IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ボード・オブ・リージエンツ,ザ・ユニバーシテイ・オブ・テキサス・システムの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】イムノエキソソームおよびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20231106BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231106BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231106BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20231106BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20231106BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20231106BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231106BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231106BHJP
   A61K 47/51 20170101ALI20231106BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20231106BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20231106BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20231106BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20231106BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20231106BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20231106BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20231106BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20231106BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20231106BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20231106BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20231106BHJP
【FI】
C12N5/071
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P31/04
A61P37/02
A61P37/06
A61P35/00
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K47/51
A61K47/46
A61K38/19
A61K47/18
A61K47/12
A61K47/22
A61K47/24
A61P31/00
A61K38/17
A61K38/17 100
A61K35/17
C12N15/12
C12N15/113 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020548698
(86)(22)【出願日】2019-03-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-29
(86)【国際出願番号】 US2019021871
(87)【国際公開番号】W WO2019178113
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-03-08
(31)【優先権主張番号】62/641,523
(32)【優先日】2018-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】カルリ ラグー
(72)【発明者】
【氏名】ルブルー バレリー
【審査官】大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-518212(JP,A)
【文献】Journal of Immunology Research,2016年,Vol.2016, Artcile ID 3623898,pp.1-10,https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4811108/のPDFファイルを参照(上記の引用箇所はPDFファイルのページ数を示す)
【文献】The Journal of Immunology,2013年,Vol.190, No.6,pp.2712-2719,https://journals.aai.org/jimmunol/article/190/6/2712/87211/Dendritic-Cell-Derived-Exosomes-Need-To-ActivateのPDFファイルを参照
【文献】Clin Cancer Res,2018年02月15日,Vol.24, No.4,pp.896-905,https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6126905/のPDFファイルを参照(上記の引用箇所は当該PDFファイルのページ数を示す)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00-28
C12N 15/00-90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その表面にICOSLを含むエキソソームを含む、それを必要とする患者におけるがんの処置での使用のための薬学的組成物であって、養子T細胞療法、抗PD1抗体、抗CTLA-4抗体、抗PD-L1抗体、および/または免疫チェックポイント阻害剤との組み合わせで用いられる、前記薬学的組成物
【請求項2】
前記エキソソームがその表面にCD47をさらに含む、請求項1に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項3】
前記エキソソームの少なくとも50%がその表面に免疫調節分子を含む、請求項1または2に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項4】
前記エキソソームが小胞内タンパク質ペイロードをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項5】
形剤をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項6】
非経口投与用に製剤化されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項7】
静脈内注射用、筋肉内注射用、皮下注射用、または腹腔内注射用に製剤化されている、請求項6に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項8】
抗菌剤をさらに含む、請求項6に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項9】
前記抗菌剤が、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セントリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、エキセチジン、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール、またはチメロサールである、請求項8に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項10】
前記患者において免疫調節を引き起こす、請求項9に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項11】
全身投与用に製剤化されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項12】
前記全身投与が静脈内投与である、請求項11に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項13】
前記患者がヒトである、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項14】
前記エキソソームが前記患者にとって自己由来である、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本願は、2018年3月12日に出願され、全内容が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許仮出願第62/641,523号の優先権恩典を主張する。
【0002】
1.分野
本発明は、全体として、生物学、医学、腫瘍学、および免疫学の分野に関する。さらに詳細には、本発明は免疫調節性エキソソームおよびその治療的使用に関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術の説明
エキソソームを含む細胞外小胞(EV)は、いくつかの生理学的プロセスに関与し、DNA、RNA、およびタンパク質を含有するナノサイズの細胞内コミュニケーションビヒクルである。出現頻度が様々である、エキソソーム上の多くの表面タンパク質は、同定されているが、主として免疫調節性でない。樹状細胞に由来するエキソソームは穏やかな免疫調節活性を有すると突き止められているが、T細胞応答は最小限である。上皮細胞および間葉系細胞から単離されたエキソソームは、一般的に免疫調節性でないが、他の細胞に効率的に結合して侵入する。従って、T細胞を活性化する特異的な能力を有する、エキソソームに基づく免疫調節薬物を開発することが必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
概要
従って、免疫調節分子、例えば、ICOSLおよび/またはOX40Lを表面に有する、エキソソームが本明細書において提供される。一態様では、エキソソームを含み、エキソソームがその表面にペイロードを含み、ペイロードが免疫調節分子である、組成物が本明細書において提供される。一部の局面では、免疫調節分子は、CD80、CD86、PD-L1、PD-L2、HVEM、GAL9、CTLA-4、PD-1、PD-1H、CD160、BTLA、TIM3、KIR、LAG3、A2aR、OX40L、CD27L、CD137L、BAFF、APRIL、CD70、CD40、B7H3、ICOSL、OX40、CD40L、BMCA、TACI、GITR、BAFFR、CD27、CD137、ICOS、および/またはCD28である。一部の局面では、エキソソームはその表面にOX40Lを含む。一部の局面では、エキソソームはその表面にICOSLを含む。様々な局面では、エキソソームはその表面にCD47をさらに含む。一部の局面では、エキソソームの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%はその表面に免疫調節分子を含む。ある特定の局面では、エキソソームは、免疫調節分子を過剰発現する細胞から単離される。一部の局面では、エキソソームは処置を必要とする患者から単離される。
【0005】
一部の局面では、エキソソームは小胞内ペイロードとして治療剤をさらに含む。様々な局面では、治療剤は、治療用タンパク質、抗体(例えば、完全長抗体、モノクローナル抗体、scFv、Fab断片、F(ab’)2、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)、もしくはミニボディ(minibody))、阻害RNA、CRISPR系、または低分子薬物である。一部の局面では、治療用タンパク質は、消失または不活性化が、処置しようとする疾患に関連することが知られているタンパク質、例えば、腫瘍抑制因子、キナーゼ、ホスファターゼ、または転写因子である。一部の局面では、前記抗体は細胞内抗原に結合する。このような細胞内抗原は、タンパク質の活性ががん遺伝子などの細胞増殖および/または生存に必要であるタンパク質である場合がある。場合によっては、前記抗体は抗原の機能を阻止する。場合によっては、前記抗体はタンパク質間相互作用を破壊する。一部の局面では、阻害RNAはsiRNA、shRNA、miRNA、またはプレmiRNAである。様々な局面では、阻害RNAは、例えばがん遺伝子などの、タンパク質の活性がある特定の疾患状態の維持に必要であるタンパク質の発現を阻止する。がん遺伝子が、ある遺伝子の変異型であれば、阻害RNAは変異がん遺伝子の発現を優先的に阻止し、野生型タンパク質を阻止しない可能性がある。一部の局面では、CRISPR系はガイドRNAと、Casエンドヌクレアーゼなどのエンドヌクレアーゼを含む。一部の局面では、低分子薬物はイメージング剤である。一部の局面では、低分子薬物は化学療法剤である。
【0006】
一態様では、本発明の態様のいずれか1つのエキソソームと賦形剤とを含む薬学的組成物が提供される。一部の局面では、前記組成物は非経口投与用に製剤化される。一部の局面では、前記組成物は静脈内注射用、筋肉内注射用、皮下注射用、または腹腔内注射用に製剤化される。一部の局面では、前記組成物は抗菌剤をさらに含む。一部の局面では、抗菌剤は、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セントリミド(centrimide)、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、エキセチジン(exetidine)、イミド尿素(imidurea)、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀(phenlymercuric nitrate)、プロピレングリコール、またはチメロサールである。
【0007】
一態様では、それを必要とする患者において疾患を処置する方法であって、本発明の態様のいずれか1つの組成物を患者に投与し、それによって患者において疾患を処置する工程を含む、方法が提供される。一部の局面では、投与によって患者において免疫調節が引き起こされる。一部の局面では、疾患は免疫疾患、がん、感染症、または自己免疫疾患である。一部の局面では、疾患はがんである。一部の局面では、投与は全身投与である。ある特定の局面では、全身投与は静脈内投与である。一部の局面では、前記方法は、少なくとも第2の療法を患者に実施する工程をさらに含む。ある特定の局面では、第2の療法は、外科的療法、化学療法、放射線療法、寒冷療法、ホルモン療法、免疫療法、免疫チェックポイント遮断、またはサイトカイン療法を含む。一部の局面では、第2の抗がん療法は養子T細胞療法、抗PD1抗体、抗CTLA-4抗体、および/または抗PD-L1抗体を含む。一部の局面では、患者はヒトである。一部の局面では、エキソソームは患者にとって自己由来である。
【0008】
一態様では、それを必要とする患者において疾患を処置するための方法であって、治療剤(例えば、タンパク質ペイロード)と共にリポソームまたはエキソソームを電気穿孔する工程および電気穿孔されたリポソームエキソソームを患者に提供し、それによって患者において疾患を処置する工程を含む、方法が提供される。一部の局面では、リポソームまたはエキソソームはその表面に免疫調節分子を含む。一部の局面では、疾患は免疫疾患、がん、感染症、または自己免疫疾患である。一部の局面では、疾患はがんである。一部の局面では、タンパク質ペイロードは、細胞内抗原に特異的または選択的に結合するモノクローナル抗体である。
【0009】
一態様では、それを必要とする患者に治療用タンパク質を投与するための方法であって、治療用タンパク質(例えば、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片)をコードする核酸(例えば、DNAまたはRNA)を、表面に免疫調節分子を含むエキソソームにトランスフェクトする工程、エキソソーム内での治療用タンパク質の発現を可能にする条件下で、トランスフェクトされたエキソソームをインキュベートする工程、およびインキュベートされたエキソソームを患者に提供し、それによって治療用タンパク質を患者に投与する工程を含む、方法が提供される。
【0010】
一態様では、患者における疾患の処置における使用のための、エキソソームを含む組成物であって、エキソソームがその表面にペイロードを含み、ペイロードが免疫調節分子である、エキソソームを含む、組成物が提供される。一部の局面では、免疫調節分子は、CD86、PD-L1、PD-L2、HVEM、GAL9、CTLA-4、PD-1、PD-1H、CD160、CD80、BTLA、TIM3、KIR、LAG3、A2aR、OX40L、CD27L、CD137L、BAFF、APRIL、CD70、CD40、B7H3、ICOSL、OX40、CD40L、BMCA、TACI、GITR、BAFFR、CD27、CD137、ICOS、および/またはCD28である。一部の局面では、エキソソームはその表面にOX40Lを含む。一部の局面では、エキソソームはその表面にICOSLを含む。様々な局面では、エキソソームはその表面にCD47をさらに含む。一部の局面では、エキソソームの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%がその表面に免疫調節分子を含む。一部の局面では、エキソソームは小胞内タンパク質ペイロードをさらに含む。一部の局面では、疾患は免疫疾患、がん、感染症、または自己免疫疾患である。一部の局面では、疾患はがんである。一部の局面では、前記組成物は非経口投与用または全身投与用に製剤化される。一部の局面では、前記組成物は静脈内注射用、筋肉内注射用、皮下注射用、または腹腔内注射用に製剤化される。一部の局面では、前記組成物は抗菌剤をさらに含む。ある特定の局面では、抗菌剤は、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セントリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、エキセチジン、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール、またはチメロサールである。一部の局面では、前記組成物は少なくとも第2の療法をさらに含む。ある特定の局面では、第2の療法は、外科的療法、化学療法、放射線療法、寒冷療法、ホルモン療法、または免疫療法を含む。一部の局面では、患者はヒトである。一部の局面では、エキソソームは患者にとって自己由来である。
【0011】
一態様では、疾患を処置するための医薬の製造におけるエキソソームの使用であって、エキソソームがその表面にペイロードを含み、ペイロードが免疫調節分子である、使用が本明細書において提供される。一部の局面では、免疫調節分子は、CD86、PD-L1、PD-L2、HVEM、GAL9、CTLA-4、PD-1、PD-1H、CD160、CD80、BTLA、TIM3、KIR、LAG3、A2aR、OX40L、CD27L、CD137L、BAFF、APRIL、CD70、CD40、B7H3、ICOSL、OX40、CD40L、BMCA、TACI、GITR、BAFFR、CD27、CD137、ICOS、および/またはCD28である。一部の局面では、エキソソームはその表面にOX40Lを含む。一部の局面では、エキソソームはその表面にICOSLを含む。様々な局面では、エキソソームはその表面にCD47をさらに含む。一部の局面では、エキソソームの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%はその表面に免疫調節分子を含む。一部の局面では、エキソソームは小胞内タンパク質ペイロードをさらに含む。一部の局面では、疾患は免疫疾患、がん、感染症、または自己免疫疾患である。一部の局面では、疾患はがんである。一部の局面では、前記組成物は非経口投与用または全身投与用に製剤化される。一部の局面では、前記組成物は静脈内注射用、筋肉内注射用、皮下注射用、または腹腔内注射用に製剤化される。一部の局面では、前記組成物は抗菌剤をさらに含む。ある特定の局面では、抗菌剤は、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セントリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、エキセチジン、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール、またはチメロサールである。
【0012】
本明細書で使用する「本質的に含まない」とは指定された成分の観点からいうと、指定された成分がどれも、意図を持って組成物中に製剤化されていないこと、および/または単に汚染物質として、もしくは微量に存在することを意味するために本明細書において用いられる。従って、組成物の意図されない汚染に起因する、指定された成分の総量は、0.05%よりかなり少なく、好ましくは0.01%より少ない。指定された成分の量を標準的な分析方法を用いて検出できない組成物が最も好ましい。
【0013】
本明細書で使用する「1つの(a)」または「1つの(an)」とは1つまたは複数を意味することがある。本明細書中の特許請求の範囲において使用する場合、「含む(comprising)」という単語と共に用いられる場合には、「1つの(a)」または「1つの(an)」という単語は1つまたは複数を意味することがある。
【0014】
特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、選択肢だけを指すか、または選択肢が互いに相容れないことを指すと明示されていない限り「および/または」を意味するために用いられるが、この開示は、選択肢だけと「および/または」を指す定義を裏付ける。本明細書で使用する「別の」とは少なくとも第2の、またはそれより多くを意味することがある。
【0015】
本願全体を通して「約」という用語は、ある値が、この値を求めるために用いられている装置、方法の誤差の固有の変動、または試験対象間に存在するばらつきを含むことを示すために用いられる。
【0016】
[本発明1001]
エキソソームを含み、該エキソソームがその表面にペイロードを含み、該ペイロードが免疫調節分子である、組成物。
[本発明1002]
前記免疫調節分子が、CD86、PD-L1、PD-L2、HVEM、GAL9、CTLA-4、PD-1、PD-1H、CD160、CD80、BTLA、TIM3、KIR、LAG3、A2aR、OX40L、CD27L、CD137L、BAFF、APRIL、CD70、CD40、B7H3、ICOSL、OX40、CD40L、BMCA、TACI、GITR、BAFFR、CD27、CD137、ICOS、またはCD28である、本発明1001の組成物。
[本発明1003]
前記免疫調節分子がOX40Lである、本発明1002の組成物。
[本発明1004]
前記免疫調節分子がICOSLである、本発明1002の組成物。
[本発明1005]
前記エキソソームがその表面にCD47をさらに含む、本発明1001~1004のいずれかの組成物。
[本発明1006]
前記エキソソームの少なくとも50%がその表面に免疫調節分子を含む、本発明1001~1005のいずれかの組成物。
[本発明1007]
前記エキソソームの少なくとも60%がその表面に免疫調節分子を含む、本発明1006の組成物。
[本発明1008]
前記エキソソームの少なくとも70%がその表面に免疫調節分子を含む、本発明1007の組成物。
[本発明1009]
前記エキソソームの少なくとも80%がその表面に免疫調節分子を含む、本発明1008の組成物。
[本発明1010]
前記エキソソームの少なくとも90%がその表面に免疫調節分子を含む、本発明1009の組成物。
[本発明1011]
前記エキソソームが小胞内タンパク質ペイロードをさらに含む、本発明1001~1010のいずれかの組成物。
[本発明1012]
本発明1001~1010のいずれかに記載のエキソソームと賦形剤とを含む、薬学的組成物。
[本発明1013]
非経口投与用に製剤化されている、本発明1012の組成物。
[本発明1014]
静脈内注射用、筋肉内注射用、皮下注射用、または腹腔内注射用に製剤化されている、本発明1013の組成物。
[本発明1015]
抗菌剤をさらに含む、本発明1013の組成物。
[本発明1016]
前記抗菌剤が、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セントリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、エキセチジン、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール、またはチメロサールである、本発明1015の組成物。
[本発明1017]
それを必要とする患者において疾患を処置する方法であって、本発明1012~1016のいずれかの組成物を該患者に投与し、それによって該患者において該疾患を処置する工程を含む、該方法。
[本発明1018]
前記投与によって、前記患者において免疫調節が引き起こされる、本発明1017の方法。
[本発明1019]
前記疾患が免疫疾患、がん、感染症、または自己免疫疾患である、本発明1017の方法。
[本発明1020]
前記疾患ががんである、本発明1019の方法。
[本発明1021]
前記投与が全身投与である、本発明1017の方法。
[本発明1022]
前記全身投与が静脈内投与である、本発明1021の方法。
[本発明1023]
少なくとも第2の療法を前記患者に実施する工程をさらに含む、本発明1017の方法。
[本発明1024]
前記第2の療法が、外科的療法、化学療法、放射線療法、寒冷療法、ホルモン療法、免疫療法、またはサイトカイン療法を含む、本発明1023の方法。
[本発明1025]
前記第2の抗がん療法が、養子T細胞療法、抗PD1抗体、抗CTLA-4抗体、および/または抗PD-L1抗体を含む、本発明1024の方法。
[本発明1026]
前記患者がヒトである、本発明1017の方法。
[本発明1027]
前記エキソソームが前記患者にとって自己由来である、本発明1017の方法。
[本発明1028]
患者における疾患の処置における使用のためのエキソソームを含む組成物であって、該エキソソームがその表面にペイロードを含み、該ペイロードが免疫調節分子である、該組成物。
[本発明1029]
前記免疫調節分子が、CD86、PD-L1、PD-L2、HVEM、GAL9、CTLA-4、PD-1、PD-1H、CD160、CD80、BTLA、TIM3、KIR、LAG3、A2aR、OX40L、CD27L、CD137L、BAFF、APRIL、CD70、CD40、B7H3、ICOSL、OX40、CD40L、BMCA、TACI、GITR、BAFFR、CD27、CD137、ICOS、またはCD28である、本発明1028の使用のための組成物。
[本発明1030]
前記免疫調節分子がOX40Lである、本発明1029の使用のための組成物。
[本発明1031]
前記免疫調節分子がICOSLである、本発明1029の使用のための組成物。
[本発明1032]
前記エキソソームがその表面にCD47をさらに含む、本発明1028~1031のいずれかの使用のための組成物。
[本発明1033]
前記エキソソームの少なくとも50%がその表面に免疫調節分子を含む、本発明1028~1032のいずれかの使用のための組成物。
[本発明1034]
前記エキソソームの少なくとも60%がその表面に免疫調節分子を含む、本発明1033の使用のための組成物。
[本発明1035]
前記エキソソームの少なくとも70%がその表面に免疫調節分子を含む、本発明1034の使用のための組成物。
[本発明1036]
前記エキソソームの少なくとも80%がその表面に免疫調節分子を含む、本発明1035の使用のための組成物。
[本発明1037]
前記エキソソームの少なくとも90%がその表面に免疫調節分子を含む、本発明1036の使用のための組成物。
[本発明1038]
前記疾患が免疫疾患、がん、感染症、または自己免疫疾患である、本発明1028の使用のための組成物。
[本発明1039]
前記疾患ががんである、本発明1038の使用のための組成物。
[本発明1040]
非経口投与用に製剤化されている、本発明1028の使用のための組成物。
[本発明1041]
静脈内注射用、筋肉内注射用、皮下注射用、または腹腔内注射用に製剤化されている、本発明1040の使用のための組成物。
[本発明1042]
抗菌剤をさらに含む、本発明1040の使用のための組成物。
[本発明1043]
前記抗菌剤が、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セントリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、エキセチジン、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール、またはチメロサールである、本発明1042の使用のための組成物。
[本発明1044]
少なくとも第2の療法をさらに含む、本発明1028の使用のための組成物。
[本発明1045]
前記第2の療法が、外科的療法、化学療法、放射線療法、寒冷療法、ホルモン療法、または免疫療法を含む、本発明1044の使用のための組成物。
[本発明1046]
前記患者がヒトである、本発明1028の使用のための組成物。
[本発明1047]
前記エキソソームが前記患者にとって自己由来である、本発明1028の使用のための組成物。
[本発明1048]
疾患を処置するための医薬の製造におけるエキソソームの使用であって、該エキソソームがその表面にペイロードを含み、該ペイロードが免疫調節分子である、該使用。
[本発明1049]
前記免疫調節分子が、CD86、PD-L1、PD-L2、HVEM、GAL9、CTLA-4、PD-1、PD-1H、CD160、CD80、BTLA、TIM3、KIR、LAG3、A2aR、OX40L、CD27L、CD137L、BAFF、APRIL、CD70、CD40、B7H3、ICOSL、OX40、CD40L、BMCA、TACI、GITR、BAFFR、CD27、CD137、ICOS、またはCD28である、本発明1048の使用。
[本発明1050]
前記免疫調節分子がOX40Lである、本発明1049の使用。
[本発明1051]
前記免疫調節分子がICOSLである、本発明1049の使用。
[本発明1052]
前記エキソソームがその表面にCD47をさらに含む、本発明1048~1051のいずれかの使用。
[本発明1053]
前記エキソソームの少なくとも50%がその表面に免疫調節分子を含む、本発明1048~1052のいずれかの使用。
[本発明1054]
前記エキソソームの少なくとも60%がその表面に免疫調節分子を含む、本発明1053の使用。
[本発明1055]
前記エキソソームの少なくとも70%がその表面に免疫調節分子を含む、本発明1054の使用。
[本発明1056]
前記エキソソームの少なくとも80%がその表面に免疫調節分子を含む、本発明1055の使用。
[本発明1057]
前記エキソソームの少なくとも90%がその表面に免疫調節分子を含む、本発明1056の使用。
[本発明1058]
前記疾患が免疫疾患、がん、感染症、または自己免疫疾患である、本発明1048の使用。
[本発明1059]
前記疾患ががんである、本発明1058の使用。
[本発明1060]
前記医薬が非経口投与用に製剤化される、本発明1048の使用。
[本発明1061]
前記医薬が全身投与用に製剤化される、本発明1048の使用。
[本発明1062]
前記医薬が、静脈内注射用、筋肉内注射用、皮下注射用、または腹腔内注射用に製剤化される、本発明1060の使用。
[本発明1063]
前記医薬が抗菌剤を含む、本発明1048の使用。
[本発明1064]
前記抗菌剤が、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セントリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、エキセチジン、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール、またはチメロサールである、本発明1063の使用。
本発明の他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明から明らかになる。しかしながら、詳細な説明および具体的な実施例は本発明の、好ましいの態様を示しているが、この詳細な説明から本発明の精神および範囲の中で様々な修正および変更が当業者に明らかになるので例示にすぎないことが理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
以下の図面は本明細書の一部をなし、本発明のある特定の局面をさらに証明するために含まれる。本発明は、これらの図面の1つまたは複数を、本明細書において示された特定の態様の詳細な説明と組み合わせて参照することによってさらに深く理解され得る。
図1】ICOSLG発現プラスミドおよびOX40L発現プラスミドを安定にトランスフェクトされた293T細胞のリアルタイムPCR分析。
図2A】ICOSLG発現プラスミドおよびOX40L発現プラスミドを安定にトランスフェクトされた293T細胞ならびにそれから単離されたエキソソームのウエスタンブロット分析。図2AはICOSLGの発現を示す。
図2B】ICOSLG発現プラスミドおよびOX40L発現プラスミドを安定にトランスフェクトされた293T細胞ならびにそれから単離されたエキソソームのウエスタンブロット分析。図2Bは対照ビンキュリンの発現を示す。
図3-1】ICOSLG発現プラスミドおよびOX40L発現プラスミドを安定にトランスフェクトされた293T細胞ならびにそれから単離されたエキソソームのフローサイトメトリー分析。
図3-2】ICOSLG発現プラスミドおよびOX40L発現プラスミドを安定にトランスフェクトされた293T細胞ならびにそれから単離されたエキソソームのフローサイトメトリー分析。
図4-1】ICOSLG+エキソソームおよびOX40L+エキソソームの活性を求める実験の模式図。
図4-2】ICOSLG+エキソソームおよびOX40L+エキソソームの活性を求める実験の模式図。
図5-1】ナイーブT細胞を用いたT細胞増殖に対するICOSLG+エキソソームの効果のフローサイトメトリー分析。
図5-2】ナイーブT細胞を用いたT細胞増殖に対するICOSLG+エキソソームの効果のフローサイトメトリー分析。
図6-1】担がんマウスに由来する脾臓T細胞を用いたT細胞増殖に対するICOSLG+エキソソームの効果のフローサイトメトリー分析。
図6-2】担がんマウスに由来する脾臓T細胞を用いたT細胞増殖に対するICOSLG+エキソソームの効果のフローサイトメトリー分析。
図7A】ICOSLG+エキソソームおよびOX40L+エキソソームを単独で、および抗CTLA-4と組み合わせて用いた、マウスの腫瘍量に対する様々な処置レジメンの効果の分析。図7Aは、移植後9日目、11日目、13日目、および15日目の各治療群のマウスからの腫瘍量を示す。
図7B】ICOSLG+エキソソームおよびOX40L+エキソソームを単独で、および抗CTLA-4と組み合わせて用いた、マウスの腫瘍量に対する様々な処置レジメンの効果の分析。図7Bは、治療群G1およびG7からのマウスの腫瘍量を経時的に19日まで示す。
図7C】ICOSLG+エキソソームおよびOX40L+エキソソームを単独で、および抗CTLA-4と組み合わせて用いた、マウスの腫瘍量に対する様々な処置レジメンの効果の分析。図7Cは、治療群G2およびG7からのマウスの腫瘍量を経時的に19日まで示す。
図7D】ICOSLG+エキソソームおよびOX40L+エキソソームを単独で、および抗CTLA-4と組み合わせて用いた、マウスの腫瘍量に対する様々な処置レジメンの効果の分析。図7Dは、治療群G3およびG7からのマウスの腫瘍量を経時的に19日まで示す。
図7E】ICOSLG+エキソソームおよびOX40L+エキソソームを単独で、および抗CTLA-4と組み合わせて用いた、マウスの腫瘍量に対する様々な処置レジメンの効果の分析。図7Eは、治療群G4およびG7からのマウスの腫瘍量を経時的に19日まで示す。
図7F】ICOSLG+エキソソームおよびOX40L+エキソソームを単独で、および抗CTLA-4と組み合わせて用いた、マウスの腫瘍量に対する様々な処置レジメンの効果の分析。図7Fは、治療群G5およびG7からのマウスの腫瘍量を経時的に19日まで示す。
図7G】ICOSLG+エキソソームおよびOX40L+エキソソームを単独で、および抗CTLA-4と組み合わせて用いた、マウスの腫瘍量に対する様々な処置レジメンの効果の分析。図7Gは、治療群G6およびG7からのマウスの腫瘍量を経時的に19日まで示す。
図7H】ICOSLG+エキソソームおよびOX40L+エキソソームを単独で、および抗CTLA-4と組み合わせて用いた、マウスの腫瘍量に対する様々な処置レジメンの効果の分析。図7Hは、治療群G3およびG6からのマウスの腫瘍量を経時的に19日まで示す。
図7I】ICOSLG+エキソソームおよびOX40L+エキソソームを単独で、および抗CTLA-4と組み合わせて用いた、マウスの腫瘍量に対する様々な処置レジメンの効果の分析。図7Iは、治療群G1およびG5からのマウスの腫瘍量を経時的に19日まで示す。
図7J】ICOSLG+エキソソームおよびOX40L+エキソソームを単独で、および抗CTLA-4と組み合わせて用いた、マウスの腫瘍量に対する様々な処置レジメンの効果の分析。図7Jは、治療群G4およびG6からのマウスの腫瘍量を経時的に19日まで示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な説明
がんおよび他の疾患での用途がある、適応免疫系を調整する能力を有するエキソソームを作製するための新規の、かつ効率的な方法が本明細書において提供される。概念実証として、ICOSLまたはOX40Lを発現する239T由来エキソソームを作製した。エキソソームを使用して、T細胞活性化特性と抗腫瘍免疫を明確に示すインビトロ活性およびインビボ活性を証明した。これらのimExosomesは、腫瘍免疫を調節するアゴニスト抗体およびアンタゴニスト抗体と同様かもしくはそれよりも優れた特性を有し、免疫系を調節する潜在的な低分子と同様かもしくはそれよりも優れた特性も有して機能することができる次世代免疫調節薬物である。ナイーブT細胞および担がんマウス由来脾臓T細胞をimExosomesICOSLおよびimExosomesOX40Lで処理するとT細胞が活性化され、INF-γおよびIL-2が産生される。imExosomesICOSLおよびimExosomesOX40Lを抗CTLA4と組み合わせて注射しても単独で注射してもB16F10メラノーマ腫瘍が阻害される。このimExosomesプラットフォームには、表面と、免疫系を調整する腔内タンパク質ペイロードがあるエキソソームを作製する能力がある。
【0019】
I.脂質ベースナノ粒子
一部の態様では、脂質ベースナノ粒子は、リポソーム、エキソソーム、脂質調製物、または別の脂質ベースナノ粒子、例えば、脂質ベース小胞(例えば、DOTAP:コレステロール小胞)である。脂質ベースナノ粒子は正に荷電してもよく、負に荷電していてもよく、中性でもよい。
【0020】
B.リポソーム
「リポソーム」は、閉じた脂質二重層または凝集物を生じることで形成された様々な単一膜および多重膜の脂質ビヒクルを含む総称的な用語である。リポソームは、一般的にリン脂質を含む二重層膜がある小胞構造と、一般的に水性組成物を含む内部媒体を有すると特徴付けられることがある。本明細書において提供されるリポソームには、単層リポソーム、多重膜リポソーム、および多胞体リポソーム(multivesicular liposome)が含まれる。本明細書において提供されるリポソームは正に荷電してもよく、負に荷電していてもよく、中性に荷電していてもよい。ある特定の態様では、リポソームは電荷が中性である。
【0021】
多重膜リポソームには、水性媒体によって分けられた複数の脂質層がある。リン脂質を含む脂質が過剰量の水溶液に懸濁されると、このようなリポソームは自発的に形成する。脂質成分は自己再編成した後に、閉じた構造が形成され、脂質二重層の間に水と、溶解した溶質が閉じ込められる。親油性分子または親油性領域を有する分子も脂質二重層に溶解するか、または脂質二重層と結合し得る。
【0022】
特定の局面では、ポリペプチド、核酸、または低分子薬物は、例えば、リポソームの水性内部に入れられてもよく、リポソームの脂質二重層内に分散されてもよく、リポソームとポリペプチド/核酸の両方と結合する連結分子を介してリポソームに付着されてもよく、リポソームの中に閉じ込められてもよく、リポソームと複合体化されてもよい。
【0023】
本態様に従って用いられるリポソームは、当業者に公知なように様々な方法によって作製することができる。例えば、リン脂質、例えば、中性リン脂質ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)をtert-ブタノールに溶解する。次いで、脂質をポリペプチド、核酸、および/または他の成分と混合する。Tween20が組成物の重量の約5%になるようにTween20を脂質混合物に添加する。tert-ブタノールの体積が少なくとも95%になるように、この混合物に過剰なtert-ブタノールを添加する。混合物をボルテックスし、ドライアイス/アセトン浴に入れて凍結し、一晩凍結乾燥する。凍結乾燥した調製物を-20℃で保管し、3ヶ月まで使用することができる。必要な時に、凍結乾燥したリポソームを0.9%食塩水に溶解して再構成する。
【0024】
または、リポソームは、容器、例えば、ガラス梨型フラスコの中で溶媒に溶解して脂質を混合することによって調製することができる。容器の体積は、予想されるリポソーム懸濁液の体積の10倍でなければならない。ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を陰圧下で約40℃で除去する。通常、溶媒は、望ましいリポソーム体積に応じて約5分~2時間以内に除去される。この組成物をデシケーターに入れて減圧下でさらに乾燥することができる。乾燥した脂質は時間の経過につれて劣化する傾向があるので一般的には約1週間後に廃棄する。
【0025】
乾燥した脂質は、脂質膜が全て再懸濁されるまで震盪することで、発熱物質を含まない滅菌水に約25~50mMリン脂質で溶解して水和することができる。次いで、リポソーム水溶液をアリコートに分け、それぞれをバイアルに入れ、凍結乾燥し、減圧下で密封することができる。
【0026】
上記のように調製した、乾燥した脂質または凍結乾燥したリポソームを脱水し、タンパク質またはペプチドの溶液に溶解して再構成し、適切な溶媒、例えば、DPBSを用いて適切な濃度まで希釈し得る。次いで、混合物をボルテックスミキサーに入れて勢いよく震盪させる。ホルモン、薬物、核酸構築物などを含むが、これに限定されない作用物質などの包まれていない、さらなる材料を遠心分離によって29,000×gで除去し、リポソームペレットを洗浄する。洗浄したリポソームを適切な総リン脂質濃度、例えば、約50~200mMで再懸濁する。包まれた、さらなる材料または活性物質の量は標準的な方法に従って求めることができる。リポソーム調製物に包まれた、さらなる材料または活性物質の量を求めた後に、リポソームを適切な濃度で希釈し、使用するまで4℃で保管し得る。リポソームを含む薬学的組成物は、通常、薬学的に許容される滅菌した担体または希釈剤、例えば、水または食塩水を含む。
【0027】
本態様と共に有用であり得る、さらなるリポソームには、カチオン性リポソーム、例えば、WO02/100435A1、米国特許第5,962,016号、米国特許出願第2004/0208921号、WO03/015757A1、WO04029213A2、米国特許第5,030,453号、および米国特許第6,680,068号に記載のカチオン性リポソームが含まれる。これらは全て、免責事項(disclaimer)なく、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0028】
このようなリポソームを調製する際に、本明細書に記載の、または当業者に公知の任意のプロトコールを使用することができる。リポソームを調製するさらなる非限定的な例は、米国特許第4,728,578号、同第4,728,575号、同第4,737,323号、同第4,533,254号、同第4,162,282号、同第4,310,505号、および同第4,921,706号;国際出願PCT/US85/01161および同PCT/US89/05040に記載され、それぞれが参照により本明細書に組み入れられる。
【0029】
ある特定の態様では、脂質ベースナノ粒子は中性リポソーム(例えば、DOPCリポソーム)である。本明細書で使用する「中性リポソーム」または「非荷電リポソーム」は、本質的に中性の実効電荷(実質的に非荷電)を生じる1つまたは複数の脂質成分を有するリポソームと定義される。「本質的に中性」または「本質的に非荷電」とは、ある特定の集団(例えば、リポソームの集団)の中に、もしあれば、いくつかの脂質成分が、別の成分の反対の電荷によって相殺されない電荷を含む(すなわち、成分の10%未満、より好ましくは5%未満、最も好ましくは1%未満が、相殺されていない電荷を含む)ことを意味する。ある特定の態様では、中性リポソームは、大部分は、生理学的条件下(すなわち、約pH7)では、それ自体で中性の脂質および/またはリン脂質を含んでもよい。
【0030】
本態様のリポソームおよび/または脂質ベースナノ粒子はリン脂質を含むことがある。ある特定の態様では、リポソームの作製において1種類のリン脂質が用いられる場合がある(例えば、中性リポソームを作製するために中性リン脂質、例えば、DOPCが用いられる場合がある)。他の態様では、リポソームを作製するために複数種類のリン脂質が用いられる場合がある。リン脂質は中性供給源または合成供給源に由来してもよい。リン脂質には、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、およびホスファチジルエタノールアミンが含まれる。ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルコリンは生理学的条件下(すなわち、約pH7)では非荷電であるので、これらの化合物は中性リポソームを作製するのに特に有用な場合がある。ある特定の態様では、非荷電リポソームを生成するためにリン脂質DOPCが用いられる。ある特定の態様では、リン脂質でない脂質(例えば、コレステロール)が用いられる場合がある。
【0031】
リン脂質にはグリセロリン脂質およびある特定のスフィンゴ脂質が含まれる。リン脂質には、ジオレオイルホスファチジルコリン(「DOPC」)、卵ホスファチジルコリン(「EPC」)、ジラウリロイルホスファチジルコリン(「DLPC」)、ジミリストイルホスファチジルコリン(「DMPC」)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(「DPPC」)、ジステアロイルホスファチジルコリン(「DSPC」)、1-ミリストイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン(「MPPC」)、1-パルミトイル-2-ミリストイルホスファチジルコリン(「PMPC」)、1-パルミトイル-2-ステアロイルホスファチジルコリン(「PSPC」)、1-ステアロイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン(「SPPC」)、ジラウリロイルホスファチジルグリセロール(「DLPG」)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(「DPPG」)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(「DSPG」)、ジステアロイルスフィンゴミエリン(「DSSP」)、ジステアロイルホファチジルエタノールアミン(distearoylphophatidylethanolamine)(「DSPE」)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(「DOPG」)、ジミリストイルホスファチジン酸(「DMPA」)、ジパルミトイルホスファチジン酸(「DPPA」)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(「DMPE」)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(「DPPE」)、ジミリストイルホスファチジルセリン(「DMPS」)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(「DPPS」)、脳ホスファチジルセリン(「BPS」)、脳スフィンゴミエリン(「BSP」)、ジパルミトイルスフィンゴミエリン(「DPSP」)、ジミリストイルホスファチジルコリン(「DMPC」)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(「DAPC」)、1,2-ジアラキドイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(「DBPC」)、1,2-ジエイコセノイル(dieicosenoyl)-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(「DEPC」)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(「DOPE」)、パルミトイルオエオイル(palmitoyloeoyl)ホスファチジルコリン(「POPC」)、パルミトイルオエオイルホスファチジルエタノールアミン(「POPE」)、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、およびジリノレオイルホスファチジルコリンが含まれるが、これに限定されない。
【0032】
C.エキソソーム
「細胞外小胞」および「EV」は、クラスとして、エキソソーム、エキソソーム様小胞、エクトソーム(原形質膜から直接生じた小胞の出芽に起因する)、微粒子、マイクロベシクル、分泌マイクロベシクル(shedding microvesicle)(SMV)、ナノ粒子を含み、(大きな)アポトーシスブレブ(apoptotic bleb)もしくはアポトーシス小体(細胞死に起因する)または膜粒子でさえも含む、細胞に由来し、かつ細胞から分泌されたマイクロベシクルである。
【0033】
本明細書で使用する「マイクロベシクル」および「エキソソーム」という用語は、直径(または粒子がスフェロイドでない場合は最大の寸法)が約10nm~約5000nm、より典型的には30nm~1000nm、最も典型的には約50nm~750nmであり、エキソソームの膜の少なくとも一部が細胞から直接得られている膜状粒子を指す。最も一般的には、エキソソームのサイズ(平均直径)はドナー細胞のサイズの5%までである。従って、特に意図されるエキソソームには、細胞から脱落したエキソソームが含まれる。
【0034】
エキソソームは、例えば、体液などの任意の適切な試料タイプの中に検出されてもよく、任意の適切な試料タイプから単離されてもよい。本明細書で使用する「単離された」という用語は、天然環境から分離することを指し、少なくとも部分的な精製を含むことが意図され、大幅な精製を含む場合がある。本明細書で使用する「試料」という用語は、本発明によって提供される方法に適した任意の試料を指す。前記試料は、検出または単離に適したエキソソームを含む任意の試料でよい。試料の供給源には、血液、骨髄、胸膜液、腹水、脳脊髄液、尿、唾液、羊水、悪性腹水、気管支肺胞洗浄液、関節液、母乳、汗、涙、滑液、および気管支洗浄液が含まれる。一局面では、前記試料は、例えば、全血またはその任意の画分もしくは成分を含む、血液試料である。本発明と使用するのに適した血液試料は、血球またはその成分を含む公知の任意の供給源、例えば、静脈、動脈、末梢、組織、帯(cord)などから抽出することができる。例えば、試料は、周知の、かつ日常的な臨床方法(例えば、全血を採取および処理するための手法)を用いて入手および処理することができる。一局面では、例示的な試料は、がんがある対象から採取された末梢血でもよい。
【0035】
エキソソームはまた、組織試料、例えば、手術試料、生検試料、組織、糞便、および培養細胞からも単離されてよい。組織供給源からエキソソームを単離する場合に、単一細胞懸濁液を入手し、その後に細胞を溶解してエキソソームを放出するために組織をホモジナイズすることが必要な場合がある。組織試料からエキソソームを単離する場合に、エキソソームを破壊しないホモジナイゼーションおよび溶解の手法を選択することが重要である。本明細書において意図されるエキソソームは、好ましくは、生理学的に許容される溶液、例えば、緩衝食塩水、増殖培地、様々な水性媒体などに溶解した体液から単離される。
【0036】
エキソソームは、新鮮に収集された試料から単離されてもよく、凍結または冷蔵されて保管されていた試料から単離されてもよい。一部の態様では、エキソソームは細胞培養培地から単離されてもよい。必要ではないが、試料から破片を除去するために、流体試料が、体積排除(volume-excluding)ポリマーを用いた沈殿前に清澄化されれば、さらに高純度のエキソソームが得られる場合がある。清澄化方法には、遠心分離、超遠心、濾過、または限外濾過が含まれる。最も典型的には、エキソソームは、当技術分野において周知の非常に多くの方法によって単離することができる。好ましい方法の1つは、体液または細胞培養上清からの分画遠心である。エキソソーム単離の例示的な方法は、(Losche et al., 2004; Mesri and Altieri, 1998; Morel et al., 2004)に記載されている。または、エキソソームはまた、(Combes et al., 1997)に記載のようにフローサイトメトリーでも単離されることがある。
【0037】
エキソソームを単離するための一般に受け入れられているプロトコールの1つには、比較的低い密度のエキソソームを浮かべるためにスクロース密度勾配またはスクロースクッションと組み合わされることが多い超遠心が含まれる。連続分画遠心によるエキソソームの単離は、他のマイクロベシクルまたは巨大分子複合体とサイズ分布が重複する可能性があるために複雑になる。さらに、遠心分離は、サイズに基づいて小胞を分離する不十分な手段を提供することがある。しかしながら、連続遠心分離がスクロース勾配超遠心と組み合わされるとエキソソームを高度に濃縮することができる。
【0038】
超遠心経路に代わるものを用いるサイズに基づいたエキソソームの単離が別の選択肢である。超遠心よりも時間がかからず、特別な装置を必要としない、限外濾過法を用いた首尾良いエキソソーム精製が報告されている。同様に、流体を動かす陽圧を用いて、あるマイクロフィルターで細胞、血小板、および細胞破片を除去し、第2のマイクロフィルターに30nmよりも大きな小胞を捕獲する市販のキット(EXOMIR(商標), Bioo Scientific)を利用することができる。しかしながら、このプロセスの場合、エキソソームは回収されず、そのRNA内容物は、第2のマイクロフィルターに捕らえた材料から直接抽出され、次いで、PCR分析に使用することができる。HPLCベースのプロトコールを用いた場合、これらのプロセスは専用の装置を必要とし、スケールアップすることが難しいが、潜在的には高純度のエキソソームを得ることができるだろう。重大な問題は、血液と細胞培養培地が両方とも、エキソソームと同じサイズ範囲の多数のナノ粒子(一部は非小胞)を含有することである。例えば、エキソソームではなく細胞外タンパク質複合体の中に、いくらかのmiRNAが含まれることがある。しかしながら、プロテアーゼ(例えば、プロテイナーゼK)を用いた処理を行って、「エキソソーム外(extraexosomal)」タンパク質による、あらゆる汚染を排除することができる。
【0039】
別の態様では、がん細胞由来エキソソームが、試料のエキソソームを濃縮するのによく用いられる技法、例えば、免疫特異的相互作用が関与する技法(例えば、免疫磁気的捕獲)によって捕獲される場合がある。免疫磁気的捕獲は免疫磁気的細胞分離とも知られ、典型的には、ある特定の細胞タイプの表面に見出されるタンパク質に対して作られた抗体を小さな常磁性ビーズに付着することを伴う。抗体でコーティングしたビーズを血液などの試料と混合すると、ビーズは特定の細胞に付着し、取り囲む。次いで、試料を強力な磁場に配置すると、ビーズが片側でペレット化する。血液を除去した後に、捕獲した細胞はビーズと一緒に保持される。この一般的方法の多くのバリエーションが当技術分野において周知であり、エキソソームを単離するための使用に適している。一例では、エキソソームは磁気ビーズ(例えば、アルデヒド/硫酸塩ビーズ)に付着さられることがあり、次いで、ビーズに付着されたエキソソームの表面上のエピトープを認識させるために、混合物に抗体が添加される。がん細胞由来エキソソーム上に見出されることが分かっている例示的なタンパク質には、ATP-binding cassette sub-family A member 6(ABCA6)、テトラスパニン-4(TSPAN4)、SLIT and NTRK-like protein 4(SLITRK4)、putative protocadherin β-18(PCDHB18)、骨髄性細胞表面抗原CD33(CD33)、およびグリピカン-1(GPC1)が含まれる。がん細胞由来エキソソームは、例えば、これらのタンパク質のうちの1つまたは複数に対する抗体またはアプタマーを用いて単離され得る。
【0040】
本明細書で使用する分析は、エキソソームの直接的または間接的な視覚化を可能にする任意の方法を含み、インビボでもエクスビボでもよい。例えば、分析には、固体支持体に結合したエキソソームの顕微鏡または細胞数測定によるエクスビボ検出および視覚化、フローサイトメトリー、蛍光画像化などが含まれ得るが、これに限定されない。例示的な局面では、がん細胞由来エキソソームは、ATP-binding cassette sub-family A member 6(ABCA6)、テトラスパニン-4(TSPAN4)、SLIT and NTRK-like protein 4(SLITRK4)、putative protocadherin β-18(PCDHB18)、骨髄性細胞表面抗原CD33(CD33)、グリピカン-1(GPC1)、ヒストンH2A 2型-A(HIST1H2AA)、ヒストンH2A 1-A型(HIST1H1AA)、ヒストンH3.3(H3F3A)、ヒストンH3.1(HIST1H3A)、ジンクフィンガータンパク質37ホモログ(ZFP37)、ラミニンサブユニットβ-1(LAMB1)、Tubulointerstitial nephritis antigen-like(TINAGL1)、ペルオキシレデオキシン(Peroxiredeoxin)-4(PRDX4)、コラーゲン α-2(IV)鎖(COL4A2)、推定タンパク質C3P1(C3P1)、ヘミセンチン(Hemicentin)-1 (HMCN1)、Putative rhophilin-2-like protein(RHPN2P1)、Ankyrin repeat domain-containing protein 62(ANKRD62)、Tripartite motif-containing protein 42(TRIM42)、Junction plakoglobin(JUP)、チューブリンβ-2B鎖(TUBB2B)、エンドリボヌクレアーゼダイサー(DICER1)、E3ユビキチン-タンパク質リガーゼTRIM71(TRIM71)、Katanin p60 ATPase-containing subunit A-like 2(KATNAL2)、タンパク質S100-A6(S100A6)、5’-nucleotidase domain-containing protein 3(NT5DC3)、バリン-tRNAリガーゼ(VARS)、カズリン(Kazrin)(KAZN)、ELAV-like protein 4(ELAVL4)、リングフィンガータンパク質166(RNF166)、FERM and PDZ domain-containing protein 1(FRMPD1)、78 kDa glucose-regulated protein(HSPA5)、Trafficking protein particle complex subunit 6A(TRAPPC6A)、スクアレンモノオキシゲナーゼ(SQLE)、Tumor susceptibility gene 101 protein(TSG101)、Vacuolar protein sorting 28 homolog(VPS28)、Prostaglandin F2 receptor negative regulator(PTGFRN)、Isobutyryl-CoA dehydrogenase, mitochondrial(ACAD8)、26S protease regulatory subunit 6B(PSMC4)、伸長因子1-γ(EEF1G)、タイチン(TTN)、チロシン-タンパク質ホスファターゼ13型(PTPN13)、トリオースリン酸イソメラーゼ(TPI1)、もしくはカルボキシペプチダーゼE(CPE)の1つもしくは複数に対して作られた抗体を用いて検出され、その後に、固体支持体に結合され得る、および/または顕微鏡もしくは細胞数測定による検出を用いて視覚化され得る。
【0041】
細胞において発現している全てのタンパク質が、その細胞が分泌したエキソソームに見出されるとは限らないことに留意しなければならない。例えば、カルネキシン、GM130、およびLAMP-2は全て、MCF-7細胞において発現しているタンパク質であるが、MCF-7細胞が分泌したエキソソームには見出されない(Baietti et al., 2012)。別の例として、ある研究から、190/190人の膵管腺がん患者に、健常対照より高いレベルのGPC1+エキソソームがあることが見出された(Melo et al., 2015。その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。注目すべきことに、平均して健常対照の2.3%にしかGPC1+エキソソームがなかった。
【0042】
2.細胞培養物からエキソソームを収集するための例示的なプロトコール
翌日に細胞が約70%コンフルエントになるように、1日目に、10%FBSを含有する培地が入っているT225フラスコに、十分な数の細胞(例えば、約500万個の細胞)を播種する。2日目に、細胞上の培地を吸引し、細胞をPBSで2回洗浄し、次いで、25~30mLの基本培地(すなわち、PenStrepもFBSも無い)を細胞に添加する。細胞を24~48時間インキュベートする。48時間のインキュベーションが好ましいが、細胞株の中には無血清培地に対して感受性が高いものもあり、そのため、インキュベーション時間を24時間に短縮しなければならない。FBSは、NanoSight結果を強くゆがめるエキソソームを含有することに留意のこと。
【0043】
3/4日目に、培地を収集し、死細胞と大きな破片をペレット化するために800×gで室温において5分間遠心分離する。上清を新しいコニカルチューブに移し、他の大きな破片と大きな小胞を除去するために2000×gで10分間、培地を再遠心分離する。培地を0.2μmフィルターに通し、次いで、35mL/チューブを用いて超遠心チューブ(例えば、25×89mm Beckman Ultra-Clear)にアリコートする。1チューブあたりの培地の体積は35mL未満であれば、35mLになるようにチューブの残りをPBSで満たす。SW 32 Tiローター(k-factor 266.7, RCF max 133,907)を用いて、培地を28,000rpmで4℃において2~4時間超遠心する。およそ1インチの液体が残るまで、上清を注意深く吸引する。チューブを傾け、残りの培地を、ゆっくりと吸引ピペットに入れる。所望であれば、エキソソームペレットをPBSで再懸濁し、エキソソーム集団をさらに精製するために28,000rpmの超遠心を1~2時間繰り返すことができる。
【0044】
最後に、エキソソームペレットを210μLのPBSに再懸濁する。各試料について複数の超遠心チューブがあれば、同じ210μL PBSを用いて、それぞれのエキソソームペレットを連続して再懸濁する。各試料について、10μLを採取し、ナノ粒子追跡分析に使用するために990μLのH2Oに添加する。残りの200μLエキソソーム含有懸濁液を下流プロセスに使用するか、または-80℃ですぐに保管する。
【0045】
3.血清試料からエキソソームを抽出するための例示的なプロトコール
最初に、血清試料を氷上で解凍する。次いで、250μLの無細胞血清試料を11mLのPBSで希釈する。0.2μm孔フィルターで濾過する。希釈した試料を150,000×gで4℃において一晩超遠心する。翌日、上清を注意深く捨て、11mL PBSでエキソソームペレットを洗浄する。150,000×gで4℃において2時間、2回目の超遠心を行う。最後に、上清を注意深く捨て、分析のために100μL PBSにエキソソームペレットを再懸濁する。
【0046】
D.エキソソームおよびリポソームを電気穿孔するための例示的なプロトコール
1×108個のエキソソーム(NanoSight分析によって測定した)または100nmリポソーム(例えば、Encapsula Nano Sciencesから購入した)と、1μgのsiRNA(Qiagen)またはshRNAを400μLの電気穿孔緩衝液(1.15mMリン酸カリウム, pH7.2、25mM塩化カリウム、21%Optiprep)に入れて混合する。4mmキュベットを用いてエキソソームまたはリポソームを電気穿孔する(例えば、Alvarez-Erviti et al., 2011; El-Andaloussi et al., 2012を参照されたい)。電気穿孔後に、エキソソームまたはリポソームをプロテアーゼフリーRNアーゼで処理し、その後に10×濃縮RNアーゼ阻害剤を添加する。最後に、前記のように超遠心法下でエキソソームまたはリポソームをPBSで洗浄する。
【0047】
II.免疫調節分子
がんおよび他の疾患での用途がある、適応免疫系を調整する能力を有するエキソソームを作製するための新規の、かつ効率的な方法が本明細書において提供される。このために、表面に免疫調節分子を有するエキソソームを作製する。概念実証として、ICOSLまたはOX40Lを発現する239T由来エキソソームを作製した。これらのエキソソームを使用して、T細胞活性化特性と抗腫瘍免疫を明確に示すインビトロ活性およびインビボ活性を証明した。このimExosomesプラットフォームには、表面と、免疫系を調整する腔内タンパク質ペイロードがあるエキソソームを作製する能力がある。免疫調節分子は免疫応答を増強または阻害する可能性がある。以下の参照文献は免疫チェックポイント調整と様々なリガンド:受容体対について議論しており、全ての目的のために、その全体が参照により本明細書に組み入れられる: Pardoll (2014); Wykes & Lewin (2018); Pico de Coana et al. (2015)。
【0048】
例えば、理論に拘束されるものではないが、免疫細胞の表面に存在する抑制性受容体を介したシグナル伝達を直接刺激するために、免疫抑制性受容体のリガンドを含むエキソソームを用いることによって、抑制分子を介したシグナル伝達を増やすことが望ましい場合がある。エキソソームペイロードとして送達することができる抑制性受容体リガンドの例には、CD80、CD86、PD-L1、PD-L2、HVEM、およびGAL9が含まれるが、それに限定されるわけではない。または、エキソソームペイロードは、下記で議論するように、免疫抑制性受容体のアゴニストとして作用する抗体を含んでもよい。
【0049】
例えば、理論に拘束されるものではないが、免疫抑制性受容体のリガンドのスポンジ(sponge)として作用し、リガンドが免疫細胞の表面に存在する抑制性受容体に結合しないようにするために、免疫抑制性受容体を含むエキソソームを用いることによって、抑制分子を介したシグナル伝達を減らすことが望ましい場合がある。エキソソームペイロードとして送達することができる抑制性受容体の例には、CTLA-4、PD-1、PD-1H、CD160、CD80、BTLA、TIM3、KIR、LAG3、およびA2aRが含まれるが、それに限定されるわけではない。または、エキソソームペイロードは、下記で議論するように、免疫抑制性受容体のアンタゴニストとして作用する抗体を含んでもよく、リガンドに結合し、それによってリガンドがその受容体に結合しないようにする抗体を含んでもよい。
【0050】
例えば、理論に拘束されるものではないが、免疫細胞の表面に存在する刺激性受容体を介したシグナル伝達を直接刺激するために、免疫刺激性受容体のリガンドを含むエキソソームを用いることによって、刺激分子を介したシグナル伝達を増やすことが望ましい場合がある。エキソソームペイロードとして送達することができる刺激性受容体リガンドの例には、OX40L、CD27L、CD137L、BAFF、APRIL、CD70、CD40、B7H3、ICOSL、CD80、およびCD86が含まれるが、それに限定されるわけではない。または、エキソソームペイロードは、下記で議論するように、免疫刺激性受容体のアゴニストとして作用する抗体を含んでもよい。
【0051】
例えば、理論に拘束されるものではないが、免疫刺激性受容体のリガンドのスポンジとして作用し、リガンドが免疫細胞の表面に存在する刺激性受容体に結合しないようにするために、免疫刺激性受容体を含むエキソソームを用いることによって、刺激分子を介したシグナル伝達を減らすことが望ましい場合がある。エキソソームペイロードとして送達することができる刺激性受容体の例の例には、OX40、CD40L、BMCA、TACI、GITR、BAFFR、CD27、CD137、ICOS、およびCD28が含まれるが、それに限定されるわけではない。または、エキソソームペイロードは、下記で議論するように、免疫刺激性受容体のアンタゴニストとして作用する抗体を含んでもよく、リガンドに結合し、それによってリガンドがその受容体に結合しないようにする抗体を含んでもよい。
【0052】
III.疾患の処置
本発明のある特定の局面は、表面に免疫調節分子、例えば、OX40LまたはICOSLを含むエキソソームを用いた、免疫調節を必要とする患者の処置を提供する。免疫調節分子は膜に結合していてもよい。エキソソームは患者において免疫調節を誘導する可能性がある。すなわち、エキソソームは、必要に応じて免疫応答を増強または阻害する可能性がある。従って、免疫応答の調整が望ましい任意の疾患の処置が意図される。例えば、疾患は免疫疾患、がん、感染症、または自己免疫疾患である場合があるが、それに限定されるわけではない。
【0053】
エキソソームの表面の免疫調節分子に加えて、エキソソームはmRNA転写とタンパク質翻訳を完了するのに必要な機構を備えることが知られているので(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、PCT/US2014/068630を参照されたい)、治療用タンパク質をコードするmRNAまたはDNA核酸がトランスフェクションによってエキソソームにトランスフェクトされてもよい。または、治療用タンパク質そのものが電気穿孔によってエキソソームに導入されてもよく、リポソームに直接組み込まれてもよい。
【0054】
本明細書で使用する「対象」とは、本方法が行われる任意の個体または患者を指す。一般的に対象はヒトであるが、当業者に理解されるように、対象は動物でもよい。従って、哺乳動物、例えば、げっ歯類(マウス、ラット、ハムスター、およびモルモットを含む)、ネコ、イヌ、ウサギ、家畜(ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタなどを含む)、および霊長類(サル、チンパンジー、オランウータン、およびゴリラを含む)を含む他の動物が対象の定義の中に含まれる。
【0055】
「処置」および「処置する」とは、対象への治療用物質の投与もしくは適用、または疾患もしくは健康に関連する状態の治療的利益を得ることを目的とした対象への手技もしくはモダリティの遂行を指す。例えば、処置は、その表面にOX40LもしくはICOSLを含むエキソソームの投与、化学療法の実施、免疫療法の実施、もしくは、放射線療法の実施、外科手術の遂行、またはその任意の組み合わせを含んでもよい。
【0056】
本明細書で使用する「治療的利益」または「治療に有効な」という用語は、この状態の医学的処置に関して対象の健康を増進する、または向上させる、どんなものも指す。この用語には、疾患の徴候または症状の頻度または重篤度の低下が含まれるが、これに限定されない。例えば、がんの処置は、例えば、腫瘍の侵襲性の低下、がんの増殖速度の低下、または転移の阻止を含んでもよい。がんの処置はまた、がんを有する対象の生存期間の延長も指すことがある。自己免疫疾患の処置は、例えば、望ましくない免疫応答の原因である自己抗原の寛容を誘導する工程または自己抗原に対する免疫応答を阻害する工程を伴う場合がある。感染症の処置は、例えば、感染因子を排除する工程、感染因子のレベルを低減する工程、または感染因子のレベルをある特定のレベルに維持する工程を伴う場合がある。
【0057】
本明細書で使用する「がん」という用語は、固形腫瘍、転移がん、または非転移がんを説明するために用いられることがある。ある特定の態様では、がんは、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳房、結腸、食道、十二指腸、小腸、大腸、結腸、直腸、肛門、歯肉、頭部、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、頸部、卵巣、膵臓、前立腺、皮膚、胃、精巣、舌、または子宮において生じることがある。
【0058】
がんは、具体的には、以下の組織学的タイプのがん:新生物、悪性;がん腫;がん腫、未分化;巨細胞および紡錘体細胞のがん腫;小細胞がん;乳頭状がん;扁平上皮がん;リンパ上皮がん;基底細胞がん;石灰化上皮腫(pilomatrix carcinoma);移行上皮がん;乳頭状移行上皮がん;腺がん;ガストリノーマ、悪性;胆管がん;肝細胞がん;混合型肝細胞がんおよび胆管がん;小柱腺がん(trabecular adenocarcinoma);腺様嚢胞がん;腺腫性ポリープ内腺がん;腺がん、家族性大腸ポリポーシス;固形がん;カルチノイド腫瘍、悪性;細気管支肺胞(branchiolo-alveolar)腺がん;乳頭状腺がん;色素嫌性がん;好酸性がん(acidophil carcinoma);好酸性腺がん(oxyphilic adenocarcinoma);塩基好性がん;明細胞腺がん;顆粒細胞がん;濾胞腺がん;乳頭状腺がんおよび濾胞腺がん;非被包性硬化性がん(nonencapsulating sclerosing carcinoma);副腎皮質がん;類内膜がん(endometroid carcinoma);皮膚付属器がん;アポクリン腺がん;皮脂腺がん;耳道腺がん(ceruminous adenocarcinoma);粘表皮がん;嚢胞腺がん;乳頭状嚢胞腺がん;乳頭状漿液嚢胞腺がん;粘液性嚢胞腺がん;粘液性腺がん;印環細胞がん;浸潤性導管がん;髄様がん;小葉がん;炎症性がん;パジェット病、乳房;腺房細胞がん;腺扁平上皮がん;扁平上皮化生を伴う腺がん;胸腺腫、悪性;卵巣間質腫、悪性;莢膜細胞腫、悪性;顆粒膜細胞腫、悪性;アンドロブラストーマ、悪性;セルトリ細胞腫;ライディッヒ細胞腫、悪性;脂質細胞腫瘍(lipid cell tumor)、悪性;パラガングリオーマ、悪性;乳房外パラガングリオーマ(extra-mammary paraganglioma)、悪性;クロム親和細胞腫;血管球血管肉腫;悪性黒色腫;無色素性黒色腫;表在拡大型黒色腫;巨大色素性母斑中の悪性黒色腫(malignant melanoma in giant pigmented nevus);類上皮細胞黒色腫;青色母斑、悪性;肉腫;線維肉腫;線維性組織球腫、悪性;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児性横紋筋肉腫;胞巣型横紋筋肉腫;間質性肉腫;混合腫瘍、悪性;ミューラー混合腫瘍;腎芽腫;肝芽腫;がん肉腫;間葉腫、悪性;ブレンナー腫瘍、悪性;葉状腫瘍、悪性;滑膜肉腫;中皮腫、悪性;未分化胚細胞腫;胚性がん腫;テラトーマ、悪性;卵巣甲状腺腫、悪性;絨毛がん;中腎腫、悪性;血管肉腫;血管内皮腫、悪性;カポジ肉腫;血管周囲細胞腫、悪性;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍骨骨肉腫;軟骨肉腫;軟骨芽細胞腫、悪性;間葉性軟骨肉腫;骨巨細胞腫;ユーイング肉腫;歯原性腫瘍、悪性;エナメル芽細胞歯牙肉腫;エナメル上皮腫、悪性;エナメル上皮線維肉腫;松果体腫、悪性;脊索腫;神経膠腫、悪性;上衣腫;星状細胞腫;原形質性星状細胞腫;線維性星状細胞腫;星状芽細胞腫;グリア芽細胞腫;乏突起神経膠腫;乏突起神経膠芽細胞腫;未分化神経外胚葉性;小脳肉腫;神経節芽細胞腫;神経芽細胞腫;網膜芽細胞腫;嗅神経腫瘍;髄膜腫、悪性;神経線維肉腫;神経鞘腫、悪性;顆粒細胞腫瘍、悪性;悪性リンパ腫;ホジキン病(hodgkin's disease);ホジキン病(hodgkin's);側肉芽腫;悪性リンパ腫、小リンパ球性;悪性リンパ腫、びまん性大細胞性;悪性リンパ腫、濾胞性;菌状息肉腫;明記された他の非ホジキンリンパ腫;悪性組織球症;多発性骨髄腫;マスト細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;プラズマ細胞白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞性白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;マスト細胞白血病;巨核芽球性白血病;骨髄肉腫;および毛様細胞性白血病でもよいが、これらに限定されない。それにもかかわらず、本発明はまた、非がん疾患(例えば、真菌感染、細菌感染、ウイルス感染、神経変性疾患、自己免疫疾患、および/または遺伝性障害)を処置するのにも用いられ得る。
【0059】
自己免疫疾患には、対象自身の抗体が宿主組織と反応する自己免疫疾患、または免疫エフェクターT細胞が内因性自己ペプチドと自己反応し、組織を破壊する自己免疫疾患が含まれる。本発明の処置方法が有用な自己免疫疾患には、アジソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、強直性脊椎炎、アテローム性動脈硬化症、自己免疫性糖尿病(例えば、1型糖尿病;インスリン依存性糖尿病)、自己免疫性脳脊髄炎、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝臓疾患、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性甲状腺疾患、水疱性類天疱瘡、セリアック病、クローン病、糸球体腎炎(例えば、半月体形成性糸球体腎炎、増殖性糸球体腎炎)、グッドパスチャー症候群、移植片対宿主病、グレーブス病、宿主対移植片病、特発性自己免疫関連不妊(idiopathic autoimmune-associated infertility)、炎症性腸疾患、インスリン抵抗性、過敏性腸疾患、関節炎(例えば、早期関節炎(early arthritis)、腸疾患に基づく関節炎(enteropathic arthritis)、乾癬性関節炎、反応性関節炎、ウイルス性関節炎)、家族性地中海熱、橋本甲状腺炎、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症(MG)、天疱瘡(例えば、尋常性天疱瘡)、悪性貧血、多発性筋炎、乾癬、慢性関節リウマチ、若年性慢性関節リウマチ、抗コラーゲン抗体を伴う硬皮症、シェーグレン症候群、脊椎関節症、全身性エリテマトーデス(SLE)、移植片拒絶、および潰瘍性大腸炎が含まれるが、それに限定されるわけではない。これらの疾患の診断および処置は文献において十分に記述されている。
【0060】
本発明の処置方法が有用な感染症には、細菌感染症、ウイルス感染症、真菌感染症、寄生生物感染症、および敗血症が含まれるが、それに限定されるわけではない。例示的なウイルス感染症には、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全症ウイルス1、ヒト免疫不全症ウイルス2、ヒトパピローマウイルス、単純ヘルペスウイルス1、単純ヘルペスウイルス2、帯状疱疹、水痘帯状疱疹、コクサッキーウイルスA16、サイトメガロウイルス、エボラウイルス、エンテロウイルス、エプスタイン-バーウイルス、ハンタ(hanta)ウイルス、ヘンドラウイルス、ウイルス性髄膜炎、呼吸器合胞体ウイルス、ロタウイルス、西ナイルウイルス、アデノウイルス、およびインフルエンザウイルス感染症が含まれる。例示的な細菌感染症には、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、大腸菌(Escherichia coli)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borelia burgdorferi)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophilia)、マイコバクテリアの種(Mycobacteria sps)(例えば、結核菌(M.tuberculosis)、M.アビウム(M.avium)、M.イントラセリウイアレ(M.intraceliuiare)、M.カンサイ(M.kansaii)、M.ゴルドナエ(M.gordonae))、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)(A群連鎖球菌)、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)(B群連鎖球菌)、連鎖球菌属(ビリダンス群)、ストレプトコッカス・フェカリス(Streptococcus faecalis)、ストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis)、連鎖球菌属(嫌気種)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、病原性カンピロバクター属(Campylobacter)の種、エンテロコッカス属(Enterococcus)の種、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、コリネバクテリウム属(corynebacterium)の種、ブタ丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)、クロストリジウム・ペルフィンゲルス(Clostridium perfringers)、破傷風菌(Clostridium tetani)、エンテロバクター・エロゲネス(Enterobacter aerogenes)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、パスツレラ・ムルトシダ(Pasturella multocida)、バクテロイデス属(Bacteroides)の種、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、ストレプトバシラス・モニリフォルミス(Streptobacillus moniliformis)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidium)、フランベジアトレポネーマ(Treponema pertenue)、レプトスピラ属(Leptospira)、リケッチア属(Rickettsia)、アクチノマイセス・イスラエリ(Actinomyces israelli)、赤痢菌属(Shigella)の種(例えば、S.フレクスネリ(S.flexneri)、S.ソネイ(S.sonnei)、志賀赤痢菌(S.dysenteriae))、およびサルモネラ属(Salmonella)の種の感染症が含まれる。例示的な真菌感染症には、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、ブラストミセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、およびクラミジア・イラコマティス(Chlamydia irachomatis)の感染症が含まれる。
【0061】
「接触された」および「曝露された」という用語は細胞に適用された時には、治療用物質が標的細胞に送達されるか、または標的細胞とじかに並べて配置されるプロセスを説明するために本明細書において用いられる。細胞を死滅させるために、例えば、1種類または複数種類の作用物質が、細胞を死滅させるか、または細胞の分裂を阻止するのに有効な量で細胞に送達される。
【0062】
患者の有効な応答または処置に対する患者の「応答性」とは、疾患もしくは障害のリスクがある、または疾患もしくは障害に罹患している患者に与えられる臨床的利益または治療的利益を指す。このような利益は、細胞応答または生物学的応答、完全応答、部分応答、安定病態(進行も再発も無い)、または後で再発する応答を含んでもよい。例えば、有効な応答は、がんと診断された患者における腫瘍サイズの縮小または無増悪生存期間でもよい。
【0063】
治療アウトカムは予測およびモニタリングすることがでる、ならびに/またはこのような処置から利益を得る患者は、本明細書に記載の方法によって特定もしくは選択することができる。
【0064】
新生物状態の処置に関して、新生物状態のステージに応じて、新生物状態の処置は、以下の療法:新生物組織を除去するための外科手術、放射線療法、および化学療法の1つまたは組み合わせを伴う。他の治療レジメンが、抗がん剤、例えば、治療用組成物および化学療法剤の投与と組み合わされてもよい。例えば、このような抗がん剤で処置しようとする患者はまた放射線療法も受けてよい、および/または外科手術も受けてもよい。
【0065】
疾患を処置する場合、治療用組成物の適切な投与量は、前記で定義されたような処置しようとする疾患のタイプ、疾患の重篤度および経過、患者の病歴および剤に対する応答、ならびに主治医の判断に左右される。前記剤は、1回で、または一連の処置にわたって患者に適切に投与される。
【0066】
治療的および予防的な方法および組成物は、望ましい効果を実現するのに有効な組み合わせた量で提供することができる。組織、腫瘍、または細胞が、作用物質の1つまたは複数を含む1種類または複数種類の組成物または薬理学的製剤と接触されてもよく、組織、腫瘍、および/または細胞を2つ以上の別個の組成物または製剤と接触させることで接触されてもよい。また、このような併用療法が化学療法、放射線療法、外科的療法、または免疫療法と共に使用できることも意図される。
【0067】
併用投与は、2種類またはそれ以上の剤を同じ剤形の中に入れて同時投与すること、別々の剤形に入れて同時投与すること、および別々に投与することを含んでもよい。すなわち、本治療用組成物と別の治療用物質を同じ剤形の中に入れて一緒に製剤化し、同時投与することができる。または、本治療用組成物と別の治療用物質を同時投与することができ、この場合、両物質とも別々の製剤に存在する。別の選択肢では、治療用物質を投与し、その直後に他の治療用物質を投与することができ、逆もまた同じである。別の投与プロトコールでは、本治療用組成物と別の治療用物質は数分間あけて、または数時間あけて、または数日あけて投与されることがある。
【0068】
第1の抗がん処置(例えば、その表面においてOX40LまたはICOSLを含むエキソソーム)は、第2の抗がん処置の前、第2の抗がん処置の間、第2の抗がん処置の後に、または第2の抗がん処置と比べて様々な組み合わせで実施されてもよい。実施は同時から数分~数日~数週間に及ぶ間隔でもよい。第1の処置が第2の処置とは別に患者に提供される態様では、2種類の化合物が、患者に対して有利に組み合わされた効果を依然として発揮できるように、一般的には、有効な期間がそれぞれの送達の間に終わらないようにするだろう。このような場合、どちらかの療法を実施して約12~24時間以内または72時間以内に、より詳細には、どちらかの療法を実施して約6~12時間以内に、第1の療法および第2の療法が患者に提供され得ることが意図される。状況によっては、処置のための期間を大幅に延ばすことが望ましい場合もある。この場合、それぞれの実施の間の期間は数日(2日、3日、4日、5日、6日、または7日)~数週間(1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、または8週間)である。
【0069】
ある特定の態様では、処置の経過は1~90日またはそれより長く(このような範囲は、その間の日を含む)続く。ある剤が、1日目~90日目の任意の日に(このような範囲は、その間の日を含む)またはその任意の組み合わせで与えられてもよく、別の剤が、1日目~90日目の任意の日に(このような範囲は、その間の日を含む)またはその任意の組み合わせで与えられることが意図される。1日(24時間の期間)の中で、患者には1回または複数回の剤投与が行われてもよい。さらに、処置の経過の後、抗がん処置が実施されない期間があることが意図される。この期間は、患者の状態、例えば、患者の予後、体力、健康状態などに応じて1~7日、および/または1~5週間、および/または1~12ヶ月以上(このような範囲は、その間の日を含む)続くことがある。処置サイクルは必要に応じて繰り返されることが予想される。
【0070】
様々な組み合わせが用いられ得る。下記の例について、第1の抗がん療法が「A」であり、第2の抗がん療法が「B」である。
【0071】
患者への本発明の任意の化合物の投与または本発明の任意の療法の実施は、剤の毒性があればそれを考慮して、このような化合物を投与するための一般的なプロトコールに従う。従って、一部の態様では、併用療法に起因する毒性をモニタリングする工程がある。
【0072】
1.化学療法
多種多様な化学療法剤を本発明に従って使用することができる。「化学療法」という用語は、がんを処置するための薬物の使用を指す。「化学療法剤」は、がんの処置において投与される化合物または組成物を意味するために用いられる。これらの剤または薬物は、細胞内での活性の様式、例えば、細胞周期に影響を及ぼすかどうか、またはどの段階で細胞周期に影響を及ぼすのかによって分類される。または、剤は、DNAを直接架橋する能力、DNAにインターカレートする能力、または核酸合成に影響を及ぼすことで染色体異常および有糸分裂異常を誘導する能力に基づいて特徴付けられることがある。
【0073】
化学療法剤の例には、アルキル化剤、例えば、チオテパおよびシクロスホスファミド(cyclosphosphamide);アルキルスルホナート、例えば、ブスルファン、インプロスルファン、およびピポスルファン;アジリジン、例えば、ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、およびウレドーパ(uredopa);アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド、およびトリメチローロメラミン(trimethylolomelamime)を含む、エチレンイミンおよびメチルアメラミン(methylamelamine);アセトゲニン(特に、ブラタシンおよびブラタシノン(bullatacinone));カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン(callystatin);CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン(carzelesin)、およびビセレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体KW-2189およびCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン(pancratistatin);サルコジクチン(sarcodictyin);スポンギスタチン(spongistatin);ナイトロジェンマスタード、例えば、クロランブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノベムビシン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロホスファミド、およびウラシルマスタード;ニトロスレア(nitrosurea)、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、およびラニムスチン;抗生物質、例えば、エンジイン抗生物質(例えば、カリチアマイシン、特に、カリチアマイシンγlIおよびカリチアマイシンωI1);ディネミシン(dynemicin)Aを含むディネミシン;ビスホスホネート、例えば、クロドロネート;エスペラミシン;ならびにネオカルジノスタチンクロモフォアおよび関連する色素タンパク質エンジイン抗生物質(antiobiotic)クロモフォア、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アウスララニシン(authrarnycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン(carabicin)、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシニス(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、およびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、例えば、マイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ユベニメックス、ジノスタチン、またはゾルビシン;代謝拮抗物質、例えば、メトトレキセートおよび5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えば、デノプテリン、プテロプテリン、トリメトレキセート;プリン類似体、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン;アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、およびテストラクトン;抗副腎剤、例えば、ミトタンおよびトリロスタン;葉酸補充剤、例えば、フォリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジクオン;エルフォルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム;エポシロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン;マイタンシノイド、例えば、マイタンシンおよびアンサミトシン(ansamitocin);ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン(losoxantrone);ポドフィリニック酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK多糖複合体;ラゾキサン;リゾキシン(rhizoxin);シゾフィラン(sizofiran);スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特に、T-2毒素、ベラクリン(verracurin)A、ロリジン(roridin)A、およびアングイジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;タキソイド、例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル、ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;白金配位錯体、例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、およびカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;イリノテカン(例えば、CPT-11);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド、例えば、レチノイン酸;カペシタビン;シスプラチン、カルボプラチン、プロカルバジン、プリコマイシン(plicomycin)、ゲムシタビエン(gemcitabien)、ナベルビン、ファルネシル-タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、トランス白金(transplatinum)、ならびに前記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体が含まれる。
【0074】
2.放射線療法
DNA損傷を引き起こし、広範に用いられてきた他の要因には、γ線、X線、および/または腫瘍細胞への放射性同位体の特異的送達として一般に知られているものが含まれる。マイクロ波、陽子線照射(米国特許第5,760,395号および同第4,870,287号)、ならびにUV照射などの他の形態のDNA損傷因子も意図される。これらの要因が全て、DNA、DNA前駆体、DNAの複製および修復、ならびに染色体の集合および維持に対する広範な損傷に影響を及ぼす可能性が高い。X線の線量範囲は、長期の場合(3~4週間)は50~200レントゲンの1日線量から、2000~6000レントゲンの単回線量まで及ぶ。放射性同位体の線量範囲は多種多様であり、同位体の半減期、放出される放射線の強度およびタイプ、ならびに新生細胞による取り込みによって決まる。
【0075】
3.免疫療法
当業者は、本発明の方法と組み合わせて、または本発明の方法と一緒に、さらなる免疫療法が用いられ得ることを理解する。がん治療の状況では、免疫療法は、一般的に、がん細胞を標的にするおよび破壊するために免疫エフェクター細胞および免疫エフェクター分子の使用に頼る。リツキシマブ(Rituxan(登録商標))は、このような例の1つである。免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞表面上の何らかのマーカーに特異的な抗体でもよい。この抗体だけが療法のエフェクターとして働いてもよく、他の細胞を動員して細胞死滅に実際に影響を及ぼしてもよい。この抗体はまた薬物または毒素(化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)に結合体化されてもよく、単にターゲティング物質として働いてもよい。または、エフェクターは、腫瘍細胞標的と直接的または間接的に相互作用する表面分子を有するリンパ球でもよい。様々なエフェクター細胞には細胞傷害性T細胞およびNK細胞が含まれる。
【0076】
免疫療法の一局面では、腫瘍細胞は、ターゲティングの対象となる、すなわち、他の細胞の大多数に存在しない、何らかのマーカーを有さなければならない。多くの腫瘍マーカーが存在し、これらはどれも、本発明の状況におけるターゲティングに適している可能性がある。一般的な腫瘍マーカーには、CD20、がん胎児抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG-72、HMFG、シアリルルイス抗原、MucA、MucB、PLAP、ラミニン受容体、erbB、およびp155が含まれる。免疫療法の別の局面は、抗がん作用を免疫刺激作用と組み合わせることである。サイトカイン、例えば、IL-2、IL-4、IL-12、GM-CSF、γ-IFN、ケモカイン、例えば、MIP-1、MCP-1、IL-8、および増殖因子、例えば、FLT3リガンドを含む免疫刺激分子も存在する。
【0077】
現在研究中のまたは使用されている免疫療法の例は、免疫アジュバント、例えば、マイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、ジニトロクロロベンゼン、および芳香族化合物(米国特許第5,801,005号および同第5,739,169号; Hui and Hashimoto, 1998; Christodoulides et al., 1998); サイトカイン療法、例えば、インターフェロンα、β、およびγ、IL-1、GM-CSF、ならびにTNF(Bukowski et al., 1998; Davidson et al., 1998; Hellstrand et al., 1998);遺伝子療法、例えば、TNF、IL-1、IL-2、およびp53(Qin et al., 1998; Austin-Ward and Villaseca, 1998; 米国特許第5,830,880号および同第5,846,945号);ならびにモノクローナル抗体、例えば、抗CD20、抗ガングリオシドGM2、および抗p185(Hollander, 2013; Hanibuchi et al., 1998; 米国特許第5,824,311号)である。1種類または複数種類の抗がん療法が本明細書に記載の抗体療法と共に用いられ得ることが意図される。
【0078】
一部の態様では、免疫療法は免疫チェックポイント阻害剤の場合がある。免疫チェックポイントはシグナルを強くするか(例えば、補助刺激分子)、またはシグナルを弱くする。免疫チェックポイント阻害によって標的にされ得る阻害性免疫チェックポイントには、アデノシンA2A受容体(A2AR)、B7-H3(CD276とも知られる)、B and T lymphocyte attenuator(BTLA)、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4。CD152とも知られる)、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、キラー細胞免疫グロブリン(KIR)、lymphocyte activation gene-3(LAG3)、programmed death 1 (PD-1)、T-cell immunoglobulin domain and mucin domain 3(TIM-3)、およびV-domain Ig suppressor of T cell activation(VISTA)が含まれる。特に、免疫チェックポイント阻害剤はPD-1 axisおよび/またはCTLA-4を標的とする。
【0079】
免疫チェックポイント阻害剤は、薬物、例えば、低分子、組換え型のリガンドもしくは受容体の場合があるか、または特に、抗体、例えば、ヒト抗体(例えば、国際特許公報WO2015016718; Pardoll, Nat Rev Cancer, 12(4): 252-64, 2012;両方とも参照により本明細書に組み入れられる)である。既知の免疫チェックポイントタンパク質阻害剤またはその類似体が用いられることがあり、特に、キメラ化型、ヒト化型、またはヒト型の抗体が用いられることがある。当業者が知っているように、本開示において言及された、ある特定の抗体について別の名前および/または同等の名前が用いられることがある。このような別の名前および/または同等の名前は本開示の文脈において交換可能である。例えば、ランブロリズマブはMK-3475およびペンブロリズマブという別の名前および/または同等の名前でも知られていることが分かっている。
【0080】
一部の態様では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1とそのリガンド結合パートナーの結合を阻害する分子である。特定の局面では、PD-1リガンド結合パートナーはPDL1および/またはPDL2である。別の態様では、PDL1結合アンタゴニストは、PDL1とそのリガンド結合パートナーの結合を阻害する分子である。特定の局面では、PDL1結合パートナーはPD-1および/またはB7-1である。別の態様では、PDL2結合アンタゴニストは、PDL2とそのリガンド結合パートナーの結合を阻害する分子である。特定の局面では、PDL2結合パートナーはPD-1である。前記アンタゴニストは抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドでもよい。例示的な抗体は米国特許第8,735,553号、同第8,354,509号、および同第8,008,449号に記載されており、全てが参照により本明細書に組み入れられる。本明細書において提供される方法において使用するための他のPD-1 axisアンタゴニストは、米国特許出願公開第20140294898号、同第2014022021号、および同第20110008369号に記載のように当技術分野において公知であり、これらは全て参照により本明細書に組み入れられる。
【0081】
一部の態様では、PD-1結合アンタゴニストは抗PD-1抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)である。一部の態様では、抗PD-1抗体は、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、およびCT-011からなる群より選択される。一部の態様では、PD-1結合アンタゴニストは、イムノアドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)と融合したPDL1またはPDL2の細胞外部分またはPD-1結合部分を含むイムノアドヘシン)である。一部の態様では、PD-1結合アンタゴニストはAMP-224である。ニボルマブはMDX-1106-04、MDX-1106、ONO-4538、BMS-936558、およびOPDIVO(登録商標)とも知られ、WO2006/121168に記載の抗PD-1抗体である。ペンブロリズマブはMK-3475、Merck3475、ランブロリズマブ、KEYTRUDA(登録商標)、およびSCH-900475とも知られ、WO2009/114335に記載の抗PD-1抗体である。CT-011はhBATまたはhBAT-1とも知られ、WO2009/101611に記載の抗PD-1抗体である。AMP-224はB7-DCIgとも知られ、WO2010/027827およびWO2011/066342に記載のPDL2-Fc融合可溶性受容体である。
【0082】
本明細書において提供される方法において標的にされることができる別の免疫チェックポイントは、CD152とも知られる細胞傷害性Tリンパ球タンパク質4(CTLA-4)である。ヒトCTLA-4の完全cDNA配列はGenbankアクセッション番号L15006を有する。CTLA-4はT細胞表面に見出され、抗原提示細胞の表面上のCD80またはCD86に結合すると「オフ」スイッチとして働く。CTLA4は、ヘルパーT細胞表面に発現し、阻害シグナルをT細胞に伝達する免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである。CTLA4はT細胞補助刺激タンパク質であるCD28に類似し、両分子とも、抗原提示細胞上の、B7-1とも呼ばれるCD80と、B7-2とも呼ばれるCD86に結合する。CTLA4は阻害シグナルをT細胞に伝達するのに対して、CD28は刺激シグナルを伝達する。細胞内CTLA4は調節性T細胞の中にも見出され、その機能にとって重要である可能性がある。T細胞受容体およびCD28を介してT細胞が活性化されると、B7分子に対する抑制性受容体であるCTLA-4の発現が増加する。
【0083】
一部の態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗CTLA-4抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。
【0084】
本方法における使用に適した抗ヒト-CTLA-4抗体(またはそれに由来するVHドメインおよび/もしくはVLドメイン)は、当技術分野において周知の方法を用いて作製することができる。または、当技術分野において認められている抗CTLA-4抗体を使用することができる。例えば、米国特許第8,119,129号、WO01/14424、WO98/42752;WO00/37504(CP675,206、トレメリムマブ;以前はチシリムマブ(ticilimumab)とも知られる)、米国特許第6,207,156号; Hurwitz et al. (1998) Proc Natl Acad Sci USA 95(17): 10067-10071; Camacho et al. (2004) J Clin Oncology 22(145): Abstract No. 2505 (antibody CP-675206);およびMokyr et al. (1998) Cancer Res 58:5301-5304に開示される抗CTLA-4抗体は、本明細書において開示される方法において使用することができる。前述した刊行物のそれぞれの開示は参照により本明細書に組み入れられる。CTLA-4との結合では、これらの当技術分野において認められている任意の抗体と競合する抗体も使用することができる。例えば、ヒト化CTLA-4抗体は、国際特許出願番号WO2001014424、WO2000037504、および米国特許第8,017,114号に記載され、全てが参照により本明細書に組み入れられる。
【0085】
例示的な抗CTLA-4抗体は、イピリムマブ(10D1、MDX-010、MDX-101、およびYervoy(登録商標)とも知られる)またはその抗原結合断片および変種である(例えば、WO01/14424を参照されたい)。他の態様では、前記抗体はイピリムマブの重鎖および軽鎖CDRまたはVRを含む。従って、一態様では、前記抗体は、イピリムマブのVH領域のCDR1、CDR2、およびCDR3ドメインと、イピリムマブのVL領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の態様では、前記抗体は、前述した抗体と同じ、CTLA-4上のエピトープとの結合において競合する、および/または前述した抗体と同じ、CTLA-4上のエピトープに結合する。別の態様では、前記抗体は、上述した抗体と少なくとも約90%の可変領域アミノ酸配列同一性(例えば、イピリムマブと少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%の可変領域同一性)を有する。
【0086】
CTLA-4を調節するための他の分子には、CTLA-4リガンドおよび受容体、例えば、全てが参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5844905号、同第5885796号、ならびに国際特許出願番号WO1995001994およびWO1998042752に記載のCTLA-4リガンドおよび受容体、ならびにイムノアドヘシン、例えば、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第8329867号に記載のイムノアドヘシンが含まれる。
【0087】
一部の態様では、免疫療法は、エクスビボで作製した自己抗原特異的T細胞の移入を伴う養子免疫治療になる場合がある。養子免疫治療に用いられるT細胞は、抗原特異的T細胞を拡大するか、または遺伝子工学によってT細胞をリダイレクション(redirection)することによって作製することができる(Park, Rosenberg et al. 2011)。腫瘍特異的T細胞の単離および移入はメラノーマ治療に成功したことが示されている。T細胞における新規の特異性は、トランスジェニックT細胞受容体またはキメラ抗原受容体(CAR)を遺伝子移入することによって首尾良く生じた(Jena, Dotti et al. 2010)。CARは、1つの融合分子の形で1つまたは複数のシグナル伝達ドメインと結合したターゲティング部分からなる合成受容体である。一般的に、CARの結合部分は、モノクローナル抗体の軽鎖断片および可変断片が可動性リンカーによってつながった単鎖抗体(scFv)の抗原結合ドメインからなる。受容体またはリガンドドメインに基づく結合部分も首尾良く用いられてきた。第1世代CARのシグナル伝達ドメインはCD3ζの細胞質領域またはFc受容体γ鎖に由来する。CARを用いることで、リンパ腫および固形腫瘍を含む様々な新生物に由来する腫瘍細胞の表面に発現している抗原にT細胞は首尾良くリダイレクションされている(Jena, Dotti et al. 2010)。
【0088】
一態様では、本願は、養子T細胞療法およびチェックポイント阻害剤を含む、がんを処置するための併用療法を提供する。一局面では、養子T細胞療法は自己由来および/または同種異系のT細胞を含む。別の局面では、自己由来および/または同種異系のT細胞は腫瘍抗原に対して標的にしている。
【0089】
4.外科手術
がんを有する人の約60%は、予防手術、診断、または進行度診断のための手術、根治的手術、および姑息的手術を含む何らかの種類の外科手術を受ける。根治的手術は、がん組織の全てまたは一部が物理的に除去、切除、および/または破壊される切除を含み、本発明の処置、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子療法、免疫療法、および/または代替療法などの他の療法と共に用いられる場合がある。腫瘍切除とは、腫瘍の少なくとも一部の物理的除去を指す。腫瘍切除に加えて、外科手術による処置は、レーザー手術、凍結手術、電気手術、および顕微鏡的に管理される手術(microscopically-controlled surgery)(モース術)を含む。
【0090】
がんの細胞、組織、または腫瘍の一部または全てを切除すると体内に空洞が形成されることがある。処置は、その領域にさらなる抗がん療法を灌流、直接注射、または局所塗布することによって行われてもよい。このような処置は、例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日、もしくは7日ごとに、または1週間、2週間、3週間、4週間、および5週間ごとに、または1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、または12ヶ月ごとに繰り返されてもよい。これらの処置もまた様々な投与量の処置であり得る。
【0091】
5.他の作用物質
処置の治療有効性を改善するために、本発明のある特定の局面と組み合わせて他の作用物質が用いられ得ることが意図される。これらのさらなる作用物質には、細胞表面受容体およびギャップ結合のアップレギュレーションに影響を及ぼす作用物質、細胞分裂停止物質および分化物質、細胞接着阻害剤、アポトーシス誘導物質に対する過剰増殖性細胞の感受性を高める作用物質、または他の生物学的作用物質が含まれる。ギャップ結合数を増やすことで細胞間シグナル伝達を増大させると、付近の過剰増殖性細胞集団に対する抗過剰増殖作用が増大する。他の態様では、処置の抗過剰増殖有効性を改善するために、細胞分裂停止物質または分化物質は本発明のある特定の局面と組み合わせて使用することができる。細胞接着阻害剤は本発明の有効性を改善することが意図される。細胞接着阻害剤の例は局所接着キナーゼ(FAK)阻害剤およびロバスタチンである。処置有効性を改善するために、アポトーシスに対する過剰増殖性細胞の感受性を高める他の作用物質、例えば、抗体c225を本発明のある特定の局面と併用できることがさらに意図される。
【0092】
IV.薬学的組成物
その表面にOX40LまたはICOSLを含むエキソソームは、腫瘍細胞増殖を阻害するために、最も好ましくは局所進行がんまたは転移がんを有するがん患者のがん細胞を死滅させるために全身投与または局所投与できることが意図される。CRISPRシステムを発現する、または含むエキソソームは静脈内投与、くも膜下腔内投与、および/または腹腔内投与することができる。CRISPRシステムを発現する、または含むエキソソームは単独で投与されてもよく、抗増殖性薬物と組み合わせて投与されてもよい。一態様では、CRISPRシステムを発現する、または含むエキソソームは外科手術または他の処置の前に患者のがん負荷(cancer load)を減らすために投与される。または、CRISPRシステムを発現する、または含むエキソソームは、残存しているがん(例えば、外科手術で除去されなかったがん)が生き残らないことを確かなものにするために外科手術後に投与することができる。
【0093】
本発明が治療用調製物の特定の性質によって制限されることは意図されない。例えば、このような組成物は、生理学的に許容できる液体、ゲル、固体担体、希釈剤、または賦形剤と一緒に製剤の形で提供することができる。これらの治療用調製物は他の治療用物質と同様に獣医学的使用、例えば、家畜を用いた獣医学的使用、およびヒトにおける臨床的使用のために哺乳動物に投与することができる。一般的に、治療有効性に必要とされる投与量は使用のタイプおよび投与方法ならびに個々の対象の特定の要件に従って変化する。
【0094】
臨床適用が意図される場合、意図された用途に適した形で組換えタンパク質および/またはエキソソームを含む薬学的組成物を調製することが必要な場合がある。一般的に、薬学的組成物は非経口製剤でもよく、薬学的に許容される担体に溶解または分散された、有効量の1種類もしくは複数種類の組換えタンパク質および/もしくはエキソソームならびに/またはさらなる作用物質を含んでもよい。「薬学的または薬理学的に許容される」という句は、適宜、例えば、ヒトなどの動物に投与された時に有害な、アレルギー性の、または他の都合悪い反応を生じない分子実体および組成物を指す。本明細書において開示される組換えタンパク質および/もしくはエキソソーム、またはさらなる活性成分を含む薬学的組成物の調製は、その全体が全ての目的のために参照により本明細書に組み入れられる、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., 1990により例示される。さらに、動物(例えば、ヒト)への投与の場合、調製物は、FDAの生物製剤部の基準(the FDA Office of Biological Standard)に求められるように無菌性、発熱性、一般安全性、および純度の基準を満たさなければならないことが理解される。
【0095】
さらに、本発明のある特定の局面によれば、投与に適した組成物は、不活性希釈剤と共に、または不活性希釈剤を伴わずに薬学的に許容される担体に溶解して提供されてもよい。本明細書で使用する「薬学的に許容される担体」は、当業者に公知の任意のおよび全ての水性溶媒(例えば、水、アルコール/水溶液、エタノール、食塩水、非経口ビヒクル、例えば、塩化ナトリウム、リンガーデキストロースなど)、非水性溶媒(例えば、脂肪、油、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、および注射用有機エステル、例えば、オレイン酸エチル)、脂質、リポソーム、分散媒、コーティング(例えば、レシチン)、界面活性剤、抗酸化物質、防腐剤(例えば、抗菌剤または抗真菌剤、アンチオキシダント、キレート剤、希ガス、パラベン(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールまたはその組み合わせ)、等張剤(例えば、糖および塩化ナトリウム)、吸収遅延剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)、塩、薬物、薬物安定剤、ゲル、樹脂、増量剤、結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味剤、着香剤、色素、液体(fluid)および栄養補充薬(nutrient replenisher)、このような同様の材料およびその組み合わせを含む。担体は同化できなければならず、液体、半固体、すなわち、ペースト、または固体担体を含む。さらに、所望であれば、前記組成物は微量の補助物質、例えば、湿潤剤もしくは乳化剤、安定化剤、またはpH緩衝剤を含有することがある。薬学的組成物中の様々な成分のpHおよび正確な濃度は周知のパラメータに従って調節される。適切な流動性は、例えば、コーティング、例えば、レシチンを用いることによって、分散液の場合は必要な粒径を維持することによって、界面活性剤を用いることによって維持することができる。
【0096】
薬学的に許容される担体は特にヒトへの投与のために製剤化されるが、ある特定の態様では、非ヒト動物への投与のために製剤化されたが、ヒトへの投与には(例えば、政府規制のために)許容されない薬学的に許容される担体を使用することが望ましい場合がある。従来の担体が活性成分と適合しない場合を除いて(例えば、レシピエントに有害な、または担体に含まれる組成物の治療効果に有害な場合を除いて)、治療組成物または薬学的組成物における、その使用が意図される。本発明のある特定の局面によれば、前記組成物は、任意の便利な、かつ実用的なやり方で、すなわち、溶解、懸濁、乳化、混合、カプセル化、吸収などによって担体と組み合わされる。このような手法は当業者にとって日常的なものである。
【0097】
本発明のある特定の態様は、固体、液体、またはエアロゾルの形で投与されるかどうかに応じて、注射などの投与経路のために滅菌する必要があるかどうかに応じて異なるタイプの担体を含んでもよい。前記組成物は、静脈内投与、皮内投与、経皮投与、くも膜下腔内、動脈内投与、腹腔内投与、鼻腔内投与、腟内投与、直腸内投与、筋肉内投与、皮下投与、粘膜投与、経口投与、局部投与、局所投与されてもよく、吸入(例えば、エアロゾル吸入)によって、注射によって、注入によって、連続注入によって、標的細胞を直接浸す局所灌流により、カテーテルを介して、洗浄を介して、脂質組成物(例えば、リポソーム)の中に入れて、または他の方法もしくは前述の任意の組み合わせによって投与されてもよい。これらは。例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., 1990に記載されている。
【0098】
活性化合物は非経口投与用に製剤化することができる、例えば、静脈内経路、筋肉内経路、皮下経路を介した注射用に、または腹腔内経路を介した注射用でも製剤化することができる。従って、態様は非経口製剤を含む。典型的に、このような組成物は液体溶液または懸濁液のいずれかで調製することができる。注射前に液体を添加して溶液または懸濁液を調製するために使用するのに適した固体剤形も調製することができる。調製物は乳化することもできる。
【0099】
本態様によれば、非経口製剤は、本明細書において開示されるエキソソームを、1種類もしくは複数種類の溶質および/もしくは溶媒、1種類もしくは複数種類の緩衝剤および/または1種類もしくは複数種類の抗菌剤、あるいはその任意の組み合わせと共に含んでもよい。一部の局面では、溶媒には、水、水混和性溶媒、例えば、エチルアルコール、液体ポリエチレングリコール、および/もしくはプロピレングリコール、ならびに/または水不混和性の溶媒、例えば、例えば、トウモロコシ油、綿実油、ピーナッツ油、および/もしくはゴマ油を含む不揮発性油が含まれ得る。ある特定のバージョンでは、溶質には、1種類もしくは複数種類の抗菌剤、緩衝剤、抗酸化物質、張性物質、凍結防御物質、および/または凍結乾燥防御物質(lyoprotectant)が含まれ得る。
【0100】
本開示に従う抗菌剤には、本開示の他の箇所で提供される抗菌剤ならびにベンジルアルコール、フェノール、水銀剤、および/またはパラベンが含まれ得る。抗菌剤には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セントリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、エキセチジン、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール、および/またはチメロサール、またはその任意の組み合わせが含まれ得る。抗菌剤は、様々な局面では、薬学的作用物質に必要とされるような無菌性を保証するのに必要な濃度で存在することができる。例えば、前記作用物質は、調製物中に、例えば、多用量容器に含まれる調製物中に、静菌濃度または静真菌濃度で存在することができる。様々な態様では、前記作用物質は防腐剤でもよい、および/または微生物、例えば、調製物に意図せずに導入された、例えば、皮下針と注射器を用いて内容物の一部を引き抜いている間に調製物に意図せずに導入された微生物の増殖を防ぐために使用時に十分な濃度で存在してもよい。様々な局面では、作用物質には、最大体積および/または濃度限界(例えば、硝酸フェニル水銀およびチメロサール0.01%、塩化ベンゼトニウムおよび塩化ベンザルコニウム0.01%、フェノールまたはクレゾール0.5%、およびクロロブタノール0.5%)がある。様々な場合で、硝酸フェニル水銀などの作用物質が0.002%の濃度で用いられる。p-ヒドロキシ安息香酸メチル0.18%とp-ヒドロキシ安息香酸プロピル0.02%の組み合わせ、およびベンジルアルコール2%も態様に従って適用することができる。抗菌剤には、ヘキシルレゾルシノール0.5%、安息香酸フェニル水銀0.1%、および/または治療用化合物も含まれ得る。
【0101】
本開示に従う抗酸化物質には、アスコルビン酸および/もしくはその塩、ならびに/またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)のナトリウム塩が含まれ得る。本明細書に記載の張性物質には電解質および/または単糖もしくは二糖が含まれ得る。凍結防御物質および/または凍結乾燥防御物質は、フリーズドライ処理中の製品の凍結および/または乾燥による有害作用から生物製剤を保護する添加物である。凍結防御物質および/または凍結乾燥防御物質には、糖(非還元)、例えば、スクロースまたはトレハロース、アミノ酸、例えば、グリシンまたはリジン、ポリマー、例えば、液体ポリエチレングリコールまたはデキストラン、およびポリオール、例えば、マンニトールまたはソルビトールが含まれ得る。これらは全て、可能性のある凍結防御物質または凍結乾燥防御物質である。本態様はまた、抗真菌剤、例えば、ブチルパラベン、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、および/またはソルビン酸、またはその任意の組み合わせも含んでよい。本開示に従って使用され得る、さらなる溶質および抗菌剤、緩衝剤、抗酸化物質、張性物質、凍結防御物質および/または凍結乾燥防御物質、ならびにその特徴、ならびに本非経口製剤を作製する方法の局面は、例えば、その全体が全ての目的のために参照により本明細書に組み入れられる、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 21st Ed., 2005、例えば、第41章に記載されている。
【0102】
注射使用に適した薬学的形態には、滅菌した水溶液または分散液;ゴマ油、ピーナッツ油、またはプロピレングリコール水溶液を含む製剤;および滅菌した注射液または分散液を即時調製するための滅菌した散剤が含まれる。すべての場合で、剤形は無菌でなければならず、容易に注射できる程度に液状でならなければならない。剤形はまた製造および保管の条件下で安定でなければならず、細菌および菌類などの微生物の汚染作用から守らなくてはならない。
【0103】
治療剤は遊離塩基、中性、または塩の形で組成物に製剤化されてもよい。薬学的に許容される塩には、酸添加塩、例えば、タンパク質組成物の遊離アミノ基と形成された酸添加塩、あるいは無機酸、例えば、塩酸もしくはリン酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、もしくはマンデル酸などのような有機酸と形成された酸添加塩が含まれる。遊離カルボキシル基と形成された塩はまた、無機塩基、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、もしくは水酸化第二鉄;またはイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、もしくはプロカインのような有機塩基からも得ることができる。製剤化されたら、溶液は、投与製剤と適合するやり方で、かつ治療に有効な量で投与される。製剤は様々な剤形で容易に投与され、例えば、注射液、または肺に送達する場合にはエアロゾルなど非経口投与用に製剤化されるか、または薬物放出カプセルなどの食事投与用に製剤化される。
【0104】
本発明の特定の態様では、前記組成物は半固体担体もしくは固体担体と組み合わされるか、または半固体担体もしくは固体担体と共に徹底的に混合される。混合は粉砕などの任意の便利なやり方で行うことができる。組成物を治療活性の消失、すなわち、胃の中での変性から保護するために、混合プロセスにおいて安定化剤も添加することができる。組成物において使用するための安定剤の例には、緩衝剤、アミノ酸、例えば、グリシンおよびリジン、炭水化物、例えば、デキストロース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、ソルビトール、マンニトールなどが含まれる。
【0105】
さらなる態様では、本発明は、1種類または複数種類の脂質と水性溶媒を含む、薬学的な脂質ビヒクル組成物の使用に関することがある。本明細書で使用する「脂質」という用語は、特色として水に溶解せず、有機溶媒を用いて抽出可能な広範な任意の物質を含むと定義される。この広範な化合物クラスは当業者に周知であり、「脂質」という用語が本明細書において用いられる際には、どの特定の構造にも限定されない。例には、長鎖脂肪族炭化水素およびその誘導体を含有する化合物が含まれる。脂質は天然でもよく、合成でもよい(すなわち、人間によって設計または生成されてもよい)。しかしながら、通常、脂質は生物学的物質である。生物学的脂質は当技術分野において周知であり、例えば、中性脂肪、リン脂質、ホスホグリセリド、ステロイド、テルペン、リゾ脂質(lysolipid)、スフィンゴ糖脂質、糖脂質、スルファチド(sulphatide)、エーテル結合およびエステル結合脂肪酸を有する脂質、重合可能な脂質、ならびにその組み合わせを含む。もちろん、当業者が脂質だと理解する本明細書中で具体的に説明された化合物以外の化合物も前記の組成物および方法に含まれる。
【0106】
当業者は、組成物を脂質ビヒクルで分散させるために使用することができる技法の範囲をよく知っているだろう。例えば、治療用物質は、脂質を含有する溶液で分散されてもよく、脂質を用いて溶解されてもよく、脂質を用いて乳化されてもよく、脂質と混合されてもよく、脂質と組み合わされてもよく、脂質と共有結合されてもよく、脂質に溶解した懸濁液として含まれてもよく、ミセルもしくはリポソームを用いて含まれるか、もしくは複合体化されてもよく、または当業者に公知の任意の手段によって脂質もしくは脂質構造と別のやり方で結合されてもよい。分散によってリポソームが形成されてもよく、形成されなくてもよい。
【0107】
「単位用量」または「投与量」という用語は、対象における使用に適した物理的に別個の単位を指し、それぞれの単位は、投与、すなわち、適切な経路および処置レジメンに関連して前記で議論された望ましい応答を生じるように計算された所定量の治療用組成物を含有する。投与しようとする量は、治療の回数および単位用量に応じて、望ましい効果に左右される。患者または対象に投与される本発明の組成物の実際の投与量は、身体的要因および生理学的要因、例えば、対象の体重、年齢、健康状態、および性別、処置されている疾患のタイプ、疾患侵入の程度、以前の治療介入または同時治療介入、患者の特発性疾患、投与経路、ならびに特定の治療物質の効力、安定性、および毒性によって決定することができる。例えば、用量はまた、1回の投与につき約1μg/kg/体重~約1000mg/kg/体重(このような範囲は、その間の用量を含む)またはそれより多い用量、およびその中から導き出せる任意の範囲も含んでよい。本明細書において列挙された数から導き出せる範囲の非限定的な例では、約5μg/kg/体重~約100mg/kg/体重、約5μg/kg/体重~約500mg/kg/体重などの範囲を投与することができる。投与を担当する医者は、どんな状況でも、組成物中の活性成分の濃度と、個々の対象に適した用量を決定する。
【0108】
動物患者に投与された組成物の実際の投与量は、身体的要因および生理学的要因、例えば、体重、状態の重篤度、処置されている疾患のタイプ、以前の治療介入または同時治療介入、患者の特発性疾患、および投与経路によって決定することができる。投与量および投与経路に応じて、好ましい投与量および/または有効量の投与の回数は対象の応答に従って変化することがある。投与を担当する医者は、どんな状況でも、組成物中の活性成分の濃度と、個々の対象に適した用量を決定する。
【0109】
ある特定の態様では、薬学的組成物は、例えば、少なくとも約0.1%の活性化合物を含んでもよい。他の態様では、活性化合物は、例えば、単位の重量の約2%~約75%または約25%~約60%、およびその中から導き出せる任意の範囲を含んでもよい。天然では、それぞれの治療上有用な組成物中には、化合物のある特定の単位用量で適切な投与量が得られるようなやり方で、前記の量の活性化合物が調製され得る。溶解度、バイオアベイラビリティ、生物学的半減期、投与経路、製品の貯蔵寿命、ならびに他の薬理学的な考慮すべき事項などの要因が、このような薬学的製剤を調製する当業者によって検討され、従って、様々な投与量および処置レジメンが望ましい場合がある。
【0110】
他の非限定的な例では、用量はまた、1回の投与につき、約1マイクログラム/kg/体重、約5マイクログラム/kg/体重、約10マイクログラム/kg/体重、約50マイクログラム/kg/体重、約100マイクログラム/kg/体重、約200マイクログラム/kg/体重、約350マイクログラム/kg/体重、約500マイクログラム/kg/体重、約1ミリグラム/kg/体重、約5ミリグラム/kg/体重、約10ミリグラム/kg/体重、約50ミリグラム/kg/体重、約100ミリグラム/kg/体重、約200ミリグラム/kg/体重、約350ミリグラム/kg/体重、約500ミリグラム/kg/体重~約1000ミリグラム/kg/体重、またはそれより多く、およびその中から導き出せる任意の範囲も含んでもよい。本明細書において列挙された数から導き出せる範囲の非限定的な例では、上記の数に基づいて、約5ミリグラム/kg/体重~約100ミリグラム/kg/体重、約5マイクログラム/kg/体重~約500ミリグラム/kg/体重などの範囲を投与することができる。
【0111】
V.核酸およびベクター
本発明のある特定の局面では、治療用タンパク質または治療用タンパク質を含有する融合タンパク質をコードする核酸配列が開示され得る。どの発現系が用いられるかに応じて、核酸配列は従来の方法に基づいて選択することができる。例えば、それぞれの遺伝子またはその変種は、ある特定の系において発現するようにコドン最適化されてもよい。関心対象のタンパク質を発現するために様々なベクターも使用することができる。例示的なベクターには、プラスミドベクター、ウイルスベクター、トランスポゾン、またはリポソームベースのベクターが含まれるが、これに限定されない。
【0112】
VI.組換えタンパク質および阻害性RNA
一部の態様は組換えタンパク質およびポリペプチドに関する。さらなる局面では、前記タンパク質またはポリペプチドは血清安定性を高めるように改変されてもよい。従って、本願が「改変されたタンパク質」または「改変されたポリペプチド」の機能または活性について言及している場合に、これは、例えば、改変されていないタンパク質またはポリペプチドと比べて、さらなる利点を有するタンパク質またはポリペプチドを含むと当業者に理解されるだろう。「改変されたタンパク質」に関する態様は「改変されたポリペプチド」に関して実施されることがあり、逆もまた同じであると特に意図される。
【0113】
組換えタンパク質はアミノ酸の欠失および/または置換を有することがある。従って、欠失を有するタンパク質、置換を有するタンパク質、および欠失と置換を有するタンパク質は、改変されたタンパク質である。一部の態様では、これらのタンパク質は、挿入または付加されたアミノ酸、例えば、融合タンパク質またはリンカーを有するタンパク質をさらに含むことがある。「改変された欠失タンパク質」は天然タンパク質の1つまたは複数の残基を欠いているが、天然タンパク質の特異性および/または活性を有することがある。「改変された欠失タンパク質」はまた免疫原性または抗原性が低下していることがある。改変された欠失タンパク質の一例は、特定の生物において、例えば、改変されたタンパク質が投与されてもよい生物のタイプにおいて抗原性であると明らかにされたタンパク質領域である少なくとも1つの抗原性領域から欠失されたアミノ酸残基を有するものである。
【0114】
置換変種または置き換え変種は、典型的には、タンパク質内の1つまたは複数の部位での、あるアミノ酸から別のアミノ酸への取り替えを含有し、ポリペプチドの1つまたは複数の特性、特に、そのエフェクター機能および/またはバイオアベイラビリティを調節するように設計されることがある。置換は保存的置換でもよく、すなわち、あるアミノ酸が、類似する形状または電荷のアミノ酸と置き換えられ、置換は保存的置換でなくてもよい。保存的置換は当技術分野において周知であり、例えば、アラニンからセリンへの;アルギニンからリジンへの;アスパラギンからグルタミンまたはヒスチジンへの;アスパラギン酸からグルタミン酸への;システインからセリンへの;グルタミンからアスパラギンへの;グルタミン酸からアスパラギン酸への;グリシンからプロリンへの;ヒスチジンからアスパラギンまたはグルタミンへの;イソロイシンからロイシンまたはバリンへの;ロイシンからバリンまたはイソロイシンへの;リジンからアルギニンへの;メチオニンからロイシンまたはイソロイシンへの;フェニルアラニンからチロシン、ロイシン、またはメチオニンへの;セリンからスレオニンへの;スレオニンからセリンへの;トリプトファンからチロシンへの;チロシンからトリプトファンまたはフェニルアラニンへの;およびバリンからイソロイシンまたはロイシンへの変更を含む。
【0115】
欠失または置換に加えて、改変されたタンパク質は残基の挿入を有することがあり、残基の挿入は、典型的には、ポリペプチドへの少なくとも1つの残基の付加を伴う。これは、ターゲティングペプチドまたはターゲティングポリペプチドの挿入を含んでもよく、単に、1個の残基の挿入を含んでもよい。融合タンパク質と呼ばれる末端付加を下記で議論する。
【0116】
「生物学的に機能する等価物」という用語は当技術分野においてよく理解されており、さらに本明細書において詳細に定義される。従って、タンパク質の生物学的活性が維持されるのであれば、対照ポリペプチドのアミノ酸と同一の、または機能的に等価な、約70%~約80%のアミノ酸配列、または約81%~約90%のアミノ酸配列、または約91%~約99%のアミノ酸配列さえ含まれる。組換えタンパク質は、ある特定の局面では、その天然対応物に生物学的に機能的に等価なものでもよい。
【0117】
アミノ酸配列および核酸配列は、タンパク質発現と関係がある生物学的タンパク質活性の維持を含む上記で示した判断基準を満たす限り、さらなる残基、例えば、さらなるN末端アミノ酸もしくはC末端アミノ酸または5'配列もしくは3'配列を含んでもよいが、依然として、本明細書において開示される配列の1つに本質的に示されたようなものであることも理解される。末端配列の付加は、特に、例えば、コード領域の5'部分もしくは3'部分に隣接する様々な非コード配列を含み得るか、または様々な内部配列、すなわち、遺伝子内部に存在することが知られているイントロンを含み得る核酸配列に適用される。
【0118】
本明細書で使用するタンパク質またはペプチドは、一般的に、遺伝子から翻訳される、約200アミノ酸超から完全長配列までのタンパク質;約100アミノ酸超のポリペプチド;および/または約3~約100アミノ酸のペプチドを指すが、これに限定されない。便宜的に、「タンパク質」、「ポリペプチド」、および「ペプチドという用語は本明細書中、同義で用いられる。
【0119】
本明細書で使用する「アミノ酸残基」は、当技術分野において公知の任意の天然アミノ酸、任意のアミノ酸誘導体、または任意のアミノ酸模倣物を指す。ある特定の態様では、タンパク質またはペプチドの残基は連続しており、アミノ酸残基配列を非アミノ酸は中断しない。他の態様では、この配列は1つまたは複数の非アミノ酸部分を含むことがある。特定の態様では、タンパク質またはペプチドの残基の配列は1つまたは複数の非アミノ酸部分によって中断されることがある。
【0120】
従って、「タンパク質またはペプチド」という用語は、天然のタンパク質に見出される20種類の一般アミノ酸のうちの少なくとも1つ、または少なくとも1つの修飾アミノ酸もしくは珍しいアミノ酸を含むアミノ酸配列を含む。
【0121】
本発明のある特定の態様は融合タンパク質に関する。これらの分子は、治療用タンパク質のN末端またはC末端が異種ドメインに連結されていてもよい。例えば、融合はまた、異種宿主でのタンパク質の組換え発現を可能にするために他の種に由来するリーダー配列も用いることがある。別の有用な融合には、タンパク質アフィニティタグ、例えば、血清アルブミンアフィニティタグまたは6つのヒスチジン残基、または免疫学的に活性なドメイン、例えば、抗体エピトープ、好ましくは、融合タンパク質精製を容易にするために切断可能な抗体エピトープの付加が含まれる。非限定的なアフィニティタグには、ポリヒスチジン、キチン結合タンパク質(CBP)、マルトース結合タンパク質(MBP)、およびグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)が含まれる。
【0122】
融合タンパク質を作製する方法は当業者に周知である。このようなタンパク質は、例えば、完全融合タンパク質の新規合成によって、または異種ドメインをコードするDNA配列を付着させ、その後にインタクトな融合タンパク質を発現させることによって産生することができる。
【0123】
親タンパク質の機能活性を回復する融合タンパク質の産生は、直列に接続されているポリペプチド間でスプライスされるペプチドリンカーをコードする架橋DNAセグメントを用いて遺伝子をつなげることによって容易になる場合がある。リンカーは、結果として生じる融合タンパク質の正しいフォールディングを可能にするのに十分な長さのリンカーであろう。
【0124】
VII.キットおよび診断剤
本発明の様々な局面では、エキソソームを体液または組織培養培地から精製するための必要な成分を含むキットが想定される。他の局面では、その表面にOX40LまたはICOSLを含むエキソソームを単離するための必要な成分を備えるキットが想定される。キットは、このような任意の成分を含む1つまたは複数の密封したバイアルを含んでもよい。一部の態様では、キットはまた、キットの成分と反応しない容器である適切な容器手段、例えば、エッペンドルフチューブ、アッセイプレート、注射器、瓶、またはチューブも備えてよい。容器は、プラスチックまたはガラスなどの滅菌可能な材料から作製されてもよい。
【0125】
キットは、本明細書において説明される方法の手順工程を概説する指示書をさらに備えてもよく、本明細書に記載のものと実質的に同じ手順に従うか、または当業者に公知である。指示書の情報は、コンピュータを用いて実行された時に、試料からエキソソームを精製する現実または仮想の手法を表示する機械可読指示書を備えるコンピュータ可読媒体の中にあってもよい。
【実施例
【0126】
VIII.実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい態様を証明するために含まれる。以下の実施例に開示される技法は、本発明者が発見した技法が本発明の実施において十分に機能することを示すこと、かつ、従って、本発明を実施するための好ましい態様を構成すると考えられ得ることが、当業者に理解されるはずである。しかしながら、本開示を考慮すれば、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、開示された特定の態様において多くの変更を加えることができ、それでもなお、類似または同様の結果を得ることができると当業者に理解されるはずである。
【0127】
実施例1 - ICOSL+エキソソームおよびOX40L+エキソソームの単離および精製
リポフェクタミンで72時間処理することによって、HEK293T細胞にOX40L発現プラスミドまたはICOSLG発現プラスミドをトランスフェクトした。次いで、安定にトランスフェクトされた細胞を得るために、細胞を1μg/mlピューロマイシンで10日間選択した。次いで、1μg/mlピューロマイシンを含有する選択培地を用いて安定細胞を培養した。
【0128】
トランスフェクトされていないHEK293T細胞から、ならびに安定なHEK293T ICSOLGおよびHEK293T OX40L細胞から、エキソソームを収集した。以前に述べられたように(Alvarez-Erviti et al., 2011; El-Andaloussi et al., 2012)分画遠心プロセスによってエキソソームを精製した。エキソソームを枯渇させたFBSを含有する培地中で48時間培養した細胞から上清を収集し、その後に、800gで5分間、および2000gで10分間の連続遠心分離工程に供した。次いで、結果として生じた、この上清を、培養瓶の中で0.2μmフィルターを用いて濾過し、28,000gでSW 32 Tiローターに入れて2時間の超遠心(Beckman)後にペレットを回収した。上清を吸引し、ペレットをPBSで再懸濁し、その後に、もう2時間超遠心した。次いで、精製したエキソソームを分析し、実験手法のために使用した。
【0129】
安定的にトランスフェクトされた293T細胞中のICOSLおよびOX40L転写物のレベルを測定するために、TRIzol(登録商標)(Invitrogen)を用いて、製造業者の指示に従って全RNAを精製した後に、MultiScribe Reverse Transcriptase(Applied Biosystems)とオリゴ-d(T)プライマーを用いてRNAをレトロ転写(retro-transcribe)した。リアルタイム PCR分析を、SYBR(登録商標) Green Master Mix(Applied Biosystems)を用いてABI PRISM(登録商標) 7300HT Sequence Detection System Instrumentで行った。関心対象の転写物を18S転写物レベルに対して正規化した。それぞれの測定を3回繰り返して行った。増幅された標的の量が、ある決まった閾値に達する分数サイクル数である閾値サイクルを求め、発現を、2-ΔCt式を用いて測定した。図1に示したように、野生型293T細胞はICOSLG転写物およびOX40L転写物の低い基底値を示したが、OX40L過剰発現細胞のレベルは約10,000倍高く、ICOSLG過剰発現細胞のレベルは約2,500倍高かった。
【0130】
細胞およびエキソソームのタンパク質発現を評価するために、細胞およびエキソソームをRIPA緩衝液に収集し、Bradford定量を用いてタンパク質溶解産物を正規化した。タンパク質を変性条件下で電気泳動分離するために40μgの溶解産物をアクリルアミドゲルにロードし、湿った(wet)電気泳動転写によってPVDF膜(ImmobilonP)に転写した。次いで、膜を、PBS/0.05%Tween(登録商標)-20に溶解した5%脱脂粉乳を用いて室温で1時間ブロックし、適切な一次抗体と4℃で一晩インキュベートした。二次抗体を室温で1時間インキュベートした。抗体インキュベーション後に、洗浄をオービタルシェーカー上で1×PBS 0.05%Tween(登録商標)-20を用いて15分間隔で3回行った。Pierceの化学発光試薬を用いて、製造業者の指示に従って膜を発色させ、膜上の化学ルミネセンスを捕らえた。図2Aに示したように、安定にトランスフェクトされたICOSLG 293T細胞と、それから単離したエキソソームは両方ともICOSLGの高発現を示す。ビンキュリン発現を対照として測定した(図2B)。最終的に、OX40LまたはICOSLGを発現する細胞およびエキソソームがフローサイトメトリーを用いて検出された(図3)。
【0131】
実施例2 - エキソソームを用いたT細胞の処置
HEK293Tブランク細胞およびHEK293T ICOSLGから収集したエキソソームを使用して、C57BI/6マウスに由来するナイーブT細胞または689KPC GEMM腫瘍を有するC57BI/6マウスに由来する脾臓T細胞を処理した。図4に概説するように、細胞を各マウスの脾臓から単離し、T細胞を濃縮するために負の選択を行った。単離された細胞をカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CSFE)で標識し、CD3/CD28で刺激した。さらに、細胞を対照エキソソーム、ICOSLG+エキソソーム、またはOX40L+エキソソームで刺激した。刺激後に、増殖、INF-γ産生、およびIL-2産生を測定した。図5は、ICOSLG+エキソソームで刺激した後に、対照エキソソームと比べてIL-2およびIFN-γを産生するナイーブT細胞の数が増加したことを示す。図6は、ICOSLG+エキソソームで刺激した後に、対照エキソソームと比べて、担がんマウスに由来するIL-2およびIFN-γを産生する脾臓T細胞の数が増加したことを示す。
【0132】
実施例3 - インビボでの移植B16F10腫瘍の処置
B16F10細胞を各マウスの背中の皮下に移植した。マウスを7つの群に分けた。群1を、野生型HEK293T細胞から単離したエキソソームで処置した。群2を、野生型HEK293T細胞から単離したエキソソームと抗CTLA-4で処置した。群3を、ICOSL過剰発現HEK293T細胞から単離したエキソソームと抗CTLA-4で処置した。群4を、OX40L過剰発現HEK293T細胞から単離したエキソソームと抗CTLA4で処置した。群5を、ICOSL過剰発現HEK293T細胞から単離したエキソソームで処置した。群6を抗CTLA-4のみで処置した。群7をPBSで処置した。各群のマウスを2週間にわたって毎日、静脈内(I.V.)注射した。腫瘍量を測定した。図7A~Jに示したように、最も少ない腫瘍量は、ICOSL過剰発現HEK293T細胞から単離したエキソソームと抗CTLA-4で処置したマウスにおいて認められた。
【0133】
本明細書において開示および請求された方法は全て、本開示を考慮すれば過度の実験なく作製および実施することができる。本発明の組成物および方法が好ましい態様に関して説明されたが、本発明の概念、精神、および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の方法および本明細書に記載の方法の工程または工程の順序に変更を加えることができることは当業者に明らかである。さらに具体的には、本明細書に記載の作用物質の代わりに、化学的および生理学的に関連している、ある特定の作用物質を使用することができ、それと同時に、同一の結果または類似の結果が得られることは明らかである。当業者に明らかな、このような類似する代用および変更は全て、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の精神、範囲、および概念の範囲内だと考えられる。
【0134】
参照文献
以下の参照文献は、例示的な手順の詳細または本明細書に記載のものを補足する他の詳細を示す程度まで参照により本明細書に特に組み入れられる。
図1
図2A
図2B
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
図7I
図7J