(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】電子制御ユニット、情報処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20231106BHJP
B60R 16/033 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
G01M17/007 K
B60R16/033 P
(21)【出願番号】P 2021123603
(22)【出願日】2021-07-28
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502032105
【氏名又は名称】エルジー エレクトロニクス インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】LG ELECTRONICS INC.
【住所又は居所原語表記】128, Yeoui-daero, Yeongdeungpo-gu, 07336 Seoul,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芝 寿法
(72)【発明者】
【氏名】シム ウォンボ
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-121553(JP,A)
【文献】特開2009-303457(JP,A)
【文献】特開平10-070844(JP,A)
【文献】特開平11-334498(JP,A)
【文献】特開2019-064529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00- 17/10
B60R 16/00- 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両においてバッテリから電力が供給される電子制御ユニットであって、
前記車両の駆動源のスイッチがOFFの状態の下での前記電子制御ユニットの作動時間を累積することと、
前記電子制御ユニットの累積作動時間が所定累積時間に達した時点において、前記電子制御ユニットの作動時間の累積開始時点からの経過時間が所定経過時間未満の場合、前記電子制御ユニットをリセットすることと、
を実行する制御部を備えた電子制御ユニット。
【請求項2】
前記制御部が、前記車両の駆動源のスイッチがOFFとなった時点から前記電子制御ユニットの作動時間の累積を開始する、
請求項1に記載の電子制御ユニット。
【請求項3】
前記制御部が、前記車両の駆動源のスイッチがOFFの状態ときに前記電子制御ユニットの電流値が所定電流値以上である時間を、前記電子制御ユニットの作動時間として累積する、
請求項1または2に記載の電子制御ユニット。
【請求項4】
前記制御部が、前記電子制御ユニットに流れる電流を検出する電流センサの検出値を取得する、
請求項3に記載の電子制御ユニット。
【請求項5】
前記制御部によって算出された前記電子制御ユニットの累積作動時間を一時的に記憶する記憶部をさらに備える、
請求項1から4のいずれか一項に記載の電子制御ユニット。
【請求項6】
前記電子制御ユニットのリセットに伴い、前記記憶部に記憶された前記電子制御ユニットの累積作動時間がリセットされる、
請求項5に記載の電子制御ユニット。
【請求項7】
前記車両が駆動源として内燃機関を有し、
前記駆動源のスイッチがイグニッションスイッチである、
請求項1から6のいずれか一項に記載の電子制御ユニット。
【請求項8】
前記バッテリが前記内燃機関の稼働により充電される、
請求項7に記載の電子制御ユニット。
【請求項9】
前記車両が駆動源として電気モータを有し、
前記駆動源のスイッチが前記電気モータのパワースイッチである、
請求項1から6のいずれか一項に記載の電子制御ユニット。
【請求項10】
前記電子制御ユニットが、前記車両に搭載され前記車両の外部と無線通信を行う通信インターフェースを制御するユニットである、
請求項1から9のいずれか一項に記載の電子制御ユニット。
【請求項11】
コンピュータによって実行される情報処理方法であって、
車両においてバッテリから電力が供給される電子制御ユニットの作動時間であって、前記車両の駆動源のスイッチがOFFの状態の下での前記電子制御ユニットの作動時間を累積することと、
前記電子制御ユニットの累積作動時間が所定累積時間に達した時点において、前記電子制御ユニットの作動時間の累積開始時点からの経過時間が所定経過時間未満の場合、前記電子制御ユニットをリセットすることと、
を含む情報処理方法。
【請求項12】
前記車両の駆動源のスイッチがOFFとなった時点から前記電子制御ユニットの作動時間の累積を開始する、
請求項11に記載の情報処理方法。
【請求項13】
前記車両の駆動源のスイッチがOFFの状態ときに前記電子制御ユニットの電流値が所定電流値以上である時間を、前記電子制御ユニットの作動時間として累積する、
請求項11または12に記載の情報処理方法。
【請求項14】
前記電子制御ユニットに流れる電流を検出する電流センサの検出値を取得する、
請求項13に記載の情報処理方法。
【請求項15】
前記電子制御ユニットの記憶部に一時的に記憶された前記電子制御ユニットの累積作動時間を、前記電子制御ユニットのリセットに伴いリセットする、
請求項11から14のいずれか一項に記載の情報処理方法。
【請求項16】
前記車両が駆動源として内燃機関を有し、
前記駆動源のスイッチがイグニッションスイッチである、
請求項11から15のいずれか一項に記載の情報処理方法。
【請求項17】
前記車両が駆動源として電気モータを有し、
前記駆動源のスイッチが前記電気モータのパワースイッチである、
請求項11から15のいずれか一項に記載の情報処理方法。
【請求項18】
車両においてバッテリから電力が供給される電子制御ユニットの作動時間であって、前記車両の駆動源のスイッチがOFFの状態の下での前記電子制御ユニットの作動時間を累積することと、
前記電子制御ユニットの累積作動時間が所定累積時間に達した時点において、前記電子制御ユニットの作動時間の累積開始時点からの経過時間が所定経過時間未満の場合、前記電子制御ユニットをリセットすることと、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項19】
前記車両の駆動源のスイッチがOFFとなった時点から前記電子制御ユニットの作動時間の累積を前記コンピュータに開始させる、
請求項18に記載のプログラム。
【請求項20】
前記車両の駆動源のスイッチがOFFの状態ときに前記電子制御ユニットの電流値が所定電流値以上である時間を、前記電子制御ユニットの作動時間として前記コンピュータに累積させる、
請求項18または19に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載された電子制御ユニット(Electronic Control Unit)の制御に
関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両に搭載された電子制御ユニットのリセット処理に関する技術が開示されている。特許文献1に記載の電子制御ユニットでは、リセット処理が行われた場合に、通常動作時に使用される記憶領域とは異なる領域に記憶された電装品の動作状況を示すデータに基づいて、CPUが車両の電装品を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、車両に搭載された電子制御ユニットの異常動作に伴うバッテリの電力の消費を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の態様に係る電子制御ユニットは、
車両においてバッテリから電力が供給される電子制御ユニットであって、
前記車両の駆動源のスイッチがOFFの状態の下での前記電子制御ユニットの作動時間を累積することと、
前記電子制御ユニットの累積作動時間が所定累積時間に達した時点において、前記電子制御ユニットの作動時間の累積開始時点からの経過時間が所定経過時間未満の場合、前記電子制御ユニットをリセットすることと、
を実行する制御部を備える。
【0006】
本開示の第2の態様に係る情報処理方法は、
コンピュータによって実行される情報処理方法であって、
車両においてバッテリから電力が供給される電子制御ユニットの作動時間であって、前記車両の駆動源のスイッチがOFFの状態の下での前記電子制御ユニットの作動時間を累積することと、
前記電子制御ユニットの累積作動時間が所定累積時間に達した時点において、前記電子制御ユニットの作動時間の累積開始時点からの経過時間が所定経過時間未満の場合、前記電子制御ユニットをリセットすることと、
を含む。
【0007】
本開示の第3の態様に係るプログラムは、
車両においてバッテリから電力が供給される電子制御ユニットの作動時間であって、前記車両の駆動源のスイッチがOFFの状態の下での前記電子制御ユニットの作動時間を累積することと、
前記電子制御ユニットの累積作動時間が所定累積時間に達した時点において、前記電子制御ユニットの作動時間の累積開始時点からの経過時間が所定経過時間未満の場合、前記電子制御ユニットをリセットすることと、
をコンピュータに実行させる。
【0008】
本開示の態様は、上記のプログラムを記憶した非一時的記録媒体を含んでもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、車両に搭載された電子制御ユニットの異常動作に伴うバッテリの電力の消費を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る車両制御システムの概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、ECUの機能構成の一例を概略的に示すブロック図である。
【
図3】
図3は、ECUの累積作動時間と、IGスイッチがOFFとなった時点からの経過時間との関係を説明するためのタイムチャートである。
【
図4】
図4は、ECUにおいて実行される情報処理のフローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示に係る電子制御ユニット(以下、「ECU」と称する場合もある。)は車両制御用のユニットである。ECUは、車両においてバッテリから電力が供給される。ここで、車両の駆動源のスイッチがOFFの状態のときは、基本的には、ECUの作動も停止される。ただし、車両の駆動源のスイッチがOFFの状態の下でも、所定の制御条件が成立したときにはECUが作動する。このときも、ECUはバッテリからの電力供給により作動する。つまり、車両の駆動源のスイッチがOFFの状態の下でECUが作動することでバッテリの電力が消費される。
【0012】
ただし、ECUが正常な状態であれば、車両の駆動源のスイッチがOFFの状態の下でECUが作動することで消費される電力量は比較的少ない。そのため、ECUの作動によりバッテリの電力が過剰に消費されてしまうという現象は生じにくい。しかしながら、車両の駆動源のスイッチがOFFの状態のときに、車両における何らかの不具合に起因して、ECUが作動してしまう場合もある。このようなECUの異常動作が生じると、バッテリの電力を過剰に消費されてしまう虞がある。
【0013】
そこで、本開示に係るECUでは、制御部が、車両の駆動源のスイッチがOFFの状態の下でのECUの作動時間を累積する。さらに、ECUの累積作動時間が所定累積時間に達した時点において、ECUの作動時間の累積開始時点から所定経過時間が経過したか否かを判別する。ここで、所定累積時間および所定経過時間は、ECUの異常動作が生じているか否かを判別するための閾値である。ECUの異常動作が生じると、正常な状態のときに比べて、ECUの累積作動時間がより早期に所定累積時間に達することになる。そのため、車両の駆動源のスイッチがOFFの状態の下でのECUの累積作動時間が、ECUの作動時間の累積開始時点から所定経過時間が経過する前に所定累積時間に達した場合、ECUの異常動作が生じていると判断することができる。
【0014】
そこで、制御部は、ECUの累積作動時間が所定累積時間に達した時点において、ECUの作動時間の累積開始時点からの経過時間が所定経過時間未満の場合、ECUをリセットする。ECUのリセットが行われることによって、ECUの異常動作の要因となる不具合を解消することができる。つまり、リセットによってECUが再起動した後においては、車両の駆動源のスイッチがOFFの状態の下でECUの異常動作が発生してしまうことを抑制することができる。そのため、ECUの異常動作に伴う車両のバッテリの電力の過剰な消費を抑制することができる。
【0015】
以下、本開示の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態に記載
されている構成部品の寸法、材質、形状、および、その相対配置等は、特に記載がない限りは本開示の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0016】
<実施形態>
(システムの概略)
図1は、本実施形態に係る車両制御システムの概略構成を示す図である。車両制御システム1は、車両10を制御するためのシステムである。車両10は駆動源として内燃機関を有する車両である。車両制御システム1は、車両10に搭載された、ECU100、通信インターフェース(通信I/F)200、イグニッションスイッチ(IGスイッチ)300、電流センサ400、およびバッテリ500を含んで構成される。
【0017】
ECU100は、車両10における各種装置を制御するために設けられた複数のECUのうちの一つである。ECU100は、プロセッサ101、主記憶部102、および補助記憶部103を有するコンピュータである。ここで、プロセッサ101は、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはDSP(Digital Signal Processor)である。主
記憶部102は、例えば、RAM(Random Access Memory)である。補助記憶部103は、例えば、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、またはフラッシ
ュメモリである。また、補助記憶部103は、リムーバブルメディア(可搬記録媒体)を含んでもよい。ここで、リムーバブルメディアは、例えば、USBメモリ、SDカード、または、CD-ROM、DVDディスク、若しくはブルーレイディスクのようなディスク記録媒体である。
【0018】
補助記憶部103には、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、および各種情報テーブル等が格納されている。そして、プロセッサ101が、補助記憶部103に記憶されたプログラムを主記憶部102にロードして実行することによって、各種の制御が実現される。ただし、ECU100における一部または全部の機能はASICやFPGAのようなハードウェア回路によって実現されてもよい。なお、ECU100は、必ずしも単一の物理的構成によって実現される必要はなく、互いに連携する複数台のコンピュータによって構成されてもよい。また、ECU100が、車両10に搭載された二つ以上のECUによって構成されてもよい。
【0019】
通信I/F200は、車両10と、車両10の外部の装置(以下、単に「外部装置」と称する場合もある。)との間で無線通信を行うためのインターフェースである。外部装置としては、車両10の外部に存在するユーザが所持するユーザ端末、または、車両10の状態を監視するサーバ装置等を例示することができる。通信I/F200は、無線通信のための無線通信回路を含んで構成される。通信I/F200は、所定の無線通信規格によりネットワークを介して外部装置と通信を行ってもよい。所定の無線通信規格としては、3G(3rd Generation)、LTE(Long Term Evolution)、または5G(5th Generation)を例示することができる。また、通信I/F200は、所定の近距離無線通信規格を
用いて外部装置と直接通信を行ってもよい。所定の近距離無線通信規格としては、Bluetooth(登録商標)LowEnergy規格、またはWiFi(登録商標)を例示することができる。
【0020】
IGスイッチ300は、車両10の内燃機関を稼働または停止させるためのスイッチである。IGスイッチ300がONにされると内燃機関が稼働する。また、IGスイッチ300がOFFにされると内燃機関が停止する。IGスイッチ300は車両10のドライバーによって操作される。
【0021】
電流センサ400は、ECU100に流れる電流を検出するセンサである。後述するように、電流センサ400は、IGスイッチ300がOFFの状態のときにECU100の
電流値を検出する。
【0022】
バッテリ500は、車両10における各種装置に電力を供給する車載バッテリである。バッテリ500は、所謂補機バッテリであってもよい。ECU100および通信I/F200にはバッテリ500から電力が供給される。また、バッテリ500では車両10の内燃機関の稼働中に充電が行われる。
【0023】
そして、車両制御システム1においては、通信I/F200、IGスイッチ300、および電流センサ400と、ECU100との間で、車両内ネットワークを介して通信が行われる。車両内ネットワークでは所定の車両内通信規格を用いて通信が行われる。所定の車両内通信規格としては、CAN(Controller Area Network)、またはLIN(Local Interconnect Network)を例示することができる。
【0024】
そして、ECU100によって通信I/F200が制御される。例えば、外部装置から通信I/F200が受信した情報が、車両内ネットワークを介してECU100に入力される。また、ECU100から出力された情報が、車両内ネットワークを介して通信I/F200から外部装置に送信される。さらに、IGスイッチ300から出力される信号が車両内ネットワークを介してECU100に入力される。これにより、ECU100は、IGスイッチ300のONまたはOFFの状態に関する情報を取得することができる。また、電流センサ400の検出値が車両内ネットワークを介してECU100に入力される。なお、電流センサ400はECU100に設けられていてもよい。この場合、電流センサ400の検出値がECU100に直接入力される。
【0025】
ここで、車両制御システム1においては、IGスイッチ300がOFFの状態のときは、基本的には、ECU100の作動も停止される。ただし、IGスイッチ300がOFFの状態の下でも、所定の制御条件が成立したときには、ECU100が作動する。所定の制御条件としては、通信I/F200を介した外部装置との通信の実行条件を例示することができる。より詳細には、IGスイッチ300がOFFの状態の下でも、ユーザ端末から指令情報を受信したとき、または、車両10の状態情報をサーバ装置に送信するときは、ECU300が自動で作動する。このときも、ECU100は、バッテリ500からの電力供給により作動する。
【0026】
また、車両制御システム1においては、IGスイッチ300がOFFの状態のときに、車両10における何らかの不具合に起因して、ECU100が作動してしまう場合もある。例えば、本来であれば受信すべきではない、ECU100を作動させる指令情報が、通信I/F200によって受信されてしまうことで、ECU100が作動してしまう場合がある。IGスイッチ300がOFFの状態の下で、このようなECU100の異常動作が生じると、バッテリ500の電力が過剰に消費されてしまう虞がある。また、IGスイッチ300がOFFの状態では、内燃機関の稼働によるバッテリ500の充電も行われない。そのため、バッテリ500の電力を過剰に消費してしまうと、所謂バッテリ上がりが生じる虞もある。そこで、車両制御システム1においては、バッテリ500の電力の過剰な消費を抑制するために、ECU100をリセットするリセット処理が行われる。リセット処理はECU100を再起動させる処理である。ECU100のリセット処理の実行手順の詳細については後述する。
【0027】
(機能構成)
次に、本実施形態に係る車両制御システム1を構成するECU100の機能構成について
図2に基づいて説明する。
図2は、ECU100の機能構成の一例を概略的に示すブロック図である。
【0028】
ECU100は、通信部110および制御部120を機能部として有している。通信部110は、ECU100を車両内ネットワークに接続する機能を有する。ECU100は、通信部110を用いて、通信I/F200、IGスイッチ300、および電流センサ400と通信を行う。
【0029】
制御部120は、ECU100を制御するための演算処理を行う機能を有する。制御部120はプロセッサ101によって実現することができる。制御部120は、通信部110を用いて通信I/F200との間で情報を送受信する処理を実行する。また、制御部120は、IGスイッチ300から出力される信号を、通信部110を用いて受信する処理を実行する。また、制御部120は、電流センサ400の検出値を、通信部110を用いて受信する処理を実行する。
【0030】
また、制御部120は、検知部121、累積部122、判別部123、およびリセット部124を含んでいる。バッテリ500から電力が供給されることでECU100が作動すると、ECU100に所定電流値以上の電流が流れる。そこで、検知部121は、IGスイッチ300がOFFの状態のときに電流センサ400の検出値が所定電流値以上であることを検知する。
【0031】
累積部122は、IGスイッチ300がOFFの状態の下でのECU100の作動時間を累積する。具体的には、累積部122は、IGスイッチ300がOFFの状態のときに電流センサ400の検出値が所定電流値以上である時間を累積する。累積部122は、IGスイッチ300がOFFとなった時点、すなわち、車両10の内燃機関が停止された時点から、ECU100の作動時間の累積を開始する。累積部122によって累積されるECU100の作動時間には、ECU100が異常作動したときの作動時間のみならず、ECU100が正常作動したときの作動時間も含まれる。
【0032】
判別部123は、累積部122よって算出されたECU100の累積作動時間が所定累積時間に達したときに、ECU100のリセット処理の要否を判別する。このとき、判別部123は、ECU100の累積作動時間が所定累積時間に達した時点における、IGスイッチ300がOFFとなった時点からの経過時間に基づいて、判別を行う。上記のとおり、IGスイッチ300がOFFとなった時点は、累積部122によるECU100の作動時間の累積が開始された時点である。具体的には、判別部123は、ECU100の累積作動時間が所定累積時間に達した時点において、IGスイッチ300がOFFとなった時点からの経過時間が所定経過時間未満であるか否かを判別する。そして、判別部123によって肯定判定された場合、リセット部124はECU100のリセット処理を実行する。
【0033】
図3は、IGスイッチ300がOFFの状態の下でのECU100の累積作動時間と、IGスイッチ300がOFFとなった時点からの経過時間との関係を説明するためのタイムチャートである。
図3では、時期tAにおいて、IGスイッチ300がONからOFFにされる。つまり、
図3において時期tA以降はIGスイッチ300がOFFの状態となっている。また、
図3において、斜線部で示す時間to1、to2、to3、およびto4は、それぞれ、電流センサ400の検出値が所定電流値以上であった時間、すなわち、ECU100の作動時間を示している。したがって、時間to1、to2、to3、およびto4の和が、ECU100の累積作動時間tocumである。なお、ECU100が、
図3に示すような断続的な作動ではなく、連続的に作動した場合は、ECU100の連続作動時間が、ECU10の累積作動時間tocumとして算出される。
【0034】
そして、
図3では、時期tBにおいて、ECU100の累積作動時間tocumが所定累積時間toc0(例えば2時間)に達する。このとき、時期tAから時期tBまでの期
間teが、ECU100の累積作動時間tocumが所定累積時間toc0に達した時点での、IGスイッチ300がOFFとなった時点からの経過時間である。
図3では、この経過時間teが所定経過時間te0(例えば6時間)未満となっている。そのため、
図3に例示するケースでは、リセット部124によってECU100のリセット処理が実行される。
【0035】
このときの所定累積時間toc0および所定経過時間te0は、ECU100の異常動作が生じているか否かを判別するための閾値である。ECU100の異常動作が生じると、正常な状態のときに比べて、ECU100の作動時間が長くなる、または、ECU100の作動頻度が高くなる。そのため、ECU100の異常動作が生じると、正常な状態のときに比べて、ECU100の累積作動時間tocumがより早期に所定累積時間toc0に達することになる。したがって、IGスイッチ300がOFFとなった時点tAから所定経過時間te0が経過する前に、ECU100の累積作動時間tocumが所定累積時間toc0に達した場合、ECU100の異常動作が生じていると判断することができる。なお、所定累積時間toc0および所定経過時間te0は、実験等に基づいて定められ、ECU100に予め記憶されている。
【0036】
換言すれば、ECU100の累積作動時間tocumが所定累積時間toc0に達した時点で、IGスイッチ300がOFFとなった時点tAから、すでに所定経過時間te0以上の時間が経過していれば、ECU100の異常動作は生じていないと判断することができる。
【0037】
(情報処理)
以下、本実施形態に係る、ECU100において実行される情報処理について
図4に基づいて説明する。
図4は、ECU100において実行される情報処理のフローを示すフローチャートである。本フローは、車両10のIGスイッチ300がOFFの状態の下でECU100が作動しているときに、ECU100の制御部120によって所定の間隔で繰り返し実行される。つまり、本フローは、ECU100の制御部120における検知部121によって、車両10のIGスイッチ300がOFF状態であり且つ電流センサ400の検出値が所定電流値以上であることが検知された場合に実行される。
【0038】
本フローでは、先ずS101において、車両10のIGスイッチ300がOFF状態であり且つ電流センサ400の検出値が所定電流値以上であった時間が、ECU100の作動時間として累積される。S101で算出されたECU100の累積作動時間tocumは、ECU100の主記憶部102に記憶される。主記憶部102に記憶されたECU100の累積作動時間tocumは、S101の処理が実行される毎に更新される。また、ECU100が断続的に作動する場合は、前回のECU100の作動時に主記憶部102に記憶されたECU100の累積作動時間tocumに対して、今回のECU100の作動時間がさらに累積される。
【0039】
次に、S102において、S101で算出されたECU100の累積作動時間tocumが所定累積時間toc0に達したか否かが判別される。S101で否定判定された場合、S101の処理が再度実行される。つまり、ECU100の作動時間がさらに累積される。一方、S101で肯定判定された場合、次にS103の処理が実行される。
【0040】
S103では、ECU100の累積作動時間tocumが所定累積時間toc0に達した時点での、IGスイッチ300がOFFとなった時点からの経過時間teが、所定経過時間te0未満であるか否かが判別される。S101で否定判定された場合、すなわち、経過時間teが所定経過時間te0以上である場合、本フローの実行は一旦終了される。なお、この場合、ECU100の異常動作は現時点では生じていないと判断できる。そこ
で、主記憶部102に記憶された現時点までのECU100の累積作動時間tocumが一旦リセットされる。
【0041】
一方、S103で肯定判定された場合、ECU100の異常動作が生じていると判断できる。そこで、次にS104において、ECU100のリセット処理が実行される。これにより、ECU100が再起動される。なお、このときも、主記憶部102に記憶された現時点までのECU100の累積作動時間tocumは、リセット処理の実行に伴いリセットされる。その後、本フローの実行は一旦終了される。
【0042】
本実施形態に係る車両制御システムによれば、IGスイッチ300がOFFの状態のときにECU100の異常動作が生じていた場合、ECU100のリセット処理が実行される。ECU100がリセットされることによって、ECU100の異常動作の要因となる不具合を解消することができる。つまり、ECU100のリセット処理が実行されることでECU100が再起動した後においては、車両10のIGスイッチ300がOFFの状態の下でECU100の異常動作が発生してしまうことを抑制することができる。そのため、ECU100の異常動作に伴う車両10のバッテリ500の電力の過剰な消費を抑制することができる。その結果、車両10においてバッテリ上がりが生じることも抑制することができる。
【0043】
(変形例)
なお、上記のとおり、
図4に示す情報処理のフローでは、S103において否定判定された場合、主記憶部102に記憶された現時点までのECU100の累積作動時間tocumが一旦リセットされる。このとき、IGスイッチ300がOFFの状態がその後も継続していれば、ECU100の作動時間の累積(電流センサ400の検出値が所定電流値以上である時間の累積)が再度行われてもよい。つまり、ECU100のリセット処理が実行された時点から、制御部120が、IGスイッチ300がOFFの状態の下でのECU100の作動時間の累積を開始してもよい。
【0044】
そして、再度累積されたECU100の累積作動時間が所定累積時間に達したときに、ECU100のリセット処理の要否を再度判別してもよい。このとき、ECU100のリセット処理が実行された時点、すなわち、ECU100の作動時間の累積が再度開始された時点からの経過時間に基づいて判別が行われる。具体的には、制御部120は、ECU100の累積作動時間が所定累積時間に達した時点において、ECU100のリセット処理が実行された時点からの経過時間が所定経過時間未満であるか否かを判別する。そして、この判別において肯定判定された場合には、制御部120がECU100のリセット処理を再度実行する。これによれば、車両10においてIGスイッチ300がOFFとなった時点から所定経過時間te0が経過した時点以降においてECU100の異常動作が発生した場合においても、バッテリ500の電力の過剰な消費を抑制することができる。
【0045】
また、上記実施形態においては、ECU100は通信I/F200を制御するECUである。ただし、本開示に係るECUは車両における他の装置を制御するECUであってもよい。
【0046】
また、上記実施形態においては、車両10は駆動源として内燃機関を有する車両である。ただし、本開示に係る車両は、駆動源として電気モータを有するEV車両であってもよい。EV車両においては、パワースイッチがONにされると電気モータが稼働する。また、EV車両においては、パワースイッチがOFFにされると電気モータが停止する。そして、EV車両において、ECUは、パワースイッチがOFFの状態の下でのECUの作動時間を累積する。つまり、パワースイッチがOFFとなった時点、すなわち、車両の電気モータが停止された時点から、ECUの作動時間の累積が開始される。また、本開示に係
る車両は、駆動源として内燃機関および電気モータの両方を有するハイブリッド車両でもよい。
【0047】
<その他の実施形態>
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。また、本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【0048】
また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。あるいは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成(サーバ構成)によって実現するかは柔軟に変更可能である。
【0049】
本開示は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク、ブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、または光学式カードのような、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0050】
1・・・車両制御システム
100・・電子制御ユニット(ECU)
110・・通信部
120・・制御部
200・・通信インターフェース(通信I/F)
300・・イグニッションスイッチ(IGスイッチ)
400・・電流センサ
500・・バッテリ