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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】ガスマニホールド
(51)【国際特許分類】
   F23D 14/08 20060101AFI20231106BHJP
   F23K 5/00 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
F23D14/08 H
F23K5/00 301B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020045972
(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公開番号】P2021148325
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【弁理士】
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】志知 和幸
(72)【発明者】
【氏名】片岡 邦夫
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-002594(JP,A)
【文献】特開2008-051396(JP,A)
【文献】特開2016-011754(JP,A)
【文献】特開2004-271061(JP,A)
【文献】特開2013-029254(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第01022018(GB,A)
【文献】特開2019-020037(JP,A)
【文献】特開昭61-161323(JP,A)
【文献】特開2000-213714(JP,A)
【文献】特開平08-086416(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0111354(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/08
F23K 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスを燃焼させる複数のバーナが複数のバーナ群にまとめられ、前記バーナ群単位で前記燃料ガスを燃焼させることで、前記燃料ガスを燃焼させる前記バーナの数を段階的に切り換えることが可能な燃焼装置に搭載されて、前記複数のバーナに前記燃料ガスを分配するガスマニホールドであって、
外部から供給された前記燃料ガスが通過するメイン通路と、
前記複数のバーナ群の各々に対して設けられて、前記バーナ群内の前記バーナに供給される前記燃料ガスが前記メイン通路から流入する複数の分配室と、
前記複数のバーナの各々に対して設けられて、前記分配室に流入した前記燃料ガスを前記バーナに供給する複数のノズルと、
前記メイン通路から分岐することによって、前記メイン通路と前記複数の分配室とを接続する複数の分配通路と、
前記複数の分配通路に設けられて、前記分配通路を開閉する複数の開閉弁と
を備えるガスマニホールドにおいて、
前記複数の分配室の中の1つは、対応する前記バーナ群に含まれる前記バーナの数が他の前記分配室よりも多い最大分配室となっており、
前記メイン通路には、前記最大分配室に接続された前記分配通路である最大分配通路に向かって前記燃料ガスを導流する導流部が設けられており、
前記導流部は、前記最大分配通路以外の前記分配通路への前記燃料ガスの流れを制限するように、前記メイン通路を狭窄して設けられており、
前記導流部によって狭窄された部分での前記メイン通路の通路面積は、前記最大分配通路以外の前記分配通路が前記メイン通路から分岐する部分での開口面積の合計よりも大きな面積に設定されている
ことを特徴とするガスマニホールド。
【請求項2】
請求項1に記載のガスマニホールドにおいて、
前記最大分配通路が前記メイン通路から分岐する位置は、他の複数の前記分配通路が前記メイン通路から分岐する位置に対して最端部の位置となっており、
前記メイン通路に前記燃料ガスが流入する流入口は、前記最大分配通路が前記メイン通路から分岐する位置と、他の前記分配通路が前記メイン通路から分岐する位置との間の位置となっている
ことを特徴とするガスマニホールド。
【請求項3】
求項2に記載のガスマニホールドにおいて、
前記複数の分配室の中の1つは、対応する前記バーナ群に含まれる前記バーナの数が他の前記分配室よりも少ない最小分配室となっており、
前記最小分配室に接続された前記分配通路である最小分配通路は、前記導流部よりも下流側で前記メイン通路から分岐する複数の前記分配通路の中で、最も上流側の位置で前記メイン通路から分岐する
ことを特徴とするガスマニホールド。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載のガスマニホールドにおいて、
前記メイン通路は、マニホールド本体に形成された通路溝部を、マニホールドカバーで覆うことによって形成されており、
複数の前記分配室は、前記マニホールド本体の前記通路溝部に隣接して形成された複数の凹部を、前記マニホールドカバーで覆うことによって形成されており、
前記メイン通路に前記燃料ガスが流入する流入口は、前記マニホールド本体から、前記マニホールドカバーに向かって開口しており、
複数の前記分配通路は前記通路溝部に開口すると共に、前記分配通路が開口する位置は、前記マニホールドカバーよりも前記通路溝部の底部側の位置となっている
ことを特徴とするガスマニホールド。
【請求項5】
求項4に記載のガスマニホールドにおいて、
前記マニホールドカバーと前記マニホールド本体との間には、圧縮性材料で形成されたシール部材が圧縮された状態で挟持されており、
前記導流部は、前記通路溝部の底部から開口部に向かって壁状に突設されており、
前記導流部が突設された高さは、前記通路溝部の深さよりも低いが、前記マニホールドカバーと前記マニホールド本体との間に挟持された前記シール部材に接触する高さに設定されている
ことを特徴とするガスマニホールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスを燃焼させる複数のバーナを搭載して、バーナの数を段階的に切り換えて燃料ガスを燃焼させることが可能な燃焼装置に搭載されて、複数のバーナに燃料ガスを分配するガスマニホールドに関する。
【背景技術】
【0002】
給湯システムや暖房システムなどには、燃料ガスを燃焼させる燃焼装置が搭載されている。この燃焼装置には複数のバーナが搭載されており、それらのバーナに対しては、バーナ毎に設けられたノズルから個別に燃料ガスが供給されている。また、燃料ガスを燃焼させるバーナの数を段階的に切り換えることが可能となっており、必要な火力に応じて、燃料ガスを燃焼させるバーナの数を増減させるようになっている。
【0003】
ここで、バーナには個別に設けられたノズルから燃料ガスが供給されるので、燃料ガスを燃焼させるバーナの数を段階的に切り換えるためには、燃料ガスを供給するノズルの数を段階的に切り換える必要がある。このため、複数のバーナを搭載した燃焼装置では、各バーナに燃料ガスを分配するガスマニホールドに、次のような構造が採用されている。先ず、ガスマニホールドの内部には、外部から供給された燃料ガスが通過するメイン通路が形成されており、メイン通路からは複数の分配通路が分岐すると共に、それぞれの分配通路には電磁開閉弁を介して分配室が接続されている。また、複数のバーナに燃料ガスを供給するノズルは、複数の分配室の何れかから燃料ガスの供給を受けるようになっている。
【0004】
このような構造のガスマニホールドでは、メイン通路に燃料ガスを供給すると、分配通路の電磁開閉弁が開状態となっている分配室には燃料ガスが流入して、ノズルからバーナに向かって燃料ガスが供給される。これに対して、分配通路の電磁開閉弁が閉状態の分配室には燃料ガスが流入しないので、その分配室から燃料ガスの供給を受けるノズルには燃料ガスが供給されることが無く、従って、バーナに燃料ガスが供給されることもない。このため、分配通路に設けられた電磁開閉弁の開閉状態を切り換えることによって、燃料ガスを燃焼させるバーナの数を段階的に切り換えることが可能となる。
【0005】
また、各分配室が(ノズルを介して)燃料ガスを供給するバーナの数は、分配室毎に異なる数に設定されている。この理由は、バーナに燃料ガスを供給する分配室を切り換えることによって、あるいは、バーナに燃料ガスを供給する分配室の組み合わせを変更することによって、燃料ガスを燃焼させるバーナの数を複数段階に変更することが可能となり、その結果、火力を複数段階に変更することが可能となるためである。一例として、バーナの総数が9個で、分配室の数が3つの場合について説明する。9つのバーナを3つの分配室に均等に割り振った場合には、各分配室には何れも3つのバーナが割り振られることになる。このため、燃料ガスを燃焼させるバーナの数は、燃料ガスを供給する分配室の数に応じて、3つ、6つ、9つの3段階にしか切り換えることができない。これに対して、9つのバーナを、2つ、3つ、4つのバーナに分けて、それぞれを分配室に割り振った場合には、分配室の選び方、あるいは分配室の組み合わせを変更することによって、燃料ガスを燃焼させるバーナの数を7段階に切り換えることが可能となる。
【0006】
このように、各分配室から燃料ガスを供給するバーナの数を異ならせると、分配室に供給するべき燃料ガスの流量も、分配室毎に異なった流量となる。上述した例では、燃料ガスを供給するバーナが4つの分配室には、バーナが2つの分配室に比べて、2倍の流量の燃料ガスを供給する必要が生じる。そこで、各分配室に供給すべき燃料ガスの流量に応じて、分配通路に設けられた電磁開閉弁の大きさを異ならせたり、分配通路内に異なる大きさのオリフィスを設けたりすることによって、各分配室に適切な流量の燃料ガスが供給されるようにした技術が提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平8-086416号公報
【文献】特開2019-002594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、近年の燃焼装置では、よりきめ細かい火力調整を可能とするために、バーナの数を切換可能な段数が増加する傾向にあり、これに伴って、各分配室に適切な流量の燃料ガスを供給することが困難になっているという問題があった。この理由は、次のようなものである。先ず、バーナの数の切換可能な段数が増加すると、ガスマニホールド内に形成される分配室の数も増加する。また、前述したように分配室から燃料ガスを供給するバーナの数は、分配室毎に異なる数に設定されるから、分配室の数が増加すると、バーナの数が最小の分配室と最大の分配室との差が大きくなり、供給すべき燃料ガスの流量の差も大きくなる。そして、この流量の差があまりに大きくなると、それぞれの分配室に適切な流量の燃料ガスを供給することが困難となるためである。
【0009】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題を解決するためになされたものであり、内部に形成された分配室の数が多くなっても、それぞれの分配室に適切な流量の燃料ガスが供給することが可能なガスマニホールドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明のガスマニホールドは次の構成を採用した。すなわち、
燃料ガスを燃焼させる複数のバーナが複数のバーナ群にまとめられ、前記バーナ群単位で前記燃料ガスを燃焼させることで、前記燃料ガスを燃焼させる前記バーナの数を段階的に切り換えることが可能な燃焼装置に搭載されて、前記複数のバーナに前記燃料ガスを分配するガスマニホールドであって、
外部から供給された前記燃料ガスが通過するメイン通路と、
前記複数のバーナ群の各々に対して設けられて、前記バーナ群内の前記バーナに供給される前記燃料ガスが前記メイン通路から流入する複数の分配室と、
前記複数のバーナの各々に対して設けられて、前記分配室に流入した前記燃料ガスを前記バーナに供給する複数のノズルと、
前記メイン通路から分岐することによって、前記メイン通路と前記複数の分配室とを接続する複数の分配通路と、
前記複数の分配通路に設けられて、前記分配通路を開閉する複数の開閉弁と
を備えるガスマニホールドにおいて、
前記複数の分配室の中の1つは、対応する前記バーナ群に含まれる前記バーナの数が他の前記分配室よりも多い最大分配室となっており、
前記メイン通路には、前記最大分配室に接続された前記分配通路である最大分配通路に向かって前記燃料ガスを導流する導流部が設けられており、
前記導流部は、前記最大分配通路以外の前記分配通路への前記燃料ガスの流れを制限するように、前記メイン通路を狭窄して設けられており、
前記導流部によって狭窄された部分での前記メイン通路の通路面積は、前記最大分配通路以外の前記分配通路が前記メイン通路から分岐する部分での開口面積の合計よりも大きな面積に設定されている
ことを特徴とする。
【0011】
かかる本発明のガスマニホールドにおいては、メイン通路に供給された燃料ガスは、メイン通路から分岐した分配通路を介して複数の分配室に流入した後、それぞれの分配室からノズルを介してバーナに供給される。そして、メイン通路には、最大分配室(最も多くのバーナに燃料ガスが供給される分配室)の分配通路である最大分配通路に向かって燃料ガスを導流するとともに、他の分配室の分配通路への燃料ガスの流れを制限するように、メイン通路を狭窄する導流部が設けられている。更に、導流部によって狭窄された部分でのメイン通路の通路面積は、最大分配通路以外の分配通路がメイン通路に開口する部分での開口面積の合計よりも大きな面積に設定されている。
【0012】
こうすれば、最大分配室には、他の分配室よりも燃料ガスが供給され易くなるので、ガスマニホールドの内部に形成された分配室の数が多くなった場合でも、最大分配室に対して十分な流量の燃料ガスを供給することができる。加えて、メイン通路に導流部を設けたことでメイン通路が狭窄されているにも拘わらず、最大分配室以外の分配室に供給される燃料ガスが不足する事態を回避することができる。その結果、複数の分配室に対して、適切な流量の燃料ガスを供給することが可能となる。
【0015】
また、上述した本発明のガスマニホールドにおいては、最大分配通路がメイン通路から分岐する位置は、他の複数の分配通路がメイン通路から分岐する位置に対して最端部の位置としても良い。そして、メイン通路に燃料ガスが流入する流入口は、最大分配通路がメイン通路から分岐する位置と、他の分配通路がメイン通路から分岐する位置との間の位置に設けることとしても良い。
【0016】
こうすれば、流入口からメイン通路内に流入した燃料ガスを導流部によって最大分配通路に導くと、他の分配通路に対しては燃料ガスを逆方向に導くことになる。このため、導流部でメイン通路を狭窄する程度が少なくても、最大分配通路に十分な流量の燃料ガスを供給することができ、それと同時に、導流部で狭窄された部分を通過する燃料ガスの通過抵抗も減らすことができるので、最大分配通路以外の分配通路にも、十分な流量の燃料ガスを供給することが可能となる。
【0017】
また、上述したように、最大分配通路がメイン通路から分岐する位置と、最大分配通路以外の分配通路がメイン通路から分岐する位置との間に導流部が設けられた本発明のガスマニホールドにおいては、最小分配室(燃料ガスを供給するバーナの数が他の分配室よりも少ない分配室)に接続された分配通路(最小分配通路)がメイン通路から分岐する位置を、次のような位置としても良い。すなわち、導流部よりも下流側でメイン通路から分岐する複数の分配通路の中で、最小分配通路が最も上流側の位置で、メイン通路から分岐するようにしても良い。
【0018】
導流部よりも下流側のメイン通路には燃料ガスの流れに伴う圧力勾配が生じるので、上流側になる程、燃料ガスの圧力は高くなる。また、最小分配通路は、複数の分配通路の中で最も通路抵抗が大きくなる。従って、導流部よりも下流側でメイン通路から分岐する複数の分配通路の中で、最小分配通路が最も上流側の位置でメイン通路から分岐するようにしておけば、最小分配通路にも十分な流量の燃料ガスを供給することが可能となる。
【0019】
また、上述した本発明のガスマニホールドにおいては、メイン通路や、複数の分配室や、燃料ガスの流入口を、次のようにして形成しても良い。すなわち、マニホールド本体に通路溝部を形成すると共に、通路溝部に隣接する位置には複数の凹部を形成しておく。そして、マニホールド本体にマニホールドカバーを取り付けることによって、マニホールドカバーで覆われた通路溝部の部分にメイン通路を形成し、マニホールドカバーで覆われた複数の凹部の部分に複数の分配室を形成する。更に、流入口は、マニホールド本体からマニホールドカバーに向かって開口するように形成する。そして、メイン通路と分配室とを接続する複数の分配通路を通路溝部に開口させ、この時、分配通路を通路溝部に開口させる位置は、マニホールドカバーよりも通路溝部の底部側の位置としておく。
【0020】
こうすれば、流入口から流入した燃料ガスはマニホールドカバーに衝突して向きを変えた後、マニホールドカバーに沿って(従って、通路溝部の底部から離れた位置を)流れることになる。従って、分配通路が通路溝部に開口する位置を、マニホールドカバーよりも通路溝部の底部側の位置としておけば、メイン通路内を流れる燃料ガスが、何れかの分配通路に直接流れ込むことが無い。その結果、何れかの分配通路に偏って燃料ガスが供給されてしまう事態が発生することを防止することができるので、複数の分配室に対して適切な流量の燃料ガスを供給することが可能となる。
【0021】
また、上述した本発明のガスマニホールドにおいては、マニホールドカバーをマニホールド本体に取り付ける際に、マニホールドカバーとマニホールド本体とのの間に、圧縮性材料で形成されたシール部材を挟持してもよい。更に、通路溝部の底部から壁状の導流部を突設すると共に、導流部の高さを、通路溝部の深さよりも低いが、マニホールドカバーとマニホールド本体との間に挟持されたシール部材に接触する高さとしても良い。
【0022】
こうすれば、マニホールド本体にシール部材を介してマニホールドカバーを取り付けた時に、導流部がシール部材やマニホールドカバーに対して及ぼす反力を十分に小さくすることができる。このため、導流部を設けたことによって、シール部材に加わる面圧が低下して、メイン通路内の燃料ガスが漏れてしまう事態を生じる虞が無い。その一方で、導流部がシール部材に接触しているので、導流部とシール部材との間を燃料ガスが通過する事態を抑制することができるので、流入口から流入した燃料ガスを確実に最大分配通路に導流することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】燃焼装置10を備える給湯器1を例示した説明図である。
図2】本実施例のガスマニホールド100およびバーナ12の構造を示した説明図
図3】本実施例のガスマニホールド100の分解組立図である。
図4】通路溝部111の側壁に形成された開口部113cの詳細な形状を示した斜視図である。
図5】本実施例のガスマニホールド100内での燃料ガスの流れを示した説明図である。
図6】本実施例のガスマニホールド100の各分配室102a~102dから燃料ガスを供給するバーナ12の数を比較した説明図である。
図7】本実施例のガスマニホールド100で各分配室102a~102dに適切な流量で燃料ガスを分配可能とする基本的な考え方を示した説明図である。
図8】本実施例のガスマニホールド100のマニホールド本体110に形成された通路溝部111や、凹部112a~112dの具体的な形状を示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、燃焼装置10を備える給湯器1を例示した説明図である。給湯器1は、大まかにいうと、燃料ガスを燃焼させる燃焼装置10と、燃焼装置10で生成された高温の燃焼ガスを利用して湯を生成する熱交換器20とを組み合わせた構造となっている。熱交換器20には、上水が供給される給水通路21と、熱交換器20で生成した湯を給湯するための給湯通路22とが接続されている。給水通路21の途中には、熱交換器20に流入する上水の流量を検出する流量センサ23が搭載されている。更に、給湯通路22の端部には、給湯カラン24などが接続されている。
【0025】
燃焼装置10は、内部の空間に燃焼室が形成されている燃焼缶11と、燃焼缶11の内部に搭載された複数のバーナ12と、複数のバーナ12に燃料ガスを供給するガスマニホールド100と、燃料ガスを燃焼させるための燃焼用空気を燃焼缶11内に供給する燃焼ファン13と、バーナ12に点火する点火プラグ14と、バーナ12の炎を検知するフレームロッド15とを備えている。また、ガスマニホールド100には燃料ガスを供給するガス通路16が接続されており、ガス通路16の途中には、ガス通路16を開閉する元弁17と、元弁17よりも下流側でガスマニホールド100に供給される燃料ガスの流量を調節する比例弁18とが設けられている。
【0026】
また、図1に示されるように、本実施例の燃焼装置10には19個のバーナ12が搭載されているが、これらのバーナ12は、バーナ12の数が異なる4つのバーナ群12a~12dにまとめられている。図示した例では、バーナ群12aには隣接する8つのバーナ12がまとめられており、バーナ群12bには隣接する2つのバーナ12がまとめられており、バーナ群12cには隣接する3つのバーナ12が、バーナ群12dには隣接する6つのバーナ12がまとめられている。
【0027】
ガスマニホールド100には、バーナ12に燃料ガスを供給する複数のノズル101が形成されており、個々のノズル101は予め1つのバーナ12に対応付けられると共に、そのバーナ12に燃料ガスを供給するようになっている。また、ガスマニホールド100の内部には、ガス通路16から供給された燃料ガスを複数のノズル101に燃料ガスを分配する4つの分配室102a~102dが形成されている。ここで、分配室102a~102dの数が4つとなっているのは、上述したバーナ群12a~12dの数が4つであることに対応している。分配室102aの上流には電磁開閉弁19aが搭載されており、分配室102bの上流には電磁開閉弁19bが、分配室102cの上流には電磁開閉弁19cが、分配室102dの上流には電磁開閉弁19dが搭載されている。このため、電磁開閉弁19a~19dを開閉することにより、分配室102a~102dに対して個別に燃料ガスを供給することが可能となっている。尚、本実施例の電磁開閉弁19a~19dが、本発明における「開閉弁」に対応する。
【0028】
また、上述したように、個々のノズル101は予め対応付けられた固有のバーナ12に燃料ガスを供給するが、バーナ群12aに属するバーナ12に燃料ガスを供給するノズル101は、分配室102aから燃料ガスの供給を受けるようになっている。同様に、バーナ群12bに属するバーナ12に燃料ガスを供給するノズル101は、分配室102bから燃料ガスの供給を受けるようになっており、バーナ群12cに属するバーナ12に燃料ガスを供給するノズル101は、分配室102cから燃料ガスの供給を受け、バーナ群12dに属するバーナ12に燃料ガスを供給するノズル101は、分配室102dから燃料ガスの供給を受けるようになっている。このため、電磁開閉弁19a~19dの開閉状態を切り換えることで、バーナ群12a~12dの単位で、複数のバーナ12への燃料ガスの供給を開始したり、供給を停止したりすることができる。その結果、バーナ12での燃料ガスの燃焼も、バーナ群12a~12dの単位で燃焼を開始したり、燃焼を終了したりすることが可能となる。
【0029】
以上のような給湯器1では、給湯器1の使用者が給湯通路22に設けられた給湯カラン24などを開くと、給水通路21から熱交換器20に上水が供給される。そして、流量センサ23によって、上水の流れが所定の流量以上になったことが検知されると、バーナ12での燃焼が開始される。この時、必要な火力に応じて、比例弁18の開度が制御されると共に、電磁開閉弁19a~19dの開閉状態が切り換えられる。その結果、燃料ガスを燃焼させるバーナ12の数を、多段階に切り換えることが可能となる。また、燃焼によって生じた高温の燃焼ガスは、燃焼装置10の上方に設けられた熱交換器20を通過し、この時、熱交換器20内を通過する上水と熱交換することによって湯が生成されて、給湯通路22を経由して給湯カラン24から流出する。また、熱交換して低温となった燃焼ガスは、熱交換器20の上方に設けられた排気口2から、給湯器1の外部に排出される。
【0030】
図2は、本実施例のガスマニホールド100とバーナ12との位置関係を示した説明図である。尚、前述したように、本実施例の給湯器1には19個のバーナ12が搭載されているが、図示が煩雑となることを避けるため、図2では1つのバーナ12を表示し、他の18個のバーナ12については図示を省略している。
【0031】
バーナ12は、板金部材を組み合わせて形成されており、バーナ12の側部には、燃料ガスが流入する2つのガス流入口12oが上下2段に設けられている。それぞれのガス流入口12oに向かって燃料ガスを噴射すると、燃料ガスが周囲の空気を巻き込みながらガス流入口12oからバーナ12内に流入する。そして、バーナ12内で燃料ガスと空気とが混合して混合ガスを生成した後、バーナ12の上部に形成された複数の炎口12fから流出する。この混合ガスに点火プラグ14(図1参照)を用いて点火することによって、バーナ12の燃焼が開始される。
【0032】
このように、本実施例のバーナ12には、上下2段にガス流入口12oが形成されていることに対応して、本実施例のガスマニホールド100には、複数のノズル101が上下2列に形成されている。そして、上下に並んだ一組のノズル101から、バーナ12の上下のガス流入口12oに向かって燃料ガスが噴射されるようになっている。前述したように本実施例の給湯器1には19個のバーナ12が搭載されており、各バーナ12に対して上下一組のノズル101が形成されているから、ガスマニホールド100には全部で38個(=19×2)のノズル101が形成されていることになる。また、前述したように、19個のバーナ12は、4つのバーナ群12a~12dにまとめられているから、各バーナ12に燃料ガスを供給する38個のノズル101も、バーナ群12aのバーナ12に燃料ガスを供給するノズル群101aと、バーナ群12bのバーナ12に燃料ガスを供給するノズル群101bと、バーナ群12cのバーナ12に燃料ガスを供給するノズル群101cと、バーナ群12dのバーナ12に燃料ガスを供給するノズル群101dとに分けて考えることができる。
【0033】
図2に示されるように、複数のノズル101の下方には、4つの電磁開閉弁19a~19dが取り付けられており、それらの電磁開閉弁19a~19dの下方には、ガス通路16が接続されて燃料ガスが流入する流入口103が形成されている。ガスマニホールド100の内部の構造については後述するが、流入口103に燃料ガスを供給した状態で、電磁開閉弁19aを開弁すると、ノズル群101aのノズル101からバーナ群12aのバーナ12に向かって燃料ガスが供給され、電磁開閉弁19bを開弁すると、ノズル群101bのノズル101からバーナ群12bのバーナ12に向かって燃料ガスが供給される。同様に、電磁開閉弁19cを開弁すると、ノズル群101cのノズル101からバーナ群12cのバーナ12に燃料ガスが供給され、電磁開閉弁19dを開弁すると、ノズル群101dのノズル101からバーナ群12dのバーナ12に燃料ガスが供給される。
【0034】
図3は、本実施例のガスマニホールド100の分解組立図である。図示されるように、ガスマニホールド100は、ダイカスト製あるいは鋳造製のマニホールド本体110に、ゴムなどの圧縮性材料で形成されたシール部材120を挟んで、板金製のマニホールドカバー130が、複数の取付ネジ140を用いて取り付けられた構造となっている。尚、本実施例では、マニホールドカバー130が板金製であるものとしているが、ダイカスト製や鋳造製などとしても良い。
【0035】
図示されるように、マニホールド本体110には、4つの凹部112a~112dが並んで形成されており、凹部112a~112dの下方に隣接する位置には通路溝部111が形成されている。そして、マニホールド本体110にシール部材120を介してマニホールドカバー130を組み付けると、凹部112aの部分がマニホールドカバー130で覆われることによって分配室102a(図1参照)が形成される。また、凹部112bの部分には分配室102b(図1参照)が形成され、凹部112cの部分には分配室102c(図1参照)が、凹部112dの部分には分配室102d(図1参照)が形成される。図3中で、凹部112aの下に(102a)と表示されているのは、マニホールドカバー130を取り付けると凹部112aが分配室102aになることを表している。同様に、図3中で、凹部112bの下に(102b)と表示されているのは、凹部112bが分配室102bになることを表しており、凹部112cの下に(102c)と表示されているのは、凹部112cが分配室102cになることを、凹部112dの下に(102d)と表示されているのは、凹部112dが分配室102dになることを表している。更に、マニホールド本体110の通路溝部111が形成された部分には、マニホールドカバー130で覆われることによってメイン通路104が形成される。図3中で、通路溝部111の下に(104)と表示されているのは、通路溝部111がメイン通路104になることを表している。
【0036】
また、凹部112aの下部(通路溝部111に隣接する位置)には、図2に示した電磁開閉弁19aの弁口114aが形成されており、弁口114aの奥側には電磁開閉弁19aの弁室が形成されている。同様に、凹部112bの下部には、電磁開閉弁19b(図2参照)の弁口114bが形成されており、凹部112cの下部には、電磁開閉弁19c(図2参照)の弁口114cが、凹部112dの下部には、電磁開閉弁19d(図2参照)の弁口114dが形成されている。そして、弁口114bの奥側には電磁開閉弁19bの弁室が形成されており、弁口114cの奥側には電磁開閉弁19cの弁室が、弁口114dの奥側には電磁開閉弁19dの弁室が形成されている。
【0037】
更に、これらの電磁開閉弁19a~19dの弁室は、それぞれの側部が通路溝部111の側壁に開口することによって、開口部を形成している。図3に示した開口部113bは、電磁開閉弁19bの弁室が通路溝部111の側壁に形成した開口部である。また、図3中の開口部113cは、電磁開閉弁19cの弁室が通路溝部111の側壁に形成した開口部であり、図3中の開口部113dは、電磁開閉弁19dの弁室が通路溝部111の側壁に形成した開口部である。また、図3では隠れた位置にあるが、電磁開閉弁19aの弁室も通路溝部111の側壁に開口部113aを形成している。
【0038】
図4は、通路溝部111の側壁に形成された開口部113cを、図3中の矢印Pの方向から見ることによって、開口部113cの詳細な形状を示した斜視図である。開口部113aや、開口部113b、開口部113dについても同様な形状であるため、開口部113cで代表させることとして図示は省略する。図4中で、開口部113cの下方に(113a、113b、113d)と表示しているのは、開口部113cが、これらを代表していることを表している。
【0039】
図4に示されるように、開口部113cは、通路溝部111の側壁111aに開口しており、側壁111aの中でも通路溝部111の底部111bに近い位置に開口している。また、開口部113cの奥側には、電磁開閉弁19c(図2参照)の弁室19ccが形成されており、弁室19cc内には電磁開閉弁19cの弁体19cvが収納されている。そして、弁体19cvは、電磁開閉弁19cのバネ19csによって弁口114cに付勢されている。尚、図4中で、弁口114cの下方に(114a、114b、114d)と表示しているのは、弁口114cが弁口114aや弁口114bや弁口114dを代表していることを表している。また、図4中で、弁室19ccの下方に(19ac、19bc、19dc)と表示しているのは、弁室19ccが弁室19acや弁室19bcや弁室19dcを代表していることを表しており、弁体19cvの下方に(19av、19bv、19dv)と表示しているのは、弁体19cvが弁体19avや弁体19bvや弁体19dvを代表していることを表している。更に、バネ19csの下方に(19as、19bs、19ds)と表示しているのは、バネ19csがバネ19asやバネ19bsやバネ19dsを代表していることを表している。
【0040】
このように、通路溝部111は、開口部113aから弁室19acおよび弁口114aを介して、凹部112a(図3参照)に繋がっている。従って、図2に示した電磁開閉弁19aを開弁させると、通路溝部111と凹部112aとを接続する通路が形成されることになる。通路溝部111から凹部112aに繋がる通路が、本発明における「分配通路」に対応する。同様に、電磁開閉弁19bを開弁させると通路溝部111と凹部112b(図3参照)とを接続する通路が形成され、電磁開閉弁19cを開弁させると通路溝部111と凹部112c(図3参照)とを接続する通路が、電磁開閉弁19dを開弁させると通路溝部111と凹部112d(図3参照)とを接続する通路が形成される。通路溝部111から凹部112bに繋がる通路や、通路溝部111から凹部112cに繋がる通路、通路溝部111から凹部112dに繋がる通路も、本発明における「分配通路」に対応する。
【0041】
図5は、上述した構造を有する本実施例のガスマニホールド100内での燃料ガスの流れを示した説明図である。流入口103から供給された燃料ガスは、まず初めにメイン通路104に流入する。図3を用いて前述したように、メイン通路104はマニホールド本体110の通路溝部111とマニホールドカバー130との間に形成されている。また、メイン通路104の上方には、4つの分配室102a~102dが形成されている。図3を用いて前述したように、4つの分配室102a~102dは、マニホールド本体110に形成された4つの凹部112a~112dとマニホールドカバー130との間に形成されている。また、分配室102aは電磁開閉弁19a(図2参照)を介してメイン通路104とつながっており、分配室102bは電磁開閉弁19b(図2参照)を介して、分配室102cは電磁開閉弁19c(図2参照)を介して、分配室102dは電磁開閉弁19d(図2参照)を介してメイン通路104とつながっている。このため、電磁開閉弁19a~19dを開弁させると、メイン通路104内の燃料ガスが、電磁開閉弁19a~19dを介して分配室102a~102dに流入する。図中に太い一点鎖線で示した矢印は、このような燃料ガスの流れを表している。こうして分配室102a~102dに流入した燃料ガスは、それぞれの分配室102a~102dに形成されたノズル101からバーナ12に供給されることになる。
【0042】
ここで、図1あるいは図2を用いて前述したように、分配室102aからは8つのバーナ12に燃料ガスを供給しており、分配室102bからは2つのバーナ12に燃料ガスを供給し、分配室102cからは3つのバーナ12に、分配室102dからは6つのバーナ12に燃料ガスを供給している。各バーナ12が燃焼させる燃料ガスの最大流量に違いは無いから、燃料ガスを供給するバーナ12の数が多くなる程、その分配室102a~102dに供給するべき燃料ガスの流量は大きくなる。従って、図6に示したように、バーナ12の数が最も大きい分配室102aと、バーナ12の数が最も小さい分配室102bとを比べると、供給するべき燃料ガスの流量には約4倍(=8/2)もの違いが生じることになる。尚、以下では、バーナ12の数が最も大きい分配室(ここでは分配室102a)を「最大分配室」と称し、バーナ12の数が最も小さい分配室102(ここでは分配室102b)を「最小分配室」と称することにする。
【0043】
図4を用いて前述したように、メイン通路104と各分配室102a~102dとは、開口部113a~113d、弁室19ac~19dc、弁口114a~114dを介して接続されており、しかも、弁室19ac~19dc内には、電磁開閉弁19a~19dの弁体19av~19dvやバネ19as~19dsなどが収納されている。従って、弁口114a~114dを大きくし、あるいは電磁開閉弁19a~19dを大きくした場合でも、ある程度の通路抵抗が生じることは避けられない。このため、最大分配室(ここでは分配室102a)と最小分配室(ここでは分配室102b)とで、供給するべき燃料ガスの流量には約4倍もの違いが存在していると、最大分配室に十分な燃料ガスを供給することが困難となる。その結果、各分配室102a~102dに適切な流量で燃料ガスを分配することが困難となる。そこで、各分配室102a~102dに適切な流量で燃料ガスを分配するために、本実施例のガスマニホールド100には、以下のような独特な構造が採用されている。
【0044】
図7は、本実施例のガスマニホールド100で各分配室102a~102dに適切な流量で燃料ガスを分配可能とする基本的な考え方を示した説明図である。上述したように燃料ガスは、流入口103からメイン通路104に流入した後、メイン通路104から各分配室102a~102dに流入する。尚、図7中に示した分配通路105aは、図4を用いて前述したメイン通路104から分配室102aまでの通路(すなわち、開口部113aから弁室19acを経由して弁口114aまでの通路)を表している。同様に、分配通路105bは、メイン通路104から分配室102bまでの通路(開口部113bから弁室19bcを経由して弁口114bまでの通路)を表しており、分配通路105cは、メイン通路104から分配室102cまでの通路(開口部113cから弁室19ccを経由して弁口114cまでの通路)を、分配通路105dは、メイン通路104から分配室102dまでの通路(開口部113dから弁室19dcを経由して弁口114dまでの通路)を表している。
【0045】
これらの分配通路105a~105dは、メイン通路104の異なる位置から分岐しているが、最大分配室(ここでは分配室102a)への分配通路105a(以下、最大分配通路)が分岐する位置は、他の他の3つの分配室(ここでは分配室102b~102d)への分配通路105b~105dが分岐する位置に対して、最も端の位置となっている。そして、最大分配通路(ここでは分配通路105a)が分岐する位置と、他の3つの分配通路105b~105dが分岐する位置との間に、メイン通路104を絞るオリフィス部115が設けられると共に、メイン通路104に燃料ガスが流入する流入口103は、最大分配通路(ここでは分配通路105a)が分岐する側に設けられている。
【0046】
こうすれば、オリフィス部115の上流側は、オリフィス部115の下流側よりも、メイン通路104内の燃料ガスの圧力が高くなる。図7では、メイン通路104内の流入口103からオリフィス部115までの部分に、他の部分よりも細かな斜線が付されているのは、この部分では燃料ガスの圧力が他の部分よりも高くなっていることを表している。そして、分配通路105aは、オリフィス部115の上流側のメイン通路104から分岐しているので、分配通路105aの通路抵抗を十分に下げることができない場合でも、分配室102aに対して十分な燃料ガスを供給することが可能となる。
【0047】
また、オリフィス部115によってメイン通路104が狭くなった狭窄部116の面積は、最大分配通路(ここでは分配通路105a)以外の分配通路105b~105dがメイン通路104から分岐する部分の合計面積よりも大きな面積に設定されている。こうすれば、オリフィス部115を設けたことによって、分配室102b~102dに供給される燃料ガスが不足する事態も回避することができる。
【0048】
一方、最大分配室以外の3つの分配室102b~102dに供給される燃料ガスは、オリフィス部115よりも下流側のメイン通路104を通過し、これに伴って、オリフィス部115の下流側のメイン通路104内には、流れの方向に向かって燃料ガスの圧力低下が発生する。もっとも、オリフィス部115の下流側を流れる燃料ガスは、最大分配室である分配室102aに燃料ガスを供給した残りの燃料ガスなので、それほど大きな流量となることはない。従って、メイン通路104内に生じる圧力低下もそれほど大きなものではない。図7中に太い一点鎖線で示した矢印は、オリフィス部115よりも下流側のメイン通路104内に生じる燃料ガスの流れを表している。また、オリフィス部115よりも下流側のメイン通路104内に付した斜線が、流れの方向に向かって次第に粗い斜線となっているのは、燃料ガスの圧力が少しずつ低下することを表している。このように、オリフィス部115よりも下流側のメイン通路104には、燃料ガスの流れに伴う圧力勾配が生じるが、圧力勾配の大きさは僅かなものとなる。このため、3つの分配通路105b~105dがメイン通路104から分岐する位置での燃料ガスの圧力は、ほぼ同じような圧力となる。その結果、分配通路105a~105dの通路抵抗の大きさに応じて、分配通路105b~105dに対して適切な流量の燃料ガスを供給することが可能となる。
【0049】
更に、本実施例のガスマニホールド100では、図7に示したように、最小分配室(ここでは分配室102b)への分配通路105b(以下、最小分配通路)を、オリフィス部115の直ぐ下流側の位置から分岐させている。この理由は、オリフィス部115の下流側のメイン通路104内に圧力勾配が生じていることを利用して、各分配通路105b~105dに供給される燃料ガスの流量を、より一層適切な流量とするためである。以下、この点について説明する。
【0050】
前述したように、分配通路105a~105dを形成する弁口114a~114dや電磁開閉弁19a~19dの大きさは、分配通路105a~105dを介して供給するべき燃料ガスの流量に応じて設定されている。このため、最小分配通路である分配通路105bの弁口114bや電磁開閉弁19bは、他の弁口114a、114c、114dや、電磁開閉弁19a、19c、19dに比べて小さくなり、電磁開閉弁19bの弁室19bcも、他の電磁開閉弁19a、19c、19dの弁室19ac、19cc、19dcよりも小さくなる。この小さな弁室19bcの中に、電磁開閉弁19bの弁体19bvやバネ19bsが収納されるので、最小分配通路(ここでは分配通路105b)の通路抵抗は、設計上の抵抗値よりも大きくなり易い。そこで、オリフィス部115よりも下流側のメイン通路104の中では、最も圧力が高い部分であるオリフィス部115の直ぐ下流側の位置から、最小分配通路(分配通路105b)を分岐させることで、最小分配通路の通路抵抗が設計上の抵抗値よりも大きくなっても、適切な流量の燃料ガスを供給することが可能となる。
【0051】
図8は、本実施例のガスマニホールド100のマニホールド本体110に形成された通路溝部111や、凹部112a~112dの具体的な形状を示した正面図である。図3を用いて前述したように、マニホールド本体110にシール部材120およびマニホールドカバー130を組み付けることによって、通路溝部111の部分がメイン通路104となり、凹部112aの部分が分配室102a(本実施例では最大分配室)となり、凹部112bの部分が分配室102b(本実施例では最小分配室)となり、凹部112cの部分が分配室102cに、凹部112dの部分が分配室102dとなる。
【0052】
図8に示されるように、4つの凹部112a~112dは、図面上で右端の位置に凹部112a(最大分配室を形成する凹部112a)が形成され、その左隣に、凹部112b(最小分配室を形成する凹部112b)が形成され、その左側に、残りの2つの凹部112c、112dが形成されている。そして、これら4つの凹部112a~112dの下方に隣接する位置には、図面上で左右方向に延びる通路溝部111が形成されている。これに伴って、通路溝部111の側壁には、凹部112aに連通する開口部113aと、凹部112bに連通する開口部113bと、凹部112cに連通する開口部113cと、凹部112dに連通する開口部113dとが、図面上で右から左に向かって、この順番で開口している。
【0053】
尚、4つの凹部112a~112dは、逆方向に(従って、図面上で左から右に向かって)この順番で形成されていてもよい。この場合は、通路溝部111に4つの開口部113a~113dが開口する順番も逆になる。また、開口部113aが連通する凹部112aは最大分配室である分配室102aを形成するから、凹部112aに連通する開口部113aを、以下では「最大開口部」と称するものとする。同様に、開口部113bが連通する凹部112bは最小分配室である分配室102bを形成するから、凹部112bに連通する開口部113bを、以下では「最小開口部」と称するものとする。
【0054】
図8に示すように、本実施例のマニホールド本体110の通路溝部111には、横一列に形成された開口部113a~113dに対して、開口部113a(最大開口部)と開口部113b(最小開口部)との間の位置に、燃料ガスが流入する流入口103と、流入した燃料ガスの流れを開口部113a(最大開口部)に導流する導流部117とが形成されている。導流部117は、通路溝部111の底部111bから壁状に突設されており、導流部117の底部111bからの高さは、通路溝部111の深さよりは低いが、マニホールド本体110に対してシール部材120を介してマニホールドカバー130を取り付けた時に、導流部117の上端がシール部材120に接触する高さとなっている。また、導流部117が突設された部分では、通路溝部111の溝幅が狭められることによって狭窄部116が形成されている。
【0055】
本実施例のガスマニホールド100には、このような導流部117が形成されているため、導流部117が図7中のオリフィス部115として機能することになる。その結果、図7を用いて前述したメカニズムによって、最大分配室を形成する凹部112aに対して十分な燃料ガスを供給することが可能となる。また、導流部117よりも下流側では、初めに開口部113b(最小開口部)が通路溝部111から分岐している。このため、最小分配室を形成する凹部112bに対して十分な燃料ガスを供給することが可能となり、その結果、全ての凹部112a~112dに対して適切な流量の燃料ガスを供給することが可能となる。
【0056】
また、図8に示したように、燃料ガスが流入する流入口103は、開口部113a(最大開口部)と開口部113b(最小開口部)との間に設けられており、導流部117は燃料ガスの流れを開口部113aの方向に導流する。このため、図8中に太い一点鎖線の矢印で示したように、燃料ガスの流れは開口部113bとは逆の方向に導流されることになり、開口部113b~113dの方向には燃料ガスが流れにくくなる。その結果、狭窄部116での通路溝部111の面積を、開口部113b~113dの開口面積の合計よりも大きな面積に設定しても、開口部113b~113dに燃料ガスが流れすぎてしまうことが無いので、凹部112a(最大分配室)に十分な流量の燃料ガスを供給することができる。
【0057】
仮に、燃料ガスの流れを開口部113bとは逆の方向に導流しなかった場合、燃料ガスが開口部113b~113dに流れすぎることを回避しようとすると、狭窄部116での通路溝部111の面積を小さくしなければならない。その結果、狭窄部116での面積を、開口部113b~113dの開口面積の合計よりも小さくしなければならなくなると、開口部113b~113dに対して十分な流量の燃料ガスを供給することが困難となる。これに対して、本実施例のガスマニホールド100では、狭窄部116での通路溝部111の面積を、開口部113b~113dの開口面積の合計よりも大きな面積に設定することができるので、凹部112b~112dに対しても十分な流量の燃料ガスを供給することができる。その結果、4つの凹部112a~112dに対して、適切な流量の燃料ガスを供給することが可能となる。
【0058】
加えて、流入口103は、通路溝部111の底部111bに形成されている。このため、流入口103から流入する燃料ガスは、マニホールドカバー130に向かって(図8では、紙面の奥側から手前側に向かって)流入することになり、メイン通路104に流入した後は、(少なくとも燃料ガスの主流部分は)マニホールドカバー130に沿って(従って、通路溝部111の底部111bから離れた位置を)流れることになる。その一方で、図4に示したように、開口部113a~113dは、底部111bから近い側の通路溝部111の側壁111aに開口している。このため、マニホールドカバー130に沿って流れる燃料ガスが、開口部113a~113dに直接流入することが無いので、何れかの開口部113a~113dに偏って燃料ガスが流入する事態を防止することができる。その結果、4つの凹部112a~112dに対して、適切な流量の燃料ガスを供給することが可能となる。
【0059】
更に加えて、導流部117よりも下流側に開口する開口部113b~113dは、通路溝部111の側壁111aが、通路溝部111の中央に向かって円弧上に突出した部分に開口している。仮に、開口部113b~113dの何れかが、通路溝部111の側壁111aが引っ込んだ位置に開口していた場合、その開口部には燃料ガスが供給されにくくなる。しかし、本実施例では、何れの開口部113b~113dも、通路溝部111の側壁111aが円弧上に突出した部分に開口しているので、燃料ガスが供給されにくい開口部が生じることがなく、その結果、何れの凹部112a~112dに対しても、適切な流量の燃料ガスを供給することが可能となる。
【0060】
また、通路溝部111に形成された導流部117は、通路溝部111の底部111bからの高さが、通路溝部111の深さよりも、シール部材120(図3参照)の圧縮代の分だけ低くなっている。このため、マニホールド本体110にシール部材120を介してマニホールドカバー130を取り付けた時に、導流部117の上端がシール部材120に接触するものの、シール部材120やマニホールドカバー130に対して反力を及ぼすことは無い。その結果、導流部117を設けても、シール部材120に掛かる面圧が低下して、メイン通路104内の燃料ガスが漏れてしまう事態を生じる虞が無い。
【0061】
以上、本実施例のガスマニホールド100について説明したが、本発明は上記の実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【符号の説明】
【0062】
1…給湯器、 2…排気口、 10…燃焼装置、 11…燃焼缶、
12…バーナ、 12a~12d…バーナ群、 12f…炎口、
12o…ガス流入口、 13…燃焼ファン、 14…点火プラグ、
15…フレームロッド、 16…ガス通路、 17…元弁、
18…比例弁、 19a~19d…電磁開閉弁、 19ac~19dc…弁室、
19as~19ds…バネ、 19av~19dv…弁体、 20…熱交換器、
21…給水通路、 22…給湯通路、 23…流量センサ、
24…給湯カラン、 100…ガスマニホールド、 101…ノズル、
101a~101d…ノズル群、 102a~102d…分配室、
103…流入口、 104…メイン通路、 105a~105d…分配通路、
110…マニホールド本体、 111…通路溝部、 111a…側壁、
111b…底部、 112a~112d…凹部、 113a~113d…開口部、
114a~114d…弁口、 115…オリフィス部、 116…狭窄部、
117…導流部、 120…シール部材、 130…マニホールドカバー、
140…取付ネジ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8