(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】改善された薬物製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 9/10 20060101AFI20231106BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20231106BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20231106BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20231106BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20231106BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20231106BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20231106BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20231106BHJP
A61K 31/4196 20060101ALI20231106BHJP
A61P 39/04 20060101ALI20231106BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20231106BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20231106BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20231106BHJP
A61K 31/505 20060101ALI20231106BHJP
A61K 31/427 20060101ALI20231106BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20231106BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20231106BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
A61K9/10
A61K47/12
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/22
A61K47/32
A61K47/38
A61K47/20
A61K31/4196
A61P39/04
A61P31/10
A61P31/18
A61K31/496
A61K31/505
A61K31/427
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/70
(21)【出願番号】P 2020526009
(86)(22)【出願日】2018-11-09
(86)【国際出願番号】 US2018059974
(87)【国際公開番号】W WO2019094688
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-11-01
(32)【優先日】2017-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516310943
【氏名又は名称】オースティンピーエックス リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ミラー デイブ エイ.
(72)【発明者】
【氏名】エレンバーガー ダニエル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】シリング サンドラ ユー.
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-542275(JP,A)
【文献】特表2002-531492(JP,A)
【文献】特表2013-526495(JP,A)
【文献】特表2007-512265(JP,A)
【文献】特表2003-531099(JP,A)
【文献】国際公開第2015/071248(WO,A1)
【文献】特許第7112333(JP,B2)
【文献】国際公開第2015/175505(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/073421(WO,A1)
【文献】特開昭56-055370(JP,A)
【文献】国際公開第2016/038532(WO,A1)
【文献】特表2016-503420(JP,A)
【文献】特表2010-536877(JP,A)
【文献】Mol. Pharmaceutics,2015年,12,pp.120-126
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)活性な薬学的成分と、ステアリン酸塩を含む非ポリマー滑沢剤を含む1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤とを提供する段階;
(b)熱処理または溶媒蒸発を用いて段階(a)の材料を処理する段階
を含む、非晶質分散物の内相を含む薬学的組成物を作製する方法であって、
活性な薬学的成分、および非ポリマー滑沢剤を含む1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤の処理が、前記薬学的組成物の非晶質分散物の内相を形成し、前記非ポリマー滑沢剤が非晶質薬学的組成物の内相内で非晶質状態にされる、方法。
【請求項2】
前記薬学的
組成物が2種類以上の活性な薬学的成分を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
2種類以上の薬学的に許容される賦形剤が界面活性剤を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
2種類以上の薬学的に許容される賦形剤が薬学的ポリマーを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
2種類以上の薬学的に許容される賦形剤が、1種類または複数種類の界面活性剤および1種類または複数種類のポリマー担体を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
2種類以上の薬学的に許容される賦形剤が、ポリ(ビニルアセテート)-コ-ポリ(ビニルピロリドン)コポリマー、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチル-セルロースナトリウム、ジメチルアミノエチルメタクリレート-メタクリル酸エステルコポリマー、エチルアクリレート-メチルメタクリレートコポリマー、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメレテート、ポリ(ビニルアセテート)フタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリ(メタクリレートエチルアクリレート)(1:1)コポリマー、ポリ(メタクリレートメチルメタクリレート)(1:1)コポリマー、ポリ(メタクリレートメチルメタクリレート)(1:2)コポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ポリビニルカプロラクタム-ポリビニルアセテート-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、カルボマー、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、グリセロールポリエチレングリコールオキシステアレート-脂肪酸グリセロールポリグリコールエステル-ポリエチレングリコール-グリセロールエトキシレート、ポリエチレングリコール-ポリエチレングリコール-エトキシル化グリセロールのグリセロール-ポリエチレングリコールリシノレート-脂肪酸エステル、ビタミンE TPGS、およびソルビタンラウレートからなる群より選択される作用物質を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
2種類以上の薬学的ポリマーが、ポリ(ビニルアセテート)-コ-ポリ(ビニルピロリドン)コポリマー、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチル-セルロースナトリウム、ジメチルアミノエチルメタクリレート-メタクリル酸エステルコポリマー、エチルアクリレート-メチルメタクリレートコポリマー、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメレテート、ポリ(ビニルアセテート)フタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリ(メタクリレートエチルアクリレート)(1:1)コポリマー、ポリ(メタクリレートメチルメタクリレート)(1:1)コポリマー、ポリ(メタクリレートメチルメタクリレート)(1:2)コポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ポリビニルカプロラクタム-ポリビニルアセテート-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、カルボマー、クロスポビドン、およびクロスカルメロースナトリウムからなる群より選択される作用物質を含む、請求項4記載の方法。
【請求項8】
界面活性剤が、ドデシル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、グリセロールポリエチレングリコールオキシステアレート-脂肪酸グリセロールポリグリコールエステル-ポリエチレングリコール-グリセロールエトキシレート、ポリエチレングリコール-ポリエチレングリコール-エトキシル化グリセロールのグリセロール-ポリエチレングリコールリシノレート-脂肪酸エステル、ビタミンE TPGS、およびソルビタンラウレートからなる群より選択される作用物質を含
む、請求項
3記載の方法。
【請求項9】
活性な薬学的成分がベムラフェニブではない、請求項1記載の方法。
【請求項10】
ステアリン酸塩が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、モノステアリン酸アルミニウム、ジステアリン酸アルミニウム、またはトリステアリン酸アルミニウムを含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
非ポリマー滑沢剤が20% w/w以下の量で存在する、請求項1記載の方法。
【請求項12】
非ポリマー滑沢剤が10% w/w以下の量で存在する、請求項1記載の方法。
【請求項13】
非ポリマー滑沢剤が5% w/w以下の量で存在する、請求項1記載の方法。
【請求項14】
非ポリマー滑沢剤が2% w/w以下の量で存在する、請求項1記載の方法。
【請求項15】
非ポリマー滑沢剤が1% w/w以下の量で存在する、請求項1記載の方法。
【請求項16】
2種類以上の薬学的に許容される賦形剤が、処理剤を含む、請求項1記載の方法。
【請求項17】
段階(b)が、約250℃、約225℃、約200℃、約180℃、約150℃、または約150℃から250℃の最高温度で実施される、請求項1記載の方法。
【請求項18】
2種類以上の薬学的に許容される賦形剤が、高い溶融粘度の薬学的ポリマーを含む、請求項1記載の方法。
【請求項19】
2種類以上の薬学的に許容される賦形剤が、熱不安定性薬学的ポリマーを含む、請求項1記載の方法。
【請求項20】
熱処理が、溶融急冷、ホットメルト押出、または熱動力学的処理を含む、請求項1~19記載の方法。
【請求項21】
溶媒蒸発が、噴霧乾燥または噴霧凝結を含む、請求項1~19記載の方法。
【請求項22】
溶媒蒸発における溶媒が、水、エタノール、メタノール、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトン、tert-ブチルアルコール、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジエチルエ-テル、塩化メチレン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、およびその組み合わせからなる群より選択される作用物質を含む、請求項1~19記載の方法。
【請求項23】
活性な薬学的成分対薬学的賦形剤の比が約1対4である、請求項1記載の方法。
【請求項24】
活性な薬学的成分対薬学的賦形剤の比が約3対7である、請求項1記載の方法。
【請求項25】
活性な薬学的成分対薬学的賦形剤の比が約2対3である、請求項1記載の方法。
【請求項26】
活性な薬学的成分対薬学的賦形剤の比が約1対1である、請求項1記載の方法。
【請求項27】
非ポリマー滑沢剤が、前記活性な薬学的成分と一緒に配合する前には難水溶性もしくは水不溶性および/または結晶性である、請求項1~26記載の方法。
【請求項28】
非晶質分散物の内相を含む薬学的組成物であって、前記非晶質分散物の内相が、活性な薬学的成分と、1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤と、ステアリン酸塩を含む非ポリマー滑沢剤との非晶質分散物を含む、薬学的組成物。
【請求項29】
前記薬学的
組成物が2種類以上の活性な薬学的成分を含む、請求項28記載の薬学的組成物。
【請求項30】
1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤が界面活性剤を含む、請求項28記載の薬学的組成物。
【請求項31】
1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤が薬学的ポリマーを含む、請求項28記載の薬学的組成物。
【請求項32】
1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤が可塑剤を含む、請求項28記載の薬学的組成物。
【請求項33】
薬学的に許容される賦形剤が、ポリ(ビニルアセテート)-コ-ポリ(ビニルピロリドン)コポリマー、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチル-セルロースナトリウム、ジメチルアミノエチルメタクリレート-メタクリル酸エステルコポリマー、エチルアクリレート-メチルメタクリレートコポリマー、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメレテート、ポリ(ビニルアセテート)フタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリ(メタクリレートエチルアクリレート)(1:1)コポリマー、ポリ(メタクリレートメチルメタクリレート)(1:1)コポリマー、ポリ(メタクリレートメチルメタクリレート)(1:2)コポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ポリビニルカプロラクタム-ポリビニルアセテート-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、カルボマー、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、グリセロールポリエチレングリコールオキシステアレート-脂肪酸グリセロールポリグリコールエステル-ポリエチレングリコール-グリセロールエトキシレート、ポリエチレングリコール-ポリエチレングリコール-エトキシル化グリセロールのグリセロール-ポリエチレングリコールリシノレート-脂肪酸エステル、ビタミンE TPGS、およびソルビタンラウレートからなる群より選択される作用物質を含む、請求項28記載の薬学的組成物。
【請求項34】
薬学的ポリマーが、ポリ(ビニルアセテート)-コ-ポリ(ビニルピロリドン)コポリマー、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチル-セルロースナトリウム、ジメチルアミノエチルメタクリレート-メタクリル酸エステルコポリマー、エチルアクリレート-メチルメタクリレートコポリマー、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメレテート、ポリ(ビニルアセテート)フタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリ(メタクリレートエチルアクリレート)(1:1)コポリマー、ポリ(メタクリレートメチルメタクリレート)(1:1)コポリマー、ポリ(メタクリレートメチルメタクリレート)(1:2)コポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートおよびポリビニルカプロラクタム-ポリビニルアセテート-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、カルボマー、クロスポビドン、またはクロスカルメロースナトリウムからなる群より選択される作用物質を含む、請求項31記載の薬学的組成物。
【請求項35】
界面活性剤が、ドデシル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、グリセロールポリエチレングリコールオキシステアレート-脂肪酸グリセロールポリグリコールエステル-ポリエチレングリコール-グリセロールエトキシレート、ポリエチレングリコール-ポリエチレングリコール-エトキシル化グリセロールのグリセロール-ポリエチレングリコールリシノレート-脂肪酸エステル、ビタミンE TPGS、およびソルビタンラウレートからなる群より選択される作用物質を含
む、請求項30記載の薬学的組成物。
【請求項36】
ステアリン酸塩が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、モノステアリン酸アルミニウム、ジステアリン酸アルミニウム、またはトリステアリン酸アルミニウムを含む、請求項28記載の薬学的組成物。
【請求項37】
非ポリマー滑沢剤が20% w/w以下の量で存在する、請求項28記載の薬学的組成物。
【請求項38】
非ポリマー滑沢剤が10% w/w以下の量で存在する、請求項28記載の薬学的組成物。
【請求項39】
非ポリマー滑沢剤が5% w/w以下の量で存在する、請求項28記載の薬学的組成物。
【請求項40】
非ポリマー滑沢剤が2% w/w以下の量で存在する、請求項28記載の薬学的組成物。
【請求項41】
非ポリマー滑沢剤が1% w/w以下の量で存在する、請求項28記載の薬学的組成物。
【請求項42】
処理剤を含まない、請求項28記載の薬学的組成物。
【請求項43】
可塑剤を含まない、請求項28記載の薬学的組成物。
【請求項44】
活性な薬学的成分対薬学的賦形剤の比が約1対4である、請求項28記載の薬学的組成物。
【請求項45】
活性な薬学的成分対薬学的賦形剤の比が約3対7である、請求項28記載の薬学的組成物。
【請求項46】
活性な薬学的成分対薬学的賦形剤の比が約2対3である、請求項28記載の薬学的組成物。
【請求項47】
活性な薬学的成分対薬学的ポリマーの比が約1対1である、請求項31記載の薬学的組成物。
【請求項48】
1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤が、高い溶融粘度の薬学的ポリマーを含む、請求項28記載の薬学的組成物。
【請求項49】
1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤が、熱不安定性薬学的ポリマーを含む、請求項28記載の薬学的組成物。
【請求項50】
経口剤形に製剤化される、請求項28記載の薬学的組成物。
【請求項51】
経口剤形が、錠剤、カプセル剤、またはサシェ剤である、請求項50記載の薬学的組成物。
【請求項52】
活性な薬学的成分がベムラフェニブではない、請求項28記載の薬学的組成物。
【請求項53】
非ポリマー滑沢剤が、前記活性な薬学的成分と一緒に配合する前には難水溶性もしくは水不溶性および/または結晶性である、請求項28~52に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は2017年11月10日提出の米国特許仮出願第62/584,321号に対する優先権の恩典を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
1. 分野
本開示は、概して、薬剤調製および製造の分野、より具体的には、非晶質固体分散体中に配置された滑沢剤を含む、溶解性の乏しい薬物の薬学的製剤に関する。
【背景技術】
【0003】
2. 関連技術の説明
可能性がある多くの治療分子の有益な適用は、薬物動態特性が不良であるとの理由で開発中に断念されたため、または生成物の性能が次善的であるためのいずれかにより、十分に実現されないことが多い。または、生産されたとしても、そのような分子の製剤に関連する費用が、それらの広範な使用への障壁を作り出すこともある。製剤に伴う問題は低い溶解性によることが多く、不良なバイオアベイラビリティ、経費の増大、および最終的には生成物の開発の終了をもたらす。近年、製薬産業は、薬物溶解性を改善するため、製剤法にさらに大きく頼り始めている。その結果、難水溶性薬物の溶解特性増強を目的とする高度の製剤技術が、現代の薬物送達にとってますます重要となりつつある。
【0004】
薬学的処理において、薬剤製造の成功を確かなものにするために、往々にして潤滑が必要とされることから、滑沢剤は薬物処方の必須成分である。具体的には、製薬業界では、薬物開発における潤滑またはトライボロジーの適用は、製造工程の開発を成功させる上でますます重要になっている。製薬操作(例えば、ブレンディング、ローラー圧縮、錠剤製造、カプセル充填)にとって、潤滑は、製造装置の表面と有機固体の表面との間の摩擦を低下させ、操作の継続を確実にするために必須である。薬学的滑沢剤は、錠剤製剤およびカプセル製剤に添加され、製剤の処理特性を改善する。少量での使用であっても、滑沢剤は重要な役割を果たす。例えば、それらは、排出時に錠剤の表面とダイ壁との境界面で摩擦を減少させるのを助け、パンチおよびダイの摩耗を低減させる。それらは、パンチ面への錠剤の固着、ならびにドゼター(dosator)および充填用のピン(tamping pin)へのカプセルの固着を防止できる。そして、滑沢剤は、混和物の流動性を改善し、ユニット操作を助けることができる。
【0005】
しかしながら、滑沢剤の使用はその制限がないわけではなく、したがって、通常の非晶質分散技術は典型的には、処理補助剤として滑沢剤を含まない。例えば、滑沢剤を含有する非晶質組成物の噴霧乾燥は、結晶性滑沢剤の不溶性の性質のために非常に困難であると思われる。したがって、ホットメルト押出の場合、他の添加物/技術が典型的には適用される。結晶性非ポリマー難溶性滑沢剤は典型的には、それらの疎水性/水不溶性の性質のために溶解性促進剤としてみなされていない。このように、それらは、溶液中に溶解しないことから、薬物溶解度を改善するとは期待されない。試験は実際に、最終的な錠剤またはカプセル製剤における結晶形でのこれらの作用物質の包含が、多くの場合、溶解度/バイオアベイラビリティを妨げることを示している。また、噴霧乾燥の場合には、滑沢剤はプロセスに有益であるとは見なされない。
【0006】
さらに、APIの溶解度を強化した形態を含有する最終投薬形態、特に非晶質固体分散物の形態での調製に関して、滑沢剤は、水性媒体中で過飽和状態である難水溶性薬物の核形成および結晶成長のための場所として機能しうる不溶性の結晶性物質になる傾向があることから、投薬形態の外相における、すなわち、非晶質固体分散物相の外側での滑沢剤の使用は溶解に負の影響を与えることが一般通例によって示唆される。したがって、製剤化APIの非晶質固体分散物相中に滑沢剤を含めることは直観に反するものである。
【発明の概要】
【0007】
概要
したがって、本開示によれば、(a)活性な薬学的成分(API)、またはその薬学的に許容される塩、エステル、誘導体、類縁体、プロドラッグもしくは溶媒和物と、非ポリマー滑沢剤を含む1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤とを提供する段階;(b)熱処理または溶媒蒸発を用いて、段階(a)の材料を処理する段階を含む、薬学的組成物を作製する方法であって、APIおよび1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤の処理が、非晶質薬学的複合物を形成する、該方法が、本明細書において提供される。したがって、結果として生じる組成物は非晶質固体分散物相に非ポリマー滑沢剤を含み、それは非晶質状態でそこに存在する。別の局面において、非ポリマー滑沢剤および薬物は、水性媒体中で過飽和状態であり、溶液相互作用の安定化をもたらす。非ポリマー滑沢剤は、水中で難溶性、または水不溶性であってもよく、かつ/またはそのプレコンパウンド状態で結晶であってもよい。熱処理は、溶融急冷、ホットメルト押出、または熱動力学的処理であってもよい。溶媒蒸発は、噴霧乾燥または噴霧凝結であってもよい。
【0008】
溶媒蒸発における溶媒は、水、エタノール、メタノール、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトン、tert-ブチルアルコール、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジエチルエ-テル、塩化メチレン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、およびその組み合わせからなる群より選択される作用物質を含む。
【0009】
薬学的組成物は2種類以上の活性な薬学的成分を含んでもよい。1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤は、1種類または複数種類の界面活性剤および1種類または複数のポリマー担体を含む、界面活性剤および/または薬学的ポリマーを含んでもよい。段階(b)は、約250℃、約225℃、約200℃、約180℃、約150℃、約150℃から250℃、または約180℃から250℃の最高温度で実施されてもよい。特定の態様において、APIには特にベムラフェニブは含まれない。
【0010】
非ポリマー滑沢剤は、アルコール、例えばミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、もしくは脂肪アルコール、ステアリン酸塩、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、モノステアリン酸アルミニウム、ジステアリン酸アルミニウム、もしくはトリステアリン酸アルミニウム、カルボン酸、例えばミリスチン酸、パルミチン酸、もしくはステアリン酸、グリセリル、例えばモノステアリン酸グリセリル、ベヘン酸グリセリル、もしくはパルミトステアリン酸グリセリル、または別の材料、例えばフマル酸ステアリルナトリウム、もしくはパルミチン酸アスコルビルを含んでもよい。非ポリマー滑沢剤は、滑沢剤として用いる場合には2% w/w以下または1% w/w/以下の量で、または溶解性促進剤として用いる場合には20% w/w/以下、10% w/w以下、または5% w/w以下、2% w/w以下、または1% w/w以下の量で存在してもよい。
【0011】
薬学的に許容可能な賦形剤は、ポリ(ビニルアセテート)-コ-ポリ(ビニルピロリドン)コポリマー、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチル-セルロースナトリウム、ジメチルアミノエチルメタクリレート-メタクリル酸エステルコポリマー、エチルアクリレート-メチルメタクリレートコポリマー、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメレテート、ポリ(ビニルアセテート)フタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリ(メタクリレートエチルアクリレート)(1:1)コポリマー、ポリ(メタクリレートメチルメタクリレート)(1:1)コポリマー、ポリ(メタクリレートメチルメタクリレート)(1:2)コポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートおよびポリビニルカプロラクタム-ポリビニルアセテート-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、ドデシル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、グリセロールポリエチレングリコールオキシステアレート-脂肪酸グリセロールポリグリコールエステル-ポリエチレングリコール-グリセロールエトキシレート、ポリエチレングリコール-ポリエチレングリコール-エトキシル化グリセロールのグリセロール-ポリエチレングリコールリシノレート-脂肪酸エステル、ビタミンE TPGSおよびソルビタンラウレートからなる群より選択される作用物質をさらに含んでいてもよい。
【0012】
薬学的ポリマーは、ポリ(ビニルアセテート)-コ-ポリ(ビニルピロリドン)コポリマー、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチル-セルロースナトリウム、ジメチルアミノエチルメタクリレート-メタクリル酸エステルコポリマー、エチルアクリレート-メチルメタクリレートコポリマー、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメレテート、ポリ(ビニルアセテート)フタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリ(メタクリレートエチルアクリレート)(1:1)コポリマー、ポリ(メタクリレートメチルメタクリレート)(1:1)コポリマー、ポリ(メタクリレートメチルメタクリレート)(1:2)コポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、およびポリビニルカプロラクタム-ポリビニルアセテート-ポリエチレングリコールグラフトコポリマーからなる群より選択される作用物質を含んでもよい。
【0013】
界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、グリセロールポリエチレングリコールオキシステアレート-脂肪酸グリセロールポリグリコールエステル-ポリエチレングリコール-グリセロールエトキシレート、ポリエチレングリコール-ポリエチレングリコール-エトキシル化グリセロールのグリセロール-ポリエチレングリコールリシノレート-脂肪酸エステル、ビタミンE TPGS、およびソルビタンラウレートからなる群より選択される作用物質を含んでもよく、かつ薬学的ポリマーは、ポリ(ビニルピロリドン)、エチルアクリレート-メチルメタクリレートコポリマー、ポリ(メタクリレートエチルアクリレート)(1:1)コポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ポリ(ブチルメタシレート(methacylate)-コ-(2-ジメチルアミノエチル)メタクリレート-コ-メチルメタクリレート) 1:2:1、およびポリビニルカプロラクタム-ポリビニルアセテート-ポリエチレングリコールグラフトコポリマーからなる群より選択される作用物質を含む。
【0014】
1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤は、可塑剤などの処理剤を含んでもよい。
【0015】
1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤は、高い溶融粘度の薬学的ポリマーおよび/または熱不安定性薬学的ポリマーを含んでもよい。
【0016】
別の態様において、本明細書において、活性な薬学的成分、またはその薬学的に許容される塩、エステル、誘導体、類縁体、プロドラッグもしくは溶媒和物と、1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤との非晶質分散物を含む薬学的組成物であって、該1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤が、APIと共処理される非ポリマー滑沢剤を含む、該組成物が提供される。したがって、組成物は、非晶質固体分散物相中に非ポリマー滑沢剤を含み、それは非晶質状態でそこに存在する。薬学的は、2種類以上の活性な薬学的成分を含んでもよい。特定の態様において、APIには特にベムラフェニブは含まれない。非ポリマー滑沢剤は、水中で難溶性、または水不溶性であってもよく、かつ/またはそのプレコンパウンド状態で結晶であってもよい。
【0017】
非ポリマー滑沢剤は、アルコール、例えばミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、もしくは脂肪アルコール、ステアリン酸塩、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、モノステアリン酸アルミニウム、ジステアリン酸アルミニウム、もしくはトリステアリン酸アルミニウム、カルボン酸、例えばミリスチン酸、パルミチン酸、もしくはステアリン酸、グリセリル、例えばモノステアリン酸グリセリル、ベヘン酸グリセリル、もしくはパルミトステアリン酸グリセリル、または別の材料、例えばフマル酸ステアリルナトリウム、もしくはパルミチン酸アスコルビルを含んでもよい。非ポリマー滑沢剤は、滑沢剤として用いる場合には2% w/w以下または1% w/w/以下の量で、または溶解性促進剤として用いる場合には20% w/w/以下、10% w/w以下、または5% w/w以下、2% w/w以下、または1% w/w以下の量で存在してもよい。
【0018】
1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤は、界面活性剤、処理剤、または可塑剤を含んでもよい。
【0019】
薬学的に許容される賦形剤は、ポリ(ビニルアセテート)-コ-ポリ(ビニルピロリドン)コポリマー、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチル-セルロースナトリウム、ジメチルアミノエチルメタクリレート-メタクリル酸エステルコポリマー、エチルアクリレート-メチルメタクリレートコポリマー、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメレテート、ポリ(ビニルアセテート)フタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリ(メタクリレートエチルアクリレート)(1:1)コポリマー、ポリ(メタクリレートメチルメタクリレート)(1:1)コポリマー、ポリ(メタクリレートメチルメタクリレート)(1:2)コポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートおよびポリビニルカプロラクタム-ポリビニルアセテート-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、ドデシル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、グリセロールポリエチレングリコールオキシステアレート-脂肪酸グリセロールポリグリコールエステル-ポリエチレングリコール-グリセロールエトキシレート、ポリエチレングリコール-ポリエチレングリコール-エトキシル化グリセロールのグリセロール-ポリエチレングリコールリシノレート-脂肪酸エステル、ビタミンE TPGS、およびソルビタンラウレートからなる群より選択される作用物質をさらに含んでもよい。
【0020】
薬学的ポリマーは、ポリ(ビニルアセテート)-コ-ポリ(ビニルピロリドン)コポリマー、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチル-セルロースナトリウム、ジメチルアミノエチルメタクリレート-メタクリル酸エステルコポリマー、エチルアクリレート-メチルメタクリレートコポリマー、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメレテート、ポリ(ビニルアセテート)フタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリ(メタクリレートエチルアクリレート)(1:1)コポリマー、ポリ(メタクリレートメチルメタクリレート)(1:1)コポリマー、ポリ(メタクリレートメチルメタクリレート)(1:2)コポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートおよびポリビニルカプロラクタム-ポリビニルアセテート-ポリエチレングリコールグラフトコポリマーからなる群より選択される作用物質を含んでもよい。
【0021】
界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、グリセロールポリエチレングリコールオキシステアレート-脂肪酸グリセロールポリグリコールエステル-ポリエチレングリコール-グリセロールエトキシレート、ポリエチレングリコール-ポリエチレングリコール-エトキシル化グリセロールのグリセロール-ポリエチレングリコールリシノレート-脂肪酸エステル、ビタミンE TPGS、およびソルビタンラウレートからなる群より選択される作用物質を含んでもよく、かつ薬学的ポリマーはポリ(ビニルピロリドン)、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびカルボキシメチル-セルロースナトリウムおよびポリビニルカプロラクタム-ポリビニルアセテート-ポリエチレングリコールグラフトコポリマーからなる群より選択される作用物質を含む。
【0022】
薬学的に許容される賦形剤は、ドデシル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、グリセロールポリエチレングリコールオキシステアレート-脂肪酸グリセロールポリグリコールエステル-ポリエチレングリコール-グリセロールエトキシレート、ポリエチレングリコール-ポリエチレングリコール-エトキシル化グリセロールのグリセロール-ポリエチレングリコールリシノレート-脂肪酸エステル、ビタミンE TPGS、ソルビタンラウレート、ポリ(ビニルアセテート)-コ-ポリ(ビニルピロリドン)コポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチル-セルロースナトリウム、およびポリビニルカプロラクタム-ポリビニルアセテート-ポリエチレングリコールグラフトコポリマーからなる群より選択される作用物質をさらに含んでもよい。
【0023】
薬学的組成物は、処理剤を含まなくてもよく、かつ/または可塑剤を含まなくてもよい。組成物は複合物であってもよく、かつ均質であるか、不均質であるか、または異成分からなる均質である組成物である。
【0024】
1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤は、高い融解粘度の薬学的ポリマーおよびまたは熱不安定性薬学的ポリマーをさらに含んでもよい。
【0025】
薬学的組成物は、錠剤、カプセル剤、またはサシェ剤などの経口剤形に製剤化されてもよい。
【0026】
なおさらなる態様において、本明細書において、(a)活性な薬学的成分と、非ポリマー滑沢剤を含む1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤とを提供する段階;(b)熱処理または溶媒蒸発を用いて段階(a)の材料を処理する段階を含むプロセスによって生成される薬学的組成物であって、活性な薬学的成分および1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤の処理が非晶質薬学的組成物を形成する、該薬学的組成物が提供される。したがって、組成物は、非晶質固体分散物相中に非ポリマー滑沢剤を含み、それは非晶質状態でそこに存在する。熱処理は、溶融急冷、ホットメルト押出または熱動力学的処理であってもよい。非ポリマー滑沢剤は、水中で難溶性、または水不溶性であってもよく、かつ/またはそのプレコンパウンド状態で結晶であってもよい。溶媒蒸発は、噴霧乾燥または噴霧凝結であってもよい。
【0027】
溶媒蒸発における溶媒は、水、エタノール、メタノール、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトン、tert-ブチルアルコール、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジエチルエ-テル、塩化メチレン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、およびその組み合わせからなる群より選択される作用物質を含む。
【0028】
1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤は、非イオン性薬学的ポリマー、イオン性薬学的ポリマー、水溶性薬学的ポリマー、セルロース性薬学的ポリマー、非イオン性水溶性薬学的ポリマー、非イオン性セルロース性薬学的ポリマー、水溶性セルロース性薬学的ポリマー、熱不安定性薬学的ポリマー、高い溶融粘度の薬学的ポリマー、および/または架橋薬学的ポリマーをさらに含んでもよい。特定の態様において、APIは特にベムラフェニブを含まない。
【0029】
非ポリマー滑沢剤は、アルコール、例えばミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、もしくは脂肪アルコール、ステアリン酸塩、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、モノステアリン酸アルミニウム、ジステアリン酸アルミニウム、もしくはトリステアリン酸アルミニウム、カルボン酸、例えばミリスチン酸、パルミチン酸、もしくはステアリン酸、グリセリル、例えばモノステアリン酸グリセリル、ベヘン酸グリセリル、もしくはパルミトステアリン酸グリセリル、または別の材料、例えばフマル酸ステアリルナトリウム、もしくはパルミチン酸アスコルビルを含んでもよい。非ポリマー滑沢剤は、滑沢剤として用いる場合には2% w/w以下または1% w/w/以下の量で、または溶解性促進剤として用いる場合には20% w/w/以下、10% w/w以下、または5% w/w以下、2% w/w以下、または1% w/w以下の量で存在してもよい。
【0030】
薬学的組成物は、可塑剤などの処理剤を含んでもよい。薬学的組成物は1種類または複数種類の活性な薬学的成分をさらに含んでもよい。薬学的組成物は、最終剤形において1種類または複数種類の活性な薬学的成分と共処理によって組み合わされてもよい。薬学的組成物は、最終剤形において1種類または複数種類の活性な薬学的成分と混合されてもよい。
【0031】
熱動力学的処理は、熱動力学的チャンバー内で行ってもよい。熱動力学的チャンバーは、その中でTKCが起こる密閉された容器またはチャンバーである。1つの局面において、活性な薬学的成分および1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤、補助剤、さらなるAPI、またはその任意の組み合わせの、複合物への最適な熱動力学的混合を達成するために、チャンバー内の平均温度を、処理の期間中、あらかじめ規定された最終温度まで上昇させる。別の局面において、活性な薬学的成分および1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤、補助剤、さらなるAPI、またはその任意の組み合わせの、複合物への最適な熱動力学的混合を、最小限の熱分解で達成するために、1回の連続回転TKC操作中に複数の速度を用いる。熱動力学的混合中の処理および高い温度または速度への曝露の長さは、一般には活性な薬学的成分、賦形剤、補助剤、またはさらなるAPIの熱感受性閾値よりも短い。別の局面において、熱動力学的処理は、活性な薬学的成分、賦形剤、補助剤、もしくはさらなるAPIの融点以下の平均温度で実施するか;熱動力学的処理は、活性な薬学的成分、賦形剤、補助剤、もしくはさらなるAPIのガラス転移温度以下の平均温度で実施するか;または熱動力学的処理は、DFX、賦形剤、補助剤、もしくはさらなるAPIの溶融転移点以下の平均温度で実施する。
【0032】
1つの局面において、熱処理または溶媒蒸発によって作られた活性な薬学的成分の複合物は、均質であるか、不均質であるか、もしくは異成分からなる均質である複合物または非晶質複合物である。別の局面において、本開示の方法、活性な薬学的成分の組成物および複合体は、経口または非経口投与、例えば、頬、舌下、静脈内、非経口、肺、直腸、膣、局所、尿道、耳、眼内、または経皮投与に適応されてもよい。別の局面において、非ポリマー滑沢剤および薬物は、水性媒体中で過飽和状態であり、溶液相互作用の安定化をもたらす。
【0033】
別の局面において、熱処理は処理剤を伴ってまたは伴わずに実行されうる。処理剤の例には、可塑剤、熱滑沢剤、有機溶剤、溶融ブレンドを促進する作用物質、および下流の処理を促進する作用物質(例えば、レシチン)が挙げられる。複合体はまた、担体、例えば、高い溶融粘度を有するポリマーを含んでもよい。別の局面において、活性な薬学的成分の放出速度プロファイルは、組成物の1種類または複数種類の賦形剤によって決定される。したがって、組成物は、即時放出、混合放出、持続放出またはそれらの組み合わせのために製剤化されてもよい。別の局面において、活性な薬学的成分の粒径は、活性な薬学的成分が混和性でない、適合性でない、または混和性もしくは適合性でない賦形剤/担体系において低減される。1つの局面において、活性な薬学的成分は、賦形剤、担体、補助剤、またはそれらの任意の組み合わせと共にナノコンポジットとして製剤化される。特定の態様において、APIは特にベムラフェニブを含まない。
【0034】
非ポリマー滑沢剤は、水中で難溶性、または水不溶性であってもよく、かつ/またはそのプレコンパウンド状態で結晶であってもよい。非ポリマー滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウム、ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリル(ナトリウム)、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、またはステアリン酸亜鉛を含んでもよい。
【0035】
ある特定の態様において、熱動力学的処理は、活性な薬学的成分、賦形剤、補助剤またはさらなるAPIの分解を実質的に排除する。例えば、TKCは、約2.0%、1.0%、0.75%、0.5%、0.1%、0.05%、または0.01%未満の、活性な薬学的成分、補助剤、賦形剤またはさらなるAPIの分解産物を有する組成物および複合物を生成してもよい。この利点は、MBPプロセス時の洗浄および乾燥時に、再結晶化のために供される活性な薬学的成分にとって重要である。他の態様において、TKCは、活性な薬学的成分に関して、最低限少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.9%の薬物効力を有する組成物を生成しうる。TKCの例は、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、75、100、120、150、180、240および300秒未満の間実施してもよい。一般に、TKCは、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、75、100、120、150、180、240および300秒未満、ならびにその中の任意の範囲の間実施してもよい。ある特定の態様において、活性な薬学的成分は非晶質形態、結晶形態、または中間形態を有する。
【0036】
ある特定の態様において、製剤は、活性な薬学的成分の薬学的に許容されるポリマー、担体、界面活性剤、賦形剤、補助剤またはそれらの任意の組み合わせとの混合を通じて、活性な薬学的成分の溶解性増強を提供してもよい。したがって、例えば、溶解性増強を示す組成物は、活性な薬学的成分および界面活性剤、活性な薬学的成分および薬学的担体(熱結合剤)、または活性な薬学的成分ならびに界面活性剤および薬学的担体の組み合わせで構成される。特定の態様において、APIは特にベムラフェニブを含まない。
【0037】
本開示のさらなる態様は、活性な薬学的成分、および非ポリマー滑沢剤を含む1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤、補助剤、さらなるAPI、またはそれらの組み合わせを含む薬学的組成物であって、組成物の活性な薬学的成分の最高溶解度が、pH 4~8の水性緩衝液中で約6 μg/mL、約7 μg/mL、約8 μg/mL、約9 μg/mL、約10 μg/mL、約11 μg/mL、約12 μg/mL、約13 μg/mL、約14 μg/mL、約15 μg/mL、約16 μg/mL、約20 μg/mL、約25 μg/mL、約30 μg/mL、約35 μg/mL、約40 μg/mL、45 μg/mL、約50 μg/mLまたは約60 μg/mLより大きい、該組成物である。特定の態様において、APIは特にベムラフェニブを含まない。非ポリマー滑沢剤は、水中で難溶性、または水不溶性であってもよく、かつ/またはそのプレコンパウンド状態で結晶であってもよい。
【0038】
本開示のさらなる態様は、活性な薬学的成分、および非ポリマー滑沢剤を含む1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤、補助剤、さらなるAPI、またはそれらの組み合わせを含む薬学的組成物であって、活性な薬学的成分の参照標準品の最高溶解度に対する組成物中の活性な薬学的成分の最高溶解度の比が、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、または約10:1よりも大きい、該組成物である。特定の態様において、APIは特にベムラフェニブを含まない。非ポリマー滑沢剤は、水中で難溶性、または水不溶性であってもよく、かつ/またはそのプレコンパウンド状態で結晶であってもよい。
【0039】
本開示のさらなる態様は、複合物へと融解ブレンドされるまで、活性な薬学的成分を、1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤、補助剤、さらなるAPI、またはそれらの任意の組み合わせと一緒に熱動力学的処理する段階を含む、活性な薬学的成分のバイオアベイラビリティを増大させるためのTKCによって、活性な薬学的成分、および非ポリマー滑沢剤を含む1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤、補助剤、さらなるAPI、またはそれらの任意の組み合わせを含む薬学的組成物を製剤化する方法である。特定の態様において、APIは特にベムラフェニブを含まない。非ポリマー滑沢剤は、水中で難溶性、または水不溶性であってもよく、かつ/またはそのプレコンパウンド状態で結晶であってもよい。
【0040】
本開示のさらなる態様は、複合物へと処理された、活性な薬学的成分、および非ポリマー滑沢剤を含む1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤、補助剤、さらなるAPI、またはそれらの任意の組み合わせを含む薬学的組成物であって、約1.0%、約2%、約3%、約4%または約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、または約10%未満の活性な薬学的成分の分解産物を有する、均質であるか、不均質であるか、または異成分からなる均質である組成物である、該組成物である。特定の態様において、APIは特にベムラフェニブを含まない。非ポリマー滑沢剤は、水中で難溶性、または水不溶性であってもよく、かつ/またはそのプレコンパウンド状態で結晶であってもよい。
【0041】
[本発明1001]
(a)活性な薬学的成分と、アルコール、ステアリン酸塩、カルボン酸、グリセリル、フマル酸ステアリルナトリウム、またはパルミチン酸アスコルビルから選択される作用物質を含む非ポリマー滑沢剤を含む1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤とを提供する段階;
(b)熱処理または溶媒蒸発を用いて段階(a)の材料を処理する段階
を含む、薬学的組成物を作製する方法であって、
活性な薬学的成分、および非ポリマー滑沢剤を含む1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤の処理が、非晶質薬学的組成物を形成する、方法。
[本発明1002]
前記薬学的物が2種類以上の活性な薬学的成分を含む、本発明1001の方法。
[本発明1003]
2種類以上の薬学的に許容される賦形剤が界面活性剤を含む、本発明1001の方法。
[本発明1004]
2種類以上の薬学的に許容される賦形剤が薬学的ポリマーを含む、本発明1001の方法。
[本発明1005]
2種類以上の薬学的に許容される賦形剤が、1種類または複数種類の界面活性剤および1種類または複数種類のポリマー担体を含む、本発明1001の方法。
[本発明1006]
2種類以上の薬学的に許容される賦形剤が、ポリ(ビニルアセテート)-コ-ポリ(ビニルピロリドン)コポリマー、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチル-セルロースナトリウム、ジメチルアミノエチルメタクリレート-メタクリル酸エステルコポリマー、エチルアクリレート-メチルメタクリレートコポリマー、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメレテート、ポリ(ビニルアセテート)フタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリ(メタクリレートエチルアクリレート)(1:1)コポリマー、ポリ(メタクリレートメチルメタクリレート)(1:1)コポリマー、ポリ(メタクリレートメチルメタクリレート)(1:2)コポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートおよびポリビニルカプロラクタム-ポリビニルアセテート-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、カルボマー、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、グリセロールポリエチレングリコールオキシステアレート-脂肪酸グリセロールポリグリコールエステル-ポリエチレングリコール-グリセロールエトキシレート、ポリエチレングリコール-ポリエチレングリコール-エトキシル化グリセロールのグリセロール-ポリエチレングリコールリシノレート-脂肪酸エステル、ビタミンE TPGS、およびソルビタンラウレートからなる群より選択される作用物質を含む、本発明1001の方法。
[本発明1007]
2種類以上の薬学的ポリマーが、ポリ(ビニルアセテート)-コ-ポリ(ビニルピロリドン)コポリマー、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチル-セルロースナトリウム、ジメチルアミノエチルメタクリレート-メタクリル酸エステルコポリマー、エチルアクリレート-メチルメタクリレートコポリマー、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメレテート、ポリ(ビニルアセテート)フタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリ(メタクリレートエチルアクリレート)(1:1)コポリマー、ポリ(メタクリレートメチルメタクリレート)(1:1)コポリマー、ポリ(メタクリレートメチルメタクリレート)(1:2)コポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートおよびポリビニルカプロラクタム-ポリビニルアセテート-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、カルボマー、クロスポビドン、またはクロスカルメロースナトリウムからなる群より選択される作用物質を含む、本発明1004の方法。
[本発明1008]
界面活性剤が、ドデシル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、グリセロールポリエチレングリコールオキシステアレート-脂肪酸グリセロールポリグリコールエステル-ポリエチレングリコール-グリセロールエトキシレート、ポリエチレングリコール-ポリエチレングリコール-エトキシル化グリセロールのグリセロール-ポリエチレングリコールリシノレート-脂肪酸エステル、ビタミンE TPGS、およびソルビタンラウレートからなる群より選択される作用物質を含み、かつ薬学的ポリマーが、ポリ(ビニルピロリドン)、エチルアクリレート-メチルメタクリレートコポリマー、ポリ(メタクリレートエチルアクリレート)(1:1)コポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ポリ(ブチルメタシレート-コ-(2-ジメチルアミノエチル)メタクリレート-コ-メチルメタクリレート) 1:2:1、およびポリビニルカプロラクタム-ポリビニルアセテート-ポリエチレングリコールグラフトコポリマーからなる群より選択される作用物質を含む、本発明1003の方法。
[本発明1009]
活性な薬学的成分がベムラフェニブではない、本発明1001の方法。
[本発明1010]
アルコールが、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、または脂肪アルコールを含む、本発明1001の方法。
[本発明1011]
ステアリン酸塩が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、モノステアリン酸アルミニウム、ジステアリン酸アルミニウム、またはトリステアリン酸アルミニウムを含む、本発明1001の方法。
[本発明1012]
カルボン酸が、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸を含む、本発明1001の方法。
[本発明1013]
グリセリルが、モノステアリン酸グリセリル、ベヘン酸グリセリル、またはパルミトステアリン酸グリセリルを含む、本発明1001の方法。
[本発明1014]
非ポリマー滑沢剤が20% w/w以下の量で存在する、本発明1001の方法。
[本発明1015]
非ポリマー滑沢剤が10% w/w以下の量で存在する、本発明1001の方法。
[本発明1016]
非ポリマー滑沢剤が5% w/w以下の量で存在する、本発明1001の方法。
[本発明1017]
非ポリマー滑沢剤が2% w/w以下の量で存在する、本発明1001の方法。
[本発明1018]
非ポリマー滑沢剤が1% w/w以下の量で存在する、本発明1001の方法。
[本発明1019]
2種類以上の薬学的に許容される賦形剤が、可塑剤などの処理剤を含む、本発明1001の方法。
[本発明1020]
段階(b)が、約250℃、約225℃、約200℃、約180℃、約150℃、または約150℃から250℃の最高温度で実施される、本発明1001の方法。
[本発明1021]
2種類以上の薬学的に許容される賦形剤が、高い溶融粘度の薬学的ポリマーを含む、本発明1001の方法。
[本発明1022]
2種類以上の薬学的に許容される賦形剤が、熱不安定性薬学的ポリマーを含む、本発明1001の方法。
[本発明1023]
熱処理が、溶融急冷、ホットメルト押出、または熱動力学的処理を含む、本発明1001~1022の方法。
[本発明1024]
溶媒蒸発が、噴霧乾燥または噴霧凝結を含む、本発明1001~1022の方法。
[本発明1025]
溶媒蒸発における溶媒が、水、エタノール、メタノール、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトン、tert-ブチルアルコール、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジエチルエ-テル、塩化メチレン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、およびその組み合わせからなる群より選択される作用物質を含む、本発明1001~1022の方法。
[本発明1026]
活性な薬学的成分対薬学的賦形剤の比が約1対4である、本発明1001の方法。
[本発明1027]
活性な薬学的成分対薬学的賦形剤の比が約3対7である、本発明1001の方法。
[本発明1028]
活性な薬学的成分対薬学的賦形剤の比が約2対3である、本発明1001の方法。
[本発明1029]
活性な薬学的成分対薬学的賦形剤の比が約1対1である、本発明1001の方法。
[本発明1030]
非ポリマー滑沢剤が、前記活性な薬学的成分と一緒に配合する前には難水溶性もしくは水不溶性および/または結晶性である、本発明1001~1029の方法。
[本発明1031]
活性な薬学的成分と、1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤と、アルコール、ステアリン酸塩、カルボン酸、グリセリル、フマル酸ステアリルナトリウム、またはパルミチン酸アスコルビルから選択される作用物質を含む非ポリマー滑沢剤との非晶質分散物を含む、薬学的組成物。
[本発明1032]
前記薬学的物が2種類以上の活性な薬学的成分を含む、本発明1031の薬学的組成物。
[本発明1033]
1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤が界面活性剤を含む、本発明1031の薬学的組成物。
[本発明1034]
1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤が薬学的ポリマーを含む、本発明1031の薬学的組成物。
[本発明1035]
1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤が可塑剤を含む、本発明1031の薬学的組成物。
[本発明1036]
薬学的に許容される賦形剤が、ポリ(ビニルアセテート)-コ-ポリ(ビニルピロリドン)コポリマー、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチル-セルロースナトリウム、ジメチルアミノエチルメタクリレート-メタクリル酸エステルコポリマー、エチルアクリレート-メチルメタクリレートコポリマー、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメレテート、ポリ(ビニルアセテート)フタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリ(メタクリレートエチルアクリレート)(1:1)コポリマー、ポリ(メタクリレートメチルメタクリレート)(1:1)コポリマー、ポリ(メタクリレートメチルメタクリレート)(1:2)コポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ポリビニルカプロラクタム-ポリビニルアセテート-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、カルボマー、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、グリセロールポリエチレングリコールオキシステアレート-脂肪酸グリセロールポリグリコールエステル-ポリエチレングリコール-グリセロールエトキシレート、ポリエチレングリコール-ポリエチレングリコール-エトキシル化グリセロールのグリセロール-ポリエチレングリコールリシノレート-脂肪酸エステル、ビタミンE TPGS、およびソルビタンラウレートからなる群より選択される作用物質を含む、本発明1031の薬学的組成物。
[本発明1037]
薬学的ポリマーが、ポリ(ビニルアセテート)-コ-ポリ(ビニルピロリドン)コポリマー、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチル-セルロースナトリウム、ジメチルアミノエチルメタクリレート-メタクリル酸エステルコポリマー、エチルアクリレート-メチルメタクリレートコポリマー、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメレテート、ポリ(ビニルアセテート)フタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリ(メタクリレートエチルアクリレート)(1:1)コポリマー、ポリ(メタクリレートメチルメタクリレート)(1:1)コポリマー、ポリ(メタクリレートメチルメタクリレート)(1:2)コポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートおよびポリビニルカプロラクタム-ポリビニルアセテート-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、カルボマー、クロスポビドン、またはクロスカルメロースナトリウムからなる群より選択される作用物質を含む、本発明1034の薬学的組成物。
[本発明1038]
界面活性剤が、ドデシル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、グリセロールポリエチレングリコールオキシステアレート-脂肪酸グリセロールポリグリコールエステル-ポリエチレングリコール-グリセロールエトキシレート、ポリエチレングリコール-ポリエチレングリコール-エトキシル化グリセロールのグリセロール-ポリエチレングリコールリシノレート-脂肪酸エステル、ビタミンE TPGS、およびソルビタンラウレートからなる群より選択される作用物質を含み、かつ薬学的ポリマーが、ポリ(ビニルピロリドン)、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびカルボキシメチル-セルロースナトリウム、およびポリビニルカプロラクタム-ポリビニルアセテート-ポリエチレングリコールグラフトコポリマーからなる群より選択される作用物質を含む、本発明1033の薬学的組成物。
[本発明1039]
アルコールが、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、または脂肪アルコールを含む、本発明1031の薬学的組成物。
[本発明1040]
ステアリン酸塩が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、モノステアリン酸アルミニウム、ジステアリン酸アルミニウム、またはトリステアリン酸アルミニウムを含む、本発明1031の薬学的組成物。
[本発明1041]
カルボン酸が、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸を含む、本発明1031の薬学的組成物。
[本発明1042]
グリセリルが、モノステアリン酸グリセリル、ベヘン酸グリセリル、またはパルミトステアリン酸グリセリルを含む、本発明1031の薬学的組成物。
[本発明1043]
非ポリマー滑沢剤が20% w/w以下の量で存在する、本発明1031の薬学的組成物。
[本発明1044]
非ポリマー滑沢剤が10% w/w以下の量で存在する、本発明1031の薬学的組成物。
[本発明1045]
非ポリマー滑沢剤が5% w/w以下の量で存在する、本発明1031の薬学的組成物。
[本発明1046]
非ポリマー滑沢剤が2% w/w以下の量で存在する、本発明1031の薬学的組成物。
[本発明1047]
非ポリマー滑沢剤が1% w/w以下の量で存在する、本発明1031の薬学的組成物。
[本発明1048]
処理剤を含まない、本発明1031の薬学的組成物。
[本発明1049]
可塑剤を含まない、本発明1031の薬学的組成物。
[本発明1050]
活性な薬学的成分対薬学的賦形剤の比が約1対4である、本発明1031の薬学的組成物。
[本発明1051]
活性な薬学的成分対薬学的賦形剤の比が約3対7である、本発明1031の薬学的組成物。
[本発明1052]
活性な薬学的成分対薬学的賦形剤の比が約2対3である、本発明1031の薬学的組成物。
[本発明1053]
活性な薬学的成分対薬学的ポリマーの比が約1対1である、本発明1031の薬学的組成物。
[本発明1054]
1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤が、高い溶融粘度の薬学的ポリマーを含む、本発明1031の薬学的組成物。
[本発明1055]
1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤が、熱不安定性薬学的ポリマーを含む、本発明1031の薬学的組成物。
[本発明1056]
経口剤形に製剤化される、本発明1031の薬学的組成物。
[本発明1057]
経口剤形が、錠剤、カプセル剤、またはサシェ剤である、本発明1031の薬学的組成物。
[本発明1058]
活性な薬学的成分がベムラフェニブではない、本発明1031の薬学的組成物。
[本発明1059]
非ポリマー滑沢剤が、前記活性な薬学的成分と一緒に配合する前には難水溶性もしくは水不溶性および/または結晶性である、本発明1031~1058の薬学的組成物。
[本発明1060]
(a)活性な薬学的成分と、アルコール、ステアリン酸塩、カルボン酸、グリセリル、フマル酸ステアリルナトリウム、またはパルミチン酸アスコルビルから選択される作用物質を含む非ポリマー滑沢剤を含む1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤とを提供する段階;
(b)熱処理または溶媒蒸発を用いて段階(a)の材料を処理する段階
を含むプロセスによって生成される薬学的組成物であって、
活性な薬学的成分、および非ポリマー滑沢剤を含む1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤の処理が、非晶質薬学的組成物を形成する、前記組成物。
[本発明1061]
前記2種類以上または複数種類の薬学的に許容される賦形剤が、ポリ(ビニルアセテート)-コ-ポリ(ビニルピロリドン)コポリマー、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチル-セルロースナトリウム、ジメチルアミノエチルメタクリレート-メタクリル酸エステルコポリマー、エチルアクリレート-メチルメタクリレートコポリマー、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメレテート、ポリ(ビニルアセテート)フタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリ(メタクリレートエチルアクリレート)(1:1)コポリマー、ポリ(メタクリレートメチルメタクリレート)(1:1)コポリマー、ポリ(メタクリレートメチルメタクリレート)(1:2)コポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、およびポリビニルカプロラクタム-ポリビニルアセテート-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、ドデシル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、グリセロールポリエチレングリコールオキシステアレート-脂肪酸グリセロールポリグリコールエステル-ポリエチレングリコール-グリセロールエトキシレート、ポリエチレングリコール-ポリエチレングリコール-エトキシル化グリセロールのグリセロール-ポリエチレングリコールリシノレート-脂肪酸エステル、ビタミンE TPGS、およびソルビタンラウレートからなる群より選択される作用物質を含む、本発明1060の薬学的組成物。
[本発明1062]
可塑剤などの処理剤を含む、本発明1060の薬学的組成物。
[本発明1063]
前記活性な薬学的成分がベムラフェニブではない、本発明1060の薬学的製剤。
[本発明1064]
アルコールが、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、または脂肪アルコールを含む、本発明1060の薬学的製剤。
[本発明1065]
ステアリン酸塩が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、モノステアリン酸アルミニウム、ジステアリン酸アルミニウム、またはトリステアリン酸アルミニウムを含む、本発明1060の方法。
[本発明1066]
カルボン酸が、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸を含む、本発明1060の方法。
[本発明1067]
グリセリルが、モノステアリン酸グリセリル、ベヘン酸グリセリル、またはパルミトステアリン酸グリセリルを含む、本発明1060の方法。
[本発明1068]
非ポリマー滑沢剤が20% w/w/以下の量で存在する、本発明1060の方法。
[本発明1069]
非ポリマー滑沢剤が10% w/w以下の量で存在する、本発明1060の方法。
[本発明1070]
非ポリマー滑沢剤が5% w/w以下の量で存在する、本発明1060の方法。
[本発明1071]
非ポリマー滑沢剤が2% w/w以下の量で存在する、本発明1060の方法。
[本発明1072]
非ポリマー滑沢剤が1% w/w以下の量で存在する、本発明1060の方法。
[本発明1073]
熱処理が、溶融急冷、ホットメルト押出、または熱動力学的処理を含む、本発明1060の方法。
[本発明1074]
溶媒蒸発が、噴霧乾燥または噴霧凝結を含む、本発明1060の方法。
[本発明1075]
溶媒蒸発における溶媒が、水、エタノール、メタノール、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトン、tert-ブチルアルコール、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジエチルエ-テル、塩化メチレン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、およびその組み合わせからなる群より選択される作用物質を含む、本発明1074の方法。
[本発明1076]
非ポリマー滑沢剤が、前記活性な薬学的成分と一緒に配合する前には難水溶性もしくは水不溶性および/または結晶性である、本発明1060の薬学的製剤。
本開示の様々な態様の作製および使用が前述および詳細に後述されるが、本開示は多様な文脈において具体化されうる多くの発明概念を提供することが理解されるべきである。本明細書において述べられる特定の局面および態様は、本開示を作製および使用するためのやり方の例示に過ぎず、本開示の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
以下の図面は本明細書の一部を形成し、本開示のある特定の局面をさらに示すために含まれる。本開示は、これらの図面の1つまたは複数を、本明細書において示す具体的態様の詳細な説明と組み合わせて参照することにより、よりよく理解されうる。
【
図1】内部MgStを伴うおよび伴わない分散物を含む、2種類のポリマー担体系を用いるDFXの非晶質分散物を作製した。それらの分散物を含有する錠剤を調製し、36 mg/kgの用量でビーグル犬に投与した。AUCは、MgStを伴わない非晶質固体分散物(ASD)を含む錠剤(白抜きの記号)に対して、内部MgStを伴うASDを含む錠剤(黒塗りの記号)で、おおよそ50%高かった。
【
図2】種々のヒプロメロース組成物の熱動力学的配合。最高温度は、20秒未満の温度上昇でイトラコナゾールの融点を下回った。全てのプロファイルで、熱処理はイトラコナゾール/薬学的ポリマー/滑沢剤(適切な場合)組成物を非晶質状態にさせた。
【
図3】種々のヒプロメロース組成物のX線粉体回折。結果は、熱動力学的配合バッチが、全てのイトラコナゾール/薬学的ポリマー/滑沢剤(適切な場合)組成物で非晶質であったことを示した。明確さのために、個々のプロットは、一定の値でy軸に移された。
【
図4】種々の滑沢剤組成物の熱動力学的配合。最大温度は、10秒未満の温度上昇でイトラコナゾールの融点を下回った。全てのプロファイルで、熱処理はイトラコナゾール/薬学的ポリマー/滑沢剤組成物を非晶質状態にさせた。
【
図5】種々の滑沢剤組成物のX線粉体回折。結果は、熱動力学的配合バッチが、全てのイトラコナゾール/薬学的ポリマー/滑沢剤(適切な場合)組成物で非晶質であったことを示した。明確さのために、個々のプロットは、一定の値でy軸に移された。
【
図6】FaSSIFでの111 μg/mlエトラビリンの溶解。製剤30025はSSFを含まないが、製剤30026はSSFを含む。結果は、SSFが溶解特性を改善することを示した。
【
図7】FaSSIFでの222 μg/mlエトラビリンの溶解。製剤30025はSSFを含まないが、製剤30026はSSFを含む。結果は、SSFが溶解特性を改善することを示した。
【
図8】ビーグル犬でのエトラビリンの薬物動態試験。製剤30025はSSFを含まないが、製剤30026はSSFを含む。結果は、SSFが薬物動態特性を改善することを示した。
【
図9】リトナビルの溶解試験。SSFによる製剤は、SSFなしの製剤と比較して溶解の改善を示した。
【
図10】デフェラシロクスの溶解試験。非ポリマー滑沢剤による製剤は、デフェラシロクスおよびコポビドン(copovidone)のみによる製剤と比較して溶解の改善を示した。
【
図11】デフェラシロクスの溶解試験。非ポリマー滑沢剤による製剤は、デフェラシロクスおよびコポビドンのみによる製剤と比較して溶解の改善を示した。
【
図12】デフェラシロクスの溶解試験。非ポリマー滑沢剤による製剤は、デフェラシロクスおよびコポビドンのみによる製剤と比較して溶解の改善を示した。
【発明を実施するための形態】
【0043】
詳細な説明
上述のような、錠剤の非晶質分散物相の外側にある滑沢剤に付随する問題を考慮すると、非ポリマー滑沢剤材料が、薬物分子とより密接に関連し、かつ溶解度、溶解速度、およびバイオアベイラビリティに関して剤形の性能に対してさらに大きな負の影響を有すると予測される、非晶質固体分散物相内に滑沢剤を含めようとは、製剤科学者は全く考えないように思われる。さらに、非晶質固体分散物を作製する通常のプロセス(噴霧乾燥および溶融押出)では、これらのプロセスには粉体流成分は必須ではないことから、製剤中に通常の薬学的結晶性粉末滑沢剤を含むことに本質的な処理上の利点は存在しない。
【0044】
しかしながら、発明者らの研究は、通常の薬学的結晶性粉末滑沢剤が、非晶質固体分散物の内相内で非晶質状態にされると、製剤の溶解度、溶解、およびバイオアベイラビリティを実質的に改善できることを示している。具体的には、固体分散物系で非晶質状態にすると、非ポリマー滑沢剤分子は、薬物と一緒に(過飽和)水性媒体内で溶解し、次いで、薬物核形成および/または結晶成長に対する安定化剤として作用し、よって、水性媒体中での薬物過飽和の程度および期間を増大させ得ると考えられる。したがって、この水性薬物濃度増強作用は、胃腸液における、吸収に利用可能な遊離薬物の濃度を増大することによって、経口投与時にバイオアベイラビリティの増大をもたらす。実際、この作用はわずか0.5% w/wの最小濃度の非ポリマー滑沢剤で観察されたことから、このアプローチは他のアプローチより強力である可能性がある。これは、他のアプローチによって可能となるものをはるかに超える性能強化を可能にし得る。
【0045】
非ポリマー滑沢剤は水性溶液に入りこまず、よって薬物の核形成および結晶成長のための面として機能するので、結晶形では、非ポリマー滑沢剤材料は、水性媒体中での薬物の核形成および結晶成長を促進することから、固体分散物中で通常の薬学的結晶性粉末滑沢剤が非晶質状態となることは重要な特徴である。あるいは、固体分散物中で非晶質状態となると、非ポリマー滑沢剤は、水性媒体を薬物で過飽和させることができ、よって、溶液からの沈殿に対して薬物を安定化する、薬物と滑沢剤との間の水性媒体中の分子間相互作用を可能にする。
【0046】
通常の滑沢剤により難水溶性薬物分子で過飽和した水溶液の溶液安定化の提案されるメカニズムは、従来の界面活性剤による安定化メカニズムの文献の説明と同じである。しかしながら、発明者らの研究は、滑沢剤分子による薬物の溶液安定化のメカニズムが従来の界面活性剤のものより効率的であることも示す。実際、発明者らは、わずか0.5%の滑沢剤のレベルで実質的な濃度増強を観察しており、また、実質的な濃度(>5% w/w)の通常の界面活性剤を既に含有する非晶質固体分散物への滑沢剤の添加により水性薬物濃度の著しい増加も観察している。
【0047】
非晶質固体分散物製剤からの難水溶性薬物に対する通常の薬学的結晶性粉末滑沢剤の濃度増強作用の発見は、熱動力学的配合(TKC)を用いてそのような製剤を開発するときに認められた。噴霧乾燥および溶融押出とは異なり、通常の薬学的結晶性粉末滑沢剤の含有は、プロセスの初期段階に粉体流体成分が存在するTKCでは本質的な処理上の利点を有し、非ポリマー滑沢剤の取り込みは、処理チャンバーへの粉体の付着を軽減し、よって、製品収量および均一性を増強する。したがって、通常の薬学的結晶性粉末滑沢剤は一般に、TKC製剤に取り込まれ、処理効率および製品品質を改善する。滑沢剤の非晶質固体分散物(ASD)製剤への取り込みの、溶解およびバイオアベイラビリティの増強作用は驚くべきことに、滑沢剤を伴う薬物-ポリマーASD製剤と滑沢剤を伴わない製剤とのインビトロおよびインビボでの性能を比較したときに観察され、製剤中にわずか0.5%(w/w)の濃度で滑沢剤を包含することによって、実質的な性能増強作用を実現している。さらに驚くことに、性能増強作用はまた、滑沢剤を伴うそのような製剤と滑沢剤を伴わない製剤とのインビトロおよび/またはインビボでの性能を比較することによって、薬物-ポリマー-界面活性剤製剤でも観察された。従来の界面活性剤の安定化作用は非ポリマー滑沢剤の作用に優先することが予想されたことから、この場合における著しい性能増強は特に驚きであったが;観察されたものは、非ポリマー滑沢剤の包含による、過飽和作用のさらに大きな安定化であった。
【0048】
これは、TKCによる多数の難水溶性薬物についてのASD開発時に発見されたが、TKCにおいて通常の薬学的結晶性粉末滑沢剤を取り込むことの本質的な処理上の利点は他のプロセスとは関係がなかった。したがって、本明細書に記載される組成物はTKC処理を用いて作製されたものに限定されない。実際、薬物用の一般的な有機溶媒および非ポリマー滑沢剤を含む全ての賦形剤成分を考慮すると、これらの開示された組成物は、溶融押出、および潜在的には噴霧乾燥を用いて作り出すことができる。したがって、現行の開示は、そのバルク形態で難水溶性でありかつ結晶である、少なくとも1種類のAPIと、少なくとも1種類の賦形剤担体と、少なくとも1種類の通常の薬学的滑沢剤とを含む新たな薬学的組成物であって、薬物および非ポリマー滑沢剤が実質的に非晶質である、該組成物を提供する。この組成物は、熱処理方法および溶媒処理方法、例えば、TKC、HME、および噴霧乾燥などによって、上記成分を共処理することによって達成できる。
【0049】
したがって、出願人らは、改善された活性な薬学的成分組成物およびその製造のための方法を記載する。これらの方法は、高い非晶質薬物負荷を伴う、活性な薬学的成分の非晶質固体分散物を、熱処理によって生成させることを可能とする。具体的には、それらは、少なくとも1種類の医薬品成分および結晶性非ポリマー難溶性滑沢剤を含む組成物を含む。処理後、活性な薬学的成分および滑沢剤はどちらも組成物中で非晶質状態である。例示だが、処理は、熱動力学的混合に限定される必要はない。本開示のこれらおよび他の局面は以下に詳細に論じられる。
【0050】
I. 定義
本開示の理解を容易にするために、いくつかの用語を以下に定義する。本明細書において定義する用語は、本開示に関連する領域の当業者によって一般に理解される意味を有する。「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」などの用語は、単数の実体のみを指すことを意図するものではなく、一般的クラスを含み、その具体例を例示のために用いてもよい。
【0051】
本明細書において挙げる値または範囲に関して、「約」なる用語は、述べられた数と実質的に同じ結果を達成しうる、述べられた数よりも高い、および低い変動を取り込むことが意図される。本開示において、様々に述べられた範囲のそれぞれは、各範囲の述べられた最小値と最大値との間の各数値パラメーターを含むために、連続的であることが意図される。例えば、約1~約4の範囲は約1、1、約2、2、約3、3、約4、および4を含む。本明細書における用語は、本開示の具体的態様を記載するために用いられるが、それらの使用は、特許請求の範囲に概要を示す以外は、本開示の範囲を定めるものではない。
【0052】
本明細書において言及するすべての出版物および特許出願は、本開示が属する分野の技術者の技術のレベルを示すものである。すべての出版物および特許出願は、それぞれ個々の出版物または特許出願が具体的かつ個別に参照により本明細書に組み入れられると示されたのと同程度に、参照により本明細書に組み入れられる。
【0053】
「1つの(a)」または「1つの(an)」なる用語の使用は、特許請求の範囲および/または明細書において「含む」なる用語と共に用いられる場合、「1つ」を意味しうるが、「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは1つよりも多く」の意味とも一致する。本開示は代替物のみ、および「および/または」を意味する定義を支持するが、特許請求の範囲における「または」なる用語の使用は、代替物だけを意味する、または代替物が互いに排他的であると明らかに示されていないかぎり、「および/または」を意味するために用いられる。本出願の全体を通して、「約」なる用語は、値がその値をもとめるために用いている装置、方法に固有の誤差の変動、または試験対象の間に存在する変動を含むことを示すために用いられる。
【0054】
本明細書および特許請求の範囲において用いられる、「含む(comprising)」(ならびに「含む(comprise)」および「含む(comprises)」などの含む(comprising)の任意の形)、「有する(having)」(ならびに「有する(have)」および「有する(has)」などの有する(having)の任意の形)、「含む(including)」(ならびに「含む(includes)」および「含む(include)」などの含む(including)の任意の形)または「含む(containing)」(ならびに「含む(contains)」および「含む(contain)」などの含む(containing)の任意の形)なる用語は、包括的または無制限であり、さらなる、列挙していない要素または方法段階を除外しない。
【0055】
本明細書において用いられる「またはその組み合わせ」なる用語は、用語の前にある列挙した項目のすべての順列および組み合わせを意味する。例えば、「A、B、C、またはその組み合わせ」は、以下の少なくとも1つを含むことが意図される:A、B、C、AB、AC、BC、またはABC、および特定の文脈において順序が重要である場合は、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、またはCAB。この例に続いて、特に含まれるのは、BB、AAA、MB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなどの、1つまたは複数の項目または用語の繰り返しを含む組み合わせである。当業者であれば、文脈からそうではないことが明らかでない限り、典型的には、任意の組み合わせにおける項目または用語の数に制限はないことを理解するであろう。
【0056】
本明細書において用いられる「熱動力学的配合」または「TKC」なる用語は、溶融ブレンドされるまで熱動力学的混合する方法を意味する。TKCは、処理が凝集のいくらか前の時点で終わる熱動力学的混合プロセスまたは熱動力学的処理として説明されうる。このプロセスの商標は「KinetiSol(登録商標)」である。
【0057】
本明細書において用いられる「均質であるか、不均質であるか、もしくは異成分からなる均質である複合物または非晶質複合物」なる語句は、TKC法を用いて作製しうる様々な組成物を意味する。
【0058】
本明細書において用いられる「異成分からなる均質である複合物」なる用語は、体積の全体に均等かつ均一に分配された、少なくとも2つの異なる材料を有する材料組成物を意味する。
【0059】
本明細書において用いられる「活性な薬学的成分の参照標準品」なる語句は、現在利用可能な最も熱力学的に安定な形の活性な薬学的成分を意味する。
【0060】
「活性な薬学的成分」または「さらなるAPI」なる用語と共に、本明細書において用いられる「実質的分解」なる用語は、毒物学試験により認定されている閾値を超える、または未知の不純物に対して許容可能な閾値を超えるレベルの不純物の生成につながる分解を意味する。例えば、Guidance for Industry, Q3B(R2) Impurities in New Drug Products (International Committee for Harmonization, published by the U.S. Department of Health and Human Services, Food and Drug Administration, Center for Drug Evaluation and Research (CDER), Center for Biologics Evaluation and Research, July, 2006を参照されたい。「賦形剤」なる用語と共に、本明細書において用いられる「実質的分解」なる用語は、賦形物が承認された薬局方、例えば、米国薬局方の公式研究書に示される明細にもはや適合しない程度の、賦形剤の分解を意味する。
【0061】
本明細書において用いられる「高い溶融粘度」なる用語は、10,000Pa*sよりも大きい溶融粘度を意味する。
【0062】
本明細書において用いられる「熱不安定性API」なる用語は、その結晶融点で分解するAPIか、または非結晶(非晶質)形態である場合に該結晶融点よりも低い温度で分解するAPIを意味する。本明細書において用いられる「熱不安定性ポリマー」なる用語は、約200℃以下で分解するポリマーを意味する。
【0063】
本開示の組成物が、均質であるか、不均質であるか、もしくは異成分からなる均質である組成物、非晶質組成物またはその組み合わせであろうとなかろうと、TKC処理条件は、熱処理されたか、またはMBP法を用いて、例えば可塑剤を使用してもしくは使用せずに処理された、薬物および薬学的に許容される賦形剤、補助剤、さらなるAPI、またはその任意の組み合わせの同じ組み合わせのガラス転移温度よりも高いガラス転移温度を有する組成物を生成することができる。TKC処理条件は、単一のガラス転移温度を有する組成物も生成することができ、ここで熱処理されたか、またはMBP法を用いて処理された同じAPIおよび薬学的に許容される賦形剤、補助剤、さらなるAPI、またはその任意の組み合わせの同じ組み合わせは、複数のガラス転移温度を有する。他の態様において、本開示の薬学的組成物は、熱処理されたか、またはMBP法を用いて処理された同じ組み合わせの最も低いガラス転移温度よりも、少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%高い単一のガラス転移温度を有する。または、熱動力学的処理を用いて作製した組成物は、各薬物に関して最低限少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.9%の治療効力を有する組成物を生成しうる。
【0064】
本明細書において用いられる「有意に高い」なる用語は、ガラス転移温度と共に用いられる場合、熱処理されるまたはMBP法を用いて処理される同じ製剤の最低ガラス転移温度より少なくとも約20%高いガラス転移温度を有する組成物を指す。
【0065】
本明細書において用いられる「熱動力学的チャンバー」なる用語は、その中でTKC法を用いて本開示の新規組成物を作製する、密閉された容器またはチャンバーを意味する。
【0066】
本明細書において用いられる「熱処理された(thermally processed)」または「熱処理された(processed thermally)」とは、構成要素が、溶融急冷、ホットメルト押出、溶融造粒、圧縮成形、錠剤圧縮、カプセル充填、フィルムコーティング、または射出成形によって処理されることを意味する。
【0067】
本明細書において用いられる「押出」は、湿った、または溶融した組成物に、それが孔または規定された開口部を通って流れるまで圧を適用する周知の方法である。押出可能な長さは、押し出す材料の物理的特徴、押出の方法、および押出後の粒子の操作プロセスによって変動する。ねじ、ふるいおよびかご、ロール、ならびにラム押出機などの、様々な種類の押出装置を用いることができる。さらに、押出は溶融押し出しにより実施することもできる。本開示の構成要素を溶融し、添加物を含む、または含まない、連続、無溶媒押出プロセスにより押し出すことができる。そのようなプロセスは当業者には周知である。
【0068】
本明細書において用いられる「噴霧凝結」は、液体から流動性粉末を得るため、およびペレットを提供するために、材料の構造を変化させる際に一般に用いられる方法である。噴霧凝結は、関心対象の物質を溶融させ、分散させ、または他の添加物のホットメルト中に溶解させ、次いで温度が製剤構成要素の融点よりも低いエアーチャンバー中に噴霧して、凝結ペレットを提供するプロセスである。そのようなプロセスは当業者には周知である。
【0069】
本明細書において用いられる「溶媒脱水」または「噴霧乾燥技術」は、高温ガスで急速に乾燥することにより、液体またはスラリーから乾燥粉末を生成するために、一般に用いられる。これは、食物および薬剤などの、多くの熱感受性材料を乾燥する、1つの好ましい方法である。水または有機溶媒系製剤を、窒素、アルゴンなどの不活性処理ガスを用いて、噴霧乾燥することができる。そのようなプロセスは当業者には周知である。
【0070】
ある特定の態様において、本開示の薬学的製剤は、押出、溶融押出、溶媒蒸発、噴霧凝結、噴霧乾燥の技術または任意の他の通常の技術によって処理され、溶液からの固体組成物、乳剤、懸濁剤、または固体および液体もしくは液体および液体の他の混合物を提供することができる。
【0071】
本明細書において用いられる「バイオアベイラビリティ」とは、薬物が体に投与された後に標的組織に対して利用可能となる程度を意味する用語である。不良なバイオアベイラビリティは、薬学的組成物、特に溶解性が高くない薬物を含む薬学的組成物の開発中に遭遇する重大な問題である。タンパク質の製剤などのある特定の態様において、タンパク質は、水溶性、難溶性、高くない溶解性、または非溶解性であってもよい。当業者は、タンパク質の溶解度を向上させるために、例えば、さまざまな溶媒、賦形剤、担体の使用、融合タンパク質の形成、アミノ酸配列の標的化操作、グリコシル化、脂質付加、分解、1種類または複数種類の塩の組み合わせ、および種々の塩の付加など、さまざまな方法論を用いてもよいことを認識するであろう。
【0072】
本明細書において用いられる「薬学的に許容される」なる語句は、一般にヒトに投与されたときに、アレルギー反応または同様の有害反応を生じない、分子実体、組成物、材料、賦形剤、担体などを意味する。
【0073】
本明細書において用いられる「難溶性」とは、投与する用量がpH1~7.5の範囲の水性媒質250mlに溶解することができる溶解度を有する薬物、溶解速度が遅い薬物、および例えば、送達している治療薬物の薬理効果のバイオアベイラビリティ低減を引き起こす、低い平衡溶解度を有する薬物を意味する。
【0074】
本明細書において用いられる「誘導体」とは、元の薬物の所望の効果または特性を依然として保持する、化学修飾された阻害剤または刺激剤を意味する。そのような誘導体は、親分子上の1つまたは複数の化学部分の付加、除去、または置換によって誘導してもよい。そのような部分には、水素もしくはハロゲン化物などの元素、またはメチル基などの分子基が含まれうるが、それらに限定されない。そのような誘導体は、当業者には公知の任意の方法によって調製してもよい。そのような誘導体の特性は、それらの所望の特性について、当業者には公知の任意の手段によって検定してもよい。本明細書において用いられる「類縁体」は、構造等価物または模倣物を含む。
【0075】
溶液中で用いる溶解剤は、水などの水性、1種類または複数種類の有機溶媒、またはその組み合わせでありうる。使用する場合、有機溶媒は水混和性または水非混和性でありうる。適切な有機溶媒には、エタノール、メタノール、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトン、tert-ブチルアルコール、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジエチル-テル、塩化メチレン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、およびその組み合わせが含まれるが、それらに限定されない。
【0076】
「即時放出」とは、放出が始まった後、数秒から約30分以内の期間にわたる環境へのAPIの放出を意味し、放出は投与後約2分以内に始まる。即時放出は、薬物の放出における著しい遅延を示さない。
【0077】
「急速放出」とは、放出が始まった後、1~59分または0.1分から3時間までの期間にわたる環境へのAPIの放出を意味し、放出は、投与後数分以内または投与後の遅延期間(時間のずれ)の終了後に始まりうる。
【0078】
本明細書において用いられる「持続放出」特性なる用語は、薬学の分野において広く認識される定義を想定している。持続放出剤形は、APIを実質的に一定の速度で長期間にわたって放出する、または実質的に一定の量のAPIが長期間にわたって徐々に放出される。持続放出錠は一般に、通常の剤形(例えば、液剤または急速放出する通常の固形剤形)として提供されるAPIと比較して、投薬頻度を少なくとも2分の1に減少させる。
【0079】
「制御放出」とは、約8時間から最大約12時間、16時間、18時間、20時間、1日、または1日よりも長い期間での、環境へのAPIの放出を意味する。「徐放」とは、デバイスを投与する対象の血中または標的組織中で一定の薬物レベルを維持するための、活性剤の持続放出を意味する。
【0080】
薬物放出に関する「制御放出」なる用語は、「持続放出」、「長期放出」、「徐放」、または「緩徐放出」なる用語が薬学において用いられる場合のこれらの用語を含む。制御放出は、投与後数分以内、または投与後の遅延期間(時間のずれ)の終了後に始まりうる。
【0081】
「緩徐放出剤形」は、APIが、例えば、3時間、6時間、12時間、18時間、1日、2日以上、1週間、または2週間以上の期間にわたってゆっくり、かつほぼ持続的に放出されるように、APIの低速放出を提供する剤形である。
【0082】
本明細書において用いられる「混合放出」なる用語は、1種類または複数種類の活性な薬学的成分に対する複数の放出特性を含む薬剤を意味する。例えば、混合放出は、即時放出および持続放出部分を含んでもよく、これらはそれぞれ同じAPIであってもよく、またはそれぞれが異なるAPIであってもよい。
【0083】
「持効性剤形」は、使用環境への最初の曝露の瞬間から測定して、所定の期間後にAPIを放出し始める剤形である。
【0084】
「標的指向型放出剤形」は、一般には、APIを対象の胃腸管の特定の部分に送達するよう設計された、経口剤形を意味する。例示的な標的指向型剤形は、薬物を対象の胃または口中でなく中央部から下部腸管中に送達する腸溶剤形である。他の標的指向型剤形は、胃、空腸、回腸、十二指腸、盲腸、大腸、小腸、結腸、または直腸などの、胃腸管の他の部分に送達することができる。
【0085】
「遅延放出」とは、APIの最初の放出がおおよその遅延(またはずれ)期間の終了後に起こることを意味する。例えば、持続放出組成物からのAPIの放出が2時間遅れる場合、APIの放出は組成物、または剤形の対象への投与の約2時間後に始まる。一般に、遅延放出は、APIの放出が投与後数分以内に始まる即時放出の反対である。したがって、特定の組成物からのAPI放出特性は、遅延-持続放出または遅延-急速放出でありうる。「遅延-持続」放出特性は、APIの持続放出が最初の遅延期間の終了後に始まるものである。「遅延-急速」放出特性は、APIの急速放出が最初の遅延期間の終了後に始まるものである。
【0086】
「パルス状放出剤形」は、低濃度トラフが介在する、高いAPI濃度のパルスを提供する剤形である。2つのピークを含むパルス状特性は「二峰性」と記載してもよい。3つ以上のピークのパルス状特性は多峰性と記載してもよい。
【0087】
「偽一次放出特性」は、一次放出特性に近似するものである。一次放出特性は、単位時間あたりに最初のAPI投入量の一定のパーセンテージを放出する剤形の放出特性を特徴付けるものである。
【0088】
「偽ゼロ次放出特性」は、ゼロ次放出特性に近似するものである。ゼロ次放出特性は、単位時間あたりにAPIの一定の量を放出する剤形の放出特性を特徴付ける。
【0089】
II. 処理の方法論
A. 熱動力学的配合
ある特定の態様において、本開示の薬学的製剤を、米国特許第8,486,423号に記載の熱動力学的チャンバー内で処理し、この特許は参照により本明細書に組み入れられる。本開示は、いかなる実質的な熱分解も最小化するために、熱不安定性構成要素を含むバッチに対する1回の連続回転操作中に複数の速度を用いて、熱動力学的ミキサー中で一定の熱感受性または熱不安定性構成要素をブレンドする方法を目的とし、したがって得られる薬学的組成物は高いバイオアベイラビリティおよび安定性を有する。
【0090】
TKCチャンバーにおいて、APIおよび1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤、補助剤、さらなるAPI、またはその任意の組み合わせの、複合物への熱動力学的配合を達成するために、チャンバー内の平均温度を、処理の期間中、あらかじめ規定された最終温度まで上昇させる。熱動力学的配合中の処理および高い温度への曝露の長さは、一般にはAPI、賦形剤、補助剤、もしくはさらなるAPI、またはこれらすべての熱感受性閾値よりも短い。APIならびに1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤、補助剤およびさらなるAPI、またはその組み合わせの、複合物への最適な熱動力学的混合を、最小限の熱分解で達成するために、1回の連続回転TKC操作中に複数の速度を用いてもよい。あらかじめ規定された最終温度および速度は、処理中にAPI、賦形剤、補助剤、さらなるAPIおよび/もしくは処理剤が分解される、またはそれらの機能性が損なわれる可能性を低減するように選択される。一般に、あらかじめ規定された最終温度、圧、処理時間および他の環境条件(例えば、pH、湿気、緩衝剤、イオン強度、O2)は、API、賦形剤、補助剤、さらなるAPIおよび/または処理剤の分解を実質的に排除するように選択されることになる。
【0091】
1つの態様は、高速ミキサーの混合チャンバー中で自動加熱された混合物を連続的にブレンドおよび溶融するための方法であり、ここで、第1の速度は、第1の望ましいプロセスパラメーターを達成すると、処理の中期に第2の速度に変更される。別の態様は、軸の延長部および凸部に送達される回転軸エネルギーの、該延長部または該凸部の面部分に当たる粒子内の加熱エネルギーへの変換を制御するための、主処理体積内に押し込まれている軸の延長部および凸部の面部分の形状、幅および角度のバリエーションの使用である。他の態様には以下が含まれる:
低温で非常に短時間処理することにより、さらなるAPIを伴ってまたは伴わずに、活性な薬学的成分の固体分散物を生成すること;
低温で非常に短時間処理することにより、熱不安定性ポリマーおよび賦形剤中に、さらなるAPIを伴ってまたは伴わずに、活性な薬学的成分の固体分散物を生成すること;
活性な薬学的成分を、ポリマー、非ポリマー、または組み合わせの賦形剤担体系中に分散すると同時に、さらなるAPIを伴ってまたは伴わずに、非晶質にすること;
活性な薬学的成分を、ポリマー、非ポリマー、または組み合わせの賦形剤担体系および補助剤中に分散すると同時に、さらなるAPIを伴ってまたは伴わずに、非晶質にすること;
結晶性の活性な薬学的成分を乾式粉砕し、バルク材料の粒径を低減させること;
結晶性の活性な薬学的成分を薬学的に許容される溶媒と共に湿式粉砕し、バルク材料の粒径を低減させること;
結晶性の活性な薬学的成分を、結晶性の活性な薬学的成分との限定された混和性を有する1種類または複数種類の融解性薬学的賦形剤と共に溶融粉砕し、バルク材料の粒径を低減させること;
結晶性の活性な薬学的成分をポリマー賦形剤または非ポリマー賦形剤の存在下で粉砕し、微細な活性な薬学的成分粒子が賦形剤粒子の表面に付着しているおよび/または賦形剤粒子が微細な活性な薬学的成分粒子の表面に付着している規則混合物(ordered mixture)を作ること;
二次処理段階、例えば、溶融押出、フィルムコーティング、錠剤化および造粒での利用のために、以前には不混和性であると見なされていた活性な薬学的成分と1種類または複数種類の他の薬学的材料との単層の混和性複合物を生成すること;
続いてのフィルムコーティングまたは溶融押出操作での使用のために、ポリマー材料を予備可塑化すること;
活性な薬学的成分の担体として使用できる、結晶性または半結晶性の薬学的ポリマーを非晶質にすること、ここで、非晶質特性は、活性な薬学的成分-ポリマー複合物の溶解速度、活性な薬学的成分-ポリマー複合物の安定性、および/または活性な薬学的成分およびポリマーの混和性を改善する;
設計された粒子の特性を変更することなく、設計された粒子をポリマー担体中に脱凝集および分散させること;
1種類または複数種類の薬学的賦形剤と共に、活性な薬学的成分粒子をさらなるAPIを伴ってまたは伴わずに、粉末形態で単純にブレンドすること;
処理剤を使用せずに、さらなるAPIを伴ってまたは伴わずに、活性な薬学的成分および1種類または複数種類の熱不安定性ポリマーを含む複合物を生成すること;および
ポリマー担体または賦形剤混和物内に着色剤または乳白剤と共に、さらなるAPIを伴ってまたは伴わずに、活性な薬学的成分を均質に分散させること。
【0092】
B. 他のプロセス
加えて、本開示の組成物を、融合または溶媒系技術を含む、当業者には公知の任意の技術を用いて処理して、固体製剤を生成してもよい。これらの技術の具体例には、押出、溶融押出、ホットメルト押出、噴霧凝結、噴霧乾燥、ホットスピン混合、超音波圧縮、および静電スピニングが含まれる。
【0093】
III. 薬物製剤
A. 活性な薬学的成分
今回開示される方法は、任意の多様な活性な薬学的成分に適用されうる。しかしながら、ある特定の方法は、難溶性であるAPIを利用することが特に想定される。
【0094】
適切なAPIには、デフェラシロクス、エトラビリン、インドメタシン、ポサコナゾール、およびリトナビルが含まれる。
【0095】
エトラビリンは中性APIであり、他の中性APIのモデルとして用いられてもよい。
【0096】
デフェラシロクスおよびインドメタシンは弱酸性APIであり、他の弱酸性APIのモデルとして用いられてもよい。
【0097】
ポサコナゾール、イトラコナゾール、およびリトナビルは弱塩基性APIであり、他の弱塩基性APIのモデルとして用いられてもよい。
【0098】
B. 送達
活性な薬学的成分を必要のある患者に送達するために、様々な投与経路が利用可能である。選択される特定の経路は、選択される特定の薬物、患者の体重および年齢、ならびに治療効果のために必要とされる用量に依存することになる。薬学的組成物は単位剤形で便利に提示されてもよい。本開示に従って使用するのに適した活性な薬学的成分、ならびにその薬学的に許容される塩、誘導体、類縁体、プロドラッグ、および溶媒和物は単独で投与することもできるが、一般には意図される投与経路および標準的な薬学的実施に関して選択される適切な薬学的賦形剤、補助剤、希釈剤、または担体との混合で投与され、ある特定の場合には、1種類または複数種類のさらなるAPIと共に、好ましくは同じ単位剤形で投与することができる。
【0099】
活性な薬学的成分は、錠剤、カプセル剤または懸濁剤としての経口送達;肺および鼻送達;乳剤、軟膏またはクリームとしての局所送達;経皮送達;ならびに懸濁剤、マイクロエマルジョンまたはデポ剤としての非経口送達を含む、様々な適用様式で用いてもよい。本明細書において用いられる「非経口」なる用語は、皮下、静脈内、筋肉内、または注入投与経路を含む。
【0100】
C. 滑沢剤
本開示の範囲内での適用が想定される滑沢剤は、結晶性、難水溶性から不溶性、および非ポリマー性である。結晶形で開始しても、滑沢剤は熱動力学的処理中に非晶質状態となる。結果として生じる非晶質滑沢剤はより水溶性であり、かつ溶液中の薬物と相互作用し、溶解度/バイオアベイラビリティの利点をもたらすことができる。
【0101】
滑沢剤に関して、ステアリン酸マグネシウムおよびフマル酸ステアリルナトリウムは、医薬品産業において最も頻度高く使われる滑沢剤であるが、使用において他の滑沢剤もまた存在する。例えば、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸の金属塩、ならびに無機物およびポリマーは、この役割を果たすことができる。
【0102】
滑沢剤は多くの場合、その水溶解度、すなわち、水溶性または水不溶性によって分類される。滑沢剤のタイプの選択は、投与の種類、錠剤構成、望ましい溶解および薬力学特性、ならびに費用によってきまる。水不溶性の滑沢剤の一部には、ステアリン酸塩(ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム)、タルク、植物油(Sterotex)、ワックス、ステアルウェット(Stearowet)、ベヘン酸グリセリル(Compritol(登録商標)888)および流動パラフィンが含まれる。水溶性滑沢剤の一部には、ホウ酸、安息香酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、およびラウリル硫酸マグネシウムが含まれる。
【0103】
抗付着剤は、錠剤形成で用いられる金属への一部の薬剤の強力な付着特性に対処し、固着を防ぐことができる滑沢剤のサブクラスである。そのような作用物質には、タルク、コーンスターチ、コロイド状シリカ、DL-ロイシン、ラウリル硫酸ナトリウム、および上述のステアリン酸塩分子が含まれる。流動促進剤、上述の滑沢剤を含む作用物質の別のサブカテゴリーは、材料の流動特性を改善するために用いられ、タルク、デンプン、およびコロイド状シリカ(例えば、シロイド(syloid)、焼成シリカ、シリオアルミン酸ナトリウム水和物(hydrated sodium silioaluminate))を含む。
【0104】
適切な非ポリマー滑沢剤には、アルコール、例えばミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、もしくは脂肪アルコール、ステアリン酸塩、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、モノステアリン酸アルミニウム、ジステアリン酸アルミニウム、もしくはトリステアリン酸アルミニウム、カルボン酸、例えばミリスチン酸、パルミチン酸、もしくはステアリン酸、グリセリル、例えばモノステアリン酸グリセリル、ベヘン酸グリセリル、もしくはパルミトステアリン酸グリセリル、または別の材料、例えばフマル酸ステアリルナトリウム、もしくはパルミチン酸アスコルビルが含まれる。非ポリマー滑沢剤は、滑沢剤として用いる場合には2% w/w以下または1% w/w/以下の量で、または溶解性促進剤として用いる場合には20% w/w/以下、10% w/w以下、または5% w/w以下、2% w/w 以下、または1% w/w以下の量で存在してもよい。
【0105】
D.他の賦形剤
本開示の組成物および複合物において用い得る賦形剤および補助剤は、独自にいくらかの活性、例えば、抗酸化剤活性を有する可能性があるが、一般には本出願のために活性な薬学的成分の効率および/または有効性を増強する化合物と定義される。所与の溶液中に複数のAPIを有することも可能であり、したがって形成される粒子は複数のAPIを含む。
【0106】
当業者には公知の任意の薬学的に許容される賦形剤を用いて、本明細書において開示する複合物および組成物を生成してもよい。本開示により用いるための賦形剤の例には、例えば、薬学的に許容されるポリマー、熱不安定性ポリマー賦形剤、または非ポリマー賦形剤が含まれるが、それらに限定されない。賦形剤の他の非限定例には、ラクトース、グルコース、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸、水、単シロップ、グルコース溶液、デンプン溶液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、シェラック、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、寒天末、カルシウムカルメロース、デンプンおよびラクトースの混合物、スクロース、バター、硬化油、四級アンモニウム塩基およびラウリル硫酸ナトリウムの混合物、グリセリンおよびデンプン、ラクトース、ベントナイト、コロイド状ケイ酸、タルク、ステアレート、およびポリエチレングリコール、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポロキサマー(ポリエチレン-ポリプロピレングリコールブロックコポリマー)、スクロースエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸、ラウリン酸、ビタミンE TPGS、ポリオキシエチル化グリコール分解グリセリド、ジパルミトイルホスファジチルコリン、グリコール酸および塩、デオキシコール酸および塩、フシジン酸ナトリウム、シクロデキストリン、ポリエチレングリコール、ポリグリコール化グリセリド、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニルピロリドン、ホスファチジルコリン誘導体、セルロース誘導体と、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)から選択される生体適合性ポリマーならびにそのブレンド、組み合わせおよびコポリマーが含まれる。
【0107】
前述のとおり、賦形剤および補助剤をAPIの有効性および効率を増強するために用いてもよい。含まれうる化合物のさらなる非限定例は、結合剤、担体、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤、界面活性剤、充填剤、安定化剤、ポリマー、プロテアーゼ阻害剤、抗酸化剤、バイオアベイラビリティ増強剤および吸収増強剤である。賦形剤は、流動、もしくはバイオアベイラビリティを改善することにより有効成分の所期の機能を改変するため、またはAPIの放出を制御する、もしくは遅延させるために選択してもよい。具体的な非限定例には:スクロース、トレハロース、スパン80、スパン20、トゥイーン80、ブリジ35、ブリジ98、プルロニック、スクロエステル7、スクロエステル11、スクロエステル15、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS、ドデシル硫酸ナトリウム。SDS)、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(DSS、DOSS、ジオクチルドキュセートナトリウム)、オレイン酸、ラウレス-9、ラウレス-8、ラウリン酸、ビタミンE TPGS、クレモフォール(Cremophor)(登録商標)EL、クレモフォール(登録商標)RH、ゲルシア(登録商標)50/13、ゲルシア(登録商標)53/10、ゲルシア(登録商標)44/14、ラブラフィル(登録商標)、ソルトール(Solutol)(登録商標)HS、ジパルミトイルホスファジチルコリン、グリコール酸および塩、デオキシコール酸および塩、フシジン酸ナトリウム、シクロデキストリン、ポリエチレングリコール、ラブラソール(Labrasol)(登録商標)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンならびにチロキサポールが含まれる。本開示のプロセスを用いて、有効成分の形態を改変し、高度に多孔性のミクロ粒子およびナノ粒子を得ることができる。
【0108】
本開示の組成物および複合物において用いうる例示的ポリマー担体または熱結合剤には、ポリエチレンオキサイド;ポリプロピレンオキサイド;ポリビニルピロリドン;ポリビニルピロリドン-コ-酢酸ビニル;アクリレートおよびメタクリレートコポリマー;ポリエチレン;ポリカプロラクトン;ポリエチレン-コ-ポリプロピレン;メチルセルロースなどのアルキルセルロース;ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびヒドロキシブチルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロース;ヒドロキシエチルメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのヒドロキシアルキルアルキルセルロース;デンプン、ペクチン;トラガカント、アラビアガム、グアーガム、およびキサンタンガムなどの多糖が含まれるが、それらに限定されない。結合剤の1つの態様はポリ(エチレンオキサイド)(PEO)であり、これはDow Chemical Companyなどの会社から市販されており、この会社ではPOLY OX(登録商標)という登録商標でPEOを販売しており、その例示的等級には約200,000;1,000,000;および2,000,000の平均分子量を有するWSR N80が含まれうる。
【0109】
可塑剤を必要としてもしなくてもよい適切なポリマー担体または熱結合剤には、例えば、Eudragit(登録商標) RS PO、Eudragit(登録商標) S100、コリドン(登録商標)SR(ポリ(酢酸ビニル)-コ-ポリ(ビニルピロリドン)コポリマー)、Ethocel(登録商標)(エチルセルロース)、HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)、酢酸酪酸セルロース、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(エチレンオキサイド)(PEO)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチル-セルロース(CMC)ナトリウム、ジメチルアミノエチルメタクリレート-メタクリル酸エステルコポリマー、エチルアクリレート-メチルメタクリレートコポリマー(GA-MMA)、C-5または60 SH-50(Shin-Etsu Chemical Corp.)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、酢酸トリメレト酸(trimelletate)セルロース(CAT)、ポリ(ビニルアセテート)フタレート(PVAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ポリ(メタクリレートエチルアクリレート)(1:1)コポリマー(MA-EA)、ポリ(メタクリレートメチルメタクリレート)(1:1)コポリマー(MA-MMA)、ポリ(メタクリレートメチルメタクリレート)(1:2)コポリマー、Eudragit(登録商標)L-30-D(MA-EA、1:1)、Eudragit(登録商標)L100-55(MA-EA、1:1)、Eudragit(登録商標)EPO(ポリ(ブチルメタシレート(methacylate)-コ-(2-ジメチルアミノエチル)メタクリレート-コ-メチルメタクリレート) 1:2:1)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)、コアテリック(Coateric)(登録商標)(PVAP)、アクアテリック(Aquateric)(登録商標)(CAP)、およびAQUACOAT(登録商標)(HPMCAS)、ソルプラス(Soluplus)(登録商標) (ポリビニルカプロラクタム-ポリビニルアセテート-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、BASF)、ルビテック(Luvitec)(登録商標)K 30(ポリビニルピロリドン、PVP)、コリドン(登録商標)(ポリビニルピロリドン、PVP)、ポリカプロラクトン、デンプン、ペクチン;トラガカント、アラビアガム、グアーガム、およびキサンタンガムなどの多糖が含まれる。
【0110】
安定化および非可溶性の担体は、下記などの、様々な機能的賦形剤を含んでもよい:親水性ポリマー、抗酸化剤、超崩壊剤、両親媒性分子を含む界面活性剤、湿潤剤、安定化剤、遅延剤、同様の機能的賦形剤、またはその組み合わせ、ならびにクエン酸エステル、ポリエチレングリコール、PG、トリアセチン、フタル酸ジエチル、ひまし油、および当業者には公知の他のものを含む可塑剤。押し出される材料は、酸性化剤、吸着剤、アルカリ化剤、緩衝剤、着色剤、着香剤、甘味剤、希釈剤、不透明化剤、錯化剤、芳香剤、保存剤またはその組み合わせを含んでもよい。
【0111】
本明細書において開示する複合物または組成物に含まれうる第一または第二のポリマー担体でありうる例示的親水性ポリマーには、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリエチレン-ポリプロピレングリコール(例えば、ポロキサマー(登録商標))、カルボマー、ポリカルボフィル、またはキトサンが含まれる。本開示で用いるための親水性ポリマーには、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、グアーガム、アカシアガム、トラガカントガム、またはキサンタンガムなどの天然ゴム、およびポビドンの1つまたは複数も含まれうる。親水性ポリマーには、ポリエチレンオキサイド、カルボキシメチセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシポリメチレン、ポリエチレングリコール、アルギン酸、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリホスファジン、ポリオキサゾリジン、ポリ(ヒドロキシアルキルカルボン酸)、カラギネートアルギネート(carrageenate alginates)、カルボマー、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸ナトリウム、またはその混合物も含まれる。
【0112】
溶解性が増強された組成物は、活性な薬学的成分および活性な薬学的成分の溶解性を増強する添加物を含んでもよい。そのような添加物の例には、界面活性剤、ポリマー担体、薬学的担体、熱結合剤または他の賦形剤が含まれるが、それらに限定されない。特定の例は、活性な薬学的成分と界面活性剤、活性な薬学的成分とポリマー、または活性な薬学的成分と界面活性剤およびポリマー担体の組み合わせの混合物であってもよい。さらなる例は、活性な薬学的成分がその誘導体または類縁体である組成物である。
【0113】
開示する組成物において溶解性を増強するために用いうる界面活性剤は以前に提示している。そのような界面活性剤の特定の例には、ドデシル硫酸ナトリウム、ジオクチルドキュセートナトリウム、トゥイーン80、スパン20、クレモフォール(登録商標)ELまたはビタミンE TPGSが含まれるが、それらに限定されない。開示する組成物において溶解性を増強するために用いうるポリマー担体は以前に提示している。そのようなポリマー担体の特定の例には、ソルプラス(登録商標)、Eudragit(登録商標)L100-55、Eudragit(登録商標)EPO、コリドン(登録商標)VA 64、ルビテック(登録商標)K 30、コリドン(登録商標)、AQOAT(登録商標)-HF、およびAQOAT(登録商標)-LFが含まれるが、それらに限定されない。本開示の組成物は、したがって、本明細書において提示する1種類または複数種類のAPI、ゼロ、1種類または複数種類の界面活性剤、またはゼロ、1種類または複数種類のポリマーの任意の組み合わせでありうる。
【0114】
溶解度は最高溶解度で示すことができ、これは指定の媒質中で行った溶解性実験中、経時的に関心対象の種の到達した最高濃度である。増強された溶解性は、同じ条件下での作用物質の参照標準品の最高溶解度と比べての、本開示の薬学的組成物中の作用物質の最高溶解度の比として表すことができる。好ましくは、最高溶解度を判定するために、例えば、pH4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.2、6.4、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.4、7.6、7.8、または8.0などの、約pH4~pH8、約pH5~pH8、約pH6~pH7、約pH6~pH8、または約pH7~pH8の範囲のpHの水性緩衝液を用いてもよい。この最高溶解度の比は約2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、12:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1、55:1またはそれ以上でありうる。
【0115】
バイオアベイラビリティを増強する活性な薬学的成分の組成物は、活性な薬学的成分、および活性な薬学的成分のバイオアベイラビリティを増強する1種類または複数種類の薬学的に許容される補助剤の混合物を含んでもよい。そのような補助剤の例には、これに限定されないが、酵素阻害剤が含まれる。そのような酵素阻害剤の特定の例には、これらに限定されないが、チトクロムP-450酵素を阻害する阻害剤およびモノアミンオキシダーゼ酵素を阻害する阻害剤が含まれる。バイオアベイラビリティは、インビボ試験時に決定される活性な薬学的成分のCmaxによって表すことができ、ここで、Cmaxは、モニター期間にわたる活性な薬学的成分の最高の到達血液レベル濃度である。増強されたバイオアベイラビリティは、同じ条件下で、活性な薬学的成分の参照標準品のCmaxと比較した、本開示の薬学的組成物における活性な薬学的成分のCmaxの比として表すことができる。増強したバイオアベイラビリティを反映するこのCmax比は、約5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、12:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1、55:1、60:1、65:1、70:1、75:1、80:1、85:1、90:1、95:1、98:1、99:1、100:1またはそれより高い比でありうる。
【実施例】
【0116】
IV. 実施例
本明細書に記載の特定の態様を本開示の例示のために示すが、限定としてではないことが理解されるであろう。本開示の主な特徴は、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な態様において用いることができる。本明細書において開示し、特許請求する組成物および/または方法はすべて、本開示に照らせば、過度の実験を行うことなく作製し、実施することができる。本開示の組成物および方法を好ましい態様に関して記載してきたが、当業者には、本開示の概念、精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の組成物および/または方法ならびに方法の段階または段階の順序に変動を適用しうることは明らかであろう。当業者には明らかなすべてのそのような類似の代替物および改変は、添付の特許請求の範囲によって規定される、本開示の精神、範囲および概念の範囲内であると考えられる。
【0117】
実施例1
上記で定義した滑沢剤は、熱動力学混合によって処理するときの収量を改善するために、処理補助剤として処理方法に追加されてもよい。例えば、ベムラフェニブ(活性な薬学的成分)、薬学的ポリマー(ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル)を含み、かつ0.5%滑沢剤(フマル酸ステアリルナトリウム)を伴う/伴わない、非晶質組成物を調製した。インビトロでの溶解試験において、溶解度性能は、フマル酸ステアリルナトリウムを含む組成物で有意に改善した。
【0118】
別の実施例において、デフェラシロクス(活性な薬学的成分)、薬学的ポリマー(メタクリル酸およびビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー)を含み、かつ0.4%滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム)を伴う/伴わない、非晶質組成物を調製した。これらの非晶質組成物を最終錠剤に製剤化し(表1を参照)、インビボイヌモデルで薬動力学的性能について比較評価した。この試験から、非晶質分散物中にステアリン酸マグネシウムを含まない同じ組成物と比較して、非晶質分散物内部にステアリン酸マグネシウムを含む組成物では、バイオアベイラビリティが有意に改善したことが確認された(表2および
図1を参照)。
【0119】
(表1)製剤情報
*
*360 mgのデフェラシロクス(活性な薬学的成分)を有する、900 mgの総重量で全ての錠剤を調製し;非晶質中間体を熱動力学混合によって調製した。
【0120】
【0121】
実施例2
別の実施例において、イトラコナゾール(活性な薬学的成分)、種々のグレードのヒプロメロース(薬学的ポリマー)、およびステアリン酸マグネシウム(滑沢剤)の組成物に対して、熱動力学的配合を実施した。これらの組成物を表3に概説する。バッチ17-1は、ポリマー担体としてヒプロメロース 2910、5 cpsを利用する。バッチ17-2は、ポリマー担体としてヒプロメロース 2910 E5を利用し、かつ滑沢剤として2%ステアリン酸マグネシウム(MgSt)の添加を含む。バッチ17-3は、ポリマー担体としてヒプロメロース 2910 E15(HPMC E15)を利用する。バッチ17-4は、ポリマー担体としてヒプロメロース 2910 E15を利用し、かつ滑沢剤として2%ステアリン酸マグネシウム(MgSt)の添加を含む。バッチ17-5は、ポリマー担体としてヒプロメロース 2910 E50(HPMC E50)を利用する。バッチ17-6は、ポリマー担体としてヒプロメロース 2910 E50を利用し、かつ滑沢剤として2%ステアリン酸マグネシウム(MgSt)の添加を含む。
【0122】
バッチ17-1~17-6の熱動力学的配合についての処理パラメーターおよび温度対時間プロファイルを
図2に提供する。この図は、標的非晶質分散物が、イトラコナゾールの融点を下回るピーク温度でかつ20秒未満の高温での時間での熱動力学的配合によって達成されたことを意味する。低温および短い処理時間のどちらも、薬物および/またはポリマーの分解なしに非晶質分散物を生成させるのに重大な意味を持つ。
【0123】
バッチ17-1~17-6をX線粉体回折(XRPD)によって結晶内容物について分析した。分析の結果を
図3に提供する。これらの結果は、活性な薬学的成分、薬学的ポリマー、および滑沢剤のこれらの組成物が、薬学的ポリマーグレードの範囲にわたって、プロセスによって非晶質となったことを示す。
【0124】
(表3)種々のヒプロメロース組成物の製剤の表
*
*全てのバッチは活性な薬学的成分として33.3%イトラコナゾールを含んだ。バッチ1および2はポリマー担体としてヒプロメロース 2910 E5を利用した。バッチ3および4はポリマー担体としてヒプロメロース 2910 E15を利用した。バッチ5および6はポリマー担体としてヒプロメロース 2910 E50を利用した。バッチ2、4および6は滑沢剤として2%ステアリン酸マグネシウムを含んだ。
【0125】
実施例3
別の実施例において、イトラコナゾール(活性な薬学的成分)、ヒプロメロース 2910 E15(薬学的ポリマー)、および種々の滑沢剤の組成物に対して、熱動力学的配合を実施した。これらの組成物を表4に概説する。バッチ28-1は、滑沢剤として2% フマル酸ステアリルナトリウム(SSF)の添加を含む。バッチ28-2は、滑沢剤として2%モノステアリン酸グリセリル(GMS)の添加を含む。バッチ28-3は、滑沢剤として2%ステアリン酸(SA)の添加を含む。バッチ28-4は、滑沢剤として2%ミリスチン酸(MA)の添加を含む。
【0126】
バッチ28-1~28-4の熱動力学的配合についての処理パラメーターおよび温度対時間プロファイルを
図4に提供する。この図は、標的非晶質分散物が、イトラコナゾールの融点を下回るピーク温度でかつ10秒未満の高温での時間での熱動力学的配合によって達成されたことを意味する。低温および短い処理時間のどちらも、薬物および/またはポリマーの分解なしに非晶質分散物を生成させるのに重大な意味を持つ。
【0127】
バッチ28-1~28-4をX線粉体回折(XRPD)によって結晶内容物について分析した。分析の結果を
図5に提供する。これらの結果は、活性な薬学的成分、薬学的ポリマー、および滑沢剤のこれらの組成物が、選択した滑沢剤の範囲にわたって、プロセスによって非晶質となったことを示す。
【0128】
(表4)様々な滑沢剤組成物の製剤の表
*
*全てのバッチは活性な薬学的成分として33.3%イトラコナゾールおよび薬学的ポリマーとして64.7%ヒプロメロース 2910 E15を含んだ。バッチ1は滑沢剤として2%フマル酸ステアリルナトリウムを含んだ。バッチ2は滑沢剤として2%モノステアリン酸グリセリルを含んだ。バッチ3は滑沢剤として2%ステアリン酸を含んだ。バッチ4は滑沢剤として2%ミリスチン酸を含んだ。
【0129】
実施例4
別の実施例において、熱動力学的配合を、以下の製剤:i)製剤30025-ETV:HPMC E5:TPGS を20:75:5のw/w比;ii)製剤30026-ETV:HPMC E5:TPGS:SSFを20:74:5:1のw/w比、におけるエトラビリン(ETV)に対して実施し、ASDを形成させた。製剤は、一方がSSFを欠くことを除いて、同じである。
【0130】
KinetiSol 245Bコンパウンダを、90 g のバッチサイズおよび170℃の吐出温度で2500 rpmの速度にて両製剤に対して作動させた。
【0131】
溶融排出物を空気圧式冷却プレスで急冷し、固体非晶質シートを形成させた。ハンマーの前方で9,000 rpmにて作動しかつ250 μmスクリーンを装備したFitzMill L1Aハンマー粉砕機を用いて、固体非晶質シートを粉砕し、微粉末を形成させた。両製剤の粉砕した粉末は、XRPDの限界まで非晶質状態であると判定された。
【0132】
次いで、この2種類のASDを、シングルステーション自動化錠剤用プレス機で125 μm未満のサイズの粉末を用いて崩壊錠へとさらに加工した。製剤30025を含む錠剤は、14.29% w/w ETV(25 mg)、53.57% w/wヒプロメロース 2910(Methocel E5)、3.57% w/wビタミンE、10.00% w/wマンニトール(Pearlitol 100 SD)、10.00% w/w結晶セルロース(Avicel PH102)、7.07% w/wクロスポビドン(Kollidon CL)、0.50% w/wコロイド状二酸化ケイ素(Aerosil 200 P)、および1.00% w/wステアリン酸マグネシウムを含んだ。製剤30026を含む錠剤は、14.29% w/w ETV(25 mg)、52.86% w/wヒプロメロース 2910(Methocel E5)、3.57% w/wビタミンE、0.71% w/w SSF(Alubra)、10.00% w/wマンニトール(Pearlitol 100 SD)、10.00% w/w結晶セルロース(Avicel PH102)、7.07% w/wクロスポビドン(Killidon CL)、0.50% w/wコロイド状二酸化ケイ素(Aerosil 200 P)、および1.00% w/wステアリン酸マグネシウムを含んだ。
【0133】
この2種類の錠剤製剤の相対的溶解性能を非シンク溶解法によって評価した。装置IIを70 rpmのパドル速度およびpH 6.5の900 mL絶食時人工腸液(Fasted State Simulated Intestinal Fluid)(FaSSIF)(Biorelevant)で用いた。100 mgの錠剤を111 μg/mlの濃度で試験し、200 mgの錠剤を222 μg/mlの濃度で試験した。250 nm、380 nm、または400 nmでベースライン補正した310 nmでのインラインUV/Vis吸収によって、データを分析した。結果を
図6および
図7に提示する。SSFを含む製剤30026は、SSFを含まない製剤30025と比べて溶解性能の増強を示した。具体的には、製剤30026は、製剤30025より速い速度、優れたC
max、優れたC
min、およびAUCを示した。5%TPGS界面活性剤が両製剤中に存在したが、SSFは従来のTPGS界面活性剤より増強された薬物安定性をさらにもたらすことができたという、これらの結果は驚くべきものである。
【0134】
加えて、これら2種類の錠剤製剤の比較薬物動態PK分析をビーグル犬において調査した。一群当たり5匹の雄のビーグル犬に投与した。動物を一晩絶食させ、次いで、25 mg ETVを含む1錠の錠剤を手動で投与した。各用量後、40 mlの滅菌水を強制経口投与によって各動物に投与した。臨床的に関連する異常は観察されなかった。
【0135】
血液試料を末梢血管の静脈穿刺によって収集した。1.0 mlの量の全血を各時点で収集し、ヘパリンナトリウム抗凝固剤を含むチューブに移した。遠心分離および血漿分離の前に、試料を直ちに氷上で保持した。血液試料を5±3℃にて10分間2200×gで遠心分離した。その結果生じた血漿を96ウェルプレート形式での個別のポリプロピレンチューブに移し、分析の前に名目上-20℃での保存までドライアイス上に直ちに置いた。
【0136】
薬物動態パラメーターを、Watson薬物動態ソフトウェア7.3.0.01(Thermo Fisher Scientific)を利用する標準的な非コンパートメント法によって、血漿濃度-時間データから推定した。利用可能な血漿データおよび投与経路に適している薬物動態パラメーター(C
max、T
max、AUC
0-∞、AUC
last、VZ、CL、T
1/2、バイオアベイラビリティ)を報告した。結果を
図8および表5に示す。
【0137】
【0138】
1%SSFを含む製剤30026は、SSFを含まない製剤30025と比べて優れたPK性能を示した。具体的には、製剤30026では、Cmaxの32%増加および平均AUC0-12の19.5%増加が観察された。
【0139】
これらのデータによって、熱動力学的配合によって製剤構成成分と同時処理してASDを形成したときに、SSFはETV ASDの溶解特性および薬物動態特性を増強することが確証される。
【0140】
実施例5
別の実施例において、溶融急冷を以下の製剤:i)RTV:PEG 8000を30:70のw/w比;ii)RTV:PEG 8000:SSFを30:69:1のw/w比、におけるリトナビル(RTV)で実施し、ASDを形成させた。製剤は、一方がSSFを欠くことを除いて、同じである。
【0141】
PEG 8000が十分に溶解するまで、PEG 8000をビーカー中で攪拌しながら加熱した。RTV(およびSSFを含む製剤ではSSF)を、溶解したPEG 8000に攪拌しながらゆっくりと加え、次いで、混合物を清澄になるまで加熱および攪拌した。溶解した分散物を冷却した平皿に分注して冷却し、冷却した物質を、IKAチューブ粉砕機100を用いて粉砕して粉末を形成させ、250 μmスクリーンを通過させた。
【0142】
両製剤は、XRPDの検出限界までRTVに関して非晶質状態であると判定された。PEG 800は、この成分に関連する溶融急冷および結晶ピークが観察された後は、結晶状態である。
【0143】
溶解を、50 rpmのパドル速度で装置IIに粉末を設置することによって試験した。333 mgの粉末(100 mg RTV)を、試験開始時に37℃で、750 mlの媒質0.1 N HCl(pH 1.1)の表面上に分注した。製剤1種類当たり3つの試料を分析した。カニューレサンプリングおよびイソクラティック水/アセトニトリル法を用いるHPLCによって、データを分析した。分析は240 nmで行われた。結果を
図9に示す。
【0144】
溶解試験によって、SSFを含まない製剤と比較して、SSFを含む製剤は溶解特性が増強されていた(より速い速度およびより優れたCmax)ことが示された。このように、SSFは、溶融急冷により加工したときですら溶解特性またはRTV ASDを増強する。
【0145】
これらの結果は、熱動力学的に配合したETVについての実施例4における結果と共に、ASDがどのように作製されるかに関わらず、SSFがASD中の医薬の溶解を増強することを示した。
【0146】
実施例6
別の実施例において、熱動力学的配合をデフェラシロクス(DFX)を用いて実施し、非晶質固体分散物を形成させた。いくつかの異なる製剤を調製した。各製剤は50% w/w DFXを含んだ。1つの製剤は、50% w/wコポビドン(ポリ(ビニルアセテート)-コ-ポリ(ビニルピロリドン)コポリマー)も含んだ。残りの製剤はまた、49%コポビドンと、1%の以下の非ポリマー滑沢剤:ジベヘン酸グリセリル、SFF、パルミチン酸アスコルビル、ステアリン酸、ステアリルアルコール、モノステアリン酸グリセリル、セチルアルコール、またはステアリン酸マグネシウムのうちの1つとを含んだ。
【0147】
全ての製剤をKinetisolコンバウンダKBC20で加工した。溶融排出物を金属プレート間で急冷し、固体非晶質シートを形成させた。IKAチューブ粉砕機100を用いて、固体非晶質シートを粉砕して、粉末を形成させ、250 μmスクリーンを通過させた。粉砕した粉末は、XRPDの検出限界まで非晶質状態であるとそれぞれ判定された。
【0148】
各製剤の溶解特性を、50 rpmのパドル速度での装置IIでの溶解試験によって評価した。各試料について、ヒプロメロースカプセル中の150 mgの粉末(75mg DFX)をメタルシンカーと共に、試験開始時に37℃で、750 mlの50 mM酢酸ナトリウム(pH 5)の中にドロップした。データを、400 nmでベースライン補正した、295 nmでのインラインUV/Vis吸収によって分析した。結果を
図10~12に提示する。
【0149】
非ポリマー滑沢剤を含む全ての製剤は、DFXおよびコポビドンのみを含む製剤と比較して溶解改善(より速い速度および優れたCmax)を示した。
【0150】
本明細書において開示および特許請求する組成物および方法のすべては、本開示を参照すれば、過度の実験を伴うことなく、作製および実行することができる。本開示の組成物および方法を、好ましい態様に関して記載してきたが、本明細書に記載の組成物および方法に対して、ならびに方法の段階または段階の順序において、本開示の概念、精神および範囲から逸脱することなく、変形を適用しうることは当業者には明らかであろう。より具体的には、化学的および生理的の両方で関連する一定の作用物質を、本明細書に記載の作用物質の代わりに用いうる一方で、同じまたは類似の結果が達成されるであろうことは明らかであろう。当業者には明らかなすべてのそのような類似の代替および改変は、添付の特許請求の範囲によって定義されるように、本開示の精神、範囲および概念の範囲内であるとみなされる。