(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】回転電機の回転子、回転電機及び電動駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02K 1/276 20220101AFI20231106BHJP
H02K 21/14 20060101ALI20231106BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20231106BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
H02K1/276
H02K21/14 M
H02K7/116
H02K9/19 B
(21)【出願番号】P 2020151189
(22)【出願日】2020-09-09
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】堀 雅寛
(72)【発明者】
【氏名】澤畠 公則
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-303293(JP,A)
【文献】特開2019-058048(JP,A)
【文献】特開2019-149859(JP,A)
【文献】国際公開第2015/104956(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/276
H02K 21/14
H02K 7/116
H02K 9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石と、前記磁石を収納する磁石収納部を有する回転子コアと、を備え、
前記磁石は、回転軸の軸方向に垂直な横方向断面において、q軸側の部位がd軸側の部位に対して外径側に位置するように配置されると共に、前記回転子コアの外径側の磁石厚さよりも内径側の磁石厚さが大きく形成され、
前記磁石には、軸方向に沿って形成される軸方向空間が形成され、
前記軸方向空間は、前記磁石の前記横方向断面を、回転中心を中心とする円周を境界として前記軸方向空間の断面を含む横方向断面積が相互に等しくなるように外径側領域と内径側領域とに分けた場合に、前記外径側領域における前記軸方向空間による空間密度よりも前記内径側領域における前記軸方向空間による空間密度の方が大きくなるように形成される回転電機の回転子。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機の回転子であって、
前記磁石は、ボンド磁石で構成されることを特徴とする回転電機の回転子。
【請求項3】
請求項1に記載の回転電機の回転子であって、
前記軸方向空間は、横方向断面における形状が円形、または、楕円形及び卵形を含む長円形であることを特徴とする回転電機の回転子。
【請求項4】
請求項1に記載の回転電機の回転子であって、
前記軸方向空間は、2つ以上の孔からなる孔群によって構成されることを特徴とする回転電機の回転子。
【請求項5】
請求項4に記載の回転電機の回転子であって、
前記軸方向空間は、内径側に配置される孔に対して外径側に配置される孔ほど、孔径が小さくなる孔群によって構成されることを特徴とする回転電機の回転子。
【請求項6】
固定子コアを有する固定子と、前記固定子コアの内周側に空隙を介して回転可能に配置された回転子と、を有する回転電機であって、
前記回転子として、請求項1に記載された回転電機の回転子を備えたことを特徴とする回転電機。
【請求項7】
駆動用の動力源として用いられる電動駆動装置であって、
回転電機と電力変換装置とを備え、
前記回転電機として、請求項6に記載された回転電機を備えたことを特徴とする電動駆動装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電動駆動装置であって、
前記軸方向空間は、冷媒流路を構成し、
前記回転電機は、前記軸方向空間を流れる冷媒により冷却可能に構成されたことを特徴とする電動駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転子を備えた回転電機、その回転子、及び回転電機を用いた電動駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2014-100048号公報(特許文献1)に記載された永久磁石型回転電機、及び特開2019-058048号公報(特許文献2)に記載された回転電機が知られている。
【0003】
特許文献1の永久磁石型回転電機は、固定子鉄心を有する固定子と、回転子鉄心、回転子鉄心に形成された複数の磁石埋め込み孔、及び回転子鉄心の半径方向に配置された複数の永久磁石を備える回転子と、を備える。磁石埋め込み孔は、回転子の磁極中心軸上に中心を持ち、回転子の中心側に凸となる円弧状に形成されている。回転子鉄心は、内周側の磁石埋め込み孔において、磁極中心軸から離れた両端部で磁石埋め込み孔内に突出する2つの内周側の支持突起と、磁極中心軸上で内周側の磁石埋め込み孔に設けられたセンター係止構造部とを有し、円弧方向両端部がセンター係止構造部と一方の支持突起とに係合し保持されている(以上、要約参照)。さらに特許文献1では、永久磁石は円弧方向の中央部で2つに分割され、2つに分割された個々の永久磁石は円弧方向におけるd軸側端部の側の厚み(肉厚)がq軸側端部の側の厚み(肉厚)に対して厚くなるように形成されている(段落0025及び
図2参照)。
【0004】
また特許文献2の回転電機は、永久磁石が、一対の磁極面と、一対の磁極面に交差する非磁極面と、磁石本体を貫通して冷媒の流路となる貫通孔と、を備え、貫通孔の両端の開口部が非磁極面に形成されている(要約及び
図1~3参照)。さらに特許文献2には、2つの永久磁石は、一対の磁極面間の厚み(肉厚)が一定の大きさを有するように形成され、固定子と回転子との間隙側(回転子の外周側)に開いたV字型となるように配置された構成が記載されている(段落0011及び
図2参照)。さらに特許文献2には、磁極面に直交する方向から見た場合に、磁極面の重心から貫通孔の重心までの距離d1の方が、貫通孔の重心から非磁極面までの最短距離d2よりも長くなる位置に、貫通孔を形成することが好ましいことが記載されている(段落0018)。この場合、貫通孔は磁極面の端部の側に位置することになる(段落0018及び
図1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-100048号公報
【文献】特開2019-058048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、2つに分割された個々の永久磁石において、円弧方向におけるd軸側端部の側の厚み(肉厚)をq軸側端部の側の厚み(肉厚)に対して厚くする構成が記載されているものの、磁石内部に空間を設ける構成については記載がない。
【0007】
一方、特許文献2では、磁石は一対の磁極面間の厚み(肉厚)が一定の大きさを有するように形成され、磁石内部に貫通孔により形成される空間が設けられている。特許文献2では、磁石の保持力を向上することに対する配慮が十分ではない。例えば、特許文献2の
図2では、磁石の水平断面(回転軸の軸方向に垂直な断面)を、回転子中心を中心とする円を境界として、内径側の水平断面積と外径側の水平断面積とが等しくなるように、区分けした場合に、同じ水平断面積を持つ貫通孔が内径側と外径側とにそれぞれ1つずつ形成されている。貫通孔が設けられた磁石の部位では、磁石の厚み(肉厚)が薄くなり、減磁率が大きくなる。このため特許文献2の磁石では、保持力の向上に制約が生じる。
【0008】
本発明の目的は、回転電機に使用される磁石の保持力を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の回転電機の回転子は、
磁石と、前記磁石を収納する磁石収納部を有する回転子コアと、を備え、
前記磁石は、回転軸の軸方向に垂直な横方向断面において、q軸側の部位がd軸側の部位に対して外径側に位置するように配置されると共に、前記回転子コアの外径側の磁石厚さよりも内径側の磁石厚さが大きく形成され、
前記磁石には、軸方向に沿って形成される軸方向空間が形成され、
前記軸方向空間は、前記磁石の前記横方向断面を、回転中心を中心とする円周を境界として前記軸方向空間の断面を含む横方向断面積が相互に等しくなるように外径側領域と内径側領域とに分けた場合に、前記外径側領域における前記軸方向空間による空間密度よりも前記内径側領域における前記軸方向空間による空間密度の方が大きくなるように形成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、回転電機に使用される磁石の減磁率を低減することができ、磁石の保持力を向上することができる。これにより、回転電機の出力を向上することができる。
【0011】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る回転電機100の、中心軸線Axに平行で且つ中心軸線Axを含む断面図(r-z断面図)である。
【
図2】本発明に係る回転電機100の、中心軸線Axに垂直な断面図(横方向断面図)であり、主要構成部品である固定子130、回転子110及び回転軸101の配置を示す図である。
【
図3】本発明に係る回転子コア111の周方向における一部を切り出して示す、中心軸線Axに垂直な断面図(横方向断面図)である。
【
図4】
図3に示す横方向断面図において、磁石112-1,112-2を外径側領域と内径側領域とに区分けした状態を示す図(横方向断面図)である。
【
図5】比較例の磁石における減磁率と本実施例の磁石における減磁率とを計算した結果を示す図である。
【
図6】本実施例の固定子コア132及び回転子コア111に発生する磁束線φを示す図である。
【
図7】本発明に係る回転子コア111の変更例(第1変更例)について、回転子コア111の周方向における一部を切り出して示す、中心軸線Axに垂直な断面図(横方向断面図)である。
【
図8】本発明に係る回転子コア111の変更例(第2変更例)について、回転子コア111の周方向における一部を切り出して示す、中心軸線Axに垂直な断面図(横方向断面図)である。
【
図9】本発明に係る回転子コア111の変更例(第3変更例)について、回転子コア111の周方向における一部を切り出して示す、中心軸線Axに垂直な断面図(横方向断面図)である。
【
図10】本発明の一実施例に係る回転電機100を駆動用の動力源とする電動駆動装置200の縦方向断面図である。
【
図11】本発明の一実施例に係る回転電機100を搭載したハイブリッド型電気自動車500の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一実施例について説明する。以下の説明において、回転電機100の回転子110の径方向はrで表示し、回転子110の回転軸101の軸方向(回転軸方向)はzで表示し、回転子110の回転方向はθで表示する。また回転軸101の中心を通る軸線(中心軸線)はAxで表示する。すなわち軸方向zは回転軸101の中心軸線Axに沿う方向である。回転子110の径方向r及び回転軸の軸方向zは、それぞれ「径方向」及び「軸方向」と呼んで説明する場合がある。また回転方向θは、中心軸線Axを中心とする周方向に一致することから、「周方向」と呼んで説明する場合がある。
【0014】
以下の説明において、上下方向、鉛直方向及び水平方向を指定して説明する場合があるが、これらの方向は
図2に基づいて設定される方向であり、回転機100の実装状態における上下方向、鉛直方向及び水平方向を指定するものではない。なお鉛直方向は軸方向zに沿う方向とする。
【0015】
また、回転電機100を横方向に切断して示す断面、すなわち中心軸線Ax(軸方向z)に垂直な断面は横方向断面と呼び、回転電機100を縦方向に切断して示す断面、すなわち中心軸線Axに平行な断面は縦方向断面と呼ぶ。垂直断面において、特に中心軸線Axを含む断面は、r-z断面と呼んで説明する場合がある。
【0016】
[実施例1]
図1及び
図2を参照して、本発明の一実施例に係る回転電機100について説明する。
図1は、本発明に係る回転電機100の、中心軸線Axに平行で且つ中心軸線Axを含む断面図(r-z断面図)である。
図2は、本発明に係る回転電機100の、中心軸線Axに垂直な断面図(横方向断面図)であり、主要構成部品である固定子130、回転子110及び回転軸101の配置を示す図である。
【0017】
本実施例に係る回転電機100は、例えば、回転電機のみの動力によって走行する電気自動車や、エンジン及び回転電機の双方によって駆動されるハイブリッド型の電気自動車の走行用モータとして用いるのに好適である。
【0018】
回転電機100は、固定子130と回転子110とハウジング141とを備える。固定子130は、ハウジング141の内部に保持され、固定子コア132と固定子巻線134とを備える。固定子コア132の内周側には、回転子110が空隙Gpを介して回転可能に配置されている。なお
図2の固定子130では、固定子巻線134や、固定子巻線134を巻回するスロット等の構成の図示を省略している。
【0019】
回転子110は、回転軸101に固定された回転子コア111と、複数の極(磁極)を構成する複数の永久磁石112と、非磁性体の端盤115-1,115-2と、を備え、回転軸101を中心として回転可能である。本実施例では回転子の極数が8極であり、回転子コア111には周方向に8極分の永久磁石112が配置される構成を示しているが、極数は8極に限定される訳ではない。以下、永久磁石112は磁石と呼んで説明する。
【0020】
回転子コア111は、主に磁路と強度部材とを構成する役割を持ち、多くの場合、薄板状の電磁鋼板を積層して作られる。薄板を積層して回転子コア111を形成する場合、軸方向zは薄板の積厚方向に一致する。端盤115-1,115-2は、回転子コア111を形成する電磁鋼板(積層鋼板)を軸方向において固定するために、回転子コア111の軸方向両端部に配置される構造部材である。回転軸101は駆動軸又はシャフトと呼ばれる場合もある。
【0021】
ハウジング141は、軸受151-1,151-2が設けられた一対のエンドブラケット141-1,141-2と、側面部141-3と、を有し、固定子130及び回転子110を内包する。回転軸101は、回転子110と一体に構成され、軸受151-1,151-2により回転自在に保持されている。
【0022】
本実施例では、回転電機100は3相交流電流により駆動されるものとする。このために回転軸101は、回転子110の極の位置や回転速度を検出するレゾルバ153(回転角センサ)を備える。レゾルバ153からの出力に基づいて、図示しない制御回路及び駆動回路において、図示しないパワーモジュールがスイッチング動作を行うための制御信号及び駆動信号が生成される。
【0023】
パワーモジュールは、駆動信号に基づきスイッチング動作を行い、バッテリ510(
図11参照)から供給される直流電力を3相交流電力に変換する。この3相交流電力は、固定子巻線(コイル)134に供給され、回転磁界が固定子コア132に発生する。3相交流電流の周波数は、レゾルバ153の出力値に基づいて制御され、3相交流電流の回転子110に対する位相も、同じくレゾルバ153の出力値に基づいて制御される。なお固定子巻線134は、U相、V相、W相が周方向に所定の順番に配置される。
【0024】
3相交流電力を生成するための制御回路、駆動回路及びパワーモジュールの構成と固定子巻線(U相、V相、W相)134の構成とは、周知の技術を適用して実施することができる。
【0025】
本実施例の回転電機100は埋込磁石モータと呼ばれるタイプの回転電機であり、回転子コア111の外周近傍には、周方向に沿って、磁石112を固定する複数の孔(磁石挿入孔)114が、設けられている。磁石112は磁束を発生させる部品であり、磁石挿入孔114は磁石112が挿入されて収納される部位である。以下、磁石挿入孔114は磁石挿入部又は磁石収納部と呼んで説明する。
【0026】
磁石収納部114は回転子コア111に形成される孔であり、本実施例では軸方向zに延伸する貫通孔として設けられ、磁石112が埋め込まれる。なお、磁石収納部114は回転子コア111を軸方向zに貫通しない穴として設けられてもよい。
【0027】
次に、
図3及び
図4を参照して、磁石収納部114及び磁石112について、詳細に説明する。
図3は、本発明に係る回転子コア111の周方向における一部を切り出して示す、中心軸線Axに垂直な断面図(横方向断面図)である。
図4は、
図3に示す横方向断面図において、磁石112-1,112-2を外径側領域と内径側領域とに区分けした状態を示す図(横方向断面図)である。
【0028】
回転子110は、磁石112(112-1,112-2)と、磁石112(112-1,112-2)を収納する磁石収納部(磁石収納空間)114(114-1,114-2)を有する回転子コア111と、を備える。すなわち、回転子コア111には磁石112(112-1,112-2)を収納する磁石収納部(磁石収納空間)114(114-1,114-2)が形成されている。
【0029】
図3に示すように、本実施例では、1つの極を構成する磁石112が2つの磁石112-1,112-2に分割され、2つの磁石112-1,112-2は固定子130の側に開いたV字型となるように配置される。このために、磁石収納部114も2つの磁石収納部114-1,114-2に分割される。本実施例では、2つの磁石収納部114-1,114-2は、相互に連通しない独立した空間を形成する。
【0030】
磁石112-1,112-2は、回転子コア111の磁石収納部114-1,114-2に挿入されて固定される。磁石112-1,112-2は、
図3の横方向断面上において、相互に向かい合う対辺112a,112bを磁極面とし、2つの磁極面112a,112bを接続する対辺112c,112dを有する。
【0031】
磁極面112a,112bは、
図3の横方向断面上において、曲線を描く面として形成されている。本実施例では、磁極面112a,112bは曲率の異なる円弧形状(円弧面)としている。回転子110及び回転子コア111の径方向において、磁極面112aは磁極面112bに対して径方向外側に配置され、磁極面112bは磁極面112aに対して径方向内側に配置される。すなわち、磁極面112aは固定子130側に配置され、磁極面112bは回転軸101側(反固定子側)に配置される。
【0032】
対辺112c,112dは、磁石112-1,112-2の、円弧形状の周方向における端面である。回転子110及び回転子コア111の周方向において、端面112cはd軸側に配置され、端面112dはq軸側に配置される。端面112cは2つの磁極面112a,112bの中間部分が平面状に形成され、磁極面112a,112bに接続される部分が
図3の横方向断面上で湾曲する曲面で形成される。端面112dは2つの磁極面112a,112bの間の全体が横方向断面上で湾曲する曲面で形成される。なお本実施例では、端面112c及び端面112dの曲面は、円弧形状としている。
【0033】
2つの磁石112-1,112-2はV字型に配置されるため、端面112dにおける2つの磁極面112a,112bの間の中央部分は、端面112cにおける2つの磁極面112a,112bの間の中央部分よりも、径方向外側に位置する。言い換えれば、端面112cにおける2つの磁極面112a,112bの間の中央部分は、端面112dにおける2つの磁極面112a,112bの間の中央部分よりも、径方向内側に位置する。
【0034】
本実施例では、磁石112-1,112-2をボンド磁石で構成する形態を説明する。しかし、磁石112-1,112-2はボンド磁石に限定される訳ではなく、他の磁石、例えば焼結磁石、フェライト磁石又はその他の磁石を利用することができる。
【0035】
磁石(ボンド磁石)112-1,112-2は、樹脂の結合材(バインド材)と磁石粉末(磁性材)により成形された磁石であり、成形される磁石の形状に自由度がある。このため、電気的及び強度的に理想に近い形状を実現することができる。特に本実施例では、磁石112-1,112-2の形状や軸方向空間120を形成するために、ボンド磁石は好適である。
【0036】
2つの磁石収納部114-1,114-2は、相互に連通する1つの空間に形成されてもよく、この場合、
図3の2つの磁石収納部114-1,114-2を分割する分割部116に対応する箇所に、磁石収納部の内周面から空間の内側に向かって突出して、2つの磁石112-1,112-2を分離するように支持する凸部(磁石支持部)を設けるとよい。また本発明の実施にあたり、磁石112を2つの磁石112-1,112-2に分割する必要はなく、磁石112は2つの磁石112-1,112-2が一体化された形状であってもよい。
【0037】
また本実施例では、成形済みのボンド磁石112-1,112-2を磁石収納部114-1,114-2に挿入する形態としているが、ボンド磁石112-1,112-2の材料を磁石収納部114-1,114-2に注入してインサート成形することもできる。磁石収納部114-1,114-2に成形済みのボンド磁石112-1,112-2を挿入する場合、磁石収納部114-1,114-2の内周面とボンド磁石112-1,112-2の外周面との間に隙間が形成される。一方、磁石収納部114-1,114-2にボンド磁石112-1,112-2の材料を注入してインサート成形する場合、磁石収納部114-1,114-2の内周面と磁石112-1,112-2の外周面との間に隙間が形成されず、磁石収納部114-1,114-2の内周面と磁石112-1,112-2の外周面とが密着する。
【0038】
図4に示すように、磁石112-1,112-2は、回転軸101の軸方向zに垂直な横方向断面において、q軸側の部位がd軸側の部位に対して外径側に位置するように配置されると共に、回転子コア111の外径側(q軸側)の磁石厚さToよりも内径側(d軸側)の磁石厚さTiが大きく形成される。すなわち、外径側の磁石厚さToと内径側の磁石厚さTiは、To<Tiの関係を持つ。
【0039】
本明細書において、磁石厚さTi,Toは、磁石112-1,112-2の外周側の磁極面112aに垂直な方向における、磁極面112aと112bとの間の寸法で定義される。
【0040】
上述した様に、端面112cにおける2つの磁極面112a,112bの間の中央部分が、端面112dにおける2つの磁極面112a,112bの間の中央部分よりも、径方向内側に位置する配置から、磁石112-1,112-2は内径側が厚く(Ti)、外径側が薄く(To)、磁石厚さが不均一に形成されている。
【0041】
磁石112-1,112-2には、軸方向zに沿って形成される軸方向空間120が形成されている。本実施例では、軸方向空間120は孔として形成されており、回転子コア111には2つの孔(軸方向空間)120が形成されている。ここでは、孔(軸方向空間)120は貫通孔に限定されないものとする。また軸方向空間120は、1つの孔で構成されてもよい。また本実施例では、軸方向空間120は横方向断面が円形の孔であるが、円形に限定される訳ではない。
【0042】
軸方向空間120は貫通孔として設けられることにより、後述するように、気体又は液体の冷媒を流す冷媒流路として利用することができる。軸方向空間120を冷媒流路として利用する場合、磁石112-1,112-2は冷媒によって直接冷却されるため、磁石112-1,112-2の温度上昇を抑制することができる。磁石112-1,112-2は温度上昇の抑制により、保磁力を向上することができる。
【0043】
なお、磁石112-1,112-2を接着剤やモールドで磁石収納部114-1,114-2に固定する際は、軸方向空間120をシールし、接着剤や樹脂が軸方向空間120に入るのを防ぐことが望ましい。
【0044】
軸方向空間120は、磁石112-1,112-2の横方向断面を、回転中心を中心とする円周Cを境界として軸方向空間120の断面を含む横方向断面積が相互に等しくなるように外径側領域112oと内径側領域112iとに分けた場合に、外径側領域112oにおける軸方向空間120による空間密度よりも内径側領域112iにおける軸方向空間120による空間密度の方が大きくなるように形成される。なお
図4では、内径側領域112iに占める軸方向空間120の部分を白抜きの状態で、外径側領域112oに占める軸方向空間120の部分を黒く塗りつぶした状態で、示している。
【0045】
特に本実施例では、磁石112-1,112-2に設けられた全ての軸方向空間120が磁石厚さの大きい内径側(d軸側)に偏って配置された形態である。なお本実施例の磁石112-1,112-2では、1つの磁石に対して2つの軸方向空間120が設けられている。
【0046】
ここで、
図5及び
図6を参照して、内径側(d軸側)の磁石厚さTi及び外径側(q軸側)の磁石厚さToと、内径側領域112iの軸方向空間120の空間密度及び外径側領域112o軸方向空間120の空間密度と、の関係について、説明する。
【0047】
図5は、比較例の磁石における減磁率と本実施例の磁石における減磁率とを計算した結果を示す図である。
図5では、回転子コア111に配置された磁石112-1,112-2,112-1’,112-2’の横方向断面が図示されている。
【0048】
図5では灰色に塗られた部分で減磁が生じ、特に色が濃くなる部分で減磁率が大きくなる。(A)は本実施例の磁石112-1,112-2における減磁率を示しており、軸方向空間120と磁極面112a及び磁極面112bとの間で軽微な減磁DR1,DR2が生じ、減磁は軸方向空間120の近傍に限定されている。本実施例では、軸方向空間120が設けられた部分でも磁石厚さが大きくなり、減磁率を低減することができる。
【0049】
(B)は比較例の磁石112-1’,112-2’における減磁率を示しており、比較例の磁石112-1’,112-2’は横方向断面において厚さが一様である。磁石112-1’,112-2’では、軸方向空間120’から磁極面112a’及び磁極面112b’に到る範囲で減磁DR1’,DR2’が生じ、軸方向空間120’の近傍では減磁率が大きくなっている。本比較例では、軸方向空間120が設けられた部分で特に磁石厚さが小さくなり、減磁率が大きくなる。
【0050】
図5から、軸方向空間120を配置する部分の磁石の厚みを増すことで、減磁を低減できることが分かる。このことから、磁石厚さを厚くした内径側(d軸側)の軸方向空間120による空間密度を、磁石厚さを薄くした外径側(q軸側)の軸方向空間120による空間密度よりも、大きくすることにより、磁石112-1,112-2に生じる減磁を低減できることが分かる。すなわち、本実施例の磁石112-1,112-2は、減磁耐力を向上することができ、保磁力を向上することができる。
【0051】
図6は、本実施例の固定子コア132及び回転子コア111に発生する磁束線φを示す図である。
図6では、固定子コア132及び回転子コア111の横方向断面が図示されている。
【0052】
図6から分かるように、磁石112-1,112-2は、V字型に配置され、外径側(q軸側)の磁石厚さToよりも内径側(d軸側)の磁石厚さTiが大きく形成されることにより、磁束線φが磁石112-1,112-2の磁極面112a,112bに沿うように発生する。リラクタンストルクを有効活用するためには、磁束線φに沿って磁石112a,112bを配置することが望ましい。本実施例では、磁石112-1,112-2が磁束線φに沿って配置されるため、リラクタンストルクを有効活用することができ、回転電機100の最大トルクを向上することができる。
【0053】
上述したように本実施例では、回転子110は下記のような構成を備える。
磁石112-1,112-2と、磁石112-1,112-2を収納する磁石収納部(磁石収納空間)114-1,114-2を形成する回転子コア111と、を備え、
磁石112-1,112-2は、回転軸101の軸方向に垂直な横方向断面において、q軸側の部位がd軸側の部位に対して外径側に位置するように配置されると共に、回転子コア111の外径側(q軸側)の磁石厚さToよりも内径側(d軸側)の磁石厚さTiが大きく形成され、
磁石112-1,112-2には、軸方向に沿って形成される軸方向空間120が形成され、
軸方向空間120は、磁石112-1,112-2の前記横方向断面を、回転中心を中心とする円周Cを境界として軸方向空間120の断面を含む横方向断面積が相互に等しくなるように外径側領域112oと内径側領域112iとに分けた場合に、外径側領域112oにおける軸方向空間120による空間密度よりも内径側領域112iにおける軸方向空間120による空間密度の方が大きくなるように形成される。
【0054】
本実施例の回転子110は、軸方向空間120を設ける箇所の磁石112-1,112-2の厚みが増すことで、減磁耐力が向上する。
【0055】
この場合、磁石112-1,112-2は、ボンド磁石で構成されることが好ましい。ボンド磁石は、樹脂の結合材(バインド材)と磁石粉末(磁性材)を用いて射出成型により形成される磁石であり、形状自由度が大きく、焼結磁石と比較して軸方向空間120を容易に設けることができる。
【0056】
本実施例の回転電機100は、固定子コア132を有する固定子130と、固定子コア132の内周側に空隙Gpを介して回転可能に配置された回転子110と、を有する回転電機であって、回転子110として、上述した回転子110を備える。これにより、本実施例の回転電機100は、リラクタンストルクを有効活用できる磁石配置となり、最大トルクが向上する。
【0057】
[変更例1]
図7を参照して、実施例1の変更例を説明する。
図7は、本発明に係る回転子コア111の変更例(第1変更例)について、回転子コア111の周方向における一部を切り出して示す、中心軸線Axに垂直な断面図(横方向断面図)である。
【0058】
本変更例では、実施例1に対して、軸方向空間120の形状を変更している。その他の構成は、実施例1と同様である。
図7では、実施例1で説明した構成に対応する構成には、実施例1と同じ符号を付している。
【0059】
実施例1では、軸方向空間(貫通孔)120は横方向断面における形状が円形であった。軸方向空間120の横方向断面における形状は円形に限定される訳ではなく、
図7に示すような長円形であってもよい。なお本明細書において、長円形は、
図7に示す形状に限定される訳ではなく、楕円形及び卵形を含むものとする。
【0060】
すなわち軸方向空間120は、横方向断面における形状が円形、または、楕円形及び卵形を含む長円形であることが好ましい。軸方向空間(貫通孔)を、横方向断面が円や長円形など、角が少ない形状とすることで、圧力分布の均一化が可能となり、磁石112-1,112-2の強度が向上する。
【0061】
[変更例2]
図8を参照して、実施例1の変更例を説明する。
図8は、本発明に係る回転子コア111の変更例(第2変更例)について、回転子コア111の周方向における一部を切り出して示す、中心軸線Axに垂直な断面図(横方向断面図)である。
【0062】
本変更例では、実施例1に対して、軸方向空間120の構成を変更している。その他の構成は、実施例1と同様である。
図8では、実施例1で説明した構成に対応する構成には、実施例1と同じ符号を付している。
【0063】
実施例1では、軸方向空間120を2つの孔からなる孔群によって構成する形態としている。しかし軸方向空間120は、2つに限定される訳ではない。本変更例では、軸方向空間120を3つの孔120a,120b,120cで構成している。3つの孔120a,120b,120cは、実施例1の軸方向空間120と同様に構成されるものとする。軸方向空間120は、4つ以上の孔からなる孔群で構成されてもよい。
【0064】
実施例1では、軸方向空間120を1つの孔によって構成する形態も説明しているが、軸方向空間120は2つ以上の孔からなる孔群によって構成されることが好ましい。この場合、軸方向空間120の断面積は、孔群を構成する複数の孔の断面積の総和となる。軸方向空間120を複数個の孔からなる孔群とすることで、1つあたりの孔の小径化が可能となり、孔のレイアウトの自由度が向上する。この場合、孔群120は、内径側領域112iに占める孔群の面積Sinと外径側領域112oに占める孔群の面積Soutとが、Sin>Soutとなるように、構成される。
【0065】
この場合、軸方向空間120は、内径側に配置される孔120aに対して外径側に配置される孔120,120cほど、孔径が小さくなる孔群によって構成されることが好ましい。孔120の孔径を外径側に配置される孔ほど小さくすることで、磁石112-1,112-2の厚さを略均一化でき、保磁力の低下を抑制して保磁力を均一化できる。
【0066】
[変更例3]
図9を参照して、実施例1の変更例を説明する。
図9は、本発明に係る回転子コア111の変更例(第3変更例)について、回転子コア111の周方向における一部を切り出して示す、中心軸線Axに垂直な断面図(横方向断面図)である。
【0067】
本変更例では、実施例1に対して、軸方向空間120の構成を変更しており、変更例2の軸方向空間120の構成をさらに変更したものである。その他の構成は、実施例1又は変更例2と同様である。
図9では、実施例1及び変更例2で説明した構成に対応する構成には、実施例1及び変更例2と同じ符号を付している。
【0068】
変更例2において、最も外径側に配置された孔120cは他の孔120a,120bから離れて配置されてもよい。これにより、孔120a,120b,120cを冷媒の流路として構成し、孔120a,120b,120cに冷媒を流した際に、磁石112-1,112-2内に生じる温度差を低減することができる。言い換えれば、本発明に係る実施例は、軸方向空間120を構成する孔が磁石112-1,112-2の外径側(q軸側)の端部に配置されることを、否定するものではない。
【0069】
この場合も、孔群120は、内径側領域112iに占める孔群の面積Sinと外径側領域112oに占める孔群の面積Soutとが、Sin>Soutとなるように、構成される。
【0070】
[実施例2]
本実施例では、
図10及び
図11を参照して、回転電機100を搭載した電気自動車について説明する。
図10は、本発明の一実施例に係る回転電機100を駆動用の動力源とする電動駆動装置200の縦方向断面図である。
図11は、本発明の一実施例に係る回転電機100を搭載したハイブリッド型電気自動車500の概略構成を示す図である。
図10及び
図11では、実施例1(変更例を含む)で説明した構成に対応する構成に、実施例1と同じ符号を付している。
【0071】
実施例1に係る回転電機100は、回転電機のみの動力によって走行する純粋な電気自動車や、エンジン及び回転電機の双方によって駆動されるハイブリッド型の電気自動車の駆動装置200に適用できるが、以下ではハイブリッド型の電気自動車を例に説明する。以下、ハイブリッド型電気自動車500は車両と呼んで説明する。
【0072】
図10に示すように、電動駆動装置200は、回転電機100と、出力軸(駆動軸)210と、回転電機100の回転軸101と出力軸210との間に設けられたギア220と、電力変換装置230と、を備える。本実施例では、ギア220はハウジング141-4の内部に収納される。本実施例では、電力変換装置230は回転電機100と一体化されている。
【0073】
本実施例の電動駆動装置200は、車両500の駆動用の動力源として用いられる電動駆動装置であって、回転電機と電力変換装置とを備え、回転電機として、実施例1(変更例を含む)で説明した回転電機100を備える。これにより、保磁力が向上した電動駆動装置を実現することができる。
【0074】
また、本実施例の電動駆動装置200は、軸方向空間120を冷媒RFが流れる冷媒流路として利用し、回転電機100に冷媒RFを循環させる。冷媒流路は、回転軸101内部→端盤115-2→磁石112-1,112-1の軸方向空間120→端盤115-1→コイル134のコイルエンド→回転電機100の外部をとして構成される。
【0075】
冷媒RFは、回転電機に発生する熱を吸収する物質であり、油等の流体や、空気等の気体を用いることができる。冷媒RFは、回転電機100の内部に入れる場合、絶縁を保てるように、油(ATF)とする場合が多い。
【0076】
冷媒RFの冷却は図示しないチラーを設けて行ってもよいし、車両500の場合、走行風を用いることもできる。冷媒RFの循環には、図示しないポンプを用いてもよいし、回転電機100の回転による力を利用してもよい。
【0077】
上述した様に、本実施例の電動駆動装置200では、軸方向空間120は冷媒流路を構成し、回転電機100は軸方向空間120を流れる冷媒により冷却可能に構成される。これにより、磁石112-1,112-2を直接冷却することができ、磁石温度を低減することができる。これにより磁石112-1,112-2は、保磁力がさらに向上する。加えて、回転電機100の内部温度(コイルやコア等の温度)を低減することができ、回転電機100の、引いては電動駆動装置200の高効率化が可能となる。
【0078】
図11に示すように、車両500には、エンジン520と第1回転電機100-1と第2回転電機100-2とバッテリ580とが搭載されている。バッテリ580は、第1回転電機100-1や第2回転電機100-2による駆動力が車両500に必要な場合には、電力変換装置230を介して第1回転電機100-1や第2回転電機100-2に直流電力を供給する。なお
図11では、電力変換装置230は第1回転電機100-1及び第2回転電機100-2から分離された形態として図示されているが、
図10に示すように、電力変換装置230は第1回転電機100-1及び第2回転電機100-2に一体化された構成にすることができる。
【0079】
バッテリ580は、回生走行時には第1回転電機100-1や第2回転電機100-2から直流電力を受ける。バッテリ580と第1回転電機100-1や第2回転電機100-2との間の直流電力の授受は、電力変換装置230を介して行われる。また、図示していないが、車両100には低電圧電力(例えば、14ボルト系電力)を供給するバッテリが搭載されており、以下に説明する制御回路に直流電力を供給する。
【0080】
なお、第1回転電機100-1と第2回転電機100-2とはほぼ同じ構造を有しており、上述した回転電機100で構成することができる。但し、上述した押圧部材201,202に係る構造は、第1回転電機100-1と第2回転電機100-2の双方が備えている必要はなく、一方だけが備えていてもよい。
【0081】
エンジン520及び第1回転電機100-1や第2回転電機100-2による回転トルクは、変速機530とデファレンシャルギア560を介して前輪510に伝達される。変速機530は、変速機制御装置534により制御される。エンジン520は、エンジン制御装置524により制御される。バッテリ580は、バッテリ制御装置584により制御される。変速機制御装置534、エンジン制御装置524、バッテリ制御装置584、電力変換装置600及び統合制御装置570は、通信回線574によって互いに接続されている。
【0082】
統合制御装置570は、変速機制御装置534、エンジン制御装置524、電力変換装置230及びバッテリ制御装置584よりも上位の制御装置であり、変速機制御装置534、エンジン制御装置524、電力変換装置230及びバッテリ制御装置584の各状態を表す情報を、通信回線574を介してそれらからそれぞれ受け取る。統合制御装置570は、取得したそれらの情報に基づき各装置への制御指令を演算する。演算された制御指令は、通信回線574を介してそれぞれの装置へ送信される。
【0083】
バッテリ580は、リチウムイオン電池又はニッケル水素電池などの2次電池で構成され、250ボルトから600ボルト、又はそれ以上の高電圧の直流電力を出力する。バッテリ制御装置584は、バッテリ580の充放電状況やバッテリ580を構成する各単位セル電池の状態を、通信回線574を介して統合制御装置570に出力する。
【0084】
統合制御装置570は、バッテリ制御装置584からの情報に基づいてバッテリ580の充電が必要と判断すると、電力変換装置230に発電運転の指示を出す。また、統合制御装置570は、主に、エンジン520、第1回転電機100-1及び第2回転電機100-2の出力トルクの管理と、エンジン520の出力トルクと第1回転電機100-1及び第2回転電機100-2の出力トルクとの総合トルクやトルク分配比の演算処理を行い、この演算処理結果に基づく制御指令を、変速機制御装置534、エンジン制御装置524及び電力変換装置600へ送信する。電力変換装置230は、統合制御装置570からのトルク指令に基づき、指令通りのトルク出力又は発電電力が発生するように第1回転電機100-1及び第2回転電機100-2を制御する。
【0085】
電力変換装置230には、第1回転電機100-1及び第2回転電機100-2を運転するためのインバータ回路を構成するパワー半導体が設けられている。電力変換装置230は、統合制御装置570からの指令に基づきパワー半導体のスイッチング動作を制御する。このパワー半導体のスイッチング動作により、第1回転電機100-1と第2回転電機100-2は、電動機として又は発電機として運転される。
【0086】
第1回転電機100-1と第2回転電機100-2を電動機として運転する場合は、高電圧のバッテリ580からの直流電力が電力変換装置230のインバータの直流端子に供給される。電力変換装置230は、パワー半導体のスイッチング動作を制御して、供給された直流電力を3相交流電力に変換し、変換した電力を第1回転電機100-1と第2回転電機100-2に供給する。一方、第1回転電機100-1と第2回転電機100-2を発電機として運転する場合には、第1回転電機100-1及び第2回転電機100-1の回転子が外部から加えられる回転トルクで回転駆動され、第1回転電機100-1及び第2回転電機100-2の固定子巻線に3相交流電力が発生する。発生した3相交流電力は、電力変換装置230で直流電力に変換され、この直流電力がバッテリ580に供給されることにより、高電圧のバッテリ180が充電される。
【0087】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、実施例の構成の一部について、削除したり、他の構成を追加したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0088】
100…回転電機、101…回転軸、110…回転子、111…回転子コア、112,112-1,112-2…磁石、112i…磁石112-1,112-2の横方向断面における内径側領域、112o…磁石112-1,112-2の横方向断面における外径側領域、114,114-1,114-2…磁石収納部(磁石収納空間)、120…軸方向空間、120a,120b,120c…軸方向空間120を構成する孔、130…固定子、132…固定子コア、200…電動駆動装置、500…車両、Gp…空隙。