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  • 特許-ヒータ線及び面状ヒータ 図1
  • 特許-ヒータ線及び面状ヒータ 図2
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  • 特許-ヒータ線及び面状ヒータ 図4
  • 特許-ヒータ線及び面状ヒータ 図5
  • 特許-ヒータ線及び面状ヒータ 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】ヒータ線及び面状ヒータ
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/20 20060101AFI20231106BHJP
   A47C 7/74 20060101ALI20231106BHJP
   B60N 2/56 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
H05B3/20 337
A47C7/74 B
B60N2/56
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020038333
(22)【出願日】2020-03-06
(65)【公開番号】P2021140959
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000129529
【氏名又は名称】株式会社クラベ
(72)【発明者】
【氏名】森下 典栄
(72)【発明者】
【氏名】竜口 直也
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 厚志
(72)【発明者】
【氏名】犬塚 翔也
(72)【発明者】
【氏名】大場 基行
【審査官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-313543(JP,A)
【文献】特開2008-159403(JP,A)
【文献】特開平2-132788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/00~3/86
H01B 5/00~5/16
A47C 7/74
B60N 2/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SUS線(ステンレス鋼線)からなる抵抗線を有するヒータ線であって、上記抵抗線が、中心部に硬質SUS線を有し、外周部に軟質SUS線を有するヒータ線。
【請求項2】
上記SUS線(ステンレス鋼線)からなる抵抗線が、複数の硬質SUS線からなる子撚線を中心とし、その外周に複数の軟質SUS線からなる子撚線を配置し、これらを複合撚りした構成である請求項1記載のヒータ線。
【請求項3】
基材と該基材上に配設されたヒータ線とからなり、
上記ヒータ線が、請求項1又は請求項2記載のヒータ線からなる第1ヒータ部と、銅線又は銅合金線からなる抵抗線を有するヒータ線からなる第2ヒータ部とからなる面状ヒータ。
【請求項4】
シートセンター部と、該シートセンター部の左右両側に盛り上げられて形成されたサイドサポート部とを有する車両シートに配置される面状ヒータであって、
上記面状ヒータにおける上記シートセンター部に配置される部分においては、上記第2ヒータ部が配設されており、上記面状ヒータにおける上記サイドサポート部に配置される部分においては、上記第1ヒータ部が配設されている請求項3記載の面状ヒータ。
【請求項5】
上記第1ヒータ部と、上記第2ヒータ部とが並列に接続されている請求項4記載の面状ヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両用シートなどに好適に使用可能なヒータ線とこれを使用した面状ヒータに係り、特に、ヒータ線の断線を防止でき、採暖の効率が良いものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用シート等に装着される面状ヒータはシートヒータと称されているが、例えば、特許文献1に挙げられるような、基材上に熱融着層を備えたヒータ線を蛇行配線し、加熱加圧による熱融着により基材と熱融着層を接着固定した構成のもの等が知られている。近年、シートの採暖に関し、更に高度な快適性の要求に対応して、例えば、特許文献2~4に挙げられるような、シートセンター部の左右両側に盛り上げられて形成されたサイドサポート部(ボルスター部)にヒータ線を配設して、サイドサポート部の暖房も行うシートが見られるようになってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4202071号公報:クラベ
【文献】特許第3928419号公報:松下電器産業
【文献】特許第5752450号公報:クラベ
【文献】特許第5752465号公報:クラベ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記特許文献2に記載されたようなシートのサイドサポート部にヒータ線を配線したシートに関し、以下のような問題が明らかになってきた。即ち、サイドサポート部は、シートセンター部よりも盛り上げられて形成されているため、自動車に乗員が乗り込む際、サイドサポート部を尻で押し潰しながらシートセンター部に滑り込むというケースが多々ある。また、自動車から降りる際も同様に、サイドサポート部を押し潰した状態で尻を中心に体を90°回転させて足を踏み出すケースが多々ある。このようなとき、ヒータ線には大きな荷重が加わることになるため、繰り返しの乗車・降車によって、ヒータ線が断線してしまう可能性があった。このような課題に対し、特許文献3,4に記載されたようなシートヒータが発明され、ある程度の効果は得られたが、より安全性を高めるため断線に対する更なる耐久性の向上が要求されている。
【0005】
本発明はこのような従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、特に、ヒータ線の断線を防止でき、採暖の効率が良い面状ヒータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するべく、本発明によるヒータ線は、SUS線(ステンレス鋼線)からなる抵抗線を有するヒータ線であって、上記抵抗線が、中心部に硬質SUS線を有し、外周部に軟質SUS線を有することを特徴とするものである。
また、上記SUS線(ステンレス鋼線)からなる抵抗線が、複数の硬質SUS線からなる子撚線を中心とし、その外周に複数の軟質SUS線からなる子撚線を配置し、これらを複合撚りした構成であることが考えられる。
また、本発明による面状ヒータは、基材と該基材上に配設されたヒータ線とからなり、上記ヒータ線が、上記のヒータ線からなる第1ヒータ部と、銅線又は銅合金線からなる抵抗線を有するヒータ線からなる第2ヒータ部とからなる面状ヒータ。
また、シートセンター部と、該シートセンター部の左右両側に盛り上げられて形成されたサイドサポート部とを有する車両シートに配置される面状ヒータであって、上記面状ヒータにおける上記シートセンター部に配置される部分においては、上記第2ヒータ部が配設されており、上記面状ヒータにおける上記サイドサポート部に配置される部分においては、上記第1ヒータ部が配設されていることが考えられる。
また、上記第1ヒータ部と、上記第2ヒータ部とが並列に接続されていることが考えられる。
【発明の効果】
【0007】
本発明のヒータ線によれば、硬質SUS線と軟質SUS線を組合せた構成により優れた屈曲性を得ることができる。
本発明の面状ヒータによれば、荷重を強く受けるサイドサポート部に、屈曲性に優れた構成を有するヒータ線が配設されているので、繰返しの荷重を受けてもヒータ線の断線を防ぐことができる。また、シートのシートセンター部だけで無くサイドサポート部にもヒータ線を配設することができ、着座者の臀部から大腿部にかけて包み込むように加熱することができるため採暖の効率が良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明による実施の形態を示す図で、面状ヒータが配置された車両用シートを一部切り欠いて示す斜視図である。
図2】本発明による実施の形態を示す図で、面状ヒータが配置された車両用シートの座面を一部切り欠いて示す断面図である。
図3】本発明による実施の形態を示す図で、面状ヒータの構成を示す平面図である。
図4】本発明による他の実施の形態を示す図で、面状ヒータの構成を示す平面図である。
図5】本発明による実施の形態を示す図で、ヒータ線の構成を示す一部切り欠き側面図である。
図6】本発明による実施の形態を示す図で、ヒータ線の構成を示す一部切り欠き側面図である。
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。これらの実施の形態は、本発明を車両用シートに適用することを想定した例を示すものである。
【0010】
図3に示すように、本実施の形態で使用する面状ヒータは構成される。不織布からなる基材5の上に、ヒータ線3a,3b,3cが所定のパターン形状で配設される。基材5は、不織布の他に、例えば、織布、発泡樹脂シート、発泡ゴムシートなど種々のものが使用できるし、状況によってはシートの表皮カバーやパットを基材とみなして、そこに直接ヒータ線3を配設することも考えられる。ヒータ線3にも限定はなく、例えば、中心の芯材に抵抗線を横巻したもの、個別絶縁した高強度抵抗線を横巻又は引き揃えたもの、温度検知線と組み合わせたものなど、種々のものが使用できる。ここで、基材5は、5a,5b,5cの3つの区画からなり、基材5aの区画にはヒータ線3aが配設され、基材5bの区画にはヒータ線3bが配設され、基材5cの区画にはヒータ線3cが配設されている。ヒータ線3a,3b,3cを基材5上に固定する際には、ヒータ線3a,3b,3cや基材5に形成した熱融着材によって熱融着しても良いし、縫製しても良いし、他の方法によっても良い。本実施の形態では、ヒータ線3a,3b,3cに形成した熱融着材によって、ヒータ線3a,3b,3cと基材5を熱融着した。
【0011】
本実施の形態においては、ヒータ線3a及びヒータ線3cについては、図5に示すような構成のものを使用した。まず、素線径0.03mmの硬質SUS線(SUS304WPA)の22本からなる子撚線を中心とし、その外周に素線径0.03mmの軟質SUS線(SUS304W1)の22本からなる子撚線を6本配置し、これらを複合撚して構成された外径0.5mmの抵抗線35がある。この抵抗線35の外周に、絶縁被覆37としてフッ素樹脂が0.175mmの厚さで押出被覆される。この絶縁被覆37の外周に、熱融着材39として低密度ポリエチレン樹脂(融解温度106℃)が0.175mmの厚さで押出被覆される。ヒータ線3a及びヒータ線3cはこのような構成になっていて、その仕上外径は1.20mmである。このヒータ線3a及びヒータ線3cが、第1ヒータ部となっている。また、ヒータ線3bについては、図6に示すような構成のものを使用した。まず、外径約0.2mmの芳香族ポリアミド繊維束からなる芯線33があり、該芯線33の外周には、素線径0.08mmの硬質錫入り銅合金線からなる5本の導体素線35aを引き揃えて構成されたものがピッチ約1.0mmで螺旋状に巻装されている。導体素線35aには、アルキドシリコーンワニス(アルキド:シリコーン=50:50)を塗布し乾燥して形成したシリコーンを含有する絶縁被膜35bが、厚さ約5μmで形成されている。この芯線33上に導体素線35aを巻装したものの外周に、絶縁被覆37としてポリエステル樹脂(融点225℃、ビカット軟化温度175℃)が0.065mmの厚さで押出被覆される。この内層被覆37の外周に、熱融着材39としてポリエステル樹脂(融点163℃)が0.065mmの厚さで押出被覆される。ヒータ線3bはこのような構成になっていて、その仕上外径は0.63mmである。このヒータ線3bが第2ヒータ部となる。
【0012】
そして、上記構成をなす面状ヒータ1は、図1及び図2に示すような状態で、車両用シート11内に配置されることになる。車両用シート11は、座面21と背面23とからなり、それぞれシートセンター部13とその左右両側に盛り上げられて形成されたサイドサポート部15からなり、それぞれパット17の表面が表皮カバー19で覆われたものとなっている。このパット17表面又は表皮カバー19裏面に面状ヒータ1が貼り付けられる。本実施の形態においては、座面21及び背面23の両方に面状ヒータ1が配置されるが、何れか一方のみに配置される形態も考えられる。また、基材5b及びヒータ線3bはシートセンター部13に位置することになり、基材5a及びヒータ線3aは一方のサイドサポート部15に位置することになり、基材5c及びヒータ線3cはもう一方のサイドサポート部15に位置することになる。即ち、第1ヒータ部であるヒータ線3a及び3は、サイドサポート部15に位置し、第2ヒータ部であるヒータ線3bはシートセンター部13に位置することになる。
【0013】
本実施の形態においては、ヒータ線3a,3b,3cについて、それぞれ並列に接続している。一般的に、SUS線の方が銅線及び銅合金線より抵抗値が高く、サイドサポート部の方がシートセンター部よりヒータ線長さが長くなる。そのため、ヒータ線3a,3b,3cを直列に接続すると、サイドサポート部の発熱がかなり強くなるが、ヒータ線3a,3b,3cを並列に接続すると、サイドサポート部とシートセンター部の発熱の強さに釣り合いが取れることになる。勿論、ヒータ線3a,3b,3cの配設のパターンを調整してヒータ線長さを調整することや、抵抗線の断面積を調整することによって、ヒータ線3a,3b,3cの発熱の強さを設定することもできる。
【0014】
尚、上記実施の形態においては、サイドサポート部におけるヒータ線3a,3cの配設について、図3に示すとおり、蛇行形状に配設されているが、例えば、図4に示すように、直線状に配設することも考えられる。また、サイドサポート部におけるヒータ線3a,3cの折り返し部についても、例えば、図3に示すように略半円形状の曲線にしても良いし、図4に示すようにV字状の鋭角にしても良いし、他の形状にしても良い。種々のパターン形状が考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0015】
以上詳述したように本発明によれば、ヒータ線の断線を防止でき、採暖の効率が良い面状ヒータを得ることができる。この面状ヒータが設置されたシートは、例えば、自動車,自動二輪車,鉄道車両等の車両用シート、船舶や航空機などのシート、遊園地の観覧車のシート、各種競技場の観覧用シート、劇場や映画館等の鑑賞用シート、家庭内やオフィスで使用されるソファー、理髪店のシート、各種医療機関で使用されている医療用シートなど、種々の用途で好適に使用可能である。また、シートの用途以外にも、電気毛布、電気カーペット、ステアリングヒータ、暖房便座、防曇鏡用ヒータ、加熱調理器具等として好適に使用可能である。又、ヒータ線単体としても、例えば、パイプや槽等に巻き付けて接着したり、パイプ内に配置したりするような態様が考えられる。具体的な用途としては、例えば、配管や冷凍庫のパイプドレーンなどの凍結防止用ヒータ、エアコンや除湿機などの保温用ヒータ、冷蔵庫や冷凍庫などの除霜用ヒータ、乾燥用ヒータ、床暖房用ヒータとして好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0016】
1 面状ヒータ
3a ヒータ線(第1ヒータ部)
3b ヒータ線(第2ヒータ部)
3c ヒータ線(第1ヒータ部)
5(5a,5b,5c) 基材
11 シート
13 シートセンター部
15 サイドサポート部
図1
図2
図3
図4
図5
図6