(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】フィルタ
(51)【国際特許分類】
B01D 29/27 20060101AFI20231106BHJP
B01D 39/08 20060101ALI20231106BHJP
A47L 13/50 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
B01D23/04
B01D39/08 Z
A47L13/50
(21)【出願番号】P 2020544656
(86)(22)【出願日】2019-02-01
(86)【国際出願番号】 EP2019052496
(87)【国際公開番号】W WO2019166179
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2022-01-31
(31)【優先権主張番号】102018104535.2
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518249029
【氏名又は名称】シュピース,オリバー
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】シュピース,オリバー
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第00244877(US,A)
【文献】米国特許第06789683(US,B1)
【文献】国際公開第2017/121862(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 29/27
B01D 35/02
B01D 39/08
A47L 13/50
B08B 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタ(1)の所定の用法に際して上側に設けられた汚染水の流入口(2)とフィルタ(1)を通過する水を濾過するフィルタエレメント(8)とを有してなる汚染水を濾過するためのフィルタで
あり、
200μmの直径あるいは長さを有するマイクロプラスチック粒子あるいは繊維を捕集するようにフィルタエレメント(8)を形成し、バケツ(6)を傾斜させた際にバケツ(6)の外側にフィルタ(1)を懸吊してバケツ(6)から流出する汚染水を濾過する注ぎ口フィルタとして作用し得るような方式でフィルタ(1)の寸法に対応するバケツ(6)の上縁(5)にフィルタを固定可能であるような固定構造(4)をフィルタ(1)が備えることを特徴とするフィルタ(1)
において、
前記フィルタ(1)の固定構造(4)が少なくとも1本の固定ベルト(12,13)から形成され、それによってフィルタ(1)をバケツ(6)の上縁(5)領域内に固定可能にし、そのため特に前記少なくとも1本の固定ベルト(12,13)をバケツ(6)の上縁(5)の周りに周回させて適宜に固定
し、
前記フィルタ(1)が濾過する水用の流入口(2)を備えたフィルタ袋(15)からな
り、
フィルタ袋(15)が流入口(2)の領域内の相互の対向する2側面にV字型のあるいはV字型に広げることができるリセス(18)を備え、フィルタ(1)をバケツ(6)に適正に固定した際に前記リセス内にバケツ(6)の縁部(5)が少なくとも部分的に進入し得ることを特徴とす
るフィルタ(1)。
【請求項2】
少なくとも1本の固定ベルト(12,13)がベルクロ(登録商標)ファスナ(14)を備えることを特徴とする請求項1記載のフィルタ(1)。
【請求項3】
フィルタ(1)が所与の制限内で多様な大きさのバケツ(6)および/または多様な断面形状を有するバケツ(6)に固定するために適合するように、少なくとも1本の固定ベルト(12,13)および/またはベルクロ(登録商標)ファスナ(14)を寸法設定および/または配置することを特徴とする請求項1または2記載のフィルタ(1)。
【請求項4】
フィルタ袋(15)が側辺側で相互に結合、特に補強帯(17)を使用して相互に縫合された2枚のシート(16a,16b)から形成され、そのうち少なくとも1枚のシート(16a,16b)が少なくとも部分的にフィルタエレメント(8)として機能することを特徴とする請求項1記載のフィルタ(1)。
【請求項5】
フィルタ袋(15)の全ての縁部領域を補強帯(17)によって補強することを特徴とする請求項1に記載のフィルタ(1)。
【請求項6】
2本の固定ベルト(12,13)を設け、それらのそれぞれが第1および第2の固定ベルト断片(12a,12b;13a,13b)に分岐し、その際各固定ベルト(12,13)の2本の固定ベルト断片(12a,12b;13a,13b)がフィルタ袋(15)のV字型のリセス(18)のそれぞれ異なった脚部に接合することを特徴とする請求項1に記載のフィルタ(1)。
【請求項7】
各固定ベルト(12,13)の分岐した2本の固定ベルト断片(12a,12b;13a,13b)が異なった長さを有することを特徴とする請求項6記載のフィルタ(1)。
【請求項8】
フィルタエレメント(8)と固定構造(4)を含めたフィルタ(1)全体を単一の材料、特にポリアミドから製造することを特徴とする請求項1ないし7いずれか一つに記載のフィルタ(1)。
【請求項9】
5μmないし200μmの平均メッシュ幅を有するフィルタ組織、特に熱硬化合成樹脂フィルタ組織からフィルタエレメント(8)を形成することを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載のフィルタ(1)。
【請求項10】
バケツ(6)とそのバケツ上に固定された請求項1ないし9のいずれかに記載のフィルタ(1)からなる複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フィルタの所定の用法に際して上側に設けられた汚染水の流入口とフィルタを通過する水を濾過するフィルタエレメントとを有してなる汚染水を濾過するためのフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
今日販売されている繊維製品および衣料品の多く、特にアウトドア衣類またはその他の合成繊維から製造された機能性衣類は無視できない割合で合成樹脂繊維から形成される。そのような繊維製品は、洗濯に際して合成樹脂繊維あるいは合成樹脂繊維片が洗い落とされるかあるいは脱落しそれが排水と共に環境中に流出するという難点を有する。その種の合成樹脂繊維が通常極めて小さくかつ短い繊維あるいは繊維片に係るため、従来の洗濯機の排水フィルタあるいはその他の従来から家庭で使用されていた汚水を濾過するためのフィルタでは前記の繊維を充分に捕集できない。下水処理場では排水中に含まれる合成樹脂繊維の一定割合を捕集することができるものの、同時に比較的大きな割合でその種の繊維を通過させ、それが無視できないレベルで河川および海洋汚染を増進させ、そこで動物による捕食によって最終的に食物連鎖中に取り込まれる。勿論、洗濯機、下水処理場等が適宜なマイクロプラスチックフィルタを備えることが理想的であるが、そのことは未だ包括的には達成不可能である。
【0003】
この点に関して特許文献1により、繊維製品から洗い落とされた合成樹脂繊維あるいは繊維片の捕集手段として機能して環境保護に寄与することができる、合成樹脂繊維を含んだ繊維製品の洗濯に際して使用するための洗濯袋が既に知られている。
【0004】
しかしながら、合成樹脂繊維を含んだ繊維製品を着用する場合にも繊維または繊維片がそれから脱落し、そのため極めて多量の合成樹脂粒子ならびに繊維が周囲空気中に飛散し、それが各種の表面に沈着して清掃の際に拭き取られて最終的に排水中に到達することが見込まれる。さらに別の環境汚染源はタイヤならびに靴底の摩耗によって放出される合成樹脂粒子であり、それも同様に汚水を介して環境中に到達する危険性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2017/121862号A1パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の背景から本発明によって新規の可能な限り実用的かつ広範に適用可能な環境保護のための補助手段が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って本発明は、200μmの直径あるいは長さを有するマイクロプラスチック粒子あるいは繊維を捕集するようにフィルタエレメントを形成し、バケツを傾斜させた際にバケツの外側にフィルタを懸吊してバケツから流出する汚染水を濾過する注ぎ口フィルタとして作用し得るような方式でフィルタの寸法に対応するバケツの上縁にフィルタを固定可能であるような固定構造をフィルタが備えることを特徴とする、冒頭に述べた種類の汚染水を濾過するためのフィルタに関する。
【0008】
本発明に係るフィルタは極めて単純に構成されていてまたフィルタの寸法に対応するバケツ上に固定あるいは支承可能な構造を有するため、(特に家庭用において)極めて容易に使用可能な補助手段として(重力の作用によって)フィルタ内に含まれたフィルタエレメントを通過させて汚染水を濾過することが明らかである。
【0009】
フィルタ内に集積された粒子はフィルタの使用後に単純に取り出してその後適正に処分することができる。
【0010】
本発明の第一の構成形態によれば、フィルタが2本の固定爪を有する固定構造を備え、その構造によってバケツを傾斜させた際にバケツの外側にフィルタを懸吊してバケツから流出する汚染水を濾過する注ぎ口フィルタとして作用し得るような方式でフィルタの寸法に対応するバケツの上縁に適宜にフィルタを取り付けることができる。
【0011】
従って極めて簡便かつ実用的な清掃作業中に使用する環境を浄化するための補助手段が提供される。
【0012】
その際、固定構造の適宜な構成によって揺動するようにバケツの上縁にフィルタを懸吊可能にすることが好適であり、従ってバケツを傾斜させた際にフィルタがそれの自重によっておよび/またはバケツからフィルタに流入する水の追加的な重量によってバケツが直立している際のフィルタの(通常略水平に延在する流入口を有する)空間内の方向性をバケツが傾斜した際でも少なくとも殆ど維持するような方式でフィルタがバケツに対して傾倒することができる。
【0013】
その種の揺動式の懸吊を可能にする固定構造は、特にバケツが傾斜している際でもまた特定の傾斜角に関わらずフィルタの全容積が利用可能になり従って容易に溢れることが無いという利点を有する。
【0014】
その種のバケツ上で使用可能なフィルタは、少なくとも1個のストッパ要素(より好適にはフィルタの異なった辺上に配置された2個のストッパ要素)を備え、そのストッパ要素がバケツの外側に突立したバケツ縁部と共働してバケツを傾斜させた際のフィルタの滑落を防止するようにすることが好適である。
【0015】
その種のバケツの注ぎ口フィルタとして機能するフィルタにおいてフィルタエレメントがフィルタの内部空間を仕切る少なくとも1つの壁部内の少なくとも1つのリセスを被覆することが好適である。
【0016】
本発明に係るフィルタのさらに別の好適な構成形態によれば、フィルタの固定構造が少なくとも1本の(柔軟な)固定ベルトから形成され、それによってフィルタをバケツの上縁領域内に固定可能にし、特に前記少なくとも1本の固定ベルトをバケツの上縁の周りに周回させて適宜に固定することによって可能にする。その種の少なくとも1本の(柔軟、場合によって弾力性に形成可能な)固定ベルトを固定構造として有するフィルタは、極めて容易に製造可能であるとともに単純な方式でバケツ上に固定可能である。その際2本の固定ベルトを(例えばフィルタの異なった側面上に)備えることも好適であり、バケツの上縁にフィルタを固定するために2本の固定ベルトの自由端領域を適宜な方式で相互に結合することができる。
【0017】
さらに、前記少なくとも1本の固定ベルトがベルクロ(登録商標)ファスナを備えることも好適であり得る。(左および右側からバケツ上縁の周りに周回させ得る)2本の固定ベルトを使用する場合、両方の固定ベルト上にそれぞれベルクロ(登録商標)ファスナの一部を設けることができる。
【0018】
さらに、フィルタが所与の制限内で多様な大きさのバケツ(すなわち例えば多様な上縁領域の周囲長を有するバケツ)および/または多様な断面形状を有するバケツ(例えば楕円あるいは四角形のバケツ)に固定するために適合するように、前記少なくとも1本の固定ベルトおよび/またはベルクロ(登録商標)ファスナを配置および/または寸法設定することも極めて好適である。
【0019】
本発明に係るフィルタのさらに別の好適な構成形態によれば、フィルタが濾過する水用の流入口を備えたフィルタ袋からなる。このフィルタ構成は、前述した固定構造として作用する固定ベルトを使用してバケツの上縁に固定可能あるいは懸吊可能であるフィルタに特に適している。
【0020】
その種のフィルタ袋は、側辺側で相互に結合、特に補強帯を使用して相互に縫合された(任意の、場合によって多層材料からなる)2枚のシートから好適に形成することができ、そのうち少なくとも1枚のシートが少なくとも部分的にフィルタエレメントとして機能する。
【0021】
さらに、後述する本発明の実施例の説明においてより詳細に記述するように、フィルタ袋が流入口の領域内の相互の対向する2側面にV字型のあるいはV字型に広げることができるリセスを備えることが好適であり、フィルタをバケツに適正に固定した際に前記リセス内にバケツの縁部が進入し得るようにする。その際フィルタを適正に固定した場合にバケツ縁部の下に位置するフィルタ袋の縁部断片がバケツの外面に密着することができ、一方フィルタ袋の逆側の縁部断片はバケツ縁部から突出し、従ってバケツを傾斜させた際にバケツ内に存在する汚染水が流入口を介して漏れなくフィルタ袋内に流入し、重力によって濾過されて再びフィルタ袋から流出することができる。その後フィルタ袋内に捕集されたマイクロプラスチック汚染物質を含んだ汚染粒子をフィルタ袋から取り出して適正に処分することができる。
【0022】
フィルタ袋の全ての縁部領域を補強帯によって好適に補強することができる。
【0023】
フィルタ袋および流入口の領域のV字型(あるいはV字型に広げることができる)リセスを有するフィルタにおいて、2本の固定ベルトを設け、それらのそれぞれが第1および第2の固定ベルト断片に分岐し、その際各固定ベルトの2本の固定ベルト断片がフィルタ袋のV字型のリセスのそれぞれ異なった脚部に接合することが極めて有効であると理解される。そのような固定ベルトによって、バケツ縁部の下方でバケツの外側に接合するフィルタ袋の縁部断片ならびにバケツ縁部から突出するフィルタ袋の縁部断片の両方がいずれの方向にも良好に保持されかつ確実にバケツ上に固定可能となることが保証される。
【0024】
加えて、各固定ベルトの分岐した2本の固定ベルト断片が異なった長さを有することができまたは異なった長さを有するようにすべきであり、それによってバケツを傾斜させた際にフィルタ袋の流入口が(水圧によって)適宜に広がり得るようにすることが好適である。
【0025】
フィルタエレメントと固定構造(ならびに場合によって存在する補強帯あるいは壁材、縫合のために使用する糸、および場合によって存在するベルクロ(登録商標)ファスナを)を含めたフィルタ全体を単一の材料、特にポリアミド、中でもポリアミド6.6から製造し得ることが極めて好適である。すなわちこの場合寿命終了後にフィルタ全体を環境に優しい方式で容易にリサイクルすることができる。
【0026】
上述した全てのフィルタ構成形態において、5μmないし200μmの範囲の平均メッシュ幅、好適には20ないし100μmあるいは20ないし80μmの平均メッシュ幅を有するフィルタ組織、特に合成樹脂フィルタ組織からフィルタエレメントを形成することができる。上述したフィルタ袋は、その種のフィルタ組織から大面積で好適に形成することができ、場合によって同一のあるいは異なった材料からなる縁部側の補強帯を備える。
【0027】
合成樹脂フィルタ組織は熱硬化性ポリアミド、特にポリアミド6.6(PA6.6)とすることが好適である。それによって特に100℃(ウェット)における継続熱耐久性を達成することができ、本発明の目的に最適に対応するものとなる。勿論、一般的な環境条件下において充分安定するものであれば、その他の材料を本発明の枠内で使用することもできる。
【0028】
さらに、通常は単層で使用することができる単一繊維組織を使用することが好適である。本発明において極めて適したものは、約80μmの組織厚とそれぞれ50μm±10%の縦および横糸の(平均)メッシュ幅と27%のスクリーン開口面積を有するPA6.6からなる単層で単一繊維のスクリーンクロスの使用であることが判明した。
【0029】
本発明はさらに、バケツとそのバケツ上に固定された本発明に係る方式のフィルタからなる複合体に関する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】注ぎ口フィルタとしてバケツ上に固定可能な固定構造を備えた本発明に係るフィルタの第1の実施例を示した説明図である。
【
図2】注ぎ口フィルタとしてバケツ上に固定可能な固定構造を備えた本発明に係るフィルタの第1の実施例を示した説明図である。
【
図3】注ぎ口フィルタとしてバケツ上に固定可能な固定構造を備えた本発明に係るフィルタの第1の実施例を示した説明図である。
【
図4】注ぎ口フィルタとしてバケツ上に固定可能な固定構造を備えた本発明に係るフィルタの第1の実施例を示した説明図である。
【
図5】注ぎ口フィルタとしてバケツ上に固定可能な固定構造を備えた本発明に係るフィルタの第1の実施例を示した説明図である。
【
図6】注ぎ口フィルタとしてバケツ上に固定可能な固定構造を備えた本発明に係るフィルタの第1の実施例を示した説明図である。
【
図7】本発明に係るフィルタの第2の実施例をバケツとの組み合わせにおいて写実的および概略的に示した説明図である。
【
図8】本発明に係るフィルタの第2の実施例をバケツとの組み合わせにおいて写実的および概略的に示した説明図である。
【
図9】本発明に係るフィルタの第2の実施例をバケツとの組み合わせにおいて写実的および概略的に示した説明図である。
【
図10】本発明に係るフィルタの第2の実施例をバケツとの組み合わせにおいて写実的および概略的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本発明について添付図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0032】
図1ないし
図6には、フィルタ1の上側に設けられた濾過する汚染水用の流入口2を備えていて、フィルタが(好適には)2本の固定爪3からなる固定構造4を備え、それらによってフィルタ1を(適宜に寸法設定された)バケツ6の上縁5に固定可能あるいは支承可能である、本発明に係るフィルタ1の第1の実施例が異なった視野ならびに異なった方向から示されている。このフィルタ1はバケツ6から流出する汚染水用の注ぎ口フィルタとして機能し、流入口2は四角形に形成される。傾斜したバケツ6から
図2の矢印Pの方向に流出した水は上方の流入口2を介してフィルタ1内に流入し、フィルタ1の下端まで到達する側面7内に設けられたフィルタエレメント8を通過して再びフィルタから流出する。
【0033】
フィルタ1は例えば薄壁状の合成樹脂等の材料から形成することができ、その際バケツ6の窪み部と逆側のフィルタ1の側面7内に適宜に小さなメッシュ幅を有するフィルタ組織からなるフィルタエレメント8を備える。この場合フィルタエレメント8は、例えば50μmの平均メッシュ幅を有するポリアミド6.6製の熱硬化性合成樹脂(スクリーン)組織からなる大面積のフィルタ組織によって形成される。
【0034】
バケツ6の上縁5に取り付けられたフィルタ1が
図3ないし
図6の側面図に示されており、バケツ6の傾斜状態に関わらず実質的に同等に維持される空間中の方向性をフィルタ1が保持するような方式でフィルタ1が揺動式にバケツ6上に固定されるように固定構造4が構成される。フィルタ1上の固定爪3の下方に設けられたストッパ9は、バケツ6が強く傾斜刺した際にバケツ6の先頭側縁部5に当接することによってフィルタ1がバケツ6から脱落することを確実に防止する。
【0035】
フィルタ1の左側および右側に設けられた柔軟性の材料からなる2枚の翼状部材10,11は、バケツ6が直立している際にそのバケツ6に予荷重をもって接合し、またその翼状部材にストッパ要素9が形成されていて、バケツ6を傾斜させた際の揺動式の懸吊の結果フィルタ1が振動した場合に爪3とストッパ要素9の間の空隙を縮小させるように作用する。それによってフィルタ1が常に確実にバケツ6に接して保持される。翼状部材10,11を側方に引き離すことによってそれら翼状部材と固定爪3の間の距離が拡大し、それによってフィルタ1を容易にバケツ6から取り外することができる。
【0036】
図7ないし
図10には、写実的(
図7および
図8)ならびに概略的(
図9および
図10)に本発明に係るフィルタ1の第2の実施例が示されており、本発明の原理に基づいてバケツ6の外側に懸吊して(
図8および
図10参照)バケツ6を傾斜させた際にバケツ6から流出する汚染水を濾過するための注ぎ口フィルタとして機能するような方式で、対応する寸法を有するバケツ6の上縁5上に懸吊可能あるいは固定可能である。
【0037】
このフィルタ1は固定構造4として2本の固定ベルト12,13を備え、フィルタ1をバケツ6の上部あるいは最上部の縁部上(通常バケツの外側に突出している縁部5の直下)に固定するために前記固定ベルト12,13をバケツ6の周りで左側および右側に周回させることができ、フィルタ1と反対側のバケツの領域において前記固定ベルトの自由端部をベルクロ(登録商標)ファスナ14によって相互に結合することができる。両方の固定ベルト12,13の結合を緩い引張力によって実施することにより、所要の目的のために充分に安定したバケツ6上のフィルタ1の固定を達成することができる。
【0038】
さらに、
図7ないし
図10に示されたフィルタ1はフィルタ袋15を備え、その中に濾過すべき水が流入口2を介して流入することができる。図示された実施例においてフィルタ袋15は大面積のフィルタエレメント8として作用するフィルタ組織の2枚のシート16a,16bから形成され、その際フィルタ袋15において異なった辺で接続する両方のシート16a,16bがいずれも縁部領域で補強帯17によって補強される。
【0039】
フィルタ組織からなる両方のシート16a,16bは本発明の原理に基づいて約200μmの長さ/直径を有するマイクロプラスチック粒子あるいは繊維を捕集するために適しており、そのため例えば上述した材料から製造し得るとともに、縁側の補強帯17の領域において相互に結合あるいは縫合される。
【0040】
その際縫合糸、補強帯17、(本実施例において補強帯17の延長として一体的に形成される)固定ベルト12,13、ならびにベルクロ(登録商標)ファスナ14は、フィルタ組織と同じ材料から製造することができる。
【0041】
図7および
図10によってフィルタ袋15が流入口2の領域の対向する2つの側にV字型あるいはV字型に広げることができるリセス18を備えることが明確に示されており、従ってフィルタ1をバケツ6に適正に固定した際に前記リセス18の領域内でバケツ6の上縁5がフィルタ袋15の両方のシート16a,16bの間(あるいは向かい合った縁部の間)に少なくとも部分的に進入し得る。それによってフィルタ袋15のバケツの直ぐ外側に接続するシート16aが(それの上縁部領域まで)バケツ縁部5の下側に位置し、一方フィルタ袋15の逆側のシート16bの上側の縁部断片19(
図8参照)はバケツ縁部から突出することができ、従ってバケツ6を傾斜させた際にバケツ6内に存在する汚染水が殆ど漏れることなく両方のシート16a,16bの間に存在する流入口2を介して上方からフィルタ1内に流入することができる。
【0042】
汚染粒子および特にマイクロプラスチック粒子および繊維は、直径あるいは長さが使用されるフィルタ組織のメッシュ幅を上回る限り、フィルタ袋15を水が通過する際に確実にフィルタ袋15内に捕集される。
【0043】
さらに
図7ないし
図10には、各固定ベルト12,13がそれらの自由端(ベルクロ(登録商標)ファスナの領域)からフィルタ袋15の方向に向かって2本の固定ベルト断片12a,12bあるいは13a,13bにそれぞれ分岐することが明確に示されており、その際各固定ベルト12,13の2本の固定ベルト断片12a,12bあるいは13a,13bがフィルタ袋15のV字型のリセスの異なった脚部に接合するかあるいはそこからフィルタ袋15を形成するフィルタ組織の両方のシート16a,16bのための補強帯17として延伸する。
図9には、各固定ベルト12,13の両方の分岐した固定ベルト断片12a,12bあるいは13a,13bが異なった長さを有することが明確に示されている。
【0044】
さらに
図8には、バケツ6を傾斜させた際にフィルタ袋15の下方に流出する濾過された水が示されている。