(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】吐出器
(51)【国際特許分類】
F04B 9/14 20060101AFI20231106BHJP
B65D 47/34 20060101ALI20231106BHJP
B05B 11/00 20230101ALI20231106BHJP
【FI】
F04B9/14 B
B65D47/34 110
B05B11/00 101Z
(21)【出願番号】P 2020033500
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2022-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】當麻 徹
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-521138(JP,A)
【文献】特開平10-235240(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109809026(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 9/14
B65D 47/34
B05B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容液が収容された容器体の口部に上方付勢状態で下方移動可能に立設されるステムを有するポンプと、
前記ステムの上端部に装着された装着筒部を有するとともに、ノズル孔が形成された押下ヘッドと、
前記ポンプを前記口部に装着する装着キャップと、を備え、
前記口部に装着した状態で、前記押下ヘッドを押下して前記ステムを下方に移動させ前記ポンプを作動させることにより、前記内容液を前記ステム内を通して前記ノズル孔から吐出する吐出器であって、
前記ポンプは、前記装着筒部の径方向の外側に設けられるとともに、前記ステムを上方付勢する、合成樹脂製の付勢部材を備え、
前記押下ヘッドは、前記装着キャップに対して周方向に回転可能に設けられ、
前記押下ヘッドと前記装着キャップとの間には、前記付勢部材の上端部を支持する上支持部が、前記装着キャップに対する周方向の回転移動、および前記押下ヘッドに対する上方移動が規制された状態で、前記押下ヘッドに対して周方向に回転可能で、かつ下方移動可能に設けられ、
前記押下ヘッド、および前記上支持部のうち、いずれか一方には、いずれか他方に形成された傾斜案内面を摺動可能な摺動部が設けられ、
前記押下ヘッドを、前記上支持部に対して周方向に沿う押込み方向に回転させたときに、前記摺動部が前記傾斜案内面を摺動することで、前記上支持部が下方に移動
し、
前記摺動部、および前記傾斜案内面の双方が、前記押下ヘッド、および前記上支持部の双方に設けられ、
前記押下ヘッド、および前記上支持部に設けられた各前記傾斜案内面が、互いに当接している、吐出器。
【請求項2】
前記付勢部材は、径方向の外側から見て、周方向に屈曲した屈曲部を1つ有するC字状を呈する弾性棒を備えている、請求項
1に記載の吐出器。
【請求項3】
前記弾性棒は、前記装着筒部を径方向に挟む両側に設けられている、請求項
2に記載の吐出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるように、内容液が収容された容器体の口部に上方付勢状態で下方移動可能に立設されるステムを有するポンプと、ステムの上端部に装着された装着筒部を有するとともに、ノズル孔が形成された押下ヘッドと、ポンプを口部に装着する装着キャップと、を備え、口部に装着した状態で、押下ヘッドを押下してステムを下方に移動させポンプを作動させることにより、内容液をステム内を通してノズル孔から吐出する吐出器が知られている。
一般に、ステムを上方付勢する付勢部材は、金属材料で形成されるとともに、ポンプのシリンダ内に収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の吐出器では、廃棄に際し、付勢部材をシリンダから取り出しにくく、金属材料からなる付勢部材と、合成樹脂材料からなるその他の部材と、を分別することが困難であるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、廃棄時の分別を不要にすることができる吐出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の吐出器は、内容液が収容された容器体の口部に上方付勢状態で下方移動可能に立設されるステムを有するポンプと、前記ステムの上端部に装着された装着筒部を有するとともに、ノズル孔が形成された押下ヘッドと、前記ポンプを前記口部に装着する装着キャップと、を備え、前記口部に装着した状態で、前記押下ヘッドを押下して前記ステムを下方に移動させ前記ポンプを作動させることにより、前記内容液を前記ステム内を通して前記ノズル孔から吐出する吐出器であって、前記ポンプは、前記装着筒部の径方向の外側に設けられるとともに、前記ステムを上方付勢する、合成樹脂製の付勢部材を備え、前記押下ヘッドは、前記装着キャップに対して周方向に回転可能に設けられ、前記押下ヘッドと前記装着キャップとの間には、前記付勢部材の上端部を支持する上支持部が、前記装着キャップに対する周方向の回転移動、および前記押下ヘッドに対する上方移動が規制された状態で、前記押下ヘッドに対して周方向に回転可能で、かつ下方移動可能に設けられ、前記押下ヘッド、および前記上支持部のうち、いずれか一方には、いずれか他方に形成された傾斜案内面を摺動可能な摺動部が設けられ、前記押下ヘッドを、前記上支持部に対して周方向に沿う押込み方向に回転させたときに、前記摺動部が前記傾斜案内面を摺動することで、前記上支持部が下方に移動する。
【0007】
本発明によれば、付勢部材が合成樹脂材料で形成されているので、吐出器の廃棄に際し、付勢部材と、合成樹脂材料からなる他の部材と、を分別する必要をなくすことができる。
押下ヘッドが、装着キャップに対して周方向に回転可能に設けられ、押下ヘッドと装着キャップとの間に、付勢部材の上端部を支持する上支持部が、装着キャップに対する周方向の回転移動、および押下ヘッドに対する上方移動が規制された状態で、押下ヘッドに対して周方向に回転可能で、かつ下方移動可能に設けられ、押下ヘッド、および上支持部のうち、いずれか一方に、いずれか他方に形成された傾斜案内面を摺動可能な摺動部が設けられている。したがって、押下ヘッドを、上支持部に対して周方向に沿う押込み方向に回転させたときに、摺動部が傾斜案内面を摺動することで、上支持部が下方に移動させられ、付勢部材が上下方向に圧縮することとなる。
これにより、使用前の例えば流通時等には、付勢部材を自然長、若しくはわずかな量だけ上下方向に圧縮させた状態にしておき、使用に際し、押下ヘッドを上支持部に対して押込み方向に回転させ、付勢部材を上下方向に圧縮し、ステムに、ポンプを円滑に作動させることが可能になる程度の上方付勢力を加えることができる。このため、付勢部材に上下方向の十分な圧縮力を加えずに、流通および保管等を行うことによって、この期間に付勢部材に圧縮変形の癖が付くこと(塑性変形)がなく、吐出器の使用に際して、付勢部材が弾性変形しにくくなっているのを防ぐことができる。なお、付勢部材が合成樹脂材料で形成されているので、付勢部材に上下方向の十分な圧縮力を長時間加えると、付勢部材に圧縮変形の癖が付くおそれがある。
付勢部材が、押下ヘッドの装着筒部の径方向の外側に設けられており、流通時等の未使用状態で、内容液が付勢部材に非接触となっているので、付勢部材が合成樹脂材料で形成されていても、付勢部材に、例えば内容液が染み込んで膨潤等が生ずるのを防ぐことができる。
なお、内容液を吐出するときに限って、押下ヘッドを、上支持部に対して押込み方向に回転させて、付勢部材を上下方向に圧縮させ、内容液の吐出後には、押下ヘッドを、上支持部に対して周方向に沿う押込み方向の反対側に回転させ、付勢部材の上下方向の圧縮を緩めれば、付勢部材に加えられる負荷が抑えられ、内容液の吐出後の上方に向けた付勢部材の復元力を、長期にわたって維持することができる。
【0008】
前記摺動部、および前記傾斜案内面の双方が、前記押下ヘッド、および前記上支持部の双方に設けられ、前記押下ヘッド、および前記上支持部に設けられた各前記傾斜案内面が、互いに当接してもよい。
【0009】
この場合、押下ヘッド、および上支持部に設けられた各傾斜案内面が、互いに当接しているので、押下ヘッドを、上支持部に対して押込み方向に回転させたときに、押下ヘッド、および上支持部に設けられた各傾斜案内面が互いに摺接することとなり、上支持部を、引っ掛かり少なく円滑に下方に移動させることができる。
押下ヘッド、および上支持部に設けられた各傾斜案内面が、互いに当接していることから、不意に加えられた外力によって、押下ヘッドが、上支持部に対して周方向に沿う押込み方向に回転しようとしたときに、前述の各傾斜案内面が周方向に互いに突き当てられることとなり、この回転を抑制することができる。
【0010】
前記付勢部材は、径方向の外側から見て、周方向に屈曲した屈曲部を1つ有するC字状を呈する弾性棒を備えてもよい。
【0011】
この場合、付勢部材が、径方向の外側から見て、周方向に屈曲した屈曲部を1つ有するC字状を呈する弾性棒を備えているので、弾性棒が上下方向に圧縮変形したときに弾性棒に加えられる負荷を抑えることが可能になり、弾性棒に上下方向の圧縮変形の癖が付くのを抑制することができる。
【0012】
前記弾性棒は、前記装着筒部を径方向に挟む両側に設けられてもよい。
【0013】
この場合、弾性棒が、装着筒部を径方向に挟む両側に設けられているので、押下ヘッドの押下時に、上支持部が上下方向に対して傾くのを抑制することが可能になり、ポンプを安定して作動させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、廃棄時の分別を不要にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る一実施形態として示した吐出器の縦断面図である。
【
図2】
図1の吐出器において、摺動部および傾斜案内面の展開図である。
【
図3】
図1の吐出器において、付勢部材における上端部および下端部を含む部分の一部縦断面図である。
【
図4】
図1の吐出器であって、押下ヘッドを、上支持部に対して周方向に沿う押込み方向に回転させた状態を示す図である。
【
図5】
図4の吐出器において、摺動部および傾斜案内面の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る吐出器の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の吐出器1は、ステム21を有するポンプ2と、ステム21に装着された押下ヘッド5と、ポンプ2を内容液が収容された容器体Aの口部A1に装着する装着キャップ7と、を備えている。
吐出器1を構成する全ての部品は、合成樹脂材料により形成されている。
【0017】
ステム21および装着キャップ7は、共通軸と同軸に配設されている。以下、この共通軸を中心軸線Oといい、中心軸線Oに沿って押下ヘッド5側を上側、容器体Aの底部側を下側という。また、中心軸線Oに沿う方向を上下方向といい、上下方向から見て、中心軸線Oに交差する方向を径方向、中心軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0018】
容器体Aは、有底筒状に形成され、口部A1の外周面に雄ねじが形成されている。容器体Aは、中心軸線Oと同軸に配設されている。
装着キャップ7は、環状の天壁および周壁を有する有頂筒状に形成されている。装着キャップ7の天壁の内側に、ステム21が上下動可能に挿入されている。装着キャップ7の周壁の内周面に、口部A1の雄ねじに螺合する雌ねじが形成されている。なお、装着キャップ7の周壁は、口部A1に、例えばアンダーカット嵌合等されてもよい。
【0019】
装着キャップ7は、天壁の内周縁部から上方および下方の双方向に向けて突出した案内筒71を備えている。案内筒71は、中心軸線Oと同軸に配設されている。案内筒71のうち、装着キャップ7の天壁より上方に位置する上部73の外周面に、上下方向に延びる縦リブ71aが形成されている。縦リブ71aは、周方向に間隔をあけて複数設けられている。縦リブ71aは、案内筒71の上部73における上下方向の全長にわたって設けられている。縦リブ71aは、2つ設けられ、中心軸線Oを径方向に挟む両側に1つずつ設けられている。2つの縦リブ71aのうちの1つは、後述するノズル孔54aと同じ周方向の位置に位置している。
【0020】
ポンプ2は、ステム21、ピストン22、シリンダ23、下部弁体24、および付勢部材25を備えている。
【0021】
シリンダ23は、環状の底壁および周壁を有する有底筒状に形成され、中心軸線Oと同軸に配設されている。シリンダ23の底壁における内周縁部に、下方に向けて延びる取付筒2aが設けられている。取付筒2aには、吸上筒2bの上端部が嵌合されている。吸上筒2bの下端開口部は、容器体Aの底部内に位置する。
シリンダ23の周壁の上端部に、径方向の外側に向けて突出するとともに、周方向に延びる固定フランジ部29が形成されている。固定フランジ部29は、パッキン9を介して容器体Aの口部A1の上端開口縁に配置される。固定フランジ部29の上面には、装着キャップ7の天壁の下面が配置されている。シリンダ23の周壁の下端部内に、下部弁体24が設けられている。
【0022】
下部弁体24は、嵌合筒31、弁本体32、および連結片33を備えている。
嵌合筒31は、シリンダ23の周壁の下端部内に嵌合されている。弁本体32は板状に形成され、シリンダ23の底壁の上面における開口周縁部に着座し、シリンダ23の底壁の内側を閉塞している。弁本体32は、嵌合筒31の内周面に、弾性変形可能な連結片33を介して連結されている。弁本体32は、連結片33の弾性変形に伴い上下方向に弾性変位する。
下部弁体24は、シリンダ23内の加圧時に、シリンダ23の底壁の内側を閉塞した状態に保持し、シリンダ23内の減圧時に、シリンダ23の底壁の内側を開放する逆止弁となっている。これにより、下部弁体24は、シリンダ23内の加圧時に、シリンダ23内の内容液がシリンダ23の底壁の内側を通じて容器体Aに戻ることを阻止する一方、シリンダ23内の減圧時に、容器体A内の内容液をシリンダ23の底壁の内側を通じてシリンダ23内に流入させる。
【0023】
ステム21は、口部A1に上方付勢状態で下方移動可能に立設される。ステム21は、有底筒状に形成されている。ステム21の下部は、シリンダ23内に収容されている。ステム21の上部は、シリンダ23の上端開口部より上方に位置している。ステム21の下部には、径方向に貫く連通孔34が形成されている。ステム21には、径方向の外側に突出した台座部35が形成されている。台座部35は、ステム21のうち、連通孔34より下方に位置する部分に形成されている。台座部35は、ピストン22を、ピストン22の下方から支持している。台座部35の上面には、上方に突出するとともに、周方向の全長にわたって延びるシール突起35aが形成されている。
【0024】
ピストン22は、外筒38、内筒37、および連結板39を備えている。
外筒38は、円筒状に形成され、中心軸線Oと同軸に設けられている。外筒38は、シリンダ23内に上下摺動可能に嵌合されている。シリンダ23において、外筒38と径方向で対向する部分に、径方向に貫通する貫通孔が形成されている。
内筒37は、円筒状に形成され、中心軸線Oと同軸に設けられている。内筒37の下端部は、ステム21の台座部35のシール突起35a内に密に着脱可能に嵌合されている。これにより、内筒37は、シリンダ23内において、ピストン22より下方に位置する部分(以下、下室23aという)と、ステム21の連通孔34と、の連通、およびその遮断を切替える。
連結板39は、外筒38の内周面と内筒37の外周面とを連結し、周方向の全長にわたって連続して延びている。連結板39の上面に、案内筒71の下端開口縁が当接している。
【0025】
押下ヘッド5は、頂壁部51および外筒部52を有する有頂筒状に形成され、中心軸線Oと同軸に配設されている。外筒部52は、装着キャップ7の案内筒71より径方向の外側に設けられている。外筒部52の下端部は、案内筒71の上端部より上方に位置している。
押下ヘッド5は、頂壁部51から下方に突出した装着筒部53と、装着筒部53から径方向の外側に向けて延び、外筒部52を径方向に貫くノズル筒部54と、を有する。ノズル筒部54の先端には、径方向に開口するノズル孔54aが形成されている。ノズル筒部54の内部は、装着筒部53内に連通している。装着筒部53は、中心軸線Oと同軸に配設されている。装着筒部53の下端部は、外筒部52の下端部よりも下方に位置している。装着筒部53の内側には、ステム21の上端部が嵌合されている。
【0026】
装着筒部53は、装着キャップ7の案内筒71内に、周方向に回転可能に挿入されている。装着筒部53の下端部は、案内筒71の下端部より上方に位置している。装着筒部53の下端部内に、ピストン22の内筒37の上部が上下摺動可能に嵌合されている。装着筒部53の下端開口縁は、ピストン22の連結板39の上面と上下方向の隙間をあけた状態で対向している。
【0027】
付勢部材25は、弾性棒26および連結棒27を備え、装着筒部53の径方向の外側に設けられている。付勢部材25は、自然長、若しくはわずかな量だけ上下方向に圧縮した状態で設けられている。
【0028】
弾性棒26は、案内筒71の径方向の外側に設けられている。弾性棒26は、周方向に屈曲しつつ上下方向に延び、径方向の外側から見て、周方向に屈曲した屈曲部26aを1つ有するC字状を呈する。弾性棒26における上端部および下端部は、中心軸線Oと平行に延びる同一直線上に位置している。弾性棒26における上端部および下端部は、中心軸線Oを中心に、ノズル孔54aおよび縦リブ71aから約90°離れている。
弾性棒26は、装着筒部53を径方向に挟む両側に設けられている。弾性棒26は2つ設けられ、2つの弾性棒26に設けられた各屈曲部26aが周方向に屈曲する向きは、互いに逆向きになっている。2つの弾性棒26は、互いに同じ大きさで同じ形状に形成されるとともに、同じ上下方向の位置に設けられている。
【0029】
以下、径方向のうち、弾性棒26における上端部および下端部が、装着筒部53に向き合う方向を左右方向という。
図1および
図3に示されるように、弾性棒26の下端部に、左右方向の両側に突出する下回転軸26bが形成されている。下回転軸26bは、装着キャップ7の天壁の上面に形成された軸受突起72の軸受孔に回転可能に嵌合されている。軸受突起72は、左右方向に間隔をあけて設けられた一対の板体を備え、軸受孔は、これらの板体を左右方向に一体に貫き、上方に向けて開口している。下回転軸26bが、軸受突起72の軸受孔に嵌合されることにより、付勢部材25の下端部が支持されている。
【0030】
連結棒27は、2つの弾性棒26の下端部同士を連結している。連結棒27は、中心軸線O回りに延び、上下方向から見て、径方向に屈曲した屈曲部を1つ有するC字状を呈する。連結棒27は、径方向のうち、上下方向から見て、弾性棒26の反対側に向けて屈曲している。連結棒27は、案内筒71を径方向の外側から囲い、装着キャップ7の天壁の上面に当接、若しくは近接している。
【0031】
付勢部材25の上端部は、押下ヘッド5と装着キャップ7との間に設けられた上支持部10に支持されている。
上支持部10は、本体筒11、張出フランジ部12、および支持嵌合筒13を備えている。
【0032】
本体筒11は、中心軸線Oと同軸に配設されている。本体筒11の径方向の内側に、装着キャップ7の案内筒71が位置している。本体筒11の内周面に、案内筒71の縦リブ71aが、上下動可能に挿入された係合溝11aが形成されている。これにより、上支持部10は、装着キャップ7に対する周方向の回転移動が規制された状態で、装着キャップ7および押下ヘッド5に対して下方移動可能に設けられている。係合溝11aは、本体筒11の内周面のうち、上部を除く上下方向の全長にわたって形成されている。係合溝11aは、本体筒11の下端開口縁に開口している。なお、係合溝11aを案内筒71の外周面に形成し、縦リブ71aを本体筒11の内周面に形成してもよい。
【0033】
張出フランジ部12は、本体筒11の上端部から径方向の外側に向けて突出し、周方向の全長にわたって連続して延びている。
図3に示されるように、張出フランジ部12に、上下方向に貫く貫通孔12bが形成されている。張出フランジ部12の上面における貫通孔12bの開口周縁部に、この貫通孔12bを周方向に跨ぐアーチ状の上壁12aが連結されている。上壁12aの下面に、弾性棒26の上端縁が摺動可能に当接している。本体筒11の外周面のうち、前記貫通孔12bにこの貫通孔12bの下方から連なる部分に、径方向の外側に向けて突出した受突起11bが形成されている。受突起11bに、弾性棒26の上端部から径方向の内側に向けて突出した上回転軸26cがアンダーカット嵌合している。
【0034】
支持嵌合筒13は、張出フランジ部12の外周縁部から下方に向けて突出している。支持嵌合筒13は、外筒部52内に回転可能に嵌合されている。これにより、上支持部10は、押下ヘッド5に対して周方向に回転可能に設けられている。
【0035】
本体筒11の上端開口縁に、押下ヘッド5の頂壁部51から下方に向けて突出した規制突起56が当接している。これにより、押下ヘッド5に対する上支持部10の上方移動が規制され、付勢部材25は、上支持部10および押下ヘッド5を介して、ステム21を装着キャップ7に対して上方に付勢する。
規制突起56は、押下ヘッド5の外筒部52の下端開口縁より上方に位置している。規制突起56は、上下方向に延びる筒状に形成されている。規制突起56は、中心軸線Oと同軸に配設されている。図示の例では、規制突起56は、本体筒11の上端開口縁の内周部に形成された環状溝の底面11cに当接している。この環状溝は、本体筒11の内周面に開口している。なお、本体筒11の上端開口縁に、前記環状溝を形成しなくてもよい。
【0036】
そして、本実施形態では、
図2に示されるように、押下ヘッド5、および上支持部10のうち、いずれか一方に、いずれか他方に形成された傾斜案内面14、15を摺動可能な摺動部16、17が設けられている。傾斜案内面14、15は、周方向に沿って押込み方向Xに向かうに従い、上方に向けて延びている。これにより、押下ヘッド5を、上支持部10に対して周方向に沿う押込み方向Xに回転させたときに、摺動部16、17が傾斜案内面14、15を摺動することで、上支持部10が下方に移動する。
【0037】
摺動部16、17、および傾斜案内面14、15の双方が、押下ヘッド5、および上支持部10の双方に設けられている。
摺動部16、17のうち、押下ヘッド5に設けられた第1摺動部16は、規制突起56の下端開口縁に形成された凸部とされ、上支持部10に設けられた第2摺動部17は、本体筒11の上端開口縁に形成された前記環状溝の底面11cに設けられた凹部となっている。第1摺動部16が、第2摺動部17に挿入されている。
【0038】
第1摺動部16は、周方向に沿って押込み方向Xに向かうに従い、下方に向けた突出量が小さくなっている。第1摺動部16の表面うち、押込み方向Xの端部に位置して押込み方向Xを向く表面が、押下ヘッド5を、上支持部10に対して周方向に沿う押込み方向Xに回転させたときに、第2摺動部17の内面に摺接することで、上支持部10を下方に移動させる第1傾斜案内面14となっている。
【0039】
第2摺動部17は、周方向に沿って押込み方向Xに向かうに従い、深さが浅くなっている。第2摺動部17の内面うち、押込み方向Xの端部に位置して周方向に沿う押込み方向Xの逆側を向く内面が、押下ヘッド5を、上支持部10に対して周方向に沿う押込み方向Xに回転させたときに、第1摺動部16の表面に摺接することで、上支持部10を下方に移動させる第2傾斜案内面15となっている。
【0040】
第1傾斜案内面14および第2傾斜案内面15は、互いに当接している。押下ヘッド5を、上支持部10に対して周方向に沿う押込み方向Xに回転させると、第1傾斜案内面14および第2傾斜案内面15が、互いに摺接する。図示の例では、第1摺動部16および第2摺動部17はそれぞれ、互いに同じ形状で、同じ大きさに形成されている。
第1摺動部16および第2摺動部17は、中心軸線Oを中心に約160°の角度範囲にわたって設けられている。第1摺動部16および第2摺動部17はそれぞれ、周方向に間隔をあけて2つ設けられている。
【0041】
ここで、装着筒部53の外周面と、案内筒71の内周面と、の間には、押下ヘッド5が、装着キャップ7に対して周方向に沿う押込み方向Xに回転することを抑止し、かつ押下ヘッド5が、装着キャップ7に対して周方向に沿う押込み方向Xに約160°回転したときに、これ以上回転するのを規制するストッパ機構が設けられている。
【0042】
次に、上述した吐出器1の作用について説明する。
【0043】
まず、押下ヘッド5を、上支持部10に対して周方向に沿う押込み方向Xに回転させると、第1傾斜案内面14および第2傾斜案内面15が互いに摺接し、上支持部10が押下ヘッド5の規制突起56により下方に押込まれる。そして、押下ヘッド5が、装着キャップ7に対して周方向に沿う押込み方向Xに約160°回転し、押下ヘッド5のこれ以上の回転移動が、前記ストッパ機構により規制されたときに、
図4および
図5に示されるように、第1摺動部16が、第2摺動部17から、本体筒11の上端開口縁に形成された前記環状溝の底面11cに乗り上がる。これにより、上支持部10が下方に移動させられ、付勢部材25が上下方向に圧縮し、ステム21に、ポンプ2を円滑に作動させることが可能になる程度の上方付勢力が加えられる。
【0044】
その後、押下ヘッド5を押し下げると、ステム21が下降し、台座部35のシール突起35aとピストン22の内筒37との間のシールが解除され、シリンダ23内の下室23aと、ステム21の連通孔34と、が連通する。この状態からさらに押下ヘッド5を継続して押し下げると、装着筒部53の下端開口縁がピストン22の連結板39の上面に当接することで、ピストン22も押下ヘッド5とともに下方移動する。これにより、シリンダ23内の下室23aが加圧され、シリンダ23内の内容液が、台座部35とピストン22との間の上下方向の隙間、連通孔34、ステム21内、装着筒部53内、およびノズル筒部54内をこの順に通過して、ノズル孔54aから吐出される。この際、下部弁体24の弁本体32が、シリンダ23の底壁の上面における開口周縁部に着座した状態に保たれる。
【0045】
その後、押下ヘッド5の押し下げを解除すると、付勢部材25による上方付勢力により、押下ヘッド5がステム21とともに上方に復元移動する。この過程において、ステム21の台座部35が、ピストン22にピストン22の下方から当接し、シール突起35aと内筒37との間がシールされることで、シリンダ23内の下室23aと、ステム21の連通孔34と、の連通が遮断され、その後継続して、ピストン22も押下ヘッド5とともに上方に移動すると、シリンダ23内の下室23aが減圧され、下部弁体24における弁本体32が、連結片33を弾性変形させつつ、シリンダ23の底壁の上面における開口周縁部から上方に離間することで、容器体A内の内容液が、吸上筒2b内を通してシリンダ23内に流入する。
【0046】
以上説明したように、本実施形態の吐出器1によれば、付勢部材25が合成樹脂材料で形成されているので、吐出器1の廃棄に際し、付勢部材25と、合成樹脂材料からなる他の部材と、を分別する必要をなくすことができる。
【0047】
押下ヘッド5が、装着キャップ7に対して周方向に回転可能に設けられ、押下ヘッド5と装着キャップ7との間に、付勢部材25の上端部を支持する上支持部10が、装着キャップ7に対する周方向の回転移動、および押下ヘッド5に対する上方移動が規制された状態で、押下ヘッド5に対して周方向に回転可能で、かつ下方移動可能に設けられ、押下ヘッド5、および上支持部10のうち、いずれか一方に、いずれか他方に形成された傾斜案内面14、15を摺動可能な摺動部16、17が設けられている。
したがって、押下ヘッド5を、上支持部10に対して周方向に沿う押込み方向Xに回転させたときに、摺動部16、17が傾斜案内面14、15を摺動することで、上支持部10が下方に移動させられ、付勢部材25が上下方向に圧縮することとなる。
これにより、使用前の例えば流通時等には、付勢部材25を自然長、若しくはわずかな量だけ上下方向に圧縮させた状態にしておき、使用に際し、押下ヘッド5を上支持部10に対して押込み方向Xに回転させ、付勢部材25を上下方向に圧縮し、ステム21に、ポンプ2を円滑に作動させることが可能になる程度の上方付勢力を加えることができる。このため、付勢部材25に上下方向の十分な圧縮力を加えずに、流通および保管等を行うことによって、この期間に付勢部材25に圧縮変形の癖が付くこと(塑性変形)がなく、吐出器1の使用に際して、付勢部材25が弾性変形しにくくなっているのを防ぐことができる。なお、付勢部材25が合成樹脂材料で形成されているので、付勢部材25に上下方向の十分な圧縮力を長時間加えると、付勢部材25に圧縮変形の癖が付くおそれがある。
【0048】
付勢部材25が、押下ヘッド5の装着筒部53の径方向の外側に設けられており、流通時等の未使用状態で、内容液が付勢部材25に非接触となっているので、付勢部材25が合成樹脂材料で形成されていても、付勢部材25に、例えば内容液が染み込んで膨潤等が生ずるのを防ぐことができる。
なお、内容液を吐出するときに限って、押下ヘッド5を、上支持部10に対して押込み方向Xに回転させて、付勢部材25を上下方向に圧縮させ、内容液の吐出後には、押下ヘッド5を、上支持部10に対して周方向に沿う押込み方向Xの反対側に回転させ、付勢部材25の上下方向の圧縮を緩めれば、付勢部材25に加えられる負荷が抑えられ、内容液の吐出後の上方に向けた付勢部材25の復元力を、長期にわたって維持することができる。
【0049】
使用前の例えば流通時等に、付勢部材25を自然長の状態にしておくことで、使用前に、付勢部材25に圧縮変形の癖が付くのを確実に防止することができる。
使用前の例えば流通時等に、付勢部材25をわずかな量だけ上下方向に圧縮させた状態にしておく場合として、吐出器1の製造誤差等に起因して、付勢部材25を自然長の状態にしておくことができない場合が考えられる。
なお、付勢部材25における上端部および下端部のうちのいずれか一方と、これを支持する部分と、の間に上下方向の隙間を設けてもよい。
【0050】
押下ヘッド5、および上支持部10に設けられた各傾斜案内面14、15が、互いに当接しているので、押下ヘッド5を、上支持部10に対して押込み方向Xに回転させたときに、押下ヘッド5、および上支持部10に設けられた各傾斜案内面14、15が互いに摺接することとなり、上支持部10を、引っ掛かり少なく円滑に下方に移動させることができる。
押下ヘッド5、および上支持部10に設けられた各傾斜案内面14、15が、互いに当接していることから、不意に加えられた外力によって、押下ヘッド5が、上支持部10に対して周方向に沿う押込み方向Xに回転しようとしたときに、前述の各傾斜案内面14、15が周方向に互いに突き当てられることとなり、この回転を抑制することができる。
【0051】
付勢部材25が、径方向の外側から見て、周方向に屈曲した屈曲部26aを1つ有するC字状を呈する弾性棒26を備えているので、弾性棒26が上下方向に圧縮変形したときに弾性棒26に加えられる負荷を抑えることが可能になり、弾性棒26に上下方向の圧縮変形の癖が付くのを抑制することができる。
【0052】
弾性棒26が、装着筒部53を径方向に挟む両側に設けられているので、押下ヘッド5の押下時に、上支持部10が上下方向に対して傾くのを抑制することが可能になり、ポンプ2を安定して作動させることができる。
【0053】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
【0054】
例えば、規制突起56の下端開口縁に凹部を形成して、この凹部を第1摺動部16とし、本体筒11の上端開口縁に形成された前記環状溝の底面11cに凸部を形成して、この凸部を第1摺動部16に挿入される第2摺動部17としてもよい。
押下ヘッド5、および上支持部10のうちのいずれか一方のみに、摺動部16、17を設け、いずれか他方のみに傾斜案内面14、15を形成してもよい。摺動部16、17に、傾斜案内面14、15を設けなくてもよい。
【0055】
上支持部10は、装着筒部53の外周面と、案内筒71の内周面と、の間に設けられてもよい。
付勢部材25として、中心軸線Oを中心に螺旋状に上下方向に延び、装着筒部53を径方向の外側から囲う構成を採用してもよい。
【0056】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記実施形態および変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 吐出器
2 ポンプ
5 押下ヘッド
7 装着キャップ
10 上支持部
14、15 傾斜案内面
16、17 摺動部
21 ステム
25 付勢部材
26 弾性棒
26a 屈曲部
53 装着筒部
54a ノズル孔
A 容器体
A1 口部
X 押込み方向