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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】繰出容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 40/06 20060101AFI20231106BHJP
【FI】
A45D40/06 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020112887
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2022011627
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】星野 真弥
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-177409(JP,U)
【文献】韓国公開特許第2001-0010351(KR,A)
【文献】特開2018-183464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 40/00-40/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びて内周面に螺旋溝が形成された外装筒と、
前記外装筒の内側に、前記外装筒に相対回転可能に配設されるとともに、前記外装筒に対する上昇が規制された規制筒と、
前記規制筒の内側に配設され、棒状内容物を保持する保持筒と、
を備え、
前記規制筒には、径方向に貫くとともに前記上下方向に沿って延びる第1案内孔および第2案内孔が形成され、
前記保持筒は、
前記第1案内孔を通して前記螺旋溝に挿入された第1被案内突起が形成された本体筒と、
前記本体筒の内側で前記棒状内容物を支持し、前記第2案内孔を通して前記螺旋溝に挿入された第2被案内突起が形成された支持体と、
を有し、
前記螺旋溝は、
前記第1被案内突起および前記第2被案内突起が進入可能な第1溝部と、
前記第1溝部の上方で前記第1溝部に直列状に連結するとともに、前記第1被案内突起が進入不能、かつ前記第2被案内突起が進入可能な第2溝部と、
を有する、
繰出容器。
【請求項2】
前記本体筒は、前記支持体よりも上方に延びる上側筒部を有する、
請求項1に記載の繰出容器。
【請求項3】
前記本体筒および前記支持体は、破断可能な弱化部を介して一体成形されている、
請求項1または請求項2に記載の繰出容器。
【請求項4】
前記外装筒には、周方向の全長にわたって連続して延びるとともに、前記第1溝部の上端部に交差し、前記第1被案内突起が進入可能な環状溝が形成され、
前記環状溝の内面には、前記第1被案内突起が乗り越え可能な凸部が設けられている、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の繰出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繰出容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるような繰出容器が知られている。この繰出容器は、棒状内容物を保持する保持筒と、保持筒に外装され、径方向に貫く縦孔が形成された規制筒と、規制筒に、保持筒の中心軸線回りに沿う周方向に相対回転可能に外装され、内周面に螺旋溝が形成された外装筒と、外装筒に対する規制筒の上昇移動を規制する係止筒部材と、を備え、保持筒に、縦孔を通して螺旋溝に挿入された被案内突起が形成された繰出容器が知られている。
【0003】
この繰出容器では、外装筒および規制筒を周方向に相対回転することにより、被案内突起が、縦孔の内周面により規制筒に対する周方向の移動が規制された状態で、螺旋溝内を相対移動することで、保持筒が、外装筒および規制筒に対して前記中心軸線に沿う軸方向に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-183464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の繰出容器では、保持筒がその上端開口よりも下方で棒状内容物を支持しているので、棒状内容物の下部が保持筒内に残る。このため、内容物の残量を減らすという点で改善の余地がある。
【0006】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、内容物の残量を減らすことができる繰出容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の繰出容器は、上下方向に延びて内周面に螺旋溝が形成された外装筒と、前記外装筒の内側に、前記外装筒に相対回転可能に配設されるとともに、前記外装筒に対する上昇が規制された規制筒と、前記規制筒の内側に配設され、棒状内容物を保持する保持筒と、を備え、前記規制筒には、径方向に貫くとともに前記上下方向に沿って延びる第1案内孔および第2案内孔が形成され、前記保持筒は、前記第1案内孔を通して前記螺旋溝に挿入された第1被案内突起が形成された本体筒と、前記本体筒の内側で前記棒状内容物を支持し、前記第2案内孔を通して前記螺旋溝に挿入された第2被案内突起が形成された支持体と、を有し、前記螺旋溝は、前記第1被案内突起および前記第2被案内突起が進入可能な第1溝部と、前記第1溝部の上方で前記第1溝部に直列状に連結するとともに、前記第1被案内突起が進入不能、かつ前記第2被案内突起が進入可能な第2溝部と、を有する。
【0008】
本発明によれば、保持筒の本体筒の第1被案内突起が規制筒の第1案内孔を通り、かつ保持筒の支持体の第2被案内突起が規制筒の第2案内孔を通っているので、規制筒に対する保持筒の本体筒および支持体の回転が規制されている。このため、外装筒を規制筒に対して回転させると、第1被案内突起および第2被案内突起は、外装筒の螺旋溝内を移動し、規制筒に対して上昇する。すると、保持筒の本体筒および支持体が規制筒に対して一体的に上昇し、保持筒に保持された棒状内容物が規制筒から上方に繰り出される。規制筒に対する外装筒の回転が進むと、第1被案内突起が螺旋溝の第1溝部の上端部に到達する。ここで、第1被案内突起は螺旋溝の第2溝部に進入不能とされているので、保持筒の本体筒は上昇端位置に達する。一方で、第2被案内突起は第2溝部に進入可能とされているので、第1溝部から第2溝部に移動することができる。このため、保持筒の本体筒が上昇端位置に達した状態で外装筒を規制筒に対してさらに回転させると、第2被案内突起が螺旋溝に案内されて規制筒に対して上昇する。これにより、保持筒の支持体が規制筒および本体筒に対して上昇し、棒状内容物が規制筒から上方に繰り出される。以上により、本体筒に対して支持体を上昇させた分、棒状内容物を繰り出して残量を減らすことができる。
【0009】
上記の繰出容器において、前記本体筒は、前記支持体よりも上方に延びる上側筒部を有していてもよい。
【0010】
本発明によれば、本体筒および支持体が一体的に上昇する際に、棒状内容物を上側筒部によって径方向の外側から保持可能となる。これにより、特に棒状内容物が軟らかい場合に、棒状内容物の折れや崩れなどを抑制することができる。
【0011】
上記の繰出容器において、前記本体筒および前記支持体は、破断可能な弱化部を介して一体成形されていてもよい。
【0012】
本発明によれば、本体筒および支持体を単一の部材とすることできるので、本体筒および支持体を別個に成形する場合と比べて部品点数を削減できる。
【0013】
上記の繰出容器において、前記外装筒には、周方向の全長にわたって連続して延びるとともに、前記第1溝部の上端部に交差し、前記第1被案内突起が進入可能な環状溝が形成され、前記環状溝の内面には、前記第1被案内突起が乗り越え可能な凸部が設けられていてもよい。
【0014】
本発明によれば、第1被案内突起は、第1溝部の上端部に到達した後、保持筒の支持体が本体筒に対して上昇する過程で環状溝を周回する。第1被案内突起が凸部を乗り越える際には、外装筒に対する規制筒および保持筒の回転抵抗が増大する。これにより、外装筒および規制筒に触れる使用者にクリック感を与え、使用者に棒状内容物の残量が少なくなっていることを認識させることができるとともに、棒状内容物の出し過ぎを抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、内容物の残量を減らすことができる繰出容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る繰出容器の縦断面図である。
図2】実施形態に係る保持筒の縦半断面図である。
図3】実施形態に係る螺旋筒の一部を示す縦断面図である。
図4】実施形態に係る繰出容器において、保持筒の本体筒が上昇端位置に位置する状態を示す縦断面図である。
図5】実施形態に係る繰出容器において、保持筒の支持体が上昇端位置に位置する状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る繰出容器1について、図1から図5を参照して説明する。
図1に示すように、繰出容器1は、内部に収容された図示しない棒状内容物を規制筒30から繰り出して使用する。棒状内容物は、例えば化粧料(口紅やリップクリーム、スティックアイシャドー等)、薬剤、または糊等が挙げられる。特に軟らかい材質によって形成された口紅などの化粧料を用いられることが好ましい。
【0018】
繰出容器1は、上下方向に延びる外装筒10と、外装筒10の内側に配設された規制筒30と、規制筒30の内側に配設された保持筒40と、を備える。外装筒10、規制筒30および保持筒40は、それぞれ円筒状に形成され、それぞれの中心軸が上下方向に延びる共通軸上に位置するように配置されている。以下の説明では、この共通軸を容器軸Oといい、上下方向から見た平面視において、容器軸Oに交差する方向を径方向といい、容器軸O回りに周回する方向を周方向という。また、上下方向のうち、規制筒30から棒状内容物が繰り出される方向を上方といい、その反対側を下方という。また、本実施形態では周方向のうち上方から見て時計回りに周回する方向を単に時計回り方向といい、その反対方向を反時計回り方向という。
【0019】
外装筒10は、繰出容器1の外郭を形成している。外装筒10は、有底筒状に形成されている。外装筒10には、底部を上下方向に貫く貫通孔10aが形成されている。貫通孔10aは、容器軸Oと同軸に配置されている。貫通孔10aは、図示しないシール部材によって外装筒10の下方から閉塞される。外装筒10の内周面には、螺旋溝60が形成されている。図示の例では、外装筒10は、螺旋溝60が形成された螺旋筒12と、螺旋筒12に外装された有底筒状の操作筒15と、操作筒15に対する螺旋筒12の上昇を規制する押さえリング17と、を備える。なお、螺旋筒12および操作筒15は一体に成形されていてもよい。
【0020】
螺旋筒12は、外装筒10に相対回転不能に配置されている。螺旋筒12は、上部12Uと下部12Lとが別体として形成されている。螺旋筒12の下部12Lは、一定の内径で延在するとともに両端部が開口した円筒状に形成されている。螺旋筒12の下部12Lの全体は、外筒の内側に配設されている。螺旋筒12の上部12Uは、螺旋筒12の下部12Lの内径と略等しい内径で延在するとともに両端部が開口した円筒状に形成されている。螺旋筒12の上部12Uは、操作筒15の上端部に対して径方向に隙間をあけるように形成されている。螺旋筒12の上部12Uは、下部12Lの上端部に嵌合し、上部12Uおよび下部12Lの周方向の相対回転が規制されている螺旋筒12の内周面には、螺旋筒12の下部12Lから上部12Uにわたって螺旋溝60が連続して形成されている。螺旋溝60は、螺旋筒12の下部12Lに形成された第1溝部61と、螺旋筒12の上部12Uに形成された第2溝部62と、を有する。第2溝部62は、第1溝部61の上方で第1溝部61に直列状に連結している。螺旋筒12の内周面には、上述した螺旋溝60に加えて、環状に延在する環状溝70が形成されている。螺旋溝60および環状溝70については後述する。
【0021】
押さえリング17は、螺旋筒12および操作筒15それぞれの上端開口縁に載置された円環状のフランジ部17aと、フランジ部17aの内周縁から上方の突出した上筒部17bと、フランジ部17aから下方に突出して操作筒15の上端部と螺旋筒12との隙間に嵌合された下筒部17cと、を備える。押さえリング17の上筒部17bには、有頂筒状のオーバーキャップ20が着脱可能に外嵌される。
【0022】
オーバーキャップ20は、有頂筒状に形成されたキャップ本体21と、キャップ本体21の内側に嵌入された被覆筒22と、を備える。キャップ本体21の下端部は、外装筒10の押さえリング17に装着されている。被覆筒22は、有頂筒状に形成され、キャップ本体21に固定されている。被覆筒22は、規制筒30の上端開口を閉塞するように、規制筒30の上部に外嵌される。
【0023】
規制筒30は、螺旋筒12の内側に配設されている。規制筒30は、外装筒10の底部から上方に延在し、外装筒10よりも上方に突出している。つまり、規制筒30の上端開口縁は、外装筒10の上端開口縁(図示の例では押さえリング17の上筒部17bの上端開口縁)よりも上方に位置している。規制筒30のうち少なくとも外装筒10の内側に位置する部分の外径は、外装筒10の内径と同等または外装筒10の内径よりも僅かに小さくなっている。規制筒30の外周面には、径方向の外側に突出した係止突部31が形成されている。規制筒30は、係止突部31が外装筒10の内周面の環状溝70に係合することで、外装筒10に相対回転可能、かつ外装筒10に対する上昇および下降が規制されている。
【0024】
規制筒30には、径方向に貫く第1案内孔32および第2案内孔33が形成されている。第1案内孔32および第2案内孔33は、周方向に等角度間隔で交互に形成されている。図示の例では、第1案内孔32および第2案内孔33は、それぞれ一対設けられ、容器軸Oを中心として90°間隔で並んでいる。第1案内孔32および第2案内孔33は、上下方向に沿って延びている。第1案内孔32および第2案内孔33は、規制筒30の下端開口縁から上方に延びている。ただし、第1案内孔32および第2案内孔33は、上下方向に対して完全に平行に延びていなくてもよい。第1案内孔32および第2案内孔33は、それぞれ略一定の幅で延在している。第1案内孔32および第2案内孔33は、それぞれ係止突部31を避けるように、係止突部31とは周方向で異なる位置に形成されている。第1案内孔32の上端縁は、係止突部31の上端縁と上下方向で略同じ高さに位置している。第2案内孔33の上端縁は、第1案内孔32の上端縁よりも上方に位置している。
【0025】
保持筒40は、棒状内容物を上方に突出させ、かつ下方に突出させない状態で保持している。保持筒40は、規制筒30の内側に配設された本体筒41と、本体筒41の内側に配設された支持体45と、を備える。本体筒41および支持体45は、破断可能な弱化部55を介して一体成形されている。なお図1では、保持筒40の半断面を図示している。
【0026】
図1および図2に示すように、本体筒41は、棒状内容物の下部を径方向の外側から囲うように形成されている。本体筒41は、外装筒10の底部から上方に延びている。本体筒41の上端開口縁は、規制筒30の上端開口縁よりも下方に位置している。本体筒41の外周面には、径方向の外側に突出した第1被案内突起42が形成されている。第1被案内突起42は、規制筒30の第1案内孔32と同数設けられている。第1被案内突起42は、柱状に形成されている。第1被案内突起42は、径方向から見て時計回り方向に先細る形状を呈し、上下方向よりも周方向に大きく形成されている。第1被案内突起42は、規制筒30の第1案内孔32を通して規制筒30よりも径方向の外側に突出し、外装筒10の螺旋溝60に挿入されている。第1被案内突起42は、第1案内孔32における上端部よりも下方の部分を通っている。本体筒41は、第1被案内突起42が第1案内孔32内で周方向の移動を規制されることで、規制筒30に対する回転が規制されている。
【0027】
本体筒41は、本体筒41の上半部としての上側筒部41Uと、本体筒41の下半部としての下側筒部41Lと、を有する。上側筒部41Uは、支持体45よりも上方に延びている。下側筒部41Lには、径方向に貫く縦孔43が形成されている。縦孔43は、規制筒30の第2案内孔33と同数設けられている。縦孔43は、略一定の幅で上下方向に延在している。縦孔43は、本体筒41の下端縁から上方に延びている。縦孔43は、径方向から見て規制筒30の第2案内孔33と重なる位置に形成されている。なお縦孔43は、下側筒部41Lから上側筒部41Uにわたって形成されていてもよい。
【0028】
支持体45は、本体筒41の内側で棒状内容物をその下方から支持している。支持体45は、本体筒41の上端開口縁よりも下方に配設されている。支持体45は、棒状内容物が上方に立設される皿体46と、皿体46から上方に突出して棒状内容物の下端部が嵌合されるホルダ部48と、皿体46から下方に延びる突片部51と、を備える。皿体46は、上下方向から見て円形状に形成されている。皿体46の中央には、支持体45上に棒状内容物を充填するための充填孔46aが上下方向に貫通している。充填孔46aは、上下方向から見て円形状に形成されている。皿体46の外周縁は、弱化部55を介して本体筒41の内周面に接続している。ホルダ部48は、皿体46の外周部から突出している。ホルダ部48は、周方向に沿って全周にわたって延びている。突片部51は、本体筒41の縦孔43と同数設けられている。突片部51は、皿体46の外周部から下方に延びている。突片部51は、径方向から見て本体筒41の縦孔43に重なるように形成されている。突片部51は、略一定の幅で上下方向に延びている。突片部51は、上下方向から見て周方向に延びている。
【0029】
各突片部51には、突片部51の下端部から径方向の外側に膨出した膨出部52と、膨出部52から径方向の外側に突出した第2被案内突起53と、が形成されている。膨出部52は、径方向から見て一対の辺が上下方向に延びる矩形状に形成されている。膨出部52の周方向の幅は、本体筒41の縦孔43の周方向の幅よりも小さい。膨出部52は、本体筒41の縦孔43に本体筒41の内側から挿入されている。第2被案内突起53は、規制筒30の第2案内孔33を通して規制筒30よりも径方向の外側に突出し、外装筒10の螺旋溝60に挿入されている。第2被案内突起53は、規制筒30の外周面を基準として、第1被案内突起42よりも径方向の外側に突出している。第2被案内突起53は、円柱状に形成されている。第2被案内突起53は、第1被案内突起42よりも、螺旋溝60の延在方向から見た場合の径方向に直交する方向(以下、幅方向と称する)に小さく形成されている。第2被案内突起53は、第1被案内突起42よりも下方に位置している。ただし、第1被案内突起42に対する第2被案内突起53の位置は、上下方向において第2被案内突起53と螺旋溝60の第2溝部62の上端部との距離が第1被案内突起42と螺旋溝60の第1溝部61の上端部との距離よりも大きければよい。第2被案内突起53は、第2案内孔33における上端部よりも下方の部分を通っている。支持体45は、第2被案内突起53が第2案内孔33内で周方向の移動を規制されることで、規制筒30に対する回転が規制されている。
【0030】
ここで、外装筒10に形成された螺旋溝60および環状溝70について説明する。
図1および図3に示すように、螺旋溝60は、螺旋筒12の内周面に一対設けられている。一対の螺旋溝60は、互いに交差することなく延びている。すなわち一対の螺旋溝60は、二条ネジとなっている。なお、螺旋溝60の条数は二条に限られず、一条であってもよいし、三条以上であってもよい。一対の螺旋溝60は、容器軸Oを対称軸とする線対称の形状を有している。以下、特に記載のない限り、一対の螺旋溝60のうち一方の螺旋溝60に着目して説明する。螺旋溝60は、時計回り方向に向かうに従い上方に延びている。螺旋溝60は、周方向に対して一定の傾斜角で傾斜して延びている。
【0031】
螺旋溝60には、第1被案内突起42が挿入される浅部64と、第2被案内突起53が挿入される深部65と、が形成されている。浅部64は、螺旋溝60のうち、図3において断面が符号Aで示される部分である。浅部64は、第1被案内突起42と係合し、螺旋溝60の延在方向に沿った第1被案内突起42の移動を許容しつつ、螺旋溝60の幅方向に沿った第1被案内突起42の移動を規制している。深部65は、螺旋溝60のうち、図3において断面が符号Bで示される部分である。深部65は、螺旋筒12の内周面上の開口を浅部64と共用するように形成されている。深部65は、周方向に直交する断面視で、浅部64の下部に重なっている。すなわち、深部65を下方から画成する内面の一部は、浅部64を下方から画成する内面の一部となっている。深部65は、螺旋筒12の内周面を基準として浅部64よりも深く、かつ浅部64よりも幅狭に形成されている。さらに、深部65は、第1被案内突起42よりも、螺旋溝60の幅方向に小さく形成されている。深部65には、第2被案内突起53が係合し、螺旋溝60の延在方向に沿った第2被案内突起53の移動を許容しつつ、螺旋溝60の幅方向に沿った第2被案内突起53の移動を規制している。
【0032】
浅部64は、螺旋溝60のうち螺旋筒12の下部12Lに位置する部分の全長にわたって延びている。深部65は、螺旋溝60の全長にわたって延びている。これにより、螺旋溝60の第1溝部61は、第1被案内突起42および第2被案内突起53が進入可能となっている。また、螺旋溝60の第2溝部62は、第1被案内突起42が進入不能、かつ第2被案内突起53が進入可能となっている。
【0033】
環状溝70は、径方向から見て第1案内孔32の上端部と重なっている。環状溝70は、周方向の全長にわたって連続して延びている。環状溝70は、第1溝部61の上端部に交差している。環状溝70は、周方向に直交する断面視で、螺旋溝60の浅部64と略同一の形状に形成されている。これにより、環状溝70は、第1被案内突起42が進入可能、かつ第2被案内突起53が進入不能となっている。環状溝70は、螺旋筒12の上部12Uの下端面によって上方から画成されている。
【0034】
環状溝70の内面には、環状溝70内に突出した凸部71が設けられている。凸部71は、環状溝70を下方から画成する内面に形成されている。凸部71は、環状溝70に進入した第1被案内突起42が乗り越え可能となっている。図示の例では、凸部71は、環状溝70と一の螺旋溝60との交差部に反時計回り方向から隣接している。これにより凸部71は、螺旋溝60と環状溝70との間の薄肉部に形成され、薄肉部を撓ませることで上下方向に弾性変位可能となっている。凸部71は、環状溝70の断面積を局所的に小さくすることで、凸部71を乗り越える第1被案内突起42の移動抵抗を増大させる。なお凸部71は、周方向に複数設けられていてもよい。
【0035】
次に、上述した繰出容器1の作用について説明する。
繰出容器1を使用する際には、最初にオーバーキャップ20を外装筒10の押さえリング17から取り外す。これにより、規制筒30が露出した状態となる。
【0036】
外装筒10を規制筒30に対して反時計回り方向に回転させると、第1被案内突起42および第2被案内突起53は、外装筒10の螺旋溝60内を移動し、規制筒30に対して上昇する。すると、第1被案内突起42が形成された保持筒40の本体筒41、および第2被案内突起53が形成された保持筒40の支持体45が規制筒30に対して一体的に上昇する。これにより、保持筒40に保持された棒状内容物が規制筒30から上方に繰り出される。
【0037】
図4に示すように、規制筒30に対する外装筒10の回転が進むと、第1被案内突起42が螺旋溝60の第1溝部61の上端部に到達する。すなわち、第1被案内突起42は、螺旋溝60の浅部64の上端部に到達する。ここで、第1被案内突起42は螺旋溝60の第2溝部62に係合不能とされているので、第1被案内突起42は第1溝部61から第2溝部62に進入できず、保持筒40の本体筒41は上昇端位置に達する。この状態で外装筒10を規制筒30に対してさらに回転させると、第1被案内突起42は、環状溝70に進入して環状溝70を周回する。なお保持筒40の本体筒41の上端開口縁は、本体筒41が上昇端位置に達することで、規制筒30の上端開口縁と略面一となる。
【0038】
一方で、第2被案内突起53は第2溝部62に係合可能とされているので、第1溝部61から第2溝部62に移動することができる。このため、保持筒40の本体筒41が上昇端位置に達した状態で外装筒10を規制筒30に対して反時計回り方向にさらに回転させると、第2被案内突起53が螺旋溝60に案内されて保持筒40の支持体45とともに上方に押圧される。これにより保持筒40の弱化部55が破断し、本体筒41に対する支持体45の上昇および下降が許容される。その後、規制筒30に対する外装筒10の回転が進むと、第2被案内突起53が規制筒30に対して上昇する。これにより、保持筒40の支持体45が規制筒30および本体筒41に対して上昇し、棒状内容物が規制筒30から上方に繰り出される。そして、図5に示すように、第2被案内突起53が螺旋溝60の上端部もしくは第2案内孔33の上端部に到達する、または支持体45の膨出部52が本体筒41の縦孔43の上端部に到達すると、第2被案内突起53の上昇が規制されるとともに、支持体45は上昇端位置に達する。
【0039】
以上により、本体筒41に対して支持体45を上昇させた分、棒状内容物を繰り出して残量を減らすことができる。
【0040】
また、本体筒41は、支持体45よりも上方に延びる上側筒部41Uを有するので、本体筒41および支持体45が一体的に上昇する際に、棒状内容物を上側筒部41Uによって径方向の外側から保持可能となる。これにより、特に棒状内容物が軟らかい場合に、棒状内容物の折れや崩れなどを抑制することができる。
【0041】
また、保持筒40の本体筒41および支持体45は、破断可能な弱化部55を介して一体成形されている。これにより、本体筒41および支持体45を単一の部材とすることできるので、本体筒および支持体を別個に成形する場合と比べて部品点数を削減できる。
【0042】
また、第1溝部61の上端部には、第1被案内突起42が進入可能な環状溝70が交差している。環状溝70の内面には、第1被案内突起42が乗り越え可能な凸部71が設けられている。この構成によれば、第1被案内突起42は、第1溝部61の上端部に到達した後、保持筒40の支持体45が本体筒41に対して上昇する過程で環状溝70を周回する。第1被案内突起42が環状溝70の凸部71の内側を通過して凸部71を乗り越える際には、外装筒10に対する規制筒30および保持筒40の回転抵抗が増大する。これにより、外装筒10および規制筒30に触れる使用者にクリック感を与え、使用者に棒状内容物の残量が少なくなっていることを認識させることができるとともに、棒状内容物の出し過ぎを抑制できる。
【0043】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、外装筒10を規制筒30に対して反時計回り方向に回転させることで棒状内容物が繰り出されるように形成されているが、これに限定されない。すなわち、外装筒10を規制筒30に対して時計回り方向に回転させることで棒状内容物が繰り出されるように形成されていてもよい。
【0044】
また、第1被案内突起および第2被案内突起の形状と、螺旋溝の第1溝部および第2溝部の形状との関係は、上記実施形態に限定されない。例えば、螺旋溝内で第2被案内突起が螺旋溝の幅方向に沿って移動することは許容される。そこで、第1溝部を第1被案内突起42および第2被案内突起53が係合する断面矩形状に形成してもよい。この場合、第2被案内突起は螺旋溝内で螺旋溝の幅方向に移動可能とされるが、外装筒を規制筒に対して回転させた際に第2被案内突起を螺旋溝に案内させることができる。
【0045】
また、第1溝部の断面形状と第2溝部の断面形状とが同じ、かつ第1被案内突起の形状と第2被案内突起の形状とが同じであってもよい。この場合であっても、第1被案内突起を第1案内孔の上端に当接させることで、第1被案内突起の上昇を規制して第1被案内突起を第2溝部へ進入不能とすることができる。ただし、上記実施形態のように第1溝部61、第1被案内突起42および第1案内孔32の形状と、第2溝部62、第2被案内突起53および第2案内孔33の形状とを相違させることで、組み立て時の位置合わせを容易にして誤組を防止できるとともに、保持筒を上昇させる動作のがたつきを抑制できる。
【0046】
また、上記実施形態では、保持筒40の本体筒41および支持体45が一体成形されているが、これら本体筒および支持体は別個に設けられていてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、螺旋溝60が周方向に対して一定の傾斜角で傾斜して延びているが、螺旋溝は周方向に対する傾斜角が変化するように周方向に対して傾斜して延びていてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、螺旋溝60の第2溝部62の全体が深部65により形成されたことで第1被案内突起42の進入を規制している。しかしながら、第2溝部は第1溝部側からの第1被案内突起42の進入を規制できればよい。例えば、第2溝部の下端開口を第1被案内突起42が通過不能な形状に形成してもよい。
【0049】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0050】
1…繰出容器 10…外装筒 30…規制筒 32…第1案内孔 33…第2案内孔 40…保持筒 41…本体筒 41U…上側筒部 42…第1被案内突起 45…支持体 53…第2被案内突起 55…弱化部 60…螺旋溝 61…第1溝部 62…第2溝部 70…環状溝 71…凸部
図1
図2
図3
図4
図5