IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クボタの特許一覧

<>
  • 特許-草刈機 図1
  • 特許-草刈機 図2
  • 特許-草刈機 図3
  • 特許-草刈機 図4
  • 特許-草刈機 図5
  • 特許-草刈機 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】草刈機
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/62 20060101AFI20231106BHJP
【FI】
A01D34/62
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020216921
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102277
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】平田 光喜
(72)【発明者】
【氏名】若林 宗平
(72)【発明者】
【氏名】板井 詞也
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-091431(JP,U)
【文献】実開昭60-112744(JP,U)
【文献】特開2019-010056(JP,A)
【文献】実開昭59-121547(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/00 - 34/90
42/00 - 42/08
43/06 - 43/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体を支持する右及び左の走行装置と、
前記機体に支持された草刈装置と、が備えられ、
前記草刈装置に、駆動軸の外周に刈刃を備えた回転刈刃と、その回転刈刃を覆う刈刃ハウジングと、前記駆動軸に前記機体の前部から導入した動力を伝達する入力伝動部と、が備えられ、
前記入力伝動部に、前記刈刃ハウジングの外側に位置して前記駆動軸に回転動力を伝えるベルト伝動機構と、前記ベルト伝動機構を覆うベルトカバーと、が備えられ、
前記ベルト伝動機構に、伝動ベルトの張力を調節可能なテンション機構が備えられ、
前記テンション機構が前記ベルトカバーの外部から調節操作可能に構成され、
前記草刈装置に、前記回転刈刃、前記刈刃ハウジング、及び前記入力伝動部が備えられた刈取本体部と、前記刈取本体部を地面から所定の高さに持ち上げ支持するように接地して滑走する左右一対の接地支持体と、が装備され、
前記接地支持体が前記刈刃ハウジングの横外側に設けられ、
前記ベルトカバーが、平面視で前記接地支持体と重複する位置に設けられている草刈機。
【請求項2】
前記接地支持体が前記刈取本体部に対して高さ調節可能に支持され、
前記ベルトカバーが、前記接地支持体の高さ調節範囲の上限位置よりも高い箇所に設けられている請求項記載の草刈機。
【請求項3】
機体を支持する右及び左の走行装置と、
前記機体に支持された草刈装置と、が備えられ、
前記草刈装置に、駆動軸の外周に刈刃を備えた回転刈刃と、その回転刈刃を覆う刈刃ハウジングと、前記駆動軸に前記機体の前部から導入した動力を伝達する入力伝動部と、が備えられ、
前記入力伝動部に、前記刈刃ハウジングの外側に位置して前記駆動軸に回転動力を伝えるベルト伝動機構と、前記ベルト伝動機構を覆うベルトカバーと、が備えられ、
前記ベルト伝動機構に、伝動ベルトの張力を調節可能なテンション機構が備えられ、
前記テンション機構が前記ベルトカバーの外部から調節操作可能に構成され、
前記テンション機構には、前記伝動ベルトの下部外周に当接するテンション輪と、前記テンション輪を上下方向にスライド操作して前記伝動ベルトの張力を変更するスライド杆と、前記スライド杆の上下スライド移動を案内するガイド機構と、が備えられ、
前記ガイド機構に、前記スライド杆の長手方向に沿って形成された上下に長いガイド孔と、前記ガイド孔内に挿通された状態で前記スライド杆の相対移動を案内するガイドピンと、が備えられている草刈機。
【請求項4】
前記ベルトカバーには、前記スライド杆を前記伝動ベルトの張り側へ付勢する付勢機構が設けられ、
前記付勢機構に、前記スライド杆の端部が前記ベルトカバーの外部に突出する方向へ付勢するコイルスプリングと、前記コイルスプリングの付勢力を調節する調節部と、が備えられ、
前記調節部が、前記ベルトカバーの外部へ露出した状態で調節操作可能であるように構成されている請求項記載の草刈機。
【請求項5】
前記付勢機構には、前記ベルトカバーの外部に突出した前記スライド杆の端部を支持して、前記スライド杆が付勢力の調節方向で作動することを許容し、かつ、前記調節部を内装する空間部と、を有した筒状取付部材が備えられ、
前記筒状取付部材が前記ベルトカバーに装着され、
前記筒状取付部材が前記調節部を前記ベルトカバーの外部へ露出させる位置で分割可能に構成されている請求項記載の草刈機。
【請求項6】
前記ベルトカバーには、前記ベルト伝動機構の駆動輪体と従動輪体にわたって掛け渡された前記伝動ベルトの外周面に対向する外周カバー部が備えられ、
前記外周カバー部のうち、前記テンション輪の下縁と対向する箇所の外周カバー部には、前記駆動輪体の外周下縁、及び前記従動輪体の外周下縁と対向する箇所の外周カバー部が存在する位置よりも下方へ、前記テンション輪が入り込むことを許容する凹部が形成されている請求項のいずれか一項記載の草刈機。
【請求項7】
前記ベルトカバーに、前記テンション輪の下方を外部へ開放可能な開口が形成されるとともに、前記開口を閉塞可能な蓋部材が設けられ、この蓋部材に前記凹部が形成されている請求項記載の草刈機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、草刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
草刈機に設けられる草刈装置として、筒状の回転体の側面部分に多数の刈刃を設けた回転刈刃を備える装置が汎用される。このような装置では、回転刈刃を回転させながら刈取対象の草に接近させて、草刈作業を実行する。回転駆動力を回転刈刃に与える方法としては、草刈機の機体に設けられたエンジンなどの動力源から伝動機構を介して回転刈刃に駆動力を入力する方法が汎用される。
【0003】
伝動機構として、ベルトやチェーンなどの環状体を入力側の回転体と出力側の回転体とにわたって巻き回した構造を有する装置が汎用される。この種の装置において伝動が適切に行われるためには、環状体と回転体との間に摩擦力が働くことが必要であるので、環状体に適切な張力を付与することが求められる。たとえば、特開2018-102223号公報(特許文献1)には、駆動スプロケットと従動スプロケットとの間に巻き掛けられたローラーチェーンに張力を与えるテンショナーが備えられている。また、特開2001-3999号公報(特許文献2)には、二つのプーリーのうちの一方を移動させて、二つのプーリーにわたって取り付けられているベルトに張力を与える着脱/自動張力調節装置が備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-102223号公報
【文献】特開2001-3999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、環状体に張力を与える装置として特許文献1および2に開示されている装置は、いずれも伝動機構のケーシングに完全に収容されているので、使用者が環状体に加わる張力を調節しようとしたときにケーシングを取り外す必要があった。しかし、張力の調節を要する状況は、たとえばベルトが伸びるなどの原因により日常的に生じうるところ、特許文献1および2に開示されている装置では張力を調節する作業が煩雑になる場合があった。
【0006】
そこで、草刈機において、伝動機構の張力を調節する手順を従来に比べて容易にすることが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る草刈機は、機体を支持する右及び左の走行装置と、 前記機体に支持された草刈装置と、が備えられ、前記草刈装置に、駆動軸の外周に刈刃を備えた回転刈刃と、その回転刈刃を覆う刈刃ハウジングと、前記駆動軸に前記機体の前部から導入した動力を伝達する入力伝動部と、が備えられ、前記入力伝動部に、前記刈刃ハウジングの外側に位置して前記駆動軸に回転動力を伝えるベルト伝動機構と、前記ベルト伝動機構を覆うベルトカバーと、が備えられ、前記ベルト伝動機構に、伝動ベルトの張力を調節可能なテンション機構が備えられ、前記テンション機構が前記ベルトカバーの外部から調節操作可能に構成され、前記草刈装置に、前記回転刈刃、前記刈刃ハウジング、及び前記入力伝動部が備えられた刈取本体部と、前記刈取本体部を地面から所定の高さに持ち上げ支持するように接地して滑走する左右一対の接地支持体と、が装備され、前記接地支持体が前記刈刃ハウジングの横外側に設けられ、前記ベルトカバーが、平面視で前記接地支持体と重複する位置に設けられていることを特徴とする。
【0008】
これらの構成によれば、ベルトカバーの外部からテンション機構の調節操作を行うことができるので、伝動機構の張力を調節する手順を従来に比べて容易にできる。
また、この構成によれば、草刈装置を保管するために必要な保管場所の面積を抑制しうる。
【0009】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0010】
【0011】
【0012】
本発明に係る草刈機は、一態様として、前記接地支持体が前記刈取本体部に対して高さ調節可能に支持され、前記ベルトカバーが、前記接地支持体の高さ調節範囲の上限位置よりも高い箇所に設けられていることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、接地支持体を高さ調節範囲内でどのように動かしても、接地支持体とベルトカバーとが干渉しない。
【0014】
本発明に係る草刈機は、機体を支持する右及び左の走行装置と、 前記機体に支持された草刈装置と、が備えられ、前記草刈装置に、駆動軸の外周に刈刃を備えた回転刈刃と、その回転刈刃を覆う刈刃ハウジングと、前記駆動軸に前記機体の前部から導入した動力を伝達する入力伝動部と、が備えられ、前記入力伝動部に、前記刈刃ハウジングの外側に位置して前記駆動軸に回転動力を伝えるベルト伝動機構と、前記ベルト伝動機構を覆うベルトカバーと、が備えられ、前記ベルト伝動機構に、伝動ベルトの張力を調節可能なテンション機構が備えられ、前記テンション機構が前記ベルトカバーの外部から調節操作可能に構成され、前記テンション機構には、前記伝動ベルトの下部外周に当接するテンション輪と、前記テンション輪を上下方向にスライド操作して前記伝動ベルトの張力を変更するスライド杆と、前記スライド杆の上下スライド移動を案内するガイド機構と、が備えられ、前記ガイド機構に、前記スライド杆の長手方向に沿って形成された上下に長いガイド孔と、前記ガイド孔内に挿通された状態で前記スライド杆の相対移動を案内するガイドピンと、が備えられていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、スライド杆の移動が一軸方向に規制されるので、テンション機構が伝動ベルトに張力を与えるために好適な姿勢を維持しやすい。
【0016】
本発明に係る草刈機は、一態様として、前記ベルトカバーには、前記スライド杆を前記伝動ベルトの張り側へ付勢する付勢機構が設けられ、前記付勢機構に、前記スライド杆の端部が前記ベルトカバーの外部に突出する方向へ付勢するコイルスプリングと、前記コイルスプリングの付勢力を調節する調節部と、が備えられ、前記調節部が、前記ベルトカバーの外部へ露出した状態で調節操作可能であるように構成されていることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、調節部をベルトカバーの外部へ露出させることができるので、張力の調節を行いやすい。
【0018】
本発明に係る草刈機は、一態様として、前記付勢機構には、前記ベルトカバーの外部に突出した前記スライド杆の端部を支持して、前記スライド杆が付勢力の調節方向で作動することを許容し、かつ、前記調節部を内装する空間部と、を有した筒状取付部材が備えられ、前記筒状取付部材が前記ベルトカバーに装着され、前記筒状取付部材が前記調節部を前記ベルトカバーの外部へ露出させる位置で分割可能に構成されていることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、張力の調節を行わないときには調節部を隠ぺいできるので、調節部が不意に操作されることを防止できる。
【0020】
本発明に係る草刈機は、一態様として、前記ベルトカバーには、前記ベルト伝動機構の駆動輪体と従動輪体にわたって掛け渡された前記伝動ベルトの外周面に対向する外周カバー部が備えられ、前記外周カバー部のうち、前記テンション輪の下縁と対向する箇所の外周カバー部には、前記駆動輪体の外周下縁、及び前記従動輪体の外周下縁と対向する箇所の外周カバー部が存在する位置よりも下方へ、前記テンション輪が入り込むことを許容する凹部が形成されていることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、テンション機構の可動域を十分に確保することと、ベルトカバーの寸法を最小限に抑制することとを両立しうる。
【0022】
本発明に係る草刈機は、一態様として、前記ベルトカバーに、前記テンション輪の下方を外部へ開放可能な開口が形成されるとともに、前記開口を閉塞可能な蓋部材が設けられ、この蓋部材に前記凹部が形成されていることが好ましい。
【0023】
この構成によれば、テンション機構のメンテナンスを行いやすい。
【0024】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】草刈機の右側面図である。
図2】草刈機の平面図である。
図3】分解状態の連結機構、及び、分解状態の動力伝達機構を示す斜視図である。
図4】動力伝達機構を示す平面図である。
図5】テンション機構及び接地支持体を示す側面図である。
図6】テンション機構及び接地支持体を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1図6に、草刈機が示されている。図1図6において、Fは前方向を示し、Bは後方向を示し、Uは上方向を示し、Dは下方向を示し、Rは右方向を示し、Lは左方向を示している。
【0027】
〔草刈機の全体構成〕
図1及び図2に示すように、草刈機に、機体1と、機体1を支持する右及び左のクローラ型式の走行装置2と、機体1の前部に支持された作業装置である草刈装置3とが設けられている。
【0028】
〔機体の構成〕
機体1は、ラダーフレーム状に構成されており、その前部には右及び左の支持フレームが連結されている。開口部が開口された平板状の前壁部32が、右及び左の支持フレームに亘って連結されている。丸パイプが平面視でチャンネル状に曲げられて形成された上フレームが設けられ、上フレームの右及び左の前部が右及び左の支持フレームに連結されており、上フレームの後部が後フレームの上部に連結されている。
【0029】
〔走行装置の構成〕
図1及び図2に示すように、走行装置2に、駆動輪10と、複数の転輪11と、誘導輪12と、トラックフレーム13と、ガイド部材と、クローラベルト14とが設けられている。
【0030】
複数の転輪11及びガイド部材がトラックフレーム13に支持されて、誘導輪12がトラックフレーム13の後部に支持されており、トラックフレーム13が前後方向に沿って配置されている。トラックフレーム13は、機体1の一部であり、走行装置2の一部である。
【0031】
図1図3に示すように、機体1には、ミッションケース20の前部から前向きに突設された出力軸21が設けられている。出力軸21は、機体1の前後方向に沿う状態で設けられている。エンジンEからミッションケース20に入力されて作業用動力に変速された動力が出力軸21から出力される。
【0032】
右及び左の駆動輪10が、ミッションケース20に支持されている。右の駆動輪10が、側面視で右のトラックフレーム13の前後中間部に対して上側に配置され、左の駆動輪10が、側面視で左のトラックフレーム13の前後中間部に対して上側に配置されている。
【0033】
〔草刈装置の構成〕
草刈装置3には、回転駆動される刈刃41を備えた刈取本体部40と、刈取本体部を地面から所定の高さに持ち上げ支持するように接地して滑走する左右一対の接地支持体60と、が装備されている。
【0034】
(刈取本体部の構成)
図2に示すように、刈取本体部40は、多数の刈刃41が支持された回転ドラム部42が、左右方向に沿った軸心周りに回転駆動されるフレルモア型式に構成されている。すなわち、駆動軸の外周に刈刃41が備えられた回転刈刃が構成されている。回転刈刃(刈刃41および回転ドラム部42)は、刈刃ハウジング43に収容されている。
【0035】
刈取本体部40には、回転ドラム部42に対して機体1の前部から導入した動力を伝達する入力伝動部44が設けられている。入力伝動部44は、機体1からの動力の入力を受ける入力伝動ケース部45と、入力伝動ケース部45から入力された動力を回転ドラム部42へ伝動するベルト伝動機構46と、ベルト伝動機構46を収容するベルトカバー47と、を含む。
【0036】
図3及び図4に示すように、入力伝動ケース部45は、入力伝動ケース部45の後部から後向きに突設された中継入力軸45a、及び、入力伝動ケース部45の右横側部から機体横外向きに突設された中継出力軸45bを有している。中継入力軸45aは、機体1の前後方向に沿う状態で設けられている。中継出力軸45bは、機体1の左右方向に沿う状態で設けられている。
【0037】
出力軸21から第一伝動軸34が入力伝動ケース部45に向けて機体前後方向に沿う状態で延ばされ、第一伝動軸34の延伸端部が中継入力軸45aに連動連結されている。第一伝動軸34における出力軸21側の端部及び入力伝動ケース部45側の端部のそれぞれに、自在継手36が備えられている。このうち、出力軸21側の端部に設けられた自在継手36は、側面視で軸心P1と同じ位置に配置されている。
【0038】
入力伝動ケース部45の中継出力軸45bと草刈装置3の装置入力軸42aとにわたり、中継出力軸45bの動力を装置入力軸42aに伝達するベルト伝動機構46が設けられている。装置入力軸42aは、回転ドラム部42の支軸によって構成されている。
【0039】
具体的には、ベルト伝動機構46は、中継出力軸45bに連動連結されている第二伝動軸46a、第二伝動軸46aに設けられた駆動輪体46b、装置入力軸42aに設けられた従動輪体46c、及び、駆動輪体46bと従動輪体46cとに巻回された伝動ベルト46d、によって構成されている。第二伝動軸46aにおける入力伝動ケース部45側の端部及びベルト伝動機構46側の端部のそれぞれに自在継手部48が備えられている。
【0040】
動力伝達機構においては、エンジンEの動力がミッションケース20を介して伝達されて回転する出力軸21の動力が第一伝動軸34及び中継入力軸45aによって入力伝動ケース部45に入力され、入力伝動ケース部45の中継出力軸45bの動力が第二伝動軸46aによってベルト伝動機構46に伝達され、ベルト伝動機構46から装置入力軸42aに伝達される。
【0041】
ベルト伝動機構46には、草刈装置3の前後方向の駆動輪体46bと従動輪体46cとの間の位置に、伝動ベルト46dの張力を調節可能なテンション機構49が備えられている。テンション機構49は、伝動ベルト46dの下部外周に当接するテンション輪50と、テンション輪50を上下方向にスライド操作して伝動ベルト46dの張力を変更するスライド杆51と、スライド杆51の上下スライド移動を案内するガイド機構53と、が備えられている。テンション機構49は、概して、テンション輪50の上下方向の位置を調節することによって伝動ベルト46dに加わるテンションを調節する機構である。
【0042】
ガイド機構53は、スライド杆51の長手方向に沿って形成された上下に長いガイド孔53aと、ガイド孔53a内に挿通された状態でスライド杆51の相対移動を案内するガイドピン53bと、が備えられている。なお、ガイドピン53bは、刈刃ハウジング43の側面に固定されている。
【0043】
ベルトカバー47には、スライド杆51を伝動ベルト46dの張り側へ付勢する付勢機構54が設けられている。付勢機構54は、スライド杆51の端部51aがベルトカバー47の外部に突出する方向へ付勢するコイルスプリング55と、コイルスプリング55の付勢力を調節する調節部56と、が備えられている。調節部56は、具体的には、スライド杆51の端部51aに螺合されたカラーナットとして実装されている。当該カラーナットのカラー部分がコイルスプリング55の上端部分に当接することでコイルスプリング55の長さが規制され、これによってコイルスプリング55の付勢力が調節される。
【0044】
調節部56は、ベルトカバー47の外部へ露出した状態で調節操作可能であるように構成されている。具体的には、図5に示すように、スライド杆51の端部51aがベルトカバー47の外部に突出するように構成されており、当該突出部分に調節部56としてのカラーナットが備えられているので、ベルトカバー47の外部へ露出したカラーナットを操作することによって伝動ベルト46dに加わるテンションを調節できる。
【0045】
付勢機構54には、筒状取付部材57が備えられている。筒状取付部材57は、ベルトカバー47の外部に突出したスライド杆51の端部51aを支持して、スライド杆51が付勢力の調節方向で作動することを許容し、かつ、調節部56を内装する空間部57aを有する。筒状取付部材57は、ベルトカバー47に装着され、かつ、調節部56をベルトカバー47の外部へ露出させる位置でベルトカバー47と分割可能に構成されている。
【0046】
ベルトカバー47には、伝動ベルト46dの外周面に対向する外周カバー部47aが備えられている。外周カバー部47aのうち、テンション輪50の下縁と対向する箇所の外周カバー部47aには、駆動輪体46bの外周下縁及び従動輪体46cの外周下縁と対向する箇所の外周カバー部47aが存在する位置よりも下方へ、テンション輪50が入り込むことを許容する凹部47bが形成されている。また、ベルトカバー47には、テンション輪50の下方を外部へ開放可能な開口47cが形成されるとともに、開口47cを閉塞可能な蓋部材47dが設けられ、この蓋部材47dに凹部47bが形成されている。
【0047】
図1図3に示すように、縦長の右及び左のブラケット35が、前壁部32の右部及び左部に連結されている。右及び左の支持アーム31が、左右方向に沿った軸心P1周りに上下に揺動可能にブラケット35の下部に支持されて、前側に向けて延出されている。
【0048】
支持アーム31を上下に揺動操作可能な右及び左の昇降シリンダ33が、ブラケット35の上部と支持アーム31とに亘って接続されており、昇降シリンダ33はブラケット35を介して支持フレームに接続されている。
【0049】
草刈装置3は、支持アーム31の延出端部に支持されている。ミッションケース20の出力軸21及びフィルタ22が、前壁部32の開口部32aに臨んでおり、ミッションケース20の出力軸21と草刈装置3とに亘って、第一伝動軸34が接続されている。
【0050】
(接地支持体の構成)
図5及び図6に示すように、接地支持体60は、刈取本体部40を地面から所定の高さに持ち上げ支持するように接地して滑走できるように構成されている。接地支持体60は、前後方向に沿う杆状部材の中間部が前後の端部よりも下方に位置するように下向きに突曲した橇状に形成されている。接地支持体60の橇状の形状は、前方側から順に、前方杆部分61、直線状杆部分62、および弧状杆部分63から構成されている。
【0051】
直線状杆部分62は、機体1との連結を解除された草刈装置3の、刈取本体部40における重心位置の前後にわたって設けられている。
【0052】
接地支持体60は、刈取本体部40に対する相対高さを調節可能に設けられている。具体的には、接地支持体60は、前方杆部分61の前方端部(接地支持体60の前部)に設けられた貫通穴にピン64を挿通する態様で、左右方向の横軸心P2周りに上下に揺動可能な態様で刈刃ハウジング43の横外側に支持されており、ピン64の周りに接地支持体60を揺動させることによって接地支持体60の相対高さを調節できる。これによって、草刈り高さを調節できる。
【0053】
弧状杆部分63は、横軸心P2を曲率中心とする部分円弧状に形成されている。弧状杆部分63には、複数の貫通孔65が設けられている。貫通孔65には後述するピン66を挿通可能である。
【0054】
刈取本体部40の後部には、弧状杆部分63を位置保持可能な保持体58が備えられている。保持体58には、弧状杆部分63を挿抜可能なガイド部分58aと、後述するピン66を挿入可能な孔部分58bと、が設けられている。ガイド部分58aに挿入された弧状杆部分63の複数の貫通孔65のうちの一つと、孔部分58bと、の高さ方向の位置が一致するように位置合わせした状態で、ピン66を当該貫通孔65と孔部分58bとにわたって挿入することによって、保持体58による弧状杆部分63の位置保持が完成する。
【0055】
ここで、弧状杆部分63に設けられた複数の貫通孔65は、ガイド部分58aにおける弧状杆部分63の挿抜方向における複数箇所に設けられているといえる。これによって、ピン64の周りに接地支持体60を揺動させることによって接地支持体60の相対高さを調節したのちに、調節された相対高さにおいて孔部分58bと高さ方向の位置が一致する貫通孔65を用いて弧状杆部分63を位置保持することによって、接地支持体60の姿勢を調節された相対高さに固定できる。この構成によれば、接地支持体60の相対高さを調節する操作を簡便に行うことができる。
【0056】
なお、接地支持体60は、相対高さの調節範囲の下限から上限に至る全範囲にわたって、側面視での刈取本体部40における刈刃41の存在位置よりも下方に位置するように構成されている。これによって、接地支持体60の相対高さがどのように選択されても、草刈装置3の接地部分が接地支持体60となり、刈刃41が接地部分となることがないので、刈刃41が直接接地して破損することを防止しうる。
【0057】
また、草刈装置3は、弧状杆部分63の複数の貫通孔65のうちの特定の一つ(貫通孔65aとする。)を用いて弧状杆部分63を位置保持したときに、草刈装置3が直線状杆部分62を接地部分として安定的に自立可能な自立姿勢を取ることができる。これによって、機体1との連結を解除された草刈装置3は直線状杆部分62を接地部分として安定的に自立できるので、保管しやすい。また、自立姿勢の草刈装置3における連結ヒッチ部68の高さが、機体側ヒッチ67に対して係合可能な高さとなる位置に設定されている。これによって、自立姿勢で保管されている草刈装置3を機体1に装着する操作を行う際に、機体側ヒッチ67と連結ヒッチ部68との高さを合わせる操作を要さない。
【0058】
なお、接地支持体60とベルトカバー47とは、平面視で重複する位置に設けられている。また、ベルトカバー47は、接地支持体60の高さ調節範囲の上限位置よりも高い箇所に設けられている。
【0059】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係る草刈機のその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0060】
上記の実施形態では、接地支持体60とベルトカバー47とが、平面視で重複する位置に設けられている構成を例として説明した。しかし、本発明において、接地支持体とベルトカバーとの位置は、平面視で重複する位置に限定されない。
【0061】
上記の実施形態では、ベルトカバー47が、接地支持体60の高さ調節範囲の上限位置よりも高い箇所に設けられている構成を例として説明した。しかし、本発明において、ベルトカバーが、接地支持体の高さ調節範囲の上限位置よりも低い箇所に設けられていてもよい。
【0062】
上記の実施形態では、テンション機構49として、テンション輪50、スライド杆51、およびガイド機構53が設けられている構成を例として説明した。しかし、本発明において、テンション機構の具体的な態様は、伝動ベルトの張力を調節可能であり、かつ、ベルトカバーの外部から調節操作可能である限りにおいて、特に限定されない。
【0063】
上記の実施形態では、付勢機構54に筒状取付部材57が備えられており、テンション機構49(スライド杆51の端部51a)が筒状取付部材57に収容されている構成を例として説明した。しかし、本発明において、テンション機構(スライド杆)を収容する部分を設けてもよいし、設けなくてもよい。また、テンション機構(スライド杆)を収容する部分を設ける場合、その構造は特に限定されない。
【0064】
上記の実施形態では、ベルトカバー47に外周カバー部47aが備えられており、外周カバー部47aにテンション機構49(テンション輪50)が入り込むことを許容する凹部47bが形成されている構成を例として説明した。しかし、本発明において、カバー部材にテンション機構(テンション輪)が入り込むことを許容する部分を設けなくてもよい。
【0065】
上記の実施形態では、ベルトカバー47に、開口47cが形成されるとともに、開口47cを閉塞可能な蓋部材47dが設けられ、この蓋部材47dに凹部47bが形成されている構成を例として説明した。しかし、本発明において、カバー部材にテンション機構(テンション輪)が入り込む部分を設ける場合、当該部分に蓋部材を設けなくてもよい。
【0066】
本発明に係る草刈機は、無線操縦装置による遠隔操作が可能なものであってもよいし、いわゆる乗用型であってもよい。
【0067】
上記の実施形態では、草刈装置3が機体1の前方に位置する例を示した。しかし、本発明に係る草刈機において、機体の後方に草刈装置が設けられていてもよい。
【0068】
上記の実施形態では、ベルト伝動機構46が草刈装置3の右横側方に設けられた例を示した。しかし、本発明に係る草刈機において、ベルト伝動機構は草刈装置の左横側方に設けられていてもよい。
【0069】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、たとえば草刈機に利用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 :機体
2 :走行装置
3 :草刈装置
40 :刈取本体部
41 :刈刃
42 :回転ドラム部
42a :装置入力軸
43 :刈刃ハウジング
44 :入力伝動部
45 :入力伝動ケース部
45a :中継入力軸
45b :中継出力軸
46 :ベルト伝動機構
46a :第二伝動軸
46b :駆動輪体
46c :従動輪体
46d :伝動ベルト
47 :ベルトカバー
47a :外周カバー部
47b :凹部
47c :開口
47d :蓋部材
48 :自在継手部
49 :テンション機構
50 :テンション輪
51 :スライド杆
51a :端部
53 :ガイド機構
53a :ガイド孔
53b :ガイドピン
54 :付勢機構
55 :コイルスプリング
56 :調節部
57 :筒状取付部材
57a :空間部
58 :保持体
58a :ガイド部分
58b :孔部分
60 :接地支持体
61 :前方杆部分
62 :直線状杆部分
63 :弧状杆部分
64 :ピン
65 :貫通孔
66 :ピン
67 :機体側ヒッチ
68 :連結ヒッチ部
E :エンジン
P1 :軸芯
P2 :横軸芯
図1
図2
図3
図4
図5
図6