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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3205 20060101AFI20231106BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20231106BHJP
   H01L 23/522 20060101ALI20231106BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20231106BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20231106BHJP
   H01L 21/82 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
H01L21/88 S
H01L27/04 D
H01L21/82 W
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020062008
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021163806
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 尚
(72)【発明者】
【氏名】畠中 雅宏
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-088002(JP,A)
【文献】特開2006-303452(JP,A)
【文献】特開2013-128140(JP,A)
【文献】特開2010-238877(JP,A)
【文献】特開2011-233746(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0031624(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0042292(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3205
H01L 21/822
H01L 21/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に、複数の回路素子が形成されている素子形成領域と、平面視において前記素子形成領域の周囲に1以上の保護壁が形成されている保護壁形成領域と、を有し、
前記素子形成領域において、前記複数の回路素子と電気的にそれぞれ接続する多層配線の最上層の上面に高融点金属膜が形成されており、
前記保護壁形成領域において、前記1以上の保護壁が多層配線構造を有し、前記1以上の保護壁の最上層のうち最外縁に位置する前記保護壁の最上層以外の上面に前記高融点金属膜が形成されており、
前記素子形成領域及び前記保護壁形成領域における最上面にパッシベーション膜が形成され、前記最外縁に位置する前記保護壁の最上層の上面全域と前記パッシベーション膜とが接していることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記高融点金属膜が窒化チタンを含む請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記多層配線及び前記1以上の保護壁が、プラグの上面に金属配線が配置された構造体を複数積層した構造をそれぞれ有する請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
最外縁に位置する前記保護壁の最上層の前記構造体以外は、前記金属配線の側面以外を前記高融点金属膜で覆われている請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記多層配線及び前記1以上の保護壁における前記金属配線がアルミニウムを含む請求項3又は4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記多層配線の最上層における前記金属配線の上方に開口部が設けられている請求項3から5のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記開口部から前記金属配線の上に形成されている前記高融点金属膜が露出しないように、前記開口部の内壁に絶縁膜が形成されている請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記保護壁が2以上形成されている場合には、互いに隣接する前記保護壁は、それぞれ離間している請求項1から7のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項9】
前記保護壁が2以上形成されている場合には、最外縁に位置する前記保護壁以外の前記保護壁における最上層の上面に前記高融点金属膜が形成されている請求項1から8のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項10】
半導体基板上に、複数の回路素子が形成されている素子形成領域と、平面視において前記素子形成領域の周囲に1以上の保護壁が形成されている保護壁形成領域と、を有する半導体装置の製造方法であって、
前記素子形成領域及び前記保護壁形成領域において、
前記複数の回路素子と電気的にそれぞれ接続する多層配線を形成するとともに、多層配線構造を有する前記1以上の保護壁を形成する工程と、
前記多層配線及び前記1以上の保護壁の最上層の上面に高融点金属膜を形成する工程と、
前記素子形成領域及び前記保護壁形成領域における最上面にパッシベーション膜を形成する工程と、を含み、
前記保護壁形成領域において、
前記パッシベーション膜を形成する前に、前記1以上の保護壁のうち少なくとも最外縁に位置する前記保護壁の最上層の上面全域から前記高融点金属膜を除去する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
半導体基板上に、複数の回路素子が形成されている素子形成領域と、平面視において前記素子形成領域の周囲に1以上の保護壁が形成されている保護壁形成領域と、を有する半導体装置の製造方法であって、
前記素子形成領域及び前記保護壁形成領域において、
前記複数の回路素子と電気的にそれぞれ接続する多層配線を形成するとともに、多層配線構造を有する前記1以上の保護壁を形成する工程と、
前記多層配線及び前記1以上の保護壁の最上層のうち、最外縁に位置する前記保護壁の最上層以外の上面に高融点金属膜を形成する工程と、
前記素子形成領域及び前記保護壁形成領域における最上面に、前記最外縁に位置する前記保護壁の最上層の上面全域と接するようにパッシベーション膜を形成する工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスには、ウエハ状の半導体基板上に形成された複数の半導体チップを分離する際に、ダイシングブレードと称する円形回転刃を回転させながらスクライブ領域に沿って移動させ切断するダイシング工程が含まれる。
【0003】
このダイシング工程においては切断面からクラックが発生する場合があるため、半導体チップの内側の素子形成領域にクラックが伝播しないように、素子形成領域の周縁に沿ってガードリングなどと称されるリング状の構造体が半導体チップごとに形成されているものがある。さらに、素子形成領域にクラックが伝播しないようにするだけでなく、水分やガスを浸入させないようにする保護壁もある。例えば、素子形成領域の周囲に金属壁を二重あるいはそれ以上形成し、相互に隣接する金属壁の最上層が溝状コンタクトホールの上方で相互に一体化させて、素子形成領域に水分や腐食性ガスを浸入させないようにする半導体装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-128140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一つの側面では、クラックの伝播を阻止するとともに、更なるクラックの発生を抑制することができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの実施形態では、半導体装置は、
半導体基板上に、複数の回路素子が形成されている素子形成領域と、平面視において前記素子形成領域の周囲に1以上の保護壁が形成されている保護壁形成領域と、を有し、
前記素子形成領域において、前記複数の回路素子と電気的にそれぞれ接続する多層配線の最上層の上面に高融点金属膜が形成されており、
前記保護壁形成領域において、前記1以上の保護壁が多層配線構造を有し、前記1以上の保護壁の最上層のうち最外縁に位置する前記保護壁の最上層以外の上面に前記高融点金属膜が形成されており、
前記素子形成領域及び前記保護壁形成領域における最上面にパッシベーション膜が形成され、前記最外縁に位置する前記保護壁の最上層の上面全域と前記パッシベーション膜とが接していること。
【発明の効果】
【0007】
一つの側面では、クラックの伝播を阻止するとともに、更なるクラックの発生を抑制することができる半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態に係る半導体装置が形成されている半導体ウエハを示す概略上面図である。
図2図2は、図1で示した半導体ウエハの拡大図である。
図3図3は、図2で示した複数の半導体装置のうちの1つを示す拡大図である。
図4図4は、図3で示したA-A線における断面を示す概略図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す説明図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す説明図である。
図7図7は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す説明図である。
図8図8は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す説明図である。
図9図9は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す説明図である。
図10図10は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す説明図である。
図11図11は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す説明図である。
図12図12は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す説明図である。
図13図13は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す説明図である。
図14図14は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す説明図である。
図15図15は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す説明図である。
図16図16は、第2の実施形態に係る半導体装置における断面を示す概略図である。
図17図17は、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す説明図である。
図18図18は、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態に係る半導体装置は、半導体基板上に、複数の回路素子が形成されている素子形成領域と、平面視において素子形成領域の周囲に1以上の保護壁が形成されている保護壁形成領域と、を有し、素子形成領域において、複数の回路素子と電気的にそれぞれ接続する多層配線の最上層の上面に高融点金属膜が形成されており、保護壁形成領域において、1以上の保護壁が多層配線構造を有し、1以上の保護壁の最上層のうち最外縁に位置する保護壁の最上層以外の上面に高融点金属膜が形成されており、素子形成領域及び保護壁形成領域における最上面にパッシベーション膜が形成され、最外縁に位置する保護壁の最上層の上面全域とパッシベーション膜とが接している。
【0010】
本発明の一実施形態に係る半導体装置は、以下の知見に基づくものである。
【0011】
半導体製造プロセスにおいて多層配線を形成する配線工程では、フォトリソグラフィによる加工精度を確保するために、高融点金属膜を金属配線の上面に形成する場合がある。また、金属配線の主成分がアルミニウムであるとエレクトロマイグレーションなどが発生しやすくなるため、これらの発生を抑制する目的で、金属配線の上面全域には高融点金属膜の機能と兼ねて窒化チタン膜を積層することが多い。
そして、半導体チップの表面全域には、水分やガスが素子形成領域に浸入しないようにパッシベーション膜を形成するようにしている。
【0012】
このように各膜を形成した場合、例えば、特許文献1に記載されているような従来の半導体装置では、保護壁によりクラックの伝播を抑制することができ、かつマイグレーションによる不具合の発生、及び表面から水分やガスの浸入を抑制することができる。
しかしながら、保護壁の最上層に窒化チタン膜が形成されていると、クラックから浸入した水分で窒化チタン膜が酸化して体積が膨張し、これにより生じたクラックから更に水分が浸入することを繰り返すことになり、窒化チタン膜の上に形成されているパッシベーション膜に連鎖的にクラックが発生する。すると、従来の半導体装置では、素子形成領域の内部に形成されている回路素子に水分が浸入しやすくなるため、半導体装置の信頼性が低下してしまうという問題があった。
【0013】
そこで、本発明の一実施形態に係る半導体装置は、保護壁形成領域において、1以上の保護壁が多層配線構造を有し、1以上の保護壁の最上層のうち最外縁に位置する保護壁の最上層以外の上面に高融点金属膜が形成されている。また、この半導体装置は、素子形成領域及び保護壁形成領域における最上面にパッシベーション膜が形成され、最外縁に位置する保護壁の最上層の上面全域とパッシベーション膜とが接している。言い換えると、この半導体装置は、1以上の保護壁のうち少なくとも最外縁に位置する保護壁の最上層の上面全域に高融点金属膜が配置されていない。
これにより、ダイシングの際に最外縁の保護壁の最上層の上面に達したクラックから水分が浸入しても、そこに高融点金属膜が配置されていないため、高融点金属膜、特に窒化チタン膜の膨張で生じるクラックの連鎖を抑制することができる。
つまり、本発明の一実施形態に係る半導体装置では、ダイシング工程でのクラックの伝播を阻止するとともに、保護壁を起点とする更なるクラックの発生を抑制することができる。
【0014】
さらに、本発明の一実施形態に係る半導体装置は、上記のように、最外縁に位置する保護壁を起点とする更なるクラックの発生を抑制していることから、その保護壁の内側に存在する素子形成領域までクラックが到達しにくく、高融点金属膜が水分で膨張してしまうおそれが少ない。このため、素子形成領域においては、多層配線の最上層の上面に窒化チタン膜を配置することにより、当該最上層にある金属配線におけるエレクトロマイグレーション、ストレスマイグレーションなどの発生を抑制することができる。
【0015】
また、本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法は、半導体基板上に、複数の回路素子が形成されている素子形成領域と、平面視において素子形成領域の周囲に1以上の保護壁が形成されている保護壁形成領域と、を有する半導体装置の製造方法である。この半導体装置の製造方法は、素子形成領域及び保護壁形成領域において、複数の回路素子と電気的にそれぞれ接続する多層配線を形成するとともに、多層配線構造を有する1以上の保護壁を形成する工程と、多層配線及び1以上の保護壁の最上層の上面に高融点金属膜を形成する工程と、素子形成領域及び保護壁形成領域における最上面にパッシベーション膜を形成する工程と、を含む。また、この半導体装置の製造方法は、保護壁形成領域において、パッシベーション膜を形成する前に、1以上の保護壁のうち少なくとも最外縁に位置する保護壁の最上層の上面全域から高融点金属膜を除去する工程を含む。
これにより、本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法で、本発明の一実施形態に係る半導体装置を製造することできる。
なお、この半導体装置の製造方法においては、パッシベーション膜を形成する前に、1以上の保護壁のうち少なくとも最外縁に位置する保護壁の最上層の上面全域から高融点金属膜を除去するようにしたが、これに限ることはない。例えば、多層配線及び1以上の保護壁の最上層のうち、最外縁に位置する保護壁の最上層以外の上面に高融点金属膜を形成する工程と、素子形成領域及び保護壁形成領域における最上面に、最外縁に位置する保護壁の最上層の上面全域と接するようにパッシベーション膜を形成する工程と、を含むようにしてよい。
【0016】
次に、本発明の半導体装置の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、実施形態において例示される各構成要素の寸法、材質、形状、当該各構成要素の相対配置などは、本発明が適用される装置の構成、各種条件等により適宜変更されてもよい。
【0017】
各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
また、図面において、X方向、Y方向及びZ方向は、互いに直交する。X方向と、当該X方向の反対の方向(-X方向)とを含む方向を「X軸方向」といい、Y方向(上方向)と、当該Y方向の反対の方向(-Y方向、下方向)とを含む方向を「Y軸方向」といい、Z方向と、当該Z方向の反対の方向(-Z方向)とを含む方向を「Z軸方向」(高さ方向、厚さ方向)という。
さらに、X軸方向及びY軸方向を含む平面を「XY面」といい、X軸方向及びZ軸方向を含む平面を「XZ面」といい、Y軸方向及びZ軸方向を含む平面を「YZ面」という。
【0018】
(第1の実施形態)
(半導体基板)
図1は、第1の実施形態に係る半導体装置が形成されている半導体ウエハを示す概略上面図である。
図1に示すように、シリコン半導体基板である半導体ウエハWを平面視すると、複数の半導体装置100は、半導体ウエハWの表面に形成されている。
なお、半導体ウエハWの形状、構造、大きさ及び材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0019】
図2は、図1で示した半導体ウエハの拡大図である。
図2に示すように、複数の半導体装置100は、半導体チップとして切り離す際の切削領域であるスクライブ領域Sで矩形状に分断されており、それぞれ素子形成領域110及び保護壁形成領域120を有する。
なお、スクライブ領域Sの形状及び大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0020】
<半導体装置>
図3は、図2で示した複数の半導体装置のうちの1つを示す拡大図である。
図3に示すように、半導体装置100の保護壁形成領域120には、素子形成領域110の周囲を二重に囲むように、第1の保護壁121及び第2の保護壁122が形成されている。
なお、このような保護壁は、ガードリング、シールリング、耐湿リング、金属リング、クラックストップなどと称されることがある。
【0021】
図4は、図3で示したA-A線における断面を示す概略図である。
図4に示すように、半導体装置100には、第1の保護壁121及び第2の保護壁122が保護壁形成領域120に形成されている。第1の保護壁121及び第2の保護壁122は、素子形成領域110の多層配線111と同等の深さを有する。
また、最上面には、素子形成領域110に水分やガスが浸入しないようにパッシベーション膜P1,P2が形成されている。
【0022】
<<素子形成領域>>
素子形成領域110には、複数の回路素子と、複数の回路素子を電気的に接続する多層配線111とが形成されている。
複数の回路素子としては、例えば、トランジスタ、容量、抵抗、ヒューズなどが挙げられるが、図4中には、複数の回路素子の一例としてトランジスタTrを図示した。
【0023】
-多層配線-
多層配線111は、複数の回路素子の上方に配置され、複数の回路素子を電気的に接続することにより、例えば、基準電圧発生回路などを形成する。
多層配線111は、層間絶縁膜L1から層間絶縁膜L4を貫通するように設けられている。この多層配線111は、プラグの上面に金属配線が配置され、かつ金属配線の側面以外をバリアメタル膜及び反射防止膜で覆った構造体を積層して形成されている。
【0024】
バリアメタル膜111a,111e,111i,111mは、層間絶縁膜L1,L2,L3,L4の上面にそれぞれ積層される金属配線111c,111g,111k,111oの下地として形成されている。また、層間絶縁膜L1,L2,L3,L4の上面からエッチングでそれぞれ設けられたビアホール内部にも形成されている。
このバリアメタル膜111a,111e,111i,111mは、チタン膜及び窒化チタン膜(以下、「Ti/TiN膜」と称する)で形成されている。
【0025】
プラグ111b,111f,111j,111nは、バリアメタル膜が形成されているビアホール内部に、タングステンを堆積して形成されている。
【0026】
金属配線111c,111g,111k,111oは、プラグ111b,111f,111j,111nの上面及びその周囲に位置するバリアメタル膜の上面に、アルミニウム合金であるAl-Cuを堆積して形成されている。
【0027】
高融点金属膜としての反射防止膜111d,111h,111l,111pは、金属配線111c,111g,111k,111oの上面全域に形成されている。つまり、多層配線111の最上層の上面に、高融点金属膜が形成されている。
この反射防止膜111d,111h,111l,111pは、バリアメタル膜111a,111e,111i,111mと同様に、Ti/TiN膜で形成されている。
なお、Ti/TiN膜で形成されているバリアメタル膜も高融点金属膜といえる。
【0028】
層間絶縁膜L1,L2,L3,L4は、本実施形態では燐及びホウ素を添加したシリコン酸化膜(以下、「BPSG膜」と称する)であるが、例えば、他のシリコン酸化膜、シリコン炭化膜、シリコン炭窒化膜などとの積層構造としてもよい。
【0029】
<<保護壁形成領域>>
保護壁形成領域120には、上述のとおり、素子形成領域110の周囲を二重に囲むように、第1の保護壁121及び第2の保護壁122が形成されている。
なお、このような保護壁は、ガードリング、シールリング、耐湿リング、金属リング、クラックストップなどと称されることがある。
【0030】
-第1の保護壁-
第1の保護壁121は、層間絶縁膜L1から層間絶縁膜L4を貫通するように設けられている。この第1の保護壁121は、プラグの上面に金属配線が配置され、かつ金属配線の側面以外をバリアメタル膜及び反射防止膜で覆った構造体を積層して形成されている。
【0031】
バリアメタル膜121a,121e,121i,121mは、層間絶縁膜L1,L2,L3,L4の上面にそれぞれ積層される金属配線121c,121g,121k,121oの下地として形成されている。また、層間絶縁膜L1,L2,L3,L4の上面からエッチングでそれぞれ設けられた溝状ビアホール内部にも形成されている。この溝状ビアホールは、素子形成領域110の周囲を囲むように、溝状に連続的に形成される。
このバリアメタル膜121a,121e,121i,121mは、Ti/TiN膜で形成されている。
【0032】
溝状プラグ121b,121f,121j,121nは、溝状ビアホール内部に、バリアメタル膜を下地としてタングステンを堆積して形成されている。
【0033】
金属配線121c,121g,121k,121oは、溝状プラグ121b,121f,121j,121nの上面及びその周囲に位置するバリアメタル膜の上面に、Al-Cuを堆積して形成されている。
【0034】
高融点金属膜としての反射防止膜121d,121h,121l,121pは、金属配線121c,121g,121k,121oの上面全域に形成されている。つまり、第1の保護壁121の最上層の上面に、高融点金属膜が形成されている。
この反射防止膜121d,121h,121l,121pは、バリアメタル膜121a,121e,121i,121mと同様に、Ti/TiN膜で形成されている。
【0035】
このように、半導体装置100は、金属配線の上面及び下面の一部に高融点金属膜が形成されていることにより、金属配線にアルミニウムや銅が含まれていても、金属配線の周縁にある層間絶縁膜に金属配線からアルミニウムや銅が拡散しにくくなるため、エレクトロマイグレーションなどを抑制することができる。また、金属配線の上面に形成されている高融点金属膜が反射防止膜として機能するため、フォトリソグラフィによる加工精度を高めることができる。
【0036】
-第2の保護壁-
第2の保護壁122は、第1の保護壁121の最上層における金属配線の上面の高融点金属膜が全域で除去されているため、最上層における金属配線の上面全域がパッシベーション膜P1と接している以外は第1の保護壁121と同様の構造を有する。言い換えると、第1の保護壁121と比較すると、第2の保護壁122の最上層である金属配線122oの上面には、高融点金属膜が配置されていない点で異なる。
これにより、ダイシングの際に金属配線122oの上面に達したクラックから水分が浸入しても、高融点金属膜の酸化による体積の膨張でパッシベーション膜P1,P2にクラックが発生することを抑制できる。すなわち、第2の保護壁122は、クラックの伝播を阻止するとともに、第2の保護壁122を起点とする更なるクラックの発生を抑制することができる。
【0037】
また、互いに隣接する第1の保護壁121及び第2の保護壁122は、それぞれ離間して配置されている。第1の保護壁121と第2の保護壁122との距離としては、第2の保護壁122のTi/TiN膜が膨張してクラックが発生しても、そのクラックが第1の保護壁121に達しない程度に離間することが好ましい。
これにより、ダイシングの際のクラックが最上層でない他の層に達した場合には、第2の保護壁122を起点とする更なるクラックが発生しても、クラックが隣接する第1の保護壁121に伝播しにくくすることができる。
【0038】
<<パッシベーション膜>>
パッシベーション膜P1は、プラズマにより形成されたシリコン酸化膜であり、半導体ウエハW表面全域、即ち素子形成領域110、保護壁形成領域120及びスクライブ領域Sの全域における最上面に形成されている。
パッシベーション膜P2は、プラズマにより形成されたシリコン窒化膜であり、パッシベーション膜P1と同様に、素子形成領域110、保護壁形成領域120及びスクライブ領域Sの全域における最上面に形成されている。
これらのパッシベーション膜P1,P2は、クラックが発生すると水分やガスが浸入しやすくなるため、少なくとも製造時にクラックが発生しないようにする必要がある。
【0039】
このように、半導体装置100は、保護壁121,122の最上層のうち、最外縁に位置する保護壁122の最上層以外の上面に高融点金属膜が形成されており、素子形成領域110及び保護壁形成領域120における最上面にパッシベーション膜P1,P2が形成され、最外縁に位置する保護壁122の最上層の上面全域とパッシベーション膜P1とが接している。
【0040】
(半導体装置の製造方法)
次に、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。
第1の実施形態に係る半導体装置100の製造方法は、素子形成工程と、配線工程と、を含む。
【0041】
<素子形成工程>
素子形成工程は、素子形成領域110に複数の回路素子を形成する工程であり、フロントエンドと称することもある。ここでは、回路素子の形成の一例として、トランジスタTrを半導体ウエハW上に形成した例を図5に示す。
【0042】
トランジスタTrは、P型ウェル領域1と、分離用酸化膜2と、ゲート酸化膜3と、ソース・ドレイン領域4と、ゲート電極5と、を構造的に組み合わせて形成される。
トランジスタTrを形成するには、まずLOCOS(LOCal Oxidation of Silicon)である分離用酸化膜2により分離されているアクティブ領域の一部にボロンを注入してP型ウェル領域1を形成する。次に、P型ウェル領域1の表面の一部にN型のチャネルドープ領域を形成し、このチャネルドープ領域の上にゲート酸化膜3を形成する。次に、ゲート酸化膜3の上に形成したポリシリコン膜に低濃度のリンを注入してゲート電極5を形成する。次に、ゲート酸化膜3の下のチャネルドープ領域を挟み込む位置に、高濃度のN型のソース・ドレイン領域4をP型ウェル領域1の表面に形成する。
そして、BPSG膜である層間絶縁膜L1を半導体ウエハW全域に形成する。
【0043】
なお、これらは必要な部分にフォトマスク処理を行うフォトリソグラフィにより形成する。
また、本実施形態では、分離用酸化膜をLOCOSとしたが、これに限ることなく、例えば、STI(Shallow Trench Isolation)などとしてもよい。
【0044】
<配線工程>
配線工程は、素子形成領域110に複数の回路素子と電気的に接続する多層配線111を形成する工程であり、バックエンドと称することもある。また、この配線工程では、多層配線111を形成すると同時に、保護壁形成領域120において多層配線構造を有する第1の保護壁121及び第2の保護壁122を形成する。
【0045】
具体的には、まず層間絶縁膜L1の上面において、回路素子と接続する位置及び保護壁を設ける位置に、フォトリソグラフィによる選択的なエッチングでビアホールを設けた後(図6参照)、Ti/TiN膜であるバリアメタル膜をウエハ全域に形成する(図7参照)。
【0046】
次に、バリアメタル膜の上にタングステンを堆積させた後(図8参照)、層間絶縁膜L1の上面にバリアメタル膜を残すように平坦化することで、ビアホール内にタングステンのプラグ111bを形成する(図9参照)。
【0047】
次に、平坦化された面、即ちバリアメタル膜及びプラグ111bの上面にAl-Cuの金属配線を形成した後、Ti/TiN膜である反射防止膜(高融点金属膜)をウエハ全域に形成する(図10参照)。
【0048】
そして、素子形成領域110においては複数の回路素子を電気的に接続する金属配線としての形状に、保護壁形成領域120においては素子形成領域110の周囲を囲むリング状に、高融点金属膜、金属配線及びバリアメタル膜をフォトリソグラフィで選択的にエッチングして除去する。
【0049】
すると、図11に示すように、素子形成領域110には、バリアメタル膜111a、プラグ111b、金属配線111c及び反射防止膜111dによる組合せの多層配線111の一部が形成される。また、これと同時に、保護壁形成領域120には、バリアメタル膜121a、溝状プラグ121b、金属配線121c及び反射防止膜121dによる組合せの第1の保護壁121の一部と、バリアメタル膜122a、溝状プラグ122b、金属配線122c及び高融点金属膜122dによる組合せの第2の保護壁122の一部とが形成される。
次に、図12に示すように、BPSG膜である層間絶縁膜L2をウエハ全域に形成する。
【0050】
配線工程においてこのような処理を繰り返すことにより、バリアメタル膜、(溝状)プラグ、金属配線及び高融点金属膜による構造体を順次積層することで、最上層以外の多層配線111、第1の保護壁121及び第2の保護壁122を形成する。
次に、最上層の形成について説明する。
【0051】
図13は、多層配線111、第1の保護壁121及び第2の保護壁122の最上層の上面に窒化チタン膜を含む高融点金属膜が形成されている状態を示す。
この状態から、第2の保護壁122の上方に形成されている高融点金属膜をフォトリソグラフィで選択的にエッチングして除去する(図14参照)。つまり、保護壁形成領域120において、最外縁に位置する第2の保護壁122の最上層である金属配線122oの上面全域から高融点金属膜である反射防止膜を除去する。
【0052】
そして、図15に示すように、多層配線111では複数の回路素子を電気的に接続する金属配線としての形状に、第1の保護壁121では素子形成領域110の周囲を囲むリング状に、反射防止膜、金属配線及びバリアメタル膜をエッチングで除去する。なお、第2の保護壁122では、反射防止膜は既に除去されているので、金属配線及びバリアメタル膜をリング状に除去する。
【0053】
最後に、ウエハ全域の最上面において、パッシベーション膜P1を形成した後、パッシベーション膜P2を形成する(図4参照)。
このような製造方法により、第1の実施形態に係る半導体装置100を製造することができる。
【0054】
このように、第1の実施形態では、保護壁121,122の最上層のうち、最外縁に位置する保護壁122の最上層以外の上面に高融点金属膜が形成されており、素子形成領域110及び保護壁形成領域120における最上面にパッシベーション膜P1,P2が形成され、最外縁に位置する保護壁122の最上層の上面全域とパッシベーション膜P1とが接している。言い換えると、保護壁形成領域120において、最外縁に位置する第2の保護壁122の最上層の金属配線122oの上面全域に窒化チタン膜が配置されていない。
これにより、ダイシングの際に第2の保護壁122の最上層の上面に達したクラックから水分が浸入しても、そこに窒化チタン膜が配置されていないため、窒化チタン膜の膨張で生じるクラックの連鎖を抑制することができる。つまり、第1の実施形態では、保護壁によりダイシング工程でのクラックの伝播を阻止するとともに、クラックの伝播を阻止した保護壁を起点とする更なるクラックの発生を抑制することができる。
【0055】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、第1の実施形態において多層配線の最上層の金属配線をボンディングパッドとして機能させるようにした実施形態である。
具体的には、図16に示すように、多層配線の最上層にある金属配線111qは、他の金属配線111c,111g,111kと比較して面積が広くなっており、平面視したときにパッド形状に形成されている。また、金属配線111qの上面に形成されている反射防止膜111rは、端部を残してエッチングで除去されている。さらに、その上方に位置するパッシベーション膜P1,P2がエッチングで除去されており、開口部111sが設けられている。
これにより、第2の実施形態では、多層配線の最上層の金属配線をボンディングパッドとして用いることができる。
【0056】
また、開口部111sの側壁には、反射防止膜111rが開口部111sから露出しないように、絶縁膜111tが形成されている。
これにより、第2の実施形態では、反射防止膜111rに含まれる窒化チタンが酸化により体積が膨張しないようにすることができ、パッシベーション膜Pのクラックの発生を抑制することができる。
【0057】
次に、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。
第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法は、第1の実施形態での工程に加え、開口部形成工程を含む。
【0058】
<開口部形成工程>
図17は、多層配線の最上層には他の金属配線111c,111g,111kと比較して面積が広い金属配線111qが形成されており、また最上面にはパッシベーション膜P1,P2が形成されている状態を示す。
この状態から、金属配線111qの上方に形成されている反射防止膜111r、パッシベーション膜P1,P2をエッチングで除去して開口部111sを形成する(図18参照)。
【0059】
次に、開口部111sの側壁に、反射防止膜111rが開口部111sから露出しないように、絶縁膜111tを形成する(図16参照)。
【0060】
このように、第2の実施形態では、開口部111sを形成して多層配線111の最上層の金属配線111qをボンディングパッドとして用いる場合には、金属配線111qの上面の反射防止膜111rが開口部111sから露出しないように開口部111sの側壁に絶縁膜111tを形成する。
これにより、反射防止膜111rに含まれる窒化チタンが酸化により体積が膨張しないようにすることができ、パッシベーション膜P1,P2のクラックの発生を抑制することができる。
【0061】
なお、本実施形態では、開口部111sを形成する際に反射防止膜111rの端部を残して除去したが、これに限ることなく、窒化チタンが膨張してその周辺にクラックを発生させない観点から、金属配線111qの上面全域の反射防止膜111rを除去してもよい。
また、本実施形態では、開口部111sの側壁に絶縁膜111tを形成したが、端部に残った反射防止膜111rの窒化チタンが膨張してもその周辺にクラックが発生しない程度であれば、絶縁膜111tを形成しなくともよい。
【0062】
以上説明したように、本発明の一実施形態に係る半導体装置は、半導体基板上に、複数の回路素子が形成されている素子形成領域と、平面視において素子形成領域の周囲に1以上の保護壁が形成されている保護壁形成領域と、を有し、素子形成領域において、複数の回路素子と電気的にそれぞれ接続する多層配線の最上層の上面に高融点金属膜が形成されており、保護壁形成領域において、1以上の保護壁が多層配線構造を有し、1以上の保護壁の最上層のうち最外縁に位置する保護壁の最上層以外の上面に高融点金属膜が形成されており、素子形成領域及び保護壁形成領域における最上面にパッシベーション膜が形成され、最外縁に位置する保護壁の最上層の上面全域とパッシベーション膜とが接している。
これにより、本発明の一実施形態に係る半導体装置は、クラックの伝播を阻止するとともに、更なるクラックの発生を抑制することができる。
【0063】
なお、各実施形態においては、保護壁の深さを多層配線の深さと同等としたが、素子形成領域のほうに進行するクラックの伝播を阻止でき、かつ水分やガスの浸入を抑制できれば、これに限ることはない。
また、金属配線の材料をAl-Cuとしたが、これに限ることなく、例えば、アルミニウム、Al-Si-Cu等の他のアルミニウム合金などとしてもよい。
さらに、各膜の厚さとしては、特に制限はなく、それぞれ目的に応じて適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0064】
100 半導体装置
110 素子形成領域
111 多層配線
111a,111e,111i,111m バリアメタル膜
111b,111f,111j,111n プラグ
111c,111g,111k,111o,111q 金属配線
111d,111h,111l,111p,111r 反射防止膜(高融点金属膜)
111s 開口部
111t 絶縁膜
120 保護壁形成領域
121 第1の保護壁
121a,121e,121i,121m バリアメタル膜
121b,121f,121j,121n 溝状プラグ
121c,121g,121k,121o 金属配線
121d,121h,121l,121p 反射防止膜(高融点金属膜)
122 第2の保護壁(最外縁に位置する保護壁)
122a,122e,122i,122m バリアメタル膜
122b,122f,122j,122n 溝状プラグ
122c,122g,122k,122o 金属配線
122d,122h,122l 反射防止膜(高融点金属膜)
W 半導体ウエハ(半導体基板)
L1,L2,L3,L4 層間絶縁膜
P1,P2 パッシベーション膜
S スクライブ領域
Tr トランジスタ(回路素子の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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