(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】混練機
(51)【国際特許分類】
B01F 35/00 20220101AFI20231106BHJP
B01F 27/70 20220101ALI20231106BHJP
【FI】
B01F35/00
B01F27/70
(21)【出願番号】P 2020021425
(22)【出願日】2020-02-12
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 大介
(72)【発明者】
【氏名】三木 貴文
(72)【発明者】
【氏名】山崎 晃史
(72)【発明者】
【氏名】松岡 裕斗
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 将人
【審査官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-270737(JP,A)
【文献】実開平04-000928(JP,U)
【文献】特開2013-188671(JP,A)
【文献】特開平05-161840(JP,A)
【文献】実開昭59-027821(JP,U)
【文献】登録実用新案第3125860(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 35/00 - 35/95
B01F 27/00 - 27/96
B29B 7/00 - 11/14
B29B 13/00 - 15/06
B29C 31/00 - 31/10
B29C 37/00 - 37/04
B29C 71/00 - 71/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混練材料が供給されるケーシングの内部に、混練部材が外嵌された主軸が横架されており、前記主軸を回転駆動することにより前記ケーシングに供給された混練材料を混練する混練機において、
前記混練部材を軸方向に位置決めするための環状の位置決め部材が、前記主軸と別体で形成されて主軸に外嵌固定されて
おり、
前記位置決め部材は、周方向で複数の位置決め片に分割されており、前記各位置決め片が前記主軸の外周に設けられた環状溝に嵌め込まれた状態で一体化されるものであることを特徴とす
る混練機。
【請求項2】
前記位置決め部材の材質が前記主軸の材質と異なるものであることを特徴とする請求項
1に記載の混練機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学薬品、食料品、樹脂等の混練に使用される混練機に関する。
【背景技術】
【0002】
化学薬品、食料品、樹脂等の各種混練物の混練には、混練材料が供給されるケーシングの内部に横架され、スクリュやパドル等の混練部材が設けられた主軸を回転駆動する混練機が多く使用されている。この混練機には、主軸を1本だけ横架した単軸型のものと、一対の主軸を平行に横架して、各主軸に設けた混練部材の回転領域が一部で重なるようにした2軸型のものとがある。
【0003】
ところで、上記のような混練機は、主軸の本数によらず、主軸に外嵌(主軸の外周に嵌合)した混練部材を主軸から抜き取り可能として、混練物の種類等の混練条件に応じて混練部材の組み合わせを容易に変えられるようにしていることが多い。その場合、使用後の混練部材を抜き取った主軸に再度混練部材を取り付ける際には、その軸方向の位置決めを行う必要がある。このため、例えば特許文献1に記載された混練機では、主軸の駆動側に大径部を設け、これと反対側から主軸に外嵌される最初のパドル(混練部材)を主軸の大径部に当接させ、最後に主軸に外嵌されたパドルをナットで軸方向に締め付けることにより、複数のパドルを主軸に対して位置決めするようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実公平6-22419号公報(第3図、第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されているように、主軸に外嵌される混練部材を主軸の大径部に当接させて位置決めする方法をとる場合、その主軸は大径部の直径を有する主軸素材から削り出し加工によって形成する必要があるので、主軸の材料コストが高くなる。特に、混練機の主軸は高温環境での強度と耐食性が求められ、高価な材料が使用されるので、材料コストが大きな問題となる。また、その材質が難削材である場合、主軸の加工時間が長くなり、機械加工コストも高くなる。
【0006】
そこで、本発明は、混練部材を主軸に外嵌した混練機において、混練部材の軸方向の位置決めを安価な手段で可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は、混練材料が供給されるケーシングの内部に、混練部材が外嵌された主軸が横架されており、前記主軸を回転駆動することにより前記ケーシングに供給された混練材料を混練する混練機において、前記混練部材を軸方向に位置決めするための環状の位置決め部材が、前記主軸と別体で形成されて主軸に外嵌固定されている構成を採用した。
【0008】
すなわち、主軸と別体で形成された環状の位置決め部材を主軸の所定位置に外嵌固定して、この位置決め部材に、主軸に外嵌される混練部材を当接させることにより、主軸に位置決め用の大径部を形成するよりも安価な手段で混練部材を軸方向に位置決めできるようにしたのである。
【0009】
ここで、前記位置決め部材は、周方向で複数の位置決め片に分割されており、前記各位置決め片が前記主軸の外周に設けられた環状溝に嵌め込まれた状態で一体化されるものとすることができる。
【0010】
また、前記位置決め部材の材質は、前記主軸の材質と異なるものとすることができる。すなわち、位置決め部材は求められる特性が主軸のように高くないので、主軸よりも安価な材料を選択して混練機全体の製造コストをさらに低減することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の混練機は、上述したように、主軸と別体で形成されて主軸に外嵌固定された位置決め部材に、主軸に外嵌される混練部材を当接させることにより、混練部材を軸方向に位置決めするようにしたものであるから、削り出し加工によって形成された主軸の大径部に混練部材を当接させて混練部材の位置決めを行うものに比べて、主軸の材料コストを大幅に低減することができるし、主軸材質が難削材である場合は加工時間の短縮および機械加工コストの低減も図れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図5】(a)は
図1の位置決め部材の一部切欠き側面図、(b)は(a)の正面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。この混練機は、
図1および
図2に示すように、ケーシング1の内部に一対の主軸2を平行に横架した2軸型のものであり、各主軸2には混練部材としての複数のパドル3が外嵌されており、両主軸2のパドル3の回転領域が一部で重なるようになっている。各主軸2はモータ4aと減速機4bを備えた駆動装置4の出力軸5にギアカップリング6で連結されており、ケーシング1と駆動装置4は同じ基台7に支持されている。なお、この混練機は、粘着性の高い樹脂等の混練材料を対象とするものであり、ケーシング1の一端側(主軸2の駆動側)に設けた供給口1aから供給された混練材料を混練して、他端側(主軸2の先端側)に設けた排出口1bから排出するようになっている。
【0014】
前記各主軸2は、
図1および
図3に示すように、一端部(駆動側端部)が軸受8aで軸支され、他端部(先端部)が軸受8bで軸支されている。そして、駆動側と先端側の両側を、それぞれパッキンボックス9a、9bに収納されたグランドパッキン10a、10bで軸封されている。各グランドパッキン10a、10bは、パッキン押さえ11a、11bで締め付けられ、主軸2に外嵌されたスリーブ12a、12bに押し付けられている。また、各パッキンボックス9a、9bとグランドパッキン10a、10bとの間には筒状の摺動部材13a、13bが介装されており、粘着性の高い混練材料がグランドパッキン10a、10bとスリーブ12a、12bとの間に侵入して、グランドパッキン10a、10bが主軸2と共回りしても、パッキンボックス9a、9bの内周面は摩耗しないようになっている。
【0015】
また、各主軸2には、一端側のスリーブ12aの外嵌位置とパドル3の外嵌位置との間の外周に環状溝14が設けられており、その環状溝14に環状の位置決め部材15が嵌合固定されている。
【0016】
そして、一端側のスリーブ12aを位置決め部材15の一端面に当接させた状態で、一端側の軸受8aをスリーブ12aの一端面に当接するように組み込むことにより、スリーブ12aが軸方向の外嵌位置を固定されている。なお、駆動側の軸受8aを挟んでスリーブ12aと対向する位置には、軸受8aを抜け止めするロックナット16aが組み込まれている。
【0017】
また、パドル3の列の一端に位置するものを位置決め部材15の他端面に当接させ、列の他端に位置するパドル3の他端面に他端側のスリーブ12bを当接させた状態で、他端側の軸受8bをスリーブ12bの他端面に当接するように組み込むことにより、各パドル3およびスリーブ12bが軸方向の外嵌位置を固定されている。なお、他端側の軸受8bを挟んでスリーブ12bと対向する位置には、軸受8bを抜け止めするロックナット16bが組み込まれている。
【0018】
前記位置決め部材15は、
図4および
図5に示すように、周方向で2つの半円弧状の位置決め片15aに分割されており、各位置決め片15aが主軸2の外周の環状溝14に嵌め込まれた状態で、各位置決め片15aの周方向の一端部に形成された凹部15bから相手側の周方向他端部へねじ込まれたボルト17によって一体化されている。
【0019】
ここで、位置決め部材15の材質は主軸2と異なるものとされている。すなわち、主軸2は高温環境での強度や耐食性を求められるが、位置決め部材15は、スリーブ12a、12bおよびパドル3を軸方向に位置決めできるものであればよく、主軸2のような高い特性を求められないので、この実施形態では主軸2をハステロイC22(登録商標)で形成し、位置決め部材15はSUS316Lで形成してNiめっきを施している。
【0020】
この混練機は、上述したように、主軸2と別体で形成されて主軸2に外嵌固定された環状の位置決め部材15に、主軸2に外嵌される複数のパドル3の列の一端に位置するものを当接させることにより、各パドル3を軸方向に位置決めするようにしたので、従来の削り出し加工によって形成した主軸の大径部でパドルの位置決めを行うものに比べて、主軸素材を小径とすることができる。したがって、従来よりも主軸2の材料コストを大幅に低減できるし、主軸材質が難削材であるため加工時間の短縮および機械加工コストの低減も図れる。
【0021】
また、位置決め部材15を主軸2よりも安価な材料で形成しているので、この点でも材料コストおよび機械加工コストの低減が図られている。
【0022】
さらに、位置決め部材15は周方向で2分割されており、スリーブ12a、12bやパドル3を主軸2に外嵌した後でも組み付けることができるので、混練機全体の組立手順の自由度が大きく、位置決め部材15が破損した場合でも単独で交換することができるという利点もある。
【0023】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0024】
例えば、位置決め部材は、実施形態のように、周方向で分割され、主軸の外周の環状溝に嵌め込まれた状態で一体化されるものとすることが望ましいが、一体形成された環状部材でボルト締結等により主軸の外周に固定されるものとしてもよい。
【0025】
また、位置決め部材の材質は必ずしも実施形態のように主軸と異なるものとする必要はなく、主軸と同じ材質で位置決め部材を形成してもよい。
【0026】
なお、本発明は混練機に関するものであるが、本発明の技術思想は、主軸に外嵌される部材を軸方向に位置決めのための段部を主軸に設けている装置に広く応用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 ケーシング
2 主軸
3 パドル(混練部材)
4 駆動装置
5 出力軸
8a、8b 軸受
12a、12b スリーブ
14 環状溝
15 位置決め部材
15a 位置決め片
16a、16b ロックナット