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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】物体検出方法及び物体検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/89 20200101AFI20231106BHJP
   G01S 17/931 20200101ALI20231106BHJP
【FI】
G01S17/89
G01S17/931
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020009417
(22)【出願日】2020-01-23
(65)【公開番号】P2021117051
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】武田 祐一
(72)【発明者】
【氏名】土谷 千加夫
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-109393(JP,A)
【文献】特開2012-123471(JP,A)
【文献】特開2009-169619(JP,A)
【文献】特開2013-205354(JP,A)
【文献】特開2017-187422(JP,A)
【文献】特開2006-010584(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0282581(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108254758(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51,
G01S 17/00-17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体表面の位置をセンサで検出した点群データを、同一の検出範囲に対して複数回取得し、
前記検出範囲に設定されたセル毎に、前記点群データがセルに現れる出現頻度を取得し、
前記点群データの出現頻度が予め定めた所定の頻度閾値以上のセルを、同一位置に定常的に存在する定常物体に占有されるセルである定常物体セルと判定し、当該定常物体セルに前記点群データが現れる出現頻度と、前記定常物体セルの近傍の他のセルに前記点群データが現れる出現頻度と、の差が所定値以下である場合に、前記他のセルも定常物体セルであると判断
水平面内位置が等しく鉛直方向位置が異なる複数のセルに対して同一の前記頻度閾値を設定し、
鉛直方向位置が異なる前記複数のセルに前記点群データが現れるそれぞれの出現頻度に基づいて前記頻度閾値を定める、
ことを特徴とする物体検出方法。
【請求項2】
物体表面の位置をセンサで検出した点群データを、同一の検出範囲に対して複数回取得し、
前記検出範囲に設定されたセル毎に、前記点群データがセルに現れる出現頻度を取得し、
前記点群データの出現頻度が予め定めた所定の頻度閾値以上のセルを、同一位置に定常的に存在する定常物体に占有されるセルである定常物体セルと判定し、当該定常物体セルに前記点群データが現れる出現頻度と、前記定常物体セルの近傍の他のセルに前記点群データが現れる出現頻度と、の差が所定値以下である場合に、前記他のセルも定常物体セルであると判断し、
セルに前記点群データが現れる出現頻度を前記点群データの取得時刻の間隔に応じて重み付けし、重み付けされた前記出現頻度に基づいて定常物体セルであるか否かを判断する、
ことを特徴とする物体検出方法。
【請求項3】
前記他のセルに前記点群データが現れる出現頻度がゼロでなく、且つ前記定常物体セルに前記点群データが現れる出現頻度との差が前記所定値よりも大きい場合に、前記他のセルが、前記検出範囲に一時的に存在する非定常物体に占有されるセルであると判断することを特徴とする請求項1又は2に記載の物体検出方法。
【請求項4】
複数回取得される前記点群データは、物体表面の位置を検出する前記センサを搭載した車両が前記検出範囲又はその周囲を前記複数回走行し、前記センサで前記検出範囲内の物体表面の位置を検出することにより得られる前記点群データであることを特徴とする請求項に記載の物体検出方法。
【請求項5】
前記定常物体は静止物体であり、前記非定常物体は移動物体であることを特徴とする請求項に記載の物体検出方法。
【請求項6】
前記定常物体セルと前記他のセルとが隣接し、前記他のセルに前記点群データが現れる出現頻度と前記定常物体セルに前記点群データが現れる出現頻度との差が前記所定値以下である場合に、前記他のセルを定常物体セルと判断することを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の物体検出方法。
【請求項7】
前記点群データを取得する前記複数回のうち、各セルにおいて前記点群データを取得できる回数である取得可能回数を、セル毎に判断し、
前記取得可能回数に応じてセル毎に前記頻度閾値を設定する、
ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の物体検出方法。
【請求項8】
定常物体セルと判断された前記他のセルに隣接する第2の他のセルに前記点群データが現れる出現頻度と、前記他のセルに隣接する前記定常物体セルに前記点群データが現れる出現頻度又は前記他のセルに前記点群データが現れる出現頻度と、の差が前記所定値以下である場合に、前記第2の他のセルも定常物体セルであると判断することを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の物体検出方法。
【請求項9】
同一の検出範囲に対して物体表面の位置をセンサで検出することにより複数回取得した前記物体表面の位置の点群データを記憶する記憶装置と、
前記検出範囲に設定されたセル毎に、前記点群データがセルに現れる出現頻度を取得し、前記点群データの出現頻度が予め定めた所定の頻度閾値以上のセルを、同一位置に定常的に存在する定常物体に占有されるセルである定常物体セルと判定し、当該定常物体セルに前記点群データが現れる出現頻度と、前記定常物体セルの近傍の他のセルに前記点群データが現れる出現頻度と、の差が所定値以下である場合に、前記他のセルも定常物体セルであると判断する、コントローラと、
を備え
前記コントローラは、水平面内位置が等しく鉛直方向位置が異なる複数のセルに対して同一の前記頻度閾値を設定し、鉛直方向位置が異なる前記複数のセルに前記点群データが現れるそれぞれの出現頻度に基づいて前記頻度閾値を定めることを特徴とする物体検出装置。
【請求項10】
同一の検出範囲に対して物体表面の位置をセンサで検出することにより複数回取得した前記物体表面の位置の点群データを記憶する記憶装置と、
前記検出範囲に設定されたセル毎に、前記点群データがセルに現れる出現頻度を取得し、前記点群データの出現頻度が予め定めた所定の頻度閾値以上のセルを、同一位置に定常的に存在する定常物体に占有されるセルである定常物体セルと判定し、当該定常物体セルに前記点群データが現れる出現頻度と、前記定常物体セルの近傍の他のセルに前記点群データが現れる出現頻度と、の差が所定値以下である場合に、前記他のセルも定常物体セルであると判断する、コントローラと、
を備え、
前記コントローラは、セルに前記点群データが現れる出現頻度を前記点群データの取得時刻の間隔に応じて重み付けし、重み付けされた前記出現頻度に基づいて定常物体セルであるか否かを判断することを特徴とする物体検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体検出方法及び物体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、自車両の周囲の検出範囲で検出した点群情報に基づいて、自車両の周囲の立体物を検出する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-203766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
物体表面の位置を検出した点群データを、同一の検出範囲に対して複数回取得することによって、同一位置に定常的に存在する定常物体を検出することができる。すなわち、検出範囲にセルを設定し、異なる時刻に取得した点群データが同一のセルに出現する場合には、定常物体に占有されている定常物体セルであると判断できる。
【0005】
しかしながら、定常物体に占有されているセルであっても、複数回の点群データの取得のいずれかにおいて点群データが得られない場合が起こり得る。例えば、他の物体で一時的に遮蔽されたり、センサの検出範囲から外れることがある。このような場合には、定常物体に占有されているセルであっても、定常物体セルでないと誤判定するおそれがある。
本発明は、同一の検出範囲に対して複数回取得した物体表面の位置の点群データに基づいて、同一位置に定常的に存在する定常物体に占有されたセルを判断する際の判定精度を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様による物体検出方法では、物体表面の位置を検出した点群データを、同一の検出範囲に対して複数回取得し、検出範囲に設定されたセル毎に、点群データがセルに現れる出現頻度を取得し、点群データの出現頻度が予め定めた所定の頻度閾値以上のセルを、同一位置に定常的に存在する定常物体に占有されるセルである定常物体セルと判定し、当該定常物体セルに点群データが現れる出現頻度と、定常物体セルの近傍の他のセルに点群データが現れる出現頻度と、の差が所定値以下である場合に、他のセルも定常物体セルであると判断する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一形態によれば、同一の検出範囲に対して複数回取得した物体表面の位置の点群データに基づいて、同一位置に定常的に存在する定常物体に占有されたセルを判断する際の判定精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の物体検出装置の概略構成図である。
図2】セルの設定例の説明図である。
図3A】1~4回目及び7回目の走行時に点群データを取得する際の検出範囲の状態を示す図である。
図3B】5回目及び6回目の走行時に点群データを取得する際の検出範囲の状態を示す図である。
図4A】各セルにおける点群データの出現頻度の一例を示す図である。
図4B】各セルにおける点群データの出現頻度の他の例を示す図である。
図5】第1実施形態の物体検出方法の一例のフローチャートである。
図6】第2実施形態の物体検出装置の概略構成図である。
図7】第3実施形態の物体検出装置の概略構成図である。
図8A】各セルにおいて点群データを取得できる回数である取得可能回数の説明図である。
図8B】取得可能回数の説明図である。
図9】第3実施形態の物体検出方法の一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合が含まれる。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、下記の実施形態に例示した装置や方法に特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
(第1実施形態)
(構成)
図1を参照する。物体検出装置1は、第1地図データベース10と、コントローラ11と、第2地図データベース12を備える。図1において地図データベースを「地図DB」と表記する。図6及び図7においても同様である。
第1地図データベース10は、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブなどの所定の記憶装置に記憶された道路及びその周辺環境の3次元情報のデータベースである。
【0011】
第1地図データベース10に格納される3次元情報は、カメラや、レーザレーダやミリ波レーダ、LIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)などの測距センサといった物体センサで、複数回に亘って同一の検出範囲において、物体表面の位置を検出した3次元の点群データを含む。以下、これらのセンサにより得られた3次元情報を「点群データ」と表記する。
【0012】
同一の検出範囲に対して複数回に亘って検出した(取得した)点群データは、例えば、所定区間を複数回に亘って異なる時刻に車両で走行し、車両に搭載された物体センサで周囲の物体表面の位置を検出することにより得られる点群データであってよい。
ただし、物体センサを搭載した車両で走行する必要はなく、物体の位置変化を判断するのに適した時間間隔で複数回点群データを取得すれば足りる。
第1地図データベース10には、点群データに加えて、各点群データを取得した日時等の時間情報や、点群データの取得回(すなわち、何回目の走行時に得られた点群データであるか、又は何回目に取得した点群データであるのか)の情報が、点群データに関連付けて格納される。
【0013】
コントローラ11は、第1地図データベース10に格納されている点群データのうち、同一位置に定常的に存在する物体である定常物体の点群データを選択し、第2地図データベース12に格納する電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)である。
コントローラ11は、プロセッサと、記憶装置等の周辺部品とを含む。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)であってよい。
記憶装置は、半導体記憶装置や、磁気記憶装置、光学記憶装置等を備えてよい。記憶装置は、レジスタ、キャッシュメモリ、主記憶装置として使用されるROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のメモリを含んでよい。
【0014】
以下に説明するコントローラ11の機能は、例えばプロセッサが、記憶装置に格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
なお、コントローラ11を、以下に説明する各情報処理を実行するための専用のハードウエアにより形成してもよい。
例えば、コントローラ11は、汎用の半導体集積回路中に設定される機能的な論理回路を備えてもよい。例えばコントローラ11はフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA:Field-Programmable Gate Array)等のプログラマブル・ロジック・デバイス(PLD:Programmable Logic Device)等を有していてもよい。
【0015】
第2地図データベース12には、コントローラ11によって選択された定常物体のみの点群データが格納される。
第1地図データベース10と第2地図データベース12とは、各々異なる記憶装置に記憶されてもよく、同一の記憶装置の異なる記憶領域に記憶されてもよい。
【0016】
次に、コントローラ11が、第1地図データベース10に格納されている点群データから定常物体の点群データを選択する処理の概要について説明する。
コントローラ11は、点群読込部20と、セル設定部21と、スコア算出部22と、定常物体判定部23を備える。
図2を参照する。点群読込部20は、第1地図データベース10から点群データを読み込む。点群データのデータ量が大きい場合には、1回に処理する点群データの検出範囲を限定して逐次的に処理する。例えば数百メートル単位の区画30に区切り、その区画30ごとに処理を行う。以下、区画30を「検出範囲30」と表記する。
【0017】
点群読込部20は、読み込んだ点群データの座標系を所定の処理座標系に変換する。本明細書では、処理座標系が、矢印31に示すようにX軸、Y軸及びZ軸を有する3次元のユークリッド座標系である例を説明するが、本発明はこれに限定されない。処理座標系は、3次元の座標系であれば足りる。
なお、第1地図データベース10に格納されている点群データが予め処理座標系で表現されている場合には、座標系を変換する必要はない。
また、第1地図データベース10に格納されている点群データは、全て同じ座標系で表現されたデータもよく、センサ座標系で表現した点群データでもよい。後者の場合には、点群データを取得した時点の物体センサの座標(物体センサを搭載した車両の座標)を点群データに関連付けて格納する。
【0018】
セル設定部21は、点群データに基づいて、検出範囲30に複数のセルを設定する。例えばセル設定部21は、検出範囲30を複数の区画に分割し、点群データが存在する範囲にセルを設定してよい。図2は、検出範囲30を10×10×10のセルに分割した例を示すが、分割数はこれに限定されない。
図2に表記される数字「1」、「2」、「3」、…「9」は、各セルのX座標、Y座標及びZ座標を示す。
【0019】
各セルの3次元座標を(X座標,Y座標,Z座標)で表現すると、セル32の座標は(5,6,9)であり、セル33の座標は(9,2,4)である。
図2に示すように離散的な整数の座標値で表現されたセルの位置を、「セル位置」と表記することがある。
また、図2の検出範囲30の例では、Z座標「0」であるセル内に道路の路面34が含まれている。
【0020】
スコア算出部22は、各々のセル毎に、複数回に亘る点群データの取得においてセルに点群データが現れた出現頻度(出現率)に応じてセルのスコアを算出する。すなわち、スコア算出部22は、点群データを取得した複数回数のうちセルに点群データが現れた出現回数に応じてセルのスコアを算出する。なお、同一の取得回に複数の点群データが同一セルに現れても出現回数は1回と判定する。
【0021】
例えばスコア算出部22は、出現回数そのものをスコアとして算出してもよい。点群データの取得回数が既知であるため、出現回数は出現頻度を表す。
またスコア算出部22は、点群データの取得回数に対する出現回数の比(出現回数/取得回数)である出現率(出現頻度)をスコアとして算出してもよい。
【0022】
また、スコア算出部22は、点群データの取得時刻の間隔に応じて出現頻度を重み付けし、重み付けされた出現頻度に基づいてスコアを算出してもよい。
例えば、スコア算出部22は、セルに点群データが出現する度にスコアに加点してゆき、直前の取得回と今回の取得回との時間間隔が長いほど、加点を大きくする。
このように、取得回の時間間隔が長いほど加点を大きくすることにより、定常物体に占有されるセルのスコアほど増加しやすくなる。
【0023】
以下の説明では、スコア算出部22が、出現回数をスコアとして算出する例について説明する。
図3A及び図3Bは、検出範囲30を鉛直方向(Z軸方向)上方から眺めた状態を示している。ここでは、点群データの取得回数が7回である場合について説明する。
例えば、検出範囲30またはその周辺の所定区間を、7回に亘って異なる時刻に車両で走行し、車両に搭載した物体センサで車両周囲の物体表面の位置を検出して点群データを取得する。
【0024】
いま、図3Aに示すように、1回目~4回目及び7回目の走行のとき(すなわち、1回目~4回目及び7回目の点群データ取得時)には、検出範囲30の路面24には駐車車両35が存在せず、5回目及び6回目の走行のとき(すなわち、5回目及び6回目の点群データ取得時)には、図3Bに示すように駐車車両35が一時的に存在している場合を想定する。
【0025】
駐車車両35は、X座標「1」~「3」及びY座標「1」~「5」の範囲に存在している。また、図4Aに示すように駐車車両35のZ座標は「1」である。図4Aは、Y座標「5」のセルを表す検出範囲30のXZ平面図であり、各セル内の数字はスコアを示す。図4Bも同様である。
5回目及び6回目の点群データ取得時には、駐車車両35の下方の路面34は、駐車車両35に遮られるため路面34の位置を検出した点群データを取得できない。
【0026】
このため、図4Aに示すように、駐車車両35の下方の路面34が含まれるセル36、37及び38のスコア(出現回数)は「5」となる。また、それ以外の路面34のセルのスコアは「7」となる。駐車車両35によって占められる座標(1,5,1)~(3,5,1)のセルのスコアは「2」となる。
図1を参照する。定常物体判定部23は、スコア算出部22が算出したセルのスコア(すなわち、点群データの出現頻度)に応じて、各セルが定常物体に占有されているか否かを判定する。以下、定常物体に占有されるセルを「定常物体セル」と表記する。
【0027】
図4Aを参照する。路面34や、ガードレール、縁石、信号機、標識などの地物、建設物などの静止構造物である定常物体は、常に点群データを検出できる可能性が高いので、定常物体に占められる定常物体セルのスコア(点群データの出現頻度)は比較的大きくなる。
例えば、駐車車両35の下方の路面34が含まれるセル36、37及び38のスコア(出現回数)は「5」となる。また、それ以外の路面34のセルのスコアは「7」となる。
【0028】
これに対して、物体が存在しないセルや、駐車車両35や移動物体によって一時的に占められるセルのスコアは比較的小さくなる。
例えば、物体が存在しないセルのスコアは「0」であり、駐車車両35によって一時的に占められた座標(1,5,1)~(3,5,1)のセルのスコアは「2」となる。
このため、定常物体判定部23は、各セルのスコア(点群データの出現頻度)を予め実験等によって設定した頻度閾値と比較し、頻度閾値以上のスコアのセル(すなわち、点群データの出現頻度が所定の頻度閾値以上のセル)が定常物体セルであると判断する。
また、定常物体判定部23は、頻度閾値未満のスコアのセルが定常物体セルでないと判断する。例えば、定常物体判定部23は、0より大きく頻度閾値未満のスコアのセルは、検出範囲30に一時的に存在する非定常物体(例えば駐車車両35や移動物体)に占有されるセルであると判断する。なお、以下では頻度閾値を単に閾値とも記載する。
【0029】
上記の通り、定常物体に占有されているセルであっても、複数回の点群データの取得のいずれかにおいて点群データが得られない場合が起こり得る。例えば、他の物体で一時的に遮蔽されたり、センサの検出範囲から外れることがある。また、上記のように車両を走行させて点群データを取得する場合、必ずしも同じコースを毎回走行するとは限らないため、全てセルの測定回数が同一になるとは限らない。
【0030】
このため、セルのXY面(水平面)内位置に応じて、各セルの点群データを取得できる取得可能回数にムラが発生することがある。したがって、異なる水平面内位置について一律の閾値を設定すると、定常物体セルの判定精度の低下の原因となる。
一方で、鉛直方向(Z軸方向)に関しては、物体センサの鉛直方向の変動は少ないと考えられる。例えば上記の車両に物体センサを搭載する場合には高さは変わらない。したがって、点群データの取得可能回数はセルの鉛直方向位置に依存しにくい。
【0031】
このため、定常物体判定部23は、XY面(水平面)におけるセル位置毎に異なる閾値を設定する。すなわちXY面におけるセル位置に応じて閾値を設定する。いいかえれば、水平面内位置が等しく鉛直方向位置が異なる複数のセルに対して同一の閾値を設定する。
以下、XY面におけるセル位置を「水平面内セル位置」と表記することがある。また鉛直方向におけるセル位置を「鉛直方向セル位置」と表記することがある。
【0032】
ここで、図4Aに示すように、水平面内セル位置が等しく鉛直方向セル位置が異なる複数のセル(例えば、座標(5,5,0)~(5,5,9)のセル)のうち、定常物体セルのスコアが最も大きくなりやすい。
例えば、座標(5,5,0)~(5,5,9)のセルのうち、座標(5,5,0)の定常物体セルのスコアは「7」であり、他のセルのスコアは「0」である。また例えば、座標(1,5,0)~(1,5,9)のセルのうち、座標(1,5,0)の定常物体セルのスコアは「5」であり、駐車車両35により占められ座標(1,5,1)のセルのスコアは「2」であり、他のセルのスコアは「0」である。
【0033】
このため、定常物体判定部23は、水平面内セル位置が等しく鉛直方向セル位置が異なる複数のセルのスコアのうち、最大のスコアに応じて閾値を設定する。いいかえれば、水平面内セル位置が等しく鉛直方向セル位置が異なる複数のセルに点群データが現れるそれぞれの出現頻度のうち、最高の出現頻度に応じて閾値を設定する。
例えば、定常物体判定部23は、最大のスコアに所定のマージンを設けて閾値を設定してよい。
【0034】
例えば、定常物体判定部23は、最大のスコアから「1」を減じた値を閾値として設定する。図4Aの例では、座標(5,5,0)~(5,5,9)のセルに対しては、最大スコア「7」から「1」を減じた閾値「6」を設定する。これにより、定常物体判定部23は、スコア「7」を有するZ座標「0」のセルが定常物体セルであると判断する。
また、座標(1,5,0)~(1,5,9)のセルに対しては、最大スコア「5」から「1」を減じた閾値「4」を設定する。これにより、定常物体判定部23は、スコア「5」を有する座標(1,5,0)のセルが定常物体セルであると判断し、スコア「2」を有する座標(1,5,1)のセルが定常物体セルでないと判断する。
【0035】
図4Bを参照する。駐車車両35が存在する水平面内セル位置と同じ水平面内セル位置に、路面34とは異なる他の定常物体39が存在する場合を想定する。図4Bの例では、座標(1,5,6)のセル、座標(2,5,6)のセル、座標(3,5,6)のセルに、信号機39が存在している。
このような場合、信号機39が占有するセルのスコア「7」と路面34が占有するセルのスコア「5」との間に差が生じることになる。いいかえれば、定常物体セルどうしの間でスコアの差が生じることになる。
【0036】
ここで最大スコア「7」に応じて閾値「6」を設定すると、路面34によって占められるセル36~38が定常物体セルでないと謝って判定されてしまう。
そこで本発明では、既知の定常物体セル(例えば、既に定常物体セルであると判定したセル)の近傍の他のセルも定常物体セルである可能性が高いと仮定する。定常物体はある程度の範囲に亘って連続して存在していることが多いためである。
【0037】
そして、既知の定常物体セル40のスコア(すなわち出現頻度)と、セル40の近傍の他のセル(例えばセル36~38)のスコアとの差が所定値以下の場合には、セル40の近傍の他のセル(例えばセル36~38)も定常物体セルであると判定する。
例えば、定常物体判定部23は、既知の定常物体セル40に隣接する他のセル38のスコア「5」と定常物体セル40のスコア「7」との差が所定値(例えば「2」)以下である場合には、他のセル38も定常物体セルであると判断する。
【0038】
また、定常物体判定部23は、定常物体セルであると判定された他のセル38に隣接する他のセル37のスコア「5」と、他のセル38のスコア「5」との差が所定値(例えば「2」)以下である場合には、他のセル37も定常物体セルであるとする判断を繰り返してもよい。このとき、他のセル38のスコア「5」に代えて定常物体セル40のスコア「7」と他のセル37のスコア「5」との差が所定値以下である場合に、他のセル37も定常物体セルであると判断してもよい。
【0039】
または、定常物体判定部23は、既知の定常物体セル40から所定個数(例えば3個)離れた範囲のセル(例えばセル36~38)のスコアと、定常物体セル40のスコアとを比較し、これらのセルのうち、定常物体セル40のスコアとの差が所定値以下のセルを定常物体セルであると判断してもよい。
定常物体判定部23は、定常物体セルであると判断したセルに含まれている点群データを、第2地図データベース12に格納する。
【0040】
(動作)
次に図5を参照して、第1実施形態の物体検出方法の一例を説明する。
ステップS1において定常物体判定部23は、検出範囲30をX軸方向及びY軸方向に走査して、以下のステップS2及びS3の対象となる水平面内セル位置(注目する水平面内セル位置)を選択する。
ステップS2において定常物体判定部23は、ステップS1で選択した水平面内セル位置を持ち、鉛直方向セル位置が異なる複数のセルの最大スコアに応じて閾値を決定する。
【0041】
ステップS3において定常物体判定部23は、ステップS1で選択した水平面内セル位置のセルのうち、閾値以上のスコアを有するセル(点群データの出現頻度が所定の頻度閾値以上のセル)を定常物体セルと判断する。
ステップS4において定常物体判定部23は、注目する水平面内セル位置としてまだ選択されていない水平面内セル位置が残っているか否かを判定する。選択されていない水平面内セル位置が残っている場合(ステップS4:N)に処理はステップS1へ戻る。定常物体判定部23は、まだ選択されていない水平面内セル位置の何れかを選択して、ステップS2及びS3を繰り返す。全ての水平面内セル位置が選択済の場合(ステップS4:Y)に処理はステップS5へ進む。
【0042】
ステップS5において定常物体判定部23は、定常物体セルであると判断されていないセル(以下「不明セル」と表記することがある)のいずれかを選択する。図5の例では、不明セルは、ステップS3で定常物体セルと判断されなかったセルである。
ステップS6において定常物体判定部23は、不明セルの近傍の定常物体セルのスコア(定常物体セルにおける点群データの出現頻度)と、不明セルのスコア(不明セルにおける点群データの出現頻度)との差が所定値以下であるか否かを判定する。スコアの差が所定値以下である場合(ステップS6:Y)に処理はステップS7へ進む。スコアの差が所定値以下でない場合(ステップS6:N)に処理はステップS8へ進む。不明セルの近傍に定常物体セルが存在しない場合もステップS8へ進む。
【0043】
ステップS7において定常物体判定部23は、不明セルが定常物体セルであると判断する。その後に処理はステップS9へ進む。ステップS8において定常物体判定部23は、不明セルが定常物体セルでないと判断する。その後に処理はステップS9へ進む。
ステップS9において定常物体判定部23は、まだステップS5において選択されていない不明セルが残っているか否かを判定する。選択されていない不明セルが残っている場合(ステップS9:N)に処理はステップS5へ戻る。定常物体判定部23は、まだ選択されていない不明セルのいずれかを選択して、ステップS6~S8を繰り返す。全ての不明セルが選択済の場合(ステップS9:Y)に処理は終了する。
【0044】
(第1実施形態の効果)
(1)第1地図データベース10には、同一の検出範囲に対して複数回取得した物体表面の位置の点群データが格納される。スコア算出部22は、検出範囲に設定されたセル毎に、点群データがセルに現れる出現頻度を取得する。定常物体判定部23は、点群データの出現頻度が予め定めた所定の頻度閾値以上のセルである定常物体セルに点群データが現れる出現頻度と、定常物体セルの近傍の他のセルに点群データが現れる出現頻度と、の差が所定値以下である場合に、他のセルも定常物体セルであると判断する。
これにより、点群データを取得する際に他の物体で一時的に遮蔽されたセルが、定常物体セルでないと誤判定されるのを軽減できる。これにより、定常物体セルを判断する際の判定精度を向上することができる。
【0045】
(2)定常物体判定部23は、他のセルに点群データが現れる出現頻度がゼロでなく、且つ定常物体セルに点群データが現れる出現頻度との差が所定値よりも大きい場合に、他のセルが、検出範囲に一時的に存在する非定常物体に占有されるセルであると判断してよい。
これにより、非定常物体に占有されるセルを検出できる。
【0046】
(3)複数回取得される点群データは、物体表面の位置を検出するセンサを搭載した車両が検出範囲又はその周囲を複数回走行し、センサで検出範囲内の物体表面の位置を検出することにより得られる点群データであってよい。
これにより、適度に間隔のあいた異なる時刻に点群データを取得できるので、これらの時刻で取得した同一のセルに出現する場合に定常物体セルであると判断できる。
【0047】
(4)定常物体判定部23は、定常物体セルと他のセルとが隣接し、他のセルに点群データが現れる出現頻度と定常物体セルに点群データが現れる出現頻度との差が所定値以下である場合に、他のセルを定常物体セルと判断してよい。
これにより、点群データを取得する際に他の物体で一時的に遮蔽されたセルが、定常物体セルでないと誤判定されるのを軽減できる。これにより、定常物体セルを判断する際の判定精度を向上することができる。
【0048】
(5)定常物体判定部23は、水平面内位置が等しく鉛直方向位置が異なる複数のセルに対して同一の頻度閾値を設定する。定常物体判定部23は、鉛直方向位置が異なる複数のセルに点群データが現れるそれぞれの出現頻度に基づいて頻度閾値を定める。
これにより、水平面内セル位置によって各セルの点群データを取得できる取得可能回数にムラがあっても、水平面内セル位置に応じた頻度閾値を設定することが可能になり、判定精度を向上できる。
【0049】
(6)定常物体判定部23は、定常物体セルと判断された他のセルに隣接する第2の他のセルに点群データが現れる出現頻度と、他のセルに隣接する定常物体セルに点群データが現れる出現頻度又は他のセルに点群データが現れる出現頻度と、の差が所定値以下である場合に、第2の他のセルも定常物体セルであると判断する。
これにより、点群データを取得する際に複数セルに亘って他の物体で一時的に遮蔽されても、定常物体セルでないと誤判定されるのを軽減できる。これにより、定常物体セルを判断する際の判定精度を向上することができる。
【0050】
(7)スコア算出部22は、セルに点群データが現れる出現頻度を点群データの取得時刻の間隔に応じて重み付けしたスコアを算出する。定常物体判定部23は、重み付けされた出現頻度であるスコアに基づいて定常物体セルであるか否かを判断する。
同一セルで取得した点群データの取得時刻の間隔が長いほど、長時間このセルが物体に占有されている可能性が高いため、定常物体が存在する可能性が高いと判断できる。このため、取得時刻の間隔に応じて重み付けした出現頻度に基づいて判定することにより、判定精度を向上することができる。
【0051】
(第2実施形態)
次に第2実施形態について説明する。第1実施形態では、路面34や、ガードレール、縁石、信号機、標識などの地物、建設物などの静止構造物といった、恒常的に存在する物体を定常物体として検出し、駐車車両35のような比較的短期間静止している静止物体や移動物体を非定常物体として検出した。
第2実施形態では、移動物体を非定常物体として検出し、静止物体を定常物体として検出する。第2実施形態の物体検出装置1は、物体センサで取得した点群データを移動物体の点群データと静止物体の点群データに区別する用途に使用できる。
【0052】
図6は、第2実施形態の物体検出装置1の概略構成図である。第2実施形態の物体検出装置1は、物体センサ13と測位装置14を備える。
物体センサ13は、物体検出装置1が搭載された車両(以下、「自車両」と表記する)の周囲の物体表面の位置を検出して、点群データとして出力する複数の異なる種類のセンサを備える。物体センサ13は、例えばカメラや、レーザレーダやミリ波レーダ、LIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)などの測距センサであってよい。
【0053】
測位装置14は、自車両の現在位置を測定する。測位装置14は、例えば、全地球型測位システムや、オドメトリを用いて自車両の現在位置を測定してよい。また測位装置14は、物体センサ13が取得した点群データと、既知の点群データとのマップマッチングを用いて自車両の現在位置を測定してもよい。
点群読込部20は、同一の検出範囲に対して異なる時刻で物体センサ13が取得した点群データを、複数回に亘って検出した(取得した)点群データとして読み込む。点群読込部20は、自車両の現在位置に基づいて点群データの座標系を所定の処理座標系に変換する。
【0054】
第1実施形態において複数回取得した点群データと、第2実施形態において複数回取得する点群データとの相違は、点群データを複数回取得する取得間隔の長短である。第1実施形態の取得時刻の間隔は比較的長い(例えば数十分~数日)のに対して、第2実施形態の取得時刻の間隔は比較的短い(例えば数十分ミリ秒~数秒)。
例えば、物体センサ13は、カメラの撮像映像の1フレーム毎に撮像画像から点群データを検出して出力してよい。この場合の点群データの取得時刻の間隔は撮像映像のフレームレートとなる。
また例えば物体センサ13は、レーザレーダやミリ波レーダ、LIDARの走査サイクル毎に点群データを出力してよい。この場合の取得時刻の間隔は走査サイクルとなる。
【0055】
定常物体判定部23は、第1実施形態と同様に定常物体セルと非定常物体に占有されるセルとを検出する。上記のように比較的短い間隔で複数回取得した点群データに基づいて、定常物体セルと非定常物体に占有されるセルとを検出すると、移動物体によって占有されるセルを非定常物体に占有されるセルとして検出し、静止物体によって占有されるセルを定常物体セルとして検出できる。
定常物体判定部23は、物体センサ13から取得した点群データから、移動物体によって占有されるセルに含まれる点群データを除去して、第2地図データベース12に格納する。
【0056】
(第2実施形態の効果)
定常物体判定部23が、移動物体によって占有されるセルを非定常物体に占有されるセルとして検出し、静止物体によって占有されるセルを定常物体セルとして検出できる。
これにより、物体センサ13から取得した点群データが、移動物体を検出した点群データであるのか、静止物体を検出した点群データであるのかを判定できる。
【0057】
(第3実施形態)
次に第3実施形態について説明する。上記の通り、水平面内セル位置に応じて、各セルの点群データを取得できる取得可能回数にムラが発生することがあり、異なる水平面内セル位置のセルについて一律に定めた閾値を各セルのスコアと比較すると、定常物体セルの判定精度の低下の原因となる。
このため第1実施形態では、水平面内セル位置毎に閾値を設定し、同一の水平面内セル位置で異なる鉛直方向セル位置のセルのスコアに基づいて閾値を定めた。
【0058】
これに対して第3実施形態では、各セルの取得可能回数に応じてセル毎に閾値を設定する。
図7は、第3実施形態の物体検出装置1の概略構成図である。第3実施形態の物体検出装置1は、車両位置データ15を記憶する記憶装置を備える。
車両位置データ15は、第1地図データベース10に記憶される点群データを取得する物体センサを搭載した車両の、点群データ取得時の位置を示す位置データである。
第1地図データベース10と第2地図データベース12とは、各々異なる記憶装置に記憶されてもよく、同一の記憶装置の異なる記憶領域に記憶されてもよい。
【0059】
定常物体判定部23は、点群読込部20が第1地図データベース10から読み込んだ点群データと、車両位置データ15とに基づいて、複数回の点群データの取得において、セル毎に、各々のセルで点群データを取得できる回数である取得可能回数を決定する。
図8A及び図8Bを参照する。例えば、物体センサを搭載した車両50を7回走行させて7回分の点群データを取得する場合を想定する。
【0060】
ここで、1回目~3回目の走行のとき(すなわち、1回目~3回目の点群データ取得時)には、検出範囲30に駐車車両53が一時的に存在し、4回目~7回目の走行のとき(すなわち、4回目~7回目の点群データ取得時)には駐車車両53が既に移動済である場合を考える。
このときセル51は、駐車車両53によって遮られないため、定常物体判定部23は、セル51の取得可能回数は「7」であると決定する。
【0061】
一方で、1回目~3回目の走行のときセル52は駐車車両53によって遮られ、セル52内の点群データを取得できない。このため、定常物体判定部23は、セル52の取得可能回数は「4」であると決定する。
定常物体判定部23は、車両位置データ15が示す車両50の位置と、点群データが示す物体の位置と、セルの位置とに基づいて、点群データが示す物体によってセルが遮られるか否かを判断することにより、セルで点群データを取得できるか否かを判断する。
【0062】
そして、定常物体判定部23は、各セルの取得可能回数に応じて閾値を設定する。定常物体判定部23は、取得可能回数に所定のマージンを設けて閾値を設定してよい。
例えば、定常物体判定部23は、取得可能回数から「1」を減じた値を閾値として設定してよい。例えば、取得可能回数は「7」であるセル51の閾値を「6」に設定し、取得可能回数は「4」であるセル52の閾値を「3」に設定してよい。
【0063】
定常物体判定部23は、スコアの算出と同様に、点群データの取得時刻の間隔に応じて取得可能回数を重み付けして、閾値を算出してもよい。例えば、定常物体判定部23は、点群データを取得できる取得回が到来する度に閾値に加点してゆき、直前の取得回と今回の取得回との時間間隔が長いほど加点を大きくしてよい。
定常物体判定部23は、セル毎に設定された閾値とセルのスコアを比較し、スコアが閾値以上の場合に定常物体セルと判断する。
【0064】
(動作)
図9を参照して、第3実施形態の物体検出方法の一例を説明する。
ステップS11において定常物体判定部23は、検出範囲30内の何れかのセルを選択する。
ステップS12において定常物体判定部23は、ステップS11で選択したセルの取得可能回数を決定し、取得可能回数に応じて閾値を決定する。
【0065】
ステップS13において定常物体判定部23は、ステップS11で選択したセルのスコアが閾値以上である場合に、ステップS11で選択したセルが定常物体セルであると判断する。
ステップS14において定常物体判定部23は、ステップS11でまだ選択されていないセルが残っているか否かを判定する。選択されていないセルが残っている場合(ステップS14:N)に処理はステップS11へ戻る。定常物体判定部23は、まだ選択されていないセルの何れかを選択して、ステップS12及びS13を繰り返す。全てのセルが選択済の場合(ステップS4:Y)に処理はステップS15へ進む。
ステップS15~S19の処理は、図5のステップS5~S9の処理と同様である。
【0066】
(第3実施形態の効果)
定常物体判定部23は、点群データを取得する複数回のうち、各セルにおいて点群データを取得できる回数である取得可能回数を、セル毎に判断する。定常物体判定部23は、取得可能回数に応じてセル毎に閾値を設定し、点群データが現れる出現頻度が閾値以上であるセルを定常物体セルと判断する。
このように取得可能回数に応じてセル毎に閾値を設定することにより、セルによって各セルの点群データを取得できる取得可能回数にムラがあっても、取得可能回数に応じた閾値を設定することが可能になり、判定精度を向上できる。
【符号の説明】
【0067】
1…物体検出装置、10…第1地図データベース、11…コントローラ、12…第2地図データベース、13…物体センサ、14…測位装置、15…車両位置データ、20…点群読込部、21…セル設定部、22…スコア算出部、23…定常物体判定部
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9