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特許7378398耐薬品性および耐ステイン性熱可塑性ポリウレタン組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】耐薬品性および耐ステイン性熱可塑性ポリウレタン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/73 20060101AFI20231106BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20231106BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20231106BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
C08G18/73
C08G18/32 018
C08G18/48 054
C08G18/42 069
C08G18/42
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020531166
(86)(22)【出願日】2018-11-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 US2018060604
(87)【国際公開番号】W WO2019112757
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】62/595,619
(32)【優先日】2017-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506347528
【氏名又は名称】ルブリゾル アドバンスド マテリアルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】バルデペラス, ジャコブ ジル
(72)【発明者】
【氏名】ベルナベ, ロミナ マリン
(72)【発明者】
【氏名】マカル, ユミット ジー.
【審査官】前田 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-187811(JP,A)
【文献】特開2016-011383(JP,A)
【文献】特開昭59-188828(JP,A)
【文献】特開平08-283644(JP,A)
【文献】国際公開第2016/105886(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0092832(US,A1)
【文献】特開2013-133367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリウレタン組成物であって、(1)ポリイソシアネート成分であって、95モル%よりも多いヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネートを含む、ポリイソシアネート成分と、(2)ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールを含むポリオール成分と、(3)鎖延長剤成分との反応生成物を含み、前記鎖延長剤成分が、アルキレン置換飽和スピロ環式ジオール、アルキレン置換飽和スピロ環式ジアミン、またはそれらの組み合わせを含む、90モル%よりも多いアルキレン置換スピロ環式化合物を含み、前記アルキレン置換スピロ環式化合物は、1環あたり5~7個の原子を含む2つの環を含み、各環は1~4個の炭素原子を含むアルキレン基で置換されており、ヒドロキシ基またはアミンで終端されており、前記アミンは第一級または第二級アミンであり、ここで、前記熱可塑性ポリウレタン組成物が少なくとも60重量%の前記ポリイソシアネート成分および前記鎖延長剤成分を含み、
ここで、前記アルキレン置換スピロ環式化合物の構造式が、次式であり、
【化4】

式中、各Xが、Oであり、各R が、1~4個の炭素原子を含むアルキレンであり、各Zが、-OHであり、a、b、c、d、e、f、gおよびhが、a、b、c、およびdの合計が1~3であり、かつ、e、f、g、およびhの合計が1~3である限り、それぞれ独立して0~2の整数である、熱可塑性ポリウレタン組成物。
【請求項2】
aがgに等しく、bがhに等しく、cがeに等しく、dがfに等しい、請求項に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
【請求項3】
前記アルキレン置換スピロ環式化合物が、2つの6員環を含み、XがOであり、Rが1,1-ジメチルエチルであり、Zが-OHであり、(i)aが0であり、bが1であり、cが1であり、dが0であり、eが1であり、fが0であり、gが0であり、かつ、hが1であるか、または、(ii)aが1であり、bが0であり、cが0であり、dが1であり、eが0であり、fが1であり、gが1であり、かつ、hが0であるかのいずれかである、請求項に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
【請求項4】
前記アルキレン置換スピロ環式化合物の構造式が、次式であり、
【化5】

式中、各Xが、Oであり、各が、1~4個の炭素原子を含むアルキレンであり、各Zが、-OHである、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
【請求項5】
Xが、Oであり、Rが、1,1-ジメチルエチルであり、Zが、-OHである、請求項に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
【請求項6】
前記ポリオール成分が、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールからなる、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
【請求項7】
前記ポリオール成分がさらに、ポリエステルポリオールを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
【請求項8】
前記ポリエステルポリオールが、ポリカプロラクトンポリオールを含む、請求項に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
【請求項9】
前記ポリエステルポリオールが、ポリカプロラクトンポリオールからなる、請求項に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
【請求項10】
前記ポリエステルポリオールが、ポリエチレンブチレンアジペートを含む、請求項に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
【請求項11】
前記ポリエステルポリオールが、ポリエチレンブチレンアジペートからなる、請求項に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物を含む物品。
【請求項13】
前記物品が成形品である、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
前記物品が保護フィルムである、請求項12に記載の物品。
【請求項15】
物品の耐薬品性および耐ステイン性を高める方法であって、請求項1~11のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物を使用して物品を成形することを含む、方法。
【請求項16】
物品の耐薬品性および耐ステイン性を高める方法であって、熱可塑性ポリウレタン(TPU)を提供することを含み、前記TPUが、(1)95モル%よりも多いヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネートを含むイソシアネート成分と、(2)ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールを含むポリオール成分と、(3)アルキレン置換飽和スピロ環式ジオール、アルキレン置換飽和スピロ環式ジアミン、またはそれらの組み合わせを含む、90モル%よりも多いアルキレン置換スピロ環式化合物を含む鎖延長剤成分との反応生成物を含み、前記アルキレン置換スピロ環式化合物は、1環あたり5~7個の原子を含む2つの環を含み、各環は1~4個の炭素原子を含むアルキレン基で置換されており、ヒドロキシ基またはアミンで終端されており、前記アミンが第一級アミンまたは第二級アミンであり、ここで、前記熱可塑性ポリウレタンが少なくとも60重量%の前記イソシアネート成分および前記鎖延長剤成分を含み、
ここで、前記アルキレン置換スピロ環式化合物の構造式が、次式であり、
【化4】

式中、各Xが、Oであり、各R が、1~4個の炭素原子を含むアルキレンであり、そして各Zが、-OHであり、a、b、c、d、e、f、gおよびhが、a、b、c、およびdの合計が1~3であり、かつ、e、f、g、およびhの合計が1~3である限り、それぞれ独立して0~2の整数である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐薬品性および耐ステイン性ならびに透明性が望ましい物品に使用できる熱可塑性ポリウレタン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリウレタンを使用して製造される物品は、化学分解およびステインに耐性があることがしばしば望ましい。これは、透明でもある物品または材料の場合に特に困難になり得る。したがって、化学分解およびステインに耐性がある熱可塑性ポリウレタン組成物を有することが望ましい。さらに、いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリウレタン組成物は透明であることも望ましいであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、(1)ポリイソシアネート成分であって、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネートを含む、ポリイソシアネート成分と、(2)ポリオール成分と、(3)鎖延長剤成分との反応生成物を含む熱可塑性ポリウレタン組成物を提供し、鎖延長剤成分は、アルキレン置換飽和スピロ環式ジオール、アルキレン置換飽和スピロ環式ジアミン、またはそれらの組み合わせを含むアルキレン置換スピロ環式化合物を含み、アルキレン置換スピロ環式化合物は、1環あたり5~7個の原子を含む2つの環を含み、各環は、1~4個の炭素原子を含むアルキレン基で置換されており、ヒドロキシ基またはアミンで終端しており、該アミンが第一級または第二級アミンである。一実施形態では、ポリオール成分は、ポリエーテルポリオールであってもよい。別の実施形態では、ポリオール成分はポリエステルポリオールであってもよい。
【0004】
一実施形態では、本発明は、(1)ポリイソシアネート成分であって、少なくとも90モル%のヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネートを含む、ポリイソシアネート成分と、(2)ポリオール成分と、(3)鎖延長剤成分との反応生成物を含む熱可塑性ポリウレタン組成物を提供し、鎖延長剤成分は、アルキレン置換飽和スピロ環式ジオール、アルキレン置換飽和スピロ環式ジアミン、またはそれらの組み合わせを含む少なくとも90モル%のアルキレン置換スピロ環式化合物を含み、アルキレン置換スピロ環式化合物は、1環あたり5~7個の原子を含む2つの環を含み、各環は、1~4個の炭素原子を含むアルキレン基で置換されており、ヒドロキシ基またはアミンで終端しており、該アミンは第一級または二級アミンである。一実施形態では、ポリオール成分は、ポリエーテルポリオールであってもよい。別の実施形態では、ポリオール成分はポリエステルポリオールであってもよい。別の実施形態において、ポリオールは、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリカプロラクトンポリオール、もしくはポリエチレンブチレンアジペート、またはそれらの組み合わせから選択され得る。
【0005】
本発明はさらに、本明細書に記載されるいずれかの熱可塑性ポリウレタン組成物から製造される物品を提供する。
【0006】
本発明はまた、本明細書に記載される熱可塑性ポリウレタン組成物を使用して物品を製造することによって、物品の耐薬品性および耐ステイン性を増加させる方法を提供する。特に、上記の任意の熱可塑性ポリウレタン組成物をこの方法で使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物(TPU)は、(1)少なくとも90モル%のヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネートを含むポリイソシアネート成分と、(2)ポリオール成分と、(3)アルキレン置換飽和スピロ環式ジオール、アルキレン置換飽和スピロ環式ジアミン、またはそれらの組み合わせを含む少なくとも90モル%のアルキレン置換スピロ環式化合物含む鎖延長剤成分との反応生成物を含むみ、アルキレン置換スピロ環式化合物は、1環あたり5~7個の原子を含む2つの環を含み、各環は、1~4個の炭素原子を含むアルキレン基で置換されており、ヒドロキシ基またはアミンで終端しており、アミンが第一級または第二級アミンである。これらの反応物を重合させてTPUを合成する技術は、従来の加工処理装置、触媒、およびプロセスを利用して実施することができる。重合は、所望のポリマーの特徴または特性をもたらすであろう方法で行うことができる。本発明のTPUを製造するのに有用な重合技術には、反応押出、バッチ処理、溶液重合、およびキャスト重合などの従来の方法が含まれる。
【0008】
ポリイソシアネート成分
本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物は、ポリイソシアネート成分を含む。熱可塑性ポリウレタン組成物を製造するために一般的に使用されるイソシアネートには、脂肪族および芳香族ジイソシアネートが含まれる。脂肪族ジイソシアネートには、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,4-シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、デカン-1,10-ジイソシアネート、リジンジイソシアネート(LDI)、1,4-ブタンジイソシアネート(BDI)、1,4-ビス(イソシアントメチル)シクロヘキサン(1,4-H6XDI)、およびジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート(H12MDI)が含まれる。芳香族ジイソシアネートには、4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)、m-キシリレンジイソシアネート(XDI)、フェニレン-1,4-ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート(NDI)、ジフェニルメタン-3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジイソシアネート、またはトルエンジイソシアネート(TDI)が含まれる。上記のジイソシアネートの二量体および三量体、ならびに2つ以上のジイソシアネートのブレンドを使用して、熱可塑性ポリウレタンを調製することができる。
【0009】
本発明の一実施形態では、ポリイソシアネート成分は、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネートを含み、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート以外のイソシアネートを10モル%未満、またはさらには5モル%未満含有する。いくつかの実施形態では、ポリイソシアネート成分は、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート以外のイソシアネートを実質的に含まないため、ポリイソシアネート成分はヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネートからなる。
【0010】
ポリオール成分
本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物は、ポリオール成分を含む。ポリオール成分は、ポリエーテルまたはポリエステルポリオールを含み得る。
【0011】
一実施形態では、ポリオール成分は、ポリエーテルポリオールを含む。ポリエーテルポリオールは、一般に、合計2~15個の炭素原子を有するジオールまたはポリオールから誘導され、いくつかの実施形態では、2~6個の炭素原子を有するアルキレンオキシド、典型的にはエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドまたはそれらの混合物を含むエーテルと反応するアルキルジオールまたはグリコールから誘導される。例えば、ヒドロキシル官能性ポリエーテルは、最初にプロピレングリコールをプロピレンオキシドと反応させ、続いてエチレンオキシドと後続反応させることによって生成することができる。エチレンオキシドから得られる第一級ヒドロキシル基は、第二級ヒドロキシル基よりも反応性が高いため、好ましい。有用な市販のポリエーテルポリオールには、エチレングリコールと反応させたエチレンオキシドを含むポリ(エチレン)グリコール(PEG)、プロピレングリコールと反応させたプロピレンオキシドを含むポリ(プロピレン)グリコール、重合したテトラヒドロフランと言うこともでき、通常、PTMEGまたはポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールと呼ばれるテトラヒドロフランと反応させた水を含むポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールが含まれる。好適なポリエーテルポリオールとしては、アルキレンオキシドのポリアミド付加物も含まれ、例えば、エチレンジアミンとプロピレンオキシドとの反応生成物を含むエチレンジアミン付加物、ジエチレントリアミンとプロピレンオキシドとの反応生成物を含むジエチレントリアミン付加物、および類似のポリアミドタイプのポリエーテルポリオールを含むことができる。本発明の一実施形態では、ポリオール成分は、ポリエーテルポリオールであり、ポリエーテルポリオールは、PTMEGを含む、本質的にそれからなる、またはそれからなる。
【0012】
別の実施形態では、ポリオール成分はポリエステルポリオールであってもよい。ポリエステルポリオールは、1つ以上のグリコールと1つ以上のジカルボン酸もしくは無水物との(1)エステル化反応、または(2)エステル交換反応、すなわち1つ以上のグリコールとジカルボン酸のエステルとの反応によって生成できる。末端ヒドロキシル基が優勢な線状鎖を得るためには、一般に、グリコールの酸に対するモル比が1モルを超えることが好ましい。所望のポリエステルのジカルボン酸は、脂肪族、脂環式、芳香族、またはそれらの組み合わせであり得る。単独または混合物で使用され得る好適なジカルボン酸は、一般に、合計4~15個の炭素原子を有し、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸などが含まれる。無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸などの上記のジカルボン酸の無水物も使用することができる。アジピン酸が好ましい酸である。反応して望ましいポリエステル中間体を形成するグリコールは、脂肪族、芳香族、またはそれらの組み合わせであることができ、上記の鎖延長剤のセクションで説明したグリコールのいずれかを含み、合計で2~20個または2~12個の炭素原子を有する。好適な例としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0013】
いくつかの実施形態では、本発明で有用なTPU組成物を製造するのに使用できるポリエステルポリオールを調製するのに、二量体脂肪酸を使用し得る。ポリエステルポリオールの調製に使用できる二量体脂肪酸の例には、Crodaから市販されているPriplast(商標)ポリエステルグリコール/ポリオール、およびOleonから市販されているRadia(登録商標)ポリエステルグリコールが含まれる。
【0014】
TPU組成物のポリオール成分はまた、1つ以上のポリカプロラクトンポリエステルポリオールを含み得る。本明細書に記載されている技術に有用なポリカプロラクトンポリエステルポリオールには、カプロラクトンモノマーから誘導されたポリエステルジオールが含まれる。ポリカプロラクトンポリエステルポリオールは、第一級ヒドロキシル基で終端している。好適なポリカプロラクトンポリエステルポリオールは、ε-カプロラクトンと、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、モノエチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、またはそれらの任意の組み合わせ、または、当業者に既知の任意のグリコールおよび/またはジオールなどの二官能性開始剤とから製造できる。いくつかの実施形態では、ポリカプロラクトンポリエステルポリオールは、カプロラクトンモノマーから誘導される線状ポリエステルジオールである。市販のポリカプロラクトンポリオールの例としては、2,000の数平均分子量(Mn)の線状ポリエステルジオールであるCAPA(商標)2202A、およびMnが3,000の線状ポリエステルジオールであるCAPA(商標)2302Aが含まれ、どちらもPerstorp Polyols Inc.から市販されている。これらの材料は、2-オキセパノンと1,4-ブタンジオールとのポリマーとも言い得る。
【0015】
本発明の一実施形態では、ポリオール成分は、ポリカプロラクトンポリオールを含む、本質的にそれからなる、またはそれからなるポリエステルポリオールである。本発明の別の実施形態では、ポリオール成分は、ポリエチレンブチレンアジペートを含む、本質的にそれからなる、またはそれからなるポリエステルポリオールである。
【0016】
いくつかの実施形態では、ポリオール成分は、上記のポリエーテルまたはポリエステルであり得るが、コポリマーポリエーテルポリオールまたはポリエーテルポリオールおよび/もしくはコポリマーポリエーテルポリオールの混合物も含み得る。一実施形態では、コポリマーポリエーテルポリオールは、ポリエーテルポリオールと、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオールまたはポリアミドポリオールから選択されるポリオールとのコポリマーである。
【0017】
鎖延長剤成分
本発明の鎖延長剤成分は、アルキレン置換飽和スピロ環式ジオール、アルキレン置換飽和スピロ環式ジアミン、またはそれらの組み合わせを含むアルキレン置換スピロ環式化合物を含み、各環は、1~4個の炭素原子を含むアルキレン基で置換されており、ヒドロキシ基またはアミンで終端しており、該アミンは第一級または第二級アミンである。一実施形態では、アルキレン置換スピロ環式化合物は、各環に2個のヘテロ原子を含むスピロ複素環であり、ヘテロ原子は、酸素、窒素、硫黄またはリンである。一実施形態では、アルキレン置換スピロ環式化合物は、各環に2個のヘテロ原子を含むスピロ複素環であり、ヘテロ原子は酸素または窒素である。一実施形態では、アルキレン置換スピロ環式化合物は、各環に2個のヘテロ原子を含むスピロ複素環であり、ヘテロ原子は酸素である。
【0018】
一実施形態では、アルキレン置換スピロ環式化合物は、次の構造式を有する。
【化1】
式中、各Xは独立して、O、CHR、NR、S、PRから選択され、各Rは、水素原子または1~約6個の炭素原子を含むアルキル基を表し、各Rは、線状または分枝状であり得る、1~4個の炭素原子を含むアルキレンであり、各Zは、-OHまたは-NHRから選択され、Rは、水素原子または1~約6個の炭素原子を含むアルキル基を表し、a、b、c、d、e、f、gおよびhは、a、b、c、およびdの合計が1~3であり、かつ、e、f、gおよびhの合計が1~3ある限り、それぞれ独立して0~2の整数である。一実施形態では、aはgに等しく、bはhに等しく、cはeに等しく、dはfに等しい。一実施形態では、全てのXは同一である。一実施形態では、全てのXは、OまたはNRから同一に選択され、Rは、水素原子または1~約6個の炭素原子を含むアルキル基を表し、aはgに等しく、bはhに等しく、cはeに等しく、dはfに等しい。一実施形態では、スピロ環式ジアルキレン化合物は2つの6員環を含み、Xは独立して、OまたはNRから選択され、Rは、水素原子または1~約6個の炭素原子を含むアルキル基を表し、Rは、1~4個の炭素原子を含むアルキレンであり、Zは、-OHまたはNHであり、(i)aは0であり、bは1であり、cは1であり、dは0であり、eは1であり、fは0であり、gは0であり、かつ、hは1であるか、または(ii)aは1であり、bは0であり、cは0であり、dは1であり、eは0であり、fは1であり、gは1であり、かつ、hは0である。一実施形態では、スピロ環式ジアルキレン化合物は2つの6員環を含み、Xは、OまたはNRから同一に選択され、Rは、水素原子または1~約6個の炭素原子を含むアルキル基を表し、Rは、1~4個の炭素原子を含むアルキレンであり、Zは、-OHまたはNHであり、(i)aは0であり、bは1であり、cは1であり、dは0であり、eは1であり、fは0であり、gは0であり、かつ、hは1であるか、または(ii)aは1であり、bは0であり、cは0であり、dは1であり、eは0であり、fは1であり、gは1であり、かつ、hは0である。一実施形態では、スピロ環式ジアルキレン化合物は2つの6員環を含み、Xは、Oであり、Rは、1,1-ジメチルエチルであり、Zは、-OHであり、(i)aは0であり、bは1であり、cは1であり、dは0であり、eは1であり、fは0であり、gは0であり、かつ、hは1であるか、または(ii)aは1であり、bは0であり、cは0であり、dは1であり、eは0であり、fは1であり、gは1であり、かつ、hは0である。
【0019】
一実施形態では、アルキレン置換スピロ環式化合物は、次の構造式を示す。
【化2】
式中、各Xは独立して、O、CHR、NR、S、PRから選択され、各Rは、水素原子または1~約6個の炭素原子を含むアルキル基を表し、各Rは、線状または分枝状であり得る、1~4個の炭素原子を含むアルキレンであり、各Zは、-OHまたは-NHRから選択され、Rは、水素原子または1~約6個の炭素原子を含むアルキル基を表す。一実施形態では、Xは、O、CHR、NR、S、PRから同一に選択され、各Rは、水素原子または1~約6個の炭素原子を含むアルキル基を表す。一実施形態では、XはOであり、Rは1,1-ジメチルエチルであり、Zは-OHである。
【0020】
一実施形態では、鎖延長剤成分は、本明細書に記載のアルキレン置換スピロ環式化合物を含み、アルキレン置換スピロ環式化合物以外の共鎖延長剤を10モル%未満含有する。共鎖延長剤は、2~20個、または2~12個、または2~10個の炭素原子を有する脂肪族もしくは脂環式ジアミンもしくはグリコール、またはそれらの組み合わせを含み得る。共鎖延長剤の例には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール(BDO)、1,6-ヘキサンジオール(HDO)、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、ヘキサメチレンジオール、ヘプタンジオール、ノナンジオール、ドデカンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオール、1,4-シクロヘキサンジメチロール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、エチレンジアミン、ブタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールなど、ならびにそれらの混合物が含まれる。一実施形態において、鎖延長剤成分は、鎖延長剤成分がアルキレン置換スピロ環式化合物からなるように、アルキレン置換スピロ環式化合物以外の共鎖延長剤を実質的に含まない。
【0021】
TPU組成物のイソシアネート成分および鎖延長剤成分は、しばしばTPUの「ハードセグメント」と呼ばれる。本発明の一実施形態では、TPU組成物は、50重量%超、またはさらには少なくとも55重量%、またはさらには少なくとも60重量%のハードセグメントを含む。本発明に従って製造されたTPU組成物は、40D~85D、例えば、50D~80DのショアD硬度を有し得る。一実施形態では、TPUは、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネートを含む、本質的にそれからなる、またはそれからなる、25重量%~30重量%のポリイソシアネート成分と、20重量%~40重量%のポリエーテルポリオールと、アルキレン置換飽和スピロ環式ジオール、アルキレン置換飽和スピロ環式ジアミン、またはそれらの組み合わせを含むアルキレン置換スピロ環式化合物を含む、本質的にそれからなる、またはそれからなる、30重量%~45重量%の鎖延長剤成分、との反応生成物を含む。
【0022】
一実施形態では、本発明は、(1)ポリイソシアネート成分であって、少なくとも90モル%のヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネートを含む、ポリイソシアネート成分と、(2)ポリオール成分と、(3)鎖延長剤成分との反応生成物を含む熱可塑性ポリウレタン組成物を提供し、鎖延長剤成分は、アルキレン置換飽和スピロ環式ジオール、アルキレン置換飽和スピロ環式ジアミン、またはそれらの組み合わせを含む少なくとも90モル%のアルキレン置換スピロ環式化合物を含み、アルキレン置換スピロ環式化合物は、1環あたり5~7個の原子を含む2つの環を含み、各環は、1~4個の炭素原子を含むアルキレン基で置換されており、ヒドロキシ基またはアミンで終端しており、アミンは、第一級または第二級アミンである。一実施形態では、ポリオール成分は、ポリエーテルポリオールであってもよい。別の実施形態では、ポリオール成分はポリエステルポリオールであってもよい。さらに別の実施形態では、ポリオールは、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリカプロラクトンポリオール、もしくはポリエチレンブチレンアジペート、またはそれらの組み合わせから選択され得る。
【0023】
一実施形態では、本発明は、(1)ポリイソシアネート成分であって、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネートからなる、ポリイソシアネート成分と、(2)ポリオール成分と、(3)鎖延長剤成分との反応生成物を含む熱可塑性ポリウレタン組成物を提供し、鎖延長剤成分は、アルキレン置換飽和スピロ環式ジオール、アルキレン置換飽和スピロ環式ジアミン、またはそれらの組み合わせを含むアルキレン置換スピロ環式化合物からなり、アルキレン置換スピロ環式化合物は、1環あたり5~7個の原子を含む2つの環を含み、各環は1~4個の炭素原子を含むアルキレン基で置換されており、ヒドロキシ基またはアミンで終端しており、アミンは第一級または第二級アミンであり、鎖延長剤成分は、アルキレン置換スピロ環式化合物以外の10モル%未満の共鎖延長剤を含む。この実施形態では、ポリオール成分は、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリカプロラクトンポリオール、もしくはポリエチレンブチレンアジペート、またはそれらの組み合わせを含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなることができる。
【0024】
一実施形態では、本発明のTPU組成物は、35未満、またはさらには31未満、またはさらには17以下のΔEを示すことにより、ASTM D6578M-13に準拠した永久マーカーステインに対する耐性を示す。一実施形態では、TPU組成物は透明である、すなわち、それは、ASTM D1003-11に準拠して測定したとき、20未満または15以下のヘイズを有する。一実施形態では、本発明のTPU組成物はまた、少なくとも4.5、またはさらには5(視覚的評価)のEN 438-2に準拠した平均耐薬品性を示す。
【0025】
別の態様では、本発明はさらに、本明細書に記載されるTPU組成物を製造するプロセスを開示し、プロセスは、(1)ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネートを含むポリイソシアネート成分と、(2)ポリオール成分と、(3)アルキレン置換飽和スピロ環式ジオール、アルキレン置換飽和スピロ環式ジアミン、またはそれらの組み合わせを含むアルキレン置換スピロ環式化合物を含む鎖延長剤成分であって、アルキレン置換スピロ環式化合物が、1環あたり5~7個の原子を含む2つの環を含み、各環は、1~4個の炭素原子を含むアルキレン基で置換されており、ヒドロキシ基またはアミンで終端しており、アミンは第一級または第二級アミンである、鎖延長剤成分とを反応させて、その結果、化学分解およびステインに耐性のあるTPU組成物を得ることを含む。TPU組成物の成分は、本明細書の様々な実施形態に記載されている要素の全てを含むと理解されるべきである。
【0026】
本発明のTPUポリマーを生成するプロセスは、従来のそして今後開発されるTPU製造装置および既知のまたは今後開発されるプロセスを利用することができる。3つの反応物(イソシアネート成分、ポリエーテルポリオール、および鎖延長剤成分)を一緒に反応させて、本発明で有用なTPUを形成する。
【0027】
一実施形態では、このプロセスは、いわゆる「ワンショット」プロセスであり、3つの反応物全てを押出機反応器に添加して反応させる。ヒドロキシル含有成分の全当量に対するジイソシアネートの当量、つまり、ポリエーテルポリオール中間体および鎖延長剤成分は、約0.95~約1.10、または約0.96~約1.03、さらには約0.97~約1.05であり得る。いくつかの実施形態では、任意のウレタン触媒を反応に使用することができる。
【0028】
本発明のTPUは、プレポリマープロセスを利用して調製することもできる。プレポリマー経路において、ポリオール中間体は、一般に、1つ以上のジイソシアネートの当量過剰と反応して、その中に遊離または未反応のジイソシアネートを有するプレポリマー溶液を形成する。いくつかの実施形態では、任意のウレタン触媒を反応に使用することができる。続いて、上記のように、一般にイソシアネート末端基ならびに任意の遊離または未反応のジイソシアネート化合物と等しい当量で、鎖延長剤を添加する。それ故、ポリオール中間体および鎖延長剤の全当量に対する全ジイソシアネートの全当量比は、約0.95~約1.10、または約0.96~約1.03、さらには約0.97~約1.05である。鎖延長反応温度は、一般に、約100℃~約250℃または約200℃~約250℃である。典型的には、プレポリマー経路は、押出機を含む任意の従来の装置で行うことができる。そのような実施形態では、ポリオール中間体は、押出機の最初の部分で当量過剰のジイソシアネートと反応してプレポリマー溶液を形成し、続いて鎖延長剤を下流部分で添加し、プレポリマー溶液と反応させる。少なくとも20、一部の実施形態では少なくとも25である直径の長さに対する比を有するバリアスクリューを備えた押出機を含む、任意の従来の押出機を利用できる。
【0029】
一実施形態では、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネートを含むポリイソシアネート成分、ポリオール成分、およびアルキレン置換スピロ環式化合物を含む鎖延長剤成分は、供給端とダイ端との間に複数の加熱ゾーンおよび複数の供給ポートを備えた単軸または二軸スクリュー押出機で混合される。これらの成分は、1つ以上の供給ポートで添加することができ、押出機のダイ端を出る、得られたTPU組成物は、ペレット化され得る。
【0030】
別の実施形態において、本明細書に開示されるような、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネートを含むポリイソシアネート成分、ポリオール成分、およびアルキレン置換スピロ環式化合物を含む鎖延長剤成分は、一般に、一緒に添加され、本明細書に記載される標準的なポリウレタン合成方法論に従って反応する。本発明のTPU形成成分は、Banbury mixerとして知られる密閉式ミキサーなどの好適なミキサー内で、または押出機内で溶融重合させることができる。一態様では、好適なプロセスまたは重合温度は、約100℃~約250℃であり、別の態様では、約200℃~約250℃である。
【0031】
任意に、第一スズおよび他の金属カルボン酸塩ならびに第三級アミンなどの触媒を利用することが望ましい場合がある。ジイソシアネートのNCO基と、ポリオールおよび鎖延長剤のヒドロキシ基との間の反応を特に促進する好適な触媒の例は、従来技術から知られている従来の第三級アミン、例えば、トリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルモルホリン、N、N’-ジメチルピペラジン、2-(ジメチルアミノエトキシ)エタノール、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどであり、また、特に、チタン酸エステルなどの有機金属化合物、鉄化合物、例えば、第二鉄アセチルアセトネート、スズ化合物、例えば、二酢酸第一スズ、二オクタン酸第一スズ、ジラウリン酸第一スズ、もしくは、脂肪族カルボン酸のジアルキルスズ塩、例えば、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレートなど、プロピオン酸フェニル水銀、オクタン酸鉛、アセチルアセトナト鉄、アセチルアセトナトマグネシウム、または、ビスマス化合物、例えば、オクタン酸ビスマス、ラウリン酸ビスマスなどである。
【0032】
本発明のTPUポリマーは、当該技術分野で知られている、または今後開発される様々な従来の添加剤または配合剤、例えば、酸化防止剤、殺生物剤、殺菌剤、抗菌剤、帯電防止添加剤、可塑剤、充填剤、増量剤、難燃剤、耐衝撃性改良剤、顔料、潤滑剤、離型剤、レオロジー調整剤、UV吸収剤などと混合することができる。従来の添加剤のレベルは、TPUを配合する当業者によく知られているように、所望の最終使用用途の最終特性および費用に依存することになる。これらの追加の添加剤は、TPUの成分中に、またはTPUを調製するための反応混合物中に、またはTPUの製造後に組み込むことができる。別のプロセスでは、全ての材料をTPUと混合してから溶融するか、またはTPU組成物の溶融物に直接組み込むことができる。
【0033】
別の態様では、本発明は、本明細書に詳細に説明されている本発明のTPUを含む物品に関する。本発明のTPUを含む物品は、射出成形品などの任意の成形品であってもよい。一実施形態では、そのようなTPUを使用して、透明仕上げを有することが望ましい物品を製造することができる。さらに他の実施形態では、上記の様々な組成物を含む物品は、使用中に化学薬品またはインクなどの汚染剤にさらされる場合があるあるあらゆる物品、特に、そのような材料が化学分解やステインに対する耐性が不十分なために、これまで熱可塑性ポリウレタンを使用して製造されなかったような物品を含む。この組成物が有用であり得る物品および用途には、保護フィルム、装飾フィルム、グラフィックフィルム、ラベル、床材、多層フィルム構造物、消費者製品、電子機器、繊維複合材、または保護コーティングもしくは装飾コーティング(例えば、ワニス)代替物が含まれるが、これらに限定されない。本発明のTPU組成物の利点を適用することができる特定の用途は多様であり、例としてのみ挙げると、塗装保護フィルム、内外装用ガラス保護フィルム、スーツケースの保護フィルム、レンズ保護、標識やその他の表面の落書き防止保護、床の摩耗層、内側外側表面を含む自動車部品、電子機器の保護カバー、画面保護、ならびに、自動車、航空宇宙、風力エネルギー、および圧力容器の用途向けの繊維複合材が含まれる。実際、本発明のTPU組成物は、当業者が、現在知られているか、または後に発見されるステイン耐性を有する透明な熱可塑性材料を見出すであろうあらゆる用途において有用であり得る。
【0034】
本発明の組成物またはその任意の配合物を使用して、任意の成形プロセスで本発明の成形品を調製することができる。成形プロセスは当業者によく知られており、注型、冷間成形マッチドダイ成形、圧縮成形、発泡成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、異形共押出、異形押出、回転成形、シート押出、スラッシュ成形、噴霧技術、熱成形、トランスファー成形、真空成形、ウェットレイアップもしくはコンタクト成形、ブロー成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、および射出延伸ブロー成形、またはそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
別の態様では、本発明は、有効量の熱可塑性ポリウレタン(TPU)を含む物品を製造することにより、物品の耐薬品性および耐ステイン性を高める方法に言及し、TPUは、(1)ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネートを含む、または本質的にそれからなる、またはそれからなる脂肪族ポリイソシアネートと、(2)本明細書に記載のポリオール成分と、(3)アルキレン置換飽和スピロ環式ジオール、アルキレン置換飽和スピロ環式ジアミン、またはそれらの組み合わせを含むアルキレン置換スピロ環式化合物を含む、本質的にそれからなる、またはそれからなる鎖延長剤成分との反応生成物を含み、アルキレン置換スピロ環式化合物は、1環あたり5~7個の原子を含む2つの環を含み、各環は、1~4個の炭素原子を含むアルキレン基で置換されており、ヒドロキシル基またはアミンで終端しており、アミンは第一級または第二級アミンである。
【0036】
本技術はまた、熱可塑性ポリウレタン組成物の使用を含み、TPUは、(1)ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネートを含む、または本質的にそれからなる、またはそれからなるポリイソシアネート成分と、(2)本明細書に記載されるようなポリオール成分と、(3)アルキレン置換飽和スピロ環式ジオール、アルキレン置換飽和スピロ環式ジアミン、またはそれらの組み合わせを含むアルキレン置換スピロ環式化合物を含む、本質的にそれからなる、またはそれからなる鎖延長剤成分との反応生成物を含み、アルキレン置換スピロ環式化合物は、1環あたり5~7個の原子を含む2つの環を含み、各環は、1~4個の炭素原子を含むアルキレン基で置換されており、ヒドロキシ基またはアミンで終端されており、アミンは、第一級または第二級アミンであり、物品の耐薬品性および耐ステイン性を高める。使用はまた、物品を透明にし得る。
【0037】
様々な好ましい特徴および実施形態が、非限定的な例示として以下に説明される。
【0038】
記載されている各化学物質成分の量は、特に指示がない限り、市販の材料に通常存在し得るあらゆる溶媒または希釈油を除いて、つまり活性化学物質に基づいて示されている。ただし、特に指示がない限り、本明細書で言及する各化学物質または組成物は、異性体、副生成物、誘導体、および商業グレードに存在すると通常理解される他のそのような材料を含み得る商業グレードの材料であると解釈されるべきである。
【0039】
上記で言及された文書の各々は、上記に具体的に列挙されているかどうかにかかわらず、優先権が主張されるあらゆる先行出願を含んで参照により本明細書に組み込まれる。いずれの文書の言及も、あらゆる権限において、そのような文書が先行技術としての資格を有すること、または当業者の一般知識を構成することの承認ではない。実施例を除き、または別途明示的に示されている場合を除き、材料の量、反応条件、分子量、炭素原子の数などを指定するこの説明の全ての数量は、「約」という単語によって変更されるものとして理解されたい。本明細書に記載の量、範囲、および比率の上限および下限は、独立して組み合わされてもよいことを理解されたい。同様に、本発明の各要素の範囲および量は、他の要素のいずれかの範囲または量とともに使用され得る。
【実施例
【0040】
これらの実施例では、TPUは表1に示す成分から合成される。表1では、SPGは、以下を含むアルキレン置換スピロ環式化合物を指す。
【化3】
。PTMEGは、ポリテトラメチレングリコールポリエーテルポリオール、PEBAは、ポリエチレンブチレンアジペート、CAPAは、ポリカプロラクトンポリオール、BDOは、1,4-ブタンジオール、HDOは、1,6-ヘキサンジオール、DPGは、ジプロピレングリコール、BEPDは、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、NPGは、ネオペンチルグリコール、HDIは、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、MDIは、4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)、そして、H12MDIは、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネートである。
【表1】
【0041】
表1のTPUを評価して、ASTM D1003-11に準拠したヘイズ(BYKのHaze-gard Plusを使用して測定)、ASTM D6578M-13に準拠した永久マーカーステイン、およびEN 438-2に準拠した耐薬品性を判定した。永久マーカー試験では、試験方法で指定された24時間に代えて5日後にΔE(Colorflex Hunterlab A60-1010-615比色計を使用して測定された材料の色の変化)を測定したこと、および試験で指定された青色の溶剤ベースの永久インクマーカーの代わりに、赤色の溶剤ベースの永久インクマーカーを使用したことを除いて、ASTM D6578M-13に従った。耐薬品性の結果は、試験方法で指定された基準に従って、0(破壊された表面)~5(損傷なし)の視覚的な評価スケールを使用して報告する。試験の結果を表2に要約する。
【表2】
【0042】
上記に示されるように、本発明に従って製造されたTPU組成物は、ヘイズ測定、永久マーカー試験、および化学分解への耐性試験によって表されるように、両方の耐ステイン性の組み合わせを備えた透明性を提供する。
【0043】
本明細書で提供される全ての分子量値は、別途明記しない限り、重量平均分子量である。別途明記しない限り、全ての分子量値はGPC分析によって測定された値である。
【0044】
本明細書で使用される場合、「含む(including)」、「含有する(containing)」、または「を特徴とする(characterized by)」と同義である「含む(comprising)」という移行性用語は、包括的または無制限であり、追加の、列挙されていない要素または方法ステップを除外しない。しかしながら、本明細書の「含む(comprising)」の各列挙において、この用語は、代替実施形態として、「から本質的になる(consisting essentially of)」および「からなる(consisting of)」という語句も包含することを意図しており、ここで、「からなる(consisting of)」は、指定されていない任意の要素またはステップを除外し、「から本質的になる(consisting essentially of)」は、考慮されている組成物または方法の本質的または基本的および新規の特徴に実質的に影響を与えない追加の列挙されていない要素またはステップを含めることを許容する。
【0045】
主題の発明を例示する目的で、特定の代表的な実施形態および詳細を示してきたが、主題の発明の範囲から逸脱することなく様々な変更および修正を行うことができることは当業者には明らかであろう。これに関して、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によってのみ制限されるものとする。
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
熱可塑性ポリウレタン組成物であって、(1)ポリイソシアネート成分であって、少なくとも90モル%のヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネートを含む、ポリイソシアネート成分と、(2)ポリオール成分と、(3)鎖延長剤成分との反応生成物を含み、前記鎖延長剤成分が、アルキレン置換飽和スピロ環式ジオール、アルキレン置換飽和スピロ環式ジアミン、またはそれらの組み合わせを含む、少なくとも90モル%のアルキレン置換スピロ環式化合物を含み、前記アルキレン置換スピロ環式化合物は、1環あたり5~7個の原子を含む2つの環を含み、各環は1~4個の炭素原子を含むアルキレン基で置換されており、ヒドロキシ基またはアミンで終端されており、前記アミンは第一級または第二級アミンである、熱可塑性ポリウレタン組成物。
(項2)
前記アルキレン置換スピロ環式化合物が、各環に2個のヘテロ原子を含むスピロ複素環であり、前記ヘテロ原子が、酸素、窒素、硫黄またはリンである、上記項1に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
(項3)
前記アルキレン置換スピロ環式化合物の構造式が、次式であり、
【化4】

式中、各Xが独立して、O、CHR 、NR 、S、PR から選択され、各R が、水素原子または1~約6個の炭素原子を含むアルキル基を表し、各R が、1~4個の炭素原子を含むアルキレンであり、各Zが、-OHまたは-NHR から選択され、R は、水素原子または1~約6個の炭素原子を含むアルキル基を表し、a、b、c、d、e、f、gおよびhが、a、b、c、およびdの合計が1~3であり、かつ、e、f、g、およびhの合計が1~3である限り、それぞれ独立して0~2の整数である、上記項1に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
(項4)
aがgに等しく、bがhに等しく、cがeに等しく、dがfに等しい、上記項3に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
(項5)
前記スピロ環式ジアルキレン化合物が、2つの6員環を含み、XがOであり、R が1,1-ジメチルエチルであり、Zが-OHであり、(i)aが0であり、bが1であり、cが1であり、dが0であり、eが1であり、fが0であり、gが0であり、かつ、hが1であるか、または、(ii)aが1であり、bが0であり、cが0であり、dが1であり、eが0であり、fが1であり、gが1であり、かつ、hが0であるかのいずれかである、上記項3に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
(項6)
前記スピロ環式ジアルキレン化合物の構造式が、次式であり、
【化5】

式中、各Xが、O、CHR 、NR 、S、PR から選択され、各R が、水素原子または1~約6個の炭素原子を含むアルキル基を表し、各R が、1~4個の炭素原子を含むアルキレンであり、各Zが、-OHまたは-NHR から選択され、R が、水素原子または1~約6個の炭素原子を含むアルキル基を表す、上記項1に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
(項7)
Xが、Oであり、R が、1,1-ジメチルエチルであり、Zが、-OHである、上記項6に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
(項8)
前記ポリオール成分が、ポリエーテルポリオールを含む、上記項1~7のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
(項9)
前記ポリエーテルポリオールが、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールを含む、上記項8に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
(項10)
前記ポリエーテルポリオールが、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールからなる、上記項8に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
(項11)
前記ポリオール成分が、ポリエステルポリオールを含む、上記項1~7のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
(項12)
前記ポリエステルポリオールが、ポリカプロラクトンポリオールを含む、上記項11に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
(項13)
前記ポリエステルポリオールが、ポリカプロラクトンポリオールからなる、上記項11に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
(項14)
前記ポリエステルポリオールが、ポリエチレンブチレンアジペートを含む、上記項11に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
(項15)
前記ポリエステルポリオールが、ポリエチレンブチレンアジペートからなる、上記項11に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
(項16)
前記熱可塑性ポリウレタン組成物が、少なくとも60重量%のハードセグメントを含む、上記項1~16のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
(項17)
上記項1~16のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物を含む物品。
(項18)
前記物品が成形品である、上記項17に記載の物品。
(項19)
前記物品が保護フィルムである、上記項17に記載の物品。
(項20)
物品の耐薬品性および耐ステイン性を高める方法であって、上記項1~16のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物を使用して物品を成形することを含む、方法。
(項21)
熱可塑性ポリウレタン組成物であって、
(1)ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネートからなるポリイソシアネート成分と、
(2)ポリオール成分と、
(3)アルキレン置換飽和スピロ環式ジオール、アルキレン置換飽和スピロ環式ジアミン、またはそれらの組み合わせを含むアルキレン置換スピロ環式化合物からなる鎖延長剤成分と、を含み、前記アルキレン置換スピロ環式化合物が、1環あたり5~7個の原子を含む2つの環を含み、各環が、1~4個の炭素原子を含むアルキレン基で置換されており、ヒドロキシ基またはアミンで終端しており、前記アミンが第一級または第二級アミンである、熱可塑性ポリウレタン組成物。
(項22)
前記ポリオール成分が、ポリエーテルポリオールを含む、上記項21に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
(項23)
前記ポリエーテルポリオールが、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールを含む、上記項22に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
(項24)
前記ポリオール成分が、ポリエステルポリオールを含む、上記項21に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
(項25)
前記ポリエステルポリオールが、ポリカプロラクトンポリオールを含む、上記項24に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
(項26)
前記ポリエステルポリオールが、ポリエチレンブチレンアジペートを含む、上記項24に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
(項27)
物品の耐薬品性および耐ステイン性を高める方法であって、有効量の熱可塑性ポリウレタン(TPU)を提供することを含み、前記TPUが、(1)少なくとも90モル%のヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネートを含むイソシアネート成分と、(2)ポリオール成分と、(3)アルキレン置換飽和スピロ環式ジオール、アルキレン置換飽和スピロ環式ジアミン、またはそれらの組み合わせを含む少なくとも90モル%のアルキレン置換スピロ環式化合物を含む鎖延長剤成分との反応生成物を含み、前記アルキレン置換スピロ環式化合物は、1環あたり5~7個の原子を含む2つの環を含み、各環は1~4個の炭素原子を含むアルキレン基で置換されており、ヒドロキシ基またはアミンで終端されており、前記アミンが第一級アミンまたは第二級アミンである、方法。