IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ディーエル ケミカル カンパニー リミテッドの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】高反応性ポリブテンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 10/10 20060101AFI20231106BHJP
   C08F 4/06 20060101ALI20231106BHJP
   C08F 4/14 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
C08F10/10
C08F4/06
C08F4/14
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020077141
(22)【出願日】2020-04-24
(65)【公開番号】P2020180285
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-04-06
(31)【優先権主張番号】10-2019-0047951
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521319568
【氏名又は名称】ディーエル ケミカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】キム ミョンソク
(72)【発明者】
【氏名】パク ミンスプ
(72)【発明者】
【氏名】イ セヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イ ジンウク
(72)【発明者】
【氏名】イ ジェフン
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0234542(US,A1)
【文献】特表2003-511526(JP,A)
【文献】特表2016-530251(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0176994(US,A1)
【文献】特開2000-239319(JP,A)
【文献】米国特許第06476284(US,B1)
【文献】特開2001-131096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソブテン含量が50~75重量%である炭素数4の化合物原料を得る工程、並びに、前記炭素数4の化合物原料を重合反応させる工程を含む、ポリブテンの製造方法であって
前記炭素数4の化合物原料は、(a)ナフサの分解過程で派生する炭素数4の化合物から1,3-ブタジエンを抽出し、抽出後の残りのC4残渣油-1に、エチレンと2-ブテンを複分解してプロピレンを作るOCU(olefin conversion unit)工程で発生したイソブテン含量が80~97重量%である高含量イソブテン混合物を添加して、イソブテン含量が50~75重量%となるように調節した炭素数4の化合物原料を調製する方法(b)原油の精製過程で派生するC4混合物であるブタン-ブテン留分(B-B留分)に、エチレンと2-ブテンを複分解してプロピレンを作るOCU工程で発生したイソブテン含量が80~97重量%である高含量イソブテン混合物を添加して、イソブテン含量が50~75重量%となるように調節した炭素数4の化合物原料を調製する方法(c)エチレンと2-ブテンを複分解してプロピレンを作るOCU工程で発生したイソブテン含量が80~97重量%である高含量イソブテン混合物に希釈溶媒を添加して、イソブテン含量が50~75重量%となるように調節した炭素数4の化合物原料を調製する方法及び(d)イソブタンをイソブテンへ変換する脱水素化反応で発生した混合原料に、エチレンと2-ブテンを複分解してプロピレンを作るOCU工程で発生したイソブテン含量が80~97重量%である高含量イソブテン混合物を添加して、イソブテン含量が50~75重量%となるように調節した炭素数4の化合物原料を調製する方法からなる群から選ばれる方法により最初に調製され
前記ポリブテンは、全体二重結合に対して、アルファビニリデン含量が80%以上であり、アルファビニリデン含量とベータビニリデン含量との合計である全体ビニリデン含量が92%以上である、ポリブテンの製造方法。
【請求項2】
エチレンと2-ブテンを複分解してプロピレンを作るOCU(olefin conversion unit)工程で発生したイソブテン含量が80~97重量%である高含量イソブテン混合物に希釈溶媒を添加して、前記炭素数4の化合物原料を得、
前記希釈溶媒は、n-ブタン、iso-ブタン、ブタン混合物、ブタン-ブテン混合物、n-ペンタン、ペンタン混合物、n-ヘキサン、及びヘキサン混合物からなる群より選ばれる、請求項1に記載のポリブテンの製造方法。
【請求項3】
前記重合反応は、三塩化ホウ素、三塩化アルミニウム、塩化亜鉛、及び三フッ化ホウ素からなる群より選ばれる主触媒と、アルコールの助触媒とで形成される錯体触媒の存在下で行われ、前記錯体触媒を構成する助触媒/主触媒のモル比が1~2である、請求項1に記載のポリブテンの製造方法。
【請求項4】
前記主触媒は、三フッ化ホウ素であり、前記三フッ化ホウ素の使用量は、炭素数4の化合物原料100重量部に対して0.02~1重量部である、請求項に記載のポリブテンの製造方法。
【請求項5】
前記助触媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、及びイソブタノールからなる群より選ばれる、請求項に記載のポリブテンの製造方法。
【請求項6】
前記重合反応は、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルブチルエーテル、メチルプロピルエーテル、メチルイソプロピルエーテル、メチルイソブチルエーテル、メチルブチルエーテル、イソプロピルsec-ブチルエーテル、sec-ブチルエーテル、イソアミルエーテル、イソプロピルイソアミルエーテル、及びsec-ブチルイソアミルエーテルからなる群より選ばれる補助助触媒の存在下で行われる、請求項3に記載のポリブテンの製造方法。
【請求項7】
前記重合反応は、-40~20℃の温度、3kg/cm以上の圧力を維持する条件で、5~120分間行われる、請求項1に記載のポリブテンの製造方法。
【請求項8】
前記炭素数4の化合物原料は、イソブテン50~75重量%、及びイソブテン以外の炭素数4の炭化水素化合物25~50重量%を含む、請求項1に記載のポリブテンの製造方法。
【請求項9】
前記炭素数4の化合物原料のイソブテン含量は、50~70重量%である、請求項1に記載のポリブテンの製造方法。
【請求項10】
前記炭素数4の化合物原料に含まれたイソブテンのポリブテンへの転換率は、80%以上である、請求項1に記載のポリブテンの製造方法。
【請求項11】
前記ポリブテンは、全体二重結合に対して、アルファビニリデン含量が85%以上であり、アルファビニリデン含量とベータビニリデン含量との合計である全体ビニリデン含量が93%以上である、請求項1に記載のポリブテンの製造方法。
【請求項12】
前記ポリブテンは、全体二重結合に対して、アルファビニリデン及びベータビニリデンを除いた内部二重結合の含量が3~8%である、請求項1に記載のポリブテンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高反応性ポリブテンの製造方法に係り、さらに詳しくは、全体二重結合に対して、アルファ(α)ビニリデン及びベータ(β)ビニリデンの合計含量が92%以上である高反応性ポリブテンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は2019年4月24日出願された韓国特許出願10-2019-0047951に対して優先権を主張し、前記出願の全ての内容は本明細書に含まれる。
ポリブテンは一般にナフサの分解過程で派生する炭素数4(C4)のオレフィン成分をフリーデル‐クラフツ形触媒(Friedel-Craft type catalyst)を用いて重合したものであって、数平均分子量(Mn)は約300ないし5,000である。ナフサの分解過程で派生されるC4原料中1,3-ブタジエンを抽出して残ったものをC4残渣油-1(C4 raffinate-1)と言う。C4残渣油-1にはイソブタン(isobutane)、ノルマルブタン(normalbutane)のパラフィン類と1-ブテン(1-butene)、2-ブテン(2-butene)、イソブテン(isobutene)などのオレフィンが含まれており、イソブテンの含量はほぼ30ないし50重量%である。C4残渣油-1はオクタン価向上剤であるメチル-t-ブチルエーテル(methyl-t-butyl ether:MTBE)またはポリブテンの製造へ主に用いられる。ポリブテンは主にC4残渣油-1のオレフィン成分のうち反応性が最も高いイソブテン単位から成る。また、ポリブテンは原油の精製過程で派生するC4混合物であるブタン-ブテン留分(B-B留分)や高純度イソブテンから製造されたりもする。
【0003】
ポリブテンは分子量の増加により粘度が高くなるが、100℃でほぼ4ないし40,000cSt(centi-stocks)の粘度を有する。ポリブテンは300℃以上の温度で残留物を残さずに熱分解され、側鎖アルキル構造から成り潤滑油や燃料に対する溶解性が大きいので、エンジンオイルに添加されて耐摩耗剤(anti-scuff agent)または粘度指数改善剤(viscosity index improver)に使用されたり、自動車など内燃機関の燃料に混合して清浄剤に使用されたりもある。
【0004】
従前にはポリブテンが粘着剤、接着剤、絶縁油などの製造に主に用いられたので反応性が高い製品が選好されなかったが、最近はポリブテンに極性基を導入して燃料清浄剤や潤滑油添加剤として用しながら反応性が高いポリブテンの需要が増加している。したがって、反応性を用して極性基の導入が可能な高反応性ポリブテンは燃料清浄剤や潤滑油添加剤の製造に主に用いられている。極性基を導入して得られる製品の例としては、高反応性ポリブテン末端の二重結合と無水マレイン酸の反応で製造されるポリイソブテニル無水コハク酸(Polyisobutenyl Succinic Anhydride、PIBSA)がある。ポリイソブテニル無水コハク酸(PIBSA)は大部分の潤滑油添加剤や燃料清浄剤の製造で中間体に用いられる。PIBSAの製造に用いられるポリブテンの二重結合がポリブテンの末端に位置する場合、高い収率でPIBSAが得られるが、二重結合がポリブテンの内部に位置し、特に二重結合に置換されているアルキル基の数が多いほど立体的障害による反応性が低いのでPIBSAの収率が減少する。
【0005】
ポリブテンの末端に二重結合が生成されながら高分子重合が終結されるのは一般的な化学反応理論に反する化合物の生成を意味する。このように生成されにくい高反応性ポリブテンを製造するために、触媒と助触媒を混合した錯体触媒を改善する方法が 一般的に使用された。高反応性ポリブテンが使用される前には一般ポリブテン、即ち、非反応性ポリブテンでPIBSAを製造したけど、非反応性ポリブテンの反応性を高めるために、塩素気体を利用した塩素化反応(chlorination reaction)でポリブテンを塩素化した後、無水マレイン酸と反応させPIBSAを製造する方法が使用された。しかしこの場合には、反応器の腐食防止のため多くの費用が所要されるだけではなく、未反応塩素気体を中和するために多量の塩基性溶液を使用しなければならないので経済的、環境的に望ましくない。さらに、塩素含量が増加したPIBSAを燃料添加剤んどで使用すれば、自動車エンジンなど内燃機関が腐食される恐れがあり、塩素が排気ガスで排出される問題が発生することがある。したがって、潤滑油添加剤及び燃料清浄剤の製造には高反応性ポリブテンの使用が増加している。
【0006】
ポリブテンは末端ビニリデンの含量が高いほど反応性が高くなる。高反応性ポリブテンと無水マレイン酸がほぼ230℃でEne反応(または、Alder-Ene反応)するとPIBSAが生成され、生成されたPIBSAとアルキルアミンを反応させると、ポリイソブテニルコハク酸イミド(Polyisobutenyl Succinic Imide、PIBSI)が生成される。生成されたPIBSIと高沸点希釈剤を混合すれば燃料清浄剤及び潤滑油添加剤を得られる。PIBSAの収率は高反応性ポリブテンの末端ビニリデン含量により異なることであって、末端ビニリデンの含量が高いほどPIBSAの収率及び品質が向上される。PIBSAの収率が増加したらPIBSIの収率も増加するので、清浄剤としての役割をする有効成分の含量が増加する。このように潤滑油添加剤や燃料清浄剤の製造にあって、非反応性ポリブテンの代わりに高反応性ポリブテンを使用することで、反応段階を減少させて、毒性塩素ガス(Cl2 gas)の使用を抑制できる。したがって、末端ビニリデンを70%以上、さらに好ましくは85%以上含み、装置の腐食を誘発する塩素は含まない高反応性ポリブテンの製造に関する研究が活発に行われている。
【0007】
高反応性ポリブテンを製造するためのフリーデル‐クラフツ形触媒では通常的に三フッ化ホウ素(BF3)が使用される。三フッ化ホウ素を使用すれば、他のルイス酸触媒に比べて 相対的にビニリデン含量の高い高反応性ポリブテンを得られる。米国特許4,605,808号、5,068,490号、5,191,044号、5,408,018号、5,962,604号及び6,300,444号によれば、三フッ化ホウ素や三フッ化ホウ素の錯化合物を、水、エーテル、アルコールなどの助触媒とともに使用すると、末端ビニリデン70%以上、好ましくは80%以上 含有する 高反応性ポリブテンを製造できる。米国特許5,068,490号は、少なくとも一つの 3級アルキル基を持つエーテル及び三フッ化ホウ素の錯体を触媒として、ビニリデンの含量が80%以上であるポリブテンの製造方法を開示しており、この方法は触媒とポリブテンを長時間接触させても異性化反応が少ない長所がある。前記文献によると、2級アルキル基及び3級アルキル基を同時に持つイソプロピルt-ブチルエーテルを使用する場合、最も優れた結果を示しているが、前記エーテル化合物が高価であり、市販されないので自家製造して使用しなければならない難しさがある。米国特許5,408,018号及び5,962,604号は、2級アルコールと三フッ化ホウ素の錯体触媒を使用して、ビニリデン含量が80%以上であり、分子量分布度が狭いポリブテンの製造方法を開示している。しかし、前記文献に開示された方法は-10℃以下の温度で短時間の間接触を維持しなければならないなど反応条件の制約が多く、ビニリデンの含量を高めるために高純度のイソブテン原料を使用しなければならないという短所がある。米国特許6,300,444号は、一定のモル比の触媒(三フッ化ホウ素)と助触媒(エーテル、アルコールおよび/または水)を利用してポリブテンを製造することにあって、触媒及び助触媒の錯体をまず形成せずに、触媒、助触媒及び反応原料をを共に反応器に投入して高反応性ポリブテンを製造した後、真空ポンプを使って生成物内のフッ素含量を低くすることを開示する。前記文献に開示された方法は安定な触媒及び助触媒の錯体を形成しないので、ビニリデン含量が高い高反応性ポリブテンを得にくく、真空ポンプの使用に多くの費用が所要される短所がある。一方、米国特許7,037,999号にはアルファビニリデン含量が20ないし70%で維持される中間範囲ビニリデン含量(mid-range vinylidene content)のポリブテン組成物にあって、アルファ(末端)ビニリデン及びベータビニリデンの総含量が少なくとも90%であるポリブテン組成物が開示されている。このように、従来のポリブテン製造にあっては、錯体触媒形成のための助触媒組合を変更してビニリデン含量を調節したり、ビニリデン含量を増加させながら、分子量分布を狭くしたり、フッ素含量を減少させる多様な変形が行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、全体二重結合に対して、アルファ(末端)ビニリデン含量が80%以上であり、アルファビニリデン及びベータビニリデンの合計含量が92%以上となるようにポリブテンを製造する方法を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、原料であるイソブテンがポリブテンなどで重合される転換率を低下させることなく、アルファビニリデン及びベータビニリデンの含量を増加させて、反応性を向上させたポリブテンの製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明のまた他の目的は、反応性が高くて、極性基または作用基の導入が容易であり、ポリイソブテニル無水コハク酸(Polyisobutenyl Succinic Anhydride、PIBSA)などのポリブテン誘導体が、高い収率で得られるポリブテンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、イソブテン含量が50~75重量%である炭素数4の化合物原料を重合反応させて、ポリブテンを重合するポリブテンの製造方法を提供する。ここで、前記炭素数4の化合物原料は、(a)ナフサの分解過程で派生する炭素数4の化合物から1,3-ブタジエンを抽出し、抽出後の残りのC4残渣油-1にイソブテン含量が90~100重量%である高純度イソブテンを添加して、イソブテン含量が50~75重量%となるように調節した炭素数4の化合物原料、(b)ナフサの分解過程で派生する炭素数4の化合物から1,3-ブタジエンを抽出し、抽出後の残りのC4残渣油-1に、エチレンと2-ブテンを複分解してプロピレンを作るOCU(olefin conversion unit)工程で発生したイソブテン含量が80~97重量%である高含量イソブテン混合物を添加して、イソブテン含量が50~75重量%となるように調節した炭素数4の化合物原料、(c)原油の精製過程で派生するC4混合物であるブタン-ブテン留分(B-B留分)に、イソブテン含量が90~100重量%である高純度イソブテンを添加して、イソブテン含量が50~75重量%となるように調節した炭素数4の化合物原料、(d)原油の精製過程で派生するC4混合物であるブタン-ブテン留分(B-B留分)に、エチレンと2-ブテンを複分解してプロピレンを作るOCU工程で発生したイソブテン含量が80~97重量%である高含量イソブテン混合物を添加して、イソブテン含量が50~75重量%となるように調節した炭素数4の化合物原料、(e)イソブテン含量が90~100重量%である高純度イソブテンに希釈溶媒を添加して、イソブテン含量が50~75重量%となるように調節した炭素数4の化合物原料、(f)エチレンと2-ブテンを複分解してプロピレンを作るOCU工程で発生したイソブテン含量が80~97重量%である高含量イソブテン混合物に希釈溶媒を添加して、イソブテン含量が50~75重量%となるように調節した炭素数4の化合物原料、(g)イソブタンをイソブテンへ変換する脱水素化反応で発生した混合原料に、イソブテン含量が90~100重量%である高純度イソブテンを添加して、イソブテン含量が50~75重量%となるように調節した炭素数4の化合物原料、及び(h)イソブタンをイソブテンへ変換する脱水素化反応で発生した混合原料に、エチレンと2-ブテンを複分解してプロピレンを作るOCU工程で発生したイソブテン含量が80~97重量%である高含量イソブテン混合物を添加して、イソブテン含量が50~75重量%となるように調節した炭素数4の化合物原料からなる群より選ばれる。また、前記ポリブテンは、全体二重結合に対して、アルファビニリデン含量が80%以上であり、アルファビニリデン含量とベータビニリデン含量との合計である全体ビニリデン含量が92%以上である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る高反応性ポリブテンの製造方法によれば、原料であるイソブテンがポリブテンなどで重合される転換率を低下させることなく、アルファビニリデンとベータビニリデンの含量を増加させ、全体二重結合に対して、アルファビニリデン含量が80%以上であり、アルファビニリデンとベータビニリデンの合計含量が92%以上となるようにポリブテンを製造することにより、ポリブテンの反応性を向上させることができる。本発明により製造されたポリブテンは、反応性が高くて、極性基または作用基の導入が容易であり、ポリイソブテニル無水コハク酸(PIBSA)などのポリブテン誘導体が、高い収率で得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0014】
本発明は、原料であるイソブテンを重合してポリブテンを製造するにあたって、生成されたポリブテンに含まれたアルファビニリデン(末端ビニリデン)だけでなく、ベータビニリデンも、ポリブテンの反応性の向上に重要な役割を行うことを見い出し、石油の精製過程で容易に得られる炭素数4の化合物原料(C4原料)を組み合わせて、原料中のイソブテン含量を調節することにより、イソブテンがポリブテンなどで重合される転換率を低下させることなく、ポリブテンのアルファビニリデン及びベータビニリデンの含量を増加させて、反応性を向上させたものである。
【0015】
本発明に係るポリブテンの製造方法では、石油の精製過程で、通常に得られる炭素数4の化合物原料(C4原料)を適正な割合で混合して、イソブテン含量が50~75重量%、好ましくは50~70重量%、例えば、55~60重量%である炭素数4の化合物原料を、ポリブテンの重合原料として使用する。前記炭素数4の化合物原料は、イソブテン以外の残りの成分として、イソブタン、n-ブタン、1-ブテン、2-ブテンなどの炭素数4の炭化水素化合物の25~50重量%、好ましくは30~50重量%を含んでもよい。ここで、前記炭素数4の化合物原料のイソブテン含量が50重量%未満であれば、アルファビニリデン及びベータビニリデンの含量が減少し、またはイソブテンの転換率が減少する恐れがあり、75重量%を超過すれば、反応物の粘度が上昇し過ぎ、温度調節及び反応物制御が困難であるという問題がある。本発明に用いられる反応原料において、イソブテン含量が50重量%未満であっても、反応後、反応原料に残留するイソブテン含量が高いように、すなわち、イソブテンがポリブテンなどで重合される転換率を低くすれば、ポリブテンのアルファビニリデン及びベータビニリデンの含量を同時に増加させることができる。しかし、イソブテンの転換率が低ければ、ポリブテンの生産効率が低下し、製造費用が上昇する。一方、本発明に用いられる反応原料は、製造されるポリブテンのアルファビニリデン及びベータビニリデンの含量を同時に増加させながら、反応原料に含まれたイソブテンの転換率、すなわち、重合反応への参与率を80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、例えば、85~95%に維持させ、重合効率を向上させることができる。
【0016】
本発明に用いられる炭素数4の化合物原料は、(a)ナフサの分解過程で派生する炭素数4(C4)の化合物から1,3-ブタジエンを抽出し、抽出後の残りのC4残渣油-1(C4-raffinate-1)に、イソブテン含量が90~100重量%である高純度イソブテン(Pure IB、残りの0~10重量%は、例えば、イソブタン、ノルマルブタン、1-ブテン、2-ブテンである。)を添加して、イソブテン含量が50~75重量%となるように調節した炭素数4の化合物原料、(b)ナフサの分解過程で派生する炭素数4(C4)の化合物から1,3-ブタジエンを抽出し、抽出後の残りのC4残渣油-1に、エチレンと2-ブテンを複分解してプロピレンを作るOCU工程で発生したイソブテン含量が80~97重量%である高含量イソブテン混合物(OCU IB、残りの3~20重量%は、例えば、イソブタン、n-ブタン、1-ブテン、2-ブテンである。)を添加して、イソブテン含量が50~75重量%となるように調節した炭素数4の化合物原料、(c)原油の精製過程で派生するC4混合物であるブタン-ブテン留分(B-B留分)に、イソブテン含量が90~100重量%である高純度イソブテン(Pure IB)を添加して、イソブテン含量が50~75重量%となるように調節した炭素数4の化合物原料、(d)原油の精製過程で派生するC4混合物であるブタン-ブテン留分(B-B留分)に、エチレンと2-ブテンを複分解してプロピレンを作るOCU工程で発生したイソブテン含量が80~97重量%である高含量イソブテン混合物(OCU IB)を添加して、イソブテン含量が50~75重量%となるように調節した炭素数4の化合物原料、(e)イソブテン含量が90~100重量%である高純度イソブテンに希釈溶媒を添加して、イソブテン含量が50~75重量%となるように調節した炭素数4の化合物原料、(f)エチレンと2-ブテンを複分解してプロピレンを作るOCU工程で発生したイソブテン含量が80~97重量%である高含量イソブテン混合物(OCU IB)に希釈溶媒を添加して、イソブテン含量が50~75重量%となるように調節した炭素数4の化合物原料、(g)イソブタンをイソブテンへ変換する脱水素化反応(оleflexプロセス)で発生した混合原料に、イソブテン含量が90~100重量%である高純度イソブテン(Pure IB)を添加して、イソブテン含量が50~75重量%となるように調節した炭素数4の化合物原料、または(h)イソブタンをイソブテンへ変換する脱水素化反応(оleflexプロセス)で発生した混合原料に、エチレンと2-ブテンを複分解してプロピレンを作るOCU工程で発生したイソブテン含量が80~97重量%である高含量イソブテン混合物(OCU IB)を添加して、イソブテン含量が50~75重量%となるように調節した炭素数4の化合物原料であってもよい。
【0017】
本発明で使用される炭素数4の化合物原料の製造に用いられる希釈溶媒としては、炭素数3~8、好ましくは炭素数4~6のアルカン化合物を用いてもよい。前記希釈溶媒の具体例としては、n-ブタン、iso-ブタン、ブタン混合物、ブタン-ブテン混合物(未反応のC4混合物)、n-ペンタン、ペンタン混合物、n-ヘキサン、ヘキサン混合物などが挙げられ、未反応イソブテンのリサイクル工程などを考慮すれば、ブタン類またはブタン混合物を用いることが好ましい。
【0018】
本発明に係るポリブテンの製造方法に用いられる炭素数4の化合物原料(C4原料)の重合触媒(主触媒、main catalyst)としては、通常のフリーデルクラフツ型触媒である三塩化ホウ素、三塩化アルミニウム、塩化亜鉛などのルイス酸触媒が用いられるが、末端ビニリデンを効果的に生成し、商業的使用が可能な三フッ化ホウ素(BF)を用いることが好ましい。前記三フッ化ホウ素の使用量は、イソブテンなどの炭素数4の化合物原料100重量部に対して0.02~1重量部である。
【0019】
前記三フッ化ホウ素(BF)などが主触媒として用いられるとき、主触媒と一緒に錯体(complex)を形成するアルコール類の助触媒(cocatalyst)が必須に一緒に用いられ、エーテル類の補助助触媒がさらに用いられてもよい。助触媒は、反応開始(initiation)のための陽子(H)供与体として作用し、炭素数1~4のアルコール化合物を使用可能である。前記アルコール化合物としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール(イソプロパノール)、ブタノール、及びイソブタノールなどが挙げられる。前記補助助触媒は、助触媒によって生成された陽子を安定化し、前記錯体触媒の反応性(reactivity)を調節し、立体障害(steric hindrance)を付与してビニリデンの形成を補助する。前記補助助触媒としては、炭素数2~10のエーテル化合物が用いられ、例えば、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルブチルエーテル、メチルプロピルエーテル、メチルイソプロピルエーテル、メチルイソブチルエーテル、メチルブチルエーテル、イソプロピルsec-ブチルエーテル、sec-ブチルエーテル、イソアミルエーテル、イソプロピルイソアミルエーテル、及びsec-ブチルイソアミルエーテルなどが用いられ、好ましくはジイソプロピルエーテルが用いられ得る。
【0020】
前記錯体触媒を構成する助触媒/主触媒のモル比は、1~2、好ましくは1~1.7、さらに好ましくは1~1.4である。前記助触媒/主触媒のモル比が1未満の場合、触媒の活性が高すぎて生成された錯体触媒が変質する恐れがあり、2を超過する場合は、触媒の活性が低すぎて生産効率が低下する恐れがある。補助助触媒は、陽イオン重合反応がイソブテンが主となるように反応強さを調節し、触媒に立体障害を付与して、ビニリデン含量を増加させる。補助助触媒は、状況に応じて、選択的に使用されてもよく、助触媒/主触媒の錯体触媒に含まれても、反応原料に直ちに注入されてもよい。補助助触媒の使用量は、主触媒に対して0~1の低いモル比が好ましい。例えば、(助触媒及び補助助触媒)/主触媒のモル比は、1.1~3、好ましくは1.1~2.5、さらに好ましくは1.2~2である。前記(助触媒及び補助助触媒)/主触媒のモル比が1.1未満であれば、触媒の活性が高すぎて生成されたポリブテンの品質が低下する(ビニリデン含量が低い)恐れがあり、3を超過すれば、触媒の活性が低すぎて生産効率が低下する恐れがある。前記補助助触媒は、製造されるポリブテンの粘度及び分子量によりその添加量が変わることがある。高粘度及び高分子量を有するポリブテンを製造する場合、相対的に少量の補助助触媒を使用し、底粘度及び低分子量を有するポリブテンを製造する場合は、相対的に多量の補助助触媒を使用しなければならない。前記錯体触媒の製造にあたって、助触媒及び主触媒が混合される温度は、例えば、-20~-5℃、好ましくは-15~-7℃、さらに好ましくは-12~-9℃である。前記主触媒と助触媒の混合は、例えば、2~6時間、好ましくは3~5時間、さらに好ましくは3.5~4.5時間の間に行われる。
【0021】
前記錯体触媒と反応原料が反応器で接触し、重合が開始されると、連鎖反応が起こり、最後に終了反応でポリブテンが製造される。ここで、重合反応は、助触媒/主触媒錯体触媒の陽子(H)と反応原料のモノマー(monomer)とが結合して、下記反応式1のように開始される。
【0022】
[反応式1]
【0023】
前記反応式1に示したように、錯体触媒の陽子に補助助触媒が配位(coordination)されて錯体触媒の反応強さが調節される。また、錯体触媒に立体障害を付与した状態で、前記陽子が反応原料のモノマーにプロトン付加(protonation)されることによって、反応が開始される。すなわち、助触媒/主触媒錯体触媒が補助助触媒及び反応原料の混合物と反応する過程は、下記反応式2のように進行される。
【0024】
[反応式2]
【0025】
前記反応式2に示したように、錯体触媒で生成された陽子が反応原料のモノマーにプロトン付加されることによって重合反応が開始され、次いで補助助触媒が、開始された陽イオン(反応原料に陽子が結合することによって帯びる陽イオン)に配位されて反応強さの調節及び立体障害を付与することになる。すなわち、補助助触媒は、錯体触媒の反応性を調節して、生成されるポリブテンの分子量を調節し、陽イオンに立体障害を連続的に付与することによって反応原料が主となるように誘導して、反応終了の際にビニリデンが多量に含まれるようにする。
【0026】
前記ポリブテンの重合反応は、通常の反応条件で行われ、例えば、反応原料が液体状態を維持できるように-40~20℃、好ましくは-35~10℃、さらに好ましくは-30~5℃の温度と、通常2.5kg/cm以上、好ましくは3.0~10kg/cmの圧力を維持する条件で、5~120分、好ましくは10~90分の間に行われる。
【0027】
本発明は、反応原料中のイソブテン含量が50~75重量%となるように調節し、前記助触媒/主触媒で構成される錯体触媒を用いて、全体二重結合に対して、アルファビニリデン含量が80%以上、好ましくは85%以上であり、アルファビニリデン含量とベータビニリデン含量との合計である全体ビニリデン(total vinylidenc)含量が92%以上、好ましくは93%以上であり、数平均分子量(Mn)が300~5,000である液状ポリマー型高反応性ポリブテンを製造する。本発明により製造されるポリブテンは、一つの分子当たり、一つの二重結合を有し、前記二重結合がポリブテンの末端に位置する場合、アルファビニリデンを有するポリブテンといい(本明細書において、単に「アルファビニリデン」ということがある。)、前記二重結合がポリブテンの末端から二番目の炭素に位置する場合、ベータビニリデンを有するポリブテンという(本明細書において、単に「ベータビニリデン」ということがある。)。したがって、本明細書において、アルファビニリデン含量が80%以上であるというのは、全体のポリブテンのうち、アルファビニリデンを有するポリブテンの含量が80%(単位:個またはモル)以上であることを意味する。また、本発明により製造されるポリブテンにおいて、前記二重結合がポリブテンの末端から三番目以上の炭素に位置する場合、内部二重結合を有するポリブテンという。本発明において、このような内部二重結合を有するポリブテンの含量は、3~8%、好ましくは5~7%である。
【0028】
本発明により製造されるポリブテンにおいて、アルファビニリデン含量、ベータビニリデン含量、及びこれらの合計である全体ビニリデン含量とポリブテンの反応性との関係は、ポリブテンと無水マレイン酸(MA:maleic anhydride)を反応させて、ポリイソブテニル無水コハク酸(PIBSA)を製造する反応から確認される。本発明者の研究によれば、PIBSAの収率は、用いられるポリブテンの分子量、無水マレイン酸の使用量、反応温度などにより変わり、用いられるポリブテンの数平均分子量が1000であり、ポリブテンと無水マレイン酸との反応温度が230℃であり、無水マレイン酸の使用量が、それぞれ1.1当量または1.3当量である場合、下記数式1または数式2で計算される。下記数式1の場合は、MAを1.1当量使用したものであり、下記数式2の場合は、MAを1.3当量使用したものである。
【0029】
【数1】
【0030】
【数2】
【0031】
上記した数式1及び数式2に示したように、アルファビニリデン含量が高いほど、PIBSA収率が急に増加するが、ベータビニリデンも反応性があるので、アルファビニリデンとベータビニリデンとの合計である全体ビニリデン含量を高めることが、PIBSA収率の増加に有利である。したがって、アルファビニリデン含量を極大化し、残りのベータビニリデンとの合計である全体ビニリデン含量が92%以上となるようにポリブテンを製造することにより、PIBSA収率を増加させることができる。このように、本発明の高反応性ポリブテンと無水マレイン酸を反応させてPIBSAを製造し、これを用いて潤滑油添加剤を製造すると、有効成分の含量を高めることができる。このように、ポリブテンに極性基または作用基を導入するにあたって、ベータビニリデン及びそれによる全体ビニリデン含量の重要性を言及した先行技術はなかった。
【0032】
連続反応で重合された反応物は、下記のように処理される。先ず、反応器から反応物を排出して、中和及び水洗槽に移送し、中和及び水洗槽において、反応物に、水及び中和剤(例えば、水酸化ナトリウム)からなる重合処理水を添加して、反応物に含まれた触媒成分を中和及び除去する。触媒成分が中和された反応物及び重合処理水は分離槽に排出され、前記分離槽において、水層と有機物層の層分離原理を利用して重合処理水及び触媒を含む水層とポリブテンなどを含む有機物層とに分離される。前記有機物層は、C4蒸留塔に移送され、前記触媒成分を含む水層(または廃水(waste water))は、別途のラインから排出される。前記C4蒸留塔は、前記分離槽から供給された有機物のうち、未反応のC-4を蒸留させて排出し、排出された未反応のC-4は、必要に応じて、回収されてリサイクルされ得る。前記C4蒸留塔で未反応のC-4を排出し残った残余の有機物はLP(light polymer)蒸留塔に移送される。前記LP蒸留塔は、C4蒸留塔から供給された残余の有機物のうち目的とするポリブテンの分子量よりも小さな分子量を有するLPを蒸留させて排出し、LPが除去された高反応性ポリブテンは、LP蒸留塔から排出されて製品タンクに貯蔵される。
【0033】
以下、具体的な実施例を通して本発明をさらに詳しく説明する。下記の実施例は本発明を例示するためのものであって、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
【0034】
[実施例1~6、比較例1~7]数平均分子量1000のポリブテンの合成
下記表1に示す化合物または組成物(a)乃至(g)を単独または混合して製造した炭素数4の化合物原料と、下記表2に示す錯体触媒(1)または(2)を反応器に供給し(IPE:Diisopropylether)、炭素数4の化合物原料を重合した。比較のために、重合されたポリブテンの数平均分子量がほぼ1000となるようにした。原料を液状に維持できるように反応温度を-23~-15℃、反応器圧力を3kg/cm以上に維持し、平均滞留時間は45分となるようにし、イソブテン100重量部に対して0.1~0.5重量部の触媒を注入した。180分が経過した後、反応器から反応物を排出させ、5重量%の苛性ソーダ溶液と混合した後、中和および水洗槽で触媒を除去した。次いで、反応物を分離槽に移送して触媒を含む廃水を排出および除去し、残余の反応物(有機物層)は、C4蒸留塔に投入した。C4蒸留塔で有機物層を100℃に加熱してC-4成分を排出及び回収し、残りの反応物はLP蒸留塔に移送させる。LP蒸留塔に移送された反応物は230℃、25torr条件で滞留時間30分間加熱して反応物中のLPを排出及び回収し、残余の反応物、すなわち、高反応性ポリブテンは、製品タンクに移送及び貯蔵する。得られた高反応性ポリブテンの分子量をGPC(Gel permeation chromatography)で測定し、C13-NMRを利用してポリブテン内のビニリデンを分析した結果、イソブテン転換率、アルファ及びベータビニリデン含量などをまとめて表3に示す。得られた高反応性ポリブテンと無水マレイン酸(使用量:ポリブテンに対して1.1当量)を230℃で4時間反応させてPIBSAが得られ、カラムクロマトグラフィー(Column Chromatography)でPIBSAの収率を測定し、その結果を表3に一緒に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
上記した表3に示したように、実施例1乃至6の場合、反応原料に含まれるイソブテン含量が50~75重量%となるように調節し、アルファ及びベータビニリデン含量の合計が92%以上である高反応性ポリブテンが得られ、得られた高反応性ポリブテンを無水マレイン酸と反応させて、76.0~78.9%の収率でPIBSAが得られた。これに対して、比較例1乃至7の場合、反応原料中のイソブテン含量が50重量%未満であり、得られたポリブテンのアルファ及びベータビニリデン含量の合計が92重量%未満であった。比較例で得られたポリブテンと無水マレイン酸を同一の条件で反応させ、71.2~74.7%の反応収率でPIBSAが得られた。実施例と比較例のPIBSAの収率を調べると、大きくは7.7%まで差が生じる。すなわち、比較例のように、反応原料中のイソブテン含量を50重量%未満に低く調節すれば、合成されたポリブテンの全体ビニリデン含量が低くなり、無水マレイン酸との反応でPIBSAの収率が低下することが分かる。
【0039】
PIBSA収率が低いというのは、ポリブテンを無水マレイン酸と反応させてPIBSAが得られ、次いで、アミンを反応させてポリイソブテニルコハク酸イミド(Polyisobutenyl Succinic Imide、PIBSI)を製造して、潤滑油添加剤(分散剤)や燃料清浄剤の洗浄剤(detergent)として使用するとき、有効成分の収率が低いことを意味する。したがって、本発明に係る高反応性ポリブテンを使用すると、PIBSAの収率が増加して、製造原価を低くし、作用効率性を向上させる。これは、同一の費用でポリブテンが得られた場合、高反応性ポリブテンの製品価値に優れることを意味する。上記した実施例及び比較例は、数平均分子量が1000であるポリブテン製品について行われたが、数平均分子量が750、1300、2300グレードのポリブテン製品に対しても、同一の傾向の実験結果が得られた。
【0040】
上述のように、本発明によれば、反応原料中のイソブテン含量が50~75重量%となるように調節し、アルファ及びベータビニリデン含量の合計である全体ビニリデン含量が92%である高反応性ポリブテンを製造することができる。このように製造された高反応性ポリブテンと無水マレイン酸を反応させれば、高い収率でPIBSAが得られる。また、本発明によれば、高反応性ポリブテンの製造にあたって、イソブテンの転換率が85%以上に高く、重合効率性が高く、製造原価を低くすることができる。したがって、本発明によれば、高品質の高反応性ポリブテンを高い生産性で製造することができる。