(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】有機発光表示装置
(51)【国際特許分類】
H10K 50/85 20230101AFI20231106BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20231106BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20231106BHJP
H10K 50/858 20230101ALI20231106BHJP
H10K 59/35 20230101ALI20231106BHJP
H10K 59/38 20230101ALI20231106BHJP
【FI】
H10K50/85
G09F9/30 349A
G09F9/30 365
H05B33/14 A
H10K50/858
H10K59/35
H10K59/38
(21)【出願番号】P 2021200514
(22)【出願日】2021-12-10
【審査請求日】2021-12-13
(31)【優先権主張番号】10-2020-0173478
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501426046
【氏名又は名称】エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シン, ヒョンフン
(72)【発明者】
【氏名】パク, ヒージェ
(72)【発明者】
【氏名】リー, テフン
【審査官】岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-054526(JP,A)
【文献】特開2013-016271(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0355793(US,A1)
【文献】特開2020-109753(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0005574(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0187847(US,A1)
【文献】特開2017-010609(JP,A)
【文献】特開2005-274741(JP,A)
【文献】特開2012-038631(JP,A)
【文献】国際公開第2011/145174(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0131635(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/85
G09F 9/30
H10K 50/10
H10K 50/858
H10K 59/35
H10K 59/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のサブ画素を含む表示パネル、
前記複数のサブ画素それぞれに備えられた有機発光素子、および
前記有機発光素子の上部に視野角による色シフト(color shift)を抑制する色シフト抑制構造物を含み、
前記色シフト抑制構造物が、前記有機発光素子の上部の第1カバー層および前記第1カバー層の上部の複数の第2カバー層を含み、
前記複数の第2カバー層は、複数のサブ画素ごとに設けられ、
前記複数の第2カバー
層は、対応するサブ画素から放出される光の波長が短いほど面積が広い、有機発光表示装置。
【請求項2】
前記複数の第2カバー層は、
赤色光を発光するサブ画素、緑色光を発光するサブ画素及び青色光を発光するサブ画素ごとに異なって設けられた請求項1に記載の有機発光表示装置。
【請求項3】
前記第1カバー層が、有機膜であり、
前記複数の第2カバー層は、無機膜である請求項1に記載の有機発光表示装置。
【請求項4】
前記第1カバー層が、前記有機発光素子のカソードの上部に接する請求項1に記載の有機発光表示装置。
【請求項5】
前記第1カバー層が、前記有機発光素子のカソードの上部を直接カバーする請求項4に記載の有機発光表示装置。
【請求項6】
前記複数の第2カバー層が、前記有機発光素子のアノードと同じ形状である請求項1に記載の有機発光表示装置。
【請求項7】
前記第2カバー層の面積が、前記有機発光素子の前記アノードの面積の50%~90%である請求項6に記載の有機発光表示装置。
【請求項8】
青色光を発光するサブ画素に対応した第2カバー層の面積が、緑色光を発光するサブ画素に対応した第2カバー層の面積よりも広く、
前記緑色光を発光するサブ画素に対応した第2カバー層の面積は、赤色光を発光するサブ画素に対応した第2カバー層の面積よりも広い、請求項6に記載の有機発光表示装置。
【請求項9】
前記複数の第2カバー層が、半球形状である請求項1に記載の有機発光表示装置。
【請求項10】
前記第1カバー層と前記複数の第2カバー層とが接する界面が、所定値以上の粗さを有する請求項1に記載の有機発光表示装置。
【請求項11】
前記複数の第2カバー層が上部にある少なくとも一つのサブ画素を第1比率で含む第1領域、および前記複数の第2カバー層が上部にある少なくとも一つのサブ画素を第2比率で含む第2領域を有し、
前記第2比率が、前記第1比率と異なる請求項1に記載の有機発光表示装置。
【請求項12】
前記第2比率が、前記第1比率よりも大きい請求項11に記載の有機発光表示装置。
【請求項13】
前記第2領域を使用者が眺める第2視野角が、前記第1領域を使用者が眺める第1視野角よりも大きい請求項11に記載の有機発光表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、有機発光表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多様な情報を画面に具現する画像表示装置は、情報通信時代の核心技術であり、より薄く、より軽くて持ち運びが可能でありながら、高性能の方向に発展している。それで、有機発光素子の発光量を制御して映像を表示する有機発光表示装置などが脚光を浴びている。
【0003】
有機発光素子は、電極間の薄い発光層を用いた自発光素子で、薄膜化が可能であるという長所がある。一般的な有機発光表示装置は、基板に画素駆動回路と有機発光素子が形成された構造を有し、有機発光素子から放出された光が基板またはバリア層を通過しながら画像を表示することになる。
【0004】
有機発光表示装置は、別途の光源装置なしに具現できるので、フレキシブル(flexible)表示装置として具現することが容易である。ここで、プラスチック、薄膜金属(metal foil)などのフレキシブル材料を、有機発光表示装置の基板として使用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有機発光表示装置は、環境によって最適な使用者体験を提供するように発展している。特に、使用者が様々な環境と使用条件の下で最高の画質を感じることができるよう設計される傾向にある。そこで、本明細書では、有機発光表示装置の体感画質を向上させることを目的とする。本明細書の課題は、以上で言及した課題に限定されず、言及していないその他の課題は、下記の記載から当業者が明確に理解することができるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書の実施例によって、有機発光表示装置が提供される。前記有機発光表示装置は、複数のサブ画素のそれぞれに備えられた有機発光素子、および前記有機発光素子の上部の色シフト(color shift)抑制構造物を含むことができる。
【0007】
前記色シフト抑制構造物は、前記有機発光素子の上部の第1カバー層および前記第1カバー層の上部の第2カバー層を含み、前記第2カバー層は、前記サブ画素ごとに異なって設けることができる。
【0008】
前記第1カバー層は、有機膜であり、前記第2カバー層は、無機膜であり得る。
【0009】
前記第1カバー層は、前記有機発光素子のカソードの上部に接することができる。
【0010】
前記第2カバー層は、前記有機発光素子のアノードと同じ形状であり、前記第2カバー層の面積は、前記アノードの面積の50%~90%であり得る。また、前記第2カバー層は、対応するサブ画素から放出される光の波長が短いほど面積を広くすることができる。
【0011】
青色光を発光するサブ画素に対応した第2カバー層の面積は、緑色光を発光するサブ画素に対応した第2カバー層の面積よりも広く、前記緑色光を発光するサブ画素に対応した第2カバー層の面積は、赤色光を発光するサブ画素に対応した第2カバー層の面積よりも広いことがあり得る。
【0012】
前記第2カバー層は、半球形状であり得る。そして、前記第1カバー層と前記第2カバー層とが接する界面は、所定値以上の粗さを有することができる。
【0013】
前記有機発光表示装置は、前記第2カバー層が上部に置かれていないサブ画素を第1比率で含む第1領域、および前記第2カバー層が上部に置かれていないサブ画素を第2比率で含む第2領域を有し、前記第2比率は、前記第1比率よりも大きくなり得る。ここで、前記第2領域を使用者が眺める第2視野角は、前記第1領域を使用者が眺める第1視野角よりも大きくなり得る。
【0014】
その他の実施例の具体的な事項は、詳細な説明及び図に含まれている。
【発明の効果】
【0015】
本明細書の実施例は、体感画質劣化の問題が改善された有機発光表示装置を提供することができる。より詳細には、本明細書の実施例は、有機発光表示装置の視野角によって認知画質が受ける影響を低減することができる。これにより、本明細書の実施例に係る有機発光表示装置は、多様な環境での使いやすさが向上し得る。本明細書の実施例に係る効果は、以上で例示された内容によって制限されず、さらに多様な効果が本明細書に含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本明細書の実施例に係る有機発光表示装置を示した平面図である。
【
図2】本明細書の実施例による有機発光表示装置の表示領域の一部を示した断面図である。
【
図3】本明細書の実施例による有機発光表示装置の非表示領域の一部を示した図である。
【
図4】本明細書の実施例による有機発光表示装置のサブ画素を示した図である。
【
図5】本明細書の他の実施例による有機発光表示装置のサブ画素を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書の利点と特徴、そしてそれらを達成する方法は添付の図と共に詳細に後述されている実施例を参照すると明確になるだろう。しかし、本明細書は、以下で開示される実施例に限定されるものではなく、異なる多様な形態で実現されるものであり、単に本実施例は、本明細書の開示を完全にし、本明細書が属する技術分野で通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本明細書は、請求項の範疇によってのみ定義される。
【0018】
本明細書の実施例を説明するため、図に示した形状、大きさ、比率、角度、個数などは、例示的なものであって、本明細書が図に示した事項に限定されるものではない。明細書全体にわたって同一参照符号は同一の構成要素を指す。また、本明細書を説明するにおいて、関連する公知技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を不必要に曖昧にすると判断された場合、その詳細な説明は省略する。本明細書で言及した「含む」、「有する」、「からなる」などが使用されている場合、「~だけ」が使用されていない限り、他の部分を追加することができる。構成要素を単数で表現した場合に特に明示的な記載事項がない限り、複数を含む場合を含むものと解釈する。
【0019】
位置関係の説明である場合には、例えば、「~の上に」、「~の上部に」、「~の下部に」、「~の隣に」などで2つの部分の位置関係が説明されている場合は、「すぐに」または「直接」が使用されていない限り、二つの部分の間に一つ以上の他の部分が位置することもできる。素子または層が他の素子または層 「上(on)」というのは、他の装置のすぐ上または中間に他の層または他の素子を介在する場合をすべて含む。ある構成要素が他の構成要素に「連結」、「結合」または「接続」と記載されている場合、その構成要素は、その他の構成要素に直接に連結するか、または接続することができ、各構成要素の間に他の構成要素が「介在」するか、各構成要素が他の構成要素を介して、「連結」、「結合」または「接続」することもあると理解されなければならない。
【0020】
第1、第2などが多様な構成要素を記述するために使用されるが、これらの構成要素はこれらの用語によって制限されない。これらの用語は、単に一つの構成要素を他の構成要素と区別するために使用されるものである。したがって、以下で言及される第1構成要素は、本発明の技術的思想内で第2構成要素であることもあり得る。
【0021】
図に示した各構成の大きさと厚さは、説明の便宜上示したものであり、本発明は、示した構成の大きさおよび厚さに必ずしも限定されるものではない。以下、添付した図を参照して、本発明の様々な実施例を詳細に説明する。
【0022】
図1は、本明細書の実施例に係る有機発光表示装置を示す平面図である。
【0023】
図1を参照すると、前記有機発光表示装置100は、少なくとも一つの表示領域(active area、A/A)を含み、前記表示領域には、画素(pixel)のアレイ(array)が配置される。一つの画素は、複数のサブ画素(sub pixel)を含むことができる。ここで、サブ画素は一つの色を表現するための最小単位である。一つのサブ画素回路は、複数のトランジスタとキャパシタおよび複数の配線を含むことができる。サブ画素回路は、2つのトランジスタと一つのキャパシタ(2T1C)からなり得るが、これに限定されず、4T1C、7T1C、6T2Cなどを適用したサブ画素回路で具現することもできる。また、サブ画素は、上部発光(top-emission)方式の有機発光表示装置100に適合するように具現され得る。
【0024】
一つ以上の非表示領域(inactive area、I/A)を、前記表示領域の周囲に配置することができる。すなわち、前記非表示領域は、表示領域の一つ以上の側面に隣接することができる。
図1において、前記の非表示領域は、四角形の形状の表示領域を囲んでいる。しかし、表示領域の形状と表示領域に隣接する非表示領域の形状/配置は、
図1に示した例に限定されない。前記表示領域及び前記非表示領域は、前記表示装置100を搭載した電子機器のデザインに適した形態であり得る。前記表示領域の例示的形態は五角形、六角形、円形、楕円形などである。
【0025】
前記表示領域(A/A)内の各画素は、画素回路と関連付けることができる。前記画素回路は、一つ以上のスイッチングトランジスタおよび一つ以上の駆動トランジスタを含むことができる。各画素回路は、前記非表示領域に位置するゲートドライバ、データドライバなどと通信するために信号ライン(ゲートライン、データラインなど)と電気的に接続することができる。
【0026】
前記ゲートドライバ、データドライバは、前記非表示領域(I/A)にTFT(thin film transistor)で具現され得る。このようなドライバは、GIP(gate-in-panel)と呼ぶことができる。また、データドライバICのようないくつかの部品は、分離されたプリント回路基板に搭載され、FPCB(flexible printed circuit board)、COF(chip-on-film)、TCP(tape-carrier-package)などのような回路フィルムを通じて前記非表示領域に配置された接続インタフェース(パッド、バンプ、ピンなど)と結合することができる。前記プリント回路(COF、PCBなど)は、前記表示装置100
の裏側に位置することができる。
【0027】
前記有機発光表示装置100は、多様な信号を生成したり、表示領域内の画素を駆動するための多様な付加要素を含むことができる。画素を駆動するための付加要素は、インバータ回路、マルチプレクサ、静電気放電(electro static discharge:ESD)回路などを含むことができる。前記有機発光表示装置100は、画素駆動以外の機能と関連付けられる付加要素も含むことができる。例えば、前記の有機発光表示装置100は、タッチ検出機能、使用者認証機能(例えば、指紋)、マルチレベル筆圧機能、触覚フィードバック(tactile feedback)機能などを提供する付加要素を含むことができる。前記した付加要素は、前記非表示領域および/または前記接続インタフェースと接続した外部回路に位置することができる。
【0028】
図2は、本明細書の実施例による有機発光表示装置の表示領域の一部を示す断面図である。
【0029】
前記有機発光表示装置100は、基板101、薄膜トランジスタ、有機発光素子及び各種機能層を含むことができる。
【0030】
前記基板101は、その上部に配置される有機発光表示装置100の構成要素を支持および保護する役割をする。前記基板101は、フレキシブル(Flexible)特性を有する軟性の物質からなるフレキシブル基板であり得る。前記基板101は、ガラスやプラスチック基板であり得る。プラスチック基板である場合には、ポリイミド系またはポリカーボネート系物質を使用して可撓性(flexibility)を有することができる。特に、ポリイミドは、高温の工程に適用することができ、コーティングが可能な材料であるため、プラスチック基板に多く使用される。
【0031】
バッファ層103は、基板101または下部の層から流出するアルカリイオンなどの不純物から電極/配線を保護するための機能層である。前記バッファ層(buffer layer)は、シリコン酸化物(SiOx)、窒化ケイ素(SiNx)またはこれらの多層からなることができる。前記バッファ層103は、マルチバッファ(multi buffer)および/またはアクティブバッファ(active buffer)を含むことができる。前記マルチバッファは、窒化シリコン(SiNx)および酸化シリコン(SiOx)を交互に積層して形成することができ、基板101に浸透した水分および/または酸素が拡散することを遅延させることができる。前記アクティブバッファは、トランジスタの半導体層102を保護し、基板101から流入する様々な種類の欠陥を遮断する機能を実行する。前記アクティブバッファは、アモルファスシリコン(a-Si)などで形成することができる。
【0032】
薄膜トランジスタは、ゲート電極104は、ソースとドレイン電極108および半導体層102を含む。半導体層102は、アモルファスシリコン(Amorphous Silicon)または多結晶シリコン(Polycrystalline Silicon)で構成することができる。多結晶シリコンは、非晶質シリコンよりも優れた移動度(Mobility)を有し、エネルギー消費電力が低く、信頼性に優れる。最近では、酸化物(Oxide)半導体が、移動度および均一度が優れていて脚光を浴びている。半導体層102は、p型またはn型の不純物を含むソース領域(Source Region)、ドレイン領域(Drain Region)およびソース領域とドレイン領域の間のチャンネル(Channel)を含むことができ、チャネルと隣接ソース領域およびドレイン領域の間には、低濃度ドーピング領域を含むことができる。
【0033】
ゲート絶縁層105は、シリコン酸化物(SiOx)または窒化ケイ素(SiNx)の単一層または複数層で構成された絶縁膜であり、半導体層102に流れる電流がゲート電極104に流されないように設けられる。
【0034】
ゲート電極104は、ゲートラインを介して外部から伝達される電気信号に基づいて薄膜トランジスタをターンオン(turn-on)またはターンオフ(turn-off)するスイッチの役割をし、導電性金属である銅(Cu)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、金(Au)、チタニウム(Ti)、ニッケル(Ni)、およびネオジム(Nd)等またはこれらの合金で、単一層または複数層に構成することができる。ソースおよびドレイン電極108は、データラインと接続し、外部から伝達される電気信号が薄膜トランジスタから有機発光素子に伝達されるようにする。ソースとドレイン電極108は、導電性金属である銅(Cu)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、金(Au)、チタニウム(Ti)、ニッケル(Ni)、およびネオジム(Nd)などの金属材料または、これらの合金で、単一層または多重層に構成することができる。
【0035】
ゲート電極104とソースとドレイン電極108を互いに絶縁させるために、シリコン酸化物(SiOx)または窒化ケイ素(SiNx)の単一層または多層に構成された層間絶縁層106を、ゲート電極104とソースとドレイン電極108の間に配置することができる。
【0036】
薄膜トランジスタ上に、シリコン酸化物(SiOx)、窒化ケイ素(SiNx)のような無機絶縁膜で構成された保護層が位置することができる。前記保護層は、薄膜トランジスタの構成要素との間の不必要な電気的接続を防ぎ、外部からの汚染や損傷などを防ぐことができる。前記保護層は、薄膜トランジスタと有機発光素子の構成及び特性によって省略することもできる。
【0037】
説明の便宜上、様々な薄膜トランジスタの中から駆動薄膜トランジスタのみ図に示したが、スイッチング薄膜トランジスタ、コンデンサなども表示領域に含むことができる。スイッチング薄膜トランジスタは、ゲートラインからの信号が印加されると、データラインからの信号を駆動薄膜トランジスタのゲート電極に伝達する。駆動薄膜トランジスタは、スイッチング薄膜トランジスタから伝達された信号によって電源配線を介して配信される電流をアノードに伝達し、アノードに伝達される電流によって発光が制御される。
【0038】
平坦化層109を、薄膜トランジスタ上に配置する。平坦化層109は、薄膜トランジスタを保護し、薄膜トランジスタに起因する段差を緩和させ、薄膜トランジスタとゲートラインおよびデータライン、有機発光素子の間に発生する寄生静電容量(Parasitic-Capacitance)を減少させる。平坦化層109は、アクリル系樹脂(Acrylic Resin)、エポキシ樹脂(Epoxy Resin)、フェノール樹脂(Phenolic Resin)、ポリアミド系樹脂(Polyamides Resin)、ポリイミド系樹脂(Polyimides Resin)、不飽和ポリエステル系樹脂(Unsaturated Polyesters Resin)、ポリフェニルレン系樹脂(Polyphenylene Resin)、ポリフェニレンスルファイド系樹脂(Polyphenylenesulfides Resin)、およびベンゾシクロブテン(Benzocyclobutene)の中の一つ以上の物質で形成することができる。
【0039】
有機発光素子は、平坦化層109上に配置される。有機発光素子は、アノード112、発光部114およびカソード116を含む。前記有機発光素子は、一つの光を発光する単一の発光部構造で構成することもでき、複数の発光部が積層して白色光を発光する構造で構成することもできる。有機発光素子が白色光を発光する場合、カラーフィルタを備えてもよい。前記アノード112は、平坦化層109のすぐ上に配置することができる。前記アノード112は、前記発光部114に正孔を供給する役割をする電極で、平坦化層109のコンタクトホールを介して薄膜トランジスタと電気的に接続することができる。前記アノード112は、透明導電性物質であるインジウムスズ酸化物(Indium Tin Oxide、ITO)、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide、IZO)などで構成することができる。有機発光表示装置100が上部に光を発光する方式(Top Emission)の場合、発光された光が、より円滑にカソード116が配置された上部方向に放出されるように、前記アノードは、反射層をさらに含むことができる。前記アノード112は、透明導電性物質で構成された透明導電層と反射層が順番に積層された2層構造であるか、または透明導電層、反射層及び透明導電層が順番に積層された3層構造であり得、反射層は、銀(Ag)または銀を含む合金であり得る。
【0040】
バンク110は、アノード112と平坦化層109上に配置され、実際に光を発光する領域を定義することができる。前記バンク110は、アノード112上にフォトレジスト(Photoresist)を形成した後、写真エッチング工程(Photolithography)によって形成される。フォトレジストは、光の作用により現像液に対する溶解性が変化する感光性樹脂を言い、フォトレジストを露光及び現像して、特定のパターンを得ることができる。
【0041】
有機発光素子の発光部114を形成するために蒸着マスクであるFMM(Fine Metal Mask)を使用することができる。ここで、バンク110上に配置される蒸着マスクと接触して発生し得る損傷を防止し、前記バンク110と蒸着マスクの間に一定の距離を維持するために、前記バンク110の上部に透明有機物あるポリイミド、フォトアクリルおよび、ベンゾシクロブチレン(BCB)の中の一つで構成されるスペーサー(spacer)111を配置することもできる。
【0042】
アノード112とカソード116の間には、発光部114が配置される。発光部114は、光を発光する役割を果たし、正孔注入層(Hole Injection Layer; HIL)、正孔輸送層(Hole Transport Layer; HTL)、発光層(emission layer; EML)、電子輸送層(Electron Transport Layer;ETL)及び電子注入層(Electron Injection Layer;EIL)のうち少なくとも一つの層を含むことができ、有機発光表示装置100の構造または特性によって、前記発光部114の一部を構成する要素は、省略することもできる。
【0043】
カソード116は、発光部114上に配置され、前記発光部114に電子を供給する役割をする。前記カソード116は、電子を供給しなければならないので仕事関数が低い導電性物質であるマグネシウム(Mg)、銀マグネシウム(Ag:Mg)などのような金属材料で構成することができる。有機発光表示装置100が上部発光方式の場合には、前記カソード116は、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、インジウムスズ酸化亜鉛(Indium Tin Zinc Oxide、ITZO)、酸化亜鉛(Zinc Oxide、ZnO)、スズ酸化物(Tin Oxide、TiO)系の透明導電性酸化物であり得る。
【0044】
有機発光素子上に外部から流入する水分、酸素または不純物に起因する酸化または損傷を防止するための封止層120を配置することができる。前記封止層120は、複数の無機物層、異物補償層および複数のバリアフィルム(Barrier Film)を積層して形成することができる。前記無機物層は、有機発光素子の上部全面に配置され、無機物である窒化シリコン(SiNx)または酸化アルミニウム(AlyOz)の中の一つで構成することができる。前記異物補償層上には、無機物層を追加で、さらに積層して配置することができる。前記異物補償層は、無機物層上に配置され、有機物であるシリコンオキシカーボン(SiOCz)、アクリル(Acryl)またはエポキシ(Epoxy)系のレジン(Resin)を使用することができる。前記異物補償層は、工程中に発生し得る異物やパーティクル(Particle)によって発生したクラック(Crack)により不良が発生したとき、そのような屈曲及び異物を覆いながら補償する。
【0045】
封止層120上にタッチ電極(パネル)、偏光フィルム、カバーグラスなどが位置することもできる。
【0046】
図3は、本明細書の実施例による有機発光表示装置の非表示領域の一部を示した図である。
【0047】
非表示領域(I/A)は、
図1に示すように、表示領域(A/A)の外郭に位置することができ、その上に駆動回路(例えば、GIP)、電源配線などを配置することができる。非表示領域(I/A)には、画素回路と発光素子が配置されないが、基板101と有機/無機機能層103、105、109などは、存在することができる。また、前記非表示領域(I/A)には、表示領域(A/A)の構成に使用された物質を、他の用途に配置することができる。たとえば、表示領域TFTのゲート電極と同じゲート金属104’、またはソース/ドレイン電極と同一の金属を配線または電極用に非表示領域(I/A)に配置することができる。さらに、有機発光ダイオードの一電極(例えば、アノード)と同じ金属112'を配線、電極用に非表示領域(I/A)に配置することもできる。
【0048】
有機発光素子の上部を封止層120が覆う。封止層は、ガラス、金属、酸化アルミニウム(AlOx)またはシリコン(Si)系物質からなる無機膜で構成するか、または有機膜と無機膜を交互に積層した構造であり得る。無機膜121、123は、水分や酸素の浸透を遮断する役割をして、有機膜122は、無機膜121の表面を平坦化する役割をする。
【0049】
有機膜122は、一定程度の流動性があり、塗布中に非表示領域の外郭に流れることがあり得る。そのためダム190を、有機膜122が非表示領域(I/A)に広がることを制御するように配置される。
図3には、ダムが2個配置された例を示したが、ダムは、他の数でも配置することができる。また、ダム190は、表示領域(A/A)を囲むように配置したり、表示領域(A/A)内に配置することもできる。ダム190は、少なくとも一つ以上の物質を使用して多層に形成することができる。例えば、ダム190は、平坦化層109、バンク110、スペーサー111を形成するために使用する物質を用いて形成することができる。
【0050】
非表示領域(I/A)に配置された各種回路と電極/配線は、ゲート金属104’および/またはソース/ドレイン金属108’で形成することができる。ここで、ゲート金属104’は、TFTのゲート電極と同一の物質で同一工程で形成され、ソース/ドレイン金属108’は、TFTのソース/ドレイン電極と同一の物質で同一工程で形成される。
【0051】
例えば、ソース/ドレイン金属108'は、電源(例えば、低レベルの電源(VSS)、高レベルの電源(VDD)等)配線に使用することができる。ここで、電源配線は、金属層112’と接続し、有機発光ダイオードのカソード116は、前記ソース/ドレイン金属108’および金属層112’との接続を介して電源供給を受けることができる。前記金属層112’は、電源配線と接触し、平坦化層109の最外郭側壁に沿って延長して平坦化層109の上部でカソード116と接触することができる。前記金属層112’は、有機発光ダイオードのアノード112と同一の物質で同一工程で形成された金属層であり得る。
【0052】
図4は、本明細書の実施例による有機発光表示装置のサブ画素を示した図である。
【0053】
有機発光表示装置は、外部から流入した酸素および/または水分によってカソードが酸化される場合がある。また、外部光による乱反射などが発生し、光効率が低下することもある。
【0054】
このような現象のために準備として、本明細書の実施例による有機発光表示装置は、カソード116の上部にカバー層(capping layer)をさらに有する。前記カバー層117、118は、有機膜および/または無機膜で形成することができる。
図4では、前記カバー層が、カソード116の上部の有機膜117と前記有機薄膜上部の無機膜118で具現された例である。前記有機膜117は、屈折率が大きい有機物で形成することができる。また、前記無機膜118は、前記有機膜117と屈折率が異なることがあり得る。
【0055】
しかし、発明者は、
図4に示したような発光層構造でも表れる脆弱性を発見した。その中の一つは、
図4のような構造のカバー層を備えていても表示装置の大きさが大きくなるほど視野角による色シフト(color shift)が発生するというものである。これにより、表示装置で、視野角による色感の違いが大きく表われ得る。特に車両用表示装置のように、左右に長い表示装置の場合には、運転席に近い側と遠い側との間の視野角の差が大きいため、運転者が認知する画質の差もより大きいということが確認された。
【0056】
本発明の発明者らは、前記の脆弱性を認知して、視野角による画質の変化を効果的に低減させることができる構造を考案した。
【0057】
図5は、本明細書の他の実施例による有機発光表示装置のサブ画素を示した図である。
【0058】
図5の各構成要素の中で、
図1~
図4と同一の構成要素についての重複説明は省略する。本実施例に係る有機発光表示装置は、視野角による色シフト(color shift)を抑制する構造物を含むことができる。前記色シフト抑制構造物は、有機発光素子の上部を覆うキャッピング層(capping layer)の形態および配置を最適化することによって設けることができる。前記キャッピング層は、光学的特性を調節するように設けられたものであり、前記有機発光素子の上部の第1カバー層517と、前記第1カバー層517の上部の第2カバー層518_R、518_G、518_Bを含むことができる。
【0059】
本実施例に係る有機発光表示装置は、複数のサブ画素(R、G、B)のそれぞれに備えられた有機発光素子、前記有機発光素子の上部の色シフト抑制構造物を含むことができる。前記各サブ画素(R、G、B)は、有機発光素子のアノード112、発光部114およびカソード116のほかに、駆動回路、配線、電極などをさらに含む。
【0060】
前記色シフト抑制構造物は、前記有機発光素子を保護し、光抽出効率を向上させることができる。また、前記色シフト抑制構造物は、視野角による色感の低下を緩和させることができる。前記色シフト抑制構造物は、前記有機発光素子の上部の第1カバー層517および、前記第1カバー層の上部の第2カバー層518_R、518_G、518_Bを含み、前記第2カバー層518_R、518_G、518_Bは、前記サブ画素(R、G、B)ごとに異なって設けることができる。
【0061】
前記第1カバー層517は、有機酸化物(例えば、SiO2)などで構成された有機膜であり得る。前記第1カバー層517は、前記有機発光素子のカソード116の上部に接しながら直接覆うことができる。前記第1カバー層517は、全体的に均一な厚さであることもあり得るが、前記サブ画素(R、G、B)ごとに異なる厚さを有することもできる。
【0062】
前記第2カバー層518は、フッ化リチウム(LiF)などで構成された無機膜であり得る。前記第2カバー層518は、円形、楕円形、多角形形状であり得、前記有機発光素子のアノード112と同じ形状であることもあり得る。前記第1カバー層517上に前記第2カバー層518を配置すると、マイクロキャビティ(micro cavity)効果で、発光効率および色純度が増加し得る。
【0063】
前記第2カバー層518の面積によって、対応したサブ画素から放出された光の屈折程度を調整することができる。すなわち、前記第2カバー層518の面積が大きいほど屈折する光がより多くなり、視野角(表示装置の正面から見た視野角が0度)が大きい方向で相対的により多くの光を認知することになる。また、光の波長によって第2カバー層によって屈折する程度も異なるが、相対的により長い波長の光がより多く屈折する。その結果、相対的により短い波長の光は、視野角が大きい地点での輝度および/または色感の低下が大きく表われる。
【0064】
前記のような原理を勘案して、前記第2カバー層518_R、518_G、518_Bは視野角が大きな地点(表示装置の左右側部)での色相別の認知変化を調和するように構成する。そこで、前記第2カバー層518_R、518_G、518_Bは、対応するサブ画素(R、G、B)から放出される光の波長が短いほど面積をより広くすることができる。例えば、青色光を発光するサブ画素(B)に対応した第2カバー層518_Bの面積は、緑色光を発光するサブ画素(G)に対応した第2カバー層518_Gの面積よりも広く、前記緑色光を発光するサブ画素(G)に対応した第2カバー層518_Gの面積は、赤色光を発光するサブ画素(R)に対応した第2カバー層518_Rの面積よりも広くすることができる。つまり、R<G<Bサブ画素の順に前記第2カバー層の面積が広くなり得る。このような構成を介して屈折光(RF_R、RF_G、RF_B)を多く認知することになる側面の視野角で、サブ画素ごとに輝度減少率が類似し、その結果、画素での色感の違いが緩和され得る。
【0065】
前記第2カバー層の形態は、より多様に備えることができる。前記第2カバー層518が、前記有機発光素子のアノード112と同じ形状である場合に、前記第2カバー層518は、前記アノード112よりも小さい面積(例えば、50%~90%)を有するように備えることができる。前記アノード112は、サブ画素ごとに異なる形状と大きさを有することができ、第2カバー層も同様である。さらに、青色光を発光するサブ画素(B)に対応した第2カバー層518_Bの面積は、アノード112_Bの90%、緑色光を発光するサブ画素(G)に対応した第2カバー層518_Gの面積は、アノード112_Gの70%、赤色光を発光するサブ画素(R)に対応した第2カバー層518_Rの面積は、アノード112_Rの50%のような方法で具現することもできる。
【0066】
一方、前記第2カバー層518_R、518_G、518_Bは、半球形状に作成して、レンズと同様に機能することもできる。また、前記第1カバー層517と前記第2カバー層518_R、518_G、518_Bとが接する界面は平坦でなく、凸凹に具現して屈折する光を増加させることもできる。ここで、前記界面は、所定値以上の粗さ(roughness)を有することができる。
【0067】
前記第2カバー層518_R、518_G、518_Bは、表示装置の領域ごとに異なって適用することもできる。例えば、前記表示装置は、前記第2カバー層が上部にあるサブ画素を第1比率で含む第1領域、および前記第2カバー層が上部にあるサブ画素を第2比率で含む第2領域を有することができる。ここで、前記第2比率は、前記第1比率よりも大きくすることができる。例えば、第1領域では、サブ画素の1/2だけに第2カバー層を有し、第2領域では、サブ画素の全部に第2カバー層を有することができる。
【0068】
前記第1領域は、使用者からより近い領域であり、前記第2領域は、使用者からより遠い領域であり得る。すなわち、前記第2領域を使用者が眺める第2視野角(θ2)は、前記第1領域を使用者が眺める第1視野角(θ1)よりも大きくすることができる(θ1<θ2)。このような構造を介して本明細書の実施例に係る表示装置は、視野角による認知画質をより均一に提供することができる。
【0069】
上述した構造により、使用環境、特に視野角による認知画質の低減を抑制することができる。これにより、有機発光表示装置の使い勝手も向上させることができる。このような利点は、左右の長さが長い車両用表示装置などに非常に有用である。
【0070】
以上、添付した図を参照して、本明細書の実施例を詳細に説明したが、本明細書では、必ずこれらの実施例に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲内で多様に変形実施することができる。したがって、本明細書に開示された実施例は、本発明の技術思想を限定するためのものではなく説明するためのものであり、このような実施例により、本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。本発明のいくつかの実施例のそれぞれの特徴が部分的または全体的に互いに結合または組み合わせ可能であり、当業者によって技術的に多様に連動および駆動することができ、各実施例を互いに独立して実施したり関連関係で一緒に実施することもある。
【0071】
本発明の保護範囲は、次の請求の範囲によって解釈されなければならず、それと同等の範囲内にあるすべての技術思想は、本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されなければならない。