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  • 特許-可逆熱変色性複合繊維 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】可逆熱変色性複合繊維
(51)【国際特許分類】
   D01F 8/06 20060101AFI20231106BHJP
   A41G 3/00 20060101ALI20231106BHJP
   A63H 3/00 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
D01F8/06
A41G3/00 A
A63H3/00 V
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020548425
(86)(22)【出願日】2019-09-12
(86)【国際出願番号】 JP2019035849
(87)【国際公開番号】W WO2020066650
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-04-18
(31)【優先権主張番号】P 2018178955
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000111890
【氏名又は名称】パイロットインキ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100206265
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 逸子
(72)【発明者】
【氏名】柴田 敏博
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-242017(JP,A)
【文献】国際公開第2017/187843(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第2014-0120963(KR,A)
【文献】特開2013-223575(JP,A)
【文献】特開2005-097751(JP,A)
【文献】特開2002-129056(JP,A)
【文献】特開平3-174014(JP,A)
【文献】特開2004-339677(JP,A)
【文献】特開平7-126913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F8/00-8/18
A41G3/00
A63H1/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と可逆熱変色性顔料と難燃剤とを含んでなる芯部、及び、
樹脂と難燃剤とを含んでなる鞘部
を具備してなる、芯鞘型の可逆熱変色性複合繊維であって、
前記難燃剤が、リン化合物であり、
芯部に含まれる樹脂及び鞘部に含まれる樹脂が、いずれもポリオレフィン系樹脂であり、かつ
前記可逆熱変色性複合繊維の総質量を基準として、前記難燃剤の配合量が、芯部に1~4質量%、且つ、鞘部に0.2~0.8質量%である、可逆熱変色性複合繊維
【請求項2】
前記可逆熱変色性複合繊維の平均外径が、10~300μmである、請求項1に記載の可逆熱変色性複合繊維。
【請求項3】
前記可逆熱変色性複合繊維の平均長さが、5~600mmである、請求項1又は2に記載の可逆熱変色性複合繊維。
【請求項4】
前記可逆熱変色性複合繊維の断面における芯部:鞘部の面積比が、4:6~7:3である、請求項1~3のいずれか一項に記載の可逆熱変色性複合繊維。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の可逆熱変色性複合繊維を具備してなる頭飾品。
【請求項6】
前記頭飾品が、ヘアーウィッグ又はヘアーエクステンションである、請求項に記載の頭飾品。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の可逆熱変色性複合繊維を具備してなる玩具。
【請求項8】
前記玩具が、人形、動物形象玩具、ぬいぐるみ、又はそれらの付属品である、請求項7に記載の玩具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可逆熱変色性複合繊維に関する。さらに詳細には、温度変化により可逆的に色変化する可逆熱変色性複合繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱変色性顔料を樹脂中に分散させて形成したフィラメントにより構成された色彩互変性かつらが開示されている(例えば、特許文献1参照)。フィラメントにおいて、難燃剤が、マルチフィラメント中又は芯鞘型複合繊維の芯部中に含まれるが、芯鞘型の複合繊維の場合、芯部を構成する樹脂材料に一度着火すると燃え広がり易く、所望の難燃性を付与することは困難であった。
【0003】
また、複合繊維を人形の毛髪や、人形やヒトのヘアーエクステンションに応用することもある。このような人形の髪型をヘアアレンジするサービスもあり、子どもの遊戯の一つとなっている。さらに、子どもは、子ども自身の髪型をヘアーエクステンションを用いたりして、人形と同じにしてより愛着を深め、人形と遊ぶこともある。子どもが頭髪につけるヘアーエクステンションに用いる繊維は、人形の毛髪に用いる繊維よりも、難燃性が高いことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-242017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、温度変化による可逆的な色変化を有し、且つ、難燃性に優れた可逆熱変色性複合繊維を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による芯鞘型の可逆熱変色性複合繊維は、
樹脂と可逆熱変色性顔料と難燃剤とを含んでなる芯部、及び、
樹脂と難燃剤とを含んでなる鞘部
を具備してなる。
本発明による頭飾品は、前記した可逆熱変色性複合繊維を具備してなる。
本発明による玩具は、前記した可逆熱変色性複合繊維を具備してなる。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、温度変化による可逆的な色変化を有し、且つ、難燃性に優れた安全性の高い可逆熱変色性複合繊維を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に適用する可逆熱変色性顔料の変色挙動を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明による可逆熱変色性複合繊維(以下、複合繊維ということがある)は、
樹脂と可逆熱変色性顔料と難燃剤とを含んでなる芯部、及び、
樹脂と難燃剤とを含んでなる鞘部
を具備してなる芯鞘型の可逆熱変色性複合繊維である。
本発明において、芯部は可逆熱変色性顔料を含み、主として繊維としての形態を保持させ、さらに繊維を発色又は変色させる役割を果たし、鞘部は、主として芯部を保護し、繊維に強度をもたせる役割を果たすものである。
本発明において、芯鞘型とは、芯部の外周の一部又は全部が鞘部に覆われている構造を示し、好ましくは全部が覆われている。複合繊維の断面を観察したとき、芯部及び鞘部が必ずしも同心円状に配置されている必要はなく、断面形状については、円、楕円、三葉形、三角形、四角形、五角形、又は星形等の多角形等が挙げられるが、紡糸性及び加工性から、断面形状が円形であることが好ましい。また、芯鞘型の複合繊維とすることにより、耐光堅牢性、洗濯堅牢性、摩擦堅牢性などの耐久性と、光沢性とを向上させることができる。
【0010】
複合繊維の平均外径は、10~300μmの範囲のものが好ましく、10μm未満の外径では芯部の樹脂に混合する可逆熱変色性顔料の配合量を多くすることが難しく、色変化の視認性が損なわれ易い。一方で300μmを超える外径では繊維としての柔軟性が損なわれ易い。より好ましくは、複合繊維の平均外径は50~150μmである。
本発明による複合繊維の断面における芯部:鞘部の面積比は、4:6~7:3であることが好ましく、面積比が上記の範囲内にあることにより、色変化の視認性及び濃度に優れ、所望の難燃性を有する複合繊維を構成することができる。より好ましくは、芯部:鞘部の面積比は5:5~6:4である。
上記した外径及び断面面積は、光学顕微鏡や電子顕微鏡による断面写真を元に、例えば、画像解析ソフトやプラニメーターで算出できる。なお、繊維の断面形状が円形ではない場合には、断面面積を円の面積とした場合の円の直径を外径とする。また、平均外径とは、単一の繊維の複数箇所における外径の平均に相当する。なお、一般に複合繊維は溶融紡糸により製造されるが、複合繊維紡糸装置の紡糸口金から押し出した樹脂を延伸する工程における、温度や速度などの条件を適宜調整することによって、所望の外径又は平均外径を有する複合繊維を得ることができる。
複合繊維の平均長さは、特に限定されないが、好ましくは5~600mmであり、より好ましくは10~450mmである。
【0011】
本発明による複合繊維を構成する芯部に含まれる樹脂と鞘部に含まれる樹脂は熱可塑性樹脂であり、熱可塑性樹脂として、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレン-エチレンコポリマー、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、エチレン-プロピレンラバー等のポリオレフィン系樹脂、6ナイロン、6,6ナイロン、6,9ナイロン、6,10ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、6-12共重合ナイロン、6,9-12共重合ナイロン、ポリアミドエラストマー等のポリアミド系樹脂、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、飽和脂肪族ポリエステル、ポリエステルエラストマー等のポリエステル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等が挙げられる。これらのうちポリオレフィン系樹脂がコストや紡糸性の観点から好ましく用いられる。芯部と鞘部とは、異なる樹脂を用いることもできるが、芯部と鞘部との密着性に優れ、剥離を防止するために、同じ樹脂を用いることが好ましい。
【0012】
可逆熱変色性顔料としては、(a)電子供与性呈色性有機化合物、(b)電子受容性化合物、(c)(a)成分及び(b)成分の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包してなる可逆熱変色性マイクロカプセル顔料、又は、可逆熱変色性組成物を、熱可塑性又は熱硬化性樹脂中に分散した可逆熱変色性樹脂粒子等が挙げられる。
可逆熱変色性組成物としては、特公昭51-44706号公報、特公昭51-44707号公報、特公平1-29398号公報等に記載された、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅(ΔH)が比較的小さい特性(ΔH=1~7℃)を有する加熱消色型(加熱により消色し、冷却により発色する)の可逆熱変色性組成物を使用することができる。
【0013】
また、特公平4-17154号公報、特開平7-179777号公報、特開平7-33997号公報、特開平8-39936号公報、特開2005-1369号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性(ΔH=8~70℃)を示し、温度変化による発色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、低温域での発色状態、又は、高温域での消色状態を特定温度域で保持できる色彩記憶性を有する加熱消色型(加熱により消色し、冷却により発色する)の可逆熱変色性組成物を使用することができる(図1参照)。
【0014】
可逆熱変色性組成物の色濃度-温度曲線におけるヒステリシス特性について説明する。
図1において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、Aは完全消色状態に達する温度t(以下、完全消色温度と称す)における濃度を示す点であり、Bは消色を開始する温度t(以下、消色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Cは発色を開始する温度t(以下、発色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Dは完全発色状態に達する温度t(以下、完全発色温度と称す)における濃度を示す点である。
変色温度域はtとt間の温度域であり、発色状態と消色状態のいずれかの状態を呈することができ、色濃度の差の大きい領域であるtとtの間の温度域が実質変色温度域である。
また、線分EFの長さが変色のコントラストを示す尺度であり、線分EFの中点を通る線分HGの長さがヒステリシスの程度を示す温度幅(以下、ヒステリシス幅ΔHと記す)であり、このΔH値が小さいと変色前後の両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在しえない。また、ΔH値が大きいと変色前後の各状態の保持が容易となる。
【0015】
以下に(a)、(b)、(c)の各成分について具体的に化合物を例示する。
本発明の(a)成分、即ち電子供与性呈色性有機化合物は、色を決める成分であって、顕色剤である(b)成分に電子を供与し、発色する化合物である。
電子供与性呈色性有機化合物としては、フタリド化合物、フルオラン化合物、スチリノキノリン化合物、ジアザローダミンラクトン化合物、ピリジン化合物、キナゾリン化合物、ビスキナゾリン化合物等が挙げられ、これらのうちフタリド化合物及びフルオラン化合物が好ましい。
フタリド化合物としては、例えば、ジフェニルメタンフタリド化合物、フェニルインドリルフタリド化合物、インドリルフタリド化合物、ジフェニルメタンアザフタリド化合物、フェニルインドリルアザフタリド化合物、及びそれらの誘導体等が挙げられ、これらの中でも、フェニルインドリルアザフタリド化合物及びその誘導体が好ましい。
また、フルオラン化合物としては、例えば、アミノフルオラン化合物、アルコキシフルオラン化合物、及びそれらの誘導体が挙げられる。
以下にこれらの化合物を例示する。
3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、
3-(4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、
3,3-ビス(1-n-ブチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、
3,3-ビス(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-4-アザフタリド、
3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、
3-(2-ヘキシルオキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、
3-〔2-エトキシ-4-(N-エチルアニリノ)フェニル〕-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、
3-(2-アセトアミド-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-プロピルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、
3,6-ビス(ジフェニルアミノ)フルオラン、
3,6-ジメトキシフルオラン、
3,6-ジ-n-ブトキシフルオラン、
2-メチル-6-(N-エチル-N-p-トリルアミノ)フルオラン、
3-クロロ-6-シクロヘキシルアミノフルオラン、
2-メチル-6-シクロヘキシルアミノフルオラン、
2-(2-クロロアミノ)-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、
2-(2-クロロアニリノ)-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、
2-(3-トリフルオロメチルアニリノ)-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-(3-トリフルオロメチルアニリノ)-6-ジペンチルアミノフルオラン、
2-ジベンジルアミノ-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-N-メチルアニリノ-6-(N-エチル-N-p-トリルアミノ)フルオラン、
1,3-ジメチル-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-クロロ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メトキシ-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メチル-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メトキシ-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、
2-キシリジノ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メチル-6-(N-エチル-N-p-トリルアミノ)フルオラン、
1,2-ベンツ-6-ジエチルアミノフルオラン、
1,2-ベンツ-6-(N-エチル-N-イソブチルアミノ)フルオラン、
1,2-ベンツ-6-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)フルオラン、
2-(3-メトキシ-4-ドデコキシスチリル)キノリン、
2-ジエチルアミノ-8-ジエチルアミノ-4-メチルスピロ[5H-[1]ベンゾピラノ[2,3-d]ピリミジン-5,1′(3′H)イソベンゾフラン]-3′-オン、
2-ジ-n-ブチルアミノ-8-ジ-n-ブチルアミノ-4-メチルスピロ[5H-[1]ベンゾピラノ[2,3-d]ピリミジン-5,1′(3′H)イソベンゾフラン]-3′-オン、
2-ジ-n-ブチルアミノ-8-ジエチルアミノ-4-メチルスピロ[5H-[1]ベンゾピラノ[2,3-d]ピリミジン-5,1′(3′H)イソベンゾフラン]-3′-オン、
2-ジ-n-ブチルアミノ-8-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)-4-メチルスピロ[5H-[1]ベンゾピラノ[2,3-d]ピリミジン-5,1′(3′H)イソベンゾフラン]-3′-オン、
2-ジ-n-ブチルアミノ-8-ジ-n-ペンチルアミノ-4-メチルスピロ[5H-[1]ベンゾピラノ[2,3-d]ピリミジン-5,1′(3′H)イソベンゾフラン]-3′-オン、
4,5,6,7-テトラクロロ-3-(4-ジメチルアミノ-2-メトキシフェニル)-3-(1-ブチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン、
4,5,6,7-テトラクロロ-3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン、
4,5,6,7-テトラクロロ-3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-ペンチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン、
4,5,6,7-テトラクロロ-3-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)-3-(1-エチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン、
3′,6′-ビス〔フェニル(2-メチルフェニル)アミノ〕-スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9′-[9H]キサンテン]-3-オン、
3′,6′-ビス〔フェニル(3-メチルフェニル)アミノ〕-スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9′-[9H]キサンテン]-3-オン、
3′,6′-ビス〔フェニル(3-エチルフェニル)アミノ〕-スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9′-[9H]キサンテン]-3-オン、
2,6-ビス(2′-エチルオキシフェニル)-4-(4′-ジメチルアミノフェニル)ピリジン、
2,6-ビス(2′,4′-ジエチルオキシフェニル)-4-(4′-ジメチルアミノフェニル)ピリジン、
2-(4′-ジメチルアミノフェニル)-4-メトキシキナゾリン、
4,4′-エチレンジオキシ-ビス〔2-(4-ジエチルアミノフェニル)キナゾリン〕
等を挙げることができる。
なお、フルオラン類としては、キサンテン環を形成するフェニル基に置換基を有する化合物の他、キサンテン環を形成するフェニル基に置換基を有すると共にラクトン環を形成するフェニル基にも置換基(例えば、メチル基などのアルキル基、塩素原子などのハロゲン原子)を有する青色や黒色を呈する化合物であってもよい。
【0016】
(b)成分、即ち電子受容性化合物は、(a)成分から電子を受け取り、(a)成分の顕色剤として機能する化合物である。
電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群及びその誘導体、偽酸性化合物群〔酸ではないが、組成物中で酸として作用して(a)成分を発色させる化合物群〕、電子空孔を有する化合物群等から選択される化合物があり、これらの中でも活性プロトンを有する化合物群から選択される化合物が好ましい。
活性プロトンを有する化合物及びその誘導体としては、例えばフェノール性水酸基を有する化合物及びその金属塩、カルボン酸及びその金属塩、好ましくは、芳香族カルボン酸、炭素数2~5の脂肪族カルボン酸及びそれらの金属塩、酸性リン酸エステル及びその金属塩、ならびにアゾ-ル系化合物及びその誘導体、1,2,3-トリアゾール及びその誘導体が挙げられ、これらの中でも、有効な熱変色特性を発現させることができることから、フェノール性水酸基を有する化合物が好ましい。
フェノール性水酸基を有する化合物はモノフェノール化合物からポリフェノール化合物まで広く含まれ、さらにビス型、トリス型フェノール等及びフェノール-アルデヒド縮合樹脂等もこれに含まれる。フェノール性水酸基を有する化合物の中でも、少なくともベンゼン環を2以上有するものが好ましい。また、これら化合物は置換基を有していてもよく、置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基、及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン原子等が挙げられる。
活性プロトンを有する化合物の金属塩が含む金属としては、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、ジルコニウム、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、コバルト、スズ、銅、鉄、バナジウム、チタン、鉛、及びモリブデン等が挙げられる。
【0017】
以下に(b)成分の具体例を挙げる。
フェノール、o-クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n-オクチルフェノール、n-ドデシルフェノール、n-ステアリルフェノール、p-クロロフェノール、p-ブロモフェノール、o-フェニルフェノール、p-ヒドロキシ安息香酸n-ブチル、p-ヒドロキシ安息香酸n-オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、4,4-ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘプタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ノナン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-デカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルプロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,3-ジメチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-エチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-エチルヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,7-ジメチルオクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1-フェニル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-へプタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-オクタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ノナン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-デカン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ドデカン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、1,1-ビス〔2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル〕ベンゼン、ビス(2-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、3,3-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ブタン等がある。
フェノール性水酸基を有する化合物が最も有効な熱変色特性を発現させることができるが、芳香族カルボン酸及び炭素数2~5の脂肪族カルボン酸、カルボン酸金属塩、酸性リン酸エステル及びそれらの金属塩、1,2,3-トリアゾール及びその誘導体から選ばれる化合物等であってもよい。
【0018】
(a)、(b)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体の(c)成分について説明する。
(c)成分としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類が挙げられる。
【0019】
さらに、色濃度-温度曲線に関して大きなヒステリシス特性を示して変色し、温度変化に依存して色彩記憶性を与えるためには、特公平4-17154号公報に記載された5℃以上50℃未満のΔT値(融点-曇点)を示すカルボン酸エステル化合物、例えば、分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と炭素数10以上の脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、炭素数6以上の脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールのエステル、炭素数8以上の脂肪酸と分岐脂肪族アルコール又はエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリン等が挙げられる。
【0020】
炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n-ペンチルアルコール又はn-ヘプチルアルコールと炭素数10~16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17~23の脂肪酸エステル化合物も有効である。
具体的には、酢酸n-ペンタデシル、酪酸n-トリデシル、酪酸n-ペンタデシル、カプロン酸n-ウンデシル、カプロン酸n-トリデシル、カプロン酸n-ペンタデシル、カプリル酸n-ノニル、カプリル酸n-ウンデシル、カプリル酸n-トリデシル、カプリル酸n-ペンタデシル、カプリン酸n-ヘプチル、カプリン酸n-ノニル、カプリン酸n-ウンデシル、カプリン酸n-トリデシル、カプリン酸n-ペンタデシル、ラウリン酸n-ペンチル、ラウリン酸n-ヘプチル、ラウリン酸n-ノニル、ラウリン酸n-ウンデシル、ラウリン酸n-トリデシル、ラウリン酸n-ペンタデシル、ミリスチン酸n-ペンチル、ミリスチン酸n-ヘプチル、ミリスチン酸n-ノニル、ミリスチン酸n-ウンデシル、ミリスチン酸n-トリデシル、ミリスチン酸n-ペンタデシル、パルミチン酸n-ペンチル、パルミチン酸n-ヘプチル、パルミチン酸n-ノニル、パルミチン酸n-ウンデシル、パルミチン酸n-トリデシル、パルミチン酸n-ペンタデシル、ステアリン酸n-ノニル、ステアリン酸n-ウンデシル、ステアリン酸n-トリデシル、ステアリン酸n-ペンタデシル、エイコサン酸n-ノニル、エイコサン酸n-ウンデシル、エイコサン酸n-トリデシル、エイコサン酸n-ペンタデシル、ベヘニン酸n-ノニル、ベヘニン酸n-ウンデシル、ベヘニン酸n-トリデシル、ベヘニン酸n-ペンタデシル等が挙げられる。
【0021】
ケトン類としては、総炭素数が10以上の脂肪族ケトン類が有効であり、2-デカノン、3-デカノン、4-デカノン、2-ウンデカノン、3-ウンデカノン、4-ウンデカノン、5-ウンデカノン、2-ドデカノン、3-ドデカノン、4-ドデカノン、5-ドデカノン、2-トリデカノン、3-トリデカノン、2-テトラデカノン、2-ペンタデカノン、8-ペンタデカノン、2-ヘキサデカノン、3-ヘキサデカノン、9-ヘプタデカノン、2-ペンタデカノン、2-オクタデカノン、2-ノナデカノン、10-ノナデカノン、2-エイコサノン、11-エイコサノン、2-ヘンエイコサノン、2-ドコサノン、ラウロン、ステアロン等が挙げられる。
さらに、総炭素数が12~24のアリールアルキルケトン類、例えば、n-オクタデカノフェノン、n-ヘプタデカノフェノン、n-ヘキサデカノフェノン、n-ペンタデカノフェノン、n-テトラデカノフェノン、4-n-ドデカアセトフェノン、n-トリデカノフェノン、4-n-ウンデカノアセトフェノン、n-ラウロフェノン、4-n-デカノアセトフェノン、n-ウンデカノフェノン、4-n-ノニルアセトフェノン、n-デカノフェノン、4-n-オクチルアセトフェノン、n-ノナノフェノン、4-n-ヘプチルアセトフェノン、n-オクタノフェノン、4-n-ヘキシルアセトフェノン、4-n-シクロヘキシルアセトフェノン、4-tert-ブチルプロピオフェノン、n-ヘプタフェノン、4-n-ペンチルアセトフェノン、シクロヘキシルフェニルケトン、ベンジル-n-ブチルケトン、4-n-ブチルアセトフェノン、n-ヘキサノフェノン、4-イソブチルアセトフェノン、1-アセトナフトン、2-アセトナフトン、シクロペンチルフェニルケトン等が挙げられる。
【0022】
エーテル類としては、総炭素数10以上の脂肪族エーテル類が有効であり、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジデシルエーテル、ジウンデシルエーテル、ジドデシルエーテル、ジトリデシルエーテル、ジテトラデシルエーテル、ジペンタデシルエーテル、ジヘキサデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル、デカンジオールジメチルエーテル、ウンデカンジオールジメチルエーテル、ドデカンジオールジメチルエーテル、トリデカンジオールジメチルエーテル、デカンジオールジエチルエーテル、ウンデカンジオールジエチルエーテル等が挙げられる。
【0023】
酸アミド類としては、アセトアミド、プロピオン酸アミド、酪酸アミド、カプロン酸アミド、カプリル酸アミド、カプリン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベンズアミド、カプロン酸アニリド、カプリル酸アニリド、カプリン酸アニリド、ラウリン酸アニリド、ミリスチン酸アニリド、パルミチン酸アニリド、ステアリン酸アニリド、ベヘニン酸アニリド、オレイン酸アニリド、エルカ酸アニリド、カプロン酸N-メチルアミド、カプリル酸N-メチルアミド、カプリン酸N-メチルアミド、ラウリン酸N-メチルアミド、ミリスチン酸N-メチルアミド、パルミチン酸N-メチルアミド、ステアリン酸N-メチルアミド、ベヘニン酸N-メチルアミド、オレイン酸N-メチルアミド、エルカ酸N-メチルアミド、ラウリン酸N-エチルアミド、ミリスチン酸N-エチルアミド、パルミチン酸N-エチルアミド、ステアリン酸N-エチルアミド、オレイン酸N-エチルアミド、ラウリン酸N-ブチルアミド、ミリスチン酸N-ブチルアミド、パルミチン酸N-ブチルアミド、ステアリン酸N-ブチルアミド、オレイン酸N-ブチルアミド、ラウリン酸N-オクチルアミド、ミリスチン酸N-オクチルアミド、パルミチン酸N-オクチルアミド、ステアリン酸N-オクチルアミド、オレイン酸N-オクチルアミド、ラウリン酸N-ドデシルアミド、ミリスチン酸N-ドデシルアミド、パルミチン酸N-ドデシルアミド、ステアリン酸N-ドデシルアミド、オレイン酸N-ドデシルアミド、ジラウリン酸アミド、ジミリスチン酸アミド、ジパルミチン酸アミド、ジステアリン酸アミド、ジオレイン酸アミド、トリラウリン酸アミド、トリミリスチン酸アミド、トリパルミチン酸アミド、トリステアリン酸アミド、トリオレイン酸アミド、コハク酸アミド、アジピン酸アミド、グルタル酸アミド、マロン酸アミド、アゼライン酸アミド、マレイン酸アミド、コハク酸N-メチルアミド、アジピン酸N-メチルアミド、グルタル酸N-メチルアミド、マロン酸N-メチルアミド、アゼライン酸N-メチルアミド、コハク酸N-エチルアミド、アジピン酸N-エチルアミド、グルタル酸N-エチルアミド、マロン酸N-エチルアミド、アゼライン酸N-エチルアミド、コハク酸N-ブチルアミド、アジピン酸N-ブチルアミド、グルタル酸N-ブチルアミド、マロン酸N-ブチルアミド、アジピン酸N-オクチルアミド、アジピン酸N-ドデシルアミド等が挙げられる。
【0024】
また、(c)成分として、下記一般式(1)で示される化合物を用いることもできる。
【化1】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、mは0~2の整数を示し、X、Xのいずれか一方は-(CHOCOR又は-(CHCOOR、他方は水素原子を示し、nは0~2の整数を示し、Rは炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、Y及びYはそれぞれ水素原子、炭素数1~4のアルキル基、メトキシ基、又はハロゲン原子を示し、r及びpはそれぞれ1~3の整数を示す。)
式(1)で示される化合物のうち、Rが水素原子の場合、より広いヒステリシス幅を有する可逆熱変色性組成物が得られるため好適であり、さらにRが水素原子であり、且つ、mが0の場合がより好適である。
なお、式(1)で示される化合物のうち、より好ましくは下記一般式(2)で示される化合物が用いられる。
【化2】
式中のRは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示すが、好ましくは炭素数10~24のアルキル基、さらに好ましくは炭素数12~22のアルキル基である。
式(2)で示される化合物として具体的には、オクタン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ノナン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、デカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ウンデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ドデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、トリデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、テトラデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ペンタデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ヘキサデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ヘプタデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、オクタデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチルを例示できる。
【0025】
さらに、(c)成分として、下記一般式(3)で示される化合物を用いることもできる。
【化3】
(式中、Rは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、m及びnはそれぞれ1~3の整数を示し、X及びYはそれぞれ水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、又はハロゲン原子を示す。)
式(3)で示される化合物として具体的には、オクタン酸1,1-ジフェニルメチル、ノナン酸1,1-ジフェニルメチル、デカン酸1,1-ジフェニルメチル、ウンデカン酸1,1-ジフェニルメチル、ドデカン酸1,1-ジフェニルメチル、トリデカン酸1,1-ジフェニルメチル、テトラデカン酸1,1-ジフェニルメチル、ペンタデカン酸1,1-ジフェニルメチル、ヘキサデカン酸1,1-ジフェニルメチル、ヘプタデカン酸1,1-ジフェニルメチル、オクタデカン酸1,1-ジフェニルメチルを例示できる。
【0026】
さらに、(c)成分として下記一般式(4)で示される化合物を用いることもできる。
【化4】
(式中、Xは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、メトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1~3の整数を示し、nは1~20の整数を示す。)
式(4)で示される化合物としては、マロン酸と2-〔4-(4-クロロベンジルオキシ)フェニル〕エタノールとのジエステル、こはく酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、こはく酸と2-〔4-(3-メチルベンジルオキシ)フェニル〕エタノールとのジエステル、グルタル酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、グルタル酸と2-〔4-(4-クロロベンジルオキシ)フェニル〕エタノールとのジエステル、アジピン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、ピメリン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2-〔4-(3-メチルベンジルオキシ)フェニル〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2-〔4-(4-クロロベンジルオキシ)フェニル〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2-〔4-(2,4-ジクロロベンジルオキシ)フェニル〕エタノールとのジエステル、アゼライン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、セバシン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,10-デカンジカルボン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2-〔4-(2-メチルベンジルオキシ)フェニル〕エタノールとのジエステルを例示できる。
【0027】
さらに、(c)成分として下記一般式(5)で示される化合物を用いることもできる。
【化5】
(式中、Rは炭素数1~21のアルキル基又はアルケニル基を示し、nは1~3の整数を示す。)
式(5)で示される化合物としては、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリン酸とのジエステル、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとウンデカン酸とのジエステル、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとラウリン酸とのジエステル、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとミリスチン酸とのジエステル、1,4-ビス(ヒドロキシメトキシ)ベンゼンと酪酸とのジエステル、1,4-ビス(ヒドロキシメトキシ)ベンゼンとイソ吉草酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンと酢酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとプロピオン酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンと吉草酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプロン酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリル酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリン酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとラウリン酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとミリスチン酸とのジエステルを例示できる。
【0028】
さらに、(c)成分として下記一般式(6)で示される化合物を用いることもできる。
【化6】
(式中、Xは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1~3の整数を示し、nは1~20の整数を示す。)
式(6)で示される化合物としては、こはく酸と2-フェノキシエタノールとのジエステル、スベリン酸と2-フェノキシエタノールとのジエステル、セバシン酸と2-フェノキシエタノールとのジエステル、1,10-デカンジカルボン酸と2-フェノキシエタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2-フェノキシエタノールとのジエステルを例示できる。
【0029】
さらに、(c)成分として下記一般式(7)で示される化合物を用いることもできる。
【化7】
(式中、Rは炭素数4~22のアルキル基、シクロアルキルアルキル基、シクロアルキル基、炭素数4~22のアルケニル基のいずれかを示し、Xは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、nは0又は1を示す。)
式(7)で示される化合物としては、4-フェニル安息香酸デシル、4-フェニル安息香酸ラウリル、4-フェニル安息香酸ミリスチル、4-フェニル安息香酸シクロヘキシルエチル、4-ビフェニル酢酸オクチル、4-ビフェニル酢酸ノニル、4-ビフェニル酢酸デシル、4-ビフェニル酢酸ラウリル、4-ビフェニル酢酸ミリスチル、4-ビフェニル酢酸トリデシル、4-ビフェニル酢酸ペンタデシル、4-ビフェニル酢酸セチル、4-ビフェニル酢酸シクロペンチル、4-ビフェニル酢酸シクロヘキシルメチル、4-ビフェニル酢酸ヘキシル、4-ビフェニル酢酸シクロヘキシルメチルを例示できる。
【0030】
さらに、(c)成分として下記一般式(8)で示される化合物を用いることもできる。
【化8】
(式中、Rは炭素数3~18のアルキル基又は炭素数3~18の脂肪族アシル基を示し、Xは水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1又は2のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、Yは水素原子又はメチル基を示し、Zは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1又は2のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示す。)
式(8)で示される化合物としては、4-ブトキシ安息香酸フェノキシエチル、4-ペンチルオキシ安息香酸フェノキシエチル、4-テトラデシルオキシ安息香酸フェノキシエチル、4-ヒドロキシ安息香酸フェノキシエチルとドデカン酸とのエステル、バニリン酸フェノキシエチルのドデシルエーテルを例示できる。
【0031】
さらに、(c)成分として下記一般式(9)で示される化合物を用いることもできる。
【化9】
(式中、Rは炭素数4~22のアルキル基、炭素数4~22のアルケニル基、シクロアルキルアルキル基、シクロアルキル基のいずれかを示し、Xは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、Yは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、nは0又は1を示す。)
式(9)で示される化合物としては、p-ヒドロキシ安息香酸オクチルの安息香酸エステル、p-ヒドロキシ安息香酸デシルの安息香酸エステル、p-ヒドロキシ安息香酸ヘプチルのp-メトキシ安息香酸エステル、p-ヒドロキシ安息香酸ドデシルのo-メトキシ安息香酸エステル、p-ヒドロキシ安息香酸シクロヘキシルメチルの安息香酸エステルを例示できる。
【0032】
さらに、(c)成分として下記一般式(10)で示される化合物を用いることもできる。
【化10】
(式中、Rは炭素数3~18のアルキル基、炭素数6~11のシクロアルキルアルキル基、炭素数5~7のシクロアルキル基、炭素数3~18のアルケニル基のいずれかを示し、Xは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、Yは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示す。)
式(10)で示される化合物としては、p-ヒドロキシ安息香酸ノニルのフェノキシエチルエーテル、p-ヒドロキシ安息香酸デシルのフェノキシエチルエーテル、p-ヒドロキシ安息香酸ウンデシルのフェノキシエチルエーテル、バニリン酸ドデシルのフェノキシエチルエーテルを例示できる。
【0033】
さらに、(c)成分として下記一般式(11)で示される化合物を用いることもできる。
【化11】
(式中、Rは炭素数3~8のシクロアルキル基又は炭素数4~9のシクロアルキルアルキル基を示し、nは1~3の整数を示す。)
式(11)で示される化合物としては、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとシクロヘキサンカルボン酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとシクロヘキサンプロピオン酸とのジエステル、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとシクロヘキサンプロピオン酸とのジエステルを例示できる。
【0034】
さらに、(c)成分として下記一般式(12)で示される化合物を用いることもできる。
【化12】
(式中、Rは炭素数3~17のアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数5~8のシクロアルキルアルキル基のいずれかを示し、Xは水素原子、炭素数1~5のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、nは1~3の整数を示す。)
式(12)で示される化合物としては、4-フェニルフェノールエチレングリコールエーテルとシクロヘキサンカルボン酸とのジエステル、4-フェニルフェノールジエチレングリコールエーテルとラウリン酸とのジエステル、4-フェニルフェノールトリエチレングリコールエーテルとシクロヘキサンカルボン酸とのジエステル、4-フェニルフェノールエチレングリコールエーテルとオクタン酸とのジエステル、4-フェニルフェノールエチレングリコールエーテルとノナン酸とのジエステル、4-フェニルフェノールエチレングリコールエーテルとデカン酸とのジエステル、4-フェニルフェノールエチレングリコールエーテルとミリスチン酸とのジエステルを例示できる。
【0035】
さらに、(b)電子受容性化合物として炭素数3~18の直鎖又は側鎖アルキル基を有する特定のアルコキシフェノール化合物(特開平11-129623号公報)、特定のヒドロキシ安息香酸エステル(特開2001-105732号公報)、没食子酸エステル(特開2003-253149号公報)等を用いた加熱発色型の可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を適用することもできる。
【0036】
可逆熱変色性組成物は、(a)、(b)、及び(c)成分を必須成分とする相溶体であり、各成分の割合は、濃度、変色温度、変色形態や各成分の種類に左右されるが、一般的に所望の特性が得られる成分比は、(a)成分1に対して、(b)成分0.1~100、好ましくは0.1~50、より好ましくは0.5~20、(c)成分5~200、好ましくは5~100、より好ましくは10~100の範囲である(上記した割合はいずれも質量部である)。
【0037】
マイクロカプセル化は、公知の界面重合法、in Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。さらにマイクロカプセルの表面には、目的に応じてさらに二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与させたり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、内包物:壁膜の質量比が7:1~1:1であることが好ましく、内包物と壁膜の質量比が上記の範囲内にあることにより、発色時の色濃度及び鮮明性の低下を防止することができる。より好ましくは、内包物:壁膜の質量比は6:1~1:1である。
【0038】
可逆熱変色性顔料と、非熱変色性着色剤を併用することにより、有色(1)から有色(2)への互変的色変化を呈する構成となすこともできる。
非熱変色性着色剤は一般的な顔料又は染料が用いられる。
【0039】
本発明による複合繊維において、可逆熱変色性顔料は、複合繊維の総質量を基準として、芯部において、好ましくは0.1~30質量%、より好ましくは0.5~20質量%、さらに好ましくは1~10質量%の範囲で配合される。0.1質量%未満では複合繊維として好適な変色性及び濃度が得られ難く、変色機能を十分に満たすことができ難い。また、30質量%を超えると、変色濃度の顕著な向上は認められ難く、繊維化時に分散不良が発生し易く、紡糸性が悪化することがある。本発明において、鞘部に可逆熱変色性顔料を含むと所望の難燃性が得られ難くなるため、鞘部における可逆熱変色性顔料の配合量は難燃性を損なわない程度に含まれる、又は可逆熱変色性顔料を含まないことが好ましく、具体的には複合繊維の総質量を基準として好ましくは0.3質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満、さらに好ましくは0質量%である。
【0040】
難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、水和金属系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤等が挙げられる。また、必要に応じてアンチモン化合物等の難燃助剤も適宜使用することができる。
ハロゲン系難燃剤としては、塩素化パラフィン、クロレンド酸等の塩素化合物、デカブロモジフェニルエーテル、エチレンビステトラブロモフタルイミド、ヘキサブロモベンゼン等の臭素化合物が挙げられる。
リン系難燃剤としては、ホスフィナイト化合物、ホスホナイト化合物、ホスファイト化合物、ホスフィネート化合物、ホスホネイト化合物、リン酸エステル化合物、含ハロゲンリン酸エステル化合物、縮合リン酸エステル化合物、リン酸エステルアミド化合物、及び有機環状リン化合物等のリン化合物が挙げられる。
水和金属系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物が挙げられる。
窒素系難燃剤としては、グアニジン化合物、メラミンシアヌレート、トリアジン化合物等が挙げられる。
シリコーン系難燃剤としては、シリコーンポリマー等が挙げられる。
無機系難燃剤としては、モリブデン化合物、硼酸亜鉛、スズ酸亜鉛等が挙げられる。
【0041】
これらの難燃剤の中で好ましくはリン化合物であり、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。リン化合物として具体的には、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、クレジルジ2,6-キシレニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、4,4′-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェノールとジフェニルメチルホスホネイトの反応生成物、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等が例示できる。
本発明の実施例においては、リン系難燃剤として、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート):4,4′-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェノールとジフェニルメチルホスホネイトの反応生成物の混合比率が1:3であるリン化合物を用いた。
【0042】
難燃剤は、複合繊維の総質量を基準として、好ましくは、芯部に1~4質量%、且つ、鞘部に0.2~0.8質量%、より好ましくは、芯部に2~4質量%、且つ、鞘部に0.4~0.8質量%の範囲で配合することにより、着火し難く、一度着火した後でも自然鎮火し易い、優れた難燃性を発現する。この挙動は、芯部に含まれる樹脂と鞘部に含まれる樹脂が共にポリオレフィン系樹脂の場合に最も効果的である。
難燃剤の配合量が、芯部に1質量%未満、且つ、鞘部に0.2質量%未満では、一度着火すると燃え広がり易く、所望の難燃性が得られ難い。また、難燃剤の配合量が芯部において4質量%を超える、且つ、鞘部において0.8質量%を超えると、紡糸性を損ない易くなる。
【0043】
また、本発明による複合繊維は、芯部と鞘部とを含むこと、即ち2層構造を有することを必須とするが、芯部と鞘部との間に、さらなる中間層を設けることもできる。このような中間層は、芯部と鞘部との密着性を改善し、剥離を防止するなどの機能を有することができる。また、鞘部と芯部との中間の組成を有する中間層を設けて、繊維の中心から外周に向けて、組成が段階的に変化する構成とすることもできる。
【0044】
芯部及び鞘部には、その他の添加剤を含めることができる。その他の添加剤としては、分散剤、光安定剤、蛍光増白剤、界面活性剤、帯電防止剤、撥水剤、防黴剤、防虫剤、可塑剤、潤滑剤等が挙げられる。
分散剤は、樹脂中に含まれる可逆熱変色性顔料、難燃剤、又は添加剤等の、樹脂に対する分散性を向上させるために含まれ、ワックス類が挙げられる。ワックス類としては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリスチレンワックス、低分子量ポリブテン、液状ポリブタジエン、液状ポリペンタジエン、オリゴエステルアクリレート、ポリアミドオリゴマー、ポリエステルオリゴマー、テトラフロロエチレンワックス、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロオレフィンオリゴマー、シリコーンオリゴマー等が用いられる。本発明の実施例においては、分散剤として、ポリプロピレンワックスを用いた。
光安定剤は、可逆熱変色性顔料の光劣化を防止するために含まれ、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、一重項酸素消光剤、スーパーオキシドアニオン消光剤、オゾン消光剤、可視光線吸収剤、赤外線吸収剤等が挙げられる。
その他の添加剤の配合量は、可逆熱変色性複合繊維の総質量を基準として、より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0045】
本発明による複合繊維は、頭飾品に使用でき、難燃性に優れ、安全性の高い頭飾品を得ることができる。頭飾品としては、特に限定されるものではないが、ヘアーウィッグ又はヘアーエクステンション等が挙げられる。
頭飾品に用いられる複合繊維の平均外径は、好ましくは30~200μm、より好ましくは60~150μmの範囲であり、30μm未満の外径ではハリやコシが低下し、人毛としての風合いが損なわれ易い。一方で200μmを超える外径では触感が粗剛となり易く、毛髪性状を示し難い。
また、頭飾品に用いられる複合繊維の平均長さは、好ましくは150~600mm、より好ましくは300~450mmである。
【0046】
本発明による複合繊維は、玩具に使用でき、難燃性に優れ、安全性の高い玩具を得ることができる。玩具としては、特に限定されるものではないが、可逆熱変色性複合繊維からなる毛髪又は体毛を備えた人形若しくは動物形象玩具、又は、可逆熱変色性複合繊維からなる体毛を備えたぬいぐるみ、又はそれらの付属品等が挙げられる。ここで、付属品には、例えば、人形のヘアーエクステンションが挙げられる。
玩具に用いられる複合繊維の平均外径は、好ましくは30~200μm、より好ましくは50~120μmの範囲であり、30μm未満の外径では繊維が絡まり易い上、柔軟性が過大となり、商品としての見栄えを損ない易い。一方で200μmを超える外径では太くなり過ぎるため毛髪性状を示し難い。
また、玩具に用いられる複合繊維の平均長さは、好ましくは5~350mm、より好ましくは10~300mmである。
【0047】
本発明による複合繊維は、好ましくは、人工毛髪として用いる。人工毛髪は、人形の毛髪や、人形やヒトのヘアーエクステンションとして、用いることができる。これらはヒトの毛髪と同じように、髪型を変化させたりして楽しむことができるとともに、本発明による複合繊維に、手やハケなどの水付着具を用いて冷却したり、お湯などによって熱を与えることによって、色変化を楽しむことができる。このような色変化を繰り返し行える。
【0048】
本発明の複合繊維を用いた製品として、さらに以下のものを例示することができる。
(1)衣類
Tシャツ、トレーナー、ブラウス、ドレス、水着、レインコート、及びスキーウェア等の被服、靴、靴紐等の履物、タオル、ハンカチ、及び風呂敷等の布製身の回り品、手袋、ネクタイ、帽子、スカーフ、マフラー等
(2)屋内装飾品
カーテン、カーテン紐、カーペット、ラグ、テーブル掛け、クッション、椅子張り地、シート、マット等
(3)装飾品
付けまつ毛、付け髭、付け眉毛等
【実施例
【0049】
以下に実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0050】
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(a)成分として、3,3-ビス(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-4-アザフタリド1.0部、(b)成分として、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、(c)成分として、ステアリン酸シクロヘキシルメチル50.0部からなる可逆熱変色性組成物を加温溶解し、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマーを35.0部、助溶剤を40.0部混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で乳化分散し、加温しながら攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、さらに攪拌を続けてマイクロカプセル懸濁液を得た。懸濁液を遠心分離して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を単離した。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、完全発色温度tが14℃、完全消色温度tが38℃であり、温度変化により青色から無色に可逆的に変化した。
【0051】
以下の表1に、実施例及び比較例の可逆熱変色性複合繊維の組成を示した。なお、表中の組成の数値は質量部を示す。
【表1】
【0052】
実施例1
可逆熱変色性複合繊維の作製
上記した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と、分散剤と、リン系難燃剤と、桃色の非熱変色性顔料と、ポリプロピレン-エチレンコポリマー(融点145℃)とを、表1に示した配合量で、エクストルーダーにて200℃で溶融混合して芯部を構成する組成物を得た。
さらに、リン系難燃剤と、ポリプロピレン-エチレンコポリマー(融点145℃)とを、表1に示した配合量で、エクストルーダーにて200℃で溶融混合して鞘部を構成する組成物を得た。
芯部を構成する組成物を芯部成形用押出機に、鞘部を構成する組成物を鞘部成形用押出機にそれぞれ供給し、複合繊維紡糸装置を用いて芯部:鞘部=5:5(面積比)となるように、18孔の吐出口より200℃で紡出し、外径90μmの単糸18本からなる可逆熱変色性複合繊維を得た。
可逆熱変色性複合繊維は38℃以上で桃色、14℃以下で紫色に可逆的に変化し、20℃~33℃の温度域において、上記したいずれかの色を保持することができた。
【0053】
実施例2~7の可逆熱変色性複合繊維は、実施例1と同様の方法で得た。
実施例2~7の可逆熱変色性複合繊維は38℃以上で桃色、14℃以下で紫色に可逆的に変化し、20℃~33℃の温度域において、上記したいずれかの色を保持することができた。
【0054】
比較例1
可逆熱変色性複合繊維の作製
上記した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と、分散剤と、リン系難燃剤と、桃色の非熱変色性顔料と、ポリプロピレン-エチレンコポリマー(融点145℃)とを、表1に示した配合量で、エクストルーダーにて200℃で溶融混合して芯部を構成する組成物を得た。
さらに、ポリプロピレン-エチレンコポリマー(融点145℃)を、表1に示した配合量で、エクストルーダーにて200℃で溶融混合して鞘部を構成する組成物を得た。
芯部を構成する組成物を芯部成形用押出機に、鞘部を構成する組成物を鞘部成形用押出機にそれぞれ供給し、複合繊維紡糸装置を用いて芯部:鞘部=5:5(面積比)となるように、18孔の吐出口より200℃で紡出し、外径90μmの単糸18本からなる可逆熱変色性複合繊維を得た。
可逆熱変色性複合繊維は38℃以上で桃色、14℃以下で紫色に可逆的に変化し、20℃~33℃の温度域において、上記したいずれかの色を保持することができた。
【0055】
比較例2及び3の可逆熱変色性複合繊維は、比較例1と同様の方法で得た。
比較例2及び3の可逆熱変色性複合繊維は38℃以上で桃色、14℃以下で紫色に可逆的に変化し、20℃~33℃の温度域において、上記したいずれかの色を保持することができた。
【0056】
可逆熱変色性複合繊維の評価
実施例1~7及び比較例1~3より得られた可逆熱変色性複合繊維の難燃性及び紡糸性を以下のように評価した。
結果を表2に示した。
【0057】
難燃性試験
長さ10cmの各可逆熱変色性複合繊維20本の片端をテープで留め、試験試料を調製した。同様の方法で、各試験試料を合計10本調製した。試験試料を水平に保持し、ライターで試験試料に着火し、試験試料に着火したことを確認後、ライターを離した。燃焼が停止した場合は、再び試験試料に着火し、着火点から5cm燃焼するまでこの操作を繰り返した。この試験を、10本の試験試料で同様に実施した。試験試料が5cm燃焼するまでの着火回数を記録し、着火回数が2回以下の試験試料の本数に応じて、下記基準で評価した。
A:着火回数が2回以下の試験試料が、10本中3本以下であった。
B:着火回数が2回以下の試験試料が、10本中4~6本であった。
C:着火回数が2回以下の試験試料が、10本中7本以上であった。
【0058】
紡糸性試験
実施例及び比較例に記載した紡糸条件で作製した際の糸切れ、ノズル詰まりの状況から、下記基準で評価した。
A:糸切れ、ノズル詰まりがなく、安定的に紡糸ができた。
B:糸切れ、ノズル詰まりが時折発生するが、紡糸はできた。
C:糸切れ、ノズル詰まりが頻繁に発生し、安定的に紡糸ができなかった。
【0059】
【表2】
【符号の説明】
【0060】
完全発色温度
発色開始温度
消色開始温度
完全消色温度
ΔH ヒステリシス幅
図1