(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】樹脂製の容器の製造方法および樹脂製の容器の製造装置
(51)【国際特許分類】
B29C 49/42 20060101AFI20231106BHJP
B29C 49/06 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
B29C49/42
B29C49/06
(21)【出願番号】P 2020539513
(86)(22)【出願日】2019-08-27
(86)【国際出願番号】 JP2019033558
(87)【国際公開番号】W WO2020045451
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2018158912
(32)【優先日】2018-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻原 修一
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-042698(JP,A)
【文献】実開平05-092240(JP,U)
【文献】特開2015-048243(JP,A)
【文献】特表2004-513046(JP,A)
【文献】特開平05-131528(JP,A)
【文献】国際公開第95/003930(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプリフォームを所定の配列方向に沿って射出成形する射出成形工程、前記プリフォームの温度を調節する温調工程、および前記プリフォームから樹脂製の容器を成形するブロー成形工程を有する樹脂製の容器の製造方法であって、
前記射出成形工程の後、前記温調工程および前記ブロー成形工程にわたって前記プリフォームおよび前記容器を前記配列方向と交差する搬送方向に沿って搬送し、
前記射出成形工程および前記温調工程の間に、前記配列方向に並んだ前記プリフォームを前記搬送方向に沿う向きに並ぶように方向転換させる転換工程を有し、
前記射出成形工程が、
射出キャビティ型および射出コア型によって形成されるキャビティ内に溶融樹脂を射出して
前記溶融樹脂を冷却することで前記プリフォームを成形する射出工程
、および
、前記射出工程で成形されて前記キャビティから解放された前記プリフォームを
冷却ポッドに収容して、前記射出コア型が前記プリフォームの内表面を冷却し、前記冷却ポッドが前記プリフォームの外表面を冷却する後冷却工程を備え、
前記射出成形工程は、前記プリフォームを射出成形するための複数の射出型が用いられることを含み、前記射出型の少なくとも一部の互いの位置を入れ替えることで、前記射出工程および前記後冷却工程を並行して実施することを含
み、
前記転換工程において、前記プリフォームを大気下で放冷する、
樹脂製の容器の製造方法。
【請求項2】
前記転換工程において、
前記射出成形工程において射出成形された前記プリフォームを受け取る受取位置において保持部材に受け取らせ、
前記受取位置から前記温調工程へ
前記プリフォームを送り出す送出位置に前記保持部材を移動させ、
前記保持部材を移動させている間に、前記保持部材を自転させて前記配列方向に並んだ前記プリフォームを前記搬送方向に沿う向きに並ぶように方向転換させ、
前記送出位置から前記プリフォームを
前記温調工程へ送り出す、
請求項1に記載の樹脂製の容器の製造方法。
【請求項3】
前記射出成形工程における前記配列方向に沿った前記プリフォームの一端に位置するプリフォームを第1番目のプリフォームとし、他端に位置するプリフォームを第N1(N1は2以上の整数を表す。)番目のプリフォームとする時に、
前記転換工程において、前記第1番目のプリフォームが先頭になるように、前記配列方向に並んだ前記プリフォームを前記搬送方向に沿う向きに並ぶように方向転換させる、
請求項1に記載の樹脂製の容器の製造方法。
【請求項4】
前記温調工程が、前記プリフォームの温度を調節する通常温調工程および前記プリフォームの温度を局所的に調節する局所温調工程を備える、
請求項1に記載の樹脂製の容器の製造方法。
【請求項5】
複数のプリフォームを所定の配列方向に沿って射出成形する射出成形部、前記プリフォームの温度を調節する温調部、および前記プリフォームから樹脂製の容器を成形するブロー成形部を有する樹脂製の容器の製造装置であって、
前記温調部および前記ブロー成形部にわたって前記プリフォームおよび前記容器を前記配列方向と交差する搬送方向に沿って搬送する搬送機構を有し、
前記射出成形部および前記温調部の間に、前記配列方向に並んだ前記プリフォームを前記搬送方向に沿う向きに並ぶように方向転換させる転換機構を有し、
前記射出成形部が、
射出キャビティ型および射出コア型を備え、前記射出キャビティ型および前記射出コア型によって形成されるキャビティ内に溶融樹脂を射出して
前記溶融樹脂を冷却することで前記プリフォームを成形する射出部
、および
、前記プリフォームを収容可能に構成された冷却ポッドを備え、前記射出部で成形されて前記キャビティから解放された前記プリフォームを
前記冷却ポッドに収容し、前記射出コア型が前記プリフォームの内表面を冷却し、前記冷却ポッドが前記プリフォームの外表面を冷却する後冷却部を備え、
前記射出成形部は、前記プリフォームを射出成形するための複数の射出型を備え、前記射出部と前記後冷却部とにおいて、前記射出型の少なくとも一部の互いの位置を入れ替え
、
前記射出成形部および前記温調部の間に、前記プリフォームを大気下で放冷する放冷部を有し、
前記放冷部に前記転換機構が設けられた、
樹脂製の容器の製造装置。
【請求項6】
前記転換機構が、
前記プリフォームを保持可能に構成された保持部材、
前記射出成形部において射出成形された前記プリフォームを受け取る受取位置から、前記温調部へ前記プリフォームを送り出す送出位置に、前記保持部材を移動可能に構成された移動機構、および
前記保持部材を移動させている間に、前記保持部材を自転させて前記配列方向に並んだ前記プリフォームを前記搬送方向に沿う向きに並ぶように方向転換可能に構成された保持部材転換機構、を備える
請求項5に記載の樹脂製の容器の製造装置。
【請求項7】
前記射出成形部における前記配列方向に沿った前記プリフォームの一端に位置するプリフォームを第1番目のプリフォームとし、他端に位置するプリフォームを第N1(N1は2以上の整数を表す。)番目のプリフォームとする時に、
前記転換機構が、前記第1番目のプリフォームが先頭になるように、前記配列方向に並んだ前記プリフォームを前記搬送方向に沿う向きに並ぶように方向転換可能に構成されている、
請求項5に記載の樹脂製の容器の製造装置。
【請求項8】
前記温調部が、前記プリフォームの温度を調節する通常温調部および前記プリフォームの温度を局所的に調節する局所温調部を備える、
請求項5に記載の樹脂製の容器の製造装置。
【請求項9】
複数のプリフォームを所定の配列方向に沿って射出成形する射出成形工程、前記プリフォームの温度を調節する温調工程、および前記プリフォームから樹脂製の容器を成形するブロー成形工程を有する樹脂製の容器の製造方法であって、
前記射出成形工程の後、前記温調工程および前記ブロー成形工程にわたって前記プリフォームおよび前記容器を前記配列方向と交差する搬送方向に沿って搬送し、
前記射出成形工程が、
射出キャビティ型および射出コア型によって形成されるキャビティ内に溶融樹脂を射出して
前記溶融樹脂を冷却することで前記プリフォームを成形する射出工程
、および
、前記射出工程で成形されて前記キャビティから解放された前記プリフォームを
冷却ポッドに収容して、前記射出コア型が前記プリフォームの内表面を冷却し、前記冷却ポッドが前記プリフォームの外表面を冷却する後冷却工程を備え、
前記射出成形工程は、前記プリフォームを射出成形するための複数の射出型が用いられることを含み、前記射出型の少なくとも一部の互いの位置を入れ替えることで、前記射出工程および前記後冷却工程を並行して実施することを含
み、
前記射出成形工程および前記温調工程との間で、前記プリフォームを大気下で放冷する
樹脂製の容器の製造方法。
【請求項10】
複数のプリフォームを所定の配列方向に沿って射出成形する射出成形する射出成形部、前記プリフォームの温度を調節する温調部、および前記プリフォームから樹脂製の容器を成形するブロー成形部を有する樹脂製の容器の製造装置であって、
前記温調部および前記ブロー成形部にわたって前記プリフォームおよび前記容器を前記配列方向と交差する搬送方向に沿って搬送する搬送機構を有し、
前記射出成形部が、
射出キャビティ型および射出コア型を備え、前記射出キャビティ型および前記射出コア型によって形成されるキャビティ内に溶融樹脂を射出して
前記溶融樹脂を冷却することで前記プリフォームを成形する射出部
、および
、前記プリフォームを収容可能に構成された冷却ポッドを備え、前記射出部で成形されて前記キャビティから解放された前記プリフォームを
前記冷却ポッドに収容し、前記射出コア型が前記プリフォームの内表面を冷却し、前記冷却ポッドが前記プリフォームの外表面を冷却する後冷却部を備え、
前記射出成形部は、前記プリフォームを射出成形するための複数の射出型を備え、前記射出部と前記後冷却部とにおいて、前記射出型の少なくとも一部の互いの位置を入れ替え
、
前記射出成形部および前記温調部の間に、前記プリフォームを大気下で放冷する放冷部を有する、
樹脂製の容器の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製の容器の製造方法および樹脂製の容器の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ホットパリソン式のブロー成形装置およびこれを用いた樹脂製の容器の製造方法が記載されている。特許文献2には、ポリエステル樹脂を射出成形して得られた有底筒状のプリフォームを温度調整後ブロー成形して得られる大型容器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開平8-132517号公報
【文献】日本国特開平11-034152公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂製の容器を製造するにあたって、プリフォームの射出成形時の保有熱を利用するホットパリソン式(1~1.5ステップ式)のブロー成形において、改良を求める市場要求が存在する。当該要求としては、単位時間当たりの容器の生産量を向上させること、短いサイクル時間の下でも容器の品質が維持または向上されること、特殊な容器の成形にも対応可能であること、等が挙げられる。
【0005】
本発明は、単位時間当たりの樹脂製の容器の生産量を大きくでき、短いサイクル時間の下でも容器の品質を維持または向上させることができる、樹脂製の容器の製造方法および樹脂製の容器の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決することのできる本発明の一側面に係る樹脂製の容器の製造方法は、
複数のプリフォームを所定の配列方向に沿って射出成形する射出成形工程、前記プリフォームの温度を調節する温調工程、および前記プリフォームから樹脂製の容器を成形するブロー成形工程を有する樹脂製の容器の製造方法であって、
前記射出成形工程の後、前記温調工程および前記ブロー成形工程にわたって前記プリフォームおよび前記容器を前記配列方向と交差する搬送方向に沿って搬送し、
前記射出成形工程および前記温調工程の間に、前記配列方向に並んだ前記プリフォームを前記搬送方向に沿う向きに並ぶように方向転換させる転換工程を有する、
樹脂製の容器の製造方法である。
【0007】
また、上記の樹脂製の容器の製造方法は、
前記転換工程において、
前記射出成形工程において射出成形された前記プリフォームを受け取る受取位置において保持部材に受け取らせ、
前記受取位置から前記温調工程へプリフォームを送り出す送出位置に前記保持部材を移動させ、
前記保持部材を移動させている間に、前記保持部材を自転させて前記配列方向に並んだ前記プリフォームを前記搬送方向に沿う向きに並ぶように方向転換させ、
前記送出位置から前記プリフォームを温調工程へ送り出す、と好ましい。
【0008】
また、上記の樹脂製の容器の製造方法は、
前記射出成形工程における前記配列方向に沿った前記プリフォームの一端に位置するプリフォームを第1番目のプリフォームとし、他端に位置するプリフォームを第N1(N1は2以上の整数を表す。)番目のプリフォームとする時に、
前記転換工程において、前記第1番目のプリフォームが先頭になるように、前記配列方向に並んだ前記プリフォームを前記搬送方向に沿う向きに並ぶように方向転換させる、と好ましい。
【0009】
また、上記の樹脂製の容器の製造方法は、
前記射出成形工程が、キャビティ内に溶融樹脂を射出して前記プリフォームを成形する射出工程および前記射出工程で成形されて前記キャビティから解放された前記プリフォームを冷却する後冷却工程を備える、と好ましい。
【0010】
また、上記の樹脂製の容器の製造方法は、
前記転換工程において、前記プリフォームを大気下で放冷する、と好ましい。
【0011】
また、上記の樹脂製の容器の製造方法は、
前記温調工程が、前記プリフォームの温度を調節する通常温調工程および前記プリフォームの温度を局所的に調節する局所温調工程を備える、と好ましい。
【0012】
上記課題を解決することのできる本発明の一側面に係る樹脂製の容器の製造装置は、
複数のプリフォームを所定の配列方向に沿って射出成形する射出成形部、前記プリフォームの温度を調節する温調部、および前記プリフォームから樹脂製の容器を成形するブロー成形部を有する樹脂製の容器の製造装置であって、
前記温調部および前記ブロー成形部にわたって前記プリフォームおよび前記容器を前記配列方向と交差する搬送方向に沿って搬送する搬送機構を有し、
前記射出成形部および前記温調部の間に、前記配列方向に並んだ前記プリフォームを前記搬送方向に沿う向きに並ぶように方向転換させる転換機構を有する、
樹脂製の容器の製造装置である。
【0013】
また、上記の樹脂製の容器の製造装置は、
前記転換機構が、
プリフォームを保持可能に構成された保持部材、
前記射出成形部において射出成形された前記プリフォームを受け取る受取位置から、前記温調部へ前記プリフォームを送り出す送出位置に、前記保持部材を移動可能に構成された移動機構、および
前記保持部材を移動させている間に、前記保持部材を自転させて前記配列方向に並んだ前記プリフォームを前記搬送方向に沿う向きに並ぶように方向転換可能に構成された保持部材転換機構、を備える、と好ましい。
【0014】
また、上記の樹脂製の容器の製造装置は、
前記射出成形部における前記配列方向に沿った前記プリフォームの一端に位置するプリフォームを第1番目のプリフォームとし、他端に位置するプリフォームを第N1(N1は2以上の整数を表す。)番目のプリフォームとする時に、
前記転換機構が、前記第1番目のプリフォームが先頭になるように、前記配列方向に並んだ前記プリフォームを前記搬送方向に沿う向きに並ぶように方向転換可能に構成されている、と好ましい。
【0015】
また、上記の樹脂製の容器の製造装置は、
前記射出成形部が、キャビティ内に溶融樹脂を射出して前記プリフォームを成形する射出部および前記射出部で成形されて前記キャビティから解放された前記プリフォームを冷却する後冷却部を備える、と好ましい。
【0016】
また、上記の樹脂製の容器の製造装置は、
前記射出成形部および前記温調部の間に、前記プリフォームを大気下で放冷する放冷部を有し、
前記放冷部に前記転換機構が設けられた、ものであると好ましい。
【0017】
また、上記の樹脂製の容器の製造装置は、
前記温調部が、前記プリフォームの温度を調節する通常温調部および前記プリフォームの温度を局所的に調節する局所温調部を備える、と好ましい。
【0018】
上記課題を解決することのできる本発明の別の側面に係る樹脂製の容器の製造方法は、
複数のプリフォームを所定の配列方向に沿って射出成形する射出成形工程、前記プリフォームの温度を調節する温調工程、および前記プリフォームから樹脂製の容器を成形するブロー成形工程を有する樹脂製の容器の製造方法であって、
前記射出成形工程の後、前記温調工程および前記ブロー成形工程にわたって前記プリフォームおよび前記容器を前記配列方向と交差する搬送方向に沿って搬送し、
前記射出成形工程が、キャビティ内に溶融樹脂を射出して前記プリフォームを成形する射出工程および前記射出工程で成形されて前記キャビティから解放された前記プリフォームを冷却する後冷却工程を備える、
樹脂製の容器の製造方法である。
【0019】
上記課題を解決することのできる本発明の別の側面に係る樹脂製の容器の製造装置は、
複数のプリフォームを所定の配列方向に沿って射出成形する射出成形する射出成形部、前記プリフォームの温度を調節する温調部、および前記プリフォームから樹脂製の容器を成形するブロー成形部を有する樹脂製の容器の製造装置であって、
前記温調部および前記ブロー成形部にわたって前記プリフォームおよび前記容器を前記配列方向と交差する搬送方向に沿って搬送する搬送機構を有し、
前記射出成形部が、キャビティ内に溶融樹脂を射出して前記プリフォームを成形する射出部および前記射出部で成形されて前記キャビティから解放された前記プリフォームを冷却する後冷却部を備える、
樹脂製の容器の製造装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、単位時間当たりの樹脂製の容器の生産量を大きくでき、短いサイクル時間の下でも容器の品質を維持または向上させることができる、樹脂製の容器の製造方法および樹脂製の容器の製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態に係る樹脂製の容器の製造装置を示す平面概略図である。
【
図2】実施形態に係る樹脂製の容器の製造装置を示す側面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。尚、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0023】
図1は、本実施形態に係る樹脂製の容器の製造装置1を示す平面概略図である。
図2は、本実施形態に係る樹脂製の容器の製造装置1を示す側面概略図である。製造装置1は、複数のプリフォーム10を所定の配列方向に沿って射出成形する射出成形部100と、プリフォーム10の温度を調節する温調部200と、プリフォーム10から樹脂製の容器20をブロー成形するブロー成形部300と、成形された容器20を取り出す取出部400とを備える、いわゆる4ステーション型の成形装置である。製造装置1により製造される容器20は、例えば5ガロンボトルなどの大型のボトルとすることができる。本例では、射出成形部100と、温調部200と、ブロー成形部300と、取出部400とは、直線的に配置されている。また、製造装置1は、射出成形部100と、温調部200との間に、転換部(転送部)150を備えている。転換部150は、転換機構として構成される転送部材500を備えている(
図2では省略)。
【0024】
転換部150、温調部200、ブロー成形部300、および取出部400に亘って、それぞれ搬送機構(例えば平行移動チャック(ハンド))として構成される複数の搬送部材600(600a,600b,600c,600d)が設けられている。複数の搬送部材600は、転送部材500から取出部400へ直線的に延びる搬送方向である搬送経路Aに沿って、プリフォーム10および容器20を1ストロークにつき少なくとも1つずつ間欠的に搬送するように構成されている。
【0025】
射出成形部100は、複数のプリフォーム10が配列方向Cに沿って並ぶように、複数のプリフォーム10を射出成形する。射出成形部100は、少なくとも1つの第一の射出型110と、少なくとも2つの第二の射出型120a,120bと、を備えている。第一の射出型110は、プリフォームの胴部の外形を規定する複数(例えば4つ)の凹部114を備える射出キャビティ型112を有している。第一の射出型110は、プリフォーム10の原料となる樹脂材料(例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルやポリカーボネート、等)を射出する射出装置102と連結されており、射出装置102の射出方向Bに直交する配列方向Cに、射出キャビティ型112の複数の凹部114が直線的に整列している。配列方向Cは搬送経路Aにも交差(直交)する。また、射出装置102は第一の射出型110の配列方向Cにおける中央部分に連結されている。射出成形部100の第一の射出型110および第二の射出型120a(120b)には冷媒が流される。冷媒の温度は例えば5~20℃に設定される。
【0026】
ここで、
図3を参照して第二の射出型120a,120bについて説明する。第二の射出型120a,120bは、それぞれ配列方向Cに沿って配列された複数(例えば4つ)の射出コア型122a,122bおよび射出ネック型124a,124bを有している。射出コア型122a,122bはプリフォームのネック部及び胴部の内形を規定し、射出ネック型124a,124bはネック部の外形を規定する。第二の射出型120a,120bは、回転盤である第一の回転部材130に連結されて第一の中心軸X1を中心とする円周上に位置し、第一の中心軸X1に対して間欠的に回転可能に構成されている。詳細には、第二の射出型120a,120bは、第一の中心軸X1に対して互いに180°回転した位置に配置されている。第一の回転部材130は射出成形の1サイクルにつき180°間欠的に回転して、第二の射出型120a,120bの互いの位置を入れ替えるように構成されている。
【0027】
図1、
図2に戻り、射出成形部100を説明する。
図1において、第二の射出型120aは第一の射出型110が配置された位置(射出位置P1)に配置され、第二の射出型120bは射出位置P1の第一の中心軸X1に対する反対側の180°回転した位置(後冷却位置P2)に配置されている。後冷却位置P2は、射出位置P1で射出成形されたプリフォーム10が射出コア型122a,122bおよび射出ネック型124a,124bで保持されて冷却される位置である。第二の射出型120a,120bは、射出位置P1と後冷却位置P2との間を移動可能であり、互いに位置を入れ替えることができるように構成されている。後冷却位置P2に、プリフォーム10を収容可能で昇降可能な冷却ポッド140が設けられている(
図2)。冷却ポッド140はプリフォーム10を収容するキャビティ142を備え、キャビティ142の周囲に水などの冷媒用の流路が設けられており、プリフォーム10を外部から冷却することができる部材であるが、特にこれに限定されるものではない。冷却ポッド140のキャビティ142の数は射出キャビティ型112の凹部144と同じ数である。冷却ポッド140は、例えば5~60℃、好ましくは、5~20℃の温度に設定される。
【0028】
換言すると、射出成形部100は、射出位置P1の部分である射出部と、後冷却位置P2の部分である後冷却部と、を備えている。射出部はキャビティ内に溶融樹脂を射出してプリフォーム10を成形する。後冷却部は、射出部で成形されてキャビティから解放されたプリフォーム10を冷却する。
【0029】
続いて、
図4を参照して転換部150の転送部材500を説明する。転送部材500は、射出成形部100で成形された配列方向Cに配列されたプリフォーム10を搬送経路Aに沿うように整列させて、射出成形部100から温調部200にプリフォーム10を転送する部材である。転送部材500は、プリフォーム10を保持可能に構成された2つの保持部材510a,510b(例えば、ハンド部材やチャック部材)を備える。保持部材510a,510bは、プリフォーム10のネック部12を掴んで保持する複数(例えば4つ)の保持部512を備えている。保持部512の数は、射出キャビティ型112の凹部144の数や冷却ポッド140のキャビティ142の数と同じである。保持部材510a,510bは、第二の中心軸X2を中心として1つの第一の保持部材転換機構(例えば電動モータ530)により間欠的に回転する第二の回転部材520の各端部520a,520bに連結されている。別の言い方では、保持部材510a,510bは、第二の中心軸X2を中心とする円周上に位置する。保持部材510a,510bは、第二の中心軸X2に対して互いに180°回転した位置に配置されている。第二の回転部材520は転送の1サイクルにつき180°間欠的に回転して、保持部材510a,510bの互いの位置を入れ替えるように構成されている。なお、保持部512は保持部材510a(510b)に対して水平方向にスライド移動可能に、さらに、保持部材510a(510b)は、第二の回転部材520に対して昇降移動可能に、構成されても良い。
【0030】
図4において、保持部材510aは後冷却位置P2に存在するプリフォーム10を受け取り可能な位置(受取位置P3)に配置され、保持部材510bは受取位置P3の第二の中心軸X2に対する反対側の180°回転した位置(搬送位置P4)に配置されている。搬送位置P4は、プリフォーム10を搬送経路Aに沿って温調部200に送り出す位置(送出位置)である。保持部材510a,510bは、転送部材500が備える移動機構(第二の回転部材520)により、受取位置P3と搬送位置P4との間を移動可能であり、互いに位置を入れ替えることができるように構成されている。なお、後冷却位置P2と受取位置P3とは、製造装置1の鉛直方向(上下方向)で重なるように配置されていても良い。
【0031】
また、保持部材510a,510bは、転送部材500が備える2つの第二の保持部材転換機構(例えば電動モータ540a、540b)により、第二の回転部材520の各端部520a,520bの連結部分の中心を通る第三の中心軸X3を中心に90°間欠的に回転(自転)することが可能なように構成されている。保持部材510a,510bは、受取位置P3に配置されている場合には、配列方向Cに沿って配列されたプリフォーム10を受け取ることが可能な向きで配置される。保持部材510a,510bは、搬送位置P4に配置されている場合には、搬送経路Aが延びる方向に沿ってプリフォーム10が整列する向きで配置される。換言すると、第二の保持部材転換機構は、保持部材510a,510bを移動させている間に、保持部材510a,510bを自転させて配列方向Cに並んだ複数のプリフォーム10を搬送経路Aに沿う向きに並ぶように方向転換可能に構成されている。すなわち、保持部材510a,510bは、受取位置P3から搬送位置P4に移動する際に自転して、配列方向Cに並ぶプリフォーム10を搬送経路Aが延びる方向に整列されて、温調部200にプリフォーム10を転送するように構成されている。
【0032】
ここで、転送部材500によってプリフォーム10が方向転換されて射出成形部100から温調部200へ移動される間、プリフォーム10は大気下で放冷される。すなわち、製造装置1は射出成形部100および温調部200の間に放冷部を有しており、転換部150が放冷部に設けられている。
【0033】
続いて、
図1、
図2を参照して温調部200を説明する。温調部200は、通常温調部210および局所温調部220を備えている。通常温調部210は、赤外線ヒーター式、RED式、電磁波加熱式、エアまたは温調ロッド型および温調ポット型による追加冷却、等の温調手段によりプリフォーム10の全体の温度をブロー成形のために調整する。局所温調部220は、赤外線ヒーター式、RED式、電磁波加熱式、エア等よる局所冷却、等の温調手段によりプリフォーム10の温度を局所的に調整する。局所温調部220は、ブロー成形部300の直前に配置されている。なお、間欠搬送において同時に搬送するプリフォーム10の個数やブロー成形において同時に成形される容器20の個数に応じて、局所温調部220の数を異ならせても良い。本実施形態において、1つずつプリフォーム10および容器20を間欠搬送する態様を説明しているが、
図1および
図2のように、局所温調部220の数を変更しても良い。通常温調部210で温調用金型を用いる場合、その金型の温度は、例えば40~100℃、好ましくは50~70℃に設定される。
【0034】
続いて、ブロー成形部300を説明する。本例では、ブロー成形部300は、一次ブロー部310および最終ブロー部320を備え、2段階に分けて容器20をブロー成形するように構成されている。一次ブロー部310は、例えば延伸ロッド、ブローコア型、ブローキャビティ型で構成される一次ブロー型を備える。一次ブロー部310は、例えば延伸ロッドでプリフォーム10を延伸しつつエアを導入して、中間成形品15を成形可能に構成されている。最終ブロー部320は、例えばブローコア型、ブローキャビティ型で構成される最終ブロー型を備え、必要に応じて延伸ロッドが設けられる。最終ブロー部320は、例えば中間成形品15をエアで延伸して、容器20を成形可能に構成されている。最終ブロー部320は、冷却されたエアを導入して循環させることにより容器20をブロー成形するように構成されている。また、ブロー成形部300には、最終ブロー時に容器20に取り付けられるハンドル18を導入するハンドル導入機構330が設けられている。なお、一次ブロー部310のブローキャビティ型は中間成形品を熱処理するために、最終ブロー部320のブローキャビティ型の温度(例えば60~90℃)よりも高温(例えば110~140℃)に設定してもよい。
【0035】
続いて、製造装置1による容器20の製造方法を説明する。
図5は容器20の製造工程のフローチャートである。
図5に示すように、容器20は、複数のプリフォーム10を配列方向Cに沿って射出成形する射出成形工程S1、配列方向Cに並んだ複数のプリフォーム10を搬送経路Aに沿う向きに並ぶように方向転換させる転換工程S1.5、プリフォーム10の温度を調節する温調工程S2、およびプリフォーム10から容器20を成形するブロー成形工程S3により製造され、取出工程S4にて製造装置1から回収される。
【0036】
射出成形工程S1は、射出工程S1-1および後冷却工程S1-2を含む。射出工程S1-1において、射出キャビティ型112、射出コア型122a(122b)および射出ネック型124a(124b)を型締めして形成された射出キャビティに、射出装置102によって溶融樹脂を射出してプリフォーム10を成形する。射出してから所定時間が経過した後に、プリフォーム10を射出キャビティ型112から離型(解放)し、第一の回転部材130を180°回転させて、射出コア型122a(122b)および射出ネック型124a(124b)により保持されたプリフォーム10を射出位置P1から後冷却位置P2に移動させる。
【0037】
続いて、後冷却工程S1-2において、後冷却位置P2に移動された射出コア型122a(122b)および射出ネック型124a(124b)により保持されたプリフォーム10を所定時間冷却する。プリフォーム10の冷却は、水等の冷媒が内部に流れている射出コア型122a(122b)および射出ネック型124a(124b)によって内部から行われる。また、後冷却位置P2にプリフォーム10が移動された後に、冷却ポッド140を上昇させてプリフォームを冷却ポッド140に収容する。冷却ポッド140により、プリフォーム10の冷却が外部からも行われる。なお、プリフォーム10を射出位置P1から後冷却位置P2に移動させる際も、プリフォーム10は射出コア型122a(122b)を介して内部から冷却されるため、この移動時間も初期の後冷却工程S1-2の一部として看做すことができる。
【0038】
また、後冷却位置P2で射出コア型122a(122b)および射出ネック型124a(124b)により保持されたプリフォーム10を冷却する後冷却工程S1-2が行われている間に、射出位置P1に配置されるもう一つの射出コア型122b(122a)および射出ネック型124b(124a)によって、次の射出工程S1-1を行う。すなわち、次の射出工程S1-1および後冷却工程S1-2を並行して実施される。所定時間の後に、プリフォーム10は射出コア型122a(122b)および射出ネック型124a(124b)から離型され、冷却ポッド140に収容された状態となる。続いて、転送部材500がプリフォーム10を受け取ることが可能な高さまで、冷却ポッド140を下降させる。その後、再度第一の回転部材130を回転させて次の射出工程S1-1および後冷却工程S1-2を行う。この工程を繰り返すことで連続的に射出成形工程S1を実施する。
【0039】
続く転換工程S1.5において、冷却ポッド140に収容されて配列方向Cに並んだプリフォーム10を、受取位置P3に配置された転送部材500の保持部材510a(510b)によって保持する。その後、冷却ポッド140をさらに下降させてプリフォーム10を第二の回転部材520により回転可能な状態にする。そして、第二の回転部材520を回転することにより、プリフォーム10を受取位置P3から搬送位置P4に移動させる。また、この間に保持部材510a(510b)を自転させて搬送経路Aの延びる方向に合わせてプリフォーム10を配列させる。そして、搬送部材600a,600bによりプリフォーム10を保持して、保持部材510a(510b)からプリフォーム10を開放する。次いで、搬送部材600a,600bによりプリフォーム10を少なくとも1つずつ保持して間欠的に転換部150から搬送経路Aへ送り出す。また、転換工程S1.5の間、プリフォーム10は大気下で放冷される。これにより、温調部200に転送するまでの間でプリフォーム10の温度の均一化処理がなされる。
【0040】
また、搬送部材600a,600bによりプリフォーム10を送り出している間に、次の射出成形工程S1により成形されたプリフォーム10を保持部材510b(510a)によって保持する。搬送位置P4でのプリフォーム10の搬送経路Aへの送り出しが完了した後に、第二の回転部材520を回転することにより、次の射出成形工程S1により成形されたプリフォーム10を受取位置P3から搬送位置P4に移動する。この工程を繰り返すことにより連続的に転換工程S1.5を実施する。
【0041】
搬送経路Aにプリフォーム10を転送した後に、プリフォーム10を搬送部材600a,600bにより温調部200に搬送して、温調工程S2を実施する。温調工程S2では、通常温調部210および局所温調部220にプリフォーム10を順次搬送し、プリフォーム10の温度を次のブロー成形工程S3に適した温度に調整する。すなわち、温調工程S2は、通常温調工程および局所温調工程を備える。局所温調工程はブロー成形の直前に実施される。また、温調工程S2では、搬送部材600cによりプリフォーム10を通常温調部210から局所温調部220へと搬送する。このとき、プリフォーム間のピッチを、射出成形時の狭いピッチからブロー成形時の広いピッチへと変換させる。
【0042】
温調工程S2の後に、プリフォーム10を搬送部材600dによりブロー成形部300に搬送して、ブロー成形工程S3を実施する。ブロー成形工程S3では、一次ブロー部310でプリフォーム10を中間成形品15へと賦形し(一次ブロー工程)、最終ブロー部320で中間成形品15を容器20へと賦形する(最終ブロー工程)。最終ブロー部320では容器20の賦形後、冷却されたエアを導入する。最終ブロー部320において冷却されたエアを用いることで、容器20の冷却を早めることができ、ブロー成形工程S3の短縮化が図れる。これによりサイクル時間の短縮化が達成できる。また、最終ブロー部320ではハンドル導入機構330によってハンドル18を最終ブロー型に導入して、容器20にハンドル18を取り付ける。
【0043】
ブロー成形工程S3の後に、容器20を搬送部材600dにより取出部400に搬送して、容器20を取出す(取出工程S4)。なお、搬送部材600dは、温調処理されたプリフォーム10、中間成形品15および容器20を同時に保持して下流工程へと搬送する。具体的には、搬送部材600dは、プリフォーム10を温調部200から一次ブロー部310へ搬送しつつ、中間成形品15を一次ブロー部310から最終ブロー部320へと搬送する。これらの工程を経て、容器20を得ることができる。
【0044】
ところで、ホットパリソン式のブロー成形において、射出成形されたプリフォームを冷却するために時間がかかり、このことが全体の成形サイクルを長くさせる要因となっている。特に、回転盤を用いるホットパリソン式のブロー成形装置は射出成形数とブロー成形数が同じため、射出成形部が律速段階となり、成形サイクルを高めることができない。また、回転盤の半径以下しか射出ネック型を配するスペースがとれず、搬送コンテナに収まり得るサイズまでとなると、サイズも限定され生産量を高めることができない。また、延伸ブローをするためにはプリフォームの温度を最適なものにする必要がある。そのため単に冷却させればよいわけではなく、短時間でプリフォームの温度を最適化させることが要求される。
【0045】
上記の容器20の製造方法によれば、次のプリフォーム10の射出工程S1-1が実施されている間に、温調工程S2およびブロー成形工程S3にわたってプリフォーム10および容器20を射出成形工程S1におけるプリフォームの配列方向Cと交差する搬送方向(搬送経路A)に沿って搬送することで、成形サイクルに影響が生じない程度に搬送機構を単純化して搬送にかかる時間を短縮しつつプリフォーム10の温調をすることができる。また、射出成形工程S1および温調工程S2の間に、配列方向Cに並んだプリフォーム10を搬送方向(搬送経路A)に沿う向きに並ぶように方向転換する転換工程S1.5を有することで、プリフォーム10を温調工程S2およびブロー成形工程S3に円滑に移行させることができる。これにより、単位時間当たりの容器20の生産量を向上させつつ、短いサイクル時間の下でも容器20の品質を維持または向上させることができる。また、転換工程S1.5では、プリフォーム10の移動と方向転換とを同時に実行することができ、省スペースで効率良くプリフォーム10を温調工程S2へ送り出すことができる。
【0046】
また、上記の射出成形工程S1において、温調工程S2およびブロー成形工程S3における搬送方向(搬送経路A)に交差する配列方向Cに沿ってプリフォームを射出成形している。これにより、射出成形工程S1において使用するキャビティ型の長手方向の中央部分に射出装置の射出口を配置して、射出装置自体をキャビティ型の短手方向(搬送方向に沿う方向)に配置することができ、単位時間当たりの生産量に対して容器20を製造するのに必要な占有スペースを小さくすることができる。
【0047】
また、上記の容器20の製造方法によれば、射出成形工程S1が、射出工程S1-1および後冷却工程S1-2を備えることで、射出工程S1-1において比較的高温な状態でプリフォーム10をキャビティから解放して、後冷却工程S1-2にて当該プリフォーム10の冷却を続けることができる。そして、後冷却工程S1-2でプリフォーム10の冷却を続けている間に、次のプリフォーム10の射出工程S1-1を実施することができ、射出成形工程S1を短時間で繰り返すことができる。これにより、単位時間当たりの容器20の生産量を向上させつつ、短いサイクル時間の下でも容器20の品質を維持または向上させることができる。具体的には、複数の第二の射出型120a,120bが静止している時に、複数の第二の射出型120a,120bの少なくとも一つは、第一の射出型110が位置する射出位置P1に配置され、複数の第二の射出型120a,120bの少なくとも一つは、第一の中心軸X1に対する射出位置P1の反対側の位置である後冷却位置P2に配置される。これにより、射出成形部100の射出位置P1(上流側)でプリフォーム10を成形した後、プリフォーム10の冷却が完全に完了していない状態でプリフォーム10を第一の射出型110の射出キャビティ型112から解放して、第二の射出型120a,120bによって保持されたプリフォーム10を回転移動させて、射出成形部100の後冷却位置P2(下流側)でプリフォーム10の冷却を続けることができる。そして、後冷却位置P2でプリフォーム10の冷却を続けている間に次のプリフォーム10を射出成形することができ、射出成形を短時間で繰り返すことができる。
【0048】
また、上記の転換工程S1.5において、プリフォーム10を大気下で放冷することで、射出成形工程S1の冷却時間をさらに短くすることができ、射出成形工程S1を短時間で繰り返すことができ、単位時間当たりの容器20の生産量をより大きくできる。また、温調部200前にプリフォーム10の偏温解消(均温化)も図れるため、より高品質の容器20が製造可能になる。
【0049】
また、温調工程S2が局所温調工程を備えることで、容器20を目的とする形状にブロー成形しやすくなる。また、ハンドルを備える大型の容器等の特殊な形状の容器をブロー成形しやすくなる。また、ブロー成形工程の直前に局所温調工程を実施することで、ブロー成形に最適化された温度分布のプリフォームを直ちにブロー成形することができる。
【0050】
また、ブロー成形工程S3において、一次ブロー工程と二次ブロー工程との2段階に分けて容器20をブロー成形することで、すなわち中間成形品を一旦成形してから容器を成形することで、最終的に得られる容器の肉厚分布を改善することができる。特に、特殊ボトル(例えばPET材で5ガロン等の大型のもの)を成形する際に、容器の品質を維持または向上させることができる。さらに、5ガロンボトルではハンドルを容器に組付けることが一般的だが、2段階でブローすることによりハンドルの組付けに好適な条件を選択でき、組付け強度を向上させることができる。また、耐熱性の向上も期待できる。
【0051】
このように、本開示の製造装置1および製造方法によれば、単位時間当たりの樹脂製の容器の生産量を大きくでき、短いサイクル時間の下でも容器の品質を維持または向上させることができる。また、特に大型の(例えば5ガロン)容器20の場合にはプリフォーム10の冷却に時間を要する。本開示の製造装置1および製造方法によれば、特に大型の容器20の製造において効果が得られる。
【0052】
また、上記実施形態の製造装置1は、後冷却位置P2の第二の射出型120a,120b、転送部材500、通常温調部210、および局所温調部420から構成される温調(加熱または冷却)可能部位を有している。数多くの温調可能部位を備えることにより、サイクル時間が短くてもブロー成形に適した温度にプリフォーム10の温度分布を調整でき、容器20の品質を維持または向上させることができる。
【0053】
また、上記実施形態の製造装置1では、ブロー成形部300は1以上の最終ブロー型を有しており、搬送経路Aにおいて、プリフォーム10および容器20が最終ブロー型の数ずつ間欠的に搬送される。当該構成を備える製造装置1によれば、最終ブロー部320に一度に搬送できる数だけプリフォーム10および容器20を搬送することで、プリフォーム10の温度分布を最適に設定しつつも、温調時間と待機時間とのバランスがとれて、サイクル時間の更なる短縮を実現でき、容器20の品質を維持または向上させることができる。
【0054】
なお、本開示において直線的に搬送されるとは、厳密に一本の直線で結べる場合のみを指すわけではなく、多少の異なる角度でそれぞれ傾いた複数の搬送経路によって搬送される場合においても、転送部材による向き合せの効果を得ることができる。また、本開示において、転送部材によって温調部およびブロー成形部の概ね直線状に延びる搬送経路に対して、例えば30°~150°傾いた向きに複数配列されたプリフォームの向きを合せることによっても、本開示の効果を得ることができる。また、直交するとは厳密な90°の角度のみを指すわけではなく例えば90°±5°程度であるものも含む。
【0055】
ここで、上記実施形態において説明した転送部材500の別の態様を
図6を参照して説明する。
図6は、転送部材500Zの動作を示す図であり、
図6の(a)は初期状態、
図6の(b)は1次状態、
図6の(c)は2次状態、
図6の(d)は3次状態を示す。以降では、製造装置1において転送部材500を転送部材500Zに置き換えた態様に基づいて、転送部材500Zを説明する。
【0056】
転送部材500Zは、プリフォームを保持可能に構成された保持部材510Za,510Zbと、第二の中心軸X2を中心として例えば電動モータ(不図示)により回転する略円盤状の第二の回転部材520Z(移動機構)と、保持部材510Za,510Zbにそれぞれ対応するように第二の回転部材520に設けられた2つの保持部材転換機構(例えば、電動モータ。
図6では不図示)と、を備える。第二の回転部材520Zは、射出成形部において射出成形された複数のプリフォームを受け取る受取位置P3から、温調部200へプリフォームを送り出す送出位置(搬送位置P4)に、保持部材510Za,510Zbを移動可能に構成されている。保持部材転換機構は、保持部材510Za,510Zbを移動させている間に、保持部材510Za,510Zbをそれぞれ自転させて配列方向Cに並んだ複数のプリフォームを搬送方向(搬送経路Aの延びる方向)に沿う向きに並ぶように方向転換可能に構成されている。
【0057】
保持部材510Za,510Zbは、プリフォームのネック部を掴んで保持する複数の保持部512Z(例えば、爪、ハンド)を各々備えている。保持部材510Za,510Zbは、第二の中心軸X2に対して互いに180°回転した位置で、第二の回転部材520に支持されている。第二の回転部材520は転送の1サイクルにつき180°間欠的に回転して、保持部材510a,510bの互いの位置を入れ替えるように構成されている。
【0058】
ここで、転送部材500Zの動作を説明する。
図6の(a)に示す初期状態において、保持部材510Zaは受取位置P3に配置され、射出成形部における配列方向Cに沿う向きに複数の保持部512Zが並ぶように配置される。また、初期状態において、保持部材510Zbは搬送位置P4に配置され、搬送経路Aに沿う向きに複数の保持部512Zが並ぶように配置される。
【0059】
次に、転送部材500Zが
図6の(b)に示す1次状態、そして
図6の(c)に示す2次状態に遷移する。初期状態から1次状態、さらに2次状態へ遷移する際に、第二の回転部材520Zが時計回りに回転して、保持部材510Zaと、保持部材510Zbと、が位置交換されていく。また、初期状態から1次状態、さらに2次状態へ遷移する際に、保持部材510Zaは反時計回りに自転し、保持部材510Zbは時計回りに自転する。そして、
図6の(c)に示す3次状態まで遷移したところで、第二の回転部材520Zは180°回転して停止する。また、3次状態まで遷移したところで、保持部材510Zaと、保持部材510Zbと、はそれぞれ逆方向に90°回転して停止する。3次状態において、保持部材510Zaは搬送位置P4に配置され、搬送経路Aに沿う向きに複数の保持部512Zが並ぶように配置される。また、3次状態において、保持部材510Zbは受取位置P3に配置され、射出成形部における配列方向Cに沿う向きに複数の保持部512Zが並ぶように配置される。
【0060】
続いて、3次状態から、2次状態、1次状態へと上述の動作と逆の動作により、保持部材510Zaと、保持部材510Zbと、が位置交換されていく。すなわち、第二の回転部材520Zが反時計回りに回転して、保持部材510Zaは時計回りに自転し、保持部材510Zbは反時計回りに自転する。これにより、転送部材500Zは初期状態へと戻る。上記の動作を繰り返して、保持部材510Zaと、保持部材510Zbと、を位置交換し、プリフォームを射出成形部から温調部へと転送する。なお、第二の回転部材520Zは、180°回転する毎に時計回りと反時計回りとを切り替えて回転する態様であるが、回転方向は時計回り又は反時計回りで固定して、180°の間欠回転をする態様としてもよい。
【0061】
ここで、射出成形部における配列方向Cに沿った複数のプリフォームの一端に位置する1のプリフォームを第1番目のプリフォーム10a1とし、他端に位置する1のプリフォームを第N1(N1は2以上の整数を表す。)番目のプリフォーム10aN1とする(
図1参照)。製造装置1のように配列方向Cと交差する搬送方向へプリフォームを搬送する場合、第1番目のプリフォーム10a1および第N番目のプリフォーム10aN1のどちらかが常に先頭になって搬送される。
図1では、射出位置P1に位置するプリフォーム10において、紙面上で下から上に向かって第1番目のプリフォーム10a1、・・・、第N1-1番目のプリフォーム、第N1番目のプリフォーム10aN1が並ぶ態様が示されている。また、
図1では、後冷却位置P2に位置するプリフォーム10において、紙面上で上から下に向かって第1番目のプリフォーム10a1、・・・、第N1-1番目のプリフォーム、第N1番目のプリフォーム10aN1が並ぶ態様が示されている。射出成形部では、使用する金型によって複数のプリフォームの間での温度部分布にある程度差が生じ得る(例えば、第一の射出型110の凹部114毎に、プリフォームの温度分布が連続的(定常的)かつ規則的に相違する、等)。搬送時のプリフォームの並び順が統一されないと、並び順に対応するように温調部200の温調用金型等の温度条件を調節しても、複数のプリフォームの温調が適切になされないおそれがある。
【0062】
上記の転送部材500Zでは、保持部材510Za,510Zbが受取位置P3から搬送位置P4に移動される際に、共に反時計回りに自転して保持部512Zの並び方向を配列方向Cから搬送方向へ方向転換させる。保持部材510a,510bが受取位置P3から搬送位置P4に移動される際のそれぞれが回転移動する方向は異なるが、自転する方向が共通している。すなわち、転送部材500Zは、第1番目のプリフォーム10a1(又は第N番目のプリフォーム10aN1)が常時先頭になるように、配列方向Cに並んだ複数のプリフォーム10を搬送方向に沿う向きに並ぶように方向転換可能に構成されている。転送部材500Zを備えることで、射出成形部において成形されたプリフォーム10の順番を変えずに、温調部200およびブロー成形部300でプリフォーム10を搬送することができる。これにより、第1番目のプリフォーム10a1から第N番目のプリフォーム10aN1の順番で常に次工程に搬送することができ、第1番目のプリフォーム10a1と第N番目のプリフォーム10aN1との間の温度状態の違い等に影響されることなく、容器20の品質を維持または向上させることができる。なお、受取位置P3から搬送位置P4に移動される際の保持部材510Za,510Zbの回転方向は反時計回りに限定されず、搬送の態様に応じて共に時計回りに自転する態様としても良い。
【0063】
また、上記の実施形態において、ブロー成形部は1個の容器をブロー成形する最終ブロー部を備えたが、本開示はこれに限定されない。ブロー成形部が、1回あたりN2(N2は1以上の整数である)個の容器をブロー成形する最終ブロー部を備えていてもよい。また、搬送機構が1個のプリフォームおよび容器を間欠的に搬送する態様を説明したが、本開示はこれに限定されない。搬送機構が複数のプリフォームおよび容器を一回の間欠搬送で搬送する態様としても良く、温調部やブロー成形部とで、一回の間欠搬送で搬送する個数を変更する態様としても良い。
【0064】
また、ブロー成形部が、1回あたりN2(N2は1以上の整数であり、好ましくは2以上)個の容器をブロー成形する最終ブロー部を備える場合、製造装置1は、ブロー成形部において、プリフォームおよび前記容器をN2個ずつ間欠的に搬送してもよい。この際、射出成形部における配列方向に沿った複数のプリフォームの一端に位置する1のプリフォームを第1番目のプリフォームとし、他端に位置する1のプリフォームを第N1(N1は2以上の整数を表す。)番目のプリフォームとした場合に、N1およびN2はN1>N2の関係となる。すなわち、上記の実施形態に係る樹脂製の容器の製造方法は、一回に射出成形されるプリフォームの個数(N1)よりも一回にブロー成形される容器の個数(N2)が少ない。例えば各成形個数を、容器:プリフォーム=1:4、2:4または2:6としてもよい。温調部およびブロー成形部にわたってプリフォームおよび容器を射出成形部におけるプリフォームの配列方向と交差する搬送方向に沿って搬送することで、N1とN2とを変えることができる。そして、ブロー成形工程において容器を成形する際の取り数が少ないため、ブロー成形型の数が少なくなり、製造装置の省スペース化を実現できる。また、容器20に耐熱性が求められない場合(例えばバックインボックス用の容器)はダブルブロー成形を行う必要がないため、一次ブロー部310を無くしても良く、また一次ブロー部310の代わりに最終ブロー部320を設けても良い。つまり、製造装置1はブロー成形部300の構成を容易に変えることができ、容器20の仕様に応じて、ダブルブロー成形もワンブロー成形も行える。製造装置1は、後冷却、放冷、通常温調、局所温調からなる多段階式の温調処理が行えるため、プリフォームの温調に適切に対応できる。
【0065】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
本願は、2018年8月28日付で出願された日本国特許出願(特願2018-158912)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
【符号の説明】
【0066】
1:製造装置、10:プリフォーム、20:容器、100:射出成形部、110:第一の射出型、112:射出キャビティ型、120a,120b:第二の射出型、122a,122b:射出コア型、124a,124b:射出ネック型、140:冷却ポッド、150:転換部、200:温調部、210:通常温調部、220:局所温調部、300:ブロー成形部、310:一次ブロー部、320:最終ブロー部、400:取出部、500:転送部材、510a,510b:保持部材、X1:第一の中心軸、X2:第二の中心軸、A:搬送経路、C:配列方向、P1:射出位置、P2:後冷却位置、P3:受取位置、P4:搬送位置、S1:射出成形工程、S1.5:転換工程、S2:温調工程、S3:ブロー成形工程