(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】ペンダントキレート部分を有する大環状リガンドおよびその錯体
(51)【国際特許分類】
C07D 471/18 20060101AFI20231106BHJP
C07D 491/18 20060101ALI20231106BHJP
A61K 51/04 20060101ALN20231106BHJP
【FI】
C07D471/18 CSP
C07D491/18
A61K51/04 200
(21)【出願番号】P 2020571329
(86)(22)【出願日】2019-03-07
(86)【国際出願番号】 US2019021229
(87)【国際公開番号】W WO2019173639
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2022-03-03
(32)【優先日】2018-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520342024
【氏名又は名称】ルミフォア,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】テイタム, デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】シュー, ジードォ
(72)【発明者】
【氏名】マグダ, ダレン
(72)【発明者】
【氏名】バトリン, ナサニエル
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0157746(US,A1)
【文献】国際公開第2017/105565(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/106241(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/045385(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造を有し、
【化1】
式中、
A
b1
とA
b2
は、独立して、以下から選択され、
【化2】
各R
7
、R
8
、およびR
9
が、独立して、L
1a
またはL
2b
への結合、L
1a
またはL
2b
に結合されたアルカンジイル、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、ハロゲン、CN、-CF
3
、-C(O)R
17
、-SO
2
NR
17
R
18
、-NR
17
R
18
、-OR
17
、-S(O)
2
R
17
、-COOR
17
、-S(O)
2
OR
17
、-OC(O)R
17
、-C(O)NR
17
R
18
、-NR
17
C(O)R
18
、-NR
17
SO
2
R
18
、および-NO
2
から選択され、
同じ環上に存在するR
7
とR
8
が、任意選択で結合されて、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換ヘテロアリールから選択される環系を形成し、
R
17
およびR
18
が、独立して、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、および置換または非置換ヘテロシクロアルキルから選択され、
R
17
およびR
18
が、それらが結合している原子と一緒に、任意選択で結合されて、5、6、または7員環を形成し、
L
1aが、置換または非置換アルキ
レン、置換または非置換アルケニル、置換または非置換アルキニル、
および、置換または非置換ヘテロアルキ
レンから選択され、
L
x6が、独立して、H、反応性官能基へのリンカー、および標的化部分へのリンカーから選択され、
反応性官能基へのリンカー、または標的化部分へのリンカーは、個々独立に、結合、置換または非置換アルキレン、置換または非置換ヘテロアルキレン、置換または非置換シクロアルキレン、置換または非置換ヘテロシクロアルキレン、置換または非置換アリーレン、置換または非置換ヘテロアリーレン、-C(O)NR’-、-C(O)O-、-C(O)S-、または、-C(O)CR’R’’であり、式中、R’およびR’’は、独立して、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換ヘテロシクロアルキルであり、
反応性官能基は、オレフィン、アセチレン、アルコール、フェノール、エーテル、酸化物、ハロゲン化物、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、エステル、アミド、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、アミン、ヒドラジン、ヒドラゾン、ヒドラジド、ジアゾ、ジアゾニウム、ニトロ、ニトリル、メルカプタン、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホン酸、スルフィン酸、アセタール、ケタール、無水物、硫酸塩、スルフェン酸、イソニトリル、アミジン、イミド、イミデート、ニトロン、ヒドロキシルアミン、オキシム、ヒドロキサム酸、チオヒドロキサム酸、アレン、オルトエステル、亜硫酸塩、エナミン、イナミン、尿素、プソイド尿素(pseudourea)、セミカルバジド、カルボジイミド、カルバメート、イミン、アジド、アゾ化合物、アゾキシ化合物、およびニトロソ化合物から選択され、
標的化部分は、抗体、核酸、オリゴヌクレオチド、炭水化物、脂質、ホルモン、成長因子、レクチン、受容体、受容体リガンド、および補因子から選択され、
L
2a、L
2b、およびL
2cが、独立して、置換または非置換アルキレン、および置換または非置換ヘテロアルキ
レンから選択され
、
A
p1
、およびA
p2
が、独立して、以下から選択され、
【化3】
式中、
AおよびGが、独立して、炭素、窒素、および酸素から選択され、
Jが、炭素および窒素から選択され、
各R
1
およびR
2
が、独立して、H、および単一の負電荷から選択され、
各R
6
、R
7
、R
8
、R
9
、およびR
10
が、独立して、化合物の残された部位をつなぐ結合、分子の残された部位をつなぐアルカンジイル、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、ハロゲン、CN、-CF
3
、-C(O)R
17
、-SO
2
NR
17
R
18
、-NR
17
R
18
、-OR
17
、-S(O)
2
R
17
、-COOR
17
、-S(O)
2
OR
17
、-OC(O)R
17
、-C(O)NR
17
R
18
、-NR
17
C(O)R
18
、-NR
17
SO
2
R
18
、および-NO
2
から選択され、
式中、
R
6
、R
7
、R
8
、R
9
、およびR
10
のうちの少なくとも2つが、任意選択で結合されて、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換ヘテロアリールから選択される環系を形成し、
R
17
およびR
18
が、独立して、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、および置換または非置換ヘテロシクロアルキルから選択され、
R
17
およびR
18
が、それらが結合している原子と一緒に、任意選択で結合されて、5、6、または7員環を形成し、
Aが酸素である場合、R
9
は存在せず、
Gが酸素である場合、R
7
は存在せず、
A
p1
およびA
p2
が、R
6
、R
7
、R
8
、R
9
、およびR
10
から選択されるメンバーを介してC
1
とC
2
に結合されている、化合物。
【請求項2】
L
1aが、以下から選択され、
【化4】
nが、0、1、2、3、4、5、および6から選択される整数であり、
Rは、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、および修飾部分から選択さ
れる、請求項
1に記載の化合物。
【請求項3】
L
1a
が、以下から選択される、
【化5】
Rは、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、および修飾部分から選択される、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
A
p1が、式(I)による構造を有する場合、A
p1は、R
6またはR
10を介して
C
1
に結合され、
A
p1が、式(II)または(III)による構造を有する場合、A
p1は、R
6またはR
9を介して
C
1
に結合され、
A
p2が、式(I)による構造を有する場合、A
p2は、R
6またはR
10を介して
C
2
に結合され、
A
p2が、式(II)または(III)による構造を有する場合、A
p2は、R
6またはR
9を介して
C
1
に結合されている、請求項
1に記載の化合物。
【請求項5】
A
p1、およびA
p2が、各々独立して、以下から選択される、請求項
4に記載の化合物:
【化6】
【請求項6】
A
p1が、式(1)による構造を有する場合、A
p1は、R
6またはR
10を介してC
1に結合され、
A
p1が、式(2a)、(2b)、(3)、(4)、または(5)に記載の構造を有する場合、A
p1は、R
6またはR
9を介してC
1に結合され、
A
p2が、式(1)による構造を有する場合、A
p2は、R
6またはR
10を介してC
2に結合され、
A
p2が、式(2a)、(2b)、(3)、(4)、または(5)に記載の構造を有する場合、A
p2は、R
6またはR
9を介してC
2に結合されている、請求項
5に記載の化合物。
【請求項7】
A
b1およびA
b2が、各々独立して、以下から選択される、請求項
1に記載の化合物。
【化7】
【請求項8】
L
x6が、独立して、H、反応性官能基へのリンカー、および標的化部分へのリンカーから選択され、
L
2a、L
2b、およびL
2cが、独立して、置換または非置換アルキル、および置換または非置換ヘテロアルキルから選択される、
請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
A
p1およびA
p2が、各々独立して、以下から選択される、請求項
1に記載の化合物。
【化8】
【請求項10】
A
p1
およびA
p2
が、各々独立して、以下から選択される、請求項9に記載の化合物。
【化9】
【請求項11】
A
p1
、A
p2
、L
1a
、L
2a
、L
2b
およびL
2c
の少なくとも1つが、反応性官能基へのリンカー、または標的化部分へのリンカーで置換されており、
反応性官能基へのリンカー、または標的化部分へのリンカーは、個々独立に、結合、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、-C(O)NR’-、-C(O)O-、-C(O)S-、または、-C(O)CR’R’’であり、式中、R’およびR’’は、独立して、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換ヘテロシクロアルキルであり、
反応性官能基は、オレフィン、アセチレン、アルコール、フェノール、エーテル、酸化物、ハロゲン化物、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、エステル、アミド、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、アミン、ヒドラジン、ヒドラゾン、ヒドラジド、ジアゾ、ジアゾニウム、ニトロ、ニトリル、メルカプタン、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホン酸、スルフィン酸、アセタール、ケタール、無水物、硫酸塩、スルフェン酸、イソニトリル、アミジン、イミド、イミデート、ニトロン、ヒドロキシルアミン、オキシム、ヒドロキサム酸、チオヒドロキサム酸、アレン、オルトエステル、亜硫酸塩、エナミン、イナミン、尿素、プソイド尿素(pseudourea)、セミカルバジド、カルボジイミド、カルバメート、イミン、アジド、アゾ化合物、アゾキシ化合物、およびニトロソ化合物から選択される基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
L
2bが、反応性官能基へのリンカーまたは標的化部分へのリンカーで置換されている、請求項
11に記載の化合物。
【請求項13】
前記反応性官能基への前記リンカーまたは前記標的化部分への前記リンカーが、以下の構造を有し、
-L
11-F
x、
式中、L
11が、結合、アシル、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換ヘテロアリールから選択され
、
F
x
が、オレフィン、アセチレン、アルコール、フェノール、エーテル、酸化物、ハロゲン化物、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、エステル、アミド、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、アミン、ヒドラジン、ヒドラゾン、ヒドラジド、ジアゾ、ジアゾニウム、ニトロ、ニトリル、メルカプタン、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホン酸、スルフィン酸、アセタール、ケタール、無水物、硫酸塩、スルフェン酸、イソニトリル、アミジン、イミド、イミデート、ニトロン、ヒドロキシルアミン、オキシム、ヒドロキサム酸、チオヒドロキサム酸、アレン、オルトエステル、亜硫酸塩、エナミン、イナミン、尿素、プソイド尿素(pseudourea)、セミカルバジド、カルボジイミド、カルバメート、イミン、アジド、アゾ化合物、アゾキシ化合物、ニトロソ化合物から選択される基、
保護された官能基、または、
抗体、核酸、オリゴヌクレオチド、炭水化物、脂質、ホルモン、成長因子、レクチン、受容体、受容体リガンド、補因子から選択される標的化部分である、
請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
前記反応性官能基への前記リンカーまたは前記標的化部分への前記リンカーが、以下の構造を有し、
【化10】
式中、
R
Lが、置換または非置換アルキル、および置換または非置換ヘテロアルキルから選択される、請求項
13に記載の化合物。
【請求項15】
反応性官能基が、アミン、カルボン酸、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、スルホ-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、マレイミド、アルデヒド、スルフヒドリル、イソチオシアネート、アジドから選択される、請求項8に記載の化合物。
【請求項16】
標的化部分が、抗体、ペプチド、RNA、DNAから選択される、請求項8に記載の化合物。
【請求項17】
前記反応性官能基への
、または、前記反応性基へのではない前記リンカーが、以下の構造を有する、請求項
14に記載の化合物。
【化11】
【請求項18】
請求項
1に記載の化合物およびこれと錯体形成された金属イオンを含む、錯体。
【請求項19】
前記イオンが、ランタニドおよびアクチニドから選択される金属のイオンである、請求項
18に記載の錯体。
【請求項20】
前記イオンが、ジルコニウム(Zr)、鉄(Fe)、インジウム(In)、ユウロピウム(Eu)、ホルミウム(Ho)、ルテチウム(Lu)、イットリウム(Y)、テルビウム(Tb)、イッテルビウム(Yb)、ガドリニウム(Gd)、サマリウム(Sm)、ジスプロシウム(Dy)、エルビウム(Er)、
および、トリウム(Th
)から選択される金属のイオンである、請求項
18に記載の錯体。
【請求項21】
前記錯体が、発光性である、請求項
18に記載の錯体。
【請求項22】
前記イオンが、Eu、Tb、Sm、およびDyから選択される金属のイオンである、請求項
18に記載の錯体。
【請求項23】
前記イオンが、Gdのイオンである、請求項
18に記載の錯体。
【請求項24】
前記イオンが、放射性核種である、請求項
18に記載の錯体。
【請求項25】
前記金属イオンが、Zr(IV)、Fe(III)、Sc(III)、In(III)、Eu(III)、Ho(III)、Lu(III)、Y(III)、Tb(III)、Yb(III)、Gd(III)、Sm(III)、Dy(III)、Er(III)、
および、Th(IV
)から選択される、請求項
18に記載の錯体。
【請求項26】
前記金属イオンが、
227Th(IV)、
89Zr(IV)、および
177Lu(III)から選択される、請求項
18に記載の錯体。
【請求項27】
前記反応性官能基へのリンカーが、以下の構造を有する、請求項1に記載の化合物。
【化12-1】
【化12-2】
【化12-3】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年3月7日に出願された米国仮特許出願第62/639,939号の利益を主張するものであり、参照によりその全体がすべての目的のために明示的に組み込まれる。
【0002】
政府の権利に関する陳述
本発明は、連邦小企業庁から授与された認可第IIP-1353612号に基づく政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、治療用途および診断用途に使用することができる化合物および錯体に関する。
【背景技術】
【0004】
現在の放射免疫療法の実施では、2つのクラスのキレート剤:ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)に基づく非環式種または1,4,7,20-テトラアザシクロドデカンN,N′,N″,N”’-四酢酸(DOTA)に類似した大環状誘導体を利用する。前者は、より迅速な会合速度論を示す一方で、DOTA様化合物は、より安定した錯体を生成する傾向があるが、錯体形成(complexation)には、通常、高温などのより厳しい条件が必要であることに注意する必要がある。現在、臨床試験中(clinicaltrials.govによる)である放射性金属の列挙には、アクチニウム225、ビスマス213、銅64、ガリウム67、ガリウム68、ホルミウム166、インジウム111、ルテチウム177、ルビジウム-82、サマリウム-153、ジルコニウム-89、ストロンチウム-89、テクネチウム-99m、鉛-212、およびイットリウム-90が含まれる。
【0005】
ランタニドおよびアクチニドの放射性金属カチオンは、キレート化が存在しない場合、主に骨に沈着し、これは骨髄抑制の可能性を考えると重要な懸念事項である。Gd+3DTPAなどのMRI造影剤の使用後の最近生じた毒性懸念は、このキレート基による金属カチオンの生体内分布の制御が不十分であることを明確に示している。同様に、放射性金属の喪失は、標的化放射線診断によるシグナル特異性の喪失をもたらし得る。したがって、放射免疫療法における使用のための改善されたキレート剤に対する認識された切実な必要性が存在する。そのようなキレート剤および錯体ならびにそれらの使用方法が、本発明により提供される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、治療または診断用途において特に有用である、新しいクラスのリガンドおよびこれらのリガンドの金属錯体を提供する。本発明の化合物(リガンド)は、互いに結合して以下の構造を有する、架橋キレート部分およびペンダントキレート部分の混合を含み、
【化1】
式中、L
1およびL
2は、独立して選択される足場部分であり、A
b1およびA
b2は、独立して選択される架橋キレート部分であり、A
p1およびA
p2は、独立して選択されるペンダントキレート部分である。
【0007】
本発明の架橋キレート部分およびペンダントキレート部分は、独立して、以下から選択され、
【化2】
式中、AおよびGは、独立して、炭素、窒素、および酸素から選択される。Jは、炭素および窒素から選択される。各R
1およびR
2は、独立して、H、酵素的に不安定な基、加水分解的に不安定な基、代謝的に不安定な基、光分解的に不安定な基、および単一の負電荷から選択される。各R
6、R
7、R
8、R
9、およびR
10は、独立して、L
1またはL
2への結合、L
1またはL
2に結合されたアルカンジイル、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、ハロゲン、CN、-CF
3、-C(O)R
17、-SO
2NR
17R
18、-NR
17R
18、-OR
17、-S(O)
2R
17、-COOR
17、-S(O)
2OR
17、-OC(O)R
17、-C(O)NR
17R
18、-NR
17C(O)R
18、-NR
17SO
2R
18、および-NO
2から選択され、式中、R
6、R
7、R
8、R
9、およびR
10のうちの少なくとも2つは、任意選択で結合して、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換ヘテロアリールから選択される環系を形成する。R
17およびR
18は、独立して、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、および置換または非置換ヘテロシクロアルキルから選択され、R
17およびR
18は、それらが結合している原子と一緒に、任意選択で結合されて、5、6、または7員環を形成する。Aが酸素である場合、R
9は存在せず、Gが酸素である場合、R
7は存在しない。A
b1およびA
b2は、R
6、R
7、R
8、R
9、およびR
10から選択される2つのメンバーを介してL
1およびL
2に結合され、A
p1およびA
p2は、R
6、R
7、R
8、R
9、およびR
10から選択されるメンバーを介してL
2に結合される。
【0008】
本発明の化合物の利点は、そのようなキレートリガンドが同位体に急速に結合することであり、したがって、それらは臨床実験室調製の実用性に合致する。そのような化合物はまた、カチオンに安定に結合し、したがって、少なくともその崩壊前にはいずれも生体内で放出されない。これらの明らかに矛盾する化合物特性は、実際には、十分な程度の柔軟性を保持する予め規則化された(pre-organized)キレート基によって具体化される。
【0009】
本発明の例示的な化合物はまた、反応性官能基へのリンカーまたは標的化部分へのリンカーを含み、したがって、本明細書に提供されるキレート化リガンドおよびそれらの錯体は、治療または診断目的で、目的の部位に対して指向させることができる。
【0010】
本発明の化合物およびその金属イオン錯体は、標的化放射性同位体用途および増感発光(sensitized luminescence)用途(Eu増感発光イムノアッセイなど)に特に有用である。実施例に示されるように、本発明の化合物(リガンド)は、金属カチオンを安定的に配位結合させ、容易な錯体形成速度論を示し、Eu(III)では非常に高い水性量子収量を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】化合物7の結晶構造ORTEPを示し、該結晶構造により、化合物6に存在する2つのメチルエステルのどちらが低温で水酸化リチウムによって選択的に加水分解されるかが確認される。
【
図2】[Eu-16][NMe4]・DMFの結晶構造ORTEPを示す。
【
図3】塩化ユウロピウムを用いるリガンド16のUV-vis滴定を示す。
【
図4】塩化ユウロピウムを用いるリガンド43のUV-vis滴定を示す。
【
図5】塩化ユウロピウムを用いるリガンド43の光ルミネセンス滴定を示す。
【
図6】TBS緩衝液中、pH=7.6で測定された16のUV-vis吸収スペクトルを示す。
【
図7】TBS緩衝液中、pH7.6で測定された16・EuのUV-vis吸収スペクトルを示す。
【
図8】TBS緩衝液中、pH7.6で測定された16・Euの光ルミネセンススペクトルを示す。
【
図9】TBS緩衝液中、pH7.6で測定された29・EuのUV-vis吸収スペクトルを示す。
【
図10】TBS緩衝液中、pH7.6で測定された29・Euの光ルミネセンススペクトルを示す。
【
図11】TBS緩衝液中、pH7.6で測定された33・EuのUV-vis吸収スペクトルを示す。
【
図12】TBS緩衝液中、pH7.6で測定された33・Euの光ルミネセンススペクトルを示す。
【
図13】TBS緩衝液中、pH7.6で測定された40・EuのUV-vis吸収スペクトルを示す。
【
図14】TBS緩衝液中、pH7.6で測定された40・Euの光ルミネセンススペクトルを示す。
【
図15】TBS緩衝液中、pH7.6で測定された43のUV-vis吸収スペクトルを示す。
【
図16】TBS緩衝液中、pH7.6で測定された43・EuのUV-vis吸収スペクトルを示す。
【
図17】TBS緩衝液中、pH7.6で測定された43・Euの光ルミネセンススペクトルを示す。
【
図23】約25mMの競合物質の存在下での1日にわたる積分発光強度の変化を示す。競合条件:5μM濃度のEu・43、約25mMの示した競合物質、TBS緩衝液pH=7.6。すべての試料を室温で24時間インキュベートした。
【
図24】250mM DTPA、pH=7.6の存在下での612nm(360nm励起)での積分発光強度の経時変化を示す。
【
図25】
図25A~
図25Cは、1日間室温でDMFに溶解したa)33出発物質、b)33・NHS反応生成物、c)33・NHS反応生成物の315nmで収集されたHPLCクロマトグラムである。所望の33・NHS反応生成物はすべて、1日間のインキュベーション内で未知の副反応によって消費されることに留意のこと。
【
図26】
図26A~26Cは、1日間室温でDMFに溶解したa)33・Ca出発物質、b)33・Ca・NHS反応生成物、およびc)33・Ca・NHS反応生成物の315nmで収集されたHPLCクロマトグラムである。前の実験とは異なり、33・Ca・NHS反応生成物は、1日間のインキュベーション後も残存することに留意のこと。
【
図27】
図27A~
図27Bは、1日間室温でDMFに溶解した33・Ca・NHS(上部)および33・Mg・NHS(下部)の315nmで収集されたHPLCクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
置換基が、左から右に書かれる従来の化学式によって特定される場合、それらは、右から左への構造を書くことから生ずる化学的に同一の置換基を任意選択で等しく包含し、例えば、-CH2O-はまた、-OCH2-を記載することを意図する。
【0013】
「アルキル」という用語は、それ自体で、または別の置換基の一部として、完全に飽和、一価または多価不飽和であり得、一価基、二価基、および多価基を含む、直鎖または分枝鎖炭化水素を意味する。飽和炭化水素ラジカルの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチルなどの基、例えば、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルなどの同族体および異性体が挙げられるが、それらに限定されない。不飽和アルキル基は、1つ以上の二重結合または三重結合(すなわち、アルケニルおよびアルキニル部分)を有するものである。不飽和アルキル基の例としては、ビニル、2-プロペニル、クロチル、2-イソペンテニル、2-(ブタジエニル)、2、4-ペンタジエニル、3-(1,4-ペンタジエニル)、エチニル、1-および3-プロピニル、3-ブチニル、ならびにより高級な同族体および異性体が挙げられるが、それらに限定されない。「アルキル」という用語は、それ自体で、または別の置換基の一部として、-CH2CH2CH2CH2-によって例示されるがこれらに限定されない、アルカンから誘導される二価基を意味する、「アルキレン」を指すことができる。典型的には、アルキル(またはアルキレン)基は、1~30個の炭素原子を有する。「低級アルキル」または「低級アルキレン」は、一般に8個以下の炭素原子を有する、より短い鎖のアルキルまたはアルキレン基である。いくつかの実施形態では、アルキルは、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21、C22、C23、C24、C25、C26、C27、C28、C29、およびC30アルキルから選択されるアルキルまたはアルキルの組み合わせを指す。いくつかの実施形態では、アルキルは、C1~C25アルキルを指す。いくつかの実施形態では、アルキルは、C1~C20アルキルを指す。いくつかの実施形態では、アルキルは、C1~C15アルキルを指す。いくつかの実施形態では、アルキルは、C1~C10アルキルを指す。いくつかの実施形態では、アルキルは、C1~C6アルキルを指す。
【0014】
「ヘテロアルキル」という用語は、それ自体で、または別の用語との組み合わせで、1個以上の炭素が、O、N、Si、およびS(好ましくはO、N、およびS)からなる群から選択される1個以上のヘテロ原子で置き換えられ、窒素原子および硫黄原子が任意選択で酸化され得、窒素ヘテロ原子が任意選択で四級化され得る、アルキルを指す。ヘテロ原子O、N、SiおよびSは、ヘテロアルキル基の任意の内部位置に、またはアルキル基が分子の残部に結合している位置に配置され得る。いくつかの実施形態では、ヘテロ原子が鎖の末端にあるか、または内部位置にあるかに応じて、ヘテロ原子は、ヘテロ原子価に応じて、1個以上のHまたは(C1、C2、C3、C4、C5、またはC6)アルキルなどの置換基に結合され得る。例には、-CH2-CH2-O-CH3、-CH2-CH2-NH-CH3、-CH2-CH2-N(CH3)-CH3、-CH2-S-CH2-CH3、-CH2-CH2,-S(O)-CH3、-CH2-CH2-S(O)2-CH3、-CH=CH-O-CH3、-Si(CH3)3、-CH2-CH=N-OCH3、および-CH=CH-N(CH3)-CH3が含まれるが、これらに限定されない。例えば-CH2-NH-OCH3および-CH2-O-Si(CH3)3のように、2つ以下のヘテロ原子が連続していてもよく、いくつかの場合では、これにより、ヘテロ原子置換の数が制限されてもよい。同様に、「ヘテロアルキレン」という用語は、それ自体で、または別の置換基の一部として、CH2-CH2-S-CH2-CH2-および-CH2-S-CH2-CH2-NH-CH2-によって例示されるがこれらに限定されない、ヘテロアルキルから誘導された二価基を意味する。アルキル、アルケニル、およびアルキニルのヘテロ形態(heteroform)における指定された炭素数には、ヘテロ原子数が含まれる。例えば、(C1、C2、C3、C4、C5、またはC6)ヘテロアルキルは、C、N、O、Si、およびSから選択される1、2、3、4、5、または6個の原子をそれぞれ含み、したがって、ヘテロアルキルは、少なくとも1つのC原子および少なくとも1つのヘテロ原子、例えば1~5個のCおよび1個のNまたは1~4個のCおよび2個のNを含む。さらに、ヘテロアルキルはまた、1つ以上のカルボニル基を含み得る。いくつかの実施形態では、ヘテロアルキルは、任意のC2~C30アルキル、C2~C25アルキル、C2~C20アルキル、C2~C15アルキル、C2~C10アルキル、またはC2~C6アルキルであり、それらのうちのいずれかにおいて、1個以上の炭素が、O、N、Si、およびSから(またはO、N、Sから)選択される1個以上のヘテロ原子で置き換えられている。いくつかの実施形態では、1、2、3、4、または5個の炭素の各々がヘテロ原子で置き換えられている。「アルコキシ」、「アルキルアミノ」、および「アルキルチオ」(またはチオアルコキシ)という用語は、従来の意味で使用され、それぞれ、酸素原子、窒素原子(例えば、アミン基)、または硫黄原子を介して分子の残りの部分に結合しているアルキルおよびヘテロアルキル基を指す。
【0015】
「シクロアルキル」および「ヘテロシクロアルキル」という用語は、それ自体で、または他の用語と組み合わせて、それぞれ、「アルキル」および「ヘテロアルキル」の環式形態を表す。加えて、ヘテロシクロアルキルの場合、ヘテロ原子は、複素環が分子の残部に結合している位置を占めることができる。シクロアルキルの例としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニル、シクロヘプチルなどが挙げられるが、それらに限定されない。ヘテロシクロアルキルの例としては、1-(1,2,5,6-テトラヒドロピリジル)、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-モルホリニル、3-モルホリニル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、テトラヒドロチエン-2-イル、テトラヒドロチエン-3-イル、1-ピペラジニル、2-ピペラジニルなどが挙げられるが、それらに限定されない。
【0016】
「アリール」という用語は、一緒に縮合しているかまたは共有結合している単環または任意選択で多環(好ましくは、1または2または3つの環)であり得る、多価不飽和芳香族置換基を意味する。いくつかの実施形態では、アリールは、1つまたは2つの他の3、4、5、6、7、または8員環に任意選択で融合している、3、4、5、6、7、または8員環である。「ヘテロアリール」という用語は、窒素および硫黄原子が任意選択で酸化され、窒素原子が任意選択で四級化されている、N、O、およびSから選択される1、2、3、または4個のヘテロ原子を含有するアリール置換基(または環)を指す。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を介して分子の残部に結合することができる。アリールおよびヘテロアリール基の非限定的な例には、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、4-ビフェニル、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-ピラゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、ピラジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、2-フェニル-4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ベンゾチアゾリル、プリニル、2-ベンズイミダゾリル、5-インドリル、1-イソキノリル、5-イソキノリル、2-キノキサリニル、5-キノキサリニル、3-キノリル、および6-キノリルが挙げられる。
【0017】
いくつかの実施形態では、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、およびヘテロアリールのうちのいずれかは、任意選択で置換されている。すなわち、いくつかの実施形態では、これらの基のいずれかが置換されているか、または置換されていない。いくつかの実施形態では、各種の基の置換基は、以下に提供されるものから選択される。
【0018】
アルキル基、ヘテロアルキル基、シクロアルキル基、およびヘテロシクロアルキル基(アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、およびヘテロシクロアルケニルとしばしば称される基を含む)の置換基を、総称して「アルキル基置換基」と称する。いくつかの実施形態では、アルキル基置換基は、ゼロから(2m’+1)の範囲である数の(式中、m’はそのような基の炭素原子の総数である)、-ハロゲン、-OR’、=O、=NR’、=N-OR’、-NR’R”、-SR’、-SiR’R”R”’、-OC(O)R’、-C(O)R’、-CO2R’、-CONR’R”、-OC(O)NR’R”、-NR”C(O)R’、-NR’-C(O)NR”R”’、-NR”C(O)2R’、-NR-C(NR’R”R’”)=NR””、-NR-C(NR’R”)=NR’”、-S(O)R’、-S(O)2R’、-S(O)2NR’R”、-NRSO2R’、-CN、および-NO2から選択される。一実施形態では、R’、R”、R”’、およびR””は、各々独立して、水素、アルキル(例えばC1、C2、C3、C4、C5、およびC6アルキル)から選択される。一実施形態では、R’、R”、R”’、およびR””は、各々独立して、水素、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、例えば1~3個のハロゲンで置換されたアリール、置換または非置換アルキル基、アルコキシ基、もしくはチオアルコキシ基、またはアリールアルキル基を指す。一実施形態では、R’、R”、R”’、およびR””は、各々独立して、水素、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、チオアルコキシ基、およびアリールアルキルから選択される。R’およびR”が同じ窒素原子に結合されるとき、それらは、窒素原子と組み合わさって、5、6、または7員環を形成することができる。例えば、-NR’R”は、1-ピロリジニルおよび4-モルホリニルを含むことができる。いくつかの実施形態では、アルキル基置換基は、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換ヘテロアリールから選択される。
【0019】
アルキルラジカルについて記載した置換基と同様に、アリール基およびヘテロアリール基の置換基は、総称して「アリール基置換基」と称される。いくつかの実施形態では、アリール基置換基は、ゼロから芳香環系上の空の原子価(open valence)の総数である範囲の数の、-ハロゲン、-OR’、=O、=NR’、=N-OR’、-NR’R”、-SR’、-SiR’R”R”’、-OC(O)R’、-C(O)R’、-CO2R’、-CONR’R”、-OC(O)NR’R”、-NR”C(O)R’、-NR’-C(O)NR”R”’、-NR”C(O)2R’、-NR-C(NR’R”R’”)=NR””、-NR-C(NR’R”)=NR’”、-S(O)R’、-S(O)2R’、-S(O)2NR’R”、-NRSO2R’、-CN、および-NO2、-R’、-N3、-CH(Ph)2、フルオロ(C1~C4)アルコキシ、およびフルオロ(C1~C4)アルキルから選択される。いくつかの実施形態では、R’、R”、R”’、およびR’’’’は、独立して、水素およびアルキル(例えば、C1、C2、C3、C4、C5、およびC6アルキル)から選択される。いくつかの実施形態では、R’、R”、R”’、およびR””は、独立して、水素、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換ヘテロアリールから選択される。いくつかの実施形態では、R’、R”、R”’、およびR””は、独立して、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、およびヘテロアリールから選択される。いくつかの実施形態では、アリール基置換基は、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換ヘテロアリールから選択される。
【0020】
アリール環またはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基のうちの2つは、任意選択で式-T-C(O)-(CRR’)q-U-の置換基で置き替えられてもよく、式中、TおよびUは、独立して、-NR-、-O-、-CRR’-、または単結合であり、qは0~3の整数である。あるいは、アリール環またはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基のうちの2つは、任意選択的に、式-A-(CH2)r-B-の置換基で置き換えられてもよく、式中、AおよびBは独立して、-CRR’-、-O-、-NR-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-S(O)2NR’-、または単結合であり、rは、1~4の整数である。そのようにして形成された新しい環の単結合のうちの1つは、任意選択的に、二重結合で置き換えられてもよい。あるいは、アリール環またはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基のうちの2つは、任意に式-(CRR’)s-X-(CR”R’”)d-の置換基で置き換えられてもよく、式中、sおよびdは、独立して、0~3の整数であり、Xは、-O-、-NR’-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、または-S(O)2NR’-である。置換基R、R’、R”、およびR’’’は好ましくは独立して、水素、または置換もしくは非置換(C1~C6)アルキルから選択される。
【0021】
「アシル」という用語は、部分-C(O)Rを含む種を指し、式中、Rは、本明細書で定義される意味を有する。Rの例示的な種としては、H、ハロゲン、置換または非置換アルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、および置換または非置換ヘテロシクロアルキルが挙げられる。いくつかの実施形態では、Rは、Hおよび(C1~C6)アルキルから選択される。
【0022】
「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、それら自体または別の置換基の一部として、特に明記しない限り、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素原子を意味する。加えて、「ハロアルキル」などの用語は、モノハロアルキルおよびポリハロアルキルを含むことを意味する。例えば、「ハロ(C1~C4)アルキル」という用語は、トリフルオロメチル、2、2、2-トリフルオロエチル、4-クロロブチル、3-ブロモプロピルなどを非限定的に含むことを意味する。いくつかの実施形態では、ハロゲンは、F、Cl、およびBrから選択される原子を指す。
【0023】
本明細書で使用する場合、「ヘテロ原子」という用語には、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、およびケイ素(Si)が含まれる。いくつかの実施形態では、ヘテロ原子は、NおよびSから選択される。いくつかの実施形態では、ヘテロ原子は、Oである。
【0024】
特に明記しない限り、記号「R」は、アシル、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換ヘテロアリールから選択される置換基を表す一般的な略語である。化合物が2つ以上のR、R’、R”、R’”、およびR””基を含む場合、それらは、各々独立して選択される。
【0025】
溶媒交換可能なプロトンを有する基の場合、イオン化形態も同様に企図される。例えば、-COOHはまた、-COO-を指し、-OHはまた、-O-を指す。
【0026】
本明細書に開示される化合物はいずれも、薬学的に許容される塩にすることができる。「薬学的に許容される塩」という用語は、本明細書に記載の化合物上に見出される特定の置換基に応じて、比較的非毒性の酸または塩基を用いて調製される化合物の塩を含む。本発明の化合物が比較的酸性の官能基を含有するとき、塩基付加塩は、かかる化合物の中性形態を、純粋なまたは好適な不活性溶媒中の十分な量の所望の塩基と接触させることによって、得ることができる。薬学的に許容される塩基付加塩の例には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノ、またはマグネシウム塩、または同様の塩が挙げられる。本発明の化合物が比較的塩基性の官能基を含む場合、酸付加塩は、そのような化合物の中性形態をニートでまたは好適な不活性溶媒中のいずれかで十分な量の所望の酸と接触させることによって得ることができる。薬学的に許容される酸付加塩の例には、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、炭酸一水素酸、リン酸、リン酸一水素酸、リン酸二水素酸、硫酸、硫酸一水素酸、ヨウ化水素酸、または亜リン酸などの無機酸から誘導されるもの;ならびに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などといった比較的非毒性の有機酸から誘導される塩が挙げられる。アルギン酸塩などのアミノ酸の塩、およびグルクロン酸またはガラクツロン酸などの有機酸の塩も含まれる(例えば、Berge et al.,Journal of Pharmaceutical Science,66:1-19(1977)を参照されたい)。本発明のある特定の化合物は、化合物を塩基付加塩または酸付加塩のいずれかに変換させることを可能にする塩基官能基および酸官能基の両方を含有する。中性形態の化合物は、好ましくは、塩を塩基または酸と接触させ、親化合物を従来の様式で単離することによって再生される。化合物の親形態は、極性溶媒中の溶解度などの特定の物理的性質において様々な塩形態とは異なるが、その他では、塩は、本発明の目的のために化合物の親形態と同じである。
【0027】
塩形態に加えて、本発明は、本明細書に開示される任意の化合物をプロドラッグ形態で提供する。本明細書に記載の化合物のプロドラッグは、生理学的条件下で容易に化学変化を受けて、本発明の化合物を提供する。
【0028】
本発明の特定の化合物は、非溶媒和形態、および水和形態を含む溶媒和形態で存在することができる。一般に、溶媒和形態は、非溶媒和形態と同等であり、本発明の範囲内に包含される。本発明の特定の化合物は、多数の結晶質または非晶質形態で存在し得る。一般に、すべての物理的形態は、本発明によって企図される使用に関して同等であり、本発明の範囲内であることが意図されている。
【0029】
本発明の化合物はまた、そのような化合物を構成する原子のうちの1つ以上において、非天然割合の原子同位体を含み得る。例えば、化合物は、重水素(2H)で標識されてもよく、または例えばトリチウム(3H)、ヨウ素-125(125I)、または炭素-14(14C)などの放射性同位体で放射性標識され得る。本発明の化合物のすべての同位体変種は、放射性であろうとなかろうと、本発明の範囲内に包含されることが意図される。
【0030】
結合に対して垂直に表示される記号
【化3】
は、表示された部分が分子の残りの部分に結合する点を示す。
【0031】
いくつかの実施形態では、本明細書で使用される用語の定義は、IUPACに従う。
【0032】
組成物
本発明は、多数の化合物(リガンド)およびそれらの金属イオン錯体を提供する。一般に、リガンドは、足場部分によって一緒に連結された複数のキレート部分を含む。
【0033】
本発明の化合物(リガンド)およびその金属イオン錯体は、標的化放射性同位体用途および増感発光用途(Eu増感発光イムノアッセイなど)に特に有用である。実施例に示されるように、本発明の化合物(リガンド)は、金属カチオンを安定的に配位結合させ、容易な錯体形成速度論を示し、Eu(III)では非常に高い水性量子収量を有する。
【0034】
抗癌治療のためのアルファキレート剤の設計において考慮すべきいくつかの要因がある。速度論以外の重要な問題のいくつかは、標的金属(Thなど)に対する高い親和性であり、同時に他の生物学的に重要な金属イオンとの交換速度を低くする必要がある。したがって、リガンド設計では、標的金属およびリガンドの電子特性を考慮して、一致させる。キレートはまた、所望の金属のための適切な配位空洞サイズおよび形状を想定することができなければならない。この場合、アクチニドイオンであるThは、「硬い(hard)」カチオンであり、大きい電荷対半径比を有する。したがって、Thは、「硬い」電子供与体および負に荷電した酸素ドナーを選好する。アクチニドイオンは高い密度のリガンドと安定な錯体を形成する傾向があるため、アクチニドイオンでは8以上の配位数が一般に好ましいが、トリウムの結合に対する選択性は、キレート単位の設計によって決まるであろう。DTPAなどの効果的ではあるが非選択的なアミノカルボン酸リガンドは、患者から必須の生物学的金属イオンを枯渇させ、これにより深刻な健康問題を引き起こし得る。したがって、特定の金属イオンに対して高い選択性を達成するには、正しい種類のキレート単位を選択することが重要である。
【0035】
リガンドは、多数のキレート部分を含むことができる。特に有用なリガンドは、例えば、金属イオンと配位して錯体を形成する酸素などの6、8、または10個のヘテロ原子を提供するのに十分な多くのキレート部分を含む。酸素などのヘテロ原子は、正に荷電したイオンと配位結合を形成するための電子密度を提供し、したがって、そのようなヘテロ原子は「供与体」とみなすことができる。いくつかの実施形態では、リガンドの複数のキレート部分は、複数の酸素供与体を含み、金属イオン(放射性核種など)は、少なくとも1つの酸素供与体を介してリガンドにキレート化される。いくつかの実施形態では、リガンドは、複数の酸素供与体を含み、金属イオン(放射性核種など)は、複数またはすべての酸素供与体を介してリガンドにキレート化される。
【0036】
リガンド
一態様では、本発明は、以下の構造を有する化合物(リガンド)であって、
【化4】
式中、L
1およびL
2は、独立して選択される足場部分であり、A
b1およびA
b2は、独立して選択される架橋キレート部分であり、A
p1およびA
p2は、独立して選択されるペンダントキレート部分である、化合物を提供する。足場部分、架橋キレート部分、およびペンダントキレート部分は、本明細書で定義される通りである。
【0037】
L1、L2、Ab1、Ab2、Ap1、およびAp2の任意の組み合わせがこの開示に包含され、本発明により具体的に提供される。
【0038】
いくつかの実施形態では、化合物(リガンド)は、反応性官能基へのリンカーまたは標的化部分へのリンカーを含む。いくつかの実施形態では、L1、L2、Ap1、およびAp2のうちの少なくとも1つは、反応性官能基へのリンカーまたは標的化部分へのリンカーで置換される。反応性官能基へのリンカーおよび標的化部分へのリンカーは、本明細書で定義される通りである。いくつかの実施形態では、官能性部分は、反応性官能基または保護された官能基である。
【0039】
いくつかの実施形態では、化合物(リガンド)は、1つ以上の修飾部分を含む。修飾部分は、同じまたは異なり得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、A
b1およびA
b2が、各々、
【化5】
である場合、化合物は、反応性官能基へのリンカーまたは標的化部分へのリンカーを含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、A
b1およびA
b2が、各々、
【化6】
である場合、化合物は、反応性官能基へのリンカーまたは標的化部分へのリンカーを含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、WO2013/187971A2に開示される化合物(リガンド)は除外される。
【0043】
いくつかの実施形態では、化合物(リガンド)は、以下の構造を有さず、
【化7】
式中、各A
p1は、WO2013/187971A2の段落[0052]に定義される通りであり、式中、各A
p1は、独立して、以下から選択され、
【化8】
式中、R
sは、可溶化基を含み、
R
11は、非置換C
1、C
2、C
3、C
4、C
5、またはC
6アルキルである。
【0044】
いくつかの実施形態では、化合物(リガンド)は、以下の構造を有さない:
【化9】
(WO2013/187971A2の段落[0054]を参照のこと)。
【0045】
足場部分
いくつかの実施形態では、L
1は、以下の構造を有し、
【化10】
式中、L
1a、L
1b、L
1c、L
x6、R
L1、およびR
L2は、本明細書で定義される通りである。L
1a、L
1b、L
1c、L
x6、R
L1、およびR
L2の任意の組み合わせがこの開示に包含され、本発明により具体的に提供される。
【0046】
いくつかの実施形態では、L1は、反応性官能基へのリンカーまたは標的化部分へのリンカーで置換されている。
【0047】
いくつかの実施形態では、L
1は、以下の構造を有し、
【化11】
式中、L
1aは、本明細書で定義される通りである。
【0048】
いくつかの実施形態では、L1aは、置換または非置換アルキル、置換または非置換アルケニル、置換または非置換アルキニル、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換シクロアルケニル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換アリールアルキル、置換または非置換ビアリール、置換または非置換ヘテロアリール、および置換または非置換多環式環系から選択される。
【0049】
いくつかの実施形態では、L
1aは、以下の構造を有し、
【化12】
式中、R
e1、R
e2、R
e3、およびR
e4は、独立して、H、シアノ、置換または非置換アルキル、置換または非置換アルケニル、置換または非置換アルキニル、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換シクロアルケニル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換ヘテロアリールから選択され、R
e1、R
e2、R
e3、およびR
e4から選択される少なくとも2つのメンバーは、それらが結合している原子と一緒に、任意選択で結合されて、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換シクロアルケニル、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリールから選択される置換または非置換環(または環系)を形成する。いくつかの実施形態では、R
e1またはR
e2、およびR
e3またはR
e4は、水素である。
【0050】
好ましい実施形態では、L
1aは、以下の構造を有し、
【化13】
式中、R
e2およびR
e3は、本明細書で定義される通りである。
【0051】
いくつかの実施形態では、L
1aは、
【化14】
から選択され、
式中、nは、0、1、2、3、4、5、および6から選択される整数である。各Rは、本明細書で定義される通りである。R
1およびR
1aは、上記の構造を参照して互換的に使用される。好ましい実施形態では、R
1aは、独立して、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、および修飾部分から選択され、Xは、O、S、またはCH
2である。
【0052】
好ましい実施形態では、L1aは、5員環部分および6員環部分から選択されるメンバーである。
【0053】
別の好ましい実施形態では、L1aは、5員環部分および6員環部分から選択されるメンバーであり、5員環部分または6員環部分は、縮合環系の一部である。
【0054】
段落[0032]による別の好ましい実施形態では、任意の含意の水素は、置換または非置換アルキル、およびCまたはヘテロ原子から選択される1、2、3、4、5、6、7、8、9員の置換または非置換ヘテロアルキルから選択することができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、上記で示したL1a部分の任意の潜在的な水素原子は、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換ヘテロアルキル、または修飾部分によって任意選択で置き換えられる。
【0056】
いくつかの実施形態では、L1aは、非置換のC1、C2、または直鎖状C3アルキルではない。いくつかの実施形態では、L1aは、非置換直鎖アルキルではない。いくつかの実施形態では、L1aは、非置換アルキルではない。
【0057】
好ましい実施形態では、L
1aは、以下から選択され、
【化15】
式中、Rは、本明細書で定義される通りである。
【0058】
別の好ましい実施形態では、L
1aは、以下から選択され、
【化16】
式中、n=0、1、2、または3である。
【0059】
別の好ましい実施形態では、L
1aは、以下から選択され、
【化17】
式中、n=0、1、2、または3であり、Rは、本明細書で定義される通りである。
【0060】
別の好ましい実施形態では、L
1aは、以下の構造を有する。
【化18】
【0061】
いくつかの実施形態では、L
1aは、以下から選択され、
【化19】
式中、nは、0、1、2、3、4、5、および6から選択される整数であり、Rは、本明細書で定義される通りである。
【0062】
いくつかの実施形態では、L1aは、反応性官能基へのリンカーまたは標的化部分へのリンカーで置換される。
【0063】
いくつかの実施形態では、L1bおよびL1cは、独立して、結合、-C(O)-、置換または非置換アルキル、および置換または非置換ヘテロアルキルから選択される。
いくつかの実施形態では、独立して、L1bおよびL1cは、結合、-C(O)-、-(CH2)aC(O)-、および-O(CH2)aC(O)-から選択され、式中、aは、1、2、3、4、5、および6から選択される整数である。
いくつかの実施形態では、L1bおよびL1cは、各々、-C(O)-である。
【0064】
いくつかの実施形態では、L
1は、以下の構造を有する。
【化20】
【0065】
いくつかの実施形態では、L
2は、以下の構造を有し、
【化21】
式中、L
2a、L
2b、L
2c、L
2d、L
2e、L
2f、L
2g、R
L3、およびR
L4は、本明細書で定義される通りである。L
2a、L
2b、L
2c、L
2d、L
2e、L
2f、L
2g、R
L3、およびR
L4の任意の組み合わせがこの開示に包含され、本発明により具体的に提供される。
【0066】
いくつかの実施形態では、L2は、反応性官能基へのリンカーまたは標的化部分へのリンカーで置換される。
【0067】
いくつかの実施形態では、L
2は、以下の構造を有し、
【化22】
式中、L
2a、L
2b、およびL
2cは、本明細書で定義される通りである。L
2a、L
2b、およびL
2cの任意の組み合わせがこの開示に含まれ、本発明により具体的に提供される。
【0068】
いくつかの実施形態では、A
p1-L
2-A
p2は、以下の構造を有し、
【化23】
式中、L
2a、L
2b、L
2c、L
2d、L
2e、L
2f、L
2g、R
L3、R
L4、A
p1、およびA
p2は、本明細書で定義される通りである。L
2a、L
2b、L
2c、L
2d、L
2e、L
2f、L
2g、R
L3、R
L4、A
p1、およびA
p2の任意の組み合わせがこの開示に包含され、本発明によって具体的に提供される。
【0069】
いくつかの実施形態では、A
p1-L
2-A
p2は、以下の構造を有し、
【化24】
式中、L
2a、L
2b、L
2c、A
p1、およびA
p2は、本明細書で定義される通りである。L
2a、L
2b、L
2c、A
p1、およびA
p2の任意の組み合わせがこの開示に包含され、本発明により具体的に提供される。
【0070】
いくつかの実施形態では、L2a、L2b、およびL2cは、独立して、置換または非置換アルキルおよび置換または非置換ヘテロアルキルから選択される。
【0071】
いくつかの実施形態では、L2a、L2b、およびL2cは、独立して、置換または非置換C1~C8アルキルから選択される。
【0072】
いくつかの実施形態では、L2aおよびL2cは、独立して、置換または非置換C2、C3、およびC4アルキルから選択され、L2bは、置換または非置換C2、C3、C4およびC5アルキルから選択される。
【0073】
いくつかの実施形態では、L2a、L2b、およびL2cのうちの1つ以上は、反応性官能基へのリンカーまたは標的化部分へのリンカーで置換されている。いくつかの実施形態では、L2aは、反応性官能基へのリンカーまたは標的化部分へのリンカーで置換される。いくつかの実施形態では、L2bは、反応性官能基へのリンカーまたは標的化部分へのリンカーで置換される。いくつかの実施形態では、L2cは、反応性官能基へのリンカーまたは標的化部分へのリンカーで置換される。
【0074】
いくつかの実施形態では、L2d、L2e、L2f、およびL2gは、独立して、結合、-C(O)-、置換または非置換アルキル、および置換または非置換ヘテロアルキルから選択される。
いくつかの実施形態では、L2d、L2e、L2fおよびL2gは、独立して、結合、-C(O)-、-(CH2)aC(O)-、および-O(CH2)aC(O)-から選択され、式中、aは、1、2、3、4、5、および6から選択される整数である。
いくつかの実施形態ではL2d、L2e、L2f、およびL2gは、各々、-C(O)-である。
【0075】
いくつかの実施形態では、RL3およびRL4は、水素、独立して、置換または非置換アルキル、および置換または非置換ヘテロアルキルから選択される。
いくつかの実施形態では、RL3およびRL4は、各々、Hである。
【0076】
いくつかの実施形態では、A
p1-L
2-A
p2は、以下の構造を有し、
【化25】
式中、L
x1、L
x2、L
x3、L
x4、およびL
x5は、本明細書で定義される通りである。
【0077】
いくつかの実施形態では、Lx1、Lx2、Lx3、Lx4、Lx5、およびLx6は、独立して、H、反応性官能基へのリンカー、および標的化部分へのリンカーから選択される。いくつかの実施形態では、Lx1、Lx2、Lx3、Lx4、Lx5、およびLx6のうちの少なくとも1つは、反応性官能基へのリンカーまたは標的化部分へのリンカーである。
【0078】
いくつかの実施形態では、Lx1は、反応性官能基へのリンカーまたは標的化部分へのリンカーであり、Lx2、Lx3、Lx4、Lx5、およびLx6は、各々、Hである。
いくつかの実施形態では、Lx2は、反応性官能基へのリンカーまたは標的化部分へのリンカーであり、Lx1、Lx3、Lx4、Lx5、およびLx6は、各々、Hである。いくつかの実施形態では、Lx3は、反応性官能基へのリンカーまたは標的化部分へのリンカーであり、Lx1、Lx2、Lx4、Lx5、およびLx6は、各々、Hである。いくつかの実施形態では、Lx4は、反応性官能基へのリンカーまたは標的化部分へのリンカーであり、Lx1、Lx2、Lx3、Lx5、およびLx6は、各々、Hである。いくつかの実施形態、LX5は、反応性官能基へのリンカーまたは標的化部分へのリンカーであり、Lx1、Lx2、Lx3、Lx4、およびLx6は、各々、Hである。いくつかの実施形態では、LX6は、反応性官能基へのリンカーまたは標的化部分へのリンカーであり、Lx1、Lx2、Lx3、Lx4、およびLx5は、各々、Hである。
【0079】
いくつかの実施形態では、A
p1-L
2-A
p2は、以下の構造を有し、
【化26】
式中、L
x1およびL
x2は、本明細書で定義される通りである。
【0080】
様々な実施形態では、本発明は、以下から選択される化合物を提供し、
【化27】
式中、L
1aは、置換または非置換アルキル、置換または非置換アルケニル、置換または非置換アルキニル、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換シクロアルケニル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換アリールアルキル、置換または非置換ビアリール、置換または非置換ヘテロアリール、および置換または非置換多環式環系から選択される。L
x6は、H、反応性官能基へのリンカー、および標的化部分へのリンカーから選択される。L
2a、L
2b、およびL
2cは、独立して、置換または非置換アルキルおよび置換または非置換ヘテロアルキルから選択される。
【0081】
様々な実施形態では、本発明は、以下から選択される化合物を提供し、
【化28】
式中、L
x1およびL
x6は、独立して、H、反応性官能基へのリンカー、および標的化部分へのリンカーから選択される。
【0082】
足場部分、特にL2の前駆体は、WO2016/106241A1に開示されているように合成することができる。この開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0083】
キレート部分
いくつかの実施形態では、A
b1、A
b2、A
p1、およびA
p2は、独立して、以下から選択され、
【化29】
式中、AおよびGは、独立して、炭素、窒素、および酸素から選択され、
Jは、炭素および窒素から選択される。各R
1およびR
2は、独立して、H、酵素的に不安定な基、加水分解的に不安定な基、代謝的に不安定な基、光分解的に不安定な基、および単一の負電荷から選択される。各R
6、R
7、R
8、R
9、およびR
10は、独立して、L
1またはL
2への結合、L
1またはL
2に結合されたアルカンジイル、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、ハロゲン、CN、-CF
3、-C(O)R
17、-SO
2NR
17R
18、-NR
17R
18、-OR
17、-S(O)
2R
17、-COOR
17、-S(O)
2OR
17、-OC(O)R
17、-C(O)NR
17R
18、-NR
17C(O)R
18、-NR
17SO
2R
18、および-NO
2から選択され、式中、R
6、R
7、R
8、R
9、およびR
10のうちの少なくとも2つは、任意選択で結合して、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換ヘテロアリールから選択される環系を形成する。R
17およびR
18は、独立して、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、および置換または非置換ヘテロシクロアルキルから選択され、R
17およびR
18は、それらが結合している原子と一緒に、任意選択で結合されて、5、6、または7員環を形成する。Aが酸素である場合、R
9は存在せず、Gが酸素である場合、R
7は存在しない。A
b1およびA
b2は、R
6、R
7、R
8、R
9、およびR
10から選択される2つのメンバーを介してL
1およびL
2に結合され、A
p1およびA
p2は、R
6、R
7、R
8、R
9、およびR
10から選択されるメンバーを介してL
2に結合される。
【0084】
いくつかの実施形態では、Ab1が式(I)による構造を有する場合、Ab1は、R6およびR10を介してL1およびL2に結合され、Ab1が式(II)または(III)による構造を有する場合、Ab1は、R6およびR9を介してL1およびL2に結合され、Ab2が式(I)による構造を有する場合、Ab2は、R6およびR10を介してL1およびL2に結合され、Ab2が式(II)または(III)による構造を有する場合、Ab2は、R6およびR9を介してL1およびL2に結合され、Ap1が式(I)による構造を有する場合、Ap1は、R6またはR10を介してL2に結合され、Ap1が式(II)または(III)による構造を有する場合、Ap1は、R6またはR9を介してL2に結合され、Ap2が式(I)による構造を有する場合、Ap2は、R6またはR10を介してL2に結合され、Ap2が式(II)または(III)による構造を有する場合、Ap2は、R6またはR9を介してL2に結合されている。
【0085】
いくつかの実施形態では、A
b1、A
b2、A
p1、およびA
p2は、各々独立して、以下から選択される:
【化30】
【0086】
いくつかの実施形態では、Ab1が式(1)による構造を有する場合、Ab1は、R6およびR10を介しL1およびL2に結合され、Ab1が式(2a)、(2b)、(3)、(4)、または(5)による構造を有する場合、Ab1は、R6およびR9を介してL1およびL2に結合され、Ab2が式(1)による構造を有する場合、Ab2は、R6およびR10を介してL1およびL2に結合され、Ab2が式(2a)、(2b)、(3)、(4)、または(5)による構造を有する場合、Ab2は、R6およびR9を介してL1およびL2に結合され、Ap1が式(1)による構造を有する場合、Ap1は、R6またはR10を介してL2に結合され、Ap1が式(2a)、(2b)、(3)、(4)、または(5)に記載の構造を有する場合、Ap1は、R6またはR9を介してL2に結合され、Ap2が式(1)による構造を有する場合、Ap2は、R6またはR10を介してL2に結合され、Ap2が式(2a)、(2b)、(3)、(4)、または(5)による構造を有する場合、Ap2は、R6またはR9を介してL2に結合されている。
【0087】
好ましい実施形態では、各Ab1、Ab2、Ap1およびAp2は、式(2b)による構造を有する。
【0088】
別の好ましい実施形態では、各Ab1、Ab2、Ap1、およびAp2は、式(2a)による構造を有する。
【0089】
別の好ましい実施形態では、各Ab1、Ab2、Ap1、およびAp2は、式(1)による構造を有する。
【0090】
様々な実施形態では、A
b1およびA
b2が独立して、以下から選択されるメンバーである化合物が提供され、
【化31】
式中、R
7,およびR
8は、独立して、L
1またはL
2への結合、L
1またはL
2に結合されたアルカンジイル、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、ハロゲン、CN、-CF
3、-C(O)R
17、-SO
2NR
17R
18、-NR
17R
18、-OR
17、-S(O)
2R
17、-COOR
17、-S(O)
2OR
17、-OC(O)R
17、-C(O)NR
17R
18、-NR
17C(O)R
18、-NR
17SO
2R
18、および-NO
2から選択され、式中、R
6、R
7、R
8、R
9、およびR
10のうちの少なくとも2つは、任意選択で結合して、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換ヘテロアリールから選択される環系を形成する。R
17およびR
18は、独立して、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、および置換または非置換ヘテロシクロアルキルから選択され、R
17およびR
18は、それらが結合している原子と一緒に、任意選択で結合されて、5、6、または7員環を形成する。
【0091】
いくつかの実施形態では、A
b1およびA
b2は、各々独立して、以下を含む部分から選択される:
【化32】
【0092】
いくつかの実施形態では、A
b1およびA
b2ならびにそれらの組み合わせから選択されるメンバーは、以下を含む部分ではない。
【化33】
【0093】
いくつかの実施形態では、A
b1およびA
b2は、各々独立して、以下を含む部分から選択される。
【化34】
【0094】
いくつかの実施形態では、A
p1およびA
p2は、各々独立して、以下を含む部分から選択される:
【化35】
【0095】
いくつかの実施形態では、A
p1およびA
p2は、各々独立して、以下を含む部分から選択される。
【化36】
【0096】
いくつかの実施形態では、A
p1およびA
p2は、各々、以下を含む部分である。
【化37】
【0097】
いくつかの実施形態では、Ap1およびAp2の一方または両方は、修飾部分を含む。修飾部分は、本明細書で定義される通りである。いくつかの実施形態では、Ap1、Ap2、またはAp1、およびAp2のR9は、修飾部分を含む。いくつかの実施形態では、Ap1、Ap2、またはAp1、およびAp2のR9は、-C(O)NR17R18であり、R17は、Hであり、R18は、修飾部分である。いくつかの実施形態では、Ap1、Ap2、またはAp1、およびAp2のR6は、修飾部分を含む。いくつかの実施形態では、Ap1、Ap2、またはAp1、およびAp2のR6は-C(O)NR17R18であり、R17は、Hであり、R18は、修飾部分である。例示的な実施形態では、R6およびR9の一方または両方は、COOHまたはCOO-である。
【0098】
官能性/標的化部分へのリンカー
本明細書で使用される「リンカー」、「連結メンバー」、または「連結部分」は、共有結合または非共有結合により、第1の部分を第2の部分に結合する部分である。特に、リンカーは、本明細書に記載されるリガンドを標的化部分などの別の分子に結合させることができる。いくつかの実施形態では、リンカーは、本明細書に記載のリガンドを固体支持体に結合させることができる。目的の構造をリンカーに結合するために、目的の構造上の反応性官能基とさらに反応することができる反応性官能基を含むリンカーは、「官能化(functionalized)リンカー」と称される。例示的な実施形態では、リンカーは、官能化リンカーである。例示的な実施形態では、リガンドは、1つ以上の官能化リンカーを含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、標的化部分を含む。いくつかの実施形態では、標的化部分へのリンカーは、標的化部分への結合を含む。
いくつかの実施形態では、リンカーは、官能性部分へのリンカーまたは標的化部分へのリンカーである。いくつかの実施形態では、官能性部分は、反応性官能基または保護された官能基である。いくつかの実施形態では、リンカーは、反応性官能基へのリンカーまたは標的化部分へのリンカーである。
【0099】
リンカーは、リガンドを反応性官能基または抗体などの標的化部分に結合するための任意の有用な構造であり得る。リンカーの例には、0次リンカー(すなわち、結合)、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換ヘテロアリールが含まれる。さらなる例示的なリンカーには、置換または非置換(C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、またはC10)アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、-C(O)NR’-、-C(O)O-、-C(O)S-、および-C(O)CR’R’’が含まれ、式中、R’およびR’’は、独立して、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、および置換または非置換ヘテロシクロアルキルから独立して選択されるメンバーである。いくつかの実施形態では、リンカーは、少なくとも1つのヘテロ原子を含む。例示的なリンカーにはまた、-C(O)NH-、-C(O)、-NH-、-S-、-O-などが含まれる。例示的な実施形態では、リンカーは、反応性官能基で置換されたヘテロアルキルである。
【0100】
反応性官能基
一実施形態では、リンカーは、反応性官能基(または同義的に使用される「反応性官能部分」)を含み、該反応性官能基をさらに反応させて、リンカーを標的化部分に共有結合させることができる。本発明の実施に有用な反応性官能基および反応のクラスは、一般に、バイオコンジュゲート化学の分野で周知のものである。本発明の反応性官能基と共に利用可能な現在好ましいクラスの反応は、比較的穏やかな条件下で進行するものである。これらには、求核置換(例えば、アミンおよびアルコールとハロゲン化アシルおよび活性化エステルとの反応)、求電子置換(例えば、エナミン反応)、および炭素-炭素および炭素-ヘテロ原子多重結合への付加(例えば、マイケル反応およびディールス・アルダー反応)が含まれるが、これらに限定されない。これらおよび他の有用な反応は、例えば、March,Advanced OrganicChemistry(3rd Ed.,John Wiley & Sons,New York,1985)、Hermanson,Bioconjugate Techniques(Academic Press,San Diego,1996)、およびFeeney et al.,Modification of Proteins,Advances inChemistry Series,Vol.198(AmericanChemical Society,Washington,D.C.,1982)で考察されている。
【0101】
いくつかの実施形態では、反応性官能基は、オレフィン、アセチレン、アルコール、フェノール、エーテル、酸化物、ハロゲン化物、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、エステル、アミド、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、アミン、ヒドラジン、ヒドラゾン、ヒドラジド、ジアゾ、ジアゾニウム、ニトロ、ニトリル、メルカプタン、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホン酸、スルフィン酸、アセタール、ケタール、無水物、硫酸塩、スルフェン酸、イソニトリル、アミジン、イミド、イミデート、ニトロン、ヒドロキシルアミン、オキシム、ヒドロキサム酸、チオヒドロキサム酸、アレン、オルトエステル、亜硫酸塩、エナミン、イナミン、尿素、プソイド尿素(pseudourea)、セミカルバジド、カルボジイミド、カルバメート、イミン、アジド、アゾ化合物、アゾキシ化合物、およびニトロソ化合物から選択される基を指す。反応性官能基にはまた、バイオコンジュゲートを調製するために使用されるもの、例えば、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、マレイミドなどが含まれる。これらの官能基の各々を調製する方法は、当該技術分野で周知であり、特定の目的のためのそれらの適用または修飾は、当業者の能力の範囲内である(例えば、Sandler and Karo,eds.,Organic Functional Group Preparations,(Academic Press,San Diego,1989))を参照のこと)。
【0102】
反応性官能基は、選択した反応パートナーに応じて選択することができる。例として、NHSエステルなどの活性化エステルは、リジン残基を介してタンパク質を標識するのに役立つ。マレイミドなどのスルフヒドリル反応基は、SH基を有するアミノ酸残基(システインなど)を介してタンパク質を標識するために使用することができる。抗体は、最初にそれらの炭水化物部分を(例えば過ヨウ素酸塩を用いて)酸化し、得られたアルデヒド基をヒドラジン含有リガンドと反応させることにより標識し得る。
【0103】
反応性官能基は、それらが反応性リガンドを構築するのに必要な反応に関与しないか、または干渉しないように選択することができる。あるいは、反応性官能基は、保護基によって、反応への関与から保護することができる。当業者は、選択された一連の反応条件を妨げないように特定の官能基を保護する方法を理解するであろう。有用な保護基の例については、例えば、Greene et al.,PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS,John Wiley&Sons,New York,1991を参照のこと。
【0104】
アミンおよびアミノ反応性基
一実施形態では、反応性官能基は、アミン(一級または二級アミンなど)、ヒドラジン、ヒドラジド、およびスルホニルヒドラジドから選択される。アミンは、例えば、アシル化、アルキル化、または酸化することができる。アミノ反応性基の有用な非限定的な例には、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、硫黄-NHSエステル、イミドエステル、イソシアネート、イソチオシアネート、ハロゲン化アシル、アリールアジド、p-ニトロフェニルエステル、アルデヒド、塩化スルホニル、チアゾリド、およびカルボキシル基が含まれる。
【0105】
NHSエステルおよびスルホ-NHSエステルは、反応パートナーの第一級(芳香族を含む)アミノ基と優先的に反応する。ヒスチジンのイミダゾール基は、反応について第一級アミンと競合することが既知であるが、反応生成物は不安定であり、容易に加水分解される。反応には、アミドを形成して、N-ヒドロキシスクシンイミドを放出するために、NHSエステルの酸カルボキシルに対するアミンの求核攻撃が含まれる。
【0106】
イミドエステルは、タンパク質などの分子のアミン基との反応のための最も特異的なアシル化試薬である。7~10のpHでは、イミドエステルは、第一級アミンとのみ反応する。第一級アミンは、イミデートを求核的に攻撃して中間体を生成し、該中間体は、高pHでアミジンに分解し、または低pHで新しいイミデートに分解する。新しいイミデートは別の第一級アミンと反応することにより、2つのアミノ基が架橋されるが、これは、推定上単官能性イミデートが二官能性で反応する場合である。第一級アミンとの反応の主生成物は、元のアミンよりも強い塩基であるアミジンである。したがって、元のアミノ基の正電荷は保持される。結果として、イミドエステルは、結合体の全体的な電荷に影響を与えない。
【0107】
イソシアネート(およびイソチオシアネート)は、結合体の第一級アミンと反応して安定した結合を形成する。スルフヒドリル、イミダゾール、およびチロシル基とのそれらの反応により、比較的不安定な生成物が得られる。
【0108】
アシルアジドはまた、アミノ特異的試薬としても使用されてもよく、反応パートナーの求核性アミンが、弱アルカリ性の条件下、例えばpH8.5で酸性カルボキシル基を攻撃する。
【0109】
1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼンなどのハロゲン化アリールは、結合体のアミノ基およびチロシンフェノール基と優先的に反応するが、そのスルフヒドリル基およびイミダゾール基とも反応する。
【0110】
カルボン酸のp-ニトロフェニルエステルも、有用なアミノ反応性基である。試薬の特異性はあまり高くないが、α-およびε-アミノ基が最も急速に反応するようである。
【0111】
アルデヒドは、結合体成分の第一級アミン(例、リジン残基のε-アミノ基)と反応する。シッフ塩基は、不安定であるが、タンパク質アミノ基とアルデヒドとの反応で形成される。しかし、シッフ塩基は、別の二重結合に結合されている場合は安定している。両方の二重結合の共鳴相互作用は、シッフ結合の加水分解を防ぐ。さらに、高い局所濃度のアミンは、エチレン性二重結合を攻撃して、安定したマイケル付加生成物を形成することができる。あるいは、還元的アミノ化により、安定した結合が形成され得る。
【0112】
芳香族塩化スルホニルは、結合体の様々な部位と反応するが、アミノ基との反応が最も重要であり、これは安定したスルホンアミド結合をもたらす。
【0113】
遊離カルボキシル基は、水および有機溶媒の両方に可溶なカルボジイミドと反応して、プソイド尿素を形成し、次いで、該プソイド尿素を利用可能なアミンに結合し、アミド結合を生成する。Yamada et al.,Biochemistry,1981,20:4836-4842は、例えば、タンパク質をカルボジイミドで修飾する方法を教示する。
【0114】
スルフヒドリルおよびスルフヒドリル反応性基
別の実施形態では、反応性官能基は、スルフヒドリル基(これはジスルフィドに変換することができる)およびスルフヒドリル反応性基から選択される。スルフヒドリル反応性基の有用な非限定的な例には、マレイミド、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アシル(ブロモアセトアミドまたはクロロアセトアミドを含む)、ピリジルジスルフィド、およびチオフタルイミドが含まれる。
【0115】
マレイミドは、結合体のスルフヒドリル基と優先的に反応して、安定したチオエーテル結合を形成する。それらはまた、ヒスチジンの第一級アミノ基およびイミダゾール基と非常に遅い速度で反応する。しかしながら、pH7では、マレイミド基は、スルフヒドリル特異的な基とみなすことができるが、それは、このpHでは、単純なチオールの反応速度が、対応するアミンの反応速度よりも1000倍大きいためである。
【0116】
ハロゲン化アルキルは、スルフヒドリル基、硫化物、イミダゾール、およびアミノ基と反応する。しかしながら、中性から弱アルカリ性のpHでは、ハロゲン化アルキルは、スルフヒドリル基と主に反応して、安定したチオエーテル結合を形成する。高いpHでは、アミノ基との反応が優先される。
【0117】
ピリジルジスルフィドは、ジスルフィド交換により遊離スルフヒドリル基と反応して、混合ジスルフィドを生成する。結果として、ピリジルジスルフィドは、比較的特異的なスルフヒドリル反応基である。
【0118】
チオフタルイミドは、遊離スルフヒドリル基と反応してジスルフィドも形成する。
【0119】
他の反応性官能基
他の例示的な反応性官能基には、以下が含まれる:
(i)N-ヒドロキシベンズトリアゾールエステル、酸ハロゲン化物、アシルイミダゾール、チオエステル、p-ニトロフェニルエステル、アルキル、アルケニル、アルキニル、および芳香族エステルを含むがこれらに限定されない、カルボキシル基およびその様々な誘導体、
(ii)エステル、エーテル、アルデヒドなどに変換することができる、ヒドロキシル基、
(iii)ハロゲン化物が、求核基、例えば、アミン、カルボン酸アニオン、チオールアニオン、カルバニオン、またはアルコキシドイオンなどで置換され、それにより、ハロゲン原子の部位に新たな基の共有結合が得られる、ハロアルキル基、
(iv)ディールス・アルダー反応に関与することができるジエノフィル基、例えばマレイミド基など、
(v)カルボニル誘導体、例えばイミン、ヒドラゾン、セミカルバゾン、もしくはオキシムなどの形成により、またはグリニャール付加もしくはアルキルリチウム付加などの作用機序により、その後の誘導体化が可能であるような、アルデヒドまたはケトン基、
(vi)例えば、付加環化、アシル化、マイケル付加などを受けることができる、アルケン、
(vii)例えば、アミンおよびヒドロキシル基と反応することができる、エポキシド、
(ix)ホスホルアミダイトおよび核酸合成に有用な他の標準的な官能基、
(x)官能化リガンドと分子実体または表面との間の共有結合を形成するのに有用な他の官能基。
【0120】
非特異的反応性を有する官能基
部位特異的反応性部分の使用に加えて、本発明は、リガンドを標的化部分に連結するための非特異的反応性基の使用を企図する。非特異的基には、例えば、光活性化可能な基が含まれる。
【0121】
光活性化可能な基は、理想的には暗所で不活性であり、光の存在下で反応性種に変換される。一実施形態では、光活性化可能な基は、アジドの加熱または光分解時に生成されるニトレンの前駆体から選択される。電子不足ニトレンは、非常に反応性であり、N-H、O-H、C-H、およびC=Cを含む様々な化学結合と反応する。3種類のアジド(アリール、アルキル、およびアシル誘導体)を使用し得るが、ここでは、アリールアジドが好ましい。光分解時のアリールアジドの反応性は、C-H結合よりもN-HおよびO-Hの方が良好である。電子不足アリールニトレンは、急速に環拡大してデヒドロアゼピンを形成し、該デヒドロアゼピンは、求核試薬と反応しやすく、C-H挿入生成物を形成しない。アリールアジドの反応性は、環中にニトロ基およびヒドロキシル基などの電子求引性置換基が存在することによって増加させることができる。そのような置換基は、アリールアジドの最大吸収をより長い波長に押し上げる。非置換アリールアジドは、260~280nmの範囲の最大吸収を有し、ヒドロキシおよびニトロアリールアジドは、305nm超の有意な光を吸収する。したがって、ヒドロキシおよびニトロアリールアジドは、非置換アリールアジドよりも、親和性成分のためのより害の少ない光分解条件使用することができるため、最も好ましい。
【0122】
別の好ましい実施形態では、光活性化可能な基は、フッ素化アリールアジドから選択される。フッ素化アリールアジドの光分解生成物はアリールニトレンであり、そのすべてが、C-H結合挿入を含むこの基の特徴的な反応を高効率で受ける(Keana et al.,J.Org.Chem.55:3640-3647,1990)。
【0123】
別の実施形態では、光活性化可能な基は、ベンゾフェノン残基から選択される。ベンゾフェノン試薬は、一般に、アリールアジド試薬よりも高い架橋収率を示す。
【0124】
別の実施形態では、光活性化可能な基は、光分解時に電子不足カルベンを形成するジアゾ化合物から選択される。これらのカルベンは、C-H結合への挿入、二重結合(芳香族系を含む)への付加、水素引力、求核中心への配位などの様々な反応を受けて、炭素イオンを生成する。
【0125】
さらに別の実施形態では、光活性化可能な基は、ジアゾピルベートから選択される。例えば、p-ニトロフェニルジアゾピルベートのp-ニトロフェニルエステルは、脂肪族アミンと反応して、ジアゾピルビン酸アミドを生成し、該ジアゾピルビン酸アミドは紫外線光分解を受けてアルデヒドを形成する。光分解されたジアゾピルビン酸修飾親和性成分は、ホルムアルデヒドまたはグルタルアルデヒドのように反応して、タンパク質内架橋を形成する。
【0126】
いくつかの実施形態では、リンカーは、リガンドを反応性官能基に結合する。例示的な実施形態では、リンカーは、リガンドを標的化部分に結合する。すなわち、例示的な実施形態では、リンカーは、標的化部分を含む。いくつかの実施形態では、リガンドは、標的化部分へのリンカーを含む。本明細書に記載される任意のリンカーは、リンカーを標的化部分に結合するために標的化部分上の反応性官能基と反応し得る反応性官能基を含むリンカーであり得る。本明細書に記載される任意のリンカーは、標的化部分への結合を含むリンカーであり得る。「標的化部分」という用語は、結合している分子(例えば、リガンドまたは金属イオン(例えば、放射性核種)と錯体形成されるリガンド)を、特定の位置または分子に対して、標的化または指向させるように作用する部分を指す。したがって、例えば、標的化部分は、分子を特定の標的タンパク質もしくは酵素、もしくは特定の細胞位置、特定の細胞種、または病変組織に対して標的化するために使用され得る。当業者によって理解されるように、細胞内のタンパク質の局在化は、有効濃度を増加させるための簡単な方法である。例えば、造影剤および/または治療薬を核内に入ることにより、それらがより小さな空間に閉じ込められ、それにより濃度が増加する。最後に、生理学的標的は特定のコンパートメントに単に局在化されてもよく、剤は適切に局在化されなければならない。
【0127】
標的化部分は、非ペプチドおよびペプチドの両方を含む小分子(例えば、MW<500D)であり得る。標的化部分の例には、ペプチド、ポリペプチド(タンパク質、特に抗体断片を含む抗体)、核酸、オリゴヌクレオチド、炭水化物、脂質、ホルモン(タンパク質ホルモンおよびステロイドホルモン(例えば、エストラジオール)を含む)、成長因子、レクチン、受容体、受容体リガンド、補因子なども含まれる。標的化部分の標的には、例えば、相補的な核酸、受容体、抗体、抗原、またはレクチンが含まれ得る。
【0128】
例示的な実施形態では、標的化部分は、高い結合親和性で標的に結合することができる。言い換えれば、標的への結合親和性が高い標的化部分は、標的に対して高い特異性を有するか、または標的に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、高い結合親和性は、約10-7M以下の解離定数Kdによって与えられる。例示的な実施形態では、高い結合親和性は、約10-8M以下、約10-9M以下、約10-10M以下、約10-11M以下、約10-12M以下、約10-13M以下、約10-14M以下、または約10-15M以下の解離定数Kdによって与えられる。化合物が標的に対して高い結合親和性を有する標的化部分などの部分を含む場合、化合物は標的に対して高い結合親和性を有し得る。
【0129】
例示的な実施形態では、標的化部分は抗体である。「抗体」は、認識される免疫グロブリン遺伝子の全部または一部によって実質的にコードされる1つ以上のポリペプチドを含むタンパク質を指す。例えばヒトにおける、認識される免疫グロブリン遺伝子には、多種多な可変領域遺伝子を一緒に含む、カッパ(κ)、ラムダ(λ)、および重鎖遺伝子座、ならびにIgM、IgD、IgG、IgE、およびIgAアイソタイプをそれぞれコードする、定常領域遺伝子ミュー(μ)、デルタ(δ)、ガンマ(γ)、シグマ(ε)、およびアルファ(α)を含む。本明細書の抗体は、全長抗体および抗体フラグメントを含むことを意味し、任意の生物由来の天然抗体、操作された抗体、または以下にさらに定義される、実験目的、治療目的、または他の目的のために組換え生成される抗体を指してもよい。抗体断片には、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFv、または抗体の他の抗原結合サブシーケンスが含まれ、抗体全体の修飾によって生成されたもの、または組換えDNA技術を使用してデノボ合成されたものが含まれ得る。「抗体」という用語は、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体の両方を指す。抗体は、アンタゴニスト、アゴニスト、中和、阻害性、または刺激性であり得る。
【0130】
化合物を動物における特定の領域に局在化するために、標的化部分をリガンドに付加し得るが、特定のリガンドは、細胞、組織、器官、または動物の他の一部に対する天然の親和性を有する。例えば、本明細書に開示されるリガンドは、骨に対して天然または固有の親和性を有し得る。したがって、いくつかの実施形態では、リガンドは、標的化部分または標的化部分へのリンカーを含まない。標的化部分を欠くリガンドは、特定の標的化を必要としない任意の方法で使用することができる。
【0131】
いくつかの実施形態では、リガンドは、固体支持体へのリンカーを含む。すなわち、本明細書に記載される任意のリンカーは、リンカーを固体支持体に結合するために固体支持体上の反応性官能基と反応し得る反応性官能基を含むリンカーであり得る。本明細書に記載される任意のリンカーは、固体支持体への結合を含むリンカーであり得る。「固体支持体」は、リガンドの結合または会合に好適である個別の部位を含むように修飾することができる任意の材料である。好適な基質には、生分解性ビーズ、非生分解性ビーズ、シリカビーズ、磁気ビーズ、ラテックスビーズ、ガラスビーズ、石英ビーズ、金属ビーズ、金ビーズ、マイカビーズ、プラスチックビーズ、セラミックビーズ、またはそれらの組み合わせが含まれる。酵素分解により系からゆっくり除去される生分解性ポリマーを含む生体適合性ポリマーが特に有用である。生分解性材料の例には、デンプン、架橋デンプン、ポリ(エチレングリコール)、ポリビニルピロリジン、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(polyglycolide)(PGA)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリ(DTHイミノカーボネート)、ポリ(ビスフェノールAイミノカーボネート)、ポリシアノアクリレート、ポリホスファゼン、それらの混合物、およびそれらの組み合わせが含まれる。粒子を形成するための他の好適な物質が存在し、使用することができる。いくつかの実施形態では、固体支持体は、架橋デンプン、例えば、架橋ジャガイモデンプンを含むビーズである。デンプンから作られたビーズは、典型的には、体内で見出される天然に存在する酵素である血清アミラーゼによって、体内で完全に生分解される。これらの実施形態では、リガンドは、標的化部分または標的化部分へのリンカーを任意選択でさらに含む。固体支持体に結合しているリガンドが標的化部分を含まない場合、リガンドは、開業医によって直接に、例えば、直接外科的移植によって局在化することができる。
【0132】
いくつかの実施形態では、リンカーは、構造-L11-Fxを有し、L11は、結合、アシル、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換ヘテロアリールから選択され、Fxは、反応性官能基、保護された官能基、または標的化部分から選択される。
【0133】
いくつかの実施形態では、L11は、置換または非置換アルキルおよび置換または非置換ヘテロアルキルから選択される。いくつかの実施形態では、L11は、ヘテロアルキルである。いくつかの実施形態では、L11は、(C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19またはC20)アルキルであり、1、2または3個の原子が、窒素または酸素などのヘテロ原子で置き換えられている。いくつかの実施形態では、L11は、修飾部分を含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、Fxは、-NH2、-C(O)OH、アルキルエステル(例えば、メチルエステル)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、スルホ-NHSエステル、イソチオシアネート、およびマレイミドから選択される。いくつかの実施形態では、Fxは、-NH2および-C(O)OHから選択される。
【0135】
いくつかの実施形態では、-L
11-F
xは、以下から選択される:
【化38】
【0136】
段落[0113]による好ましい実施形態では、任意の含意の水素は、置換または非置換アルキル、およびCまたはヘテロ原子から選択される1、2、3、4、5、6、7、8、9員の置換または非置換ヘテロアルキルから選択することができる。
【0137】
いくつかの実施形態では、リンカーは、以下の構造を有し、
【化39】
式中、R
Lは、置換または非置換アルキルおよび置換または非置換ヘテロアルキルから選択され、F
xは、本明細書で定義される通りである。いくつかの実施形態では、R
Lは、置換または非置換アルコキシアルキルである。いくつかの実施形態では、R
Lは、置換または非置換のモノエーテルである。いくつかの実施形態では、R
Lは、置換または非置換ポリエーテルである。いくつかの実施形態では、ポリエーテルは、2~10個(すなわち、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個)のエーテル基を有する。いくつかの実施形態では、R
Lは、修飾部分を含む。
【0138】
いくつかの実施形態では、リンカーは、以下の構造を有し、
【化40】
式中、R
Lは、以下から選択され、
【化41】
式中、nは、1、2、3、4、5、および6から選択される整数であり、F
xは、反応性官能基(NH
2など)または保護された官能基である。
【0139】
いくつかの実施形態では、リンカーは、以下から選択される構造を有する:
【化42】
【0140】
好ましい実施形態では、リンカーは、以下から選択される構造を有する。
【化43】
【0141】
別の好ましい実施形態では、リンカーは、以下から選択される構造を有する:
【化44】
【0142】
別の好ましい実施形態では、リンカーは、以下から選択される構造を有する。
【化45】
【0143】
例示的な実施形態では、Fxは、標的化部分である。
【0144】
例示的な実施形態では、リンカーは、標的化部分へのリンカーである。いくつかの実施形態では、標的化部分は、ポリペプチド、核酸、脂質、多糖類、小分子、補因子、およびホルモンから選択される。例示的な実施形態では、標的化部分は、抗体または抗体断片である。
【0145】
多数の反応性官能基を有するリンカーにおいて、特定の官能基は、別のリガンド成分への官能化スペーサー成分の結合を制御する反応に関与または干渉しないように選択することができる。あるいは、反応性官能基を、保護基を存在させることによって反応への関与から保護することができる。当業者は、選択された一連の反応条件を妨げることから特定の官能基を保護する方法を理解している。有用な保護基の例については、Greene et al.,PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS,John Wiley&Sons,New York,1991を参照のこと。
【0146】
修飾部分
いくつかの実施形態では、化合物(リガンド)は、1つ以上の修飾部分を含む。いくつかの実施形態では、L1、L2、Ab1、Ab2、Ap1、およびAp2の1つ以上は、修飾部分を含む。いくつかの実施形態では、L1a、L1b、L1c、RL1、およびRL2、L2a、L2b、L2c、L2d、L2e、L2f、L2g、RL3、RL4、Ab1、Ab2、Ap1、およびAp2のうちの1つ以上は、修飾部分を含む。いくつかの実施形態では、反応性官能基へのリンカーまたは標的化部分へのリンカーは、修飾部分を含む。修飾部分の各々は、同じまたは異なり得る。
【0147】
修飾部分は、リガンドおよび/またはリガンドと金属イオンとの間に形成された錯体の様々な特性、例えば溶解度、電荷、または親和性を修飾する。いくつかの実施形態では、リガンドが金属と錯体を形成している場合、修飾部分は金属と相互作用しない。いくつかの実施形態では、修飾部分は、可溶化基、ホルモン由来部分、プロドラッグ部分(例えば、切断可能部分を有する)、オリゴヌクレオチド、ssDNA、dsDNA、RNA、またはペプチドである。可溶化基は、水性媒体中での、リガンドおよび/またはリガンドと金属イオンとの間に形成される錯体の溶解度を改善する。いくつかの実施形態では、(ホモン由来部分の)ホルモンは、ステロイドである。いくつかの実施形態では、ステロイドは、エストラジオールである。いくつかの実施形態では、修飾部分は、エストラジオール由来部分である。それらのアミノ酸組成による親水性および疎水性のペプチドは、リガンドおよび/またはリガンドと金属イオンとの間で形成される錯体の溶解度を調整するために使用され得る。
【0148】
いくつかの実施形態では、修飾部分は、置換または非置換ヘテロアルキルである。いくつかの実施形態では、修飾部分は、置換または非置換アルコキシアルキルである。いくつかの実施形態では、修飾部分は、置換または非置換モノエーテルである。いくつかの実施形態では、修飾部分は、置換または非置換ポリエーテルである。いくつかの実施形態では、修飾部分は、エストラジオール由来部分を含む。いくつかの実施形態では、修飾部分は、エストラジオール由来部分で置換されたポリエーテルである。
【0149】
いくつかの実施形態では、修飾部分は、以下から選択される:
【化46】
【0150】
いくつかの実施形態では、蛍光部分は、ペプチドである。いくつかの実施形態では、修飾部分は、以下である。
【化47】
【0151】
いくつかの実施形態では、修飾部分は、オリゴヌクレオチドを含む。
【0152】
いくつかの実施形態では、修飾部分は、以下から選択される:
【化48】
【0153】
例示的なリガンド
いくつかの実施形態では、本発明は、以下の構造を有するリガンドを提供する:
【化49】
式中、L
1a、L
2a、L
2b、L
2c、L
x6、A
b1、A
b2、A
p1、およびA
p2は、本明細書で定義される通りである。
【0154】
いくつかの実施形態では、本発明は、以下の構造を有するリガンドを提供する:
【化50】
式中、L
1a、L
x1、L
x2、L
x3、L
x4、L
x5、L
x6、A
b1、A
b2、A
p1、およびA
p2は、本明細書で定義される通りである。
【0155】
いくつかの実施形態では、本発明は、以下の構造を有するリガンドを提供する:
【化51】
式中、L
1a、L
2a、L
2b、L
2c、L
x6、A
p1、およびA
p2は、本明細書で定義される通りである。
【0156】
いくつかの実施形態では、本発明は、以下の構造を有するリガンドを提供する:
【化52】
式中、L
1a、L
x1、L
x2、L
x3、L
x4、L
x5、L
x6、A
p1、およびA
p2は、本明細書で定義される通りである。
【0157】
いくつかの実施形態では、本発明は、以下の構造を有するリガンドを提供する:
【化53】
式中、L
1a、L
x1、L
x2、L
x3、L
x4、L
x5、およびL
x6は、本明細書で定義される通りである。
【0158】
いくつかの実施形態では、本発明は、以下の構造を有するリガンドを提供する:
【化54】
式中、L
1a、L
x6、およびL
x1は、本明細書で定義される通りである。
【0159】
追加の例示的なリガンドは、実施例に示されている。
【0160】
錯体
一態様では、本発明は、本明細書で開示される化合物(リガンド)と金属イオンとの錯体を提供する。
【0161】
好ましい実施形態では、錯体は、+2金属カチオン、例えば、Ca+2またはMg+2の錯体である。好ましい実施形態では、+2金属カチオンは、試薬との錯体の修飾の過程で、錯体と接触する試薬上の反応性部分を錯体との非生産的反応から保護する。例示的な反応性部分は、イミド部分、例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)である。好ましい実施形態では、+2金属カチオンの錯体は、錯体をNHS部分を含む試薬と接触させることにより、NHSエステルに変換される。好ましい実施形態では、+2金属カチオンは、試薬との反応後に、例えばNHSエステル形成後に、+2より高い、例えば、+3または+4の原子価のカチオンにより置換される。好ましい実施形態では、より高い原子価のカチオンは、ランタニド、遷移金属、およびアクチニドのイオンから選択される。
【0162】
本明細書に開示される化合物(リガンド)および本明細書に開示される金属イオンの任意の組み合わせは、本開示に包含され、本発明により具体的に提供される。
【0163】
いくつかの実施形態では、錯体は、発光性である。
【0164】
いくつかの実施形態では、錯体は、既知の放射性同位元素である金属イオンを含む。
【0165】
例示的な錯体は、実施例に示されている。
【0166】
別の態様では、本発明は、4、5、6、および7周期から、および/または13、14、15、16群の元素またはそれらイオンとの本明細書に開示される化合物(リガンド)の錯体を提供する。別の態様では、本発明は、本明細書に開示されている化合物(リガンド)と3、4、7、8、9、10、11、13、14および15周期の元素またはそれらのイオンとの錯体を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、3、4、および13周期の元素またはそれらのイオンとの本明細書に開示される化合物(リガンド)の錯体を提供する。
【0167】
いくつかの実施形態では、WO2013/187971A2に開示されている錯体は除外される。
【0168】
金属
いくつかの実施形態では、本発明のリガンドが錯体形成する金属はアクチニドである。いくつかの実施形態では、アクチニドはトリウム(Th)である。いくつかの実施形態では、金属はランタニドである。いくつかの実施形態では、ランタニドはテルビウム(Tb)である。いくつかの実施形態では、ランタニドはユウロピウム(Eu)である。いくつかの実施形態では、ランタニドはジスプロシウム(Dy)である。いくつかの実施形態では、ランタニドはルテチウム(Lu)である。いくつかの実施形態では、ランタニドはガドリニウム(Gd)である。いくつかの実施形態では、金属はイットリウム(Y)である。いくつかの実施形態では、金属はジルコニウム(Zr)である。いくつかの実施形態では、金属イオンはイットリウム(III)である。いくつかの実施形態では、金属イオンはユウロピウム(III)である。いくつかの実施形態では、金属イオンはテルビウム(III)である。いくつかの実施形態では、金属イオンはジルコニウム(IV)である。いくつかの実施形態では、金属イオンはトリウム(IV)である。いくつかの実施形態では、金属イオンは、Th4+、Zr4+、Eu3+、Dy3+、Tb3+、Lu3+、およびY3+から選択される。いくつかの実施形態では、金属(イオン)は放射性核種である。いくつかの実施形態では、金属イオンは227Th(IV)である。いくつかの実施形態では、金属イオンは89Zr(IV)である。
【0169】
いくつかの実施形態では、本発明のリガンドが錯体形成する金属は177Luである。いくつかの実施形態では、金属は166Hoである。いくつかの実施形態では、金属は153Smである。いくつかの実施形態では、金属は90Yである。いくつかの実施形態では、金属は86Yである。いくつかの実施形態では、金属は166Dyである。いくつかの実施形態では、金属は165Dyである。いくつかの実施形態では、金属は169Erである。いくつかの実施形態では、金属は175Ybである。いくつかの実施形態では、金属は225Acである。いくつかの実施形態では、金属は149Tbである。いくつかの実施形態では、金属は153Gdである。いくつかの実施形態では、金属は230Uである。
【0170】
いくつかの実施形態では、本発明のリガンドが錯体形成する金属は111Inである。いくつかの実施形態では、金属は67Gaである。いくつかの実施形態では、金属は67Cuである。いくつかの実施形態では、金属は64Cuである。いくつかの実施形態では、金属は186Reである。いくつかの実施形態では、金属は188Reである。いくつかの実施形態では、金属は111Agである。いくつかの実施形態では、金属は109Pdである。いくつかの実施形態では、金属は212Pbである。いくつかの実施形態では、金属は203Pbである。いくつかの実施形態では、金属は212Biである。いくつかの実施形態では、金属は213Biである。いくつかの実施形態では、金属は195mPtである。いくつかの実施形態では、金属は201Tlである。いくつかの実施形態では、金属は55Coである。いくつかの実施形態では、金属は99mTcである。
【0171】
いくつかの実施形態では、本発明のリガンドが錯体形成する金属は、イットリウム(Y)、ランタノイド、アクチノイド、ジルコニウム(Zr)、鉄(Fe)、およびインジウム(In)から選択される。いくつかの実施形態では、金属は、ジルコニウム(Zr)、鉄(Fe)、インジウム(In)、ユウロピウム(Eu)、ホルミウム(Ho)、ルテチウム(Lu)、イットリウム(Y)、テルビウム(Tb)、イッテルビウム(Yb)、ガドリニウム(Gd)、サマリウム(Sm)、ジスプロシウム(Dy)、エルビウム(Er)、およびトリウム(Th)から選択される。いくつかの実施形態では、金属は、Eu、Tb、Sm、およびDyから選択される。いくつかの実施形態では、金属はGdである。
【0172】
いくつかの実施形態では、本発明のリガンドが錯体形成する金属イオンは、Zr(IV)、Fe(III)、Ga(III)、In(III)、Eu(III)、Ho(III)、Lu(III)、Y(III)、Tb(III)、Yb(III)、Gd(III)、Sm(III)、Dy(III)、Er(III)、およびTh(IV)から選択される。いくつかの実施形態では、金属イオンは、227Th(IV)、89Zr(IV)、および177Lu(III)から選択される。
【0173】
いくつかの実施形態では、金属は放射性核種である。
【0174】
放射性核種
本明細書に開示されるキレート部分は、金属イオン、特に放射性核種に結合するために使用することができる。「放射性核種」または「放射性同位元素」という用語は、放射性崩壊を受ける傾向がある不安定な核を有する放射性同位元素または元素を指す。多数の崩壊モードが当該技術分野で既知であり、アルファ崩壊、陽子放出、中性子放出、二重陽子放出、自発核分裂、クラスタ崩壊、β-崩壊、陽電子放出(β+崩壊)、電子捕獲、束縛状態ベータ崩壊、二重ベータ崩壊、二重電子捕獲、陽電子放出を伴う電子捕獲、二重陽電子放出、異性体転移、および内部転換が含まれる。
【0175】
例示的な放射性核種には、崩壊中にアルファ粒子を放出するアルファ放射体が含まれる。いくつかの実施形態では、放射性核種は、ガンマ線またはアルファ粒子、電子、および陽電子から選択される粒子の放射体である。
【0176】
いくつかの実施形態では、放射性核種は、アクチニドである。いくつかの実施形態では、放射性核種は、ランタニドである。いくつかの実施形態では、放射性核種は、3+イオンである。いくつかの実施形態では、放射性核種は、4+イオンである。いくつかの実施形態では、放射性核種は、2+イオンである。
【0177】
U、Pu、Fe、Cu、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb、Lu、Y、Th、Zr、In、Ga、Bi、Ra、At、およびAcの同位体から選択される放射性核種は、本明細書で提供される錯体において特に有用である。いくつかの実施形態では、放射性核種は、ラジウム-223、トリウム-227、アスタチン-211、ビスマス-213、ルテチウム-177、およびアクチニウム-225から選択される。他の有用な放射性同位元素には、ビスマス-212、ヨウ素-123、銅-64、イリジウム-192、オスミウム-194、ロジウム-105、サマリウム-153、ならびにイットリウム-88、イットリウム-90、およびイットリウム-91が含まれる。例示的な実施形態では、放射性核種は、特にトリウム-227およびトリウム-232から選択される、トリウムである。いくつかの実施形態では、トリウム226は除外される。いくつかの実施形態では、Uは除外される。いくつかの実施形態では、ウラン-230は除外される。すなわち、いくつかの実施形態では、放射性核種はUではないか、もしくは放射性核種はウラン230ではないか、または放射性核種はトリウム226ではない。
【0178】
好ましい実施形態では、放射性核種は、Th(IV)-227、Zr(IV)-89、Lu(III)-177、Y(III)-90、Y(III)-86、およびIn(III)-111から選択される。
【0179】
別の好ましい実施形態では、放射性核種は、Ac(III)-225である。
【0180】
いくつかの実施形態では、放射性核種は、Tb(III)-149、Sc(III)-47、Dy(III)-166、Er(III)-169、Gd(III)-153、Ho(III)-166、Sm(III)-153、Yb(III)-175、Ac(III)-225、Bi(III)-212、およびBi(III)-213から選択される。
【0181】
好ましい実施形態では、錯体は、発光性であり、Tb(III)、Eu(III)、Sm(III)、Dy(III)、およびYb(III)から選択される金属イオンを含む。
【0182】
232Thは、半減期が1.4x1010yrのα放射体として天然に存在している。水溶液中では、Th(IV)が唯一の酸化状態である。トリウム(IV)イオンは、Pu(IV)より大きく、通常は9以上の配位数で錯体を形成する。例えば、単純な二座(bidentate)の1,2-HOPOおよびMe-3,2-HOPOの両方のTh(IV)錯体結晶構造は、9つの配位種として決定される。
【0183】
他のアクチニドイオンと同様に、トリウム(IV)は酸素、特に負の酸素供与体リガンドとの錯体の形成を選好する。トリウム(IV)はまた、八座以上の多座リガンドを選好する。
【0184】
【0185】
本明細書に開示される化合物と共に使用することができる診断的および治療的価値を有する他の放射性核種は、例えば、米国特許第5,482,698号および同第5,601,800号、ならびにBoswell and Brechbiel,Nuclear Medicine and Biology,2007 October,34(7):757-778および2008年10月1日にPMCで入手可能なその原稿に見出すことができる。
【0186】
用途
本明細書に開示されるリガンドおよび錯体は、非常に様々な治療および診断状況で使用することができる。
【0187】
一態様では、本発明は、本明細書に開示される錯体を動物に投与し、それにより、疾患が改善されまたは排除されることを含む、動物における疾患を治療する方法を提供する。
【0188】
一態様では、本発明は、(a)本明細書に開示される錯体を動物に投与すること、および(b)錯体が発するシグナルの有無を検出することを含む、動物における疾患を診断する方法を提供する。いくつかの実施形態では、検出工程は、シグナルに基づいて画像を取得することを含む。
【0189】
いくつかの実施形態では、疾患は癌である。
【0190】
いくつかの実施形態では、錯体は、標的化部分へのリンカーを含み、方法は、標的化部分を標的化部位に結合させることにより、錯体を動物での標的化部位に局在化することをさらに含む。
【0191】
本明細書に開示されている化合物は、癌および他の疾患の診断および治療に使用するための、安定であり、かつ、予め標識された抗体の調製に特に良く適している。例えば、特定の腫瘍または腫瘍関連抗原に対する親和性を示す抗体は、診断用放射性核種複合キレートで標識され、標識された抗体は、凍結乾燥によってさらに安定化することができる。キレートは、使用されるとき、一般に抗体に共有結合される。使用される抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルであり得、放射性核種標識抗体は、当該技術分野で既知の方法に従って調製することができる。調製方法は、使用する放射性核種および抗体の種類に依る。安定し、かつ凍結乾燥された放射性標識抗体は、目的の使用時に好適な希釈剤で再構成することができるため、現場での準備プロセスが大幅に簡素化される。本発明の方法は、メラノーマ、結腸癌、乳癌、前立腺癌などに関連する腫瘍に対するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を含むがこれらに限定されない、多くの種類の予め標識された抗体を安定化するために適用することができる。そのような抗体は、当該技術分野で既知であり、容易に入手可能である。
【実施例】
【0192】
本発明の化合物および錯体は、一般に周知である合成方法の適切な組み合わせによって合成される。本発明の化合物を合成するのに有用な技術は、関連する技術分野の当業者には容易に明らかであり、かつ利用可能である。以下の考察は、本発明の化合物の組み立てに利用可能な多様な方法のうちのいくつかを例示すために提供されるが、本発明の化合物の調製に有用な反応または反応順序の範囲を限定することを意図しない。
【0193】
実施例1.架橋1,2-HOPO中間体8の合成。
【化55】
スキーム1.1,2-HOPO中間体8を架橋する合成スキーム。
前駆体2-クロロ-6-メチルニコチン酸(1)をA2ZChemical(アーバイン、カリフォルニア州)から購入した。特に明記しない限り、他のすべての溶媒および試薬は、商業的供給元から購入し、受け取ったまま使用した。
1H-NMRおよび
13C-NMRスペクトルは、以下に示すように、BrukerAV-300、AVB-400、またはDRX-500分光計を使用して、300/75MHz、400/100MHz、または500/125MHzで取得した。
1H(または
13C)化学シフトは、残留溶媒シグナルに対して報告され、CDCl
3およびDMSO-d
6に対してそれぞれ7.24(77.23)および2.50(39.51)ppmとして得た。高解像度エレクトロスプレーイオン化質量スペクトル(HRMS-ESI)は、カリフォルニア大学バークレー校のMicroanalytical Laboratoryによって行われた。
【0194】
6-クロロピリジン-2,5-ジカルボン酸(2)。水酸化カリウム(112g、2mol)を水(1.5L)に溶解し、次いで2-クロロ-6-メチルニコチン酸(1、100g、0.583mol)を塩基性溶液に溶解した。反応物を撹拌しながら90℃まで加熱し、次いで過マンガン酸カリウム(316g、2mol)を6時間かけて約50gずつ添加した。反応物を90℃で一晩撹拌したままにした。反応混合物を室温まで冷却し、黒みがかった懸濁液を濾過して、MnO2固体を除去した。濾過ケーキを水(3×200mL)で洗浄し、無色の濾液を合わせて、真空下で約1.5Lの総体積まで濃縮した。濃HCl(165.3mL、2mol)をゆっくり添加し、粗生成物を溶液から沈殿させた際に大量のガスを遊離させた。粗生成物を濾過し(追加の洗浄をしないで)、空気流下で乾燥させた。粗生成物を水(1L)中の水酸化カリウム(44.8g、0.800mol)の溶液に溶解することにより再結晶化し、次いで濃HCl(66.1mL、0.800mol)を一度に添加した。生成物を室温で数時間ゆっくり結晶化させ、次いでフラスコを4℃まで冷却し、冷蔵庫で一晩放置した。再結晶生成物を濾過により単離し、イソプロピルアルコール(4×100mL)で洗浄し、真空下で一晩乾燥して、白色で流動性の良い固体2を得た。収量:105.3g、89.6%。1H NMR(500 MHz,DMSO-d6)δ 13.85(br s,2H),8.34(d,J=7.5 Hz,1H)8.12(d,J=7.5 Hz,1H).13C NMR(125 MHz,DMSO-d6)δ 165.8,164.6,150.0,147.7,141.4,131.4,124.1.C7H3
35ClNO4のHRMS-ESI(m/z、[M-H]-)計算値:199.9756、実測値:199.9750。
【0195】
3,6-ジカルボキシ-2-クロロピリジン1-オキシド(3)。反応容器を80℃まで加熱して撹拌しながら、出発物質6-クロロピリジン-2,5-ジカルボン酸(2、103.3g、512.5mmol)をトリフルオロ酢酸(1.5L)に溶解した。出発物質がすべて溶解したらすぐに、濃(34~37%のテクニカルグレード)H2O2(207mL)の新しい試料を一度にすべて添加し、4時間比較的ゆっくり撹拌しながら反応を80℃で維持した。次いで反応物を室温まで冷却し、トリフルオロ酢酸を真空下で除去した。最終体積が約500mLに達するまで冷水を添加し、所望の生成物を沈殿させた生成物を濾過により回収し、冷水(3×50mL)で洗浄し、真空下で乾燥して、濃密な白色結晶性固体3を得た。収量98.1g、88.0%。1H NMR(300 MHz,DMSO-d6)δ 8.21(d,J=7.4 Hz,1H)8.06(d,J=7.4 Hz,1H).13C NMR(75 MHz,DMSO-d6)δ 163.6,160.3,140.5,139.9,133.8,130.6,125.9.C7H5
35ClNO5のHRMS-ESI(m/z、[M+H]+)計算値:217.9856、実測値:217.9850。
【0196】
1-ヒドロキシ-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-2,5-ジカルボン酸(4)。出発物質3,6-ジカルボキシ-2-クロロピリジン1-オキシド(3、97.8g、449.5mmol)を水酸化カリウム(300g、5.35mol)を含む水(1L)に溶解し、反応物を撹拌しながら一晩80℃まで加熱した。反応物を室温まで冷却し、次いで濃塩酸(500mL、6.05mol)を少しずつ添加して、熱の過剰な発生を回避した。生成物は、最初は綿毛状の黄色粉末として沈殿し、該黄色粉末は、さらにHClを添加した際に、濃密な褐色固体になった。濃密な暗褐色固体を濾過によって収集し、冷水(3×50mL)で洗浄し、次いで真空下で乾燥して、濃密で流動性の良い褐色粉末4を得た。収量74.8g、83.6%。1H NMR(300 MHz,DMSO-d6)δ 15.35(br s,2H)8.06(d,J=7.5 Hz,1H)7.19(d,J=7.5 Hz,1H).13C NMR(75 MHz,D2O-NaOD)δ 175.2,170.3,160.8,148.1,133.3,123.3,102.6.C7H4NO6のHRMS-ESI(m/z、[M-H]-)計算値:198.0044、実測値:198.0044。
【0197】
ジメチル1-ヒドロキシ-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-2,5-ジカルボキシレート(5)。出発物質1-ヒドロキシ-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-2,5-ジカルボン酸(4、74.2g、372.6mmol)をメタノール(800mL)に懸濁し、トリメチルシリルクロリド(200mL、171.2g、1.576mol)を一度に添加した。懸濁液を室温で3日間撹拌した。反応が完了したら、懸濁液を濾過して固体副生成物を除去し、濾液を真空下で蒸発させて、所望の化合物5を硬質な固体残留物として得た。収量71.2g、84.1%。1H NMR(300 MHz,DMSO-d6)δ 8.56(d,J=8.4 Hz,1H)7.81(d,J=8.4 Hz,1H),3.99(s,3H),3.92(s,3H).13C NMR(75 MHz,DMSO-d6)δ 161.7,157.9,154.9,142.3,135.3,117.9,116.6,54.8,53.8.C9H9NO6のHRMS-ESI(m/z、[M+Na]+)計算値Na:250.0322、実測値:250.0320。
【0198】
ジメチル1-(ベンジルオキシ)-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-2,5-ジカルボキシレート(6)。出発物質ジメチル1-ヒドロキシ-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-2,5-ジカルボキシレート(5、70.70g、311.2mmol)を臭化ベンジル(55.9g、326.8mmol)を含むメタノール(800mL)に溶解した。水酸化テトラメチルアンモニウム五水和物(56.40g、311.2mmol)を別々にメタノール(200mL)に溶解し、室温で撹拌しながら最初の溶液に滴下した。反応物を室温で一晩撹拌し、次いで溶媒を真空下で除去した。次いで、水(500mL)およびジクロロメタン(500mL)を残留物に添加し、ジクロロメタン層を水(3×300mL)で洗浄して、臭化テトラメチルアンモニウムを除去した。次いで、ジクロロメタン層を濃縮し、大きなシリカゲルカラムに充填し、所望の生成物をジクロロメタンで溶出した。溶媒を除去し、残留物を一晩高真空に供して残留臭化ベンジルを除去し、硬質したオフホワイト色の固体として所望の生成物6を得た。収量95.1g、96.3%。1H NMR(400 MHz,CDCl3)δ 8.07(d,J=7.4 Hz,1H),7.51(dd,J=6.3,2.8 Hz,2H),7.36-7.28(m,3H),6.43(d,J=7.4 Hz,1H),5.36(s,2H),3.88(s,3H),3.83(s,3H).13C NMR(100 MHz,CDCl3)δ 164.60,159.96,155.81,142.86,142.55,133.39,130.34,129.43,128.63,124.93,105.19,79.00,53.62,52.76.C16H16NO6のHRMS-ESI(m/z、[M+H]+)計算値:318.0972、実測値:318.0979。
【0199】
1-(ベンジルオキシ)-5-(メトキシカルボニル)-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-2-カルボン酸リチウム(7)。出発物質ジメチル1-(ベンジルオキシ)-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-2,5-ジカルボキシレート(6、94.5g、297.8mmol)を最小量のジクロロメタンに溶解し、残留物が著しく粘稠になるまで(メープルシロップ様)、得られた溶液を濃縮した。次いで、残留物をメタノール(1L)に溶解し、氷浴上で冷却した。別に、水酸化リチウム一水和物(12.50g、297.8mmol)を水(200mL)に溶解し、メタノール(600mL)で希釈し、使用前に1時間室温に放冷した。次いで、水酸化リチウム溶液を、効率的に撹拌しながら出発物質の冷却したメタノール溶液に滴下した。添加が完了したら、撹拌棒を取り出し、反応物を0℃で1時間放置した。粗生成物を濾過により回収し、メタノール(3×100mL)で洗浄し、空気流下で乾燥させた。1:20の水:メタノール混合物(500mL)中の粗製物の撹拌懸濁液を一晩加熱することにより、粗生成物を数回再結晶化させた。懸濁液を室温まで冷却した後、翌朝に固体を収集し、前と同様にメタノール(3×100mL)で洗浄し、真空下で乾燥した。生成物がHPLCにより純度99.5%超(315nmで測定)であるときに再結晶化を停止し、濃密な白色結晶固体7を得た。収量65.2g、70.8%。1H NMR(500 MHz,DMSO-d6)δ 8.04(d,J=7.5 Hz,1H),7.61-7.52(m,2H),7.45-7.34(m,3H),6.02(d,J=7.5 Hz,1H),5.30(s,2H),3.75(s,3H),3.48(s,2H).13C NMR(125 MHz,DMSO-d6)δ 165.10,161.30,155.91,155.18,144.52,134.51,129.93,128.88,128.31,115.81,98.72,77.82,51.72.C15H12NO6のHRMS-ESI(m/z、[M-Li]-)計算値:302.0670、実測値:302.0663。
【0200】
1-(ベンジルオキシ)-5-(メトキシカルボニル)-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-2-カルボン酸(8)。出発物質リチウム1-(ベンジルオキシ)-5-(メトキシカルボニル)-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-2-カルボキシレート(7、10.0g、32.3mmol)を、撹拌しながら水(200mL)に懸濁した。濃塩酸(8.26mL、100mmol)を希釈して最終体積を50mLとし、次いで撹拌懸濁液に滴下した。懸濁液を室温で2時間撹拌し、次いで固体を濾過により収集し、希HCl(3×50mL)で洗浄し、真空下で一晩乾燥して、流動性の良い白色粉末8を得た。収量9.6g、98.0%。1H NMR(500 MHz,DMSO-d6)δ 8.10(d,J=7.4 Hz,1H),7.54-7.47(m,2H),7.46-7.39(m,3H),6.60(d,J=7.4 Hz,1H),5.28(s,2H),3.80(s,3H).13C NMR(125 MHz,DMSO-d6)δ 164.18,161.24,154.57,144.63,142.96,133.58,129.81,129.29,128.61,123.28,103.50,78.39,52.23.C15H13NO6のHRMS-ESI(m/z、[M+Na]+)計算値Na:326.0635、検出値:326.0633。
実施例2.重要な中間体7の結晶データおよび構造。
【0201】
重要な中間体化合物7のX線回折に好適な単結晶を、1:9のメタノール:水に溶解した7の加熱濃縮溶液をゆっくり冷却することによって成長させた。単結晶X線回折データを、カリフォルニア大学バークレー校の小分子X線結晶学施設にあるPilatus 200KCCD検出器を装備したRigaku回折計で収集した。構造をSIR-97で解析し、SHELX-97で精密化し、精密化した原子位置を水銀を使用して50%熱振動楕円体(thermal ellipsoid)として表す(
図1)。公開資料をWinGXで作成した。結晶構造により、化合物6に存在する2つのメチルエステルのどちらが水酸化リチウムによって低温で選択的に加水分解されるかが確認される。結晶データおよび構造精密化統計を以下の表に要約する。
【0202】
【0203】
【0204】
実施例3.例示的な親リガンド16の合成。
【化56】
スキーム2.例示的な親リガンド16の合成スキーム。
前駆体1-(ベンジルオキシ)-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-2-カルボン酸(14)を、以前に報告された方法(Xu,J.;Durbin,P.W.;Kullgren,B.;Ebbe,S.N.;Uhlir,L.C.;Raymond,K.N.J.Med.Chem.2002,45,3963)に従って合成した。特に明記しない限り、他のすべての溶媒および試薬は、商業的供給元から購入し、受け取ったまま使用した。
1H-NMRおよび
13C-NMRスペクトルは、以下に示すように、Bruker AV-300、AVB-400、またはDRX-500分光計を使用して、300/75MHz、400/100MHz、または500/125MHzで取得した。
1H(または
13C)化学シフトは、残留溶媒シグナルに対して報告され、CDCl
3、DMSO-d
6、およびメタノール-d
4についてそれぞれ、7.24(77.23)、2.50(39.51)、および3.31(49.15)ppmとして取得された。高解像度エレクトロスプレーイオン化質量スペクトル(HRMS-ESI)は、カリフォルニア大学バークレー校のMicroanalytical Laboratoryによって行われた。
【0205】
ジメチル6,6’-((エタン-1,2-ジイルビス(アザネジイル))ビス(カルボニル))ビス(1-(ベンジルオキシ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキシレート)(10)。塩化オキサリル(4.8g、37.8mmol)を、ジクロロメタン(50mL)中の8(4.814g、15.87mmol)の懸濁液に添加し、続いて2滴の乾燥N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を添加した。溶液は30分以内に均一になり、反応物を室温で合計3時間撹拌した。次いで、溶媒を真空下で一晩除去した。残留物をジクロロメタン(20mL)に溶解し、ジクロロメタン(20mL)および20mLのK2CO3水溶液(2.76g、20mmol)に溶解した9(372.6mg、6.20mmol)の溶液に激しく撹拌しながら0℃で滴下した。1時間以内に沈殿した所望の生成物を濾過により収集し、ジクロロメタン(3×50mL)で洗浄し、水(3×50mL)で洗浄し、真空下で一晩乾燥し、流動性の良い白色粉末10を得た。収量3.7g、94.6%。1H NMR(500 MHz,DMSO-d6)δ 9.22(s,2H),8.10(d,J=7.3 Hz,2H),7.55-7.34(m,10H),6.44(d,J=7.2 Hz,2H),5.28(s,4H),3.80(s,6H),3.41(s,4H).13C NMR(125 MHz,DMSO-d6)δ 164.29,159.98,154.52,147.70,143.18,133.66,129.77,129.24,128.58,122.21,102.58,78.80,52.18,38.53.C32H30N4O10Na1のHRMS-ESI(m/z,[M+Na]+)計算値:653.1854、実測値:653.1852。
【0206】
6,6’-((エタン-1,2-ジイルビス(アザネジイル))ビス(カルボニル))ビス(1-(ベンジルオキシ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボン酸)(11)。水酸化カリウム(1.30g、23.2mmol)を水(20mL)に溶解し、メタノール(100mL)中の10(3.65g、5.79mmol)の懸濁液に添加し、反応物を室温で一晩撹拌した。翌日、水(100mL)を添加し、懸濁液を均一な紫色の溶液に溶解した。溶媒を真空下で除去し、得られた残留物を水(200mL)に溶解した。リトマス試験により溶液が酸性になるまで、撹拌しながら希HClを滴下した。所望の生成物を濾過により収集し、希HClで洗浄し、真空下で一晩乾燥して、白色粉末11を得た。収量:3.10g、88.9%。1H NMR(500 MHz,DMSO-d6)δ 13.55(s,2H),9.23(s,2H),8.33(d,J=7.2 Hz,2H),7.61-7.30(m,10H),6.70(d,J=7.2 Hz,2H),5.35(s,4H),3.44(s,4H).13C NMR(125 MHz,DMSO-d6)δ 164.12,159.56,158.67,147.45,143.77,133.30,129.89,129.43,128.66,120.74,105.32,79.54,38.61.C30H25N4O10のHRMS-ESI(m/z、[M-H]-)計算値:601.1576、実測値:601.1567。
【0207】
N,N’-(エタン-1,2-ジイル)ビス(1-(ベンジルオキシ)-6-オキソ-5-(2-チオキソチアゾリジン-3-カルボニル)-1,6-ジヒドロピリジン-2-カルボキサミド)(12)。出発物質11(1.50g、2.49mmol)、N-[(ジメチルアミノ)-1H-1,2,3-トリアゾロ-[4,5-b]ピリジン-1-イルメチレン]-N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN-オキシド(HATU、1.99g、5.23mmol)、および4-ジメチルアミノピリジン(DMAP、30.4mg、0.249mmol)をジメチルホルムアミド(10mL)に溶解した。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、643.5mg、4.979mmol)を溶液に滴下し、反応物を室温で1時間撹拌した。次いで、2-メルカプトチアゾリン(712mg、5.97mmol)を均質な溶液に添加し、続いてさらなるDIPEA(1.287g、9.96mmol)を添加した。反応物を室温でさらに20分間撹拌し、次いで反応混合物を真空下で一晩蒸発乾固させた。残留物をジクロロメタンに溶解し、次いで3×75mLの水で洗浄して、尿素副生成物の大部分を除去し、濃縮し、次いで高さ6インチ×幅1インチのシリカゲルカラムに充填した。2-プロパノール/ジクロロメタン勾配溶出後、ジクロロメタン中の5%2-プロパノールを使用して、所望の生成物を収集した。溶媒を真空下で除去し、残留物を100mLのジクロロメタンに溶解した。有機溶液を3×75mLの水で再度洗浄して、最後の微量の尿素副生成物を除去し、シリカゲルクロマトグラフィーを上記のように繰り返した。真空下で溶媒を除去することにより、所望の化合物12が黄色粉末として得られた。収量:1.72g、85.8%。1H NMR(500 MHz,CDCl3)δ 7.43(s,2H),7.41-7.36(m,6H),7.33-7.27(m,6H),6.30(d,J=7.2 Hz,2H),5.18(s,4H),4.55(t,J=7.3 Hz,4H),3.46-3.37(m,8H).13C NMR(125 MHz,CDCl3)δ 202.32,165.52,160.34,155.62,144.51,138.98,133.20,130.49,130.38,129.71,128.86,105.70,79.35,55.74,39.79,29.52.C36H32N6O8
32S4NaのHRMS-ESI(m/z、[M+Na]+)計算値:827.1057、実測値:827.1055。
【0208】
化合物13.スペルミン(386.4mg、1.910mmol)を2-プロパノール(50mL)に溶解し、12(1.614g、2.005mmol)をジクロロメタン(50mL)に別々に溶解した。シリンジポンプを使用して、2つの溶液を、1:1のジクロロメタン:2-プロパノール(1L)を含む大きなフラスコに2日間にわたって滴下した(1mL/時間)。反応物を室温でさらに1日間撹拌し、続いて真空下で溶媒を除去した。化合物13の粗製残留物をさらに精製することなく次の反応に直接使用した。
【0209】
化合物15.塩化オキサリル(4.00g、31.5mmol)をジクロロメタン(50mL)中の14(3.92g、16.0mmol)の懸濁液に添加し、続いて2滴の乾燥ジメチルホルムアミドを添加した。溶液は30分以内に均一になり、反応物を室温で合計3時間撹拌した。次いで、溶媒を真空下で一晩除去した。残留物をジクロロメタン(40mL)に溶解し、ジクロロメタン(40mL)に溶解した粗13(1.469g、1.910mmolと推定される)および20mLのK2CO3水溶液(4.42g、32mmol)の溶液に激しく撹拌しながら0℃で滴下した。ジクロロメタン層を高さ4インチ×幅1インチのシリカゲルカラムに直接充填した。メタノール/ジクロロメタン勾配溶出後、ジクロロメタン中の4%メタノールを使用して所望の生成物を収集した。溶媒を真空下で除去し、粗生成物をジクロロメタンに再度溶解し、カラムクロマトグラフィーを同じ方法で2回繰り返した。最後のカラムクロマトグラフィー工程後、溶媒をもう一度除去して、無色のフォーム15を得た。2工程で収量1.69g、72.3%。1H NMR(500MHz,methanol-d4)δ 9.74-9.41(m,2H),8.22-7.94(m,2H),7.62-7.02(m,22H),6.78-5.89(m,6H),5.62-4.91(m,8H),3.77-2.84(m,16H),1.93-0.98(m,10H)。C66H66N10O14NaのHRMS-ESI(m/z、[M+Na]+)計算値Na:1245.4652、実測値:1245.4626。
【0210】
化合物16.化合物15(1.63g、1.33mmol)を濃HClおよび氷酢酸(50mL)の1:1混合物に溶解した。暗所、室温で30日間、均質な溶液に蓋をしたままとした。反応が完了したら、溶媒を真空下で除去した。水との共蒸発、続いてメタノールとの共蒸発により、残留溶媒を除去した。生成物の濃メタノール溶液をジエチルエーテルに滴下し、ベージュ色の固体16を得た。5倍モル過剰のEuCl3をメタノールに溶解した試料に最初に添加することにより、純度をHPLCで評価した。定量的収率および95%超の純度。C38H43N10O14のHRMS-ESI(m/z、[M+H]+)計算値:863.2955、実測値:863.2949。
【0211】
実施例4.[Eu-16][NMe
4]塩の結晶構造
[Eu-16][NMe
4]のX線回折に好適な単結晶を、Eu・16および水酸化テトラメチルアンモニウム(1.5モル当量)を含むDMF溶液へのジエチルエーテルの蒸気拡散により成長させた。単結晶X線回折データを、カリフォルニア大学バークレー校の小分子X線結晶学施設にあるPilatus 200KCCD検出器を装備したRigaku回折計で収集した。構造をSIR-97で解析し、SHELX-97で精密化し、精密化した原子位置を水銀を使用して50%熱振動楕円体(thermal ellipsoid)として表す(
図2)。公開資料をWinGXで作成した。精密化ツールSQUEEZEを使用して、最終精密化に使用された.hklファイルから無秩序な溶媒電子密度を削除した。結晶構造により、予想されたEu・16構造および架橋1,2-HOPO単位の配向が、重要な中間体7(実施例2)について決定された結晶構造と一致していることが確認される。結晶データおよび構造精密化統計を以下の表に要約する。
【0212】
【0213】
【0214】
【0215】
【0216】
実施例5.例示的な足場アミン23の合成。
【化57】
スキーム3.例示的な足場アミン23の合成スキーム。
前駆体(S)-2-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)-6-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ヘキサン酸(17,N
α-Z-N
ε-Boc-L-リジン)をChem-Impex(ウッドデール、イリノイ州)から購入した。特に明記しない限り、他のすべての溶媒および試薬は、商業的供給元から購入し、受け取ったまま使用した。
1H-NMRおよび
13C-NMRスペクトルは、以下に示すように、BrukerAV-300、AVB-400、またはDRX-500分光計を使用して、300/75MHz、400/100MHz、または500/125MHzで取得した。
1H(または
13C)化学シフトは、残留溶媒シグナルに対して報告され、CDCl
3、DMSO-d
6、およびメタノール-d
4についてそれぞれ、7.24(77.23)、2.50(39.51)、および3.31(49.15)ppmとして取得された。高解像度エレクトロスプレーイオン化質量スペクトル(HRMS-ESI)は、カリフォルニア大学バークレー校のMicroanalytical Laboratoryによって行われた。
【0217】
(S)-ベンジルtert-ブチル(6-ヒドロキシヘキサン-1,5-ジイル)ジカルバメート(18)。試薬1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI、5.1g、31.5mmol)を、THF(70mL)に溶解した出発物質(S)-2-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)-6-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ヘキサン酸(17、Nα-Z-Nε-Boc-L-リジン、11.4g、30mmol)の撹拌溶液に室温で添加した。20分後、THF溶液を、テフロン(登録商標)カニューレ(φ=2mm)により、5~10℃で水浴に浸した1L丸底フラスコ中の水(10mL)に溶解した水素化ホウ素ナトリウム(2.25g、60mmol)の撹拌溶液にゆっくり移した。添加により水素ガスが強く発生し、混合物を3時間撹拌した。次いで、揮発性物質をロータリーエバポレーターで除去し、残留物を酢酸エチル(150mL)に溶解した。酢酸エチル溶液を、冷たい1N HCl(2×50mL)、飽和重炭酸ナトリウム溶液(2×50mL)、および食塩水(100mL)で連続的に抽出した。洗浄した酢酸エチル溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、次いで、乾燥した酢酸エチル溶液を、酢酸エチルで溶出する1インチのシリカゲルカラムに通過させた。溶媒を真空下で除去して、無色固体18を得た。収量9.9g、90%。TLC Rf=0.24(95:5:2 EtOAc:MeOH:H2O)。1H NMR(500 MHz,CDCl3)δ 7.40-7.22(m,5H),5.15(s,1H),5.06(s,2H),4.62(s,1H),3.72-3.49(m,3H),3.18-2.97(m,2H),1.64-1.52(m,1H),1.52-1.21(m,15H).13C NMR(125 MHz,CDCl3)δ 156.7,156.4,136.4,128.5,128.1,128.0,79.2,66.7,64.8,52.9,39.7,29.8,28.4,22.6.
【0218】
(S)-2-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)-6-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ヘキシルメタンスルホネート(19)。出発物質(S)-ベンジルtert-ブチル(6-ヒドロキシヘキサン-1,5-ジイル)ジカルバメート(18、9.9g、27mmol)、トリエチルアミン(7.1g mL、70mmol)、および触媒量のDMAP(100mg、0.819mmol)を0℃でジクロロメタン(350mL)に溶解した。次いで、DCM(50mL)に溶解した新たに蒸留したメタンスルホニルクロリド(MsCl、4.0g、35mmol)を、30分間にわたって出発物質溶液に滴下した。MsClの添加が完了したら、反応混合物を室温まで温め、N2下で2時間撹拌した。反応混合物を再び0℃まで冷却し、水相が3~4のpHを有するまで5%KHSO4溶液を添加することにより過剰な試薬をクエンチした。ジクロロメタン相をH2O(100mL)および食塩水(3×100mL)で連続して洗浄した。有機部分をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、ピンク色固体19を収量10.8g、90%で得た。1H NMR(300 MHz,CDCl3)δ 7.43-7.25(m,5H),5.57-5.42(m,1H),5.18-5.03(m,2H),4.88-4.71(m,1H),4.29-4.08(m,2H),3.99-3.77(m,1H),3.18-3.00(m,2H),2.95(s,3H),1.64-1.51(m,2H),1.50-1.23(m,13H).13C NMR(75 MHz,CDCl3)δ 162.33,156.18,136.35,128.50,128.15,128.08,79.02,70.92,66.74,50.19,39.90,37.12,30.35,29.61,28.38,22.70.
【0219】
(S)-ベンジルtert-ブチル(6-アジドヘキサン-1,5-ジイル)ジカルバメート(20)。出発物質1-(S)-2-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)-6-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ヘキシルメタンスルホネート(19、10.7g、24mmol)をDMF(100mL)に溶解し、次いで、固体アジ化ナトリウム(2.40g、36.9mmol)を添加した。懸濁液を70℃まで加熱し、N2下で一晩撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮して粘着性の白色フォームを得て、これを250mLの酢酸エチルに溶解し、H2O(3×100mL)および食塩水(1×100mL)で連続して洗浄した。有機画分をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、無色の粗シロップを得た。シロップをシリカゲルカラムに充填し、25~50%酢酸エチル/ヘキサンで溶出し、次いで真空下で濃縮して、無色のシロップ20を得た。収量8.9g、95%。1H NMR(300 MHz,CDCl3)δ 7.46-7.26(m,5H),5.26-5.03(m,3H),4.70(s,1H),3.77(s,1H),3.50-3.25(m,2H),3.10(s,2H),1.61-1.25(m,15H).13C NMR(75 MHz,CDCl3)δ 156.24,156.11,136.44,128.60,128.23,128.16,79.21,66.87,54.78,50.88,40.07,31.72,29.82,28.48,22.95.
【0220】
(S)-ベンジルtert-ブチル(6-アミノヘキサン-1,5-ジイル)ジカルバメート(21)。(S)-ベンジルtert-ブチル(6-アジドヘキサン-1,5-ジイル)ジカルバメート(20)出発物質のアジド基を、毒性5%Pd/C触媒を使用して接触水素化によって選択的に還元して第一級アミンとした。CBZ保護基は、これらの条件下では影響を受けなかった。毒性5%Pd/C触媒を調製するために、Pd/C触媒を2-メルカプト-チオアゾリン(20重量%)を含むメタノールに懸濁し、混合物を室温で10分間撹拌した。溶媒を濾別し(filtered off)、触媒床をメタノールで十分に洗浄し、選択的水素化に直接使用した。メタノール(40mL)中の出発物質20(8.9g、22.7mmol)の溶液を適切なサイズのガラス容器に添加し、続いて1gの5%Pd/C毒性触媒を添加した。容器をParr bombに入れ、H2(500psi)を添加し、溶液を高圧H2下で室温で一晩撹拌した。bombを減圧し、反応容器を取り除いた後、TLC分析により、出発物質が残存していないことが示され、リトマス試験により、溶液が強塩基性であることが示される。溶媒を真空下で除去して、濃密な無色油状物21を得た。生収量は定量的であった。1H NMR(300 MHz,CDCl3)δ 7.41-7.26(m,5H),5.47(d,J=8.7 Hz,1H),5.10(s,2H),5.03-4.87(m,1H),3.65-3.51(m,1H),3.17-2.95(m,2H),2.76(dd,J=13.0,4.2 Hz,1H),2.64(dd,J=13.0,6.5 Hz,1H),1.60-1.16(m,17H).13C NMR(75 MHz,CDCl3)δ 156.66,156.14,136.62,128.46,128.02,128.01,78.89,66.50,53.47,45.83,40.09,32.10,29.77,28.41,23.02.
【0221】
(S)-ジベンジルtert-ブチルヘキサン-1,2,6-トリイルトリカルバメート(22)。出発物質(S)-ベンジルtert-ブチル(6-アミノヘキサン-1,5-ジイル)ジカルバメート(21、8.2g、22.5mmol)をジクロロメタン(100mL)に懸濁し、K2CO3の水溶液(4M、50mL)を添加した。二相懸濁液を0℃で激しく撹拌し、次いで乾燥DCM(50mL)に溶解したクロロギ酸ベンジル(CBZCl、5.80g、34mmol)の溶液を1時間にわたって滴下した。反応混合物を室温まで温めながら一晩撹拌し、綿毛状の白色固体の沈殿が得られた。反応混合物を濾過し、固体をメタノールで洗浄して、生成物の第1のバッチを得た。次いで有機相を分離し、溶媒を蒸発乾固し、残留物をメタノールで処理した。メタノール処理により、より多くの所望の生成物の沈殿が得られ、これを濾過により回収し、メタノールで洗浄して、生成物の第2のバッチを得た。合わせた第1および第2バッチ生成物を真空下で乾燥させて、白色固体22を生成した。収量9.9g、87%。1H NMR(300 MHz,CDCl3)δ 7.42-7.19(m,10H),5.30(d,J=8.5 Hz,1H),5.06(d,J=2.4 Hz,4H),4.60(s,1H),3.67(s,1H),3.38-3.25(m,1H),3.26-3.13(m,1H),3.13-2.96(m,2H),1.79(s,1H),1.59-1.21(m,15H).13C NMR(75 MHz,CDCl3)δ 157.26,156.80,156.40,136.65,136.63,128.69,128.69,128.29,128.29,128.25,128.25,79.40,66.98,66.94,51.99,45.21,40.06,32.05,30.00,28.59,22.89.C27H37N3O6NaのHRMS-ESI(m/z、[M+Na]+)計算値Na:522.2575、実測値:522.2565。
【0222】
(S)-Tert-ブチル(5,6-ジアミノヘキシル)カルバメート(23)。適切なサイズのガラス容器中で、出発物質(S)-ジベンジルtert-ブチルヘキサン-1,2,6-トリイルトリカルバメート(22、2.5g、5mmol)を1:1のメタノール:酢酸混合物(40mL)に溶解し、5%Pd/C(300mg)を添加した。反応容器をParr bombに入れ、これをH2(500psi)で加圧した。加圧した反応物を、大きな卵形撹拌棒で室温で一晩撹拌した。反応の完了がTLCによって確認され、出発物質が残存していないことが示された。溶媒を真空下で除去し、粗生成物の酢酸塩を透明な無色の粘稠性油状物として得た。油状物を少量の水に溶解し、粗生成物をイオン交換クロマトグラフィーに供して、遊離アミン生成物23を無色の油状物として得、これを冷却すると固化した。収量0.95g、82%。1H NMR(300 MHz,CDCl3)δ 5.19-4.75(m,1H),3.00-2.76(m,2H),2.63-2.35(m,2H),2.30-2.13(m,1H),1.52-0.91(m,19H).13C NMR(75 MHz,CDCl3)δ 155.97,78.62,53.34,48.40,40.15,35.06,30.02,28.28,23.20.C11H26N3O2のHRMS-ESI(m/z、[M+H]+)計算値:232.2025、実測値:232.2019。
【0223】
実施例6.例示的な二官能性キレート剤29の合成。
【化58】
スキーム4.例示的な二官能性キレート剤29の合成。
1H-NMRおよび
13C-NMRスペクトルは、以下に示すように、Bruker AV-300、AVB-400、またはDRX-500分光計を使用して、300/75MHz、400/100MHz、または500/125MHzで取得した。
1H(または
13C)化学シフトは、残留溶媒シグナルに対して報告され、CDCl
3、DMSO-d
6、およびメタノール-d
4についてそれぞれ、7.24(77.23)、2.50(39.51)、および3.31(49.15)ppmとして取得された。高解像度エレクトロスプレーイオン化質量スペクトル(HRMS-ESI)は、カリフォルニア大学バークレー校のMicroanalytical Laboratoryによって行われた。
【0224】
化合物24.塩化オキサリル(1.00g、7.88mmol)をジクロロメタン(15mL)中の8(910mg、3.00mmol)の懸濁液に添加し、続いて1滴の乾燥ジメチルホルムアミドを添加した。溶液は30分以内に均一になり、反応物を室温で合計3時間撹拌した。次いで、溶媒を真空下で一晩除去した。残留物をジクロロメタン(50mL)に溶解し、ジクロロメタン(40mL)に溶解した23(0.23g、1.0mmol)およびK2CO3水溶液(4M、30mL)の溶液に激しく撹拌しながら0℃で滴下した。ジクロロメタン層を高さ4インチ×幅1インチのシリカゲルカラムに直接充填した。メタノール/ジクロロメタン勾配溶出後、ジクロロメタン中の3~4%メタノールを使用して所望の生成物を収集した。溶媒を真空下で除去して、無色のフォーム24を得た。収量720mg、90%。1H NMR(300 MHz,CDCl3)δ 8.17-8.07(m,1H),7.98(d,J=8.7 Hz,1H),7.76(d,J=7.4 Hz,1H),7.67(d,J=7.4 Hz,1H),7.40-7.11(m,10H),6.13(d,J=7.4 Hz,1H),6.03(d,J=7.4 Hz,1H),5.31-5.00(m,5H),4.31-4.08(m,1H),3.77-3.57(m,7H),3.48-3.28(m,1H),2.90-2.72(m,2H),1.69-1.05(m,15H).13C NMR(75 MHz,CDCl3)δ 164.43,164.26,162.40,160.37,159.75,156.04,155.79,155.73,148.18,147.95,143.29,133.30,133.26,130.06,130.03,129.32,129.24,128.53,128.48,121.32,103.21,103.10,79.63,79.54,79.15,78.87,52.65,52.54,50.40,42.86,40.20,31.05,29.38,28.46,22.94.C41H47N5O12NaのHRMS-ESI(m/z、[M+Na]+)計算値Na:824.3119、実測値:824.3098。
【0225】
化合物25.水酸化リチウム一水和物(147mg、3.5mmol)を水(12mL)に溶解し、次いで、これをメタノール(12mL)中の24(1.00g、1.25mmol)の懸濁液に一度にすべて添加した。反応物を室温で一晩撹拌した。次いで溶媒を真空下で除去し、残留物を水(25mL)に溶解した。溶液を2NHClでpH=5~6に調整し、次いでpHが3~4に低下するまで5%KHSO4溶液を添加し、生成物を沈殿させた。沈殿物を少量の冷水で洗浄し、真空下で一晩乾燥して、白色粉末25を得た。生成物をさらに精製することなく次の反応に直接使用した。1H NMR(300 MHz,CDCl3)δ 8.35-7.70(m,4H),7.64-7.21(m,10H),6.77-6.32(m,2H),5.60-5.22(m,4H),4.69(s,1H),4.32(s,1H),4.00-3.44(m,2H),3.18-2.59(m,2H),1.79-1.10(m,15H).13C NMR(75 MHz,CDCl3)δ 171.27,164.97,164.89,160.50,159.75,159.40,156.25,147.88,147.53,144.18,144.08,132.68,132.63,130.49,130.41,129.86,129.78,128.74,119.64,119.49,106.33,106.00,80.72,80.61,79.16,50.55,39.78,30.89,29.45,28.40,22.73.C39H43N5O12NaのHRMS-ESI(m/z、[M+Na]+)計算値Na:796.2800、実測値:796.2803。
【0226】
化合物26.化合物25のバッチ全体(965mg、1.25mmolと推定される)をDMF(10mL)に溶解し、HATU(1.20g、3.15mmol)およびDIPEA(390mg、3.00mmol)を順次添加した。溶液を室温で15分間撹拌し、次いで2-メルカプトチアゾリン(352mg、3.00mmol)およびDIPEA(390mg、3.00mmol)を順次添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌し、次いで反応物を蒸発乾固させ、ジクロロメタン(50mL)に溶解した。ジクロロメタン溶液を5%KHSO4(1×50mL)、食塩水(3×40mL)で洗浄し、高さ4インチ×幅1インチのシリカゲルカラムに充填した。2-プロパノール/ジクロロメタン勾配溶出後、ジクロロメタン中の5%2-プロパノールを使用して、所望の生成物を収集した。溶媒を真空下で除去して、黄色のフォーム26を得た。2工程で収量:0.70g、57%。1H NMR(300 MHz,CDCl3)δ 7.60(s,1H),7.52-7.14(m,13H),6.38-6.11(m,2H),5.36-5.07(m,4H),4.54(t,J=7.1 Hz,5H),4.10(s,1H),3.62-3.21(m,6H),3.01-2.72(m,2H),1.41(s,11H),1.22(s,4H).13C NMR(75 MHz,CDCl3)δ 202.12,165.56,165.50,160.60,160.16,156.21,155.53,145.14,144.92,138.87,133.45,130.11,130.05,129.44,128.69,105.17,104.84,79.16,55.67,50.60,43.26,39.93,31.18,29.61,29.46,28.53,22.86.C45H49N7O10S4NaのHRMS-ESI(m/z、[M+Na]+)計算値:998.2322、実測値:998.2319。
【0227】
化合物27.化合物13に使用したものと同じ手順に従い、出発物質として26(747.7mg、0.766mmol)およびスペルミン(147.6mg、0.7294mmol)を使用した。同様に、残留物をさらに精製することなく次の反応に直接使用した。
【0228】
化合物28.化合物15に使用したものと同じ手順に従い、出発物質として27(685.7mg、0.7294mmolと推定される)および14(1.43g、5.84mmol)を使用した。2工程で収量:653mg、64.2%。1H NMR(500MHz,methanol-d4)δ 9.72-9.43(m,2H),8.31-7.81(m,2H),7.65-7.07(m,24H),6.83-5.90(m,6H),5.67-4.91(m,8H),4.31-4.07(m,1H)3.91-2.80(m,16H),1.97-1.04(m,24H)。C75H83N11O16NaのHRMS-ESI(m/z、[M+Na]+)計算値Na:1416.5911、実測値:1416.5937。
【0229】
化合物29.化合物16に使用したものと同じ手順に従い、出発物質として28(600mg、0.430mmol)を使用した。定量的収率および95%超の純度。C42H52N11O14のHRMS-ESI(m/z、[M+H]+)計算値:934.3690、実測値:934.3701。
【0230】
実施例7.例示的な二官能性キレート剤33の合成。
【化59】
スキーム5.例示的な二官能性キレート剤33の合成スキーム。
前駆体tert-ブチル(2-(2-(2,5-ビス((3-アミノプロピル)アミノ)ペンタンアミド)エトキシ)エチル)カルバメート(30)を、以前に報告された方法(WO2016/106241)に従って合成した。特に明記しない限り、他のすべての溶媒および試薬は、商業的供給元から購入し、受け取ったまま使用した。
1H-NMRおよび
13C-NMRスペクトルは、以下に示すように、Bruker AV-300、AVB-400、またはDRX-500分光計を使用して、300/75MHz、400/100MHz、または500/125MHzで取得した。
1H(または
13C)化学シフトは、残留溶媒シグナルに対して報告され、CDCl
3、DMSO-d
6、およびメタノール-d
4についてそれぞれ、7.24(77.23)、2.50(39.51)、および3.31(49.15)ppmとして取得された。高解像度エレクトロスプレーイオン化質量スペクトル(HRMS-ESI)は、カリフォルニア大学バークレー校のMicroanalytical Laboratoryによって行われた。
【0231】
化合物31.化合物13に使用したものと同じ手順に従い、12(916.8g、1.139mmol)および30(469.3mg、1.085mmol)を出発物質として使用した。同様に、残留物をさらに精製することなく次の反応に直接使用した。
【0232】
化合物32.化合物15に使用したものと同じ手順に従い、出発物質として31(1.084g、1.085mmolと推定される)および14(2.29g、8.68mmol)を使用した。2工程で収量:834mg、52.9%。1H NMR(500MHz,methanol-d4)δ 10.03-9.32(m,2H),8.32-7.81(m,2H),7.81-6.95(m,24H),6.85-5.85(m,6H),5.69-4.56(m,8H),4.14-2.61(m,24H),2.23-1.02(m,18H)。C76H84N12O18NaのHRMS-ESI(m/z、[M+Na]+)計算値Na:1475.5919、実測値:1475.5925。
【0233】
化合物33.化合物16に使用したものと同じ手順に従い、出発物質として32(750mg、0.516mmol)を使用した。定量的収率および95%超の純度。C43H51N12O16のHRMS-ESI(m/z、[M-H]-)計算値:991.3551、実測値:991.3510。
【0234】
実施例8.例示的な親リガンド40の合成。
【化60】
スキーム6.例示的な親リガンド40の合成スキーム。
一般的方法.
前駆体(3R,4S)-テトラヒドロフラン-3,4-ジアミン(34)および1-(ベンジルオキシ)-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-2-カルボン酸(14)を、以前に報告された方法(Zhang,Z.;Du,X.;Chopiuk,G.Heteropolycyclic Inhibitors.WO0202562(A2),January 10,2002;Xu,J.;Durbin,P.W.;Kullgren,B.;Ebbe,S.N.;Uhlir,L.C.;Raymond,K.N.J.Med.Chem.2002,45,3963)で合成した。特に明記しない限り、他のすべての溶媒および試薬は、商業的供給元から購入し、受け取ったまま使用した。
1H-NMRおよび
13C-NMRスペクトルを、以下に記載されるように、Bruker AV-600またはDRX-500分光計のいずれかを使用して、600/150MHzまたは500/125MHzで得た。
1H(または
13C)化学シフトは、残留溶媒シグナルに対して報告され、CDCl
3およびDMSO-d
6に対してそれぞれ、7.24(77.23)および2.50(39.51)ppmとして得た。高解像度エレクトロスプレーイオン化質量スペクトル(HRMS-ESI)は、カリフォルニア大学バークレー校のMicroanalytical Laboratoryによって行われた。
【0235】
ジメチル6,6’-((((3R,4S)-テトラヒドロフラン-3,4-ジイル)ビス(アザネジイル))ビス(カルボニル))ビス(1-(ベンジルオキシ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキシレート)(35)塩化オキサリル(4.10g、32.3mmol)をジクロロメタン(40mL)中の8(4.10g、13.5mmol)の懸濁液に添加し、続いて2滴の乾燥DMFを添加した。溶液は30分以内に均一になり、反応物を室温で合計3時間撹拌した。次いで、溶媒を真空下で一晩除去した。残留物をジクロロメタン(20mL)に溶解し、ジクロロメタン(20mL)および40%K2CO3(20mL)に溶解した34(580mg、5.7mmol)の溶液に、激しく撹拌しながら0℃で滴下した。反応物を室温に温めながら一晩撹拌した。ジクロロメタン層を高さ4インチ×幅1インチのシリカゲルカラムに直接充填した。メタノール/ジクロロメタン勾配溶出後、ジクロロメタン中の2.5%メタノールを使用して所望の生成物を収集した。溶媒を真空下で除去して、所望の生成物を硬質ガラスとして得た。メタノールからの再結晶、続いて濾過および2-プロパノールでの洗浄により、流動性の良い白色粉末35が得られた。収量:3.2g、83%。1H NMR(600 MHz,CDCl3)δ 8.16(s,2H),7.73(d,J=7.3 Hz,2H),7.36-7.29(m,6H),7.28-7.23(m,4H),6.07(d,J=7.2 Hz,2H),5.22(d,J=8.2 Hz,2H),5.02(d,J=7.8 Hz,2H),4.95-4.85(m,2H),4.09(dd,J=9.0,6.3 Hz,2H),3.73(dd,J=8.5,4.2 Hz,2H),3.67(s,6H).13C NMR(150 MHz,CDCl3)δ 164.03,160.01,155.80,147.39,143.25,132.88,130.30,129.42,128.54,121.43,103.67,79.80,71.22,52.43,51.13.C34H33N4O11のHRMS-ESI(m/z、[M+H]+)計算値:673.2140、実測値:673.2148。
【0236】
6,6’-((((3R,4S)-テトラヒドロフラン-3,4-ジイル)ビス(アザネジイル))ビス(カルボニル))ビス(1-(ベンジルオキシ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボン酸)(36)水酸化カリウム(934mg、16.6mmol)を2:2:1のTHF:MeOH:水(50mL)中の35(2.80g、4.16mmol)の懸濁液に添加し、反応物を撹拌しながら一晩50℃まで加熱した。溶媒を真空下で除去し、得られた残留物を水(250mL)に溶解した。リトマス試験により溶液が酸性になるまで、撹拌しながら希HClを滴下した。所望の生成物を濾過により収集し、希HClで洗浄し、真空下で一晩乾燥して、白色粉末36を得た。収量:2.3g、86%。1H NMR(600 MHz,DMSO-d6)δ 13.53(s,2H),9.19(d,J=7.0 Hz,2H),8.28(d,J=7.4 Hz,2H),7.53-7.47(m,4H),7.47-7.39(m,6H),6.59(d,J=7.4 Hz,2H),5.37(d,J=8.6 Hz,2H),5.27(d,J=8.6 Hz,2H),4.80-4.70(m,2H),3.99(dd,J=8.8,6.3 Hz,2H),3.60(dd,J=9.0,4.8 Hz,2H).13C NMR(150 MHz,DMSO-d6)δ 163.98,159.36,158.61,147.09,143.63,133.23,129.73,129.31,128.55,120.56,105.44,79.52,69.53,51.29.C32H27N4O11のHRMS-ESI(m/z、[M-H]-)計算値:643.1682、実測値:643.1684。
【0237】
N,N’-((3R,4S)-テトラヒドロフラン-3,4-ジイル)ビス(1-(ベンジルオキシ)-6-オキソ-5-(2-チオキソチアゾリジン-3-カルボニル)-1,6-ジヒドロピリジン-2-カルボキサミド)(37)HATU(2.40g、6.3mmol)、36(1.93g、3.00mmol)、およびDMAP(73.3mg、0.6mmol)をジクロロメタン(75mL)に懸濁した。DIPEA(776mg、6mmol)を懸濁液に滴下し、反応物を室温で2時間撹拌した。完了したら、2-メルカプトチアゾリン(894mg、7.5mmol)を均質な溶液に添加し、続いてDIPEA(1.5g、11.6mmol)を添加した。反応物を室温でさらに1.5時間撹拌した。次いで、反応混合物を水で3×75mLで洗浄して、尿素副生成物の大部分を除去し、濃縮し、次いで、高さ6インチ×幅1インチのシリカゲルカラムに充填した。2-プロパノール/ジクロロメタン勾配溶出後、ジクロロメタン中の5%2-プロパノールを使用して、所望の生成物を収集した。溶媒を真空下で除去し、残留物を100mLのジクロロメタンに溶解した。有機溶液を水3×75mLで再度洗浄して、最後の微量尿素副生成物を除去し、有機溶液を10mLの体積に濃縮した。2-プロパノールの添加により、所望の生成物の沈殿が生じ、これを溶媒の蒸発により収集して、黄色粉末37を得た。収量:1.83g、72%。1H NMR(500 MHz,CDCl3)δ 7.57(d,J=5.0 Hz,2H),7.44-7.37(m,4H),7.37-7.28(m,6H),7.25(d,J=7.0 Hz,2H),6.20(d,J=7.0 Hz,2H),5.26(d,J=8.7 Hz,2H),5.08(d,J=8.7 Hz,2H),4.79-4.68(m,2H),4.57-4.41(m,4H),3.98(dd,J=9.1,6.0 Hz,2H),3.62(dd,J=9.2,3.8 Hz,2H),3.49-3.33(m,4H).13C NMR(125 MHz,CDCl3)δ 202.05,165.47,159.87,155.36,144.03,138.67,132.91,130.27,130.07,129.61,128.70,105.73,79.43,70.99,55.60,51.75,29.38.C38H35N6O9
32S4のHRMS-ESI(m/z、[M+H]+)計算値:847.1343、実測値:847.1338。
【0238】
化合物38.スペルミン(229mg、1.13mmol)を2-プロパノール(50mL)に溶解し、37(957mg、1.13mmol)をジクロロメタン(50mL)に別々に溶解した。シリンジポンプを使用して、2つの溶液を1:1のジクロロメタン:2-プロパノール(1L)を含む大きなフラスコに4日間にわたって滴下した(0.5mL/時)。反応物を室温でさらに1日間撹拌し、続いて真空下で溶媒を除去した。残留物をジクロロメタン(200mL)に溶解し、水酸化カリウム水溶液で抽出して、2-メルカプトチアゾリン副生成物を除去した。溶媒を除去することにより、所望の生成物が粘性油状物38として得られ、これをさらに精製することなく次の反応で使用した。1H NMR(600 MHz,CDCl3)δ 9.60(s,2H),8.08(s,2H),7.64-7.11(m,12H),6.05(s,2H),5.35-5.08(m,4H),4.81(s,2H),4.09(s,2H),3.85(s,2H),3.69-3.22(m,4H),2.96-2.37(m,8H),1.97-1.39(m,8H).13C NMR(150 MHz,CDCl3)δ 162.97,160.18,158.11,144.85,141.33,132.93,130.44,129.73,128.73,123.83,104.66,79.89,71.46,51.59,49.65,47.25,37.26,29.53,27.30.C42H51N8O9のHRMS-ESI(m/z、[M+H]+)計算値:811.3774、実測値:811.3768。
【0239】
化合物39.塩化オキサリル(1.1g、8.7mmol)を14(1.11g、4.52mmol)のジクロロメタン(40mL)懸濁液に添加し、続いて1滴の乾燥DMFを添加した。溶液は30分以内に均一になり、反応物を室温で合計3時間撹拌した。次いで、溶媒を真空下で一晩除去した。残留物をジクロロメタン(20mL)に溶解し、ジクロロメタン(20mL)および40%K2CO3(20mL)に溶解した38(1.13mmol)の溶液に、激しく撹拌しながら0℃で滴下した。反応物を室温に温めながら一晩撹拌した。ジクロロメタン層を高さ4インチ×幅1インチのシリカゲルカラムに直接充填した。メタノール/ジクロロメタン勾配溶出後、ジクロロメタン中の4%メタノールを使用して所望の生成物を収集した。溶媒を真空下で除去して、硬質ガラスとして所望の生成物39を得た。2工程で収量:520mg、36%。1H NMR(600 MHz,CDCl3)δ 9.60-8.98(m,2H),8.43-7.83(m,4H),7.80-7.05(m,20H),7.05-5.54(m,8H),5.49-4.98(m,6H),4.98-4.69(m,2H),4.28-3.98(m,2H),3.93-2.75(m,14H),2.05-1.16(m,10H).C68H69N10O15のHRMS-ESI(m/z、[M+H]+)計算値:1265.4938、実測値:1265.4901。
【0240】
化合物40.化合物39(63mg、0.070mmol)を、濃HClおよび氷酢酸(5mL)の1:1混合物に溶解した。均質な溶液を暗所で室温で3週間撹拌した。反応が完了したら、溶媒を真空下で除去した。残留溶媒を、水、続いてメタノール、最後にジエチルエーテルとの共蒸発により除去し、ベージュ色固体40を得た。5倍モル過剰のEuCl3をメタノールに溶解した試料に最初に添加することにより、純度をHPLCで評価した。定量的収率および95%超の純度。1H NMR(500 MHz,DMSO-d6)δ 9.82-9.33(m,2H),9.07-7.94(m,4H),7.52-7.15(m,2H),6.86-6.44(m,4H),6.40-6.05(m,2H),4.74(s,2H),4.03(s,2H),3.86-2.76(m,14H),1.97-1.17(m,8H).C40H45N10O15のHRMS-ESI(m/z、[M+H]+)計算値:905.3060、実測値:905.3053。
【0241】
実施例9.例示的な二官能性キレート剤43の合成。
【化61】
スキーム7.例示的な二官能性キレート剤43の合成。
前駆体tert-ブチル(2-(2-(2,5-ビス((3-アミノプロピル)アミノ)ペンタンアミド)エトキシ)エチル)カルバメート(30)を、以前に報告された方法(WO2016/106241)に従って合成した。特に明記しない限り、他のすべての溶媒および試薬は、商業的供給元から購入し、受け取ったまま使用した。
1H-NMRおよび
13C-NMRスペクトルを、以下に記載されるように、Bruker AV-600またはDRX-500分光計のいずれかを使用して、600/150MHzまたは500/125MHzで得た。
1H(または
13C)化学シフトは、残留溶媒シグナルに対して報告され、CDCl
3およびDMSO-d
6に対してそれぞれ、7.24(77.23)および2.50(39.51)ppmとして得た。高解像度エレクトロスプレーイオン化質量スペクトル(HRMS-ESI)は、カリフォルニア大学バークレー校のMicroanalytical Laboratoryによって行われた。
【0242】
化合物41.化合物38に使用したものと同じ手順に従い、37(1.30g、1.54mmol)および30(668mg、1.54mmol)を出発物質として使用した。同様に、残留物を使用し、塩基で洗浄して、さらに精製することなく次の反応で使用した。1H NMR(500 MHz,CDCl3)δ 9.89-9.45(m,2H),8.43-7.62(m,6H),7.62-7.09(m,10H),6.49-5.92(m,2H),5.59-4.51(m,6H),4.11-2.24(m,23H),2.10-1.03(m,17H).C52H69N10O13のHRMS-ESI(m/z、[M+H]+)計算値:1041.5040、実測値:1041.5031。
【0243】
化合物42.化合物39で使用したものと同じ手順に従い、41(1.54mmol)および14(1.51g、6.16mmol)を出発物質として使用した。2工程で収量:1.08g、47%。1H NMR(500 MHz,CDCl3)δ 9.69-8.96(m,2H),8.61-6.93(m,28H),6.89-6.01(m,4H),5.98-4.66(m,12H),4.29-2.65(m,23H),2.56-1.04(m,17H).C78H86N12O19NaのHRMS-ESI(m/z、[M+Na]+)計算値Na:1517.6024、実測値:1517.6063。
【0244】
化合物43.化合物40に使用したものと同じ手順に従い、出発物質として42(92mg、0.062mmol)を使用した。定量的収率および95%超の純度。1H NMR(500 MHz,DMSO-d6)δ 9.79-9.26(m,2H),8.85-7.79(m,5H),7.61-7.19(m,2H),6.75-6.40(m,4H),6.37-6.02(m,2H),4.74(s,2H),4.04(s,2H),3.75-2.85(m,21H),1.94-1.29(m,8H).C45H53N12O17のHRMS-ESI(m/z、[M-H]-)計算値:1033.3657、実測値:1033.3646。
【0245】
実施例10.リガンド16、29、33、40、および43の金属錯体の特性評価
化合物16、29、33、40、および43の金属錯体は、例えば、以下に記載されるように、メタノールに溶解した適切な金属塩での処理により、容易に調製することができる。ストック溶液は、化合物16、29、33、40、または43(約2mg、1μmol)をメタノール(1mL)に溶解し、次いで溶液をいくつかのアリコートに分けることにより調製した。金属塩のストック溶液を、メタノール(1mL)中で5~20mMの範囲の濃度で調製した。各金属塩について、1.5モル当量に相当する体積を、16、29、33、40、または43を含むアリコートのうちの1つに添加した。溶媒を圧縮空気流中での蒸発により除去し、試料をメタノールまたは1:10 DMSO:メタノール中で質量分析により分析し、結果を以下に報告した。試験した金属塩には、ジルコニウム(IV)アセチルアセトナート、硝酸鉄(III)九水和物、塩化インジウム(III)四水和物、塩化ユウロピウム(III)六水和物、塩化ホルミウム(III)六水和物、塩化ルテチウム(III)六水和物、塩化ランタン(III)七水和物、塩化スカンジウム(III)六水和物、塩化イットリウム(III)六水和物、塩化テルビウム(III)六水和物、イッテルビウムトリフルオロメタンスルホネート、塩化ガドリニウム(III)六水和物、塩化サマリウム(III)六水和物、塩化ジスプロシウム(III)六水和物、塩化エルビウム(III))六水和物、および硝酸トリウム(IV)水和物(99.8%)が含まれる。
【0246】
C38H37N10O14
90Zr[M-H]-の16・Zr:FTMS-pESI算出値947.1543、実測値947.1514。
【0247】
C38H38N10O14
45Sc[M]-の16・Sc:FTMS-pESI算出値903.2134、実測値903.2111。
【0248】
C38H38N10O14
139La[M]-の16・La:FTMS-pESI算出値997.1638、実測値997.1617。
【0249】
C38H38N10O14
89Y[M]-の16・Y:FTMS-pESI算出値947.1633、実測値947.1602。
【0250】
C38H38N10O14
175Lu[M]-の16・Lu:FTMS-pESI算出値1033.1982、実測値1033.1973。
【0251】
C38H38N10O14
115In[M]-の16・In:FTMS-pESI算出値973.1613、実測値973.1585。
【0252】
C38H38N10O14
151Eu[M]-の16・Eu:FTMS-pESI:算出値1009.1773、実測値1009.1765。
【0253】
C38H39N10O14
232Th[M+H]+の16・Th:FTMS+pESI:算出値1091.3022、実測値1091.2992。
【0254】
C42H47N11O14
151Eu[M]-の29・Eu:FTMS-pESI:算出値1080.2508、実測値1080.2480。
【0255】
C42H48N11O14
232Th[M+H]+の29・Th:FTMS+pESI:算出値1162.3757、実測値1162.3778。
【0256】
C43H48N12O16
151Eu[M]-の33・Eu:FTMS-pESI:算出値1139.2515、実測値1139.2500。
【0257】
C43H49N12O16
232Th[M+H]+の33・Th:FTMS+pESI:算出値1221.3765、実測値1221.3738。
【0258】
C40H41N10O15
232Th[M+H]+の40・Th:FTMS+pESI:算出値1133.3128、実測値1133.3118。
【0259】
C45H51N12O17
90Zr[M+H]+の43・Zr:FTMS+pESI:算出値1121.2537、実測値1121.2554。
【0260】
C45H52N12O17
56Fe[M+2H]+の43・Fe:FTMS+pESI:算出値1088.2917、実測値1088.2921。
【0261】
C45H50N12O17
115In[M]-の43・In:FTMS-pESI:算出値1145.2461、実測値1145.2462。
【0262】
C45H50N12O17
151Eu[M]-の43・Eu:FTMS-pESI:算出値1181.2621、実測値1181.2619。
【0263】
C45H50N12O17
165Ho[M]-の43・Ho:FTMS-pESI:算出値1195.2726、実測値1195.2730。
【0264】
C45H50N12O17
175Lu[M]-の43・Lu:FTMS-pESI:算出値1205.2830、実測値1205.2836。
【0265】
C45H50N12O17
89Y[M]-の43・Y:FTMS-pESI:算出値1119.2481、実測値1119.2476。
【0266】
C45H50N12O17
159Tb[M]-の43・Tb:FTMS-pESI:算出値1189.2676、実測値1189.2677。
【0267】
C45H50N12O17
174Yb[M]-の43・Yb:FTMS-pESI:算出値1204.2811、実測値1204.2812。
【0268】
C45H50N12O17
158Gd[M]-の43・Gd:FTMS-pESI:算出値1188.2663、実測値1188.2677。
【0269】
C45H50N12O17
152Sm[M]-の43・Sm:FTMS-pESI:算出値1182.2620、実測値1182.2647。
【0270】
C45H50N12O17
164Dy[M]-の43・Dy:FTMS-pESI:算出値1194.2714、実測値1194.2737。
【0271】
C45H50N12O17
166Er[M]-の43・Er:FTMS-pESI:算出値1196.2725、実測値1196.2737。
【0272】
C45H51N12O17
232Th[M+H]+の43・Th:FTMS+pESI:算出値1263.3870、実測値1263.3835。
【0273】
実施例11.減衰係数を決定するためのユウロピウム滴定実験
16および16・Euの正確な減衰係数を決定するため、塩化ユウロピウムを滴定剤として使用して滴定実験を行った。100mLメスフラスコを使用して、塩化ユウロピウム六水和物(13.22mg、0.03608mmol)を5mMクエン酸緩衝液(pH=4)に溶解し、0.3608mM塩化ユウロピウム溶液を得て、次いで、該塩化ユウロピウム溶液を、5μLのアリコートを使用してTBS緩衝液(Tris緩衝生理食塩水、50mM Tris、150mM NaCl、pH=7.6)中の16の0.5mL溶液に滴定した。UV-visスペクトルを、各注入による溶媒体積の増加に対して調整した。UV-vis滴定の結果は
図3にプロットされている。
【0274】
UV-vis滴定(
図3)から、46.28μLの0.3608mM塩化ユウロピウム溶液が当量点に到達するために必要であることが見出された。塩化ユウロピウムの体積は、16.70nmolのユウロピウムに対応し、リガンド16の開始濃度が33.40μMであったことを意味する。16および16・Euのλ最大吸光度は、リガンドおよび錯体についてそれぞれ382nm(総体積500μL)で0.454、361nm(総体積555μL)で0.431であることが見出された。これらの吸光度および濃度の値から、リガンド16および錯体16・Euの吸光係数についてそれぞれ、13,600M
-1cm
-1および14,300M
-1cm
-1の減衰係数が得られる。
【0275】
43および43・Euの正確な減衰係数を決定するため、塩化ユウロピウムを滴定剤として使用して滴定実験を行った。10mLメスフラスコを使用して、塩化ユウロピウム六水和物(47.58mg、0.1299mmol)を50mMクエン酸緩衝液(pH=4)に溶解し、12.99mM塩化ユウロピウム溶液を得て、次いで、これを100mLメスフラスコに移し、1:10水で希釈した。次いで、得られた1.299mM塩化ユウロピウム溶液(5mMクエン酸緩衝液中)を、5μLアリコートを使用して、TBS緩衝液中の43の1mL溶液に滴定した。UV-visスペクトルを、各注入による溶媒体積の増加に対して調整した。UV-vis滴定の結果は
図4にプロットされている。
【0276】
UV-vis滴定(
図4)から、36.55μLの1.299mM塩化ユウロピウム溶液が当量点に到達するために必要であることが見出された。塩化ユウロピウムの体積は、47.46nmolのユウロピウムに対応し、リガンド43の開始濃度が47.46μMであったことを意味する。43および43・Euのλ最大吸光度は、リガンドおよび錯体についてそれぞれ、383nmで0.618、357nmで0.607であることが見出された。これらの吸光度および濃度の値から、リガンドおよび錯体の吸光係数についてそれぞれ、13,000M
-1cm
-1および12,800M
-1cm
-1の減衰係数が得られる。
【0277】
リガンド43の滴定をまた発光によって行い(
図5)、340nmでの溶液の光励起時に612nmのユウロピウムシグナルがモニタリングされた。上記の43のUV-vis滴定に使用されるリガンド溶液を、最初に、1:10でTBS緩衝液に希釈した。同様に、1.299mMユウロピウムストック溶液を別々に1:10で水に希釈した。発光滴定の結果を
図5に示す。32.99μLの0.1299mM塩化ユウロピウム溶液が当量点に到達するために必要であることが見出された。32.99μLの当量点から、43および43・Euの吸光係数についてそれぞれ、383nmで14,400M
-1cm
-1および357nmで14,200M
-1cm
-1の吸光係数が得られる。43のUV-visおよび発光滴定実験の値を平均することにより、43および43・Euの吸光係数についてそれぞれ、383nmで13,700M
-1cm
-1および357nmで13,500M
-1cm
-1が得られる。
【0278】
実施例12.16・Eu、29・Eu、33・Eu、40・Eu、および43・Euの光物理的特性。
リガンド16、29、33、40、および43のユウロピウム錯体は、各リガンド(2mg)をメタノール(200μL)に別々に溶解することによって調製した。過剰の塩化ユウロピウム六水和物(約5当量)をメタノール(200μL)に溶解し、全体積を各リガンド溶液に添加した。溶媒を除去し、残留物をDMF(50μL)に溶解した。次いで、ユウロピウム錯体を、Eclipse XDB-C18カラム(5μm、9.4×250mm)を使用したAgilent 1260 Infinity機器でのセミ分取HPLCにより精製した。移動相は、0.1%トリフルオロ酢酸を含む水中の10~30%アセトニトリルであった。揮発性物質をHPLC溶離液から真空下で除去し、残留物をメタノール(500μL)に別々に溶解して、純度98%超の各ユウロピウム錯体のメタノールストック溶液を得た。数滴のこれらのメタノール溶液を蒸発乾固し、次いで、残留物を約3μMの濃度でTBS緩衝液に溶解し、トック水溶液(20mL)を作製し、365nmで0.05の吸光度(1cmの光路長)であった。5つの希釈液(1/6,2/6,3/6,4/6、および5/6)をこれらのストック水溶液から作製し、等間隔の濃度(各3mL体積)を有する6つの試料を得た。0.05M硫酸に溶解した硫酸キニーネを同様に希釈して、365nmで0.05の最終吸光度とし、この溶液も同様に希釈して(1/6、2/6、3/6、4/6、および5/6)、等間隔の濃度の6つの硫酸キニーネ参照試料を得た。0.05M硫酸中の硫酸キニーネを量子収量標準(Φ=0.508)として使用した。これらの希釈溶液の吸光度および発光を測定することにより、新しいEu錯体の量子収量を決定した。UV-visの信号対雑音比を改善するため、5cm光路長の石英セルを使用して、これらの希釈溶液の吸光度を測定した。定常光ルミネセンス測定値は、1cm発光キュベット中、他で記載されている(D’Aleo,A.;Moore,E.G.;Szigethy,G.;Xu,J.;Raymond,K.N.Inorg.Chem.2009,48,9316)機器での365nmの励起波長、1nmの解像度、10nmの励起スリット幅、1nmの発光スリット幅、および0.2秒の積分時間で収集された。吸収スペクトルは1nmの分解能で測定され各試料の吸光度は、360~370nmで測定された平均吸光度として取得され、発光測定に使用される10nmの励起スリット幅を反映していた。UV-visスペクトル、発光スペクトル、および量子収量の線形回帰データを
図6~22に示す。これらの実験および実施例11の滴定実験から得られたデータを以下に纏める。
【0279】
【0280】
実施例13.様々な競合物質の存在下での16、29、33、40、および43のユウロピウム錯体の安定性
発光金属錯体が実用的な意味で有用であるために、一般的な競合金属カチオンおよびキレートリガンドの存在下で安定でなければならない。様々な競合物質が約25mMの濃度で存在するTBS緩衝液に溶解した43・Eu(約7μM)の安定性を測定した。具体的には、二塩化マンガン四水和物(14.8mg、74.8μmol)をTBS緩衝液(100μL)に溶解し、43・Euのアリコート(3mL)に添加し、Mn(II)の最終濃度を24.1mMとした。塩化マグネシウム六水和物(33.6mg、165μmol)をTBS緩衝液(200μL)に溶解し、100μLを43・Eu(3mL)のアリコートに添加し、Mg(II)の最終濃度を26.7mMとした。塩化カルシウム六水和物(55.8mg、255μmol)をTBS緩衝液(300μL)に溶解し、100μLを43・Euのアリコートに添加しEu(3mL)、Ca(II)の最終濃度を27.4mMとした。DTPAについては、最初にKOH(95.9mg、1.71mmol)を1mLの水に溶解し、389μLのこの塩基性溶液(5当量)を使用してDTPA(52.3mg、133μmol)を溶解した。次いで、219μLのこのDTPA溶液を43・Euのアリコート(3mL)に添加、DTPAの最終濃度を23.4mMとした。EDTA(0.5M、pH=8、150μL)を43・Euのアリコート(3mL)に添加し、EDTAの最終濃度を23.8mMとした。リン酸塩の競合では、43・Euのメタノールストックを25mMリン酸緩衝液(pH=8)に希釈し、約7μMとした。
【0281】
安定性研究の結果(
図23)から、競合物質の殆どが、24時間にわたって43・Euの輝度に対して有意な影響を与えていないことは明らかである。具体的には、マグネシウム、カルシウム、およびリン酸塩は、試料の輝度に対して検出可能な変化を引き起こさない。EDTAを含む溶液(4%から96%への低下)およびマンガンを含む溶液(11%から89%への低下)では、輝度の僅かな低下が見られた。DTPA溶液は、発光の安定的な減少を安定的に示し、24時間後に元の輝度の83%に達した。
【0282】
これらの実験から、43・Euは、幅広い競合金属イオンおよびキレート剤に対して非常に安定していることは明らかである。上記の競合物質濃度は、様々なアッセイ条件での錯体の速度論的安定性を評価するための良好な方法である。DTPAは、ランタニドイオンに対して非常に良好なリガンドであり、したがって、通常、実際のアッセイでは使用されない。しかしながら、DTPA競合は、ここで報告される錯体の速度論的安定性を評価する優れた方法を提供する。一般に、約25mM DTPAによるユウロピウムの除去(decorporation)は、信頼性のある測定を行うには遅すぎることが見出されている。ここで報告される錯体の速度論的安定性を比較するために、DTPA(7.375g、18.75mmol)を水酸化カリウム(5.26g、93.75mmol)を含む水(20mL)に溶解することにより、750mM DTPAのストック溶液(25mL)を調製した。DTPA溶液のpHを、濃塩酸を添加することによりpH=7.6に調整し、次いで、溶液を最終体積25mLに希釈して、pH=7.6の750mM DTPAストック溶液を得た。16、29、33、40、および43のHPLC精製ユウロピウム錯体をTBS緩衝液、pH=7.6に別々に希釈し、11μMとした。各DTPA競合実験では、1mLの750mM DTPA溶液を2mLの11μMユウロピウム錯体溶液に添加した。時間の関数として、250mM DTPAおよび7.1μMの各ユウロピウム錯体を含むこれらの5つの別々の溶液について、612nmでの発光(365nm励起)をモニタリングした。結果を次の表および
図24に纏める。
【0283】
【0284】
一般に、250mM DTPA中のこれらの錯体からのユウロピウムの除去は、疑似一次速度論過程で予想されるように、25mM DTPA中のユウロピウムの除去の速度の約10倍で生じる。16・Eu(サイドアーム(sidearm)なし)および33・Eu(スペルミンベースのサイドアーム)を比較すると、スペルミンベースのサイドアームを導入することにより、速度論的安定性が2倍低下することが示される。同様に、40・Eu(サイドアームなし)および43・Eu(スペルミンベースのサイドアーム)を比較すると、スペルミンベースのサイドアームを導入することにより、速度論的安定性が約2倍低下することが示される。一般に、エチレンジアミンベースの大環状分子(29・Euおよび33・Eu)のユウロピウム錯体は、m-テトラヒドロフランジアミンベースの大環状分子(40・Euおよび43・Eu)よりも約5倍速度論的に安定している。この結果は、m-テトラヒドロフランジアミンベースの大環状分子がより剛直であり、したがってエチレンジアミンベースの大環状分子よりも速度論的安定性が高いと予想されることを考えると驚くべきことである。さらに驚くべきことは、エチレンジアミン単位(29・Eu)からサイドアームが脱離したエチレンジアミンベースの大環状分子が、ここで測定された最も速度論的に安定な錯体であることが見出された事実である。サイドアームのないエチレンジアミンベースの大環状分子(16・Eu)よりも安定しているようであることは驚くべきことである。驚くべきことことに、29・Eu錯体は、DTPAによるチャレンジに対して43・Euよりも少なくとも1桁の大きさで速度論的に安定していることが見出された。43・Euは、上記のように、様々な競合金属イオンおよびキレート剤に対して優れた安定性を示すことが示されているため、この結果は顕著なものである。
【0285】
実施例14
ここで報告されるエチレンジアミン(9)、(S)-tert-ブチル(5,6-ジアミノヘキシル)カルバメート(23)、および(3R,4S)-テトラヒドロフラン-3,4-ジアミン(34)ではなく、既存の合成スキーム内で使用することを企図し得るいくつかのジアミンがある。新しいモノ大環状リガンド(n=0、1、2または3、X=O、S、またはCH
2)の形成のためのこれらの新しいジアミンの代表的な例を以下に示し、行に分類する。
【化62】
【0286】
行Aは、金属イオンの周りのリガンドの形状に影響を与えることによってEu錯体の光物理特性を向上または変更し得る、いくつかの非環式脂肪族リンカーからなる。同様に、他の放射線学的に重要な金属イオンの結合が変更または増強され得る。行Bは、他の環状脂肪族ジアミンリンカーを含む。これらの例の環状構造は、形成される金属錯体の安定性を増強し得る、リガンド構造の剛性を増強し得る。行Cは、環状芳香族ジアミンリンカーを含み、これらはすべて、ここで合成された炭素2個のジアミン架橋と非常に類似した炭素2個の架橋を有する。これらの芳香族ジアミンは、リガンドの光物理的特性に影響を与え得る1,2-HOPO単位の電子共役を拡張し得る。行Cの最後のエントリーはまた、溶解度を高めるためにポリエチレングリコール単位を含み得る。行D、E、およびFは、リガンドの形状を変更することによって金属錯体の安定性を高め得る環状芳香族系の追加の例を含む。行Gは、様々なジアミン架橋を含み、これらはすべて、これらの金属単大環状(metal monomacrocycle)錯体を目的の種に連結するために使用することができる官能基ハンドルを有する。これらの各ジアミン上のリンカーは、金属錯体に官能基ハンドルを追加するために使用することができる。行Hは、目的の種を感知するかまたはこれと反応する方法を提供し得るジアミン架橋を含む。最初のエントリーは、カリウムイオンを結合する18-クラウン-6エーテル官能基を含む。シアノおよびシクロヘキセンの例は特定の遷移金属を結合し得るが、ブチンジアミンは有機アジドとの反応を促進し得る。
【0287】
実施例15
溶解性のためのペンダント1,2-HOPO単位への結合および追加の結合点のための代表的な新しい官能基を以下に示す。
【化63】
【0288】
14に代えて、8(またはその誘導体)を例えば27と反応させることにより、上記で示したもののような構造を得ることができる。そのような種は、アミノポリエチレングリコール、グルコサミン、2-アミノ酢酸、3-アミノプロパン酸、N1,N1-ジメチルエタン-1,2-ジアミン、およびN1、N1-ジエチルエタン-1,2ジアミン(上記を参照)などの可溶化基が、リガンドに付加することを可能とし、これにより、水への金属錯体の溶解度を高める。ジアミン(または類似の二官能性部分)を添加することにより、追加の結合点を有するリガンドが生成される。さらに、4つの部位のすべてにおける1,2-HOPOジアミド発色団の使用(上記のように)は、2種の1,2-HOPO発色団の吸収バンドをより密接に一致させることによって光物理的特性を改善し得る。
【0289】
実施例16
【化64】
スキーム8.本発明の化合物33bおよびその前駆体の代表的な合成スキーム。30bの合成は以前に報告されている(WO2016/106241)。
実施例17
【化65】
スキーム9.例示的な足場前駆体の代表的な合成スキーム。
実施例18
【化66】
スキーム10.HOPO-Lys-環式-RDGyKの代表的な合成スキーム。
二価ペプチド結合体HOPO-Lys-環状-RDGyKは、スキーム5における概説に従って合成することができる。シクロ(RDGyK)は、Anaspecから入手可能な、膵臓癌で過剰発現しているαvβ3インテグリンに結合するペプチドである。
【0290】
実施例19
【化67】
スキーム11.化合物23bの代表的な合成スキーム。
実施例20
【化68】
スキーム12.本発明の化合物29bおよびその前駆体の代表的な合成スキーム。
実施例21 化合物29、33、および43から生成することができる有用な種の代表的な例としての化合物29-Eu-NHSの合成。
【化69】
スキーム13.化合物29、33、および43から生成することができる有用な化学種の代表例としての化合物29-Eu-NHSの合成スキーム。
錯体Eu・29、Eu・33、およびEu・43の反応性NHSエステルは、適切なEu錯体をDMFおよびトリエチルアミン中の過剰な(10当量)ジ(N-スクシンイミジル)グルタレート(DSG)で処理することにより生成することができる。反応性NHSエステルは、金属錯体をタンパク質上のリジン残基、または目的の他の標的基のアミンに結合するのに有用である。例えば、Eu・29(20mg、18.5μmol)をDMF(200μL)に溶解した。別には、DSG(60.2mg、185μmol)をDMF(200μL)に溶解し、次いでトリエチルアミン(18.7mg、185μmol)をDSG溶液に添加した。Eu・29の溶液を振盪しながらDSG溶液に滴下して添加した。反応は、室温で1時間振盪しながら進行した。ジエチルエーテル(1沈殿あたり4mL)を使用して生成物をDMFから4回沈殿させ、遠心分離およびデカンテーションによって沈殿物を単離することによって、生成物を単離した。次いで、粗生成物を同様にジクロロメタン(1mL)に溶解し、エーテル(1mL)で4回沈殿させた。最後のデカンテーション工程後、残留溶媒を真空下で一晩除去して、Eu・29-NHSを白色粉末として得た。収量22.1mg、92.5%。C
51H
56EuN
12O
19のHRMS-ESI(m/z、[M]
-)計算値:1291.2989、実測値:1291.2986。
【0291】
実施例22 例示的な親化合物の合成
【化70】
スキーム14.親化合物40’の合成スキーム
一般的方法.
前駆体(3R,4S)-テトラヒドロフラン-3,4-ジアミン(34)、1-(ベンジルオキシ)-6-(メトキシカルボニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボン酸(8’)、1-(ベンジルオキシ)-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-2-カルボン酸(14)、およびtert-ブチル(2-(2-(2,5-ビス((3-アミノプロピル)アミノ)ペンタンアミド)エトキシ)エチル)カルバメート(30)を、以前に報告された方法に従って合成する。特に明記しない限り、他のすべての溶媒および試薬は、商業的供給元から購入し、受け取ったまま使用する。
【0292】
ジメチル5,5’-((((3R,4S)-テトラヒドロフラン-3,4-ジイル)ビス(アザネジイル))ビス(カルボニル))ビス(1-(ベンジルオキシ)-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-2-カルボキシレート)(35’)。塩化オキサリル(4.10g、32.3mmol)をジクロロメタン(40mL)中の8’(4.10g、13.5mmol)の懸濁液に添加し、続いて1滴の乾燥DMFを添加する。溶液は30分以内に均一になり、反応を室温で合計3時間撹拌する。次いで、溶媒を真空下で一晩除去する。残留物をジクロロメタン(20mL)に溶解し、ジクロロメタン(20mL)および40%K2CO3(20mL)に溶解した34(580mg、5.7mmol)の溶液に激しく撹拌しながら0℃で滴下する。反応物を室温に温めながら一晩撹拌する。ジクロロメタン層を高さ4インチ×幅1インチのシリカゲルカラムに直接充填する。メタノール/ジクロロメタン勾配溶出後、メタノール中の2.5%ジクロロメタンを使用して所望の生成物を回収する。溶媒を真空下で除去して、35’の硬質ガラスとして所望の生成物を得る。
【0293】
5,5’-((((3R,4S)-テトラヒドロフラン-3,4-ジイル)ビス(アザネジイル))ビス(カルボニル))ビス(1-(ベンジルオキシ)-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-2-カルボン酸)(36’)。水酸化カリウム(934mg、16.6mmol)を2:2:1のTHF:MeOH:水(50mL)中の35’(2.80g、4.16mmol)の懸濁液に添加し、反応物を撹拌しながら一晩50℃まで加熱する。溶媒を真空下で除去し、得られた残留物を水(250mL)に溶解する。リトマス試験で溶液が酸性になるまで、撹拌しながら希HClを滴下する。所望の生成物を濾過により収集し、希HClで洗浄し、真空下で一晩乾燥して、白色粉末36’を得る。
【0294】
N,N’-((3R,4S)-テトラヒドロフラン-3,4-ジイル)ビス(1-(ベンジルオキシ)-2-オキソ-6-(2-チオキソチアゾリジン-3-カルボニル)-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド)(37’)。HATU(2.40g、6.3mmol)、36’(1.93g、3.00mmol)、およびDMAP(73.3mg、0.6mmol)をジクロロメタン(75mL)に懸濁する。DIPEA(776mg、6mmol)を懸濁液に滴下し、反応物を室温で2時間撹拌する。完了したら、2-メルカプトチアゾリン(894mg、7.5mmol)を均質な溶液に添加し、続いてDIPEA(1.5g、11.6mmol)を添加する。反応物を室温でさらに1.5時間撹拌する。次いで、反応混合物を3×75mLの水で洗浄して尿素副生成物の大部分を除去し、濃縮し、次いで高さ6インチ×幅1インチのシリカゲルカラムに充填する。2-プロパノール/ジクロロメタン勾配溶出後、ジクロロメタン中の5%2-プロパノールを使用して所望の生成物を回収する。溶媒を真空下で除去し、残留物を100mLのジクロロメタンに溶解する。有機溶液を水3×75mLで再度洗浄して、最後の微量の尿素副生成物を除去し、有機溶液を10mLの体積に濃縮する。2-プロパノールを添加すると、所望の生成物の沈殿が生じ、これを溶媒の蒸発によって収集し、黄色粉末37’を得る。
【0295】
化合物38’.スペルミン(229mg、1.13mmol)を2-プロパノール(50mL)に溶解し、37’(957mg、1.13mmol)をジクロロメタン(50mL)に別々に溶解する。シリンジポンプを使用して、2つの溶液を1:1のジクロロメタン:2-プロパノール(1L)を含む大きなフラスコに4日間にわたって滴下する(0.5mL/時間)。反応物を室温でさらに1日撹拌し、続いて真空下で溶媒を除去する。残留物をジクロロメタン(200mL)に溶解し、水酸化カリウム水溶液で抽出して、2-メルカプトチアゾリン副生成物を除去する。溶媒を除去することにより、粘性油状物として所望の生成物38’が得られ、これをさらに精製することなく次の反応で使用する。
【0296】
化合物39’.塩化オキサリル(1.1g、8.7mmol)をジクロロメタン(40mL)中の14(1.11g、4.52mmol)の懸濁液に添加し、続いて1滴の乾燥DMFを添加する。溶液は30分以内に均一になり、反応を室温で合計3時間撹拌する。次いで、溶媒を真空下で一晩除去する。残留物をジクロロメタン(20mL)に溶解し、ジクロロメタン(20mL)および40%K2CO3(20mL)に溶解した38’(1.13mmol)の溶液に激しく撹拌しながら0℃で滴下する。反応物を室温に温めながら一晩撹拌する。ジクロロメタン層を高さ4インチ×幅1インチのシリカゲルカラムに直接充填する。メタノール/ジクロロメタン勾配溶出後、メタノール中の4%ジクロロメタンを使用して所望の生成物を回収する。溶媒を真空下で除去して、39’の硬質ガラスとして所望の生成物を得る。
【0297】
化合物40’.化合物39’(63mg、0.070mmol)を、濃HClおよび氷酢酸の1:1混合物に溶解する。均質な溶液を暗所で室温で3週間撹拌する。反応が完了したら、溶媒を真空下で除去する。残留溶媒を、水、続いてメタノール、最後にジエチルエーテルとの共蒸発により除去して、40’のベージュ色の固体を得る。メタノールに溶解した試料に5倍モル過剰のEuCl3を最初に添加することにより、純度をHPLCで評価する。
【0298】
実施例23.例示的な二官能性キレート剤の合成
【化71】
スキーム15.化合物43’を含む結合点の合成スキーム
化合物41’.化合物38’に使用したものと同じ手順に従い、出発物質として37’(1.30g、1.54mmol)および30(668mg、1.54mmol)を使用する。同様に、残留物を塩基で洗浄し、さらに精製することなく次の反応に使用する。
【0299】
化合物42’.化合物39’に使用したものとと同じ手順に従い、出発物質として41’(1.54mmol)および14(1.51g、6.16mmol)を使用する。
【0300】
化合物43’.化合物40’に使用したものと同じ手順に従い、出発物質として42’(92mg、0.062mmol)を使用する。
【0301】
実施例24
ここで報告される(3R,4S)-テトラヒドロフラン-3,4-ジアミン(34)ではなく、既存の合成スキーム内での使用を想定することができるいくつかのジアミンある。新しいモノ大環状リガンド(n=0、1、2、または3、X=O、S、またはCH
2)を形成するためのこれらの新しいジアミンの代表的な例を以下に示し、行に分類する。
【化72】
【0302】
行Aは、金属イオンの周りリガンドの形状に影響を与えることによって類似の43’・Eu錯体の光物理的特性を増強または変更し得る、いくつかの非環式脂肪族リンカーからなる。同様に、他の放射線学的に重要な金属イオンの結合が変更または増強され得る。行Bは、他の環状脂肪族ジアミンリンカーを含む。これらの例の環状構造は、形成される金属錯体の安定性を増強し得る、リガンド構造の剛性を増強し得る。行Cは、環状芳香族ジアミンリンカーを含み、これらはすべて、ここで報告されている(3R,4S)-テトラヒドロフラン-3,4-ジアミン2炭素架橋と非常に類似した2炭素架橋を有する。これらの芳香族ジアミンは、リガンドの光物理的特性に影響を与え得る1,2-HOPO単位の電子共役を拡張し得る。行Cの最後のエントリーはまた、溶解度を高めるためにポリエチレングリコール単位を含み得る。行D、E、およびFは、リガンド形状を変更することによって金属錯体の安定性を高め得る環状芳香族系の追加の例を含む。行Gは、様々なジアミン架橋を含み、これらはすべて、目的の種に43’・Eu型の錯体を連結させるために使用することができる官能基ハンドルを有する。これらのジアミンの各々へのリンカーは、43’・Eu型錯体に追加の官能基ハンドルを付与するために使用し得るか、または40’・Eu型の錯体において唯一の官能基リンカーとして使用し得る。行Hは、目的の種を感知するかまたはこれと反応する方法を提供し得るジアミン架橋を含む。最初のエントリーは、カリウムイオンを結合する18-クラウン-6エーテル官能基を含む。シアノおよびシクロヘキセンの例は、特定の遷移金属を結合し得るが、ブチンジアミンは、有機アジドとの反応を促進し得る。
【0303】
実施例25
溶解度のためのペンダント1,2-HOPO単位への結合のための代表的な新しい官能基および追加の結合点を以下に示す。
【化73】
【0304】
14の代わりに8’(またはその派生物)を38’または41’と反応させることにより、上で示した構造を得ることができる。そのような種は、リガンドに添加されるアミノポリエチレングリコールおよびグルコサミン(上に示されている)など基の可溶化を可能にし、水中の金属錯体の溶解度を高める。ジアミン(または類似の二官能性部分)を添加することにより、追加の結合点を有するリガンドが生成される。
【0305】
実施例26
【化74】
スキーム16.本発明の化合物43b’およびその前駆体の代表的な合成スキーム。
実施例27
【化75】
スキーム17.HOPO-Lys-環式-RDGyKの代表的な合成スキーム。
二価ペプチド結合体HOPO-Lys-環状-RDGyKを、スキーム17に概説するようにして合成する。シクロ(RDGyK)は、Anaspecから入手可能な、膵臓癌で過剰発現しているαvβ3インテグリンに結合するペプチドである。
【0306】
実施例28
【化76】
スキーム18.本発明の化合物29b’の代表的な合成スキームおよびその前駆体。
実施例29
化合物29、33、および43から生成することができる有用な化学種の代表例としての化合物29-Ca-NHSの合成。
【化77】
【0307】
スキーム19.化合物29、33、および43から生成することができる錯体の代表例としての化合物29・Caまたは29・Mgの合成スキーム。
【0308】
例えば、Ca29(またはMg・29)は、29をDMF中の1.2モル当量のCaCl
2(またはMgCl
2)と最初に混合し、続いて真空下で溶媒を除去することによって調製することができる。
【化78】
【0309】
スキーム20.化合物29、33、および43から生成することができる有用な種の代表例としての化合物29-Ca-NHSの合成スキーム。
【0310】
錯体Ca・29、Ca・33、およびCa・43の反応性NHSエステルは、適切なCa(II)錯体をDMFおよびトリエチルアミン中の過剰な(10当量)ジ(N-スクシンイミジル)グルタメート(DSG)で処理することにより生成することができる。反応性NHSエステルは、金属錯体をタンパク質上のリジン残基、または目的の他の標的基のアミンに結合するのに有用である。例えば、Ca・29は、29をDMF中の1.2モル当量のCaCl2と最初に混合し、続いて真空下で溶媒を除去することにより調製することができる。次いで、このようにして調製されたCa・29錯体を、実施例21でEu・29について記載したように、DMF中の過剰のDSGと反応させることができる。C51H57CaN12O19のHRMS-ESI(m/z、[M+H]-)の計算値:1181.3494、実測値:1181.3502。DSGとの反応前にCa(II)錯体を形成することにより、NHS官能基と非生産的に反応することからキレートが保護される。同じ目的のために、Mg(II)を成功裏に使用することができることにも留意すべきである。Ca(II)およびMg(II)の両方は、ランタニド(Eu(III)およびLu(III)を含む)、アクチニド(Th(IV)を含む)、および遷移金属(Zr(IV)を含む)などの、Ca(II)またはMg(II)よりも強く結合するより高い原子価(酸化状態IIIまたはIV)の金属イオンに容易に置き換えることができる。したがって、Ca(II)またはMg(II)錯体は、目的の放射性同位元素で標識することができる好都合に反応性である二官能性キレート剤を提供するのに非常に有用である。
【0311】
29-NHS、33-NHS、または43-NHSの分解を防ぐために最初にCa(II)またはMg(II)錯体を形成することの有用性を示すため、最初に、CaまたはMgを添加せずに33-NHSを形成した結果、およびDMF溶液中でのその結果得られる安定性を次の図に示す。本実施例の以下のすべてのHPLCクロマトグラムは、分析の便宜上、注入の5分前に10モル当量のEuCl3を添加した後に収集されていることに留意されたい。
【0312】
Ca(II)またはMg(II)の非存在下で33・NHSを形成および単離することが可能であるが、得られた33・NHS生成物は著しく不安定であることが、
図25に示すHPLCデータから明らかである。33・NHS生成物がDMFに溶解され、室温で1日インキュベートすると、測定可能量の所望の33・NHS生成物は溶液中に残存しない。比較のため、
図26に示すように、33・Ca錯体を使用して全く同じ実験を行った。
【0313】
33のCa錯体の形成(代表例として)により、33・NHS反応生成物と比較して溶液中での分解に対する安定性が向上した33・Ca・NHS反応生成物が得られることが、HPLCデータから明らかである。以下の図では、室温でDMF中で1日間インキュベートした後の33・Ca・NHSおよび33・Mg・NHSの反応生成物の両方についてのHPLCデータを示し、これは、MgがCaと同じ保護目的に使用することができることを示している。
【0314】
本明細書に記載した実施例および実施形態は、単に例示を目的とし、それを踏まえた様々な修正または変更が当業者に示唆され、本出願の趣旨および権限ならびに添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが理解される。本明細書で引用したすべての刊行物、特許、および特許出願は、あらゆる目的のためにそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。