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特許7378380比例積分制御装置並びに比例積分制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】比例積分制御装置並びに比例積分制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 7/02 20060101AFI20231106BHJP
【FI】
G05B7/02 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020184421
(22)【出願日】2020-11-04
(65)【公開番号】P2022074412
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】門前 知幸
(72)【発明者】
【氏名】関 輝
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-47732(JP,A)
【文献】国際公開第2011/136160(WO,A1)
【文献】米国特許第5148364(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の目標値と第1のフィードバック値から第1の偏差を求める第1の減算器と、第2の目標値と第2のフィードバック値から第2の偏差を求める第2の減算器と、第2の比例ゲインを有する比例器と、第2の積分ゲインを有する積分器と、前記比例器と前記積分器の出力を加算して操作端に対する操作量とする加算器と、前記第1の偏差に前記第2の比例ゲインに対する第1の比例ゲインの比を乗じる比例ゲイン変換器と、前記第1の偏差に前記第2の積分ゲインに対する第1の積分ゲインの比を乗じる積分ゲイン変換器を備え、
前記第2の偏差から前記操作量を定めるの制御状態において前記比例器は前記第の偏差を入力するとともに前記積分器は前記第の偏差を入力し、前記第の偏差から前記操作量を定めるの制御状態において前記比例器は前記比例ゲイン変換器を介して前記第1の偏差を入力するとともに前記積分器は前記積分ゲイン変換器を介して前記第1の偏差を入力するように切り替えることを特徴とする比例積分制御装置。
【請求項2】
電力系統に接続された無効電力制御装置の電力用半導体の点弧を制御するための請求項1に記載の比例積分制御装置であって、
前記第1の目標値を力率(無効電力)の制御指令、前記第1のフィードバック値を力率(無効電力)のフィードバック値とし、前記第2の目標値を電圧の制御指令、前記第2のフィードバック値を電圧のフィードバック値として用いることを特徴とする比例積分制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の比例積分制御装置であって、
一定の電圧値を逸脱するときに電圧制御に切り替え、一定の力率(無効電力)を逸脱するときに力率(無効電力)制御に切り替えることを特徴とする比例積分制御装置。
【請求項4】
異なる電力系統に接続された第1と第2の変換器が直流回路を介して接続されて周波数変換を行う周波数変換所の第1と第2の変換器の点弧を制御するための請求項1に記載の比例積分制御装置であって、
前記第1の変換器について、これを制御するための第1の比例積分制御装置は、前記第1の目標値を電圧の制御指令、前記第1のフィードバック値を電圧のフィードバック値とし、前記第2の目標値を力率(無効電力)の制御指令、前記第2のフィードバック値を力率(無効電力)のフィードバック値として用い、
前記第2の変換器について、これを制御するための第2の比例積分制御装置は、前記第1の目標値を周波数の制御指令、前記第1のフィードバック値を周波数のフィードバック値とし、前記第2の目標値を有効電力の制御指令、前記第2のフィードバック値を有効電力のフィードバック値として用いることを特徴とする比例積分制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の比例積分制御装置であって、
前記第1の変換器について、これを制御するための第1の比例積分制御装置は、一定の電圧値を逸脱すると電圧制御に切り替え、一定の力率(無効電力)を逸脱すると力率制御に切り替え、
前記第2の変換器について、これを制御するための第2の比例積分制御装置は、一定の周波数を逸脱すると電圧制御に切り替え、一定の有効電力を逸脱すると有効電力制御に切り替えることを特徴とする比例積分制御装置。
【請求項6】
第1の目標値と第1のフィードバック値から第1の偏差を求める第1の減算ステップと、第2の目標値と第2のフィードバック値から第2の偏差を求める第2の減算ステップと、第2の比例ゲインを有する比例ステップと、第2の積分ゲインを有する積分ステップと、前記比例ステップと前記積分ステップの出力を加算して操作端に対する操作量とする加算ステップと、前記第1の偏差に前記第2の比例ゲインに対する第1の比例ゲインの比を乗じる比例ゲイン変換ステップと、前記第1の偏差に前記第2の積分ゲインに対する第1の積分ゲインの比を乗じる積分ゲイン変換ステップを備え、
前記第2の偏差から前記操作量を定める2の制御状態において前記比例ステップは前記第の偏差を入力するとともに前記積分ステップは前記第の偏差を入力し、前記第の偏差から前記操作量を定めるの制御状態において前記比例ステップは前記比例ゲイン変換ステップを介して前記第1の偏差を入力するとともに前記積分ステップは前記積分ゲイン変換ステップを介して前記第1の偏差を入力するように切り替えることを特徴とする比例積分制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数の制御信号を切り替えて1つの操作端に与える比例積分制御装置並びに比例積分制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
比例積分制御は、検出器やセンサーからのフィードバック値(出力)を読み取り、目標値(制御値)と比較しながら操作量(入力)を制御して目標値に近づける自動制御方式の一つであり、操作量を定めるにあたり制御量と目標値の偏差に比例した大きさを求める比例演算と、偏差の積分に比例した大きさを求める積分演算とを実行し、その和を操作量(制御信号)として操作端に与えこれを制御する制御方式である。比例積分制御について、特許文献1のものが知られている。
【0003】
特許文献1は、単一の比例積分制御装置が、単一の操作端に対する操作量を決定している。図1は、係る一般的な比例積分制御装置1の構成例を示すブロック図であり、目標値Ir1とフィードバック値I1に対して、減算器2で偏差ΔIを求め、偏差ΔIを比例器3と積分器4に入力する。5はこの2つからの出力を加算している加算器である。なおKp1は比例器3の入出力特性を示す比例ゲイン、Ki1は積分器4の積分ゲイン、Sは演算子であり、Ki1/Sは積分器4の積分特性を表している。係る比例積分制御装置1の動作については一般的によく知られているので、その説明は省略する。
【0004】
これに対し、制御対象によっては複数の比例積分制御器の出力を適宜切り替えて一つの操作端の操作量とする構成の比例積分制御装置を構成する場合がある。これは例えばあるタイミングでは、温度偏差に基づく比例積分制御装置の出力を一つの操作端に対する操作量として与え、また別のタイミングでは圧力偏差に基づく比例積分制御装置の出力を同じ一つの操作端に対する操作量として与えるといった用法を採用する制御対象における比例積分制御装置の構成例である。
【0005】
この場合には、比例積分制御装置は2つの比例積分制御器と切り替え器を備えて構成される。つまり、異なる二つの比例積分制御器を並列し(制御器が二つ)、切り替えて使用することになる。
【0006】
図2は2つの比例積分制御器と切替器を備える比例積分制御装置の構成例を示すブロック図である。比例積分制御装置1は、並列に接続された2つの比例積分制御器1A、1Bと切替器6により構成されている。なお、2つの比例積分制御器1A、1Bは、記号AとBを付して区別しているが、それぞれの構成は図1で述べたと同じであるので、ここでの説明を省略する。
【0007】
図2の構成の場合に、切替器6は比例積分制御器1Aの側を選択しており、この時に比例積分制御器1Aは目標値Ir1とフィードバック値I1に対して、減算器2Aで偏差ΔI1を求め、偏差ΔI1を比例器3Aと積分器4Aに入力する。加算器5Aはこの2つからの出力を加算して、最終的に比例積分制御器1Aの出力を操作端に与える操作量Irefとしている。先の例によれば、偏差ΔI1は温度偏差であり、温度制御の観点から操作端を制御している状態である。
【0008】
これに対し、温度制御から圧力制御に切り替える場合には、まず切替器6の切り替えを行い、比例積分制御器1Aから比例積分制御器1Bの制御に移行する。比例積分制御器1Bの制御では、圧力についての目標値Ir2とフィードバック値I2に対して、減算器2Bで偏差ΔI2を求め、偏差ΔI2を比例器3Bと積分器4Bに入力する。加算器B5はこの2つからの出力を加算して、最終的に比例積分制御器1Bの出力を操作端に与える操作量Irefとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平5-181502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図2に例示する比例積分制御装置は、切替器6を用いた切替の際に、制御の連続性を確保するために目標値とフィードバック値との偏差を時間積分した積分値の引き継ぎが必要であり、「切り替え前の比例積分制御」の積分器から「切り替え後の比例積分制御」の積分器へ積分値を引継がなければならない。
【0011】
積分値の引継ぎを行わないと、制御を切り替えた瞬間に2つの積分値の差分により出力が変化してしまい、予期せぬ出力変動を発生させ不安定な出力となる場合がある。また、積分値の引継ぎは、ソフトロジック的にも煩雑であり、正しく動作できない場合には制御が不安定となる場合もある。
【0012】
以上のことから本発明の目的は、比例積分制御を切替える場合、切替え前後の比例積分制御器間で積分値の引継ぎが不要になる制御切替手法を採用した比例積分制御装置並びに比例積分制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の比例積分制御装置は、「第1の目標値と第1のフィードバック値から第1の偏差を求める第1の減算器と、第2の目標値と第2のフィードバック値から第2の偏差を求める第2の減算器と、第2の比例ゲインを有する比例器と、第2の積分ゲインを有する積分器と、比例器と積分器の出力を加算して操作端に対する操作量とする加算器と、第1の偏差に第2の比例ゲインに対する第1の比例ゲインの比を乗じる比例ゲイン変換器と、第1の偏差に第2の積分ゲインに対する第1の積分ゲインの比を乗じる積分ゲイン変換器を備え、第1の制御状態に置いて比例器は第1の偏差を入力するとともに積分器は第1の偏差を入力し、第2の制御状態に置いて比例器は比例ゲイン変換器を介して第1の偏差を入力するとともに積分器は積分ゲイン変換器を介して第1の偏差を入力する」ことを特徴とする。
【0014】
また本発明の比例積分制御方法は、「第1の目標値と第1のフィードバック値から第1の偏差を求める第1の減算ステップと、第2の目標値と第2のフィードバック値から第2の偏差を求める第2の減算ステップと、第2の比例ゲインを有する比例ステップと、第2の積分ゲインを有する積分ステップと、比例ステップと積分ステップの出力を加算して操作端に対する操作量とする加算ステップと、第1の偏差に第2の比例ゲインに対する第1の比例ゲインの比を乗じる比例ゲイン変換ステップと、第1の偏差に第2の積分ゲインに対する第1の積分ゲインの比を乗じる積分ゲイン変換ステップを備え、第1の制御状態に置いて比例ステップは第1の偏差を入力するとともに積分ステップは第1の偏差を入力し、第2の制御状態に置いて比例ステップは比例ゲイン変換ステップを介して第1の偏差を入力するとともに積分ステップは積分ゲイン変換ステップを介して第1の偏差を入力する」ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の手法によれば、制御を切り替えた瞬間に予期せぬ出力変動が発生せず、制御の安定性を向上することで、制御対象が異なる場合に、即座に適した制御方式に切り替えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一般的な比例積分制御装置1の構成例を示すブロック図。
図2】2つの比例積分制御器と切り替え器を備える比例積分制御装置の構成例を示すブロック図。
図3】本発明の実施例に係る比例積分制御装置の構成例を示す図。
図4】本発明の実施例に係る比例積分制御方法の構成例を示す図。
図5】本発明を無効電力制御装置に適用する事例を示す図。
図6】本発明を周波数変換制御装置に適用する事例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0018】
図3は、本発明の実施例に係る比例積分制御装置の構成例を示す図である。図3の構成を図2の構成と比較すると、まず比例器3と積分器4は1組であり、そのうえで図2では切替器6が2つの比例積分制御器1A、1Bの出力側で行われていたものが、図3では1組の比例器3と積分器4の入力側で切替器6A、6Bにより行われている。さらに入力側での切り替えは、適宜ゲイン変換器8A、8Bを介して行われる。
【0019】
この構成は要するに、第1の目標値Ir1と第1のフィードバック値I1から第1の偏差ΔI1を求める第1の減算器2Aと、第2の目標値Ir2と第2のフィードバック値I2から第2の偏差ΔI2を求める第2の減算器2Bと、第2の比例ゲインKp2を有する比例器3と第2の積分ゲインKi2を有する積分器4と、比例器3と積分器4の出力を加算して操作端に対する操作量とする加算器5と、第1の偏差ΔI1に第2の比例ゲインKp2に対する第1の比例ゲインKp1の比を乗じる比例ゲイン変換器8Aと、第1の偏差ΔI1に第2の積分ゲインKi2に対する第1の積分ゲインKi1の比を乗じる積分ゲイン変換器8Bを備えて、第1の制御状態に置いて比例器3は第1の偏差ΔI1を入力するとともに積分器4は第1の偏差ΔI1を入力し、第2の制御状態に置いて比例器3は比例ゲイン変換器8Aを介して第1の偏差ΔI1を入力するとともに積分器4は積分ゲイン変換器8Bを介して第1の偏差ΔI1を入力するように構成したものである。
【0020】
この結果、切替器6A、6Bが端子a側に位置するとき(第2の制御状態)に比例器3と積分器4は、比例ゲイン変換器8A、積分ゲイン変換器8Bを介して第1の偏差ΔI1を入力し、それぞれ比例演算と積分演算を実施することになる。また切替器6A、6Bが端子b側に位置するとき(第1の制御状態)に比例器3と積分器4は、比例ゲイン変換器8A、積分ゲイン変換器8Bを介することなく、直接第2の偏差ΔI2を入力し、それぞれ比例演算と積分演算を実施することになる。
【0021】
この構成によれば、積分器4は例えば切替器6Bが端子a側に位置する、第2の制御状態のときに第1の偏差ΔI1を入力とする積分処理を実行しており、切替器6Bが端子b側に位置する、第1の制御状態に移行する直前ではその最終値を出力している。そして第1の制御状態に移行したときに積分器4は新たに第2の偏差ΔI2を入力とする積分処理を実行することになるが、この積分処理は第2の制御状態のときの積分値を初期値として実行されることになる。したがって、積分出力は第2の制御状態のときの積分値を初期値として新たな積分出力を積分時定数に従い移行することになり、いわゆる切替え時の変動を生じることはない。かつこの処理では積分器4の積分時定数により滑らかな移行が実現されているので、積分値の引継ぎといった処理が不要である。なお、第1の制御状態から第2の制御状態に切替える場合にも、同様に切り替え時の変動を生じることはないことは言うまでもない。
【0022】
図1のブロック図はアナログ的な処理をイメージしているが、同様の処理は計算機を用いてソフト的な処理を行う場合にも適用可能である。図4は、この場合のソフト処理を行うフローチャート例であり、本発明の実施例に係る比例積分制御方法の構成例を示す図である。
【0023】
図4のフローにおいて、処理ステップS1では制御状態の変動の有無を確認する。これは一方の制御状態が温度制御状態であり、他方の制御状態が圧力制御状態であるとき、この切替え指令が発生したことをもって確認することができる。制御状態の変動が有るとき、処理ステップS2では新たな制御状態の開始にあたり、その積分初期値を前の制御状態の時の積分最終値に設定する処理を行う。
【0024】
処理ステップS3では新たな制御状態が、第1の制御状態か第2の制御状態かを判別し、第2の制御状態であるときには処理ステップS4において、ΔI1*Kp1/KP2を用いて比例ゲインKp2の比例演算を実施する。また処理ステップS5においてΔI1*Kp1/KP2を用いて積分ゲインKp2の積分演算を実施し、また処理ステップS6において、処理ステップS4で求めた比例分と、処理ステップS5で求めた積分分を加算して、これを操作端に対する操作量として出力する。
【0025】
処理ステップS3では新たな制御状態が、第2の制御状態であるときには処理ステップS7において、ΔI2を用いて比例ゲインKp2の比例演算を実施する。また処理ステップS8においてΔI2を用いて積分ゲインKp2の積分演算を実施し、また処理ステップS9において、処理ステップS7で求めた比例分と、処理ステップS8で求めた積分分を加算して、これを操作端に対する操作量として出力する。
【0026】
以上述べた本発明に係る比例積分制御装置は、比例器を三つと積分器を一つの組み合わせとしたものである。制御を切り替える際には、積分器が一つであるため積分値の引き継ぎは不要であり、二箇所の切替器を切り替え、異なる二つの比例積分制御を一つの比例積分制御装置で実現することが可能となる。
【実施例2】
【0027】
実施例2では、具体的な適用事例として電力系統の無効電力制御装置(STSCOM)への適用事例を説明する。図5は、無効電力制御装置403が系統インピーダンス402を介して電源401に接続された構成例を示している。
【0028】
無効電力制御装置403の運用状態には、力率制御状態と電圧制御状態があり、適宜これらを切り替えて、操作端である無効電力制御装置403の電力用半導体の点弧を制御する。ここでは操作端が電力用半導体のみであるので、力率制御系と電圧制御系の出力を切替え、いずれかにより制御する。この場合には、図3の比例積分制御装置1において第1の目標値Ir1を力率(無効電力)の制御指令、第1のフィードバック値I1を力率(無効電力)のフィードバック値とし、第2の目標値Ir2を電圧の制御指令、第2のフィードバック値I2を電圧のフィードバック値として採用する。
【0029】
このときには、一定の電圧値を逸脱すると電圧制御に切り替え、一定の力率(無効電力)を逸脱すると力率(無効電力)制御に切り替えるという運用がされる。
【実施例3】
【0030】
実施例3では、具体的な適用事例として電力系統の周波数変換制御装置(FC)への適用事例を説明する。図6は、周波数の異なる電源501と509が系統インピーダンス502、508を介して周波数変換所で連系されたものである。ここでの周波数変換所は2つの変換器503、507が直流回路505を介して接続されている。
【0031】
この2つの変換器503、507の制御装置は、それぞれに対して設けられており、一方の変換器503の運用状態には、力率制御状態(AQR)と電圧制御状態(AVR)があり、適宜これらを切り替えて、操作端である変換器503の電力用半導体の点弧を制御する。また他方の変換器507の運用状態には、周波数制御状態(AFR)と有効電力制御状態(APR)があり、適宜これらを切り替えて、操作端である変換器507の電力用半導体の点弧を制御する。ここではそれぞれの変換器503、507の操作端がそれぞれ電力用半導体のみであるので、力率制御系と電圧制御系、また周波数制御系と有効電力制御系の出力を切替え、いずれかにより制御する。
【0032】
この場合には、変換器503の比例積分制御装置1Lに関して、図3の第1の目標値Ir1を電圧の制御指令、第1のフィードバック値I1を電圧のフィードバック値とし、第2の目標値Ir2を力率(無効電力)の制御指令、第2のフィードバック値I2を力率(無効電力)のフィードバック値として採用する。
【0033】
また変換器507の比例積分制御装置1Rに関して、図3の第1の目標値Ir1を周波数の制御指令、第1のフィードバック値I1を周波数のフィードバック値とし、第2の目標値Ir2を有効電力の制御指令、第2のフィードバック値I2を有効電力のフィードバック値として採用する。
【0034】
この具体的な運用としては、変換器503の比例積分制御装置1Lに関して、一定の電圧値を逸脱すると電圧制御に切り替え、一定の力率(無効電力)を逸脱すると力率制御に切り替える。また変換器507の比例積分制御装置1Rに関して、一定の周波数を逸脱すると電圧制御に切り替え、一定の有効電力を逸脱すると有効電力制御に切り替える。
【符号の説明】
【0035】
Ir1、Ir2:目標値
I1、I2:フィードバック値
1、1L、1R:比例積分制御装置
2、2A、2B:減算器
3、3A、3B:比例器
4、4A、4B:積分器
5、5A、5B:加算器
6、6A、6B:切替器
8A:比例ゲイン変換器
8B:積分ゲイン変換器
401、501、509:電源
402、502、508:系統インピーダンス
403:無効電力制御装置
503、507:変換器
505:直流回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6