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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】熱収縮性フィルム及び熱収縮性ラベル
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/028 20190101AFI20231106BHJP
   B32B 9/02 20060101ALI20231106BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20231106BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20231106BHJP
   G09F 3/04 20060101ALI20231106BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
B32B7/028
B32B9/02
B32B27/36
B32B27/30 B
G09F3/04 C
C08J5/18 CFD
C08J5/18 CET
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020023206
(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公開番号】P2021126834
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-10-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】高市 隼
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 信弘
【審査官】福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-284941(JP,A)
【文献】特開2009-000898(JP,A)
【文献】特開2009-185105(JP,A)
【文献】特開2014-051617(JP,A)
【文献】特開2012-240619(JP,A)
【文献】国際公開第2019/188922(WO,A1)
【文献】特開2019-178236(JP,A)
【文献】特開2016-193491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08J 5/00-5/02
C08J 5/12-5/22
G09F 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系樹脂を含有する表裏層と、ポリスチレン系樹脂を含有する中間層とを有し、
前記ポリエステル系樹脂及び前記ポリスチレン系樹脂のうちの少なくとも1つはバイオマス由来の成分を含有し、
前記ポリエステル系樹脂のガラス転移温度が55℃以上95℃以下であり、
前記ポリスチレン系樹脂のビカット軟化温度が60℃以上85℃以下であり、
バイオマス度が1~50%であ
ことを特徴とする熱収縮性フィルム。
【請求項2】
ポリエステル系樹脂はバイオマス由来の成分を含むポリエステル系樹脂からなる
ことを特徴とする請求項1記載の熱収縮性フィルム。
【請求項3】
ポリスチレン系樹脂はバイオマス由来の成分を含むポリスチレン系樹脂からなる
ことを特徴とする請求項1記載の熱収縮性フィルム。
【請求項4】
ポリスチレン系樹脂を含有する層のみからなり、
前記ポリスチレン系樹脂はバイオマス由来の成分を含むポリスチレン系樹脂からなり、
前記ポリスチレン系樹脂のビカット軟化温度が60℃以上85℃以下であり、
バイオマス度が1~50%であ
ことを特徴とする熱収縮性フィルム。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の熱収縮性フィルムを含む熱収縮性ラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化石資源の使用量を削減することができるとともに、機械的特性等の物性面において高い性能を発現可能な熱収縮性フィルムに関する。また、該熱収縮性フィルムを含む熱収縮性ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ペットボトル、ガラス瓶等の容器の多くには、熱可塑性樹脂からなるベースフィルムに印刷等を施した熱収縮性ラベルが装着されている。
熱収縮性ラベルには、低温収縮性に優れるポリスチレン系樹脂フィルムや耐熱性及び耐溶剤性に優れるポリエステル系樹脂フィルムが多用されている。
また、これらの特性の両方を併せ持つように、ポリエステル系樹脂を含有する表裏層と、ポリスチレン系樹脂を含有する中間層とを有する多層フィルムが検討されている。
【0003】
一方、近年、持続可能な社会の実現に向け、循環型社会、低炭素社会の構築に対する要求が高まっており、化石資源からの脱却が望まれているが、従来の汎用プラスチックであるポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂等はいずれも石油資源を原料として用いているため、継続して使用するうえで石油資源の枯渇、有害ガスの発生等の問題を抱えている。
【0004】
このような問題に対して、汎用プラスチックであるポリエステル系樹脂をバイオマス原料から製造する試みが行われている。
例えば、特許文献1では、バイオマスを原料として、エチレングリコール、テレフタル酸等の樹脂原料を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-176873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、化石資源の使用量を削減することができるとともに、機械的特性等の物性面において高い性能を発現可能な熱収縮性フィルムを提供することを目的とする。また、該熱収縮性フィルムを含む熱収縮性ラベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ポリエステル系樹脂を含有する層及びポリスチレン系樹脂を含有する層のうち少なくとも1層を有する熱収縮性フィルムであって、前記熱収縮性フィルムは、バイオマス由来の成分を含有する熱収縮性フィルムである。
以下、本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、ポリエステル系樹脂を含有する層及びポリスチレン系樹脂を含有する層のうち少なくとも1層を有する熱収縮性フィルムにおいて、バイオマス由来の成分を含有する樹脂を用いた場合でも、機械的特性等の物性面において高い性能を発現できる熱収縮性フィルムが得られることを見出した。なお、「バイオマス」とは、「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」をいう。
従って、従来に比べて化石資源から得られる原料を減らして、化石資源の使用量を削減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の熱収縮性フィルムは、ポリエステル系樹脂を含有する層及びポリスチレン系樹脂を含有する層のうち少なくとも1層を有する。
本発明の熱収縮性フィルムは、ポリエステル系樹脂を含有する層のみからなるものであってもよく、ポリスチレン系樹脂を含有する層のみからなるものであってもよく、ポリエステル系樹脂を含有する表裏層とポリスチレン系樹脂を含有する中間層とを有するものであってもよい。
また、本発明の熱収縮性フィルムが、ポリエステル系樹脂を含有する層のみからなるものである場合、上記ポリエステル系樹脂を含有する層を1層のみ有するものであってもよく、2層以上有するものであってもよい。
更に、本発明の熱収縮性フィルムが、ポリスチレン系樹脂を含有する層のみからなるものである場合、上記ポリスチレン系樹脂を含有する層を1層のみ有するものであってもよく、2層以上有するものであってもよい。
なお、本明細書中、表裏層とは、表面層と裏面層との両方を意味する。
【0010】
本発明の熱収縮性フィルムが表裏層と中間層とを有する場合、表裏層を構成するポリエステル系樹脂、及び、中間層を構成するポリスチレン系樹脂のうち少なくとも1つがバイオマス由来の成分を含むものであればよく、表裏層を構成するポリエステル系樹脂のみがバイオマス由来の成分を含むものであってもよく、中間層を構成するポリスチレン系樹脂のみがバイオマス由来の原料を含むものであってもよく、また、ポリエステル系樹脂及びポリスチレン系樹脂の両方がバイオマス由来の成分を含むものであってもよい。
なお、上記ポリエステル系樹脂及び上記ポリスチレン系樹脂がバイオマス由来の成分を含むか否かは、上記樹脂中の放射性炭素(C14)の有無により確認することができる。
大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物中のC14含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石資源中にはC14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、ポリエステル系樹脂やポリスチレン系樹脂中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス由来の成分を含むか否かを確認することができる。
上記放射性炭素(C14)の有無は、例えば、後述するバイオマス度の測定と同様の方法を用いることで確認することができる。
【0011】
本発明の熱収縮性フィルムが、上記ポリエステル系樹脂を含有する層のみからなる場合、上記ポリエステル系樹脂を含有する層を構成するポリエステル系樹脂は、バイオマス由来の成分を含むポリエステル系樹脂のみからなるものであってもよく、バイオマス由来の成分を含むポリエステル系樹脂とバイオマス由来の成分を含まないポリエステル系樹脂とを含有するものであってもよい。
また、本発明の熱収縮性フィルムが、上記表裏層及び中間層を有する場合、上記ポリエステル系樹脂を含有する層を構成するポリエステル系樹脂は、バイオマス由来の成分を含むものであってもよく、バイオマス由来の成分を含まないものであってもよい。また、上記ポリエステル系樹脂は、バイオマス由来の成分を含むポリエステル系樹脂とバイオマス由来の成分を含まないポリエステル系樹脂とを含有するものであってもよい。
【0012】
上記ポリエステル系樹脂を含有する層を構成するポリエステル系樹脂としては、例えば、ジカルボン酸成分とジオール成分とを縮重合させることにより得られるものが挙げられる。
上記ポリエステル系樹脂が、バイオマス由来の成分を含む場合、上記ポリエステル系樹脂は、バイオマス由来のジカルボン酸成分を含むものであってもよく、バイオマス由来のジオール成分を含むものであってもよく、バイオマス由来のジカルボン酸成分とバイオマス由来のジオール成分との両方を含むものであってもよい。
【0013】
上記ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、o-フタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オクチルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、デカメチレンカルボン酸、これらの無水物及び低級アルキルエステル等が挙げられる。
上記ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましい。
【0014】
上記ジカルボン酸成分100モル%中、テレフタル酸に由来する成分を50~100モル%含有することが好ましく、60~100モル%含有することがより好ましい。
また、上記ジカルボン酸成分100モル%中、イソフタル酸に由来する成分を0~50モル%含有することが好ましく、0~40モル%含有することがより好ましい。
【0015】
上記ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール)、1,2-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の脂肪族ジオール類;2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール類等が挙げられる。
上記ジオールとしては、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
【0016】
上記ジオール成分100モル%中、エチレングリコールに由来する成分を40~100モル%含有することが好ましく、50~100モル%含有することがより好ましい。
上記ジオール成分100モル%中、ジエチレングリコールに由来する成分を0~40モル%含有することが好ましく、0~30モル%含有することがより好ましい。
上記ジオール成分100モル%中、1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を0~70モル%含有することが好ましく、0~60モル%含有することがより好ましい。
【0017】
上記ジオール成分は、バイオマス由来の成分を含むものであってもよく、なかでも、バイオマス由来のジオール成分として、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を含むことが好ましく、エチレングリコールに由来する成分を含むことがより好ましい。
上記バイオマス由来のエチレングリコールとしては、バイオマスを原料として製造されたバイオマスエタノールを原料とするものが挙げられる。例えば、上記バイオマス由来のエチレングリコールは、バイオマスエタノールを原料として、従来公知の方法により製造することができる。
【0018】
上記ジオール成分におけるバイオマス由来の成分の含有量は、30モル%以上であることが好ましく、50モル%以上であることがより好ましく、100モル%以下であることが好ましい。
上記範囲とすることで、環境負荷を低減するという利点がある。
【0019】
上記ジオール成分におけるバイオマス由来のエチレングリコールの含有量は、30モル%以上であることが好ましく、50モル%以上であることがより好ましく、100モル%以下であることが好ましい。
【0020】
上記ポリエステル系樹脂のバイオマス度は、1%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、100%以下であることが好ましい。
上記範囲とすることで、環境負荷を低減するという利点がある。
なお、上記バイオマス度とは、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の元祖の含有量を測定した値である。上記バイオマス度は、ISO16620-2:2015に基づき、加速器質量分光計を用いて測定することができる。
【0021】
また、上記ポリエステル系樹脂は、バイオマス度が異なる複数のポリエステル系樹脂を含有するものであってもよい。
上記ポリエステル系樹脂が、バイオマス度が異なる複数のポリエステル系樹脂を含有する混合樹脂である場合、上記混合樹脂のバイオマス度は、ISO16620-2:2015に基づいて測定することができる。また、上記バイオマス度は、混合樹脂中の各ポリエステル系樹脂の重量比とバイオマス度とに基づいて算出することもできる。
【0022】
上記ポリエステル系樹脂がバイオマス由来の成分を含むポリエステル系樹脂を含有する場合、上記ポリエステル系樹脂におけるバイオマス由来の成分を含むポリエステル系樹脂の含有量は、好ましい下限が5重量%、より好ましい下限が10重量%、好ましい上限が100重量%である。
【0023】
上記ポリエステル系樹脂のガラス転移温度の好ましい下限は55℃、好ましい上限は95℃である。上記ガラス転移温度が55℃未満であると、熱収縮性多層フィルムの収縮開始温度が低くなりすぎたり、自然収縮率が大きくなったり、ブロッキングが発生しやすくなったりすることがある。上記ガラス転移温度が95℃を超えると、熱収縮性多層フィルムの低温収縮性及び収縮仕上がり性が低下したり、経時での低温収縮性の低下がおおきくなったり、延伸時に樹脂白化が発生しやすくなったりすることがある。上記ガラス転移温度のより好ましい下限は60℃、より好ましい上限は90℃である。更に好ましい下限は65℃、更に好ましい上限は85℃である。
なお、上記ガラス転移温度は、ISO 3146に準拠した方法で測定することができる。また、上記ポリエステル系樹脂がガラス転移温度が異なる複数のポリエステル系樹脂を含有する混合樹脂である場合、上記混合樹脂のガラス転移温度は、混合樹脂中の各ポリエステル系樹脂の重量比とガラス転移温度とに基づいて算出した見掛けのガラス転移温度を意味する。
【0024】
上記ポリエステル系樹脂の引張弾性率の好ましい下限は1000MPaを超え、好ましい上限は4000MPaである。上記引張弾性率が1000MPa以下であると熱収縮性フィルムの収縮開始温度が低くなりすぎたり、自然収縮率が大きくなったりすることがある。上記引張弾性率が4000MPaを超えると、熱収縮性多層フィルムの低温収縮性及び収縮仕上り性が低下したり、経時での低温収縮性の低下が大きくなったりすることがある。上記引張弾性率のより好ましい下限は1500MPa、より好ましい上限は3700MPaである。
なお、上記引張弾性率は、ASTM-D882(TestA)に準拠した方法で測定することができる。
【0025】
上記ポリエステル系樹脂を含有する層を構成するポリエステル系樹脂としては、上述した組成を有するポリエステル系樹脂を単独で用いてもよく、上述した組成を有する2種以上のポリエステル系樹脂を併用してもよい。
【0026】
上記ポリエステル系樹脂を含有する層は、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、抗菌剤、蛍光増白剤、着色剤等の添加剤を含有してもよい。
【0027】
本発明の熱収縮性フィルムが、上記ポリスチレン系樹脂を含有する層のみからなる場合、上記ポリスチレン系樹脂を含有する層を構成するポリスチレン系樹脂は、バイオマス由来の成分を含むポリスチレン系樹脂のみからなるものであってもよく、バイオマス由来の成分を含むポリスチレン系樹脂とバイオマス由来の成分を含まないポリスチレン系樹脂とを含有するものであってもよい。
また、本発明の熱収縮性フィルムが、上記表裏層及び中間層を有する場合、上記ポリスチレン系樹脂を含有する層を構成するポリスチレン系樹脂は、バイオマス由来の成分を含むものであってもよく、バイオマス由来の成分を含まないものであってもよい。また、上記ポリスチレン系樹脂は、バイオマス由来の成分を含むポリスチレン系樹脂とバイオマス由来の成分を含まないポリスチレン系樹脂とを含有するものであってもよい。
【0028】
上記ポリスチレン系樹脂を含有する層を構成するポリスチレン系樹脂としては、例えば、芳香族ビニル炭化水素-共役ジエン共重合体、芳香族ビニル炭化水素-共役ジエン共重合体と芳香族ビニル炭化水素-脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体との混合樹脂、ゴム変性耐衝撃性ポリスチレン等が挙げられる。上記ポリスチレン系樹脂を用いることで、本発明の熱収縮性多層フィルムは低温から収縮を開始することができ、また、高収縮性を有する。
【0029】
本明細書中、芳香族ビニル炭化水素-共役ジエン共重合体とは、芳香族ビニル炭化水素に由来する成分と、共役ジエンに由来する成分とを含有する共重合体をいう。
また、上記芳香族ビニル炭化水素に由来する成分は、バイオマス由来の成分を含むものであってもよい。更に、上記共役ジエンに由来する成分は、バイオマス由来の成分を含むものであってもよい。
上記芳香族ビニル炭化水素は特に限定されず、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記共役ジエンは特に限定されず、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0030】
上記芳香族ビニル炭化水素-共役ジエン共重合体は、特に熱収縮性に優れることから、スチレン-ブタジエン共重合体(SBS樹脂)を含有することが好ましい。また、上記芳香族ビニル炭化水素-共役ジエン共重合体は、よりフィッシュアイの少ない熱収縮性多層フィルムを作製するためには、上記共役ジエンとして2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)を用いたスチレン-イソプレン共重合体(SIS樹脂)、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体(SIBS)等を含有することが好ましい。
なお、上記芳香族ビニル炭化水素-共役ジエン共重合体は、SBS樹脂、SIS樹脂及びSIBS樹脂のうちのいずれか1つを単独で含有してもよく、複数を組み合わせて含有してもよい。また、SBS樹脂、SIS樹脂及びSIBS樹脂のうちの複数を用いる場合には、各樹脂をドライブレンドしてもよく、各樹脂を特定の組成にて押出機を用いて練り上げペレタイズしたコンパウンド樹脂を用いてもよい。
【0031】
上記芳香族ビニル炭化水素成分中、バイオマス由来の成分の含有量は、5重量%以上であることが好ましく、30重量%以上であることがより好ましく、100重量%以下であることが好ましい。
また、上記共役ジエン成分中、バイオマス由来の成分の含有量は、5重量%以上であることが好ましく、30重量%以上であることがより好ましく、100重量%以下であることが好ましい。
【0032】
上記ポリスチレン系樹脂は、スチレン成分の含有量が65重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、90重量%以下であることが好ましく、85重量%以下であることがより好ましい。
上記スチレン含有量が65重量%以上であると、成形加工時にゲル等の異物が発生し難く、熱収縮性フィルムの機械的強度を充分に高めることができる。上記スチレン含有量が90重量%以下であると、熱収縮性フィルムにテンションをかけた際や印刷等の加工時の破断を防止することができる。
【0033】
また、上記ポリスチレン系樹脂は、バイオマス由来のスチレン成分を含有することが好ましい。
上記バイオマス由来のスチレンとしては、バイオマス由来のナフサを原料として製造されたエチレンを原料とするものが挙げられる。例えば、上記バイオマス由来のスチレンは、バイオマス由来のナフサを原料として、従来公知の方法により製造することができる。
【0034】
上記ポリスチレン系樹脂がバイオマス由来のスチレン成分を含有する場合、上記ポリスチレン系樹脂におけるバイオマス由来のスチレン成分の含有量は、5重量%以上であることが好ましく、30重量%以上であることがより好ましく、100重量%以下であることが好ましい。
【0035】
上記ポリスチレン系樹脂は、共役ジエン含有量が10重量%以上であることが好ましく、15重量%以上であることがより好ましく、35重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがより好ましい。
【0036】
また、上記ポリスチレン系樹脂は、バイオマス由来の共役ジエン成分を含むものであることが好ましく、バイオマス由来のブタジエン成分を含有することがより好ましい。
上記バイオマス由来のブタジエンとしては、バイオマス由来のナフサを原料として製造されたものが挙げられる。例えば、上記バイオマス由来のブタジエンは、バイオマス由来のナフサを原料として、従来公知の方法により製造することができる。
【0037】
上記ポリスチレン系樹脂がバイオマス由来の共役ジエン成分を含有する場合、上記ポリスチレン系樹脂におけるバイオマス由来の共役ジエン成分の含有量は、5重量%以上であることが好ましく、30重量%以上であることがより好ましく、100重量%以下であることが好ましい。
【0038】
上記ポリスチレン系樹脂がバイオマス由来のブタジエン成分を含有する場合、上記ポリスチレン系樹脂におけるバイオマス由来のブタジエン成分の含有量は、5重量%以上であることが好ましく、30重量%以上であることがより好ましく、100重量%以下であることが好ましい。
【0039】
上記ポリスチレン系樹脂中のバイオマス由来の成分の含有量は、5重量%以上であることが好ましく、30重量%以上であることがより好ましく、100重量%以下であることが好ましい。
【0040】
上記ポリスチレン系樹脂のバイオマス度は、10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、100%以下であることが好ましい。
上記バイオマス度は、ISO16620-2:2015に基づき、加速器質量分光計を用いて測定することができる。
【0041】
また、上記ポリスチレン系樹脂は、バイオマス度が異なる複数のポリスチレン系樹脂を含有するものであってもよい。
上記ポリスチレン系樹脂が、バイオマス度が異なる複数のポリスチレン系樹脂を含有する混合樹脂である場合、上記混合樹脂のバイオマス度は、ISO16620-2:2015に基づいて測定することができる。また、上記バイオマス度は、混合樹脂中の各ポリスチレン系樹脂の重量比とバイオマス度とに基づいて算出することもできる。
【0042】
上記ポリスチレン系樹脂のビカット軟化温度の好ましい下限は60℃、好ましい上限は85℃である。上記ビカット軟化温度が60℃未満であると、熱収縮性多層フィルムの低温収縮性が高くなり過ぎ、容器に装着するときにシワが入りやすくなる。上記ビカット軟化温度が85℃を超えると、熱収縮性多層フィルムの低温収縮性が低下し、容器に装着するときに未収縮部分が発生しやすくなる。上記ビカット軟化温度のより好ましい下限は65℃、より好ましい上限は80℃である。なお、上記ビカット軟化温度は、ISO 306:1994に準拠した方法で測定することができる。
また、上記ポリスチレン系樹脂が、ビカット軟化温度が異なる複数のポリスチレン系樹脂を含有する混合樹脂である場合、上記混合樹脂のビカット軟化温度は、混合樹脂中の各ポリスチレン系樹脂の重量比とビカット軟化温度とに基づいて算出される見掛けのビカット軟化温度を意味する。
【0043】
上記ポリスチレン系樹脂の200℃でのMFR(melt flow rate)の好ましい下限は2g/10分、好ましい上限は15g/10分である。200℃でのMFRが2g/10分未満であると、フィルムの製膜が難しくなる。200℃でのMFRが15g/10分を超えると、フィルムの機械的強度が低くなり、実用に耐えられなくなる。200℃でのMFRのより好ましい下限は4g/10分、より好ましい上限は12g/10分である。なお、MFRは、ISO1133に準拠した方法で測定することができる。
【0044】
上記ポリスチレン系樹脂を含有する層は、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、蛍光増白剤、着色剤等の添加剤を含有してもよい。
【0045】
本発明の熱収縮性フィルムが上記表裏層及び中間層を有する場合、本発明の熱収縮性フィルムは表裏層及び中間層からなるものであってもよく、また、表裏層と中間層との間に接着層を介在させてもよい。
【0046】
上記接着層を構成する樹脂としては、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、これらの変性物等の接着性樹脂を用いることができる。
また、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂及びポリエステル系エラストマーの混合樹脂を用いることもできる。
【0047】
上記スチレン系エラストマーは、ハードセグメントとしてのポリスチレンと、ソフトセグメントとしてポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリブタジエンとポリイソプレンとの共重合体とからなるものや、これらの水素添加物のことである。なお、上記水素添加物は、ポリブタジエンやポリイソプレンの一部が水素添加されたものであってもよく、全てが水素添加されたものであってもよい。
【0048】
上記スチレン系エラストマーの市販品としては、例えば、「タフテック」、「タフプレン」(何れも旭化成ケミカルズ社製)、「クレイトン」(クレイトンポリマージャパン社製)、「ダイナロン」(JSR社製)、「セプトン」(クラレ社製)等が挙げられる。
【0049】
上記スチレン系エラストマーの変性物としては、例えば、カルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基及び水酸基等の官能基によって変性されたものが挙げられる。
上記スチレン系エラストマーの変性物における上記カルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基及び水酸基等の官能基の含有量の好ましい下限は0.05重量%、好ましい上限は5.0重量%である。上記含有量が0.05重量%未満であると、特に表面層及び裏面層との接着性が不充分となることがあり、5.0重量%を超えると、上記官能基を付加する際に樹脂が熱劣化し、ゲル等の異物が発生しやすくなることがある。上記含有量のより好ましい下限は0.1重量%、より好ましい上限は3.0重量%である。
【0050】
上記ポリエステル系エラストマーは、飽和ポリエステル系エラストマーであることが好ましく、特に、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系エラストマーであることが好ましい。ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系エラストマーとしては、例えば、ハードセグメントである芳香族ポリエステルと、ソフトセグメントであるポリアルキレンエーテルグリコールや脂肪族ポリエステルとからなるブロック共重合体が好ましい。更に、ソフトセグメントとしてポリアルキレンエーテルグリコールを有するポリエステルポリエーテルブロック共重合体がより好ましい。
【0051】
上記ポリエステルポリエーテルブロック共重合体としては、(i)炭素原子数2~12の脂肪族及び/又は脂環族ジオールと、(ii)芳香族ジカルボン酸及び/又は脂肪族ジカルボン酸又はそのアルキルエステルと、(iii)ポリアルキレンエーテルグリコールとを原料とし、エステル化反応又はエステル交換反応により得られたオリゴマーを重縮合させたものが好ましい。
【0052】
上記炭素原子数2~12の脂肪族及び/又は脂環族ジオールとしては、例えば、ポリエステルの原料、特にポリエステル系エラストマーの原料として一般に用いられるものを用いることができる。具体的には例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらの中では、1,4-ブタンジオール又はエチレングリコールが好ましく、特に1,4-ブタンジオールが好ましい。これらのジオールは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
上記芳香族ジカルボン酸としては、ポリエステルの原料、特にポリエステル系エラストマーの原料として一般的に用いられているものを用いることができる。具体的には例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。これらの中では、テレフタル酸又は2,6-ナフタレンジカルボン酸が好ましく、特にテレフタル酸が好ましい。これらの芳香族ジカルボン酸は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
上記芳香族ジカルボン酸のアルキルエステルとしては、上記芳香族ジカルボン酸のジメチルエステルやジエチルエステル等が挙げられる。なかでも、ジメチルテレフタレート及び2,6-ジメチルナフタレンジカルボキシレートが好ましい。
【0055】
上記脂肪族ジカルボン酸としては、シクロヘキサンジカルボン酸等が好ましく、そのアルキルエステルとしては、ジメチルエステルやジエチルエステル等が好ましい。また、上記の成分以外に3官能のアルコールやトリカルボン酸又はそのエステルを少量共重合させてもよく、更に、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸又はそのジアルキルエステルを共重合成分として用いてもよい。
【0056】
上記ポリアルキレンエーテルグリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2-及び/又は1,3-プロピレンエーテル)グリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンエーテル)グリコール等が挙げられる。
【0057】
上記ポリアルキレンエーテルグリコールの数平均分子量の好ましい下限は400、好ましい上限は6000である。上記数平均分子量を400以上とすることで、共重合体のブロック性が高くなり、6000以下とすることで、系内での相分離が起こり難く、ポリマー物性が発現しやすくなる。上記数平均分子量のより好ましい下限は500、より好ましい上限は4000、更に好ましい下限は600、更に好ましい上限は3000である。なお、本明細書において、数平均分子量とはゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定されたものをいう。また、上記GPCのキャリブレーションは、例えば、POLYTETRAHYDROFURANキャリブレーションキット(英国POLYMER LABORATORIES社製)を使用することにより行うことができる。
【0058】
また、上記接着層が、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂及びポリエステル系エラストマーの混合樹脂を含有する場合、上記ポリエステル系樹脂は、上記ポリエステル系樹脂を含有する層を構成するポリエステル系樹脂と同様のものを用いることができる。また、上記ポリスチレン系樹脂としては、上記ポリスチレン系樹脂を含有する層を構成するポリスチレン系樹脂と同様のものを用いることができる。
上記接着層を構成するポリエステル系樹脂は、バイオマス由来の成分を含むものであってもよく、バイオマス由来の成分を含まないものであってもよい。
上記接着層を構成するポリスチレン系樹脂は、バイオマス由来の成分を含むものであってもよく、バイオマス由来の成分を含まないものであってもよい。
【0059】
本発明の熱収縮性フィルムは、バイオマス度の好ましい下限が1%、より好ましい下限が2%、更に好ましい下限が10%、好ましい上限が100%、より好ましい上限が95%、更に好ましい上限が50%である。
上記範囲とすることで、経済合理性やフィルム性能を損なうことなく環境負荷の低減が可能となるという利点がある。
上記バイオマス度は、ISO16620-2:2015に基づき、加速器質量分光計を用いて測定することができる。
【0060】
本発明の熱収縮性フィルムの厚さの好ましい下限は30μm、好ましい上限は60μmである。熱収縮性多層フィルムの厚さを上記範囲内とすることで、経済性に優れるとともに、取り扱いやすいものとなる。
【0061】
また、本発明の熱収縮性フィルムが表裏層と中間層とを有する場合、本発明の熱収縮性フィルム全体の厚さを45μmとした際の上記中間層の厚さの好ましい下限は22μm、好ましい上限は37μmである。22μm以上であると、充分なミシン目を付与することができ、37μm以下であると、充分な耐熱性を付与することができる。より好ましい下限は26μm、より好ましい上限は36μmである。
本発明の熱収縮性フィルムが表裏層と中間層とを有する場合、本発明の熱収縮性フィルム全体の厚さを45μmとした際の上記表裏層の厚さの好ましい下限は3μm、好ましい上限は10μmである。3μm以上であると、充分な耐油性や耐熱性を付与することができ、10μm以下であると、充分なミシン目におけるカット性を付与することができる。より好ましい下限は4μm、より好ましい上限は8μmである。
本発明の熱収縮性フィルムが表裏層と中間層とを有する場合、本発明の熱収縮性フィルム全体の厚さを45μmとした際の上記接着層の厚さの好ましい下限は0.7μm、好ましい上限は1.5μmである。0.7μm以上であると、充分な接着強度を付与することができ、1.5μm以下であると、充分な熱収縮特性を付与することができる。より好ましい下限は0.8μm、より好ましい上限は1.3μmである。
【0062】
本発明の熱収縮性フィルムの熱収縮特性については、70℃の温水中に10秒間浸した場合は、MD方向(主収縮方向と直交する方向)の熱収縮率の好ましい下限が-12%、より好ましい下限が-7%、好ましい上限が8%、より好ましい上限が3%である。また、TD方向(主収縮方向)の熱収縮率の好ましい下限が5%、より好ましい下限が10%、好ましい上限が65%、より好ましい上限が50%である。
上記範囲とすることで、容器の変形を防止することができ、また、加熱による急激な収縮を防止してシワ等の発生を抑制することができる。
なお、上記70℃の温水中に10秒間浸した場合の熱収縮率とは、熱収縮性多層フィルムを、100mm×100mmの大きさにサンプルをカットし、70℃の温水中に10秒間浸した後の、加熱処理前の寸法に対する加熱後の寸法の変化率を%で表した値のことである。
【0063】
本発明の熱収縮性フィルムの熱収縮特性については、80℃の温水中に10秒間浸した場合は、MD方向(主収縮方向と直交する方向)の熱収縮率の好ましい下限が‐12%、より好ましい下限が‐7%、好ましい上限が8%、より好ましい上限が3%である。また、TD方向(主収縮方向)の熱収縮率の好ましい下限が35%、より好ましい下限が45%、好ましい上限が70%、より好ましい上限が65%である。
なお、上記80℃の温水中に10秒間浸した場合の熱収縮率とは、熱収縮性多層フィルムを、100mm×100mmの大きさにサンプルをカットし、80℃の温水中に10秒間浸した後の、加熱処理前の寸法に対する加熱後の寸法の変化率を%で表した値のことである。
【0064】
本発明の熱収縮性フィルムの熱収縮特性については、90℃の温水中に10秒間浸した場合は、MD方向(主収縮方向と直交する方向)の熱収縮率の好ましい下限が‐10%、より好ましい下限が‐5%、好ましい上限が15%、より好ましい上限が10%である。また、TD方向(主収縮方向)の熱収縮率の好ましい下限が50%、より好ましい下限が55%、好ましい上限が80%、より好ましい上限が75%である。
なお、上記90℃の温水中に10秒間浸した場合の熱収縮率とは、熱収縮性多層フィルムを、100mm×100mmの大きさにサンプルをカットし、90℃の温水中に10秒間浸した後の、加熱処理前の寸法に対する加熱後の寸法の変化率を%で表した値のことである。
【0065】
本発明の熱収縮性フィルムの熱収縮特性については、98℃の温水中に10秒間浸した場合は、MD方向(主収縮方向と直交する方向)の熱収縮率の好ましい下限が0%、より好ましい下限が5%、好ましい上限が25%、より好ましい上限が20%である。また、TD方向(主収縮方向)の熱収縮率の好ましい下限が55%、より好ましい下限が65%、好ましい上限が85%、より好ましい上限が80%である。
なお、上記98℃の温水中に10秒間浸した場合の熱収縮率とは、熱収縮性多層フィルムを、100mm×100mmの大きさにサンプルをカットし、98℃の温水中に10秒間浸した後の、加熱処理前の寸法に対する加熱後の寸法の変化率を%で表した値のことである。
【0066】
本発明の熱収縮性フィルムのTD方向の自然収縮率は、40℃7日間放置したとき、好ましい上限は3%である。上記自然収縮率が3%以下であると、本発明の熱収縮性フィルムを保管する際に、寸法変化が起こりにくく、印刷加工時の不良を防止することができる。上記自然収縮率のより好ましい上限は2%である。
【0067】
本発明の熱収縮性フィルムを製造する方法としては特に限定されないが、共押出法により各層を同時に成形する方法が好適である。例えば、Tダイによる共押出では、積層の方法として、フィードブロック方式、マルチマニホールド方式、又は、これらを併用した方法のいずれであってもよい。具体的には例えば、ポリエステル系樹脂を含有する層を構成する原料やポリスチレン系樹脂を含有する層を構成する原料、必要に応じて接着層を構成する原料をそれぞれ押出機に投入し、ダイスによりシート状に押し出し、引き取りロールにて冷却固化した後、1軸又は2軸に延伸する方法を用いることができる。
【0068】
本発明の熱収縮性フィルムをベースフィルムとして使用することにより、熱収縮性ラベルを得ることができる。このような熱収縮性ラベルもまた本発明の1つである。
本発明の熱収縮性ラベルは、上記熱収縮性多層フィルムをベースフィルムとして、必要に応じて、印刷層等の他の層を積層してもよい。
【0069】
容器に熱収縮性ラベルを装着する方法としては、通常、溶剤を用いて熱収縮性多層フィルムの端部間を接着してチューブ状に加工(センターシール加工)し熱収縮性ラベルとした後、容器を覆った状態で加熱して収縮させる方法が採用されている。
【発明の効果】
【0070】
本発明によれば、化石資源の使用量を削減することができるとともに、機械的特性等の物性面において高い性能を発現可能な熱収縮性フィルムを提供することができる。また、該熱収縮性フィルムを含む熱収縮性ラベルを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
実施例、参考例においては、以下の原料を用いた。
【0072】
(ポリエステル系樹脂)
・PET-1:バイオマス成分含有ポリエステル系樹脂(ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分:100モル%、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分:100モル%、ガラス転移温度:75℃)
・PET-2:バイオマス成分非含有ポリエステル系樹脂(ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分:100モル%、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分:100モル%、ガラス転移温度:75℃)
・PET-3:バイオマス成分含有ポリエステル系樹脂(ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分:77モル%、イソフタル酸に由来する成分:23モル%、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分:100モル%、ガラス転移温度:71℃)
・PET-4:バイオマス成分非含有ポリエステル系樹脂(ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分:77モル%、イソフタル酸に由来する成分:23モル%、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分:100モル%、ガラス転移温度:71℃)
・PET-5:バイオマス成分非含有ポリエステル系樹脂(ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分:100モル%、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分:65モル%、ジエチレングリコールに由来する成分:20モル%、1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する成分:15モル%、ガラス転移温度:69℃)
【0073】
(ポリスチレン系樹脂)
・PS-1:バイオマス成分非含有スチレン-ブタジエン共重合体(スチレン成分:76重量%、ブタジエン成分:24重量%、ビカット軟化温度:70℃)
・PS-2:バイオマス成分非含有スチレン-ブタジエン共重合体(スチレン成分:70重量%、ブタジエン成分:30重量%、ビカット軟化温度:72℃)
・PS-3:バイオマス成分非含有スチレン-ブタジエン共重合体(スチレン成分:84重量%、ブタジエン成分:16重量%、ビカット軟化温度:75℃)
・PS-4:バイオマス成分含有スチレン-ブタジエン共重合体(スチレン成分:75重量%、ブタジエン成分:25重量%、ビカット軟化温度:62℃)
・PS-5:バイオマス成分含有スチレン-ブタジエン共重合体(スチレン成分:90重量%、ブタジエン成分:10重量%、ビカット軟化温度:72℃)
【0074】
(実施例1~5、参考例1~3)
表裏層を構成する樹脂として、表1に示すポリエステル系樹脂を用いた。
中間層を構成する樹脂として、表1に示すポリスチレン系樹脂を用いた。
これらをバレル温度が160~250℃の押出機に投入し、250℃の多層ダイスから3層構造のシート状に押出し、30℃の引き取りロールにて冷却固化した。次いで、予熱ゾーン115℃、延伸ゾーン90℃、熱固定ゾーン85℃のテンター延伸機内で延伸倍率6倍にて延伸した後、巻き取り機で巻き取ることにより、主収縮方向と直交する方向がMD、主収縮方向がTDとなる熱収縮性多層フィルムを得た。
得られた熱収縮性フィルムは、総厚みが40μmであり、層比率(厚さ比)が表裏層/中間層/表裏層=1/5/1、層比率(重量比)が表裏層/中間層/表裏層=1/6/1の3層構造であった。
【0075】
参考例6、7、参考例4)
熱収縮性フィルムを構成する樹脂として、表1に示すポリエステル系樹脂を用いた。
これをバレル温度が160~250℃の押出機に投入し、250℃の単層ダイスから単層構造のシート状に押出し、30℃の引き取りロールにて冷却固化した。次いで、予熱ゾーン115℃、延伸ゾーン90℃、熱固定ゾーン85℃のテンター延伸機内で延伸倍率6倍にて延伸した後、巻き取り機で巻き取ることにより、主収縮方向と直交する方向がMD、主収縮方向がTDとなる熱収縮性多層フィルムを得た。
得られた熱収縮性フィルムは、総厚みが40μmであった。
【0076】
(実施例8、9、参考例5)
熱収縮性フィルムを構成する樹脂として、表1に示すポリスチレン系樹脂を用いた。
これらをバレル温度が160~250℃の押出機に投入し、250℃の単層ダイスから単層構造のシート状に押出し、30℃の引き取りロールにて冷却固化した。次いで、予熱ゾーン115℃、延伸ゾーン90℃、熱固定ゾーン85℃のテンター延伸機内で延伸倍率6倍にて延伸した後、巻き取り機で巻き取ることにより、主収縮方向と直交する方向がMD、主収縮方向がTDとなる熱収縮性多層フィルムを得た。
得られた熱収縮性フィルムは、総厚みが40μmであった。
【0077】
(評価)
実施例及び参考例において、得られた熱収縮性フィルムについて、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0078】
(1)バイオマス度
得られた熱収縮性フィルムについて、ISO16620-2:2015に基づき、加速器質量分光計(NEC社製、9SDH-2)を用いて、放射性炭素(C14)の濃度を求めることにより、バイオマス度を測定した。
【0079】
(2)熱収縮率
得られた熱収縮性フィルムを、100mm×100mmの大きさにカットし、70℃、80℃、90℃、98℃の温水に、それぞれ10秒間浸漬させた後、熱収縮性フィルムを取り出し、加熱処理前の寸法に対する加熱後の寸法の比率を算出した。なお、収縮率はn=3としてその平均値を用いた。
【0080】
(3)ヘイズ
得られた熱収縮性フィルムを、ヘイズメータ(日本電色工業社製、NDH-5000)を用いて、JIS K-7136(2000)に準拠して、ヘイズを測定した。
【0081】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明によれば、化石資源の使用量を削減することができるとともに、機械的特性等の物性面において高い性能を発現可能な熱収縮性多層フィルムを提供することができる。また、該熱収縮性フィルムを含む熱収縮性ラベルを提供することができる。