(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】少なくとも7個の遺伝子のサインを用いて、固形癌を患う患者の生存期間および処置に対する応答性を予測するための方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6851 20180101AFI20231106BHJP
C12Q 1/6886 20180101ALI20231106BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
C12Q1/6851 Z
C12Q1/6886 Z
C12N15/09 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021112781
(22)【出願日】2021-07-07
(62)【分割の表示】P 2019099354の分割
【原出願日】2013-07-12
【審査請求日】2021-07-09
(32)【優先日】2012-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(73)【特許権者】
【識別番号】520053762
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ・シテ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS CITE
(73)【特許権者】
【識別番号】507139834
【氏名又は名称】アシスタンス ピュブリック-オピト ドゥ パリ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ギャロン,ジェローム
(72)【発明者】
【氏名】パージュ,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ムレチニック,ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】ビンデア,ガブリエラ
【審査官】西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-515148(JP,A)
【文献】特表2009-523011(JP,A)
【文献】国際公開第2010/144192(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/011339(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/091659(WO,A2)
【文献】The Journal of Immunology,2008年,Vol. 180,pp. 8184-8191
【文献】Journal of Translational Medicine,2011年,Vol. 9, No. 146
【文献】Oncogene,2010年,Vol. 29,pp. 1093-1102
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/
C12N 15/
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)患者から得られた腫瘍サンプルにおいて、
少なくとも以下の遺伝子:GZMK、IRF1、CD3E、CD3G、CD8A、GZMA、GZMB、ICOSおよびCXCR3の遺伝子発現レベルを決定する工程、
ii)工程
i)で決定されたあらゆる発現レベルを、その予め決定された参照値と比較する工程、および
iii)工程
i)で決定された全ての発現レベルが、その予め決定された参照値よりも高い場合には良好な予後を示す工程、または、工程
i)で決定された全ての発現レベルが、その予め決定された参照値よりも低い場合には悪い予後を示す工程を含む、固形癌を患う患者の生存期間を予測するためのデータを提供する方法。
【請求項2】
・CCR2、CD3D、CD3E、CD3G、CD8A、CXCL10、CXCL11、GZMA、GZMB、GZMK、GZMM、IL15、IRF1、PRF1、CD69、ICOS、CXCR3およびSTAT4;または
・CD3E、CD3G、CD8A、CXCL11、GZMA、GZMB、GZMK、GZMM、IL15、IRF1、CD69、ICOS、CXCR3、STAT4、CCL2およびTBX21;または
・CCR2、CD3D、CD3E、CD3G、CD8A、CXCL10、GZMA、GZMB、GZMK、GZMM、IRF1、PRF1、CD69、ICOS、CXCR3およびTBX21
の発現を決定するための手段を含むキットの
、請求項1に記載の方法を行うための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野:
本発明は、固形癌を患う患者の生存期間および応答性を予測するための方法およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景:
癌は依然として先進国において深刻な公衆衛生上の問題である。従って、癌処置は、最も効果的であるために、悪性腫瘍の早期検出および処置または除去だけではなく、悪性腫瘍の重篤度の信頼性のある評価および癌再発の可能性の予測を必要とする。癌のステージはどれだけ遠くに癌が広がっているかを示す。処置は癌のステージに従って決定されることが多いので、ステージ分類は重要である。現在まで、癌は、一般的に、UICC-TNMシステムに従って分類されている。TNM(「腫瘍-所属リンパ節-転移」)分類システムは、腫瘍のサイズ、所属リンパ節における腫瘍の有無、および遠隔転移の有無を使用して、腫瘍にステージを割り当てる。TNMシステムは、原発部位に小さな腫瘍を有する患者は、より大きなサイズの腫瘍を有する患者よりも良好な予後を有するという観察から開発された。一般的に、原発部位に限局された腫瘍を有する患者は、所属リンパ節にも併発している患者よりも良好な予後を有し、また所属リンパ節併発患者は、他の臓器まで疾病が遠隔に広がった患者よりも良好な予後を有する。従って、癌は一般的に4つのステージに分けることができる。ステージIは、リンパ節に癌を全く有さない非常に限局された癌である。ステージIIの癌は、原発臓器により深く広がっている(典型的にはT3、T4腫瘍)。ステージIIIの癌は、リンパ節にまで広がっている。ステージIVの癌は、生体の別の部分にまで広がっている。割り当てられたステージは、適切な療法の選択のためのおよび予後診断目的のための基礎として使用される。例えば、ステージIVの癌を有する患者には常に化学療法が推奨される。逆に、UICC-TNMステージIIまたはIIIの癌を有する患者に化学療法を処方するための関連するガイドラインは全くない。従って、多数の利用可能な新規な療法のための重要な工程が適切な癌療法のための効率的な患者の選択であるため一層、処置の決定を導く信頼性ある診断ツールが必要とされる。
上記のTNM分類は、有用であるが不完全であり、癌の転帰の信頼性ある予後診断を可能としない。近年、Galon et al.は、腫瘍内の適応的免疫応答に関連した遺伝子発現の分析は、患者における癌の転帰を予測するのに適切であり得ることを示唆した(国際公開公報第2007/045996号)。従って、彼らは、癌の進行について患者の予後診断のために有用であり得る、遺伝子およびその組合せのリストを提供する。しかしながら、前記文書に示された方法は、癌患者の生存期間の予測のためにおよび患者の処置に対する応答を予測するためにTNM分類が提供するよりも、より良好な成績を与える特定の遺伝子の組合せを指摘できていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
国際公開公報第2007/045996号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の要約:
本発明は、固形癌を患う患者の生存期間および応答性を予測するための方法およびキットに関する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
発明の詳細な説明:
国際特許出願の国際公開公報第2007045996号は、遺伝子間の組合せを考慮せずに選択された、腫瘍の微小環境を説明する一般的に選択された最も重要な遺伝子(~300個)に関する。サインの数を限定するために、患者コホートに対する100回の交差検定後でも高度にログランクで有意であった、僅か7~21個の遺伝子が使用された。前記遺伝子は、CCR2、CD3D、CD3E、CD3G、CD8A、CXCL10、CXCL11、GZMA、GZMB、GZMK、GZMM、IL15、IRF1、PRF1、STAT1、CD69、ICOS、CXCR3、STAT4、CCL2およびTBX2からなる群より選択される。例えば、国際特許出願の国際公開公報第2007045996号に記載された300中約21個の遺伝子の非重複サインの見込まれる数は、1.0×1037個を超える。本発明者らは、同定された21個の遺伝子のサインは、UICC-TNM分類が与えるよりも大きな感度および選択性を与えることを実証する。本発明者らは、種々の癌の上のサインを検証する。さらに、本発明者らは、同じサインが、処置に対する患者の応答を予測するのに適切であることを実証した。
【0006】
従って、本発明は、i)患者から得られた腫瘍サンプルにおいて、CCR2、CD3D、CD3E、CD3G、CD8A、CXCL10、CXCL11、GZMA、GZMB、GZMK、GZMM、IL15、IRF1、PRF1、STAT1、CD69、ICOS、CXCR3、STAT4、CCL2およびTBX21からなる群より選択された少なくとも7個の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する工程、ii)工程i)で決定されたあらゆる発現レベルを、その予め決定された参照値と比較する工程、およびiii)
- 工程i)で決定された全ての発現レベルが、その予め決定された参照値よりも高い場合には良好な予後を与える工程、または、
- 工程i)で決定された全ての発現レベルが、その予め決定された参照値よりも低い場合には悪い予後を与える工程、または
- 決定された少なくとも1つの発現レベル値がその予め決定された値よりも高い場合には中度の予後を与える工程、
を含む、固形癌を患う患者の生存期間を予測するための方法に関する。
【0007】
本発明はまた、i)患者から得られた腫瘍サンプルにおいて、CCR2、CD3D、CD3E、CD3G、CD8A、CXCL10、CXCL11、GZMA、GZMB、GZMK、GZMM、IL15、IRF1、PRF1、STAT1、CD69、ICOS、CXCR3、STAT4、CCL2およびTBX21の遺伝子発現レベルを決定する工程、ii)工程i)で決定されたあらゆる発現レベルを、その予め決定された参照値と比較する工程、およびiii)
- 工程i)で決定された全ての発現レベルが、その予め決定された参照値よりも高い場合には良好な予後を与える工程、または、
- 工程i)で決定された全ての発現レベルが、その予め決定された参照値よりも低い場合には悪い予後を与える工程、または
- 決定された少なくとも1つの発現レベル値がその予め決定された値よりも高い場合には中度の予後を与える工程、
を含む、固形癌を患う患者の生存期間を予測するための方法に関する。
【0008】
中度の予後に関して、遺伝子の発現レベルがその予め決定された参照値よりも高い時にはいつでも、患者の予後はより好ましいものとなるだろう。
【0009】
患者は、任意の固形癌を患い得る。典型的には、癌は、胆管癌(例えば末梢型癌、遠位胆管癌、肝内胆管癌)、膀胱癌、骨癌(例えば骨芽細胞腫、骨軟骨腫、血管腫、軟骨粘液線維腫、骨肉腫、軟骨肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、骨巨細胞腫、脊索腫、リンパ腫、多発性骨髄腫)、脳および中枢神経系の癌(例えば髄膜腫、星状細胞腫、乏突起神経膠腫、上衣腫、神経膠腫、髄芽腫、神経節膠腫、シュワン腫、胚細胞腫、頭蓋咽頭腫)、乳癌(例えば非浸潤性乳管癌、浸潤性腺管癌、浸潤性小葉癌、非浸潤性小葉癌、女性化乳房)、キャッスルマン病(例えば巨大リンパ節過形成、脈管濾胞性リンパ節増殖症)、子宮頸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌(例えば子宮内膜腺癌、腺棘細胞癌、乳頭状漿液性腺癌、明細胞)、食道癌、膀胱癌(粘液性腺癌、小細胞癌)、消化管カルチノイド腫瘍(例えば絨毛癌、破壊性絨毛腺癌)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、カポジ肉腫、腎臓癌(例えば腎細胞癌)、咽頭癌および下咽頭癌、肝臓癌(例えば血管腫、肝腺腫、限局性結節性過形成、肝細胞癌)、肺癌(例えば小細胞肺癌、非小細胞肺癌)、中皮腫、形質細胞腫、鼻腔癌および副鼻腔癌(例えば感覚神経芽腫、正中線肉芽腫)、上咽頭癌、神経芽細胞腫、口腔癌および中咽頭癌、卵巣癌、膵臓癌、陰茎癌、下垂体癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫(例えば胎児性横紋筋肉腫、胞巣状横紋筋肉腫、多形性横紋筋肉腫)、唾液腺癌、皮膚癌(例えば黒色腫、非黒色腫皮膚癌)、胃癌、精巣癌(例えば精上皮腫、非セミノーム性胚細胞癌)、胸腺癌、甲状腺癌(例えば濾胞癌、未分化癌、低分化癌、甲状腺髄様癌、甲状腺リンパ腫)、膣癌、外陰癌、および子宮癌(例えば子宮平滑筋肉腫)からなる群より選択され得る。特定の態様において、癌は結腸直腸癌である。
【0010】
「腫瘍サンプル」という用語は、患者から得られた任意の組織腫瘍サンプルを意味する。前記組織サンプルは、インビトロにおける評価の目的のために得られる。サンプルは、新鮮であっても、凍結されていても、固定されていても(例えばホルマリンで固定)または包埋(例えばパラフィンに包埋)されていてもよい。特定の態様において、腫瘍サンプルは、患者から切除された腫瘍からもたらされ得る。別の態様において、腫瘍サンプルは、患者の原発性腫瘍で実施された、または、患者の原発性腫瘍から遠位にある転移性腫瘍で実施された生検から得ることができる。例えば、結腸直腸癌に罹患した患者の腸で実施された内視鏡生検。
【0011】
本発明に関する全ての遺伝子はそれ自体公知であり、以下の表Aに列挙されている:
【0012】
【0013】
CCR2、CD3D、CD3E、CD3G、CD8A、CXCL10、CXCL11、GZMA、GZMB、GZMK、GZMM、IL15、IRF1、PRF1、STAT1、CD69、ICOS、CXCR3、STAT4、CCL2およびTBX21。
【0014】
従って、本発明は、以下を含み得る:
- CCR2(ELCCR2)の発現レベルを決定し、前記レベルをCCR2(ELRCCR2)について予め決定された参照レベルと比較する工程、
- CD3D(ELCD3D)の発現レベルを決定し、前記レベルをCD3D(ELRCD3D)について予め決定された参照レベルと比較する工程、
- CD3E(ELCD3E)の発現レベルを決定し、前記レベルをCD3E(ELRCD3E)について予め決定された参照レベルと比較する工程、
- CD3G(ELCD3G)の発現レベルを決定し、前記レベルをCD3G(ELRCD3G)について予め決定された参照レベルと比較する工程、
- CD8A(ELCD8A)の発現レベルを決定し、前記レベルをCD8A(ELRCD8A)について予め決定された参照レベルと比較する工程、
- CXCL10(ELCXCL10)の発現レベルを決定し、前記レベルをCXCL10(ELRCXL10)について予め決定された参照レベルと比較する工程、
- CXCL11(ELCXCL11)の発現レベルを決定し、前記レベルをCXCL11(ELRCXCL11)について予め決定された参照レベルと比較する工程、
- GZMA(ELGZMA)の発現レベルを決定し、前記レベルをGZMA(ELRGZMA)について予め決定された参照レベルと比較する工程、
- GZMB(ELGZMB)の発現レベルを決定し、前記レベルをGZMB(ELRGZMB)について予め決定された参照レベルと比較する工程、
- GZMK(ELGZMK)の発現レベルを決定し、前記レベルをGZMK(ELRGZMK)について予め決定された参照レベルと比較する工程、
- GZMM(ELGZMM)の発現レベルを決定し、前記レベルをGZMM(ELRGZMM)について予め決定された参照レベルと比較する工程、
- IL15(ELIL15)の発現レベルを決定し、前記レベルをIL15(ELRIL15)について予め決定された参照レベルと比較する工程、
- IRF1(ELIRF1)の発現レベルを決定し、前記レベルをIRF1(ELRIRF1)について予め決定された参照レベルと比較する工程、
- PRF1(ELPRF1)の発現レベルを決定し、前記レベルをPRF1(ELRPRF1)について予め決定された参照レベルと比較する工程、
- STAT1(ELSTAT1)の発現レベルを決定し、前記レベルをSTAT1(ELRSTAT1)について予め決定された参照レベルと比較する工程、
- CD69(ELCD69)の発現レベルを決定し、前記レベルをCD69(ELRCD69)について予め決定された参照レベルと比較する工程、
- ICOS(ELICOS)の発現レベルを決定し、前記レベルをICOS(ELRICOS)について予め決定された参照レベルと比較する工程、
- CXCR3(ELCXCR3)の発現レベルを決定し、前記レベルをCXCR3(ELRCXCR3)について予め決定された参照レベルと比較する工程、
- STAT4(ELSTAT4)の発現レベルを決定し、前記レベルをSTAT4(ELRSTAT4)について予め決定された参照レベルと比較する工程、
- CCL2(ELCCL2)の発現レベルを決定し、前記レベルをCCL2(ELRCCL2)について予め決定された参照レベルと比較する工程、
- TBX21(ELTBX21)の発現レベルを決定し、前記レベルをTBX21(ELRTBX21)について予め決定された参照レベルと比較する工程。
【0015】
本発明はまた、i)患者から得られた腫瘍サンプルにおいて、CCR2、GZMB、GZMK、STAT1、ICOS、STAT4およびTBX21の遺伝子発現レベルを決定する工程、ii)工程i)で決定されたあらゆる発現レベルを、その予め決定された参照値と比較する工程、およびiii)
- 工程i)で決定された全ての発現レベルが、その予め決定された参照値よりも高い場合には良好な予後を与える工程、または、
- 工程i)で決定された全ての発現レベルが、その予め決定された参照値よりも低い場合には悪い予後を与える工程、または
- 決定された少なくとも1つの発現レベル値がその予め決定された値よりも高い場合には中度の予後を与える工程、
を含む、乳癌を患う患者の生存期間を予測するための方法に関する。
【0016】
本発明はまた、i)患者から得られた腫瘍サンプルにおいて、CCR2、CD3D、CD3E、CD3G、CD8A、CXCL10、CXCL11、GZMA、GZMB、GZMK、GZMM、IL15、IRF1、PRF1、CD69、ICOS、CXCR3およびSTAT4の遺伝子発現レベルを決定する工程、ii)工程i)で決定されたあらゆる発現レベルを、その予め決定された参照値と比較する工程、およびiii)
- 工程i)で決定された全ての発現レベルが、その予め決定された参照値よりも高い場合には良好な予後を与える工程、または、
- 工程i)で決定された全ての発現レベルが、その予め決定された参照値よりも低い場合には悪い予後を与える工程、または
- 決定された少なくとも1つの発現レベル値がその予め決定された値よりも高い場合には中度の予後を与える工程、
を含む、乳癌を患う患者の生存期間を予測するための方法に関する。
【0017】
本発明はまた、i)患者から得られた腫瘍サンプルにおいて、CD3E、CD3G、CD8A、CXCL11、GZMA、GZMB、GZMK、GZMM、IL15、IRF1、CD69、ICOS、CXCR3、STAT4、CCL2およびTBX21の遺伝子発現レベルを決定する工程、ii)工程i)で決定されたあらゆる発現レベルを、その予め決定された参照値と比較する工程、およびiii)
- 工程i)で決定された全ての発現レベルが、その予め決定された参照値よりも高い場合には良好な予後を与える工程、または、
- 工程i)で決定された全ての発現レベルが、その予め決定された参照値よりも低い場合には悪い予後を与える工程、または
- 少なくとも1つの発現の場合には中度の予後を与える工程、
を含む、子宮頸癌を患う患者の生存期間を予測するための方法に関する。
【0018】
本発明はまた、i)患者から得られた腫瘍サンプルにおいて、CCR2、CD3D、CD3E、CD8A、CXCL10、GZMA、GZMM、IL15、IRF1、PRF1、STAT1、CD69、CXCR3およびSTAT4の遺伝子発現レベルを決定する工程、ii)工程i)で決定されたあらゆる発現レベルを、その予め決定された参照値と比較する工程、およびiii)
- 工程i)で決定された全ての発現レベルが、その予め決定された参照値よりも高い場合には良好な予後を与える工程、または、
- 工程i)で決定された全ての発現レベルが、その予め決定された参照値よりも低い場合には悪い予後を与える工程、または
- 少なくとも1つの発現の場合には中度の予後を与える工程、
を含む、肝細胞癌を患う患者の生存期間を予測するための方法に関する。
【0019】
本発明はまた、i)患者から得られた腫瘍サンプルにおいて、CCR2、CD3D、CD3E、CD3G、CD8A、CXCL11、GZMA、GZMB、GZMK、GZMM、IL15、IRF1、PRF1、STAT1、CD69、STAT4およびCCL2の遺伝子発現レベルを決定する工程、ii)工程i)で決定されたあらゆる発現レベルを、その予め決定された参照値と比較する工程、およびiii)
- 工程i)で決定された全ての発現レベルが、その予め決定された参照値よりも高い場合には良好な予後を与える工程、または、
- 工程i)で決定された全ての発現レベルが、その予め決定された参照値よりも低い場合には悪い予後を与える工程、または
- 少なくとも1つの発現の場合には中度の予後を与える工程、
を含む、肺癌を患う患者の生存期間を予測するための方法に関する。
【0020】
本発明はまた、i)患者から得られた腫瘍サンプルにおいて、CCR2、CD3D、CD3E、CD3G、CD8A、CXCL10、GZMA、GZMB、GZMK、GZMM、IRF1、PRF1、CD69、ICOS、CXCR3およびTBX21の遺伝子発現レベルを決定する工程、ii)工程i)で決定されたあらゆる発現レベルを、その予め決定された参照値と比較する工程、およびiii)
- 工程i)で決定された全ての発現レベルが、その予め決定された参照値よりも高い場合には良好な予後を与える工程、または、
- 工程i)で決定された全ての発現レベルが、その予め決定された参照値よりも低い場合には悪い予後を与える工程、または
- 少なくとも1つの発現の場合には中度の予後を与える工程、
を含む、黒色腫を患う患者の生存期間を予測するための方法に関する。
【0021】
本発明はまた、i)患者から得られた腫瘍サンプルにおいて、CD3D、CD3E、CD3G、CD8A、CXCL10、CXCL11、GZMA、GZMB、GZMK、IRF1、PRF1、STAT1、ICOS、CXCR3、STAT4、CCL2およびTBX21の遺伝子発現レベルを決定する工程、ii)工程i)で決定されたあらゆる発現レベルを、その予め決定された参照値と比較する工程、およびiii)
- 工程i)で決定された全ての発現レベルが、その予め決定された参照値よりも高い場合には良好な予後を与える工程、または、
- 工程i)で決定された全ての発現レベルが、その予め決定された参照値よりも低い場合には悪い予後を与える工程、または
- 少なくとも1つの発現の場合には中度の予後を与える工程、
を含む、卵巣癌を患う患者の生存期間を予測するための方法に関する。
【0022】
本発明はまた、i)患者から得られた腫瘍サンプルにおいて、CD3E、CD3G、CXCL10、CXCL11、GZMB、GZMK、IRF1、PRF1、STAT1、ICOS、CXCR3、CCL2およびTBX21の遺伝子発現レベルを決定する工程、ii)工程i)で決定されたあらゆる発現レベルを、その予め決定された参照値と比較する工程、およびiii)
- 工程i)で決定された全ての発現レベルが、その予め決定された参照値よりも高い場合には良好な予後を与える工程、または、
- 工程i)で決定された全ての発現レベルが、その予め決定された参照値よりも低い場合には悪い予後を与える工程、または
- 少なくとも1つの発現の場合には中度の予後を与える工程、
を含む、卵巣癌を患う患者の生存期間を予測するための方法に関する。
【0023】
本発明はまた、i)患者から得られた腫瘍サンプルにおいて、CD3G、CD8A、CXCL11、GZMA、GZMK、GZMM、IL15、IRF1、PRF1、STAT1、ICOS、CXCR3、STAT4およびTBX21の遺伝子発現レベルを決定する工程、ii)工程i)で決定されたあらゆる発現レベルを、その予め決定された参照値と比較する工程、およびiii)
- 工程i)で決定された全ての発現レベルが、その予め決定された参照値よりも高い場合には良好な予後を与える工程、または、
- 工程i)で決定された全ての発現レベルが、その予め決定された参照値よりも低い場合には悪い予後を与える工程、または
- 決定された少なくとも1つの発現レベル値がその予め決定された値よりも高い場合には中度の予後を与える工程、
を含む、膵臓癌を患う患者の生存期間を予測するための方法に関する。
【0024】
遺伝子の発現レベルの測定は、当技術分野において周知の多種多様な技術によって実施され得る。
【0025】
典型的には、遺伝子の発現レベルは、mRNAの量を決定することによって決定され得る。mRNAの量を決定するための方法は、当技術分野において周知である。例えば、サンプル(例えば患者から調製された細胞または組織)に含まれる核酸を、まず標準的な方法に従って、例えば溶解酵素または化学的溶液を使用して抽出するか、あるいは、製造業者の指示に従って核酸結合樹脂によって抽出する。抽出されたmRNAを、その後、ハイブリダイゼーション(例えばノザンブロット分析、インサイツハイブリダイゼーション)および/または増幅(例えばRT-PCR)によって検出する。
【0026】
他の増幅法としては、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写介在増幅法(TMA)、鎖置換増幅法(SDA)および核酸配列ベース増幅法(NASBA)が挙げられる。
【0027】
少なくとも10個のヌクレオチドを有し、対象のmRNAに対して配列相補性または相同性を示す核酸は、本明細書において、ハイブリダイゼーションプローブまたは増幅プライマーとして有用性を見出す。このような核酸は同等なサイズの相同領域に対して同一である必要はないが、典型的には少なくとも約80%同一、より好ましくは85%同一、さらにより好ましくは90~95%同一であると理解される。特定の態様において、ハイブリダイゼーションを検出するために、核酸と、検出可能なラベルなどの適切な手段とを組み合わせて使用することが有利である。
【0028】
典型的には、核酸プローブは、例えば開示されているプローブを使用したターゲット核酸分子の検出を可能とするための、1つ以上のラベルを含む。インサイツハイブリダイゼーション手順などの種々の適用において、核酸プローブは、ラベル(例えば検出可能なラベル)を含む。「検出可能なラベル」は、サンプル中のプローブ(特に結合またはハイブリダイズしたプローブ)の存在または濃度を示す検出可能なシグナルを産生するために使用され得る分子または材料である。従って、ラベル化された核酸分子は、サンプル中のターゲット核酸配列(例えばゲノム核酸配列)(これに、ラベル化された独特で特異的な核酸分子が結合またはハイブリダイズする)の存在または濃度の指標を提供する。1つ以上の核酸分子(例えば開示されている方法によって生成されたプローブ)と結合したラベルは、直接的にまたは間接的にのいずれかで検出され得る。ラベルは、光子(無線周波数、マイクロ波周波数、赤外線周波数、可視周波数および紫外線周波数の光子を含む)の吸収、放出および/または散乱を含む、任意の公知のまたは依然として発見されていない機序によって検出され得る。検出可能なラベルとしては、着色している、蛍光を有する、リン光を有する、並びに発光している分子および材料、ある物質を別の物質へと変換することにより検出可能な差異をもたらす(例えば、着色していない物質を着色した物質へと変換する、もしくはその逆によって、または、沈降物を産生することによって、またはサンプルの濁度を増加させることによって)触媒(例えば酵素)、抗体との結合相互作用によって検出され得るハプテン、並びに常磁性および磁性分子または材料が挙げられる。
【0029】
検出可能なラベルの具体例としては、蛍光分子(または蛍光色素)が挙げられる。数多くの蛍光色素が当業者には公知であり、例えばLife Technologies(以前はInvitrogen)から選択され得、例えばThe Handbook-A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologiesを参照されたい。核酸分子(例えば独特で特異的な結合領域)に付着(例えば化学的にコンジュゲート)させることのできる具体的なフルオロフォアの例は、Nazarenko et al.の米国特許第5,866,366号に提供され、例えば、4-アセトアミド-4’-イソチオシアネートスチルベン-2,2’-ジスルホン酸、アクリジンおよび誘導体、例えばアクリジンおよびアクリジンイソチオシアネート、5-(2’-アミノエチル)アミノナフタレン-1-スルホン酸(EDANS)、4-アミノ-N-[3ビニルスルホニル]フェニル]ナフタルイミド-3,5-ジスルホネート(ルシファーイエローVS)、N-(4-アニリノ-1-ナフチル)マレイミド、アントラニラミド、ブリリアントイエロー、クマリンおよび誘導体、例えばクマリン、7-アミノ-4-メチルクマリン(AMC、クマリン120)、7-アミノ-4-トリフルオロメチルクマリン(クマリン151);シアノシン;4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI);5’,5’’ジブロモピロガロール-スルホンフタレイン(ブロモピロガロールレッド);7-ジエチルアミノ-3-(4’-イソチオシアネートフェニル)-4-メチルクマリン;ジエチレントリアミン五酢酸;4,4’-ジイソチオシアネートジヒドロ-スチルベン-2,2’-ジスルホン酸;4,4’-ジイソチオシアネートスチルベン-2,2’-ジスルホン酸;5-[ジメチルアミノ]ナフタレン-1-スルホニルクロリド(DNS、ダンシルクロリド);4-(4’-ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸(DABCYL);4-ジメチルアミノフェニルアゾフェニル-4’-イソチオシアネート(DABITC);エオシンおよび誘導体、例えばエオシンおよびエオシンイソチオシアネート;エリスロシンおよび誘導体、例えばエリスロシンBおよびエリスロシンイソチオシアネート;エチジウム;フルオレセインおよび誘導体、例えば5-カルボキシフルオレセイン(FAM)、5-(4,6-ジクロロトリアジン-2-イル)アミノフルオレセイン(DTAF)、2’7’ジメトキシ-4’5’-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(JOE)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、およびQFITC Q(RITC);2’,7’-ジフルオロフルオレセイン(オレゴングリーン(登録商標));フルオレスカミン;IR144;IR1446;マラカイトグリーンイソチオシアネート;4-メチルウンベリフェロン;オルトクレゾールフタレイン;ニトロチロシン;パラロザニリン;フェノールレッド;B-フィコエリトリン;o-フタルジアルデヒド;ピレンおよび誘導体、例えばピレン、ピレンブチレートおよびスクシンイミジル1-ピレンブチレート;リアクティブレッド4(Cibacronブリリアントレッド3B-A);ローダミンおよび誘導体、例えば6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、6-カルボキシローダミン(R6G)、リサミンローダミンBスルホニルクロリド、ローダミン(Rhod)、ローダミンB、ローダミン123、ローダミンXイソチオシアネート、ローダミングリーン、スルホローダミンB、スルホローダミン101およびスルホローダミン101のスルホニルクロリド誘導体(テキサスレッド);N,N,N’,N’-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA);テトラメチルローダミン;テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC);リボフラビン;ロゾール酸およびテルビウムキレート誘導体である。他の適切なフルオロフォアとしては、約617nmで発光するチオール反応性ユーロピウムキレート(HeydukおよびHeyduk, Analyt. Biochem. 248:216-27, 1997; J. Biol. Chem. 274:3315-22, 1999)、並びに、GFP、リサミン(登録商標)、ジエチルアミノクマリン、フルオレセインクロロトリアジニル、ナフトフルオレセイン、4,7-ジクロロローダミンおよびキサンテン(Lee et al.の米国特許第5,800,996号に記載)およびその誘導体が挙げられる。例えば、Life Technologies (Invitrogen; Molecular Probes (Eugene, Oreg.))から入手できるものなどの当業者に公知の他のフルオロフォアも使用することができ、これには、ALEXA FLUOR(登録商標)シリーズの色素(例えば、米国特許第5,696,157号、第6,130,101号および第6,716,979号に記載)、BODIPYシリーズの色素(例えば、米国特許第4,774,339号、第5,187,288号、第5,248,782号、第5,274,113号、第5,338,854号、第5,451,663号および第5,433,896号に記載のようなジピロメテンホウ素ジフルオリド色素)、カスケードブルー(米国特許第5,132,432号に記載のスルホン化ピレンのアミン反応性誘導体)およびマリーナブルー(米国特許第5,830,912号)が含まれる。
【0030】
上記の蛍光色素に加えて、蛍光ラベルは、蛍光ナノ粒子、例えば半導体ナノ結晶、例えばQUANTUM DOTTM(例えば、Life Technologies (QuantumDot Corp, Invitrogen Nanocrystal Technologies, Eugene, Oreg.)から得られた;また、米国特許第6,815,064号;第6,682,596号;および第6,649,138号を参照されたい)であり得る。半導体ナノ結晶は、サイズ依存性の光学的および/または電気的特性を有する微視的な粒子である。半導体ナノ結晶が一次エネルギー源を用いて照射されると、二次的なエネルギーの放出が、半導体ナノ結晶に使用される半導体材料のバンドギャップに相当する周波数で起こる。この放出は、特定の波長の発光または蛍光として検出され得る。異なるスペクトル特徴を有する半導体ナノ結晶は、米国特許第6,602,671号に記載されている。例えばBruchez et al., Science 281 :20132016, 1998; Chan et al., Science 281:2016-2018, 1998;および米国特許第6,274,323号に記載の技術によって、多種多様な生物学的分子(dNTPおよび/または核酸を含む)または基質に結合させることのできる半導体ナノ結晶。種々の組成の半導体ナノ粒子の形成が、例えば、米国特許第6,927,069号;第6,914,256号;第6,855,202号;第6,709,929号;第6,689,338号;第6,500,622号;第6,306,736号;第6,225,198号;第6,207,392号;第6,114,038号;第6,048,616号;第5,990,479号;第5,690,807号;第5,571,018号;第5,505,928号;第5,262,357号および米国特許公開公報第2003/0165951号並びにPCT公開公報第99/26299号(1999年5月27日に公開)に開示されている。その異なるスペクトル特徴に基づいて同定可能である別々の半導体ナノ結晶集団を産生することができる。例えば、その組成、サイズまたはサイズおよび組成に基づいて異なる色の光を発光する半導体ナノ結晶を産生することができる。例えば、本明細書に開示されたプローブ中の蛍光ラ
ベルとして適切である、サイズに基づいて異なる波長(565nm、655nm、705nm、または800nmの発光波長)で発光する量子ドットは、Life Technologies (Carlshad, Calif.)から入手可能である。
【0031】
さらなるラベルとしては、例えば、放射性同位体(例えば3H)、金属キレート、例えば放射性または常磁性金属イオンのDOTAおよびDPTAキレート、例えばGd3+、並びにリポソームが挙げられる。
【0032】
核酸分子と共に使用することのできる検出可能なラベルとしては、また、酵素、例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、酸ホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼまたはβ-ラクタマーゼも挙げられる。
【0033】
あるいは、酵素が、金属学的検出スキームに使用され得る。例えば、銀インサイツハイブリダイゼーション(SISH)手順は、ハイブリダイズしたゲノムターゲット核酸配列の同定および場所決定のための金属学的検出スキームを含む。金属学的検出法は、アルカリホスファターゼなどの酵素を、水溶性金属イオンおよび酸化還元活性のない酵素の基質と組み合わせて使用することを含む。基質は、酵素によって酸化還元活性のある物質へと変換され、酸化還元活性のある物質は、金属イオンを還元して、検出可能な沈降物の形成を引き起こす(例えば、米国特許出願公開公報第2005/0100976号、PCT公開公報第2005/003777号および米国特許出願公開公報第2004/0265922号を参照)。金属学的検出法はまた、水溶性金属イオン、酸化剤および還元剤と共に、酸化還元酵素(例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼ)を使用して、再び検出可能な沈降物を形成することを含む(例えば、米国特許第6,670,113号参照)。
【0034】
開示された方法を使用して作成されたプローブは、核酸の検出、例えばISH手順(例えば、蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)、色素産生インサイツハイブリダイゼーション(CISH)、および銀インサイツハイブリダイゼーション(SISH))または比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)に使用することができる。
【0035】
インサイツハイブリダイゼーション(ISH)は、中期または間期染色体標本に関連したターゲット核酸配列(例えばゲノムターゲット核酸配列)を含むサンプル(例えばスライド上に乗せられた細胞または組織サンプル)を、ターゲット核酸配列(例えばゲノムターゲット核酸配列)と特異的にハイブリダイズすることのできるまたはそれに特異的であるラベル化プローブと接触させることを含む。スライドを、場合により前処理して、例えば均一なハイブリダイゼーションに干渉する可能性のあるパラフィンまたは他の材料を除去する。サンプルおよびプローブはどちらも、例えば加熱によって処理されて、二本鎖核酸を変性させる。プローブ(適切なハイブリダイゼーション緩衝液中で調合)およびサンプルを、ハイブリダイゼーションが起こる(典型的には平衡を達成する)のを可能とする条件下および十分な時間をかけて合わせる。染色体標本を洗浄して、過剰なプローブを除去し、染色体ターゲットの特異的な標識の検出を標準的な技術を使用して実施する。
【0036】
例えば、ビオチニル化プローブを、フルオレセインラベル化アビジンまたはアビジン-アルカリホスファターゼを使用して検出することができる。蛍光色素の検出のために、蛍光色素を直接検出しても、またはサンプルを、例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)コンジュゲートアビジンと共にインキュベーションしてもよい。FITCシグナルの増幅を、必要であれば、ビオチンにコンジュゲートさせたヤギ抗アビジン抗体と共にインキュベーションし、洗浄し、FITCにコンジュゲートさせたアビジンと共に2回目のインキュベーションを行なうことによって行なうことができる。酵素活性による検出のために、サンプルを、例えば、ストレプトアビジンと共にインキュベーションし、洗浄し、ビオチンにコンジュゲートさせたアルカリホスファターゼと共にインキュベーションし、再度洗浄し、再度平衡化させることができる(例えばアルカリホスファターゼ(AP)緩衝液中で)。インサイツハイブリダイゼーション手順の一般的な記載については、例えば、米国特許第4,888,278号を参照されたい。
【0037】
FISH、CISHおよびSISHのための数多くの手順が当技術分野において公知である。例えば、FISHを実施するための手順は、米国特許第5,447,841号;第5,472,842号;および第5,427,932号;および例えば、Pir1kel et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 83:2934-2938, 1986; Pinkel et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 85:9138-9142, 1988;およびLichter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 85:9664-9668, 1988に記載されている。CISHは、例えば、Tanner et al., Am. .1. Pathol. 157:1467-1472, 2000および米国特許第6,942,970号に記載されている。さらなる検出法は、米国特許第6,280,929号に提供されている。
【0038】
数多くの試薬および検出スキームを、FISH、CISHおよびSISH手順と共に使用して、感度、解像度または他の望ましい特性を向上させることができる。上記に考察しているように、フルオロフォア(蛍光色素およびQUANTUM DOTS(登録商標)を含む)を用いてラベル化されたプローブを、FISHを実施すれば、直接光学的に検出することができる。あるいは、プローブを、非蛍光分子、例えばハプテン(例えば、以下の非制限的な例など:ビオチン、ジゴキシゲニン、DNP、および種々のオキサゾール、ピラゾール、チアゾール、ニトロアリール、ベンゾフラザン、トリテルペン、尿素、チオ尿素、ロテノン、クマリン、クマリンをベースとした化合物、ポドフィロトキシン、ポドフィロトキシンをベースとした化合物、およびその組合せ)、リガンドまたは他の間接的に検出可能な部分でラベル化することができる。このような非蛍光分子でラベル化されたプローブ(およびそれらが結合したターゲット核酸配列)を、その後、サンプル(例えばプローブが結合する細胞または組織サンプル)を、ラベル化された検出試薬、例えば選択されたハプテンまたはリガンドに特異的な抗体(またはレセプター、または他の特異的な結合対)と接触させることによって検出することができる。検出試薬を、フルオロフォア(例えばQUANTUM DOTS(登録商標))または別の間接的に検出可能な部分でラベル化することができるか、あるいはフルオロフォアでラベル化され得る1つ以上の追加の特異的な結合剤(例えば二次抗体または特異的抗体)と接触させることができる。
【0039】
他の例において、プローブまたは特異的結合剤(例えば抗体、例えば一次抗体、レセプターまたは他の結合剤)を、蛍光発生組成物または発色性組成物を検出可能な蛍光、着色または別様に検出可能なシグナル(例えばSISHにおける検出可能な金属粒子の沈着のように)へと変換することのできる酵素でラベル化する。上記に示されているように、酵素を、リンカーを介して、関連プローブまたは検出試薬に直接的にまたは間接的に付着させることができる。適切な試薬(例えば結合試薬)および化学反応(例えばリンカーおよび付着化学反応)の例は、米国特許出願公開公報第2006/0246524号;第2006/0246523号および第2007/0117153号に記載されている。
【0040】
ラベル化されたプローブ-特異的結合剤の対を適切に選択することによって、マルチプレックス検出スキームを作成して、1つのアッセイで複数のターゲット核酸配列(例えばゲノムターゲット核酸配列)の検出(例えば、1つの細胞もしくは組織サンプル、または1つを超える細胞もしくは組織サンプル上で)を促進することができることが当業者によって理解されるだろう。例えば、第一ターゲット配列に対応する第一プローブを、ビオチンなどの第一ハプテンでラベル化することができ、一方、第二のターゲット配列に対応する第二プローブをDNPなどの第二ハプテンでラベル化することができる。サンプルをプローブに曝露した後、サンプルを第一の特異的な結合剤(この場合、第一フルオロフォア、例えば585nmで発光する第一のスペクトル的に明確に異なるQUANTUM DOTS(登録商標)でラベル化されたアビジン)および第二の特異的な結合剤(この場合、第二フルオロフォア(例えば705nmで発光する、例えば第二のスペクトル的に明確に異なるQUANTUM DOTS(登録商標))でラベル化された抗DNP抗体または抗体フラグメント)と接触させることによって、結合したプローブを検出することができる。さらに他のプローブ/結合剤の対も、他のスペクトル的に明確に異なるフルオロフォアを使用してマルチプレックス検出スキームに加えることができる。直接的および間接的な数多くのバリエーション(1工程、2工程またはそれ以上)を想定することができ、その全てが、開示されたプローブおよびアッセイの上で適切である。
【0041】
プローブは、典型的には、10~1000、例えば10~800、より好ましくは15~700、典型的には20~500のヌクレオチド長の一本鎖核酸を含む。プライマーは、典型的には、増幅しようとする対象の核酸に完全にまたはほぼ完全に一致するように設計された、10~25ヌクレオチド長の、より短い一本鎖核酸である。プローブおよびプライマーは、それらがハイブリダイズする核酸に「特異的」であり、すなわち、それらは好ましくは高ストリンジェンシーなハイブリダイゼーション条件下(最も高い融解温度Tm、例えば50%ホルムアミド、5×または6×SCCに相当する。SCCは0.15M NaCl、0.015M クエン酸Naである)でハイブリダイズする。
【0042】
上記の増幅法および検出法に使用される核酸プライマーまたはプローブをキットとして構築し得る。このようなキットは、共通プライマーおよび分子プローブを含む。好ましいキットはまた、増幅が起こったかどうかを決定するために必要な成分も含む。キットはまた、例えばPCR緩衝液および酵素;陽性対照配列、反応対照プライマー;並びに特異的な配列を増幅および検出するための説明書も含み得る。
【0043】
特定の態様において、本発明の方法は、卵丘細胞から抽出された全RNAを準備する工程、前記RNAを、より特定すると定量的または半定量的RT-PCRを用いて、増幅および特異的プローブに対するハイブリダイゼーションにかける工程を含む。
【0044】
別の好ましい態様において、発現レベルはDNAチップ分析によって決定される。このようなDNAチップまたは核酸マイクロアレイは、基材(これはマイクロチップ、スライドガラスまたはマイクロスフィアのサイズのビーズであり得る)に化学的に付着させた、種々の核酸プローブからなる。マイクロチップは、ポリマー、プラスチック、樹脂、多糖、シリカまたはシリカをベースとした材料、炭素、金属、無機ガラスまたはニトロセルロースから構成され得る。プローブは、約10~約60塩基対であり得る、核酸、例えばcDNAまたはオリゴヌクレオチドを含む。発現レベルを決定するために、場合によりまず逆転写にかけられた試験被験者からのサンプルをラベル化し、ハイブリダイゼーション条件でマイクロアレイと接触させると、マイクロアレイ表面に付着させたプローブ配列に相補的であるターゲット核酸間との複合体が形成される。その後、ラベル化されたハイブリダイズした複合体を検出し、定量または半定量することができる。ラベル化は、種々の方法によって、例えば放射性ラベル化または蛍光ラベル化によって達成することができる。マイクロアレイハイブリダイゼーション技術の多くの変法が、当業者には利用可能である(例えば、Hoheisel, Nature Reviews, Genetics, 2006, 7:200-210参照)。
【0045】
遺伝子の発現レベルは、絶対発現レベルまたは規準化発現レベルとして表現され得る。典型的には、発現レベルは、遺伝子の発現を、患者の癌ステージを決定する際に関連しない遺伝子、例えば構成的に発現されているハウスキーピング遺伝子と比較することによって、前記遺伝子の絶対発現レベルを修正することによって規準化される。規準化のために適切な遺伝子としては、ハウスキーピング遺伝子、例えばアクチン遺伝子ACTB、リボソーム18S遺伝子、GUSB、PGK1およびTFRCが挙げられる。この規準化は、あるサンプル中の、例えば患者サンプル中の発現レベルを、別のサンプルの発現レベルと比較、または異なる入手源のサンプル間の発現レベルの比較を可能とする。
【0046】
比較のために使用される予め決定された参照値は、本明細書に記載のように決定され得る「カットオフ」値または「閾値」を含み得る。各対象遺伝子についての各参照(「カットオフ」)値は、以下の工程を含む方法を実施することによって予め決定され得る:
a)癌を患う患者の腫瘍組織サンプルの収集物を準備する工程;
b)工程a)で準備された収集物に含まれる各腫瘍組織サンプルについての遺伝子発現レベルを決定する工程;
c)前記発現レベルに従って腫瘍組織サンプルを順位付けする工程;
d)その発現レベルに従って順位付けされたそれぞれ増加しているメンバー番号、減少しているメンバー番号の部分集合の対に、前記腫瘍組織サンプルを分類する工程;
e)工程a)で準備した各腫瘍組織サンプルについて、対応する癌患者についての実際の臨床転帰に関する情報(すなわち、無病生存期間(DFS)または全生存期間(OS)またはその両方)を準備する工程;
f)腫瘍組織サンプルの各部分集合対について、生存曲線のカプランマイヤー率を得る工程;
g)腫瘍組織サンプルの各部分集合対について、両方の部分集合間の統計学的有意性(p値)を計算する工程;
h)発現レベルの参照値として、p値が最も小さい発現レベル値を選択する工程。
【0047】
例えば、100人の患者の100個の癌サンプルについて、遺伝子Xの発現レベルを評価した。100個のサンプルが、その発現レベルに従って順位付けされる。サンプル1は最善の発現レベルを有し、サンプル100は最悪の発現レベルを有する。第1のグループは、2つの部分集合を提供する:一方はサンプル番号1で、他方は99個の他のサンプル。次のグループは、一方はサンプル1および2、他方は98個の残りのサンプルを提供し、最後のグループ(一方はサンプル1~99で、他方はサンプル番号100である)まで同様に続ける。対応する癌患者の実際の臨床転帰に関連する情報に従って、2つの部分集合の各99個のグループについてのカプランマイヤー曲線を作成する。また、各99個のグループについて、両方の部分集合間のp値を計算した。
【0048】
最小p値の基準に基づいた識別が最強となるように参照値が選択される。別の言葉で言えば、p値が最小である両方のサブセット間の境界に対応する発現レベルが、参照値と判断される。参照値は、必ずしも発現レベルの中央値ではないことを注記すべきである。
【0049】
通常の作業では、参照値(カットオフ値)を本発明の方法に使用して、腫瘍サンプルを識別し得、それ故、対応する患者を識別し得る。
【0050】
時間を関数とした生存率のカプランマイヤー曲線は、一般的に、処置後の特定の期間生存する患者の割合を測定するためのものであり、これは当業者には周知である。
【0051】
当業者はまた、遺伝子の発現レベルの同じ評価技術が、もちろん、参照値を得るために、その後、本発明の方法にかけられた患者の遺伝子発現レベルの評価のために使用されることを理解する。
【0052】
このような予め決定された発現レベルの参照値は、上記で定義された任意の遺伝子について決定され得る。
【0053】
高い(Hi)または低い(Lo)適応的免疫遺伝子サインを有する患者は、非常に異なる臨床転帰および非常に異なる生存期間(適応的免疫遺伝子サインの強力な予後予測値)を有するので、この適応的免疫遺伝子サイン(HiまたはLo)に基づいて患者を層別化する必要があり、これにより、癌処置から恩恵が得られる患者が予測される。類似した適応的免疫遺伝子サイン(HiまたはLo)を有する患者群の比較は、癌処置に有意に応答する患者を検出および予測することを可能とする。例えば、
図4は、ステージIVの結腸直腸癌患者を示し、「Hi」な適応的免疫遺伝子サインを有する患者は、延長された生存期間を有し、化学療法による処置を必要としない(化学療法による処置から全く恩恵を受けない)。化学療法による処置の有意で有益な効果が、「Lo」な適応的免疫遺伝子サインを有する患者で観察され得る。
図2は、ステージI/IIIの結腸直腸癌患者を示し、「Lo」な適応的免疫遺伝子サインを有する患者は、劣っている生存期間を有し、化学療法による処置から恩恵を受けず、一方、「Hi」な適応的免疫遺伝子サインを有する患者は、化学療法による処置を受けた場合には改善された転帰を有する。
図2と同様に、
図6は、ステージIIの結腸直腸癌患者を示し、「Lo」な適応的免疫遺伝子サインを有する患者は、劣っている生存期間を有し、化学療法による処置から恩恵を受けず、一方、「Hi」な適応的免疫遺伝子サインを有する患者は、化学療法による処置を受けた場合には改善された転帰を有する。従って、本発明の方法は、「悪い応答者」である第1群の患者(すなわち、処置は、患者の生存期間に対して限定された(または中程度の)影響を及ぼすだろう)および「良好な応答者」である第2群の患者(すなわち、処置は患者の生存期間に対して有意な影響を及ぼすだろう)という、2つの患者群間を識別するのに適切であり得る。
【0054】
従って、本発明のさらなる局面は、i)患者から得られた腫瘍サンプルにおいて、CCR2、CD3D、CD3E、CD3G、CD8A、CXCL10、CXCL11、GZMA、GZMB、GZMK、GZMM、IL15、IRF1、PRF1、STAT1、CD69、ICOS、CXCR3、STAT4、CCL2およびTBX21からなる群より選択された少なくとも7個の遺伝子の遺伝子発現レベルを決定する工程、ii)工程i)で決定されたあらゆる発現レベルを、その予め決定された参照値と比較する工程、およびiii)工程i)で決定された全ての発現レベルが、その予め決定された参照値よりも高いまたは低い場合には患者は処置に有意に応答するであろうと結論する工程を含む、癌を患う患者が処置に応答するかどうかを決定するための方法に関する。
【0055】
従って、本発明のさらなる局面は、i)患者から得られた腫瘍サンプルにおいて、CCR2、CD3D、CD3E、CD3G、CD8A、CXCL10、CXCL11、GZMA、GZMB、GZMK、GZMM、IL15、IRF1、PRF1、STAT1、CD69、ICOS、CXCR3、STAT4、CCL2およびTBX21の遺伝子発現レベルを決定する工程、ii)工程i)で決定されたあらゆる発現レベルを、その予め決定された参照値と比較する工程、およびiii)工程i)で決定された全ての発現レベルが、その予め決定された参照値よりも高いまたは低い場合には患者は処置に有意に応答するであろうと結論する工程を含む、癌を患う患者が処置に応答するかどうかを決定するための方法に関する。
【0056】
特定の態様において、本発明は、i)患者から得られた腫瘍サンプルにおいて、CCR2、CD3D、CD3E、CD3G、CD8A、CXCL10、CXCL11、GZMA、GZMB、GZMK、GZMM、IL15、IRF1、PRF1、STAT1、CD69、ICOS、CXCR3、STAT4、CCL2およびTBX21の遺伝子発現レベルを決定する工程、ii)工程i)で決定されたあらゆる発現レベルを、その予め決定された参照値と比較する工程、およびiii)工程i)で決定された全ての発現レベルがその予め決定された参照値よりも高い場合には患者は処置に有意に応答するであろうと結論する工程、または工程i)で決定された全ての発現レベルがその予め決定された参照値よりも低い場合には患者は処置に有意に応答しないであろうと結論する工程を含む、非転移性結腸直腸癌を患う患者が処置に応答するかどうかを決定するための方法に関する。
【0057】
また、少なくとも1つの遺伝子がその対応する予め決定された参照値よりも高い場合には中間の結論が提供され得る。遺伝子の発現レベルがその予め決定された参照値よりも高い時にはいつでも、処置に対する患者の応答はより良好であろう。
【0058】
上記の方法は、処置のガイドラインが確立されていない初期の進行癌患者(TNM分類によるとステージII)にとって特に適切である。上記の方法は、非転移性患者が処置の恩恵を受け得るかどうかを決定するための信頼性のあるツールを提供することによってニーズを満たすだろう。
【0059】
特定の態様において、本発明は、i)患者から得られた腫瘍サンプルにおいて、CCR2、CD3D、CD3E、CD3G、CD8A、CXCL10、CXCL11、GZMA、GZMB、GZMK、GZMM、IL15、IRF1、PRF1、STAT1、CD69、ICOS、CXCR3、STAT4、CCL2およびTBX21の遺伝子発現レベルを決定する工程、ii)工程i)で決定されたあらゆる発現レベルを、その予め決定された参照値と比較する工程、およびiii)工程i)で決定された全ての発現レベルがその予め決定された参照値よりも低い場合には患者は処置に有意に応答するであろうと結論する工程、または工程i)で決定された全ての発現レベルがその予め決定された参照値よりも高い場合には患者は処置に有意に応答しないであろうと結論する工程を含む、転移性結腸直腸癌を有する患者が処置に応答するかどうかを決定するための方法に関する。
【0060】
また、少なくとも1つの遺伝子がその対応する予め決定された参照値よりも低い場合には中間の結論が提供され得る。遺伝子の発現レベルがその予め決定された参照値よりも低い時にはいつでも、処置に対する患者の応答はより良好であろう。
【0061】
特定の態様において、本発明は、i)患者から得られた腫瘍サンプルにおいて、CCR2、CD3D、CD3E、CD3G、CD8A、CXCL10、CXCL11、GZMA、GZMB、GZMK、GZMM、IL15、IRF1、PRF1、STAT1、CD69、ICOS、CXCR3、STAT4、CCL2およびTBX21の遺伝子発現レベルを決定する工程、ii)工程i)で決定されたあらゆる発現レベルを、その予め決定された参照値と比較する工程、およびiii)工程i)で決定された全ての発現レベルがその予め決定された参照値よりも低い場合には患者は処置に有意に応答するであろうと結論する工程、または工程i)で決定された全ての発現レベルがその予め決定された参照値よりも高い場合には患者は処置に有意に応答しないであろうと結論する工程を含む、非転移性肺癌を有する患者が処置に応答するかどうかを決定するための方法に関する。
【0062】
特定の態様において、本発明は、i)患者から得られた腫瘍サンプルにおいて、CCR2、CD3D、CD3E、CD3G、CD8A、CXCL10、CXCL11、GZMA、GZMB、GZMK、GZMM、IL15、IRF1、PRF1、STAT1、CD69、ICOS、CXCR3、STAT4、CCL2およびTBX21の遺伝子発現レベルを決定する工程、ii)工程i)で決定されたあらゆる発現レベルを、その予め決定された参照値と比較する工程、およびiii)工程i)で決定された全ての発現レベルがその予め決定された参照値よりも高い場合には患者は処置に有意に応答するであろうと結論する工程、または工程i)で決定された全ての発現レベルがその予め決定された参照値よりも低い場合には患者は処置に有意に応答しないであろうと結論する工程を含む、転移性卵巣癌を有する患者が処置に応答するかどうかを決定するための方法に関する。
【0063】
処置は、放射線療法、化学療法または免疫療法からなり得る。処置は、アジュバント療法(すなわち、原発腫瘍の外科的切除後の処置)またはネオアジュバント療法(すなわち原発腫瘍の外科的切除前の処置)からなり得る。
【0064】
「化学療法剤」という用語は、腫瘍増殖を阻止するのに効果的である全ての化合物を指す。化学療法剤の例としては、アルキル化剤、例えばチオテパおよびシクロホスファミド;アルキルスルホン酸類、例えばブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファン;アジリジン類、例えばベンゾドーパ、カルボクオン、メツレドーパ(meturedopa)、およびウレドパ(uredopa);エチレンイミン類およびメチルメラミン類、例えばアルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミドおよびトリメチロールメラミン;アセトゲニン類(特にブラタシンおよびブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン類;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシンおよびビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体のKW-2189およびCBI-TMIを含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン:スポンギスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えばクロラムブシル、クロルナファジン、シクロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノボエンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソ尿素類、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン;抗生物質、例えばエンジイン抗生物質(例えばカリケアマイシン、特にカリケアマイシン(11およびカリケアマイシン211、例えば、Agnew Chem Intl. Ed. Engl. 33:183-186 (1994)を参照;ダイネミシン、例えばダイネミシンA;エスペラミシン;並びに、ネオカルジノスタチンクロモフォアおよび関連色素タンパク質エンジイン抗生物質クロモフォア)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシ、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシ、およびデオキシドキソルビシを含む)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗剤、例えばメトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えばデノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート;プリン類似体、例えばフルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えばアンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5-FU;アンドロゲン、例えばカルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎皮質ホルモン剤、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充剤、例えばフォリン酸;アセグラトン;アルドホスファミド配糖体;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート;デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジクオン;エフロルニチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;マイタンシノイド、例えばマイタンシンおよびアンサマイトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲンナニウム(spirogennanium);テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン類(特にT-2毒素、ベルカリンA、ロリジンAおよびアングイジン);ウレタン;ビンデシン;デカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine)、アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセル(タキソール(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, N.J.)およびドセタキセル(タキソテア(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金類似体、例えばシスプラチンおよびカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン:ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロン酸;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;カペシタビン;および上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体が挙げられる。また、この定義には、腫瘍に対するホルモン作用を調節または阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えば抗エストロゲン剤、例えばタモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害性4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、およびトレミフェン(フェアストン);並びに抗アンドロゲン剤、例えばフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリドおよびゴセレリン;並びに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体も含まれる。
【0065】
本明細書に使用される「免疫療法剤」という用語は、癌細胞に対する生体の免疫応答を間接的にもしくは直接的に増強、刺激もしくは増大させる、および/または他の抗癌療法の副作用を和らげる、化合物、組成物もしくは処置を指す。従って、免疫療法は、癌細胞に対する免疫系の応答を直接的にもしくは間接的に刺激もしくは増強する、および/または他の抗癌剤によって引き起こされ得る副作用を和らげる療法である。免疫療法はまた、当技術分野において、免疫学的療法、生物学的療法、生物学的反応修飾物質療法、および生物療法とも称される。当技術分野において公知の一般的な免疫療法剤の例としては、サイトカイン、癌ワクチン、モノクローナル抗体、および非サイトカインアジュバントが挙げられるがそれらに限定されない。あるいは、免疫療法剤による処置は、患者に、ある量の免疫細胞(T細胞、NK細胞、樹状細胞、B細胞など)を投与することからなり得る。
【0066】
免疫療法剤は非特異的であり得、すなわち、免疫系を全般的に高めることができ、よって、癌細胞の増殖および/または蔓延に対して戦うのにより効果的となるか、あるいはそれらは特異的であり得、すなわち、癌細胞それ自体にターゲティングされ得、免疫療法処方計画は、非特異的免疫療法剤および特異的免疫療法剤の使用を組合せ得る。
【0067】
非特異的免疫療法剤は、免疫系を刺激または間接的に増大させる物質である。非特異的免疫療法剤は、単独で癌の処置のための主要な療法として使用され、並びに主要な療法に加えて、その場合には、非特異的な免疫療法剤は、他の療法(例えば癌ワクチン)の効力を増強するためのアジュバントとして機能する。非特異的免疫療法剤はまた、この後者の脈絡において、他の療法の副作用(例えば、特定の化学療法剤によって誘発される骨髄抑制)を低減させるように機能し得る。非特異的免疫療法剤は、重要な免疫系細胞に対して作用し、二次応答、例えばサイトカインおよび免疫グロブリンの産生の増加などを引き起こし得る。あるいは、前記薬剤は、それ自体、サイトカインを含み得る。非特異的免疫療法剤は、一般的に、サイトカインまたは非サイトカインアジュバントとして分類される。
【0068】
多くのサイトカインが、免疫系を高めるように設計された一般的な非特異的免疫療法として、または他の療法と共に提供されるアジュバントとしてのいずれかとして、癌の処置に用途を見出す。適切なサイトカインとしては、インターフェロン、インターロイキンおよびコロニー刺激因子が挙げられるがそれらに限定されない。
【0069】
本発明によって考えられるインターフェロン(IFN)としては、一般的な種類のIFN、IFN-α(IFN-α)、IFN-β(IFN-β)およびIFN-γ(IFN-γ)が挙げられる。IFNは、例えば、癌細胞の増殖を遅延させることによって、癌細胞がより正常な行動を有する細胞へと発達するのを促進することによって、および/または癌細胞による抗原の産生を増加させることによって、免疫系が癌細胞をより容易に認識して破壊するようにすることによって、癌細胞に対して直接的に作用し得る。IFNはまた、例えば、血管新生を減速させることによって、免疫系を高めることによって、および/またはナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞およびマクロファージを刺激することによって、癌細胞に対して間接的に作用することができる。組換えIFN-αは、Roferon(Roche Pharmaceuticals)およびIntron A(Schering Corporation)から市販されている。IFN-αの単独での使用または他の免疫療法剤または化学療法剤との併用は、黒色腫(転移性黒色腫を含む)、腎臓癌(転移性腎臓癌を含む)、乳癌、前立腺癌および子宮頸癌(転移性子宮頸癌を含む)を含む、種々の癌の処置に効力を示した。
【0070】
本発明によって考えられるインターロイキンとしては、IL-2、IL-4、IL-11およびIL-12が挙げられる。市販されている組換えインターロイキンの例としては、Proleukin(登録商標)(IL-2;Chiron Corporation)およびNeumega(登録商標)(IL-12;Wyeth Pharmaceuticals)が挙げられる。Zymogenetics, Inc. (Seattle, Wash.)は、これもまた本発明の組合せに使用が考えられている組換え型IL-21を現在試験している。単独でまたは他の免疫療法剤もしくは化学療法剤と組み合わせたインターロイキンは、腎臓癌(転移性腎臓癌を含む)、黒色腫(転移性黒色腫を含む)、卵巣癌(再発卵巣癌を含む)、子宮頸癌(転移性子宮頸癌を含む)、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、脳癌および前立腺癌を含む、種々の癌の処置に効力を示した。
【0071】
インターロイキンはまた、種々の癌の処置においてIFN-αと組み合わせて良好な活性を示した(Negrier et al., Ann Oncol. 2002 13(9):1460-8;Touranietal, JClin Oncol. 2003 21(21):398794)。
【0072】
本発明によって考えられるコロニー刺激因子(CSF)としては、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSFまたはフィルグラスチム)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSFまたはサルグラモスチム)およびエリスロポエチン(エポエチンアルファ、ダルベポエチン)が挙げられる。1つ以上の増殖因子を用いての処置は、従来の化学療法を受けている患者における新たな血液細胞の生成を刺激するのに役立ち得る。従って、CSFを用いての処置は、化学療法に伴う副作用を低減させるのに役立ち得、より高用量の化学療法剤を使用することを可能とし得る。種々の組換えコロニー刺激因子、例えば、Neupogen(登録商標)(G-CSF; Amgen)、Neulasta (pelfilgrastim; Amgen)、Leukine (GM-CSF; Berlex)、Procrit(エリスロポエチン;Ortho Biotech)、 Epogen(エリスロポエチン;Amgen)、 Arnesp(エリスロポエチン)が市販されている。コロニー刺激因子は、黒色腫、結腸直腸癌(転移性結腸直腸癌を含む)および肺癌を含む、癌の処置に効力を示した。
【0073】
本発明の組合せに使用するのに適した非サイトカインアジュバントとしては、レバミソール、ミョウバン水酸化物(ミョウバン)、カルメット・ゲラン桿菌(ACG)、不完全フロイントアジュバント(IFA)、QS-21、DETOX、キーホールリムペットヘモシアニン(KLH)およびジニトロフェニル(DNP)が挙げられるがそれらに限定されない。他の免疫療法および/または化学療法と組み合わせた非サイトカインアジュバントは、例えば大腸癌および結腸直腸癌(レバミソール);黒色腫(BCGおよびQS-21);腎臓癌および膀胱癌(BCG)を含む、種々の癌に対する効力を示した。
【0074】
特異的または非特異的ターゲットを有することに加えて、免疫療法剤は能動的であり得る、すなわち、生体自身の免疫応答を刺激し得る、またはそれらは受動的であり得る、すなわち生体外で生成された免疫系成分を含み得る。
【0075】
受動的で特異的な免疫療法は、典型的には、癌細胞の表面上に見られる特定の抗原に対して特異的であるかまたは特定の細胞増殖因子に対して特異的である、1つ以上のモノクローナル抗体の使用を含む。モノクローナル抗体は癌の処置における多くの方法に使用されることにより、例えば、特定の種類の癌に対する被験者の免疫応答を増強し得、血管形成に関与する因子などの特定の細胞増殖因子をターゲティングすることによって、または化学療法剤、放射性粒子もしくは毒素などの他の抗癌剤に連結またはコンジュゲートさせた場合に癌細胞への前記薬剤の送達を増強することによって癌細胞の増殖を妨害し得る。
【0076】
本発明の組合せに包含するのに適した癌免疫療法剤として現在使用されているモノクローナル抗体としては、リツキシマブ(リツキサン(登録商標))、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))、イブリツモバブチウキセタン(ゼバリン(登録商標))、トシツモマブ(ベキサール(登録商標))、セツキシマブ(C-225、アービタックス(登録商標))、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))、ゲムツズマブオゾガマイシン(マイロターグ(登録商標))、アレムツズマブ(キャンパス(登録商標))およびBL22が挙げられるがそれらに限定されない。モノクローナル抗体は、乳癌(進行転移性乳癌を含む)、結腸直腸癌(進行および/または転移性結腸直腸癌を含む)、卵巣癌、肺癌、前立腺癌、子宮頸癌、黒色腫および脳腫瘍を含む、多種多様な癌の処置に使用される。
【0077】
他の例としては、抗体特異的な共刺激分子が挙げられる。共刺激分子としては、例えば、B7-1/CD80、CD28、B7- 2/CD86、CTLA-4、B7-H1/PD-L1、Gi24/Dies 1/VISTA、B7-H2、ICOS、B7-H3 PD-1、B7-H4、PD-L2/B7-DC、B7-H6、PDCD6、BTLA、4-1 BB/TNFRSF9/CD137、CD40リガンド/TNFSF5、4-1BBリガンド/TNFSF9 GITR/TNFRSF18、HVEM/TNFRSF14、CD27/TNFRSF7、LIGHT/TNFSF14、CD27リガンド/TNFSF7、OX40/TNFRSF4、CD30/TNFRSF8、OX40リガンド/TNFSF4、CD30リガンド/TNFSF8、TACI/TNFRSF13B、CD40/TNFRSF5、2B4/CD244/SLAMF4 CD84/SLAMF5、BLAME/SLAMF8、CD229/SLAMF3、CD2CRACC/SLAMF7、CD2F-10/SLAMF9 NTB-A/SLAMF6、CD48/SLAMF2、SLAM/CD 150、CD58/LFA-3、CD2イカロス、CD53インテグリンアルファ4/CD49d、CD82/Kai-1 インテグリンアルファ4β1、CD90/Thylインテグリンアルファ4β7/LPAM-l、CD96 LAG-3、CD160 LMIR1/CD300A、CRTAM TCL1A、DAP 12 TCL1B、Dectin-1/CLEC7A TIM-l/KIM-1/HAVCR、DPPIV/CD26 TIM-4、EphB6 TSLP、HLAクラスI TSLP R、HLA-DRが挙げられる。特に、抗体は、抗CTLA-4抗体(例えばイピリムマブ)、抗PD1抗体、抗PDL1抗体、抗TIMP3抗体、抗LAG3抗体、抗B7H3抗体、抗B7H4抗体、抗TREM抗体、抗BTLA抗体、抗LIGHT抗体または抗B7H6抗体からなる群より選択される。
【0078】
モノクローナル抗体は、単独でまたは他の免疫療法剤もしくは化学療法剤と組み合わせて使用され得る。
【0079】
能動的で特異的な免疫療法は、典型的には、癌ワクチンの使用を含む。全癌細胞、癌細胞の一部、または癌細胞に由来する1つ以上の抗原を含む、癌ワクチンが開発された。癌ワクチンは、単独でまたは1つ以上の免疫療法剤もしくは化学療法剤と組み合わせて、黒色腫、腎臓癌、卵巣癌、乳癌、結腸直腸癌および肺癌を含む、数種類の癌の処置において調査中である。生体の免疫応答を増強するために、癌ワクチンと組み合わせた非特異的な免疫療法剤が有用である。
【0080】
免疫療法剤による処置は、Nicholas P. Restifo, Mark E. DudleyおよびSteven A. Rosenberg "Adoptive immunotherapy for cancer: harnessing the T cell response, Nature Reviews Immunology, Volume 12, April 2012に記載されているような養子免疫療法からなり得る。養子免疫療法では、患者の循環中のリンパ球または腫瘍浸潤リンパ球をインビトロで単離し、IL-2などのリンホカインによって活性化させるかまたは腫瘍壊死のための遺伝子を用いて形質導入し、再投与する(Rosenberg et al., 1988; 1989)。活性化リンパ球は、最も好ましくは、血液または腫瘍サンプルから以前に単離されインビトロで活性化(または「増殖」)された患者自身の細胞である。この形態の免疫療法は、数症例の黒色腫および腎臓癌の退縮をもたらした。
【0081】
本明細書に使用される「放射線療法剤」という用語は、癌を処置または寛解するのに効果的である当業者に公知の任意の放射線療法剤を指すことを意味するがこれに限定されない。例えば、放射線療法剤は、密封小線源療法または放射線核種療法で投与されるような薬剤であり得る。
【0082】
このような方法は、場合によりさらに、例えば化学療法および/または別の放射線療法および/または別の免疫療法などであるがこれらに限定されない、1つ以上の追加の癌療法の投与を含み得る。
【0083】
本発明のさらなる目的は、本発明の方法を実施するためのキットに関し、前記キットは、患者から得られたサンプル中の本発明の21個の遺伝子の発現レベルを測定するための手段を含む。
【0084】
従って、本発明はまた、CCR2、CD3D、CD3E、CD3G、CD8A、CXCL10、CXCL11、GZMA、GZMB、GZMK、GZMM、IL15、IRF1、PRF1、STAT1、CD69、ICOS、CXCR3、STAT4、CCL2およびTBX21からなる群より選択された少なくとも7個の遺伝子の発現レベルを決定するための手段を含む、本発明のキットに関する。
【0085】
従って、本発明はまた、CCR2、CD3D、CD3E、CD3G、CD8A、CXCL10、CXCL11、GZMA、GZMB、GZMK、GZMM、IL15、IRF1、PRF1、STAT1、CD69、ICOS、CXCR3、STAT4、CCL2およびTBX21の発現レベルを決定するための手段を含む、本発明のキットに関する。
【0086】
キットは、上記したようなプローブ、プライマー、マクロアレイ、またはマイクロアレイを含み得る。例えば、キットは、通常、DNAから作られ、予めラベル化されていてもよい、上記に定義したような1セットのプローブを含み得る。あるいは、プローブはラベル化されていなくてもよく、ラベル化のための成分が、キット内の別々の容器に含まれていてもよい。キットはさらに、特定のハイブリダイゼーションプロトコールに必要とされる、ハイブリダイゼーション試薬または他の適切にパッケージングされた試薬および材料(固相マトリックス(適用可能である場合)および標準物質を含む)を含み得る。あるいは、本発明のキットは、予めラベル化されていてもよいか、またはアフィニティ精製部分もしくは付着部分を含んでいてもよい、増幅プライマーを含み得る。キットはさらに、特定の増幅プロトコールに必要とされる、増幅試薬並びにまた他の適切にパッケージングされた試薬および材料を含み得る。
【0087】
本発明は、以下の図面および実施例によってさらに説明されるだろう。しかしながら、これらの実施例および図面は、いずれもしても本発明の範囲を制限するものと捉えるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【
図1】
図1は、2つの群に分けられた非転移性結腸直腸癌を有する患者の生存期間を示す:I0-I10のスコアを有する患者については「低いレベル」、I11-I21のスコアを有する患者については「高いレベル」。
【
図2】
図2は、2つの群に分けられた非転移性結腸直腸癌を有する患者の生存期間を示す:I0-I10のスコアを有する患者については「低いレベル」、I11-I21のスコアを有する患者については「高いレベル」。患者は、化学療法剤による処置を受けたか(「CHIMIO」)、または化学療法剤による処置を受けなかった(「NON」)。
【
図3】
図3は、2つの群に分けられた転移性結腸直腸癌を有する患者の生存期間(全生存期間(OS))を示す:I0-I10のスコアを有する患者については「低いレベル」、I11-I21のスコアを有する患者については「高いレベル」。
【
図4】
図4は、2つの群に分けられた転移性結腸直腸癌を有する患者の生存期間(全生存期間(OS))を示す:I0-I10のスコアを有する患者については「低いレベル」、I11-I21のスコアを有する患者については「高いレベル」。患者は、化学療法剤による処置を受けたか(「CHIMIO」)、または化学療法剤による処置を受けなかった(「NON」)。
【
図5】
図5は、2つの群に分けられた初期の進行非転移性結腸直腸癌(ステージII TNM)を有する患者の生存期間を示す:I0-I10のスコアを有する患者については「低いレベル」、I11-I21のスコアを有する患者については「高いレベル」。
【
図6】
図6は、2つの群に分けられた初期の進行非転移性結腸直腸癌(ステージII TNM)を有する患者の生存期間を示す:I0-I10のスコアを有する患者については「低いレベル」、I11-I21のスコアを有する患者については「高いレベル」。患者は、化学療法剤による処置を受けたか(「CHIMIO」)、または化学療法剤による処置を受けなかった(「NON」)。
【
図7】
図7は、2つの群に分けられた乳癌を有する第1コホートの患者(「IPCシリーズ」)の生存期間(DFS、か月)を示す:21個の遺伝子を用いて、I0-I10のスコアを有する患者については「低いレベル」(Lo)、I11-I21のスコアを有する患者については「高いレベル」(Hi)と決定された。IPCシリーズは、1992年から2004年までの間に初回の手術を受けた266人の初期乳癌患者から得られた凍結腫瘍サンプルを含んでいた。266人のBCの遺伝子発現データを、全ゲノムDNAマイクロアレイ(HG-U133 plus 2.0, Affymetrix)を使用することによって数量化した(Sabatier R, Finelli P, Cervera N, Lambaudie E et al. A gene expression signature identifies two prognostic subgroups of basal breast cancer. Breast cancer Res Treat 2011 Apr;126(2):407-20. PMID: 20490655)。
【
図8】
図8は、2つの群に分けられた乳癌を有する患者コホート(「IPCシリーズ」)の生存期間(DFS、か月)を示す:7個の遺伝子(CCR2、GZMB、GZMK、ICOS、STAT1、STAT4、TBX21)を用いて、I0-I3のスコアを有する患者については「低いレベル」(Lo)、I4-I7のスコアを有する患者については「高いレベル」(Hi)と決定された。IPCシリーズは、1992年から2004年までの間に初回の手術を受けた266人の初期乳癌患者から得られた凍結腫瘍サンプルを含んでいた。266人のBCの遺伝子発現データを、全ゲノムDNAマイクロアレイ(HG-U133 plus 2.0, Affymetrix)を使用することによって数量化した(Sabatier R, Finelli P, Cervera N, Lambaudie E et al. A gene expression signature identifies two prognostic subgroups of basal breast cancer. Breast cancer Res Treat 2011 Apr;126(2):407-20. PMID: 20490655)。
【
図9】
図9は、2つの群に分けられた乳癌を有する患者コホートの生存期間(DFS、か月)を示す:18個の遺伝子(CCR2、CD3D、CD3E、CD3G、CD8A、CXCL10、CXCL11、GZMA、GZMB、GZMK、GZMM、IL15、IRF1、PRF1、CD69、ICOS、CXCR3およびSTAT4)を用いて、I0-I9のスコアを有する患者については「低いレベル」(Lo)、I10-I18のスコアを有する患者については「高いレベル」(Hi)と決定された。前記コホートは、生存情報と共に、ヘルシンキ大学中央病院からの183個の乳房腫瘍を含む(Heikkinen T, Greco D, Pelttari LM, Tommi ska J et al. variants on the promoter region of PTEN affect breast cancer progression and patient survival. Breast cancer Res 2011;13(6):R130. PMID: 22171747)。全RNAを、183人の患者の原発性乳房腫瘍から抽出した。サンプルを加工して、Illumina HumanHT・12 v3 Expression BeadChipsにハイブリダイズさせた。
【
図10】
図10は、2つの群に分けられた子宮頸癌を有する患者の生存期間(DFS、か月)を示す:16個の遺伝子(CD3E、CD3G、CD8A、CXCL11、GZMA、GZMB、GZMK、GZMM、IL15、IRF1、CD69、ICOS、CXCR3、STAT4、CCL2およびTBX21)を用いて、I0-I8のスコアを有する患者については「低いレベル」(Lo)、I9-I16のスコアを有する患者については「高いレベル」(Hi)と決定された。前記コホートは、1990年から2006年までの間にインスブルック医科大学で処置された女性からの48個の子宮頸癌を含む。サンプルを加工し、lllumina lnfinium 27k Human DNA methylation Beadchip v1.2.にハイブリダイズさせた(Teschendorff AE, Jones A, Fiegl H, Sargent A et al. Epigenetic variability in cells of normal cytology is associated with the risk of future morphological transformation. Genome Med 2012 Mar 27;4(3):24. PMID: 22453031)。
【
図11】
図11は、2つの群に分けられた肝細胞癌を有する患者の生存期間(DFS、か月)を示す:14個の遺伝子(CCR2、CD3D、CD3E、CD8A、CXCL10、GZMA、GZMM、IL15、IRF1、PRF1、STAT1、CD69、CXCR3およびSTAT4)を用いて、I0-I7のスコアを有する患者については「低いレベル」(Lo)、I8-I14のスコアを有する患者については「高いレベル」(Hi)と決定された。前記コホートは、肝細胞癌(HCC)を有する患者からの外科切除された118個の腫瘍組織を含む(Hoshida Y, Nijman SM, Kobayashi M, Chan JA et al. Integrative transcriptome analysis reveals common molecular subclasses of human hepatocellular carcinoma. cancer Res 2009 Sep 15;69(18):7385-92. PMID: 19723656)。
【
図12】
図12は、2つの群に分けられた肺癌を有する患者の生存期間(DFS、か月)を示す:21個の遺伝子を用いて、I0-I10のスコアを有する患者については「低いレベル」(Lo)、I11-I21のスコアを有する患者については「高いレベル」(Hi)と決定された。遺伝子発現プロファイリングを、90個の凍結JBR.10腫瘍サンプル(観察下[OBS]にある患者からの、または補助的なシスプラチン/ビノレルビン(ACT)で処置された患者からのいずれか)から単離されたmRNAに対して実施した(Zhu CQ, Ding K., Strumpf D, Weir BA et al. Prognostic and predictive gene signature for adjuvant chemotherapy in resected non-small-cell lung cancer. J Clin Onco/2010 Oct 10;28(29):4417 -24. PMID: 20823422)。遺伝子発現データを、全ゲノムDNAマイクロアレイ(HG-U133 plus 2.0, Affymetrix)を使用することによって数量化した。
【
図13】
図13は、2つの群に分けられた肺癌を有する患者の生存期間(DFS、か月)を示す:17個の遺伝子(CCR2、CD3D、CD3E、CD3G、CD8A、CXCL11、GZMA、GZMB、GZMK、GZMM、IL15、IRF1、PRF1、STAT1、CD69、STAT4およびCCL2)を用いて、I0-I8のスコアを有する患者については「低いレベル」(Lo)、I9-I17のスコアを有する患者については「高いレベル」(Hi)と決定された。遺伝子発現プロファイリングを、90個の凍結JBR.10腫瘍サンプル(観察下[OBS]にある患者からの、または補助的なシスプラチン/ビノレルビン(ACT)で処置された患者からのいずれか)から単離されたmRNAに対して実施した(Zhu CQ, Ding K., Strumpf D, Weir BA et al. Prognostic and predictive gene signature for adjuvant chemotherapy in resected non-small-cell lung cancer. J Clin Onco/2010 Oct 10;28(29):4417 -24. PMID: 20823422)。遺伝子発現データを、全ゲノムDNAマイクロアレイ(HG-U133 plus 2.0, Affymetrix)を使用することによって数量化した。
【
図14】
図14は、2つの群に分けられた黒色腫を有する44人の患者コホートの生存期間(DFS、か月)を示す:21個の遺伝子を用いて、I0-I10のスコアを有する患者については「低いレベル」(Lo)、I11-I21のスコアを有する患者については「高いレベル」(Hi)と決定された。データは、Bogunovic D, ONeill DW, Belitskaya-Levy I, Vacic vet al. lmmune profile and mitotic index of metastatic melanoma lesions enhance eli ni cal staging in predicting patient survival. P roc Nat/Acad Sci USA 2009 Dec 1;106(48):20429-34. PMID: 19915147に記載のコホートから確立された。
【
図15】
図15は、2つの群に分けられた黒色腫を有する44人の患者コホートの生存期間(DFS、か月)を示す:16個の遺伝子(CCR2、CD3D、CD3E、CD3G、CD8A、CXCL10、GZMA、GZMB、GZMK、GZMM、IRF1、PRF1、CD69、ICOS、CXCR3およびTBX21)を用いて、I0-I8スコアを有する患者については「低いレベル」(Lo)、I9-I16のスコアを有する患者については「高いレベル」(Hi)と決定された。データは、Bogunovic D, ONeill DW, Belitskaya-Levy I, Vacic vet al. lmmune profile and mitotic index of metastatic melanoma lesions enhance eli ni cal staging in predicting patient survival. P roc Nat/Acad Sci USA 2009 Dec 1;106(48):20429-34. PMID: 19915147に記載のコホートから確立された。
【
図16】
図16は、2つの群に分けられた黒色腫(ステージIVの黒色腫)を有する57人の患者コホートの生存期間(DFS、か月)を示す:21個の遺伝子を用いて、I0-I10のスコアを有する患者については「低いレベル」(Lo)、I11-I21のスコアを有する患者については「高いレベル」(Hi)と決定された。全遺伝子発現データは、57人の患者からもたらされる(Jonsson G, Busch c, Knappskog s, Geisler Jet al. Gene expression profiling-based identification of molecular subtypes in stage IV melanomas with different clinical outcome. Clin cancer Res 2010 Jul1;16(13):3356-67. PMID: 20460471.)。
【
図17】
図17は、2つの群に分けられた卵巣癌を有する患者の生存期間(DFS、か月)を示す:17個の遺伝子(CD3D、CD3E、CD3G、CD8A、CXCL10、CXCL11、GZMA、GZMB、GZMK、IRF1、PRF1、STAT1、ICOS、CXCR3、STAT4、CCL2およびTBX21)を用いて、I0-I8のスコアを有する患者については「低いレベル」(Lo)、I9-I17のスコアを有する患者については「高いレベル」(Hi)と決定された。前記コホートは、組織学的サブタイプおよび分化等級に関して一致した、16個の初期段階および16個の進行段階の卵巣癌を含む(Zaal A, Peyrot WJ, Berns PM, van der Burg ME, Veerbeek JH, Trimbos JB, Cadron I, van Diest PJ, van Wieringen WN, Krijgsman O, Meijer GA, Piek JM, Timmers PJ, Vergote I, Verheijen RH, Ylstra B, Zweemer RP; EORTC GCG Translational Research Group. Genomic aberrations relate early and advanced stage ovarian cancer. Cell Oncol (Dordr). 2012 Jun;35(3):181-8. doi: 10.1007/s13402-012-0077-5. Epub 2012 May 12)。
【
図18】
図17は、2つの群に分けられた卵巣癌を有する患者の生存期間(DFS、か月)を示す:13個の遺伝子(CD3E、CD3G、CXCL10、CXCL11、GZMB、GZMK、IRF1、PRF1、STAT1、ICOS、CXCR3、CCL2およびTBX21)を用いて、I0-I6のスコアを有する患者については「低いレベル」(Lo)、I7-I13のスコアを有する患者については「高いレベル」(Hi)と決定された。前記コホートは、組織学的サブタイプおよび分化等級に関して一致した、16個の初期段階および16個の進行段階の 卵巣癌を含む(Zaal A, Peyrot WJ, Berns PM, van der Burg ME, Veerbeek JH, Trimbos JB, Cadron I, van Diest PJ, van Wieringen WN, Krijgsman O, Meijer GA, Piek JM, Timmers PJ, Vergote I, Verheijen RH, Ylstra B, Zweemer RP; EORTC GCG Translational Research Group. Genomic aberrations relate early and advanced stage ovarian cancer. Cell Oncol (Dordr). 2012 Jun;35(3):181-8. doi: 10.1007/s13402-012-0077-5. Epub 2012 May 12)。
【
図19】
図19は、2つの群に分けられた膵臓癌を有する患者の生存期間(DFS、か月)を示す:14個の遺伝子(CD3G、CD8A、CXCL11、GZMA、GZMK、GZMM、IL15、IRF1、PRF1、STAT1、ICOS、CXCR3、STAT4およびTBX21)を用いて、I0-I7のスコアを有する患者については「低いレベル」(Lo)、I8-I14のスコアを有する患者については「高いレベル」(Hi)と決定された。前記コホートは、ノースカロライナ大学チャペルヒル校(UNC)からの切除された原発性PDACを有する15人の患者、およびネブラスカ大学医療センターRapid Autopsy Pancreatic Program (NEB)からの転移性PDACを有する15人の患者を含む(Stratford JK, Bentrem DJ, Anderson JM, Fan c et al. A six-gene signature predicts survival of patients with localized pancreatic ductal adenocarcinoma. PLoS Med 2010 Jul 13;7(7) :e1000307. PMID: 20644708)。
【
図20】
図20は、2つの群に分けられた非転移性肺癌を有する患者の生存期間(全生存期間(OS))を示す:I0-I10のスコアを有する患者については「低いレベル」(Lo)、I11-I21のスコアを有する患者については「高いレベル」(Hi)。患者は、化学療法剤による処置を受けたか(「CHIMIO」)、または化学療法剤による処置を受けなかった(「NON」)。
【
図21】
図21は、2つの群に分けられた転移性卵巣癌(ステージIII/IV)を有する患者の生存期間を示す:I0-I10のスコアを有する患者については「低いレベル」(Lo)、I11-I21のスコアを有する患者については「高いレベル」(Hi)。患者は、化学療法剤による処置を受けたか(「CHIMIO」)、または化学療法剤による処置を受けなかった(「NON」)。
【0089】
実施例1:
材料および方法
患者およびデータベース:
1996年から2004年までの間にLaennec-HEGP病院でその腫瘍の初回切除を受けた結腸直腸癌(CRC)患者の記録が、論評され、以前に記載されていた(Galon et al. 2006)。十分なRNAの品質および量を有する、1996年から2004年までのLaennec-HEGP病院から入手可能な凍結腫瘍サンプルが選択された(検証コホート1、n=108)。分析したRNAサンプルは108人の異なる患者からのものであった。これらの患者は、遺伝子発現実験のために使用された(Taqmanコホート)。コホートの観察時間は診断から最後の接触(死亡または最後のフォローアップ)までの時間であった。データは、再発または死亡しなかった患者については最後のフォローアップ時に検討されていた。進行/死亡または最後のフォローアップまでの最低:最高値は、それぞれ、(0:136)か月であった。フォローアップデータが入手できなかった3人の患者は、生存分析から除外された。再発までの期間または無病期間は、再発患者については手術日から確定腫瘍再発日までの区間として、無病患者については手術日から最後のフォローアップ日までの時間として定義された。
【0090】
組織病理学的所見および臨床所見を、UICC-TNMステージ分類システムに従ってスコアリングした。術後患者の調査を、Laennec-HEGP病院で全ての患者についてCRC患者の一般的な慣行に従って実施した。アジュバン化学療法を、ステージIIおよびIIIのCRCを有する患者に投与するかまたは投与せず、対症療法的な化学療法を、進行した結腸直腸癌患者(ステージIV)および腫瘍の完全切除がなされていない患者に投与した。アジュバント化学療法は、フルオロウラシル(FU)系であった。フォローアップデータを前向きに収集し、更新した。信頼し得るウェブベースのデータベース、TME.データベース(Tumor MicroEnvironment Database)をJava-2 Enterprise-Edition (J2EE)を使用して3段構造物上に構築し、臨床データと高処理法によるデータを統合した。
【0091】
遺伝子発現分析:
組織サンプルは、手術後15分以内に急速凍結され、液体窒素中に保存されていた。十分なRNAの品質および量を有する、Laennec-HEGP病院から入手可能な無作為に選択された患者の凍結腫瘍サンプル(コホート1、n=108)を、遺伝子発現分析のために選択した。分析したRNAサンプルは108人の異なる患者からのものであった。全RNAを、RNeasy分離キット(Qiagen, Valencia, CA)による均質化によって分離した。RNAの完全性および量を、バイオアナライザー2100(Agilent Technologies, Palo Alto, CA)で評価した。RT-PCR実験を、製造業者の説明書(Applied-Biosystems, Foster City, CA)に従って実施した。定量的リアルタイムTaqMan-PCRを、低密度アレイおよび7900ロボット化リアルタイムPCR装置(Applied-Biosystems)を使用して実施した。18SリボソームRNAプライマーおよびプローブが、内部対照として使用された。遺伝子発現分析は、18SリボソームRNAに規準化されたCt値(閾値サイクル)を使用して実施された(ΔCt)。データは、SDSソフトウェアv2.2(Applied-Biosystems)およびTME統計モジュールを使用して分析された。
【0092】
結果:
本発明者らは、腫瘍サンプルにおける遺伝子CCR2、CD3D、CD3E、CD3G、CD8A、CXCL10、CXCL11、GZMA、GZMB、GZMK、GZMM、IL15、IRF1、PRF1、STAT1、CD69、ICOS、CXCR3、STAT4、CCL2およびTBX2の発現レベル(EL)を決定した。予め決定された参照値(ELR)は、国際公開公報第2007045996号およびJerome Galon, et al. (Type, Density, and Location of Immune Cells Within Human Colorectal Tumors Predict Clinical Outcome Science 313, 1960 (2006); DOI: 10.1126/science.1129139)に従って以前に決定された。その後、本発明者らは、以下のようにスコアを構築した:0個の遺伝子が、その予め決定された参照値よりも高いその発現レベルを有する場合にはI0(すなわち、全ての遺伝子が、その予め決定された参照値よりも低いその発現レベルを有する)、n子の遺伝子がそのそれぞれの予め決定された参照値よりも高いその発現レベルを有する場合にはIn(I1-I21)。結果の解釈を明瞭にするために、本発明者らは患者を2つの群に分ける:I0-I10のスコアを有する患者については「低いレベル」、I11-I21のスコアを有する患者については「高いレベル」。その後、2つの患者群についてのKM曲線を描いた。結果を
図1~6に示す。本発明者らは、患者(非転移性患者または転移性患者)のステージがどのようなものであろうとも、スコアが高くなればなるほど、患者の生存期間が長くなると判定した(
図1、3および4)。興味深いことに、非転移性結腸直腸癌について、本発明者らは、高いスコアを有する患者は、有利なことに、低いスコアを有する患者と比較して化学療法剤による処置の恩恵を受けると判定した(
図2)。逆に、転移性結腸直腸癌については、本発明者らは、低いスコアを有する患者は、有利なことに、低いスコアを有する患者と比較して化学療法剤による処置の恩恵を受けると判定した(
図4)。より興味深いことには、初期の進行非転移性結腸直腸癌(ステージII)について、本発明者らは、高いスコアを有する患者は、有利なことに、低いスコアを有する患者と比較して化学療法剤による処置の恩恵を受けると判定した(
図6)。従って、化学療法剤に適格である患者を選択するためのガイドラインが現在全く存在しない前記カテゴリーの患者について、同定されたサインは、患者が有利には化学療法剤による処置を受けるかどうかを決定するのに非常に役立つであろう。
【0093】
実施例2:
実施例1で同定された21個の遺伝子のサインは、乳癌、子宮頸癌、肝細胞癌、肺癌、黒色腫、卵巣癌または膵臓癌を患う患者の生存期間を予測するために検証された(例えば、
図7、12、14および16を参照されたい)。少なくとも7個の遺伝子の最小のサインも決定された(
図8、9、10、11、13、15、17、18および19を参照されたい)。
【0094】
実施例3:
図20は、ステージIB-IIIVの肺癌患者(NSCLC)を示し、「Hi」な適応的免疫遺伝子サインを有する患者は、延長された生存期間を有し、化学療法による処置を必要としない(化学療法による処置により恩恵を全く受けない)。化学療法による処置の有意で有益な効果は、「Lo」な適応的免疫遺伝子サインを有する患者で観察され得る。
【0095】
図21は、ステージIII/IVの卵巣癌患者を示し、「Hi」な適応的免疫遺伝子サインを有する患者は、化学療法による処置の有意で有益な効果を有する。逆に、「Lo」な適応的免疫遺伝子サインを有する患者は、生存期間を延長し、化学療法による処置を必要としない(化学療法による処置により恩恵を全く受けない)。
【0096】
参考文献:
本出願全体を通して、種々の参考文献が、本発明が属する技術分野の最新技術を記載している。これらの参考文献の開示は、本開示への参照によって本明細書に組み入れられる。