【0174】
別の一実施形態では、ガラス物品上にコーティング層を配置することによって、補助反対称成分が得られる。このコーティングは、酸窒化アルミニウム(AlON)などの高モジュラスの硬質コーティングであってよい。コーティングは、イオン交換の終了後のガラス物品の前(外)面上に塗布することができる。コーティングの塗布前、ガラス物品の応力プロファイルは、
図4中に示される非対称応力プロファイル300と類似していてよいが、裏面上でより大きなDOLおよび/またはCS、または前面上でより小さなCSおよび/またはDOCを有することができ、それによって、ガラス物品は、DOCがより高い表面上で凹形のたわみが生じる。次にコーティングの堆積条件は、圧縮状態でフィルムが形成されるような方法で選択される。一実施形態では、コーティング厚さは約2μmであってよく、フィルムの圧縮応力は約100MPa~約2,000MPaの間であってよい。コーティングの塗布によって、小さな追加の対称成分および反対称補助的成分の両方が、イオン交換されたガラス物品の応力プロファイルに付与される。コーティングによって付与される補助反対称成分が、イオン交換によって誘発される応力プロファイルの反対称成分と一緒になることで、硬質コーティングの塗布前のたわみよりもガラス物品のたわみが軽減される。
【0175】
幾つかの実施形態では、ガラス物品中の非対称応力プロファイルは、NaNO3およびKNO3の混合物を含む浴中に浸漬することによってNa含有ガラスの対称イオン交換を最初に行うことによって得られ、ここでガラス物品の表面上のNaが少なくとも部分的にKで置換されうる。一実施形態では、ガラス物品の最外の2μmにおいて約40%のNaがKで置換される。次に、任意選択の熱処理ステップを、好ましくは約300℃~約500℃の間で行うことで、ガラス中のK2O分布の深さを増加させることができ、したがってDOCを増加させることができる。一実施形態では、次にガラス物品を、ほとんどがKNO3であり典型的には約5重量%未満のNaNO3を有する浴中で短時間イオン交換することで、最外の2μmにおいて80%を超えるNaがKで置換されるようにK2O濃度の表面スパイクが発生する。このスパイクは好ましくは約5~25μmの範囲内の深さを有することができ、その上の圧縮応力は、スパイクを加える前の圧縮応力よりも実質的に高くなる。引き続くステップでは、前面上のスパイクの一部は、研磨またはエッチングなどによって除去することができ、一方、ガラス物品の裏(内)面上のスパイクは、無傷であるか、または実質的により少ない研磨が行われる。この結果得られる応力プロファイルは、非対称となり、前面が凹形となる方向で基材にたわみが生じる。次に、コーティングが圧縮される条件下で、コーティング(AlONなど)が外面上に堆積されると、コーティングを有するガラス物品が平坦になる。
【0176】
別の一実施形態では、最初の対称イオン交換および任意選択の熱処理の後に、物品の裏面がイオン交換されてスパイクが形成される、コーティングされたガラス物品が形成される。スパイク形成するために、予熱したガラス物品上にKNO3水溶液をスプレーコーティングすることによってKNO3のコーティングを塗布することができ、次に、ガラス物品を、好ましくは約300℃を超えるまたは約360℃を超える温度に、約3分~10時間の間の時間加熱することによって、イオン交換が行われる。裏面上の所望のスパイク深さは好ましくは約3μm~約25μmの範囲内である。次に、裏面スパイクの場合と同じコーティングプロセスを用いることによって、または大部分もしくは完全にKNO3の浴中の短い両側イオン交換によってのいずれかで、前面上により浅いスパイクが形成される。前面スパイクは約3μm~15μmの間の範囲の深さを有することができ、一方、裏面スパイクはより大きな深さを有する。この応力プロファイルの非対称性によって、前面が凹形になるようにガラス物品に反りが生じる。次に、圧縮状態となるような条件を用いて、前面にコーティングが塗布され、コーティングされたカバーガラスは実質的に平坦となる。
【0177】
幾つかの実施形態では、ガラス物品の前面および裏面の両方の応力プロファイルは、中程度の圧縮応力の深い部分と、高圧縮応力の比較的浅い部分とを含む。濃度プロファイルは、2つの表面を拡散し、それぞれの表面がプロファイルの深い部分の特徴的な深い拡散距離および浅い部分の浅い(スパイク)拡散距離を有する拡散方程式の誤差関数(erfc)に基づく解の線形重ね合わせとして適切に概算することができる。この種類のプロファイルは、深い部分および浅い(スパイク)部分の別個のステップを用いることによってNa含有ガラス中で得ることができる。深い部分は、長いイオン交換時間(時間のオーダー)および/または400℃を超える高いイオン交換温度を用いることによって得ることができる。スパイクは、短いイオン交換時間(分から時間のオーダー)、および約300℃~約400℃の間のより低いイオン交換温度を用いて得ることができる。これらの種類のプロファイルは、プロファイルの深部成分がLiイオンをNaイオンまたはAgイオンまたはその両方で交換することによって得られ、スパイクがKをLi、Na、またはAgのいずれかと交換することによって得られるLiを含むまたはLiおよびNaを含むガラス中でも得ることができる。
【0178】
Li含有ガラスの代表的な方法の1つでは、裏面は最初に、数マイクロメートルから約20μmの深さでKに富むスパイクが形成されるように、KNO3のコーティングおよび熱処理が行われる。次にこの基材を洗浄し、KNO3およびNaNO3の両方を含む浴中でイオン交換を行うと、LiがNaで交換されることによってプロファイルの深部成分が形成され、前面および裏面の両方の上で浅いスパイクが形成され、前面上のスパイクは、裏面上に先に形成されたKスパイクのため、裏面上のスパイクよりも浅い。同時に、深いNaプロファイルが2つの表面から交換され、対応するスパイク深さを超える深さにおいて、同じ拡散距離を有するが、同じ濃度および同じレベルの圧縮応力は有さないように配置することができる。プロファイルの深部成分の非対称性と、スパイクの非対称性とは、AFOMが増加するが、応力プロファイルのWFOMは減少するようにともに選択することができる。
【0179】
応力プロファイルの深部成分およびスパイク成分を考慮すると、式(8)から以下の式(21):
【0180】
【0181】
を得ることができ、式中、tは厚さであり、zdeepは深部プロファイルの拡散距離であり(この例では両側から等しいと仮定される)、σb
deepは裏面応力への裏面深部成分の寄与であり、σf
deepは前面応力への前面深部成分の寄与であり、Eはガラス物品のヤング率であり、ΔCSspは表面圧縮応力へのスパイクの寄与であり(この例ではこの寄与は前面および裏面から等しいと仮定される)、Zb
spおよびZf
spは、それぞれ裏面および前面の上のスパイクの拡散距離である。
【0182】
式(21)に基づくと、WFOMは以下の式(22):
【0183】
【0184】
によって求められる。
【0185】
FSM-6000装置を用いてerfcの形状のスパイクが測定される処理される場合、その応力測定ソフトウェアはスパイクの線形プロファイルを仮定している。この場合、スパイクに限定される光学モードのみ(スパースモード)が対応するスパイク「層深さ」、すなわちDOL
spの計算に含まれる場合、後者は約1.38z
spと等しくなる。したがって、ガラス物品の前面上では
【0186】
【0187】
である。
【0188】
さらに、この二重の特徴の非対称でスパイクを有するプロファイルのパラメータに反りがどのように関連するかをより明確に示すのに役立つ、より単純な式を得るために、わずかにより粗い近似を使用することができ、通常は2%~3%の範囲内の精度となり、モデルが単に近似である場合には適切となる(実際のプロファイルは厳密にerfcの形状となることはまれである)。z
deep<0.6tの場合、関係
【0189】
【0190】
を1で置き換えることができる。z
deep<0.5tの場合、関係
【0191】
【0192】
を1で置き換えることができる。z
deep=0.5tの場合、前面および裏面のそれぞれでは、表面濃度の0.157が中央に寄与し、これによって表面濃度の0.31の中央濃度が得られることに留意されたい。通常、
【0193】
(厚さ400μmのガラス物品の場合)であり、厚さ800μmのガラス物品の場合
【0194】
【0195】
と比較して無視することができるか、または単に平均値の0.022を代入して、最後の丸括弧内の式全体を1.15に丸めることができる。次に、より単純な式が得られ、以下の式(23):
【0196】
【0197】
で表される。
【0198】
【0199】
が選択される場合(その場合、中央濃度は表面濃度の15.5%となり、それぞれの側から7.7%の寄与となる)、以下の式(24):
【0200】
【0201】
が得られる。
【0202】
さらに、スパイクがFSMで測定されたDOLspに関して表される場合、DOLsp=1.3824*zspの関係を用いると、以下の式(25):
【0203】
【0204】
【0205】
である。
【0206】
たわみを回避する方法の1つは、波括弧内の式の値が0に近づくことが必要である。例えば、以下の式(26):
【0207】
【0208】
が要求されることで、補助深部プロファイルの非対称性効果は、スパイクの非対称性の反作用効果によって少なくとも10分の1に減少することが保証される。上記式から以下の式(27):
【0209】
【0210】
が得られる。
【0211】
曲率の制限が厳密ではない場合は、以下の式(28):
【0212】
【0213】
によって得られるより制限の少ない関係を使用することができ、次にこれより以下の式(29):
【0214】
【0215】
が得られる。
【0216】
ほとんどの場合、以下の式(30):
【0217】
【0218】
によって得られる中間の制限が適切となる。
【0219】
本明細書に記載の応力プロファイルの非対称性は、ガラス物品中の基本濃度と比較した場合の、基材中のイオンの濃度プロファイルに基づいて特徴付けることもでき、ここでイオン交換の最中または後の応力緩和は無視できるか、または中程度である。ガラス物品中の位置(x)の関数としての濃度プロファイルC0(x)は以下の式(31):
【0220】
【0221】
で与えられる。
【0222】
KがLiフリーガラス中のNaと交換される場合、K濃度のみ考慮が必要となる。この意味では、厚さ全体にわたるKの最低濃度に対してゼロオフセットK濃度プロファイルC0(x)を求めることができ、次にこのプロファイルは以下の式(32):
【0223】
【0224】
で与えられる対称成分(Cs(x))と、以下の式(33):
【0225】
【0226】
で与えられる反対称成分(Ca(x))とに分解することができる。
【0227】
応力プロファイルに関して前述した同じAFOMの定義を、この定義中のσsおよびσa濃度プロファイルの対称成分および反対称成分で置き換えることによって、濃度プロファイルの場合に使用することができる。ゼロオフセットプロファイルC0(x)は、全ての点xにおいて非負となり得るが、ゼロオフセット濃度プロファイルの対称成分および反対称成分は、厚さ全体にわたって非負である必要はないことに留意されたい。濃度プロファイルに関するAFOMは以下の式(34):
【0228】
【0229】
で与えられる。
【0230】
以下の式(35):
【0231】
【0232】
(式中、CNa(x)およびCK(x)はそれぞれ、位置の関数としてのNaおよびKの濃度プロファイルを意味する)
によりゼロオフセット濃度を定義することによって、ゼロオフセット濃度プロファイル、ならびに対称濃度成分および反対称濃度成分に関する同じ定義をLi含有ガラスに使用することができる。
【0233】
カリウムCK(x)の項に掛けられる係数2は、Liイオンを置換するNaイオンと比較して、カリウムイオンは、Li含有ガラス中のLiイオンを置換する場合に約2倍の応力が得られるという観察を反映している。したがって、本明細書に記載のガラス物品は、0.05を超える、例えば0.07を超える、0.1を超える、0.2を超える、またはそれを超えるAFOMを有するゼロオフセット濃度プロファイルを含むことができる。ガラス物品の前側および裏側の信頼性の問題により良く対処する最も重要な利点を有する濃度プロファイルは、0.3またはさらには0.4を超えるAFOMを有することができる。
【0234】
ガラス物品の応力プロファイルの測定方法は、ガラス物品の組成に基づいて変化しうる。幾つかの実施形態では、カリウムとナトリウムのイオン交換によってLiフリーガラス中に得られる応力プロファイルで、応力プロファイルを抽出するための好ましい方法は、カリウム濃度がガラス基材の両側からの深さの単調減少関数となる場合のIWKB抽出方法である。このIWKB方法によって、深さにともなうK濃度のさらなる減少が無視できるためにプロファイルが実質的に変化しなくなる深さまでのプロファイルが抽出される。次に、基材の両側から抽出されるプロファイルの最も深い部分を一定応力の直線と接続することができ、その一定応力の線の応力レベルは、張力ゾーンにわたる応力の積分が、前側および裏側の圧縮ゾーンにわたる応力の積分に等しくなるように微調整することができる。その後、全体のプロファイルは完全に回復し、力の釣り合いが取れ、AFOMおよびWFOMの計算は比較的正確である。AFOMおよびWFOMの実質的な誤差を回避するため、TM波およびTE波の結合スペクトル(FSMスペクトル)が、実質的なオフセット(測定器の偏光子のフリンジまたはウェッジの傾斜によって生じるものなど)なしに抽出されることが重要である。
【0235】
一般に、応力緩和が比較的小さい場合、KとNaのイオン交換によって得られるLiフリーガラス中の応力プロファイルは、K濃度分布と直接関連し、応力プロファイルの対称成分および反対称成分を得るための技術をK分布に直接適用することができる。最初に、厚さ全体での最低K濃度を、全体のKプロファイルから引くことができ、次に残りのKプロファイルは最低濃度が0となる。次にこれを対称成分と反対称成分とに分解することができ、同じ方法でAFOMを計算することができ、反対称応力成分および対称応力成分を積分する代わりに、K濃度プロファイルの反対称応力成分および対称応力成分の絶対値が積分され、それらの積分の比がAFOMとして採用される。あるいは、それぞれ1モル%のK2Oの場合、60±10MPaの応力が得られると仮定することができ、ここで、より大きな値(例えば、70MPa/モル%)はアニールされたガラスに対応し、中間の値(60~65MPa/モル%)は溶融シートガラスに対応し、より小さな(50~60MPa/モル%)は中程度で許容できるレベルの応力緩和の場合に対応する。最低値0にシフトさせたK2O濃度分布は応力分布(最低値は0)に変換され、負の応力の積分が正の応力の積分と等しくなるまで一定応力値を引くことによって、力の釣り合いを取ることができる。最後に、このプロファイルを対称成分と反対称成分とに分解することができ、AFOMを計算することができる。さらに、このようにして得られた応力プロファイルを用いて、WFOMおよびたわみ傾向を計算することもできる。
【0236】
プロファイルのAFOMおよびWFOMを評価するために濃度を用いる方法は、NaおよびK、Naのみ、またはKのみで強化されたLi含有ガラスに拡張することができる。特に、K2OプロファイルおよびNa2Oプロファイルは、GDOES(グロー放電発光分光法)またはEMP(電子マイクロプローブ)、または当技術分野において周知の別の分析方法によって抽出することができる。濃度プロファイルの変化の遅い部分は、多くの場合でノイズがより多いEMPの場合は、実質的にノイズを除去すべきである。次に、最低値が0のプロファイルを得るために、その個別の化学種の全体の空間分布から各プロファイルの最低濃度が引かれる。次に各1モル%のNa2Oは60±10MPaの応力で置き換えられ、一方、各1モル%のK2Oは120±20MPaの応力で置き換えられ、ここで、より大きな値は、アニールされたガラス、またはガラスシートの中央平面でNa2Oの2倍以上のモル濃度のLi2Oを有するガラスに対応し、中間の値は、フュージョンドローされたガラス、および基材の中央平面でほぼ同じモル濃度のLi2OおよびNa2Oを有するガラス、またはNa2OがLi2Oよりも高い場合に適用される。最後に、この範囲の下半分は、中程度のレベルの応力緩和が存在するガラスに適用可能である。この変換によって、Na2OおよびK2Oのプロファイルに対応する応力成分の和から、最小応力が0の応力プロファイルが得られる。最後に、このプロファイルは力が釣り合うようにシフトさせることができ、その対称成分および反対称成分を計算することができる。プロファイルの反対称部分を計算するためには、力の釣り合いの適用は必要なステップではないことに留意されたい(例えば、力の釣り合いの適用は任意である)。
【0237】
プリズム結合測定を用いることによる化学強化Li含有ガラスのCSkの抽出方法は、非対称プロファイルの性質の評価に使用することもできる。FSM-6000または類似の測定器においてプリズム結合スペクトルからCSkを正確に評価するために、波長は、上部(TM)および下部(TE)スペクトルが、臨界角の位置の測定のための「スイートスポット」となるような波長である必要があることに留意されたい。Na塩およびK塩の両方を有する混合浴中で強化されたLi含有ガラスの場合、プリズム結合方法によって得られるモードスペクトルでは、表面CSおよび比較的浅いカリウムスパイクのDOL、ならびにカリウムスパイクの底部における「圧縮ニー応力」CSkに関する情報のみが得られる。Naプロファイルが十分深く、そのため両面から延在するNaプロファイルの空間的に変動する部分が、一定Na濃度のあまり大きな領域を有さずに基材の内側に接続される場合(例えば、基材の中央平面付近の一定Na濃度の任意の領域が、基材の厚さの約20%未満、好ましくは約15%未満の幅を有する)、次にカバーガラスシートの前側と裏側との間の表面CS、スパイクDOL、およびCSkの測定パラメータの差を使用して、物品が、本開示において規定されるように高AFOMおよび高WFOMによって特徴付けられる範囲内となるかどうかを決定することができる。さらに、中央張力(CT)は、散乱光偏光計(SCALP)によって測定することができ、プロファイルの異なるパラメータ間の整合性を検証するために必要に応じて使用することができる。
【0238】
非対称プロファイルの前側および裏側の間の差を抽出するために、屈折近接場測定(RNF)を首尾よく使用することができた(補助反対称成分を使用する本開示における例からの0.5mmの試料M3B)。プロファイルが非対称かどうかを確認するためには、試料は一方の側から開始して走査し、次に他方の側から出発して再び走査する必要があり、これら2つの走査を基材の中央平面の深さで切断すべきである。次にこれらを接続点(中央平面)における共通の応力値に対して垂直にシフトさせる。希望するなら、その点において力の釣り合いを利用することができる。このように継ぎ合わされた全体のプロファイルの対称成分および反対称成分は、提供した式によって計算することができ、AFOMおよびWFOMを計算することができる。
【0239】
図32中、約1,500mmの曲率半径を有するシートの前側上の凹形のたわみを形成するために、0.5mmの基材の570℃で3時間の予備たわみによって、非対称プロファイルを得た。次に、裏側を、1重量%のLiNO
3および99重量%のKNO
3を有する浅い浴中390℃で60分間イオン交換し、次に完全に浸漬するイオン交換を、重量基準で49%のNaNO
3および51%のKNO
3を有する浴中380℃で1.25時間行い、最後に完全に浸漬する最終のイオン交換を、重量基準で4%のNaNO
3および96%のKNO
3を有する浴中380℃で20分間行った。前述の手順を用いて得られたRNFプロファイルは、前側ニー応力(CS
f
k)が裏側ニー応力(CS
b
k)よりも18±2MPaだけ大きく、前側圧縮深さ(DOC
f)は裏側圧縮深さ(DOC
b)よりも約6~7マイクロメートルだけ大きいことを示している。裏側上の第1のIOXステップ後のプリズム結合応力測定では、約860MPaの表面CS、および6.4マイクロメートルのDOLが報告された。第2のイオン交換ステップ後、裏側CSは約530MPaであり、DOLは10.5マイクロメートルであった。最後に、第3のIOXステップ後、裏側ではCS=815MPaおよびDOL
b=10.65μmの読取値が得られ、一方、前側ではCS
f=838MPおよびDOL
f=7.8μmの読取値が得られた。20マイクロメートルよりも浅い急激な応力スパイクの測定には最適に設計されていない従来のFSM-6000測定では、CS値はわずかに過小評価されることに留意されたい。表面CSの実際の値は、この場合では950MPaに近い。このような浅いスパイクの場合の表面CSのより正確な測定では、各偏光における表面指数が、最低次モードの指数に、最低次モードと次のモードとの指数の間の差の1.3倍を加えることによって計算される線形スパイク近似が用いられる。FSM-6000では、わずか0.9の差が加えられ、通常は浅いスパイクの場合に表面指数が過小評価される。
【0240】
RNFプロファイルでは、分解能が限定されるため、正確な表面CS測定値が得られず、そのため、前側および裏側のKスパイクのCSおよびDOLなどのパラメータはFSMによってより正確に測定される。
【0241】
応力プロファイルの評価に使用できる別の応力測定方法の1つは、偏光顕微鏡を用いたDOC測定である。これは試料上の前側および裏側DOCの差を測定しようとする試みに使用することができる。
【0242】
ガラスシートの予備たわみによって得られる実質的な補助反対称成分を用いる非対称応力プロファイルの場合(例えば、予備たわみの曲率半径<1,000mmである)、濃度プロファイルからのWFOMの計算では、ガラスシートの最終的な逆曲率半径に非常に近づけることはできない場合がある。このような場合、シートの逆曲率半径をWFOMの直接推定値として使用することができ、一方、AFOMは依然として、光学的に測定される応力プロファイルから、または測定濃度プロファイルの応力への変換によって得られる応力プロファイルからのいずれかで推定することができる。
【0243】
高CS(例えば、>650MPa)を有する表面スパイクを有するプロファイルは、ガラスの引っかきに対する抵抗性の改善に役立ちうることが示されている。本開示の多くの実施形態は、前側圧縮深さ(DOCf)を最大化するために、前側上に実質的に浅い応力スパイクを有すること、または前面上に全くスパイクを有さないことを探求している。幾つかの実施形態では、このような非対称プロファイルは、好ましくは1モル%を超え、1.5モル%を超え、または2モル%を超え、好ましくは40モル%以下、30モル%以下、25モル%以下、20モル%以下、15モル%以下、10モル%以下、または7モル%以下の実質的な濃度のB2O3を有するガラス物品中に使用することができる。このB2O3含有量に関する推奨は、前面上にスパイクを有さない、または裏側スパイクよりも浅い前側スパイクを有する、または裏面よりも少なくとも50MPa低いCSを前面上に有する、または600MPa未満の前面CSを有する非対称プロファイルの場合に特に推奨される。同様に、前述のCS特性を有する非対称プロファイルを含むガラス物品が、少なくとも1モル%、1.5モル%、または2モル%のP2O5、好ましくは15モル%以下、10モル%以下、または7モル%以下のP2O5を含むことが推奨されうる。
【0244】
本発明の別の一実施形態では、表面の欠陥を除去するため、または目標最終形状に対してあらゆる望ましくない残留するたわみを除去するため、例えば、加熱もしくは冷却条件におけるゆらぎ、イオン交換中の塩濃度、またはKもしくはNaのイオンのコーティング源の均一性によって生じる変化しやすい残存する反りを除去するために、非対称応力プロファイルを有するイオン交換されたガラス物品の両面の一方で最終的な研磨を行うことができる。結果として、最終イオン交換ステップによって、最終的な表面研磨前の前面および裏面の上で実質的に同一の表面圧縮が得られるとしても、前面上のCSは裏面上のCSと30MPa以上異なる場合がある。
【0245】
本発明の別の一実施形態では、本発明のガラス物品は、前側ニー応力(CSf
k)が裏側ニー応力(CSb
k)よりも4MPaを超えて、好ましくは6MPaを超えて、および理想的には8MPaを超えて高く、この物品は実質的に平坦である(500mmを超える曲率半径を有する)。測定される非対称の実験的プロファイルを有する前述の0.5mmのLi含有ガラス物品は、このような本発明のガラス物品の一例である。特定の一実施形態では、ガラス物品はLi含有ガラスであってよいが、同じ種類の非対称プロファイルは、Liフリーガラスでも、厚さが同じ場合は通常はより長いイオン交換プロセスによって、同様に得ることができる。物品を代表するガラスシートの一方または両方の大きな表面に軽い表面研磨が行われる場合、そのガラス物品の前面および裏面のCSKの差の変化は無視でき(通常は1MPa未満)、したがってガラス物品の前側および裏側の間のCSkの実質的な差は、ガラス物品の非対称性を確定し、AFOMを評価するための比較的堅牢な方法である。
【0246】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載のガラス物品は、当技術分野において周知のダウンドロー法、例えばスロットドロー法およびフュージョンドロー法によって形成可能である。フュージョンドロー法は、薄いガラスシートの大規模製造に使用されている工業技術の1つである。フロート法またはスロットドロー法などの他の平坦ガラスの製造技術と比較すると、フュージョンドロー法では、優れた平坦性および表面品質の薄いガラスシートが生産される。結果として、フュージョンドロー法は、液晶ディスプレイ用、およびノートブック、娯楽用デバイス、タブレット、ラップトップ、携帯電話などの個人用電子デバイスのカバーガラス用の薄いガラス基材の製造における主要な製造技術となっている。
【0247】
フュージョンドロー法は、典型的にはジルコンまたは別の耐火材料でできている「アイソパイプ」として知られるトラフ上の溶融ガラスの流れを伴う。溶融ガラスは、アイソパイプの上部で両側面からあふれだし、アイソパイプの底部で合流して、1つのシートを形成し、ここで最終シートの内部だけがアイソパイプと直接接触している。ドロー法中に最終ガラスシートのいずれの露出面もアイソパイプ材料には接触していないので、ガラスの両方の外面は初期の品質のままであり、後の仕上げは不要である。
【0248】
フュージョンドロー可能となるためには、ガラス組成物が十分高い液相線粘度(すなわち、液相線温度における溶融ガラスの粘度)を有する必要がある。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のガラス物品の形成に使用される組成物は、少なくとも約50キロポアズ(kP)(約5kPa・s)、例えば少なくとも約100kP(約10kPa・s)、約200kP(約20kPa・s)、約300kP(約30kPa・s)、約400kP(約40kPa・s)、約500kP(約50kPa・s)、約600kP(約60kPa・s)、またはそれを超える液相線粘度を有する。
【0249】
幾つかの実施形態では、ガラス物品は積層ガラス物品であってよい。積層ガラス物品は、少なくとも2つのガラス物品層、例えば少なくとも3層、4層、5層、またはそれを超える層を含むことができる。ガラス物品層は、応力プロファイルが積層ガラス物品中に形成されるように異なる熱膨張係数を有するように選択することができる。ガラス物品層の間の性質の差によって積層ガラス物品中に形成される応力プロファイルを、前述の非対称応力プロファイルと組み合わせることができる。幾つかの別の実施形態では、同じイオン交換条件によって、ガラス物品層中にイオン拡散の程度の差が生じるように、異なるイオン拡散特性を有するようにガラス物品層を選択することができる。積層ガラス物品は、別個に形成されたガラス物品層を接合することによって、またはガラス物品層を同時に形成することによって、形成することができる。
【0250】
ガラス物品は、あらゆる適切な組成を有することができる。幾つかの実施形態では、ガラス物品は、アルミノケイ酸塩ガラス、例えばアルカリアルミノケイ酸塩ガラスである。幾つかの実施形態では、ガラス物品はリチウムを含む。幾つかの実施形態では、ガラス物品は、約2モル%~約20モル%の量のB2O3を含むことができる。ガラス物品は、50~75モル%SiO2、5~20モル%のAl2O3、2~20モル%のB2O3、0~10モル%のP2O5、6~25モル%のLi2O+Na2O+K2O、および0~15モル%のMgO+CaO+SrO+BaO+ZnOを含む組成を有することができる。
【0251】
ガラス物品が形成された後、そのガラス物品は化学強化される。ガラスの化学強化にはイオン交換が広く使用される。特定の一例では、アルカリ陽イオン源(例えば、溶融塩、または「イオン交換」浴)中のアルカリ陽イオンが、ガラス中のより小さなアルカリ陽イオンと交換されることで、ガラス物品の表面付近に圧縮応力下にある層が実現される。この圧縮層は、表面からガラス物品中のDOCまで延在する。本明細書に記載のガラス物品では、例えば、限定するものではないが硝酸カリウム(KNO3)などのカリウム塩を含む溶融塩浴中にガラスを浸漬することによるイオン交換中に、陽イオン源からのカリウムイオンが、ガラス中のナトリウムイオンと交換される。イオン交換プロセス中に使用できる別のカリウム塩としては、塩化カリウム(KCl)、硫酸カリウム(K2SO4)、それらの組合せなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。本明細書に記載のイオン交換浴は、カリウム以外のアルカリイオンおよびそれに対応する塩を含むことができる。例えば、イオン交換浴は、硝酸ナトリウム(NaNO3)、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどのナトリウム塩を含むこともできる。1つ以上の実施形態では、2つの異なる塩の混合物を使用することができる。例えば、ガラス物品をKNO3およびNaNO3の塩浴中に浸漬することができる。幾つかの実施形態では、2つ以上の浴を使用することができ、ガラスを1つの浴中に浸漬し、次に続けて別の浴に浸漬することができる。これらの浴は、同じまたは異なる組成、温度を有することができ、および/または異なる浸漬時間で使用することができる。
【0252】
本明細書に記載のイオン交換浴は、約320℃~約520℃、例えば約320℃~約450℃の範囲内の温度を有することができる。浴中の浸漬時間は、約15分~約48時間、例えば約15分~約16時間で変動させることができる。
【0253】
本明細書に記載の非対称プロファイルは、あらゆる適切なイオン交換プロセスによって形成することができる。幾つかの実施形態では、前面および裏面を別のプロセスでイオン交換することができる。これは、所望のイオン交換表面のみを、交換されるイオンを含む塩に接触させることによって実現できる。幾つかの実施形態では、イオン交換塩との選択的接触は、イオン交換塩を含む溶液またはペーストを、ガラス物品の別の表面に接触させることなく、所望の表面に塗布するステップを含むことができる。幾つかの別の実施形態では、イオン交換プロセスを行うことが望ましくないガラス物品の表面の上に障壁層を取り付けることができる。障壁層は、イオン拡散を完全に阻止する場合があり、または幾つかの実施形態では、障壁層が上に配置される表面が、障壁層を有さない表面よりも低い程度でイオン交換されるように、部分的なイオン拡散が可能な場合もある。代表的な障壁層は、スパンガラスまたはシリカであってよい。
【0254】
障壁層は、あらゆる適切な方法によってあらゆる適切な材料から形成することができる。幾つかの実施形態では、障壁層は、アルカリフリースピンオンガラス(SOG)、スパッタリングされたSiO2、または蒸着もしくはスパッタリングされた金属被覆から形成されてよい。幾つかの実施形態では、障壁層はスパッタリングされたSiO2層であってよい。スパッタリングされた層は、約40nm~約70nmの厚さを有することができる。幾つかの実施形態では、障壁層は、タンタル、モリブデン、またはアルミニウムを含む被覆などの金属被覆であってよい。
【0255】
幾つかの実施形態では、障壁層は、アルカリフリースピンオンガラスであってよく、3000~6000rpmの速度でスピンコーティングし、次にコーティングされたガラスを約400℃で約1時間硬化させることによって堆積することができる。硬化したSOG層の厚さは約50nm~約200nmであってよい。SOG層は、緩衝酸化物エッチング(BOE)、例えばフッ化水素酸またはフッ化アンモニウムを含むBOEにおけるエッチングによって、イオン交換後に除去することができる。このエッチングは、室温において約15秒~約3分の時間に及ぶことができる。BOE溶液中のエッチャントの希薄な性質のため、ナノメートルのオーダーの最小限のイオン交換ガラスの除去を伴ってSOG障壁層を除去することができる。BOEプロセスは、スパッタリングされたSiO2障壁層を除去するために使用することもできる。
【0256】
幾つかの別の実施形態では、障壁層は、少なくとも1つの二価金属イオンをガラス物品中にイオン交換することによって形成することができる。二価金属イオンは、Cu、Ca、Mg、Zn、およびTiの少なくとも1つであってよい。幾つかの実施形態では、2つ以上の二価陽イオンの混合物を塩に使用することができ、それによって後のイオン交換のより長時間の抑制における障壁層の有効性を高めることができる。二価金属イオンは、Cu(NO3)2またはCa(NO3)2などの二価金属イオンの硝酸塩を用いることで実現できる。これらの塩は、後述の方法で交換される表面上にスプレーコーティングすることができる。イオン交換は、塩がコーティングされた基材を約400℃~約500℃の温度に約5分~約3時間の時間、例えば約420℃の温度に約2時間加熱することによって行うことができる。二価金属イオンは、約1μm未満の層深さまで交換されうる。イオン交換後に塩は洗浄して除去される。幾つかの実施形態では、障壁層は、酸洗浄または機械研磨などの化学的または機械的方法によって除去することができる。障壁層を除去した後のガラス物品に対して、さらなるイオン交換ステップを行うことができる。
【0257】
幾つかの実施形態では、ガラス物品をイオン交換して、一方または両方の表面において圧縮応力スパイクを形成することができる。圧縮応力スパイクが前面および裏面の両方の上に形成される幾つかの実施形態では、各表面上でスパイクは同様の圧縮応力値を有することができる。ガラス物品の両面上に形成された圧縮応力スパイクを有する幾つかの実施形態では、前面および裏面の上の圧縮応力値は、同じスパイクイオン交換条件が使用されたにも関わらず、実質的に異なりうる。このような圧縮応力スパイク値の差は、少なくとも部分的には先に行った表面のイオン交換処理の違いによるものであってよく、それによってガラス物品のイオン拡散率が変化する。
【0258】
ガラス物品のイオン交換は、1つ以上の熱処理と組み合わせることができる。熱処理によって、先に行ったイオン交換処理によってガラス物品中に交換されたイオンが、ガラス物品全体にさらに拡散することができ、それによって圧縮深さおよびカリウム層深さを増加させることができる。熱処理は、イオン交換前に、金型などから、予備たわみ形状をガラス物品に付与するために使用することもできる。幾つかの実施形態では、予備たわみを付与したガラス物品は、イオン交換前に応力を有さない。ガラス物品に付与される予備たわみの程度は、イオン交換中の非対称応力プロファイルの形成によって誘発されるたわみを打ち消すように選択することができる。
【0259】
ガラス物品のいずれかの表面上のDOCは、厚さtの分率として記載することができる。例えば、1つ以上の実施形態では、前面または裏面のいずれかの上のDOCは、約0.1t以上、約0.11t以上、約0.12t以上、約0.13t以上、約0.14t以上、約0.15t以上、約0.16t以上、約0.17t以上、約0.18t以上、約0.19t以上、約0.2t以上、約0.21t以上であってよい。幾つかの実施形態では、ガラス物品の前面または裏面の上のDOCは、約0.08t~約0.25t、約0.09t~約0.24t、約0.10t~約0.23t、約0.11t~約0.22t、約0.12t~約0.21t、約0.13t~約0.20t、約0.14t~約0.19t、約0.15t~約0.18t、約0.16t~約0.19tの範囲内、またはそれらに含まれるあらゆる部分的範囲内もしくはこれらの端点のいずれかから形成されるあらゆる部分的範囲内であってよい。幾つかの場合では、前面または裏面のDOCは約20μm以下であってよい。1つ以上の実施形態では、ガラス物品の前面または裏面のDOCは、約40μm以上、例えば約40μm~約300μm、約50μm~約280μm、約60μm~約260μm、約70μm~約240μm、約80μm~約220μm、約90μm~約200μm、約100μm~約190μm、約110μm~約180μm、約120μm~約170μm、約140μm~約160μm、約150μm~約300μm、またはそれらに含まれるあらゆる部分的範囲もしくはこれらの端点のいずれかから形成されるあらゆる部分的範囲であってよい。
【0260】
1つ以上の実施形態では、強化されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、前面または裏面の最大圧縮応力(これは表面、またはガラス物品中のある深さで見出すことができる)が約400MPa以上、約500MPa以上、約600MPa以上、約700MPa以上、約800MPa以上、約900MPa以上、約930MPa以上、約1,000MPa以上、または約1,050MPa以上となりうる。
【0261】
1つ以上の実施形態では、強化されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、約40MPa以上、例えば約45MPa以上、約50MPa以上、約60MPa以上、約70MPa以上、約75MPa以上、約80MPa以上、または約85MPa以上の最大引張応力または中央張力(CT)を有することができる。幾つかの実施形態では、最大引張応力または中央張力(CT)は約40MPa~約100MPaの範囲内となりうる。
【0262】
幾つかの実施形態では、ガラス物品は、異なる応力プロファイルを有する部分を含むことができる。例えば、ガラス物品の第1の領域は第1の応力プロファイルを含むことができ、ガラス物品の第2の領域は第2の応力プロファイルを含むことができ、第1の応力プロファイルおよび第2の応力プロファイルの少なくとも1つは非対称応力プロファイルである。ガラス物品は、非対称応力プロファイルおよび対称応力プロファイルを混合したものを含むことができる。幾つかの実施形態では、ガラス物品の領域中の応力プロファイルは、ガラス物品が使用中のときの一般的な破壊形態に対処するように選択することができる。例えば、ガラス物品のコーナーおよび/またはエッジは、消費者向け電子デバイス中に使用されるガラス物品の中央領域と比べると大きな強化を示すことができ、ここで、コーナーおよびエッジは、硬い表面上への落下などの衝撃を受ける可能性がより高い。さらに、ガラス物品中に複数の応力プロファイルを含むことによって、より高い程度の非対称性を有する応力プロファイルは、そのようなプロファイルによって性能の向上が得られるガラス物品の領域内に含まれてよく、別の領域中により低い非対称を有する応力プロファイルを含むことで、より高い非対称性の利点が低度のたわみで実現可能となる。局所的な非対称応力プロファイルから生じるたわみは、非対称応力プロファイルを示す領域に一般に束縛されることがあり、そのため局所的な非対称応力プロファイルを有するガラス物品は、ガラス物品全体にわたって1つの非対称応力プロファイルを有するガラス物品よりも少ないたわみを示すことができる。
【0263】
幾つかの実施形態では、ガラス物品は、約0.2を超え、例えば約0.3を超え、約0.4を超え、約0.5を超え、約0.6を超え、約0.7を超え、またはそれを超えるAFOMの差を有する複数の応力プロファイルを含むことができる。幾つかの実施形態では、ガラス物品のコーナーまたはエッジなどの局所的に強化された領域中の非対称応力プロファイルのAFOMは、約0.2を超え、例えば約0.3を超え、約0.4を超え、約0.5を超え、約0.6を超え、約0.7を超え、またはそれを超えるAFOMを有することができる。ガラス物品は、面積が約2cm2を超え、その領域内の応力プロファイルのために曲率半径が約10mを超える領域と、約5m未満、例えば約3m未満、約1m未満、約0.6m未満、約0.4m未満、またはそれ未満のWFOMを有する第2の領域とを含むことができる。さらに、第2の領域は、少なくとも約0.2、例えば少なくとも約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、またはそれを超えるAFOMを有することができる。一般に、ガラス物品の領域は、本明細書に記載のあらゆる種類の応力プロファイルによって特徴付けることができる。
【0264】
幾つかの実施形態では、イオン交換されたガラス物品は、銀、銅、セシウム、またはルビジウムなどの大きなイオンを含むことができる。イオン交換されたガラス物品中のこれらの大きなイオンの含有量は、最大約5モル%、例えば最大約3モル%であってよい。
【0265】
幾つかの実施形態では、ガラス物品は、ガラス物品の第1の表面の少なくとも一部の上に固体成分を含む塩を配置することによって製造することができる。次に、このガラス物品をイオン交換温度まで加熱することによってガラス物品をイオン交換することで、非対称応力プロファイルが形成される。固体成分は、イオン交換温度で固体であるように選択される。幾つかの実施形態では、塩は、イオン交換温度で液体となるように選択される液体成分をさらに含むことができる。
【0266】
固体成分は、硫酸塩またはリン酸塩であってよい。幾つかの実施形態では、固体成分は、硫酸アルカリまたはリン酸アルカリ、例えばリン酸三カリウム(TKP)、リン酸三ナトリウム(TSP)、硫酸カリウム、または硫酸ナトリウムであってよい。固体成分は、リン酸塩および/または硫酸塩の混合物などの2種類以上の硫酸塩またはリン酸塩を含むことができる。固体成分は、約5重量%~約99.5重量%、例えば約15重量%~約99.5重量%、約30重量%~約98重量%、またはそれらに含まれるあらゆる部分的範囲の量で塩に存在することができる。塩の固体成分の量は、さらに後述するように、固体成分を含むことの所望の効果に基づいて選択することができる。固体成分が約30重量%~約98重量%量で塩に存在する実施形態では、イオン交換中の塩の広がりの抑制、有害作用の防止、および容易な表面応力測定が実現される。
【0267】
液体成分は、イオン交換プロセスに溶融状態で一般に使用される塩であってよい。幾つかの実施形態では、液体成分は、KNO3またはNaNO3などの硝酸アルカリであってよい。液体成分は、KNO3およびNaNO3の混合物などの2種類以上の硝酸アルカリを含むことができる。TKPおよびTSPおよびKNO3およびNaNO3が同様の密度であることは、TKP、TSP、KNO3、およびNaNO3を含むあらゆる塩混合物は、固体成分および液体成分の重量分率が同様である場合に類似の結果が得られると予想されることを示している。
【0268】
塩の固体成分は、塩が液体成分も含む実施形態でさえも、イオン交換中の塩のウィッキングを防止する。ウィッキングが防止されることで、イオン交換が望ましい領域中のガラス物品の表面上に塩を配置することができ、イオン交換プロセス中に塩を所望のパターンで維持することができる。ウィッキングの減少は、少なくとも部分的には、塩の液体成分と固体成分の表面積との間の引力のためであろう。比較として、本明細書に記載の種類の固体成分を含まない塩が使用される場合、イオン交換プロセス中に加熱すると、塩は吸い上げられたり広がったりすることがあり、その結果、イオン交換が望ましくないガラス物品の領域まで塩が移動することがある。塩の拡散の抑制は、塩の固体含有量が約15重量%~約99.5重量%である場合に実現可能である。
【0269】
幾つかの実施形態では、固体成分は、ガラス物品から交換されうる有害イオンのゲッターとして機能することもできる。例えば、Li+はLi含有ガラスの有害イオンであり、およびNa+はNa含有ガラスの有害イオンである。次に固体成分は、有害イオンのガラス物品表面における逆イオン交換プロセスへの関与を防止して、有害作用を抑制することができる。この有害作用の抑制によって、交換イオンの所望の表面濃度を実現することができる。有害作用の抑制は、固体成分が約5重量%~約99.5重量%の量で塩に存在する場合に観察されうる。
【0270】
塩は、あらゆる適切な方法によって第1の表面上に配置することができる。幾つかの実施形態では、所望の塩を含む溶液をガラス物品上にスプレーコーティングすることができる。次に塩混合物を乾燥させて溶媒を除去すると、乾燥した塩のコーティングがガラス物品上に残る。幾つかの実施形態では、溶媒は、水、例えば脱イオン水であってよい。別の実施形態では、塩は、当技術分野において周知の別の方法、例えばインクジェット印刷、スクリーン印刷、またはロール塗りによって堆積することができる。
【0271】
第1の表面の領域が塩に接触しないように、あるパターンで塩を第1の表面上に配置することができる。これによって、ガラス物品がイオン交換温度まで加熱されるときにイオン交換されない第1の表面の領域を形成することができる。次に、この結果得られるガラス物品は、異なる応力プロファイルを有する領域を有することができる。例えば、塩を、第1の表面の周辺部に堆積し、第1の表面の中央には堆積しないことができ、その結果、第1の表面の中央はイオン交換せずにコーナーをイオン交換することができる。この局所的なイオン交換によって、使用中に衝撃にさらされる可能性がより高いコーナーおよびエッジなどのさらなる強化が望ましいガラス物品の領域の優先的なイオン交換が可能となる。別の実施形態では、塩は、ガラス物品の第1の表面の全体にわたって配置することができる。
【0272】
あらゆる適切な方法によって、第1の表面上に塩のパターンを形成することができる。幾つかの実施形態では、イオン交換されない第1の表面の領域をふさぐためにマスクを使用することができる。このマスクは、ガラス物品がイオン交換温度まで加熱される前に除去することができる。マスクは、ポリマー、ガラス、または金属などのあらゆる適切な材料から形成することができる。
【0273】
塩層は、ガラス物品のイオン交換後に除去される。塩層は、溶媒による洗浄など、あらゆる適切な方法によって除去することができる。幾つかの実施形態では、塩は、ガラス物品を水で洗浄することによって除去される。ガラス物品は、イオン交換プロセスによって形成される汚れを除去するために酸洗浄剤を用いて洗浄することもできる。幾つかの実施形態では、ガラス物品は、ガラス物品の第1の表面から汚れを除去するために酢酸で洗浄することができる。
【0274】
洗浄したイオン交換済みガラス物品は、次に、追加のイオン交換プロセスを行うことができる。幾つかの実施形態では、洗浄したガラス物品は、当技術分野において一般に使用される種類の溶融塩浴中にガラス物品を浸漬することによってイオン交換することができる。第1および第2の表面の両方を、追加のイオン交換プロセス中にイオン交換することができる。幾つかの実施形態では、洗浄したイオン交換物品は、異なる塩浴組成で2つの追加のイオン交換プロセスを行うことができる。
【0275】
幾つかの実施形態では、塩を堆積する前に、ガラス物品の少なくとも一部の上に障壁層を配置することができる。障壁層は、前述のように、あらゆる適切な方法によってあらゆる適切な材料から形成することができる。幾つかの実施形態では、障壁層は、アルカリフリースピンオンガラス(SOG)、スパッタリングされたSiO2、または蒸着もしくはスパッタリングされた金属被覆から形成することができる。幾つかの別の実施形態では、障壁層は、少なくとも1つの二価金属イオンをガラス物品中にイオン交換することによって形成することができる。二価金属イオンは、Cu、Ca、Mg、Zn、およびTiの少なくとも1つであってよい。障壁層は、あらゆる適切な方法によってイオン交換後に除去することができる。幾つかの実施形態では、障壁層は、酸洗浄または機械研磨方法によって除去される。
【0276】
幾つかの実施形態では、ガラス物品を溶融塩浴中に浸漬する前に、ガラス物品の第1の表面に障壁層を形成することができる。溶融塩浴は、約460℃の温度で約40重量%のNaNO3および約50重量%のKNO3を含むことができる。ガラス物品は、溶融塩浴中に約14時間の時間浸漬することができる。幾つかの別の実施形態では、溶融塩浴は、KNO3と、約5重量%~約60重量%のNaNO3とを含むことができる。幾つかの実施形態では、ガラス物品は、約450℃~約460℃の温度の溶融塩浴中に約6時間~約30時間の時間浸漬することができる。この第1のイオン交換ステップによって形成されるカリウム層深さは、約60μm~約250μm、または約200μm~約400μmとなりうる。ガラス物品は、溶融塩浴から取り出した後に洗浄され、障壁層は除去される。洗浄され障壁層がないガラス物品のイオン交換されなかった部分は、次に、イオン交換されなかった部分に障壁層をコーティングすること、またはイオン交換されなかった部分を、前述の種類の固体成分を含む塩でイオン交換することなどによってイオン交換処理を行うことができる。幾つかの実施形態では、ガラス物品のイオン交換された表面に、上記開示の種類の障壁層をコーティングすることができる。イオン交換され障壁層を有するガラス物品は、次に溶融塩浴中に浸漬することができる。この溶融塩浴は、主としてKNO3を含み、例えば5重量%未満のNaNO3を含む、またはNaNO3を含まない溶融塩浴である。溶融塩浴中のイオン交換は、420℃で約2時間などのあらゆる適切な時間および温度で行うことができる。結果として得られる圧縮応力層は、約40μmの深さ、および約800MPa~約900MPaの表面圧縮応力を有することができる。溶融塩浴中への浸漬は、溶融塩浴中の浸漬によって生じる熱処理のために、ガラス物品の先にイオン交換された領域中の表面圧縮応力を低下させることもできる。溶融塩浴から取り出した後、障壁層は化学エッチングまたは機械研磨によって除去することができる。さらに、障壁層を除去した後のガラス物品を溶融塩浴中に浸漬することによって、圧縮表面応力「スパイク」をガラス物品に加えることができる。「スパイク」溶融塩浴は、主としてKNO3を含み、例えば5重量%未満のNaNO3を含む、またはNaNO3を含まない。「スパイク」イオン交換は、約390℃で約10~約15分間行うことができる。
【0277】
幾つかの実施形態では、ガラス物品のイオン交換されていない表面上に塩を配置することができる。塩は、本明細書に記載の種類の固体成分を含むことができ、本明細書に記載のようにスプレーコーティング法で塗布することができる。次に、ガラス物品をイオン交換温度まで加熱することによって、ガラス物品がイオン交換される。このイオン交換によって形成される圧縮応力層は、約40μm~約50μmの深さ、および約900MPaの表面圧縮応力を有することができる。このイオン交換は、約420℃のイオン交換温度で約2時間行うことができる。次に、洗浄などによって、ガラス物品から塩層を除去することができる。さらに、障壁層を除去した後のガラス物品を溶融塩浴中に浸漬することによって、圧縮表面応力「スパイク」をガラス物品に加えることができる。「スパイク」溶融塩浴は、主としてKNO3を含み、例えば5重量%未満のNaNO3を含む、またはNaNO3を含まない。「スパイク」イオン交換は、約390℃で約10~約15分間行うことができる。「スパイク」処理後、ガラス物品の第1の側は、K+に富む浅い層を示すことができ、ここでK2O濃度は、表面における約14モル%~約16モル%から、数マイクロメートル、例えば約6μm~約12μmの距離にわたって5モル%未満まで低下する。スプレーコーティングされた塩でイオン交換された表面である、ガラス物品の第2の側は、カリウム層深さの増加を示す。ガラス物品が約0.8mmの厚さを有する場合、この第2の側は約40μm~約50μmのカリウム層深さを有することができる。望ましくない壊れやすい挙動を回避するためにガラス物品の厚さが薄い場合、第2の側のカリウム層深さが、より小さくなることがあり、例えば、約0.5mmの厚さの場合、約30μm~約42μmとなりうる。
【0278】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の障壁層プロセスおよび固体含有塩プロセスの使用は、所望の応力プロファイルを実現するために、あらゆる組合せおよびあらゆる順序で併用することができる。
【0279】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載のガラス物品は、携帯電話またはスマートフォン、ラップトップコンピュータ、タブレットなどの消費者向け電子製品の一部を形成する。消費者向け電子製品(例えばスマートフォン)の概略図を
図10および11に示す。消費者向け電子デバイス500は、前面504、裏面506、および側面508を有するハウジング502と;ハウジングの少なくとも部分的に内側、または完全にハウジング内にあり、少なくともコントローラと、メモリと、ハウジングの前面にあるもしくは前面に隣接するディスプレイ510とを含む電気部品(図示せず)と;ディスプレイの上に存在するように、ハウジングの前面にある、または前面の上にあるカバー基材512とを含む。幾つかの実施形態では、カバー基材512および/またはハウジングは、本明細書に開示されるいずれかのガラス物品を含むことができる。
【実施例】
【0280】
実施例1
57.43モル%のSiO2、16.10モル%のAl2O3、17.05モル%のNa2O、2.81モル%のMgO、0.003モル%のTiO2、0.07モル%のSnO2、および6.54モル%のP2O5の組成を有するガラス物品試料。試料は、平坦な2インチ(5.08cm)×2インチ(5.08cm)の正方形のシートの形態であり、厚さは0.4mm、0.5mm、または0.8mmであった。
【0281】
試料を脱イオン(DI)水で洗浄し、高精度天秤で秤量した。次に、試料の表面上にスプレーされる塩溶液が迅速に乾燥し得られた塩堆積物中に水が全く残留しないことを保証するため、試料を200℃に設定したホットプレート上に置いた。試料の温度は約80℃~150℃の間であると推定された。試料の表面に塗布される実際のスプレーの回数は、試料上に望まれる塩の重量によって決定された。スプレー塗布の回数は15~30回であった。スプレー塗布の終了後、試料を再び秤量して、塩の全重量増加を求めた。試料上の塩の全重量は、0.07g~0.15gの間であり、これはどの塩組成物が使用されたかによって決定された。次に試料を、スプレーコーティングされた側を上向きにして、460℃のオーブン中に、試料の厚さが0.4mmである場合は8時間、試料の厚さが0.5mmまたは0.8mmのいずれかである場合は14時間入れた。また試料は、オーブン中に入れるときに、試料表面と接触しないガラス製ペトリ皿のふたで覆った。コーティングされた試料表面を「裏」面と呼び、これは負のたわみおよび凸形形状を有する。以下の表1は、第1のIOXステップに使用した条件を示している。
【0282】
スプレーコーティングプロセス中に使用した重量基準の塩の総量は、200mLのDI水中に溶解させた58gであった。第1のIOXステップ中に使用するために:100%のKNO3、10%のNaNO3/90%のKNO3、40%のNaNO3/60%のKNO3、および50%のNaNO3/50%のKNO3を含む4つの異なる塩溶液を調製した。これらの塩溶液は、別個の容器中で調製し、塩を溶解させた後、大型汚染粒子を除去するためにスプレーボトル中に濾過して入れることができた。
【0283】
試料をDI水で洗浄して残留する塩を除去し、プロフィロメーターでたわみを測定し、高精度天秤を用いて重量を測定し、プリズム結合測定を行って圧縮応力、ニー圧縮応力、および層深さを求めることによって、第1のIOXステップ後に試料の特性決定を行った。
【0284】
IOXプロセス中の第2のステップは、試料の第1のIOXステップとは反対側へのスプレーコーティングであった。この反対側を「前」面と呼び、これは負のたわみおよび凹形形状を有する。このプロセスでは、重量基準で約0.18g~0.2gの塩を有する100%KNO3塩を使用した。第2のIOXステップにおける表面に、ポットプレートを用いて第1と同じ方法でコーティングした。試料がコーティングされた後、塩が上向きになるように試料をオーブン中に420℃において合計1.5時間~2時間入れ、第1のIOXステップと同じ方法で再び覆った。
【0285】
第3のIOXステップは、試料の両側に99.5%のKNO3/0.5%のNaNO3溶液でスパイクを加える、両側イオン交換浴であった。試料を250℃で5分間、次に380℃で5分間予熱した。次に試料を塩浴中8分または11分のいずれかで390℃においてイオン交換した。以下の表Iに示される全ての試料は、99.5%のKNO3/0.5%のNaNO3の塩浴中で8分間の第3のIOXステップを行った。
【0286】
第2および第3のIOXステップの後の特性決定は、試料をDI水で洗浄して残留する塩を除去し、プロフィロメーターでたわみを測定し、フラットマスターシステムでたわみを測定し、高精度天秤で重量を測定し、SCALPで中央張力を測定し、プリズム結合測定を行って圧縮応力、ニー応力、および層深さ求めることを含んだ。次に各試料の全体の応力プロファイルおよび機械的性質を計算した。
【0287】
【0288】
横断たわみは、試料のエッジの長さと同じ長さを有する線であって、試料の主面の中心を通過して延在し主面のエッジと平行である線に沿って測定され、この線に沿った試料表面の最高高さと最低高さとの間の差である。対角たわみは、2つのコーナーの間の対角線上に延在し試料の主面の中心を通過する線に沿って測定され、この線に沿った試料表面の最高高さと最低高さとの間の差である。予備たわみは、IOX処理前の試料のたわみを意味し、最終たわみは、IOX処理の終了後の試料のたわみを意味する。
【0289】
図12および13は、第1のIOXステップで2つの異なる塩組成を用いた、IOXプロセス中の各ステップ後の厚さ0.4mmの試料の横断たわみおよび対角たわみをそれぞれ示している。第1のIOXステップで使用した塩濃度は、40%のNaNO
3/60%のKNO
3および50%のNaNO
3/50%のKNO
3であり、全塩重量はそれぞれ約0.07gおよび約0.1gであった。第2のIOXステップは、100%のKNO
3を用いて420℃の温度において2時間の時間で行い、全塩重量は約0.2gであった。第3のIOXステップは、99.5%のKNO
3を用いて390℃の温度において8分の時間で行った。
【0290】
図14および15は、異なる第1のIOX条件が用いられる、IOXプロセス中の各ステップ後の厚さ0.5mmの試料の横断たわみおよび対角たわみをそれぞれ示している。第1のIOXステップで使用した塩濃度は、40%のNaNO
3/60%のKNO
3および50%のNaNO
3/50%のKNO
3であり、全塩重量はそれぞれ約0.07gおよび約0.1gであった。第2のIOXステップは、100%のKNO
3を用いて420℃の温度において1.5時間の時間で行い、全塩重量は約0.18gであり、例外として試料F3Oは第2のIOXステップ時間が2時間であった。第3のIOXステップは、99.5%のKNO
3を用いて390℃の温度において8分の時間で行った。さらに試料F3Jは、第1および第2のIOXステップの間に430℃において6時間の熱処理を含んだ。
【0291】
実施例2
63.60モル%のSiO2、15.67モル%のAl2O3、10.81モル%のNa2O、1.16モル%のZnO、6.24モル%のLi2O、0.04モル%のSnO2、および2.48モル%のP2O5の組成を有するガラス物品試料。試料は、平坦な2インチ(5.08cm)×2インチ(5.08cm)の正方形のシートの形態であり、厚さは0.5mmまたは0.8mmであった。
【0292】
最初に平坦であった試料の非対称応力プロファイルの形成に使用した方法は、3ステップのイオン交換からなった。試料を脱イオン(DI)水で洗浄し、高精度天秤で秤量した。次に、試料の表面上にスプレーされる塩溶液が迅速に乾燥し得られた塩堆積物中に水が全く残留しないことを保証するため、試料を200℃に設定したホットプレート上に置いた。試料の温度は約80℃~150℃の間であると推定された。試料の表面に塗布される実際のスプレーの回数は、試料上に望まれる塩の重量によって決定された。スプレー塗布の回数は15~30回であった。スプレー塗布の終了後、試料を再び秤量して、塩の全重量増加を求めた。試料上の塩の全重量は、0.07g~0.15gの間であり、これはどの塩組成物が使用されたかによって決定された。次に試料を、コーティングされた側を上向きにして、温度370℃のオーブン中に0.5時間~1時間入れた。オーブン温度が390℃の場合は、時間は1時間~2時間であった。また試料は、オーブン中に入れるときに、試料表面と接触しないガラス製ペトリ皿のふたで覆った。コーティングされた試料表面を「裏」面と呼び、これは負のたわみおよび凸形形状を有した。
【0293】
スプレーコーティング溶液は、DI水中100%のKNO3を含んだ。使用した重量基準の塩の総量は、200mLのDI水中に溶解させた58gであった。塩溶液は別個の容器中で調製し、塩を溶解させた後、大型汚染粒子を除去するためにスプレーボトル中に濾過して入れることができた。
【0294】
第1のIOXステップ後に熱処理も使用した。熱処理は、390℃において1時間、1.5時間、および2時間の時間行った。熱処理によって、どの条件を使用したかにより、たわみにある程度変化が生じた。熱処理は圧縮深さを増加させる役割を果たした。
【0295】
第1のIOXステップ後の特性決定は、試料をDI水で洗浄して残留する塩を除去し、プロフィロメーターでたわみを測定し、高精度天秤を用いて重量を測定し、プリズム結合測定を行って圧縮応力、ニー圧縮応力、および層深さを求めることを含んだ。
【0296】
プロセス中の第2のIOXステップは、両側イオン交換であった。第2のIOXステップは、種々の塩組成を用いて種々の時間で行った。使用した塩組成は、25%のNaNO3/75%のKNO3、70%のNaNO3/30%のKNO3、および49%のNaNO3/51%のKNO3であった。使用した種々の時間は、1.5時間、2時間、2.5時間、3.17時間、3.5時間、および3.67時間であった。試料は、チャンバー内の浴のそばで、浴と同じ温度で合計10分間の予熱を行った。次に試料を塩浴中に浸漬した。
【0297】
プロセス中の第3のIOXステップは、94%のKNO3/6%のNaNO3の溶液を用いて380℃において30分~36分でガラスの両側にスパイクが加えられるイオン交換浴である。試料は、チャンバー内の浴のそばで、浴と同じ温度で合計10分間の予熱を行った。
【0298】
第2および第3のIOXステップ後の特性決定は、試料をDI水で洗浄して残留する塩を除去し、プロフィロメーターでたわみを測定し、フラットマスターシステムでたわみを測定し、高精度天秤で重量を測定し、SCALPで中央張力を測定し、プリズム結合測定を行って圧縮応力、ニー応力、および層深さ求めることを含んだ。次に各試料の全体の応力プロファイルおよび機械的性質を計算した。試料の結果を表II中に示す。
【0299】
【0300】
図16および17は、第2のIOXステップの時間が異なる、IOXプロセス中の各ステップ後の厚さ0.8mmの試料の横断たわみおよび対角たわみをそれぞれ示している。第1のIOXステップ中に使用した塩濃度は、370℃の温度において30分の時間で100%のKNO
3であり、全塩重量は約0.15gであった。第2のIOXステップでは、380℃の温度において2.05時間、3.17時間、および3.66時間の時間で49%のNaNO
3/51%のKNO
3の塩濃度を使用した。第3のIOXステップは、380℃の温度において36分の時間で6%のNaNO
3/94%のKNO
3を用いて行った。
【0301】
図18および19は、IOXプロセス中の各ステップ後の厚さ0.8mmの試料の横断たわみおよび対角たわみをそれぞれ示している。第1のIOXステップ中に使用した塩濃度は、390℃の温度において2時間の時間で100%のKNO
3であり、全塩重量は約0.15gであった。第2のIOXステップでは、380℃の温度において2時間の時間で49%のNaNO
3/51%のKNO
3の塩濃度を使用した。第3のIOXステップは、380℃の温度において30分の時間で6%のNaNO
3/94%のKNO
3を用いて行った。試料F1Iは、第1および第2のIOXステップの間の熱処理をさらに含んだ。
【0302】
図20および21は、IOXプロセス中の各ステップ後の厚さ0.5mmの試料の横断たわみおよび対角たわみをそれぞれ示している。第1のIOXステップ中に使用した塩濃度は、390℃の温度において1時間の時間で100%のKNO
3であり、全塩重量は約0.15gであった。第2のIOXステップでは、380℃の温度において2.5時間の時間で49%のNaNO
3/51%のKNO
3の塩濃度を使用した。第3のIOXステップは、380℃の温度において30分の時間で6%のNaNO
3/94%のKNO
3を用いて行った。試料F1Mは、第1および第2のIOXステップの間の熱処理をさらに含んだ。
【0303】
図22および23は、IOXプロセス中の各ステップ後の厚さ0.5mmの試料の横断たわみおよび対角たわみをそれぞれ示している。第1のIOXステップ中に使用した塩濃度は、390℃の温度において1時間の時間で100%のKNO
3であり、全塩重量は約0.15gであった。第2のIOXステップでは、380℃の温度において1.5時間の時間で49%のNaNO
3/51%のKNO
3の塩濃度を使用した。第3のIOXステップは、380℃の温度において30分の時間で6%のNaNO
3/94%のKNO
3を用いて行った。試料F1Sは、第1および第2のIOXステップの間の熱処理をさらに含んだ。
【0304】
実施例3
63.60モル%のSiO2、15.67モル%のAl2O3、10.81モル%のNa2O、1.16モル%のZnO、6.24モル%のLi2O、0.04モル%のSnO2、および2.48モル%のP2O5の組成を有するガラス物品試料。試料は、平坦な2インチ(5.08cm)×2インチ(5.08cm)の正方形のシートの形態であり、厚さは0.5mmであった。
【0305】
大型アルミニウム金型中で試料に予備たわみを付与した。オーブン中の熱処理プロセスは、570℃まで20℃/分の昇温速度であり、次に試料をその温度で3時間または5時間のいずれかで維持する。異なるプロセスで両方の温度を使用した。一度に最大7つの試料を金型中に配置した。軟らかいアルミニウムに対して試料が引き起こしうる破壊損傷から金型を保護するためにカーボンサスペンションを使用した。また、金型をさらに保護するために、試料に丸みを付ける成形を行い、エッジを平滑にした。試料に予備たわみを付与した後、高精度天秤を用いた重量によってそれらの特性決定を行い、プロフィロメーターを用いてたわみ測定を行った。試料の凸側を「裏」側と呼ぶ。
【0306】
2ステップのIOXプロセスを試料に対して行った。最初にたわませた試料を用いて非対称プロファイルを形成するための2ステップイオン交換プロセスは、ある濃度の塩を有する最初の片側の浴から開始した。1%のLiNO3/99%のKNO3および2%のLiNO3/98%のKNO3の浴の両方を、390℃で行われる片側IOXステップに使用した。浴は、浅く円形のステンレス鋼容器中で作製した。試料を洗浄し、秤量し、IOX開始前のたわみを測定した。金属メッシュの小片および平型ピンセットを用いて、予備たわみを付与した試料の凸側を浴中に下ろす。塩のみが試料の凸側に接触する。第1のIOXステップの時間は、例えば40分、50分、60分、72分、および90分で変動させた。
【0307】
第1のIOXステップ後の特性決定は、試料をDI水で洗浄して残留する塩を除去し、プロフィロメーターでたわみを測定し、高精度天秤を用いて重量を測定し、プリズム結合測定を行って圧縮応力、ニー圧縮応力、および層深さを求めることを含んだ。
【0308】
第2のIOXステップは、試料の両側で行った両側交換であった。第2のイオン交換の前に、オーブン中、二次容器中で10分間、イオン交換浴と同じ温度の350℃で試料を予熱した。15%のNaNO3/85%のKNO3、および25%のNaNO3/75%のKNO3を含む、このプロセスで使用される2つの異なる浴濃度が存在する。両方の第2のIOXステップの浴条件の場合、複数回使用し、1時間~4時間で変動させた。
【0309】
第2のIOXステップ後の特性決定は、試料をDI水で洗浄して残留する塩を除去し、プロフィロメーターおよびフラットマスターシステムを用いてたわみを測定し、高精度天秤を用いて重量を測定し、SCALPで中央張力を測定し、プリズム結合測定を行って圧縮応力、ニー圧縮応力、および層深さを求めることを含んだ。全ての測定値は、各試料の全体の応力プロファイルおよび機械的性質を求めるために使用される。
【0310】
図24および25は、IOXプロセス中の各ステップ後の厚さ0.5mmの予備たわみを付与した試料の横断たわみおよび対角たわみをそれぞれ示している。試料は球状の金型中、500℃の温度において2時間熱処理することによって予備たわみを付与し、次に温度を560℃まで上昇させ、4.5時間処理した。第1のIOXステップ中に使用した塩濃度は、390℃の温度において50分、60分、72分、および90分の時間で1%のLiNO
3および99%のKNO
3であった。第2のIOXステップでは、350℃の温度において3時間の時間で15%のNaNO
3/85%のKNO
3の塩濃度を使用した。
図24および25中に示される初期条件は、予備たわみを付与したガラス物品である。
【0311】
図26および27は、IOXプロセス中の各ステップ後の厚さ0.5mmの予備たわみを付与した試料の横断たわみおよび対角たわみをそれぞれ示している。試料は球状の金型中、500℃の温度において2時間熱処理することによって予備たわみを付与し、次に温度を560℃まで上昇させ、4.5時間処理した。第1のIOXステップ中に使用した塩濃度は、390℃の温度において72分の時間で1%のLiNO
3および99%のKNO
3であった。第2のIOXステップでは、350℃の温度において2時間、3時間、および4時間の時間で15%のNaNO
3/85%のKNO
3の塩濃度を使用した。
図26および27中に示される初期条件は、予備たわみを付与したガラス物品である。
【0312】
実施例4
63.60モル%のSiO2、15.67モル%のAl2O3、10.81モル%のNa2O、1.16モル%のZnO、6.24モル%のLi2O、0.04モル%のSnO2、および2.48モル%のP2O5の組成を有するガラス物品試料。試料は、平坦な2インチ(5.08cm)×2インチ(5.08cm)の正方形のシートの形態であり、厚さは0.5mmであった。
【0313】
実施例3の第1のIOXステップ、および金型中での試料の予備たわみを行った。第1のIOXステップは、40分、50分、または60分の時間行った。
【0314】
第2のIOXステップは、試料の両側の上の両側交換として行った。第2のIOXステップ中に使用した浴濃度は49%のNaNO3/51%のKNO3であった。1.25時間および1.67時間の2つの異なるイオン交換時間を使用した。第2のIOXステップの前に、オーブン中、二次容器中で10分間、イオン交換と同じ温度の380℃で試料を予熱した。
【0315】
試料の両側の上に圧縮応力スパイクを付与する第3のIOXステップも使用した。第3のIOXステップでは、380℃の温度において20分の時間で4%のNaNO3/96%のKNO3塩溶液を使用した。第3のIOXステップの前に、オーブン中、二次容器中で5分間、イオン交換と同じ温度の380℃で試料を予熱した。
【0316】
第2および第3のIOXステップ後の特性決定は、試料をDI水で洗浄して残留する塩を除去し、プロフィロメーターおよびフラットマスターシステムでたわみを測定し、高精度天秤で重量を測定し、SCALPで中央張力を測定し、プリズム結合測定を行って圧縮応力、ニー応力、および層深さ求めることを含んだ。全ての測定値は、各試料の全体の応力プロファイルおよび機械的性質を求めるために使用される。
【0317】
図28および29は、IOXプロセス中の各ステップ後の厚さ0.5mmの予備たわみを付与した試料の横断たわみおよび対角たわみをそれぞれ示している。試料は球状の金型中、570℃の温度において3時間熱処理することによって予備たわみを付与した。第1のIOXステップ中に使用した塩濃度は、390℃の温度において40分、50分、および60分の時間で1%のLiNO
3および99%のKNO
3であった。第2のIOXステップでは、380℃の温度において1時間15分の時間で49%のNaNO
3/51%のKNO
3の塩濃度を使用した。第3のIOXステップでは、380℃の温度において20分の時間で4%のNaNO
3/96%のKNO
3の塩濃度を使用した。
図28および29中に示される初期条件は、予備たわみを付与したガラス物品である。
【0318】
実施例5
63.60モル%のSiO2、15.67モル%のAl2O3、10.81モル%のNa2O、1.16モル%のZnO、6.24モル%のLi2O、0.04モル%のSnO2、および2.48モル%のP2O5の組成を有するガラス物品試料。試料は、平坦な2インチ(5.08cm)×2インチ(5.08cm)の正方形のシートの形態であり、厚さは0.5mmであった。
【0319】
大型アルミニウム金型中で試料に予備たわみを付与した。金型中の熱処理プロセスは、500℃まで20℃/分の昇温速度であり、この温度で試料を2時間処理した。560℃まで2℃/分でさらに昇温し、この温度で試料を4.5時間処理した。初期のたわみを軽減するために、一部の試料では4.5時間の処理の最終設定点を540℃に変更した。一度に最大7つの試料を金型中に配置した。軟らかいアルミニウムに対して試料が引き起こしうる破壊損傷から金型を保護するためにカーボンサスペンションを使用した。また、金型をさらに保護するために、試料に丸みを付ける成形を行い、エッジを平滑にした。試料に予備たわみを付与した後、高精度天秤を用いた重量によってそれらの特性決定を行い、プロフィロメーターを用いてたわみ測定を行った。試料の凸側を「裏」側と呼ぶ。
【0320】
前述のようにホットプレートを使用して、試料にスプレーコーティングした。試料上の塩の全重量の範囲は0.1g~0.2gの間であった。次に試料をオーブン中に入れ、前述のように覆った。コーティングされた側を「裏」側と呼び、これは負のたわみおよび凸形形状を有する。
【0321】
0.4mmおよび0.5mmの厚さを有する最初にたわませた試料を用いて非対称プロファイルを形成するための3ステップのイオン交換プロセス。スプレーコーティングに使用した塩組成は、100%のKNO3溶液、2%のLiNO3/98%のKNO3、および4%のLiNO3/96%のKNO3を含んだ。より多い量の塩を用いる1回のスプレーコーティングを、わずかにより少ない量の2回のスプレーコーティングとともに試みた。1回および2回の両方のスプレーコーティングは、試料上に配置する塩の質量を変更して同じ手順を用いてより多い量に首尾良くスケールアップできた。第1のIOXステップ手順で使用した2つの温度は370℃および390℃を含む。第1のIOXステップの時間は、塩溶液の1回または2回のいずれのコーティングを使用したかによって、0.25時間~3時間の範囲であった。
【0322】
第1のIOXステップ後の特性決定は、試料をDI水で洗浄して残留する塩を除去し、プロフィロメーターでたわみを測定し、高精度天秤を用いて重量を測定し、プリズム結合測定を行って圧縮応力、ニー圧縮応力、および層深さを求めることを含んだ。
【0323】
第2のIOXステップは、試料の両側の上の両側交換であった。このプロセスに使用した浴濃度は、49%のNaNO3/51%のKNO3であった。3.8時間および4.5時間の2つの異なるIOX時間を使用した。イオン交換前に、オーブン中、二次容器中で10分間、イオン交換と同じ温度の350℃で試料を予熱した。
【0324】
第3のIOXステップは、4%のNaNO3/96%のKNO3の塩溶液を15分~20分の時間使用する、ガラスの両側の上の両側スパイクであった。イオン交換前に、オーブン中、二次容器中で5分間、イオン交換と同じ温度の380℃で試料を予熱した。
【0325】
第2および第3のIOXステップ後の特性決定は、試料をDI水で洗浄して残留する塩を除去し、プロフィロメーターおよびフラットマスターシステムを用いてたわみを測定し、高精度天秤を用いて重量を測定し、SCALPで中央張力を測定し、プリズム結合測定を行って圧縮応力、ニー圧縮応力、および層深さを求めることを含んだ。全ての測定値は、各試料の全体の応力プロファイルおよび機械的性質を求めるために使用される。
【0326】
以下の表IIIは、試料の処理のための前述の複数の条件を示している。これらの試料は、380℃において15分間の4%のNaNO3/96%のKNO3の同じ最終スパイクを有する。
【0327】
【0328】
図30および31は、IOXプロセス中の各ステップ後の厚さ0.5mmの予備たわみを付与した試料の横断たわみおよび対角たわみをそれぞれ示している。
図30および31中に示される試料は、表III中に記載の試料M6C、M6D、およびM6Eである。
図30および31中に示される初期条件は、予備たわみを付与したガラス物品である。
【0329】
実施例6
63.76モル%のSiO2、15.05モル%のAl2O3、9.24モル%のNa2O、2.37モル%のB2O3、1.18モル%のZnO、5.88モル%のLi2O、0.05モル%のSnO2、および2.47モル%のP2O5の組成を有するガラス物品試料。試料は、平坦な50mm×50mmの正方形のシートの形態であり、厚さは0.8mmであった。これらの試料に対して3ステップのイオン交換プロセスを行った。
【0330】
試料を脱イオン(DI)水で洗浄し、高精度天秤で秤量した。次に、試料の表面上にスプレーされる塩溶液が迅速に乾燥し得られた塩堆積物中に水が全く残留しないことを保証するため、試料を200℃に設定したホットプレート上に置いた。試料の温度は約80℃~150℃の間であると推定された。試料の表面に塗布される実際のスプレーの回数は、試料上に望まれる塩の重量によって決定された。スプレー塗布の回数は15~30回であった。スプレー塗布の終了後、試料を再び秤量して、塩の全重量増加を求めた。次に試料を、コーティングされた側を上向きにして、420℃の温度のオーブン中に1時間入れて、第1のIOXステップを終了した。また試料は、オーブン中に入れるときに、試料表面と接触しないガラス製ペトリ皿のふたで覆った。コーティングされた試料表面を「裏」面と呼び、これは負のたわみおよび凸形形状を有した。したがって、「前」面は、凹形の形状を有した。
【0331】
第1のIOXステップ中の塩は、100%リン酸三カリウム(TKP)のコーティングであり、DI水中のTKPのほぼ飽和した溶液のスプレーコーティングによって堆積した。2つの試料を作製し、乾燥後、第1の試料は全塩重量が0.563gであり、第2の試料は全塩重量が約0.6gであった。
【0332】
第1のIOXステップ後の特性決定は、試料をDI水で洗浄して残留する塩を除去し、試料を酢酸の5%溶液で洗浄し、試料をDI水で洗浄し、アセトン中に浸した布で試料を拭き、プロフィロメーターおよびフラットマスターシステムを用いてたわみを測定し、高精度天秤を用いて重量を測定し、プリズム結合測定を行って圧縮応力、ニー圧縮応力、および層深さを求めることを含んだ。
【0333】
第2のIOXステップは、試料の両側の上の両側交換であった。このプロセスで使用した浴濃度は、70%のNaNO3/30%のKNO3であった。第2のIOXステップは4時間行った。イオン交換の前に、オーブン中15分間、イオン交換と同じ温度の380℃で試料を予熱した。第2のIOXステップによって、試料のたわみが反転して、前面が凸形の形状を有し裏面が凹形の形状を有するようになった。
【0334】
第3のIOXステップは、380℃において40分間の時間、7%のNaNO3/93%のKNO3塩溶液を用いるガラスの両側の上の両側スパイクであった。イオン交換の前に、試料を250℃で5分間、次に380℃でさらに5分間、別個のオーブン中で予熱した。第3のIOXステップ後、試料の前面は凸形の形状を有し、裏面は凹形の形状を有した。
【0335】
第2および第3のIOXステップ後の特性決定は、試料をDI水で洗浄して残留する塩を除去し、アセトン中に浸した布で試料を拭き、プロフィロメーターおよびフラットマスターシステムを用いてたわみを測定し、高精度天秤を用いて重量を測定し、SCALPで中央張力を測定し、プリズム結合測定を行って圧縮応力、ニー圧縮応力、および層深さを求めることを含んだ。
【0336】
各IOXステップ後の試料で測定された横断たわみを
図33中に示す。横断たわみの測定値は、第1のIOXステップ後のたわみの程度が、この第1のIOX塩組成の場合に再現性がないことを示している。第2および第3のIOXステップ後の横断たわみ測定値は実質的に一致した。各IOXステップ後、測定された対角たわみは横断たわみの1.88倍~2倍の間の大きさであった。
【0337】
実施例7
63.76モル%のSiO2、15.05モル%のAl2O3、9.24モル%のNa2O、2.37モル%のB2O3、1.18モル%のZnO、5.88モル%のLi2O、0.05モル%のSnO2、および2.47モル%のP2O5の組成を有するガラス物品試料。試料は、平坦な50mm×50mmの正方形のシートの形態であり、厚さは0.8mmであった。これらの試料に対して3ステップのイオン交換プロセスを行った。
【0338】
試料を脱イオン(DI)水で洗浄し、高精度天秤で秤量した。次に、試料の表面上にスプレーされる塩溶液が迅速に乾燥し得られた塩堆積物中に水が全く残留しないことを保証するため、試料を200℃に設定したホットプレート上に置いた。試料の温度は約80℃~150℃の間であると推定された。試料の表面に塗布される実際のスプレーの回数は、試料上に望まれる塩の重量によって決定された。スプレー塗布の回数は15~30回であった。スプレー塗布の終了後、試料を再び秤量して、塩の全重量増加を求めた。次に試料を、コーティングされた側を上向きにして、420℃の温度のオーブン中に1時間入れて、第1のIOXステップを終了した。また試料は、オーブン中に入れるときに、試料表面と接触しないガラス製ペトリ皿のふたで覆った。コーティングされた試料表面を「裏」面と呼び、これは負のたわみおよび凸形形状を有した。したがって、「前」面は、凹形の形状を有した。
【0339】
第1のIOXステップ中の塩は、99%のリン酸三カリウム(TKP)および1%のKNO3のコーティングであり、DI水中に重量基準で99%のTKPおよび1%のKNO3のほぼ飽和した溶液のスプレーコーティングによって堆積した。2つの試料を作製し、乾燥後、第1の試料は全塩重量が0.279gであり、第2の試料は全塩重量が約0.412gであった。
【0340】
第1のIOXステップ後の特性決定は、試料をDI水で洗浄して残留する塩を除去し、試料を酢酸の5%溶液で洗浄し、試料をDI水で洗浄し、アセトン中に浸した布で試料を拭き、プロフィロメーターおよびフラットマスターシステムを用いてたわみを測定し、高精度天秤を用いて重量を測定し、プリズム結合測定を行って圧縮応力、ニー圧縮応力、および層深さを求めることを含んだ。
【0341】
第2のIOXステップは、試料の両側の上の両側交換であった。このプロセスで使用した浴濃度は、70%のNaNO3/30%のKNO3であった。第2のIOXステップは4時間行った。イオン交換の前に、オーブン中15分間、イオン交換と同じ温度の380℃で試料を予熱した。第2のIOXステップによって、試料のたわみが反転して、前面が凸形の形状を有し裏面が凹形の形状を有するようになった。
【0342】
第3のIOXステップは、380℃において40分間の時間、7%のNaNO3/93%のKNO3塩溶液を用いるガラスの両側の上の両側スパイクであった。イオン交換の前に、試料を250℃で5分間、次に380℃でさらに5分間、別個のオーブン中で予熱した。第3のIOXステップ後、試料の前面は凸形の形状を有し、裏面は凹形の形状を有した。
【0343】
第2および第3のIOXステップ後の特性決定は、試料をDI水で洗浄して残留する塩を除去し、アセトン中に浸した布で試料を拭き、プロフィロメーターおよびフラットマスターシステムを用いてたわみを測定し、高精度天秤を用いて重量を測定し、SCALPで中央張力を測定し、プリズム結合測定を行って圧縮応力、ニー圧縮応力、および層深さを求めることを含んだ。
【0344】
各IOXステップ後の試料で測定された横断たわみを
図34中に示す。横断たわみの測定値は、各IOXステップ後でたわみの程度が再現性があったことを示している。各IOXステップ後、測定された対角たわみは横断たわみの1.8倍~1.97倍の間の大きさであった。
【0345】
実施例8
63.76モル%のSiO2、15.05モル%のAl2O3、9.24モル%のNa2O、2.37モル%のB2O3、1.18モル%のZnO、5.88モル%のLi2O、0.05モル%のSnO2、および2.47モル%のP2O5の組成を有するガラス物品試料。試料は、平坦な50mm×50mmの正方形のシートの形態であり、厚さは0.8mmであった。これらの試料に対して3ステップのイオン交換プロセスを行った。
【0346】
試料を脱イオン(DI)水で洗浄し、高精度天秤で秤量した。次に、試料の表面上にスプレーされる塩溶液が迅速に乾燥し得られた塩堆積物中に水が全く残留しないことを保証するため、試料を200℃に設定したホットプレート上に置いた。試料の温度は約80℃~150℃の間であると推定された。試料の表面に塗布される実際のスプレーの回数は、試料上に望まれる塩の重量によって決定された。スプレー塗布の回数は15~30回であった。スプレー塗布の終了後、試料を再び秤量して、塩の全重量増加を求めた。次に試料を、コーティングされた側を上向きにして、420℃の温度のオーブン中に1時間入れて、第1のIOXステップを終了した。また試料は、オーブン中に入れるときに、試料表面と接触しないガラス製ペトリ皿のふたで覆った。コーティングされた試料表面を「裏」面と呼び、これは負のたわみおよび凸形形状を有した。したがって、「前」面は、凹形の形状を有した。
【0347】
第1のIOXステップ中の塩は、96%のリン酸三カリウム(TKP)および4%のKNO3のコーティングであり、DI水中に重量基準で96%のTKPおよび4%のKNO3のほぼ飽和した溶液のスプレーコーティングによって堆積した。2つの試料を作製し、乾燥後、第1の試料は全塩重量が0.403gであり、第2の試料は全塩重量が約0.266gであった。
【0348】
第1のIOXステップ後の特性決定は、試料をDI水で洗浄して残留する塩を除去し、試料を酢酸の5%溶液で洗浄し、試料をDI水で洗浄し、アセトン中に浸した布で試料を拭き、プロフィロメーターおよびフラットマスターシステムを用いてたわみを測定し、高精度天秤を用いて重量を測定し、プリズム結合測定を行って圧縮応力、ニー圧縮応力、および層深さを求めることを含んだ。
【0349】
第2のIOXステップは、試料の両側の上の両側交換であった。このプロセスで使用した浴濃度は、70%のNaNO3/30%のKNO3であった。第2のIOXステップは4時間行った。イオン交換の前に、オーブン中15分間、イオン交換と同じ温度の380℃で試料を予熱した。第2のIOXステップによって、試料のたわみが反転して、前面が凸形の形状を有し裏面が凹形の形状を有するようになった。
【0350】
第3のIOXステップは、380℃において40分間の時間、7%のNaNO3/93%のKNO3塩溶液を用いるガラスの両側の上の両側スパイクであった。イオン交換の前に、試料を250℃で5分間、次に380℃でさらに5分間、別個のオーブン中で予熱した。第3のIOXステップ後、試料の前面は凸形の形状を有し、裏面は凹形の形状を有した。
【0351】
第2および第3のIOXステップ後の特性決定は、試料をDI水で洗浄して残留する塩を除去し、アセトン中に浸した布で試料を拭き、プロフィロメーターおよびフラットマスターシステムを用いてたわみを測定し、高精度天秤を用いて重量を測定し、SCALPで中央張力を測定し、プリズム結合測定を行って圧縮応力、ニー圧縮応力、および層深さを求めることを含んだ。
【0352】
各IOXステップ後の試料で測定された横断たわみを
図35中に示す。横断たわみの測定値は、各IOXステップ後でたわみの程度が再現性があったことを示している。各IOXステップ後、測定された対角たわみは横断たわみの1.89倍~1.99倍の間の大きさであった。
【0353】
実施例9
63.76モル%のSiO2、15.05モル%のAl2O3、9.24モル%のNa2O、2.37モル%のB2O3、1.18モル%のZnO、5.88モル%のLi2O、0.05モル%のSnO2、および2.47モル%のP2O5の組成を有するガラス物品試料。試料は、平坦な50mm×50mmの正方形のシートの形態であり、厚さは0.8mmであった。これらの試料に対して3ステップのイオン交換プロセスを行った。
【0354】
試料を脱イオン(DI)水で洗浄し、高精度天秤で秤量した。次に、試料の表面上にスプレーされる塩溶液が迅速に乾燥し得られた塩堆積物中に水が全く残留しないことを保証するため、試料を200℃に設定したホットプレート上に置いた。試料の温度は約80℃~150℃の間であると推定された。試料の表面に塗布される実際のスプレーの回数は、試料上に望まれる塩の重量によって決定された。スプレー塗布の回数は15~30回であった。スプレー塗布の終了後、試料を再び秤量して、塩の全重量増加を求めた。次に試料を、コーティングされた側を上向きにして、オーブン中に入れて、第1のIOXステップを終了した。また試料は、オーブン中に入れるときに、試料表面と接触しないガラス製ペトリ皿のふたで覆った。コーティングされた試料表面を「裏」面と呼び、これは負のたわみおよび凸形形状を有した。したがって、「前」面は、凹形の形状を有した。
【0355】
第1のIOXステップ中の塩は、92%のリン酸三カリウム(TKP)および8%のKNO3のコーティングであり、DI水中に重量基準で92%のTKPおよび8%のKNO3のほぼ飽和した溶液のスプレーコーティングによって堆積した。8つの試料を作製し、乾燥後の全塩重量は0.102g、0.205g、0.210g、0.408g、0.417g、0.468g、0.494g、および0.575gであった。0.205gおよび0.468gの全塩重量の試料を除けば、第1のIOXステップは、420℃の温度で1時間行った。0.205gの全塩重量の試料の第1のIOXステップは、390℃の温度で2時間行った。0.468gの全塩重量の試料の第1のIOXステップは、420℃の温度で2時間行った。
【0356】
第1のIOXステップ後の特性決定は、試料をDI水で洗浄して残留する塩を除去し、試料を酢酸の5%溶液で洗浄し、試料をDI水で洗浄し、アセトン中に浸した布で試料を拭き、プロフィロメーターおよびフラットマスターシステムを用いてたわみを測定し、高精度天秤を用いて重量を測定し、プリズム結合測定を行って圧縮応力、ニー圧縮応力、および層深さを求めることを含んだ。
【0357】
第2のIOXステップは、試料の両側の上の両側交換であった。このプロセスで使用した浴濃度は、70%のNaNO3/30%のKNO3であった。第2のIOXステップは4時間行った。イオン交換の前に、オーブン中15分間、イオン交換と同じ温度の380℃で試料を予熱した。第2のIOXステップによって、試料のたわみが反転して、前面が凸形の形状を有し裏面が凹形の形状を有するようになった。
【0358】
第3のIOXステップは、380℃において40分間の時間、7%のNaNO3/93%のKNO3塩溶液を用いるガラスの両側の上の両側スパイクであった。イオン交換の前に、試料を250℃で5分間、次に380℃でさらに5分間、別個のオーブン中で予熱した。第3のIOXステップ後、試料の前面は凸形の形状を有し、裏面は凹形の形状を有した。
【0359】
第2および第3のIOXステップ後の特性決定は、試料をDI水で洗浄して残留する塩を除去し、アセトン中に浸した布で試料を拭き、プロフィロメーターおよびフラットマスターシステムを用いてたわみを測定し、高精度天秤を用いて重量を測定し、SCALPで中央張力を測定し、プリズム結合測定を行って圧縮応力、ニー圧縮応力、および層深さを求めることを含んだ。
【0360】
各IOXステップ後の試料で測定された横断たわみを
図36中に示す。横断たわみの測定値は、各IOXステップ後でたわみの程度が再現性があったことを示している。各IOXステップ後、測定された対角たわみは横断たわみの1.86倍~2.1倍の間の大きさであった。
【0361】
実施例10
63.76モル%のSiO2、15.05モル%のAl2O3、9.24モル%のNa2O、2.37モル%のB2O3、1.18モル%のZnO、5.88モル%のLi2O、0.05モル%のSnO2、および2.47モル%のP2O5の組成を有するガラス物品試料。試料は、平坦な50mm×50mmの正方形のシートの形態であり、厚さは0.8mmであった。これらの試料に対して3ステップのイオン交換プロセスを行った。
【0362】
試料を脱イオン(DI)水で洗浄し、高精度天秤で秤量した。次に、試料の表面上にスプレーされる塩溶液が迅速に乾燥し得られた塩堆積物中に水が全く残留しないことを保証するため、試料を200℃に設定したホットプレート上に置いた。試料の温度は約80℃~150℃の間であると推定された。試料の表面に塗布される実際のスプレーの回数は、試料上に望まれる塩の重量によって決定された。スプレー塗布の回数は15~30回であった。スプレー塗布の終了後、試料を再び秤量して、塩の全重量増加を求めた。次に試料を、コーティングされた側を上向きにして、オーブン中に入れて、第1のIOXステップを終了した。また試料は、オーブン中に入れるときに、試料表面と接触しないガラス製ペトリ皿のふたで覆った。コーティングされた試料表面を「裏」面と呼び、これは負のたわみおよび凸形形状を有した。したがって、「前」面は、凹形の形状を有した。
【0363】
第1のIOXステップ中の塩は、10%のリン酸三カリウム(TKP)および90%のKNO3のコーティングであり、DI水中に重量基準で10%のTKPおよび90%のKNO3のほぼ飽和した溶液のスプレーコーティングによって堆積した。3つの試料を作製し、乾燥後の全塩重量は0.106g、0.134g、および0.146gであった。第1のIOXステップは420℃の温度で1時間行った。
【0364】
第1のIOXステップ後の特性決定は、試料をDI水で洗浄して残留する塩を除去し、試料を酢酸の5%溶液で洗浄し、試料をDI水で洗浄し、アセトン中に浸した布で試料を拭き、プロフィロメーターおよびフラットマスターシステムを用いてたわみを測定し、高精度天秤を用いて重量を測定し、プリズム結合測定を行って圧縮応力、ニー圧縮応力、および層深さを求めることを含んだ。
【0365】
第2のIOXステップは、試料の両側の上の両側交換であった。このプロセスで使用した浴濃度は、70%のNaNO3/30%のKNO3であった。第2のIOXステップは4時間行った。イオン交換の前に、オーブン中15分間、イオン交換と同じ温度の380℃で試料を予熱した。第2のIOXステップによって、試料のたわみが反転して、前面が凸形の形状を有し裏面が凹形の形状を有するようになった。
【0366】
第3のIOXステップは、380℃において40分間の時間、7%のNaNO3/93%のKNO3塩溶液を用いるガラスの両側の上の両側スパイクであった。イオン交換の前に、試料を250℃で5分間、次に380℃でさらに5分間、別個のオーブン中で予熱した。第3のIOXステップ後、試料の前面は凸形の形状を有し、裏面は凹形の形状を有した。
【0367】
第2および第3のIOXステップ後の特性決定は、試料をDI水で洗浄して残留する塩を除去し、アセトン中に浸した布で試料を拭き、プロフィロメーターおよびフラットマスターシステムを用いてたわみを測定し、高精度天秤を用いて重量を測定し、SCALPで中央張力を測定し、プリズム結合測定を行って圧縮応力、ニー圧縮応力、および層深さを求めることを含んだ。
【0368】
各IOXステップ後の試料で測定された横断たわみを
図37中に示す。横断たわみ測定値は、各IOXステップ後に再現性がなかったことを示している。これは、部分的には試料の裏面から前面への第1のIOXステップ中の塩のウィッキングが観察されたためであり、低濃度のTKPのためである可能性がある。各IOXステップ後、測定された対角たわみは横断たわみの1.78倍~1.97倍の間の大きさであった。
【0369】
実施例11
63.76モル%のSiO2、15.05モル%のAl2O3、9.24モル%のNa2O、2.37モル%のB2O3、1.18モル%のZnO、5.88モル%のLi2O、0.05モル%のSnO2、および2.47モル%のP2O5の組成を有するガラス物品試料。試料は、平坦な50mm×50mmの正方形のシートの形態であり、厚さは0.8mmであった。これらの試料に対して3ステップのイオン交換プロセスを行った。
【0370】
試料を脱イオン(DI)水で洗浄し、高精度天秤で秤量した。次に、試料の表面上にスプレーされる塩溶液が迅速に乾燥し得られた塩堆積物中に水が全く残留しないことを保証するため、試料を200℃に設定したホットプレート上に置いた。試料の温度は約80℃~150℃の間であると推定された。試料上に塩溶液をスプレーコーティングする前に、試料の中央に40mm×40mmの正方形のアルミニウム箔を置いた。この配置によって、表面の各エッジから5mm延在する領域である、試料の周辺部にのみ塩を堆積することができる。試料の表面に塗布される実際のスプレーの回数は、試料上に望まれる塩の重量によって決定された。スプレー塗布の回数は15~30回であった。スプレー塗布の終了後、試料からアルミニウム箔を取り外し、試料を再び秤量して、塩の全重量増加を求めた。次に試料を、コーティングされた側を上向きにして、オーブン中に入れて、第1のIOXステップを終了した。また試料は、オーブン中に入れるときに、試料表面と接触しないガラス製ペトリ皿のふたで覆った。コーティングされた試料表面を「裏」面と呼び、これは負のたわみおよび凸形形状を有した。したがって、「前」面は、凹形の形状を有した。
【0371】
第1のIOXステップ中の塩は、92%のリン酸三カリウム(TKP)および8%のKNO3のコーティングであり、DI水中に重量基準で92%のTKPおよび8%のKNO3のほぼ飽和した溶液のスプレーコーティングによって堆積した。3つの試料を作製し、乾燥後の全塩重量は0.110g、0.111g、0.112g、および0.183gであった。0.112gの全塩重量の試料を除けば、第1のIOXステップは420℃の温度で1時間行った。0.112gの全塩重量の試料の第1のIOXステップは、420℃の温度で2.42時間行った。
【0372】
第1のIOXステップ後の特性決定は、試料をDI水で洗浄して残留する塩を除去し、試料を酢酸の5%溶液で洗浄し、試料をDI水で洗浄し、アセトン中に浸した布で試料を拭き、プロフィロメーターおよびフラットマスターシステムを用いてたわみを測定し、高精度天秤を用いて重量を測定し、プリズム結合測定を行って圧縮応力、ニー圧縮応力、および層深さを求めることを含んだ。
【0373】
第2のIOXステップは、試料の両側の上の両側交換であった。このプロセスで使用した浴濃度は、70%のNaNO3/30%のKNO3であった。第2のIOXステップは4時間行った。イオン交換の前に、オーブン中15分間、イオン交換と同じ温度の380℃で試料を予熱した。第2のIOXステップによって、試料のたわみが反転して、前面が凸形の形状を有し裏面が凹形の形状を有するようになった。
【0374】
第3のIOXステップは、380℃において40分間の時間、7%のNaNO3/93%のKNO3塩溶液を用いるガラスの両側の上の両側スパイクであった。イオン交換の前に、試料を250℃で5分間、次に380℃でさらに5分間、別個のオーブン中で予熱した。第3のIOXステップ後、試料の前面は凸形の形状を有し、裏面は凹形の形状を有した。
【0375】
第2および第3のIOXステップ後の特性決定は、試料をDI水で洗浄して残留する塩を除去し、アセトン中に浸した布で試料を拭き、プロフィロメーターおよびフラットマスターシステムを用いてたわみを測定し、高精度天秤を用いて重量を測定し、SCALPで中央張力を測定し、プリズム結合測定を行って圧縮応力、ニー圧縮応力、および層深さを求めることを含んだ。
【0376】
各IOXステップ後の試料で測定された横断たわみを
図38中に示す。第3のIOXステップ後の試料で測定された横断たわみは8μm~28μmの間であった。各IOXステップ後、測定された対角たわみは横断たわみの1.26倍~3.63倍の間の大きさであった。観察されたたわみは、周辺部に集中し、そのため試料の中央は、第1のIOXステップが試料の表面全体のコーティングを伴った同様の試料よりも実質的に低い曲率を示した。横断たわみの範囲および横断たわみの平均値は、第1のIOXステップが試料の表面全体のコーティングを伴った同様の試料よりも少なくとも1桁小さかった。
【0377】
実施例12
63.76モル%のSiO2、15.05モル%のAl2O3、9.24モル%のNa2O、2.37モル%のB2O3、1.18モル%のZnO、5.88モル%のLi2O、0.05モル%のSnO2、および2.47モル%のP2O5の組成を有するガラス物品試料。試料は、平坦な50mm×50mmの正方形のシートの形態であり、厚さは0.8mmであった。これらの試料に対して3ステップのイオン交換プロセスを行った。
【0378】
試料を脱イオン(DI)水で洗浄し、アセトン中に浸したきれいな布で拭き、高精度天秤で秤量した。試料の表面上にスプレーされる塩溶液が迅速に乾燥し得られた塩堆積物中に水が全く残留しないことを保証するため、試料を200℃~250℃に設定したホットプレート上に置いた。試料の温度は約80℃~150℃の間であると推定された。試料の表面に塗布される実際のスプレーの回数は、試料上に望まれる塩の重量によって決定された。スプレー塗布の回数は15~30回であった。スプレー塗布の終了後、試料を再び秤量して、塩の全重量増加を求めた。次に試料を、コーティングされた側を上向きにして、オーブン中に入れて、第1のIOXステップを終了した。また試料は、オーブン中に入れるときに、試料表面と接触しないガラス製ペトリ皿のふたで覆った。コーティングされた試料表面を「裏」面と呼び、これは負のたわみおよび凸形形状を有した。したがって、「前」面は、凹形の形状を有した。
【0379】
第1のIOXステップ中の塩は、以下の表IVに示される塩のコーティングであり、DI水中でほぼ飽和した溶液のスプレーコーティングによって体積した。これらの溶液は、成分の混合および振盪を行って塩を完全に溶解させることで調製した。次にこれらの溶液は、大型汚染粒子を除去するために、きれいな布を用いてスプレーボトル中に濾過して入れた。乾燥後の試料の全塩重量は0.1g~0.6gであった。
【0380】
【0381】
第1のIOXステップは420℃の温度で1時間行った。
【0382】
第1のIOXステップ後の特性決定は、試料をDI水で洗浄して残留する塩を除去し、塩の堆積による汚れを除去するために試料を酢酸の5%溶液で洗浄し、試料をDI水で洗浄し、アセトン中に浸した布で試料を拭き、プロフィロメーターおよびフラットマスターシステムを用いてたわみを測定し、高精度天秤を用いて重量を測定し、プリズム結合測定を行って圧縮応力、ニー圧縮応力、および層深さを求めることを含んだ。汚れの程度によるが、酢酸洗浄は約30分~約3時間の範囲であった。幾つかの場合では、汚れを完全に除去することはできなかった。
【0383】
第2のIOXステップは、試料の両側の上の両側交換であった。このプロセスで使用した浴濃度は、70%のNaNO3/30%のKNO3であった。第2のIOXステップは4時間行った。イオン交換の前に、オーブン中15分間、イオン交換と同じ温度の380℃で試料を予熱した。第2のIOXステップによって、試料のたわみが反転して、前面が凸形の形状を有し裏面が凹形の形状を有するようになった。
【0384】
第3のIOXステップは、380℃において40分間の時間、7%のNaNO3/93%のKNO3塩溶液を用いるガラスの両側の上の両側スパイクであった。イオン交換の前に、試料を250℃で5分間、次に380℃でさらに5分間、別個のオーブン中で予熱した。第3のIOXステップ後、試料の前面は凸形の形状を有し、裏面は凹形の形状を有した。
【0385】
第2および第3のIOXステップ後の特性決定は、試料をDI水で洗浄して残留する塩を除去し、アセトン中に浸した布で試料を拭き、プロフィロメーターおよびフラットマスターシステムを用いてたわみを測定し、高精度天秤を用いて重量を測定し、SCALPで中央張力を測定し、プリズム結合測定を行って圧縮応力、ニー圧縮応力、および層深さを求めることを含んだ。
【0386】
特性決定の結果を以下の表Vに示す。表5中に示されるように、第1のIOX塩中の固体成分としてのTKPの量が増加すると、表面に広がる量が減少する。同様に、TKPの量が増加すると、リチウムの有害作用が低下するために圧縮応力の低下の量も減少する。
【0387】
【0388】
説明の目的で典型的な実施形態を示してきたが、以上の記述は、本開示または添付の請求項の範囲を限定するものであると見なすべきではない。したがって、本開示の意図および範囲または添付の請求項から逸脱しない種々の修正、適応、および代案を当業者は見出すことができる。
【0389】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0390】
実施形態1
ガラス物品において:
第1の表面と;
第2の表面と;
前記第1の表面から前記第2の表面まで延在する非対称応力プロファイルと;
少なくとも約0.5mの前記非対称応力プロファイルの反り性能指数(Warpage Figure of Merit)と;
少なくとも約0.05の前記非対称応力プロファイルの非対称性能指数(Asymmetry Figure of Merit)と、
を含むことを特徴とするガラス物品。
【0391】
実施形態2
ガラス物品において:
第1の表面と;
第2の表面と;
前記第1の表面から前記第2の表面まで延在する非対称応力プロファイルと;
前記ガラス物品の厚さの約12分の1未満の前記非対称応力プロファイルの反り傾向(Warpage Tendency)と;
少なくとも約0.05の前記非対称応力プロファイルの非対称性能指数と、
を含むことを特徴とするガラス物品。
【0392】
実施形態3
ガラス物品において:
第1の表面と;
第2の表面と;
前記第1の表面から前記第2の表面まで延在する非対称応力プロファイルと;
少なくとも約0.05の前記非対称応力プロファイルの非対称性能指数と、
を含むことを特徴とするガラス物品。
【0393】
実施形態4
ガラス物品において:
第1の表面と;
第2の表面と;
前記第1の表面から前記第2の表面まで延在する非対称応力プロファイルと;
前記ガラス物品の厚さの約12分の1未満の前記非対称応力プロファイルの反り傾向と、
を含むことを特徴とするガラス物品。
【0394】
実施形態5
ガラス物品において:
第1の表面と;
第2の表面と;
前記第1の表面から前記第2の表面まで延在する非対称応力プロファイルと;
少なくとも約0.5mの前記非対称応力プロファイルの反り性能指数と、
を含むことを特徴とするガラス物品。
【0395】
実施形態6
約2モル%~約20モル%のB2O3をさらに含むことを特徴とする実施形態1~5のいずれか一項に記載のガラス物品。
【0396】
実施形態7
50~75モル%のSiO2;
5~20モル%のAl2O3;
2~20モル%のB2O3;
0~10モル%のP2O5;
6~25モル%のLi2O+Na2O+K2O;および
0~15モル%のMgO+CaO+SrO+BaO+ZnO
をさらに含むことを特徴とする実施形態1~6のいずれか一項に記載のガラス物品。
【0397】
実施形態8
前記非対称応力プロファイルの前記反り性能指数が少なくとも約1mであることを特徴とする実施形態1~7のいずれか一項に記載のガラス物品。
【0398】
実施形態9
前記非対称応力プロファイルの前記反り性能指数が少なくとも約10mであることを特徴とする実施形態1~8のいずれか一項に記載のガラス物品。
【0399】
実施形態10
前記非対称応力プロファイルの前記非対称性能指数が少なくとも約0.2であることを特徴とする実施形態1~9のいずれか一項に記載のガラス物品。
【0400】
実施形態11
前記非対称応力プロファイルの前記非対称性能指数が少なくとも約0.5であることを特徴とする実施形態1~10のいずれか一項に記載のガラス物品。
【0401】
実施形態12
前記第2の表面の下10μmの深さにおいて少なくとも約500MPaの圧縮応力をさらに含むことを特徴とする実施形態1~12のいずれか一項に記載のガラス物品。
【0402】
実施形態13
前記第2の表面の下5μmの深さにおいて少なくとも約650MPaの圧縮応力をさらに含むことを特徴とする実施形態1~12のいずれか一項に記載のガラス物品。
【0403】
実施形態14
前記第1の表面と前記第2の表面との間の距離の10%の前記第1の表面の下の深さにおいて少なくとも約40MPaの圧縮応力をさらに含むことを特徴とする実施形態1~13のいずれか一項に記載のガラス物品。
【0404】
実施形態15
前記第1の表面と前記第2の表面との間の距離の15%の前記第1の表面の下の深さにおいて少なくとも約30MPaの圧縮応力をさらに含むことを特徴とする実施形態1~14のいずれか一項に記載のガラス物品。
【0405】
実施形態16
少なくとも約12.5mの曲率半径をさらに含むことを特徴とする実施形態1~15のいずれか一項に記載のガラス物品。
【0406】
実施形態17
前記第1の表面から前記ガラス物品中の第1の圧縮深さまで延在する第1の圧縮応力層と;
前記第2の表面から前記ガラス物品中の第2の圧縮深さまで延在する第2の圧縮応力層と;
前記第1の圧縮応力層中の第1の最大圧縮応力と;
前記第2の圧縮応力層中の第2の最大圧縮応力と
をさらに含み、
前記第1の最大圧縮応力と前記第2の最大圧縮応力との比が約1:3以下であることを特徴とする実施形態1~16のいずれか一項に記載のガラス物品。
【0407】
実施形態18
前記ガラス物品が約0.3未満の反り抑制因子を有することを特徴とする実施形態1~17のいずれか一項に記載のガラス物品。
【0408】
実施形態19
前記第1の表面と前記第2の表面との間の距離が約1mm未満であることを特徴とする実施形態1~18のいずれか一項に記載のガラス物品。
【0409】
実施形態20
前記ガラス物品が、前記第1の表面から前記第2の表面まで延在する第2の応力プロファイルを有する領域を含み、前記第2の応力プロファイルが前記非対称応力プロファイルとは異なることを特徴とする実施形態1~19のいずれか一項に記載のガラス物品。
【0410】
実施形態21
前記非対称応力プロファイルの非対称性能指数と前記第2の応力プロファイルの非対称性能指数との間の差が少なくとも0.2であることを特徴とする実施形態20に記載のガラス物品。
【0411】
実施形態22
ガラスセラミックをさらに含むことを特徴とする実施形態1~21のいずれか一項に記載のガラス物品。
【0412】
実施形態23
前記ガラス物品が、少なくとも第1の層および第2の層を含む積層構造であり、前記第1の層および第2の層のそれぞれがガラスまたはガラスセラミックを含むことを特徴とする実施形態1~22のいずれか一項に記載のガラス物品。
【0413】
実施形態24
消費者向け電子製品において:
前面、裏面、および側面を有するハウジングと;
少なくとも部分的に前記ハウジング内に設けられる電気部品において、少なくともコントローラ、メモリ、およびディスプレイを含み、前記ディスプレイが前記ハウジングの前記前面に設けられる、または前記前面に隣接して設けられる電気部品と;
前記ディスプレイ上に配置されるカバーガラス物品と
を含み、前記ハウジングの一部または前記カバーガラス物品の少なくとも1つが、実施形態1~23のいずれか一項に記載のガラス物品を含むことを特徴とする消費者向け電子部品。
【0414】
実施形態25
ガラス物品において:
第1の表面と;
第2の表面と;
前記第1の表面から前記第2の表面まで延在する非対称応力プロファイルと;
前記第1の表面から前記ガラス物品中の第1の圧縮深さまで延在する第1の圧縮応力層と;
前記第2の表面から前記ガラス物品中の第2の圧縮深さまで延在する第2の圧縮応力層と;
反り高さと
を含み、
前記第1の圧縮深さと前記第2の圧縮深さとの比が少なくとも約1.5:1であり、前記反り高さが前記ガラス物品の最大寸法の約1%未満であることを特徴とするガラス物品。
【0415】
実施形態26
前記第1の圧縮応力層中の第1の最大圧縮応力と;
前記第2の圧縮応力層中の第2の最大圧縮応力と
をさらに含み、
前記第1の最大圧縮応力と前記第2の最大圧縮応力との比が約1:3以下であることを特徴とする実施形態25に記載のガラス物品。
【0416】
実施形態27
前記第1の圧縮深さと前記第2の圧縮深さとの比が少なくとも約3:1であることを特徴とする実施形態25または26に記載のガラス物品。
【0417】
実施形態28
前記反り高さが、前記ガラス物品の最大寸法の約0.1%未満であることを特徴とする実施形態25~27のいずれか一項に記載のガラス物品。
【0418】
実施形態29
前記ガラス物品が少なくとも約0.2の非対称性能指数を有することを特徴とする実施形態25~28のいずれか一項に記載のガラス物品。
【0419】
実施形態30
前記ガラス物品が少なくとも約0.5mの反り性能指数を有することを特徴とする実施形態25~29のいずれか一項に記載のガラス物品。
【0420】
実施形態31
前記ガラス物品が約0.3未満の反り抑制因子を有することを特徴とする実施形態25~30のいずれか一項に記載のガラス物品。
【0421】
実施形態32
前記第2の表面の下10μmの深さにおいて少なくとも約500MPaの圧縮応力をさらに含むことを特徴とする実施形態25~31のいずれか一項に記載のガラス物品。
【0422】
実施形態33
前記第2の表面の下5μmの深さにおいて少なくとも約650MPaの圧縮応力をさらに含むことを特徴とする実施形態25~32のいずれか一項に記載のガラス物品。
【0423】
実施形態34
前記第1の表面と前記第2の表面との間の距離の10%の前記第1の表面の下の深さにおいて少なくとも約40MPaの圧縮応力をさらに含むことを特徴とする実施形態25~33のいずれか一項に記載のガラス物品。
【0424】
実施形態35
前記第1の表面と前記第2の表面との間の距離の15%の前記第1の表面の下の深さにおいて少なくとも約30MPaの圧縮応力をさらに含むことを特徴とする実施形態25~34のいずれか一項に記載のガラス物品。
【0425】
実施形態36
前記第1の表面と前記第2の表面との間の距離が約1mm未満であることを特徴とする実施形態25~35のいずれか一項に記載のガラス物品。
【0426】
実施形態37
少なくとも約12.5mの曲率半径をさらに含むことを特徴とする実施形態25~36のいずれか一項に記載のガラス物品。
【0427】
実施形態38
ガラスセラミックをさらに含むことを特徴とする実施形態25~37のいずれか一項に記載のガラス物品。
【0428】
実施形態39
前記ガラス物品が、少なくとも第1の層および第2の層を含む積層構造であり、前記第1の層および第2の層のそれぞれがガラスまたはガラスセラミックを含むことを特徴とする実施形態25~38のいずれか一項に記載のガラス物品。
【0429】
実施形態40
消費者向け電子製品において:
前面、裏面、および側面を有するハウジングと;
少なくとも部分的に前記ハウジング内に設けられる電気部品において、少なくともコントローラ、メモリ、およびディスプレイを含み、前記ディスプレイが、前記ハウジングの前記前面に設けられる、または前記前面に隣接して設けられる電気部品と;
前記ディスプレイ上に配置されるカバーガラス物品と
を含み、前記ハウジングの一部または前記カバーガラス物品の少なくとも1つが、実施形態25~39のいずれか一項に記載のガラス物品を含むことを特徴とする消費者向け電子製品。
【0430】
実施形態41
ガラス物品の第1の表面をイオン交換して、前記第1の表面から延在する第1の圧縮応力層を形成するステップと;
前記ガラス物品の第2の表面をイオン交換して、前記第2の表面から延在する第2の圧縮応力層を形成するステップと
を含み、
前記第1の圧縮応力層および前記第2の圧縮応力層を含む前記ガラス物品が、少なくとも約0.5mの反り性能指数、および少なくとも約0.05の非対称性能指数を含むことを特徴とする方法。
【0431】
実施形態42
前記ガラス物品を熱処理するステップをさらに含むことを特徴とする実施形態41に記載の方法。
【0432】
実施形態43
前記第1の圧縮応力層と前記第2の圧縮応力層とが同時に形成されることを特徴とする実施形態41または42に記載の方法。
【0433】
実施形態44
前記第2の表面をイオン交換するステップの前に、前記ガラス物品の前記第1の表面に障壁層を形成するステップをさらに含むことを特徴とする実施形態41~43のいずれか一項に記載の方法。
【0434】
実施形態45
前記障壁層を形成するステップが、前記第1の表面をCu、Ca、Mg、Zn、およびTiのイオンの少なくとも1つでイオン交換するステップを含むことを特徴とする実施形態44に記載の方法。
【0435】
実施形態46
前記障壁層が1μm未満の深さを有することを特徴とする実施形態44または45に記載の方法。
【0436】
実施形態47
前記障壁層を前記ガラス物品から除去するステップをさらに含むことを特徴とする実施形態44~46のいずれか一項に記載の方法。
【0437】
実施形態48
前記ガラス物品をイオン交換するステップの前に、前記ガラス物品を熱処理して湾曲したガラス物品を形成するステップをさらに含むことを特徴とする実施形態41~47のいずれか一項に記載の方法。
【0438】
実施形態49
ガラス物品の第1の表面の少なくとも一部の上に塩を配置するステップと;
前記ガラス物品および塩をイオン交換温度まで加熱することによって、前記ガラス物品をイオン交換して、非対称応力プロファイルを有するガラス物品を形成するステップと
を含み、
前記塩が、前記イオン交換温度において固体である固体成分を含むことを特徴とする方法。
【0439】
実施形態50
前記塩が、前記イオン交換温度において液体である液体成分をさらに含むことを特徴とする実施形態49に記載の方法。
【0440】
実施形態51
前記固体成分が硫酸アルカリおよびリン酸アルカリの少なくとも1つを含むことを特徴とする実施形態49または50に記載の方法。
【0441】
実施形態52
前記固体成分が、リン酸三カリウム、リン酸三ナトリウム、硫酸カリウム、および硫酸ナトリウムの少なくとも1つを含むことを特徴とする実施形態49~51のいずれか一項に記載の方法。
【0442】
実施形態53
前記液体成分が少なくとも1つの硝酸アルカリを含むことを特徴とする実施形態50~52のいずれか一項に記載の方法。
【0443】
実施形態54
前記液体成分がKNO3およびNaNO3の少なくとも1つを含むことを特徴とする実施形態50~53のいずれか一項に記載の方法。
【0444】
実施形態55
前記固体成分が5重量%~99.5重量%の量で前記塩に存在することを特徴とする実施形態49~54のいずれか一項に記載の方法。
【0445】
実施形態56
前記固体成分が30重量%~98重量%の量で前記塩に存在することを特徴とする実施形態49~55のいずれか一項に記載の方法。
【0446】
実施形態57
前記塩が、前記第1の表面の全体の上に配置されることを特徴とする実施形態49~56のいずれか一項に記載の方法。
【0447】
実施形態58
前記塩が、前記第1の表面の中央の上には配置されないことを特徴とする実施形態49~57のいずれか一項に記載の方法。
【0448】
実施形態59
前記塩が、前記第1の表面の周辺部にのみ配置されることを特徴とする実施形態49~58のいずれか一項に記載の方法。
【0449】
実施形態60
前記塩を配置するステップの前に、前記第1の表面の一部の上に障壁層を形成するステップをさらに含むことを特徴とする実施形態49~59のいずれか一項に記載の方法。
【0450】
実施形態61
前記障壁層が、アルカリフリーガラス、SiO2、および金属の少なくとも1つを含むことを特徴とする実施形態60に記載の方法。
【0451】
実施形態62
前記ガラス物品のイオン交換のステップの後に前記障壁層を除去するステップをさらに含むことを特徴とする実施形態60または61に記載の方法。
【0452】
実施形態63
前記ガラス物品を溶融塩浴に接触させるステップをさらに含むことを特徴とする実施形態49~62のいずれか一項に記載の方法。
【0453】
実施形態64
前記ガラス物品を第2の溶融塩浴に接触させるステップをさらに含むことを特徴とする実施形態63に記載の方法。
【0454】
実施形態65
前記非対称応力プロファイルが少なくとも約0.05の非対称性能指数を有することを特徴とする実施形態49~64のいずれか一項に記載の方法。
【0455】
実施形態66
前記非対称応力プロファイルが少なくとも約0.5mの反り性能指数を有することを特徴とする実施形態49~65のいずれか一項に記載の方法。
【0456】
実施形態67
前記非対称応力プロファイルが、前記ガラス物品の厚さの約12分の1未満の反り傾向を有することを特徴とする実施形態49~66のいずれか一項に記載の方法。