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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】繰出容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 40/20 20060101AFI20231106BHJP
【FI】
A45D40/20 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020113251
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2022011861
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】古澤 光夫
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-040230(JP,A)
【文献】特開2008-212613(JP,A)
【文献】特開昭63-31608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 40/00-40/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びるとともに内容物が上方に突出可能な上端開口部を有するノズル筒と、
前記ノズル筒の下部に相対回転可能に装着された下筒部と、
前記ノズル筒の内側に配置され、前記ノズル筒に対して回転不能かつ前記下筒部に対して回転可能に設けられ、径方向の内側に突出した第1係止爪を有する爪付筒部と、
前記下筒部および前記爪付筒部に設けられ、前記爪付筒部を前記下筒部に対して回転させることで前記爪付筒部を前記下筒部に対して所定の距離上昇させるカム機構と、
前記爪付筒部と一体に形成され、前記爪付筒部を前記ノズル筒に対して下方に付勢する付勢部と、
前記爪付筒部の内側に挿入されて前記内容物を前記内容物の下方から支持し、外周面に前記第1係止爪に係合した被係止歯が上下方向に複数配設され、前記第1係止爪によって前記爪付筒部に対する下降を規制されかつ上昇を許容された被係止軸と、
前記下筒部に対する上昇を規制され、前記被係止歯に係合して前記被係止軸の上昇を許容し、かつ下降を規制した第2係止爪と、
を備える繰出容器。
【請求項2】
前記第2係止爪は、前記下筒部と一体に形成されている、
請求項1に記載の繰出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繰出容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるように、内筒部、および内筒部に相対的に回転可能に外装され、内筒部から容器軸方向に沿った一方側に向けて延在する外筒部を有する容器本体と、容器本体内に、外筒部との相対的な回転が規制された状態で、前記内筒部に対して相対的に回転可能に配設され、内筒部に対する外筒部の回転に伴って容器軸方向に進退する保持部材と、を備え、保持部材には、外筒部内に位置する内容物を、容器軸方向に沿った他方側から保持する本体部と、本体部から他方側に向けて突出し、内筒部内に挿入された突出部と、が備えられた繰出容器であって、突出部は筒状に形成され、突出部の外周面には内筒部の内周面に形成された雌ねじ部に螺合する雄ねじ部が形成された繰出容器が知られている。
この繰出容器では、内筒部と外筒部とを相対的に回転させて、保持部材を容器本体内で容器軸方向に進退させることで、容器本体の繰出口から内容物を出没させるとともに、繰出口からの内容物の突出量を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-188260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の繰出容器では、内筒部と外筒部との相対回転量に比例して内容物が繰出口から突出するので、内容物を出し過ぎるおそれがあった。内容物が例えばアイライナーやリップライナー等の細い形状に形成された場合や、比較的軟らかい材質の場合には、内容物を繰り出し過ぎると内容物の折れや崩れが生じる可能性がある。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、内容物の出し過ぎを抑制できる繰出容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の繰出容器は、上下方向に延びるとともに内容物が上方に突出可能な上端開口部を有するノズル筒と、前記ノズル筒の下部に相対回転可能に装着された下筒部と、前記ノズル筒の内側に配置され、前記ノズル筒に対して回転不能かつ前記下筒部に対して回転可能に設けられ、径方向の内側に突出した第1係止爪を有する爪付筒部と、前記下筒部および前記爪付筒部に設けられ、前記爪付筒部を前記下筒部に対して回転させることで前記爪付筒部を前記下筒部に対して所定の距離上昇させるカム機構と、前記爪付筒部と一体に形成され、前記爪付筒部を前記ノズル筒に対して下方に付勢する付勢部と、前記爪付筒部の内側に挿入されて前記内容物を前記内容物の下方から支持し、外周面に前記第1係止爪に係合した被係止歯が上下方向に複数配設され、前記第1係止爪によって前記爪付筒部に対する下降を規制されかつ上昇を許容された被係止軸と、前記下筒部に対する上昇を規制され、前記被係止歯に係合して前記被係止軸の上昇を許容し、かつ下降を規制した第2係止爪と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、ノズル筒を下筒部に対して回転させると、ノズル筒の回転に伴って爪付筒部も下筒部に対して回転する。これにより、カム機構が作動して、下筒部に対して爪付筒部が付勢部の付勢力に抗して所定の距離上昇する。
ここで、被係止軸の被係止歯には、爪付筒部の第1係止爪、および第2係止爪が係合している。被係止軸は、第1係止爪によって爪付筒部に対する下降が規制されている。このため、爪付筒部が下筒部に対して上昇すると被係止軸も上昇する。一方で、第2係止爪は、被係止軸の上昇を許容し、かつ下筒部に対する上昇を規制されている。このため、被係止軸は、第2係止爪に被係止歯を乗り越えさせつつ、下筒部に対して爪付筒部とともに所定の距離上昇する。
下筒部に対する爪付筒部の回転が進み、下筒部に対して爪付筒部が上昇端位置に達すると、下筒部に対して爪付筒部が下降可能な状態となる。爪付筒部は、付勢部によってノズル筒に対して下方に付勢されている。ノズル筒は下筒部に対して上昇不能に設けられているので、爪付筒部はノズル筒に対して下降する。この際、第2係止爪は、被係止軸の下降を規制している。一方で、第1係止爪は、爪付筒部に対する被係止軸の上昇を許容している。このため、爪付筒部は、第1係止爪に被係止歯を乗り越えさせつつ、下筒部に対して所定の距離下降する。
以上により、被係止軸に支持された内容物を所定の距離だけ上昇させて、ノズル筒の上端開口部から内容物を繰り出すことができる。したがって、内容物の出し過ぎを抑制することが可能な繰出容器を提供できる。
さらに、爪付筒部および付勢部を単一の部材とすることができるので、爪付筒部および付勢部を別個に形成する場合と比べて部品点数を削減できる。
【0008】
上記の繰出容器において、前記第2係止爪は、前記下筒部と一体に形成されていてもよい。
【0009】
本発明によれば、下筒部および第2係止爪を別個に形成する場合と比べて部品点数を削減できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、内容物の出し過ぎを抑制できる繰出容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態の繰出容器を示す縦半断面図である。
図2図1に示す断面図の要部を拡大した図である。
図3図2のIII-III線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る繰出容器1の実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の繰出容器1は、内部に収容された棒状の内容物Xをノズル筒20から繰り出して使用する。内容物Xは、比較的軟らかい材質のものを細い棒状に形成したものであって、例えば化粧料(アイライナーやリップライナー等)や薬剤、糊などが円柱状に形成されてなる。繰出容器1は、上下方向に延びるとともに内容物Xが上方に突出可能な上端開口部20aを有するノズル筒20と、ノズル筒20の下部に相対回転可能に装着された下筒部10と、下筒部10に着脱自在に装着されたキャップ体30と、を備える。ノズル筒20、下筒部10およびキャップ体30は、それぞれ円筒状に形成され、それぞれの中心軸が上下方向に延びる共通軸上に位置するように配置されている。以下の説明では、この共通軸を容器軸Oといい、上下方向に沿う下筒部10側を下方、上下方向に沿うキャップ体30側を上方という。また、上下方向から見た平面視において、容器軸Oに交差する方向を径方向といい、容器軸O回りに周回する方向を周方向という。また、本実施形態では周方向のうち上方から見て時計回りに周回する方向を第1側R1と定義し、その反対方向を第2側R2と定義する。
【0013】
下筒部10は、本体部11と中継部12と軸受部16とを備える。これら本体部11、中継部12および軸受部16は、樹脂材料により一体に形成されている。本体部11は、キャップ体30とともに繰出容器1の外郭を形成している。本体部11は、両端が開口した円筒状に形成されている。本体部11の下端開口は、後述するラチェット軸50が通過可能とされている。本体部11の下端開口縁には、段部11aが形成されている。段部11aには、本体部11の下端開口を閉塞するラベル15が接着または溶着されている。ただし、ラベル15に代えて、例えば嵌合等により段部11aに係止される底板を用いてもよい。
【0014】
図2に示すように、中継部12は、本体部11の上端部に連なっている。中継部12は、本体部11から上方に突出している。中継部12の内周面は、中継部12の上端縁から一定の内径で下方に延びている。中継部12の外周面は、中継部12の上端縁から下方に延びる小径部13と、小径部13の下方で段差面を介して小径部13と隣接する大径部14と、を備える。小径部13には、径方向の外側に突出するとともに周方向に沿って全周に延びる環状の係合凸部13aが形成されている。小径部13には、ノズル筒20が外嵌される。大径部14は、小径部13よりも大径、かつ本体部11の上端部の外周面よりも小径に形成されている。大径部14の下端部には、本体部11の上端部が連なっている。大径部14には、キャップ体30が外嵌される(図1参照)。
【0015】
軸受部16は、本体部11の内側に配置されている。軸受部16は、中継部12の下端部から下方に延びる受筒部17と、受筒部17の下端縁から下方に突出する第1突片部18と、第1突片部18から径方向の内側に突出した下ラチェット爪19(第2係止爪)と、を備える。受筒部17は、本体部11に対して径方向に間隔をあけて配置されている。受筒部17の内側には、ラチェット軸50が上方に相対変位可能に挿通されている。
【0016】
第1突片部18は、下端部が径方向に変位するように弾性変形可能に形成されている。本実施形態では、第1突片部18は、周方向に間隔をあけて一対設けられている。第1突片部18は、径方向を厚さ方向として、略一定の厚さで受筒部17の下端縁から延びている。第1突片部18は、径方向から見て一定の幅で上下方向に延びている。第1突片部18は、受筒部17との接続部を基端として径方向に撓む。
【0017】
下ラチェット爪19は、各第1突片部18の下端部から突出している。下ラチェット爪19は、径方向内側の先端部から径方向外側に延びて上方を向く被係止面19aと、先端部から下方かつ径方向の外側に延びて下方かつ径方向の内側を向く被摺接面19bと、を備える。下ラチェット爪19の機能については後述する。
【0018】
図1に示すように、ノズル筒20は、上端が先細る円筒状に形成されている。ノズル筒20の下部は、中継部12の外周面の小径部13に装着されている。ノズル筒20の下端縁は、中継部12の外周面における小径部13と大径部14との間の段差面にその上方から接触している。ノズル筒20の上部には、内容物Xを摺動可能に通過させる孔部21が形成されている。孔部21は、ノズル筒20の内周面の上端部に位置し、上端開口部20aから下方に延びている。孔部21は、内容物Xの外径よりも僅かに大きい一定の内径で上下方向に延びている。
【0019】
図2に示すように、ノズル筒20の内周面には、下方を向く段差部22と、径方向の内側に突出した係合突起23および被係合凸部24が形成されている。段差部22は、下筒部10の中継部12の上端縁よりも上方に設けられている。段差部22は、周方向の全周にわたって延びている。係合突起23は、段差部22の下方、かつ下筒部10の中継部12の上端縁よりも上方に設けられている。図示の例では、係合突起23は、段差部22に連なっている。換言すると、係合突起23は、段差部22から下方に突出している。被係合凸部24は、ノズル筒20の下端部に設けられ、下筒部10の中継部12の係合凸部13aに下方から係合している。これにより、ノズル筒20は、下筒部10に対して回転可能かつ上昇不能に設けられている。
【0020】
図3に示すように、係合突起23は、ノズル筒20の内周面に複数(図示の例では6個)突設されている。複数の係合突起23は、周方向に間隔をあけて配置されている。係合突起23は、周方向の第1側R1を向く係合面23aと、周方向に対して傾斜して周方向の第2側R2かつ係方向の内側に向く非係合面23bとを有する。係合突起23の平面視形状は、係方向の外側から内側に向かうに従い周方向の幅が漸次狭まるように形成されている。
【0021】
図1に示すように、キャップ体30は、有頂筒状に形成され、ノズル筒20を覆うように配置されている。キャップ体30は、ノズル筒20に対して離間している。キャップ体30は、下筒部10の中継部12の大径部14に着脱自在に外嵌されている。キャップ体30の下端縁は、下筒部10の本体部11の上端縁にその上方から当接している。
【0022】
図2に示すように、繰出容器1は、ノズル筒20の内側に配置されたラチェット筒部40(爪付筒部)と、ラチェット筒部40をノズル筒20に対して下方に付勢する付勢部70と、ノズル筒20とラチェット筒部40との間に設けられた回転ラチェット機構100と、下筒部10およびラチェット筒部40に設けられたカム機構60と、ラチェット筒部40の内側に挿入されたラチェット軸50(被係止軸)と、ラチェット軸50に支持されるとともに内容物Xを保持する受皿90と、をさらに備える。
【0023】
ラチェット軸50は、受皿90に保持された内容物Xを下方から支持し、下筒部10に対して内容物Xと一体に上昇可能に形成されている。ラチェット軸50は、下ラチェット爪19および後述する上ラチェット爪44(第1係止爪)それぞれとラチェット機構を構成し、下筒部10に対して上昇可能かつ下降不能に設けられている。ラチェット軸50は、容器軸Oを中心に上下方向に延びる円柱状に形成されている。ラチェット軸50の上端面には、受皿90の一部が嵌入される凹部51が開口している。凹部51は、ラチェット軸50の上端面から下方に延びている。凹部51は、横断面で容器軸Oを中心とする円形状に形成され、一定の内径で延びている。
【0024】
図3に示すように、ラチェット軸50の外周面は、横断面で非円形状に形成されている。具体的には、ラチェット軸50の外周面には、上下方向に延びる一対の平面取り部52が形成されている。一対の平面取り部52は、互いに反対方向を向いている。平面取り部52は、ラチェット軸50の上端部から下端部にわたって連続して延びている。
【0025】
さらに、図2に示すように、ラチェット軸50の外周面には、ラチェット歯53(被係止歯)が上下方向に複数配設されている。複数のラチェット歯53は、等ピッチで上下方向に並んでいる。複数のラチェット歯53は、ラチェット軸50の上端部から下端部にわたって配設されている。ラチェット歯53は、ラチェット軸50の外周面のうち周方向で一対の平面取り部52の間の部分のそれぞれに形成されている(図3を併せて参照)。ラチェット歯53は、周方向に延びている。ラチェット歯53は、径方向の内側から外側に向かうに従い上下方向に先細るように形成されている。ラチェット歯53は、径方向外側の先端部から径方向内側に延びて下方を向く係止面53aと、先端部から上方かつ径方向内側に延びて上方かつ径方向外側を向く摺接面53bと、を備える。
【0026】
ラチェット軸50は、下筒部10の中継部12および軸受部16に挿通されている。ラチェット歯53には、歯溝に入り込んだ下ラチェット爪19が係合している。ラチェット歯53は、ラチェット歯53の係止面53aと下ラチェット爪19の被係止面19aとの接触により、下ラチェット爪19に対するラチェット軸50の下方への移動を規制している。また、ラチェット歯53は、その摺接面53bを下ラチェット爪19の被摺接面19bに対して上方に摺接させることで、第1突片部18の弾性変形を伴いながら下ラチェット爪19を径方向の外側に変位させて乗り越えるので、下ラチェット爪19に対するラチェット軸50の上方への移動を許容している。これにより、ラチェット軸50は、下筒部10に対する上昇を許容されかつ下降を規制されている。
【0027】
ラチェット筒部40は、下筒部10に対して回転可能に設けられている。ラチェット筒部40は、容器軸Oを中心軸とする円筒状のガイド筒41と、ガイド筒41の外周面から径方向の外側に突出する鍔部42と、ガイド筒41の上端縁から上方に突出する第2突片部43と、第2突片部43から径方向の内側に突出した上ラチェット爪44と、を備える。これら鍔部42、第2突片部43および上ラチェット爪44は、樹脂材料により一体に形成されている。
【0028】
ガイド筒41の下端部は、下筒部10の中継部12の上端部の内側に挿入されている。ガイド筒41の内側には、ラチェット軸50が挿通されている。ガイド筒41の内周面は、ラチェット軸50の横断面形状に対応して、横断面で非円形状に形成されている(図3参照)。これによりガイド筒41は、ラチェット軸50を上下方向に変位可能かつ相対回転不能に支持している。
【0029】
鍔部42は、周方向に複数(図示の例では2個)設けられて、容器軸O回りに等角度間隔で配置されている。鍔部42は、ガイド筒41のうち、下筒部10の中継部12の上端部よりも上方であって、ノズル筒20の内周面の段差部22よりも下方の部分から突出している。鍔部42は、周方向に沿って円弧状に延びている(図3参照)。鍔部42の下面には、後述する上カム部65が突設されている。
【0030】
第2突片部43は、ラチェット歯53に径方向で対向する位置のそれぞれに設けられている。第2突片部43は、周方向に間隔をあけて一対設けられている。第2突片部43は、ガイド筒41における周方向の一部を上方に延長するように形成されている。第2突片部43は、径方向を厚さ方向として、略一定の厚さでガイド筒41の上端縁から延びている。第2突片部43は、径方向から見て一定の幅で上下方向に延びている。第2突片部43は、ガイド筒41との接続部を基端として径方向に撓み変形可能とされている。
【0031】
上ラチェット爪44は、各第2突片部43の上端部から突出している。上ラチェット爪44は、周方向に延在している。上ラチェット爪44は、ラチェット軸50のラチェット歯53の歯溝に入り込み、ラチェット歯53に係合している。上ラチェット爪44は、下ラチェット爪19と同様に形成されている。すなわち、上ラチェット爪44は、被係止面44aおよび被摺接面44bを備える。上ラチェット爪44は、ラチェット歯53の係止面53aと上ラチェット爪44の被係止面44aとの接触により、ラチェット軸50の下方への相対移動を規制している。また、上ラチェット爪44は、ラチェット歯53の摺接面53bを上ラチェット爪44の被摺接面44bに対して上方に摺接させることで、第2突片部43の弾性変形を伴いながら径方向の外側に変位してラチェット歯53を乗り越えるので、ラチェット軸50の上方への相対移動を許容している。これにより、ラチェット軸50は、ラチェット筒部40に対する下降を規制されかつ上昇を許容されている。
【0032】
図2および図3に示すように、付勢部70は、ラチェット筒部40と一体に樹脂材料により形成されている。付勢部70は、周方向にラチェット筒部40の鍔部42と同数設けられて、容器軸O回りに等角度間隔で配置されている。付勢部70は、鍔部42における周方向の第2側R2の端部から周方向の第2側R2かつ上方に延びている。付勢部70は、ガイド筒41の外周面から離間し、周方向の第2側R2の先端部が径方向の内側、および下方の双方向に変位するように弾性変形可能とされている。付勢部70の先端部には、上下方向から見て径方向の外側に突出した突出部71が形成されている。突出部71は、ノズル筒20の内周面の段差部22に下方から接触または近接している。付勢部70は、突出部71がノズル筒20の段差部22に接触して下方に押圧されることで撓み、ノズル筒20およびノズル筒20が装着された下筒部10に対してラチェット筒部40を下方に付勢する。突出部71には、周方向の第2側R2を向き係合突起23の係合面23aに係合する先端面71aが形成されている。
【0033】
回転ラチェット機構100は、ノズル筒20に対するラチェット筒部40の周方向第1側R1の回転を許容するとともに周方向第2側R2の回転を規制する。回転ラチェット機構100は、上述したノズル筒20の係合突起23、およびラチェット筒部40の付勢部70を備える。回転ラチェット機構100は、係合突起23の係合面23aと付勢部70の先端面71aとの係合により、ノズル筒20に対するラチェット筒部40の周方向の第2側R2への回転を規制している。また、回転ラチェット機構100は、付勢部70の突出部71を係合突起23の非係合面23bに摺接させることで、付勢部70の弾性変形を伴いながら突出部71を径方向の内側に変位させて係合突起23を乗り越えさせるので、ノズル筒20に対するラチェット筒部40の周方向の第1側R1への回転を許容している。これによりラチェット筒部40は、ノズル筒20に対して周方向の第2側R2のみ回転を規制されている。ただし、ラチェット筒部40は、ノズル筒20に対して周方向の第2側R2に360°未満の範囲で空転するように設けられていてもよい。
【0034】
図2に示すように、カム機構60は、ラチェット筒部40を下筒部10に対して回転させることで、ラチェット筒部40を下筒部10に対して上昇させる。カム機構60は、下筒部10に設けられた下カム部61と、ラチェット筒部40に設けられた上カム部65と、を備える。下カム部61および上カム部65は、端面カムとして機能する。下カム部61は、下筒部10の中継部12の上端縁から上方に突出している。上カム部65は、下筒部10の中継部12の上方に配置されている。上カム部65は、ラチェット筒部40のガイド筒41とノズル筒20との間に配置されている。上カム部65は、ラチェット筒部40の鍔部42から下方に突出している。下カム部61および上カム部65は、互いに径方向の同じ位置に配置されている。
【0035】
下カム部61は、下筒部10と一体に形成されている。下カム部61は、周方向に複数(図示の例では2個)設けられて、容器軸O回りに等角度間隔で配置されている。下カム部61は、下筒部10の中継部12における周方向の一部を上方に延長するにように形成されている。下カム部61は、径方向を厚さ方向として一定の厚さで延びている。下カム部61は、下筒部10の中継部12の上端面から周方向の第1側R1かつ上方に延びて下カム部61の先端部に至り、周方向の第2側R2かつ上方を向く下カム面62と、中継部12の上端面から上方に延びて下カム部61の先端部に至り、周方向の第1側R1を向く下規制面63と、を備える。
【0036】
上カム部65は、ラチェット筒部40と一体に形成されている。上カム部65は、周方向に複数(図示の例では2個)設けられて、容器軸O回りに等角度間隔で配置されている。上カム部65は、径方向を厚さ方向として、一定の厚さでラチェット筒部40のガイド筒41の外周面に沿って延びている。上カム部65は、ガイド筒41の外周面に接続している。上カム部65は、ラチェット筒部40の鍔部42の下面から周方向の第2側R2かつ下方に延びて上カム部65の先端部に至り、周方向の第1側R1かつ下方を向く上カム面66と、鍔部42の下面から下方に延びて上カム部65の先端部に至り、周方向の第2側R2を向く上規制面67と、を備える。
【0037】
カム機構60は、ラチェット筒部40を下筒部10に対して周方向の第2側R2に回転させた場合に、下カム部61の下規制面63と上カム部65の上規制面67とが接触した時点で、それ以上の回転を規制する。また、カム機構60は、ラチェット筒部40を下筒部10に対して周方向の第1側R1に回転させた場合に、下カム部61の下カム面62と上カム部65の上カム部65とを摺接させることで、ラチェット歯53のピッチと一致した所定の距離だけ下筒部10に対してラチェット筒部40を上昇させる。なお、ラチェット歯53のピッチは、上下方向で隣り合う一対のラチェット歯53の係止面53aの間隔と同義である。
【0038】
受皿90は、有底筒状に形成されて内容物Xの下端部を保持する保持部91と、保持部91の底壁から下方に延びてラチェット軸50の凹部51に嵌入された軸部92と、を備える。保持部91の内側には、内容物Xの下端部が嵌入されている。保持部91の底壁は、ラチェット軸50の上端面に上方から当接している。図1に示すように、保持部91の外径は、ノズル筒20の孔部21の内径よりも大きい。これにより、保持部91の上端縁はノズル筒20の孔部21の下端開口縁にその下方から接触可能とされ、内容物Xが孔部21を通過することが許容されつつ受皿90が孔部21を通過することが規制されている。
【0039】
次に、上述した繰出容器1の作用について説明する。
繰出容器1を使用する際には、最初にキャップ体30を下筒部10から取り外す。これにより、ノズル筒20が露出した状態となる。
【0040】
ノズル筒20を下筒部10に対して周方向の第1側R1に回転させると、ノズル筒20の回転に伴ってラチェット筒部40も下筒部10に対して周方向の第1側R1に回転する。これにより、ラチェット筒部40が中継部12に対して周方向の第1側R1に回転し、カム機構60が作動する。具体的には、ラチェット筒部40に設けられた上カム部65の上カム面66が下筒部10に設けられた下カム部61の下カム面62に接触し、ラチェット筒部40および下筒部10の相対回転に伴って上カム面66および下カム面62が摺接することで、下筒部10に対してラチェット筒部40が上昇する。この際、付勢部70の突出部71がノズル筒20の段差部22にその下方から接触して、付勢部70がラチェット筒部40に下方への付勢力を作用させる。
【0041】
ここで、ラチェット軸50のラチェット歯53には、ラチェット筒部40の上ラチェット爪44、および下筒部10の下ラチェット爪19が係合している。上ラチェット爪44は、ラチェット軸50の下方への相対移動を規制している。このため、ラチェット筒部40が下筒部10に対して上昇すると、ラチェット軸50も上昇する。一方で、下ラチェット爪19は、ラチェット軸50の上方への相対移動を許容している。このため、ラチェット軸50は、下ラチェット爪19にラチェット歯53を乗り越えさせつつ、下筒部10に対してラチェット筒部40とともに上昇する。このとき、カム機構60は、下筒部10に対してラチェット筒部40をラチェット歯53のピッチと一致する距離だけ上昇させる。これにより、ラチェット軸50は、ラチェット歯53の1歯分だけ下筒部10に対して上昇する。
【0042】
中継部12に対するラチェット筒部40の回転が進み、下カム部61および上カム部65それぞれの先端部が互いに摺接する時点で、中継部12に対してラチェット筒部40が上昇端位置に達する。すると、その後は下カム部61がラチェット筒部40の鍔部42に接近可能、かつ上カム部65が下筒部10の中継部12の上端面に接近可能な状態となる。すなわち、下カム部61が設けられた下筒部10に対して、上カム部65が設けられたラチェット筒部40が下降可能な状態となる。ラチェット筒部40は、付勢部70によってノズル筒20に対して下方に付勢されている。ノズル筒20は下筒部10に対して上昇不能に設けられているので、ラチェット筒部40はノズル筒20に対して下降する。この際、下ラチェット爪19は、ラチェット軸50の下降を規制している。一方で、上ラチェット爪44は、ラチェット筒部40に対するラチェット軸50の上昇、すなわちラチェット軸50に対するラチェット筒部40の下降を許容している。このため、ラチェット筒部40は、上ラチェット爪44にラチェット歯53を1歯乗り越えさせつつ、下筒部10に対してラチェット歯53の1歯分だけ下降する。
【0043】
以上により、ラチェット軸50に支持された内容物Xをラチェット歯53の1歯分だけ上昇させて、ノズル筒20の上端開口部20aから繰り出すことができる。ところで、ノズル筒20の回転操作によってラチェット軸50が上昇すると、付勢部70の付勢力がカム機構60に作用し、ノズル筒20に対する回転抵抗として発生する。このため、ノズル筒20の回転操作によって上カム部65が下カム部61を乗り越えてラチェット軸50がラチェット歯53の1歯分上昇する度に、ノズル筒20に作用する回転抵抗が増減する。なお、ノズル筒20を下筒部10に対して周方向の第2側R2に回転させると、上カム部65の上規制面67が下カム部61の下規制面63に接触し、それ以上のラチェット筒部40および中継部12の相対回転が規制される。
【0044】
以上に説明したように、本実施形態によれば、内容物Xをラチェット歯53の1歯分ずつノズル筒20から繰り出すことができる。したがって、繰出容器1によれば、内容物Xの出し過ぎを抑制することが可能となる。
【0045】
さらに、付勢部70はラチェット筒部40と一体に形成されている。このため、ラチェット筒部40および付勢部70を単一の部材とすることができるので、ラチェット筒部および付勢部を別個に形成する場合と比べて部品点数を削減できる。特に本実施形態では付勢部70およびラチェット筒部40を樹脂材料により形成しているので、付勢部を金属材料により形成する場合と比べて部品コストを削減できる。
【0046】
また、ノズル筒20の回転操作によってラチェット軸50がラチェット歯53の1歯分上昇する度にノズル筒20に作用する回転抵抗が増減するので、内容物Xがラチェット歯53の1歯分繰り出される度に、下筒部10およびノズル筒20に触れる使用者にクリック感を付与することができる。したがって、ノズル筒20を回転させすぎることを抑制して、内容物Xの出し過ぎを抑制できる。
【0047】
また、ノズル筒20を下筒部10に対して周方向の第2側R2に回転させた場合には、上カム部65と下カム部61の下規制面63とが接触した時点でそれ以上の回転が規制されるので、内容物Xを繰り出す際にノズル筒20を回転させる方向を使用者に直感的に認識させることができる。
【0048】
さらに、回転ラチェット機構100は、ノズル筒20に対するラチェット筒部40の周方向第1側R1の回転を許容するとともに周方向第2側R2の回転を規制する。このため、下筒部10に対してラチェット筒部40を周方向の第2側R2に回転させた際に下カム部61および上カム部65に大きな力が作用して繰出容器1が破損することを抑制できる。
【0049】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、ノズル筒20を下筒部10に対して周方向の第1側R1に回転させることで内容物Xが上昇するように形成されているが、これに限定されない。すなわち、ノズル筒を下筒部に対して周方向の第2側R2に回転させることで内容物が上昇するように形成されていてもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、下筒部10において中継部12および軸受部16が本体部11と一体に形成されているが、これに限定されない。例えば、中継部および軸受部を一体に形成するとともに、本体部とは別個に設けてもよい。この場合、軸受部にラチェット軸が組み付けられた状態で中継部および軸受部を本体部に組み付けることができるので、本体部を有底筒状に形成してもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、カム機構60を構成する下カム部61および上カム部65の両方がカム面を備えている。すなわち、下カム部61および上カム部65の両方がカム本体として機能するとともに、他方に対するフォロアとしても機能している。しかしながらこれに限定されず、下カム部61および上カム部65の一方を、カム面を有さず他方のカム部のカム面に摺接する凸状の構造体に替えてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、ラチェット軸50が受皿90を介して内容物Xをその下方から支持しているが、これに限定されない。ラチェット軸は、内容物と一体に上下動可能に設けられていればよく、内容物をその下方から直接支持していてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、ラチェット軸50の外周面に一対の平面取り部52が形成されているが、これに限定されない。ラチェット軸はラチェット筒部に対して相対回転不能に形成されていればよい。例えば、平面取り部を周方向の1箇所のみに設けてDカット面としてもよいし、平面取り部を周方向の3箇所以上に設けてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、カム機構60が下筒部10に対してラチェット筒部40を上昇させる距離をラチェット歯53のピッチに一致させているが、これに限定されない。カム機構60が下筒部10に対してラチェット筒部40を上昇させる距離は、ラチェット歯のピッチよりも大きくてもよい。これにより、ノズル筒20を下筒部10に対して回転させることで、内容物を少なくともラチェット歯の1ピッチ以上繰り出すことができる。
【0055】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0056】
1…繰出容器 10…下筒部 19…下ラチェット爪(第2係止爪) 20…ノズル筒 20a…上端開口部 40…ラチェット筒部(爪付筒部) 44…上ラチェット爪(第1係止爪) 50…ラチェット軸(被係止軸) 53…ラチェット歯(被係止歯) 70…付勢部 X…内容物
図1
図2
図3